(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。
ここで、本発明の非水系二次電池機能層用組成物は、本発明の非水系二次電池用機能層を調製する際の材料として用いられる。そして、本発明の非水系二次電池用機能層は、本発明の非水系二次電池機能層用組成物を用いて形成される。また、本発明の非水系二次電池は、少なくとも本発明の非水系二次電池用機能層を備えるものである。
【0018】
(非水系二次電池機能層用組成物)
本発明の非水系二次電池機能層用組成物は、無機物と、任意の結着材とを含み、有機溶媒などを分散媒としたスラリー組成物である。具体的には、本発明の非水系二次電池機能層用組成物は、X線回折法により得た、回折強度を縦軸とし、回折角度2θを横軸とするX線回折パターンの、回折角度2θ=3°〜90°における回折強度の全積算累計を100%としたとき、高回折角度側から積算した回折強度の積算累計が全積算累計の50%になる位置の2θに対応する面間隔が0.1nm以上0.4nm以下であると共に、80%になる位置の2θに対応する面間隔が0.15nm以上0.7nm以下である無機物を含むことを特徴とする。
【0019】
そして、本発明の非水系二次電池機能層用組成物は、無機物の結晶構造中の原子網面間の面間隔が上記条件を満たすため、当該非水系二次電池機能層用組成物を用いて形成した機能層を備える二次電池の電気的特性を向上させることができる。
ここで、上記無機物を含む非水系二次電池機能層用組成物を使用することで二次電池の電気的特性を向上させることができる理由は、明らかではないが、以下の通りであると推察される。即ち、二次電池、特に遷移金属を含有する正極活物質を用いた二次電池においては、通常、二次電池中において生じるフッ化水素(以下、「フッ酸」ともいう)により正極活物質から遷移金属などの金属が溶出し、遷移金属イオンなどの金属イオンが生じる。そして、生成された金属イオンは、電解液中を移動して負極へと到達すると、負極にて還元されて析出する。更に、金属イオンは、例えばエチレンカーボネートのようなカーボネート類を含む電解液と反応して、一酸化炭素や二酸化炭素のようなガスを発生させて二次電池の電気的特性を劣化させる。しかし、上記所定の結晶構造を有する無機物は、遷移金属イオンなどの金属イオンを、結晶構造における原子網面間の間隙内に効率的に捕捉するとともに、捕捉した金属イオンを放出しにくくすることができる。さらに、上述した無機物は、遷移金属イオンなどの金属イオンを捕捉しつつ、電池反応に寄与するイオンが二次電池内を移動することは妨げにくい。なお、「電池反応に寄与するイオン」は、通常は一価のイオンであり、例えば、二次電池がリチウムイオン二次電池である場合には、リチウムイオン(Li
+)である。このように、上記無機物を含有する非水系二次電池機能層用組成物を用いて形成した機能層を使用すれば、正極で発生した金属イオンを、負極へと到達する前に捕捉し、二次電池内におけるガス発生を抑制することができるので、高温サイクル特性及び低温出力特性といった二次電池の電気的特性を向上させることができる。
【0020】
<無機物>
―無機物の結晶構造―
ここで、非水系二次電池機能層用組成物に配合する上記無機物は、X線回折法により得た、回折強度を縦軸とし、回折角度2θを横軸とするX線回折パターンの、回折角度2θ=3°〜90°の範囲における前記回折強度の全積算累計を100%としたとき、高回折角度側から積算した回折強度の積算累計が全積算累計50%になる位置の2θに対応する面間隔が、0.10nm以上0.40nm以下であることが必要であり、0.12nm以上であることが好ましく、0.15nm以上であることがより好ましく、0.30nm以下であることが好ましく、0.25nm以下であることがより好ましい。X線回折法により得た回折パターンの高回折角度側(即ち、面間隔が狭い側)から積算した回折強度の積算累計が全積算累計の50%になる位置の2θに対応する面間隔が0.10nm以上であれば、遷移金属イオンなどの金属イオン(正極活物質に由来する金属イオン)が無機物の結晶構造中に入り易くなり、無機物中に捕捉される金属の量を増加させることができるので、二次電池の高温サイクル特性を向上させることができる。また、X線回折法により得た回折パターンの高回折角度側から積算した回折強度の積算累計が全積算累計の50%になる位置の2θに対応する面間隔が0.40nm以下であれば、捕捉された金属イオンが無機物の結晶構造から脱離しにくくなって金属捕捉量が増加すると共に、捕捉された金属イオンが脱離した場所に電池反応に寄与するイオンが捕捉されるのを抑制することができる(即ち、電池反応に寄与するイオンの移動が阻害されるのを抑制することができる)ので、二次電池の低温出力特性及び高温サイクル特性を向上させることができる。
【0021】
さらに、上記無機物は、X線回折法により得た回折パターンの高回折角度側から積算した回折強度の積算累計が全積算累計の80%になる位置の2θに対応する面間隔が、0.15nm以上0.70nm以下であることが必要であり、0.16nm以上であることが好ましく、0.18nm以上であることがより好ましく、0.60nm以下であることが好ましく、0.50nm以下であることがより好ましい。なお、80%になる位置の2θに対応する面間隔は、50%になる位置の2θに対応する面間隔よりも大きい値となる。X線回折法により得た回折パターンの高回折角度側(即ち、面間隔が狭い側)から積算した回折強度の積算累計が全積算累計の80%になる位置の2θに対応する面間隔が0.15nm以上であれば、イオン半径の比較的小さい、電池反応に寄与するイオンが捕捉されやすい結晶部分(面間隔の小さい部分)の割合を低減して電池反応に寄与するイオンが結晶構造内に捕捉されるのを抑制し、二次電池の出力特性を向上させることができる。また、X線回折法により得た回折パターンの高回折角度側から積算した回折強度の積算累計が全積算累計の80%になる位置の2θに対応する面間隔が0.70nm以下であれば、無機物の結晶構造内に捕捉された金属イオンが結晶構造内から脱離しにくくなり、金属捕捉量を増加させることができるので、二次電池のサイクル特性を向上させることができる。
ここで、組成物中における無機粒子の「X線回折パターン」は、組成物に配合する材料としての無機粒子をX線回折して得られる回折パターンと同一である。
【0022】
