(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記ポリプロピレン系樹脂層(X)で用いられるポリプロピレン系樹脂が、温度230℃、荷重2.16kg(21.2N)の条件下で測定されるメルトフローレート(MFR)が0.1〜20g/10分である、請求項1〜5のいずれかに記載の多層フィルム。
前記(メタ)アクリル系樹脂は、メタクリル樹脂(F)及び弾性体(R)を含み、メタクリル樹脂(F)は、メタクリル酸メチルに由来する構造単位を80質量%以上有するものであり、メタクリル樹脂(F)と弾性体(R)との合計100質量部に対して、メタクリル樹脂(F)の含有量が10〜99質量部であり、弾性体(R)の含有量が90〜1質量部である、請求項1〜6のいずれかに記載の多層フィルム。
前記弾性体(R)は、メタクリル酸エステルに由来する構造単位を含むメタクリル酸エステル重合体ブロック(g1)及びアクリル酸エステルに由来する構造単位を含むアクリル酸エステル重合体ブロック(g2)を有し、メタクリル酸エステル重合体ブロック(g1)を10質量%〜70質量%含有するアクリル系ブロック共重合体(G)である、請求項7に記載の多層フィルム。
前記弾性体(R)は、内層(e2)及び外層(e1)の少なくとも2層を有し、内層(e2)及び外層(e1)が中心層から最外層方向へこの順に配されている層構造を少なくとも一つ有している多層構造体(E)であり、外層(e1)はメタクリル酸メチル80質量%以上を含み、内層(e2)はアクリル酸アルキルエステル70〜99.8質量%及び架橋性単量体0.2〜30質量%を含むものである、請求項7に記載の多層フィルム。
【発明を実施するための形態】
【0010】
[多層フィルム]
本発明の多層フィルムは、ポリプロピレン系樹脂層(X)、芳香族ビニル化合物単位からなる重合体ブロック(a1)及び共役ジエン化合物単位からなる重合体ブロック(a2)を含有するブロック共重合体又はその水素添加物である熱可塑性エラストマー(A)100質量部に対してポリプロピレン系樹脂(B)1〜50質量部を含有する熱可塑性重合体組成物からなる中間層(Y)、及び加飾層(Z)を有し、これらが(X)−(Y)−(Z)の順で積層する少なくとも3層構造の多層フィルムである。以下、各層について順に説明する。
【0011】
<ポリプロピレン系樹脂層(X)>
ポリプロピレン系樹脂層(X)で用いられるポリプロピレン系樹脂としては、公知のポリプロピレン系樹脂を用いることができるが、プロピレンに由来する構造単位の含有量(以下、プロピレン含有量と略称することがある。)が60モル%以上であるものが好ましい。プロピレンに由来する構造単位の含有量は、好ましくは80モル%以上、より好ましくは80〜100モル%、さらに好ましくは90〜100モル%、特に好ましくは95〜99モル%である。プロピレン以外に由来する構造単位としては、例えば、エチレンに由来する構造単位、1−ブテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテン、4−メチル−1−ペンテン、1−ノネン、1−デセン等のα−オレフィンに由来する構造単位のほか、後述の変性剤に由来する構造単位なども挙げられる。
ポリプロピレン系樹脂層(X)で用いられるポリプロピレン系樹脂としては、例えば、ホモポリプロピレン、プロピレン−エチレンランダム共重合体、プロピレン−エチレンブロック共重合体、プロピレン−ブテンランダム共重合体、プロピレン−エチレン−ブテンランダム共重合体、プロピレン−ペンテンランダム共重合体、プロピレン−ヘキセンランダム共重合体、プロピレン−オクテンランダム共重合体、プロピレン−エチレン−ペンテンランダム共重合体、プロピレン−エチレン−ヘキセンランダム共重合体、及びこれらの変性物等が挙げられる。該変性物としては、ポリプロピレン系樹脂に変性剤をグラフト共重合して得られるものや、ポリプロピレン系樹脂の主鎖に変性剤を共重合させて得られるものなどが挙げられる。変性剤としては、例えば、マレイン酸、シトラコン酸、ハロゲン化マレイン酸、イタコン酸、シス−4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸、エンド−シス−ビシクロ[2.2.1]−5−ヘプテン−2,3−ジカルボン酸等の不飽和ジカルボン酸;不飽和ジカルボン酸のエステル、アミド又はイミド;無水マレイン酸、無水シトラコン酸、ハロゲン化無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水シス−4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸、無水エンド−シス−ビシクロ[2.2.1]−5−ヘプテン−2,3−ジカルボン酸等の不飽和ジカルボン酸無水物;アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸等の不飽和モノカルボン酸;不飽和モノカルボン酸のエステル(アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル等)、アミド又はイミド等が挙げられる。ポリプロピレン系樹脂層(X)で用いられるポリプロピレン系樹脂としては、変性されていないものが好ましい。
中でも、比較的安価、かつ容易に入手できるという観点から、ホモポリプロピレン、プロピレン−エチレンランダム共重合体、プロピレン−エチレンブロック共重合体が好ましい。さらに、ポリオレフィン系樹脂(β)との接着力の観点及び多層フィルム(α)の反り低減の観点から、プロピレン−エチレンランダム共重合体が特に好ましい。
ポリプロピレン系樹脂は、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。また、ポリプロピレン系樹脂層(X)は前記ポリプロピレン系樹脂の他に、本発明の効果を損ねない範囲で、他の樹脂を含有してもよい。
【0012】
ポリプロピレン系樹脂層(X)で用いられるポリプロピレン系樹脂の温度230℃、荷重2.16kg
(21.2N)の条件下で測定されるメルトフローレート(MFR)は、樹脂組成物(X)の成形加工性の観点から、0.1〜20g/10分であることが好ましく、0.3〜15g/10分であることがより好ましく、0.6〜10g/10分であることがさらに好ましい。なお、本明細書及び特許請求の範囲に記載の「メルトフローレート」は全て、JIS K 7210に準拠して測定した値である。
また、前記ポリプロピレン系樹脂の融点は、特に制限されるものではないが、好ましくは120〜180℃、より好ましくは120〜170℃である。
【0013】
ポリプロピレン系樹脂層(X)で用いられるポリプロピレン系樹脂の融解熱量は、加飾層(Z)との積層時の反り及びポリプロピレン系樹脂層(X)とポリオレフィン系樹脂(β)の間の接着強度の観点から、400〜800mJであることが好ましく、430〜780mJであることがより好ましい。
【0014】
<中間層(Y)>
中間層(Y)を構成する熱可塑性重合体組成物は、芳香族ビニル化合物単位からなる重合体ブロック(a1)及び共役ジエン化合物単位からなる重合体ブロック(a2)を含有するブロック共重合体又はその水素添加物である熱可塑性エラストマー(A)を含有する。前記熱可塑性重合体組成物における熱可塑性エラストマー(A)の含有量は50質量%以上であることが好ましく、65質量%以上がより好ましい。
【0015】
[熱可塑性エラストマー(A)]
前記熱可塑性エラストマー(A)に含まれる芳香族ビニル化合物単位からなる重合体ブロック(a1)を構成する芳香族ビニル化合物としては、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、2−メチルスチレン、3−メチルスチレン、4−メチルスチレン、4−プロピルスチレン、4−シクロヘキシルスチレン、4−ドデシルスチレン、2−エチル−4−ベンジルスチレン、4−(フェニルブチル)スチレン、1−ビニルナフタレン、2−ビニルナフタレンなどが挙げられる。芳香族ビニル化合物単位を含有する重合体ブロックは、これらの芳香族ビニル化合物の1種のみに由来する構造単位からなっていてもよいし、2種以上に由来する構造単位からなっていてもよい。中でも、スチレン、α−メチルスチレン、4−メチルスチレンが好ましい。
【0016】
芳香族ビニル化合物単位からなる重合体ブロック(a1)は、好ましくは芳香族ビニル化合物単位80質量%以上、より好ましくは芳香族ビニル化合物単位90質量%以上、さらに好ましくは芳香族ビニル化合物単位95質量%以上を含有する重合体ブロックである。重合体ブロック(a1)は、芳香族ビニル化合物単位のみを有していてもよいが、本発明の効果を損なわない限り、芳香族ビニル化合物単位と共に、他の共重合性単量体単位を有していてもよい。他の共重合性単量体としては、例えば、1−ブテン、ペンテン、ヘキセン、ブタジエン、イソプレン、メチルビニルエーテルなどが挙げられる。他の共重合性単量体単位を有する場合、その割合は、芳香族ビニル化合物単位及び他の共重合性単量体単位の合計量に対して、好ましくは20質量%以下、より好ましくは10質量%以下、さらに好ましくは5質量%以下である。
【0017】
前記熱可塑性エラストマー(A)に含まれる共役ジエン化合物単位からなる重合体ブロック(a2)を構成する共役ジエン化合物としては、例えば、ブタジエン、イソプレン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエン、1,3−ヘキサジエンなどが挙げられる。中でも、ブタジエン、イソプレンが好ましい。
共役ジエン化合物単位を含有する重合体ブロック(a2)は、これらの共役ジエン化合物の1種のみに由来する構造単位からなっていてもよいし、2種以上に由来する構造単位からなっていてもよい。特に、ブタジエン又はイソプレンに由来する構造単位、またはブタジエン及びイソプレンに由来する構造単位からなっていることが好ましい。
【0018】
共役ジエン化合物単位からなる重合体ブロック(a2)は、好ましくは共役ジエン化合物単位80質量%以上、より好ましくは共役ジエン化合物単位90質量%以上、さらに好ましくは共役ジエン化合物単位95質量%以上を含有する重合体ブロックである。前記重合体ブロック(a2)は、共役ジエン化合物単位のみを有していてもよいが、本発明の妨げにならない限り、共役ジエン化合物単位と共に、他の共重合性単量体単位を有していてもよい。他の共重合性単量体としては、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、4−メチルスチレンなどが挙げられる。他の共重合性単量体単位を有する場合、その割合は、共役ジエン化合物単位及び他の共重合性単量体単位の合計量に対して、好ましくは20質量%以下、より好ましくは10質量%以下、さらに好ましくは5質量%以下である。
【0019】
重合体ブロック(a2)を構成する共役ジエンの結合形態は特に制限されない。例えば、ブタジエンの場合には、1,2−結合、1,4−結合を、イソプレンの場合には、1,2−結合、3,4−結合、1,4−結合をとることができる。そのうちでも、共役ジエン化合物単位からなる重合体ブロックがブタジエンからなる場合、イソプレンからなる場合、又はブタジエンとイソプレンの両方からなる場合は、共役ジエン化合物単位からなる重合体ブロックにおける1,2−結合量及び3,4−結合量の合計が、35〜98モル%であることがより好ましく、40〜90モル%であることが更に好ましく、50〜80モル%であることがより更に好ましい。
なお、1,2−結合量及び3,4−結合量の合計量は、
1H−NMR測定によって算出できる。具体的には、1,2−結合及び3,4−結合単位に由来する4.2〜5.0ppmに存在するピークの積分値及び1,4−結合単位に由来する5.0〜5.45ppmに存在するピークの積分値との比から算出できる。
【0020】
熱可塑性エラストマー(A)における芳香族ビニル化合物単位からなる重合体ブロック(a1)と共役ジエン化合物単位からなる重合体ブロック(a2)との結合形態は特に制限されず、直鎖状、分岐状、放射状、又はこれらの2つ以上が組み合わさった結合形態のいずれであってもよいが、直鎖状の結合形態であることが好ましい。
