(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
請求項1〜4のいずれか1項に記載の製造方法で得られた前記複合材料シートを厚み方向に複数枚積層して、或いは、請求項1〜4のいずれか1項に記載の製造方法で得られた前記複合材料シートを折畳して、積層体を得る工程と、
前記積層体を、積層方向に対して45°以下の角度でスライスし、熱伝導シートを得るスライス工程と、
を含む、熱伝導シートの製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。
本発明の複合材料シートの製造方法は、樹脂と粒子状炭素材料とを含む複合材料シートを製造する際に用いることができる。そして、本発明の複合材料シートの製造方法を用いて製造した複合材料シートは、特に限定されることなく、熱伝導性や導電性に優れるシート状の部材として、各種用途に用いることができる。
また、本発明の複合材料シートの製造方法により製造された複合材料シートは、本発明の熱伝導シートの製造方法に従って熱伝導シートを製造する際に用いることができる。そして、本発明の熱伝導シートの製造方法を用いて製造した熱伝導シートは、発熱体に放熱体を取り付ける際に発熱体と放熱体との間に挟み込んで使用することができる。即ち、本発明の熱伝導シートの製造方法を用いて製造した熱伝導シートは、ヒートシンク、放熱板、放熱フィン等の放熱体と共に放熱装置を構成することができる。
【0019】
なお、本発明の製造方法に従って製造した複合材料シートおよび熱伝導シートは、熱伝導性、強度、硬度、および導電性に優れている。従って、複合材料シートおよび熱伝導シートは、例えば、各種機器および装置などにおいて使用される放熱材料、放熱部品、冷却部品、温度調節部品、電磁シールド部品として好適である。ここで、各種機器および装置などとしては、特に限定されることなく、サーバー、サーバー用パソコン、デスクトップパソコン等の電子機器;ノートパソコン、電子辞書、PDA、携帯電話、ポータブル音楽プレイヤー等の携帯電子機器;液晶ディスプレイ(バックライトを含む)、プラズマディスプレイ、LED、有機EL、無機EL、液晶プロジェクタ、時計等の表示機器;インクジェットプリンタ(インクヘッド)、電子写真装置(現像装置、定着装置、ヒートローラ、ヒートベルト)等の画像形成装置;半導体素子、半導体パッケージ、半導体封止ケース、半導体ダイボンディング、CPU、メモリ、パワートランジスタ、パワートランジスタケース等の半導体関連部品;リジッド配線板、フレキシブル配線板、セラミック配線板、ビルドアップ配線板、多層基板等の配線基板(配線板にはプリント配線板なども含まれる);真空処理装置、半導体製造装置、表示機器製造装置等の製造装置;断熱材、真空断熱材、輻射断熱材等の断熱装置;DVD(光ピックアップ、レーザー発生装置、レーザー受光装置)、ハードディスクドライブ等のデータ記録機器;カメラ、ビデオカメラ、デジタルカメラ、デジタルビデオカメラ、顕微鏡、CCD等の画像記録装置;充電装置、リチウムイオン電池、燃料電池等のバッテリー機器等が挙げられる。
【0020】
(複合材料シートの製造方法)
本発明の複合材料シートの製造方法では、樹脂と粒子状炭素材料とを含有する複合粒子を加圧してシート状に成形し、複合材料シートを製造する。ここで、本発明の複合材料シートの製造方法は、分級操作を経て得た所定の複合粒子を用いて加圧用複合粒子を準備する工程(加圧用複合粒子の準備工程)と、前記加圧用複合粒子を加圧する工程(加圧工程)とを含むことを特徴とする。そして、本発明の複合材料シートの製造方法では、所定の複合粒子を用いて準備した加圧用複合粒子に圧力を加えて複合材料シートを成形するので、高い熱伝導性、高い強度、および良好な硬度を並立させた複合材料シートが得られる。なお、加圧用複合粒子を用いることで熱伝導性、強度、および硬度に優れる複合材料シートが得られる理由は、明らかではないが、後に詳細に説明するように、加圧用複合粒子をシート状に加圧して得た複合材料シートでは、加圧時に粒子状炭素材料が良好に配向すると共に粒子状炭素材料同士の接触によって伝熱経路が良好に形成されるためであると推察される。
以下、各工程について具体的に説明する。
【0021】
<加圧用複合粒子の準備工程>
本発明の複合材料シートの製造方法に含まれる加圧用複合粒子の準備工程は、粒子状炭素材料および樹脂を含有する複合粒子を準備する工程(A)と、得られた複合粒子を少なくとも2つの複合粒子群に分級する工程(B)と、分級により得られた複合粒子群のうちの所定の複合粒子群に含まれている複合粒子を用いて加圧用複合粒子を準備する工程(C)とを含む。そして、加圧用複合粒子の準備工程で準備された加圧用複合粒子は、加圧による複合材料シートの成形に用いられる。
【0022】
[工程(A)]
ここで、工程(A)では、本発明の製造方法に従って複合材料シートを製造する際の材料(複合材料)として、粒子状炭素材料および樹脂を含有する複合粒子を準備する。
【0023】
[[複合粒子]]
工程(A)で準備される複合粒子は、粒子状炭素材料および樹脂を含有する。また、工程(A)で準備される複合粒子は、必要に応じて、繊維状炭素材料、および複合材料シートの成形に用いられる複合材料に一般に配合され得る既知の添加剤を含有することができる。
【0024】
−粒子状炭素材料−
ここで、複合粒子の粒子状炭素材料としては、特に限定されることなく、例えば、人造黒鉛、鱗片状黒鉛、薄片化黒鉛、天然黒鉛、酸処理黒鉛、膨張性黒鉛、膨張化黒鉛などの黒鉛;カーボンブラック;などを用いることができる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。中でも、粒子状炭素材料としては、膨張化黒鉛を用いることが好ましい。膨張化黒鉛を使用すれば、複合粒子を用いて製造した複合材料シートの熱伝導性を更に向上させることができるからである。
【0025】
=膨張化黒鉛=
ここで、粒子状炭素材料として好適に使用し得る膨張化黒鉛は、例えば、鱗片状黒鉛などの黒鉛を硫酸などで化学処理して得た膨張性黒鉛を、熱処理して膨張させた後、微細化することにより得ることができる。そして、膨張化黒鉛としては、例えば、伊藤黒鉛工業社製のEC1500、EC1000、EC500、EC300、EC100、EC50(いずれも製品名)等が挙げられる。また、膨張化黒鉛としては鱗片状の膨張化黒鉛が好ましい。粒子状炭素材料として鱗片状の膨張化黒鉛を用いることにより、製造される複合材料シート内において粒子状炭素材料が更に良好に配向すると共に、各粒子状炭素材料同士の接触が容易になって、伝熱経路を形成し易いからである。
【0026】
=粒子状炭素材料の性状=
ここで、複合粒子に含有されている粒子状炭素材料の粒子径は、特に限定されないが、体積換算のモード径で150μm以上であることが好ましく、500μm以下であることが好ましく、300μm以下であることがより好ましい。粒子状炭素材料の粒子径が上記下限以上であれば、粒子状炭素材料同士が良好に接触し、複合材料シートに高い熱伝導性を発揮させやすい。また、粒子状炭素材料の粒子径が上記上限以下であれば、共に複合される樹脂との接触面積が大きくなり、複合材料シートに良好な強度および硬度を発揮させやすい。
