特許第6913704号(P6913704)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6913704
(24)【登録日】2021年7月14日
(45)【発行日】2021年8月4日
(54)【発明の名称】潤滑油組成物
(51)【国際特許分類】
   C10M 141/08 20060101AFI20210727BHJP
   C10M 135/18 20060101ALN20210727BHJP
   C10M 129/68 20060101ALN20210727BHJP
   C10M 129/54 20060101ALN20210727BHJP
   C10N 10/04 20060101ALN20210727BHJP
   C10N 10/12 20060101ALN20210727BHJP
   C10N 30/00 20060101ALN20210727BHJP
   C10N 30/02 20060101ALN20210727BHJP
   C10N 30/06 20060101ALN20210727BHJP
   C10N 40/25 20060101ALN20210727BHJP
【FI】
   C10M141/08
   !C10M135/18
   !C10M129/68
   !C10M129/54
   C10N10:04
   C10N10:12
   C10N30:00 Z
   C10N30:02
   C10N30:06
   C10N40:25
【請求項の数】7
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2019-67657(P2019-67657)
(22)【出願日】2019年3月29日
(65)【公開番号】特開2020-164688(P2020-164688A)
(43)【公開日】2020年10月8日
【審査請求日】2020年3月31日
(73)【特許権者】
【識別番号】000183646
【氏名又は名称】出光興産株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002620
【氏名又は名称】特許業務法人大谷特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】砂原 賢二
(72)【発明者】
【氏名】金子 豊治
(72)【発明者】
【氏名】山守 一雄
【審査官】 黒川 美陶
(56)【参考文献】
【文献】 特開2015−140354(JP,A)
【文献】 国際公開第2016/159185(WO,A1)
【文献】 特開2018−076411(JP,A)
【文献】 特開2017−179157(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C10M 101/00−177/00
C10N 10/00− 80/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基油(A)と、
ジチオカルバミン酸モリブデン(B)と、
エステル系無灰摩擦調整剤(C)と、
金属サリチレート(D)と、
を含有する潤滑油組成物であって、
前記ジチオカルバミン酸モリブデン(B)に由来するモリブデン原子の含有量が、前記潤滑油組成物の全量基準で、650質量ppm以上であり、
前記ジチオカルバミン酸モリブデン(B)に由来するモリブデン原子に対する前記エステル系無灰摩擦調整剤(C)の含有比率[C/BMo]が、質量比で、5.0〜10であり、
前記金属サリチレート(D)に由来するサリチレート石けん基の含有量が、前記潤滑油組成物の全量基準で、0.55〜0.80質量%であり、
100℃における動粘度が4.0mm/s以上9.3mm/s未満であり、且つ150℃における高温高せん断粘度が1.7mPa・s以上2.9mPa・s未満である、潤滑油組成物。
【請求項2】
前記金属サリチレート(D)が、カルシウムサリチレート(D1)及びマグネシウムサリチレート(D2)を含む、請求項1に記載の潤滑油組成物。
【請求項3】
前記カルシウムサリチレート(D1)に由来するカルシウム原子の含有量が、前記潤滑油組成物の全量基準で、1200〜1400質量ppmである、請求項2に記載の潤滑油組成物。
【請求項4】
前記マグネシウムサリチレート(D2)に由来するマグネシウム原子の含有量が、前記潤滑油組成物の全量基準で、600〜800質量ppmである、請求項2又はに記載の潤滑油組成物。
【請求項5】
NOACK値が15.0質量%以下である、請求項1〜のいずれか1項に記載の潤滑油組成物。
【請求項6】
粘度指数向上剤に由来する樹脂分の含有量が、前記潤滑油組成物の全量基準で、2質量%以下である、請求項1〜のいずれか1項に記載の潤滑油組成物。
【請求項7】
請求項1〜のいずれか1項に記載の潤滑油組成物からなり、内燃機関に用いられる、潤滑油組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、潤滑油組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、環境規制の強化に伴い、自動車等の車両の内燃機関に用いられる潤滑油組成物には、高い省燃費性が要求されている。かかる要求に応える方法の一つとして、潤滑油組成物に摩擦調整剤を配合して摩擦を低減する方法が各種検討されている。
例えば、潤滑油組成物中に摩擦調整剤としてジチオカルバミン酸モリブデンを配合して、摩擦を低減する方法が知られている(例えば、特許文献1を参照)。
また、潤滑油組成物中にエステル系無灰摩擦調整剤及びアミン系無灰摩擦調整剤から選択される1種以上の無灰摩擦調整剤を配合し、摩擦を低減する方法も知られている(例えば、特許文献2を参照)。
【0003】
ここで、ジチオカルバミン酸モリブデンは、比較的高温の領域で摩擦低減効果を発揮することが知られている。一方で、無灰摩擦調整剤は、比較的低温の領域で摩擦低減効果を発揮することが知られている。したがって、ジチオカルバミン酸モリブデンと無灰摩擦調整剤とを併用することによって、幅広い温度領域における摩擦低減効果の発揮が期待できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2015−010177号公報
【特許文献2】国際公開2011/062282
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、ジチオカルバミン酸モリブデンと無灰摩擦調整剤とを併用すると、ジチオカルバミン酸モリブデンの摩擦低減効果が無灰摩擦調整剤により阻害される。そのため、ジチオカルバミン酸モリブデンと無灰摩擦調整剤とを併用すると、潤滑油組成物に要求される省燃費性を十分に確保できないという問題がある。
その一方で、上記のとおり、ジチオカルバミン酸モリブデンと無灰摩擦調整剤とを併用することによって、幅広い温度領域における摩擦低減効果の発揮が期待できる点は魅力的である。そこで、ジチオカルバミン酸モリブデンと無灰摩擦調整剤とを併用しながらも、ジチオカルバミン酸モリブデンの摩擦低減効果が無灰摩擦調整剤により阻害されることのない潤滑油組成物を提供することが望ましいと考えられる。