そして、無機物は、層状構造を有する無機化合物であることが好ましい。ここで、層状構造とは、例えば、原子が面状に並んで成る構造を複数積層してなる構造である。面間隔が特定範囲にある層状構造を有する無機物を非水系二次電池機能層用組成物に配合することで、層間に遷移金属イオンを良好に捕捉することができる。従って、電気的特性に優れる二次電池を提供することができる。
【0023】
―無機物の導電性―
なお、無機物は、通常、非導電性であり、具体的には、体積抵抗率(Ω・cm)が10
5以上であることが好ましく、10
10以上であることがより好ましい。
【0024】
―無機物の体積平均粒子径―
また、無機物の体積平均粒子径は、0.1μm以上であることが好ましく、0.2μm以上であることがより好ましく、5.0μm以下であることが好ましく、3.0μm以下であることがより好ましい。無機物の体積平均粒子径が0.1μm以上であれば、本発明による機能層用組成物を用いて形成した機能層の持ち込み水分量を低減し、機能層を有する二次電池の高温サイクル特性を一層向上させることができる。また、無機物の体積平均粒子径が5.0μm以下であれば、本発明による非水系二次電池機能層用組成物を用いて形成した機能層の厚みが増大して機能層の体積抵抗が増大することを抑制し、機能層を備える二次電池の低温出力特性を向上させることができる。
【0025】
―無機物の種類―
例えば、無機物は、層状複水酸化物又はゼオライトでありうる。層状複水酸化物としては、例えば、ハイドロタルサイト、モツコレアイト(Motukoreaite)、マナセアイト(Manasseite)、スティヒタイト(Stichtite)、バーバトナイト(Barbertonite)、パイロオーロ(Pyroaurite)、ショグレナイト(Sjogrenite)、アイオワイト(Iowaite)、クロロマガルミナイト(Chlormagaluminite)、ハイドロカルマイト(Hydrocalmite)、グリーンラスト1(Greem Rust 1)、ベルチェリン(Berthierine)、タコバイト(Takovite)、リーベサイト(Reevesite)、ホネサイト(Honessite)、イヤードライト(Eardlyte)、メイキセネライト(Meixnerite)が挙げられる。さらには、無機物として、例えば、層状複水酸化物であるハイドロタルサイトを焼成することで生成しうる層状構造の無機物であるマグネシウム・アルミニウム系固溶体が挙げられる。なお、本明細書では、かかる固溶体も、広義には「ハイドロタルサイト」の一種であるとして記載する。
一方、無機物として本発明の非水系二次電池機能層用組成物に含有させるゼオライトとしては、ケイ酸塩鉱物に加えて、国際ゼロライト学会(IZA:International Zeolite Association)の定義に従う各種骨格構造を有するゼオライトが挙げられる。なお、IZAの定義によれば、ゼオライトとは、「開かれた3次元ネットワークを形成する組成AB
n(n≒2)の化合物で、Aが4本、Bが2本の結合を持ち、骨格密度(1nm
3中の原子数)が20.5以下の物質」である。
これらの無機物は一種で、又は二種以上を混合して本発明の非水系二次電池機能層用組成物に配合することができる。中でも、本発明の非水系二次電池機能層用組成物は、無機物としてハイドロタルサイト及び/又はゼオライトを含有することが好ましい。ハイドロタルサイト及びゼオライトは、金属イオンの捕捉能に優れ、機能層用組成物を用いて形成した機能層を備える二次電池の高温サイクル特性を一層向上させることができるからである。さらに、本発明の非水系二次電池機能層用組成物は、無機物としてハイドロタルサイトを含有することが特に好ましい。ハイドロタルサイトは、二次電池内にて生成されるフッ酸により腐食しにくいため、機能層を備える二次電池の高温サイクル特性及び低温出力特性をより一層向上させることができるからである。
【0026】
なお、X線回折パターンの形状および回折強度の積算累計における面間隔の大きさは、無機物の種類および組成、並びに無機物に対して加熱処理を施すことにより調整することができる。加熱処理により調整する場合には、加熱時間及び加熱温度等を変更することにより、所望のX線回折パターンの形状および回折強度の積算累計における面間隔の大きさの無機物を得ることができる。
【0027】
―無機物の配合量―
本発明の非水系二次電池機能層用組成物は、組成物中の全固形分に対する無機物の割合が、85.0質量%以上であることが好ましく、90.0質量%以上であることがより好ましく、95.0質量%以上であることが特に好ましく、99.5質量%以下であることが好ましい。組成物中の全固形分に対する無機物の割合を85.0質量%以上とする事により、機能層のガーレー値が上昇することを抑制し、機能層を備える二次電池に優れた低温出力特性を発揮させることができ、さらに、金属イオンの補足量を増加させて、二次電池の高温サイクル特性を一層向上させることができる。
【0028】
<結着材>
なお、本発明の非水系二次電池機能層用組成物は、特に限定されることなく、既知の結着材を含有することができる。具体的には結着材としては、共役ジエン系重合体およびアクリル系重合体が好ましく、アクリル系重合体がより好ましい。そして、これらの重合体は、1種類を単独で使用してもよいし、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0029】
結着材として好ましく使用しうる共役ジエン系重合体は、共役ジエン単量体単位を含む重合体である。そして、共役ジエン系重合体の具体例としては、特に限定されることなく、スチレン−ブタジエン共重合体(SBR)等の芳香族ビニル単量体単位及び脂肪族共役ジエン単量体単位を含む共重合体、ブタジエンゴム(BR)、アクリルゴム(NBR)(アクリロニトリル単位およびブタジエン単位を含む共重合体)、並びに、それらの水素化物などが挙げられる。
【0030】
また、結着材として好ましく使用しうるアクリル系重合体は、(メタ)アクリル酸エステル単量体単位を含むアクリル系重合体を用いることが好ましい。ここで、(メタ)アクリル酸エステル単量体単位を形成し得る(メタ)アクリル酸エステル単量体としては、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、2−エチルヘキシルアクリレート等の(メタ)アクリル酸アルキルエステルを用いることができる。なお、本発明において、(メタ)アクリルとは、アクリルおよび/またはメタクリルを意味する。