また、本発明の複合粒子に含有されている粒子状炭素材料のアスペクト比(長径/短径)は、1以上10以下であることが好ましく、1以上5以下であることがより好ましい。
なお、本発明において「体積換算のモード径」は、レーザー回折/散乱式粒子径分布測定装置を用いて測定することができる。具体的には、粒子状炭素材料の「体積換算のモード径」は、粒子状炭素材料を溶媒に分散させた懸濁液を用いて得られた粒子径分布曲線の極大値における粒子径として求めることができる。
また、本発明において、「アスペクト比」は、任意の50個の粒子状炭素材料について、SEM(走査型電子顕微鏡)を用いて最大径(長径)と、最大径に直交する方向の粒子径(短径)とを測定し、長径と短径の比(長径/短径)の平均値を算出することにより求めることができる。
ここで、複合粒子中に含まれている粒子状炭素材料の「粒子径」および「アスペクト比」の測定は、例えば、複合粒子に含まれている樹脂に対する良溶媒を用いて樹脂を溶解させる等の任意の手法を用いて、複合粒子から粒子状炭素材料を取り出して行うことができる。
【0027】
=粒子状炭素材料の含有量=
そして、複合粒子は、粒子状炭素材料の含有量(質量換算)が、樹脂に対して0.6倍以上であることが好ましく、2.0倍以下であることが好ましい。樹脂に対する粒子状炭素材料の含有量が0.6倍以上であれば、複合粒子を用いて製造した複合材料シートの熱伝導性を十分に高めることができる。また、樹脂に対する粒子状炭素材料の含有量が2.0倍以下であれば、複合材料シートに高い強度を与えつつシートを成形することができると共に、複合粒子を用いて製造した複合材料シートの硬度が上昇する(即ち、柔軟性が低下する)のを抑制することができる。
【0028】
−繊維状炭素材料−
ここで、複合粒子は、上述の粒子状炭素材料に加えて繊維状炭素材料を更に含有することができる。繊維状炭素材料としては、特に限定されることなく、熱伝導性を有する任意の繊維状炭素材料を用いることができる。具体的には、繊維状炭素材料としては、例えば、気相成長炭素繊維、有機繊維を炭化して得られる炭素繊維、カーボンナノチューブ(以下、「CNT」と称することがある。)等の円筒形状の炭素ナノ構造体、炭素の六員環ネットワークが扁平筒状に形成されてなる炭素材料等の非円筒形状の炭素ナノ構造体、およびそれらの切断物などを用いることができる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0029】
中でも、粒子状炭素材料と併用される繊維状炭素材料としては、更に良好な伝熱経路を形成して複合材料シートの熱伝導性を更に向上させ得る観点からは、CNTを含む繊維状炭素材料を用いることが好ましい。また、CNTとしては、特に限定されることなく、単層カーボンナノチューブおよび/または多層カーボンナノチューブを用いることができるが、複合材料シートの熱伝導性を更に向上させ得る観点からは、CNTは、単層カーボンナノチューブを主に含むことがより好ましく、単層カーボンナノチューブのみであることが更に好ましい。
なお、本発明において、単層カーボンナノチューブを「主に含む」とは、単層カーボンナノチューブの含有割合が90質量%以上であることを指す。
【0030】
=繊維状炭素材料の作製方法=
なお、CNTを含む繊維状炭素材料は、特に限定されることなく、アーク放電法、レーザーアブレーション法、または、スーパーグロース法(国際公開第2006/011655号参照)を含む化学的気相成長法(CVD法)などの既知のCNTの合成方法を用いて製造することができる。なお、以下では、スーパーグロース法により得られるカーボンナノチューブを「SGCNT」と称することがある。
【0031】
=繊維状炭素材料の性状=
ここで、繊維状炭素材料の平均直径は、0.5nm以上であることが好ましく、15nm以下であることが好ましい。繊維状炭素材料の平均直径が0.5nm以上であれば、繊維状炭素材料の凝集を抑制して、複合材料シートの熱伝導性を更に向上させることができる。また、繊維状炭素材料の平均直径が15nm以下であれば、繊維状炭素材料に優れた熱伝導性を発揮させ、複合材料シートの熱伝導性を更に高めることができる。
【0032】
また、繊維状炭素材料は、合成時における平均長さが、1μm以上であることが好ましい。合成時の繊維状炭素材料の平均長さが1μm以上であれば、複合材料シート中において伝熱経路を良好に形成することができる。また、合成時の繊維状炭素材料の長さが長いほど、複合粒子を準備する過程で繊維状炭素材料に破断や切断などの損傷が発生し易いので、合成時の繊維状炭素材料の平均長さは5000μm以下であることが好ましい。
なお、繊維状炭素材料は、通常、アスペクト比が10超である。
【0033】
また、熱伝導性に優れる複合材料シートを得る観点からは、繊維状炭素材料は、BET比表面積が、200m
2/g以上であることが好ましく、2500m
2/g以下であることが好ましい。繊維状炭素材料のBET比表面積が200m
2/g以上であれば、繊維状炭素材料に優れた熱伝導性を発揮させ、複合材料シートの熱伝導性を十分に高めることができる。また、繊維状炭素材料のBET比表面積が2500m
2/g以下であれば、繊維状炭素材料の凝集を抑制して、複合材料シートの熱伝導性を更に向上させることができる。
【0034】
ここで、本発明において、繊維状炭素材料の「平均直径」、「アスペクト比」および「平均長さ」は、TEM(透過型電子顕微鏡)またはSEM(走査型電子顕微鏡)等の顕微鏡を用いて、無作為に選択した繊維状炭素材料100本の直径(外径)および長さを測定して求めることができる。また、本発明において、繊維状炭素材料の「BET比表面積」とは、BET法を用いて測定した窒素吸着比表面積を指す。
【0035】
=繊維状炭素材料の配合量=
そして、複合粒子中の繊維状炭素材料の含有量は、樹脂100質量部当たり、0.05質量部以上とすることができ、5.0質量部以下とすることができる。樹脂100質量部当たりの繊維状炭素材料の含有量が0.05質量部以上であれば、複合材料シートの熱伝導性を十分に高めることができる。また、樹脂100質量部当たりの繊維状炭素材料の含有量が5.0質量部以下であれば、繊維状炭素材料の配合により複合材料シートの硬度が上昇する(即ち、柔軟性が低下する)のを十分に抑制しつつ複合材料シートを良好に成形することができる。
【0036】
−樹脂−
複合粒子に含まれる樹脂としては、特に限定されることなく、複合材料シートの製造に使用され得る既知の樹脂を用いることができる。具体的には、樹脂としては、熱可塑性樹脂または熱硬化性樹脂を用いることができる。なお、本発明において、ゴムおよびエラストマーは、「樹脂」に含まれるものとする。また、熱可塑性樹脂と熱硬化性樹脂とは併用してもよい。
【0037】
=熱可塑性樹脂=
