【文献】
P HEMALATHA; ET AL,REACTIVITY RATIOS OF N-VINYLPYRROLIDONE - ACRYLIC ACID COPOLYMER,AMERICAN JOURNAL OF POLYMER SCIENCE,2014年,V4 N1,P16-23,URL,http://article.sapub.org/10.5923.j.ajps.20140401.03.html
【文献】
Romanian Biotechnological Letters (2012), 17(4), p.7408-7417
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
i)75〜85重量%のN-ビニルピロリドン及びii)15〜25重量%のアクリル酸のモノマー混合物のフリーラジカル開始重合によって得られ、ここで、i)とii)の総量が100重量%に相当する、アニオン生成ポリマーを含む、請求項1から6のいずれか一項に記載の水溶性ポリマー塩。
i)80重量%のN-ビニルピロリドン及びii)20重量%のアクリル酸のモノマー混合物のフリーラジカル開始重合によって得られ、ここで、i)とii)の総量が100重量%に相当する、アニオン生成ポリマーを含む、請求項1から7のいずれか一項に記載の水溶性ポリマー塩。
溶媒中の、水中の、及び溶媒として0.08M塩酸中のポリマーに対して、5重量%〜50重量%の濃度範囲において混和性ギャップがないアニオン生成ポリマーを含む、請求項1から9のいずれか一項に記載の水溶性ポリマー塩。
請求項1から10のいずれか一項に記載の薬剤の水溶性ポリマー塩を調製する方法であって、pH1〜13で水溶性のアニオン生成ポリマー、及びやや溶けにくいカチオン生成活性成分をpH1〜13の水性溶媒に溶解させ、薬剤の水溶性ポリマー塩を溶液から単離する、方法。
アニオン生成ポリマー及びやや溶けにくいカチオン生成活性成分を、初めに固溶体に変換し、固溶体を水で湿潤制御することによって塩形成を生じる、請求項1から10のいずれか一項に記載の薬剤の水溶性ポリマー塩を調製する方法。
【背景技術】
【0002】
多くの薬剤は、水中で非常に低い溶解度を有し、したがって胃及び腸管から吸収することができない。その結果、非常に低い生体利用効率となる。塩基性基を有する薬剤では、対応する塩を、酸との反応によって形成することができ、上記塩には、より良い溶解度を有するものもある。この目的では、一般に低分子量の酸又はアルカリが使用される。最も一般的な酸は、塩酸、硫酸、酢酸、クエン酸、酒石酸、フマル酸、マレイン酸、マロン酸、コハク酸、及びリン酸である。しばしば、薬剤酸又は薬剤塩基の溶解度と、特定の化合物との塩の溶解度との間にほぼ差はない。この難溶性(poor solubility)の原因は、通常、塩がエネルギー的に好ましい状態の、非常に安定な結晶格子を形成するためであり、その結果として、溶解する傾向が低い。さらに、水和の結果としてのエネルギー利得が低い場合、溶解度はさらに低くなる。
【0003】
薬剤とポリマー酸又はポリマー塩基との塩が、原則としてこれまでに製造されてきたが、広いpH範囲にわたって、特に生理学的に関連するpH範囲1〜8において不溶であるか、又は溶液中で、酸、塩基、若しくは塩として高粘性である、ポリマーがしばしば用いられた。
【0004】
ポリマーが水性溶液(aqueous solution)中で高粘性である場合、例えば、錠剤などの固体投与形態からの活性成分放出を同様に遅らせる。塩が溶解すると、ゲル又は高粘性溶液が錠剤の表面及び空隙に形成され、錠剤中心部(コア)への水のさらなる浸透を妨げ、崩壊を遅らせる。この効果、及びまた高粘性を有する領域全体の薬剤分子の拡散係数の低減が、薬剤の放出を遅らせる。この点で、ゲル形成ポリマーは、やや溶けにくい(sparingly soluble)薬剤を、急速に溶解させ、胃全体及び小腸表面に吸収させる、速放性形態を製造するのに適さない。
【0005】
EP0211268には、放出を遅らせ、皮膚上塗布に用いられるポリマー性ポリアニオンとのミノキシジル塩が記載されている。ミノキシジルは、塩形成可能な4つの基を含む薬剤であり、対応するポリマー塩は、塩酸塩よりも溶けにくかった。塩形成可能な多くの基は、塩酸塩と比較して、塩の解離をかなり減らし、溶解度を改善しない。経口適用は記載されていない。
【0006】
US4,997,643には、局所適用のための、カルボキシル基含有成分とのポリマー塩を含む、生体適合性膜形成送達システムが記載されている。用いられた薬剤は、同様に、前述された特殊な特徴を有するミノキシジルである。経口適用は記載されていない。
【0007】
US4,248,855では、塩基性薬剤及び水不溶性ポリマーの塩を含み、徐放性効果を有する液体製剤が請求されている。水不溶性ポリマーを用いた結果、製剤は、広いpH範囲にわたって、迅速な放出又は高い溶解度を示さない。
【0008】
US5,736,127より、塩は、塩基性薬剤、及びゲル形成ポリアクリロニトリルの部分加水分解によって得られるポリマーから形成され得ることが知られている。高分子量のために、ポリマーはゲル形成し、その結果として活性成分の放出を遅らせる。速放性錠剤への適応性は説明されていない。
【0009】
US4,205,060には、塩基性薬剤とカルボキシル基含有ポリマーとの塩を中心に含み、水不溶性ポリマーで囲まれた、放出を遅らせるマイクロカプセルが記載されている。カルボキシル基含有ポリマーは、用いられる可溶性薬剤の放出を減らす。
【0010】
ラニチジンとポリカルボン酸との塩がEP0721785に記載されている。ポリカルボン酸は、ラニチジンと結合し、その苦味を減らそうとする。しかし、ラニチジン低分子量塩は容易に溶解でき、ポリカルボン酸によってラニチジンの流動性及び拡散が単に制限されるにすぎないことを意味し、ラニチジンが、苦味受容体に急速には到達しないことを意味する。