直鎖状の結合形態の例としては、重合体ブロック(a1)をaで、重合体ブロック(a2)をbで表したとき、a−bで表されるジブロック共重合体、a−b−a又はb−а−bで表されるトリブロック共重合体、a−b−a−bで表されるテトラブロック共重合体、a−b−a−b−a又はb−a−b−a−bで表されるペンタブロック共重合体、(а−b)nX型共重合体(Xはカップリング残基を表し、nは2以上の整数を表す)、及びこれらの混合物が挙げられる。これらの中でも、トリブロック共重合体が好ましく、a−b−aで表されるトリブロック共重合体であることがより好ましい。
【0021】
熱可塑性エラストマー(A)における芳香族ビニル化合物単位からなる重合体ブロック(a1)の含有量は、その柔軟性、力学特性の観点から、熱可塑性エラストマー(A)全体に対して、好ましくは5〜75質量%、より好ましくは5〜60質量%、さらに好ましくは10〜40質量%である。
【0022】
熱可塑性エラストマー(A)は、耐熱性及び耐候性を向上させる観点から、重合体ブロック(a2)の一部又は全部が水素添加(以下、「水添」と略称することがある)されていることが好ましい。その際の水添率は、好ましくは80%以上、より好ましくは90%以上である。ここで、本明細書において、水添率は、水素添加反応前後のブロック共重合体のヨウ素価を測定して得られる値である。
【0023】
また、熱可塑性エラストマー(A)の重量平均分子量は、その力学特性、成形加工性の観点から、好ましくは30,000〜500,000、より好ましくは50,000〜400,000、より好ましくは60,000〜200,000、さらに好ましくは70,000〜200,000、特に好ましくは70,000〜190,000、最も好ましくは80,000〜180,000
である。ここで、重量平均分子量とは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)測定によって求めたポリスチレン換算の重量平均分子量である。
熱可塑性エラストマー(A)は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0024】
熱可塑性エラストマー(A)の製造方法としては、特に限定されないが、例えばアニオン重合法により製造することができる。具体的には、(i)アルキルリチウム化合物を開始剤として用い、前記芳香族ビニル化合物、前記共役ジエン化合物、次いで前記芳香族ビニル化合物を逐次重合させる方法;(ii)アルキルリチウム化合物を開始剤として用い、前記芳香族ビニル化合物、前記共役ジエン化合物を逐次重合させ、次いでカップリング剤を加えてカップリングする方法;(iii)ジリチウム化合物を開始剤として用い、前記共役ジエン化合物、次いで前記芳香族ビニル化合物を逐次重合させる方法などが挙げられる。
【0025】
上記アニオン重合の際、有機ルイス塩基を添加することによって、熱可塑性エラストマー(A)の1,2−結合量及び3,4−結合量を増やすことができ、該有機ルイス塩基の添加量によって、熱可塑性エラストマー(A)の1,2−結合量及び3,4−結合量を容易に制御することができる。
該有機ルイス塩基としては、例えば、酢酸エチルなどのエステル;トリエチルアミン、N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン(TMEDA)、N−メチルモルホリンなどのアミン;ピリジンなどの含窒素複素環式芳香族化合物;ジメチルアセトアミドなどのアミド;ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン(THF)、ジオキサンなどのエーテル;エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテルなどのグリコールエーテル;ジメチルスルホキシドなどのスルホキシド;アセトン、メチルエチルケトンなどのケトンなどが挙げられる。
【0026】
さらに、上記で得られた未水添の熱可塑性エラストマー(A)を水素添加反応に付すことによって、熱可塑性エラストマー(A)の水素添加物を製造することができる。水素添加反応は、反応及び水素添加触媒に対して不活性な溶媒に上記で得られた未水添の熱可塑性エラストマー(A)を溶解させるか、又は、未水添の熱可塑性エラストマー(A)を前記の反応液から単離せずにそのまま用い、水素添加触媒の存在下、水素と反応させることにより行うことができる。
【0027】
また、熱可塑性エラストマー(A)としては、市販品を使用することもできる。
【0028】
[ポリプロピレン系樹脂(B)]
中間層(Y)を構成する熱可塑性重合体組成物は、さらにポリプロピレン系樹脂(B)を含有する。ポリプロピレン系樹脂(B)を含有することにより、熱可塑性重合体組成物は製膜性に優れ、得られる多層フィルムは共押出製膜性に優れるものとなる。
【0029】
ポリプロピレン系樹脂(B)としては、公知のポリプロピレン系樹脂を用いることができるが、プロピレンに由来する構造単位の含有量が60モル%以上であるものが好ましい。プロピレンに由来する構造単位の含有量は、好ましくは80モル%以上、より好ましくは80〜100モル%、さらに好ましくは90〜100モル%、特に好ましくは95〜99モル%である。プロピレン以外に由来する構造単位としては、例えば、エチレンに由来する構造単位、1−ブテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテン、4−メチル−1−ペンテン、1−ノネン、1−デセン等のα−オレフィンに由来する構造単位のほか、後述の変性剤に由来する構造単位なども挙げられる。
ポリプロピレン系樹脂(B)としては、例えば、ホモポリプロピレン、プロピレン−エチレンランダム共重合体、プロピレン−エチレンブロック共重合体、プロピレン−ブテンランダム共重合体、プロピレン−エチレン−ブテンランダム共重合体、プロピレン−ペンテンランダム共重合体、プロピレン−ヘキセンランダム共重合体、プロピレン−オクテンランダム共重合体、プロピレン−エチレン−ペンテンランダム共重合体、プロピレン−エチレン−ヘキセンランダム共重合体、及びこれらの変性物等が挙げられる。該変性物としては、ポリプロピレン系樹脂に変性剤をグラフト共重合して得られるものや、ポリプロピレン系樹脂の主鎖に変性剤を共重合させて得られるものなどが挙げられる。
【0030】
これらの中でも、ポリプロピレン系樹脂(B)としては、変性物である極性基含有ポリプロピレン系樹脂(B1)が好ましい。ポリプロピレン系樹脂(B)として極性基含有ポリプロピレン系樹脂(B1)を用いることにより、製膜性に優れるだけでなく、熱可塑性重合体組成物の接着力も向上し、中間層(Y)は金属成分に対しても良好な接着性能を発揮し、ポリプロピレン系樹脂層(X)及び加飾層(Z)を強固に接着することができ、層間剥離を防ぐことができる。
極性基含有ポリプロピレン系樹脂(B1)が有する極性基としては、例えば、(メタ)アクリロイルオキシ基;水酸基;アミド基;塩素原子などのハロゲン原子;カルボキシル基;酸無水物基などが挙げられる。該極性基含有ポリプロピレン系樹脂(B1)の製造方法に特に制限はないが、プロピレン及び変性剤である極性基含有共重合性単量体を、公知の方法でランダム共重合、ブロック共重合又はグラフト共重合することによって得られる。これらの中でも、ランダム共重合、グラフト共重合が好ましく、
グラフト共重合がより好ましい。このほかにも、ポリプロピレン系樹脂を公知の方法で酸化又は塩素化などの反応に付することによっても得られる。
【0031】
極性基含有共重合性単量体としては、例えば、酢酸ビニル、塩化ビニル、酸化エチレン、酸化プロピレン、アクリルアミド、不飽和カルボン酸又はそのエステルもしくは無水物が挙げられる。中でも、不飽和カルボン酸又はそのエステルもしくは無水物が好ましい。不飽和カルボン酸又はそのエステルもしくは無水物としては、例えば、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸エステル、マレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、無水イタコン酸、ハイミック酸、無水ハイミック酸などが挙げられる。中でも、マレイン酸、無水マレイン酸がより好ましい。これらの極性基含有共重合性単量体は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせてもよい。
極性基含有ポリプロピレン系樹脂(B1)としては、接着性の観点から、極性基としてカルボキシル基を含有するポリプロピレン、つまりカルボン酸変性ポリプロピレン系樹脂が好ましく、マレイン酸変性ポリプロピレン系樹脂、無水マレイン酸変性ポリプロピレン系樹脂がより好ましい。
【0032】
極性基含有ポリプロピレン系樹脂(B1)が有する極性基は、重合後に後処理されていてもよい。例えば、(メタ)アクリル酸基やカルボキシル基の金属イオンによる中和を行ってアイオノマーとしていてもよいし、メタノールやエタノールなどによってエステル化していてもよい。また、酢酸ビニルの加水分解などを行っていてもよい。
【0033】
極性基含有ポリプロピレン系樹脂(B1)が有する極性基含有構造単位の、極性基含有ポリプロピレン系樹脂(B1)が有する全構造単位に対する割合は、好ましくは0.01〜20質量%である。0.01質量%以上であれば接着性がより高くなる。極性基含有構造単位の割合が20質量%以下であれば、熱可塑性エラストマー(A)との親和性が向上し、力学特性が良好となり、ゲルの生成も抑えられる。同様の観点から、該割合は、好ましくは0.01〜7質量%、より好ましくは0.01〜5質量%、より好ましくは0.1〜3質量%、さらに好ましくは0.2〜1質量%である。極性基含有構造単位の割合が最適になるよう、高濃度で極性基含有構造単位を有するポリプロピレン系樹脂を、極性基含有構造単位を有しないポリプロピレン系樹脂で希釈したものを用いてもよい。
【0034】
中間層(Y)を構成する熱可塑性重合体組成物は、熱可塑性エラストマー(A)100質量部に対して、ポリプロピレン系樹脂(B)1〜50質量部を含有する。ポリプロピレン系樹脂(B)が1質量部より少ないと、中間層(Y)の製膜性が低下し、得られる多層フィルムの共押出製膜性が悪化する場合がある。一方、ポリプロピレン系樹脂(B)が50質量部より多いと、加飾層(Z)との接着力が低下し、層間剥離を起こす場合がある。これらの観点から、ポリプロピレン系樹脂(B)の含有量は、熱可塑性エラストマー(A)100質量部に対して、好ましくは5質量部以上であり、好ましくは45質量部以下である。
これらより、ポリプロピレン系樹脂(B)の含有量は、熱可塑性エラストマー(A)100質量部に対して、好ましくは5〜45質量部である。
【0035】
[その他の任意成分]
中間層(Y)を構成する熱可塑性重合体組成物は、本発明の効果を著しく損なわない範囲で、必要に応じてオレフィン系重合体、スチレン系重合体、ポリフェニレンエーテル系樹脂、ポリエチレングリコールなど、他の熱可塑性重合体を含有していてもよい。オレフィン系重合体としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、プロピレンとエチレンや1−ブテンなどの他のα−オレフィンとのブロック共重合体やランダム共重合体などが挙げられる。
他の熱可塑性重合体を含有させる場合、その含有量は、熱可塑性エラストマー(A)100質量部に対して、好ましくは100質量部以下、より好ましくは50質量部以下、より好ましくは20質量部以下、さらに好ましくは10質量部以下、特に好ましくは5質量部以下である。
【0036】
中間層(Y)を構成する熱可塑性重合体組成物は、発明の効果を損なわない範囲で、必要に応じて粘着付与樹脂、軟化剤、酸化防止剤、滑剤、光安定剤、加工助剤、顔料や色素などの着色剤、難燃剤、帯電防止剤、艶消し剤、シリコンオイル、ブロッキング防止剤、紫外線吸収剤、離型剤、発泡剤、抗菌剤、防カビ剤、香料などを含有していてもよい。