【0006】
ところで、自動車等の車両の内燃機関に用いられる潤滑油組成物に対する省燃費性への要求は、近年、より一層高まりつつある。かかる要求に応えるための方法の一つとして、潤滑開始後早期に摩擦を低減することができ、且つその状態を維持できる潤滑油組成物を提供することが考えられる。しかしながら、省燃費性への要求の高まりから、近年、潤滑油組成物の低粘度化が進んでいるため、境界潤滑が支配的となり、油温も上昇しやすい状況にある。そのため、ジチオカルバミン酸モリブデンの摩擦低減効果が無灰摩擦調整剤により阻害されると、高温領域での摩擦低減効果が阻害され、潤滑油組成物に要求される省燃費性の確保が極めて難しくなる。
【0007】
そこで、本発明は、ジチオカルバミン酸モリブデンと無灰摩擦調整剤とを併用しながらも、ジチオカルバミン酸モリブデンの摩擦低減効果を阻害することなく、潤滑開始後早期に摩擦を低減することができ、且つその状態を維持することができる、低粘度化された潤滑油組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題を解決すべく、鋭意検討を行った。その結果、基油(A)と、ジチオカルバミン酸モリブデン(B)と、エステル系無灰摩擦調整剤(C)と、金属サリチレート(D)とを含有し、ジチオカルバミン酸モリブデン(B)に由来するモリブデン原子の含有量を特定の範囲に調整し、ジチオカルバミン酸モリブデン(B)に由来するモリブデン原子に対するエステル系摩擦調整剤(C)の含有比率を特定の範囲に調整すると共に、金属サリチレート(D)に由来するサリチレート石けん基の含有量を特定の範囲に調整した潤滑油組成物が、上記課題を解決し得ることを見出した。
【0009】
すなわち、本発明は、下記[1]〜[8]に関する。
[1] 基油(A)と、
ジチオカルバミン酸モリブデン(B)と、
エステル系無灰摩擦調整剤(C)と、
金属サリチレート(D)と、
を含有する潤滑油組成物であって、
前記ジチオカルバミン酸モリブデン(B)に由来するモリブデン原子の含有量が、前記潤滑油組成物の全量基準で、650質量ppm以上であり、
前記ジチオカルバミン酸モリブデン(B)に由来するモリブデン原子に対する前記エステル系無灰摩擦調整剤(C)の含有比率[C/BMo]が、質量比で、5.0〜10であり、
前記金属サリチレート(D)に由来するサリチレート石けん基の含有量が、前記潤滑油組成物の全量基準で、0.50質量%以上であり、
100℃における動粘度が4.0mm/s以上9.3mm/s未満であり、且つ150℃における高温高せん断粘度が1.7mPa・s以上2.9mPa・s未満である、潤滑油組成物。
[2] 前記金属サリチレート(D)が、カルシウムサリチレート(D1)及びマグネシウムサリチレート(D2)を含む、上記[1]に記載の潤滑油組成物。
[3] 前記金属サリチレート(D)に由来するサリチレート石けん基の含有量が、前記潤滑油組成物の全量基準で、1.2質量%以下である、上記[1]又は[2]に記載の潤滑油組成物。
[4] 前記カルシウムサリチレート(D1)に由来するカルシウム原子の含有量が、前記潤滑油組成物の全量基準で、1200〜1400質量ppmである、上記[2]に記載の潤滑油組成物。
[5] 前記マグネシウムサリチレート(D2)に由来するマグネシウム原子の含有量が、前記潤滑油組成物の全量基準で、600〜800質量ppmである、上記[2]又は[4]に記載の潤滑油組成物。
[6] NOACK値が15.0質量%以下である、上記[1]〜[5]のいずれか1つに記載の潤滑油組成物。
[7] 粘度指数向上剤に由来する樹脂分の含有量が、前記潤滑油組成物の全量基準で、2質量%以下である、上記[1]〜[6]のいずれか1つに記載の潤滑油組成物。
[8] 上記[1]〜[7]のいずれか1つに記載の潤滑油組成物からなり、内燃機関に用いられる、潤滑油組成物。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、ジチオカルバミン酸モリブデンと無灰摩擦調整剤とを併用しながらも、潤滑開始後早期に摩擦を低減することができ、且つその状態を維持することができる、低粘度化された潤滑油組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を実施するための形態について、詳細に説明する。
【0012】
本明細書において、好ましい数値範囲(例えば、含有量等の範囲)について、段階的に記載された下限値及び上限値は、それぞれ独立して組み合わせることができる。例えば、「好ましくは10〜90、より好ましくは30〜60」という記載から、「好ましい下限値(10)」と「より好ましい上限値(60)」とを組み合わせて、「10〜60」とすることもできる。
同様に、本明細書中において、数値範囲の記載に関する「以上」、「以下」、「未満」、「超」の数値もまた、任意に組み合わせることができる数値である。
【0013】
また、以降の説明では、潤滑開始後早期に摩擦を低減することができる効果を「早期摩擦低減効果」ともいう。また、早期摩擦低減効果により摩擦が低減した状態を維持できる効果を「摩擦低減維持効果」ともいう。
【0014】
[潤滑油組成物]
本発明の潤滑油組成物は、
基油(A)と、
ジチオカルバミン酸モリブデン(B)と、
エステル系無灰摩擦調整剤(C)と、
金属サリチレート(D)と、
を含有する潤滑油組成物であって、
前記ジチオカルバミン酸モリブデン(B)に由来するモリブデン原子の含有量が、前記潤滑油組成物の全量基準で、650質量ppm以上であり、
前記ジチオカルバミン酸モリブデン(B)に由来するモリブデン原子に対する前記エステル系無灰摩擦調整剤(C)の含有比率[C/BMo]が、質量比で、5.0〜10であり、
前記金属サリチレート(D)に由来するサリチレート石けん基の含有量が、前記潤滑油組成物の全量基準で、0.50質量%以上であり、
100℃における動粘度が4.0mm/s以上9.3mm/s未満であり、且つ150℃における高温高せん断粘度が1.7mPa・s以上2.9mPa・s未満である、潤滑油組成物である。
【0015】
本発明者らが鋭意検討を行った結果、ジチオカルバミン酸モリブデンとエステル系無灰摩擦調整剤とを併用すること、さらには金属サリチレートに由来するサリチレート石けん基の含有量を特定の範囲に調整することによって、エステル系無灰摩擦調整剤がジチオカルバミン酸モリブデンの摩擦低減効果を阻害することがないどころか、むしろ潤滑開始後早期に摩擦を低減することができ、且つその状態を維持できるという極めて優れた効果を奏することを見出すに至った。
【0016】
なお、本明細書において、以降の説明では、「基油(A)」、「ジチオカルバミン酸モリブデン(B)」、「エステル系無灰摩擦調整剤(C)」、及び「金属サリチレート(D)」を、それぞれ「成分(A)」、「成分(B)」、「成分(C)」、及び「成分(D)」ともいう。
【0017】
本発明の一態様の潤滑油組成物は、本発明の効果を損なわない範囲で、成分(A)、成分(B)、成分(C)、及び成分(D)以外の潤滑油用添加剤を含有してもよい。
【0018】