なお、熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリ(アクリル酸2−エチルヘキシル)、アクリル酸とアクリル酸2−エチルヘキシルとの共重合体、ポリメタクリル酸またはそのエステル、ポリアクリル酸またはそのエステルなどのアクリル樹脂;シリコーン樹脂;ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリテトラフルオロエチレンのアクリル変性物、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体、ビニリデンフルオライド−テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体などのフッ素樹脂;ポリエチレン;ポリプロピレン;エチレン−プロピレン共重合体;ポリメチルペンテン;ポリ塩化ビニル;ポリ塩化ビニリデン;ポリ酢酸ビニル;エチレン−酢酸ビニル共重合体;ポリビニルアルコール;ポリアセタール;ポリエチレンテレフタレート;ポリブチレンテレフタレート;ポリエチレンナフタレート;ポリスチレン;ポリアクリロニトリル;スチレン−アクリロニトリル共重合体;アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体(ABS樹脂);スチレン−ブタジエンブロック共重合体またはその水素添加物;スチレン−イソプレンブロック共重合体またはその水素添加物;ポリフェニレンエーテル;変性ポリフェニレンエーテル;脂肪族ポリアミド類;芳香族ポリアミド類;ポリアミドイミド;ポリカーボネート;ポリフェニレンスルフィド;ポリサルホン;ポリエーテルサルホン;ポリエーテルニトリル;ポリエーテルケトン;ポリケトン;ポリウレタン;液晶ポリマー;アイオノマー;などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0038】
=熱硬化性樹脂=
また、熱硬化性樹脂としては、例えば、天然ゴム;ブタジエンゴム;イソプレンゴム;ニトリルゴム;水素化ニトリルゴム;クロロプレンゴム;エチレンプロピレンゴム;塩素化ポリエチレン;クロロスルホン化ポリエチレン;ブチルゴム;ハロゲン化ブチルゴム;ポリイソブチレンゴム;エポキシ樹脂;ポリイミド樹脂;ビスマレイミド樹脂;ベンゾシクロブテン樹脂;フェノール樹脂;不飽和ポリエステル;ジアリルフタレート樹脂;ポリイミドシリコーン樹脂;ポリウレタン;熱硬化型ポリフェニレンエーテル;熱硬化型変性ポリフェニレンエーテル;などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0039】
上述した中でも、複合粒子の樹脂としては、熱可塑性樹脂を用いることが好ましく、フッ素樹脂を用いることがより好ましく、異なる単量体からなる二元系フッ素樹脂または三元系フッ素樹脂を用いることがより好ましい。そして、例えば三元系フッ素樹脂としては、ビニリデンフルオライド−テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体を用いることができる。上記フッ素樹脂は機械的性質等に優れており、また、フッ素樹脂などの熱可塑性樹脂を用いれば、複合材料シートの強度や硬度(柔軟性)を更に向上させることができるからである。
【0040】
=樹脂の含有量=
ここで、複合粒子に含まれる樹脂の含有量は任意の配合量とすることができる。例えば、粒子状炭素材料などと樹脂とを良好に複合させる観点からは、複合粒子に含まれる樹脂は、複合粒子に含まれる粒子状炭素材料100質量部に対して50質量部以上が好ましく、55質量部以上がより好ましく、150質量部以下が好ましく、100質量部以下がより好ましく、70質量部以下が更に好ましい。粒子状炭素材料100質量部当たりの樹脂の含有量が150質量部以下であれば、複合材料シートの熱伝導性を十分に高めることができる。また、粒子状炭素材料100質量部当たりの樹脂の含有量が50質量部以上であれば、複合材料シートに高い強度を与えつつシートを成形することができると共に、複合材料シートの硬度が上昇する(即ち、柔軟性が低下する)のを十分に抑制することができる。
【0041】
−添加剤−
複合粒子に任意に配合し得る添加剤としては、特に限定されることなく、例えば、赤リン系難燃剤、リン酸エステル系難燃剤などの難燃剤;セバシン酸などの可塑剤;酸化カルシウム、酸化マグネシウムなどの吸湿剤;シランカップリング剤、チタンカップリング剤、酸無水物などの接着力向上剤;ノニオン系界面活性剤、フッ素系界面活性剤などの濡れ性向上剤;無機イオン交換体などのイオントラップ剤;等が挙げられる。中でも、リン酸エステルなどのリン酸エステル系難燃剤を添加することが好ましい。
【0042】
−複合粒子の準備方法−
そして、工程(A)では、既知の手法を用いて、上述の粒子状炭素材料と、樹脂と、任意に繊維状炭素材料および添加剤とを複合化することにより、複合粒子を得ることができる。具体的には、工程(A)では、特に限定されることなく、例えば以下の(I)または(II)の方法を用いて複合粒子を準備することができる。
(I)粒子状炭素材料と、樹脂と、任意の繊維状炭素材料および添加剤とを混練した後(混練段階)、得られた混練物を粉砕して(粉砕段階)複合粒子を得る。
(II)粒子状炭素材料と、樹脂と、任意の繊維状炭素材料および添加剤とを含む分散液を乾燥造粒して複合粒子を得る。
中でも、粒子状炭素材料および樹脂を良好に複合化させる観点、および作業の容易性の観点から、(I)の方法が望ましい。
【0043】
=混練段階=
工程(A)に含まれ得る混練段階では、粒子状炭素材料と、樹脂と、任意の繊維状炭素材料および添加剤とを混錬し、粒子状炭素材料および樹脂を含有し、任意に繊維状炭素材料および添加剤を更に含有する混練物を得る。
【0044】
ここで、混練段階で得られる混練物は、通常、直径1mm〜200mm程度の塊状体である。
なお、混練段階で得られる混練物に含有される「粒子状炭素材料」、「樹脂」、並びに、任意の「繊維状炭素材料」および「添加剤」は、上述した複合粒子に含有され得る「粒子状炭素材料」、「樹脂」、「繊維状炭素材料」および「添加剤」と同様のものであり、その種類、性状、配合量、作製方法等も同様であるので、以下では説明を省略する。
【0045】
ここで、混練方法は、特に限定されることなく、ニーダー;ホバートミキサー、バンバリーミキサー、ハイスピードミキサーなどのミキサー;二軸混練機;ロール;等の既知の混練装置を用いた方法とすることができる。そして、混練時間は、例えば5分以上60分以下とすることができる。また、混練温度は、例えば5℃以上150℃以下とすることができる。
なお、混練は、酢酸エチル等の溶媒の存在下で行ってもよく、混練時に溶媒を用いる場合には、溶媒を除去してから後述する粉砕段階へと移行することが好ましい。溶媒の除去は既知の乾燥方法にて行える。
【0046】
=粉砕段階=
工程(A)に含まれ得る粉砕段階では、例えば、上述の混練段階で得られた混練物を任意の手法で適度に粉砕することにより、粒子状炭素材料および樹脂を含有する複合粒子を得る。
【0047】
ここで、粉砕段階で得られる複合粒子は、特に制限されることなく、1000μm未満の粒子径にまで粉砕されていることが好ましい。
【0048】
ここで、粉砕方法は、特に限定されることなく、せん断作用や摩砕作用を利用した既知の粉砕装置または撹拌式の既知の粉砕装置等を用いて行うことができる。せん断作用や摩砕作用を利用した、または攪拌式の既知の粉砕装置としては、例えば、カッターミル、ハンマーミル、ビーズミル、振動ミル、流星型ボールミル、サンドミル、ボールミル、ロールミル、三本ロールミル、ジェットミル、高速回転式粉砕機等を挙げることができる。中でも、カッターミルまたはハンマーミルを用いることが望ましい。
