(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6913458
(24)【登録日】2021年7月14日
(45)【発行日】2021年8月4日
(54)【発明の名称】抗菌水
(51)【国際特許分類】
C02F 1/68 20060101AFI20210727BHJP
B01F 1/00 20060101ALI20210727BHJP
B01F 3/04 20060101ALI20210727BHJP
【FI】
C02F1/68 520B
C02F1/68 510A
B01F1/00 A
B01F3/04 Z
【請求項の数】4
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2016-523531(P2016-523531)
(86)(22)【出願日】2015年5月27日
(86)【国際出願番号】JP2015065218
(87)【国際公開番号】WO2015182647
(87)【国際公開日】20151203
【審査請求日】2018年5月23日
【審判番号】不服2020-4338(P2020-4338/J1)
【審判請求日】2020年4月1日
(31)【優先権主張番号】特願2014-110209(P2014-110209)
(32)【優先日】2014年5月28日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002934
【氏名又は名称】武田薬品工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100080791
【弁理士】
【氏名又は名称】高島 一
(74)【代理人】
【識別番号】100136629
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 光宜
(72)【発明者】
【氏名】村田 直之
(72)【発明者】
【氏名】荒井 次一
【合議体】
【審判長】
日比野 隆治
【審判官】
大光 太朗
【審判官】
金 公彦
(56)【参考文献】
【文献】
国際公開第2014/050910(WO,A1)
【文献】
特開2006−206896(JP,A)
【文献】
特開2013−180956(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C02F1/66 - 1/68
B01K1/00 - 5/26
A61K9/00 - 9/72, 31/33 - 33/44, 47/00 - 47/69
A61P31/00 - 31/22
A01N1/00 - 65/48
A01P1/00 - 23/00
C11D1/00 - 19/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリソルベート80、ポリビニルアルコール、ラウリル硫酸ナトリウム、塩化ナトリウムのいずれか1つの存在下で、ナノバブル水を製造することを特徴とする、2.0×108個/mL以上のナノバブルを含有し、該2.0×108個/mL以上のナノバブルは3ヶ月以上維持される、ナノバブル水の製造方法。
【請求項2】
ポリソルベート80、ポリビニルアルコールのいずれか1つの存在下で、ナノバブル水を製造することを特徴とする、請求項1記載の方法。
【請求項3】
ポリソルベート80、ポリビニルアルコール、ラウリル硫酸ナトリウム、塩化ナトリウムのいずれか1つの存在下で、ナノバブル水を製造することを特徴とする、ナノバブル水のナノバブル数を、3ヶ月以上、2.0×108個/mL以上に維持する方法。
【請求項4】
ポリソルベート80、ポリビニルアルコールのいずれか1つの存在下で、ナノバブル水を製造することを特徴とする、請求項3記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高密度のナノバブル水、高密度のナノバブル水の製造方法、高密度のナノバブルを長期間維持する方法、および抗菌作用を有するナノバブル水に関する。より詳細には、ナノバブル数が増大することにより抗菌作用が増強されたナノバブル水、及びナノバブル水のナノバブル数の増加方法等に関する。
【0002】
(発明の背景)
ナノバブル水は半導体の洗浄工程や作物の成長促進に現在使われている。これまでは低密度でしかナノバブルを生成できず、また水中にナノバブルを長期間存在させその効果を維持させることは困難であった。そのため、ナノバブル水の活用は、器具洗浄時の使用など、ナノバブルが短時間存在すれば足りる場合に限定されていた。
ワクチン製剤等の注射剤は、大きく単回投与型と複数回投与型の2種類に分類される。
単回投与型の注射剤は、細菌混入による汚染を防止するため、滅菌処理したワクチン溶液等の薬液の単回投与分のみをバイアルに個別密封している。単回投与型の注射剤は1回で薬液を使い切るため、保存剤の添加を考慮する必要は無い。しかし、このような単回投与型の注射剤は製造コストが高いため、特に発展途上国における使用(例えばワクチン製剤の予防接種等)は現実的ではない。
