特許第6915580号(P6915580)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6915580半導体封止用エポキシ樹脂組成物及び半導体装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6915580
(24)【登録日】2021年7月19日
(45)【発行日】2021年8月4日
(54)【発明の名称】半導体封止用エポキシ樹脂組成物及び半導体装置
(51)【国際特許分類】
   C08G 59/68 20060101AFI20210727BHJP
   C08G 59/62 20060101ALI20210727BHJP
   H01L 23/29 20060101ALI20210727BHJP
   H01L 23/31 20060101ALI20210727BHJP
【FI】
   C08G59/68
   C08G59/62
   H01L23/30 R
【請求項の数】5
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2018-74419(P2018-74419)
(22)【出願日】2018年4月9日
(65)【公開番号】特開2019-182973(P2019-182973A)
(43)【公開日】2019年10月24日
【審査請求日】2020年4月23日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002060
【氏名又は名称】信越化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002240
【氏名又は名称】特許業務法人英明国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大石 宙輝
(72)【発明者】
【氏名】長田 将一
(72)【発明者】
【氏名】横田 竜平
(72)【発明者】
【氏名】廣神 宗直
【審査官】 中村 英司
(56)【参考文献】
【文献】 特開平11−035796(JP,A)
【文献】 特開2014−136779(JP,A)
【文献】 特開2014−172932(JP,A)
【文献】 特開2013−152353(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 63/00
C08G 59/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エポキシ樹脂と硬化剤とを必須成分とするエポキシ樹脂組成物において、(A)1分子中に少なくとも1個のカルボキシ基を有するベンゾトリアゾール誘導体(B)1分子中に少なくとも1個のアルコキシシリル基を有するアミノアルキルシラン誘導体を、(A)/(B)=0.5〜1.5のモル比で混合させてカルボキシ基とアミノ基との塩の形成により得られる事前混合物を含有し、該事前混合物が前記エポキシ樹脂と硬化剤との合計100質量部に対し0.5〜5.0質量部の配合量で含有することを特徴とする半導体封止用エポキシ樹脂組成物。
【請求項2】
硬化剤がフェノール系硬化剤であることを特徴とする請求項1記載の半導体封止用エポキシ樹脂組成物。
【請求項3】
(A)成分が下記式(1)の構造で示される化合物であることを特徴とする請求項1又は2記載の半導体封止用エポキシ樹脂組成物。
【化1】
(式中、R1、カルボキシ基、末端にカルボキシ基を有する直鎖状の炭素数1〜10のアルキレン基又は末端にカルボキシ基を有する炭素数7〜20の芳香族炭化水素基であり、R2は水素原子、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数1〜10のヒドロキシ基含有炭化水素基、又は末端にカルボキシ基を有する炭素数1〜10の炭化水素基から選ばれる基である。)
【請求項4】
(B)成分が下記式(2)の構造で示される化合物である請求項1〜のいずれか1項記載の半導体封止用エポキシ樹脂組成物。
【化2】
(式中、R3は炭素数1〜6のアルキル基であり、R4は炭素数1〜6のアルキル基又は炭素数6〜10の芳香族炭化水素基から選ばれる基であり、R5、R6はそれぞれ独立して水素原子及び末端に第1級アミノ基を有する炭素数1〜6のアルキレン基から選ばれる基であり、nは1〜3の整数であり、mは1〜6の整数である。)
【請求項5】
