(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の組成物は、パーフルオロポリエーテル構造を特徴とする化合物(A)と、数平均分子量が10000〜30000である所定のポリアルキレングリコール(B)とを含んでいる。化合物(A)が有するパーフルオロポリエーテル構造によって撥水撥油性を発揮できるとともに、所定の要件を満たすポリアルキレングリコール(B)を用い得ることによって、皮膜の耐摩耗性及び視認性を向上できる。
【0020】
化合物(A)は、フッ素を含有すると共に、化合物(A)同士又は他の単量体と共に重合反応(特に重縮合反応)を通じて結合することによって皮膜のマトリックスとなり得る化合物であればよい。化合物(A)は、好ましくは含フッ素基と加水分解性基を含有する化合物が好ましく、中でも本発明では、化合物(A)として、パーフルオロポリエーテル構造を有する1価の基と、加水分解性基とが、ケイ素原子に結合している化合物を用いる。
【0021】
前記パーフルオロポリエーテル構造とは、ポリアルキレンエーテル基またはポリアルキレングリコールジアルキルエーテル残基の全部の水素原子がフッ素原子に置き換わった構造であり、パーフルオロポリアルキレンエーテル基、またはパーフルオロポリアルキレングリコールジアルキルエーテル残基という事もできる。パーフルオロポリエーテル構造は、撥水・撥油性を有する。パーフルオロポリエーテル構造の最も長い直鎖部分に含まれる炭素数は、例えば5以上であることが好ましく、10以上がより好ましく、より好ましくは20以上である。前記炭素数の上限は特に限定されず、例えば200程度であってもよい。
【0022】
化合物(A)では、上記パーフルオロポリエーテル構造を有する1価の基がケイ素原子と結合している。パーフルオロポリエーテル構造がケイ素原子と結合する側には、適当な連結基が存在していてもよく、当該連結基なしで上記パーフルオロポリエーテル構造が直接ケイ素原子に結合してもよい。連結基としては、例えば、アルキレン基、芳香族炭化水素基などの炭化水素基、(ポリ)アルキレングリコール基、又はこれらの水素原子の一部がFに置換された基、及びこれらが適当に連結した基などが挙げられる。連結基の炭素数は、例えば1以上、20以下であり、好ましくは2以上、10以下である。
【0023】
なお、一つの連結基には複数のケイ素原子が結合してもよく、一つの連結基に複数のパーフルオロアルキル基又はパーフルオロポリエーテル基が結合してもよい。ケイ素原子に結合する上記パーフルオロポリエーテル構造を有する1価の基の数は、1つ以上であればよく、2または3であってもよいが、1または2であるのが好ましく、1であるのが特に好ましい。
【0024】
また、化合物(A)では、ケイ素原子に加水分解性基が結合しており、該加水分解性基は、加水分解・脱水縮合反応を通じて、化合物(A)同士を、又は化合物(A)と基材表面の活性水素(水酸基など)とを結合する作用を有する。こうした加水分解性基としては、例えばアルコキシ基(特に炭素数1〜4のアルコキシ基)、アセトキシ基、ハロゲン原子(特に塩素原子)などが挙げられる。好ましい加水分解性基は、アルコキシ基及びハロゲン原子であり、特にメトキシ基、エトキシ基、塩素原子が好ましい。
【0025】
ケイ素原子に結合する加水分解性基の数は、1つ以上であればよく、2または3であってもよいが、2または3であるのが好ましく、3であるのが特に好ましい。2つ以上の加水分解性基がケイ素原子に結合している場合、異なる加水分解性基がケイ素原子に結合していてもよいが、同じ加水分解性基がケイ素原子に結合しているのが好ましい。ケイ素原子に結合する含フッ素基(パーフルオロポリエーテル構造を有する1価の基)と加水分解性基との合計数は、通常4であるが、2または3(特に3)であってもよい。3以下の場合、残りの結合手には、例えば、アルキル基(特に炭素数が1〜4のアルキル基)、水素原子、イソシアネート基などが結合できる。
【0026】
化合物(A)のパーフルオロポリエーテル構造を有する1価の基は、直鎖状であってもよいし、側鎖を有していてもよい。
【0027】
化合物(A)としては、例えば下記式(1)の化合物が挙げられる。
【0029】
上記式(1)中、
Rfはフッ素原子または1個以上のフッ素原子に置換された炭素数1〜20のアルキル基を表す。Rfは好ましくは1個以上のフッ素原子で置換された炭素数1〜10のアルキル基であり、より好ましくは炭素数1〜10のパーフルオロアルキル基であり、さらに好ましくは炭素数1〜5のパーフルオロアルキル基である。
Rf
2はそれぞれ独立して、フッ素原子または1個以上のフッ素原子に置換された炭素数1〜20のアルキル基を表す。Rf
2は好ましくはそれぞれ独立して、フッ素原子、または炭素数1〜2の含フッ素アルキル基であり、より好ましくはすべてフッ素原子である。
R
3はそれぞれ独立して水素原子または低級アルキル基を表す。R
3はそれぞれ独立して、好ましくは水素原子、または炭素数1もしくは2のアルキル基であり、より好ましくはすべて水素原子である。
R
4はそれぞれ独立して、炭素数1〜20のアルキル基を表す。R
4は炭素数1〜5のアルキル基が好ましい。
Dはそれぞれ独立して、−O−、−COO−、−OCO−、−NR−、−NRCO−、−CONR−(Rは水素原子、低級のアルキル基又は低級の含フッ素アルキル基)を表す。Dは好ましくはそれぞれ独立して、−COO−、−O−、−OCO−であり、より好ましくはすべて−O−である。
Eはそれぞれ独立して、加水分解性基を表す。Eは、炭素数1〜4のアルコキシ基、アセトキシ基、又はハロゲン原子が好ましく、特にメトキシ基、エトキシ基、塩素原子が好ましい。
a2、b2、c2、d2、e2はそれぞれ独立して0以上600以下の整数であって、a2、b2、c2、d2、e2の合計値は13以上である。
a2、b2、c2、d2、e2を付して括弧でくくられた各繰り返し単位の順序は、少なくとも一部でパーフルオロポリエーテル構造を形成する順で並ぶ限り、式中において任意であるが、好ましくは最も固定端側(含フッ素基のケイ素原子と結合する側)のb2を付して括弧でくくられた繰り返し単位は、最も自由端側のa2を付して括弧でくくられた繰り返し単位よりも自由端側に位置し、より好ましくは最も固定端側のb2またはd2を付して括弧でくくられた繰り返し単位は、最も自由端側のa2またはc2を付して括弧でくくられた繰り返し単位よりも自由端側に位置する。
nは1以上3以下の整数である。nは2以上3以下が好ましく、より好ましくは3である。
【0030】
式(1)において、特に、Rfが炭素数1〜5のパーフルオロアルキル基、Rf
2が全てフッ素原子、Dが全て−O−、Eがメトキシ基、エトキシ基、又は塩素原子(特にメトキシ基又はエトキシ基)、a2、c2及びd2がいずれも0、nが3、e2が4以上、600以下であることが好ましい。
【0031】
式(1)で表される化合物(A)としては、例えば下記式(1−1)の化合物が挙げられる。
【0033】
上記式(1−1)において、R
10は炭素数が1〜5のパーフルオロアルキル基であり、R
11は炭素数が1〜5のパーフルオロアルキレン基であり、R
12は炭素数が1〜3のパーフルオロアルキレン基であり、R
