(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
第1の描画データに基づいて強度変調される第1ビームと、第2の描画データに基づいて強度変調される第2ビームとを、単一の回転多面鏡で同時に1次元に偏向することにより、基板上に投射される前記第1ビームと前記第2ビームの各々によるスポット光を、前記基板上の異なる位置で1次元走査して、前記基板上に前記描画データに応じたパターンを描画するパターン描画装置であって、
前記第1ビーム及び前記第2ビームの元となるレーザビームを出力するレーザ光源を含み、前記第1ビームと前記第2ビームとを、夫々の中心線が所定の間隔で互いに平行となるように設定して射出する光源装置と、
前記光源装置からの前記第1ビームと前記第2ビームとを平行な状態で入射して、前記回転多面鏡に向けて反射する為の第1反射ミラーと、前記回転多面鏡で反射された前記第1ビームと前記第2ビームの各々を入射して、前記基板上に前記第1ビームと前記第2ビームの各々を集光してスポット光にする走査光学系と、を一体的に保持する描画ユニットと、
前記基板の表面の法線と平行に設定される回動中心軸の回りに前記描画ユニットを前記光源装置に対して回転させ、前記第1ビームと前記第2ビームの各々のスポット光の1次元走査による描画ラインの傾きを調整する駆動機構と、
を備え、
前記第1反射ミラーに入射する前記第1ビームの中心線と前記第2ビームの中心線との間に、前記回動中心軸が平行に位置するように設定され、
前記第1反射ミラーで反射した前記第1ビームが前記回転多面鏡の第1の反射面に入射されるとともに、前記第1反射ミラーで反射した前記第2ビームが前記回転多面鏡の前記第1の反射面とは異なる第2の反射面に入射される、パターン描画装置。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本発明の態様に係るパターン描画装置およびパターン描画方法について、好適な実施の形態を掲げ、添付の図面を参照しながら以下、詳細に説明する。なお、本発明の態様は、これらの実施の形態に限定されるものではなく、多様な変更または改良を加えたものも含まれる。つまり、以下に記載した構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のものが含まれ、以下に記載した構成要素は適宜組み合わせることが可能である。また、本発明の要旨を逸脱しない範囲で構成要素の種々の省略、置換または変更を行うことができる。
【0008】
[第1の実施の形態]
図1は、第1の実施の形態の基板(被照射体)Pに露光処理を施す露光装置EXを含むデバイス製造システム10の概略構成を示す図である。なお、以下の説明においては、重力方向をZ方向とするXYZ直交座標系を設定し、特に断わりのない限り、図に示す矢印にしたがって、X方向、Y方向、およびZ方向を説明する。
【0009】
デバイス製造システム10は、例えば、電子デバイスとしてのフレキシブル・ディスプレイ、フィルム状のタッチパネル、液晶表示パネル用のフィルム状のカラーフィルター、或いは電子部品がハンダ付けされるフレキシブル配線シート等を製造する製造ラインが構築された製造システムである。以下、電子デバイスとしてフレキシブル・ディスプレイを前提として説明する。フレキシブル・ディスプレイとしては、例えば、有機ELディスプレイ、液晶ディスプレイ等がある。デバイス製造システム10は、可撓性のシート状(フィルム状)の基板(シート基板)Pをロール状に巻いた図示しない供給ロールから基板Pが送出され、送出された基板Pに対して各種処理を連続的に施した後、各種処理後の基板Pを図示しない回収ロールで巻き取る、いわゆる、ロール・ツー・ロール(Roll To Roll)方式の構造を有する。基板Pは、基板Pの移動方向が長手方向(長尺)となり、幅方向が短手方向(短尺)となる帯状の形状を有する。前記供給ロールから送られた基板Pは、順次、プロセス装置PR1、露光装置(パターン描画装置、ビーム走査装置)EX、および、プロセス装置PR2等で各種処理が施され、前記回収ロールで巻き取られる。
【0010】
なお、X方向は、水平面内において、プロセス装置PR1から露光装置EXを経てプロセス装置PR2に向かう方向(搬送方向)である。Y方向は、水平面内においてX方向に直交する方向であり、基板Pの幅方向である。Z方向は、X方向とY方向とに直交する方向(上方向)であり、重力が働く方向と平行である。
【0011】
基板Pは、例えば、樹脂フィルム、若しくは、ステンレス鋼等の金属または合金からなる箔(フォイル)等が用いられる。樹脂フィルムの材質としては、例えば、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリエステル樹脂、エチレンビニル共重合体樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、セルロース樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリスチレン樹脂、および酢酸ビニル樹脂のうち、少なくとも1つ以上を含んだものを用いてもよい。また、基板Pの厚みや剛性(ヤング率)は、露光装置EXの搬送路を通る際に、基板Pに座屈による折れ目や非可逆的なシワが生じないような範囲であればよい。基板Pの母材として、厚みが25μm〜200μm程度のPET(ポリエチレンテレフタレート)やPEN(ポリエチレンナフタレート)等のフィルムは、好適なシート基板の典型である。
【0012】
基板Pは、プロセス装置PR1、露光装置EX、およびプロセス装置PR2で施される各処理において熱を受ける場合があるため、熱膨張係数が顕著に大きくない材質の基板Pを選定することが好ましい。例えば、無機フィラーを樹脂フィルムに混合することによって熱膨張係数を抑えることができる。無機フィラーは、例えば、酸化チタン、酸化亜鉛、アルミナ、または酸化ケイ素等でもよい。また、基板Pは、フロート法等で製造された厚さ100μm程度の極薄ガラスの単層体であってもよいし、この極薄ガラスに上記の樹脂フィルム、箔等を貼り合わせた積層体であってもよい。
【0013】
ところで、基板Pの可撓性(flexibility)とは、基板Pに自重程度の力を加えてもせん断したり破断したりすることはなく、その基板Pを撓めることが可能な性質をいう。また、自重程度の力によって屈曲する性質も可撓性に含まれる。また、基板Pの材質、大きさ、厚さ、基板P上に成膜される層構造、温度、湿度等の環境等に応じて、可撓性の程度は変わる。いずれにしろ、本第1の実施の形態によるデバイス製造システム10内の搬送路に設けられる各種の搬送用ローラ、回転ドラム等の搬送方向転換用の部材に基板Pを正しく巻き付けた場合に、座屈して折り目がついたり、破損(破れや割れが発生)したりせずに、基板Pを滑らかに搬送できれば、可撓性の範囲といえる。
【0014】
プロセス装置PR1は、露光装置EXで露光処理される基板Pに対して前工程の処理を行う。プロセス装置PR1は、前工程の処理を行った基板Pを露光装置EXへ向けて送る。この前工程の処理により、露光装置EXへ送られる基板Pは、その表面に感光性機能層(光感応層、感光層)が形成された基板(感光基板)Pとなっている。
【0015】
この感光性機能層は、溶液として基板P上に塗布され、乾燥することによって層(膜)となる。感光性機能層の典型的なものはフォトレジストであるが、現像処理が不要な材料として、紫外線の照射を受けた部分の親撥液性が改質される感光性シランカップリング剤(SAM)、或いは紫外線の照射を受けた部分にメッキ還元基が露呈する感光性還元剤等がある。感光性機能層として感光性シランカップリング剤を用いる場合は、基板P上の紫外線で露光されたパターン部分が撥液性から親液性に改質される。そのため、親液性となった部分の上に導電性インク(銀や銅等の導電性ナノ粒子を含有するインク)や半導体材料を含有した液体等を選択塗布することで、薄膜トランジスタ(TFT)等を構成する電極、半導体、絶縁、或いは接続用の配線となるパターン層を形成することができる。感光性機能層として、感光性還元剤を用いる場合は、基板P上の紫外線で露光されたパターン部分にメッキ還元基が露呈する。そのため、露光後、基板Pを直ちにパラジウムイオン等を含むメッキ液中に一定時間浸漬することで、パラジウムによるパターン層が形成(析出)される。このようなメッキ処理はアディティブ(additive)なプロセスであるが、その他、サブトラクティブ(subtractive)なプロセスとしてのエッチング処理を前提にする場合、露光装置EXへ送られる基板Pは、母材をPETやPENとし、その表面にアルミニウム(Al)や銅(Cu)等の金属性薄膜を全面または選択的に蒸着し、さらにその上にフォトレジスト層を積層したものであってもよい。
【0016】
本第1の実施の形態においては、露光装置EXは、マスクを用いない直描方式の露光装置、いわゆるラスタースキャン方式の露光装置である。露光装置EXは、プロセス装置PR1から供給された基板Pの被照射面(感光面)に対して、ディスプレイ用の回路または配線等の所定のパターンに応じた光パターンを照射する。後で詳細に説明するが、露光装置EXは、基板Pを+X方向(副走査の方向)に搬送しながら、露光用のビームLBのスポット光SPを、基板P上(基板Pの被照射面上)で所定の走査方向(Y方向)に1次元に走査(主走査)しつつ、スポット光SPの強度をパターンデータ(描画データ)に応じて高速に変調(オン/オフ)する。これにより、基板Pの被照射面にディスプレイ用の回路または配線等の所定のパターンに応じた光パターンが描画露光される。つまり、基板Pの副走査と、スポット光SPの主走査とで、スポット光SPが基板Pの被照射面上で相対的に2次元走査されて、基板Pに所定のパターンが描画露光される。また、露光装置EXは、基板Pに対して電子デバイス用のパターン露光を繰り返し行い、基板Pは、搬送方向(+X方向)に沿って搬送されていることから、露光装置EXによってパターンが露光される露光領域Wは、基板Pの長尺方向に沿って所定の間隔をあけて複数設けられることになる(
図2参照)。この露光領域Wに電子デバイスが形成されるので、露光領域Wは、電子デバイス形成領域でもある。なお、電子デバイスは、複数のパターン層(パターンが形成された層)が重ね合わされることで構成されるので、露光装置EXによって各層に対応したパターンが露光される。
【0017】
プロセス装置PR2は、露光装置EXで露光処理された基板Pに対しての後工程の処理(例えばメッキ処理または現像・エッチング処理等)を行う。この後工程の処理により、基板P上にデバイスのパターン層が形成される。
【0018】
上述したように、電子デバイスは、複数のパターン層が重ね合わされることで構成されるので、デバイス製造システム10の少なくとも各処理を経て、1つのパターン層が生成される。そのため、電子デバイスを生成するために、
図1に示すようなデバイス製造システム10の各処理を少なくとも2回は経なければならない。そのため、基板Pが巻き取られた回収ロールを供給ロールとして別のデバイス製造システム10に装着することで、パターン層を積層することができる。そのような動作を繰り返して、電子デバイスが形成される。そのため、処理後の基板Pは、複数の電子デバイスが所定の間隔をあけて基板Pの長尺方向に沿って連なった状態となる。つまり、基板Pは、多面取り用の基板となっている。
【0019】
電子デバイスが連なった状態で形成された基板Pを回収した回収ロールは、図示しないダイシング装置に装着されてもよい。回収ロールが装着されたダイシング装置は、処理後の基板Pを電子デバイスごとに分割(ダイシング)することで、複数の枚葉となった電子デバイスにする。基板Pの寸法は、例えば、幅方向(短尺となる方向)の寸法が10cm〜2m程度であり、長さ方向(長尺となる方向)の寸法が10m以上である。なお、基板Pの寸法は、上記した寸法に限定されない。
【0020】
次に、露光装置EXについて詳しく説明する。露光装置EXは、温調チャンバーECV内に格納されている。この温調チャンバーECVは、内部を所定の温度、所定の湿度に保つことで、内部において搬送される基板Pの温度による形状変化を抑制するとともに、基板Pの吸湿性や搬送に伴って発生する静電気の帯電等を考慮した湿度に設定される。温調チャンバーECVは、パッシブまたはアクティブな防振ユニットSU1、SU2を介して製造工場の設置面Eに配置される。防振ユニットSU1、SU2は、設置面Eからの振動を低減する。この設置面Eは、工場の床面上に専用に敷かれた設置土台(ペデスタル)上の面であってもよく、床であってもよい。露光装置EXは、基板搬送機構12と、光源装置14と、露光ヘッド16と、制御装置18と、アライメント顕微鏡AMa(AMa1〜AMa4)、AMb(AMb1〜AMb4)とを少なくとも備えている。
【0021】
基板搬送機構12は、プロセス装置PR1から搬送される基板Pを、プロセス装置PR2に所定の速度で搬送する。この基板搬送機構12によって、露光装置EX内で搬送される基板Pの搬送路が規定される。基板搬送機構12は、基板Pの搬送方向の上流側(−X方向側)から順に、エッジポジションコントローラEPC、駆動ローラR1、テンション調整ローラRT1、回転ドラム(円筒ドラムステージ)DR1、テンション調整ローラRT2、回転ドラム(円筒ドラムステージ)DR2、テンション調整ローラRT3、および、駆動ローラR2を有している。
【0022】
エッジポジションコントローラEPCは、プロセス装置PR1から搬送される基板Pの幅方向(Y方向であって基板Pの短尺方向)における位置を調整する。つまり、エッジポジションコントローラEPCは、所定のテンションが掛けられた状態で搬送されている基板Pの幅方向の端部(エッジ)における位置が、目標位置に対して±十数μm〜数十μm程度の範囲(許容範囲)に収まるように、基板Pを幅方向に移動させて、基板Pの幅方向における位置を調整する。エッジポジションコントローラEPCは、所定のテンションがかけられた状態で基板Pが掛け渡されるローラと、基板Pの幅方向の端部(エッジ)の位置を検出する図示しないエッジセンサ(端部検出部)とを有する。エッジポジションコントローラEPCは、前記エッジセンサが検出した検出信号に基づいて、エッジポジションコントローラEPCの前記ローラをY方向に移動させて、基板Pの幅方向における位置を調整する。駆動ローラ(ニップローラ)R1は、エッジポジションコントローラEPCから搬送される基板Pの表裏両面を保持しながら回転し、基板Pを回転ドラムDR1へ向けて搬送する。エッジポジションコントローラEPCは、回転ドラムDR1に搬送される基板Pの長尺方向が、回転ドラムDR1の中心軸AXo1に対して直交するように、基板Pの幅方向における位置を調整する。駆動ローラR1から搬送された基板Pは、テンション調整ローラRT1に掛け渡された後、回転ドラムDR1に案内される。
【0023】
回転ドラム(第1回転ドラム)DR1は、Y方向に延びるとともに重力が働く方向と交差した方向に延びた中心軸(第1中心軸)AXo1と、中心軸AXo1から一定半径の円筒状の外周面とを有する。回転ドラムDR1は、この外周面(円周面)に倣って基板Pの一部を長尺方向に円筒面状に湾曲させて支持しつつ、中心軸AXo1を中心に回転して基板Pを+X方向に搬送する。回転ドラムDR1は、重力が働く方向側とは反対側(+Z方向側)で、感光面が形成された面とは反対側の面(裏面)側から基板Pを支持する。回転ドラムDR1は、後述する露光ヘッド16の描画ユニットU1、U2、U5、U6の各々からのビームのスポット光が投射される基板P上の領域(部分)をその円周面で支持する。回転ドラムDR1のY方向の両側には、回転ドラムDR1が中心軸AXo1の周りを回転するように環状のベアリングで支持されたシャフトSft1が設けられている。このシャフトSft1は、制御装置18によって制御される図示しない回転駆動源(例えば、モータや減速機構等)からの回転トルクが与えられることで中心軸AXo1回りに回転する。なお、便宜的に、中心軸AXo1を含み、YZ平面と平行な平面を中心面Poc1と呼ぶ。
【0024】
回転ドラムDR1から搬出された基板Pは、テンション調整ローラRT2に掛け渡された後、回転ドラムDR1より下流側(+X方向側)に設けられた回転ドラムDR2に案内される。回転ドラム(第2回転ドラム)DR2は、回転ドラムDR1と同一の構成を有する。つまり、回転ドラムDR2は、Y方向に延びるとともに重力が働く方向と交差した方向に延びた中心軸(第2中心軸)AXo2と、中心軸AXo2から一定半径の円筒状の外周面とを有する。回転ドラムDR2は、この外周面(円周面)に倣って基板Pの一部を長尺方向に円筒面状に湾曲させて支持しつつ、中心軸AXo2を中心に回転して基板Pを+X方向に搬送する。回転ドラムDR2は、重力が働く方向側とは反対側(+Z方向側)で、裏面側から基板Pを支持する。回転ドラムDR2は、後述する露光ヘッド16の描画ユニットU3、U4の各々からの描画用のビームのスポット光が投射される基板P上の領域(部分)をその円周面で支持する。回転ドラムDR2にもシャフトSft2が設けられている。このシャフトSft2は、制御装置18によって制御される図示しない回転駆動源(例えば、モータや減速機構等)からの回転トルクが与えられることで中心軸AXo2回りに回転する。回転ドラムDR1の中心軸AXo1と回転ドラムDR2の中心軸AXo2とは平行状態となっている。なお、便宜的に、中心軸AXo2を含み、YZ平面と平行な平面を中心面Poc2と呼ぶ。
【0025】