【0011】
WO2007/141182には、やや溶けにくい活性成分を可溶化させるスルホン酸基を含む酸性モノマーと酢酸ビニルとのコポリマーを用いることを記載している。しかし、このコポリマーは、スルホン酸基の極度な酸性特性のために、適用する際かなり不利であり、なぜなら、接触する全ての金属性材料を急速に腐食させるからである。
【0012】
US4,853,439には、水不溶性活性成分とN-ビニルピロリドンのホモポリマー又はコポリマーとの水溶性複合体が記載されている。コポリマーの中でも、記載されているのは、ごく一般的な言い方をすると、アクリル酸などの酸基含有モノマーを含むことができるものである。しかし、特に記載されているものは、色、純度、及び粘度などの物理的特徴のために薬剤使用者に受け入れられない、無水マレイン酸とのコポリマーだけである。
【0013】
H. Uelzmann、Journal of Polymer Science、XXXIII巻、377〜379ページ(1958)には、詳細は省くが、比較的高分子量の、様々なモル比の、アクリル酸とN-ビニルピロリドンとのコポリマーの可能な使用が記載されており、AA:VPモル比1:1又は1:2のこうしたコポリマーは、濃縮形態(50重量%濃度(% strength by weight))であるものの、水に可溶である。しかし、例えば、混合物5重量%濃度まで水で希釈した場合、コポリマーは沈殿する。コポリマーはまた、希塩酸に不溶でもある。こうした溶解度の性質は、薬剤活性成分の溶解度を改善する用途のためには、受け入れられない。
【0014】
N-ビニルピロリドンのホモポリマーは、長い間、溶解度及び生体利用効率を改善するための、やや溶けにくい活性成分の固溶体(solid solution)用のポリマーマトリックスとして知られてきたが、固溶体は、長期安定性の点で不利である。固溶体は、活性成分が再結晶するという点で、熱力学的安定性が不十分なことが多い。しかし、活性成分の再結晶は、放出プロファイル及び生体利用効率に大きな影響を及ぼすことがあるので、熱力学的安定性が不十分なシステムは、薬物安全性の観点から不利である。
【0015】
高い比率の酸基含有モノマーを有するポリマー性活性成分塩が、WO2009/074609より知られている。特に、ポリマー性対イオンは、アクリル酸などのカルボキシル基含有モノマーを少なくとも80重量%含むと記載されている。しかし、これらの高カルボキシル基含有ポリマーは、適用においてその良好な溶解度にもかかわらず、不利であることが示された。例えば、高カルボキシル基含有ポリマーは、熱応力の下、脱炭酸(decarboxylate)する傾向がある。高カルボキシル基含有ポリマーはまた、保存安定性に関して不利である。カルボキシル基の高い含量のために、過剰の酸基が相互作用し、それによって影響を受けやすい結合部位において活性成分に損傷を与える危険性がより大きくなる。この他に、特に純粋なポリアクリル酸の場合ではあるが、ポリマーの構造に応じて、噴霧乾燥による塩の調製において、水性溶液の粘性も不利になる可能性があり、なぜなら清澄噴霧溶液を得るために、噴霧プロセスの前に加熱する必要があるか、又はかなり希釈された溶液しか使用することができないからである。
【0016】
配合物(製剤)の分解又は変色に関して、活性成分又は活性成分塩の安定性の欠如は、製薬会社の見解から受け入れられるものではなく、食品補助剤、又は動物飼料の分野、又は化粧品においても同様である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
ポリマー塩は水溶性であり、これは、標準条件下で対応する塩酸塩の水への溶解度よりも高い水への溶解度を有することを意味する。特に、水への溶解度は、塩酸塩の水への溶解度よりも50%超高い。
【0022】
さらに、ポリマー塩を調製する方法、またポリマー塩を使用する方法(ポリマー塩の使用)も明らかにした。
【0023】
本発明において、好適な活性成分は、水にやや溶けにくいカチオン生成活性成分である。
【0024】
「カチオン生成」は、活性成分がカチオンを生成可能であることを意味し、「水にやや溶けにくい」は、本発明において、活性成分が、非荷電形態で、又は塩酸塩として、水、人工腸液、又は胃液中で(20+/-5℃、及び標準大気圧1013.25hPaで)、0.1%(m/m)未満の溶解度を有するものであることを意味する。
【0025】
原則として、水にやや溶けにくく、塩形成に十分な塩基度を有する、全ての薬剤活性成分、栄養補助食品、食品、又は飼料添加物が好適である。
【0026】
好ましいカチオン生成活性成分は、塩形成可能な、少なくとも1つ、多くても2つの基を有する。
【0027】
特に、カチオン生成活性成分は薬剤活性成分である。
【0028】
記載された塩形成の結果として、中性形態、又は対応する低分子量塩のどちらでも水に不溶である薬剤を溶解させることも可能である。これらの薬剤では、胃及び腸管での溶解が非常に遅く、そのために吸収が制限され、その結果として、しばしば低い生体利用効率となる(生物薬剤学分類システム、クラスII活性成分に準拠(Amidonら、Pharm. Res. 12、413〜420))。
【0029】
ここで、薬剤活性成分は、任意の適応症の領域(indication field)からであってもよい。
【0030】
