【実施例1】
【0010】
図1は、自動分析装置の構成例を示す図である。本自動分析装置は、検体と試薬の混合液を収容する反応容器888を複数搭載可能なインキュベータ(反応ディスク)887、試薬107を保持する試薬容器101、試薬容器101から試薬107を吸引するノズル104、試薬容器101から吸引した試薬を反応容器888に分注する試薬プローブ886、検体容器891から吸引した検体を反応容器888に分注する検体プローブ890、試薬容器101内の試薬107の液量を管理する管理部110、ユーザに情報を表示する表示部115等を備える。試薬プローブ886は、分注流路770を介してシリンジ885(定量ポンプ)と接続され、分注流路770の途中にはバルブ772が設けられている。ノズル104は、分注流路771を介してシリンジ885と接続され、分注流路771の途中にはバルブ773が設けられている。
【0011】
試薬プローブ886は、シリンジ885により、ノズル104を介して、試薬容器101からの試薬の吸引、及び、反応容器888への試薬の吐出を行う。検体プローブ890は、図示しない移動機構により、上下及び水平方向に回動して反応容器888と検体容器891間を移動し、図示しない吸引/吐出機構により、検体を吸引・吐出する。
【0012】
シリンジ885は圧力センサを備え、試料吸引及び吐出時の分注流路770及び771内の圧力を、流路内の圧力信号に基づいて検出し、ノズル104から試薬107が正常に吸引されているか否かを判断する。例えば、試薬容器101内の試薬107の液量が略無い状態で、ノズル104から試薬107を吸引できなかった等、圧力センサが試薬107が正常に吸引されていないと判断した場合、管理部110は異常な分析結果を出力しないように装置動作を停止させる。
【0013】
図2は試薬容器の角部を上面から見た図であり、
図2Aは試薬が存在しない場合を、
図2Bは試薬が存在する場合を示す。
【0014】
光150を射出する射出部102は試薬容器101の外部に設けられ、試薬容器101の内部を光150が透過するように配置される。光150を受光する受光部103は試薬容器101の外部に設けられ、光150の光路上に配置される。射出部102は発光ダイオード等の発光素子、受光部103はフォトダイオード等の受光素子から形成されている。
【0015】
光路上に試薬107が存在しない場合、光150は試薬容器101の壁面105と壁面106を透過して、受光部103に受光される。一方、光路上に試薬107が存在している場合、光150は試薬107に吸収されて減衰するため、受光部103へ受光されない。
【0016】
射出部102は試薬容器の壁面105に対して、入射角が0<θ<90°となるように配置される。又、射出部102は、光150がノズル104に阻まれることを防ぐため、光150の光路上にノズル104が存在しないように配置される。受光部103は試薬容器の壁面106に対して、出射角が0<θ<90°となるように配置される。又、射出部102と受光部103は、試薬の不足による装置動作の阻害とならない液量である所定値の高さに設けられる。
【0017】
射出部102及び受光部103は試薬107が所定量Vaとなる高さHに試薬容器101を挟んで対峙して設けられている。例えば、底面積Sを持つ直方体状の試薬容器101の場合、試薬容器101内の試薬107の液量が所定量Vaとなる高さHは、H=Va/S=(Vd+Vt)/S によって定められる。即ち、ノズル104から吸引できない最低量Vdに、インキュベータ887へ格納可能なセルの数だけ分析する作業に要する試薬液量Vtを加算し、底面積Sで割った値である。尚、パウチなどの外形が不定な試薬容器においては、上記の容器断面積から計算では液高さを規定できない。その場合、ノズルの吸引口の高さと液高さに基づいて所定値Vaを定義する。
【0018】
図3は試薬と試薬容器の関係を示す図であり、
図3Aは試薬と試薬容器の光の吸収スペクトルを示す図、
図3Bは試薬と試薬容器の波長に係る対応関係を示す図である。
【0019】
光150の波長は、試薬容器101の材料と試薬107の種類によって選定される。例えば、試薬107が透明で可視光を透過する水分を含んだ略無色の試薬A、試薬容器101がポリエチレンやポリスチレン等のプラスチック樹脂で形成される白色等の色がついた半透明又は不透明の有色で直方体状の容器Cの組み合わせの場合は、試薬Aに含まれる水分に吸収され、上記プラスチック樹脂をよく透過する波長λ1(約1450nm)、もしくは、λ3(約1940nm)の近赤外線を使用する。又、試薬107が白などの有色の試薬B、試薬容器101がホウケイ酸ガラスやソーダ石灰ガラス等のガラスで形成される透明(略無色)の円筒形状の容器Dの組み合わせの場合は、試薬Bに分散又は吸収され、容器Dをよく透過する波長λ2(400nm〜800nm)の可視光を使用する。同様に、試薬Aと容器Dの組み合わせ(無色試薬と無色容器)の場合は、λ1、λ2、λ3の何れかを使用し、試薬Bと容器Cの組み合わせ(有色試薬と有色容器)の場合は、λ1、もしくは、λ3を使用する。その他、組み合わせのバリエーションに応じて、波長を選択すればよい。
【0020】
このように、試薬容器の材料と試薬の種類によって光150の波長を定めることで、容器形状に捉われることなく、例えば、パウチなどの外形が不定で壁面と光軸との角度が不定な試薬容器についても、試薬液面の高さを検出できる。又、入射角や出射角が0<θ<90°となるような配置の制限をなくすことができる。