一方、数人分の量のワクチン等の薬液を一つのバイアルに入れた複数回投与型の注射剤では、バイアルの口ゴム部分に使用のたびに複数回注射針を刺すことになるため、針刺し時に混入した細菌を殺菌又は増殖抑制するための保存剤としてチメロサール、フェノキシエタノール、パラオキシ安息香酸エステル、フェノール等の保存剤が薬液に添加されている。
【0003】
特許文献1には、超微細気泡と薬剤とを含む組成物が薬剤の効果をよりよく発現させること、また超微細気泡水溶液中に薬剤を分散させた場合には界面活性剤を使用することなく安定な分散体を得ることができることが記載されている。実施例1には4.0〜8.0×10
6個/mLの超微細気泡水が記載されている。また
図4には超微細気泡が300時間安定して存在することが記載されている。しかし2.0×10
8個/mL以上の超微細気泡を含有する超微細気泡水および超微細気泡水自体の抗菌作用については記載されていない。
【0004】
非特許文献1には、ナノバブル発生装置(nanoGALF
TM)を用いて、蒸留水4.0L、気泡水流量4.0L/分、溶解圧力0.3MPa、30分の条件下でナノバブル水を製造し、LM20(NanoSight社)を用いてナノバブル数を計測した結果、1.42×10
8個/mLのナノバブル水が得られたことが記載されている。しかし、2.0×10
8個/mL以上のナノバブルを含有するナノバブル水およびナノバブル水自体の抗菌作用について記載はない。また、当該ナノバブル水は水中に製造直後から3日間程度は安定に1.0×10
8個/mLのナノバブルが維持されるが、4ヶ月間保管したのちにナノバブル数の計測を行うとナノバブルが消滅することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】WO2011/016529
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】日本混相流学会年会講演会2011、「nanoGALF技術による直径100nmのナノバブルの高密度・安定製造」
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ワクチン製剤等の液体医薬製剤の保存剤として使用されているチメロサールは潜在的な毒性が懸念されるエチル水銀化合物であり、チメロサールを使用せずに保存効力を示し、かつワクチン製剤等の液体医薬製剤を安定に保存する技術の開発が望まれている。従って、本願発明の目的は、チメロサールのように潜在的な副作用が懸念される保存剤を用いずに、液体医薬製剤(例えば、注射剤)を安定に保存する技術を提供することである。
また、本願発明のもう1つの目的は、ナノバブル水の用途、応用分野を拡大するために、今までの生成技術で得られるナノバブル水よりも高密度のナノバブル水を提供することである。
また、本願発明のもう1つの目的は、ナノバブル水の効果を長期間持続させるために、高密度のナノバブルを長期間維持する方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本願発明者らは、上記課題に鑑み鋭意検討した結果、ナノバブル水の調製時に、界面活性剤、親水性樹脂、電解質等を添加することでナノバブル数が飛躍的に増加する、即ち、ナノバブルを高密度で生成させることを見出した。また、このように界面活性剤、親水性樹脂、電解質等の存在下で調製したナノバブル水のナノバブル数は長期間に渡って維持されることを見出した。また、界面活性剤、親水性樹脂、電解質等の存在下で調製したナノバブル水は、米国薬局方(USP)を参考にした保存効力試験において保存剤としての基準を満たす保存効力を示し、液体医薬製剤(例えば、注射剤)用の基剤として十分使用可能であることを見出した。即ち、本願発明のナノバブル数が増大したナノバブル水を液体医薬製剤の基剤として使用することで、チメロサール、フェノキシエタノール、パラオキシ安息香酸エステル、フェノール等の従来の保存剤の添加を不要又は添加量を極めて少なくすることができることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち、本発明は、
[1]2.0×10
8個/mL以上のナノバブルを含有するナノバブル水;
[2]抗菌作用を有する、上記[1]記載のナノバブル水;
[3]界面活性剤、親水性樹脂および/または電解質の存在下で製造される、上記[1]記載のナノバブル水;
[4]ポリソルベート80および/またはポリビニルアルコールの存在下で製造される、上記[1]記載のナノバブル水;
[5]界面活性剤、親水性樹脂および/または電解質の存在下でナノバブル水を製造することを特徴とする、ナノバブル水のナノバブル数を2.0×10
8個/mL以上に増加させる方法;