13は炭素数が1〜3のアルキレン基であり、R
14は炭素数が1〜3のアルキル基であり、z2、z3はいずれも1〜3の整数であり、z1は上記式(1−1)で表される化合物が常圧で液体を維持できるように設定される値である。
【0034】
また化合物(A)としては、上記式(1)の化合物の他、下記式(2)の化合物が例示でき、好ましくは下記式(2)の化合物である。
【0036】
上記式(2)中、
Rfはフッ素原子または1個以上のフッ素原子に置換された炭素数1〜20のアルキル基を表す。Rfは好ましくは1個以上のフッ素原子で置換された炭素数1〜10のアルキル基であり、より好ましくは炭素数1〜10のパーフルオロアルキル基であり、さらに好ましくは炭素数1〜5のパーフルオロアルキル基である。
Rf
3はそれぞれ独立して、フッ素原子または1個以上のフッ素原子に置換された炭素数1〜20のアルキル基を表す。Rf
3は好ましくはそれぞれ独立して、フッ素原子、または炭素数1〜2の含フッ素アルキル基であり、より好ましくはすべてフッ素原子である。
R
5はそれぞれ独立して水素原子または低級アルキル基を表す。R
5は好ましくはそれぞれ独立して、水素原子、または炭素数1もしくは2のアルキル基であり、より好ましくはすべて水素原子である。
R
6はそれぞれ独立して、炭素数1〜20のアルキル基を表す。R
6は、炭素数1〜5のアルキル基が好ましい。
Gはそれぞれ独立して、−O−、−COO−、−OCO−、−NR−、−NRCO−、−CONR−を表す(Rは水素原子、低級のアルキル基又は低級の含フッ素アルキル基)。Gは好ましくはそれぞれ独立して、−COO−、−O−、−OCO−であり、より好ましくはすべて−O−である。
Jはそれぞれ独立して、加水分解性基を表す。Jは、アルコキシ基、アセトキシ基、又はハロゲン原子が好ましく、特にメトキシ基、エトキシ基、塩素原子が好ましい。
Yはそれぞれ独立して、水素原子または低級アルキル基を表す。Yは好ましくはそれぞれ独立して、水素原子または炭素数1もしくは2のアルキル基であり、より好ましくはすべて水素原子である。
Zはそれぞれ独立して、水素原子またはハロゲン原子を表す。Zは、好ましくは水素原子である。
a3、b3、c3、d3、e3はそれぞれ独立して0以上600以下の整数であり、a3、b3、c3、d3、e3の合計値は13以上である。好ましくはa3、c3、d3はそれぞれ独立してb3の1/2以下であり、より好ましくは1/4以下であり、さらに好ましくはc3またはd3は0であり、特に好ましくはc3およびd3は0である。
e3は、好ましくはa3、b3、c3、d3の合計値の1/5以上であり、a3、b3、c3、d3の合計値以下である。
b3は、20以上、600以下が好ましく、より好ましくは20以上、200以下であり、更に好ましくは50以上、200以下である。e3は4以上、600以下が好ましく、より好ましくは4以上、200以下であり、更に好ましくは10以上、200以下である。a3、b3、c3、d3、e3の合計値は、20以上、600以下が好ましく、20以上、200以下が好ましく、50以上、200以下が更に好ましい。
h3は0以上2以下の整数であり、好ましくは0以上、1以下であり、
qは1以上20以下の整数であり、好ましくは1以上、18以下である。更に好ましくは、2以上15以下である。
a3、b3、c3、d3、e3を付して括弧でくくられた各繰り返し単位の順序は、少なくとも一部でパーフルオロポリエーテル構造を形成する順で並ぶ限り、式中において任意であるが、好ましくは最も固定端側(含フッ素基のケイ素原子と結合する側)のb3を付して括弧でくくられた繰り返し単位は、最も自由端側のa3を付して括弧でくくられた繰り返し単位よりも自由端側に位置し、より好ましくは最も固定端側のb3またはd3を付して括弧でくくられた繰り返し単位は、最も自由端側のa3またはc3を付して括弧でくくられた繰り返し単位よりも自由端側に位置する。
pは1以上3以下の整数であり、2以上3以下が好ましく、3がより好ましい。
【0037】
なお、上記式(1)、(2)中の低級とは、炭素数が1〜4であることを意味する。
【0038】
式(2)において、特にRfが炭素数1〜5のパーフルオロアルキル基、Rf
3が全てフッ素原子、Gが全て−O−、Jがメトキシ基、エトキシ基、又は塩素原子(特にメトキシ基又はエトキシ基)、Y及びZがいずれも水素原子、a3が0、b3が30〜150(より好ましくは80〜140)、e3が30〜60、c3及びd3が0、h3が0以上1以下(特に0)、pが3、qが1〜10であることが好ましい。
【0039】
上記式(2)で表される化合物(A)としては、例えば下記式(2−1)の化合物が挙げられる。
【0041】
上記式(2−1)中、R
20は炭素数が2〜6のパーフルオロアルキル基であり、R
21及びR
22はそれぞれ独立に炭素数が2〜6のパーフルオロアルキレン基であり、R
23は炭素数が2〜6の3価の飽和炭化水素基であり、R
24は炭素数が1〜3のアルキル基である。R
20、R
21、R
22、R
23の炭素数は、それぞれ独立に2〜4が好ましく、2〜3がより好ましい。x1は5〜70であり、x2は1〜5であり、x3は1〜10である。x1は10〜60が好ましく、20〜50がより好ましく、x2は1〜4が好ましく、1〜3がより好ましく、x3は1〜8が好ましく、1〜6がより好ましい。
【0042】
本発明の組成物における化合物(A)の含有量は、0.05〜0.15質量%である。化合物(A)の含有量が0.05質量%未満であると良好な撥水撥油性が得られない。一方、化合物(A)の含有量が0.15質量%を超えると、HAZEが高くなり、視認性が低下する。化合物(A)の含有量の下限は、好ましくは0.06質量%以上であり、より好ましくは0.07質量%以上である。一方、化合物(A)の含有量の上限は、好ましくは0.13質量%以下であり、より好ましくは0.11質量%以下である。
【0043】
次に、数平均分子量が10000〜30000であるポリアルキレングリコール(B)について説明する。本発明の組成物が含むポリアルキレングリコール(B)は、より詳細には、OH基の水素原子がフルオロアルキル基で置換されていてもよくアルキレン基の少なくとも一部の水素原子がフッ素原子に置換されているポリアルキレングリコールである。OH基の水素原子が置換されている場合、フルオロアルキル基で置換されていることが好ましく、パーフルオロアルキル基で置換されていることがより好ましく、トリフルオロメチル基で置換されていることが更に好ましい。また、ポリアルキレングリコール(B)では、アルキレン基の少なくとも一部の水素原子がフッ素原子に置換されており、特にパーフルオロオキシアルキレン単位を含有していることが好ましい。
【0044】
特に、OH基の水素原子がトリフルオロメチル基で置換されており、アルキレン基の全ての水素原子がフッ素原子に置換されているポリアルキレングリコール、又はOH基の水素原子が置換されておらず、アルキレン基の一部の水素原子のみがフッ素原子に置換されているポリアルキレングリコールが好ましい。
【0045】
ポリアルキレングリコール(B)としては、例えば下記式(3)で表される化合物が挙げられる。
【0046】
X−(OC