本発明の一態様の潤滑油組成物において、成分(A)、成分(B)、成分(C)、及び成分(D)の合計含有量は、潤滑油組成物の全量基準で、好ましくは70質量%以上、より好ましくは80質量%以上、更に好ましくは90質量%以上である。
なお、本発明の一態様の潤滑油組成物において、成分(A)、成分(B)、成分(C)、及び成分(D)の合計含有量の上限値は、成分(A)、成分(B)、成分(C)、及び成分(D)以外の潤滑油用添加剤の含有量との関係で調整すればよく、好ましくは97質量%以下、より好ましくは95質量%以下、更に好ましくは93質量%以下である。
以下、本発明の潤滑油組成物に含まれる各成分について詳述する。
【0019】
<基油(A)>
本発明の潤滑油組成物は、基油(A)を含有する。
本発明の潤滑油組成物が含有する基油(A)としては、従来、潤滑油の基油として用いられている鉱油及び合成油から選択される1種以上を、特に制限なく使用することができる。
【0020】
鉱油としては、例えば、パラフィン系原油、中間基系原油、又はナフテン系原油等の原油を常圧蒸留して得られる常圧残油;これらの常圧残油を減圧蒸留して得られる留出油;当該留出油を、溶剤脱れき、溶剤抽出、水素化分解、溶剤脱ろう、接触脱ろう、及び水素化精製等の精製処理を1つ以上施して得られる鉱油;等が挙げられる。
【0021】
合成油としては、例えば、α−オレフィン単独重合体及びα−オレフィン共重合体(例えば、エチレン−α−オレフィン共重合体等の炭素数8〜14のα−オレフィン共重合体)等のポリα−オレフィン;イソパラフィン;ポリオールエステル及び二塩基酸エステル等の各種エステル;ポリフェニルエーテル等の各種エーテル;ポリアルキレングリコール;アルキルベンゼン;アルキルナフタレン;天然ガスからフィッシャー・トロプシュ法等により製造されるワックス(ガストゥリキッド(GTL)ワックス)を異性化することで得られるGTL基油等が挙げられる。
【0022】
本発明の一態様で用いる基油(A)は、米国石油協会(API)の基油カテゴリーにおけるグループ2、3又は4に分類される基油が好ましく、グループ2又は3に分類される基油がより好ましい。
【0023】
基油(A)は、鉱油を単独で又は複数種組み合わせて用いてもよいし、合成油を単独で又は複数種組み合わせて用いてもよい。また、1種以上の鉱油と1種以上の合成油とを組み合わせて用いてもよい。
【0024】
基油(A)の100℃における動粘度(以下、「100℃動粘度」ともいう)は、好ましくは2〜10mm/s、より好ましくは2〜6mm/s、更に好ましくは3〜5mm/sである。
基油(A)の100℃動粘度が2mm/s以上であると、蒸発損失を抑制しやすい。
基油(A)の100℃動粘度が10mm/s以下であると、粘性抵抗による動力損失を抑えやすく、燃費改善効果が得られやすい。
【0025】
基油(A)の粘度指数は、温度変化による粘度変化を抑えると共に、省燃費性を向上させる観点から、好ましくは100以上、より好ましくは110以上、更に好ましくは120以上、より更に好ましくは130以上である。
【0026】
本明細書において、100℃動粘度及び粘度指数は、JIS K 2283:2000に準拠して測定又は算出された値を意味する。
また、本発明の一態様において、基油(A)が2種以上の基油を含有する混合基油である場合、当該混合基油の動粘度及び粘度指数が上記範囲内であることが好ましい。
【0027】
本発明の一態様の潤滑油組成物において、基油(A)の含有量は、潤滑油組成物の全量(100質量%基準)で、90質量%以下であることが好ましい。基油(A)の含有量を90質量%以下とすることによって、ジチオカルバミン酸モリブデン(B)、エステル系無灰摩擦調整剤(C)、及び金属サリチレート(D)の使用量を十分に確保することができ、早期摩擦低減効果及び摩擦低減維持効果をより発揮させやすくできる。
なお、基油(A)の含有量は、本発明の効果をより向上させやすくする観点から、潤滑油組成物の全量基準で、好ましくは75〜90質量%、より好ましくは80〜90質量%、更に好ましくは85〜90質量%である。
【0028】
<ジチオカルバミン酸モリブデン(B)>
本発明の潤滑油組成物は、ジチオカルバミン酸モリブデン(B)を含有する。
ジチオカルバミン酸モリブデンとしては、例えば、一分子中に2つのモリブデン原子を含む二核のジチオカルバミン酸モリブデン、及び、一分子中に3つのモリブデン原子を含む三核のジチオカルバミン酸モリブデンが挙げられる。
なお、本発明において、ジチオカルバミン酸モリブデンは、単独で又は2種以上を併用してもよい。
【0029】
二核のジチオカルバミン酸モリブデンとしては、下記一般式(B1−1)で表される化合物、及び、下記一般式(B1−2)で表される化合物であることが好ましい。
【0030】
【化1】
【0031】
上記一般式(B1−1)及び(B1−2)中、R11〜R14は、それぞれ独立に、炭化水素基を示し、これらは互いに同一であってもよく、異なっていてもよい。
11〜X18は、それぞれ独立に、酸素原子又は硫黄原子を示し、互いに同一であってもよく、異なっていてもよい。ただし、式(B1−1)中のX11〜X18の少なくとも二つは硫黄原子である。
なお、本発明の一態様においては、式(B1−1)中のX11及びX12が酸素原子であり、X13〜X18が硫黄原子であることが好ましい。
【0032】
上記一般式(B1−1)において、基油(A)に対する溶解性を向上させる観点から、X11〜X18中の硫黄原子と酸素原子とのモル比〔硫黄原子/酸素原子〕が、好ましくは1/4〜4/1、より好ましくは1/3〜3/1である。
【0033】
また、式(B1−2)中のX11〜X14が酸素原子であることが好ましい。
【0034】
11〜R14として選択し得る炭化水素基の炭素数は、好ましくは6〜22、より好ましくは7〜18、更に好ましくは7〜14、より更に好ましくは8〜13である。
【0035】
上記一般式(B1−1)及び(B1−2)中のR11〜R14として選択し得る、当該炭化水素基としては、例えば、アルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基、アリール基、アルキルアリール基、アリールアルキル基等が挙げられ、アルキル基が好ましい。
当該アルキル基としては、例えば、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基等が挙げられる。
当該アルケニル基としては、例えば、ヘキセニル基、ヘプテニル基、オクテニル基、ノネニル基、デセニル基、ウンデセニル基、ドデセニル基、トリデセニル基、テトラデセニル基、ペンタデセニル基等が挙げられる。
当該シクロアルキル基としては、例えば、シクロヘキシル基、ジメチルシクロヘキシル基、エチルシクロヘキシル基、メチルシクロヘキシルメチル基、シクロヘキシルエチル基、プロピルシクロヘキシル基、ブチルシクロヘキシル基、ヘプチルシクロヘキシル基等が挙げられる。
当該アリール基としては、例えば、フェニル基、ナフチル基、アントラセニル基、ビフェニル基、ターフェニル基等が挙げられる。