請求項1〜のいずれか1項記載の半導体封止用エポキシ樹脂組成物の硬化物で封止された半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体封止用エポキシ樹脂組成物及びその硬化物で封止された半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、ダイオード、トランジスタ、IC、LSIなどの半導体装置は樹脂封止型が主流である。エポキシ樹脂は、他の熱硬化性樹脂に比べ、成形性、接着性、電気特性、機械特性及び耐湿性等に優れているため、半導体装置用の封止樹脂として、エポキシ樹脂組成物が一般的に使用されてきた。しかし、ここ数年、電子機器の市場では、半導体装置の小型化、軽量化、高性能化及び半導体素子の高集積化がますます進んでいる。また、半導体装置の実装技術革新が促進される中で、半導体封止材として用いられているエポキシ樹脂への要求はますます厳しくなってきている。半導体装置の高性能化、高集積化により、半導体素子の発熱量が増えている傾向にある。半導体装置全体としては熱を逃がしやすい構造がとられるが、封止樹脂自身には耐熱特性が求められる。また、自動車用途、高耐圧用途の半導体装置はエンジン周辺などの高温環境下に晒されることが多いため、耐熱性に加えて、信頼性が求められる。
【0003】
半導体素子の高性能化が進む一方、半導体装置に対するコストダウンも要求されており、従来用いられていた高価な金ワイヤーや金配線から、より安価である銅ワイヤーや銅配線、銀合金ワイヤー及び銅合金ワイヤー、アルミニウムワイヤーなどへの代替が提案されている。
【0004】
また、鉛フリーハンダのへの切り替えによる実装温度の上昇に伴い、半導体装置が吸湿していると実装時パッケージクラックの発生、封止材と金属フレーム、有機基板、半導体素子それぞれとの界面剥離等の不都合が発生する。そのため、封止樹脂組成物には金属フレーム、有機基板、又は半導体素子との高密着性も求められる。
【0005】
銅や銀といった金属との密着性を向上させる手法としては、接着助剤として3−メルカプトプロピルシランなどの硫黄含有密着助剤を添加する方法が一般的である。また、その他の方法として、チオフェン構造を有するフェノール樹脂を使用する方法(特開2001−065339号公報:特許文献1)やフェノリック系ジスルフィド化応物を添加する方法(特開2004−137397号公報:特許文献2)が挙げられている。しかし、これらの方法では、硫黄含有組成物を使用しており、高温条件下においては有機成分の分解に伴う硫化物イオンや硫酸イオンの発生により、金属の腐食が懸念されることから、十分なものではなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2001−065339号公報
【特許文献2】特開2004−137397号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたもので、硫黄成分を含有させることなく、金属基板等、中でも銅基板等への高い密着性が得られる半導体封止用エポキシ樹脂組成物及びその硬化物で封止された半導体装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記目的を達成するため鋭意検討を重ねた結果、エポキシ樹脂と硬化剤を必須成分とするエポキシ樹脂組成物において、(A)1分子中に少なくとも1個のカルボキシ基を有するベンゾトリアゾール誘導体及び(B)1分子中に少なくとも1個のアルコキシシリル基を有するアミノアルキルシラン誘導体を、前記エポキシ樹脂と硬化剤との合計100質量部に対して、(A)+(B)=0.5〜5.0質量部の配合量で含有し、かつ(A)/(B)=0.5〜1.5のモル比で含有してなるエポキシ樹脂組成物を用いることで、硫黄成分を含有させることなく、金属基板等、中でも銅基板等への高い密着性が得られることを見出し、本発明をなすに至った。
【0009】
従って、本発明は、下記半導体封止用エポキシ樹脂組成物及び半導体装置を提供する。
1.エポキシ樹脂と硬化剤とを必須成分とするエポキシ樹脂組成物において、(A)1分子中に少なくとも1個のカルボキシ基を有するベンゾトリアゾール誘導体(B)1分子中に少なくとも1個のアルコキシシリル基を有するアミノアルキルシラン誘導体を、(A)/(B)=0.5〜1.5のモル比で混合させてカルボキシ基とアミノ基との塩の形成により得られる事前混合物を含有し、該事前混合物が前記エポキシ樹脂と硬化剤との合計100質量部に対し0.5〜5.0質量部の配合量で含有することを特徴とする半導体封止用エポキシ樹脂組成物。
2.硬化剤がフェノール系硬化剤であることを特徴とする上記1記載の半導体封止用エポキシ樹脂組成物。
3.(A)成分が下記式(1)の構造で示される化合物であることを特徴とする上記1又は2記載の半導体封止用エポキシ樹脂組成物。
