特許第6913229号(P6913229)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社日立ハイテクノロジーズの特許一覧

<>
  • 特許6913229-自動分析装置 図000002
  • 特許6913229-自動分析装置 図000003
  • 特許6913229-自動分析装置 図000004
  • 特許6913229-自動分析装置 図000005
  • 特許6913229-自動分析装置 図000006
  • 特許6913229-自動分析装置 図000007
  • 特許6913229-自動分析装置 図000008
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6913229
(24)【登録日】2021年7月13日
(45)【発行日】2021年8月4日
(54)【発明の名称】自動分析装置
(51)【国際特許分類】
   G01N 35/00 20060101AFI20210727BHJP
   G01N 35/10 20060101ALI20210727BHJP
   G01F 23/292 20060101ALI20210727BHJP
【FI】
   G01N35/00 C
   G01N35/10 D
   G01F23/292 A
【請求項の数】7
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2020-505649(P2020-505649)
(86)(22)【出願日】2019年1月29日
(86)【国際出願番号】JP2019002853
(87)【国際公開番号】WO2019176342
(87)【国際公開日】20190919
【審査請求日】2020年3月6日
(31)【優先権主張番号】特願2018-48755(P2018-48755)
(32)【優先日】2018年3月16日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】501387839
【氏名又は名称】株式会社日立ハイテク
(74)【代理人】
【識別番号】110000062
【氏名又は名称】特許業務法人第一国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中野 弘基
(72)【発明者】
【氏名】田上 英嗣
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 洋一郎
(72)【発明者】
【氏名】大草 武徳
【審査官】 松岡 智也
(56)【参考文献】
【文献】 特開平02−243960(JP,A)
【文献】 特開平11−072369(JP,A)
【文献】 特開昭60−064254(JP,A)
【文献】 特開平02−118454(JP,A)
【文献】 特開平07−020133(JP,A)
【文献】 特開2008−003057(JP,A)
【文献】 特開2011−102705(JP,A)
【文献】 特開2002−122604(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 35/00−37/00
G01F 23/292
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
試薬を収容する試薬容器と、
前記試薬容器の外部に設けられ、該試薬容器の内部を通過するように光を射出する射出部と、
前記試薬容器の外部に設けられ、前記射出部からの光を受光する受光部と、
前記受光部が受光した前記射出部からの光に基づいて、前記射出部から前記受光部までの前記試薬容器の内部の光路上に前記試薬が存在するか否かを検知し、前記試薬容器内の液面の高さが所定値以下であるか否かを判断する判断部と、
前記判断部が前記試薬容器内の液面の高さが前記所定値以下であると判断した場合、前記試薬容器から吸引した前記試薬の液量を所定量に補正する補正部と、を備え、
前記光の波長は、前記試薬容器の材料、及び、前記試薬の種類に基づいて定められる、自動分析装置。
【請求項2】
前記液量を初期化する初期化部を備え、
前記初期化部は、前記判断部が前記試薬容器内の液面の高さが前記所定値以下であると判断した場合、前記初期化部による初期化動作を行わない、請求項1記載の自動分析装置。
【請求項3】
前記試薬に吸収される光の吸収度は、前記試薬容器に吸収される光の吸収度よりも大きい、請求項1または2に記載の自動分析装置。
【請求項4】
前記光の波長は、前記試薬容器の内部の液体に吸収又は分散される波長で、かつ、前記試薬容器を透過する波長である、請求項1から3のいずれか1項に記載の自動分析装置。
【請求項5】
前記試薬容器に前記試薬を吸引又は吐出するノズルを更に備え、
前記射出部及び前記受光部は、前記光路が前記ノズルを回避するように配置される、請求項1から4のいずれか1項に記載の自動分析装置。