当該アルキルアリール基としては、例えば、トリル基、ジメチルフェニル基、ブチルフェニル基、ノニルフェニル基、ジメチルナフチル基等が挙げられる。
当該アリールアルキル基としては、例えば、メチルベンジル基、フェニルメチル基、フェニルエチル基、ジフェニルメチル基等が挙げられる。
【0036】
三核のジチオカルバミン酸モリブデンとしては、下記一般式(B1−3)で表される化合物であることが好ましい。
Mo (B1−3)
【0037】
前記一般式(B1−3)中、kは1以上の整数、mは0以上の整数であり、k+mは4〜10の整数であり、4〜7の整数であることが好ましい。nは1〜4の整数、pは0以上の整数である。zは0〜5の整数であって、非化学量論の値を含む。
Eは、それぞれ独立に、酸素原子又はセレン原子であり、例えば、後述するコアにおいて硫黄を置換し得るものである。
Lは、それぞれ独立に、炭素原子を含有する有機基を有するアニオン性リガンドであり、各リガンドにおける該有機基の炭素原子の合計が14個以上であり、各リガンドは同一であってもよいし、異なっていてもよい。
Aは、それぞれ独立に、L以外のアニオンである。
Qは、それぞれ独立に、中性電子を供与する化合物であり、三核モリブデン化合物上における空の配位を満たすために存在する。
【0038】
本発明の潤滑油組成物において、ジチオカルバミン酸モリブデン(MoDTC)に由来するモリブデン原子の含有量は、潤滑油組成物の全量基準で、650質量ppm以上である。
ジチオカルバミン酸モリブデン(MoDTC)に由来するモリブデン原子の含有量が650質量ppm未満であると、早期摩擦低減効果が得られない。
ここで、本発明の一態様において、本発明の効果をより向上させやすくする観点から、ジチオカルバミン酸モリブデン(MoDTC)に由来するモリブデン原子の含有量は、好ましくは650〜800質量ppm、より好ましくは670〜750質量ppm、更に好ましくは680〜720質量ppmである。
【0039】
本発明の一態様において、ジチオカルバミン酸モリブデン(MoDTC)の含有量は、ジチオカルバミン酸モリブデン(MoDTC)に由来するモリブデン原子の含有量が上記範囲に属するように調整されることが好ましい。具体的には、潤滑油組成物の全量基準で、好ましくは0.65〜0.80質量%、より好ましくは0.67〜0.75質量%、更に好ましくは0.68〜0.72質量%である。
【0040】
<エステル系無灰摩擦調整剤(C)>
本発明の潤滑油組成物は、エステル系無灰摩擦調整剤(C)を含有する。
エステル系無灰摩擦調整剤(C)としては、各種エステル化合物を用いることができるが、例えば、下記一般式(C−0)に示すアルキルエステル及びその誘導体から選択される1種以上であることが好ましい。
【化2】

一般式(C−0)において、Rは、炭素数1〜32の炭化水素基である。Rの炭化水素基の炭素数は、8〜32が好ましく、12〜24がより好ましく、16〜20がさらに好ましい。
の炭化水素基は、飽和でも不飽和でもよく、脂肪族でも芳香族でもよく、直鎖状でも分岐状でも環状でもよい。
一般式(C−0)において、Rは、炭素数1〜50の炭化水素基である。Rの炭化水素基の炭素数は、2〜32が好ましく、2〜20がより好ましく、2〜10がさらに好ましい。
の炭化水素基は、飽和又は不飽和の脂肪族炭化水素基であり、当該脂肪族炭化水素基は直鎖状でも分岐状でも環状でもよい。また、Rの炭化水素基は、1以上の置換基で置換されていてもよい。当該置換基としては、例えばヒドロキシル基が挙げられる。Rの炭化水素基は、好ましくは直鎖状の飽和脂肪族炭化水素基であり、より好ましくは1以上のヒドロキシル基で置換された直鎖状の飽和脂肪族炭化水素基である。
なお、本明細書では、一般式(C−0)中、Rが直鎖状の飽和脂肪族炭化水素基であり、且つ当該直鎖状の飽和脂肪族炭化水素基が置換基で置換されていないものを「アルキルエステル」とし、置換基で置換されているものを「アルキルエステル誘導体」とする。当該置換基としては、例えば、ヒドロキシル基及び−О−C(O)−R(Rは炭化水素基であり、好ましくは炭素数1〜32の炭化水素基である。)から選択される1種以上が挙げられる。
ここで、アルキルエステル及びその誘導体としては、分子中に1以上のヒドロキシル基を有するエステル化合物が好ましく、分子中に2以上のヒドロキシル基を有するエステル化合物がより好ましい。
また、分子中に1以上のヒドロキシル基を有するエステル化合物は、本発明の効果を向上させやすくする観点から、炭素数が2〜24であることが好ましく、10〜24であることがより好ましく、16〜24であることが更に好ましい。
【0041】
分子中に1以上のヒドロキシル基を有するエステル化合物としては、例えば、下記一般式(C−1)に示すように分子中に1つのヒドロキシル基を有するエステル化合物、下記一般式(C−2)に示すように分子中に2つのヒドロキシル基を有するエステル化合物が挙げられる。
これらの中でも、下記一般式(C−2)に示す化合物が好ましい。
【化3】

【0042】
一般式(C−1)及び一般式(C−2)において、R20及びR30は、それぞれ炭素数1〜32の炭化水素基である。また、一般式(C−2−1)及び一般式(C−2−2)において、R41及びR51は、それぞれ炭素数1〜32の炭化水素基である。
一般式(C−2)において、R40は、水素原子又は一般式(C−2−1)で示される1価の基である。また、一般式(C−2)において、R50は、水素原子又は一般式(C−2−2)で示される1価の基である。なお、一般式(C−2−1)及び一般式(C−2−2)中、「*」は、一般式(C−2)中のOR40の酸素原子との結合位置、一般式(C−2)中のOR50の酸素原子との結合位置をそれぞれ意味する。
一般式(C−2)で示される化合物において、R40及びR50の一方又は双方は水素原子である。したがって、一般式(C−2)で示される化合物のうち、R40が一般式(C−2−1)で示される1価の基であり、且つR50が一般式(C−2−2)で示される1価の基である化合物は除かれる。つまり、ヒドロキシル基を有しない化合物は除かれる。
ここで、一般式(C−2)で示される化合物において、R40及びR50の双方が水素原子であることが好ましい。すなわち、分子中に2つのヒドロキシル基を有する化合物であることが好ましい。
また、R20、R30、R41、及びR51の炭化水素基の炭素数は、8〜32が好ましく、12〜24がより好ましく、16〜20がさらに好ましい。
【0043】
20、R30、R41、及びR51の炭化水素基としては、アルキル基、アルケニル基、アルキルアリール基、シクロアルキル基、及びシクロアルケニル基が挙げられる。これらの中でも、アルキル基又はアルケニル基が好ましく、その中でもアルケニル基が好ましい。
20、R30、R41、及びR51におけるアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基、ノナデシル基、イコシル基、ヘンイコシル基、ドコシル基、トリコシル基、及びテトラコシル基が挙げられ、これらは直鎖状、分岐状、及び環状のいずれであってもよい。