粘着付与樹脂としては、例えば脂肪族不飽和炭化水素樹脂、脂肪族飽和炭化水素樹脂、脂環式不飽和炭化水素樹脂、脂環式飽和炭化水素樹脂、芳香族炭化水素樹脂、水添芳香族炭化水素樹脂、ロジンエステル樹脂、水添ロジンエステル樹脂、テルペンフェノール樹脂、水添テルペンフェノール樹脂、テルペン樹脂、水添テルペン樹脂、芳香族炭化水素変性テルペン樹脂、クマロン・インデン樹脂、フェノール樹脂、キシレン樹脂などが挙げられる。
軟化剤としては、一般にゴム、プラスチックスに用いられる軟化剤を使用できる。例えばパラフィン系、ナフテン系、芳香族系のプロセスオイル;ジオクチルフタレート、ジブチルフタレートなどのフタル酸誘導体;ホワイトオイル、ミネラルオイル、エチレンとα−オレフィンのオリゴマー、パラフィンワックス、流動パラフィン、ポリブテン、低分子量ポリブタジエン、低分子量ポリイソプレンなどが挙げられる。これらの中でもプロセスオイルが好ましく、パラフィン系プロセスオイルがより好ましい。
酸化防止剤としては、例えばヒンダードフェノール系、リン系、ラクトン系、ヒドロキシル系の酸化防止剤などが挙げられる。これらの中でも、ヒンダードフェノール系酸化防止剤が好ましい。
【0037】
中間層(Y)を構成する熱可塑性重合体組成物が粘着付与樹脂を含有する場合、その含有量は、製膜性、熱安定性、製造コストの観点から1質量%未満であることが好ましく、0.5質量%未満であることがより好ましい。
【0038】
中間層(Y)を構成する熱可塑性重合体組成物の調製方法に特に制限はなく、前記成分を均一に混合し得る方法であればいずれの方法で調製してもよく、通常は溶融混練法が用いられる。溶融混練は、例えば、単軸押出機、2軸押出機、ニーダー、バッチミキサー、ローラー、バンバリーミキサーなどの溶融混練装置を用いて行うことができ、通常、好ましくは170〜270℃で溶融混練することにより、熱可塑性重合体組成物を得ることができる。
【0039】
こうして得られた熱可塑性重合体組成物は、JIS K 7210に準じた方法で、温度230℃、荷重2.16kg(21.2N)の条件下で測定したメルトフローレート(MFR)が、好ましくは1〜50g/10分、より好ましくは1〜30g/10分、さらに好ましくは1〜20g/
10分の範囲にある。MFRがこの範囲であると、良好な成形加工性が得られ、中間層(Y)の作製が容易となる。
【0040】
熱可塑性重合体組成物の接着力は、圧縮成形法において15N/25mm以上であることが好ましく、30N/25mm以上であることがより好ましく、60N/25mm以上であることがさらに好ましい。ここで、接着力はJIS K 6854−2に準じて測定した値である。
【0041】
<加飾層(Z)>
加飾層(Z)としては、樹脂フィルム、不織布、人工皮革、天然皮革などを用いることができる。中でも、加飾層(Z)としては樹脂フィルムからなる層を少なくとも有するものが特に好ましい。
前記樹脂フィルムを構成する樹脂としては、例えばポリスチレン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、アクリロニトリルスチレン樹脂、アクリロニトリルブタジエンスチレン樹脂、ポリカーボネート樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレートなどのポリエステル樹脂;ナイロン6、ナイロン66、ポリアミドエラストマーなどのポリアミド、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリビニルアルコール、エチレン−ビニルアルコール共重合体、ポリアセタール、ポリフッ化ビニリデン、ポリウレタンなどが挙げられる。中でも透明性、耐候性、表面光沢性、耐擦傷性の観点から(メタ)アクリル系樹脂が好ましい。かかる(メタ)アクリル系樹脂としては、メタクリル樹脂(F)及び弾性体(R)を含む(メタ)アクリル系樹脂がより好ましい。
【0042】
[メタクリル樹脂(F)]
メタクリル樹脂(F)はメタクリル酸メチルに由来する構造単位を好ましくは80質量%以上、より好ましくは90質量%以上有する。換言すると、メタクリル樹脂(F)はメタクリル酸メチル以外の単量体に由来する構造単位を好ましくは20質量%以下、より好ましくは10質量%以下有し、メタクリル酸メチルのみを単量体とする重合体であってもよい。
【0043】
係るメタクリル酸メチル以外の単量体としては、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−プロピル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸s−ブチル、アクリル酸tert−ブチル、アクリル酸アミル、アクリル酸イソアミル、アクリル酸n−へキシル、アクリル酸2−エチルへキシル、アクリル酸ペンタデシル、アクリル酸ドデシル、アクリル酸フェニル、アクリル酸ベンジル、アクリル酸フェノキシエチル、アクリル酸2−ヒドロキシエチル、アクリル酸2−エトキシエチル、アクリル酸グリシジル、アクリル酸アリル、アクリル酸シクロへキシル、アクリル酸ノルボルネニル、アクリル酸イソボニルなどのアクリル酸エステル;メタクリル酸エチル、メタクリル酸n−プロピル、メタクリル酸イソプロピル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸s−ブチル、メタクリル酸tert−ブチル、メタクリル酸アミル、メタクリル酸イソアミル、メタクリル酸n−へキシル、メタクリル酸2−エチルへキシル、メタクリル酸ペンタデシル、メタクリル酸ドデシル、メタクリル酸フェニル、メタクリル酸ベンジル、メタクリル酸フェノキシエチル、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸2−エトキシエチル、メタクリル酸グリシジル、メタクリル酸アリル、メタクリル酸シクロへキシル、メタクリル酸ノルボルネニル、メタクリル酸イソボニルなどのメタクリル酸メチル以外のメタクリル酸エステル;アクリル酸、メタクリル酸、無水マレイン酸、マレイン酸、イタコン酸などの不飽和カルボン酸;エチレン、プロピレン、1−ブテン、イソブチレン、1−オクテンなどのオレフィン;ブタジエン、イソプレン、ミルセンなどの共役ジエン;スチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン、m−メチルスチレンなどの芳香族ビニル化合物;アクリルアミド、メタクリルアミド、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、酢酸ビニル、ビニルピリジン、ビニルケトン、塩化ビニル、塩化ビニリデン、フッ化ビニリデンなどが挙げられる。
【0044】
メタクリル樹脂(F)の立体規則性は特に制限されず、例えばイソタクチック、ヘテロタクチック、シンジオタクチックなどの立体規則性を有するものを用いてもよい。
【0045】
メタクリル樹脂(F)の重量平均分子量は好ましくは20,000〜180,000の範囲であり、より好ましくは30,000〜150,000の範囲である。重量平均分子量が20,000未満だと耐衝撃性や靭性が低下する傾向となり、180,000より大きいとメタクリル樹脂(F)の流動性が低下し成形加工性が低下する傾向となる。
【0046】
メタクリル樹脂(F)の製造方法は特に限定されず、メタクリル酸メチルを80質量%以上含む単量体(混合物)を重合するか、メタクリル酸メチル以外の単量体と共重合して得られる。また、メタクリル樹脂(F)として市販品を用いてもよい。係る市販品としては、例えば「パラペットH1000B」(MFR:22g/10分(230℃、37.3N))、「パラペットGF」(MFR:15g/10分(230℃、37.3N))、「パラペットEH」(MFR:1.3g/10分(230℃、37.3N))、「パラペットHRL」(MFR:2.0g/10分(230℃、37.3N))、「パラペットHRS」(MFR:2.4g/10分(230℃、37.3N))及び「パラペットG」(MFR:8.0g/10分(230℃、37.3N))[いずれも商品名、株式会社クラレ製]などが挙げられる。
【0047】
[弾性体(R)]
弾性体(R)としてはブタジエン系ゴム、クロロプレン系ゴム、ブロック共重合体、多層構造体などが挙げられ、これらを単独で又は組み合わせて用いてもよい。これらの中でも透明性、耐衝撃性、分散性の観点からブロック共重合体又は多層構造体が好ましく、アクリル系ブロック共重合体(G)又は多層構造体(E)がより好ましい。
【0048】
[アクリル系ブロック共重合体(G)]
アクリル系ブロック共重合体(G)はメタクリル酸エステル重合体ブロック(g1)及びアクリル酸エステル重合体ブロック(g2)を有する。ブロック共重合体(G)はメタクリル酸エステル重合体ブロック(g1)及びアクリル酸エステル重合体ブロック(g2)をそれぞれ1つのみ有していてもよいし、複数有していてもよい。
【0049】
メタクリル酸エステル重合体ブロック(g1)はメタクリル酸エステルに由来する構造単位を主たる構成単位とするものである。メタクリル酸エステル重合体ブロック(g1)におけるメタクリル酸エステルに由来する構造単位の割合は、延伸性、表面硬度の観点から、好ましくは80質量%以上、より好ましくは90質量%以上、さらに好ましくは95質量%以上、特に好ましくは98質量%以上である。
【0050】
係るメタクリル酸エステルとしては、例えばメタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n−プロピル、メタクリル酸イソプロピル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸sec−ブチル、メタクリル酸tert−ブチル、メタクリル酸アミル、メタクリル酸イソアミル、メタクリル酸n−ヘキシル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸ペンタデシル、メタクリル酸ドデシル、メタクリル酸イソボルニル、メタクリル酸フェニル、メタクリル酸ベンジル、メタクリル酸フェノキシエチル、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸2−メトキシエチル、メタクリル酸グリシジル、メタクリル酸アリルなどが挙げられ、これらを1種単独で又は2種以上を組み合わせて重合できる。これらの中でも、透明性、耐熱性の観点から、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸イソプロピル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸tert−ブチル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸イソボルニルなどのメタクリル酸アルキルエステルが好ましく、メタクリル酸メチルがより好ましい。
【0051】
メタクリル酸エステル重合体ブロック(g1)はメタクリル酸エステル以外の単量体に由来する構造単位を含んでもよく、延伸性及び表面硬度の観点から、その割合は好ましくは20質量%以下、より好ましくは10質量%以下、さらに好ましくは5質量%以下、特に好ましくは2質量%以下である。前記メタクリル酸エステル以外の単量体としては、例えばアクリル酸エステル、不飽和カルボン酸、芳香族ビニル化合物、オレフィン、共役ジエン、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、アクリルアミド、メタクリルアミド、酢酸ビニル、ビニルピリジン、ビニルケトン、塩化ビニル、塩化ビニリデン、フッ化ビニリデンなどが挙げられ、これらを1種単独で又は2種以上を組み合わせて使用できる。
【0052】