そして、アクリル系重合体は、(メタ)アクリル酸エステル単量体単位以外に、(メタ)アクリロニトリル単量体単位及び酸基含有単量体単位の少なくとも一方を含有することが好ましく、双方を含有することがより好ましい。なお、本発明において、(メタ)アクリロニトリルとは、アクリロニトリルおよび/またはメタクリロニトリルを意味する。また、酸基含有単量体単位を形成し得る酸基含有単量体としては、酸基を有する単量体、例えば、カルボン酸基を有する単量体、スルホン酸基を有する単量体、および、リン酸基を有する単量体を有する単量体が挙げられる。
【0031】
そして、カルボン酸基を有する単量体としては、例えば、モノカルボン酸、ジカルボン酸などが挙げられる。モノカルボン酸としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸などが挙げられる。ジカルボン酸としては、例えば、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸などが挙げられる。
また、スルホン酸基を有する単量体としては、例えば、ビニルスルホン酸、メチルビニルスルホン酸、(メタ)アリルスルホン酸、(メタ)アクリル酸−2−スルホン酸エチル、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、3−アリロキシ−2−ヒドロキシプロパンスルホン酸などが挙げられる。
更に、リン酸基を有する単量体としては、例えば、リン酸−2−(メタ)アクリロイルオキシエチル、リン酸メチル−2−(メタ)アクリロイルオキシエチル、リン酸エチル−(メタ)アクリロイルオキシエチルなどが挙げられる。
なお、本発明において、「(メタ)アリル」とは、アリルおよび/またはメタリルを意味し、「(メタ)アクリロイル」とは、アクリロイルおよび/またはメタクリロイルを意味する。
【0032】
これらの中でも、酸基含有単量体としては、カルボン酸基を有する単量体が好ましく、モノカルボン酸がより好ましく、(メタ)アクリル酸が更に好ましい。
また、酸基含有単量体は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
【0033】
さらに、二次電池がリチウムイオン二次電池である場合には、結着材として好ましく使用し得るアクリル系重合体は、不飽和酸のリチウム塩を含むことが好ましい。不飽和酸のリチウム塩としては、特に限定されず、不飽和カルボン酸のリチウム塩、不飽和スルホン酸のリチウム塩、不飽和ホスホン酸のリチウム塩などが挙げられる。これらの中でも、不飽和酸のリチウム塩としては、不飽和カルボン酸のリチウム塩、不飽和スルホン酸のリチウム塩を用いるのが好ましい。不飽和カルボン酸のリチウム塩および不飽和スルホン酸のリチウム塩は、リチウムイオンの解離度が高いため、これらのリチウム塩を使用すれば、リチウムイオン二次電池の低温出力特性を一層向上させることができるからである。
ここで、前記不飽和カルボン酸のリチウム塩としては、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸などのα,β−不飽和モノカルボン酸のリチウム塩;マレイン酸、フマル酸、イタコン酸などのα,β−不飽和ジカルボン酸のリチウム塩;マレイン酸モノメチル、イタコン酸モノエチルなどのα,β−不飽和多価カルボン酸の部分エステル化物のリチウム塩;オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、ルーメン酸などの不飽和脂肪酸のリチウム塩などが挙げられる。
また、前記不飽和スルホン酸のリチウム塩としては、ビニルスルホン酸、o−スチレンスルホン酸、m−スチレンスルホン酸、p−スチレンスルホン酸、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸(AMPS)などのリチウム塩、並びに、これらの各種置換体などが挙げられる。
更に、前記不飽和ホスホン酸のリチウム塩としては、ビニルホスホン酸、o−スチレンホスホン酸、m−スチレンホスホン酸、p−スチレンホスホン酸などのリチウム塩、並びに、これらの各種置換体などが挙げられる。
【0034】
そして、非水系二次電池機能層用組成物中の結着材の含有量は、機能層用組成物中の全固形分量を100質量%とした場合に0.5質量%以上であることが好ましく、1.0質量%以上であることがより好ましく、15.0質量%以下であることが好ましく、10.0質量%以下であることがより好ましい。機能層用組成物中の結着材の含有量を全固形分量に対して0.5質量%以上とすることで、十分な接着性を発揮することができ、無機物が機能層から脱落するのを抑制すると共に、機能層と基材との接着力も向上させて、機能層を備える二次電池の高温サイクル特性を向上させることができる。また、機能層用組成物中の結着材の含有量を全固形分量に対して15.0質量%以下とすることで、機能層のガーレー値が上昇することを抑制して、機能層のイオン伝導性が低下して機能層の体積抵抗が増大することを抑制し、機能層を備える二次電池の低温出力特性を向上させることができる。
【0035】
なお、結着材として使用し得る上述した重合体の製造方法としては、例えば、溶液重合法、懸濁重合法、乳化重合法などが挙げられる。
【0036】
<分散媒>
なお、本発明の非水系二次電池機能層用組成物の分散媒としては、特に限定されることなく、既知の分散媒を使用することができる。例えば、使用可能な分散媒として、水;N−メチルピロリドン(NMP)、N,N−ジメチルホルムアミド等のアミド化合物;シクロペンタン、シクロヘキサン等の環状脂肪族炭化水素化合物;トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素化合物;アセトン、エチルメチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン化合物;酢酸エチル、酢酸ブチル、γ−ブチロラクトン、ε−カプロラクトン等のエステル化合物;アセトニトリル、プロピオニトリル等のニトリル化合物;テトラヒドロフラン、エチレングリコールジエチルエーテル等のエーテル化合物;メタノール、エタノール、イソプロパノール、エチレングリコール、エチレングリコールモノメチルエーテル等のアルコール化合物などが挙げられる。
【0037】
<添加剤>
なお、非水系二次電池機能層用組成物は、上述した成分以外にも、任意のその他の成分を含んでいてもよい。前記その他の成分は、電池反応に影響を及ぼさないものであれば特に限られず、公知のものを使用することができる。また、これらのその他の成分は、1種類を単独で使用してもよいし、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