[6]ポリソルベート80および/またはポリビニルアルコールの存在下でナノバブル水を製造することを特徴とする、上記[5]記載の方法;
[7]界面活性剤、親水性樹脂および/または電解質の存在下でナノバブル水を製造することを特徴とする、ナノバブル水のナノバブル数を2.0×10
8個/mL以上に維持する方法;
[8]ポリソルベート80および/またはポリビニルアルコールの存在下でナノバブル水を製造することを特徴とする、上記[7]記載の方法;
[9]3ヶ月以上、ナノバブル水のナノバブル数を2.0×10
8個/mL以上に維持する、上記[8]記載の方法;
[10]ナノバブル水が含有するナノバブルの数を、2.0×10
8個/mL以上にすることを特徴とする、ナノバブル水の抗菌作用を増強する方法;
等に関する。
【発明の効果】
【0010】
本願発明のナノバブル数が増大したナノバブル水、即ち高密度のナノバブル水は、優れた抗菌作用とそれによる保存効力を示し、一定期間、同一容器から繰り返して使用される複数回投与型の液体医薬製剤(例えば、注射剤)の基剤として有用である。本願発明のナノバブル数が増大したナノバブル水を液体医薬製剤の基剤として用いる場合、保存剤として無機または有機化合物を別途含有させる必要はないので副作用の懸念が少なく、また高密度のナノバブルが長期間に渡って維持されるため安定的に保存可能な製剤を提供することが可能となり、極めて有用である。
また、本願発明のナノバブル数が増大したナノバブル水、即ち高密度のナノバブル水は、ナノバブル水自体の有する様々な効果が増強されることで、洗浄力の増強などの様々な分野での活用、展開が期待される。
また、本願発明の高密度のナノバブルを長期間に渡って維持する方法が提供されることで、長期間に渡ってナノバブル水の作用が維持することが可能になるため、作物の成長の増強、精密機器の洗浄性の増強、土壌浄化の増強等の様々な分野での活用、展開が期待される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】特定添加剤の存在下で製造されたナノバブル水の保存効力試験の結果を示すグラフである。
図1において、−●−は注射用水の結果を示し、−□−はポリソルベート80含有のナノバブル水の結果を示し、−▲−はポリビニルアルコール含有のナノバブル水の結果を示す。
【0012】
(発明の詳細な説明)
本願発明のナノバブル水は、2.0×10
8個/mL以上のナノバブルを含有することを特徴とする。
本明細書において「ナノバブル水」とは、1000nm以下の直径を有する気体粒子(ナノバブル)が安定に存在する水を意味する。ナノバブルの直径(ナノバブル径)は、好ましくは800nm以下であり、より好ましくは500nm以下である。ナノバブル径の下限に特に制限はないが、例えば、1nm以上、好ましくは5nm以上、より好ましくは10nm以上である。また、ナノバブルの平均径は500nm以下、好ましくは1〜500nmの範囲で適宜設定することができるが、好ましくは5〜300nm、より好ましくは10〜150nmの範囲で適宜設定される。本明細書において、平均径とは、分布の最頻値(体積%または個数%の極大値)に対応する粒子径(モード径)を意味する。
【0013】
ナノバブルのサイズは均一であることが望ましく、ナノバブル径分布の小径側から累積10%及び累積90%に相当するナノバブル径をそれぞれd10及びd90としたときのd90/d10比は、5以下であることが好ましく4.5以下であることがより好ましい。
【0014】
本願発明のナノバブル水に含有されるナノバブルの数とは、ナノバブル水1mLに存在するナノバブルの数を意味し、本明細書においては「ナノバブル密度」と称することもある。
本願発明のナノバブル水は含有されるナノバブル数が2.0×10
8個/mL以上であることを特徴とし、これにより優れた作用効果(例えば、抗菌作用、保存効力作用、洗浄力、作物成長促進作用)が奏される。
抗菌作用、保存効力作用等の作用効果の観点から、ナノバブル数は2.0×10
8個/mL以上が好ましく、2.5×10
8個/mL以上がより好ましい。
ナノバブル数の上限は特に制限されないが、2.0×10
9個/mL以下、好ましくは1.0×10
9個/mL以下であってよい。
【0015】
ナノバブル径、その分布、及びナノバブル数は、ブラウン運動に基づくレーザー光の散乱を利用した方法(例、ナノサイト社、LM20やLM10など)、電気抵抗変化に基づく方法(例、ベックマン・コールター社、Multisizer4など)、レーザー回折散乱法に基づく方法(例、島津製作所、SALD−7100Hなど)、ミー散乱を利用した方法(例、日本電色工業、NP−500Tなど)等を用いて測定することができるが、本発明に用いられるナノバブル水またはナノバブル水溶液のナノバブル径及びその分布は、ナノサイト社、LM20やLM10を用いたレーザー光散乱を利用したトラッキング法(追尾法)を用いて測定されたもの、或いはそれに準じて測定されたものが使用される。