メタクリル酸エステル重合体ブロック(g1)の重量平均分子量は好ましくは5,000〜150,000の範囲であり、より好ましくは8,000〜120,000の範囲であり、さらに好ましくは12,000〜100,000の範囲である。重量平均分子量が5,000未満だと弾性率が低く高温で延伸成形する場合に皺が生じる傾向となり、150,000より大きいと延伸成形時に破断しやすくなる傾向となる。
【0053】
アクリル系ブロック共重合体(G)がメタクリル酸エステル重合体ブロック(g1)を複数有する場合、それぞれのメタクリル酸エステル重合体ブロック(g1)を構成する構造単位の組成比や分子量は相互に同じであってもよいし、異なっていてもよい。
【0054】
アクリル系ブロック共重合体(G)におけるメタクリル酸エステル重合体ブロック(g1)の割合は、透明性、柔軟性、成形加工性及び表面平滑性の観点から、好ましくは10質量%〜70質量%の範囲であり、より好ましくは25質量%〜60質量%の範囲である。アクリル系ブロック共重合体(G)にメタクリル酸エステル重合体ブロック(g1)が複数含まれる場合、前記の割合はすべてのメタクリル酸エステル重合体ブロック(g1)の合計質量に基づいて算出する。
【0055】
アクリル酸エステル重合体ブロック(g2)はアクリル酸エステルに由来する構造単位を主たる構成単位とするものである。アクリル酸エステル重合体ブロック(g2)におけるアクリル酸エステルに由来する構造単位の割合は、三次元被覆成形性及び延伸性の観点から好ましくは45質量%以上、より好ましくは50質量%以上、さらに好ましくは60質量%以上、特に好ましくは90質量%以上である。
【0056】
係るアクリル酸エステルとしては、例えばアクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−プロピル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸sec−ブチル、アクリル酸tert−ブチル、アクリル酸アミル、アクリル酸イソアミル、アクリル酸n−ヘキシル、アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸ペンタデシル、アクリル酸ドデシル、アクリル酸イソボルニル、アクリル酸フェニル、アクリル酸ベンジル、アクリル酸フェノキシエチル、アクリル酸2−ヒドロキシエチル、アクリル酸2−メトキシエチル、アクリル酸グリシジル、アクリル酸アリルなどが挙げられ、これらを1種単独で又は2種以上を組み合わせて重合できる。
【0057】
アクリル酸エステル重合体ブロック(g2)は、延伸性、透明性の観点から、アクリル酸アルキルエステル及び(メタ)アクリル酸芳香族エステルからなることが好ましい。アクリル酸アルキルエステルとしては、例えばアクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸ドデシルなどが挙げられる。これらのうち、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシルが好ましい。
【0058】
(メタ)アクリル酸芳香族エステルはアクリル酸芳香族エステル又はメタクリル酸芳香族エステルを意味し、芳香環を含む化合物が(メタ)アクリル酸にエステル結合してなる。係る(メタ)アクリル酸芳香族エステルとしては、例えばアクリル酸フェニル、アクリル酸ベンジル、アクリル酸フェノキシエチル、アクリル酸スチリル、メタクリル酸フェニル、メタクリル酸ベンジル、メタクリル酸フェノキシエチル、メタクリル酸スチリルなどが挙げられる。中でも透明性の観点から、メタクリル酸フェニル、メタクリル酸ベンジル、メタクリル酸フェノキシエチル、アクリル酸ベンジルが好ましい。
【0059】
アクリル酸エステル重合体ブロック(g2)がアクリル酸アルキルエステル及び(メタ)アクリル酸芳香族エステルからなる場合、透明性の観点から該アクリル酸エステル重合体ブロック(g2)はアクリル酸アルキルエステルに由来する構造単位50〜90質量%及び(メタ)アクリル酸芳香族エステルに由来する構造単位50〜10質量%を含むことが好ましく、アクリル酸アルキルエステルに由来する構造単位60〜80質量%及び(メタ)アクリル酸芳香族エステルに由来する構造単位40〜20質量%を含むことがより好ましい。
【0060】
アクリル酸エステル重合体ブロック(g2)はアクリル酸エステル以外の単量体に由来する構造単位を含んでもよく、アクリル酸エステル重合体ブロック(g2)においてその含有量は好ましくは55質量%以下であり、より好ましくは50質量%以下であり、さらに好ましくは40質量%以下であり、特に好ましくは10質量%以下である。アクリル酸エステル以外の単量体としては、例えばメタクリル酸エステル、不飽和カルボン酸、芳香族ビニル化合物、オレフィン、共役ジエン、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、アクリルアミド、メタクリルアミド、酢酸ビニル、ビニルピリジン、ビニルケトン、塩化ビニル、塩化ビニリデン、フッ化ビニリデンなどが挙げられ、これらを1種単独で又は2種以上を組み合わせて使用できる。
【0061】
アクリル酸エステル重合体ブロック(g2)の重量平均分子量は、好ましくは5,000〜120,000の範囲であり、より好ましくは15,000〜110,000の範囲であり、さらに好ましくは30,000〜100,000の範囲である。
【0062】
ブロック共重合体(G)がアクリル酸エステル重合体ブロック(g2)を複数有する場合、それぞれのアクリル酸エステル重合体ブロック(g2)を構成する構造単位の組成比や分子量は相互に同じであってもよいし、異なっていてもよい。
【0063】
なお、メタクリル酸エステル重合体ブロック(g1)の重量平均分子量及びアクリル酸エステル重合体ブロック(g2)の重量平均分子量は、ブロック共重合体(G)を製造する過程において、重合中及び重合後にサンプリングを行なって測定した中間生成物及び最終生成物(ブロック共重合体(G))の重量平均分子量から算出される値である。各重量平均分子量はGPCで測定した標準ポリスチレン換算値である。
【0064】
アクリル系ブロック共重合体(G)におけるアクリル酸エステル重合体ブロック(g2)の割合は、透明性、柔軟性、成形加工性、表面平滑性の観点から、好ましくは30〜90質量%の範囲であり、より好ましくは40〜75質量%の範囲である。アクリル系ブロック共重合体(G)にアクリル酸エステル重合体ブロック(g2)が複数含まれる場合、係る割合はすべてのアクリル酸エステル重合体ブロック(g2)の合計質量に基づいて算出する。
【0065】
アクリル系ブロック共重合体(G)におけるメタクリル酸エステル重合体ブロック(g1)とアクリル酸エステル重合体ブロック(g2)の結合形態は特に限定されず、例えばメタクリル酸エステル重合体ブロック(g1)の一末端にアクリル酸エステル重合体ブロック(g2)の一末端が繋がった構造((g1)−(g2)構造);メタクリル酸エステル重合体ブロック(g1)の両末端にアクリル酸エステル重合体ブロック(g2)の一末端が繋がった構造((g2)−(g1)−(g2)構造);アクリル酸エステル重合体ブロック(
g2)の両末端にメタクリル酸エステル重合体ブロック(g1)の一末端が繋がった構造((g1)−(g2)−(g1)構造)など、メタクリル酸エステル重合体ブロック(g1)及びアクリル酸エステル重合体ブロック(g2)が直列に繋がった構造が挙げられる。また、複数の(g1)−(g2)構造のブロック共重合体の一末端が繋がった放射状構造([(g1)−(g2)−]nX構造及び[(g2)−(g1)−]nX構造);複数の(g1)−(g2)−(g1)構造のブロック共重合体の一末端が繋がった放射状構造([(g1)−(g2)−(g1)−]nX構造);複数の(g2)−(g1)−(g2)構造のブロック共重合体の一末端が繋がった放射状構造([(g2)−(g1)−(g2)−]nX構造)などを有する星型ブロック共重合体や、分岐構造を有するブロック共重合体などが挙げられる。なお、ここでXはカップリング剤残基を表す。これらのうち、表面平滑性及び耐衝撃性の観点から、ジブロック共重合体、トリブロック共重合体、星型ブロック共重合体が好ましく、(g1)−(g2)構造のジブロック共重合体、(g1)−(g2)−(g1)構造のトリブロック共重合体、[(g1)−(g2)−]nX構造の星形ブロック共重合体、[(g1)−(g2)−(g1)−]nX構造の星形ブロック共重合体がより好ましく、(g1)−(g2)−(g1)構造のトリブロック共重合体がさらに好ましい。
【0066】
アクリル系ブロック共重合体(G)はメタクリル酸エステル重合体ブロック(g1)及びアクリル酸エステル重合体ブロック(g2)以外の重合体ブロック(g3)を有してもよい。重合体ブロック(g3)を構成する主たる構造単位はメタクリル酸エステル及びアクリル酸エステル以外の単量体に由来する構造単位であり、係る単量体としては、例えばエチレン、プロピレン、1−ブテン、イソブチレン、1−オクテンなどのオレフィン;ブタジエン、イソプレン、ミルセンなどの共役ジエン;スチレン、α−メチルスチレン、p-メチルスチレン、m−メチルスチレンなどの芳香族ビニル化合物;酢酸ビニル、ビニル
ピリジン、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、ビニルケトン、塩化ビニル、塩化ビニリデン、フッ化ビニリデン、アクリルアミド、メタクリルアミド、ε−カプロラクトン、バレロラクトンなどが挙げられる。
【0067】
アクリル系ブロック共重合体(G)は、分子鎖中又は分子鎖末端に水酸基、カルボキシル基、酸無水物
基、アミノ基などの官能基を有してもよい。
【0068】
アクリル系ブロック共重合体(G)の重量平均分子量は好ましくは60,000〜400,000の範囲であり、より好ましくは60,000〜200,000の範囲である。アクリル系ブロック共重合体(G)の重量平均分子量が60,000未満だと溶融押出成形において十分な溶融張力を保持できず良好なフィルムが得られにくく、また得られたフィルムの破断強度などの力学物性が低下する傾向となり、400,000より大きいと溶融樹脂の粘度が高くなり、溶融押出成形で得られるフィルムの表面に微細なシボ調の凹凸や未溶融物(高分子量体)に起因するブツが生じ、良好なフィルムが得られにくい傾向となる。
【0069】
アクリル系ブロック共重合体(G)の分子量分布は好ましくは1.0〜2.0の範囲であり、より好ましくは1.0〜1.6の範囲である。このような範囲内に分子量分布があることで、加飾層においてブツの発生原因となる未溶融物の含有量を低減できる。なお、重量平均分子量及び数平均分子量はGPCで測定した標準ポリスチレン換算の分子量である。
【0070】
アクリル系ブロック共重合体(G)の屈折率は好ましくは1.485〜1.495の範囲であり、より好ましくは1.487〜1.493の範囲である。屈折率がこの範囲内であると、得られる基材層の透明性が高くなる。なお、屈折率は波長587.6nm(d線)で測定した値である。
【0071】
アクリル系ブロック共重合体(G)の製造方法は特に限定されず、公知の手法に準じた方法を採用でき、例えば各重合体ブロックを構成する単量体をリビング重合する方法が一般に使用される。このようなリビング重合の手法としては、例えば有機アルカリ金属化合物を重合開始剤として用いアルカリ金属又はアルカリ土類金属塩などの鉱酸塩の存在下でアニオン重合する方法;有機アルカリ金属化合物を重合開始剤として用い有機アルミニウム化合物の存在下でアニオン重合する方法;有機希土類金属錯体を重合開始剤として用い重合する方法;α−ハロゲン化エステル化合物を開始剤として用い銅化合物の存在下でラジカル重合する方法などが挙げられる。また、多価ラジカル重合開始剤や多価ラジカル連鎖移動剤を用いて各ブロックを構成するモノマーを重合させ、アクリル系ブロック共重合体(G)を含有する混合物として製造する方法なども挙げられる。これらの方法のうち、アクリル系ブロック共重合体(G)を高純度で得られ、また分子量や組成比の制御が容易であり、かつ経済的であることから、有機アルカリ金属化合物を重合開始剤として用い有機アルミニウム化合物の存在下でアニオン重合する方法が好ましい。