前記その他の成分としては、例えば、分散剤、粘度調整剤、濡れ剤などの既知の添加剤が挙げられる。
【0038】
(非水系二次電池機能層用組成物の製造方法)
上述した本発明の非水系二次電池機能層用組成物は、特に限定されることなく、上述した無機物と、任意の結着材および添加剤とを、N−メチルピロリドンなどの分散媒の存在下で混合して得ることができる。
【0039】
ここで、上述した成分の混合方法は特に制限されないが、各成分を効率よく分散させるべく、混合装置として分散機を用いて混合を行うことが好ましい。そして、分散機は、上記成分を均一に分散および混合できる装置が好ましい。分散機としては、メディアレス分散機、ボールミル、サンドミル、顔料分散機、擂潰機、超音波分散機、ホモジナイザー、プラネタリーミキサーなどが挙げられる。
また、上述した成分の混合順序も特に制限はされず、例えば、上述した成分を一段階で混合しても良いし、無機物を分散媒中に分散させたところに結着材を添加してさらに分散させても良い。
無機物を配合した混合液を分散処理するにあたり、混合液の固形分濃度は、30質量%以上60質量%以下であることが好ましい。得られた非水系二次電池機能層用組成物中における無機物の分散性を向上させることができるからである。また、得られた非水系二次電池機能層用組成物のB型粘度計による粘度は25℃、60rpmで25mPa・s以上85mPa・s以下であることが好ましい。
【0040】
(非水系二次電池用機能層)
本発明の非水系二次電池用機能層は、上述した非水系二次電池機能層用組成物から形成されたものである。例えば、本発明の非水系二次電池用機能層は、上述した機能層用組成物を適切な基材の表面に塗布して塗膜を形成した後、形成した塗膜を乾燥することにより、形成することができる。即ち、本発明の非水系二次電池用機能層は、上述した非水系二次電池機能層用組成物の乾燥物よりなる。そして、本発明の非水系二次電池用機能層は、通常、X線回折法により得た、回折強度を縦軸とし、回折角度2θを横軸とするX線回折パターンの、回折角度2θ=3°〜90°における回折強度の全積算累計を100%としたとき、高回折角度側から積算した回折強度の積算累計が全積算累計の50%になる位置の2θに対応する面間隔が0.1nm以上0.4nm以下であると共に、80%のときに、面間隔が0.15nm以上0.70nm以下である無機物を含有する。さらに、本発明の非水系二次電池用機能層は、上述の無機物に加えて、結着材を含有することが好ましい。
【0041】
そして、本発明の非水系二次電池用機能層は、上述した非水系二次電池機能層用組成物を用いて形成しており、上述した無機物を含有している。このため、本発明の非水系二次電池用機能層は、遷移金属イオンなどの金属イオンを捕捉し、当該機能層を備える二次電池に優れた低温出力特性及び高温サイクル特性を発揮させることができる。
【0042】
さらに、本発明の非水系二次電池用機能層は厚みが1.5μm以上3.5μm以下であることが好ましい。機能層の厚みを上記下限値以上とすることで、機能層における金属捕捉量を十分に高めることができ、機能層を備える二次電池のサイクル特性を向上させることができる。また、機能層の厚みを上記上限値以下とすることで、機能層のガーレー値が過度に高くなることを回避し、機能層の体積抵抗の増大を抑制して、機能層を備える二次電池の出力特性を向上させることができる。
なお、本発明において、機能層の厚みは、機能層の任意の10箇所において測定した層厚の平均値を指す。
【0043】
<基材>
ここで、機能層用組成物を塗布する基材に制限は無く、例えば離型基材の表面に機能層用組成物の塗膜を形成し、その塗膜を乾燥して機能層を形成し、機能層から離型基材を剥がすようにしてもよい。このように、離型基材から剥がされた機能層を自立膜として二次電池の電池部材の形成に用いることもできる。具体的には、離型基材から剥がした機能層をセパレータ基材の上に積層して機能層を備えるセパレータを形成してもよいし、離型基材から剥がした機能層を電極基材の上に積層して機能層を備える電極を形成してもよい。
しかし、機能層を剥がす工程を省略して電池部材の製造効率を高める観点からは、基材としてセパレータ基材または電極基材を用いることが好ましい。セパレータ基材および電極基材上に設けられた機能層は、金属捕捉能を発揮するだけでなく、セパレータおよび電極の耐熱性や強度などを向上させる保護層として好適に使用することができる。
【0044】
[セパレータ基材]
セパレータ基材としては、特に限定されないが、有機セパレータ基材などの既知のセパレータ基材が挙げられる。有機セパレータ基材は、有機材料からなる多孔性部材である。有機セパレータ基材としては、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン樹脂、芳香族ポリアミド樹脂などを含む微多孔膜または不織布などが挙げられ、強度に優れることからポリエチレン製の微多孔膜や不織布が好ましい。
【0045】
[電極基材]
電極基材(正極基材および負極基材)としては、特に限定されないが、集電体上に電極合材層が形成された電極基材が挙げられる。ここで、集電体および電極合材層用結着材(正極合材層用結着材、負極合材層用結着材)、並びに、集電体上への電極合材層の形成方法は、既知のものを用いることができ、例えば特開2013−145763号公報に記載のものが挙げられる。
【0046】
[電極活物質]
電極合材層中の電極活物質としては、電解質中で電位をかけることにより可逆的に電池反応に寄与するイオンを挿入放出できるものであればよく、無機化合物でも有機化合物でも用いることができる。
【0047】
正極活物質としては、無機化合物からなるものを使用することができる。例えば、リチウムイオン二次電池では、無機化合物からなる正極活物質として、遷移金属酸化物、リチウムと遷移金属との複合酸化物、遷移金属硫化物などの遷移金属を含有する正極活物質が使用可能である。上記の遷移金属としては、二価以上の遷移金属が好ましく、Co、Mn、Fe、及びNiの何れかがより好ましい。正極活物質としてCo、Mn、Fe、Niなどの遷移金属を含有する正極活物質を使用することで二次電池の容量を更に高めることができる。なお、本発明による機能層を使用すれば、遷移金属を含有する正極活物質を使用した場合であっても、遷移金属の溶出に起因して二次電池の電気的特性が低下するのを抑制することができる。
【0048】
正極活物質に使用される無機化合物の具体例としては、LiCoO
2、LiNiO