回転ドラムDR2から搬出された基板Pは、テンション調整ローラRT2に掛け渡された後、駆動ローラR2に案内される。駆動ローラ(ニップローラ)R2は、駆動ローラR1と同様に、基板Pの表裏両面を保持しながら回転し、基板Pをプロセス装置PR2へ向けて搬送する。テンション調整ローラRT1〜RT3は、−Z方向に付勢されており、回転ドラムDR1、DR2に巻き付けられて支持されている基板Pに長尺方向に所定のテンションを与えている。これにより、回転ドラムDR1、DR2にかかる基板Pに付与される長尺方向のテンションを所定の範囲内に安定化させている。なお、制御装置18は、図示しない回転駆動源(例えば、モータや減速機等)を制御することで、駆動ローラR1、R2を回転させる。
【0026】
光源装置14は、光源(パルス光源)を有し、パルス状のビーム(パルス光、レーザ)LBを描画ユニットU1〜U6の各々に射出するものである。このビームLBは、370nm以下の波長帯域にピーク波長を有する紫外線光であり、ビームLBの発光周波数をFsとする。光源装置14は、制御装置18の制御にしたがって、発光周波数FsでビームLBを発光して射出する。
【0027】
露光ヘッド16は、光源装置14からのビームLBがそれぞれ入射する複数の描画ユニットU(U1〜U6)を備えている。露光ヘッド16は、回転ドラムDR1、DR2の円周面で支持されている基板Pの一部分に、複数の描画ユニットU(U1〜U6)によってパターンを描画する。露光ヘッド16は、構成が同一の複数の描画ユニットU(U1〜U6)を有することで、いわゆるマルチビーム型の露光ヘッドとなっている。描画ユニットU1、U5、U2、U6は、回転ドラムDR1の上方に設けられ、描画ユニットU3、U4は、回転ドラムDR2の上方に設けられている。描画ユニットU1、U5は、中心面Poc1に対して基板Pの搬送方向の上流側(−X方向側)に配置され、且つ、Y方向に沿って所定の間隔だけ離して配置されている。描画ユニットU2、U6は、中心面Poc1に対して基板Pの搬送方向の下流側(+X方向側)に配置され、且つ、Y方向に沿って所定の間隔だけ離して配置されている。また、描画ユニットU3は、中心面Poc2に対して基板Pの搬送方向の上流側(−X方向側)に配置されている。描画ユニットU4は、中心面Poc2に対して基板Pの搬送方向の下流側(+X方向側)に配置されている。描画ユニットU1、U5と、描画ユニットU2、U6とは、中心面Poc1に対して対称に設けられ、描画ユニットU3と描画ユニットU4とは、中心面Poc2に対して対称に設けられている。
【0028】
各描画ユニットU(U1〜U6)は、光源装置14からの送られてくる2つのビームLBの各々を基板Pの被照射面上で収斂させて基板Pの被照射面(感光面)に投射しつつ、基板Pの被照射面上で収斂された2つのスポット光SPを所定の2つの描画ライン(走査線)SLa、SLbに沿って1次元に走査する。この描画ユニットUの構成については、後で詳しく説明するが、本第1の実施の形態では、1つの描画ユニットUには、1つの回転ポリゴンミラー(ビーム偏向器、光偏向部材)と2つのfθレンズ系(走査光学系)とが設けられ、1つの描画ユニットU(U1〜U6)は、基板P上の異なる2ヶ所の各々にスポット光SPによる走査線を形成する。そのため、光源装置14からは各描画ユニットUの各々に2つのビームLBが送られる。なお、光源装置14からのビームLBは、図示しない反射ミラーおよびビームスプリッタ等によって構成されるビーム分配系を介して複数のビームLBに分岐され、各描画ユニットU(U1〜U6)の各々に、2つのビームLBとなって入射するものとする。
【0029】
各描画ユニットU(U1〜U6)は、XZ平面において、2つのビームLBが回転ドラムDR1の中心軸AXo1、または、回転ドラムDR2の中心軸AXo2に向かって進むように、2つのビームLBを基板Pに向けて照射する。これにより、各描画ユニットU(U1〜U6)から基板P上の2つ描画ラインSLa、SLbに向かって進む2つのビームLBの光路(ビーム中心軸)は、XZ平面において、基板Pの被照射面の法線と平行となる。本第1の実施の形態では、描画ユニットU1、U5から回転ドラムDR1に向かって進むビームLBの光路(ビーム中心軸)は、中心面Poc1に対して角度が−θ1となるように設定されている。描画ユニットU2、U6から回転ドラムDR2に向かって進むビームLBの光路(ビーム中心軸)は、中心面Poc1に対して角度が+θ1となるように設定されている。また、描画ユニットU3から回転ドラムDR2に向かって進むビームLBの光路(ビーム中心軸)は、中心面Poc2に対して角度が−θ1となるように設定されている。描画ユニットU4から回転ドラムDR2に向かって進むビームLBの光路(ビーム中心軸)は、中心面Poc2に対して角度が+θ1となるように設定されている。また、各描画ユニットU(U1〜U6)は、2つの描画ラインSLa、SLbに照射するビームLBが、YZ平面と平行な面内では基板Pの被照射面に対して垂直となるように、ビームLBを基板Pに向けて照射する。すなわち、被照射面でのスポット光SPの主走査方向に関して、基板Pに投射されるビームLBはテレセントリックな状態で走査される。
【0030】
複数の描画ユニットU(U1〜U6)は、
図2に示すように所定の配置関係で配置されている。各描画ユニットU(U1〜U6)の2つの描画ラインSLa、SLbは、主走査方向、つまり、Y方向に延びており、基板Pの被照射面上で副走査方向(X方向)に関して同じ位置であって、且つ、主走査方向(Y方向)にずれて配置されている。つまり、各描画ユニットU(U1〜U6)の描画ラインSLa、SLbは、平行な状態で主走査方向(Y方向)にのみ離間して配置されている。また、描画ラインSLa、SLbの走査長(長さ)は同一に設定されているとともに、描画ラインSLaと描画ラインSLbとは、主走査方向に走査長以下の間隔で離間するように設定されている。
【0031】
複数の描画ユニットU(U1〜U6)は、複数の描画ユニットU(U1〜U6)の描画ラインSLa、SLbが、
図2に示すように、Y方向(基板Pの幅方向、主走査方向)に関して、互いに分離することなく、継ぎ合わされるように配置されている。各描画ユニットU(U1〜U6)は、描画ライン(走査線)SLa、SLbのXY面内での傾き調整のために、回動中心軸AXr回りに、例えば±1.5度の範囲内でμradの分解能で微小回動可能である。この回動中心軸AXrは、描画ライン(第1の走査線)SLaの中点と描画ライン(第2の走査線)SLbの中点とを結ぶ線分の中心点(中点)を基板Pに対して垂直に通る軸である。その軸の延長は、
図1中の回転ドラムDR1の中心軸AXo1、または回転ドラムDR2の、中心軸AXo2と交差する。なお、第1の実施の形態においては、各描画ユニットU(U1〜U6)の描画ラインSLaと描画ラインSLbとは、副走査方向に関して同じ位置で、且つ、主走査方向に互いに離間しているので、回動中心軸AXrは、描画ラインSLa、SLbとを通る直線上に配置され、描画ラインSLaと描画ラインSLbとの隙間の中心点に配置されている。
【0032】
描画ユニットU(U1〜U6)が回動中心軸AXr回りに微少量でも回動(回転)すると、ビームLBのスポット光SPが走査される描画ラインSLa、SLbも、それに応じて回動中心軸AXrを中心に回動(回転)する。これにより、描画ユニットU(U1〜U6)が、一定の角度だけ回動すると、それに応じて描画ラインSLa、SLbも回動中心軸AXrを中心にY方向(Y軸)に対して一定の角度だけ傾くことになる。この各描画ユニットU(U1〜U6)は、制御装置18の制御の下、アクチュエータを含む図示しない応答性の高い駆動機構によって、回動中心軸AXr回りに回動する。
【0033】
なお、描画ユニットU1の2つの描画ラインSLa、SLbをSL1a、SL1bで表し、同様に、描画ユニットU2〜U6の2つの描画ラインSLa、SLbを、SL2a、SL2b〜SL6a、SL6bで表す場合がある。また、描画ラインSLa、SLbを総称して単に描画ラインSLと呼ぶ場合がある。
【0034】
図2に示すように、複数の描画ユニットU(U1〜U6)は全部で露光領域Wの幅方向の全てをカバーするように、各描画ユニットU(U1〜U6)は、走査領域を分担している。これにより、各描画ユニットU(U1〜U6)は、基板Pの幅方向に分割された複数の領域毎にパターンを描画することができる。例えば、描画ラインSLの走査長(長さ)を20〜40mm程度とすると、計6個の描画ユニットUをY方向に配置することによって、描画可能なY方向の幅を約240〜480mm程度に広げている。各描画ラインSL(SL1a、SL1b〜SL6a、SL6b)の長さ(走査長)は、原則として同一とする。つまり、複数の描画ラインSL(SL1a、SL1b〜SL6a、SL6b)の各々に沿って走査されるビームLBのスポット光SPの走査距離は、原則として同一とする。なお、露光領域Wの幅を広げたい場合は、描画ラインSL(SLa、SLb)自体の長さを長くするか、Y方向に配置する描画ユニットUの数を増やすことで対応することができる。
【0035】
描画ラインSL1a、SL1b、SL2a、SL2b、SL5a、SL5b、SL6a、SL6bは、回転ドラムDR1で支持された基板Pの被照射面上に位置する。描画ラインSL1a、SL1b、SL2a、SL2b、SL5a、SL5b、SL6a、SL6bは、中心面Poc1を挟んで、回転ドラムDR1の周方向に2列に配置されている。描画ラインSL1a、SL1b、SL5a、SL5bは、中心面Poc1に対して基板Pの搬送方向の上流側(−X方向側)の基板Pの被照射面上に位置する。描画ラインSL2a、SL2b、SL6a、SL6bは、中心面Poc1に対して基板Pの搬送方向の下流側(+X方向側)の基板Pに被照射面上に位置する。
【0036】
描画ラインSL3a、SL3b、SL4a、SL4bは、回転ドラムDR2で支持された基板Pの被照射面上に位置する。描画ラインSL3a、SL3b、SL4a、SL4bは、中心面Poc2を挟んで、回転ドラムDR2の周方向に2列に配置されている。描画ラインSL3a、SL3bは、中心面Poc2に対して基板Pの搬送方向の上流側(−X方向側)の基板Pの被照射面上に位置する。描画ラインSL4a、SL4bは、中心面Poc2に対して基板Pの搬送方向の下流側(+X方向側)の基板Pの被照射面上に位置する。描画ラインSLa1、SL1b〜SL6a、SL6bは、基板Pの幅方向、つまり、回転ドラムDR1、DR2の中心軸AXo1、AXo2と略並行となっている。
【0037】
奇数番の描画ラインSL1a、SL1b、SL3a、SL3b、SL5a、SL5bは、Y方向(基板Pの幅方向)に関して、基板Pの幅方向(走査方向)に沿って所定の間隔をあけて直線上に配置されている。偶数番の描画ラインSL2a、SL2b、SL4a、SL4b、SL6a、SL6bも同様に、Y方向に関して、基板Pの幅方向に沿って所定の間隔をあけて直線上に配置されている。このとき、描画ラインSL1bは、Y方向に関して、描画ラインSL2aと描画ラインSL2bとの間に配置される。描画ラインSL3aは、Y方向に関して、描画ラインSL2bと描画ラインSL4aとの間に配置される。描画ラインSL3bは、Y方向に関して、描画ラインSL4aと描画ラインSL4bとの間に配置される。描画ラインSL5aは、Y方向に関して、描画ラインSL4bと描画ラインSL6aとの間に配置されている。描画ラインSL5bは、Y方向に関して描画ラインSL6aと描画ラインSL6bとの間に配置されている。つまり、描画ラインSLは、Y方向に関して、−Y方向側から順に、SL1a、SL2a、SL1b、SL2b、SL3a、SL4a、SL3b、SL4b、SL5a、SL6a、SL5b、SL6bの順に、描画されるパターンがY方向の端部で継ぎ合わされるように配置されている。
【0038】
奇数番の描画ラインSL1a、SL1b、SL3a、SL3b、SL5a、SL5bの各々に沿って走査されるビームLBのスポット光SPの走査方向は、1次元の方向となっており、同じ方向(+Y方向)となっている。偶数番の描画ラインSL2a、SL2b、SL4a、SL4b、SL6a、SL6bの各々に沿って走査されるビームLBのスポット光SPの走査方向は、1次元の方向となっており、同じ方向(−Y方向)となっている。この奇数番の描画ラインSL1a、SL1b、SL3a、SL3b、SL5a、SL5bに沿って走査されるビームLBのスポット光SPの走査方向(+Y方向)と、偶数番の描画ラインSL2a、SL2b、SL4a、SL4b、SL6a、SL6bに沿って走査されるビームLBのスポット光SPの走査方向(−Y方向)とは互いに逆方向となっている。これにより、描画ラインSL1b、SL3a、SL3b、SL5a、SL5bの描画開始位置(描画開始点の位置)と、描画ラインSL2a、SL2b、SL4a、SL4b、SL6aの描画開始位置とで描画されるパターンが継ぎ合わされる。また、描画ラインSL1a、SL1b、SL3a、SL3b、SL5a、SL5bの描画終了位置(描画終了点の位置)と、描画ラインSL2a、SL2b、SL4a、SL4b、SL6a、SL6bの描画終了位置とで描画されるパターンが継ぎ合わされる。なお、初期状態では、直線上に位置する奇数番の描画ラインSL1a、SL1b、SL5a、SL5bと、直線上に位置する偶数番の描画ラインSL2a、SL2b、SL6a、SL6bとは、基板Pの搬送方向(回転ドラムDR1の周方向)に沿って一定の長さ(間隔長)だけ離れて配置される。同様に、初期状態では、直線上に位置する奇数番の描画ラインSL3a、SL3bと、直線上に位置する偶数番の描画ラインSL4a、SL4bとは、基板Pの搬送方向(回転ドラムDR2の周方向)に沿って一定の長さ(間隔長)だけ離れて配置される。
【0039】
なお、描画ラインSLの幅(X方向の寸法)は、スポット光SPのサイズ(直径)φに応じた太さである。例えば、スポット光SPの実効的なサイズφが3μmの場合は、描画ラインSLの幅も3μmとなる。スポット光SPは、所定の長さ(例えば、スポット光SPの実効的なサイズφの半分)だけオーバーラップするように、描画ラインSLに沿って投射されてもよい。また、走査方向に関してお互いに隣接する描画ラインSLの端部(例えば、描画ラインSL1aの描画終了点と描画ラインSL2aの描画終了点)は、所定の長さ(例えば、スポット光SPのサイズφの半分)だけ、Y方向にオーバーラップしていてもよい。
【0040】
図3は、主走査方向に隣り合う描画ラインSLの端部同士を一致(隣接)させる場合の各描画ユニットUの描画ラインSLa、SLbの配置関係を示す図である。
図3に示すように、描画ユニットUの描画ラインSLa、SLbの走査長、および、描画ユニットUの描画ラインSLaと描画ラインSLbとのY方向の離間距離(隙間)をともにLoとする。したがって、互いに対向する描画ユニットU1、U3、U5の描画ラインSLa、SLbと描画ユニットU2、U4、U6の描画ラインSLa、SLbとを、主走査方向に隣り合う描画ラインSL同士で、その端部が主走査方向に隣接するように配置することができる。なお、描画ユニットUの回動中心軸AXrは、描画ラインSLa、SLb間の離間距離Loの中心点を通るように設定されている。
【0041】
図4は、走査方向に隣り合う描画ラインSLの端部同士をα/2(一定長)ずつ重畳させる場合の各描画ユニットUの描画ラインSLa、SLbの配置関係を示す図である。
図4に示すように、描画ラインSLa、SLbの走査長をLoとし、描画ユニットUの描画ラインSLaと描画ラインSLbとのY方向の離間距離(隙間)をLo−αとする。したがって、互いに対向する描画ユニットU1、U3、U5の描画ラインSLa、SLbと描画ユニットU2、U4、U6の描画ラインSLa、SLbとを、主走査方向に隣り合う描画ラインSL同士で、その端部が主走査方向にα/2で重畳するように配置することができる。なお、描画ユニットUの回動中心軸AXrは、描画ラインSLa、SLb間の離間距離Lo−αの中心点を通るように設定されている。
【0042】
図1に示した制御装置18は、露光装置EXの各部を制御するものである。この制御装置18は、コンピュータとプログラムが記録された記録媒体等とを含み、該コンピュータがプログラムを実行することで、本第1の実施の形態の制御装置18として機能する。また、
図1に示したアライメント顕微鏡AMa(AMa1〜AMa4)、AMb(AMb1〜AMb4)は、
図2に示す基板Pに形成されたアライメントマークMK(MK1〜MK4)を検出するためのものである。複数のアライメント顕微鏡AMa(AMa1〜AMa4)は、Y方向に沿って設けられている。同様に、複数のアライメント顕微鏡AMb(AMb1〜AMb4)も、Y方向に沿って設けられている。アライメントマークMK(MK1〜MK4)は、基板Pの被照射面上の露光領域Wに描画されるパターンと基板Pとを相対的に位置合わせする(アライメントする)ための基準マークである。アライメント顕微鏡AMa(AMa1〜AMa4)は、回転ドラムDR1の円周面で支持されている基板P上で、アライメントマークMK(MK1〜MK4)を検出する。アライメント顕微鏡AMa(AMa1〜AMa4)は、描画ユニットU1、5から基板Pの被照射面上に照射されるビームLBのスポット光SPの位置(描画ラインSL1a、SL1b、SL5a、SL5b)よりも基板Pの搬送方向の上流側(−X方向側)に設けられている。また、アライメント顕微鏡AMb(AMb1〜AMb4)は、回転ドラムDR2の円周面で支持されている基板P上で、アライメントマークMK(MK1〜MK4)を検出する。アライメント顕微鏡AMb(AMb1〜AMb4)は、描画ユニットU3から基板Pの被照射面上に照射されるビームLBのスポット光SPの位置(描画ラインSL3a、SL3b)よりも基板Pの搬送方向の上流側(−X方向側)に設けられている。
【0043】