ナノバブル径、その分布、及びナノバブル数の値は、通常、ナノバブル水の製造直後に測定されるものを意味するが、後述のように本願発明のナノバブル水のナノバブル径、その分布及びナノバブル数は長期間安定に維持されるため、ナノバブル水を製造後に一定期間(例えば6ヶ月程度)密閉で保管して、使用の直前にナノバブル径、その分布、及びナノバブル数を測定した値であってもよい。
【0016】
ナノバブルを構成する気体としては、例えば、酸素、オゾン、窒素、二酸化炭素、ヘリウム、アルゴン等、または酸素、オゾン、窒素、二酸化炭素、ヘリウム、アルゴン等から選ばれる1または2以上の気体の混合物、大気中の気体(例、空気)等が挙げられ、これらに限定されないが、好ましくは、窒素、オゾン、酸素、アルゴンであり、より好ましくは、窒素、オゾンである。あるいは、ナノバブル内は、真空であってもよい。
ここで、「真空」とは通常の大気圧より低い圧力の気体で満たされた空間の状態を意味する。
【0017】
一方、ナノバブルを含有させる「水」としては、特に制限はなく、例えば水道水、脱イオン水、蒸留水、滅菌蒸留水、注射用精製水、超純水等を用いることができるが、注射剤に使用する場合は、滅菌蒸留水、注射用精製水等が好ましい。
また、本明細書における「水溶液」は、例えば、医薬製剤分野で通常使用され得る任意の添加剤をさらに含有する水が挙げられる。そのような添加剤としては、例えば、賦形剤、滑沢剤、結合剤、崩壊剤、溶解補助剤、懸濁化剤、等張化剤、緩衝剤、無痛化剤、防腐剤、抗酸化剤、着色剤、甘味剤、pH調整剤、安定化剤、酸味料、香料、流動化剤等が挙げられる。好適な例としては下記の薬理学的に許容し得る担体と同様のものが挙げられる。
上記した添加剤は、2種以上を適宜の割合で混合して用いてもよい。添加剤として、好ましくは、懸濁化剤、安定化剤、分散剤、等張化剤等から選ばれる1または2以上の添加剤が挙げられる。
【0018】
また、本明細書における「ナノバブル水溶液」は、例えば、医薬製剤分野で通常使用され得る任意の添加剤をさらに含有するナノバブル水が挙げられる。そのような添加剤としては、例えば、賦形剤、滑沢剤、結合剤、崩壊剤、溶解補助剤、懸濁化剤、等張化剤、緩衝剤、無痛化剤、防腐剤、抗酸化剤、着色剤、甘味剤、pH調整剤、安定化剤、酸味料、香料、流動化剤等が挙げられる。
上記した添加剤は、2種以上を適宜の割合で混合して用いてもよい。添加剤として、好ましくは、懸濁化剤、安定化剤、分散剤、等張化剤等から選ばれる1または2以上の添加剤が挙げられる。
これらの添加剤は、ナノバブルの生成及び/又は安定性に影響を与えない限り、予め水に溶解して直接ナノバブル水溶液として調製することもできるが、まず添加剤を含まない水中にナノバブルを生成させてナノバブル水とした後、用時添加剤を溶解してナノバブル水溶液としてもよい。
【0019】
ナノバブル水の製造方法としては、マイクロバブル(1〜60μm程度の直径を有する気体粒子)とナノバブルとを水中に同時発生させた後、マイクロバブルを浮上分離させてナノバブルのみを残留させる方法と、ナノバブルを直接生成させる方法とに大別されるが、現状では前者が主流である。前者の方法としては、気体を高速旋回で破砕してマイクロバブルを多数発生させ、マイクロバブルを浮上分離してナノバブルを水中に残留させる高速旋回液流式、気体を加圧して過飽和で溶解させた液を急速減圧してマイクロバブルとナノバブルを析出させ、マイクロバブルを浮上分離してナノバブルを水中に残留させる加圧溶解式などがある。
【0020】
本願発明のナノバブル水の製造方法は、好ましくは、加圧溶解式である。例えば、加圧ポンプにより0.2〜0.5MPa程度に加圧された加圧容器内で気体を強制的に溶解させた後、ノズルを通して水中にフラッシュ操作すると、減圧され過飽和となった気体が排水中にマイクロバブルまたはナノバブルとなり放出され、白濁したマイクロバブル水およびナノバブル水の混合物が生成される。その後通気を停止し静置することでマイクロバブルを自然浮上離脱させると、ナノバブルのみが残留した澄明なナノバブル水が生成される。従って、加圧溶解式は、加圧溶解−減圧による析出の2段階の過程を経て、二次的に気体泡を発生させる点で、作動流体中に吸引した気体を直接的に気体泡として生成する他の方式とは異なる。
ナノバブル発生装置としては、例えば、加圧溶解式のIDEC社製nanoGALF
TM、オーラテック社製OM4−MD5−045、ニクニ社製マイクロバブルジェネレータなどや、高速旋回液流式のバイ・クリーン社製YJ、アクアエアー社製マイクロバブル発生装置、ローヤル電機社製マイクロブレードなどが挙げられる。ナノバブル発生装置は、好ましくは、加圧溶解式のIDEC社製nanoGALF
TMである。
【0021】