【請求項6】
前記射出部と前記受光部は、前記試薬の不足により当該自動分析装置の動作を阻害することのない液量に対応する前記所定値の高さに設けられる、請求項1から5のいずれか1項に記載の自動分析装置。
【請求項7】
前記試薬容器内の液面の高さが前記所定値以下となった場合、前記試薬容器の交換を促すメッセージを表示する表示部を備える、請求項1からのいずれか1項に記載の自動分析装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動分析装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自動分析装置においては、試薬容器に充填された試薬を吸引し、反応容器の中で検体(血液、尿等の生体試料)と混合させる。試薬の吸引量に異常がある場合は、自動分析動作を停止させる。ここで、光の屈折や反射を利用して試薬容器内の試薬の液面高さ(液量)を検知する手法が知られている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11-72369号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1では、試薬容器が変形することを考慮していない。試薬容器には、材料としてPEやPS等の樹脂を用いる場合があり、パウチ容器の使用やコスト削減のため容器壁面を薄くする場合もあるため、試薬を充填する際、試薬容器壁面が歪むことがある。光の反射や屈折を利用して液量検知する場合は、対応可能な試薬容器の形状が限定されてしまう。
【0005】
そこで、本発明の目的は、試薬容器の形状に関わらず試薬の液量を検知する自動分析装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様の自動分析装置は、試薬を収容する試薬容器と、試薬容器の外部に設けられ、該試薬容器の内部を通過するように光を射出する射出部と、試薬容器の外部に設けられ、射出部からの光を受光する受光部と、受光部が受光した光に基づいて、試薬容器の内部の液面高さを検知し、該液面高さから試薬容器の液量が所定値以下となったか否かを判断する判断部と、を備え、光の波長は、試薬容器の材料、及び、試薬の種類に基づいて定められる。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、試薬容器の形状に関わらず試薬の液量を検知する自動分析装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】自動分析装置の構成例を示す図。
図2A】試薬が存在しない場合の試薬容器の角部を上面から見た図。
図2B】試薬が存在する場合の試薬容器の角部を上面から見た図。
図3A】試薬と試薬容器の光の吸収スペクトルを示す図。
図3B】試薬と試薬容器の波長に係る対応関係を示す図。
図4】試薬吸引サイクルのフロー図。
図5】試薬管理量初期化サイクルのフロー図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、実施例について説明する。
【実施例1】
【0010】
図1は、自動分析装置の構成例を示す図である。本自動分析装置は、検体と試薬の混合液を収容する反応容器888を複数搭載可能なインキュベータ(反応ディスク)887、試薬107を保持する試薬容器101、試薬容器101から試薬107を吸引するノズル104、試薬容器101から吸引した試薬を反応容器888に分注する試薬プローブ886、検体容器891から吸引した検体を反応容器888に分注する検体プローブ890、試薬容器101内の試薬107の液量を管理する管理部110、ユーザに情報を表示する表示部115等を備える。試薬プローブ886は、分注流路770を介してシリンジ885(定量ポンプ)と接続され、分注流路770の途中にはバルブ772が設けられている。ノズル104は、分注流路771を介してシリンジ885と接続され、分注流路771の途中にはバルブ773が設けられている。
【0011】
試薬プローブ886は、シリンジ885により、ノズル104を介して、試薬容器101からの試薬の吸引、及び、反応容器888への試薬の吐出を行う。検体プローブ890は、図示しない移動機構により、上下及び水平方向に回動して反応容器888と検体容器891間を移動し、図示しない吸引/吐出機構により、検体を吸引・吐出する。
【0012】
シリンジ885は圧力センサを備え、試料吸引及び吐出時の分注流路770及び771内の圧力を、流路内の圧力信号に基づいて検出し、ノズル104から試薬107が正常に吸引されているか否かを判断する。例えば、試薬容器101内の試薬107の液量が略無い状態で、ノズル104から試薬107を吸引できなかった等、圧力センサが試薬107が正常に吸引されていないと判断した場合、管理部110は異常な分析結果を出力しないように装置動作を停止させる。
