(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
更に、(E)1分子中に1個以上の(メタ)アクリル基、カルボニル基、エポキシ基、アルコキシシリル基およびアミド基から選ばれる少なくとも1個の基を含む接着助剤を含有する請求項1〜4のいずれか1項記載の紫外線硬化型樹脂組成物。
【背景技術】
【0002】
アルキレン変性シリコーン樹脂やアリーレン変性シリコーン樹脂等の有機変性シリコーン樹脂は、シリコーン樹脂(ジメチルシリコーン樹脂)の持つ高耐熱性、高透明性を有すると共に、ポリオレフィン樹脂やポリエチレンテレフタレート樹脂等の有機樹脂の持つ高硬度、高靱性、高ガスバリア性をも有する、両者の特性を併せ持ったハイブリッド樹脂である。このため、封止やコーティングを必要とする発光デバイスやセンサーなどの電気電子用途で使用されており、他分野からも高い注目を集めている。
【0003】
しかし、一方で、液剤を完全硬化させるための硬化条件として150℃下で3時間以上必要とすることが、しばしば問題となっていた。すなわち、高温で硬化させた後、常温下などで放冷することにより、樹脂へのクラックや基材からの剥離が生じることがあった。
また、加熱により液剤が低粘度化するために、液剤が意図しない部位へ這い上がる現象や、蛍光体など固形添加物が沈降する現象が見られることがあった。
更に、加熱炉内で空気中に開放した状態で硬化させる場合、気相との界面のシリコーン層の方が、液相内のシリコーン層よりも若干硬化が速いために、硬化物表面にシワが生じることがあった。
こういった技術的な課題に加えて、生産効率の悪化やコストの増大といった量産性に関する課題が問題となることがあった。
【0004】
これに対して、近年、UV付加硬化型のシリコーン樹脂組成物が提案されている。この材料は、紫外線を照射することによって白金触媒を活性化し、材料の硬化を進めるものであるが、比較的穏和な硬化条件でも速やかに硬化が進行することが知られている。すなわち、適量の紫外線を液剤に照射し、室温〜100℃程度の穏和な温度条件下で静置することで、十分な硬さならびに強度を持つ樹脂を得ることが可能である。
【0005】
しかしながら、白金触媒を活性化するために有効な紫外線波長領域は200〜500nmであり、この波長領域においてジメチルシリコーン樹脂の場合は極端な吸収や減衰は起こさないが、有機変性シリコーン樹脂の場合、骨格中の有機部位によって紫外光が吸収されうる。この紫外線吸収が大きいと、白金触媒が光活性化されづらくなるために硬化が遅くなる、あるいはまったく硬化が起こらないと考えられるため、紫外線吸収の少ない骨格を選択する必要があった。
なお、本発明に関連する先行技術文献としては、下記のものが挙げられる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は前記事情に鑑みてなされたものであって、紫外線吸収性の有機骨格を有する重合体を含んでいても白金触媒の光活性化が阻害されにくく、紫外線を用いた温和な条件下での硬化が可能で、優れた硬度および基材との接着性を示す硬化物を与える紫外線硬化型樹脂組成物、この組成物からなる接着剤、上記組成物の硬化物およびその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、下記(A)〜(C)成分を含む樹脂組成物が、紫外線を用いた温和な条件下で硬化させることが可能であり、優れた硬度および基材との接着性を示す硬化物を与えることを見出し、本発明を完成した。
【0009】
すなわち、本発明は、
1. (A)下記構造式(1)で表される重合体:
【化1】
[式中、Xはそれぞれ独立に下記構造式(2)で表される2価の基であり、Yはそれぞれ独立に下記構造式(3)〜(5)のいずれかで表される1価の基であり、Y’はそれぞれ独立に下記構造式(6)または(7)で表される2価の基であり、Meはメチル基を表す。mは0〜12の整数である。
【化2】
(式中、アスタリスク(*)はケイ素原子との結合部位を示す。)
【化3】
(式(3)〜(7)中、アスタリスク(*)はケイ素原子との結合部位を示し、各不斉炭素における立体配置はシス(エキソ)またはトランス(エンド)のいずれであってもよい。)]