2、LiMnO
2、LiMn
2O
4、LiNi
1/3Mn
1/3Co
1/3O
2(NMC)、LiFePO
4、LiFeVO
4等のリチウム含有複合金属酸化物;TiS
2、TiS
3、非晶質MoS
2等の遷移金属硫化物;Cu
2V
2O
3、非晶質V
2O−P
2O
5、MoO
3、V
2O
5、V
6O
13等の遷移金属酸化物などが挙げられる。
中でも、正極活物質としてLiCoO
2やLiNi
1/3Mn
1/3Co
1/3O
2を用いることが好ましく、特に、LiNi
1/3Mn
1/3Co
1/3O
2が好ましい。
なお、これらの正極活物質は、1種類だけを用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。また、前述の無機化合物と、ポリアセチレン、ポリ−p−フェニレンなどの導電性重合体のような有機化合物との混合物を正極活物質として用いてもよい。
【0049】
負極活物質としては、例えば、アモルファスカーボン、グラファイト、天然黒鉛、メゾカーボンマイクロビーズ、ピッチ系炭素繊維等の炭素質材料;ポリアセン等の導電性重合体;などが挙げられる。また、ケイ素、錫、亜鉛、マンガン、鉄およびニッケル等の金属並びにこれらの合金;前記金属または合金の酸化物;前記金属または合金の硫酸塩;なども挙げられる。また、金属リチウム;Li−Al、Li−Bi−Cd、Li−Sn−Cd等のリチウム合金;リチウム遷移金属窒化物;シリコン等も使用できる。なお、これらの負極活物質は、1種類だけを用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0050】
<非水系二次電池用機能層の形成方法>
上述したセパレータ基材、電極基材などの基材上に機能層を形成する方法としては、以下の方法が挙げられる。
1)本発明の非水系二次電池機能層用組成物をセパレータ基材または電極基材の表面(電極基材の場合は電極合材層側の表面、以下同じ)に塗布し、次いで乾燥する方法;
2)本発明の非水系二次電池機能層用組成物にセパレータ基材または電極基材を浸漬後、これを乾燥する方法;
3)本発明の非水系二次電池機能層用組成物を離型基材上に塗布し、乾燥して機能層を製造し、得られた機能層をセパレータ基材または電極基材の表面に転写する方法;
これらの中でも、前記1)の方法が、機能層の層厚制御をしやすいことから特に好ましい。前記1)の方法は、詳細には、機能層用組成物を基材上に塗布する工程(塗布工程)と、基材上に塗布された機能層用組成物を乾燥させて機能層を形成する工程(機能層形成工程)を含む。
【0051】
[塗布工程]
そして、塗布工程において、機能層用組成物を基材上に塗布する方法としては、特に制限は無く、例えば、ドクターブレード法、リバースロール法、ダイレクトロール法、グラビア法、エクストルージョン法、ハケ塗り法などの方法が挙げられる。
【0052】
[機能層形成工程]
また、機能層形成工程において、基材上の機能層用組成物を乾燥する方法としては、特に限定されず公知の方法を用いることができ、例えば温風、熱風、低湿風による乾燥、真空乾燥、赤外線や電子線などの照射による乾燥法が挙げられる。乾燥条件は特に限定されないが、乾燥温度は好ましくは50〜150℃で、乾燥時間は好ましくは3〜30分である。
【0053】
(機能層を備える電池部材)
本発明の機能層を備える電池部材(セパレータおよび電極)は、本発明の効果を著しく損なわない限り、セパレータ基材または電極基材と、本発明の機能層との他に、上述した本発明の機能層以外の構成要素を備えていてもよい。
【0054】
ここで、本発明の機能層以外の構成要素としては、本発明の機能層に該当しないものであれば特に限定されることなく、本発明の機能層上に設けられて電池部材同士の接着に用いられる接着層などが挙げられる。
【0055】
(非水系二次電池)
本発明の非水系二次電池は、上述した本発明の非水系二次電池用機能層を備えるものである。より具体的には、本発明の非水系二次電池は、正極、負極、セパレータ、および電解液を備え、上述した非水系二次電池用機能層が、電池部材である正極、負極およびセパレータの少なくとも一つに含まれる。好ましくは、本発明の非水系二次電池用機能層は、セパレータに含まれる。正極活物質由来の金属イオンを一層高効率で捕捉することができ、かかるセパレータを備える二次電池の電気的特性(例えば、低温出力特性及び高温サイクル特性)を一層向上させることができるからである。そして、本発明の非水系二次電池は、本発明の非水系二次電池機能層用組成物から得られる機能層を備えているので、例えば上述した遷移金属を含有する正極活物質を用いた場合であっても、優れた電気的特性(例えば、低温出力特性及び高温サイクル特性)を発揮する。
【0056】
<正極、負極およびセパレータ>
本発明の二次電池に用いる正極、負極およびセパレータは、少なくとも一つが本発明の機能層を含む。具体的には、機能層を有する正極および負極としては、集電体上に電極合材層を形成してなる電極基材の上に本発明の機能層を設けてなる電極を用いることができる。また、機能層を有するセパレータとしては、セパレータ基材の上に本発明の機能層を設けてなるセパレータを用いることができる。なお、電極基材およびセパレータ基材としては、「非水系二次電池用機能層」の項で挙げたものと同様のものを用いることができる。
また、機能層を有さない正極、負極およびセパレータとしては、特に限定されることなく、上述した電極基材よりなる電極および上述したセパレータ基材よりなるセパレータを用いることができる。
【0057】
<電解液>
電解液としては、通常、有機溶媒に支持電解質を溶解した有機電解液が用いられる。支持電解質としては、例えば、リチウムイオン二次電池においてはリチウム塩が用いられる。リチウム塩としては、例えば、LiPF
6、LiAsF
6、LiBF
4、LiSbF
6、LiAlCl
4、LiClO
4、CF
3SO
3Li、C
4F
9SO
3Li、CF
3COOLi、(CF
3CO)
2NLi、(CF
3SO
2)
2NLi、(C
2F
5SO
2)NLiなどが挙げられる。なかでも、溶媒に溶けやすく高い解離度を示すので、LiPF
6、LiClO
4、CF
3SO
3Liが好ましい。なお、電解質は1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。通常は、解離度の高い支持電解質を用いるほどリチウムイオン伝導度が高くなる傾向があるので、支持電解質の種類によりリチウムイオン伝導度を調節することができる。