【0013】
図2は試薬容器の角部を上面から見た図であり、図2Aは試薬が存在しない場合を、図2Bは試薬が存在する場合を示す。
【0014】
光150を射出する射出部102は試薬容器101の外部に設けられ、試薬容器101の内部を光150が透過するように配置される。光150を受光する受光部103は試薬容器101の外部に設けられ、光150の光路上に配置される。射出部102は発光ダイオード等の発光素子、受光部103はフォトダイオード等の受光素子から形成されている。
【0015】
光路上に試薬107が存在しない場合、光150は試薬容器101の壁面105と壁面106を透過して、受光部103に受光される。一方、光路上に試薬107が存在している場合、光150は試薬107に吸収されて減衰するため、受光部103へ受光されない。
【0016】
射出部102は試薬容器の壁面105に対して、入射角が0<θ<90°となるように配置される。又、射出部102は、光150がノズル104に阻まれることを防ぐため、光150の光路上にノズル104が存在しないように配置される。受光部103は試薬容器の壁面106に対して、出射角が0<θ<90°となるように配置される。又、射出部102と受光部103は、試薬の不足による装置動作の阻害とならない液量である所定値の高さに設けられる。
【0017】
射出部102及び受光部103は試薬107が所定量Vaとなる高さHに試薬容器101を挟んで対峙して設けられている。例えば、底面積Sを持つ直方体状の試薬容器101の場合、試薬容器101内の試薬107の液量が所定量Vaとなる高さHは、H=Va/S=(Vd+Vt)/S によって定められる。即ち、ノズル104から吸引できない最低量Vdに、インキュベータ887へ格納可能なセルの数だけ分析する作業に要する試薬液量Vtを加算し、底面積Sで割った値である。尚、パウチなどの外形が不定な試薬容器においては、上記の容器断面積から計算では液高さを規定できない。その場合、ノズルの吸引口の高さと液高さに基づいて所定値Vaを定義する。
【0018】
図3は試薬と試薬容器の関係を示す図であり、図3Aは試薬と試薬容器の光の吸収スペクトルを示す図、図3Bは試薬と試薬容器の波長に係る対応関係を示す図である。
【0019】
光150の波長は、試薬容器101の材料と試薬107の種類によって選定される。例えば、試薬107が透明で可視光を透過する水分を含んだ略無色の試薬A、試薬容器101がポリエチレンやポリスチレン等のプラスチック樹脂で形成される白色等の色がついた半透明又は不透明の有色で直方体状の容器Cの組み合わせの場合は、試薬Aに含まれる水分に吸収され、上記プラスチック樹脂をよく透過する波長λ1(約1450nm)、もしくは、λ3(約1940nm)の近赤外線を使用する。又、試薬107が白などの有色の試薬B、試薬容器101がホウケイ酸ガラスやソーダ石灰ガラス等のガラスで形成される透明(略無色)の円筒形状の容器Dの組み合わせの場合は、試薬Bに分散又は吸収され、容器Dをよく透過する波長λ2(400nm〜800nm)の可視光を使用する。同様に、試薬Aと容器Dの組み合わせ(無色試薬と無色容器)の場合は、λ1、λ2、λ3の何れかを使用し、試薬Bと容器Cの組み合わせ(有色試薬と有色容器)の場合は、λ1、もしくは、λ3を使用する。その他、組み合わせのバリエーションに応じて、波長を選択すればよい。
【0020】
このように、試薬容器の材料と試薬の種類によって光150の波長を定めることで、容器形状に捉われることなく、例えば、パウチなどの外形が不定で壁面と光軸との角度が不定な試薬容器についても、試薬液面の高さを検出できる。又、入射角や出射角が0<θ<90°となるような配置の制限をなくすことができる。
【0021】
次に、管理部110について説明する。管理部110は、使用した液量から残液量を算出する算出部111と、受光部103が光150を受光したか否かに基づいて試薬107の液面が高さH以下であるか否かを判断する判断部112と、液量を初期化する初期化部113と、判断部112が試薬107の液面が高さH以下であると判断した場合、試薬容器101内の試薬107の液量が少ないことを知らせるメッセージを表示部115に表示させ、オペレータに試薬容器101の交換を促す警告部114を備える。
【0022】
ここで、管理部110が管理する試薬容器101内の計算上の試薬107の液量を管理液量V(x)(xは吸引回数)、試薬容器101から吸引した液量を吸引液量Vu、新品の試薬容器101に入っている試薬107の液量を初期液量V(0)とする。
【0023】
算出部111は、シリンジ885の駆動によって試薬容器101から吸引した吸引液量Vuを用いて現在の管理液量V(x)を算出する。管理液量V(x)は、試薬を吸引する前の管理液量V(x-1)から吸引液量Vuを差し引いた値である(V(x)=V(x-1)-Vu)。
【0024】