また、R20、R30、R41、及びR51におけるアルケニル基としては、ビニル基、プロペニル基、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基、ヘプテニル基、オクテニル基、ノネニル基、デセニル基、ウンデセニル基、ドデセニル基、トリデセニル基、テトラデセニル基、ペンタデセニル基、ヘキサデセニル基、ヘプタデセニル基、オクタデセニル基、ノナデセニル基、イコセニル基、ヘンイコセニル基、ドコセニル基、トリコセニル基、及びテトラコセニル基が挙げられ、これらは直鎖状、分岐状、及び環状のいずれであってもよく、二重結合の位置も任意である。
【0044】
21〜R24、R31〜R35は、それぞれ水素原子又は炭素数1〜18の炭化水素基であり、互いに同一でも異なってもよい。
一般式(C−1)においては、R21〜R24の全てが水素原子であり、又はR21〜R23がいずれも水素原子であるとともにR24が炭化水素基であることが好ましい。また、一般式(C−2)においては、R31〜R35の全てが水素原子であることが好ましい。
【0045】
なお、エステル系無灰摩擦調整剤(C)として、一般式(C−1)に示す化合物を用いる場合、R20〜R24が全て同一である単一種を用いてもよいし、R20〜R24の一部が異なる異種のもの(例えば、R20の炭素数や二重結合の有無が異なるもの)を二種以上混合して用いてもよい。
同様に、エステル系無灰摩擦調整剤(C)として、上記一般式(C−2)に示す化合物を用いる場合、R30〜R35、R40、及びR50が全て同一である単一種を用いてもよいし、R30〜R35、R40、及びR50の一部が異なる異種のもの(例えば、R30、R41、及びR51の炭素数や二重結合の有無が異なるものや、R31〜R35が異なるもの)を二種以上混合して用いてもよい。
【0046】
21〜R24、R31〜R35が炭化水素基の場合、該炭化水素基は、飽和でも不飽和でもよく、脂肪族でも芳香族でもよく、直鎖状でも分岐状でも環状でもよい。
また、一般式(C−1)のaは、1〜20の整数を示すが、好ましくは1〜12、より好ましくは1〜10である。
【0047】
一般式(C−1)で示される化合物は、例えば、脂肪酸とアルキレンオキシドとの反応により得られるものである。
ここで、一般式(C−1)で示される化合物を得るための脂肪酸としては、例えば、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、オレイン酸、牛脂脂肪酸、ヤシ油脂肪酸等が挙げられる。また、アルキレンオキシドとしては、炭素数2〜12のアルキレンオキシドが挙げられ、具体的には、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド、ヘキシレンオキシド、オクチレンオキシド、デシレンオキシド、ドデシレンオキシド等が挙げられる。
一般式(C−1)の化合物としては、ポリオキシエチレンモノラウレート、ポリオキシエチレンモノステアレート、ポリオキシエチレンモノオレエートが挙げられる。
【0048】
一般式(C−2)で示される化合物としては、例えば、ラウリン酸グリセリド、オレイン酸グリセリド、ステアリン酸グリセリド等の脂肪酸グリセリドが挙げられる。より具体的には、例えば、グリセリンモノラウレート、グリセリンモノステアレート、及びグリセリンモノオレエート等のグリセリン脂肪酸モノエステル、並びにグリセリンジラウレート、グリセリンジステアレート、グリセリンジオレエート等のグリセリン脂肪酸ジエステルが挙げられる。これらの中でも、グリセリン脂肪酸モノエステルが好ましく、グリセリンモノオレエートがより好ましい。
これらは、単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。例えば、グリセリン脂肪酸モノエステルとグリセリン脂肪酸ジエステルとを組み合わせて用いてもよい。
【0049】
本発明の潤滑油組成物において、ジチオカルバミン酸モリブデン(B)に由来するモリブデン原子に対するエステル系無灰摩擦調整剤(C)の含有比率[C/BMo]は、質量比で、5.0〜10である。
当該含有比率[C/BMo]が5.0未満であると、エステル系無灰摩擦調整剤(C)により奏され得る低温領域での摩擦低減効果が得られ難い。
また、当該含有比率[C/BMo]が10を超えると、ジチオカルバミン酸モリブデン(B)の摩擦低減効果がエステル系無灰摩擦調整剤(C)により阻害されやすく、本発明の効果が発揮され難い。
ここで、本発明の一態様において、100℃以下の低温領域での摩擦低減効果を十分に確保しながらも、本発明の効果をより向上させやすくする観点から、当該含有比率[C/BMo]は、好ましくは5.0〜9.0であり、より好ましくは6.0〜8.0であり、更に好ましくは7.0〜8.0である。
【0050】
本発明の一態様において、エステル系無灰摩擦調整剤(C)の含有量は、上記含有比率[C/BMo]が上記範囲に属するように調整されることが好ましい。具体的には、潤滑油組成物の全量基準で、好ましくは0.30〜0.70質量%、より好ましくは0.35〜0.65質量%、更に好ましくは0.40〜0.60質量%である。
【0051】
<金属サリチレート(D)>
本発明の潤滑油組成物は、金属サリチレート(D)を含有する。
金属サリチレートに含まれる金属原子としては、ナトリウム及びカリウム等のアルカリ金属、マグネシウム、カルシウム、及びバリウム等のアルカリ土類金属が好ましく、マグネシウム、カルシウム、及びバリウム等のアルカリ土類金属がより好ましく、マグネシウム及びカルシウムが更に好ましい。
本発明の一態様において、金属サリチレート(D)は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよいが、2種以上を併用することが好ましく、カルシウムサリチレート(D1)及びマグネシウムサリチレート(D2)を併用することがより好ましい。
【0052】
本発明の一態様において、本発明の効果をより向上させやすくする観点から、金属サリチレート(D)は、塩基価が200〜500mgKOH/gであることが好ましく、250〜400mgKOH/gであることがより好ましく、300〜350mgKOH/gであることが更に好ましい。
なお、本明細書において、塩基価は、JIS K2501:2003に記載の過塩素酸法で測定された全塩基価である。
【0053】
本発明の潤滑油組成物において、金属サリチレート(D)に由来するサリチレート石けん基の含有量は、潤滑油組成物の全量基準で、0.50質量%以上である。
金属サリチレート(D)に由来するサリチレート石けん基の含有量が、潤滑油組成物の全量基準で、0.50質量%未満であると、摩擦低減維持効果が得られない。
本明細書において、「金属サリチレート(D)に由来するサリチレート石けん基」とは、金属サリチレート(D)を構成するアルキルサリチル酸基を意味する。金属サリチレート(D)に由来するサリチレート石けん基の含有量は、金属サリチレート(D)に対してゴム膜透析を行い、透析後のゴム膜残分を塩酸で処理した後、ジエチルエーテルにより抽出された成分を石けん鹸分として定量することができる。