【0058】
電解液に使用する有機溶媒としては、支持電解質を溶解できるものであれば特に限定されないが、例えばリチウムイオン二次電池においては、ジメチルカーボネート(DMC)、エチレンカーボネート(EC)、ジエチルカーボネート(DEC)、プロピレンカーボネート(PC)、ブチレンカーボネート(BC)、メチルエチルカーボネート(MEC)、ビニレンカーボネート(VC)等のカーボネート類;γ−ブチロラクトン、ギ酸メチル等のエステル類;1,2−ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン等のエーテル類;スルホラン、ジメチルスルホキシド等の含硫黄化合物類;などが好適に用いられる。また、これらの溶媒の混合液を用いてもよい。中でも、誘電率が高く、安定な電位領域が広いので、カーボネート類が好ましい。通常、用いる溶媒の粘度が低いほどリチウムイオン伝導度が高くなる傾向があるので、溶媒の種類によりリチウムイオン伝導度を調節することができる。
なお、電解液中の電解質の濃度は適宜調整することができる。また、電解液には、既知の添加剤を添加してもよい。
【0059】
(非水系二次電池の製造方法)
上述した本発明の非水系二次電池は、例えば、正極と負極とをセパレータを介して重ね合わせ、これを必要に応じて、巻く、折るなどして電池容器に入れ、電池容器に電解液を注入して封口することで製造することができる。なお、正極、負極、セパレータのうち、少なくとも一つの部材を機能層付きの部材とする。また、電池容器には、必要に応じてエキスパンドメタルや、ヒューズ、PTC素子などの過電流防止素子、リード板などを入れ、電池内部の圧力上昇、過充放電の防止をしてもよい。電池の形状は、例えば、コイン型、ボタン型、シート型、円筒型、角形、扁平型など、何れであってもよい。
【実施例】
【0060】
以下、本発明について実施例に基づき具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。なお、以下の説明において、量を表す「%」および「部」は、特に断らない限り、質量基準である。
実施例および比較例において、無機物のX線回折強度及び体積平均粒子径、機能層の遷移金属イオン捕捉量及びイオン伝導性(ガーレー値増加率)、並びに二次電池の高温サイクル特性及び低温出力特性は、下記の方法で測定および評価した。
【0061】
<無機物のX線回折強度>
実施例、比較例における無機物のX線回折強度は、X線回折装置(製品名:RINT2500、リガク社製)を用いて、Cu管球によるCu−Kα線をX線源として、温度25℃、加速電圧40kV、散乱スリット1°、受光スリット0.3mm、回折角度2θを3°〜90°とした測定により求めた。
さらに、得られた回折強度を回折角度2θの高角度側(即ち2θ=90°)から積算した全積算累計を100%としたとき、無機層状化合物の回折強度の積算累計が50%のときの2θに対応する面間隔の値、および80%のときの2θに対応する面間隔の値をそれぞれ算出した。
【0062】
<無機物の体積平均粒子径>
実施例、比較例に用いた無機物の体積平均粒子径(D50)は、体積基準の粒度分布で積算値が50%の時の粒子径の値であり、イオン交換水を供給したフローセル内に、実施例、比較例にて使用した無機物を散乱強度が50%程度になるよう添加し、超音波分散した後、レーザー回折式粒度分布測定装置(島津製作所社製「SALD−7100」)により散乱光を測定することにより求めた。
【0063】
<機能層の遷移金属イオン捕捉量>
実施例、比較例で作製した非水系二次電池用機能層の遷移金属捕捉量を測定するにあたり、まず、非水系二次電池機能層用組成物を塗工したセパレータを面積100cm
2の大きさに打ち抜き、試験片とし、遷移金属イオンを捕捉する前の試験片の質量(A)を測定した。次いで、非水系二次電池機能層用組成物を塗工していないセパレータ基材を面積100cm
2の大きさに打ち抜き、その質量を(B)を測定した。質量(A)から質量(B)を差し引いた値を、遷移金属イオンを捕捉する前の機能層質量とした。
次いで、溶媒(エチルメチルカーボネート:エチレンカーボネート=70:30(質量比))に支持電解質としてのLiPF
6を1モル/リットルの濃度で溶解させて得た電解液に、遷移金属イオン源として、塩化コバルト(無水)(CoCl
2)、塩化ニッケル(無水)(NiCl
2)、塩化マンガン(無水)(MnCl
2)を溶解し、各金属イオン濃度が20質量ppmとなるよう電解液を調製し、非水系二次電池内のように、遷移金属イオンが所定割合で存在している状態を創出した。次に、前述の試験片をガラス容器に入れ、前述の塩化コバルト、塩化マンガン、塩化ニッケルを溶解した電解液15gを入れ、試験片を浸漬させ、25℃で5日間静置した。その後、試験片を取り出し、ジエチルカーボネートで試験片を十分に洗浄し、試験片表面に付着したジエチルカーボネートを十分に拭き取った。その後、試験片をテフロン(登録商標)製ビーカーに入れ、硫酸および硝酸(硫酸:硝酸=0.1:2(体積比))を添加し、ホットプレートで試験片が炭化するまで加温した。さらに、硝酸および過塩素酸(硝酸:過塩素酸=2:0.2(体積比))を添加した後、過塩素酸およびフッ化水素酸(過塩素酸:フッ化水素酸=2:0.2(体積比))を添加し、白煙が出るまで加温した。次いで、硝酸および超純水(硝酸:超純水=0.5:10(体積比))を20ml添加し、加温した。放冷後、超純水を総量が100mlとなるように加え、遷移金属イオンを含有する遷移金属イオン溶液を得た。ICP質量分析計(PerkinElmer社製、「ELAN DRS II」)を用いて、得られた遷移金属イオン溶液中のコバルト、ニッケル、マンガン量を測定した。そして、遷移金属イオン溶液中のコバルト、ニッケル、マンガン量の総量を、上述のようにして求めた遷移金属イオンを捕捉する前の機能層質量で割ることで、機能層中の遷移金属イオン量(質量ppm)を算出し、得られた値を非水系二次電池用機能層の遷移金属イオン捕捉量とした。この遷移金属イオン捕捉量が多いほど、非水系二次電池用機能層の単位質量あたりの遷移金属イオン捕捉能が高いことを示す。
A:遷移金属イオン捕捉量が1000ppm以上
B:遷移金属イオン捕捉量が500ppm以上1000ppm未満
C:遷移金属イオン捕捉量が100ppm以上500ppm未満
D:遷移金属イオン捕捉量が100ppm未満
【0064】
<機能層のイオン伝導性(ガーレー増加率)>