(B)1分子中に少なくとも2個のケイ素原子に結合した水素原子を有し、(メタ)アクリル基、カルボニル基、エポキシ基、アルコキシシリル基およびアミド基から選ばれる基を有しない有機ケイ素化合物、
(C)波長200〜500nmの光によって活性化される白金族金属触媒
を含有する紫外線硬化型樹脂組成物、
2. 前記(C)成分が、(η
5−シクロペンタジエニル)三脂肪族白金化合物またはビス(β−ジケトナト)白金化合物である1に記載の紫外線硬化型樹脂組成物、
3. (B)成分が、下記(i)〜(iii)から選ばれる少なくとも1種である1または2に記載の紫外線硬化型樹脂組成物、
(i)下記平均組成式(10)で表されるオルガノハイドロジェンポリシロキサン:
R
1aH
bSiO
[(4-a-b)/2] (10)
(式中、R
1はそれぞれ独立にアルケニル基以外の非置換もしくは置換の炭素原子数1〜12の一価炭化水素基であり、a、bは0.7≦a≦2.1、0.01≦b≦1、かつ0.8≦a+b≦2.7を満たす数である。)
(ii)ビニルノルボルネンおよび/またはジアリルビスフェノールAと環状オルガノハイドロジェンポリシロキサンとから得られるSiH基含有付加反応生成物
(iii)SiH基含有シラン化合物
4. (ii)成分が、下記式(11)または(12)で示されるものである3に記載の紫外線硬化型樹脂組成物、
【化4】
[式中、Zは前記Yで表される基または下記構造式(13)で表される基であり、Z’は前記Y’で表される基または下記構造式(14)で表される基であり、Meはメチル基を示す。sは0〜100、好ましくは1〜10の整数であり、tは1〜100、好ましくは1〜20の整数であり、qおよびrはそれぞれ独立に0〜3の整数であり、それぞれの環状シロキサン部位におけるqとrの合計は独立に2または3である。
【化5】
(式中、アスタリスク(*)はケイ素原子との結合部位を示す。)
【化6】
(式中、アスタリスク(*)はケイ素原子との結合部位を示す。)]
5. (iii)成分が、下記式で示される化合物から選ばれる3または4に記載の紫外線硬化型樹脂組成物、
【化7】
(式中、Meはメチル基、Phはフェニル基を示す。)
6. 更に、(E)1分子中に1個以上の(メタ)アクリル基、カルボニル基、エポキシ基、アルコキシシリル基およびアミド基から選ばれる少なくとも1個の基を含む接着助剤を含有する1〜5のいずれかに記載の紫外線硬化型樹脂組成物、
7. 1〜6のいずれかに記載の紫外線硬化型樹脂組成物からなる接着剤、
8. 1〜6のいずれかに記載の紫外線硬化型樹脂組成物の硬化物、
9. 1〜6のいずれかに記載の紫外線硬化型樹脂組成物に紫外線を照射した後、60〜150℃で加熱して硬化させる硬化物の製造方法
を提供する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、十分な硬度および基材への接着性を持つ有機変性樹脂硬化物を短時間で得ることができるため、従来の材料が有する技術上あるいは生産上での課題を解決し得る。また、比較的低温で硬化を進行させることができるため、耐熱性が低い基材に対しても適用可能である。従って、本発明の紫外線硬化型樹脂組成物は、光学デバイスもしくは光学部品用材料、電子デバイスもしくは電子部品用絶縁材料、コーティング材料、接着剤等として有用である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明について詳しく説明する。
【0012】
[A成分]
本発明の紫外線硬化型樹脂組成物における(A)成分は、下記構造式(1)で表される重合体である。
【化8】
[式中、Xはそれぞれ独立に下記構造式(2)で表される2価の基であり、Yはそれぞれ独立に下記構造式(3)〜(5)のいずれかで表される1価の基であり、Y’はそれぞれ独立に下記構造式(6)または(7)で表される2価の基であり、Meはメチル基を表す。mは0〜12の整数である。
【化9】
(式中、アスタリスク(*)はケイ素原子との結合部位を示す。)
【化10】
(式(3)〜(7)中、アスタリスク(*)はケイ素原子との結合部位を示し、各不斉炭素における立体配置はシス(エキソ)またはトランス(エンド)のいずれであってもよい。)]