また、粉砕条件は、所望の粉砕粒子径に合わせて粉砕装置、粉砕時間などを適宜調整すればよい。例えば、カッターミルを用いる場合は、粉砕時間は10秒以上60秒以下であることが好ましく、ハンマーミルを用いる場合は、粉砕時間は5秒以上30秒以下であることが好ましい。
【0049】
[工程(B)]
工程(B)では、工程(A)で準備された複合粒子を、最大体積平均粒子径を有する複合粒子群Aおよび最小体積平均粒子径を有する複合粒子群Bを含む、少なくとも2つの複合粒子群に分級する。つまり、工程(B)では、最大体積平均粒子径を有する複合粒子群Aおよび最小体積平均粒子径を有する複合粒子群Bのみを得てもよい。また、工程(B)では、最大体積平均粒子径を有する複合粒子群Aと、最小体積平均粒子径を有する複合粒子群Bと、当該最大体積平均粒子径および当該最小体積平均粒子径の間の体積平均粒子径を有する任意のその他の複合粒子群とを得てもよい。ここで、当該その他の複合粒子群は一つであっても複数であってもよい。
なお、複合粒子群の数および各複合粒子群の体積平均粒子径は、工程(B)における複合粒子の分級方法および分級条件を変更することにより調整することができる。
【0050】
[[複合粒子群Aおよび複合粒子群B]]
工程(B)で得られる複合粒子群Aは最大体積平均粒子径を有することが必要であり、工程(B)で得られる複合粒子群Bは最小体積平均粒子径を有することが必要である。例えば、ふるいを用いて複合粒子を分級した場合は、目開きが最も大きいふるいのふるい上が複合粒子群Aとなり、目開きが最も小さいふるいのふるい下が複合粒子群Bとなる。
ここで、「最大/最小体積平均粒子径」とは、複合粒子の分級により得られる少なくとも2つの複合粒子群の各複合粒子群について測定した、各体積平均粒子径の中での最大/最小を指し、相対的な概念である。
【0051】
つまり、例えば、分級により得られた複合粒子群が2つであり、且つ各体積平均粒子径がαμmおよびβμm(ここで、αμm<βμmである。)であれば、体積平均粒子径がβμmである複合粒子群が複合粒子群Aとなり、体積平均粒子径がαμmである複合粒子群が複合粒子群Bとなる。具体的には、分級により得られた2つの複合粒子群の体積平均粒子径がそれぞれ100μmおよび800μmであれば、体積平均粒子径が800μmである複合粒子群が複合粒子群Aとなり、体積平均粒子径が100μmである複合粒子群が複合粒子群Bとなる<群1>。また、例えば、得られた複合粒子群が3つであり、且つ各体積平均粒子径が200μm、400μm、および800μmであれば、体積平均粒子径が800μmである複合粒子群が複合粒子群Aとなり、体積平均粒子径が200μmである複合粒子群が複合粒子群Bとなる<群2>。さらに、例えば、得られた複合粒子群が4つであり、且つ各体積平均粒子径が200μm、400μm、800μm、および1000μmであれば、体積平均粒子径が1000μmである複合粒子群が複合粒子群Aとなり、体積平均粒子径が200μmである複合粒子群が複合粒子群Bとなる<群3>。このように、複合粒子群Aおよび複合粒子Bが有する体積平均粒子径は、分級される粒子径範囲によって異なる。
なお、複合粒子群の「体積平均粒子径」とは、上述のD50を指し、上述のレーザー回折/散乱式粒子径分布測定装置を用いて測定することができる。
【0052】
[[その他の複合粒子群]]
工程(B)で得られ得るその他の複合粒子群は、最大体積平均粒子径および最小体積平均粒子径の間の体積平均粒子径を有する任意の数の複合粒子群である。
つまり、上述の<群1>ではその他の複合粒子群は存在せず、上述の<群2>では体積平均粒子径が400μmである複合粒子群がその他の複合粒子群となる。また、上述の<群3>では、体積平均粒子径が400μmおよび800μmである2つの複合粒子群がそれぞれその他の複合粒子群となる。
【0053】
−分級の方法−
ここで、分級は、得られた複合粒子の分離が可能であれば特に限定されることなく、例えば、ふるい分法、強制渦流型遠心分級機(ミクロンセパレーター、ターボプレックス、ターボクラシファイアー、スーパーセパレーター)、慣性分級機(改良型バーチュウアルインパクター、エルボジェット)等の気流分級機が使用できる。また湿式の沈降分離法や遠心分級法等も使用可能である。中でも、作業の簡便性の観点より、所望の目開きを有するふるい分法が好ましく、当該ふるい分法は手作業で行うことがより好ましい。
なお、良好な加圧用複合粒子を得る観点からは、ふるいを用いて複合粒子を分級する場合には、ふるいの目開きが500μm以下のふるいを一つ以上用いて分級することが好ましく、ふるいの目開きが250μm以下のふるいを一つ以上用いて分級することがより好ましく、また、使用するふるいの目開きは150μm以上であることが好ましい。
ここで、分級温度は、特に制限なく、例えば25℃下で行うことができる。
【0054】
[工程(C)]
工程(C)では、工程(B)で得られた複合粒子群のうち、複合粒子群A以外の複合粒子群に含まれている複合粒子を用いることにより、加圧用複合粒子を準備する。
【0055】
ここで、「複合粒子群A以外の複合粒子群に含まれている複合粒子を用いる」とは、例えば、上述の<群1>では、分級により得られた複合粒子群Bに含まれている複合粒子のみを用いて(つまり、複合粒子群Aを工程(A)で得た複合粒子全体から取り除いて)加圧用複合粒子を準備することを指す。
【0056】
また、例えば、上述の<群2>では、複合粒子群Bおよびその他の複合粒子群に含まれている複合粒子の少なくとも一方を用いて(つまり、少なくとも、複合粒子群Aを工程(A)で得た複合粒子全体から取り除いて)加圧用複合粒子を準備する。即ち、上述の<群2>では、複合粒子群Bおよびその他の複合粒子群に含まれている複合粒子を用いて加圧用複合粒子を準備してもよいし、複合粒子群Bに含まれている複合粒子のみを用いて加圧用複合粒子を準備してもよいし、その他の複合粒子群に含まれている複合粒子のみを用いて加圧用複合粒子を準備してもよい。
このように、工程(C)では、加圧用複合粒子の準備に用いられる複合粒子群から、少なくとも複合粒子群Aを除去することを必要とする。また、工程(C)は、加圧用複合粒子の準備に用いられる複合粒子群から、複合粒子群A以外の複合粒子群(複合粒子群Bおよび/またはその他の複合粒子群)を除去することを制限しない。
なお、上述の<群2>において、複合粒子群Bおよびその他の複合粒子群に含まれている複合粒子を用いて加圧用複合粒子を準備する際は、当該複合粒子群Bおよび当該その他の複合粒子群を任意の割合で混合して用いることができる。また、その際の複合粒子の混合は既知の混合方法を用いて行うことができる。
【0057】