ここで、示される例には、降圧剤、ビタミン剤、細胞増殖抑制剤、特にタキソール、麻酔薬、神経弛緩剤、抗うつ剤、抗生物質、抗真菌剤、殺菌剤、化学療法剤、泌尿器系薬(urologics)、血小板凝集阻害剤、スルホンアミド、鎮痙剤、ホルモン剤、免疫グロブリン、血清、甲状腺治療薬、向精神薬、パーキンソン病治療薬、及び他の耐多動症、眼科用剤、神経障害の製剤、カルシウム代謝調整剤、筋肉弛緩剤、睡眠薬、抗脂質異常症薬、肝臓治療薬、冠状動脈治療薬、強心剤、免疫治療薬、調節ペプチド、及びそれらの阻害剤、催眠薬、鎮静剤、婦人科の薬、痛風治療剤、線維素溶解薬、酵素製剤、及び輸送タンパク質、酵素阻害剤、催吐剤、体重減少剤、かん流促進剤、利尿剤、診断用薬、コルチコイド、コリン作動薬、胆管治療薬、抗喘息薬、気管支結石薬(broncholytic)、β受容体遮断薬、カルシウム拮抗剤、ACE阻害剤、動脈硬化症治療薬、消炎剤、抗凝血剤、抗低血圧薬、抗低血糖症薬、降圧剤、抗線維素溶解薬、抗てんかん薬、制吐薬、解毒剤、抗糖尿病薬、不整脈治療薬、抗貧血薬、抗アレルギー薬、駆虫薬、鎮痛剤、蘇生薬、アルドステロン拮抗薬、又は抗ウイルス活性成分、又はHIV感染症及びAID症候群の治療用活性成分が挙げられる。
【0031】
本発明で示されたアニオン生成ポリマーは、アニオンを生成可能なポリマーである。本発明によれば、この特性は、カルボキシル基の存在に基づくものである。
【0032】
本発明のアニオン生成ポリマーは、pH1〜pH13のpH範囲全体においてpHに関係なく、全て水溶性である。水溶性は、少なくとも5%(m/m)のポリマーが明らかに水に可溶であることを意味する。清澄な溶液において、濁りがないことは視覚的に明らかである。
【0033】
特に、アニオン生成ポリマーは、3〜11のpH範囲で10%(m/m)より高い水への溶解度を有する。
【0034】
水への溶解度の全てのデータは、20±5℃及び標準大気圧1013.25hPaの標準条件下での、本発明で用いられる全てのアニオン生成ポリマーに関する。
【0035】
データ(m/m)は、質量分率を示す。
【0036】
本発明のアニオン生成ポリマーでは、溶媒中の、水中の、及び溶媒として0.08M塩酸中のポリマーに対して、5重量%〜50重量%の濃度範囲において混和性ギャップがない。「混和性ギャップがない」とは、ポリマーが溶媒中で明らかに可溶であり、したがって濁りがないことが視覚的に明らかであることを意味する。
【0037】
本発明で用いられるアニオン生成ポリマーは、水中で、保存安定性でもある、視覚的に清澄な溶液を生成する。「保存安定性」は、上記濃度範囲で、40℃及び大気圧で保存された水性ポリマー溶液が、6ヶ月後に沈降しないことを意味する。「沈降しない」は、溶液の調製で用いられるポリマーの1重量%未満が、溶液から沈殿することを意味する。水性溶液媒体において示された条件下で保存する際、用いられるアニオン生成ポリマー量に対して、0.1重量%未満沈殿するアニオン生成ポリマーが好ましい。
【0038】
上記の全てのアニオン生成ポリマーは、溶媒中で、特に水中で非ゲル形成である。非ゲル形成は、アニオン生成ポリマーが、3次元網目構造を形成せず、そのために溶媒分子が浸透し得る孔を含まないことを意味する。
【0039】
アニオン生成ポリマーは、30未満、特に好ましくは20未満の、5重量%水性溶液中で測定されたフィケンチャーK値を有する。このK値は、溶液の粘度の特徴を示し、さらにはこのポリマーの分子量の尺度となる。フォックスの式によって計算されたガラス転移温度は、140〜160℃の範囲である。
【0040】
【数1】
x
i=ポリマー中のコモノマーの質量分率
T
G,i=対応するコモノマーのホモポリマーのガラス転移温度
T
G=コポリマーのガラス転移温度
【0041】
ガラス転移温度は、昇温速度20K/分で、示差走査熱量計によって測定することもでき、130〜170℃の範囲である。
【0042】
前述したように、非荷電形態で、又は塩酸塩として、水、人工腸液、又は胃液中で0.1%(m/m)未満の溶解度を有するカチオン生成活性成分からなる水にやや溶けにくい活性成分の、水溶性ポリマー塩に好適なアニオン生成水溶性ポリマーは、3〜11のpH範囲全体で10%(m/m)より高い水への溶解度を有し、i)70〜90重量%のN-ビニルピロリドン及びii)10〜30重量%のアクリル酸のモノマー混合物のフリーラジカル開始重合によって得られ、i)とii)の総量が100重量%に相当する、ポリマーである。
【0043】
3〜11のpH範囲全体で10%(m/m)より高い水への溶解度を有するアニオン生成ポリマーであって、i)75〜85重量%のN-ビニルピロリドン及びii)15〜25重量%のアクリル酸のモノマー混合物のフリーラジカル開始重合によって得られ、i)とii)の総量が100重量%に相当する、アニオン生成ポリマーが好ましい。
【0044】
3〜11のpH範囲全体で10%(m/m)より高い水への溶解度を有するアニオン生成ポリマーであって、i)80重量%のN-ビニルピロリドン及びii)20重量%のアクリル酸のモノマー混合物のフリーラジカル開始重合によって得られ、i)とii)の総量が100重量%に相当する、アニオン生成ポリマーを用いることが特に好ましい。
【0045】
ポリマーは、従来通り、それ自体、フリーラジカル重合によって調製することができる。重合は、好ましくは、有機溶媒中、好ましくはアルコール中、特にイソプロパノール中で溶液重合として実施される。こうした方法は、それ自体、当業者に既知である。好適な開始剤は、例えば、有機過酸化物、例えば第三級ブチルペルピバレート(perpivalate)又はアルコール可溶性アゾ開始剤である。
【0046】
重合は、通常、温度50〜130℃、及び圧力0.1〜1.5MPaで行うことができる。
【0047】
連鎖移動剤、例えば次亜リン酸ナトリウムの存在下で重合を実施することも推奨される。
【0048】