【化1】
(式中、R1、カルボキシ基、末端にカルボキシ基を有する直鎖状の炭素数1〜10のアルキレン基又は末端にカルボキシ基を有する炭素数7〜20の芳香族炭化水素基であり、R2は水素原子、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数1〜10のヒドロキシ基含有炭化水素基、又は末端にカルボキシ基を有する炭素数1〜10の炭化水素基から選ばれる基である。)
4.(B)成分が下記式(2)の構造で示される化合物である上記1〜のいずれかに記載の半導体封止用エポキシ樹脂組成物。
【化2】
(式中、R3は炭素数1〜6のアルキル基であり、R4は炭素数1〜6のアルキル基又は炭素数6〜10の芳香族炭化水素基から選ばれる基であり、R5、R6はそれぞれ独立して水素原子及び末端に第1級アミノ基を有する炭素数1〜6のアルキレン基から選ばれる基であり、nは1〜3の整数であり、mは1〜6の整数である。)
.上記1〜のいずれかに記載の半導体封止用エポキシ樹脂組成物の硬化物で封止された半導体装置。
【発明の効果】
【0010】
本発明の組成物によれば、硫黄成分を含有させることなく、金属密着性、中でも銅に対する密着性に優れた硬化物を与えることができる。そのため、銅基板、銅ワイヤー、銅ヒートシンク等を使用した半導体装置の封止材として好適である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明につき更に詳しく説明する。
【0012】
<半導体封止用エポキシ樹脂組成物>
本発明の半導体封止用エポキシ樹脂組成物は、エポキシ樹脂と硬化剤を必須成分とするエポキシ樹脂組成物において、(A)1分子中に少なくとも1個のカルボキシ基を有するベンゾトリアゾール誘導体及び(B)1分子中に少なくとも1個のアルコキシシリル基を有するアミノアルキルシラン誘導体を、前記エポキシ樹脂と硬化剤との合計質量部に対して、所定の〔(A)+(B)〕の合計質量部で含有し、かつ所定の〔(A)/(B)〕のモル比で含有してなるものである。
【0013】
〔エポキシ樹脂〕
エポキシ樹脂は、本発明に係る組成物のベースポリマー(主剤)であり、1分子内にエポキシ基を2個以上有するモノマー、オリゴマー、ポリマーが挙げられ、その分子量、分子構造は特に限定されないが、例えば、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ナフトールノボラック型エポキシ樹脂などのノボラック型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ビスフェノール型エポキシ樹脂、スチルベン型エポキシ樹脂、ジヒドロアントラセンジオール型エポキシ樹脂などの結晶性エポキシ樹脂、トリフェノールメタン型エポキシ樹脂アルキル変性トリフェノールメタン型エポキシ樹脂などの多官能エポキシ樹脂、フェニレン骨格を有するフェノールアラルキル型エポキシ樹脂、ビフェニレン骨格を有するフェノールアラルキル型エポキシ樹脂、フェニレン骨格を有するナフトールアラルキル型エポキシ樹脂、ビフェニレン骨格を有するナフトールアラルキル型エポキシ樹脂などのアラルキル型エポキシ樹脂、ジヒドロキシナフタレン型エポキシ樹脂、ジヒドロキシナフタレンの二量体をグリシジルエーテル化して得られるエポキシ樹脂などのナフトール型エポキシ樹脂、トリグリシジルイソシアヌレート、モノアリルジグリシジルイソシアヌレートなどのトリアジン核含有エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン変性フェノール型エポキシ樹脂等環状炭化水素化合物変性フェノール型エポキシ樹脂が挙げられる。これらは1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
【0014】
〔硬化剤〕
フェノール樹脂は、本発明に係る組成物の硬化剤であり、1分子内にフェノール性水酸基を2個以上有するモノマー、オリゴマー、ポリマーが挙げられ、その分子量、分子構造は特に限定されないが、例えば、フェノールノボラック樹脂、フェノールノボラック型フェノール樹脂、ナフタレン環含有フェノール樹脂、アラルキル型フェノール樹脂、トリフェノールアルカン型フェノール樹脂、ビフェニル型フェノール樹脂、ビフェニルアラルキル型フェノール樹脂、脂環式フェノール樹脂、複素環型フェノール樹脂ナフタレン環含有フェノール樹脂、ビスフェノールA型樹脂、ビスフェノールF型樹脂等のビスフェノール型フェノール樹脂を使用することもできる。これらは1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