4F
8)
a−(OC
3F
6)
b−(OC
2F
4)
c−(OCF
2)
d−Y ・・・(3)
【0047】
式(3)において、a、b、c、dはいずれも繰返し単位を表す記号であり、その範囲は常圧で液体を維持できる範囲で適宜設定可能である。また、a、b、c、dで括られる繰返し単位は、互いにランダムに繰り返してもよい。Xは、1個以上の水素原子がフッ素原子により置換されていてもよい炭素数1〜16のアルキル基であり、Yは、1個以上の水素原子がフッ素原子により置換されていてもよい炭素数1〜16のアルコキシ基、又はOH基を表す。
【0048】
式(3)において、−(OC
4F
8)−は、−(OCF
2CF
2CF
2CF
2)−、−(OCF(CF
3)CF
2CF
2)−、−(OCF
2CF(CF
3)CF
2)−、−(OCF
2CF
2CF(CF
3))−、−(OC(CF
3)
2CF
2)−、−(OCF
2C(CF
3)
2)−および−(OCF(CF
3)CF(CF
3))−のいずれであってもよく、好ましくは−(OCF
2CF
2CF
2CF
2)−である。−(OC
3F
6)−は、−(OCF
2CF
2CF
2)−、−(OCF(CF
3)CF
2)−および−(OCF
2CF(CF
3))−のいずれであってもよく、好ましくは−(OCF
2CF
2CF
2)−である。−(OC
2F
4)−は、−(OCF
2CF
2)−および−(OCF(CF
3))−のいずれであってもよい。
【0049】
Xは、好ましくは1個以上の水素原子がフッ素原子により置換されていてもよい炭素数1〜3のアルキル基(特にトリフルオロメチル基)であり、Yは、好ましくは1個以上の水素原子がフッ素原子により置換されていてもよい炭素数1〜3のアルコキシ基(特にトリフルオロメトキシ基)又はOH基である。
【0050】
式(3)において、特にa=b=0であって、Xがトリフルオロメチル基、Yがトリフルオロメトキシ基であることが好ましい。
【0051】
また、ポリアルキレングリコール(B)として、下記式(4)で表される化合物も例示できる。
【0053】
上記式(4)において、p、q、m、nはいずれも繰返し単位を表す記号であり、その範囲は常圧で液体を維持できる範囲で適宜設定可能である。また、pで括られる繰返し単位と、qで括られる繰返し単位とは、互いにランダムに繰り返してよい。
【0054】
本発明の組成物においてポリアルキレングリコール(B)は、数平均分子量が10000〜30000である。数平均分子量が10000未満であると、得られる皮膜の耐摩耗性が劣化する。一方、数平均分子量が30000を超えるとHAZEが高くなり、視認性が低下する。ポリアルキレングリコール(B)の数平均分子量の下限は、好ましくは11000以上であり、より好ましくは12000以上である。数平均分子量の上限は、好ましくは25000以下であり、より好ましくは20000以下である。
【0055】
上記式(3)のうち、特に、下記式(5)で表されるものを好適に用いることができ、このような構造を有する化合物として、フォンブリンM60(登録商標、Solvay社製、数平均分子量12500)が挙げられる。
【0057】
本発明の組成物中におけるポリアルキレングリコール(B)の含有量は、0.02〜0.15質量%である。ポリアルキレングリコール(B)の含有量が、0.02質量%未満であると、得られる皮膜の耐摩耗性が劣化する。一方、ポリアルキレングリコール(B)の含有量が0.15質量%を超えると、得られる皮膜の視認性が劣化する。ポリアルキレングリコール(B)の含有量の下限は、好ましくは0.03質量%以上であり、より好ましくは0.04質量%以上である。ポリアルキレングリコール(B)の含有量の上限は、好ましくは0.13質量%以下であり、より好ましくは0.10質量%以下である。
【0058】
本発明の組成物は、上記した化合物(A)及びポリオキシアルキレングリコール(B)に加えて、更に分子量が1000以下であるフッ素系溶剤(C)を含むことが好ましい。
【0059】
フッ素系溶剤(C)は、例えばフッ素化エーテル系溶剤、フッ素化アミン系溶剤、フッ素化芳香族溶剤等を用いることができ、特に沸点が100℃以上であることが好ましい。フッ素化エーテル系溶剤としては、フルオロアルキル(特に炭素数2〜6のパーフルオロアルキル基)−アルキル(特にメチル基又はエチル基)エーテルなどのハイドロフルオロエーテルが好ましく、例えば下記式(6−1)又は(6−2)で表されるエチルノナフルオロブチルエーテル又はエチルノナフルオロイソブチルエーテルが挙げられる。エチルノナフルオロブチルエーテル又はエチルノナフルオロイソブチルエーテルとしては、例えばNovec(登録商標)7200(3M社製、分子量約264、沸点76℃)が挙げられる。フッ素化アミン系溶剤としては、アンモニアの水素原子の少なくとも1つがフルオロアルキル基で置換されたアミンが好ましく、アンモニアの全ての水素原子がフルオロアルキル基(特にパーフルオロアルキル基)で置換された第三級アミンが好ましく、具体的には下記式(7)で表されるトリス(ヘプタフルオロプロピル)アミン挙げられ、フロリナート(登録商標)FC−3283(分子量約521、沸点128℃)がこれに該当する。フッ素化芳香族溶剤としては、下記式(8)で表される1,3−ビス(トリフルオロメチルベンゼン)(沸点:約116℃)が挙げられる。
【0064】
フッ素系溶剤(C)としては、上記の他、アサヒクリンAK225(旭ガラス社製)などのハイドロクロロフルオロカーボン、アサヒクリンAC2000(旭ガラス社製)などのハイドロフルオロカーボンなどを用いることができる。
【0065】
フッ素系溶剤(C)の分子量は、好ましくは900以下であり、より好ましくは800以下であり、下限は特に限定されないが、例えば300程度である。
【0066】
本発明の組成物中におけるフッ素系溶剤(C)の含有量は、例えば90質量%以上であり、より好ましくは93質量%以上であり、更に好ましくは95質量%以上である。
【0067】
更に、本発明の組成物は、フルオロアルキルシラン(D1)及び加水分解性シランオリゴマー(D2)の少なくとも1種を含んでいてもよい。これらを含むことによって、得られる皮膜の耐摩耗性を更に向上できる。(D1)及び(D2)は、所定の蒸気圧を示す高沸点化合物であってもよい。すなわち、(D1)及び(D2)は、温度100℃での蒸気圧が1気圧以下である高沸点化合物であることが好ましい。なお高沸点化合物は、沸点が存在しなくてもよいが、沸点を有する場合は、その沸点が100℃以上になる化合物が上記化合物に該当する。好ましい化合物では、蒸気圧が1気圧以上となる温度が110℃以上であり、より好ましくは120℃以上、更に好ましくは130℃以上である。蒸気圧が1気圧以上になる温度の上限は特に限定されず、蒸気圧が1気圧以上になる前に分解が開始する化合物であってもよい。
【0068】