アライメント顕微鏡AMa(AMa1〜AMa4)、AMb(AMb1〜AMb4)は、図示しないがアライメント用の照明光を基板Pに投射する光源とその反射光を撮像する撮像素子(CCD、CMOS等)とを有する。アライメント顕微鏡AMa(AMa1〜AMa4)、AMb(AMb1〜AMb4)が撮像した撮像信号は、制御装置18に送られる。アライメント顕微鏡AMa(AMa1〜AMa4)、AMb(AMb1〜AMb4)は、図示しない観察領域内に存在するアライメントマークMK(MK1〜MK4)を撮像する。各アライメント顕微鏡AMa(AMa1〜AMa4)、AMb(AMb1〜AMb4)の観察領域は、Y方向に沿って設けられており、アライメントマークMK(MK1〜MK4)のY方向の位置に応じて配置されている。したがって、アライメント顕微鏡AMa1、AMb1は、アライメントマークMK1を撮像し、同様に、アライメント顕微鏡AMa2〜AMa4、AMb2〜AMb4は、アライメントマークMK2〜MK4を撮像することができる。この観察領域の基板Pの被照射面上の大きさは、アライメントマークMK(MK1〜MK4)の大きさやアライメント精度(位置測定精度)に応じて設定されるが、100〜500μm程度角の大きさである。制御装置18は、アライメント顕微鏡AMa(AMa1〜AMa4)、AMb(AMb1〜AMb4)からの撮像信号に基づいて、アライメントマークMKの位置を検出する。なお、アライメント用の照明光は、基板Pの感光性機能層に対してほとんど感度を持たない波長域の光、例えば、波長500nm〜800nm程度の光である。また、アライメント顕微鏡AMa、AMbの撮像素子は、基板Pが移動している間にアライメントマークMKを撮像する必要があるため、基板Pの搬送速度に応じた高速なシャッター時間(電荷蓄積時間等の撮像時間)に設定される。
【0044】
次に、描画ユニットUの構成ついて説明する。各描画ユニットUは、同一の構成を有するので、本第1の実施の形態においては、描画ユニットU2を例にして説明する。以下、描画ユニットUの説明では、描画ユニットU内の各部材やビームの配置を特定するために、直交座標系XtYtZtを設定する。直交座標系XtYtZtのYt軸は直交座標系XYZのY軸と平行に設定され、直交座標系XtYtZtは、直交座標系XYZに対してY軸回りに一定角度だけ傾けたものに設定される。
【0045】
図5は、−Yt(−Y)方向側からみた描画ユニットU2の構成図、
図6は、+Zt方向側からみた描画ユニットU2の構成図である。描画ユニットU2に入射する2つのビームLBのうち、一方のビームLBをLBaで表し、他方のビームLBをLBbで表すものとする。また、ビーム(第1のビーム)LBaのスポット光SPをSPaで表し、ビーム(第2のビーム)LBbのスポット光SPをSPbで表す場合がある。スポット光(第1のスポット光)SPaは描画ラインSL2a(SLa)上を走査し、スポット光(第2のスポット光)SPbは描画ラインSL2b(SLb)上を走査する。
【0046】
なお、
図6においては、わかり易くするために、スポット光SPa、SPbを、描画ラインSL2a、SL2bより太い点で表している。また、
図5、
図6においては、回動中心軸AXrと平行する方向をZt方向とし、Zt方向と直交する平面上にあって、基板Pがプロセス装置PR1から露光装置EXを経てプロセス装置PR2に向かう方向をXt方向とし、Zt方向と直交する平面上であって、Xt方向と直交する方向をYt方向とする。つまり、
図5、
図6のXt、Yt、Ztの3次元座標は、
図1のX、Y、Zの3次元座標を、Y軸を中心にZ軸方向が回動中心軸AXrと平行となるように回転させた3次元座標である。
【0047】
描画ユニットU2は、反射ミラーM1、集光レンズCD、三角反射ミラーM2、反射ミラーM3a、M3b、シフト光学部材(シフト光学板)SRa、SRb、ビーム成形光学系BFa、BFb、反射ミラーM4、シリンドリカルレンズCY1、反射ミラーM5、ポリゴンミラーPM、反射ミラーM6a、M6b、fθレンズFTa、FTb、反射ミラーM7a、M7b、および、シリンドリカルレンズCY2a、CY2bの光学系を備える。これら光学系(反射ミラーM1、集光レンズCD等)は、1つの描画ユニットU2として一体的に高剛性の筐体内に形成されている。つまり、描画ユニットU2は、これらの光学系を一体的に保持する。2つのビームLBa、LBbがともに入射する光学系については、単に参照符号を付し、2つのビームLBa、LBbの各々が別個に入射し、且つ、2つのビームLBa、LBbに関して一対で設けられた光学系については、参照符号の後にa、bを付している。簡単にいうと、ビームLBaのみが入射する光学系については参照符号の後にaを付し、ビームLBbのみが入射する光学系については参照符号の後にbを付している。
【0048】
図5に示すように、光源装置14からの2つのビームLBa、LBbは、2つの光学素子AOMa、AOMb、および、2つのコリメートレンズCLa、CLbを透過した後、反射ミラーM8で反射されて、描画ユニットU2にZt軸と平行な状態で入射する。描画ユニットU2に入射した2つのビームLBa、LBbは、XtZt平面において、描画ユニットU2の回動中心軸AXrに沿って反射ミラーM1に入射する。
図7は、光学素子AOMa、AOMbおよびコリメートレンズCLa、CLbを透過して反射ミラーM8に入射するビームLBa、LBbの光路を+Zt方向側からみた図であり、
図8は、反射ミラーM8から描画ユニットU2の反射ミラーM1に入射するビームLBa、LBbの光路を+Xt方向側からみた示す図である。なお、
図7、
図8においても、Xt、Yt、Ztの3次元座標系で表している。
【0049】
光学素子AOMa、AOMbは、ビームLBa、LBbに対して透過性を有するものであり、音響光学変調素子(AOM:Acousto-Optic Modulator)である。光学素子AOMa、AOMbは、超音波(高周波信号)を用いることで、入射したビームLBa、LBbを高周波の周波数に応じた回折角で回折させて、ビームLBa、LBbの光路、つまり、進行方向を変える。光学素子AOMa、AOMbは、制御装置18からの駆動信号(高周波信号)のオン/オフにしたがって、入射したビームLBa、LBbを回折させた回折光(1次回折ビーム)の発生をオン/オフする。
【0050】
光学素子AOMaは、制御装置18からの駆動信号(高周波信号)がオフの状態ときは、入射したビームLBaを回折させずに透過する。したがって、駆動信号がオフの状態のときは、光学素子AOMaを透過したビームLBaは、コリメートレンズCLaおよび反射ミラーM8に入射することなく、図示しない吸収体に入射する。このことは、基板Pの被照射面上に投射されるスポット光SPaの強度が低レベル(ゼロ)に変調されていることを意味する。一方、光学素子AOMaが、制御装置18からの駆動信号(高周波信号)によりオンの状態のときは、入射したビームLBaを回折させた1次回折ビームを発生する。したがって、駆動信号がオンの状態のときは、光学素子AOMaで偏向された1次回折ビーム(説明を簡単にするため、光学素子AOMaからのビームLBaとする)は、コリメートレンズCLaを透過し後反射ミラーM8に入射する。このことは、基板Pの被照射面上に投射されるスポット光SPaの強度が高レベルに変調されることを意味する。
【0051】
同様にして、光学素子AOMbは、制御装置18からの駆動信号(高周波信号)がオフの状態のときは、入射したビームLBbを回折させずに透過するので、光学素子AOMbを透過したビームLBbは、コリメートレンズCLbおよび反射ミラーM8に入射することなく、図示しない吸収体に入射する。このことは、基板Pの被照射面上に投射されるスポット光SPbの強度が低レベル(ゼロ)に変調されていることを意味する。一方、光学素子AOMbが、制御装置18からの駆動信号(高周波信号)によりオンの状態のときは、入射したビームLBbを回折させるので、光学素子AOMbで偏向されたビームLBb(1次回折ビーム)は、コリメートレンズCLbを透過した後反射ミラーM8に入射する。このことは、基板Pの被照射面上に投射されるスポット光SPbの強度が高レベルに変調されることを意味する。制御装置18は、描画ラインSL2aによって描画されるパターンのパターンデータ(ビットマップ)に基づいて、光学素子AOMaに印加する駆動信号を高速にオン/オフするとともに、描画ラインSL2bによって描画されるパターンのパターンデータに基づいて、光学素子AOMbに印加する駆動信号を高速にオン/オフする。つまり、スポット光SPa、SPbの強度は、パターンデータに応じて高レベルと低レベルとに変調されることになる。なお、光学素子AOMa、AOMbに入射するビームLBa、LBbは、光学素子AOMa、AOMb内でビームウェストとなるように集光されることから、光学素子AOMa、AOMbで偏向されて出力されるビームLBa、LBb(1次回折ビーム)は、発散光となっており、コリメートレンズCLa、CLbは、その発散光を所定ビーム径の平行光束にする。
【0052】
反射ミラーM8は、入射したビームLBa、LBbを−Zt方向に反射して描画ユニットU2の反射ミラー(反射部材)M1に導く。反射ミラーM8で反射したビームLBa、LBbは、回動中心軸AXrに対して対称となるように描画ユニットU2の反射ミラーM1に入射する。このとき、ビームLBa、LBbは、反射ミラーM1上で交差してもよいし、交差しなくてもよい。
図6、
図8では、反射ミラーM1上の回動中心軸AXrの位置でビームLBa、LBbが交差する例を示している。つまり、ビームLBa、LBbは、回動中心軸AXrに対して一定の角度を持って反射ミラーM1に入射する。本第1の実施の形態においては、Yt(Y)方向に沿って、回動中心軸AXrに対して対称となるようにビームLBa、LBbが、反射ミラーM1に入射する。なお、ビームLBa、LBbが、回動中心軸AXrに対して対称となるように平行に反射ミラーM1に入射するように設計してもよい。
【0053】
図5、
図6の説明に戻り、反射ミラーM1は、入射したビームLBa、LBbを+Xt方向に反射する。反射ミラーM1で反射されたビームLBa、LBb(各々平行光束)は、
図6のようにXtYt面内では、互いに一定の開き角で離れていく。集光レンズCDは、反射ミラーM1からのビームLBa、LBbの各々の中心軸をXtYt面内で互いに平行にするとともに、ビームLBa、LBbの各々を所定の焦点位置に集光させるレンズである。この集光レンズCDの機能については後で後述するが、集光レンズCDの前側焦点位置が反射ミラーM1の反射面上、またはその近傍になるように設定されている。三角反射ミラーM2は、集光レンズCDを透過したビームLBaを−Yt(−Y)方向側に90度で反射して反射ミラーM3aに導くとともに、集光レンズCDを透過したビームLBbを+Yt(+Y)方向側に90度で反射して反射ミラーM3bに導く。
【0054】
反射ミラーM3aは、入射したビームLBaを+Xt方向側に90度で反射する。反射ミラーM3aで反射したビームLBaは、シフト光学部材(平行平板による第1シフト光学部材)SRaおよびビーム成形光学系BFaを透過して反射ミラーM4に入射する。反射ミラーM3bは、入射したビームLBbを+Xt方向側に90度で反射する。反射ミラーM3bで反射したビームLBbは、シフト光学部材(平行平板による第2シフト光学部材)SRbおよびビーム成形光学系BFbを透過して反射ミラーM4に入射する。三角反射ミラーM2と反射ミラーM3a、M3bとによって、集光レンズCDを透過したビームLBa、LBbの各中心軸のYt方向の距離が拡大される。シフト光学部材SRa、SRbは、ビームLBa、LBbの進行方向と直交する平面(YtZt平面)内において、ビームLBa、LBbの中心位置を調整する。シフト光学部材SRa、SRbは、YtZt平面と平行な2枚の石英の平行板を有し、一方の平行板は、Yt軸回りに傾斜可能であり、他方の平行板は、Zt軸回りに傾斜可能である。この2枚の平行板がそれぞれ、Yt軸、Zt軸回りに傾斜することで、ビームLBa、LBbの進行方向と直交するYtZt平面において、ビームLBa、LBbの中心の位置を2次元に微小量シフトする。この2枚の平行板は、制御装置18の制御の下、図示しないアクチュエータ(駆動部)によって駆動する。ビーム成形光学系BFa、BFbは、ビームLBa、LBbを成形する光学系であり、例えば、集光レンズCDによって集光されたビームLBa、LBbの径を予め決められた大きさの径に成形する。
【0055】
反射ミラーM4は、
図5に示すようにビーム成形光学系BFa、BFbからのビームLBa、LBbを−Zt方向に反射させる。反射ミラーM4で反射したビームLBa、LBbは、第1のシリンドリカルレンズCY1を透過して反射ミラーM5に入射する。反射ミラーM5は、反射ミラーM4からのビームLBa、LBbを−Xt方向に反射してポリゴンミラーPMの別々の反射面RPに入射させる。ビームLBaは、第1方向からポリゴンミラーPMの第1の反射面RPに入射し、ビームLBbは、第1方向とは異なる第2方向からポリゴンミラーPMの別の第2の反射面RPに入射する。
【0056】
ポリゴンミラーPMは、入射したビームLBa、LBbをfθレンズFTa、FTbに向けて反射する。ポリゴンミラーPMは、ビームLBa、LBbのスポット光SPa、SPbを基板Pの被照射面上で走査するために、入射したビームLBa、LBbを偏向して反射する。これにより、ポリゴンミラーPMの回転によってビームLBa、LBbはXtYt平面と平行な面内で1次元に偏向走査される。具体的には、ポリゴンミラーPMは、Zt軸方向に延びる回転軸AXpと、回転軸AXpを取り囲むように回転軸AXpの回りに配置された複数の反射面RPとを有する回転多面鏡である。第1の実施の形態においては、ポリゴンミラーPMは、Zt軸と平行な反射面RPを8つ有し、正八角形の形状を有する回転多面鏡である。回転軸AXpを中心にこのポリゴンミラーPMを所定の回転方向に回転させることで反射面RPに照射されるパルス状のビームLBa、LBbの反射角を連続的に変化させることができる。これにより、第1の反射面RPと第2の反射面RPの各々によってビームLBa、LBbの反射方向が偏向され、基板Pに被照射面上に照射されるビームLBa、LBbのスポット光SPa、SPbを主走査方向に沿って走査することができる。
【0057】
ポリゴンミラーPMの1つの反射面RPは、ビームLBa、LBbのいずれをも偏向走査するため、スポット光SPa、SPbを描画ラインSL2a、SL2bに沿って走査することができる。このため、ポリゴンミラーPMの1回転で、基板Pの被照射面上の描画ラインSL2a、SL2bに沿ったスポット光SPa、SPbの走査回数は、最大で反射面RPの数と同じ8回となる。ポリゴンミラーPMは、モータ等を含むポリゴン駆動部によって一定の速度で回転する。このポリゴン駆動部によりポリゴンミラーPMの回転は、制御装置18によって制御される。
【0058】
なお、描画ラインSL2a、SL2bの長さを、例えば、30mmとし、3μmのスポット光SPa、SPbを1.5μmずつオーバーラップさせるようにパルス発光させながらスポット光SPa、SPbを描画ラインSL2a、SL2bに沿って基板Pの被照射面上に照射する場合は、1回の走査で照射されるスポット光SPの数(パルス発光数)は、20000(30mm/1.5μm)となる。また、描画ラインSL2a、SL2bに沿ったスポット光SPa、SPbの走査時間を200μsecとすると、この間に、パルス状のスポット光SPを20000回照射しなければならないので、光源装置14の発光周波数Fsは、Fs≧20000回/200μsec=100MHzとなる。
【0059】
第1のシリンドリカルレンズCY1は、ポリゴンミラーPMによる走査方向(回転方向)と直交する非走査方向(Zt方向)に関して、入射したビームLBa、LBbをポリゴンミラーPMの反射面RP上に収斂する。この母線がYt方向と平行となっている第1のシリンドリカルレンズCY1、および、後述の第2のシリンドリカルレンズCY2a、CY2bによって、反射面RPがZt方向に対して傾いている場合(XtYt平面の法線であるZt軸に対する反射面RPの傾き)があっても、その影響を抑制することができる。例えば、基板Pの被照射面上に照射されるビームLBa、LBbのスポット光SPa、SPb(描画ラインSL2a、SL2b)の照射位置が、ポリゴンミラーPMの各反射面RP毎の僅かな傾き誤差によってXt方向にずれることを抑制することができる。
【0060】
詳しくは、ポリゴンミラーPMは、入射したビームLBaを−Yt(−Y)方向側に反射して反射ミラーM6aに導く。また、ポリゴンミラーPMは、入射したビームLBbを+Yt(+Y)方向側に反射して反射ミラーM6bに導く。反射ミラーM6aは、入射したビームLBaを−Xt方向側に反射してXt軸方向に延びる光軸AXfaを有するfθレンズFTaに導く。反射ミラーM6bは、入射したビームLBbを−Xt方向側に反射してXt軸方向に延びる光軸AXfb(光軸AXfaと平行)を有するfθレンズFTbに導く。
【0061】
fθ(f−θ)レンズFTa、FTbは、反射ミラーM6a、M6bで反射されたポリゴンミラーPMからのビームLBa、LBbを、XtYt平面において、光軸AXfa、AXfbと平行となるように反射ミラーM7a、M7bに投射するテレセントリック系のスキャンレンズである。反射ミラーM7aは、入射したビームLBaを基板Pの被照射面に向けて−Zt方向に反射し、反射ミラーM7bは、入射したビームLBbを基板Pの被照射面に向けて−Zt方向に反射する。反射ミラーM7aで反射したビームLBaは、第2のシリンドリカルレンズCY2aを透過して基板Pに被照射面に投射され、反射ミラーM7bで反射したビームLBbは、第2のシリンドリカルレンズCY2bを透過して基板Pに被照射面に投射される。このfθレンズFTaおよび母線がYt方向と平行となっている第2のシリンドリカルレンズCY2aによって、基板Pに投射されるビームLBaが基板Pの被照射面上で実効的な直径が数μm程度(例えば、3μm)の微小なスポット光SPaに収斂される。同様にして、fθレンズFTbおよび母線がYt方向と平行となっている第2のシリンドリカルレンズCY2bによって、基板Pに投射されるビームLBbが基板Pの被照射面上で実効的な直径が数μ程度(例えば、3μm)の微小なスポット光SPbに収斂される。この基板Pの被照射面上に投射されるスポット光SPa、SPbは、1つのポリゴンミラーPMの回転によって、主走査方向(Yt方向、Y方向)に延びる描画ラインSL2a、SL2bに沿って同時に1次元走査される。