但し、前記構造式(6)または(7)で表される2価の基は、その結合方向が前記記載のとおりに限定されるものではなく、個々の構造を紙面上で180°回転させた構造をも包含する。
【0013】
前記構造式(1)におけるmは0〜12の整数であり、好ましくは1〜5である。mが12を超えると高粘度となり取扱いがしづらくなる。
【0014】
(A)成分の粘度は、特に制限されないが、1,000〜100,000mm
2/sであることが好ましく、より好ましくは5,000〜30,000mm
2/sである。なお、本発明において、粘度はキャノンフェンスケ粘度計により測定した23℃における動粘度の値である(以下、同様)。
【0015】
(A)成分は、例えば、(a):ビス(ジメチルヒドロシリル)ベンゼンと(b):ビニルノルボルネンとの付加反応物として、公知の手法(特開2005−133073号公報等)に従って調製することができる。
【0016】
(a)成分は、下記構造式(8)で表されるオルト、メタ、あるいはパラ置換のビス(ジメチルヒドロシリル)ベンゼンであり、単一構造のものを使用しても、2種類以上の異性体の混合物を使用してもよい。なお、式(8)中、Meはメチル基を示す。
【化11】
【0017】
(b)成分は、下記構造式(9)で表される5−ビニルビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エンまたは6−ビニルビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エンであり、単一構造のものを使用しても、2種類以上の異性体の混合物を使用してもよい。
【化12】
【0018】
本発明の(A)成分は、例えば、SiH基を1分子中に2個有する(a)成分1モルに対して、付加反応性炭素−炭素二重結合を1分子中に2個有する(b)成分の1モルを超え10モル以下、好ましくは1モルを超え5モル以下の過剰量を、ヒドロシリル化反応触媒の存在下で付加反応させることにより得ることができる。
【0019】
ヒドロシリル化反応触媒としては、公知のものを使用することができる。例えば、白金金属を担持したカーボン粉末、白金黒、塩化第2白金、塩化白金酸、塩化白金酸と一価アルコールとの反応生成物、塩化白金酸とオレフィン類との錯体、白金ビスアセトアセテート等の白金系触媒;パラジウム系触媒、ロジウム系触媒等の白金族金属系触媒などが挙げられる。また、付加反応条件、溶媒の使用等については、特に限定されるものではなく、公知の条件で行えばよい。
【0020】
前記のとおり、(A)成分の調製に際し、(a)成分に対して過剰モル量の(b)成分を用いることから、(A)成分は、(b)成分の構造に由来する付加反応性炭素−炭素二重結合を1分子中に2個有するものである。
【0021】
また、後述する(B)成分等として付加反応性炭素−炭素二重結合を有するものを用いる場合、本発明の組成物中の付加反応性炭素−炭素二重結合全体に占める(A)成分由来の付加反応性炭素−炭素二重結合の割合は、好ましくは20〜100モル%、より好ましくは40〜100モル%である。
【0022】
本発明の(A)成分は、1種単独でも2種以上を組み合わせても使用することができる。
【0023】
[(B)成分]
本発明の(B)成分は、1分子中に少なくとも2個のケイ素原子に結合した水素原子を有し、(メタ)アクリル基、カルボニル基、エポキシ基、アルコキシシリル基およびアミド基から選ばれる基を有しない有機ケイ素化合物である。(B)成分中のSiH基が、(A)成分中の付加反応性炭素−炭素二重結合とヒドロシリル化反応により付加し、3次元網状構造の硬化物を与える。なお、(B)成分は、(メタ)アクリル基、カルボニル基、エポキシ基、アルコキシシリル基およびアミド基から選ばれる基を有しないものであり、この点においてこれらの基の少なくとも1種を有する後述する(E)成分とは区別されるものである。
(B)成分としては、例えば、下記(i)〜(iii)のものを用いることができる。
【0024】
(i)下記平均組成式(10)で表されるオルガノハイドロジェンポリシロキサン
R
1aH
bSiO
[(4-a-b)/2] (10)
