(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記複数のガス吐出孔が前記境界線に接していない場合、前記複数のガス吐出孔の外側の前記マイクロ波導入面又は該マイクロ波導入面に隣接する処理容器の面は、直線又は曲線状に傾斜する、
請求項1〜10のいずれか一項に記載のプラズマ処理装置。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を実施するための形態について図面を参照して説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の構成については、同一の符号を付することにより重複した説明を省く。
【0011】
[マイクロ波プラズマ処理装置]
図1は、本発明の一実施形態に係るマイクロ波プラズマ処理装置100の断面図の一例を示す。マイクロ波プラズマ処理装置100は、ウェハWを収容する処理容器1を有する。マイクロ波プラズマ処理装置100は、マイクロ波によって処理容器1側の表面に形成される表面波プラズマにより、半導体ウェハW(以下、「ウェハW」と称呼する)に対して所定のプラズマ処理を行うプラズマ処理装置の一例である。所定のプラズマ処理としては、例えばエッチング処理または成膜処理が挙げられる。
【0012】
処理容器1は、気密に構成されたアルミニウムまたはステンレス鋼等の金属材料からなる略円筒状の容器であり、接地されている。蓋体10は、処理容器1の天井壁を構成する天板である。処理容器1と蓋体10との接触面には支持リング129が設けられ、これにより、処理容器1内は気密にシールされる。蓋体10は、金属から構成されている。
【0013】
マイクロ波プラズマ源2は、マイクロ波出力部30とマイクロ波伝送部40とマイクロ波放射部材50とを有する。マイクロ波出力部30は、複数経路に分配してマイクロ波を出力する。
【0014】
マイクロ波伝送部40は、マイクロ波出力部30から出力されたマイクロ波を伝送する。マイクロ波伝送部40に設けられた周縁マイクロ波導入機構43aおよび中央マイクロ波導入機構43bは、アンプ部42から出力されたマイクロ波をマイクロ波放射部材50に導入する機能およびインピーダンスを整合する機能を有する。
【0015】
マイクロ波放射部材50では、6つの周縁マイクロ波導入機構43aに対応する6つの誘電体層123が、蓋体10において円周方向に等間隔に配置されている。誘電体層123の下面は、処理容器1の内部に円形に露出する。また、中央マイクロ波導入機構43bに対応する1つの誘電体層133が、蓋体10の中央に配置されている。誘電体層133の下面は、処理容器1の内部に円形に露出する。
【0016】
周縁マイクロ波導入機構43aおよび中央マイクロ波導入機構43bは、筒状の外側導体52およびその中心に設けられた棒状の内側導体53を同軸状に配置する。外側導体52と内側導体53の間には、マイクロ波電力が給電され、マイクロ波放射部材50に向かってマイクロ波が伝搬するマイクロ波伝送路44となっている。
【0017】
周縁マイクロ波導入機構43aおよび中央マイクロ波導入機構43bには、スラグ54と、その先端部に位置するインピーダンス調整部材140とが設けられている。スラグ54を移動させることにより、処理容器1内の負荷(プラズマ)のインピーダンスをマイクロ波出力部30におけるマイクロ波電源の特性インピーダンスに整合させる機能を有する。インピーダンス調整部材140は、誘電体で形成され、その比誘電率によりマイクロ波伝送路44のインピーダンスを調整するようになっている。
【0018】
マイクロ波放射部材50は、蓋体10の内部に構成されている。マイクロ波出力部30から出力され、マイクロ波伝送部40から伝送されたマイクロ波は、マイクロ波放射部材50から処理容器1内に放射される。
【0019】
マイクロ波放射部材50は、誘電体天板121,131、スロット122,132及び誘電体層123,133を有する。誘電体天板121は、周縁マイクロ波導入機構43aに対応して蓋体10の上部に配置され、誘電体天板131は、中央マイクロ波導入機構43bに対応して蓋体10の上部に配置されている。誘電体天板121,131は、マイクロ波を透過させる円盤状の誘電体から形成されている。誘電体天板121,131は、真空よりも大きい比誘電率を有しており、例えば、石英、アルミナ(Al