重合は、連続的に又はバッチプロセスで実施することができ、ポリマーは、好ましくは供給プロセスによって得られる。
【0049】
本発明の一実施形態によれば、初めに、コポリマーのナトリウム塩が、N-ビニルピロリドン及びアクリル酸ナトリウムのフリーラジカル共重合によって調製され、これは、次いでイオン交換によって遊離酸コポリマーに変換することができる。
【0050】
ポリマー溶液の固体形態への変換は、従来の方法によって、噴霧乾燥、凍結乾燥、又はローラ乾燥によって実施することもできる。
【0051】
特に好ましい実施形態によれば、ポリマーは、10より大きく、20未満の範囲のK値を有する。
【0052】
本発明のポリマーを調製する間、これらが、活性成分とやや溶けにくい塩をもたらす可能性がある低分子量アニオン、例えば、塩化物イオン、硫酸イオンなどを有さないことを確認するのが好ましい。
【0053】
本発明の一実施形態によれば、活性成分の水溶性塩は、pH1〜13で水に可溶なアニオン生成ポリマー、及び非荷電形態で、又は塩酸塩として、水、人工腸液、又は胃液中で0.1%(m/m)未満の溶解度を有する、水にやや溶けにくいカチオン生成活性成分を水性溶液媒体に溶解させ、ポリマー性活性成分塩を溶液から単離することによって得られる。溶解媒体は、溶媒混合物であってもよい。水性溶解媒体は、溶解媒体が、溶媒として水のみからなるか、又は水と有機溶媒との混合物であることを意味する。水性溶解媒体中の好適な有機溶媒(混合物)は、2つの分離相を形成しない、水と限りなく混和性の有機溶媒である。特に好適なのは、メタノール、エタノール、比率9:1のエタノール-イソプロパノール、イソプロパノール、テトラヒドロフラン、アセトン、アセトニトリル、若しくはジメチルホルムアミド、又はそれらの混合物である。
【0054】
本発明の一実施形態によれば、カチオン生成活性成分及びアニオン生成ポリマーは、有機溶媒を含まない水のみに一緒に溶解する。アニオン生成ポリマーの存在は、活性成分が可溶化するように作用するので、活性成分の難溶性によって、この手順が妨げられることはない。また、圧力下、高温(30〜200℃)で溶解することもできる。
【0055】
溶液の固形分含量は、5〜60重量%、好ましくは5〜40重量%の範囲の固形分含量であるように選択される。
【0056】
自明なように、水性溶液中に存在するポリマー性活性成分塩は、乾燥させずに、ドロップ、シロップ、又はジュースなどの液体薬剤投与形態に加工することができる。この場合、一般に、さらなる医薬品助剤が水性溶液に直接添加される。
【0057】
本発明の一実施形態によれば、ポリマー性活性成分塩は、前述したように溶液を乾燥させることによって単離される。原則として、例えば、噴霧乾燥、流動層乾燥、ドラム乾燥、凍結乾燥、真空乾燥、ベルト乾燥、ローラ乾燥、キャリアガス乾燥、又は蒸発などの全ての種類の乾燥が可能である。
【0058】
本発明の好ましい実施形態によれば、固体活性成分塩は、噴霧乾燥によって調製される。溶液は、この場合、それ自体既知の方法で、単成分ノズル又は二成分ノズルなどの従来の噴霧装置を用いて、又はディスクを介して霧状にされ、並流又は向流で通すことができる乾燥ガスを用いて噴霧乾燥される。好適な乾燥ガスは、空気、又は好ましくは窒素などのガスである。乾燥ガスの塔注入温度は、120〜200℃の範囲、好ましくは150〜170℃の範囲であることができる。乾燥ガスの開始温度は、噴霧溶液の濃度、塔の形状、及び用いられる活性成分の種類に依存する。
【0059】
原則として、塩形成への変換は、混合機内で、水又は水性溶媒媒体で湿潤させることによる、湿式造粒法として実施することもできる。より広い意味での顆粒は、湿式押出、続いて球状化によって製造することもできる。次いで、得られるペレットを、多回剤形として硬カプセルに充填することができる。
【0060】
本発明のさらなる実施形態によれば、ポリマー性薬剤塩は、冷却又は非溶媒の添加の結果として、沈殿によって溶液から得られる。活性成分及びポリマーを、水又は有機溶媒に溶解させ、次いで温度を急速に下げるか、又は水と混和性の非溶媒、若しくは有機溶媒を添加する。これにより、ポリマー塩の沈殿が生じ、次いで沈殿物を濾過するか、又は遠心分離し、乾燥させる。好適な非溶媒は、例えば、アセトン、イソプロパノール、又はn-ブタノールである。
【0061】
本発明のさらなる実施形態によれば、ポリマー塩は、溶融プロセスによって得ることができる固溶体を介して調製される。カチオン生成活性成分の溶解度が、産業用途に好適な水性有機溶解媒体において低すぎる場合に、本実施形態が有用である。本実施形態によれば、アニオン生成ポリマー及びカチオン生成活性成分は、初めに互いに溶融することができる。溶融ステップは、好ましくは二軸押出成形機などの押出成形機で起こる。温度及びせん断力を同時に加えることによって、成分を溶融物に溶解させることができ、冷却後、活性成分が、分子レベルで分散され、ポリマーマトリックスに組み込まれて存在している非晶固溶体を得ることができる。こうした溶融において選択される温度は、中でも活性成分の融点、それによって得られる混合物の融点に依存する。
【0062】
こうして得られた固溶体は、塩形成を成し遂げるために、下流ステップで、制御されて、水と接触するようになる。これは、流動層において、ワンポット処理機(one-pot processor)(混合し、造粒し、乾燥させることができる)において、混合機-造粒機において、例えば、Diosna混合機において、又は押出成形機において湿潤させることによって実施することができる。
【0063】
このような制御された湿潤ステップは、好ましくは流動層で実施される。全ての従来の流動層装置は、この目的に好適である。この場合、固溶体は、初めに流動層に仕込まれ、水で噴霧することによって塩形態に変換される。