上記(D1)のフルオロアルキルシランは、該フルオロアルキルシランのケイ素原子に加水分解性基が結合した化合物であることが好ましい。該フルオロアルキルシランのフルオロアルキル基は、フルオロアルキル基を末端に有する基が好ましく、特に末端がトリフルオロメチル基などのパーフルオロアルキル基である基が好ましい。フルオロアルキル基としては、例えば、フルオロメチル基、フルオロエチル基、フルオロプロピル基、フルオロブチル基、フルオロペンチル基、フルオロヘキシル基、フルオロへプチル基、フルオロオクチル基、フルオロノニル基、フルオロデシル基、フルオロウンデシル基、フルオロドデシル基などの炭素数が1〜12のフルオロアルキル基が挙げられる。
【0069】
前記(D1)のフルオロアルキルシランのケイ素原子に加水分解性基が結合している場合、該加水分解性基としては、化合物(A)で例示した加水分解性基と同様のものが挙げられ、好ましい加水分解性基は、アルコキシ基、及びハロゲン原子であり、特にメトキシ基、エトキシ基、塩素原子が好ましい。加水分解性基が複数個存在する場合は同一であっても異なっていてもよいが、同一であることが好ましい。
【0070】
ケイ素原子に結合するフルオロアルキル基と加水分解性基との合計数は、4であることが好ましく、この場合、フルオロアルキル基の数が3で加水分解性基の数が1、フルオロアルキル基及び加水分解性基の数が共に2、フルオロアルキル基の数が1で加水分解性基の数が3のいずれであってもよいが、フルオロアルキル基の数が1で加水分解性基の数が3であることが好ましい。ケイ素原子に結合するフルオロアルキル基と加水分解性基との合計数は、2または3(特に3)であってもよく、3以下の場合、残りの結合手には、例えば、アルキル基(特に炭素数が1〜4のアルキル基)、水素原子、シアノ基などが結合できる。
【0071】
フルオロアルキル基と加水分解性基の組み合わせは特に限定されず、後述する式(9)を包含するものや、包含しないもののいずれであってもよいが、好ましくは、フルオロアルキル基とアルコキシ基の組み合わせ(フルオロアルキルアルコキシシランなど。特にフルオロアルキルトリアルコキシシランなど)、フルオロアルキル基とハロゲン原子の組み合わせ(フルオロアルキルハロシランなど。特にフルオロアルキルトリハロシラン)が挙げられる。
【0072】
上記(D1)のフルオロアルキルシランとしては、合成の簡便さから下記式(9)で表される化合物であることが更に好ましい。
【0074】
上記式(9)中、
Rf
1はそれぞれ独立してフッ素原子または1個以上のフッ素原子に置換された炭素数1〜20のアルキル基を表し、
R
1はそれぞれ独立して、水素原子または低級アルキル基を表し、
R
2はそれぞれ独立して、炭素数1〜20のアルキル基を表し、
Aはそれぞれ独立して、−O−、−COO−、−OCO−、−NR−、−NRCO−、−CONR−(Rは水素原子又は、低級のアルキル基、または低級の含フッ素アルキル基を表す)を表し、
Bはそれぞれ独立して、加水分解性基を表し、
a1、b1、c1、d1、e1はそれぞれ独立して0以上100以下の整数であって、
a1、b1、c1、d1、e1を付して括弧でくくられた各繰り返し単位の順序は、少なくとも一部でフルオロアルキルシリル基を形成する順序で並ぶ限り、式中において任意であり、
a1、b1、c1、d1、e1の合計値は100以下であり、
mは1以上3以下の整数である。
上記式(9)中、低級とは、炭素数が1〜4であることを意味する。
【0075】
Rf
1はフッ素原子又は炭素数1〜10(より好ましくは炭素数1〜6)のパーフルオロアルキル
基が好ましい。R
1は水素原子又は炭素数1〜4のアルキル
基であることが好ましい。R
2は炭素数1〜5のアルキル基が好ましい。Aは、−O−、−COO−、−OCO−が好ましい。Bは炭素数1〜4のアルコキシ基、又はハロゲン原子が好ましく、より好ましくはメトキシ基、エトキシ基、塩素原子である。a1は1〜30が好ましく、1〜25がより好ましく、1〜10が更に好ましく、1〜5が特に好ましく、最も好ましくは1〜2である。b1は0〜15が好ましく、より好ましくは0〜10である。c1は0〜5が好ましく、より好ましくは0〜2である。d1は0〜4が好ましく、より好ましくは0〜2である。e1は0〜4が好ましく、より好ましくは0〜2である。mは2〜3が好ましく、3がより好ましい。a1、b1、c1、d1、e1の合計値は3以上が好ましく、5以上がより好ましく、また80以下が好ましく、より好ましくは50以下、更に好ましくは20以下である。
【0076】
特に、Rf
1がフッ素原子又は炭素数1〜6のパーフルオロアルキルであり、R
1が水素原子であり、Bがメトキシ基又はエトキシ基であると共に、c1、d1及びe1がいずれも0であり、mが3であり、a1が1〜5、b1が0〜6であることが好ましい。
【0077】
上記(D1)のフルオロアルキルシランとしては、例えばCF
3−Si−(OCH
3)
3、C
jF
2j+1−Si−(OC
2H
5)
3(jは1〜12の整数)が挙げられ、この中で特にC
4F
9−Si−(OC
2H
5)
3、C
6F
13−Si−(OC
2H
5)
3、C
7F
15−Si−(OC
2H
5)
3、C
8F
17−Si−(OC
2H
5)
3が好ましい。また、CF
3(CH
2)
2Si(CH
3)
2(CH
2)
kSiCl
3、CF
3(CH
2)
2Si(CH
3)
2(CH
2)
kSi(OCH
3)
3、CF
3(CH
2)
2Si(CH
3)
2(CH
2)
kSi(OC
2H
5)
3、CF
3(CH
2)
6Si(CH
3)
2(CH
2)
kSiCl
3、CF
3(CH
2)
6Si(CH
3)
2(CH
2)
kSi(OCH
3)
3、CF
3(CH
2)
6Si(CH
3)
2(CH
2)
kSi(OC
2H
5)
3が挙げられる(kはいずれも5〜20であり、好ましくは8〜15である)。また、CF
3(CF
2)
m−(CH
2)
nSiCl
3、CF
3(CF
2)
m−(CH
2)
nSi(OCH
3)
3、CF
3(CF
2)
m−(CH
2)
nSi(OC
2H
5)
3を挙げることもできる(mはいずれも1〜10であり、好ましくは3〜7であり、nはいずれも1〜5であり、好ましくは2〜4である)。更に、CF
3(CF
2)
p−(CH
2)
qSiCH
3Cl
2、CF
3(CF
2)
p−(CH
2)
qSiCH
3(OCH
3)
2、CF
3(CF
2)
p−(CH
2)
qSiCH
3(OC
2H
5)
2が挙げられる(pはいずれも2〜10であり、好ましくは3〜7であり、qはいずれも1〜5であり、好ましくは2〜4である)。
【0078】
加水分解性シランオリゴマー(D2)は、2以上の加水分解性基をもつシラン化合物、好ましくは2以上(特に3)の加水分解性基と含フッ素基(特に低級の含フッ素アルキル基)を有するシラン化合物が加水分解縮合することによって生成するオリゴマーの事をいう。オリゴマーに含まれるケイ素原子の数(縮合数)は、例えば3以上であり、好ましくは5以上であり、より好ましくは7以上である。縮合数は好ましくは15以下であり、より好ましくは13以下であり、更に好ましくは10以下である。
【0079】
前記オリゴマーが有する加水分解性基としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基などのアルコキシ基などが挙げられ、好ましくはメトキシ基、エトキシ基などである。前記オリゴマーは、これら加水分解性基の1種または2種以上を有することができ、好ましくは1種を有する。