以下、エポキシ樹脂と硬化剤(フェノール系硬化剤)とを合わせたものを、「熱硬化性樹脂成分」ということがあり、これを100質量部として配合の基準にする。なお、エポキシ樹脂100質量部に対して、硬化剤の配合量は、通常20〜400質量部、好ましくは60〜140質量部である。
【0015】
〔(A)成分〕
本発明に用いられる(A)ベンゾトリアゾール誘導体は、分子構造中に少なくとも1つのカルボキシ基を含有していることを特徴とする。この(A)成分は、下記式(1)
【化3】
で示されるベンゾトリアゾール誘導体であることが好ましい。
前記式中、R1は、カルボキシ基、末端にカルボキシ基を有する直鎖状の炭素数1〜10、好ましくは1〜6のアルキレン基、又は末端にカルボキシ基を有する炭素数7〜20、好ましくは7〜10の芳香族炭化水素基であり、R1の例としては、カルボキシメチル基、2−カルボキシエチル基、3−カルボキシプロピル基、4−カルボキシブチル基、o−カルボキシフェニル基、m−カルボキシフェニル基、p−カルボキシフェニル基、o−カルボキシベンジル基、m−カルボキシベンジル基、p−カルボキシベンジル基などが挙げられる。
2は、水素原子、炭素数1〜10、好ましくは1〜6のアルキル基、炭素数1〜10、好ましくは1〜6のヒドロキシ基含有炭化水素基、又は末端にカルボキシ基を有する炭素数1〜10、好ましくは1〜6の炭化水素基から選ばれる基が挙げられ、R2の例としては、水素原子、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基等のアルキル基、ヒドロキシメチル基、2−ヒドロキシエチル基、3−ヒドロキシプロピル基、4−ヒドロキシブチル基などのヒドロキシ基含有炭化水素基、カルボキシメチル基、2−カルボキシエチル基、3−カルボキシプロピル基、4−カルボキシブチル基などの末端にカルボキシ基を有する炭化水素基などが挙げられる。
前記式(1)で示されるベンゾトリアゾール誘導体の具体例としては、4−カルボキシベンゾトリアゾール、5−カルボキシベンゾトリアゾール、これらの混合物、及び水和物などが挙げられる。
ここで、(A)成分は、熱硬化性樹脂成分(エポキシ樹脂+硬化剤)の合計100質量部に対して、通常0.15〜4.0質量部、好ましくは0.2〜3.0質量部である。
【0016】
〔(B)成分〕
本発明に用いられる(B)アミノアルキルシラン誘導体は、1分子中にアルコキシシリル基を少なくとも1つ含有することを特徴とする。この(B)成分は、下記式(2)
【化4】
で示されるアミノアルキルシラン及び/又はその加水分解物であることが好ましい。
前記式中、R3は、炭素数1〜6、好ましくは1〜4のアルキル基であり、具体的にはメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基等が挙げられる。
4は、炭素数1〜6、好ましくは1〜4のアルキル基又は炭素数6〜10、好ましくは6〜8の芳香族炭化水素基から選ばれる基であり、具体的にはメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基等のアルキル基、フェニル基、ベンジル基、トリル基などの芳香族炭化水素基が挙げられる。
5、R6は、それぞれ独立して水素原子、炭素数1〜6、好ましくは1〜4のアルキル基、炭素数1〜6のアミノ基含有アルキル基又は炭素数6〜10の芳香族炭化水素基から選ばれる基であり、具体的には、水素原子、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基等のアルキル基、アミノメチル基、2−アミノエチル基、3−アミノプロピル基などのアミノ基含有アルキル基、フェニル基、ベンジル基、トリル基などの芳香族炭化水素基が挙げられる。nは1〜3、好ましくは2又は3の整数であり、mは1〜6、好ましくは1〜3の整数である。
式(2)で示されるアミノアルキルシランの具体例としては、N−(β−アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−フェニル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン等のトリアルコキシシラン、N−(β−アミノエチル)−γ−アミノプロピルジメトキシメチルシラン、γ−アミノプロピルジエトキシメチルシラン、γ−アミノプロピルジメトキシメチルシラン、N−フェニル−γ−アミノプロピルジメトキシメチルシラン等のジアルコキシシランなどが挙げられ、この式(2)で示されるアミノアルキルシランの他に、ビス(γ−トリメトキシシリルプロピル)−N−メチルアミン、ビス(γ−ジメトキシメチルシリルプロピル)−N−フェニルアミンなどのアミノ基含有ビスシランを用いてもよい。また、これらの部分加水分解物、及びこれらの内の2種類以上からなる共加水分解物などから単独、及び2種類以上を組み合わせて使うことが可能である。中でも反応性の観点から1級アミンを有するものが望ましく、更にはγ−アミノプロピルトリメトキシシランが望ましい。