【0021】
次に、管理部110について説明する。管理部110は、使用した液量から残液量を算出する算出部111と、受光部103が光150を受光したか否かに基づいて試薬107の液面が高さH以下であるか否かを判断する判断部112と、液量を初期化する初期化部113と、判断部112が試薬107の液面が高さH以下であると判断した場合、試薬容器101内の試薬107の液量が少ないことを知らせるメッセージを表示部115に表示させ、オペレータに試薬容器101の交換を促す警告部114を備える。
【0022】
ここで、管理部110が管理する試薬容器101内の計算上の試薬107の液量を管理液量V(x)(xは吸引回数)、試薬容器101から吸引した液量を吸引液量Vu、新品の試薬容器101に入っている試薬107の液量を初期液量V(0)とする。
【0023】
算出部111は、シリンジ885の駆動によって試薬容器101から吸引した吸引液量Vuを用いて現在の管理液量V(x)を算出する。管理液量V(x)は、試薬を吸引する前の管理液量V(x-1)から吸引液量Vuを差し引いた値である(V(x)=V(x-1)-Vu)。
【0024】
初期化部113は、管理液量V(x)を初期値V(0)に設定する。初期化動作は、初期化トリガ116(スイッチ等)からの指令により実施する。試薬容器101を新しいものと交換した際、初期化トリガ116によって初期化動作を実行することで、管理部110は現在の試薬容器101に初期量V(0)が入っていると認識する。
【0025】
管理部110は、判断部112が試薬107の液面の高さがH(液量が所定量Va)以下であると判断した場合、管理液量V(x)を所定量Vaの値に補正し、補正フラグFを1とする。尚、補正フラグとは、補正を実行したか否かを判断するためのフラグであり、補正動作が未実行の場合は0、補正動作が実行済の場合は1である。ここで、既にF=1であった(既に液量補正動作を実行済)場合、判断部112が試薬107の液量が所定量Va以下であると判断しても液量補正動作を実行しない。
【0026】
図4は、管理部110による試薬吸引動作のフロー図である。
【0027】
まず、管理部110は、試薬容器101から試薬107を吸引するようノズル104を制御する(S401)。この際、算出部111は、吸引前の管理液量V(x-1)から吸引液量Vuを引いた値を現在の管理液量V(x)とする。
【0028】
次に、管理部110は、F=0であるか否かを判断する(S402)。F=1の場合、管理部110は、液量補正動作を行わず、試薬吸引サイクルを終了する。F=0の場合、判断部112は試薬107の液量がVa以下であるか否か(受光部103が光を検知するか否か)を判断する(S403)。管理部110は、判断部112が試薬107の液量がVa以下ではないと判断した場合、試薬吸引サイクルを終了し、
試薬107の液量がVa以下であると判断した場合、管理液量V(x)を所定値Vaとする(S404)。又、管理部110は、Fを1とし(S405)、試薬交換を促すメッセージを表示部115上に表示するよう警告部114を制御する(S406)。
【0029】
本フローによる補正を行わないと、例えば、実液量が管理液量より大きかった場合、管理液量が0になれば実液量が残っているにもかかわらず試薬容器101を交換することになり、無駄が増える。又、実液量が管理液量より小さかった場合、実液量が0になっても管理液量は存在することになっているため、試薬がない状態での吸引(空吸い)を行うことになる。しかし、本フローによれば、実液量と管理液量が異なっていた場合に、試薬107の液面高さがH以下になったことをトリガとして、管理液量と実液量を略同じ値に補正するため、このような問題を回避することができる。
【0030】
図5は、管理部110による管理液量V(x)の初期化動作のフロー図である。
【0031】
初期化部113は、初期化トリガ116からの指令を受信すると(S501)、試薬107の液量がVa以下であるか否かを判断する(S502)。試薬107の液量がVa以下であると判断した場合、初期化部113は初期化動作を実行しない。試薬107の液量がVa以下でないと判断した場合、初期化部113は管理液量V(x)を初期値V(0)とし(S503)、Fを0とする(S504)。
【0032】
本フローは、管理部110による液量補正を可能とする点で有意義である。試薬が光150より上にある場合、
図4のフローにより液量補正可能である。一方で、試薬が光150より下にあるにも関わらず液量補正がなされないような場合、液量補正を行うチャンスがないため、試薬の空吸いが発生してしまう。そこで、管理液量の初期化により、試薬の空吸いを回避することができる。尚、初期化トリガ116はユーザがスイッチを押すことにより発動するが、試薬容器101の設置を監視するセンサを設け、該センサの信号に基づいて、初期化トリガ116が発動するようにしてもよい。
【0033】
以上の実施例によれば、試薬容器の形状によらず、正確な試薬液量検知を行うことができる。又、様々な要因(ユーザが新品の試薬容器をこぼしてしまった場合、使用中の試薬容器に対して管理液量を初期化してしまった場合等)により発生する初期液量の整合性を修正することができる。又、試薬量を補正することで、試薬の吸引量の異常を回避し、検体の無駄な消費を抑制することができる。更に、使用後の試薬の残量を最小限に抑え、装置のランニングコストを下げることができる。