【0062】
fθレンズFTa、FTbへのビームの入射角θ(光軸に対する角度)は、ポリゴンミラーPMの回転角(θ/2)に応じて変わる。fθレンズFTaは、ビームLBaの入射角に比例した基板Pの被照射面上の像高位置にビームLBaのスポット光SPaを投射する。同様にして、fθレンズFTbは、ビームLBbの入射角に比例した基板Pの被照射面上の像高位置にビームLBbのスポット光SPbを投射する。焦点距離をfとし、像高位置をyとすると、fθレンズFTa、FTbは、y=f×θ、の関係(歪曲収差)を有する。したがって、このfθレンズFTa、FTbによって、ビームLBa、LBbのスポット光SPa、SPbをYt方向(Y方向)に正確に等速で走査することが可能となる。fθレンズFTa、FTbへのビームLBa、LBbの入射角θが0度のときに、fθレンズFTa、FTbに入射したビームLBa、LBbは、光軸AXfa、AXfb上に沿って進む。
【0063】
以上の集光レンズCD、三角反射ミラーM2、反射ミラーM3a、シフト光学部材SRa、ビーム成形光学系BFa、反射ミラーM4、第1のシリンドリカルレンズCY1、および、反射ミラーM5は、ビームLBaを第1方向からポリゴンミラーPMに向けて導く第1導光光学系20として機能する。また、集光レンズCD、三角反射ミラーM2、反射ミラーM3b、シフト光学部材SRb、ビーム成形光学系BFb、反射ミラーM4、第1のシリンドリカルレンズCY1、および、反射ミラーM5は、ビームLBbを第1方向とは異なる第2方向からポリゴンミラーPMに向けて導く第2導光光学系22として機能する。なお、集光レンズCD、三角反射ミラーM2、反射ミラーM4、第1のシリンドリカルレンズCY1、および、反射ミラーM5を、第1導光光学系20と第2導光光学系22とで共通の部材としたが、これらの部材のうち少なくとも一部は、第1導光光学系20と第2導光光学系22とで別個に設けるようにしてもよい。また、反射ミラーM6a、fθレンズFTa、反射ミラーM7a、および、第2のシリンドリカルレンズCY2aは、ポリゴンミラーPMで反射されたビームLBaを集光してスポット光SPaとして描画ラインSL2a(SLa)上に投射する第1投射光学系24として機能する。同様に、反射ミラーM6b、fθレンズFTb、反射ミラーM7b、および、第2のシリンドリカルレンズCY2bは、ポリゴンミラーPMで反射されたビームLBbを集光してスポット光SPbとして描画ラインSL2b(SLb)上に投射する第2投射光学系26として機能する。この第1投射光学系24と第2投射光学系26とは、描画ラインSLa、SLbが副走査方向に関して同じ位置であって、且つ、主走査方向に離間するように配置されている。また、描画ラインSLa、SLbが主走査方向に走査長以下の間隔で離間するように第1投射光学系24と第2投射光学系26とが配置されている。
【0064】
本第1の実施の形態の場合、反射ミラーM1上の回動中心軸AXrが通る位置にビームLBa、LBbを入射させた場合であっても、ビームLBa、LBbは、回動中心軸AXrと平行に反射ミラーM1に入射するのでなく、
図8で示したように回動中心軸AXrに対して一定の傾きを持って反射ミラーM1上(またはその近傍)で交差するように入射する。したがって、描画ユニットU2全体が回動中心軸AXr回りに回動すると、ビームLBa、LBbの反射ミラーM1に対する入射角度が相対的に変化する。これによって、反射ミラーM1で反射されたビームLBa、LBbの描画ユニットU2内における反射方向が、描画ユニットU2の回動中心軸AXr回りの回動に応じて2次元的に変化する。
【0065】
図9、
図10は、回動中心軸AXr回りに描画ユニットU2が回動してない初期位置状態と、描画ユニットU2が初期位置からΔθzだけ回動した状態とにおける、ビームLBaの描画ユニットU2内の反射方向の変化(ビーム進路の変化)を誇張して示す図である。
図9は、反射ミラー(反射部材)M1と集光レンズCDとの配置関係をXtZt面内でみたものであり、
図10は、反射ミラーM1と集光レンズCDとの配置関係をXtYt面内でみたものである。なお、回動中心軸AXr回りに描画ユニットU2が回動したときにビームLBbの描画ユニットU2内の反射方向が変化する原理は、ビームLBaのときと同様なのでビームLBaについてのみ説明する。ここで、集光レンズCDの光軸AXcは、反射ミラーM1の反射面(XtYt面に対して45°に設定)で回動中心軸AXrと交差するように設定され、集光レンズCDの前側焦点距離faの位置に反射ミラーM1の反射面が設定される。さらにビームLBa、LBbは、集光レンズCDの後側焦点距離fbの位置の面Pcd(後側焦点面)において、ビームウェスト(最小径)となるように収斂された後に発散する。
図9、
図10において、実線で示しているビームLBa−1は、描画ユニットU2全体が回転していない初期位置状態、つまり、描画ラインSL2aがYt(Y)方向と平行な状態のときのビームLBaを示している。二点鎖線で示しているビームLBa−2は、描画ユニットU2全体が回動中心軸AXr回りにΔθzだけ回動した状態のときのビームLBaを示している。
【0066】
描画ユニットU2が、回動中心軸AXr回りに回動すると、反射ミラーM1の反射面に対するビームLBa(LBb)の相対的な入射角度は変化する。
図10に示すように、反射ミラーM1の直前の反射ミラーM8の反射面上に投射されるビームLBaをLBa(M8)とすると、
図8のビーム配向状態から明らかなように、反射ミラーM1上に投射されるビームLBaとビームLBa(M8)のXtYt面内での各位置は、初期位置状態ではYt軸と平行な方向に離間している。描画ユニットU2全体が初期位置状態から角度Δθzだけ回転(傾斜)した場合、反射ミラーM1から見ると、反射ミラーM8上のビームLBa(M8)の位置が角度Δθzに対応して相対的にXt方向にシフト(実際は回動中心軸AXrの回りに回転)したことになる。
【0067】
よって、初期位置状態のときに反射ミラーM1で反射したビームLBa−1の光路(中心線)は、描画ユニットU2全体が角度Δθzだけ回転した後は、ビームLBa−2となってXtYt面内で傾く。なお、
図10において、初期位置状態のときのビームLBa−1の中心線と集光レンズCDの光軸AXcとのXtYt面内での交差角は、
図8に示したビームLBaの中心線と回動中心軸AXrとのYtZt面内での交差角と一致している。したがって、初期位置状態でのビームLBa−1の後側焦点面Pcd内での収斂位置BW1は、描画ユニットU2全体の角度Δθzの回転後に、後側焦点面Pcd内でビームLBa−2の収斂位置BW2としてYt方向にΔYhだけ位置ずれ(平行シフト)する。その位置ずれ量ΔYhは、角度Δθzとの間で、ΔYh=fy(Δθz)の幾何学的な関係式で一義的に求まる。なお、集光レンズCDから後側焦点面Pcdに向かうビームLBa−1とビームLBa−2の各中心線は、いずれも光軸AXcと平行になる。
【0068】
一方、
図9で誇張して示すように、描画ユニットU2全体を初期位置状態から角度Δθzだけ回転させた後のビームLBa−2の配向状態をXtZt面内で見てみると、反射ミラーM1に入射するビームLBaの中心線が回動中心軸AXrに対してYt方向に傾いていることから、角度Δθzの回転後の反射ミラーM1からビームLBa−2は、初期位置状態のビームLBa−1(光軸AXcと平行)に対してZt軸方向に傾いて進んで集光レンズCDに入射する。そのため、初期位置状態でのビームLBa−1の後側焦点面Pcd内での収斂位置BW1は、描画ユニットU2全体の角度Δθzの回転後に、後側焦点面Pcd内でビームLBa−2の収斂位置BW2としてZt方向にΔZhだけ位置ずれ(平行シフト)する。その位置ずれ量ΔZhは、角度Δθzとの間で、ΔZh=fz(Δθz)の幾何学的な関係式で一義的に求まる。なお、本第1の実施の形態の構成では、Zt軸方向の位置ずれ量ΔZhの方がYt軸方向の位置ずれ量ΔYhよりも大きくなる。以上の作用は、ビームLBbにおいても同様であり、描画ユニットU2全体を角度Δθzだけ回転させた後に集光レンズCDによって収斂される後側焦点面Pcd内でのビームLBb−2の位置は、初期位置状態のときのビームLBb−1の後側焦点面Pcd内での位置に対して、Yt方向とZt方向に位置ずれする。
【0069】
以上のように、本第1の実施の形態では、前側焦点距離faの位置に反射ミラーM1の反射面がくるような集光レンズCDを備えることによって、集光レンズCDから射出するビームLBa−2(LBb−2)の中心線とビームLBa−1(LBb−1)の中心線とを常に平行にすることができる。したがって、集光レンズCDの後に配置されたシフト光学部材SRa、SRbの傾き調整によって、描画ユニットU2全体が角度Δθzだけ回転した後に生じるビームLBa、LBbの位置ずれ量ΔYh、ΔZhがゼロになるように補正する。これにより、2つのビームLBa、LBbを、初期位置状態のときの光路に沿って以降の光学系に正しく通すことができる。シフト光学部材SRa、SRbの傾き調整は、幾何学的な関係式、ΔYh=fy(Δθz)、ΔZh=fz(Δθz)に基づいて予め作成された角度Δθzと傾き調整量との関係テーブル等を使うことで、高速に実行することができる。これにより、描画ユニットU2全体が回動した場合であっても、ポリゴンミラーPMの反射面RPの適切な位置にビームLBa、LBbを入射させることができる。
【0070】
なお、反射ミラーM8からのビームLBa、LBbを回動中心軸AXrと同軸上に反射ミラーM1に入射させることができれば、描画ユニットUの回動中心軸AXr回りの回動によって、ビームLBa、LBbの反射ミラーM1に対する入射角度は変化しない。そのため、描画ユニットU内において、反射ミラーM1で反射されるビームLBa、LBbの反射方向が描画ユニットUの回動によって変化することはない。反射ミラーM1に入射する2つのビームLBa、LBbを同軸にしつつ、反射ミラーM1以降の描画ユニットU2内では2つのビームLBa、LBbを空間的に分離する1つの方法は、反射ミラーM1の後に偏光ビームスプリッタ等を配置し、偏光状態が互いに直交したビームLBa、LBbを同軸合成して反射ミラーM1に入射させ、偏光ビームスプリッタ等で偏光分離する系を組むことである。
【0071】
図9、
図10においては、回動中心軸AXrに対して一定の傾きをもち、且つ、回動中心軸AXrに対して対称となるようなビームLBa、LBb(平行光束)を反射ミラーM1の同じ位置に入射させた場合を例にして説明したが、回動中心軸AXrに関してYt方向に対称であって、回動中心軸AXrと互いに平行に配向される2つのビームLBa、LBb(平行光束)を反射ミラーM1に入射させる場合について説明する。
図11Aは、描画ユニットU2全体を角度(所定の角度)Δθzだけ回動中心軸AXrの回りに回動させたときに、反射ミラー(反射部材)M1に入射したビームLBa、LBbの反射方向が変化する様子を+Zt方向側から誇張して示す図であり、
図11Bは、描画ユニットU2全体を角度Δθzだけ回動させたときの反射ミラーM1でのビームLBa、LBbの位置変化をビームLBa、LBbの進行方向側(+Xt方向側)からみた図である。
【0072】
なお、
図11Aにおいて、直交座標系XtYtZtは、描画ユニットU2に対して設定されたものであるので、描画ユニットU2全体が角度Δθzだけ回動した後の直交座標系XtYtZtは、破線で示すようにZt軸回りに角度Δθzだけ傾いたものとなる。したがって、描画ユニットU2が回動していない初期位置状態のときは、描画ラインSL2に沿ったスポット光SPの主走査方向(Yt方向)はY方向と平行しているが、描画ユニットU2全体が角度Δθzだけ回動した場合は、回動後の描画ユニットU2の描画ラインSL2に沿ったスポット光SPの主走査方向(Yt方向)は、Y方向に対して傾くことになる。また、
図11A、
図11Bのように、2つのビームLBa、LBbのYt方向の中間位置でXt方向に延びるように設定され、回動中心軸AXrと直交する線を中心軸AXtとする。この中心軸AXtは、先の
図9、
図10における集光レンズCDの光軸AXcに相当するものである。さらに、
図11A、
図11Bのように反射ミラーM1で反射した2つのビームLBa、LBbが中心軸AXtと平行に進むようにした場合、先の
図9、
図10で説明した集光レンズCDは、小さな径のものに変えて2つのビームLBa、LBbの各々の光路中に個別に設けられる。
【0073】
図11Aにおいて、実線で示している反射ミラーM1は、描画ユニットU2が回動していない初期位置状態、つまり、描画ラインSL2a、SL2bがY方向と平行な状態のときの反射ミラーM1を示している。また、実線で示しているビームLBa−1、LBb−1は、初期位置状態のときの反射ミラーM1への入射位置、および、その反射ミラーM1でXt軸方向に反射したビームLBa、LBbを示している。また、二点鎖線で示している反射ミラーM1’は、描画ユニットU2が角度Δθzだけ回動した状態のときの反射ミラーM1の配置を誇張して示している。さらに、二点鎖線で示しているビームLBa−2、LBb−2は、描画ユニットU2が角度Δθzだけ回動した状態のときの反射ミラーM1’で反射したビームLBa、LBbを示している。
【0074】
描画ユニットU2が回動すると、XtYt平面においては、反射ミラーM1’で反射するビームLBa−2、LBb−2の反射方向も描画ユニットU2の回動に応じて回転する。さらに、描画ユニットU2の回動によって、ビームLBa、LBbが反射ミラーM1に入射する相対的な位置(特にZt方向の位置)が変化するため、中心軸AXtと垂直な平面Pv(YtZt面と平行)において、反射ミラーM1’で反射したビームLBa−2、LBb−2の各中心線は、
図11Bに示すように、中心軸AXtと平行ではあるが、中心軸AXtを中心に回るように位置変化する。
【0075】
図11Bに示すように、描画ユニットU2が初期位置状態のときは、反射ミラーM1で反射するビームLBa−1、LBb−1は、中心軸AXtから±Yt(Y)方向に一定距離だけ離れて平行に位置する。しかしながら、描画ユニットU2が角度Δθzだけ回動すると、それに応じて、中心軸AXtを中心に円弧を描くように、反射ミラーM1で反射したビームLBa−2は−Zt方向および+Yt方向に移動し、反射ミラーM1で反射したビームLBb−2は、+Zt方向および−Yt方向に移動する。そのため、反射ミラーM1以降の各光学部材を通る2つのビームLBa、LBbの各光路が、初期位置状態のときの光路と異なってしまい、ポリゴンミラーPMの反射面RPの適切な位置にビームLBa、LBbを入射させることができなくなる。
【0076】
しかしながら、本第1の実施の形態においては、反射ミラーM1以降にシフト光学部材SRa、SRbが設けられているので、ビームLBa、LBbの各々の中心線を、平面Pv内において、Yt方向とZt方向とに2次元的に調整することができる。したがって、描画ユニットU2全体が回動した場合であっても、描画ユニットU2内のシフト光学部材SRa、SRb以降においては、ビームLBa、LBbの各々の光路を、描画ユニットUが回動していない初期位置状態のときの正しい光路に補正(調整)することができる。これにより、ポリゴンミラーPMの反射面RPの適切な位置にビームLBa、LBbを入射させることができる。
【0077】
なお、三角反射ミラーM2と反射ミラーM3a、M3bとによって、反射ミラーM1で反射したビームLBa、LBbの中心線のXtYt面内におけるYt方向の間隔を広げているので、描画ユニットU2の反射ミラーM1に入射する2つのビームLBa、LBbの各中心線の間隔を短くすることができ、描画ユニットU2(反射ミラーM1)に入射するビームLBa、LBbを回動中心軸AXrに近づけることができる。その結果、描画ユニットUbが回動した場合であっても、その回動に伴うビームLBa、LBbの各中心線の平面Pv内での位置変化量を小さく抑えることができる。
【0078】
ところで、制御装置18は、アライメント顕微鏡AMa(AMa1〜AMa4)、AMb(AMb1〜AMb4)を用いて検出したアライメントマークMK(MK1〜MK4)の位置に基づいて、露光領域Wの傾斜(傾き)や歪み(変形)を検出することができる。この露光領域Wの傾斜(傾き)や歪みは、例えば、回転ドラムDR1、DR2に巻き付けられて搬送されている基板Pの長尺方向が中心軸AXo1、AXo2に対して傾斜し、または歪んでいることによって、露光領域Wが傾斜し若しくは歪む場合がある。また、回転ドラムDR1、DR2に巻き付けられて搬送されている基板Pが傾斜していない若しくは歪んでいない場合であっても、下層のパターン層の形成時に、基板Pが傾斜して(傾いて)若しくは歪んで搬送されたことによって露光領域W自体が歪むことがある。その他、前工程で基板Pに加えられた熱的な影響によって基板P自体が線形または非線形に変形していることもある。
【0079】
そのため、制御装置18は、アライメント顕微鏡AMa(AMa1〜AMb4)を用いて検出した露光領域Wの全体または一部分の傾斜(傾き)や歪みに応じて描画ユニットU1、U2、U5、U6を回動中心軸AXr回りに回動させる。また、制御装置18は、アライメント顕微鏡AMb(AMb1〜AMb4)を用いて検出した露光領域Wの全体または一部分の傾斜(傾き)や歪みに応じて描画ユニットU3、U4を回動中心軸AXr回りに回動させる。この際、制御装置18は、描画ユニットU(U1〜U6)の回動角に応じて、シフト光学部材SRa、SRbも駆動させる。
【0080】