2O
3)等のセラミックス、ポリテトラフルオロエチレン等のフッ素系樹脂やポリイミド系樹脂により形成され得る。誘電体天板121,131は、比誘電率が真空よりも大きい材料で構成される。これにより、誘電体天板121,131内を透過するマイクロ波の波長を、真空中を伝搬するマイクロ波の波長よりも短くしてスロット122,132を含むアンテナを小さくする機能を有する。
【0020】
誘電体天板121,131の下には、蓋体10に形成されたスロット122,132を介して誘電体層123,133が蓋体10の開口に嵌め込まれている。誘電体層123、133は、天井壁の表面において均一にマイクロ波の表面波プラズマを形成するための誘電体窓としての機能を有する。すなわち、誘電体層123、133を含むマイクロ波放射部材50は、マイクロ波を導入するマイクロ波導入部の一例である。誘電体層123、133は、誘電体天板121,131と同様、例えば、石英、アルミナ(Al
2O
3)等のセラミックス、ポリテトラフルオロエチレン等のフッ素系樹脂やポリイミド系樹脂により形成されてもよい。
【0021】
周縁マイクロ波導入機構43aおよび中央マイクロ波導入機構43bの個数は、本実施形態に示す個数に限らない。例えば、1つの中央マイクロ波導入機構43bのみを有し、周縁マイクロ波導入機構43aの個数は0であってもよい。周縁マイクロ波導入機構43aの個数は、1以上であってもよい。
【0022】
蓋体10はアルミニウムなどの金属で形成され、シャワー構造のガス導入部62が形成されている。ガス導入部62には、ガス供給配管111を介してガス供給源22が接続されている。ガスは、ガス供給源22から供給され、ガス供給配管111を介してガス導入部62の複数のガス供給孔60から処理容器1の内部に供給される。ガス導入部62は、処理容器1の天井壁に形成された複数のガス供給孔60からガスを供給するガスシャワーヘッドの一例である。ガスの一例としては、例えばArガス等のプラズマ生成用のガスや、例えばO
2ガスやN
2ガス等の高エネルギーで分解させたいガスが挙げられる。
【0023】
本実施形態には、処理容器1の天井壁の表面(天井面)と、処理容器1の側面との境界線に接して蓋体10を貫通する複数のガス吐出孔65が形成されている。複数のガス吐出孔65は、Arガス、Heガス等の不活性ガスを吐出する。吐出された不活性ガスは、側面に沿って処理容器1内を流れる。
【0024】
なお、処理容器1の天井壁の表面、すなわち蓋体10の下面は、マイクロ波導入面の一例である。天井壁の表面に接する側壁の表面は、マイクロ波導入面に隣接する処理容器1の面の一例である。
【0025】
処理容器1内にはウェハWを載置する載置台11が設けられている。載置台11は、処理容器1の底部中央に絶縁部材12aを介して立設された筒状の支持部材12により支持されている。載置台11および支持部材12を構成する材料としては、表面をアルマイト処理(陽極酸化処理)したアルミニウム等の金属や内部に高周波用の電極を有した絶縁部材(セラミックス等)が例示される。載置台11には、ウェハWを静電吸着するための静電チャック、温度制御機構、ウェハWの裏面に熱伝達用のガスを供給するガス流路等が設けられてもよい。
【0026】
載置台11には、整合器13を介して高周波バイアス電源14が電気的に接続されている。高周波バイアス電源14から載置台11に高周波電力が供給されることにより、ウェハW側にプラズマ中のイオンが引き込まれる。なお、高周波バイアス電源14はプラズマ処理の特性によっては設けなくてもよい。
【0027】
処理容器1の底部には排気管15が接続されており、この排気管15には真空ポンプを含む排気装置16が接続されている。排気装置16を作動させると処理容器1内が排気され、これにより、処理容器1内が所定の真空度まで高速に減圧される。処理容器1の側壁には、ウェハWの搬入出を行うための搬入出口17と、搬入出口17を開閉するゲートバルブ18とが設けられている。
【0028】