非水系二次電池用機能層付きセパレータおよび機能層を形成する前のセパレータ基材について、デジタル型王研式透気度・平滑度試験機(旭精工株式会社製、「EYO−5−1M−R」)を用いてガーレー値(秒/100cc)を測定した。具体的には、機能層形成前の「セパレータ基材」のガーレー値G0と、機能層形成後の「機能層付きセパレータ」のガーレー値G1とから、ガーレー値の増加率ΔG(=(G1/G0)×100(%))を求めて、以下の基準で評価した。このガーレー値の増加率ΔGが小さいほど、非水系二次電池用機能層のイオン伝導性が優れていることを示す。
A:ΔGが130%未満である。
B:ΔGが130%以上200%未満である
【0065】
<二次電池の高温サイクル特性>
放電容量800mAhの捲回型ラミネートセルを45℃雰囲気下、0.5Cの定電流法によって4.35Vに充電し、3Vまで放電する充放電を200サイクル繰り返し、放電容量を測定した。5セルの平均値を測定値とし、3サイクル終了時の放電容量に対する200サイクル終了時の放電容量の割合を百分率で算出して充放電容量保持率を求め、以下の基準で評価した。この値が高いほど、二次電池が高温サイクル特性に優れることを示す。
A:充放電容量保持率が80%以上である。
B:充放電容量保持率が70%以上80%未満である。
C:充放電容量保持率が60%以上70%未満である。
D:充放電容量保持率が60%未満である。
【0066】
<二次電池の低温出力特性>
放電容量800mAhの捲回型のリチウムイオン二次電池を、25℃の環境下で24時間静置した後、25℃の環境下で、4.35V、0.1Cの充電レートで5時間の充電の操作を行い、その時の電圧V0を測定した。その後、−10℃環境下で、1Cの放電レートにて放電の操作を行い、放電開始から15秒後の電圧V1を測定した。そして、電圧変化ΔV(=V0−V1)を求め、以下の基準で評価した。この電圧変化ΔVの値が小さいほど、二次電池が低温出力特性に優れていることを示す。
A:電圧変化ΔVが350mV未満
B:電圧変化ΔVが350mV以上500mV未満
C:電圧変化ΔVが500mV以上
【0067】
(実施例1)
<結着材の作製>
攪拌機付き5MPa耐圧容器に、(メタ)アクリル酸エステル単量体であるアクリル酸ブチル30部、(メタ)アクリロニトリル単量体であるアクリロニトリル35部、不飽和スルホン酸のリチウム塩であるスチレンスルホン酸リチウム30部、カルボン酸基を有する単量体であるメタクリル酸5部、反応性界面活性剤としてポリオキシアルキレナルケニルエーテル硫酸アンモニウム1.0部、イオン交換水400部、および重合開始剤として過硫酸カリウム1.0部を入れ、十分に攪拌した後、65℃に加温して重合した。重合転化率が96%になった時点で冷却し反応を停止して、結着材の前駆体(水分散液)を得た。
結着材の前駆体100部(固形分:24.75部)に対し、N−メチルピロリドン(NMP)350部を加え、減圧下で水を蒸発させると共にNMPを40.62部蒸発させて、結着材を含む分散液(固形分濃度:8%)を得た。
【0068】
<非水系二次電池機能層用組成物の調製>
無機物としてのハイドロタルサイト(協和化学工業社製、「KW2000」、組成:Mg
0.7Al
0.3O
1.15)を97質量部、前述の結着材を固形分相当で3質量部、および固形分濃度が40質量%となるようにNMPを添加した。次いで、メディアレス分散装置(アシザワファインテック社製、「LMZ−015」)で、直径0.4mmのビーズを用いて、周速6m/秒、流量0.3L/分にて無機物を分散させ、スラリー状の非水系二次電池機能層用組成物を調製した。
調製した機能層用組成物の粘度を、25℃で、B型粘度計(東機産業株式会社製、「TVB−10M」)を使用して測定したところ、60rpmで32mPa・sであった。
【0069】
<二次電池用セパレータの作製>
ポリエチレン製の多孔基材からなる有機セパレータ(ポリエチレン製、厚み12μm、ガーレー値150s/100cc)を準備した。用意した有機セパレータの片面に、上述の機能層用組成物を塗布し、50℃で3分間乾燥させた。これにより、片面厚み3μmの機能層を備える有機セパレータを得た。
【0070】
<負極の作製>
攪拌機付き5MPa耐圧容器に、1,3−ブタジエン33.5部、イタコン酸3.5部、スチレン62部、2−ヒドロキシエチルアクリレート1部、乳化剤としてドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム0.4部、イオン交換水150部及び重合開始剤として過硫酸カリウム0.5部を入れ、十分に攪拌した後、50℃に加温して重合を開始した。重合転化率が96%になった時点で冷却し反応を停止して、結着材(SBR)を含む混合物を得た。かかる結着材(SBR)を含む混合物に、5%水酸化ナトリウム水溶液を添加して、pH8に調整後、加熱減圧蒸留によって未反応単量体の除去を行った後、30℃以下まで冷却し、所望の結着材(SBR)を含む水分散液を得た。
次に、負極活物質としての人造黒鉛(体積平均粒子径:15.6μm)100部、及び増粘剤としてのカルボキシメチルセルロースナトリウム塩(日本製紙社製、「MAC350HC」)の2%水溶液を固形分相当で1部に対して、イオン交換水を固形分濃度が68%になるように添加した後、25℃で60分間混合した。イオン交換水で固形分濃度が62%となるように調整した後、さらに25℃で15分間混合して混合液を得た。得られた混合液に、上記の結着材(SBR)を固形分相当量で1.5質量部添加し、イオン交換水で最終固形分濃度が52%となるように調整し、さらに10分間混合した。これを減圧下で脱泡処理して流動性の良い二次電池負極用スラリー組成物を得た。
そして、得られた負極用スラリー組成物を、集電体である厚さ20μmの銅箔の上に、コンマコーターを用いて乾燥後の膜厚が150μm程度になるように塗布し、乾燥させた。この乾燥は、銅箔を0.5m/分の速度で60℃のオーブン内を2分間かけて搬送することにより行った。その後、120℃にて2分間加熱処理して、プレス前の負極原反を得た。このプレス前の負極原反をロールプレスで圧延して、負極合材層の厚みが80μmのプレス後の負極を得た。
【0071】
<正極>
正極活物質として体積平均粒子径12μmのLiNi
1/3Mn
1/3Co
1/3O
2(NMC)を100部、導電材としてアセチレンブラック(電気化学工業社製、「HS−100」)を2部、及び正極用結着材としてPVDF(クレハ社製、「#7208」)を固形分相当で2部に対して、NMPを全固形分濃度が70%となるように添加し、混合液を得た。得られた混合液をプラネタリーミキサーにより混合し、正極用スラリー組成物を調製した。