【0072】
[多層構造体(E)]
多層構造体(E)は内層(e2)及び外層(e1)の少なくとも2層を有し、内層(e2)及び外層(e1)が中心層から最外層方向へこの順に配されている層構造を少なくとも一つ有している。多層構造体(E)は内層(e2)の内側又は外層(e1)の外側にさらに架橋性樹脂層(e3)を有してもよい。
【0073】
内層(e2)は、アクリル酸アルキルエステル及び架橋性単量体を有する単量体混合物を共重合してなる架橋弾性体から構成される層である。
係るアクリル酸アルキルエステルとしては、アルキル基の炭素数が2〜8の範囲であるアクリル酸アルキルエステルが好ましく用いられ、ブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレートなどが挙げられる。内層(e2)の共重合体を形成させるために使用される全単量体混合物におけるアクリル酸アルキルエステルの割合は、耐衝撃性の点から、好ましくは70〜99.8質量%の範囲であり、より好ましくは80〜90質量%である。
【0074】
内層(e2)に用いられる架橋性単量体は一分子内に重合性炭素−炭素二重結合を少なくとも2個有するものであればよく、例えばエチレングリコールジメタクリレート、ブタンジオールジメタクリレートなどグリコール類の不飽和カルボン酸ジエステル、アクリル酸アリル、メタクリル酸アリル、ケイ皮酸アリルなど不飽和カルボン酸のアルケニルエステル、フタル酸ジアリル、マレイン酸ジアリル、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレートなど多塩基酸のポリアルケニルエステル、トリメチロールプロパントリアクリレートなど多価アルコールの不飽和カルボン酸エステル、ジビニルベンゼンなどが挙げられ、不飽和カルボン酸のアルケニルエステルや多塩基酸のポリアルケニルエステルが好ましい。全単量体混合物における架橋性単量体の量は、基材層の耐衝撃性、耐熱性及び表面硬度を向上させる観点から、0.2〜30質量%の範囲が好ましく、0.2〜10質量%の範囲がより好ましい。
【0075】
内層(e2)を形成する単量体混合物は他の単官能性単量体をさらに有してもよい。係る単官能性単量体は、例えばメタクリル酸メチル、エチルメタクリレート、n−プロピルメタクリレート、イソプロピルメタクリレート、n−ブチルメタクリレート、イソブチルメタクリレート、ペンチルメタクリレート、ヘキシルメタクリレート、オクチルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、ドデシルメタクリレート、ミリスチルメタクリレート、パルミチルメタクリレート、ステアリルメタクリレート、ベヘニルメタクリレートなどのアルキルメタクリレート;フェニルメタクリレートなどのメタクリル酸とフェノール類のエステル、ベンジルメタクリレートなどのメタクリル酸と芳香族アルコールとのエステルなどのメタクリル酸エステル;スチレン、α−メチルスチレン、1−ビニルナフタレン、3−メチルスチレン、4−プロピルスチレン、4−シクロヘキシルスチレン、4−ドデシルスチレン、2−エチル−4−ベンジルスチレン、4−(フェニルブチル)スチレン、ハロゲン化スチレンなどの芳香族ビニル系単量体;アクリロニトリル、メタクリロニトリルなどのシアン化ビニル系単量体;ブタジエン、イソプレンなどの共役ジエン系単量体などが挙げられる。全単量体混合物における他の単官能性単量体の量は、基材層の耐衝撃性を向上させる観点から、好ましくは24.5質量%以下であり、より好ましくは20質量%以下である。
【0076】
外層(e1)は基材層の耐熱性の点からメタクリル酸メチルを80質量%以上、好ましくは90質量%以上含有する単量体混合物を重合してなる硬質熱可塑性樹脂から構成される。また、硬質熱可塑性樹脂は他の単官能性単量体を20質量%以下、好ましくは10質量%以下含む。
【0077】
他の単官能性単量体としては、例えばメチルアクリレート、ブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレートなどのアクリル酸アルキルエステル;アクリル酸;メタクリル酸などが挙げられる。
【0078】
多層構造体(E)における内層(e2)及び外層(e1)の含有率は、得られる基材層の耐衝撃性、耐熱性、表面硬度、取扱性及びメタクリル樹脂(F)との溶融混練の容易さなどの観点から、多層構造体(E)の質量(例えば2層からなる場合は内層(e2)及び外層(e1)の総量)を基準として、内層(e2)の含有率が40〜80質量%の範囲から選ばれ、外層(e1)の含有率が20〜60質量%の範囲から選ばれることが好ましい。
【0079】
多層構造体(E)を製造するための方法は特に限定されないが、多層構造体(E)の層構造の制御の観点から乳化重合により製造されることが好ましい。
【0080】
加飾層(Z)を構成する(メタ)アクリル系樹脂がメタクリル樹脂(F)及び弾性体(R)を含む場合、各成分の含有量は、メタクリル樹脂(F)と弾性体(R)との合計100質量部に対して、メタクリル樹脂(F)の含有量が10〜99質量部であり、弾性体(R)の含有量が90〜1質量部であることが好ましい。メタクリル樹脂(F)の含有量が10質量部未満だと、加飾層(Z)の表面硬度が低下する傾向となる。より好ましくは、メタクリル樹脂(F)と弾性体(R)との合計100質量部に対して、メタクリル樹脂(F)の含有量が55〜90質量部であり、弾性体(R)の含有量が45〜10質量部である。さらに好ましくは、メタクリル樹脂(F)の含有量が70〜90質量部であり、弾性体(R)の含有量が30〜10質量部である。
【0081】
前記(メタ)アクリル系樹脂は各種の添加剤、例えば酸化防止剤、熱安定剤、滑剤、加工助剤、帯電防止剤、熱劣化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、高分子加工助剤、着色剤、耐衝撃助剤などを含有してもよい。
【0082】
また、前記樹脂フィルムは、前記(メタ)アクリル系樹脂と他の重合体とを混合して構成されたものでもよい。係る他の重合体としては、例えばポリエチレン、ポリプロピレン(PP)、ポリブテン−1、ポリ−4−メチルペンテン−1、ポリノルボルネンなどのポリオレフィン樹脂;エチレン系アイオノマー;ポリスチレン、スチレン−無水マレイン酸共重合体、ハイインパクトポリスチレン、アクリロニトリル−スチレン共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体(ABS)、アクリロニトリル−エチレン−スチレン共重合体、アクリロニトリル−アクリル酸エステル−スチレン共重合体、アクリロニトリル−塩素化ポリエチレン−スチレン共重合体、メタクリル酸メチル−ブタジエン−スチレン共重合体などのスチレン系樹脂;メチルメタクリレート−スチレン共重合体;ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレートなどのポリエステル樹脂;ナイロン6、ナイロン66、ポリアミドエラストマーなどのポリアミド;ポリカーボネート、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリビニルアルコール、エチレン−ビニルアルコール共重合体、ポリアセタール、ポリフッ化ビニリデン、ポリウレタン、変性ポリフェニレンエーテル、ポリフェニレンスルフィド、シリコーン変性樹脂;アクリルゴム、シリコーンゴム;スチレン−エチレン/プロピレン−スチレン共重合体、スチレン−エチレン/ブタジエン−スチレン共重合体、スチレン−イソプレン−スチレン共重合体などのスチレン系熱可塑性エラストマー;イソプレンゴム、エチレンプロピレンゴム、エチレンプロピレンジエンゴムなどのオレフィン系ゴムなどが挙げられる。
【0083】
前記樹脂フィルムの原料となる樹脂の
調製方法に特に制限はなく、前記成分を均一に混合し得る方法であればいずれの方法で調製してもよいが、溶融混練して混合する方法が好ましい。混合操作は、例えばニーダールーダー、押出機、ミキシングロール、バンバリーミキサーなどの既知の混合又は混練装置を使用でき、混練性、相溶性を向上させる観点から、二軸押出機を使用することが好ましい。混合・混練時の温度は使用する樹脂の溶融温度などに応じて適宜調節すればよく、通常110〜300℃の範囲である。二軸押出機を使用し溶融混練する場合、着色抑制の観点から、ベントを使用し、減圧下で及び/又は窒素雰囲気下で溶融混練することが好ましい。なお、フィルム化方法については後述する。
【0084】
加飾層(Z)は着色されていてもよい。着色法としては、樹脂フィルムを構成する樹脂自体に、顔料又は染料を含有させ、フィルム化前の樹脂自体を着色する方法;樹脂フィルムを、染料が分散した液中に浸漬して着色させる染色法などが挙げられるが、特にこれらに限定されるものではない。
【0085】
加飾層(Z)は印刷が施されていてもよい。印刷によって絵柄、文字、図形などの模様、色彩が付与される。模様は有彩色のものであっても、無彩色のものであってもよい。印刷は、印刷層の退色を防ぐために、中間層(Y)と接する側に施すのが好ましい。
【0086】
加飾層(Z)は蒸着が施されていてもよい。たとえば、インジウム蒸着によって、金属調、光沢が付与される。蒸着は、中間層(Y)と接する側に施すのが好ましい。
【0087】
加飾層(Z)に(メタ)アクリル系樹脂フィルムを用いる場合、表面がJIS鉛筆硬度(厚さ75μm)で、好ましくはHB又はそれよりも硬く、より好ましくはF又はそれよりも硬く、さらに好ましくはH又はそれよりも硬い。表面が硬い(メタ)アクリル系樹脂フィルムを加飾層(Z)に用いることにより、傷つき難いので、意匠性の要求される成形品の表面の加飾兼保護フィルムとして好適に用いられる。
【0088】
<多層フィルムの製造方法>
本発明の多層フィルムは、ポリプロピレン系樹脂層(X)、中間層(Y)及び加飾層(Z)を有し、これらが(X)−(Y)−(Z)の順で積層するように製造できれば特に製造方法に制限はない。以下、製造方法の一例を詳細に説明する。
【0089】
まず、加飾層(Z)となる樹脂フィルムを製造する。ここでは(メタ)アクリル系樹脂フィルムを例に説明するが、他の樹脂フィルムについても同様である。(メタ)アクリル系樹脂フィルムの製造は、Tダイ法、インフレーション法、溶融流延法、カレンダー法等の公知の方法を用いて行うことができる。良好な表面平滑性、低ヘイズのフィルムが得られるという観点から、(メタ)アクリル系樹脂の溶融混練物をTダイから溶融状態で押し出し、その両面を鏡面ロール表面又は鏡面ベルト表面に接触させて成形する工程を含む方法が好ましい。この際に用いるロール又はベルトは、いずれも金属製であることが好ましい。
【0090】
Tダイ法による製造方法の場合、単軸あるいは二軸押出スクリューのついたエクストルーダ型溶融押出装置等が使用できる。本発明のフィルムを製造するための溶融押出温度は好ましくは200〜300℃、より好ましくは220〜270℃である。また、溶融押出装置を使用し、溶融押出しする場合、着色抑制の観点から、ベントを使用し、減圧下での溶融押出し、あるいは窒素気流下での溶融押出しを行なうことが好ましい。
【0091】
また、良好な表面平滑性、良好な表面光沢、低ヘイズのフィルムが得られるという観点から、フィルムを挟み込む鏡面ロール若しくは鏡面ベルトの少なくとも一方の表面温度を60℃以上で且つフィルムを挟み込む鏡面ロール若しくは鏡面ベルトの両方の表面温度を130℃以下とすることが好ましい。
【0092】
(メタ)アクリル系樹脂フィルムの厚さは、500μm以下であることが好ましい。500μmより厚くなると、ラミネート性、ハンドリング性、切断性・打抜き性などの二次加工性が低下し、フィルムとしての使用が困難になるとともに、単位面積あたりの単価も増大し、経済的に不利であるため好ましくない。当該フィルムの厚さとしては40〜300μmがより好ましく、50〜250μmが特に好ましい。
【0093】