(式中、R
1はそれぞれ独立にアルケニル基以外の非置換もしくは置換の炭素原子数1〜12、特に1〜6の一価炭化水素基であり、a、bは0.7≦a≦2.1、0.01≦b≦1、かつ0.8≦a+b≦2.7を満たす数である。)
【0025】
前記平均組成式(10)中のR
1におけるアルケニル基以外の非置換もしくは置換の炭素原子数1〜12の一価炭化水素基の具体例としては、例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、tert−ブチル、ペンチル、イソペンチル、ヘキシル、sec−ヘキシル等のアルキル基;シクロペンチル、シクロヘキシル等のシクロアルキル基;フェニル、o−,m−,p−トリル等のアリール基;ベンジル、2−フェニルエチル等のアラルキル基;およびこれらの基中の炭素原子に結合した1個以上の水素原子が、ハロゲン原子、シアノ、エポキシ環含有基等で置換された、例えば、クロロメチル、3−クロロプロピル、3,3,3−トリフルオロプロピル等のハロゲン化アルキル基;2−シアノエチル基;3−グリシドキシプロピル基等が挙げられる。
これらの中でも、特に、メチル基あるいはフェニル基であるものが、工業的に製造することが容易であり、入手しやすいことから好ましい。
【0026】
(i)成分の粘度は、特に制限されないが、0.1〜100,000mm
2/sであることが好ましく、より好ましくは0.5〜500mm
2/sである。
【0027】
(ii)ビニルノルボルネンおよび/またはジアリルビスフェノールAと環状オルガノハイドロジェンポリシロキサンとの付加反応生成物
また、(B)成分として、例えば、下記構造式(11)または下記構造式(12)で表される、前記(b)成分および/またはジアリルビスフェノールAと環状オルガノハイドロジェンポリシロキサンとをヒドロシリル化反応させて得られる付加反応生成物を使用できる。
【0028】
【化13】
[式中、Zは前記Yで表される基または下記構造式(13)で表される基であり、Z’は前記Y’で表される基または下記構造式(14)で表される基であり、Meはメチル基を示す。sは0〜100、好ましくは1〜10の整数であり、tは1〜100、好ましくは1〜20の整数であり、qおよびrはそれぞれ独立に0〜3の整数であり、それぞれの環状シロキサン部位におけるqとrの合計は独立に2または3である。
【化14】
(式中、アスタリスク(*)はケイ素原子との結合部位を示す。)
【化15】
(式中、アスタリスク(*)はケイ素原子との結合部位を示す。)]
【0029】
(ii)成分の粘度は、特に制限されないが、0.1〜100,000mm
2/sであることが好ましく、より好ましくは0.1〜3,000mm
2/sであり、更に好ましくは0.5〜500mm
2/sである。
【0030】
式(11)または(12)で示される化合物は、前記(b)成分および/またはジアリルビスフェノールAと、下記式(15)
【化16】
(式中、q、rは上記と同様である。Meはメチル基を示す。)
で表される環状シロキサンとをヒドロシリル化反応触媒の存在下で付加反応させて得ることができる。
【0031】
ヒドロシリル化反応触媒としては上述したものを用いることができ、付加反応条件、溶媒の使用等については特に制限されるものではなく、公知の条件で行えばよい。
【0032】
上記反応において、前記(b)成分、ジアリルビスフェノールAおよび上記式(15)で表される環状シロキサンの使用量は、前記(b)成分および/またはジアリルビスフェノールAに含まれるオレフィンのモル数に対して、上記式(15)で表される環状シロキサンのモル比が0.9〜1.1倍となる量が好ましい。
【0033】
(iii)SiH基含有シラン化合物
(B)成分として、(i),(ii)成分以外に、下記シラン化合物を用いることもできる。
【化17】
(上記式中、Meはメチル基、Phはフェニル基を示す。)
【0034】
(iii)成分の粘度は、特に制限されないが、0.1〜100,000mm
2/sであることが好ましく、より好ましくは0.5〜500mm
2/sである。
【0035】
本発明の(B)成分は、1種単独でも2種以上を組み合わせても使用することができる。
【0036】