具体的には、例えば、回転ドラムDR1、DR2に巻き付けられて搬送されている基板Pが傾斜している(傾いている)若しくは歪んでいるため、その傾斜(傾き)、歪みに応じて描画する所定のパターンも傾斜させ若しくは歪ませる必要が生じる。また、別の例として、下層のパターンの上に新たに所定のパターンを重ね合わせて描画する際に、下層のパターンの全体または一部の傾き若しくは歪みに応じて、描画する所定のパターンも傾斜させ若しくは歪ませる必要が生じる。したがって、描画する所定のパターンを傾斜若しくは歪ませるために、制御装置18は、描画ユニットU(U1〜U6)を個別に回動させて、描画ラインSLa、SLbをY方向に対して傾斜させる。
【0081】
このように、第1の実施の形態においては、1つのポリゴンミラーPMを用いて、ビームLBa、LBbのスポット光SPa、SPbを描画ラインSLa、SLbに沿って走査する描画ユニットUであって、描画ラインSLa、SLbが、基板P上で副走査の方向に関して同じ位置であって、且つ、主走査の方向に離間して位置するように、第1投射光学系24と第2投射光学系26とを配置した。さらに、2つの描画ラインSLa、SLbの主走査方向の間の位置、好ましくは、描画ラインSLa、SLbの各々の主走査方向に関する中点位置を2等分する位置に、描画ユニットUの回動中心軸を設定する。
【0082】
これにより、描画ユニットUを回動させても、描画ユニットUによってビームLBa、LBbのスポット光SPa、SPbが走査される描画ラインSLa、SLbの基板P上の位置ずれが大きくなることを抑制でき、描画ラインSLa、SLbの傾きを簡単に調整することが可能となる。逆に、主走査方向に関して同じ位置で、副走査方向に関して互いに離間するように走査線を複数設けた前記特許文献1では、レーザ走査装置を回動させて複数の走査線の傾きを調整した場合は、レーザ走査装置の回動中心位置を中心として円弧を描くように走査線が移動してしまう。そのため、回動中心位置から遠い走査線程、レーザ走査装置の回動による走査線の被照射体上の位置ずれが大きくなる。すなわち、本第1の実施の形態では、副走査方向に関して同じ位置にし、主走査方向に離間するように描画ラインSLa、SLbを設定したので、描画ユニットUの回動による描画ラインSLa、SLbの基板P上の位置ずれが不必要に大きくならないようにすることができる。また、描画ラインSLの走査長を短くすることができるので、高詳細なパターン描画に必要な走査線の配置精度や光学性能を安定に維持することができる。
【0083】
描画ラインSLa、SLbの各走査長が同じに設定されるとともに、描画ラインSLa、SLbが主走査の方向に走査長以下の間隔で分離して設定されるように、第1投射光学系24と第2投射光学系26とを配置した。これにより、複数の描画ユニットUによって、各描画ユニットUの描画ラインSLa、SLbを主走査方向に継ぎ合わせることが可能となるとともに、各描画ユニットUの描画ラインSLa、SLbの基板P上の位置ずれが大きくなることを抑制でき、且つ、描画ラインSLa、SLbの傾きを簡単に調整することが可能となる。
【0084】
描画ユニットUの回動中心軸AXrは、描画ユニットUの描画ラインSLa、SLbの各々の中点を結ぶ線分の中心点を基板Pに対して垂直に通るようにした。これにより、描画ユニットUの回動に伴う描画ラインSLa、SLbの位置ずれを最小限にしつつ、描画ラインSLa、SLbの傾きを簡単に調整することができる。
【0085】
光源装置14からのビームLBa、LBbは、回動中心軸AXrに対して対称となるように描画ユニットUに入射するので、描画ユニットUが回動中心軸AXr回りに回動した場合であっても、描画ユニットU内を通るビームLBa、LBbの各中心線の位置のずれが大きくなることを抑えることができる。
【0086】
描画ユニットUは、入射したビームLBa、LBbを反射して第1導光光学系20および第2導光光学系22に導く反射ミラーM1を、回動中心軸AXrが通る位置に備える。これにより、描画ユニットUが回動した場合であっても、光源装置14からのビームLBa、LBbは描画ユニットU内で最初に反射ミラーM1に入射するので、描画ラインSLa、SLb上にビームLBa、LBbのスポット光SPa、SPbを投射することができる。
【0087】
第1導光光学系20は、反射ミラーM1から反射されたビームLBaの位置を、ビームLBaの進行方向と交差する平面上でシフトするシフト光学部材SRaを備え、第2導光光学系22は、反射ミラーM1から反射されたビームLBbの位置を、ビームLBbの進行方向と交差する平面上でシフトするシフト光学部材SRbを備える。これにより、描画ユニットUが回動した場合であっても、ビームLBa、LBbを描画ユニットU内の適切な光路を通してポリゴンミラーPMに入射させることができる。したがって、描画ユニットUの回動によって、スポット光SPa、SPbが基板Pの被照射面に照射されなかったり、傾き調整後の描画ラインSLa、SLbから外れた位置にスポット光SPa、SPbが投射されたりといった問題が発生することを抑制することができる。
【0088】
複数の描画ユニットUは、各々の描画ラインSLa、SLbが主走査方向(基板Pの幅方向)に沿って継ぎ合わさる(繋ぎ合わさる)ように配置されている。これにより、基板Pの幅方向における描画可能な範囲を広げることができる。
【0089】
複数の描画ユニットUのうち、所定数の描画ユニットUの描画ラインSLa、SLbが回転ドラムDR1の外周面に支持された基板P上に位置し、残りの描画ユニットの描画ラインSLa、SLbが回転ドラムDR2の外周面に支持された基板P上に位置するように、複数の描画ユニットUを配置した。これにより、1つの回転ドラムDRに対して全ての描画ユニットUを配置する必要がなくなり、描画ユニットUの配置の自由度が向上する。なお、3つ以上の回転ドラムDRを設け、3つ以上の回転ドラムDRの各々に対して描画ユニットUを1つ以上配置してもよい。
【0090】
基板Pの被照射面上に描画すべき所定のパターンを傾斜させるために描画ラインSLa、SLb(描画ユニット)を回動(傾斜)させる。これにより、基板Pの搬送状態や基板Pの露光領域Wの形状に応じた描画する所定のパターンの形状を変化させることができる。また、基板Pの被照射面上に予め形成された下層のパターンの上に新たに所定のパターンを重ね合わせて描画する際に、下層のパターンの全体または一部の傾き、或いは非線形な変形の計測結果に基づいて、描画ラインSLa、SLbを回動(傾斜)させることができる。これにより、下層に形成されたパターンに対する重ね合わせ精度が向上する。
【0091】
なお、各描画ユニットU(U1〜U6)の描画ラインSLa、SLbを、副走査方向に関して同じ位置に配置したが、副走査方向に関して異なる位置に配置してもよい。要は、描画ラインSLa、SLbが主走査方向に互いに離間していればよい。この場合であっても、回動中心軸AXrは、描画ラインSLaの中点と描画ラインSLbの中点との間に設定される点、或いは描画ラインSLaと描画ラインSLbの各中点を結ぶ線分上に設定される中心点を、基板Pの被照射面に対して垂直に通るので、描画ユニットUの回動に伴う描画ラインSLa、SLbの位置ずれを小さくすることができる。
【0092】
さらに、本第1の実施の形態では、2本の描画ラインSLa、SLbの各々に沿ったスポット光SPa、SPbの主走査を、1つのポリゴンミラーPMで行うため、
図2に示すように、Y方向の幅が広い基板P上の露光領域Wに対応して12本の描画ラインSL1a〜SL6a、SL1b〜SL6bを設定する場合でも、ポリゴンミラーPMの数は半分の6個で済む。そのため、ポリゴンミラーPMの高速回転(例えば2万rpm以上)に伴って発生する振動や騒音(風切音)も抑えられる。
【0093】
[第1の実施の形態の変形例]
上記第1の実施の形態は、以下のような変形例も可能である。
【0094】
(変形例1)
図12は、上記第1の実施の形態の変形例1におけるポリゴンミラーPMによるビーム走査系を+Zt方向側からみたときの図であり、
図13は、
図12のビーム走査系を+Xt方向側からみたときの図である。なお、上記第1の実施の形態と同様の構成については同一の符号を付してその説明を省略し、上記第1の実施の形態と異なる部分だけを説明する。本変形例1のポリゴンミラーPMも、
図12のように8つの反射面RPa〜RPhを有する正八角形であり、回転軸AXpを挟んで対称的に位置する2つの反射面同士(例えば反射面RPaと反射面RPe、反射面RPcと反射面RPg等)は互いに平行になっている。
【0095】
図13に示すように、反射ミラーM4aは、ビーム成形光学系BFaを透過して+Xt方向に進むビームLBaを、−Zt方向に反射する。反射ミラーM4aによって−Zt方向に反射されたビームLBaは、Xt軸と平行に母線が設定される第1のシリンドリカルレンズCY1aを通過した後、反射ミラーM5aに入射する。反射ミラーM5aは、入射したビームLBaを+Yt方向に反射してポリゴンミラーPMの第1の反射面RPcに導く。ポリゴンミラーPMは、
図12に示すように、入射したビームLBaを反射ミラーM5a側(−Yt方向側)に反射して反射ミラーM6aに導く。反射ミラーM6aは、上記第1の実施の形態で説明したように、入射したビームLBaを−Xt方向に反射してfθレンズFTaに導く。同様に、反射ミラーM4bは、ビーム成形光学系BFbを透過して+X方向に進むビームLBbを、−Zt方向に反射する。反射ミラーM4bによって−Zt方向に反射されたビームLBbは、Xt軸と平行に母線が設定される第1のシリンドリカルレンズCY1bを通過した後、反射ミラーM5bに入射する。反射ミラーM5bは、入射したビームLBbを−Yt方向に反射してポリゴンミラーPMの第2の反射面RPgに導く。ポリゴンミラーPMは、入射したビームLBbを反射ミラーM5b側(+Yt方向側)に反射して反射ミラーM6bに導く。反射ミラーM6bは、上記第1の実施の形態で説明したように、入射したビームLBbを−Xt方向に反射してfθレンズFTbに導く。反射ミラーM6a、M6bは、Zt方向に関して同じ位置に配置されている。そして、反射ミラーM5aは、反射ミラーM6aより−Zt方向側に配置されており、反射ミラーM5bは、反射ミラーM6bより+Zt方向側に配置されている。また、反射ミラーM5a、5bと、反射ミラーM6a、6bとは、Xt方向に関して略同じ位置に設けられている。つまり、反射ミラーM5a、5b、反射ミラーM6a、6bとは、Yt方向に沿って設けられている。
【0096】
この反射ミラーM4a、M4bは、上記第1の実施の形態の反射ミラーM4に代えて設けられたものであり、反射ミラーM4と同等の機能を有する。また、第1のシリンドリカルレンズCY1a、CY1bは、上記第1の実施の形態の第1のシリンドリカルレンズCY1に代えて設けられたものであり、第1のシリンドリカルレンズCY1と同等の機能を有する。つまり、シリンドリカルレンズCY1a、CY1bは、ポリゴンミラーPMによる走査方向(回転方向)と直交する非走査方向(Zt方向)に関して、入射したビームLBa、LBbをポリゴンミラーPMの反射面RP上に収斂する。同様に、反射ミラーM5a、M5bは、上記第1の実施の形態の反射ミラーM5に代えて設けられたものであり、反射ミラーM5と同等の機能を有する。このように、上記第1の実施の形態の反射ミラーM4、第1のシリンドリカルレンズCY1、および、反射ミラーM5を、第1導光光学系20と第2導光光学系22の各々で別個に設けたものが、反射ミラーM4a、M4b、第1のシリンドリカルレンズCY1a、CY1b、および、反射ミラーM5a、M5bとなる。
【0097】
なお、反射ミラーM4a、M4bに入射するビームLBa、LBbのXtYt面内におけるYt方向の距離は、
図6中に示した三角反射ミラーM2と反射ミラーM3a、M3bとによって、ポリゴンミラーPMのYt方向の寸法(直径)よりも大きくなるように拡大されている。
【0098】
本変形例1では、
図13に示すようにポリゴンミラーPMの回転軸AXpが、Zt軸と平行な状態からYt方向に一定角度θy(45°未満)だけ傾斜するように、ポリゴンミラーPM全体を傾けて配置する。そのため、ポリゴンミラーPMの各反射面RPのうち、回転中に反射ミラーM6a、M6bの各々と対面するように位置した反射面RPc、RPgは、Zt軸に対してYt方向に一定角度θyだけ傾斜することになる。
図12、
図13は、そのようなポリゴンミラーPMの反射面RPcと、回転軸AXpを挟んで反射面RPcと対向した反射面RPgとが、ともにXt軸と平行になった瞬間の状態を示す。このときに回転軸AXpと直交するXt方向からみてポリゴンミラーPMの反射面RPc、RPgに入射するビームLBa、LBbは、各反射面RPc、RPgに対して斜めに入射角θyで入射するので、ポリゴンミラーPMによるビームLBa、LBbの反射位置をZt方向に関して同一の高さ位置にすることができる。すなわち、反射ミラーM6a、M6bの各々のZt方向の位置を同じにすることができる。さらに、ポリゴンミラーPMで反射して反射ミラーM6a、M6bに向かうビームLBa、LBbの各中心線(進行方向)をXtYt面と平行に設定できる。これにより、第1投射光学系24および第2投射光学系26のZt方向における位置を同じ位置にすることができ、基板Pの被照射面上における描画ラインSLa、SLbを直線上に配置しやすくなる。
【0099】
なお、
図13のように、ポリゴンミラーPMを角度θyだけ傾けて、ビームLBa、LBbの各々をポリゴンミラーPMの互いに平行な2つの反射面RPc、RPgのそれぞれにYt方向から投射する構成とし、反射面RPc上のビームLBaの投射位置と反射面RPg上のビームLBbの投射位置とのZt方向の高さを揃える場合、傾き角度θyを大きくすると、反射面RPa〜RPhの回転軸AXp方向の高さ寸法も大きくする必要がある。本変形例1の場合、ポリゴンミラーPMの傾き角度θyを大きくすると、反射ミラーM5a、M5b、M6a、M6b等の配置が容易になる反面、ポリゴンミラーPMの反射面RPa〜RPhの回転軸AXp方向の寸法が大きくなり、ポリゴンミラーPMの質量が増大する。したがって、回転の高速化のためにポリゴンミラーPMの質量を小さくすることを優先する場合には、Zt方向に関して、反射面RPc上のビームLBaの投射位置と反射面RPg上のビームLBbの投射位置とを異ならせてもよい。
【0100】
また、
図13に示すように、回転軸AXpと直交するXt方向からみてポリゴンミラーPMの描画に寄与する反射面RPc、RPgに入射するビームLBa、LBbを反射面RPc、RPgに対してYtZt面内で斜めに傾けて入射させることで、ビームLBa、LBbの入射方向と反射方向とを、回転軸AXp方向またはZt方向に異ならせることができる。これにより、回転軸AXp方向、若しくは、Zt方向からポリゴンミラーPMをみた場合(
図12の状態)、描画に寄与する反射面RPc、RPgに各ビームLBa、LBbを略直交するように入射させることができる。すなわち、XtYt面内でみた場合、反射ミラーM5a、M5bで反射してポリゴンミラーPMの反射面RPc、RPgに向かうビームLBa、LBbの各中心線AXsの延長が、いずれもポリゴンミラーPMの回転軸AXpを通るように設定することができる。
【0101】
このように構成することにより、XtYt面内でみたとき、ポリゴンミラーPMの描画に寄与する反射面RPc、RPgの各々で反射したビームLBa、LBbは、中心線AXsを中心として一定の角度範囲θsで偏向走査された状態で、第1投射光学系24(具体的には、fθレンズFTa)および第2投射光学系26(具体的には、fθレンズFTb)に導かれる。したがって、回転軸AXp方向またはZt方向からみた場合に、描画ラインSLa、SLbに沿ったスポット光SPa、SPbの1回の走査のために、1つの反射面RP(RPc、RPg)に連続的に入射するパルス状のビームLBa、LBbの実効的な反射角範囲(θs)を、中心線AXsを中心とした均等な角度範囲(±θs/2)に振り分けることができる。これにより、ポリゴンミラーPMで走査されたビームLBa、LBbやスポット光SPa、SPbの光学性能(収差特性、フォーカス特性、スポット品質等)や等速性が向上し、走査精度が向上する。
【0102】
(変形例2)
図14は、上記第1の実施の形態の変形例2におけるポリゴンミラーPMaによるビーム走査系を+Zt方向側からみたときの図であり、
図15は、
図14のビーム走査系を+Xt方向側からみたときの図である。なお、上記第1の実施の形態の変形例1と同一の構成については同一の符号を付し、異なる部分だけを説明する。なお、反射ミラーM5a、M5bは、Zt方向に関して同じ位置にあり、反射ミラーM6a、6bより+Zt方向側に配置されている。また、反射ミラーM5a、5bと、反射ミラーM6a、6bとは、Xt方向に関して略同じ位置に設けられている。
【0103】
本変形例2では、8つの反射面RPa〜RPhを有するポリゴンミラーPMaの回転軸AXpをZt軸と平行にし、ポリゴンミラーPMaの各反射面RPa〜RPhを回転軸AXpに対して角度θyだけ傾斜するように形成した。
図14、
図15は、そのようなポリゴンミラーPMaの第1の反射面RPcと、回転軸AXpを挟んで反射面RPcと対向した第2の反射面RPgとが、ともにXt軸と平行になった瞬間の状態を示す。そして、
図15のように、回転軸AXpと直交するXt方向からみて、ポリゴンミラーPMの反射面RPcに向かうビームLBa、反射面RPgに向かうビームLBbの各々を反射面RPc、RPgに対して斜め上方(+Zt方向)から投射すると、ビームLBa、LBbの各反射面RPc、RPg上での反射位置をXtYt面と平行な面内、すなわちZt方向に関して同一の高さ位置に設定することができる。つまり、Zt方向に関してポリゴンミラーPMが反射するビームLBa、LBbの中心線の位置を同じにすることができる。これにより、上記第1の実施の形態の変形例1と同様に、第1投射光学系24および第2投射光学系26のZt方向における位置を同じ位置にすることができ、基板Pの被照射面上における描画ラインSLa、SLbを直線上に配置しやすくなる。