【0080】
加水分解性シランオリゴマー(D2)としては、下記式(10)で表される化合物が挙げられる。
【0082】
上記式(10)中、
Xはそれぞれ独立して、加水分解性基、低級のアルキル基、または低級の含フッ素アルキル基を表し、
g1は0以上100以下の整数である。
式(10)において、低級とは、炭素数が1〜4であることを意味する。
【0083】
前記加水分解性基は、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基などのアルコキシ基が挙げられる。Xのうち少なくとも1つは加水分解性基(特にエトキシ基、メトキシ基)であり、g1は0以上10以下が好ましく、より好ましくは0以上7以下である。Xのうち少なくとも1つが低級の含フッ素アルキル基であることも好ましい。
【0084】
加水分解性シランオリゴマーとしては、例えば、(H
5C
2O)
3−Si−(OSi(OC
2H
5)
2)
4OC
2H
5、(H
3CO)
2Si(CH
2CH
2CF
3)−(OSiOCH
3(CH
2CH
2CF
3))
4−OCH
3などが挙げられる。
【0085】
本発明の組成物における(D1)及び(D2)の含有量(1種の場合は単独の含有量、2種以上含む場合には合計含有量)は、0.01〜0.5質量%であることが好ましい。
【0086】
本発明の組成物は、さらにシラノール縮合触媒を含んでいてもよい。シラノール縮合触媒としては、塩酸、硝酸などの無機酸、酢酸などの有機酸、チタン錯体(たとえば、松本ファインケミカル製、オルガチクスTC−750など)や錫錯体などの金属錯体や金属アルコキシドなどがあげられる。シラノール縮合触媒の量は、例えば、0.00001〜0.1質量%、好ましくは、0.00002〜0.01質量%、さらに好ましくは0.0005〜0.001質量%である。
【0087】
本発明の組成物は、本発明の効果を阻害しない範囲で、酸化防止剤、防錆剤、紫外線吸収剤、光安定剤、防カビ剤、抗菌剤、生物付着防止剤、消臭剤、顔料、難燃剤、帯電防止剤等、各種の添加剤を含有していてもよい。
【0088】
酸化防止剤としては、以下のフェノール系酸化防止剤、硫黄系酸化防止剤、リン系酸化防止剤、ヒンダードアミン系酸化防止剤が例示できる。
【0089】
例えば、n−オクタデシル−3−(4−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ブチルフェニル)プロピオネート、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール、2,2−チオ−ジエチレン−ビス−[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、トリ−エチレングリコール−ビス−[3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、3,9−ビス[2−{3−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ}−1,1−ジメチルエチル]−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5・5]ウンデカン、テトラキス{3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)−プロピオン酸}ペンタエリスリチル エステル、2−t−ブチル−6−(3−t−ブチル−2−ヒドロキシ−5−メチルベンジル)−4−メチルフェニル アクリレート、2−[1−(2−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ペンチルフェニル)エチル]−4,6−ジ−t−ペンチルフェニル アクリレート、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、トリス(3,5−ジ−t−ブチル
−4−ヒドロキシベンジル)イソシアヌレート、1,3,5−トリス(4−t−ブチル−3−ヒドロキシ−2,6−ジメチルベンジル)−1,3,5−トリアジン−2,4,6−(1H、3H、5H)−トリオン、2,2’−メチレンビス(6−t−ブチル−4−メチルフェノール)、4,4’−ブチリデンビス(6−t−ブチル−3−メチルフェノール)、4,4’−チオビス(6−t−ブチル−3−メチルフェノール)等のフェノール系酸化防止剤。
【0090】
例えば、3,3’−チオジプロピオン酸 ジ−n−ドデシル エステル、3,3’−チオジプロピオン酸 ジ−n−テトラデシル エステル、3,3’−チオジプロピオン酸 ジ−n−オクタデシル エステル、テトラキス(3−ドデシルチオプロピオン酸)ペンタエリスリチル エステル等の硫黄系酸化防止剤。
【0091】
例えば、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト、ビス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,4−ジ−クミルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、テトラキス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)−4,4’−ビフェニレンジホスフォナイト、ビス−[2,4−ジ−t−ブチル
−(6−メチル)フェニル]エチルホスファイト等のリン系酸化防止剤。
【0092】
例えば、セバシン酸 ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)エステル(融点81〜86℃)、2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル メタクリレート(融点58℃)、ポリ[{6−(1,1,3,3、−テトラメチルブチル)アミノ−1,3,5−トリアジン−2,4−ジイル}{(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ}−1,6−ヘキサメチレン{(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ}]等のヒンダードアミン系酸化防止剤。
【0093】
また、防錆剤としては、例えば、アルカノールアミン、第四アンモニウム塩、アルカンチオール、イミダゾリン、メタバナジン酸ナトリウム、クエン酸ビスマス、フェノール誘導体、ポリアルケニルアミン、アルキルイミダゾリン誘導体、
シアノアルキルアミン、カルボン酸アミド、アルキレンジアミン、ピリミジンおよびこれらのカルボン酸、ナフテン酸、スルホン酸複合体、亜硝酸カルシウム、アルキルアミンとエステル、ポリアルコール、ポリフェノール