【0064】
湿潤後、水を再度乾燥させ、その結果、乾燥固体ポリマー塩が形成され、場合によって、定められた残留含水量に調節することもできる。例えば、湿潤ステップの他に、ポリマー塩粒子の造粒も実施される場合、さらに助剤を噴霧溶液に添加することができる。後の投与形態、一般的には錠剤又はカプセル剤からの放出を変更できる助剤も用いることができる。
【0065】
乾燥プロセスに応じて、固体ポリマー性活性成分塩は、微粉末又は顆粒として得られる。典型的には、平均粒径は、平均体積径として5〜500μmの範囲である。本発明のポリマー性活性成分塩は常に非晶であり、その結果、低分子量塩の場合などの、外部の影響のために、又は保存の間に、非晶状態が熱力学的に安定な結晶状態に変換し得る問題が避けられる。したがって、本発明の塩の非晶状態は、こうした物質にさらに低いエネルギー状態が存在しないため、熱力学的に安定な状態である。したがって、ポリマー塩は、低分子量塩とは原則として異なる。
【0066】
ポリマー性活性成分塩の非晶状態は、粉末X線回折によって確かめることができる。ポリマー性活性成分塩の、いわゆる「X線的非晶」状態は、ポリマー性活性成分塩の結晶性比率が5重量%未満であることを意味する。
【0067】
ポリマー塩の非晶状態はまた、DSCサーモグラム(示差走査熱量計)を用いて、調べることもできる。本発明のポリマー塩は、溶融ピークを有さないが、ガラス転移温度のみを有する。ガラス転移温度は、典型的には昇温速度20K/分で測定される。どのガラス転移温度が存在するかは、本質的にカチオン生成活性成分に依存する。
【0068】
塩形成の確認は、マイクロ熱量計を用いて実施することができる。関連する専門家の文献において、100〜500kJ/molの範囲がイオン-イオン相互作用に典型的なエネルギーに特定され、一方で、水素結合は、典型的には20〜50kJ/molの範囲の結合エネルギーを有し、イオン-双極子相互作用は15kJ/molの範囲であり、双極子-双極子相互作用又はファンデルワールス相互作用は2kJ/molの範囲である。
【0069】
活性成分ポリマー化合物の溶解エンタルピーは、溶解熱量計(溶解熱量測定)によって測定することができる。溶解熱量測定について、溶解エンタルピーを測定するために、様々に調製された配合物を溶媒に溶解させる。溶解エンタルピーに応じて、結合の種類を決定することができる。イオン結合を有する物質は、他の種類の結合、水素ブリッジ又はファンデルワールス相互作用を有する生成物とは異なる溶解エンタルピーを有するはずである。
【0070】
結合エネルギーはまた、いわゆる等温滴定熱量計(ITC)又は反応熱量計で測定することもできる。この場合、反応パートナーが初めに仕込まれ、第2の反応パートナーが連続的に添加される。それぞれの添加ステップの後、得られる温度変化が記録され、補償される。
【0071】
測定された結合エンタルピーは、イオン-イオン相互作用の範囲である。したがって、ポリマー性活性成分塩は、真の塩である。
【0072】
低分子量塩の場合にしばしば起こる、塩があまり結晶化せず、あるいは低融点をもたらし、取り扱いをより難しくするという問題は、説明されたポリマー塩により避けられる。
【0073】
本発明の固体剤形の調製の間に、従来の医薬品助剤を、場合により同時に加工することができる。医薬品助剤は、充填剤、軟化剤、可溶化剤、結合剤、シリケート、及びまた崩壊剤、及び吸着剤、潤滑剤、流動剤、染料、安定剤、例えば、酸化防止剤、湿潤剤、防腐剤、剥離剤、香料、又は甘味料、好ましくは充填剤、軟化剤、及び可溶化剤の類の物質の形態をとる。
【0074】
添加された充填剤は、例えば、マグネシウム、アルミニウム、若しくはケイ素の酸化物、炭酸チタン若しくは炭酸カルシウム、リン酸カルシウム若しくはリン酸マグネシウムなどの無機充填剤、又はラクトース、スクロース、ソルビトール、若しくはマンニトールなどの有機充填剤であってもよい。
【0075】
好適な軟化剤は、例えば、トリアセチン、クエン酸トリエチル、モノステアリン酸グリセロール、低分子量のポリエチレングリコール又はポロキサマーである。
【0076】
好適な追加の可溶化剤は、11より大きいHLB値(親水親油バランス、Hydrophilic Lipophilic Balance)を有する界面活性物質、例えば、40のエチレンオキシド単位でエトキシ化された水添ヒマシ油(Cremophor(登録商標)RH40)、35のエチレンオキシド単位でエトキシ化されたヒマシ油(Cremophor EL)、ポリソルベート80、ポロキサマー、又はラウリル硫酸ナトリウムである。
【0077】
用いられる潤滑剤は、アルミニウム、カルシウム、マグネシウム、及びスズのステアリン酸塩、並びにケイ酸マグネシウム、シリコーンなどであってもよい。
【0078】
用いられる流動剤は、例えば、タルク又はコロイド状二酸化ケイ素であってもよい。
【0079】
好適な結合剤は、例えば、微結晶性セルロースである。
【0080】
崩壊剤は、架橋ポリビニルピロリドン又は架橋カルボキシメチルスターチナトリウムであってもよい。安定剤は、アスコルビン酸又はトコフェロールであってもよい。
【0081】
染料は、投与形態を着色するためには、例えば、酸化鉄、二酸化チタン、トリフェニルメタン染料、アゾ染料、キノリン染料、インジゴチン染料、カロテノイドであり、透明性(transparency)を増し、染料を節約するためには、二酸化チタン又はタルクなどの乳白剤である。
【0082】
本発明の塩は、多様な投与形態、例えば、錠剤、カプセル剤、顆粒、粉末、薬物送達システム、溶液、坐薬、経皮システム、クリーム、ゲル、ローション、注射液、ドロップ、ジュース、シロップなどをもたらすように配合(製剤化)することができる。