【0104】
また、Xt方向からみて、ポリゴンミラーPMaの反射面RPa〜RPhのうち、回転軸AXpを挟んで対向する2つの反射面RP(例えばRPcとRPg)の各々に入射するビームLBa、LBbを、反射面RPに対してZ方向に傾けて斜めに入射させるので、YtZt面内でみると、
図15のようにビームLBa、LBbの入射角度方向と反射角度方向とを、回転軸AXp方向(Zt方向)に角度2θyだけ離すことができる。これにより、回転軸AXp方向(Zt方向)からポリゴンミラーPMaをみた場合は、
図14のように、ビームLBa、LBbの各々の入射方向と反射方向とを同方向にすることができる。その結果、ポリゴンミラーPMaで反射した反射ミラーM5a、M5bからのビームLBa、LBbが、反射ミラーM5a、M5bに戻ることなく、反射ミラーM6a、M6bに入射する。
【0105】
本変形例2においても、先の
図12の変形例1と同様に、ポリゴンミラーPMaの描画に寄与する反射面RPc、RPgの各々で反射したビームLBa、LBbは、中心線AXsを中心として一定の角度範囲θsで偏向走査された状態で、第1投射光学系24(具体的には、fθレンズFTa)および第2投射光学系26(具体的には、fθレンズFTb)に導かれる。したがって、描画ラインSLa、SLbに沿ったスポット光の1回の走査のために、1つの反射面RP(RPc、RPg)に連続的に入射するパルス状のビームLBa、LBbの実効的な反射角範囲(θs)を、中心線AXsを中心とした均等な角度範囲(±θs/2)に振り分けることができる。これにより、ポリゴンミラーPMaで走査されたビームLBa、LBbやスポット光SPa、SPbの光学性能(収差特性、フォーカス特性、スポット品質等)や等速性が向上し、走査精度が向上する。
【0106】
(変形例3)上記第1の実施の形態の変形例1では、ポリゴンミラーPMの回転軸AXpをZt軸に対してYz方向に角度θyだけ傾けるようにし、上記変形例2では、ポリゴンミラーPMaの回転軸AXpをZt軸と平行にし、ポリゴンミラーPMaの各反射面RPa〜RPhをZt軸に対して角度θyだけ傾斜するように形成した。しかしながら、ポリゴンミラーPMの配置や各反射面RP(RPa〜RPh)の構成は、上記変形例1、2に限定されない。例えば、上記第1の実施の形態のような構成のポリゴンミラーPMを用いて、各反射面RP(Zt軸および回転軸AXpと平行)と垂直な面(XtYt面と平行)に対して斜め上方(または下方)からビームLBを入射させるようにしてもよい。これにより、ポリゴンミラーPMの回転軸AXp方向からポリゴンミラーPMをみた場合に、ビームLBa、LBbが垂直入射するように各反射面RPが位置した状態では、ビームLBa,LBbの入射方向と反射方向とを同一にすることができ、ビームLBa、LBbの入射方向と反射方向とを回転軸AXp(Zt軸)方向にずらすことができる。したがって、ポリゴンミラーPMは、2つの反射面RPの各々で反射したビームLBa、LBbを、中心線AXsを中心として一定の角度範囲θs(中心線AXsを中心とした角度±θs/2の振分け)で偏向して、第1投射光学系24(具体的には、fθレンズFTa)および第2投射光学系26(具体的には、fθレンズFTb)に導くことができる。このように、変形例3の場合であっても、上記第1の実施の形態の変形例1、2と同様に、ポリゴンミラーPMで走査されたビームLBa、LBbやスポット光SPa、SPbの光学性能(収差特性、フォーカス特性、スポット品質等)や等速性が向上し、走査精度が向上する。
【0107】
(変形例4)上記の変形例3のように、回転軸AXpがZt軸と平行であり、各反射面RPa〜RPhも回転軸AXpと平行な正八角形のポリゴンミラーPMを用いて、先の変形例1〜3の各々のように、描画に寄与するポリゴンミラーPMの反射面RPに入射するビームLBa、LBbの入射方向とその反射方向とを、XtYt面内でみたときに同じ方向にする他の構成として、
図16A、
図16Bに示すように、偏光ビームスプリッタPBS(PBSa、PBSb)を用いてもよい。
図16Aは、上記第1の実施の形態の変形例4におけるポリゴンミラーPMによるビーム走査系を+Zt方向側からみたときの図であり、
図16Bは、
図16Aのビーム走査系を−Xt方向側からみたときの図である。なお、先の第1の実施の形態、変形例1〜2の各々で説明した部材と同一のものについては同一の符号を付し、異なる部分だけを説明する。
【0108】
図16A、
図16Bのように、本変形例4では、ポリゴンミラーPMと反射ミラーM6aとの間に、ビームの入射出面がXtYt面、XtZt面の各々と平行な直方体状の偏光ビームスプリッタPBSaが配置され、ポリゴンミラーPMと反射ミラーM6bとの間に、ビームの入射出面がXtYt面、XtZt面の各々と平行な直方体状の偏光ビームスプリッタPBSbが配置される。偏光ビームスプリッタPBSa、PBSbの各々の偏光分離面は、XtYt面とXtZt面のいずれに対しても45°で傾くように設定される。さらに、偏光ビームスプリッタPBSaとポリゴンミラーPMの間には、1/4波長板QPaが設けられ、偏光ビームスプリッタPBSbとポリゴンミラーPMの間には、1/4波長板QPbが設けられる。
【0109】
以上の構成において、光学素子(音響光学変調素子)AOMa(
図5、
図7参照)で変調を受けたビームLBaは、
図16Bに示すように、母線がXt軸と平行な第1のシリンドリカルレンズCY1aによってYt方向に収斂した状態で偏光ビームスプリッタPBSaに+Zt方向側からZt軸と平行に入射する。ビームLBaを直線S偏光とすると、ビームLBaは偏光ビームスプリッタPBSaの偏光分離面で大部分が反射して、1/4波長板QPaを透過して円偏光となってポリゴンミラーPMに向かう。ポリゴンミラーPMの回転角度位置が、例えば
図16Aのように、ビームLBaによる描画に寄与する1つの反射面PRcがXtZt面と平行な状態から角度±θs/2の範囲内になったとき、1/4波長板QPaを透過したビームLBaは反射面PRcで反射されて、再び1/4波長板QPaを通って直線P偏光となって偏光ビームスプリッタPBSaに戻る。そのため、反射面PRcで反射されたビームLBaの大部分が、偏光ビームスプリッタPBSaの偏光分離面を透過して反射ミラーM6aに向かう。
【0110】
同様に、光学素子(音響光学変調素子)AOMb(
図5、
図7参照)で変調を受けたビームLBbは、
図16Bに示すように、母線がXt軸と平行な第1のシリンドリカルレンズCY1bによってYt方向に収斂した状態で偏光ビームスプリッタPBSbに+Zt方向側からZt軸と平行に入射する。ビームLBbを直線S偏光とすると、ビームLBbは偏光ビームスプリッタPBSbの偏光分離面で大部分が反射して、1/4波長板QPbを透過して円偏光となってポリゴンミラーPMに向かう。ポリゴンミラーPMの回転角度位置が、
図16Aのように、ビームLBbによる描画に寄与する1つの反射面PRgがXtZt面と平行な状態から角度±θs/2の範囲内になったとき、1/4波長板QPbを透過したビームLBbは反射面PRgで反射されて、再び1/4波長板QPbを通って直線P偏光となって偏光ビームスプリッタPBSbに戻る。そのため、反射面PRgで反射されたビームLBbの大部分が、偏光ビームスプリッタPBSbの偏光分離面を透過して反射ミラーM6bに向かう。
【0111】
以上のような構成により、反射ミラーM6aで反射されたビームLBa、反射ミラーM6bで反射されたビームLBbの各々は、XtYt面と平行な面内で、角度範囲θs内で走査される。また、反射ミラーM6aの後に配置されている第1投射光学系24(具体的には、fθレンズFTa)の光軸AXfaの延長線は、反射ミラーM6aで90°だけ曲げられてポリゴンミラーPMの回転軸AXpと交差し、反射ミラーM6bの後に配置されている第2投射光学系26(具体的には、fθレンズFTb)の光軸AXfbの延長線は、反射ミラーM6bで90°だけ曲げられてポリゴンミラーPMの回転軸AXpと交差するように配置される。したがって、本変形例4においても、ポリゴンミラーPMは、2つの反射面(例えばRPcとRPg)の各々で反射したビームLBa、LBbを、光軸AXfa、AXfbを中心として一定の角度範囲θs(光軸AXfa、AXfbを中心とした角度±θs/2の振分け)で偏向して、第1投射光学系24(fθレンズFTa)および第2投射光学系26(fθレンズFTb)に導くことができる。このように、変形例4の場合であっても、ポリゴンミラーPMで走査されたビームLBa、LBbやスポット光SPa、SPbの光学性能(収差特性、フォーカス特性、スポット品質等)や等速性が向上し、走査精度が向上する。また、先の第1の実施の形態、およびその変形例1〜3と同様に、本変形例4においても、1つのポリゴンミラーPMによる2つのビームLBa、LBbの各々の偏光走査により生成される描画ラインSLa、SLbは、描画すべきパターンの微細度(最小線幅)やスポット光SPa、SPbの実効的な寸法(直径)に応じた精度で直線性を保つことができる長さ、例えば30〜80mm程度に設定することができる。
【0112】
なお、以上の変形例4において、ポリゴンミラーPMで偏向走査されたビームLBa、LBbは、
図16Aに示すように、描画ラインSLa、SLbの長さに対応した実効的な角度範囲θs内で偏光ビームスプリッタPBSa、PBSbに入射する。したがって、偏光ビームスプリッタPBSa、PBSbのP偏光とS偏光との分離度合いである消光比は、その角度範囲θs以上に渡って最大となるように設定される。そのような偏光ビームスプリッタPBSa、PBSbの一例として、偏光分離面に酸化ハフニウム(HfO2)の膜と二酸化ケイ素(SiO2)の膜とを繰り返し積層したものが、国際公開第2014/073535号パンフレットに開示されている。
【0113】
[第2の実施の形態]
図17は、第2の実施の形態における描画ユニットUaの一部の構成を示す図である。各描画ユニットUaは、同一の構成を有するので、本第2の実施の形態においても、描画ラインSL2a、SL2b上に沿ってスポット光SPa、SPbを走査する描画ユニットUa2を例にして説明する。なお、上記第1の実施の形態と同一の構成については同一の符号を付す。また、上記第1の実施の形態と異なる部分だけを説明する。
【0114】
第2の実施の形態においては、ポリゴンミラーPMは、回転軸AXpがXt軸方向に延びるように設けられ、fθレンズFTa、FTbは、その光軸AXfa、AXfbがZt軸方向に延びるように設けられている。このポリゴンミラーPMの8つの反射面RPのうちで、YtZt面内において互いに90°の角をなす2つの反射面RP(
図17では反射面RPb、RPh)には、−Zt軸方向に進むビームLBa、LBbが入射する。ポリゴンミラーPMの第1の反射面RP(ここではRPh)は、第1方向から入射したビームLBaを−Yt方向側に反射して反射ミラーM6aに導く。反射ミラーM6aで反射したビームLBaは、−Zt方向に進み、fθレンズFTaおよびシリンドリカルレンズCY2aを透過した後、基板Pに入射する。このfθレンズFTaおよびシリンドリカルレンズCY2aによって、基板Pに入射するビームLBaは、基板Pの被照射面上でスポット光SPaとなる。また、ポリゴンミラーPMの第2の反射面RP(ここではRPb)は、第1方向とは異なる第2方向から入射したビームLBbを+Yt方向側に反射して反射ミラーM6bに導く。反射ミラーM6aで反射したビームLBbは、−Zt方向に進み、fθレンズFTbおよびシリンドリカルレンズCY2bを透過した後、基板Pに入射する。このfθレンズFTbおよびシリンドリカルレンズCY2bによって、基板Pに入射するビームLBbは、基板Pの被照射面上でスポット光SPbとなる。基板Pの被照射面上に投射されたスポット光SPa、SPbは、ポリゴンミラーPMの回転によって描画ラインSL2a、SL2b上を等速走査する。
【0115】
このように、ポリゴンミラーPMを回転軸AXpがXt軸方向に延びるように設け、fθレンズFTa、FTbをその光軸AXfa、AXfbがZt軸方向に延びるように設けているので、上記第1の実施の形態のように、fθレンズFTa、FTbを透過した−Xt方向に進むビームLBa、LBbを、−Z方向に反射する反射ミラーM7a、M7bを設ける必要はない。このような構成にしても、上記第1の実施の形態と同様の効果を得ることができる。
【0116】
なお、本第2の実施の形態では、反射ミラーM6a、fθレンズFTa、および、シリンドリカルレンズCY2aが、第1投射光学系24aとして機能し、反射ミラーM6a、fθレンズFTb、および、シリンドリカルレンズCY2bが第2投射光学系26aとして機能する。本第2の実施の形態の描画ユニットUaも、回動中心軸AXr回りに回動可能であり、回動中心軸AXrは、描画ラインSL2aの中点と描画ラインSL2bの中点とを結ぶ線分の中心点を通り、基板Pの被照射面に対して垂直に通る。
【0117】
また、本第2の実施の形態においては、特に図示はしないが、上記第1の実施の形態の第1導光光学系20および第2導光光学系22に代えて、光源装置14からのビームLBa、LBbが−Z方向に進んでポリゴンミラーPMに入射するように、ビームLBa、LBbをポリゴンミラーPMに導く第1導光光学系および第2導光光学系が配置されている。
【0118】
上記第1の実施の形態の変形例3で説明したように、反射面RPの回転方向と交差する方向(ポリゴンミラーPMの回転軸AXpが延びる方向)に対して斜めにビームLBを反射面RPに入射させることで、ビームLBa、LBbの入射方向と反射方向とを回転軸AXp方向でずらすこともできる。したがって、上記第1の実施の形態の変形例3と同様の効果を得ることができる。
【0119】
また、ポリゴンミラーPMは、上記第1の実施の形態の変形例1で説明したように、回転軸AXpと直交する方向からみた場合に、ポリゴンミラーPMの回転軸AXpをXt方向に対して傾斜させてもよい。また、上記第1の実施の形態の変形例2で説明したポリゴンミラーPMaを用いてもよい。すなわち、
図17中のポリゴンミラーPMの回転軸AXpをXt軸と平行にし、ポリゴンミラーPMの各反射面RP(RPa〜RPh)を回転軸AXpと平行な状態から
図15のように角度θyだけ傾斜するように形成してもよい。これにより、回転軸AXpと直交する方向からみてポリゴンミラーPMの各反射面RP(RPa〜RPh)に入射するビームLBa、LBbを各反射面RPに対して斜めに入射させることで、上記第1の実施の形態の変形例1、2と同様の効果を得ることができる。
【0120】
[第3の実施の形態]
図18は、−Yt(−Y)方向側からみた第3の実施の形態の描画ユニットUbの構成図、
図19は、ポリゴンミラーPMbから+Zt側の描画ユニットUbの構成を+Xt方向側みた図、
図20は、ポリゴンミラーPMbから−Zt方向側の描画ユニットUbの構成を+Zt方向側からみた図である。なお、上記第1の実施の形態と同一の構成については同一の符号を付す。また、上記第1の実施の形態と異なる部分だけを説明する。
【0121】
描画ユニットUbは、
図19に示すように、稜線がXt軸と平行な三角反射ミラー(直角ミラー)M10、反射ミラーM11a、M11b、シフト光学部材SRa、SRb、母線がXt軸と平行なシリンドリカルレンズCY1a、CY1b、8反射面RPのポリゴンミラーPMb、反射ミラーM12a、M12b、反射ミラーM13a、M13b、反射ミラーM14a、M14b、fθレンズFTa、FTb、反射ミラーM15a、M15b、および、母線がYt軸と平行なシリンドリカルレンズCY2a、CY2bの光学系を備える。2つのビームLBa、LBbに関して一対に設けられた光学部材については、参照符号の後にa、bを付している。
【0122】
図19に示すように、光源装置14からの2つのビームLBa、LBb(ともに平行光束)は、回動中心軸AXrを挟んで平行に並んで−Zt方向に進み、描画ユニットUbの三角反射ミラーM10の稜線を挟んだ別々の反射面M10a、M10bに入射する。このビームLBa、LBbは、Zt軸と平行な回動中心軸AXrに対してYt方向に対称となるように描画ユニットUbの三角反射ミラーM10の各反射面M10a、M10bに入射する。三角反射ミラーM10の反射面M10aは、ビームLBaを−Yt方向に反射して反射ミラーM11aに導き、三角反射ミラーM10の反射面M10bは、ビームLBbを+Yt方向に反射して反射ミラーM11bに導く。反射ミラーM11aで反射したビームLBaは、−Zt方向に進み、シフト光学部材SRaおよびシリンドリカルレンズCY1aを透過した後、ポリゴンミラーPMbの反射面RP(例えば、反射面RPa)に入射する。反射ミラーM11bで反射したビームLBbは、−Zt方向に進み、シフト光学部材SRbおよびシリンドリカルレンズCY1bを透過した後、ポリゴンミラーPMbの反射面RP(例えば、反射面RPe)に入射する。ポリゴンミラーPMbの反射面RPaと反射面RPeは、ポリゴンミラーPMbの回転軸AXpを挟んで対称に位置する。
【0123】
本第3の実施の形態では、
図20に示すように、ポリゴンミラーPMbの回転軸AXpが回動中心軸AXrと同軸となるように設定されている。三角反射ミラーM10および反射ミラーM11a、M11b(
図19参照)で、ポリゴンミラーPMbに入射するビームLBa、LBbの各中心線間のYt方向の距離を拡大させている。これにより、描画ユニットUbに入射するビームLBa、LBbの光軸間の距離を短くすることができ、描画ユニットUb(三角反射ミラーM10)に入射するビームLBa、LBbを回動中心軸AXrに近づけることができる。その結果、描画ユニットUb全体が回動した場合であっても、その回動に伴うビームLBa、LBbの各中心線の位置が描画ユニットUb内で大きく変化することを抑えることができる。描画ユニットUbの回動に伴うビームLBa、LBbの各中心線の位置変化は、第1の実施の形態と同様に機能するシフト光学部材SRa、SRbによって補正される。