(B)成分の配合量は、本発明の組成物中の(A)成分の付加反応性炭素−炭素二重結合1モルに対するケイ素原子に結合した水素原子の量が0.5〜2.0モルとなる量が好ましく、より好ましくは0.8〜1.5モルとなる量である。
【0037】
また、本発明の組成物中のケイ素原子に結合した水素原子全体に占める(B)成分由来のケイ素原子に結合した水素原子の割合は、好ましくは20〜100モル%、より好ましくは40〜100モル%である。(B)成分の配合量がこのような範囲であると、十分な硬度を有する硬化物を得ることができる。
【0038】
[(C)成分]
(C)成分のヒドロシリル化反応用白金族金属触媒は、遮光下で不活性であり、かつ波長200〜500nmの光を照射することにより、活性な白金触媒に変化して(A)成分中の付加反応性炭素−炭素二重結合と、(B)成分中のケイ素原子結合水素原子とのヒドロシリル化反応を促進するための触媒である。
【0039】
このような(C)成分の具体例として、(η
5−シクロペンタジエニル)三脂肪族白金化合物、その誘導体等が挙げられる。これらのうち特に好適なものは、シクロペンタジエニルトリメチル白金錯体、メチルシクロペンタジエニルトリメチル白金錯体およびそれらのシクロペンタジエニル基が修飾された誘導体である。また、ビス(β−ジケトナト)白金化合物も好適な(C)成分の例として挙げられ、このうち特に好適なものは、ビス(アセチルアセトナト)白金化合物およびそのアセチルアセトナト基が修飾された誘導体である。
【0040】
(C)成分の配合量は、本組成物の硬化(ヒドロシリル化反応)を促進する量であれば限定されず、本組成物の(A)成分と(B)成分の質量の合計に対して、本成分中の白金族金属原子が質量単位で0.01〜500ppmの範囲となる量であることが好ましく、より好ましくは0.05〜100ppm、特に好ましくは0.01〜50ppmの範囲である。
【0041】
[(D)成分]
(D)成分は反応制御剤であり、樹脂組成物を調合ないし基材に塗工する際に、加熱硬化前に増粘やゲル化を起こさないようにするために必要に応じて任意に添加してもよい。
具体例としては、3−メチル−1−ブチン−3−オール、3−メチル−1−ペンチン−3−オール、3,5−ジメチル−1−ヘキシン−3−オール、1−エチニルシクロヘキサノール、エチニルメチルデシルカルビノール、3−メチル−3−トリメチルシロキシ−1−ブチン、3−メチル−3−トリメチルシロキシ−1−ペンチン、3,5−ジメチル−3−トリメチルシロキシ−1−ヘキシン、1−エチニル−1−トリメチルシロキシシクロヘキサン、ビス(2,2−ジメチル−3−ブチノキシ)ジメチルシラン、1,3,5,7−テトラメチル−1,3,5,7−テトラビニルシクロテトラシロキサン、1,1,3,3−テトラメチル−1,3−ジビニルジシロキサンなどが挙げられ、好ましくは1−エチニルシクロヘキサノール、エチニルメチルデシルカルビノール、3−メチル−1−ブチン−3−オールである。
【0042】
(D)成分の配合量は、(A)成分および(B)成分の合計100質量部に対して好ましくは0.01〜2.0質量部であり、特に好ましくは0.01〜0.1質量部である。このような範囲であれば反応制御の効果が十分発揮される。
【0043】
[(E)成分]
(E)成分は本発明の組成物に基材への接着性を付与するための接着助剤であり、必要に応じて使用できる。本成分は1分子中に1個以上の(メタ)アクリル基、カルボニル基、エポキシ基、アルコキシシリル基、アミド基からなる官能基群のうち少なくとも1個、または複数個を含む有機化合物であり、具体的な例は以下の通りである。
なお、(E)成分は上記官能基を有する点で(B)成分((iii)成分)とは区別される。
【0044】
オルガノシロキサン骨格を含む接着助剤の具体例として、ビニルトリメトキシシラン(商品名:KBM−1003、信越化学工業(株)製)、γ−(グリシジロキシプロピル)トリメトキシシラン(商品名:KBM−403、信越化学工業(株)製)、γ−(メタクリロキシプロピル)トリメトキシシラン(商品名:KBM−503、信越化学工業(株)製)等が挙げられる。
【0045】
また、下記構造式で示されるシロキサン化合物等も挙げられる。なお、下記式中、Meはメチル基を示す。