【0083】
放出は、ポリ酢酸ビニルホモポリマー又はこうしたポリ酢酸ビニルホモポリマーの配合物などの熱可塑性放出遅延剤を添加することによって、またアクリレートを基にした、既知の遅延放出ポリマー、RS、RL、又はNE若しくはNM型のEudragit(登録商標)によって、遅らせることができる。このように、確実に、難溶性の薬剤の徐放性形態を製造することができる。
【0084】
ポリマー性アニオン成分及びカチオン性活性成分で構成される、本発明のポリマー塩は、投与形態、特に錠剤成形性に関して、優れた加工性を有する。したがって、200Nより大きい耐破壊性を有する、直径10mm及び重量300mgの錠剤を製造することが可能である。したがって、ポリマー性アニオンは、同時に結合剤として作用し、錠剤配合物に、並外れた可塑性を付与する。対照的に、低分子量塩は、しばしば非常に砕けやすく、錠剤成形性に乏しい。
【0085】
本発明の活性成分のポリマー塩は、良好に粒状化され、圧縮されて、水性媒体中の高い溶解度のために、活性成分を非常に迅速に放出することになる錠剤をもたらすことができる。溶解度が改善された結果、生体利用効率がかなり改善されることになる。溶解度は、通常、0.05〜5%(薬剤の重量部/水の重量部)である。さらに、生体利用効率は、かなり再現可能であり、すなわち、比較的僅かな個体間変動がある。
いくつかの実施形態を以下に示す。
項1
非荷電形態で、又は塩酸塩として、水、人工腸液、又は人工胃液中で0.1%(m/m)未満の溶解度を有するカチオン生成薬剤と、1〜13のpH範囲で少なくとも5%(m/m)の水への溶解度を有するアニオン生成水溶性ポリマーであって、i)70〜90重量%のN-ビニルピロリドン及びii)10〜30重量%のアクリル酸のモノマー混合物のフリーラジカル開始重合によって得られ、i)とii)の総量が100重量%に相当する、アニオン生成水溶性ポリマーとからなる、水にやや溶けにくい薬剤の水溶性ポリマー塩。
項2
アニオン生成ポリマーが非ゲル形成である、項1に記載の水溶性ポリマー塩。
項3
薬剤が、塩形成可能な少なくとも1つ、多くても2つの基を有する、項1又は2に記載の水溶性ポリマー塩。
項4
水溶性塩が、薬剤及び薬剤の対応する塩酸塩よりも高い水への溶解度を有する、項1から3のいずれか一項に記載の水溶性ポリマー塩。
項5
5重量%の水性溶液中のアニオン生成ポリマーが、30未満のフィケンチャーK値を有する、項1から4のいずれか一項に記載の水溶性塩。
項6
5重量%の水性溶液中のアニオン生成ポリマーが、20未満のフィケンチャーK値を有する、項1から5のいずれか一項に記載の水溶性塩。
項7
i)75〜85重量%のN-ビニルピロリドン及びii)15〜25重量%のアクリル酸のモノマー混合物のフリーラジカル開始重合によって得られ、ここで、i)とii)の総量が100重量%に相当する、アニオン生成ポリマーを含む、項1から6のいずれか一項に記載の水溶性ポリマー塩。
項8
i)80重量%のN-ビニルピロリドン及びii)20重量%のアクリル酸のモノマー混合物のフリーラジカル開始重合によって得られ、ここで、i)とii)の総量が100重量%に相当する、アニオン生成ポリマーを含む、項1から7のいずれか一項に記載の水溶性ポリマー塩。
項9
3〜11のpH範囲で10%(m/m)より高い水への溶解度を有するアニオン生成ポリマーを含む、項1から8のいずれか一項に記載の水溶性ポリマー塩。
項10
溶媒中の、水中の、及び溶媒として0.08M塩酸中のポリマーに対して、5重量%〜50重量%の濃度範囲において混和性ギャップがないアニオン生成ポリマーを含む、項1から9のいずれか一項に記載の水溶性塩。
項11
項1から10のいずれか一項に記載の薬剤の水溶性ポリマー塩を調製する方法であって、pH1〜13で水溶性のアニオン生成ポリマー、及びやや溶けにくいカチオン生成活性成分をpH1〜13の水性溶媒に溶解させ、ポリマー性薬剤塩を溶液から単離する、方法。
項12
ポリマー性活性成分塩を乾燥によって溶液から単離する、項11に記載の方法。
項13
ポリマー性薬剤塩が、冷却又は非溶媒の添加の結果として、沈殿によって溶液から得られる、項11に記載の方法。
項14
アニオン生成ポリマー及びやや溶けにくいカチオン生成活性成分を、初めに固溶体に変換し、固溶体を水で湿潤制御することによって塩形成を生じる、項1から10のいずれか一項に記載の薬剤の水溶性ポリマー塩を調製する方法。
項15
非荷電形態で、又は塩酸塩として、水、人工腸液、又は人工胃液中で0.1%(m/m)未満の溶解度を有するカチオン生成薬剤と、1〜13のpH範囲で5%(m/m)より高い水への溶解度を有するアニオン生成水溶性ポリマーであって、i)70〜90重量%のN-ビニルピロリドン及びii)10〜30重量%のアクリル酸のモノマー混合物のフリーラジカル開始重合によって得られ、i)とii)の総量が100重量%に相当する、アニオン生成水溶性ポリマーとからなる、水にやや溶けにくい薬剤の水溶性ポリマー塩を含む剤形。
項16
医薬品助剤をさらに含む、項15に記載の剤形。
項17
圧縮によって調製される、項15又は16に記載の剤形。
【実施例】
【0086】
略記/方法
CD水=完全な脱塩水
別段の指示がなければ、百分率データは、重量パーセントに関する。
粉末X線回折測定装置:一次側多管式試料チャンバ、Cuアノード、発散スリットV20検出器、Sol-X検出器を具備したV20を備えたAdvance D8シリーズ2
濁り度は、ISO7027に準拠して、散乱光と透過光の比率を測定することによって測定された。
ガラス転移温度は、DSCによって昇温速度20K/分で測定された。
【0087】
[実施例1]
N-ビニルピロリドン(VP)80重量%とアクリル酸(AA)20重量%とのコポリマー