石けん基であるアルキルサリチル酸基が有するアルキル基は、炭素数4〜30であることが好ましく、より好ましくは6〜24であり、更に好ましくは10〜24である。当該アルキル基は、直鎖状であっても分岐鎖状であってもよい。また、金属サリチレート(D)が、同一の分子内において、複数のアルキル基を有する場合、これらのアルキル基は同一であってもよく、異なっていてもよい。
本発明の一態様において、摩擦低減維持効果を得られやすくすると共に、早期摩擦低減効果を得られやすくする観点から、金属サリチレート(D)に由来するサリチレート石けん基の含有量は、潤滑油組成物の全量基準で、好ましくは0.50〜1.20質量%、より好ましくは0.55〜1.00質量%、更に好ましくは0.55〜0.80質量%である。
【0054】
本発明の一態様において、金属サリチレート(D)の含有量は、金属サリチレート(D)に由来するサリチレート石けん基の含有量が上記範囲に属するように調整されることが好ましい。具体的には、潤滑油組成物の全量基準で、好ましくは1.10〜3.00質量%、より好ましくは1.30〜2.80質量%、更に好ましくは1.50〜2.70質量%である。
【0055】
ここで、本発明の一態様において、本発明の効果をより向上させやすくする観点から、金属サリチレート(D)は、カルシウムサリチレート(D1)及びマグネシウムサリチレート(D2)を含むことが好ましい。
また、本発明の一態様において、本発明の効果をさらに向上させやすくする観点から、金属サリチレート(D)が、カルシウムサリチレート(D1)及びマグネシウムサリチレート(D2)を含む場合には、カルシウムサリチレート(D1)に由来するカルシウム原子の含有量は、潤滑油組成物の全量基準で、好ましくは1200〜1400質量ppm、より好ましくは1240〜1360質量ppm、更に好ましくは1280〜1320質量ppmである。
さらに、本発明の一態様において、本発明の効果をさらに向上させやすくする観点から、金属サリチレート(D)が、カルシウムサリチレート(D1)及びマグネシウムサリチレート(D2)を含む場合には、マグネシウムサリチレート(D2)に由来するマグネシウム原子の含有量は、潤滑油組成物の全量基準で、好ましくは600〜800質量ppm、より好ましくは640〜760質量ppm、更に好ましくは680〜720質量ppmである。
【0056】
<他の潤滑油用添加剤>
本発明の一態様の潤滑油組成物は、本発明の効果を損なわない範囲で、上記成分(B)、成分(C)、及び成分(D)には該当しない、他の潤滑油用添加剤を含有してもよい。
他の潤滑油用添加剤としては、例えば、上記成分(B)以外の金属系摩擦調整剤、上記成分(C)以外の無灰摩擦調整剤、上記成分(D)以外の金属系清浄剤、粘度指数向上剤、耐摩耗剤、極圧剤、酸化防止剤、無灰系分散剤、流動点降下剤、防錆剤、消泡剤、金属不活性化剤、及び抗乳化剤等が挙げられる。
これらの各潤滑油用添加剤は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0057】
これらの潤滑油用添加剤の各含有量は、本発明の効果を損なわない範囲内で、適宜調整することができるが、潤滑油組成物の全量(100質量%)基準で、それぞれ独立して、通常0.001〜15質量%、好ましくは0.005〜10質量%、より好ましくは0.01〜8質量%、更に好ましくは0.1〜6質量%である。
【0058】
(成分(B)以外の金属系摩擦調整剤)
本発明の一態様の潤滑油組成物では、本発明の効果を損なわない範囲で、成分(B)以外の金属系摩擦調整剤を含有していてもよい。
成分(B)以外の金属系摩擦調整剤としては、例えば、ジチオリン酸モリブデン(MoDTP)及びモリブテン酸のアミン塩等の有機モリブデン系化合物から選択される1種以上が挙げられる。
【0059】
(成分(C)以外の無灰摩擦調整剤)
本発明の一態様の潤滑油組成物では、本発明の効果を損なわない範囲で、成分(C)以外の無灰摩擦調整剤を含有していてもよい。
成分(C)以外の無灰摩擦調整剤としては、例えば、アミン系無灰摩擦調整剤及びエーテル系無灰摩擦調整剤から選択される1種以上が挙げられる。
ここで、本発明の一態様において、本発明の効果をより向上させやすくする観点から、アミン系無灰摩擦調整剤及びエーテル系無灰摩擦調整剤から選択される1種以上の無灰摩擦調整剤の含有量は少ないことが好ましい。具体的には、潤滑油組成物の全量基準で、好ましくは0.50質量%未満、より好ましくは0.10質量%未満、更に好ましくは0.01質量%未満である。本発明の一態様の潤滑油組成物は、アミン系無灰摩擦調整剤及びエーテル系無灰摩擦調整剤から選択される1種以上の無灰摩擦調整剤を含まないことがより更に好ましい。
【0060】
(成分(D)以外の金属清浄剤)
本発明の一態様の潤滑油組成物では、本発明の効果を損なわない範囲で、成分(D)以外の金属清浄剤を含有していてもよい。
成分(D)以外の金属清浄剤としては、例えば金属スルホネートが挙げられる。
金属スルホネートに含まれる金属原子としては、ナトリウム及びカリウム等のアルカリ金属、マグネシウム、カルシウム、及びバリウム等のアルカリ土類金属が好ましく、マグネシウム、カルシウム、及びバリウム等のアルカリ土類金属がより好ましく、マグネシウムが更に好ましい。
本発明の一態様の潤滑油組成物が、成分(D)以外の金属清浄剤を含む場合、当該金属系清浄剤の含有量は、潤滑油組成物の全量基準で、好ましくは0.50〜1.00質量%、より好ましくは0.60〜0.90質量%、更に好ましくは0.65〜0.85質量%である。
また、本発明の一態様の潤滑油組成物が、成分(D)以外の金属清浄剤として、マグネシウムスルホネートを含む場合、マグネシウムスルホネートに由来するマグネシウム原子の含有量は、潤滑油組成物の全量基準で、好ましくは600〜800質量ppm、より好ましくは640〜760質量ppm、更に好ましくは680〜720質量ppmである。
なお、本発明の一態様の潤滑油組成物が、成分(D)としてマグネシウムサリチレート(D2)を含み、且つマグネシウムスルホネートを含む場合、マグネシウムサリチレート(D2)とマグネシウムスルホネートとに由来するマグネシウム原子の合計含有量は、上記範囲に調整されていることが好ましい。
【0061】
(粘度指数向上剤)
粘度指数向上剤としては、例えば、非分散型ポリメタクリレート、分散型ポリメタクリレート、オレフィン系共重合体(例えば、エチレン−プロピレン共重合体等)、分散型オレフィン系共重合体、スチレン系共重合体(例えば、スチレン−ジエン共重合体、スチレン−イソプレン共重合体等)等の重合体が挙げられる。
これらは、単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
これらの粘度指数向上剤の質量平均分子量(Mw)としては、通常500〜1,000,000、好ましくは5,000〜100,000、より好ましくは10,000〜50,000であるが、重合体の種類に応じて適宜設定される。
本明細書において、各成分の質量平均分子量(Mw)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法で測定される標準ポリスチレン換算の値である。