【0047】
更に、オルガノシロキサン骨格を含まない接着助剤の一例として、アリルグリシジルエーテル、ビニルシクロヘキセンモノオキサイド、2−アリルマロン酸ジエチル、安息香酸アリル、フタル酸ジアリル、ピロメリット酸テトラアリルエステル(商品名:TRIAM805、和光純薬化学工業(株))、トリアリルイソシアヌレート等を挙げることができる。
【0048】
(E)成分は1種類のみ用いてもよいし、複数の種類を組み合わせて用いてもよい。配合量は(A)成分と(B)成分との合計100質量部に対して、好ましくは0.05〜10質量部、より好ましくは0.05〜5質量部である。
【0049】
[その他の成分]
本発明の組成物は、前記(A)〜(C)成分および必要により(D),(E)成分以外にも、本発明の目的を損なわない限り、以下に例示するその他の成分を含有していてもよい。
例えば、ヒュームドシリカ等のチクソ性制御剤;結晶性シリカ等の補強剤;酸化防止剤;光安定剤;金属酸化物、金属水酸化物等の耐熱向上剤;酸化チタン等の着色剤;アルミナ、結晶性シリカ等の熱伝導性付与充填剤;反応性官能基を有しない非反応性シリコーンオイル等の粘度調整剤;銀、金等の金属粉等の導電性付与剤;着色のための顔料、染料等が挙げられる。
【0050】
本発明の紫外線硬化型樹脂組成物を各種基材に適用し、コーティング材や接着剤として用いることができる。
基材としては、複合材料、金属部材、プラスチック部材、セラミック部材、電気用途、電子用途、光学用途等のケーシングあるいは部材の被覆、注型、接着および封止の分野で使用されるもの等が使用可能である。本発明の組成物は、プライマー処理、プラズマ処理、エキシマ光処理等の周知の前処理工程によって活性化された基材に対しても用いることができる。
【0051】
本発明の紫外線硬化型樹脂組成物の硬化に際し、白金触媒を光活性化させて硬化反応を開始させるためには、波長200〜500nm、好ましくは200〜370nmの光が使用される。組成物の硬化速度と変色防止の観点から、照射強度は30〜2,000mW/cm
2が好ましく、照射線量は150〜10,000mJ/cm
2が好ましい。照射時の温度は10〜60℃が好ましく、より好ましくは20〜40℃である。
【0052】
本発明の紫外線硬化型樹脂組成物を加熱硬化させる場合、その硬化温度は特に限定されないが、紫外線硬化型樹脂組成物に紫外線を照射した後、60〜150℃、特に60〜100℃で、10〜120分間、特に30〜60分間硬化させることが好ましい。
【実施例】
【0053】
以下、実施例および比較例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。なお、下記式中、Meはメチル基、Phはフェニル基を示す。
【0054】
[実施例1−1〜1−3、比較例1−1〜1−3]
下記(A)〜(E)成分を、表1に示す配合量(質量部)にて混合し、紫外線硬化型樹脂組成物を調製した。
【0055】
(A)成分
(A−1)上記構造式(1)におけるmが1〜5である重合体の混合物(付加反応性炭素−炭素二重結合の含有割合0.40モル/100g)
【0056】
(B)成分
(B−1)分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジフェニルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体(23℃における粘度:21mm
2/s、ケイ素原子結合水素原子の含有量:0.0063モル/g)
(B−2)前記構造式(12)におけるZ’が前記Y’で表される基であり、tが1〜11であり、qおよびrがそれぞれ独立に0〜2の整数であり、それぞれの環状シロキサン部位におけるqとrの合計が独立に2である、ビニルノルボルネンとテトラメチルシクロテトラシロキサンの付加反応生成物の混合物(23℃における粘度:2,500mm
2/s、ケイ素原子結合水素原子の含有量:0.63モル/g)
(B−3)下記構造式で表される化合物(23℃における粘度:1.8mm
2/s、ケイ素原子結合水素原子の含有量:0.0092モル/g)
【化19】
(B−4)下記構造式で表される化合物(23℃における粘度:0.5mm