、モリブデン酸ナトリウム、タングステン酸ナトリウム、亜硝酸ナトリウム、ホスホン酸ナトリウム、クロム酸ナトリウム、ケイ酸ナトリウム、ゼラチン、カルボン酸のポリマー、脂肪族および芳香族アミン又はジアミン、エトキシ化アミン、イミダゾール、ベンズイミダゾール、ニトロ化合物、ホルムアルデヒド、アセチレンアルコール、脂肪族および芳香族チオール又はスルフィド、スルホキシド、チオ尿素、アセチレンアルコール、2−メルカプトベンズイミダゾール、アミン又は第四アンモニウム塩+ハロゲンイオン、アセチレンチオールおよびスルフィド、ジベンジルスルホキシド、アルキルアミン+ヨウ化カリウム、亜硝酸ジシクロヘキシルアミン、安息香酸シクロヘキシルアミン、ベンゾトリアゾール、タンニン+リン酸ナトリウム、トリエタノールアミン+ラウリルサルコシン+ベンゾトリアゾール、アルキルアミン+ベンゾトリアゾール+亜硝酸ナトリウム+リン酸ナトリウム等の防錆剤を例示できる。
【0094】
紫外線吸収剤/光安定剤としては、例えば、2−(5−メチル−2−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2−[2−ヒドロキシ−3,5−ビス(α,α−ジメチルベンジル)フェニル]−2H−ベンゾトリアゾール、2−(3−t−ブチル−5−メチル−2−ヒドロキシフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−5’−t−オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール、メチル−3−[3−t−ブチル−5−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−ヒドロキシフェニル]プロピオネート−ポリエチレングリコール(分子量約300)との縮合物、ヒドロキシフェニルベンゾトリアゾール誘導体、2−(4,6−ジフェニル−1,3,5−トリアジン−2−イル)−5[(ヘキシル)オキシ]−フェノール、2−エトキシ−2’−エチル−オキサリック酸ビスアニリド等の紫外線吸収剤/光安定剤が挙げられる。
【0095】
防カビ剤/抗菌剤としては、例えば、2−(4−チアゾリル)ベンツイミダゾール、ソルビン酸、1,2−ベンズイソチアゾリン−3オン、(2−ピリジルチオ−1−オキシド)ナトリウム、デヒドロ酢酸、2−メチル−5−クロロ−4−イソチアゾロン錯体、2,4,5,6−テトラクロロフタロニトリル、2−ベンズイミダゾールカルバミン酸メチル、1−(ブチルカルバモイル)−2−ベンズイミダゾールカルバミン酸メチル、モノあるいはジブロモシアノアセトアミド類、1,2−ジブロモ−2,4−ジシアノブタン、1,1−ジブロモ−1−ニトロプロパノールおよび1,1−ジブロモ−1−ニトロ−2−アセトキシプロパン等の防カビ剤/抗菌剤を含有してもよい。
【0096】
生物付着防止剤としては、例えば、テトラメチルチウラムジサルファイド、ビス(N,N−ジメチルジチオカルバミン酸)亜鉛、3−(3,4−ジクロロフェニル)−1,1−ジメチルウレア、ジクロロ−N−((ジメチルアミノ)スルフォニル)フルオロ−N−(P−トリル)メタンスルフェンアミド、ピリジン−トリフェニルボラン、N,N−ジメチル−N’−フェニル−N’−(フルオロジクロロメチルチオ)スルファミド、チオシアン酸第一銅(1)、酸化第一銅、テトラブチルチウラムジサルファイド、2,4,5,6−テトラクロロイソフタロニトリル、ジンクエチレンビスジチオカーバーメート、2,3,5,6−テトラクロロ−4−(メチルスルホニル)ピリジン、N−(2,4,6−トリクロロフェニル)マレイミド、ビス(2−ピリジンチオール−1−オキシド)亜鉛塩、ビス(2−ピリジンチオール−1−オキシド)銅塩、2−メチルチオ−4−t−ブチルアミノ−6−シクロプロピルアミノ−s−トリアジン、4,5−ジクロロ−2−n−オクチル−4−イソチアゾリン−3−オン、フラノン類、アルキルピリジン化合物、グラミン系化合物、
イソニトリル化合物等の生物付着防止剤を例示できる。
【0097】
消臭剤としては、例えば、乳酸、コハク酸、リンゴ酸、クエン酸、マレイン酸、マロン酸、エチレンジアミンポリ酢酸、アルカン-1,2−ジカルボン酸、アルケン−1,2−ジカルボン酸、シクロアルカン−1,2−ジカルボン酸、シクロアルケン−1,2−ジカルボン酸、ナフタレンスルホン酸等の有機酸類;ウンデシレン酸亜鉛、2−エチルヘキサン酸亜鉛、リシノール酸亜鉛等の脂肪酸金属類;酸化鉄、硫酸鉄、酸化亜鉛、硫酸亜鉛、塩化亜鉛、酸化銀、酸化銅、金属(鉄、銅等)クロロフィリンナトリウム、金属(鉄、銅、コバルト等)フタロシアニン、金属(鉄、銅、コバルト等)テトラスルホン酸フタロシアニン、二酸化チタン、可視光応答型二酸化チタン(窒素ドープ型など)等の金属化合物;α-、β-、又はγ-シクロデキストリン、そのメチル誘導体、ヒドロキシプロピル誘導体、グルコシル誘導体、マルトシル誘導体等のシクロデキストリン類;多孔メタクリル酸ポリマー、多孔アクリル酸ポリマー等のアクリル酸系ポリマー、多孔ジビニルベンゼンポリマー、多孔スチレン−ジビニルベンゼン−ビニルピリジンポリマー、多孔ジビニルベンゼン−ビニルピリジンポリマー等の芳香族系ポリマー、それらの共重合体及びキチン、キトサン、活性炭、シリカゲル、活性アルミナ、ゼオライト、セラミック等の多孔質体等の消臭剤が例示できる。
【0098】
顔料としては、例えば、カーボンブラック、酸化チタン、フタロシアニン系顔料、キナクリドン系顔料、イソインドリノン系顔料、ペリレン又はペリノン系顔料、キノフタロン系顔料、ジケトピロロ−ピロール系顔料、ジオキサジン系顔料、ジスアゾ縮合系顔料やベンズイミダゾロン系顔料等の顔料が挙げられる。
【0099】
難燃剤としては、例えば、デカブロモビフェニル、三酸化アンチモン、リン系難燃剤、水酸化アルミニウム等の難燃剤を含有できる。
【0100】
帯電防止剤としては、例えば、4級アンモニウム塩型のカチオン界面活性剤、ベタイン型の両性界面活性剤、リン酸アルキル型のアニオン界面活性剤、第1級アミン塩、第2級アミン塩、第3級アミン塩、第4級アミン塩やピリジン誘導体等のカチオン界面活性剤、硫酸化油、石鹸、硫酸化エステル油、硫酸化アミド油、オレフィンの硫酸化エステル塩類、脂肪アルコール硫酸エステル塩類、アルキル硫酸エステル塩、脂肪酸エチルスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、琥珀酸エステルスルホン酸塩や燐酸エステル塩等のアニオン界面活性剤、多価アルコールの部分的脂肪酸エステル、脂肪アルコールのエチレンオキサイド付加物、脂肪酸のエチレンオキサイド付加物、脂肪アミノ又は脂肪酸アミドのエチレンオキサイド付加物、アルキルフェノールのエチレンオキサイド付加物、多価アルコールの部分的脂肪酸エステルのエチレンオキサイド付加物やポリエチレングリコール等のノニオン界面活性剤、カルボン酸誘導体やイミダゾリン誘導体等の両性界面活性剤等の帯電防止剤を例示できる。
【0101】
本発明の組成物が各種の添加剤を含む場合、各種の添加剤の含有量としては、例えば、本発明の組成物の全重量に対して、0.01〜70質量%、好ましくは0.05〜50質量%、より好ましくは0.1〜30質量%、さらに好ましくは0.5〜5質量%である。
【0102】
滑剤、充填剤、可塑剤、核剤、アンチブロッキング剤、発泡剤、乳化剤、光沢剤、結着剤等も本発明の組成物に含有されていてもよい。
【0103】
本発明の組成物を基板に塗布し空気中で静置又は加温乾燥(例えば120〜180℃で10分〜60分)することで、空気中の水分を取り込んで加水分解性基が加水分解され、シロキサン結合が形成される。得られた皮膜は、更に加温乾燥してもよい。