マイクロ波プラズマ処理装置100の各部は、制御装置3により制御される。制御装置3は、マイクロプロセッサ4、ROM(Read Only Memory)5、RAM(Random Access Memory)6を有している。ROM5やRAM6にはマイクロ波プラズマ処理装置100のプロセスシーケンス及び制御パラメータであるプロセスレシピが記憶されている。マイクロプロセッサ4は、プロセスシーケンス及びプロセスレシピに基づき、マイクロ波プラズマ処理装置100の各部を制御する。また、制御装置3は、タッチパネル7及びディスプレイ8を有し、プロセスシーケンス及びプロセスレシピに従って所定の制御を行う際の入力や結果の表示等が可能になっている。
【0029】
かかる構成のマイクロ波プラズマ処理装置100においてプラズマ処理を行う際には、まず、ウェハWが、搬送アーム上に保持された状態で、開口したゲートバルブ18から搬入出口17を通り処理容器1内に搬入される。ゲートバルブ18はウェハWを搬入後に閉じられる。ウェハWは、載置台11の上方まで搬送されると、搬送アームからプッシャーピンに移され、プッシャーピンが降下することにより載置台11に載置される。処理容器1の内部の圧力は、排気装置16により所定の真空度に保持される。ガスがガス導入部62からシャワー状に処理容器1内に導入される。周縁マイクロ波導入機構43aおよび中央マイクロ波導入機構43bを介してマイクロ波放射部材50から放射されたマイクロ波が天井壁の表面を伝搬する。マイクロ波の表面波の電界により、ガスが分解され、処理容器1側の天井面の近傍に生成された表面波プラズマによってウェハWにプラズマ処理が施される。以下では、処理容器1の天井壁と載置台11の間の空間を、プラズマ処理空間Uという。
【0030】
[ガス吐出孔の構成及び配置]
次に、本発明の一実施形態に係るガス吐出孔65の構成及び配置の一例について、
図2を参照しながら説明する。
図2は、
図1のA−A断面図である。
図2に示すように、マイクロ波導入部の誘電体層123、133からマイクロ波が放射される。
【0031】
複数のガス吐出孔65は、マイクロ波導入部の誘電体層123、133を囲むように、天井面と天井面に隣接する処理容器1の面(側面)との境界線B(
図1を参照)に接して、円周方向に所定間隔で配置されている。これによれば、複数のガス吐出孔65から吐出する不活性ガスが、処理容器1の側面に沿って円状に流れるため、処理装置1の境界線B付近にてガスの滞留が生じず、ガスの剥離が起きにくくなり、パーティクルの発生を防止できる。
【0032】
複数のガス吐出孔65の円周方向の間隔Pは、プラズマ中のマイクロ波の表面波波長λの1/4以下になっている。プラズマ中のマイクロ波の表面波波長λは、真空中のマイクロ波の波長λ
0の約1/3程度である。マイクロ波プラズマプロセスで使用する波長λ
0は概ね120〜480mmであるから、プラズマ中のマイクロ波の表面波波長λは概ね40〜160mmになる。よって、複数のガス吐出孔65の間隔Pは、プラズマ中のマイクロ波の表面波波長λの1/4の10〜40mmとなる。
【0033】
かかる構成により、本実施形態では、ガス吐出孔65を、マイクロ波導入部よりも外側に配置することで、複数のガス吐出孔65から吐出される不活性ガスにより、複数のガス吐出孔65直下にてマイクロ波の表面波の伝搬を遮断することができる。
【0034】
その理由を説明すると、ガス吐出孔65をマイクロ波の表面波の波長λよりも十分に小さい、例えば前記波長λの1/4以下の間隔で設けることで、複数のガス吐出孔65から側面に沿って不活性ガスが流れたときに、マイクロ波の表面波から見ると複数のガス吐出孔65直下が壁に見え、該表面波が複数のガス吐出孔65にて反射するためである。これにより、マイクロ波の表面波を円周方向に配置された複数のガス吐出孔65から外側に伝搬しないようにすることができる。
【0035】
図3を参照しながらより詳しく説明する。
図3は、本実施形態に係るガス吐出孔65におけるマイクロ波の表面波の反射状態を説明するための概念図である。ガス吐出孔65から不活性ガスが吐出されると、ガス吐出孔65直下のプラズマ密度は低くなり、ガス吐出孔65直下のシースは、天井面のシースよりも厚くなる。その結果、ガス吐出孔65直下では、インピーダンスが変化する。これにより、マイクロ波の表面波から見ると複数のガス吐出孔65直下は壁に見え、ガス吐出孔65直下の反射端Rにてマイクロ波の表面波が反射する。
【0036】
図4は、本実施形態に係るガス吐出孔65のマスキングと電界の測定結果の一例を示す図である。リファレンス(reference)及びガスマスキング(Gas-masking)の例は、