ここで、(B)成分は、熱硬化性樹脂成分(エポキシ樹脂+硬化剤)の合計100質量部に対して、通常0.25〜5.0質量部、好ましくは0.3〜4.0質量部である。
【0017】
本発明における(A)ベンゾトリアゾール誘導体と(B)アミノアルキルシシラン誘導体は、エポキシ樹脂組成物において、それぞれ(A)/(B)=0.5〜1.5のモル比、好ましくは(A)/(B)=0.7〜1.2のモル比となるように配合される。
【0018】
エポキシ樹脂組成物において、(A)ベンゾトリアゾール誘導体と(B)アミノアルキルシシラン誘導体とを、予めそれぞれ(A)/(B)=0.5〜1.5のモル比、より好ましくは(A)/(B)=0.7〜1.2のモル比で反応させて得られる事前混合物を配合してもよい。
(A)/(B)のモル比が0.5未満の場合、ベンゾトリアゾール誘導体が樹脂へ分散不良を起こすことがあり、1.5超過の場合、アミノ基に由来する塩基性により樹脂粘度が増加することがある。
【0019】
(A)ベンゾトリアゾール誘導体と(B)アミノアルキルシラン誘導体の配合量は、熱硬化性樹脂成分(エポキシ樹脂+硬化剤)の合計100質量部に対して、(A)成分及び(B)成分の合計量又は上記事前混合物の配合量が、0.5〜5.0質量部であり、好ましくは0.7〜3.0質量部、より好ましくは1.0〜2.0質量部である。
(A)成分及び(B)成分の合計量又は上記事前混合物の配合量が、0.5質量部未満の場合、接着性が発揮されないことがあり、5.0質量部超過の場合、耐熱分解性が悪化することがある。
【0020】
〔その他の成分〕
本発明においては、上記エポキシ樹脂組成物に加えて、公知の接着性付与剤を配合することができる。例えば、シランカップリング剤、チタネートカップリング剤などのカップリング剤が挙げられる。このようなカップリング剤としては、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン等のエポキシシラン、イソプロピルトリイソステアロイルチタネート、ビス(ジオクチルパイロホスフェート)オキシアセテートチタネートなどのチタンカップリング剤が挙げられる。中でも、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシランなどのエポキシシランカップリング剤を用いることが好ましい。
接着性付与剤の配合量は、熱硬化性樹脂成分(エポキシ樹脂+硬化剤)の合計100質量部に対して、0.25〜2.5質量部であり、好ましくは0.35〜1.5質量部、より好ましくは0.5〜1.0質量部である。なお、(A)ベンゾトリアゾール誘導体と(B)アミノアルキルシラン誘導体又はこれらの事前混合物と上記接着性付与剤を併用する場合は、(A)成分と(B)成分の合計質量部又は事前混合物の質量部と接着性付与剤の質量部の和が、熱硬化性樹脂成分(エポキシ樹脂+硬化剤)の合計100質量部に対して、0.5〜5.0質量部であり、好ましくは0.7〜3.0質量部、より好ましくは1.0〜2.0質量部であり、接着性付与剤は、(A)成分と(B)成分の合計質量部の半分以下であることが望ましい。
接着性付与剤の配合量が、0.25質量部未満の場合、接着性が低下することがあり、2.5質量部超過の場合、耐熱分解性が悪化することがある。
【0021】
本発明のエポキシ樹脂組成物には、更に、本発明の効果を損なわない範囲で、エポキシ樹脂やフェノール樹脂以外のシアネート樹脂、マレイミド樹脂などの熱硬化性樹脂、硬化促進剤、無機充填材、離型剤、難燃剤、イオントラップ剤、顔料、可撓性付与剤等のその他の添加剤を含有させてもよい。
【0022】