上記同様に、例えば<群3>では、複合粒子群Bおよび2つのその他の複合粒子群の内少なくとも1つに含まれている複合粒子を用いて(つまり、少なくとも複合粒子群Aを工程(A)で得た複合粒子全体から取り除いて)加圧用複合粒子を準備する。即ち、上述の<群3>では、複合粒子群Bおよび2つのその他の複合粒子群に含まれている複合粒子を用いて加圧用複合粒子を準備してもよい。また、上述の<群3>では、複合粒子群B、および、2つのその他の複合粒子群の内いずれか一方に含まれている複合粒子を用いて加圧用複合粒子を準備してもよいし、2つのその他の複合粒子群に含まれている複合粒子のみを用いて加圧用複合粒子を準備してもよい。さらに、上述の<群3>では、複合粒子群Bおよび2つのその他の複合粒子群の内いずれか1つに含まれている複合粒子のみを用いて加圧用複合粒子を準備してもよい。
ここで、加圧用複合粒子の準備に用いられる複合粒子群Bおよび/またはその他の複合粒子群を任意の割合で混合できることは、上記<群2>の場合と同様である。
【0058】
このように、上記工程(A)、(B)、および(C)を含む加圧用複合粒子の準備工程にて得られる加圧用複合粒子は、少なくとも粗大な複合粒子群を除いた所定の複合粒子群に含まれている複合粒子を用いて準備されるため、当該加圧用複合粒子を加圧した際に、製造される複合材料シートに優れた熱伝導性を発揮させることができる。加えて、製造される複合材料シートに優れた強度および硬度を発揮させることができる。この理由は、明らかではないが、以下の通りであると推察される。
即ち、一般に、粒子状炭素材料および樹脂を含有する複合材料を加圧することにより成形したシート等の成形体では、粒子状炭素材料同士が互いに接触して熱伝導性に優れる伝熱経路が形成されることにより、熱伝導率が向上する。ここで、粒子状炭素材料および樹脂を含有する複合材料である複合粒子を分級せずに用いる場合は、大粒子径粒子と小粒子径粒子とが混在した粒子径差の大きな複合粒子の集合体を加圧することになる。通常、粒子径差の大きな粒子の集合体を加圧すると、各粒子に圧力が均一にかかりづらい。また、加圧時に大粒子径粒子同士の隙間を小粒子径粒子が流動し易いため、当該粒子の集合体に大きなせん断力がかかりづらい。
一方で、粒子状炭素材料および樹脂を含有する複合粒子を分級し、粗大な粒子径を有する複合粒子群を除去した複合粒子群を用いる場合は、各粒子に圧力が均一にかかり易く、また、加圧時に粒子の集合体に大きなせん断力がかかり易い。また、元来、比較的小さな粒子同士では粒子同士の相互接触面積が大きくなる。
従って、上述の工程(A)〜(C)を経た所定の複合粒子群を含む加圧用複合粒子を加圧することにより製造された複合材料シート内では、粒子状炭素材料同士が良好に接触し、且つ均一に受けるせん断力により当該接触がシート面内方向に連なって配向し易い。結果として、製造される複合材料シートは、面内方向に沿って伝熱経路が良好に形成され、特にシート面内配向性を有する高い熱伝導性を発揮することができる。
【0059】
また、粗大な粒子径を有する複合粒子群を除去した複合粒子群に含まれる複合粒子では、粒子状炭素材料と樹脂とが均一に複合されている。従って、当該複合粒子に上述の均一な圧力を加えた際に、粒状炭素材料同士のみならず樹脂同士も良好な配合状態で接触するため、製造される複合材料シートに優れた強度および柔軟性を発揮させることができる。
【0060】
ここで、工程(C)において用いる複合粒子を含む複合粒子群の体積平均粒子径は500μm以下であることが好ましく、400μm以下であることがより好ましく、350μm以下であることが更に好ましく、300μm以下であることが一層好ましく、150μm以上であることが好ましい。体積平均粒子径が上記上限以下である比較的小さな複合粒子群に含まれる複合粒子を用いて得られる加圧用複合粒子を加圧すれば、上述の通り、熱伝導性、強度、および硬度が更に向上した複合材料シートを製造することができるからである。また、複合粒子群の体積平均粒子径が150μm以上であれば、過度に小さい粒子同士がシート内で接触し難く伝熱経路の形成が阻害されることを抑制できるため、良好な熱伝導性を得られるからである。
【0061】
[[加圧用複合粒子]]
工程(C)で得られる加圧用複合粒子は、後述する加圧工程を経ることにより、複合材料シートを構成する。また、工程(C)で得られる加圧用複合粒子は、上述の通り、複合粒子群A以外の複合粒子群に含まれている複合粒子を用いて準備される。そして、複合粒子群A以外の比較的小さな複合粒子群に含まれる複合粒子を用いて得られる加圧用複合粒子を加圧することにより、製造される複合材料シートに高い熱伝導性、高い強度、および良好な硬度を与えることできる。
【0062】
−加圧用複合粒子の性状−
ここで、加圧用複合粒子は、粒子径500μm以上の複合粒子の含有率が40体積%未満であることが好ましく、35体積%未満であることがより好ましく、25体積%未満であることが更に好ましい。分級された比較的大きな複合粒子群を除去し、粒子径500μm以上の複合粒子の含有率を40体積%未満とした加圧用複合粒子を後述の加圧工程にて加圧すれば、熱伝導性、強度、および硬度が更に向上した複合材料シートを製造することができるからである。
なお、加圧用複合粒子の粒子径分布は、上記工程(B)における複合粒子の分級方法および加圧用複合粒子の準備に用いる複合粒子群の組み合わせ方を変更することにより調整することができる。
【0063】
<加圧工程>
そして、本発明の複合材料シートの製造方法は、上述した加圧用複合粒子の準備工程で準備された加圧用複合粒子を加圧してシート状に成形することにより複合材料シートを得る、加圧工程を含むことを必要とする。上述の所定の加圧用複合粒子に圧力を加えれば、面内方向に優れた熱伝導性を有しつつ、高い強度および良好な硬度を並立させた複合材料シートを製造することができる。
【0064】
[加圧方法]
ここで、加圧は、加圧用複合粒子に圧力が負荷される成形方法であれば特に限定されることなく、プレス成形、圧延成形または押し出し成形などの既知の成形方法を行うことができる。中でも、加圧用複合粒子は、圧延成形によりシート状に成形することが好ましく、保護フィルムに挟んだ状態でロール間を通過させてシート状に成形することがより好ましい。なお、保護フィルムとしては、特に限定されることなく、サンドブラスト処理を施したポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム、シリコーン離型処理を施したPETフィルム等を用いることができる。また、ロール温度は5℃以上150℃以下、ロール間隙は50μm以上2500μm以下、ロール線圧は1kg/cm以上3000kg/cm以下、ロール速度は0.1m/分以上20m/分以下とすることができる。
【0065】
そして、加圧工程を経て製造された複合材料シートでは、上述の通り粒子状炭素材料が主としてシート面内方向に配列すると推察される。更に、当該複合材料シートでは、粒子状炭素材料同士の接触によって面内方向に伝熱経路が良好に形成される。従って、上記製造方法を用いて製造された複合材料シートは、特に面内方向の熱伝導性が向上すると推察される。また、上記製造方法を用いて製造された複合材料シートは、上述の通り、強度および硬度にも優れている。
なお、複合材料シートの厚みは、特に限定されることなく、例えば、0.05mm以上2mm以下とすることができる。また、複合材料シートの熱伝導性を更に向上させる観点からは、複合材料シートの厚みは、複合材料シートの製造に用いられる粒子状炭素材料の体積基準モード径の1倍超5000倍以下であることが好ましい。
【0066】
(熱伝導シートの製造方法)