初期化部113は、管理液量V(x)を初期値V(0)に設定する。初期化動作は、初期化トリガ116(スイッチ等)からの指令により実施する。試薬容器101を新しいものと交換した際、初期化トリガ116によって初期化動作を実行することで、管理部110は現在の試薬容器101に初期量V(0)が入っていると認識する。
【0025】
管理部110は、判断部112が試薬107の液面の高さがH(液量が所定量Va)以下であると判断した場合、管理液量V(x)を所定量Vaの値に補正し、補正フラグFを1とする。尚、補正フラグとは、補正を実行したか否かを判断するためのフラグであり、補正動作が未実行の場合は0、補正動作が実行済の場合は1である。ここで、既にF=1であった(既に液量補正動作を実行済)場合、判断部112が試薬107の液量が所定量Va以下であると判断しても液量補正動作を実行しない。
【0026】
図4は、管理部110による試薬吸引動作のフロー図である。
【0027】
まず、管理部110は、試薬容器101から試薬107を吸引するようノズル104を制御する(S401)。この際、算出部111は、吸引前の管理液量V(x-1)から吸引液量Vuを引いた値を現在の管理液量V(x)とする。
【0028】
次に、管理部110は、F=0であるか否かを判断する(S402)。F=1の場合、管理部110は、液量補正動作を行わず、試薬吸引サイクルを終了する。F=0の場合、判断部112は試薬107の液量がVa以下であるか否か(受光部103が光を検知するか否か)を判断する(S403)。管理部110は、判断部112が試薬107の液量がVa以下ではないと判断した場合、試薬吸引サイクルを終了し、試薬107の液量がVa以下であると判断した場合、管理液量V(x)を所定値Vaとする(S404)。又、管理部110は、Fを1とし(S405)、試薬交換を促すメッセージを表示部115上に表示するよう警告部114を制御する(S406)。
【0029】
本フローによる補正を行わないと、例えば、実液量が管理液量より大きかった場合、管理液量が0になれば実液量が残っているにもかかわらず試薬容器101を交換することになり、無駄が増える。又、実液量が管理液量より小さかった場合、実液量が0になっても管理液量は存在することになっているため、試薬がない状態での吸引(空吸い)を行うことになる。しかし、本フローによれば、実液量と管理液量が異なっていた場合に、試薬107の液面高さがH以下になったことをトリガとして、管理液量と実液量を略同じ値に補正するため、このような問題を回避することができる。
【0030】
図5は、管理部110による管理液量V(x)の初期化動作のフロー図である。
【0031】
初期化部113は、初期化トリガ116からの指令を受信すると(S501)、試薬107の液量がVa以下であるか否かを判断する(S502)。試薬107の液量がVa以下であると判断した場合、初期化部113は初期化動作を実行しない。試薬107の液量がVa以下でないと判断した場合、初期化部113は管理液量V(x)を初期値V(0)とし(S503)、Fを0とする(S504)。
【0032】
本フローは、管理部110による液量補正を可能とする点で有意義である。試薬が光150より上にある場合、図4のフローにより液量補正可能である。一方で、試薬が光150より下にあるにも関わらず液量補正がなされないような場合、液量補正を行うチャンスがないため、試薬の空吸いが発生してしまう。そこで、管理液量の初期化により、試薬の空吸いを回避することができる。尚、初期化トリガ116はユーザがスイッチを押すことにより発動するが、試薬容器101の設置を監視するセンサを設け、該センサの信号に基づいて、初期化トリガ116が発動するようにしてもよい。
【0033】
以上の実施例によれば、試薬容器の形状によらず、正確な試薬液量検知を行うことができる。又、様々な要因(ユーザが新品の試薬容器をこぼしてしまった場合、使用中の試薬容器に対して管理液量を初期化してしまった場合等)により発生する初期液量の整合性を修正することができる。又、試薬量を補正することで、試薬の吸引量の異常を回避し、検体の無駄な消費を抑制することができる。更に、使用後の試薬の残量を最小限に抑え、装置のランニングコストを下げることができる。
【符号の説明】
【0034】
101:試薬容器、102:射出部、103:受光部、104:ノズル、105:試薬容器の射出部側の壁面、106:試薬容器の受光部側の壁面、107:試薬容器内部の試薬、110:管理部、111:算出部、112:判断部、113:初期化部、114:警告部、115:表示部、116:初期化トリガ、770:流路(試薬プローブ側)、771:流路(ノズル側)、772:バルブ(試薬プローブ側)、773:バルブ(ノズル側)、885:シリンジ、886:試薬プローブ、887:インキュベータ、888:反応容器、890:検体プローブ、891:検体容器
図1
図2A
図2B
図3A
図3B
図4
図5