本明細書において「ナノバブル数を増加させる」とは、特定の添加剤の存在下でナノバブル水を製造することで該添加剤非存在下の場合と比べてナノバブル水のナノバブル数を増加させることを意味する。本願発明のナノバブル水は、界面活性剤、親水性樹脂および/または電解質の存在下に「水」又は「水溶液」を上記ナノバブル水の製造方法に供することにより、ナノバブル数を増大させることができる。
例えば、本願発明の界面活性剤、親水性樹脂および/または電解質の存在下で製造されたナノバブル水は、界面活性剤、親水性樹脂および電解質を含まない水で調製したナノバブル水と比べて、ナノバブル数を増大させることができる。そして、本願発明の界面活性剤、親水性樹脂および/または電解質の存在下で製造されたナノバブル水は、界面活性剤、親水性樹脂または電解質を含まない水で調製したナノバブル水に比べて優れた抗菌作用を示す。
界面活性剤、親水性樹脂及び電解質は、単独で用いてもよいし、2個以上を組み合わせて用いてもよい。
【0022】
本願発明で用いられる界面活性剤としては、例えば、アニオン性界面活性剤(ラウリル硫酸ナトリウムなど)、非イオン性界面活性剤[モノステアリン酸グリセリンなどのグリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、モノステアリン酸ソルビタン、モノラウリン酸ソルビタンなどのソルビタン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン(硬化)ヒマシ油、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル(ポリオキシエチレンソルビタンラウリン酸エステル(ポリソルベート20など)、ポリオキシエチレンソルビタンオレイン酸エステル(ポリソルベート80など)など)、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル(ポリオキシエチレンラウリルエーテルなど)、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル(ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンセチルエーテルなど)、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル(ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテルなど)、マクロゴール類、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール(ポロクサマー407、ポロクサマー235、ポロクサマー188、ポロキサミンなど)など]、カチオン性界面活性剤(例えば、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、塩化セチルピリジニウム、臭化ヘキサデシルトリメチルアンモニウム、塩化デカリニウム等)、両性界面活性剤(例えばコカミドプロピルベタイン、コカミドプロピルヒドロキシスルタイン等)が挙げられ、ラウリル硫酸ナトリウム、ポリソルベート80などが好ましく、より好ましくはポリソルベート80が挙げられる。上記界面活性剤は、単独で用いてもよいし、2個以上を組み合わせて用いてもよい。
【0023】
本願発明で用いられる親水性樹脂としては、例えば、ポリアクリルアミド、ポリアクリル酸又はそのアルカリ金属塩、またはそれらのエステル等のアクリル系樹脂、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、ポリビニルエチルエーテルおよびそのコポリマー等のビニル系樹脂、トラガントガム、カラヤガム等の天然多糖類、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒアルロン酸またはそのアルカリ金属塩、アガロース、カードランなどが挙げられ、ポリビニルアルコール、ヒドロキシプロピルセルロースなどが好ましく、より好ましくはポリビニルアルコールが挙げられる。上記親水性樹脂は、単独で用いてもよいし、2個以上を組み合わせて用いてもよい。
【0024】
本願発明で用いられる電解質としては、塩化ナトリウム、臭化ナトリウム、ヨウ化ナトリウム、フッ化ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、過炭酸ナトリウム、亜硫酸ナトリウム、硫酸ナトリウム、チオ硫酸ナトリウムなどのナトリウム塩、塩化カルシウム、硫酸カルシウムなどのカルシウム塩、塩化マグネシウム、硫酸マグネシウム、酸化マグネシウム、過酸化マグネシウム、炭酸マグネシウムなどのマグネシウム塩などが挙げられ、塩化ナトリウム、塩化カルシウム、炭酸ナトリウムなどが好ましい。上記電解質は、単独で用いてもよいし、2個以上を組み合わせて用いてもよい。
【0025】
本願発明で用いられる界面活性剤、親水性樹脂および/または電解質としては、界面活性剤(例、ポリソルベート80)および/または親水性樹脂(例、ポリビニルアルコール)が好ましい。