本発明の一態様の潤滑油組成物では、150℃におけるHTHS粘度を1.7mPa・s以上2.9mPa・s未満の範囲に調整する観点から、粘度指数向上剤に由来する樹脂分の含有量が、前記潤滑油組成物の全量基準で、2質量%以下であることが好ましく、1質量%以下であることがより好ましく、0.5質量%以下であることが更に好ましく、0.2質量%以下であることがより更に好ましい。
【0062】
(耐摩耗剤又は極圧剤)
耐摩耗剤又は極圧剤としては、例えば、ジアルキルジチオリン酸亜鉛(ZnDTP)、リン酸亜鉛、ジチオカルバミン酸亜鉛、ジスルフィド類、硫化オレフィン類、硫化油脂類、硫化エステル類、チオカーボネート類、チオカーバメート類、ポリサルファイド類等の硫黄含有化合物;亜リン酸エステル類、リン酸エステル類、ホスホン酸エステル類、及びこれらのアミン塩又は金属塩等のリン含有化合物;チオ亜リン酸エステル類、チオリン酸エステル類、チオホスホン酸エステル類、及びこれらのアミン塩又は金属塩等の硫黄及びリン含有耐摩耗剤が挙げられる。
これらの中でも、ジアルキルジチオリン酸亜鉛(ZnDTP)が好ましい。
【0063】
(酸化防止剤)
酸化防止剤としては、例えば、アミン系酸化防止剤、フェノール系酸化防止剤、モリブデン系酸化防止剤、硫黄系酸化防止剤、及びリン系酸化防止剤等が挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
これらの中でも、アミン系酸化防止剤、フェノール系酸化防止剤を用いることが好ましく、アミン系酸化防止剤及びフェノール系酸化防止剤を併用することがより好ましい。
アミン系酸化防止剤としては、例えば、ジフェニルアミン、炭素数3〜20のアルキル基を有するアルキル化ジフェニルアミン等のジフェニルアミン系酸化防止剤;α−ナフチルアミン、炭素数3〜20のアルキル置換フェニル−α−ナフチルアミン等のナフチルアミン系酸化防止剤等が挙げられる。
フェノール系酸化防止剤としては、例えば、2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール、2,6−ジ−tert−ブチル−4−エチルフェノール、オクタデシル−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート等のモノフェノール系酸化防止剤;4,4'−メチレンビス(2,6−ジ−tert−ブチルフェノール)、2,2'−メチレンビス(4−エチル−6−tert−ブチルフェノール)等のジフェノール系酸化防止剤;ヒンダードフェノール系酸化防止剤等が挙げられる。
【0064】
(無灰系分散剤)
無灰系分散剤としては、ホウ素非含有アルケニルコハク酸イミド等のホウ素非含有コハク酸イミド類、ホウ素含有アルケニルコハク酸イミド等のホウ素含有コハク酸イミド類、ベンジルアミン類、ホウ素含有ベンジルアミン類、コハク酸エステル類、脂肪酸あるいはコハク酸で代表される一価又は二価カルボン酸アミド類などが挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
これらの中でも、ホウ素非含有アルケニルコハク酸イミド、ホウ素含有アルケニルコハク酸イミドを用いることが好ましく、ホウ素非含有アルケニルコハク酸イミド及びホウ素含有アルケニルコハク酸イミドを併用することがより好ましい。
【0065】
(流動点降下剤)
流動点降下剤としては、例えば、エチレン−酢酸ビニル共重合体、塩素化パラフィンとナフタレンとの縮合物、塩素化パラフィンとフェノールとの縮合物、ポリメタクリレート、ポリアルキルスチレン等が挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
(防錆剤)
防錆剤としては、例えば、脂肪酸、アルケニルコハク酸ハーフエステル、脂肪酸セッケン、アルキルスルホン酸塩、多価アルコール脂肪酸エステル、脂肪酸アミン、酸化パラフィン、アルキルポリオキシエチレンエーテル等が挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
(消泡剤)
消泡剤としては、例えば、シリコーン油、フルオロシリコーン油、フルオロアルキルエーテル等が挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
(金属不活性化剤)
金属不活性化剤としては、例えば、ベンゾトリアゾール系化合物、トリルトリアゾール系化合物、チアジアゾール系化合物、イミダゾール系化合物、ピリミジン系化合物等が挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
(抗乳化剤)
抗乳化剤としては、例えば、ひまし油の硫酸エステル塩、石油スルフォン酸塩等のアニオン性界面活性剤;第四級アンモニウム塩、イミダゾリン類等のカチオン性界面活性剤;ポリオキシアルキレンポリグリコール及びそのジカルボン酸のエステル;アルキルフェノール−ホルムアルデヒド重縮合物のアルキレンオキシド付加物;等が挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0066】
[潤滑油組成物の特性]
<動粘度>
本発明の潤滑油組成物は、100℃動粘度が4.0mm/s以上9.3mm/s未満である。
本発明の潤滑油組成物の100℃動粘度が4.0mm/s未満であると、油膜を保持しにくくなり、9.3mm/s以上であると省燃費性が低下する。
かかる観点から、本発明の一態様の潤滑油組成物は、100℃動粘度が、好ましくは4.1mm/s以上8.2mm/s以下、より好ましくは4.1mm/s以上6.9mm/s以下、更に好ましくは4.1mm/s以上6.9mm/s未満である。
【0067】
<高温高せん断粘度(HTHS粘度)>
本発明の一態様の潤滑油組成物は、150℃におけるHTHS粘度が1.7mPa・s以上2.9mPa・s未満である。
本発明の潤滑油組成物のHTHS粘度が1.7mPa・s未満であると、油膜を保持しにくくなり、2.9mPa・s以上であると省燃費性が低下する。
かかる観点から、本発明の一態様の潤滑油組成物は、150℃におけるHTHS粘度が、好ましくは1.7mPa・s以上2.6mPa・s以下、より好ましくは1.7mPa・s以上2.3mPa・s以下、更に好ましくは1.7mPa・s以上2.3mPa・s未満である。
【0068】
<MTM摩擦試験における100℃での摩擦係数>
本発明の潤滑油組成物は、早期摩擦低減効果及び摩擦低減維持効果に優れる。
本発明の一態様の潤滑油組成物は、後述する実施例に記載の方法で実施したMTM(Mini Traction Machine)摩擦試験における、試験開始から30分後の100℃での摩擦係数が、好ましくは0.050以下、より好ましくは0.045以下、更に好ましくは0.043以下である。
また、本発明の一態様の潤滑油組成物は、後述する実施例に記載の方法で実施したMTM摩擦試験における、試験開始から240分後の100℃での摩擦係数が、好ましくは0.050以下、より好ましくは0.045以下、更に好ましくは0.040以下である。
【0069】
<NOACK値>