本発明の熱伝導シートの製造方法では、例えば、本発明の複合材料シートの製造方法によって製造された複合材料シートを用いて積層体を得る工程(積層工程)と、積層体をスライスする工程(スライス工程)とを経て熱伝導シートを製造することができる。上述の複合材料シートに積層工程およびスライス工程を施すことにより、シート厚み方向の熱伝導性、強度、および硬度の全てに優れた熱伝導シートを製造することができる。
以下、各工程について具体的に説明する。
【0067】
<積層工程>
積層体を得る工程(積層工程)では、上述した複合材料シートの製造方法を用いて製造した複合材料シートを厚み方向に複数枚積層して、或いは、上述した複合材料シートの製造方法を用いて製造した複合材料シートを折畳または捲回して、積層体を得る。ここで、複合材料シートの積層による積層体の形成は、特に限定されることなく、積層装置を用いて行ってもよく、手作業にて行ってもよい。また、複合材料シートの折畳による積層体の形成は、特に限定されることなく、折畳機を用いて複合材料シートを一定幅で折り畳むことにより行うことができる。さらに、複合材料シートの捲回による積層体の形成は、特に限定されることなく、複合材料シートの短手方向または長手方向に平行な軸の回りに複合材料シートを捲き回すことにより行うことができる。
【0068】
ここで、通常、積層工程で得られる積層体において、複合材料シートの表面同士の接着力は、複合材料シートを積層する際の圧力や折畳または捲回する際の引っ張り力により充分に得られる。しかし、接着力が不足する場合や、積層体の層間剥離を十分に抑制する必要がある場合には、複合材料シートの表面を溶剤で若干溶解させた状態で積層工程を行ってもよいし、複合材料シートの表面に接着剤を塗布した状態または複合材料シートの表面に接着層を設けた状態で積層工程を行ってもよい。
【0069】
なお、複合材料シートの表面を溶解させる際に用いる溶剤としては、特に限定されることなく、複合材料シート中に含まれている樹脂を溶解可能な既知の溶剤(例えば、メチルエチルケトンなど)を用いることができる。
【0070】
また、複合材料シートの表面に塗布する接着剤としては、特に限定されることなく、市販の接着剤や粘着性の樹脂を用いることができる。また、複合材料シートの表面に設ける接着層としては、特に限定されることなく、両面テープなどを用いることができる。中でも、接着層としては、接着性に優れるアクリル系粘着剤を有する接着層を設けることが好ましい。そして、複合材料シートの表面に塗布する接着剤または複合材料シートの表面に設ける接着層の厚さは、例えば、1μm以上1000μm以下とすることができる。
ここで、接着剤や接着層には、得られる熱伝導シートが硬くなりすぎない範囲で熱伝導性フィラーが配合されていてもよい。
【0071】
なお、層間剥離を抑制する観点からは、得られた積層体は、積層方向に0.1MPa以上0.5MPa以下の圧力で押し付けながら、50℃以上170℃以下で10分〜8時間加熱してもよい。
【0072】
そして、複合材料シートを積層、折畳または捲回して得られる積層体では、粒子状炭素材料および任意の繊維状炭素材料が積層方向に略直交する方向に配列していると推察される。また、当該積層体では、粒子状炭素材料同士、または粒子状炭素材料および繊維状炭素材料の良好な接触によって形成される伝熱経路が、主に積層方向に略直交する方向に配列していると推察される。
【0073】
<スライス工程>
スライス工程では、上述の積層工程で得られた積層体を、積層方向に対して45°以下の角度でスライスし、積層体のスライス片よりなる熱伝導シートを得る。ここで、積層体をスライスする方法としては、特に限定されることなく、例えば、ワイヤーソー法、マルチブレード法、レーザー加工法、ウォータージェット法、ナイフ加工法等が挙げられる。中でも、熱伝導シートの厚みを均一にし易い点で、ナイフ加工法が好ましい。また、積層体をスライスする際の切断具としては、特に限定されることなく、スリットを有する平滑な盤面と、当該スリット部より突出した刃部とを有するスライス部材(例えば、鋭利な刃を備えたカッター、カンナ、スライサー)を用いることができる。
【0074】
なお、熱伝導シートの熱伝導性を高める観点からは、積層体をスライスする角度は、積層方向に対して30°以下であることが好ましく、積層方向に対して15°以下であることがより好ましく、積層方向に対して略0°である(即ち、積層方向に沿う方向である)ことが更に好ましい。
【0075】
また、積層体を容易にスライスする観点からは、スライスする際の積層体の温度は−20℃以上80℃以下とすることが好ましく、−10℃以上50℃以下とすることがより好ましい。更に、同様の理由により、スライスする積層体は、積層方向とは垂直な方向に圧力を負荷しながらスライスすることが好ましく、積層方向とは垂直な方向に0.05MPa以上0.5MPa以下の圧力を負荷しながらスライスすることがより好ましい。
【0076】
そして、スライス工程を経て得られた熱伝導シートでは、粒子状炭素材料および任意の繊維状炭素材料が熱伝導シートの厚み方向(即ち、プレ熱伝導シートとしての複合材料シートの積層方向に略直交する方向)に配列していると推察される。また、当該熱伝導シートでは、粒子状炭素材料同士、または粒子状炭素材料および繊維状炭素材料の良好な接触によって形成される伝熱経路が、主に熱伝導シートの厚み方向に配列していると推察される。従って、当該熱伝導シートは、厚み方向の熱伝導性に優れている。
また、前述した複合材料シートは強度および硬度にも優れているので、当該複合材料シートを用いて製造した熱伝導シートも、強度および硬度に優れていると推察される。
【実施例】
【0077】
以下、本発明について実施例に基づき具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。なお、以下の説明において、量を表す「%」および「部」は、特に断らない限り、質量基準である。
実施例および比較例において、熱伝導シート中の膨張化黒鉛の粒子径、複合粒子群および加圧用複合粒子の体積平均粒子径、加圧用複合粒子中における粒子径500μm以上の複合粒子の含有率、複合材料シートの強度、複合材料シートの硬度、および熱伝導シートの熱伝導率は、それぞれ以下の方法を使用して測定、算出、または評価した。
【0078】
<熱伝導シート中の膨張化黒鉛の粒子径>
製造された熱伝導シート3gを、メチルエチルケトン溶媒6g内でスターラーを用いて5分間撹拌した後、目視により、メチルエチルケトン溶媒中にシート状のものが存在しないことを確認し、熱伝導シート中に含まれている粒子状炭素材料としての膨張化黒鉛を含有する懸濁液を得た。レーザー回折/散乱式粒子径分布測定装置(堀場製作所製、型番「LA−960」)を用いて、得られた懸濁液中に含まれる膨張化黒鉛の粒子径を測定した。そして、横軸を粒子径、縦軸を膨張化黒鉛の存在比率(体積基準)とした粒子径分布曲線を得て、当該粒子径分布曲線の極大値における粒子径を、膨張化黒鉛の体積基準のモード径(μm)として求めた。結果を表1に示す。
【0079】
<複合粒子群および加圧用複合粒子の体積平均粒子径>