【0104】
基板に組成物を塗布する方法としては、ディップコート法、ロールコート法、バーコート法、スピンコート法、スプレーコート法、ダイコート法などを採用できる。得られる皮膜の膜厚は、例えば4〜10nm程度である。
【0105】
本発明の組成物により得られる透明皮膜は、撥水・撥油性を有すると共に、耐摩耗性及び視認性に優れている。例えば、本発明の透明皮膜は、水滴量3.0μlでθ/2法により測定した接触角が通常100°以上、好ましくは110°以上であり、上限は限定されないが、例えば120°以下である。また、JIS K 7136に従ってヘイズメーターを用いて測定した透過率(HAZE)は0.2%以下とでき、好ましくは0.15%以下であり、より好ましくは0.10%以下である。HAZEの下限は、例えば0.03%である。
【0106】
本発明の組成物を塗布する基板は特に限定されず、有機系材料、無機系材料のいずれでもよく、形状は平面、曲面のいずれであってもよいし、多数の面が組み合わさった三次元的構造でもよい。前記有機系材料としては、アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、スチレン樹脂、アクリル−スチレン共重合樹脂、セルロース樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリビニルアルコール等の熱可塑性樹脂;フェノール樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル、シリコーン樹脂、ウレタン樹脂等の熱硬化性樹脂等が挙げられる。前記無機系材料としては、鉄、シリコン、銅、亜鉛、アルミニウム等の金属、これら金属を含む合金、セラミックス、ガラスなどが挙げられる。
【0107】
基板には予め易接着処理を施しておいてもよい。易接着処理としては、コロナ処理、プラズマ処理、紫外線処理等の親水化処理が挙げられる。また、樹脂、シランカップリング剤、テトラアルコキシシラン等によるプライマー処理を用いてもよい。
【0108】
プライマー層としては、下記式(11)で表される化合物および/またはその部分加水分解縮合物からなる(E)成分を含む下地層形成用組成物を用いて形成された層が好ましい。
【0109】
Si(X
2)
4 ・・・(11)
(ただし、式(11)中、X
2はそれぞれ独立して、ハロゲン原子、アルコキシ基またはイソシアネート基を示す。)
【0110】
上記式(11)中、X
2は、塩素原子、炭素原子数1〜4のアルコキシ基またはイソシアネート基であることが好ましく、さらに4個のX
2が同一であることが好ましい。
【0111】
このような式(11)で示される化合物として、具体的には、Si(NCO)
4、Si(OCH
3)
4、Si(OC
2H
5)
4等が好ましく用いられる。(E)成分は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0112】
プライマー層形成用組成物に含まれる(E)成分は、上記式(11)で表される化合物の部分加水分解縮合物であってもよい。上記式(11)で表される化合物の部分加水分解縮合物は、酸や塩基触媒を用いた一般的な加水分解縮合方法を適用することで得ることができる。ただし、部分加水分解縮合物の縮合度(多量化度)は、生成物が溶媒に溶解する程度である必要がある。(E)成分としては、上記式(11)で表される化合物であっても、上記式(11)で表される化合物の部分加水分解縮合物であってもよく、上記式(11)で表される化合物とその部分加水分解縮合物との混合物、例えば、未反応の上記式(11)で表される化合物が含まれる該化合物の部分加水分解縮合物であってもよい。なお、上記式(11)で表される化合物やその部分加水分解縮合物としては市販品があり、本発明にはこのような市販品を用いることが可能である。
【0113】
また、下地層形成用組成物は、上記(E)成分と、下記式(12)で表わされる化合物(化合物(12)という場合がある)および/またはその部分加水分解縮合物からなる(F)成分とを含む、もしくは、上記(E)成分と上記(F)成分の部分加水分解縮合物(ただし、上記(E)成分および/または上記化合物(12)を含んでもよい)を含む組成物であってもよい。
【0114】
(X
3)
3Si−(CH
2)
p−Si(X
3)
3 ・・・(12)
(ただし、式(12)中、X
3はそれぞれ独立して加水分解性基または水酸基を示し、pは1〜8の整数である。)
【0115】
式(12)で表される化合物は、2価有機基を挟んで両末端に加水分解性シリル基またはシラノール基を有する化合物である。
【0116】
式(12)中、X
3で示される加水分解性基としては、上記X
2と同様の基または原子が挙げられる。上記式(12)で表される化合物の安定性と加水分解のし易さとのバランスの点から、X
3としては、アルコキシ基およびイソシアネート基が好ましく、アルコキシ基が特に好ましい。アルコキシ基としては、炭素原子数1〜4のアルコキシ基が好ましく、メトキシ基またはエトキシ基がより好ましい。これらは、製造上の目的、用途等に応じて適宜選択され用いられる。式(12)中に複数個存在するX
3は同じ基でも異なる基でもよく、同じ基であることが入手しやすさの点で好ましい。
【0117】
式(12)で表される化合物として、具体的には、(CH
3O)
3SiCH
2CH
2Si(OCH
3)
3、(OCN)
3SiCH
2CH
2Si(NCO)
3、Cl
3SiCH
2CH
2SiCl
3、(C
2H
5O)
3SiCH
2CH
2Si(OC
2H
5)
3、(CH
3O)
3SiCH
2CH
2CH
2CH
2CH
2CH
2Si(OCH
3)
3等が挙げられる。(F)成分は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0118】
プライマー層形成用組成物に含まれる成分は、式(12)で表される化合物の部分加水分解縮合物であってもよい。式(12)で表される化合物の部分加水分解縮合物は、式(11)で表される化合物の部分加水分解縮合物の製造において説明したのと同様の方法で得ることができる。部分加水分解縮合物の縮合度(多量化度)は、生成物が溶媒に溶解する程度である必要がある。(F)成分としては、式(12)で表される化合物であっても、式(12)で表される化合物の部分加水分解縮合物であってもよく、式(12)で表される化合物とその部分加水分解縮合物との混合物、例えば、未反応の式(12)で表される化合物が含まれる該化合物の部分加水分解縮合物であってもよい。なお、上記式(12)で示される化合物やその部分加水分解縮合物としては市販品があり、本発明にはこのような市販品を用いることが可能である。
【0119】
また、下地層には、上記式(11)と同様のケイ素を主成分とする酸化膜を得ることができる、各種ポリシラザンを用いてもよい。
【0120】