(メタ)アクリル系樹脂フィルムは、延伸処理が施されたものであってもよい。延伸処理によって、機械的強度が高まり、ひび割れし難いフィルムを得ることができる。延伸方法は特に限定されず、同時二軸延伸法、逐次二軸延伸法、チュブラー延伸法、圧延法などが挙げられる。
【0094】
上記とは別に、前記ポリプロピレン系樹脂層(X)及び中間層(Y)からなる積層フィルムを製造する。積層方法としては、ポリプロピレン系樹脂層(X)に溶媒によって希釈した中間層(Y)の溶液を塗布する溶液塗工法、ポリプロピレン系樹脂層(X)に中間層(Y)の溶融体を塗工するホットメルト塗工法、ポリプロピレン系樹脂層(X)と中間層(Y)の溶融体をダイ内で積層する共押出成形法を挙げることができる。共押出成形法は、Tダイ法、インフレーション法等の公知の方法を用いて行うことができる。Tダイ法にはマルチマニホールド法、フィードブロック法が挙げることができる。特に、厚み精度の観点から、マルチマニホールド法による共押出成形が好ましい。共押出成形した後に、良好な表面平滑性のフィルムが得られるという観点から、溶融混練物をTダイから溶融状態で押し出し、その両面を鏡面ロール表面又は鏡面ベルト表面に接触させて成形する工程を含む方法が好ましい。この際に用いるロール又はベルトは、いずれも金属製又はシリコーンゴム製であることが好ましい。
【0095】
続いて、前記ポリプロピレン系樹脂層(X)及び前記中間層(Y)を有する積層フィルムに、二本の加熱ロールを用いた熱ラミネートによって加飾層(Z)を貼合することによって多層フィルムを得る。熱ラミネート方法については特に限定はない。
【0096】
共押出成形時のフィルム引取安定性の観点から、前記ポリプロピレン系樹脂層(X)と前記中間層(Y)の、温度230℃、荷重2.16kg(21.2N)下におけるMFR比(Y)/(X)は1〜10が好ましく、3〜10がより好ましい。MFR比が1よりも小さいとフィルム厚み及び幅の不安定化が起こる場合がある。
【0097】
ポリプロピレン系樹脂層(X)の厚さは、500μm以下であることが好ましい。500μmより厚くなると、ラミネート性、ハンドリング性、切断性・打抜き性などの二次加工性が低下し、多層フィルム(α)としての使用が困難になるとともに、単位面積あたりの単価も増大し、経済的に不利であるため好ましくない。ポリプロピレン系樹脂層(X)の厚さとしては50〜300μmがより好ましく、100〜250μmが特に好ましい。
【0098】
中間層(Y)の厚さは、500μm以下であることが好ましい。500μmより厚くなると、ラミネート性、ハンドリング性、切断性・打抜き性などの二次加工性が低下し、多層フィルム(α)としての使用が困難になるとともに、単位面積あたりの単価も増大し、経済的に不利であるため好ましくない。中間層(Y)の厚さとしては30〜200μmがより好ましく、50〜200μmがより好ましく、80〜150μmが特に好ましい。
【0099】
前記ポリプロピレン系樹脂層(X)に対する前記中間層(Y)の厚さの比(Y)/(X)は0.4〜1.5であることが好ましい。当該厚さの比(Y)/(X)が前記範囲であると、中間層(Y)とポリプロピレン系樹脂層(X)又は中間層(Y)と加飾層(Z)との接着強度に優れ、成形加工時のハンドリング性が良好である。
【0100】
多層フィルムの全厚みは、1000μm未満であることが好ましい。多層フィルムの厚みが1000μm未満であれば、後述する成形体の製造に際し、三次元曲面の表面を有する物品に対して被覆成形性がよく、成形加工が行いやすい。
【0101】
[成形体]
本発明の成形体は、本発明の多層フィルムとポリオレフィン系樹脂(β)とを有する成形体であって、前記多層フィルム中のポリプロピレン系樹脂層(X)がポリオレフィン系樹脂(β)に積層することを特徴とするものである。以下、本発明の多層フィルムを多層フィルム(α)と称する。本発明の成形体は、多層フィルム(α)における加飾層(Z)が最表層に設けられており、それによって表面平滑性、表面硬度、表面光沢などの意匠性に優れる。
【0102】
[ポリオレフィン系樹脂(β)]
本発明に用いられるポリオレフィン系樹脂(β)は、例えばプロピレンの単独重合体、エチレンの単独重合体、エチレン含有量が1〜30重量%、好ましくは5〜28重量%のプロピレン及びエチレンのブロック共重合体又はランダム共重合体、エチレン含有量が1〜30重量%、好ましくは5〜28重量%のプロピレン及び/又はエチレンとα−オレフィンのブロック共重合体又はランダム共重合体、オレフィン系熱可塑性エラストマー及びこれらの混合物等が挙げられる。
【0103】
上記共重合体におけるα−オレフィンとしては、例えば1−ブテン、1−ペンテン、3−メチル−1−ブテン、1−ヘキセン、3−メチル−1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘプテン、1−オクテン、1−ノネン、1−デセン、1−ドデセン、1−テトラデセン、1−ヘキサデセン、1−オクタデセン、1−エイコセン等の炭素数20以下のα−オレフィンが挙げられる。これらのα−オレフィンは、1種単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。上記共重合体におけるα−オレフィンの共重合割合は、該共重合体中、通常1〜30重量%、好ましくは1〜20重量%である。
上記ポリオレフィン系樹脂(β)としては、ポリプロピレン系樹脂であることが好ましい。ポリプロピレン系樹脂としては、例えば、ホモポリプロピレン、プロピレン−エチレンランダム共重合体、プロピレン−エチレンブロック共重合体、プロピレン−ブテンランダム共重合体、プロピレン−エチレン−ブテンランダム共重合体、プロピレン−ペンテンランダム共重合体、プロピレン−ヘキセンランダム共重合体、プロピレン−オクテンランダム共重合体、プロピレン−エチレン−ペンテンランダム共重合体、プロピレン−エチレン−ヘキセンランダム共重合体等が好ましく用いられる。
【0104】
上記ポリオレフィン系樹脂(β)の温度230℃、荷重2.16kg(21.2N)におけるメルトフローレイト(MFR)は特に限定されないが、射出成形性の観点から、例えば、5〜20g/10分程度が好ましい。
【0105】
[成形体の製造方法]
本発明の成形体の製造方法は、多層フィルム(α)中のポリプロピレン系樹脂層(X)がポリオレフィン系樹脂(β)に積層する限り特に制限されない。例えば、多層フィルム(α)を、ポリオレフィン系樹脂(β)の表面に、加熱下で真空成形・圧空成形・圧縮成形することにより、本発明の積層体を得ることができる。
【0106】
本発明の成形体の製造方法のうち、特に好ましい方法は、射出成形同時貼合法と一般に呼ばれている方法である。
この射出成形同時貼合法は、多層フィルム(α)を射出成形用雌雄金型間に挿入し、その金型にポリプロピレン系樹脂層(X)側の面から溶融したポリオレフィン系樹脂(β)を射出して、射出成形体を形成すると同時に、その成形体に多層フィルム(α)を貼合する方法である。
【0107】
前記方法について、図を用いてより詳細に説明する。
図1中、1は多層フィルム(α),2aはキャビティ部2cを有する可動側型,2bはコア部2dを有する固定側型,2eはスプルーブッシュ,3は射出成形機の射出部本体,3aはノズル,3bはシリンダ,3cはインラインスクリュ,4はゲート,5は射出成形体(ポリオレフィン系樹脂(β)),5aはポリオレフィン系樹脂(β)の溶融樹脂,10は積層成形体である。可動側型2aと固定側型2bとは一対になって射出成形用金型2を構成する。なお、本実施形態においては、可動側型2aは射出成形用金型の雌型、固定側型2bは射出成形用金型2の雄型であり、キャビティ部2cとコア部2dとはキャビティcを形成する。
【0108】
本実施形態の積層成形体の製造方法においては、
図1(a)に示すように、可動側型2aの凹状のキャビティ部2cに多層フィルム(α)1をインサートさせる。このとき、多層フィルム(α)1のポリプロピレン系樹脂層(X)が露出した面を溶融樹脂が射出される側に向くように収容する。このように多層フィルム(α)を収容することにより、射出されたポリオレフィン系樹脂(β)の熱によって、ポリプロピレン系樹脂層(X)の表層が溶融し融着することで、多層フィルム(α)とポリオレフィン系樹脂(β)とが強固に接着することが可能となる。
【0109】
なお、多層フィルム(α)1は、溶融樹脂の射出時に位置ずれすることを抑制するために、キャビティ部2cに固定されてもよい。固定手段の具体例としては、例えば、可動側型表面に両面テープで貼り付けたり、真空吸着させたり、キャビティ部2cに突起を設けて多層フィルム(α)をはめ込んだりする方法等が挙げられる。
【0110】
金型に挿入される多層フィルム(α)は、平らなものそのままであってもよいし、真空成形、圧空成形等で予備成形(プリフォーム成形)して凹凸形状に賦形されたものであってもよい。多層フィルム(α)のプリフォーム成形は、別個の成形機で行ってもよいし、射出成形同時貼合法に用いる射出成形機の金型内で行ってもよい。後者の方法、すなわち、フィルムをプリフォーム成形した後その片面に溶融樹脂を射出する方法は、インサート成形法と呼ばれる。多層フィルム(α)がポリプロピレン系樹脂層(X)を有することで、プリフォーム成形時に金型との接着を防ぐことが可能となりハンドリング性が向上する。また、接着力を有する中間層(Y)に対する保護フィルム等が不要となる。
【0111】
次に、
図1(b)に示すように、可動側型2aと固定側型2bとを型締めすることにより、キャビティcを形成する。そして、
図1(c)に示すように、ゲート4から予め設定された所定量のポリオレフィン系樹脂(β)の溶融樹脂5aをキャビティcに充填する。詳しくは、射出成形機の射出部3を前進させ、ノズル3aを固定側型2bに形成されたスプルーブッシュ2eに当接させ、シリンダ3b内で溶融された溶融樹脂5aをインラインスクリュ3cで射出することにより、溶融樹脂5aがキャビティcに充填される。
【0112】
射出成形のその他の条件(樹脂温度、金型温度、射出後の保持圧力、冷却時間)は、用いるポリオレフィン系樹脂(β)の熱特性や溶融粘度、成形体の形状等に応じて適宜設定される。
【0113】
また、成形される射出成形体の厚さも特に限定されず、用途に応じて適宜選択される。例えば、携帯電話、モバイル機器、家電製品等の筐体に用いる場合には、0.3〜2mm、さらには0.5〜1.5mmが好ましい範囲として選ばれる。
【0114】
そして、
図1(d)に示すように、冷却工程において、可動側型2aと固定側型2bとを型締めした状態で、キャビティc内の多層フィルム(α)1に一体化された射出成形体5を所定の時間冷却する。そして、
図1(e)に示すように、可動側型2aと固定側型2bとを型開きすることにより、成形された射出成形体5と射出成形体5に積層された多層フィルム(α)1とが一体化された積層成形体10、すなわち本発明の多層フィルム(α)がポリオレフィン系樹脂(β)に積層した成形体が得られる。得られた成形体は、不要な部分、具体的には多層フィルム(α)の端部をトリミングしたり、スプルーゲートやランナーを切断除去したりすることにより、最終的な製品形状に整えてもよい。
【0115】
[用途]
本発明の多層フィルム及び該多層フィルムがポリオレフィン系樹脂(β)に積層した成形体は、意匠性の要求される物品に適用することができる。例えば、広告塔、スタンド看板、袖看板、欄間看板、屋上看板等の看板部品;ショーケース、仕切板、店舗ディスプレイ等のディスプレイ部品;蛍光灯カバー、ムード照明カバー、ランプシェード、光天井、光壁、シャンデリア等の照明部品;家具、ペンダント、ミラー等のインテリア部品;ドア、ドーム、安全窓ガラス、間仕切り、階段腰板、バルコニー腰板、レジャー用建築物の屋根等の建築用部品、自動車内外装部材、バンパーなどの自動車外装部材等の輸送機関係部品;音響映像用銘板、ステレオカバー、自動販売機、携帯電話、パソコン等の電子機器部品;保育器、定規、文字盤、温室、大型水槽、箱水槽、浴室部材、時計パネル、バスタブ、サニタリー、デスクマット、遊技部品、玩具、壁紙;マーキングフィルム、各種家電製品の加飾用途に好適に用いられる。
【実施例】
【0116】