各複合粒子群および加圧用複合粒子100mgをそれぞれ試料とし、レーザー回折/散乱式粒子径分布測定装置(日機装製、型番「マイクロトラックMT3300EX−II」)を用いて、各複合粒子群および加圧用複合粒子の粒子径分布を得た。そして、得られた粒子径分布(体積基準)において小径側から計算した累積体積が50%となる中心粒子径(D50)を、複合粒子群に含まれている複合粒子の体積平均粒子径(μm)および加圧用複合粒子の体積平均粒子径(μm)として算出した。結果を表1に示す。
【0080】
<加圧用複合粒子中における粒子径500μm以上の複合粒子の含有率>
各加圧用複合粒子100mgを試料とし、レーザー回折/散乱式粒子径分布測定装置(日機装製、型番「マイクロトラックMT3300EX−II」)を用いて、各加圧用複合粒子の粒子径分布を得た。そして、得られた粒子径分布から、粒子径500μm以上の複合粒子の含有率(体積%)を算出した。結果を表1に示す。
【0081】
<複合材料シートの強度>
製造された複合材料シートを20mm×80mmのサイズで打ち抜き、試験体を得た。得られた試験体に対し、小型卓上試験機(日本電産シンポ製、型番「FGS−500TV」、デジタルフォースゲージとしてFGP−50を使用)を用いて、引張り速度20mm/分、チャック間距離60mmにて引張り試験を行うことにより、最大引張り強度(N)および最大時の伸びとして破断距離(mm)を測定した。得られた引張り強度および破断距離が大きい程、複合材料シートの強度が高いことを示す。結果を表1に示す。
【0082】
<複合材料シートの硬度>
複合材料シートの硬度は、複合材料シートを複数枚重ねた試験体(複合材料シート層)の硬度として評価した。ここで硬度は、日本ゴム協会規格(SRIS)のアスカーC法に準拠し測定した。
具体的には、実施例および比較例で得られた複合材料シートを幅25mm×長さ50mm×厚さ0.5mmの大きさに切り取り、24枚重ね合わせることにより試験片を得た。得られた試験片を温度23℃に保たれた恒温室内に48時間以上静置することにより、試験体としての複合材料シート層を得た。次に、指針が95〜98となるようにダンパー高さを調整し、複合材料シート層とダンパーとを衝突させた。当該衝突から60秒後の複合材料シート層のアスカーC硬度を、硬度計(高分子計器社製、製品名「ASKER CL−150LJ」)を用いて2回測定し、測定結果の平均値を採用した。アスカーC硬度が小さいほど、柔軟で、硬度に優れた複合材料シートであることを表す。結果を表1に示す。
【0083】
<熱伝導シートの熱伝導率>
実施例および比較例で製造した熱伝導シートについて、厚み方向の熱拡散率α(m
2/s)、定圧比熱Cp(J/g・K)および比重ρ(g/m
3)を以下の方法で測定した。
[熱拡散率]
熱物性測定装置(株式会社ベテル製、製品名「サーモウェーブアナライザTA35」)を使用して温度25℃における熱拡散率を測定した。
[定圧比熱]
示差走査熱量計(Rigaku製、製品名「DSC8230」)を使用し、10℃/分の昇温条件下、温度25℃における比熱を測定した。
[比重]
自動比重計(東洋精機社製、製品名「DENSIMETER−H」)を用いて測定した。
そして、得られた測定値を用いて下記式(I):
λ=α×Cp×ρ ・・・(I)
より温度25℃における熱伝導シートの熱伝導率λ(W/m・K)を求めた。λ値が大きいほど、厚み方向の熱伝導性に優れた熱伝導性シートであることを表す。結果を表1に示す。
【0084】
(実施例1)
<加圧用複合粒子の準備工程>
[工程(A)]
[[混練段階]]
粒子状炭素材料としての膨張化黒鉛(伊藤黒鉛工業製、製品名「EC−50」、平均粒子径:250μm)を130部と、繊維状炭素材料としてのCNT易分散集合体を1部と、樹脂としてのフッ素樹脂(ダイキン工業製、製品名「ダイエルG−912」)を80部と、難燃剤としてのリン酸エステル(味の素ファインテクノ社製、製品名「レオフォス65」)を10部とを、ニーダー(井上製作所製)を用いて50℃にて30分撹拌混練し、膨張化黒鉛と、CNTと、フッ素樹脂と、リン酸エステルとを含有する混練物を得た。
なお、用いたCNT易分散集合体は、以下の方法で調製した。
【0085】
−CNT易分散集合体の調製−
上述のスーパーグロース法によってSGCNTを含む繊維状炭素材料を得た。得られた繊維状炭素材料は、BET比表面積が800m
2/gであった。また、透過型電子顕微鏡を用い、無作為に選択した100本の繊維状炭素材料の直径および長さを測定した結果、平均直径が3.3nm、平均長さが100μmであった。更に、得られた繊維状炭素材料は、主に単層CNTにより構成されていた。
次に、得られた繊維状炭素材料を、分散媒としてのメチルエチルケトンに分散させて得た分散液から、ろ紙(桐山社製、No.5A)を用いて減圧ろ過して溶媒を除去することにより、繊維状炭素材料としての、SGCNTを含むCNT易分散集合体を得た。CNTなどの繊維状炭素材料は一般的に凝集し易いため、このように易分散性集合体の状態にすることにより、他の成分との混合を容易にすることができる。
【0086】
[[粉砕段階]]
上述で得られた混練物を、コーヒーミル(カリタ製、型番「CM−50」)を用いて、25℃にて約30秒間粉砕し、膨張化黒鉛と、CNTと、フッ素樹脂と、リン酸エステルとを含有する複合粒子を得た。
【0087】
[工程(B)]
上述で得られた複合粒子を、ふるい(東京スクリーン製、目開き:150μm、250μm)を用いて25℃にて分級することにより、それぞれ複合粒子群A(目開き250μmのふるい上)、複合粒子群B(目開き150μmのふるい下)、およびその他の複合粒子群(目開き:150μmのふるい上および250μmのふるい下)の3つの複合粒子群を得た。
【0088】
[工程(C)]
上述で得られた3つの複合粒子群のうち、複合粒子群Aおよび複合粒子群Bを除去し、その他の複合粒子群に含まれる複合粒子のみをそのまま加圧用複合粒子として採用した。
そして、採用した複合粒子群(つまり、加圧用複合粒子)の体積平均粒子径、および、得られた加圧用複合粒子中における粒子径500μm以上の複合粒子の含有率を算出した。結果を表1に示す。
【0089】
<加圧工程>
上述の通り得られた加圧用複合粒子10gを、サンドブラスト処理を施した厚さ50μmのPETフィルム(保護フィルムA)と片面のシリコーン離型処理を施した厚さ75μmのPETフィルム(保護フィルムB)とで挟み、ロール間隙350μm、ロール温度50℃、ロール線圧50kg/cm、ロール速度1m/分の条件にて圧延成形することにより、厚さ0.5mmの複合材料シートを得た。
そして、得られた複合材料シートの強度、および硬度(アスカーC硬度)を測定した。結果を表1に示す。
【0090】
<積層工程>
上述で得られた複合材料シートのいずれか任意の片面に両面テープ(日栄化工製、製品名「NeoFix10」、厚み:10μm)を貼付けた。次に、複合材料シートにおける当該両面テープが貼付けられた面側と、別の複合材料シートにおける両面テープが貼付けられていない面側とを合わせ、同様の作業を120枚分繰り返すことにより、厚さ約6cmの積層体を得た。得られた積層体を手押しにて圧縮し、複合材料シートの各接着面を密着させた。
【0091】
<スライス工程>