【0124】
なお、三角反射ミラーM10の反射面M10a、反射ミラーM11a、シフト光学部材SRa、および、シリンドリカルレンズCY1aは、ビームLBaをポリゴンミラーPMbの第1の反射面RP(RPa)に向けて導く第1導光光学系20bとして機能する。また、三角反射ミラーM10の反射面M10b、反射ミラーM11b、シフト光学部材SRb、および、シリンドリカルレンズCY1bは、ビームLBbをポリゴンミラーPMbの第1の反射面と異なる第2の反射面RP(RPe)に向けて導く第2導光光学系22bとして機能する。なお、三角反射ミラーM10の各反射面M10a、M10bは、第1導光光学系20bと第2導光光学系22bとで別個に設けた平面ミラーにしてもよい。なお、シリンドリカルレンズCY1a(CY1bも同様)は、平行光束として入射したビームLBa(LBb)をYt方向にだけ収斂する屈折力を有するので、ポリゴンミラーPMbの反射面RPa(反射面RPe)上には、Xt方向にスリット状に延びたスポット光が投射される。
【0125】
本第3の実施の形態のポリゴンミラーPMbは、XtYt面内でみると、
図20のように外形は正八角形をしており、その周囲に形成される8つの反射面RPa〜RPh(
図19ではRPa〜RPeを図示)の各々は、回転軸AXp(回動中心軸AXr)に対して45度だけ傾斜するように形成されている。すなわち、ポリゴンミラーPMbは、底面が正八角形で8つの側面の各々が中心線に対して45度傾いた正八角錐体を中心線方向に適当な厚さで切り出したような形状となっている。したがって、ポリゴンミラーPMbの各反射面(RPa〜RPh)は、−Zt方向に進むビームLBaを−Yt方向側に直角に反射して反射ミラーM12aに導き、−Zt方向に進むビームLBbを+Y方向側に直角に反射して反射ミラーM12bに導く。したがって、上記第1の実施の形態の変形例2のように、ポリゴンミラーPMbは、8つの反射面RPa〜RPhのうちの例えば反射面RPa、RPeで反射したビームLBa、LBbを、各中心線AXs(2つのfθレンズFTa、FTbの各光軸AXfa、AXfbと同軸)を中心として一定の角度範囲θsで反射することができる。これにより、ポリゴンミラーPMbによるビームLBa、LBbのスポット光SPa、SPbの光学性能、走査直線性、等速性が向上し、走査精度(描画精度)が向上する。
【0126】
図18、
図20に示すように、反射ミラーM12aによって−Xt方向に反射されたポリゴンミラーPMb(例えば反射面RPa)からのビームLBaは、反射ミラーM13a、M14aを経由してfθレンズFTaに導かれる。同様に、反射ミラーM12bによって+Xt方向に反射されたポリゴンミラーPMb(例えば反射面RPe)からのビームLBbは、反射ミラーM13b、M14bを経由してfθレンズFTbに導かれる。反射ミラーM13aは、反射ミラーM12aから−Xt方向に進むビームLBaを、折り曲げ位置p13aで−Zt方向に反射し、反射ミラーM14aは、反射ミラーM13aからのビームLBaを折り曲げ位置p14aで+Xt方向に反射してfθレンズFTaに導く。反射ミラーM13bは、反射ミラーM12bから+Xt方向に進むビームLBbを、折り曲げ位置p13bで−Zt方向に反射し、反射ミラーM14bは、反射ミラーM13aからのビームLBbを折り曲げ位置p14bで−Xt方向に反射してfθレンズFTbに導く。なお、
図20では図示を省略したが、反射ミラーM12a、M13a、M14aを介してfθレンズFTaに入射するビームLBaは、シリンドリカルレンズCY1aの作用によって、XtYt面内でみると略平行光束であり、XtZt面内でみると
図18のように発散光束となっている。
【0127】
fθレンズFTa(光軸AXfaはXt軸と平行)を透過して+Xt方向に進むビームLBaは、テレセントリックな状態で反射ミラーM15aによって−Zt方向に反射され、シリンドリカルレンズCY2aを透過した後、基板Pの被照射面上に円形のスポット光SPaとなって投射される。同様に、fθレンズFTb(光軸AXfbはXt軸と平行)を透過して−Xt方向に進むビームLBbは、テレセントリックな状態で反射ミラーM15bによって−Zt方向に反射され、シリンドリカルレンズCY2bを透過した後、基板Pの被照射面上に円形のスポット光SPbとなって投射される。fθレンズFTaおよびシリンドリカルレンズCY2aによって、基板Pに投射されるビームLBaが基板Pの被照射面上で微小なスポット光SPaとして収斂される。同様にして、fθレンズFTbおよびシリンドリカルレンズCY2bによって、基板Pに投射されるビームLBbが基板Pの被照射面上で微小なスポット光SPbとして収斂される。1つのポリゴンミラーPMbの回転によって、基板Pの被照射面上に投射される2つのスポット光SPa、SPbが同時に描画ラインSLa、SLb上で1次元走査される。本第3の実施の形態の構成の場合、2つのスポット光SPa、SPbは、描画ラインSLa、SLbに沿って互いに逆向きに走査移動する。そして、
図20のようにポリゴンミラーPMbをXtYt面内で時計回りに回転させると、描画パターンのYt方向の継ぎ部となる描画ラインSLaの+Yt方向の端部と描画ラインSLbの−Yt方向の端部とが、それぞれスポット光SPa、SPbの走査終了位置になるように設定される。逆に、ポリゴンミラーPMbをXtYt面内で反時計回りに回転させると、描画パターンのYt方向の継ぎ部となる描画ラインSLaの+Yt方向の端部と描画ラインSLbの−Yt方向の端部とが、それぞれスポット光SPa、SPbの走査開始位置になるように設定される。
【0128】
以上の構成において、反射ミラーM12a、M13a、M14a、M15a、fθレンズFTa、および、シリンドリカルレンズCY2aは、ポリゴンミラーPMbで反射されて偏向走査されるビームLBaを集光してスポット光SPaとして描画ラインSLa上に投射する第1投射光学系24bとして機能する。また、反射ミラーM12b、M13b、M14b、M15b、fθレンズFTb、および、シリンドリカルレンズCY2bは、ポリゴンミラーPMbで反射されて偏向走査されるビームLBbを集光してスポット光SPbとして描画ラインSLb上に投射する第2投射光学系26bとして機能する。
【0129】
また、
図18、
図20に示すように、第3の実施の形態では、ポリゴンミラーPMbの反射面RPからfθレンズFTa、FTbまでの光路長が、その間の反射ミラーM12a〜M14a、M12b〜M14bによって引き延ばされているため、fθレンズFTa、FTbとしてビーム入射側の焦点距離が長いものを使うことができる。一般に、ポリゴンミラーPM(PMa、PMbも同じ)の反射面は、テレセントリックなfθレンズFTa(FTb)のビーム入射側の焦点距離fsの位置(瞳位置)、若しくはその近傍に配置される。そのため、描画ラインSLa(SLb)の被照射面上での長さをLssとし、そのときにfθレンズに入射するビームの偏向角度範囲をθsとすると、近似的に、Lss≒fs・sin(θs)の関係で表される。したがって、描画ラインSLa(SLb)の長さLssを一定値とした場合、焦点距離fsの長いfθレンズを使用すれば、それに応じて偏向角度範囲θsを小さくすることができる。このことは、描画ラインSLa(SLb)に沿ったスポット光SPa(SPb)の1回の走査に寄与するポリゴンミラーPM(PMa、PMb)の回転角度範囲θs/2が小さくなることを意味し、高速化につながると言った利点がある。
【0130】
本第3の実施の形態による描画ユニットUbは、
図20に示すように、スポット光SPa、スポット光SPbの各々が走査される描画ラインSLaと描画ラインSLbとは、副走査方向に関して互いに離間し、且つ、主走査方向に関して端部が隣接または一部重畳するように、描画ラインSLaと描画ラインSLbはYt方向にずらして設定されている。つまり、描画ラインSLa、SLbは、平行な状態で副走査方向(基板Pの搬送方向)には離間し、主走査方向には隙間無く連続するように配置されている。そこで、このような描画ユニットUbを複数配置する場合は、例えば
図21のように配置する。
【0131】
図21は、先の
図2に対応して、基板P上に形成される電子デバイス形成領域としての露光領域WをY(Yt)方向に6分割し、ストライプ状の複数の分割領域WS1〜WS6の各々を、6つの描画ラインSL1a、SL1b、SL2a、SL2b、SL3a、SL3bによってパターンを描画する場合の一例を示す。ここで、先の
図18〜
図20のような描画ユニットUbと同じ構成の第1の描画ユニットUb1による2つの描画ラインSL1a、SL1bは、それぞれY方向に隣接した分割領域WS1、WS2にパターンを描画するように設定される。同様に、描画ユニットUbと同じ構成の第2の描画ユニットUb2による2つの描画ラインSL2a、SL2bは、それぞれY方向に隣接した分割領域WS3、WS4にパターンを描画するように設定され、描画ユニットUbと同じ構成の第3の描画ユニットUb3による2つの描画ラインSL3a、SL3bは、それぞれY方向に隣接した分割領域WS5、WS6にパターンを描画するように設定される。分割領域WS1とWS2の継ぎ部STa、分割領域WS2とWS3の継ぎ部STb、分割領域WS3とWS4の継ぎ部STc、分割領域WS4とWS5の継ぎ部STd、および分割領域WS5とWS6の継ぎ部STeでは、6つの描画ラインSL1a、・・・、SL3a、SL3bの各々の端部がY方向に関して精密に一致、または僅かに重畳するように、各描画ラインのY方向の位置や各描画ライン毎の描画倍率が精密に調整される。
【0132】
このように、本第3の実施の形態では、描画ユニットUb(Ub1〜Ub3)でスポット光SPa、SPbが走査される2つの描画ラインSLa、SLbが、副走査方向に関して互いに離間し、且つ、主走査方向に関して端部が隣接または一部重畳するように設定されている。この場合であっても、描画ユニットUb全体を微少回転させる場合の回動中心軸AXrは、2つの描画ラインSLa、SLbの中点を結ぶ線分の中心点を基板Pに対して垂直に通るように設定できる。そのため、高い重ね合せ精度を得るために描画ユニットUb全体を回動中心軸AXr回りに回動させた場合であっても、描画ユニットUbによってスポット光SPa、SPbが走査される2つの描画ラインSLa、SLbの基板P上の位置ずれが大きくなることを抑制できるので、高精度なパターン描画を行いつつ、描画ラインSLa、SLbの傾き(被照射面内でのY軸に対する傾き)を簡単に調整することができる。
【0133】
なお、上記各実施の形態(変形例も含む)においては、複数の描画ユニットU、Ua、Ubの描画ラインSLは、全て同じ走査長としたが、走査長を異ならせてもよい。この場合、描画ユニットU、Ua、Ub間で描画ラインSLの走査長を異ならせるようにしてもよいし、同一の描画ユニットU、Ua、Ubの中で、描画ラインSLa、SLbの走査長を異ならせるようにしてもよい。さらに、回動中心軸AXrを、描画ユニットU、Ua、Ubの描画ラインSLa、SLbの各々の中点を結ぶ線分の中心点を基板Pに対して垂直に通るようにしたが、基板Pに対して垂直な方向であり、且つ、描画ラインSLa、SLbの各々の中点を結ぶ線分上に設定してもよい。
【0134】
以上の第3の実の施形態の場合、第1の実施の形態のように回転ドラムDR1、DR2によって長尺方向に円筒面状に支持された基板Pの被照射面にパターン描画を行うためには、
図22に示すように、描画ユニットUbのfθレンズFTa(FTb)の後の反射ミラーM15a(M15b)によって折り曲げられた光軸AXfa(AXfb)の延長線が、回転ドラムDR1、またはDR2の中心軸(回転中心軸)AXo1またはAXo2に向かうように、反射ミラーM15a(M15b)のXZ面内での傾きを45度以外の角度に設定し、シリンドリカルレンズCY2a(CY2b)も、その傾いた光軸AXfa(AXfb)に合うようにXY面に対して傾けて配置すればよい。なお、基板PをXY面と平行に平坦に支持する場合は、例えば、国際公開第2013/150677号パンフレットに開示された搬送装置を使うことができる。また、基板Pを長尺方向に円筒状に湾曲させて支持するために円筒面状に湾曲した表面に多数の微細な気体噴出孔(および多数の微細な吸引孔)が形成され、基板Pの裏面側を気体ベアリングで非接触または低摩擦状態で支持するパット部材(基板支持ホルダ)を、回転ドラムDR1、DR2に代えて用いてもよい。また、上記第1〜第2の実施の形態、および、それらの変形例においても、回転ドラムDR1、DR2に代えて、国際公開第2013/150677号パンフレットに開示された基板PをXY面と平行に平坦に支持する搬送装置を用いてもよいし、基板Pの裏面側を気体ベアリングで非接触または低摩擦状態で支持する上述したパット部材(基板支持ホルダ)を用いてもよい。
【0135】
[第1〜第3の実施の形態の変形例]
第1〜第3の実施の形態は、以下のような変形例も可能である。
【0136】
(変形例1)
図23は、
図1中に示した光源装置14から提供されるビームLB(2本
のビームLBa、LBb)を、例えば、
図2中の4つの各描画ユニットU1、U2、U5、U6の各々に分配するためのビーム分配系の一例の構成を示す図である。なお、このビーム分配系は、第1の実施の形態のみならず、第2、第3の実施の形態、およびそれらの変形例による描画装置のいずれにも適用可能である。
【0137】
光源装置14には、紫外域の高輝度なレーザビーム(連続光またはパルス光)を出力するレーザ光源LS、レーザ光源LSからのビームを所定の直径(例えば数mm径)の平行光束に変換するビームエクスパンダBX、平行光束となったビームを2分割する第1のビームスプリッタ(ハーフミラー)BS1、およびミラーMR1が設けられる。ビームスプリッタBS1で反射されたビームは、ビームLBaとして第2のビームスプリッタBS2aに入射し、ビームスプリッタBS1を透過したビームは、ミラーMR1で反射されて、ビームLBbとして第2のビームスプリッタBS2bに入射する。ビームスプリッタBS1の分割比は1:1であり、ビームLBa、LBbの各光強度(照度)は略等しい。ビームスプリッタBS2aに入射したビームLBa、およびビームスプリッタBS2bに入射したビームLBbは、さらに等しい強度比で2分割される。
【0138】
ビームスプリッタBS2aに入射したビームLBaのうちで、ビームスプリッタBS2aを透過したビームLBaは、第3のビームスプリッタBS3a(分割比は1:1)に入射する。ビームスプリッタBS2bに入射したビームLBbのうちで、ビームスプリッタBS2bを透過したビームLBbは、第3のビームスプリッタBS3b(分割比は1:1)に入射する。ビームスプリッタBS3a、BS3bの各々で反射された2つのビームLBa、LBbは、描画ユニットU1の回動中心軸AXrを挟んで互いに平行となって、対応する光学素子AOMa、AOMb(
図5等参照)を介して描画ユニットU1に向かう。そして、ビームスプリッタBS3a、BS3bの各々を透過した2つのビームLBa、LBbは、それぞれミラーMR2a、MR2bで反射された後、描画ユニットU2の回動中心軸AXrを挟んで互いに平行となって、対応する光学素子AOMa、AOMbを介して描画ユニットU2に向かう。
【0139】
さらに、先のビームスプリッタBS2aで反射されたビームLBaは、第4のビームスプリッタBS4a(分割比は1:1)に入射し、先のビームスプリッタBS2bで反射されたビームLBbは、第4のビームスプリッタBS4b(分割比は1:1)に入射する。ビームスプリッタBS4a、BS4bの各々で反射された2つのビームLBa、LBbは、描画ユニットU5の回動中心軸AXrを挟んで互いに平行となって、対応する光学素子AOMa、AOMbを介して描画ユニットU5に向かう。そして、ビームスプリッタBS4a、BS4bの各々を透過した2つのビームLBa、LBbは、それぞれミラーMR3a、MR3bで反射された後、描画ユニットU6の回動中心軸AXrを挟んで互いに平行となって、対応する光学素子AOMa、AOMbを介して描画ユニットU6に向かう。以上の構成により、4つの描画ユニットU1、U2、U5の各々に分配されるビームLBa、LBbは、いずれも略等しい光強度に設定される。
【0140】
ところで、光源装置14内のレーザ光源は、紫外域波長の高輝度なビームを放射するものであれば、固体レーザ、気体レーザのいずれであってもよい。固体レーザとして、半導体レーザダイオードからの赤外域波長のビーム(数百MHzのパルス光)をファイバー増幅器で増幅した後、波長変換素子によって紫外域波長のビーム(パルス光)として放射するファイバーレーザ光源を用いると、比較的にコンパクトな筐体であるにも関わらず、高出力な紫外線ビームを得ることができ、露光装置(描画装置)EXの本体内への組み込みが容易になる。さらに、以上の第1〜第3の実施の形態、および各変形例においては、露光装置EX本体内で回動中心軸AXrを中心に旋回可能な描画ユニットU(Ua、Ub)内には、描画用の光源を設けない構成としたが、半導体レーザダイオード(LD)や発光ダイオード(LED)等からのビームの強度で十分にパターン描画(露光)が可能な場合は、各描画ユニットU(Ua、Ub)内にビームLBa、LBbを供給するLDやLEDを設けてもよい。但し、それらのLDやLEDによる光源部は、パターン描画動作中は相当に温度上昇するため、描画ユニットU(Ua、Ub)内での光源部の断熱、冷却等の温度調整機構を設けて、描画ユニットU(Ua、Ub)全体の温度変化を小さく抑える必要がある。この場合は、