以下、実施例などにより本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら限定されない。実施例及び比較例中の試験サンプルの作製及び各物性の測定または評価は以下のようにして行い、結果を表に纏めた。
【0117】
本実施例及び比較例において使用した各成分は以下のとおりである。
<多層フィルム>
[ポリプロピレン系樹脂層(X)]
ポリプロピレン系樹脂層(X)として下記のものを用いた。
・ポリプロピレン系樹脂(X−1) ポリプロピレン系樹脂ノバテックEG7FTB(ポリプロピレン−エチレンランダム共重合体、融点=149℃、融解熱量=437mJ、MFR=1.5g/10分)、
・ポリプロピレン系樹脂(X−2) ポリプロピレン系樹脂ノバテックEC9(ブロックポリプロピレン、融点=164℃、融解熱量=498mJ、MFR=0.9g/10分)
・ポリプロピレン系樹脂(X−3) ポリプロピレン系樹脂ノバテックEA9(ホモポリプロピレン、融点=161℃、融解熱量=495mJ、MFR=0.8g/10分)
・ポリプロピレン系樹脂(X−4) ポリプロピレン系樹脂ノバテックMA3(ホモポリプロピレン、融点=166℃、融解熱量=780mJ、MFR=13g/10分)
上記はいずれも、日本ポリプロ株式会社製。上記のMFRはいずれも温度230℃、荷重2.16kg(21.2N)の条件下で測定した値である。
【0118】
[中間層(Y)]
中間層(Y)として下記のものを用いた。
・下記製造例1で得られた熱可塑性重合体組成物を(Y−1)とした。
・下記製造例2で得られた熱可塑性重合体組成物を(Y−2)とした。
・下記合成例1で得られた熱可塑性エラストマー(A−1)を(Y−3)とした。
【0119】
[加飾層(Z)]
加飾層(Z)ととして下記のものを用いた。
・下記製造例3で得られた(メタ)アクリル系樹脂を(Z−1)とした。
・下記製造例4で得られた(メタ)アクリル系樹脂を(Z−2)とした。
・ポリカーボネート樹脂(ユーピロンML―300(三菱ガス化学株式会社製))を(Z−3)とした。
【0120】
<ポリオレフィン系樹脂(β)>
ポリオレフィン系樹脂(β)として下記のものを用いた。
・ポリプロピレン系樹脂J708UG(ブロックポリプロピレン)(株式会社プライムポリマー製)
【0121】
実施例及び比較例の各種物性は以下の方法により測定又は評価した。
[重量平均分子量(Mw)及び分子量分布(Mw/Mn)]
ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により標準ポリスチレン換算の分子量として求めた。
・ 装置:東ソー株式会社製GPC装置「HLC−8020」
・ 分離カラム:東ソー株式会社製「TSKgel GMHXL」、「G4000HXL」及び「G5000HXL」を直列に連結
・ 溶離剤:テトラヒドロフラン
・ 溶離剤流量:1.0ml/分
・ カラム温度:40℃
・ 検出方法:示差屈折率(RI)
【0122】
[熱可塑性エラストマー(A)における重合体ブロック(a1)の含有量、重合体ブロック(a2)のビニル結合量(1,2−結合量及び3,4−結合量)]
1H−NMR測定によって求めた。
・装置:核磁気共鳴装置「Lambda−500」(日本電子株式会社製)
・溶媒:重水素化クロロホルム
【0123】
[融点・融解熱量]
上記各ポリプロピレン系樹脂について、示差走査熱量測定装置(METTLER TLEDO社製;DSC30)を用いて、窒素雰囲気下で昇温法:25℃→190℃→25℃→190℃(速度10℃/min)によって測定した。評価は2nd−Runで実施し、融点は融解曲線における吸熱ピーク温度、融解熱量は吸熱ピーク面積から算出した。
【0124】
[MFR]
各種樹脂について、JIS K 7210に準拠した方法で、MFR測定装置(TAKARA社製;MELT INDEXER L244)を用いて、測定温度:230℃、測定荷重:2.16kg(21.2N)の条件で測定した。
【0125】
[多層フィルムのプリフォーム時のハンドリング性]
真空圧空成形機(布施真空社製;NGF0406成形機)の真空チャンバーボックス内において、加飾層(Z)がステージ上に配置された凸型の金型(縦250mm×横160mm×高さ25mm)の反対側になるように、多層フィルム(縦210mm×横297mm)を挿入した後、該フィルムを真空下で110℃まで加熱し、チャンバーボックス内の圧力を0.3kPaとしてフィルムに加圧することによって、三次元表面加飾成形(Three dimension Overlay Method:TOM成形)を行って、多層フィルムを箱型形状に賦形した。多層フィルムがポリプロピレン系樹脂層(X)を有している場合は、問題なくプリフォームができ、金型から離型することができた。多層フィルムにポリプロピレン系樹脂層(X)が無く、中間層(Y)が金型に直接接している場合は、フィルムが金型に接着し離型が不可であった。
○:成形を問題なく実施できる
×:成形に問題あり(皴・離型不良)
【0126】
[ポリプロピレン系樹脂層(X)と中間層(Y)との共押出製膜性]
各実施例及び比較例において、ポリプロピレン系樹脂層(X)を構成するポリプロピレン樹脂ペレットと中間層(Y)を構成する樹脂ペレットとをそれぞれ単軸押出機(G.M.ENGINEERING社製;VGM25−28EX)のホッパーに投入し、マルチマニホールドダイを用いて共押出しし、幅300mmかつ厚さ325μmの2層フィルムを得た。このときのフィルムの厚み斑及び端部の脈動の有無を目視によって観察し、共押出製膜性を評価した。
○:フィルム外観に問題なし
△:フィルム外観に問題ないが、共押出時の引取速度を低速にする必要があった
×:フィルム外観に問題あり(厚み斑・脈動あり)
【0127】
[熱ラミネート時の反り量]
下記共押出製膜性の評価と同様にして、ポリプロピレン系樹脂層(X)と中間層(Y)を有する2層フィルムを作製した。続いて、熱ラミネーション装置(大成ラミネーター株式会社製;VAII−700型)を用いて、120℃及び40℃の加熱ロール間に加飾層(Z)を構成する樹脂フィルムと上記2層フィルムとを、中間層(Y)側に樹脂フィルムが配置されるようにロールを通して熱ラミネートして貼り合せた。このとき、加飾層(Z)を構成する樹脂フィルム側が120℃のロール側とした。得られた多層フィルム(縦210mm×横297mm)を
定盤の上に静置し、フィルム各4辺の中点における
定盤面からの浮量を測定し、その平均値を反り量として評価した。
【0128】
[熱可塑性重合体組成物(Y−1)
又は(Y−2)の接着強度(対PMMA)]
熱可塑性重合体組成物(Y−1)
又は(Y―2)、下記製造例4で得られた(メタ)アクリル樹脂組成物(Z−2)のペレットを、それぞれ圧縮成形機を用いて200℃ 、荷重50kgf/cm
2の条件下で2分間圧縮成形することで、熱可塑性重合体組成物(Y−1)
又は(Y―2)からなるシート及び(メタ)アクリル樹脂組成物(Z−2)からなるシートを得た。150×150mmの熱可塑性重合体組成物(Y−1)
又は(Y―2)からなるシート(縦150mm×横150mm×厚さ0.5mm)、ポリイミドフィルム(東レ・デュポン社製カプトンフィルム、縦75mm×横150mm×厚さ0.05mm)、(メタ)アクリル樹脂組成物(Z−2)からなるシート(縦150mm×横150mm×厚さ0.5mm)をこの順で重ね、内寸150mm×150mm、厚さ0.8mmの金属製スペーサーの中央部に配置した。この重ねたシートと金属製スペーサーをポリテトラフルオロエチレン製シートで挟み、さらに外側から金属板で挟み、圧縮成形機を用いて、130℃、荷重50kgf/cm
2で2分間圧縮成形することで、熱可塑性重合体組成物(Y−1)
又は(Y―2)と(メタ)アクリル樹脂組成物(Z−2)の多層フィルムを得た。
該多層フィルムを25mm幅に切断し、接着強度測定用試験片とし、熱可塑性重合体組成物(Y−1)
又は(Y―2)と(メタ)アクリル樹脂組成物(Z−2)間の剥離強度をJIS K 6854−2に準じて、ピール試験機(島津製作所社製AGS−X)を使用して、剥離角度90°、引張速度300mm/分、環境温度23℃の条件で測定し、熱可塑性重合体組成物(Y−1)
又は(Y―2)の接着強度(対PMMA)とした。
【0129】
[加飾層(Z)の耐候性]
加飾層(Z)に用いた(メタ)アクリル系樹脂及びポリカーボネート樹脂の各フィルムについて、サンシャインカーボンアークウェザーメーター(スガ試験機製;WEL−SUN−HCH型)を用いて、ブラックパネル温度:63℃、湿度:42%、紫外線強度(360nm〜370nm):1.0〜1.4mW/cm
2、噴水ありの条件で500時間の促進暴露試験を実施した。試験前後の試料について、測色色差計(日立製;C−2000型)を用いて色差ΔEを評価した。色差ΔEが小さいほど耐候性に優れる。
【0130】
[多層フィルムとポリオレフィン樹脂(β)との接着強度]
各実施例及び比較例で得られた成形体のポリオレフィン樹脂(β)側をステンレス鋼材(SUS)板に強粘着テープ(日東電工社製;ハイパージョイントH9004)で固定して、卓上精密万能試験機(島津製作所社製;AGS−X)を使用し、JIS K 6854−2に準じて剥離角度90°、引張速度300mm/分、環境温度23℃の条件で、多層フィルムにおけるポリプロピレン系樹脂層(X)と被着体であるポリオレフィン樹脂(β)の間の剥離強度を測定し、成形体に対する多層フィルムの接着強度(N/25mm)を評価した。
◎:ポリプロピレン系樹脂層(X)の材料破壊
○:強固に接着
×:剥がれあり
【0131】
<合成例1>[熱可塑性エラストマー(A−1)]
窒素置換し乾燥させた耐圧容器に、溶媒としてシクロヘキサン64Lを、開始剤としてsec−ブチルリチウム(10質量%シクロヘキサン溶液)0.20Lを、有機ルイス塩基としてテトラヒドロフラン0.3Lを仕込んだ。50℃に昇温した後、スチレン2.3Lを加えて3時間重合させ、引き続いてイソプレン23Lを加えて4時間重合を行い、さらにスチレン2.3Lを加えて3時間重合を行った。得られた反応液をメタノール80Lに注ぎ、析出した固体を濾別して50℃で20時間乾燥し、ポリスチレン−ポリイソプレン−ポリスチレンからなるトリブロック共重合体を得た。続いて、ポリスチレン−ポリイソプレン−ポリスチレンからなるトリブロック共重合体10kgをシクロヘキサン200Lに溶解し、水素添加触媒としてパラジウムカーボン(パラジウム担持量:5質量%)を該共重合体に対して5質量%添加し、水素圧力2MPa、150℃の条件で10時間反応を行った。放冷、放圧後、濾過によりパラジウムカーボンを除去し、濾液を濃縮し、さらに真空乾燥して、ポリスチレン−ポリイソプレン−ポリスチレンからなるトリブロック共重合体の水添物(以下、「熱可塑性エラストマー(A−1)」と称する)を得た。得られた熱可塑性エラストマー(A−1)の重量平均分子量は107,000、スチレン含有量は21質量%、水素添加率は85%、分子量分布は1.04、ポリイソプレンブロックに含まれる1,2−結合及び3,4−結合の量の合計は60mol%であった。
【0132】
<合成例2>[極性基含有ポリプロピレン系樹脂(B−1)]
ポリプロピレン(プライムポリマー社製;プライムポリプロF327)42kg、無水マレイン酸160g及び2,5−ジメチル−2,5−ジ(tert−ブチルパーオキシ)ヘキサン42gを、バッチミキサーを用いて180℃及びスクリュー回転数40rpmの条件で溶融混練し、極性基含有ポリプロピレン系樹脂(B−1)を得た。極性基含有ポリプロピレン系樹脂(B−1)の温度230℃、荷重2.16kg(21.2N)におけるMFRは6g/10分であり、無水マレイン酸濃度は0.3%であり、融点は138℃だった。なお、無水マレイン酸濃度は、水酸化カリウムのメタノール溶液を用いて滴定して得られる値である。また、融点は10℃/minで昇温した際の示差走査熱量測定曲線の吸熱ピークから求めた値である。
【0133】
<合成例3>[メタクリル樹脂(F−1)]