シアネート樹脂としては、分子構造にシアナト基を2個以上有していれば特に限定されず、市販されているものを使用することができる。具体的には、例えば、ビス(4−シアナトフェニル)メタン、ビス(3−メチル−4−シアナトフェニル)メタン、ビス(3−エチル−4−シアナトフェニル)メタン、ビス(3,5−ジメチル−4−シアナトフェニル)メタン、1,1−ビス(4−シアナトフェニル)エタン、2,2−ビス(4−シアナトフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−シアナトフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、ジ(4−シアナトフェニル)チオエーテル、1,3−又は1,4−ジシアナトベンゼン、2−tert−ブチル−1,4−ジシアナトベンゼン、2,4−ジメチル−1,3−ジシアナトベンゼン、2,5−ジ−tert−ブチル−1,4−ジシアナトベンゼン、テトラメチル−1,4−ジシアナトベンゼン、1,3,5−トリシアナトベンゼン、2,2’−又は4,4’−ジシアナトビフェニル、3,3’,5,5’−テトラメチル−4,4’−ジシアナトビフェニル、1,3−、1,4−、1,5−、1,6−、1,8−、2,6−、又は2,7−ジシアナトナフタレン、1,3,6−トリシアナトナフタレン、ビス(4−シアナトフェニル)メタン;2,2−ビス(4−シアナトフェニル)プロパン、1,1,1−1トリス(4−シアナトフェニル)エタン、ビス(4−シアナトフェニル)エーテル;4,4’−(1,3−フェニレンジイソピロピリデン)ジフェニルシアネート、ビス(4−シアナトフェニル)チオエーテル、ビス(4−シアナトフェニル)スルホン、トリス(4−シアナト−フェニル)ホスフィン、トリス(4−シアナトフェニル)ホスフェート、フェノールノボラック型シアネート、クレゾールノボラック型シアネート、ジシクロペンタジエンノボラック型シアネート、フェニルアラルキル型シアネートエステル、ビフェニルアラルキル型シアネートエステル、ナフタレンアラルキル型シアネートエステルなどが挙げられる。これらのシアネートエステル化合物は1種又は2種以上混合して用いることができる。
【0023】
マレイミド樹脂としては、分子構造中にマレイミド基を2個以上有していれば特に限定されず、市販されているものを使用することができる。具体的には、例えば、4,4’−ジフェニルメタンビスマレイミド、m−フェニレンビスマレイミド、ビスフェノールAジフェニルエーテルビスマレイミド、3,3−ジメチル−5,5−ジフェニルメタンビスマレイミド、4−メチル−1,3−フェニレンビスマレイミド、1,6−ビスマレイミド−(2,2,4−トリメチル)ヘキサン等の2官能タイプのビスマレイミド化合物、フェニルメタンマレイミド等の多官能タイプのマレイミド化合物などが挙げられる。中でも、溶解性の観点から融点が175℃以下である4,4−ジフェニルメタンビスマレイミドが望ましい。
【0024】
硬化促進剤としては、エポキシ樹脂及びシアネート樹脂等を硬化させるための公知の硬化促進剤を用いることができ、例えば、3級アミン化合物、4級アンモニウム塩、イミダゾール類、尿素化合物、ホスフィン化合物、ホスホニウム塩などを挙げることができる。より具体的には、トリエチルアミン、トリエチレンジアミン、ベンジルジメチルアミン、2,4,6−トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール、1,8−ジアザビシクロ(5,4,0)ウンデセン−7などの3級アミン化合物、2−メチルイミダゾール、2,4−ジメチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、2−フェニル−4−メチルイミダゾールなどのイミダゾール類、3−フェニル−1,1−ジメチルウレア、3−(o−メチルフェニル)−1,1−ジメチルウレア、3−(p−メチルフェニル)−1,1−ジメチルウレア、1,1’−フェニレンビス(3,3−ジメチルウレア)、1,1’−(4−メチル−m−フェニレン)−ビス(3,3−ジメチルウレア)などの尿素化合物、トリフェニルホスフィン、トリブチルホスフィン、トリ(p−メチルフェニル)ホスフィン、トリ(ノニルフェニル)ホスフィンなどのホスフィン化合物、4−ヒドロキシ−2−(トリフェニルホスホニウム)フェノラートなどのトリフェニルホスホニウムフェノラート、テトラフェニルホスホニウムテトラフェニルボレート、テトラフェニルホスホニウムテトラナフトエ酸ボレートなどのホスホニウム塩等及び、これらをマイクロカプセル化したもの等が挙げられる。これらは1種単独で用いても2種以上を併用してもよい。硬化促進剤の配合量は、樹脂との組み合わせに影響されるが、熱硬化性樹脂成分(エポキシ樹脂+硬化剤)の合計100質量部に対して、0.5〜5.0質量部であり、好ましくは1.0〜3.0質量部である。
硬化促進剤の配合量が、0.5質量部未満の場合、硬化不良をおこすことがあり、5.0質量部超過の場合、成型不良をおこすことがある。
【0025】