図5に示すような光学素子AOMa、AOMbも各描画ユニットU(Ua、Ub)内に設ける。
【0141】
(変形例2)以上の第1〜第3の実施の形態、およびそれらの各変形例では、ポリゴンミラーPM(PMa、PMb)が8つの反射面を回転軸AXpの回りに45度間隔で配置した8面体(または8角錐体状)としたが、反射面の数はいくつであってもよく、3面〜6面、9面、10面、12面、15面、16面、18面、20面等のポリゴンミラーを同様に使うことができる。一般に、同じ直径のポリゴンでも、反射面数が多くなれば風損が小さくなるので、より高速に回転させることが可能である。また、第1〜第3の実施の形態、およびそれらの各変形例では図示、および説明を省略したが、ポリゴンミラーPM(PMa、PMb)の異なる反射面の各々で反射する2つのビームLBa、LBbが、描画ライン(走査線)SLa、SLb上でのスポット光SPa、SPbの走査開始点にそれぞれ対応するような反射方向となるタイミングで原点信号を出力する原点センサーが、ポリゴンミラーPM(PMa、PMb)の周囲の2ヶ所に設けられている。描画ラインSLa、SLbに沿ったスポット光SPa、SPbの走査位置の管理(オフセット設定等)や、パターンデータに基づくスポット光SPa、SPbの強度変調(光学素子AOMa、AOMbのOn/Off)のタイミング等は、その原点信号とスポット光SPa、SPbの走査速度に対応したクロック信号とに基づいて制御される。
【0142】
[第4の実施の形態]
以上の第1〜第3の実施の形態、およびそれらの各変形例において、ポリゴンミラーPM(PMa、PMb)からfθレンズFTa、FTbまでの光路中には、ポリゴンミラーPM(PMa、PMb)で反射するビームLBa、LBbが偏向される面(
図5、
図6の実施の形態、
図12〜
図16の各実施の形態、
図18〜
図20の実施の形態ではXtYt面と平行な面、
図17の実施の形態ではYtZt面と平行な面)内で、ビームLBa、LBbを折り曲げる反射ミラーM6a、M6b、或いは、M12a、M12bが設けられている。光源装置14からのビームLB(LBa、LBb)が波長240nm程度よりも長い紫外波長域である場合、ポリゴンミラーPM(PMa、PMb)や各反射ミラーの反射面は、ガラスやセラミックスの母材の表面に高い反射率を有するアルミニウム層を蒸着し、さらにその上に酸化防止等のための誘電体薄膜(単層または複数層)を蒸着して作られる。ポリゴンミラーPMの場合、母材自体をアルミニウムで形成加工し、反射面となる部分を光学研磨した後、その表面に誘電体薄膜(単層または複数層)が蒸着される。このような反射面の構造を持つポリゴンミラーPM(PMa、PMb)や反射ミラーM6a、M6b、M12a、M12bにおいては、反射面に入射するビームLBa、LBbの入射角が、主走査のためのビーム偏向の角度に応じて大きく変化することになり、ビームLBa、LBbが偏光特性を持っている場合には、入射角の変化に応じて反射したビームの強度が変化する傾向、すなわち、反射面の反射率の入射角依存性の影響が無視できない場合がある。
【0143】
図24は、先の
図17で説明したポリゴンミラーPMと反射ミラーM6aの各々に投射されるビームLBaの入射角や反射角の状況をYtZt面内で説明する図である。
図24で説明する状況は、その他の実施の形態(
図5、
図6、
図12〜
図16、
図18〜
図20)においても同様に生じる得るものである。
図24において、ポリゴンミラーPMの1つの反射面RPhのYtZt面内での角度θoが45°のとき、Zt軸と平行に入射したビームLBaはYt軸と平行になるように反射面RPhで反射された後、反射ミラーM6aで90°に折り曲げられて、後続のfθレンズFTaの光軸AXfaと同軸に進むものとする。ポリゴンミラーPMが
図24中で時計回りに回転しているものとすると、描画ラインSL2a(SLa)に沿ったスポット光SPaの実効的な走査の開始点は、反射面RPhがYtZt面内で角度θo−Δθaとなった時点であり、スポット光SPaの実効的な走査の終了点は、反射面RPhがYtZt面内で角度θo+Δθaとなった時点である。したがって、ポリゴンミラーPMの反射面RPhで反射されて反射ミラーM6aに向かうビームLBaの光軸AXfaに対する偏向角度範囲は±2Δθaとなる。光軸AXfaに対するビームLBaの偏向角が+2Δθaのとき、反射ミラーM6aの反射面に投射されるビームLBaの入射角θm1は、θm1=45°−2Δθaとなり、光軸AXfaに対するビームLBaの偏向角が−2Δθaのとき、反射ミラーM6aの反射面に投射されるビームLBaの入射角θm2は、θm2=45°+2Δθaとなる。
【0144】
ここで、
図25を用いて、反射ミラーM6aへのビームLBaの入射角の変化による影響を説明する。
図25は、アルミニウム層と誘電体薄膜とで構成される反射面に、紫外波長域の偏光特性を有するビームを入射させた場合にみられる反射率の入射角依存性の特性CV1を説明するグラフであり、縦軸は反射面の反射率(%)を表し、横軸はビームの反射面への入射角(度)を表す。一般に、反射面に入射角0°(すなわち垂直入射)でビームを投射したときに、反射率は最大となる。
図25の特性CV1の場合、最大の反射率は90%程度である。入射角が45°辺りでは、約87%の反射率であるが、入射角がさらに大きくなるにつれて、反射率は大きく低下していく。ポリゴンミラーPMの各反射面(RPh)の反射率が特性CV1と同様だった場合、
図24に示すように、ポリゴンミラーPMの反射面RPhに入射するビームLBaの入射角は、45°を中心として、±Δθaの範囲で変化する。ここで、描画ラインSLaを走査するためにfθレンズ系FTaに入射するビームLBaの最大の偏向角度範囲±2Δθaが光軸AXfaを中心に±15°であったとすると、Δθaが7.5°となるので、ポリゴンミラーPMの反射面RPhへのビームLBaの入射角は、45°を中心に37.5°〜52.5°の範囲で変化する。特性CV1上で、入射角37.5°における反射率は約88%であり、入射角52.5°における反射率は約85.5%である。
【0145】
以上のことから、ポリゴンミラーPMで反射したビームLBaをそのままfθレンズ系FTaに入射させる場合、描画ラインSLa上の走査開始点でのスポット光SPaの強度と、走査終了点でのスポット光SPaの強度とは、特性CV1より、88%−85.5%=2.5%の差が生じることになる。これは、描画ラインSLaの中央付近におけるスポット光SPaの強度を基準にすると、描画ラインSLaの両端部で±1.25%の強度誤差となることを意味する。基板P上に形成された感光性機能層がフォトレジストやドライフィルムの場合、主走査中におけるスポット光SPの強度ムラの許容範囲は±2%程度と言われており、±1.25%の強度誤差(ムラ)であれば許容され得る。
【0146】
しかしながら、
図24のように、ポリゴンミラーPMの後にも、ビームLBaの主走査のための偏向によって入射角が大きく変化する反射ミラーM6aがあるため、基板P上に投射されるスポット光SPaの強度は、主走査方向に関して、さらに大きな強度誤差を生じる。先に説明したように、反射ミラーM6aに入射するビームLBaの入射角は、θm1〜θm2の間で変化する。Δθaを7.5°とした場合、θm1=45°−15°=30°、θm2=45°+15°=60°となる。反射ミラーM6aの反射率の入射角依存性も、
図25の特性CV1と同じものとすると、描画ラインSLa上のスポット光SPaの走査開始点では、反射ミラーM6aへのビームLBaの入射角がθm1=30°となるので、その入射角での反射ミラーM6aの反射率は約88.5%となる。したがって、ポリゴンミラーPMの反射面RPhにおける反射率88%との積により、スポット光SPaの走査開始点では、トータルでは77.9%(88%×88.5%)の反射率となる。また、描画ラインSLa上のスポット光SPaの走査終了点では、反射ミラーM6aへのビームLBaの入射角がθm2=60°となるので、その入射角での反射ミラーM6aの反射率は約81%となる。したがって、ポリゴンミラーPMの反射面RPhにおける反射率85.5%との積により、スポット光SPaの走査終了点では、トータルで69.3%(85.5%×81%)の反射率となる。以上のことから、ポリゴンミラーPMの反射面と反射ミラーM6aの反射面でのトータルの反射率の入射角依存性は、
図25中の特性CV2のようになる。なお、ポリゴンミラーPMの反射面と反射ミラーM6aの反射面との両方に対するビームLBaの入射角が45°のとき、トータルの反射率は約75.7%(87%×87%)となる。
【0147】
以上のように、反射ミラーM6a(M6b、M12a、M12bも同様)は、ポリゴンミラーPMで反射したビームLBa(LBb)が偏向される面(
図17の実施の形態ではYtZt面と平行、その他の実施の形態ではXtYt面と平行)と直交するような反射面を有するため、ビームLBa(LBb)の入射角の変化が大きく、
図25の特性CV2の場合、スポット光SPa(SPb)の強度は、走査開始点と走査終了点とで約8.6%の誤差が発生することになる。この値は必ずしも許容される範囲ではなく、必要であれば何らかの補正(調整)機構を設けることが望ましい。
図25に示した特性CV1は一例であって、反射ミラーの反射面が誘電体の多層膜で構成されている場合、入射角に対する反射率の変化率(傾き)は、さらに大きくなることもある。したがって、実際に使用するポリゴンミラーPMと反射ミラーM6a(M6b)の各々の反射率の特性CV1を実験やシミュレーション等で予め求め、描画ラインSLa(SLb)上のスポット光SPa(SPb)の走査位置に対するビーム強度の変化の傾向(強度ムラ、傾き等)を求めておく。
【0148】
そのビーム強度の変化の傾向が許容範囲以上である場合は、反射ミラーM6a、M6b、M12a、M12bの後のビーム光路中に、主走査方向に関する透過率が連続的または段階的に変化する減光フィルター(NDフィルター)板を設け、基板P上でのスポット光SPa(SPb)の走査位置に対する強度変化の傾向(強度ムラ、傾き等)を光学的に抑制、または補正することができる。減光フィルター板は、反射ミラーM6a、M6b(M12a、M12b)とfθレンズ系FTa、FTbとの間の光路中、またはfθレンズ系FTa、FTbと基板Pとの間の光路中に配置できる。fθレンズ系FTa、FTbの後の光路中には、描画ラインSLa、SLbを覆うような寸法で平凸状の第2のシリンドリカルレンズのCY2a、CY2bが設けられているので、このシリンドリカルレンズのCY2a、CY2bの近傍に減光フィルター板を設けてもよい。また、
図5、
図18、
図22に示したように、fθレンズ系FTa、FTbから射出する走査ビームLBa、LBbを基板Pに垂直入射させるように折り曲げる反射ミラーM7a、M7b、M15a、M15bが設けられている場合は、反射ミラーM7a、M7b、M15a、M15bの主走査方向に関する反射率を連続的または段階的に変化させる薄膜を反射面に蒸着したり、厚さ0.1mm以下の薄いガラスによる減光フィルター板を反射面に積層したりして、スポット光SPa(SPb)の主走査の位置に対する強度ムラを光学的に調整(補正)してもよい。
【0149】
スポット光SPa(SPb)の走査位置に対する強度変化の傾向(強度ムラ、傾き等)の補正は電気的な補正機構によっても可能である。
図26は、描画ユニットのポリゴンミラーPM(PMa、PMb)に入射する前のビームを描画データに基づいてオン/オフするために、先の
図5、
図7で示したように設けられる光学素子(音響光学変調素子、強度調整部材)AOMa、AOMbの制御系の一例を示すブロック図である。
図26において、ドライブ回路100は、光学素子AOMa(AOMb)にオン/オフ用の高周波の駆動信号Sdvを出力する。ここで、光学素子AOMa(AOMb)のオフ状態とは、光学素子AOMa(AOMb)に高周波の駆動信号Sdvが印加されずに、光源装置14からのビームLBをそのまま0次のビームLBuとして透過する状態であり、オン状態とは光学素子AOMa(AOMb)に高周波の駆動信号Sdvが印加され、光源装置14からのビームLBの1次回折光をビームLBa(LBb)として所定の回折角で偏向して出力している状態である。その回折角は、駆動信号Sdv(高周波信号)の周波数(例えば80MHz)によって決まる。さらに、駆動信号Sdvの振幅を変えると回折効率が変化して、1次回折光であるビームLBa(LBb)の強度を調整することができる。
【0150】
ドライブ回路100は、周波数が一定で振幅が安定している高周波発振器SFからの高周波信号と、1画素を1ビットに対応付けたビットマップ形式の描画データ(パターンデータ)を記憶するメモリから、画素単位でビットシリアルに読み出される描画ビット信号CLTと、制御信号DEとを入力する。ドライブ回路100は、描画ビット信号CLTが論理値「1」の間は高周波発振器SFからの高周波信号を駆動信号Sdvとして出力し、描画ビット信号CLTが論理値「0」の間は駆動信号Sdvの送出を禁止する。さらに、ドライブ回路100内は、高周波発振器SFからの高周波信号の振幅を制御信号DEに応じて可変とするパワーアンプが設けられている。制御信号DEは、アナログまたはデジタルな信号であり、例えば、パワーアンプの増幅率(ゲイン)を指示する値である。ここでは、制御信号DEをアナログ信号とする。
【0151】
ここで、
図27のタイムチャートを用いて、描画ラインSLa(SLb)に沿ってスポット光SPa(SPb)が走査されるパターン描画動作中に、ビームLBa(LBb)の強度を調整する様子を説明する。
図27において、原点信号は、ポリゴンミラーPMの反射面が所定の角度位置に回転して、基板P上でスポット光SPa(SPb)の走査が開始される直前の時点でパルス波形を発生する。したがって、ポリゴンミラーPMの反射面が8面の場合、原点信号のパルス波形はポリゴンミラーPMの1回転中に8回発生する。原点信号のパルス波形が発生してから一定の遅延時間Tsqの後に描画ON信号(論理値「1」)が発生し、描画ビット信号CLTがドライブ回路100に印加されて、ビームLBa(LBb)によるパターン描画が開始される。このとき制御信号DEの値(アナログ電圧)は、描画ON信号が論理値「1」になった時点での値Raから増大し、描画ON信号が論理値「1」から「0」に変わった時点で値Rbに達するような特性CCvで推移する。
図27において、制御信号DEの値がRoの場合、ドライブ回路100内のパワーアンプのゲインは初期値(例えば10倍)に設定される。
図27の場合、Ra<Ro<Rbに設定されているので、描画ON信号が「1」に立上る描画ラインSLa上の走査開始点付近では、パワーアンプのゲインが初期値よりも低く設定されるので、基板Pに投射されるスポット光SPa(SPb)の強度は、初期値よりも小さくなる。また、描画ON信号が「0」に降下する描画ラインSLa上の走査終了点付近では、パワーアンプのゲインが初期値よりも高く設定されるので、基板Pに投射されるスポット光SPa(SPb)の強度は、初期値よりも大きくなる。これによって、スポット光SPa(SPb)の主走査方向の位置に応じて発生する強度ムラを電気的に調整(補正)することができる。
【0152】
このような制御信号DEの波形は、描画ON信号や原点信号を入力する簡単な時定数回路(積分回路等)によって生成することができる。また、制御信号DEの特性CCvは、
図27では直線的に変化するものとしたが、適当なフィルタ回路によって非線形に変化させてもよい。制御信号DEをアナログ波形ではなくデジタル情報で与える場合は、パワーアンプのゲインを制御信号DEのデジタル値で可変できるように変形すればよい。
【0153】
以上の
図26、
図27で説明したように、光学素子AOMa(AOMb)に与える高周波の駆動信号Sdvの振幅を変化させて、基板Pに投射されるビームLBa(LBb)の強度を調整する電気的な調整機構は、複数の描画ユニットの各々から基板Pに投射されるビーム間の相対的な強度差を調整する際にも有効である。なお、ビームLBa(LBb)の強度を電気的に調整する機構は、光源装置14が紫外波長域のレーザビームを発生する半導体レーザ光源、或いは高輝度LED光源の場合、光源の発光輝度自体を調整することでも実現可能である。
【0154】
また、以上の
図5、
図6、
図17に示したように、反射面が8面のポリゴンミラーPMに向かう2本のビームLBa、LBbが互いに平行な状態であって、ポリゴンミラーPMの反射面のうち互いに90°の関係になっている反射面の各々でビームLBaとLBbを反射させる場合、ビームLBaによるスポット光SPaとビームLBbによるスポット光SPbとは、同じタイミングで基板P上を走査する。しかしながら、国際公開第2015/166910号パンフレットに開示されているように、1つの光源装置14からのビームLBを、時分割でビームLBaとLBbとに振り分ける場合、スポット光SPaによる主走査とスポット光SPbによる主走査とが同じタイミングで実行されないように設定する必要がある。そのための簡単な実施の形態は、
図5、
図6、
図17に示した構成において、ポリゴンミラーPMとして反射面が9面のものを使うことである。9面のポリゴンミラーにした場合、例えば、1つの反射面の回転方向の中央にビームLBaが入射しているタイミングでは、他のビームLBbは9面のポリゴンミラーの反射面と反射面との間(稜線部)に入射するようなタイミングとなる。すなわち、反射面の数を変えることで、スポット光SPaによる主走査とスポット光SPbによる主走査とのタイミングをずらすことが可能となる。また、
図5、
図6、
図17に示した構成で、8面のポリゴンミラーPMのままで、スポット光SPaによる主走査とスポット光SPbによる主走査とのタイミングをずらす場合は、ポリゴンミラーPMに向かうビームLBaとLBbとを互いに平行な状態から非平行な状態にすればよい。