2/s、ケイ素原子結合水素原子の含有量:0.010モル/g)
【化20】
【0057】
(C)成分
(C−1)白金元素の含有量が0.5質量%である、メチルシクロペンタジエニルトリメチル白金錯体のトルエン溶液
【0058】
比較成分
(C’−2)白金元素の含有量が0.5質量%である、白金1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン錯体のトルエン溶液
【0059】
(D)成分
(D−1)エチニルメチルデシルカルビノール
【0060】
(E)成分
(E−1)下記構造式で表される化合物
【化21】
【0061】
(E−2)下記構造式で表される化合物
【化22】
【0062】
[組成物のゲル化時間]
得られた各組成物に対して、波長365nmのUV−LEDランプを用い、23℃で、照射強度100mW/cm
2および線量3,000mJ/cm
2となるように紫外線を照射した。
紫外線を上記の条件で各組成物に照射後、80℃に設定したレオメーターに設置し、組成物のゲル化時間をトルクの立ち上がり時間から評価した。結果を表1に併記する。
【0063】
【表1】
【0064】
[実施例2−1〜2−3、比較例2−1〜2−3]
実施例1−1〜1−3および比較例1−1〜1−3で得られた各樹脂組成物に対して、波長365nmのUV−LEDランプを用い、23℃で、照射強度100mW/cm
2および線量3,000mJ/cm
2となるように紫外線を照射した。
紫外線を上記の条件で各組成物に照射後、80℃、1時間の条件で組成物を硬化させた。
[硬化物の外観]
得られた硬化物を23℃まで冷却した際の硬化物の外観(シワの有無)を目視にて評価した。結果を表2に示す。
【0065】
[硬度]
上記の外観評価に用いた硬化物に対し、JIS硬度計デュロメータータイプDにて硬度を測定した。結果を表2に示す。
【0066】
[せん断接着力]
紫外線を上記の条件で各組成物に照射後、厚みが80μmとなるように2枚の被着体(アルミニウム板またはポリフタルアミド(Solvay社製アモデルA−4122)板)で挟み、80℃、1時間の条件で組成物を硬化させ、得られた硬化物を23℃まで冷却し、せん断接着力を測定した。結果を表2に示す。
【0067】
【表2】
【0068】
実施例1−1〜2−3の結果に示されるように、本発明の紫外線硬化型樹脂組成物は比較的温和な硬化条件(80℃、1時間)においても短時間で高い硬度および接着性を有する硬化物を与え、硬化物の外観についても良好であった。一方、光によって活性化される白金触媒ではないものを用いた比較例1−1〜2−3では、対応する実施例1−1〜2−3と比較して硬化に時間を要し、硬度および接着性についても劣るものとなった。
【0069】
[実施例3−1、比較例3−2]
実施例1−1および比較例1−1の組成物をそれぞれ下記のLEDパッケージに充填し、23℃で、照射強度100mW/cm
2および線量3,000mJ/cm
2となるように紫外線を照射し、100℃、30分の条件で組成物を硬化させた。
【0070】
LEDパッケージ1:SMD5050(I−CHIUN PRECISION INDUSTRY社製)
LEDパッケージ2:SMD3020(I−CHIUN PRECISION INDUSTRY社製)
LEDパッケージ3:BXCD2630(Bridgelux社製)
【0071】
[耐熱衝撃性]
得られた試験片を260℃、3分間のリフロー試験条件に付した後、−40℃、30分間、および150℃、30分間の温度条件を1サイクルとする熱衝撃試験に付して、試験後の封止材のクラックおよびLED素子からの剥離の有無を判断した。結果を表3に示す。
【0072】
【表3】
【0073】
実施例3−1の結果に示されるように、実施例1−1で得られた組成物を用いて封止したLEDパッケージは、3つの試験片全てについて、リフロー試験後および熱衝撃試験後における硬化物の剥離、クラックの発生は観察されず、高温条件に曝された場合においても優れた機械特性および接着性を有していた。一方、比較例1−1で得られた組成物を用いた硬化物(比較例3−1)は、260℃、3分間のリフロー試験においてLEDパッケージとの剥離が発生した。