【0026】
本願発明で用いられる界面活性剤、親水性樹脂および/または電解質の水への含有量は、所望の用途(例えば、注射剤等の液体医薬製剤)に使用できれば特に限定されるものではないが、その上限は、好ましくは50%(W/V)以下、より好ましくは20%(W/V)以下、さらに好ましくは10%(W/V)以下である。また、下限も、所望の用途(例えば、注射剤等の液体医薬製剤)に使用できれば特に限定はないが、ナノバブル数の増加効果の観点から、好ましくは0.01%(W/V)以上、より好ましくは0.05%(W/V)以上、さらに好ましくは0.1%(W/V)以上である。ここで、(W/V)は、g/mLを意味するものとする。
界面活性剤、親水性樹脂及び電解質を2個以上組み合わせて用いる場合は、その合計量を水への含有量とする。
【0027】
また、本願発明の一態様として、界面活性剤、親水性樹脂および/または電解質の存在下でナノバブル水を製造することを特徴とする、ナノバブル水のナノバブル数を2.0×10
8個/mL以上に維持する方法が挙げられる。
当該態様において、界面活性剤、親水性樹脂および/または電解質の含有量は、上記界面活性剤、親水性樹脂および/または電解質のナノバブル水への含有量と同様である。
「ナノバブル数を2.0×10
8個/mL以上に維持する」とは、例えば、本願発明のナノバブル水の作用効果(例えば、抗菌作用、洗浄力、作物成長促進作用等)が維持されることが要求される期間(例えば、注射剤の基剤として使用した場合にはその有効期間)に上記のナノバブル数を維持した状態でナノバブルが水中に存在することを意味する。
本願発明のナノバブル水においては、優れた抗菌作用が奏される2.0×10
8個/mL以上のナノバブル数を長期間維持することができる。具体的には、2.0×10
8個/mL以上のナノバブル数を好ましくは3ヶ月以上、より好ましくは6ヶ月以上、さらに好ましくは1年以上維持することができ、例えば一般的な注射剤の有効期間内に抗菌作用を維持することができる。また、ナノバブル数を2.0×10
8個/mL以上に維持する期間の上限も特に限定されないが、好ましくは5年以下、より好ましくは3年以下、さらに好ましくは1年以下であってよい。
【0028】
また、本明細書において「抗菌作用を有する」とは、例えば、日本薬局方(Japanese Pharmacopoeia: JP)、米国薬局方(United States Pharmacopeia: USP)、英国薬局方(British Pharmacopoeia: B.P.)、ヨーロッパ薬局方(European Pharmacopoeia: EP)などに準拠した保存効力試験の基準を満たす程度の抗菌作用を示すことを意味する。
また、本明細書において「ナノバブル水の抗菌作用を増強する」とは、ナノバブル数を2.0×10
8個/mL以上含有することによって、上記試験により測定される保存効力が増強されることを意味する。
【0029】
本願発明のナノバブル水が抗菌作用を示す具体的細菌類としては、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)等のスタフィロコッカス属細菌;化膿連鎖球菌(Streptococcus pyogenes)、連鎖球菌(Streptococcus spp.)、ストレプトコッカス・アガラクチアエ(Streptococcus agalactiae)、ストレプトコッカス・ボビス(Streptococcus bovis)、肺炎連鎖球菌(Streptococcus pneumoniae)、ミュータンス連鎖球菌(Streptococcus mutans)等のストレプトコッカス属細菌;腸球菌(Enterococcus spp.);淋菌(Neisseria gonorrhoeae)、髄膜炎菌(Neisseria meningitides)等のナイセリア属細菌;炭疽菌(Bacillus anthracis)、枯草菌(Bacillus subtilis)等のバチルス属細菌;プロピオン酸菌属アクネ菌(Propionibacterium acnes)等のプロピオン酸菌属細菌;ジフテリア菌(Corynebacterium diphtheriae)等のコリネバクテリウム属細菌;リステリア菌(Listeria monocytogenes)等のリステリア属細菌;破傷風菌(Clostridium tetani)、クロストリジウム・ディフィシレ(Clostridium difficile)等のクロストリジウム属細菌;大腸菌(Escherichia coli)等のエスケリキア属細菌;エンテロバクター属細菌(Enterobacter spp.);緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)等のシュードモナス属細菌;肺炎桿菌(Klebsiella pneumoniae)等のクレブシエラ属細菌;サルモネラ属細菌(Salmonella spp.);赤痢菌属細菌(Shigella spp.)等が挙げられる。