得られた正極用スラリー組成物を、集電体である厚さ20μmのアルミ箔の上に、乾燥後の膜厚が150μm程度になるように、コンマコーターを使用して塗布し、乾燥させた。この乾燥は、銅箔を0.5m/分の速度で60℃のオーブン内を2分間かけて搬送することにより行った。その後、120℃にて2分間加熱処理して、プレス前の正極原反を得た。このプレス前の正極原反をロールプレスで圧延して、正極合材層の厚みが80μmのプレス後の正極を得た。
【0072】
<二次電池>
得られたプレス後の正極を49cm×5cmに切り出して、正極合材層側の表面が上側になるように置き、その上に55cm×5.5cmに切り出した機能層つきセパレータを正極合材層と機能層とが対向するように配置した。さらに、得られたプレス後の負極を、50cm×5.2cmの正方形に切り出し、これをセパレータ上に、負極合材層側の表面がセパレータに向かい合うよう配置した。これを捲回機により、捲回し、捲回体を得た。この捲回体を60℃、0.5MPaでプレスし、扁平体とし、電池の外装としてのアルミ包材外装で包み、電解液(溶媒:EC/DEC/VC=68.5/30/1.5(体積比)、電解質:濃度1MのLiPF
6)を空気が残らないように注入し、さらに、アルミ包材外装の開口を密封するために、150℃のヒートシールをしてアルミ包材外装を閉口し、放電容量800mAhの捲回型リチウムイオン二次電池を製造した。
そして、二次電池の高温サイクル特性及び低温出力特性を評価した。結果を表1に示す。
【0073】
(実施例2)
機能層用組成物の調製時に、無機物のハイドロタルサイトを88質量部、結着材を12質量部とした以外は実施例1と同様にして、結着材、機能層用組成物、セパレータ、負極、正極および二次電池を製造した。調製した機能層用組成物の粘度を、25℃で、B型粘度計(東機産業株式会社製、「TVB−10M」)を使用して測定したところ、60rpmで80mPa・s であった。そして、実施例1と同様にして各種評価を行った。結果を表1に示す。
【0074】
(実施例3)
無機物として、組成が(Mg
0.6Al
0.4O
1.15)あるハイドロタルサイトを用いた以外は、実施例1と同様にして各種評価を行った。結果を表1に示す。なお、かかるハイドロタルサイトの各XRD回折強度は、それぞれ表1に示す通りであった。
【0075】
(実施例4)
無機物として、組成が(Mg
0.75Al
0.25O
1.15)であるハイドロタルサイトを用いた以外は、実施例1と同様にして各種評価を行った。結果を表1に示す。なお、かかるハイドロタルサイトの各XRD回折強度は、それぞれ表1に示す通りであった。
【0076】
(実施例5)
無機物として、ハイドロタルサイト「KW2000」を800℃で1時間加熱して得たハイドロタルサイトを使用した以外は、実施例1と同様にして各種評価を行った。結果を表1に示す。なお、かかるハイドロタルサイトの各XRD回折強度は、それぞれ表1に示す通りであった。
【0077】
(実施例6)
無機物として、ハイドロタルサイト「KW2000」を1200℃で1時間加熱して得たハイドロタルサイトを使用した以外は、実施例1と同様にして各種評価を行った。結果を表1に示す。なお、かかるハイドロタルサイトの各XRD回折強度は、それぞれ表1に示す通りであった。
【0078】
(実施例7)
無機物を、高回折角度側から積算した回折強度の積算累計が全積算累計の50%になる位置の2θに対応する面間隔が0.32nmであり、80%になる位置の2θに対応する面間隔が0.61nmであるゼオライト(東亜合成株式会社製、「IXEPLAS−A1」)に変更した以外は実施例1と同様にして、結着材、機能層用組成物、セパレータ、負極、正極および二次電池を製造した。調製した機能層用組成物の粘度を、25℃で、B型粘度計(東機産業株式会社製、「TVB−10M」)を使用して測定したところ、60rpmで55mPa・s であった。そして、実施例1と同様にして各種評価を行った。結果を表1に示す。
【0079】
(比較例1)
無機物を、高回折角度側から積算した回折強度の積算累計が全積算累計の50%になる位置の2θに対応する面間隔が0.6nmであり、80%になる位置の2θに対応する面間隔が0.9nmであるゼオライト(東亜合成株式会社製、「IXE−300」)に変更した以外は実施例1と同様にして、結着材、機能層用組成物、セパレータ、負極、正極および二次電池を製造した。調製した機能層用組成物の粘度を、25℃で、B型粘度計(東機産業株式会社製、「TVB−10M」)を使用して測定したところ、60rpmで70mPa・s であった。そして、実施例1と同様にして各種評価を行った。結果を表1に示す。
【0080】
(比較例2)
無機物を、高回折角度側から積算した回折強度の積算累計が全積算累計の50%になる位置の2θに対応する面間隔が0.5nmであり、80%になる位置の2θに対応する面間隔が0.7nmであるハイドロタルサイト(協和化学工業株式会社製、「DHT-4A-2」、組成:Mg
4.3Al
2(OH)
12.6CO
3・mH
2O)に変更した以外は実施例1と同様にして、結着材、機能層用組成物、セパレータ、負極、正極および二次電池を製造した。調製した機能層用組成物の粘度を、25℃で、B型粘度計(東機産業株式会社製、「TVB−10M」)を使用して測定したところ、60rpmで68mPa・s であった。そして、実施例1と同様にして各種評価を行った。結果を表1に示す。
【0081】
(比較例3)
無機物を、高回折角度側から積算した回折強度の積算累計が全積算累計の50%になる位置の2θに対応する面間隔が0.38nmであり、80%になる位置の2θに対応する面間隔が0.72nmであるハイドロタルサイトに変更した以外は実施例1と同様にして、結着材、機能層用組成物、セパレータ、負極、正極および二次電池を製造した。調製した機能層用組成物の粘度を、25℃で、B型粘度計(東機産業株式会社製、「TVB−10M」)を使用して測定したところ、60rpmで70mPa・s であった。そして、実施例1と同様にして各種評価を行った。結果を表1に示す。
【0082】
【表1】
【0083】
表1より、所定の面間隔を有する無機物を含有する機能層用組成物を用いた実施例1〜7では、二次電池に優れた高温サイクル特性及び低温出力特性を発揮させ得る機能層を形成できることが分かる。
また、表1より、所定の面間隔を有さない無機物を含有する機能層用組成物を用いた比較例1〜3による機能層では、二次電池に優れた高温サイクル特性及び低温出力特性を発揮させることができない。