メタクリル酸メチル95質量部及びアクリル酸メチル5質量部からなる単量体混合物に重合開始剤(2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオニトリル)、水素引抜能:1%、1時間半減期温度:83℃)0.1質量部及び連鎖移動剤(n−オクチルメルカプタン)0.28質量部を加え溶解させて原料液を得た。また、別の容器にイオン交換水100質量部、硫酸ナトリウム0.03質量部及び懸濁分散剤0.45質量部を混ぜ合わせて混合液を得た。耐圧重合槽に前記混合液420質量部と前記原料液210質量部を仕込み、窒素雰囲気下で撹拌しながら温度を70℃にして重合反応を開始させた。重合反応開始後3時間経過時に温度を90℃に上げ、撹拌を引き続き1時間行って、ビーズ状共重合体が分散した液を得た。得られた共重合体分散液を適量のイオン交換水で洗浄し、バケット式遠心分離機によりビーズ状共重合体を取り出し、80℃の熱風乾燥機で12時間乾燥させ、重量平均分子量Mw(F)が30,000、Tgが128℃であるビーズ状のメタクリル樹脂(F−1)を得た。
【0134】
<合成例4>[多層構造体(E−1)]
攪拌機、温度計、窒素ガス導入管、単量体導入管及び還流冷却器を備えた反応器に、イオン交換水1050質量部、ジオクチルスルホコハク酸ナトリウム0.5質量部及び炭酸ナトリウム0.7質量部を仕込み、容器内を窒素ガスで十分に置換した後、内温を80℃に設定した。そこに過硫酸カリウム0.25質量部を投入して5分間攪拌した後、メタクリル酸メチル:アクリル酸メチル:メタクリル酸アリル=94:5.8:0.2(質量比)からなる単量体混合物245質量部を50分かけて連続的に滴下し、滴下終了後、さらに30分間重合反応を行った。
次いで同反応器にペルオキソ2硫酸カリウム0.32質量部を投入して5分間攪拌した後、アクリル酸ブチル80.6質量%、スチレン17.4質量%及びメタクリル酸アリル2質量%からなる単量体混合物315質量部を60分間かけて連続的に滴下し、滴下終了後、さらに30分間重合反応を行った。
続いて同反応器にペルオキソ2硫酸カリウム0.14質量部を投入して5分間攪拌した後、メタクリル酸メチル:アクリル酸メチル=94:6(質量比)からなる単量体混合物140質量部を30分間かけて連続的に滴下供給し、滴下終了後、さらに60分間重合反応を行って、多層構造体(E−1)を得た。
【0135】
<合成例5>[アクリル系ブロック共重合体(G−1)]
内部を脱気し窒素置換した反応器に室温にて乾燥トルエン735kg、ヘキサメチルトリエチレンテトラミン0.4kg及びイソブチルビス(2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノキシ)アルミニウム20molを含有するトルエン溶液39.4kg、sec−ブチルリチウム1.17mol、メタクリル酸メチル35.0kgをこの順に加え、室温で1時間反応させた。反応液の一部をサンプリングして反応液に含まれる重合体の重量平均分子量を測定したところ40,000であり、これはメタクリル酸メチル重合体ブロック(g1−1)の重量平均分子量Mw(g1−1)に相当する。
次いで反応液を−25℃にし、アクリル酸n−ブチル24.5kg及びアクリル酸ベンジル10.5kgの混合液を0.5時間かけて滴下した。反応液の一部をサンプリングして反応液に含まれる重合体の重量平均分子量を測定したところ80,000だった。メタクリル酸メチル重合体ブロック(g1−1)の重量平均分子量Mw(g1−1)が40,000だったので、アクリル酸n−ブチル及びアクリル酸ベンジルの共重合体からなるアクリル酸エステル重合体ブロック(g2)の重量平均分子量Mw(g2)を40,000と決定した。
続いてメタクリル酸メチル35.0kgを加え、反応液を室温に戻し、8時間攪拌して、2つめのメタクリル酸エステル重合体ブロック(g1−2)を形成した。その後、反応液にメタノール4kgを加えて重合を停止させた後、反応液を大量のメタノールに注ぎ、濾物を80℃かつ1torr(約133Pa)の条件で12時間乾燥させてアクリル系ブロック共重合体(G−1)を単離した。得られた
アクリル系ブロック共重合体(G−1)の重量平均分子量Mw(G)は120,000だったので、メタクリル酸メチル重合体ブロック(g1−2)の重量平均分子量Mw(g1−2)を40,000と決定した。
【0136】
<製造例1>[熱可塑性重合体組成物(Y−1)]
合成例1で得た熱可塑性エラストマー(A−1)80質量部及び合成例2で得た極性基含有ポリプロピレン系樹脂(B−1)20質量部を二軸押出機(東芝機械社製;TEM−28、以下の製造例において全て同様)を用いて230℃で溶融混練した後、ストランド状に押出して切断し、熱可塑性重合体組成物(Y−1)のペレットを製造した。当該樹脂のMFRは7.4g/10分であった。
【0137】
<製造例2>[熱可塑性重合体組成物(Y−2)]
合成例1で得た熱可塑性エラストマー(A−1)80質量部及び非極性ポリプロピレン系樹脂(B−2)20質量部を二軸押出機(東芝機械社製;TEM−28、以下の製造例において全て同様)を用いて230℃で溶融混練した後、ストランド状に押出して切断し、熱可塑性重合体組成物(Y−2)のペレットを製造した。当該樹脂のMFRは7.3g/10分であった。ここで、非極性ポリプロピレン系樹脂(B−2)は、日本ポリプロ社製のWFX4TA(230℃、荷重2.16kg(21.18N)におけるMFRが7g/10分、融点124℃)を使用した。また、融点は10℃/分で昇温した際の示差走査熱量測定曲線の吸熱ピークから読み取った値である。
【0138】
<製造例3>[(メタ)アクリル系樹脂(Z−1)]
合成例3で得たメタクリル樹脂(F−1)
80質量部、及び合成例4で得た多層構造体(E−1)20質量部を二軸押出機を用いて230℃で溶融混練した後、ストランド状に押出して切断し、Tgが129℃である(メタ)アクリル系樹脂(Z−1)のペレットを得た。
【0139】
<製造例4>[(メタ)アクリル系樹脂(Z−2)]
合成例3で得たメタクリル樹脂(F−1)80質量部、及び合成例5で得たアクリル系ブロック共重合体(G−1)20質量部を二軸押出機を用いて230℃で溶融混練した後、ストランド状に押出して切断し、Tgが127℃である(メタ)アクリル系樹脂(Z−2)のペレットを得た。
【0140】
<実施例1>
製造例1で得られた熱可塑性重合体組成物(Y−1)のペレット及びポリプロピレン系樹脂(X−1)のペレットをそれぞれ単軸押出機(G.M.ENGINEERING社製;VGM25−28EX)のホッパーに投入し、マルチマニホールドダイを用いて共押出しし、幅300mmかつ厚さ325μmの2層フィルムを得た。各層の厚さは押出流量により制御し、熱可塑性重合体組成物(Y−1)の厚さを100μm、ポリプロピレン系樹脂(X−1)の厚さを225μmとした。
これとは別に、製造例3で得られた(メタ)アクリル系樹脂(Z−1)のペレットを用いて、単軸押出機及び単層用Tダイを用いることにより、(メタ)アクリル系樹脂フィルム(厚さ75μm)を得た。
続いて、上記で得られた2層フィルムと、(メタ)アクリル系樹脂フィルムとを熱ラミネートすることによって3層構造の多層フィルムを製造した。熱ラミネートは、熱ラミネーション装置(大成ラミネーター株式会社製;VAII−700型)を用いて、120℃及び40℃の加熱ロール間に加飾層(Z)を構成する(メタ)アクリル系樹脂フィルムと上記2層フィルムとを、中間層(Y)側に樹脂フィルムが配置されるように通して熱ラミネートして貼り合せた。このとき、(メタ)アクリル系樹脂フィルム側が120℃のロール側とした。
【0141】
続いて、上記で得られた多層フィルムと、ポリオレフィン系樹脂(β)とを用いて、多層フィルムのポリプロピレン系樹脂層(X)が露出した面をポリオレフィン系樹脂(β)の溶融樹脂が射出される側に向くように、直圧式油圧成形機(株式会社名機製作所製;M−100C−AS−DM)の金型内に収容し、可動側型と固定側型とを型締めし、キャビティ内にポリオレフィン系樹脂(β)の溶融樹脂を230℃で射出することによって、多層フィルムがポリオレフィン系樹脂に積層した成形体を製造した。
得られた多層フィルム及び該多層フィルムが積層した成形体の物性について上記に従って評価した。結果を表1に示す。
【0142】
<実施例2>
実施例1において、ポリプロピレン系樹脂(X−1)のかわりにポリプロピレン系樹脂(X−2)を使用した以外は実施例1と同様にして、多層フィルム及び成形体を得た。結果を表1に示す。
【0143】
<実施例3>
実施例1において、ポリプロピレン系樹脂(X−1)のかわりにポリプロピレン系樹脂(X−3)を使用した以外は実施例1と同様にして多層フィルム及び成形体を得た。結果を表1に示す。
【0144】
<実施例4>
実施例1において、ポリプロピレン系樹脂(X−1)のかわりにポリプロピレン系樹脂(X−4)を使用した以外は実施例1と同様にして多層フィルム及び成形体を得た。結果を表1に示す。
【0145】
<実施例5>
実施例1において、(メタ)アクリル系樹脂(Z−1)のかわりに(メタ)アクリル系樹脂(Z−2)を使用した以外は実施例1と同様にして多層フィルム及び成形体を得た。結果を表1に示す。
【0146】
<実施例6>
実施例1において、(メタ)アクリル系樹脂(Z−1)のかわりにポリカーボネート樹脂(Z−3)を使用した以外は実施例1と同様にして多層フィルム及び成形体を得た。結果を表1に示す。
【0147】
<比較例1>
実施例1において、熱可塑性重合体組成物(Y−1)のかわりに熱可塑性エラストマー(Y−3)を使用した以外は実施例1と同様にして多層フィルム及び成形体を得た。結果を表1に示す。
【0148】
<比較例2>
製造例1で得られた熱可塑性重合体組成物(Y−1)のペレット及び製造例3で得られた(メタ)アクリル系樹脂(Z−1)のペレットをそれぞれ単軸押出機(G.M.ENGINEERING社製;VGM25−28EX)のホッパーに投入し、マルチマニホールドダイを用いて共押出しし、幅300mmかつ厚さ175μmの2層フィルムを得た。各層の厚さは押出流量により制御し、熱可塑性重合体組成物(Y−1)の厚さを100μm、(メタ)アクリル系樹脂(Z−1)の厚さを75μmとした。
得られた2層フィルムを用いて、実施例1と同様にしてポリオレフィン系樹脂(β)に積層させた成形体を製造した。結果を表1に示す。
【0149】
【表1】
【0150】
実施例1〜6の多層フィルムは、ポリプロピレン系樹脂層(X)を有することからプリフォーム時のハンドリング性に優れた。また、ポリプロピレン系樹脂層(X)としてランダムポリプロピレンを用いた実施例1、5及び6では、特に熱ラミネートによるフィルムの反りを低減させることができた。また、ポリプロピレン系樹脂層(X)及び中間層(Y)のMFR比(Y)/(X)が1〜10である実施例1〜3、5、6においては、特にポリプロピレン系樹脂層(X)及び中間層(Y)の共押出製膜性にも優れた。また、熱可塑性重量体組成物(Y−1)において、熱可塑性エラストマー(A)100質量部に対してポリプロピレン系樹脂(B)が25〜43質量部である実施例1、7においては、(メタ)アクリル樹脂組成物(Z−2)との接着性に優れていた。また、加飾層(Z)として(メタ)アクリル系樹脂を用いた実施例1〜5では、加飾層(Z)の耐候性に優れていた。
さらに、実施例1〜6では、多層フィルムがポリプロピレン系樹脂層(X)を有することにより、ポリオレフィン系樹脂(β)との接着力が極めて高い成形体が得られた。中でも、ポリプロピレン系樹脂層(X)としてランダムポリプロピレンを用いた実施例1、5及び6は、特に強固に多層フィルムとポリオレフィン系樹脂(β)が接着していた。
一方、中間層(Y)が熱可塑性エラストマーのみからなる比較例1では、ポリプロピレン系樹脂層(X)と中間層(Y)の共押出製膜性が悪いため、意匠性及び厚み均一性に劣る多層フィルムであった。ポリプロピレン系樹脂層(X)を有さない比較例2では、ポリプロピレン系樹脂層(X)を有さないためプリフォーム時のハンドリング性が悪く、さらにポリオレフィン系樹脂(β)の射出成形時に、露出している中間層(Y)が変形して流れてしまうため、接着強度が部分的に極めて弱い成形体しか得られなかった。