【0030】
本願発明のナノバブル水が抗菌作用を示す具体的真菌類としては、各種糸状菌類(例えば、イヌ小胞子菌(Microsporum canis)、オードアン小胞子菌(Microsporum audouinii)、石膏状小胞子菌(Microsporum gypseum)等の小胞子菌属真菌;紅色白癬菌(Trichophyton rubrum)、毛瘡白癬菌(Trichophyton mentagrophytes)、トリコフィトン・トリコフィトン(Trichophyton Trichophyton)、トリコフィトン・シェーンライニイ(Trichophyton schoenleinii)、頭部白癬菌(Trichophyton tonsurans)等の白癬菌属真菌;アクレモニウム属真菌(Acremonium spp.);フサリウム・オキシスポルム(Fusarium oxysporum)等のフサリウム属真菌;スコプラリオプシス・ブレビカウリス(Scopulariopsis brevicaulis)等のスコプラリオプシス属真菌;スキタリジウム・ディミディアツム(Scytalidium dimidiatum)等のスキタリジウム属真菌)、各種酵母菌類(例えば、カンジダ・アルビカンス(Candida albicans)、カンジダ・トロピカリス(Candida tropicalis)等のカンジダ属真菌;サッカロマイセス・セレヴィシエ(Saccharomyces cerevisiae)等のサッカロマイセス属真菌;癜風菌(Malassezia furfur)等のマラセチア属真菌;クリプトコックス・ネオフォルマンス(Cryptococcus neoformans)等のクリプトコックス属真菌;アスペルギルス・フミガーツス(Aspergillus fumigatus)、アスペルギルス・ニデュランス(Aspergillus nidulans)、アスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger)、アスペルギルス・ブラジリエンシス(Aspergillus brasiliensis)等のアスペルギルス属真菌;コクシジオイデス・イミティス(Coccidioides immitis)等のコクシジオイデス属真菌)等が挙げられる。
【0031】
なかでも、細菌類ではエスケリキア属細菌、スタフィロコッカス属細菌、シュードモナス属細菌に対する抗菌作用に優れ、特に大腸菌(Escherichia coli)、緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)および/または黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)の増殖を効果的に抑制する。また、真菌ではカンジダ属真菌、アスペルギルス属真菌に対する抗菌作用に優れ、特にカンジダ・アルビカンス(Candida albicans)および/またはアスペルギルス・ブラジリエンシス(Aspergillus brasiliensis)の増殖を効果的に抑制する。
【0032】
本願発明のナノバブル水は、優れた抗菌作用とそれによる保存効力を示し、一定期間、同一容器から繰り返して使用される複数回投与型の液体医薬製剤、例えば、注射剤(例、皮下注射剤、静脈内注射剤、筋肉内注射剤、腹腔内注射剤、点滴剤、脳内投与注射剤、脳脊髄液内投与注射剤、眼内投与注射剤)、点眼剤、シロップ剤、液剤、乳剤、懸濁剤等の基剤として有用である。さらに本願発明のナノバブル水は、一定期間、同一容器から繰り返して使用される液体製品、例えば、化粧品(例、化粧水、ローション、トニック等)、食品(例、飲料等)の基剤としても好適に使用することができる。
また、器具洗浄、作物成長促進などの従来用時調製されたナノバブル水を使用していた用途にも、例えば、調製後一定期間保存したナノバブル水を好適に使用することができる。
【0033】
本願発明のナノバブル水を液体医薬製剤の基剤として使用する場合の医薬有効成分は、特に限定されないが、各種ワクチン類(例、インフルエンザワクチン、風疹ワクチン、日本脳炎ワクチン等)、生理活性を有するペプチド系化合物、抗生物質、抗真菌薬、抗高脂血症薬、抗腫瘍薬、解熱薬、鎮痛薬、消炎薬、鎮咳去痰薬、鎮静薬、筋弛緩薬、抗てんかん薬、抗潰瘍薬、抗うつ薬、抗アレルギー薬、強心薬、不整脈治療薬、血管拡張薬、降圧利尿薬、糖尿病治療薬、抗凝血薬、止血薬、抗血小板薬、抗結核薬、ホルモン薬、麻薬拮抗薬、骨吸収抑制薬、骨形成促進薬、血管新生抑制薬などが挙げられ、中でも保存剤としてチメロサールが使用されるインフルエンザワクチン等の各種ワクチン類に好適に使用することができる。
【0034】
本願発明のナノバブル水を液体医薬製剤の基剤として使用する場合、医薬製剤分野の常法により液体医薬製剤に調製した後、哺乳動物(例、ヒト、マウス、ラット、ウサギ、イヌ、ネコ、ウシ、ウマ、ブタ、サル)に対して、各種疾患の予防または治療のために投与することができる。