装置:
アンカー撹拌機、還流凝縮器、窒素注入口(液面を経由)、及び温度制御油浴を備えた2L反応器。それぞれ1000mlの2個の供給容器。重合容器内、及び油浴内のPt100センサーによる温度測定。
【0088】
【表1】
【0089】
初めの仕込みを、穏やかな窒素流の下、内部温度75℃に加熱した。内部温度75℃に到達すると、供給2の一部の量を添加した。次いで、供給1及び供給2の残りの量を開始した。供給1を6時間かけて計量供給し、供給2の残りの量を9時間かけて計量供給した。
【0090】
次いで、イソプロパノール溶媒を置換するために、反応混合物を他の蒸気蒸留に付した。
固形分含量SC[重量%] 30.5
K値(水中で5%濃度(% strength)) 16.5
FNU値(水中で5%濃度) 0.7
Tg(℃) 165(DSCによって測定、計算値150℃上記参照)
イソプロパノール(ppm) 2800
外観:無色透明の低粘性水性溶液
【0091】
[実施例2]
本実施例は、供給1を4時間かけて計量供給し、供給2の残りの量を6時間かけて計量供給したことを除いて、実施例1と同様に実施した。
【0092】
供給2が完了した後、内部温度75℃で、重合を1時間続けた。
SC(重量%) 30.8
K値(水中で5%濃度) 17.8
FNU値(水中で5%濃度) 0.6
Tg(℃) 164(DSC、20K/分)
イソプロパノール(ppm) 2600
外観:無色透明の低粘性水性溶液
【0093】
[実施例3]
VP70重量%とAA30重量%とのコポリマー
調製は、実施例1と同様に実施した。但し、供給1は、ビニルピロリドン180g及びアクリル酸90gを含んだ。
SC(重量%) 30.4
K値(水中で5%濃度) 15.8
FNU値(水中で5%濃度) 1.5
Tg(℃) 144(計算値)
イソプロパノール(ppm) 2200
外観:無色透明の低粘性水性溶液
【0094】
[実施例4]
VP90重量%とAA10重量%とのコポリマー
調製は、実施例1と同様に実施した。但し、供給1は、ビニルピロリドン240g及びアクリル酸30gを含んだ。
SC(重量%) 30.3
K値(水中で5%濃度) 16.7
FNU値(水中で5%濃度) 0.6
Tg(℃) 156(計算値)
イソプロパノール(ppm) 2500
外観:無色透明の低粘性水性溶液
【0095】
[実施例5]
VP85重量%とAA15重量%とのコポリマー
調製は、実施例1と同様に実施した。但し、供給1は、ビニルピロリドン225g及びアクリル酸45gを含んだ。
SC(重量%) 30.5
K値(水中で5%濃度) 16.4
FNU値(水中で5%濃度) 0.7
Tg(℃) 153(計算値)
イソプロパノール(ppm) 2100
外観:無色透明の低粘性水性溶液
【0096】
比較例A
VP50重量%とAA50重量%とのコポリマー
調製は、実施例1と同様に実施した。但し、供給1は、N-ビニルピロリドン120g及びアクリル酸150gを含んだ。
SC(重量%) 31.5
K値(水中で5%濃度) 12.8
FNU値(水中で5%濃度) 3.1
Tg(℃) 132(計算値)
【0097】
こうして得られた、FNU値3.1を有するポリマーは、視覚的調査においてもはや「無色透明」ではなく、幾分か濁っていた。
【0098】
[実施例6]
噴霧乾燥による活性成分塩の調製
実施例1のコポリマーVP/AA(80/20)750gをハロペリドール(塩基)83.3gと共に、水6524.7g中に秤量し、室温で撹拌しながら溶解させた。溶液は、全固形分含量11.3重量%を含んだ。その後、溶液を、以下の条件の下、実験室の噴霧塔(laboratory spray tower)で噴霧乾燥させた。
- 乾燥ガス:窒素 30Nm
3/h
- 注入温度:155℃
- 注出温度:75℃
- 噴霧ノズル:1.4mm 2成分ノズル
- 噴霧ガス/噴霧圧:窒素/0.2MPa絶対圧
- 液体流量:452.2g/h
- 生成物分離機:サイクロン
【0099】
水性溶液から噴霧乾燥後の噴霧乾燥ハロペリドール-VP/AAポリマー塩の特性
残留含水量(105℃で測定) 3.38重量%
薬剤含量(UV/VIS248nmで測定) 11.1重量%
薬剤の状態(XRD) X線的非晶
ガラス転移温度 151℃(融点なし)昇温速度20K/分で測定
DSCサーモグラム、又はX線回折法のいずれでも、結晶性活性成分画分は示されなかった。
【0100】
噴霧乾燥ポリマー塩からの活性成分の放出は、CD水中で測定された。初めの重量は、放出媒体250mlあたりハロペリドール100mgと計算された。それに相当するように(同様に)秤量されたポリマー塩、又は秤量された純粋な結晶性物質を、硬質ゼラチンカプセルに充填した。以下の表及び図の描写より、結晶性薬剤と比較した、ポリマー塩からのハロペリドールの放出結果が示される。
【0101】
【表2】
【0102】
飽和溶解度の測定
合成VP/AAコポリマーによる薬剤塩基の飽和溶解度の改善を測定するために、CD水中に各コポリマーの15%(m/m)溶液150mlを調製した。調製溶液のそれぞれから、呼び容積50mlを有する7個のガラス製ペニシリンバイアルが、それぞれ、コポリマー溶液20gで充填された。残った残留ポリマー溶液を廃棄した。
【0103】
飽和溶解度を測定するために、沈殿法が用いられた。過剰の薬剤を、ポリマー溶液20gに添加し、次いで混合物を、室温で、磁気撹拌機で72h撹拌した。撹拌時間の最後に、溶解していない薬剤を膜濾過(孔径0.45μm)によって取り除き、溶解した薬剤の量について、清澄濾過液をUV分光光度法で分析した。
【0104】
溶液中に存在する薬剤の濃度を、以下に列挙された波長のUV分光光度法によって測定した。
シンナリジン、λ