無機充填材としては、溶融シリカ、結晶シリカ、クリストバライト等のシリカ類の他、アルミナ、窒化珪素、窒化アルミニウム、ボロンナイトライド、酸化チタン、ガラス繊維、アルミナ繊維、酸化マグネシウム、酸化亜鉛等が挙げられる。これらの無機充填材の平均粒径や形状は特に制限されず、用途に応じて選択される。通常、平均粒径は1〜50μm、特には4〜25μmである。なお、本発明において平均粒径とは、レーザー回折粒度分布測定装置で得られる中央値(D50)である。これらの無機充填材は1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
【0026】
これらの無機充填材は、120℃、2.1気圧でサンプル5g/水50gの抽出条件で抽出される不純物として、クロールイオンが10ppm以下、ナトリウムイオンが10ppm以下であることが好適であり、クロールイオンが5ppm以下、ナトリウムイオンが5ppm以下であることがさらに好適である。これらのイオン成分が10ppm以下であれば、組成物で封止された半導体装置の耐湿性が低下することが無いので好ましい。
【0027】
無機充填材の配合量は、熱硬化性樹脂成分(エポキシ樹脂+硬化剤)の合計100質量部に対して、150〜1,500質量部であり、好ましくは250〜1,200質量部である。特には、組成物全体の60〜94質量%、好ましくは65〜92質量%、更に好ましくは70〜90質量%である。
【0028】
無機充填材は、樹脂と無機充填材との結合強度を強くするため、シランカップリング剤、チタネートカップリング剤などのカップリング剤で予め表面処理したものを使用することが好ましい。このようなカップリング剤としては、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン等のエポキシシラン、N−(β−アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、イミダゾールとγ−グリシドキシプロピルトリメトキシシランの反応物、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−フェニル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン等のアミノシランなどのシランカップリング剤を用いることが好ましい。なお、表面処理に用いるカップリング剤の配合量及び表面処理方法は、特に制限されるものではなく、従来公知の配合量及び方法に従えばよく、この表面処理に用いられたカップリング剤は接着性付与剤には含まれない。
【0029】
離型剤としては、特に制限されず公知のものを使用することができる。例えば、カルナバワックス、ライスワックス;ポリエチレン、酸化ポリエチレン;モンタン酸、モンタン酸と2−(2−ヒドロキシエチルアミノ)−エタノール、エチレングリコール、グリセリン等の飽和アルコールとのエステル化合物等のワックス;ステアリン酸、ステアリン酸エステル、ステアリン酸アミド、エチレンビスステアリン酸アミド、エチレンと酢酸ビニルとの共重合体等が挙げられ、これら1種単独でも2種以上を組み合わせて使用してもよい。離型剤の配合量は、(A)成分及び(B)成分の合計100質量部に対して、0.5〜5質量部であり、より好ましくは1〜3質量部である。
離型剤の配合量が、0.5質量部未満の場合、金型からの離型が悪化することがあり、5質量部超過の場合、外観不良の原因となることがある。
【0030】
難燃剤としては、特に制限されず公知のものを使用することができる。例えば、ホスファゼン化合物、シリコーン化合物、モリブデン酸亜鉛担持タルク、モリブデン酸亜鉛担持酸化亜鉛、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、酸化モリブデン、三酸化アンチモンなどが挙げられ、これら1種単独でも2種以上を組み合わせて使用してもよい。難燃剤の配合量は、(A)成分及び(B)成分の合計100質量部に対して、2〜20質量部であり、好ましくは3〜10質量部である。
難燃剤の配合量が、2質量部未満の場合、難燃性が不十分になることがあり、20質量部超過の場合、流動性が悪化することがある。
【0031】
イオントラップ剤としては、特に制限されず、公知のものを使用することができる。例えば、ハイドロタルサイト類、水酸化ビスマス化合物、希土類酸化物等が使用でき、これら1種単独でも2種以上を組み合わせて使用してもよい。イオントラップ剤の配合量は、(A)成分及び(B)成分の合計100質量部に対して、0.5〜10質量部であり、好ましくは1.5〜5質量部である。
イオントラップ剤の配合量が、0.5質量部未満の場合、封止した際の電気特性が悪化することがあり、10質量部超過の場合、流動性が悪化することがある。