本発明の一態様の潤滑油組成物は、NOACK値(250℃、1時間)が15.0質量%以下であることが好ましく、14.5質量%以下であることがより好ましく、14.2質量%以下であることが更に好ましい。また、好ましくは1.0質量%以上、より好ましくは3.0質量%以上、更に好ましくは5.0質量%以上である。
NOACK値が上記範囲に属することによって、高温酸化安定性を良好に維持して、潤滑油組成物の増粘の発生を抑制し、低燃費性向上に資する。
【0070】
[潤滑油組成物の用途]
本発明の一態様の潤滑油組成物は、二輪車、四輪車等の自動車、発電機、船舶等のガソリンエンジン、ディーゼルエンジン、ガスエンジン等の内燃機関の潤滑油組成物として好ましく使用することができる。
【0071】
[内燃機関の摩擦低減方法]
本発明の一態様の内燃機関の摩擦低減方法は、上述した本発明の潤滑油組成物を内燃機関に充填することによる、内燃機関の摩擦低減方法である。
本発明の一態様の内燃機関の摩擦低減方法によれば、上述した本発明の潤滑油組成物を内燃機関に充填することにより、早期摩擦低減効果と摩擦低減維持効果とが発揮され、省燃費性が良好となる。
【0072】
[潤滑油組成物の製造方法]
本発明の潤滑油組成物の製造方法は、特に制限されない。
例えば、本発明の一態様の潤滑油組成物の製造方法は、基油(A)と、ジチオカルバミン酸モリブデン(B)と、エステル系無灰摩擦調整剤(C)と、金属サリチレート(D)とを含有する潤滑油組成物の調製を行う工程を有し、前記調製は下記条件(1)〜(4)を満たすように行う。
・条件(1):前記ジチオカルバミン酸モリブデン(B)に由来するモリブデン原子の含有量が、前記潤滑油組成物の全量基準で、650質量ppm以上である。
・条件(2):前記ジチオカルバミン酸モリブデン(B)に由来するモリブデン原子に対する前記エステル系無灰摩擦調整剤(C)の含有比率[C/BMo]が、質量比で、5〜10である。
・条件(3):前記金属サリチレート(D)に由来するサリチレート石けん基の含有量が、前記潤滑油組成物の全量基準で、0.5質量%以上である。
・条件(4):100℃動粘度が4.0mm/s以上9.3mm/s未満であり、且つ150℃における高温高せん断粘度が1.7mPa・s以上2.9mPa・s未満である。
上記各成分を混合する方法としては、特に制限はないが、例えば、基油(A)に、成分(B)、成分(C)、及び成分(D)を配合する工程を有する方法が挙げられる。また、成分(A)〜(D)と共に、上記他の潤滑油用添加剤も同時に配合してもよい。また、各成分は、希釈油等を加えて溶液(分散体)の形態とした上で配合してもよい。各成分を配合した後、公知の方法により、撹拌して均一に分散させることが好ましい。
【実施例】
【0073】
以下、実施例を挙げて本発明を更に具体的に説明する。但し、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0074】
[各性状の測定]
本明細書において、各実施例及び各比較例で用いた各原料並びに各実施例及び各比較例の潤滑油組成物の各性状の測定は、以下に示す要領に従って行ったものである。
【0075】
<カルシウム原子、マグネシウム原子、及びモリブデン原子の含有量>
ASTM D4951に準拠して測定した。
【0076】
<100℃動粘度、粘度指数>
JIS K2283:2000に準拠し、ガラス製毛管式粘度計を用いて測定及び算出した。
【0077】
<150℃におけるHTHS粘度>
ASTM D4683に準拠し、TBS高温粘度計(Tapered Bearing Simulator)を用いて、150℃の温度条件下、せん断速度10/sにて測定した。
【0078】
[実施例1〜3、参考例1〜2及び比較例1〜4]
以下に示す基油及び各種添加剤を、表1に示す配合量(単位:質量%)にて添加し、十分に混合して潤滑油組成物をそれぞれ調製した。なお、すべての潤滑油組成物のNOACK値が、14.0質量%になるよう調製した。
実施例1〜3、参考例1〜2及び比較例1〜4で用いた基油及び各種添加剤の詳細は、以下に示すとおりである。
【0079】
<基油(A)>
100℃動粘度が4mm/sであり、API分類でグループ3に分類される鉱油基油を用いた。
【0080】
<ジチオカルバミン酸モリブデン(B)>
ジアルキルジチオカルバミン酸モリブデン化合物
【0081】
<無灰摩擦調整剤>
・エステル系無灰摩擦調整剤(C):オレイン酸グリセリド
・エーテル系無灰摩擦調整剤:アルキルエーテル誘導体
・アミン系無灰摩擦調整剤:アルキルアミン誘導体
【0082】
<金属系清浄剤>
(金属サリチレート(D))
Caサリチレート(D1−1)
石けん基比率:30質量%、塩基価:320mgKOH/g
Caサリチレート(D1−2)
石けん基比率:50質量%、塩基価:226mgKOH/g
Mgサリチレート(D2)
石けん基比率:30質量%、塩基価:346mgKOH/g
(金属サリチレート(D)以外の金属系清浄剤)
Mgスルホネート
石けん基比率:30質量%、塩基価:397mgKOH/g
【0083】
<粘度指数向上剤>
ポリメタクリレートを用いた。
なお、表1に記載の配合量は、樹脂分換算(固形分)の含有量である。
【0084】
<その他の潤滑油用添加剤>
ホウ素含有アルケニルコハク酸イミド、ホウ素非含有アルケニルコハク酸イミド、ジアルキルジチオリン酸亜鉛、フェノール系酸化防止剤、及びアミン系酸化防止剤の混合物
【0085】
[評価方法]
各実施例及び各比較例の潤滑油組成物の評価方法は、以下のとおりである。
【0086】
<摩擦係数の評価>
MTM(Mini Traction Machine)試験機を用い、下記条件にて摩擦係数を測定した。
・試験機:MTM(Mini Traction Machine)
PCS Instruments社製
・試験片:標準テストピース(AISI52100)
・荷重:10N
・油温:100℃
・すべり率(SRR):50%
・ラビング(ならし)条件:転がり速度100mm/s、滑り速度 50mm/s
・摩擦係数評価条件:転がり速度5mm/s、滑り速度2.5mm/s
摩擦係数の測定はラビング時間に応じ、試験開始直後(0分)、10分後、20分後、30分後、60分後、90分後、120分後、180分後、及び240分後に実施した。
そして、以下の評価基準により評価を行った。
(早期摩擦低減効果)
30分後の摩擦係数を指標として、以下の基準に基づき評価した。
・評価A:0.050以下
・評価F:0.050超
(摩擦低減維持効果)
240分後の摩擦係数を指標として、以下の基準に基づき評価した。
・評価A:0.040以下
・評価B:0.040超0.050以下
・評価F:0.050超
【0087】
結果を表1に示す。
【0088】
【表1】
【0089】
表1に示す結果から以下のことがわかる。
実施例1〜3及び参考例1〜2の潤滑油組成物は、早期摩擦低減効果及び摩擦低減維持効果の双方を発揮することがわかる。また、実施例1〜3の潤滑油組成物は、摩擦低減維持効果により優れることがわかる。
これらに対し、比較例1〜4の潤滑油組成物は、早期摩擦低減効果が発揮されず、実施例1〜3及び参考例1〜2よりも摩擦低減効果が大幅に遅延して発揮され、その結果として試験開始から240分後の摩擦係数が低減していることがわかる。