max=254nm
ファモチジン、λ
max=288nm
ロペラミド、λ
max=262nm
ハロペリドール、λ
max=248nm
【0105】
吸収が高すぎた場合、測定する前に、清澄濾過液を、好適な溶媒(リン酸緩衝液pH7.0及びメタノールの、1:1比の混合物)で希釈しなければならなかった。薬剤を含まない、同じ溶媒中において、同様に用いられるコポリマー15%(m/m)溶液をブランクの比較試料とした。各薬剤について個別に作成された特定の較正曲線を用いて、飽和溶解度を、溶液100mlあたりの薬剤gで決定した。
【0106】
水、0.1M HCl、及び様々な質量比のVPとAAとのコポリマー15%(m/m)溶液における、薬剤の飽和溶解度を調べた結果。コポリマーをイソプロパノール中で直接酸形態として合成し、続いて溶媒を水と交換した。
【0107】
コポリマーをよりよく識別するために、0.1M HClと比較した平均性能を、次式を用いて計算し、以下の表に列挙した。
【0108】
【数2】
n 薬剤の数
C
s(API-ポリマー) 15%(m/m)ポリマー溶液中の薬剤の飽和溶解度
C
s(API-HCl) 0.1M HCl中の薬剤の飽和溶解度
【0109】
【表3】
比較のために、
【0110】
【表4】
【0111】
ポリマー性ロペラミド塩の結合の種類の決定
ここで、実施例6に記載されたように調製された、ロペラミドと実施例1のコポリマーとの、本発明の塩を、ロペラミドと同じコポリマーとの固溶体、及びロペラミドとPVP K17との固溶体とも比較した。ロペラミドとコポリマーとの固溶体は、THF/メタノール中の物質の溶液の蒸発によって得られた。ロペラミドとPVPとの固溶体は、同様にTHF/メタノール中の物質の溶液の蒸発によって得られた。有機溶液を調製するために、溶液の固体濃度が10重量%であり、生成された固溶体の活性成分ローディングが10重量%になるように、ポリマー900mgを、THF4.5g及びメタノール4.5g中の活性成分100mgの溶液で溶解させた。値は、噴霧乾燥ポリマー塩とロペラミドとの比較ができるように選択された。
【0112】
溶液を真空乾燥キャビネット(Heraeus型VT5042EK)で、温度50℃、圧力10mbarで72時間乾燥させた。次いで、得られたものを実験室ミル(チューブミルコントロール(Tube mill control)、IKA)で粉末に粉砕した。固溶体は、X線的非晶であった。
【0113】
反応熱量測定
調査のために、TA Instruments製のナノITC(等温滴定熱量計、Isothermal Titration Calorimeter)を用いた。それぞれのポリマーを、初めに測定セルに仕込んだ。ロペラミドをそれに連続的に添加した。反応が起こると、試料の温度が変化する。
【0114】
この温度変化は、ペルチェ素子によって記録され、補償された。補償に必要な電気エネルギーが記録された。このエネルギー量は、要するに、生成され、又は消費された反応熱の量に一致する。
【0115】
測定セル及び標準セルを、非常に安定な温度制御浴(25℃±0.0002K)に組み込んだ。実験の間、撹拌した。
【0116】
ここで測定される低い熱量のために、標準測定を実施する必要がある。この場合、ポリマーの希釈反応である。希釈反応中に測定された熱量を、元の測定から差し引いた。得られた値は、活性成分-ポリマー反応の反応エンタルピーである。
【0117】
反応エンタルピーを測定するために、ポリマーを、それぞれ濃度3g/Lで調製し、初めに1mlをそれぞれの場合に仕込んだ。ロペラミド塩基を、濃度25mg/lで調製し、5μlずつ(5μl steps)添加した。それぞれ添加した後、反応が終わるまで、600s間隔をとった。測定は25℃で行った。水/エタノール(9:1)混合物を溶媒とした。
【0118】
添加された各分子が、対応する反応パートナーを確実に見つけられるように、ポリマーを初めに大過剰で仕込んだ。
【0119】
溶解熱量測定
本研究は、TA instruments製のSolCalインサートを備えたTAM IIIを用いて実施された。初めに、溶媒を測定用に仕込んだ。溶解させる試料は、ガラスアンプルに密封した。アンプルを溶媒中に入れ、温度を平衡にした。溶解熱量測定を25℃(公称温度)で実施した。
【0120】
次のステップで、操作温度を公称温度より0.3K低い範囲の温度にした。次いで、操作温度の公称温度への平衡化を測定し、曲線形状が、特定のエネルギー入力(電気エネルギー=熱エネルギー)によって決定され、較正された。配合物を、スナップオフアンプルに秤量し(20〜140mg)、容量比9:1の水/エタノール混合物100ml中に入れた。
【0121】
次いで、測定セルのスパイク上でアンプルを割った。それによって、測定すべき物質が溶媒中に放出された。温度プロファイルのベースラインを差し引き、温度を対応する熱量に変換した後、時間に対する熱量の熱流曲線が得られた。曲線の積分及び分子量の参照の後、調査すべき物質の溶解エンタルピーが得られた。
【0122】
全ての試料の溶解熱を二度測定した。別の測定で決定されたポリマーのエンタルピーを、配合物の溶解熱から相応じて(比例して)差し引いた。
【0123】
以下の表は、それぞれのロペラミド-ポリマー配合物の溶解エンタルピーの測定結果を示す。A列は、それぞれの配合物の全熱量Q
Totを示す。B列は、ポリマーの比例熱量(proportional amount of heat)Q
Polyを示す。差により、初めの全重量に基づいた活性成分の熱量Q
API(C列)、又は活性成分の比率に基づいた活性成分の熱量Q
API(D列)が与えられる。E列の値は、ロペラミドの溶解エンタルピー又は結合エンタルピー(ΔH)である。
【0124】
【表5】