その後、複合材料シートの積層体を、積層断面を0.3MPaの圧力で押し付けながら、木工用スライサー(丸仲鐵工所製、製品名「超仕上げかんな盤スーパーメカ」、刃部の突出長は0.11mm)を用いて、2mm/分の速度で、積層方向に対して0度の角度でスライス(換言すれば、積層された複合材料シートの主面の法線方向にスライス)し、厚さ0.50mmの熱伝導シートを得た。
そして、得られた熱伝導シート中の膨張化黒鉛の粒子径、および熱伝導シートの熱伝導率を算出した。結果を表1に示す。
【0092】
(実施例2)
工程(B)において、メッシュ目開きが150μm、250μm、および500μmのふるいを用いて分級することにより、それぞれ複合粒子群A(目開き500μmのふるい上)、複合粒子群B(目開き150μmのふるい下)、その他の複合粒子群C(目開き150μmのふるい上および250μmのふるい下)、および、その他の複合粒子群D(目開き250μmのふるい上および500μmのふるい下)の4つの複合粒子群を得た。
また、工程(C)において、得られた4つの複合粒子群のうち、複合粒子群Aおよび複合粒子Bを除去し、その他の複合粒子群Cおよびその他の複合粒子群Dを採用した。そして、当該2つの複合粒子群に含まれている複合粒子を質量比1:1で混合することにより加圧用複合粒子を得た。
上記以外は実施例1と同様にして、混練物、複合粒子、複合粒子群、加圧用複合粒子、複合材料シート、および熱伝導シートを製造した。そして、実施例1と同様にして測定、算出、または評価した。結果を表1に示す。
【0093】
(実施例3)
工程(B)において、メッシュ目開きが250μm、および500μmのふるいを用いて分級することにより、それぞれ複合粒子群A(目開き500μmのふるい上)、複合粒子群B(目開き250μmのふるい下)、およびその他の複合粒子群(目開き250μmのふるい上および500μmのふるい下)の3つの複合粒子群を得た。
また、工程(C)において、得られた3つの複合粒子群のうち、複合粒子群Aおよび複合粒子Bを除去し、上記その他の複合粒子群に含まれている複合粒子のみをそのまま採用して加圧用複合粒子を得た。
上記以外は実施例1と同様にして、混練物、複合粒子、複合粒子群、加圧用複合粒子、複合材料シート、および熱伝導シートを製造した。そして、実施例1と同様にして測定、算出、または評価した。結果を表1に示す。
【0094】
(比較例1)
工程(B)および工程(C)を行わず、粉砕段階後に得られた(即ち、分級を行っていない)複合粒子をそのまま採用することにより、加圧用複合粒子を得た。
上記以外は実施例1と同様にして、混練物、複合粒子、加圧用複合粒子、複合材料シート、および熱伝導シートを製造した。
そして、実施例1と同様にして測定、算出、または評価した。結果を表1に示す。
【0095】
(比較例2)
工程(B)において、メッシュ目開きが500μmのふるいを用いて分級することにより、それぞれ複合粒子群A(目開き500μmのふるい上)、および複合粒子群B(目開き500μmのふるい下)の2つの複合粒子群を得た。
また、工程(C)において、得られた2つの複合粒子群のうち、複合粒子群Bを除去し、複合粒子群Aに含まれている複合粒子のみを採用して加圧用複合粒子を得た。
上記以外は実施例1と同様に、混練物、複合粒子、複合粒子群、加圧用複合粒子、複合材料シート、および熱伝導シートを製造した。そして、実施例1と同様にして測定、算出、または評価した。結果を表1に示す。
【0096】
(比較例3)
工程(B)において、メッシュ目開きが150μm、250μm、および500μmのふるいを用いて分級することにより、それぞれ複合粒子群A(目開き500μmのふるい上)、複合粒子群B(目開き150μmのふるい下)、その他の複合粒子群C(目開き150μmのふるい上および250μmのふるい下)、および、複合粒子群D(目開き250μmのふるい上および500μmのふるい下)の4つの複合粒子群を得た。
また、工程(C)において、得られた4つの複合粒子群のうち、複合粒子群Bおよびその他の複合粒子群Dを除去し、複合粒子群Aおよびその他の複合粒子群Cを採用した。そして、当該2つの複合粒子群に含まれている複合粒子を質量比1:1で混合することにより加圧用複合粒子を得た。
上記以外は実施例1と同様にして、混練物、複合粒子、複合粒子群、加圧用複合粒子、複合材料シート、および熱伝導シートを製造した。そして、実施例1と同様にして測定、算出、または評価した。結果を表1に示す。
【0097】
(比較例4)
工程(B)において、メッシュ目開きが250μm、および500μmのふるいを用いて分級することにより、それぞれ複合粒子群A(目開き500μmのふるい上)、その他の複合粒子群(目開き250μmのふるい上および500μmのふるい下)、および、複合粒子群B(目開き250μmのふるい下)の3つの複合粒子群を得た。
また、工程(C)において、得られた3つの複合粒子群のうち、複合粒子群Bのみを除去し、複合粒子群Aおよび当該その他の複合粒子群を採用した。そして、当該2つの複合粒子群に含まれている複合粒子を質量比1:1で混合することにより加圧用複合粒子を得た。
上記以外は実施例1と同様にして、混練物、複合粒子、複合粒子群、加圧用複合粒子、複合材料シート、および熱伝導シートを製造した。そして、実施例1と同様にして測定、算出、または評価した。結果を表1に示す。
【0098】
(比較例5)
工程(B)において、メッシュ目開きが150μm、250μm、および500μmのふるいを用いて分級することにより、それぞれ複合粒子群A(目開き500μmのふるい上)、複合粒子群B(目開き150μmのふるい下)、その他の複合粒子群C(目開き150μmのふるい上および250μmのふるい下)、および、複合粒子群D(目開き250μmのふるい上および500μmのふるい下)の4つの複合粒子群を得た。
また、工程(C)において、得られた4つの複合粒子群のうち、複合粒子群Bおよびその他の複合粒子群Dを除去し、複合粒子群Aおよびその他の複合粒子群Cを採用した。そして、当該2つの複合粒子群に含まれる複合粒子を、複合粒子群A:複合粒子群C=9:1(質量比)で混合することにより加圧用複合粒子を得た。
上記以外は実施例1と同様にして、混練物、複合粒子、複合粒子群、加圧用複合粒子、複合材料シート、および熱伝導シートを製造した。そして、実施例1と同様にして測定、算出、または評価した。結果を表1に示す。
【0099】
【表1】
【0100】
表1より、加圧用複合粒子の準備工程において工程(A)、(B)および(C)の全ての工程を経ることにより、粗大な粒子径を有する複合粒子群Aを分級・除外した複合粒子群を用いた実施例1〜3では、当該分級・除外を行わなかった比較例1に比べ、熱伝導性、強度、および硬度の全てにおいて良好な特性を示した。
また、加圧用複合粒子の準備工程において工程(A)、(B)および(C)の全ての工程を経ることにより、粗大な粒子径を有する複合粒子群Aを分級・除外した複合粒子群を用いた実施例1〜3では、当該除外を行わずに複合粒子群Aを用いた比較例2〜5に比べ、高い熱伝導性と、高い強度および良好な硬度とを並立させることができた。
従って、本発明の複合材料シートの製造方法/熱伝導シートの製造方法により、優れた熱伝導性、強度、および硬度を並立した複合材料シート/熱伝導シートを提供し得る。