プライマー層形成用組成物は、通常、層構成成分となる固形分の他に、経済性、作業性、得られるプライマー層の厚さ制御のしやすさ等を考慮して、有機溶剤を含む。有機溶剤は、プライマー層形成用組成物が含有する固形分を溶解するものであれば特に制限されない。有機溶剤としては、本発明の組成物に用いられる溶剤と同様の化合物が挙げられる。有機溶剤は1種に限定されず、極性、蒸発速度等の異なる2種以上の溶剤を混合して使用してもよい。プライマー層形成用組成物が、部分加水分解縮合物や部分加水分解共縮合物を含有する場合、これらを製造するために使用した溶媒を含んでもよい。
【0121】
さらに、プライマー層形成用組成物においては、部分加水分解縮合物や部分加水分解共縮合物を含まないものであっても、加水分解共縮合反応を促進させるために、部分加水分解縮合の反応において一般的に使用されるのと同様の酸触媒等の触媒を配合しておくことも好ましい。部分加水分解縮合物や部分加水分解共縮合物を含む場合であっても、それらの製造に使用した触媒が組成物中に残存していない場合は、触媒を配合することが好ましい。下地層形成用組成物は、上記含有成分が加水分解縮合反応や加水分解共縮合反応するための水を含んでいてもよい。
【0122】
プライマー層形成用組成物を用いて下地層を形成する方法としては、オルガノシラン化合物系の表面処理剤における公知の方法を用いることが可能である。例えば、はけ塗り、流し塗り、回転塗布、浸漬塗布、スキージ塗布、スプレー塗布、手塗り等の方法で下地層形成用組成物を基体の表面に塗布し、大気中または窒素雰囲気中において、必要に応じて乾燥した後、硬化させることで、下地層を形成できる。硬化の条件は、用いる組成物の種類、濃度等により適宜制御される。なお、プライマー層形成用組成物の硬化は、撥水膜形成用組成物の硬化と同時に行ってもよい。
【0123】
プライマー層の厚さは、その上に形成される透明皮膜に耐湿性を付与できる他、基板との密着性を付与でき、また基板からのアルカリ等をバリアできる厚さであれば特に限定されない。
【0124】
本発明の組成物により得られる透明皮膜は、タッチパネルディスプレイ等の表示装置、光学素子、半導体素子、建築材料、ナノインプリント技術、太陽電池、自動車や建物の窓ガラス、調理器具などの金属製品、食器などのセラミック製品、プラスチック製の自動車部品等に好適に製膜することができ、産業上有用である。また、漁網、虫取り網、水槽などにも用いることができる。更に、台所、風呂場、洗面台、鏡、トイレ周りの各部材の物品、シャンデリア、タイルなどの陶磁器、人工大理石、エアコン等の各種屋内設備にも利用可能である。また、工場内の治具や内壁、配管等の防汚処理としても用いることができる。ゴーグル、眼鏡、ヘルメット、パチンコ、繊維、傘、遊具、サッカーボールなどにも好適である。更に、食品用包材、化粧品用包材、ポットの内部、など、各種包材の付着防止剤としても用いることができる。
【実施例】
【0125】
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明する。本発明は以下の実施例によって制限を受けるものではなく、前記、後記の趣旨に適合し得る範囲で適当に変更を加えて実施することも勿論可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。
【0126】
本発明の実施例で得られた皮膜は下記の方法により測定した。
【0127】
(1)接触角の測定
接触角測定装置(協和界面科学社製 DM700)を用い、液滴法(解析方法:θ/2法)で液量:3μLにて、皮膜表面の水の接触角を測定した。
【0128】
(2)耐摩耗性評価
消しゴム付きHB鉛筆(三菱鉛筆社製)を備えたスクラッチ装置を用い、消しゴムが皮膜表面に接した状態で、500gの荷重をかけて40r/minでサンプルを動かすことによって摩耗試験を行った。摩耗回数1000回ごとに接触角を測定し、摩耗試験後の接触角が初期の接触角から初めて15度以上低下したときの回数を測定した。
【0129】
(3)透過率測定(HAZE測定)
JIS K7136に従って、ヘイズメーター(スガ試験機株式会社製、HZ−2)を用いて透過率(HAZE)を測定した。HAZEは下記式により算出され、数値が小さい程皮膜の視認性が良い(透明性が高い)ことを意味する。
HAZE(%)=拡散透過率(%)/[平行光線透過率(%)+拡散透過率(%)]×100
【0130】
実施例1
特開2014−15609号公報の合成例1、2に記載の方法により、下記式(13)で表される化合物a(数平均分子量約8000)を合成した。
【0131】
【化16】
【0132】
上記式(13)において、nは43であり、mは1〜6の整数である。
【0133】
化合物(A)として上記式(13)で表される化合物a、
ポリアルキレングリコール(B)としてフッ素オイル、フォンブリン(登録商標)M60(Solvay社製、数平均分子量12500)、
フッ素系溶剤(C)としてFC−3283(フロリナート、3M社製)を混合し、室温で攪拌して、組成物を得た。該組成物中、化合物aの比率は0.08質量%であり、フッ素オイルM60の比率は0.02質量%である。得られた組成物を、前処理を行ったシリカガラス(イーグルXG、コーニング社製)の上に、スピンコーター(MS−A100、ミカサ社製)を用いて3000rpm/min、20秒間、200μl(組成物)の条件でスピンコーティングを行った。その後、150℃、30minの条件で乾燥を行い、シリカガラス上に透明皮膜を得た。なお、前記前処理として、10質量%水酸化ナトリウム水溶液にシリカガラスを浸し、20分間の超音波洗浄を行った後、純水ですすぎ洗いをした後、純水で10分間の超音波洗浄を行い、表面に水分が残らないように60℃、1時間の条件で乾燥させる処理を行った。
【0134】
実施例2
フッ素オイルM60の比率を0.05質量%に変えたこと以外は実施例1と同様にしてシリカガラス上に透明皮膜を作製した。
【0135】
実施例3
フッ素オイルM60の比率を0.1質量%に変えたこと以外は実施例1と同様にしてシリカガラス上に透明皮膜を作製した。
【0136】
比較例1
化合物(A)として上記式(13)で表される化合物aを0.05質量%、下記式(14)で表されるフッ素オイル、フォンブリン(登録商標)M03(Solvay社製、数平均分子量4000)を0.05質量%、
フッ素系溶剤(C)としてNovec(登録商標)7200(3M社製)を混合し、室温で攪拌して組成物を得た。その後、実施例1と同様にして、シリカガラス上に透明皮膜を作製した。
【0137】
【化17】
【0138】
比較例2
フッ素オイルM60の比率を0.005質量%とし、
フッ素系溶剤(C)としてFC−3283に代えてNovec7200を用いたこと以外は実施例1と同様にしてシリカガラス上に透明皮膜を作製した。
【0139】
比較例3
フッ素オイルM60に代えてフッ素オイルM03を0.02質量%用いたこと以外は比較例2と同様にしてシリカガラス上に透明皮膜を作製した。
【0140】
比較例4
フッ素オイルM60の比率を0.2質量%としたこと以外は実施例1と同様にしてシリカガラス上に透明皮膜を作製した。
【0141】
実施例及び比較例の結果を表1に示す。
【0142】
【表1】
【0143】
表1から、本発明の組成物によれば、耐摩耗性と視認性に優れる撥水撥油皮膜が得られることが分かる。