【0035】
具体的には、上記の医薬有効成分を本願発明のナノバブル水に加えて緩やかに混合し、水溶液ないしは懸濁液とする。
上記水溶液ないしは懸濁液には、医薬上許容できる担体をヒトないしは動物が許容できる量配合することができる。
医薬上許容できる担体としては、リン酸一ナトリウム、リン酸二カリウム、リン酸二ナトリウム、リン酸一カリウム、水酸化ナトリウム、塩酸などのpH調節剤、硫酸カナマイシン、ラクトビオン酸エリスロマイシン、ペニシリンGカリウムなどの抗生物質、乳糖、グルタミン酸カリウム、D−ソルビトール、アミノ酢酸、ヒト血清アルブミンなどの安定剤、フェノールレッドなどの着色剤、塩化ナトリウム、塩化カリウムなどの等張化剤などを添加することができる。
水溶液ないしは懸濁液は、バイアル又はアンプルに密封して保存する。保存は遮光条件下で行うのが好ましい。
保存温度は室温以下が好ましく、10℃以下がより好ましい。
【実施例】
【0036】
以下、実施例により本発明をさらに説明するが、本発明はいかなる意味においてもこれらに限定されるものではない。
【0037】
実施例1:添加剤によるナノバブル数の増加効果
添加剤としてポリソルベート80、ポリビニルアルコール(PVA)、ラウリル硫酸ナトリウムまたはNaClを用いたときのナノバブル数の増加効果を測定した。
注射用水2Lに各添加剤を2g溶解させ、IDEC社製ナノバブル発生装置(nanoGALF
TMFZ1N−02)を用いて、以下の設定によりナノバブル水を調製した。
・気泡水流量 約4.0L/分
・溶解圧力 300KPa±5%
コントロールとして、注射用水2Lのみを用いて同様にナノバブル水を調製した。
調製したナノバブル水をナノサイト社、LM20またはLM10を用いたレーザー光散乱を利用したトラッキング法(追尾法)を用いてナノバブル数を測定した。
結果を表1に示す。
【0038】
【表1】
【0039】
界面活性剤、親水性樹脂または電解質の添加により、ナノバブル数が飛躍的に増加し、2.0×10
8個/mL以上のナノバブルを含有するナノバブル水が安定的に製造できることが明らかとなった。
【0040】
実施例2:ナノバブル水の保存効力
米国薬局方(USP<51>“Antimicrobial effectiveness testing”)に記載の保存効力試験に準じた方法を用いて、実施例1で作成したナノバブル水の保存効力を評価した。
大腸菌(Escherichia coli)、緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)のそれぞれを各ナノバブル水と混合し、20〜25℃で保存した。0、7、14、28日目に米国薬局方(USP<51>“Antimicrobial effectiveness testing”)に記載されている試験条件や試験方法を用いて、生菌数を測定した。
また、カンジダ・アルビカンス(Candida albicans)、アスペルギルス・ブラジリエンシス(Aspergillus brasiliensis)のそれぞれを各ナノバブル水と混合し、20〜25℃で保存した。これら真菌類の保存効力試験に関しては、米国薬局方(USP<51>“Antimicrobial effectiveness testing”)に記載されている培養培地(サブロー・ブドウ糖培地またはサブロー・ブドウ糖カンテン培地)ではなく、上記の大腸菌、緑膿菌及び黄色ブドウ球菌での保存効力試験と同一の液体培養培地を用いた。その他の試験条件や試験方法については米国薬局方(USP<51>“Antimicrobial effectiveness testing”)に従って、生菌数を測定した。真菌類は、試験開始時(0日)から増殖がなければ、抗菌効果ありと評価した。
結果を
図1に示す。
2.0×10
8個/mL以上のナノバブルを含有する本発明のナノバブル水はこれら5種の菌の全てに対して米国薬局方(USP)の保存剤としての基準を満たす抗菌作用を示した。
【0041】
実施例3:添加剤によるナノバブル数の維持効果
添加剤としてポリソルベート80またはポリビニルアルコールを用いて、実施例1の方法に従って調製したナノバブル水を、25℃、60%RHの条件下で6ヶ月又は12ヶ月保存した。保存後のナノバブル水に含まれるナノバブル数を実施例1と同様の方法で測定した。6ヶ月保存後のナノバブル数の測定結果を表2、12ヶ月保存後のナノバブル数の測定結果を表3に示す。
【0042】
【表2】
【0043】
【表3】
【産業上の利用可能性】
【0044】
2.0×10
8個/mL以上のナノバブルを含有する本発明のナノバブル水は優れた抗菌作用を示し、例えば、注射剤等の液体医薬製剤の基剤として好適に使用できる。
【0045】
本出願は、日本で出願された特願2014−110209を基礎としており、その内容は本明細書にすべて包含されるものである。