図4の下側に示すように、
図2のマイクロ波導入部のうち、周縁マイクロ波導入機構43aに繋がるスロット122、誘電体層123が存在せず、中央マイクロ波導入機構43bに繋がるスロット132を介して誘電体層133からマイクロ波が導入される。また、不活性ガスが、誘電体層133の周囲に配置されたガス吐出孔65から供給される。ただし、リファレンス(reference)では、誘電体層133の周囲にて円周上に設けられたすべてのガス吐出孔65から不活性ガスが導入されるのに対して、ガスマスキング(Gas-masking)では、誘電体層133の周囲に配置されたガス吐出孔65のうち、測定方向に位置する左側の3つのガス吐出孔65はテープによりマスクされている点である。よって、ガスマスキング例では、不活性ガスは、左側の3つのガス吐出孔65以外のガス吐出孔65から供給される。
【0037】
図4の上側のグラフの右端部は、誘電体層133の中心軸の位置であり、
図4のグラフは、誘電体層133の中心軸からx軸の−方向(x方向)にRmmの位置のマイクロ波の表面波による電界の強度を測定した結果の一例である。
【0038】
図4のリファレンス(Reference)では、ガス吐出孔65直下の反射端Rにて電界の強度が最も高くなっている。これによれば、ガス吐出孔65から不活性ガスが吐出すると、ガス吐出孔65直下のシースは、その他の天井面のシースよりも厚くなるため、ガス吐出孔65直下でインピーダンスが変化するため、反射端Rにてマイクロ波の表面波が反射することがわかる。言い換えれば、電界の強度が最も高くなる位置が、シースの厚さが変化し、マイクロ波の表面波が反射する位置と考えられる。
【0039】
ただし、マイクロ波の表面波は、反射端Rにて全反射してはおらず、一部はガス吐出孔65直下を通り、進行する。
図3には、反射端Rにてマイクロ波の表面波が反射するとともに、表面波の一部がガス吐出孔65直下を通り進行することが示されている。
【0040】
図4に戻り、ガスマスキング(Gas-masking)を行った場合では、リファレンスのような反射端Rは見られない。これは、左側の3つのガス吐出孔65からは不活性ガスが導入されていないため、ガス吐出孔65直下のシースは、天井面のシースの厚さと同じであり、インピーダンスが変化せず、ガス吐出孔65直下にてマイクロ波の表面波は反射しないためであると考えられる。
【0041】
以上から、本実施形態では、複数のガス吐出孔65を、天井面と天井面に隣接する処理容器1の側面との境界線Bに接して、プラズマ中のマイクロ波の表面波波長λの1/4の間隔で円周方向に配置する。これにより、天井面から側面に伝搬するマイクロ波の表面波を複数のガス吐出孔65によって減衰させ、該表面波の伝搬を妨げることができる。これにより、処理容器1の境界線Bの角部や段差部や処理容器1内のパーツの繋ぎ目等にて異常放電が発生することを防止できる。
【0042】
複数のガス吐出孔65の直径は、0.1mm〜1mmの範囲に設定される。複数のガス吐出孔65から吐出される不活性ガスの流速は、10(m/s)以上であることが好ましい。ガスの流速が10(m/s)よりも遅いと、ガス吐出孔65直下のシースが厚くなり難く、インピーダンスの変化によるマイクロ波の表面波の反射が生じ難くなるためである。なお、複数のガス吐出孔65から導入される不活性ガスの流速は、100(m/s)以下であってもよい。
【0043】
なお、マイクロ波は、誘電体の内部を透過して伝搬する。よって、処理容器1の天井面及び側面には、アルミニウムの表面に絶縁膜がコーティングされていることが好ましい。例えば、処理容器1の天井面及び側面には、アルミニウム等の金属の表面にイットリア(Y
2O
3)やアルミナ(Al
2O
3)の絶縁部材を溶射することで、マイクロ波の表面波が、処理容器1の天井面や側面を通り易いようにすることができる。これにより、複数のガス吐出孔65の位置まではマイクロ波の表面波を伝搬し易くし、マイクロ波の表面波の電界によりプラズマの生成を促しながら、ガス吐出孔65直下にてマイクロ波の表面波の伝搬を遮断することができる。これにより、マイクロ波の表面波の伝搬を制御し、異常放電の発生を抑制することができる。
【0044】
[ガス吐出孔の変形例]
次に、ガス吐出孔65の変形例について、
図5を参照しながら説明する。
図5は、本実施形態に係るガス吐出孔65の変形例の一例を示す図である。
図5(a)の例では、複数のガス吐出孔65は、天井面と側面との境界線Bに接して処理容器1の側壁を貫通する。この場合にも、複数のガス吐出孔65は、当該境界線Bに接して処理容器1の側壁を円周方向に間隔Pで配置される。複数のガス吐出孔65から不活性ガスが吐出すると、ガス吐出孔65直下のシースは、その他の天井面のシースよりも厚くなり、インピーダンスが大きく変化する。これにより、天井面に沿って伝搬するマイクロ波の表面波の伝搬を遮断することができる。これにより、マイクロ波の表面波の伝搬を制御し、異常放電の発生を抑制することができる。
【0045】
また、これによれば、複数のガス吐出孔65から吐出する不活性ガスが、処理容器1の天井面に沿って流れるため、境界線B及びその近傍にてガスの滞留が生じない。このため、ガスの剥離が起きにくくなり、パーティクルの発生を防止できる。
【0046】
図5(b)及び
図5(c)の例では、ガス吐出孔65は、天井面と側面との境界線Bから2mm以内で天井面又は側面に配置される。
図5(b)の例では、ガス吐出孔65は、境界線Bから2mm以内で天井壁を貫通する。
図5(c)の例では、ガス吐出孔65は、境界線Bから2mm以内で側壁を貫通する。
【0047】
ガス吐出孔65の位置が、処理容器1の天井面又は側面から離れすぎると、天井面と側面との境界線Bの近傍でガスの滞留が生じ、ガスの剥離が起きやすくなり、パーティクルが発生する懸念がある。
【0048】
これに対して、
図5(b)及び
図5(c)の例では、天井面と側面との境界線Bから2mm以内の天井面又は側面にガス吐出孔65が形成される。このように複数のガス吐出孔65を境界線Bの近傍に所定間隔で設けることで、ガスの滞留が生じ難く、パーティクルの発生を防止できる。
【0049】
また、複数のガス吐出孔65を境界線Bから2mm以内に配置するとしたのは、表皮深さと関係する。高周波電力の周波数が高くなるほど導電層の表面に電流が集中する現象を表皮効果といい、電流が流れる深さを表皮深さ(スキンデプス)という。
【0050】
表皮深さδは、(1)式により算出される。
【0051】
δ(m)≒c/ωpe・・・(1)
c(m/sec)は、光の速さを示す。ωpe(1/sec)は、電子プラズマ周波数を示す。ωは、角周波数(rad/sec)を示す。ωpは、プラズマ周波数(1/sec)を示す。プラズマ周波数ωpは、概ね電子プラズマ周波数ωpeに等しい。
【0052】
(1)式に光の速さc及び電子プラズマ周波数ωpeを代入すると、本実施形態に係るマイクロ波処理装置100では、表皮深さは約2mmとなる。よって、複数のガス吐出孔65の位置を境界線Bから2mm以内とすると、複数のガス吐出孔65によってマイクロ波の表面波の伝播を遮断するとともに、表面波の電界の減衰効果を高め、境界線Bの角部等において、異常放電が発生することを防止できる。
【0053】
なお、
図5(b)に示すようにガス吐出孔65が境界線Bに接していない場合、
図5(d)に示すように、ガス吐出孔65の外側の天井面又は側面をテーパー状に傾斜させてもよい。また、例えば、複数のガス吐出孔65の外側の天井面又は側面をお椀状に傾斜させてもよい。
図5(c)に示すようにガス吐出孔65が側壁側に形成され、かつ、境界線Bに接していない場合においても、同様に、ガス吐出孔65の外側の天井面又は側面を直線又は曲線状に傾斜させてもよい。複数のガス吐出孔65の外側の天井面又は側面を直線又は曲線状に傾斜させることで、ガスの滞留を防ぐことができる。
【0054】
以上、プラズマ処理装置を上記実施形態により説明したが、本発明にかかるプラズマ処理装置は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲内で種々の変形及び改良が可能である。上記複数の実施形態に記載された事項は、矛盾しない範囲で組み合わせることができる。
【0055】
本発明に係るプラズマ処理装置は、Radial Line Slot Antennaにも適用可能である。
【0056】
本明細書では、基板の一例として半導体ウェハWを挙げて説明した。しかし、基板は、これに限らず、LCD(Liquid Crystal Display)、FPD(Flat Panel Display)に用いられる各種基板、CD基板、プリント基板等であっても良い。