【0032】
<組成物の製造方法>
本発明の半導体封止用エポキシ樹脂組成物の製造方法は特に制限されるものでない。例えば、エポキシ樹脂、硬化剤、(A)ベンゾトリアゾール誘導体、(B)アミノアルキルシラン誘導体の各成分の他、必要に応じてその他の成分を所定の組成比で配合し、ミキサー等によって十分均一に混合した後、熱ロール、ニーダー、エクストルーダー等による溶融混合処理を行い、次いで冷却固化させ、適当な大きさに粉砕すればよい。得られた組成物は、成形材料として使用することができる。
【0033】
<半導体装置>
本発明の半導体封止用エポキシ樹脂組成物は、トランジスタ型、モジュール型、DIP型、SO型、フラットパック型、ボールグリッドアレイ型等の半導体装置の封止樹脂として特に有効である。本発明の組成物により半導体装置の封止方法は特に制限されるものでなく、従来の成形法、例えばトランスファー成形、インジェクション成形、注型法等を利用すればよい。特に好ましいのはトランスファー成形である。
【0034】
本発明の半導体封止用エポキシ樹脂組成物の成形(硬化)条件は、特に制限されるものでないが、160〜190℃で45〜300秒間が好ましい。さらに、ポストキュアを170〜250℃で2〜16時間行うことが望ましい。
【0035】
こうして得られる本発明の半導体封止用エポキシ樹脂組成物は、銅製基板や銀めっき基板との密着性に優れる。また、該組成物の硬化物で封止された半導体装置は、その高い密着性から耐リフロー性に優れる。また、トランスファー成型材料として一般的に使用されているエポキシ樹脂組成物と同様の装置、成型条件を用いることができ、生産性にも優れる。
【実施例】
【0036】
以下、実施例及び比較例を示し、本発明をより詳細に説明するが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。
【0037】
使用した各成分は以下の通りである。
〔主成分〕
・(A)ベンゾトリアゾール誘導体:4−カルボキシベンゾトリアゾール(CBT−1、城北化学社製)
・(B)アミノアルキルシラン誘導体:3−アミノプロピルトリメトキシシラン(KBM−903、信越化学社製)
【0038】
・エポキシ樹脂1:クレゾールノボラック型エポキシ樹脂(エピクロン N−665−EXP−S、エポキシ当量202g/当量、DIC社製)
・エポキシ樹脂2:ビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂(NC−3000、エポキシ当量273g/当量、日本化薬社製)
【0039】
・フェノール硬化剤1:フェノールノボラック型フェノール硬化剤(フェノライトTD−2131、水酸基当量104g/当量、DIC社製)
・フェノール硬化剤2:ビフェニルアラルキル型フェノール硬化剤(MEH−7851、水酸基当量203g/当量、明和化成社製)
【0040】
〔その他の成分〕
・無機充填材:RS−8225H(平均粒径15μm、龍森社製)
【0041】
・硬化促進剤:4−ヒドロキシ−2−(トリフェニルホスホニウム)フェノラート(CAT−MBA、新菱社製)
【0042】
・接着性付与剤1:3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(KBM−403、信越化学工業社製)
【0043】
・離型剤:カルナバワックス(TOWAX−131、東亜化成社製)
【0044】
・(A)成分及び(B)成分の事前混合物:事前混合物1〜3を以下に示す手順によって調製し、表1に記載の量を配合した。
事前混合物1
攪拌機、還流冷却器、滴下ロート及び温度計を備えた1Lセパラブルフラスコに4−カルボキシベンゾトリアゾール(CBT−1、城北化学社製)81.6g(0.5mol)、トルエン200gを仕込み、40℃まで加温した。その中に3−アミノプロピルトリメトキシシラン(KBM−903、信越化学工業社製)89.7g(0.5mol)を滴下し、30℃で1時間攪拌した。その後、ろ過、乾燥を行い、得られた生成物は白色固体であった。1H NMRの測定により生成物は4−カルボキシベンゾトリアゾール/3−アミノプロピルトリメトキシシラン塩であることを確認した。
事前混合物2
攪拌機、還流冷却器、滴下ロート及び温度計を備えた1Lセパラブルフラスコに4−カルボキシベンゾトリアゾール(CBT−1、城北化学社製)40.8g(0.25mol)、トルエン200gを仕込み、40℃まで加温した。その中に3−アミノプロピルトリメトキシシラン(KBM−903、信越化学工業社製)89.7g(0.5mol)を滴下し、30℃で1時間攪拌した。その後、150℃1時間における揮発成分量が2%以下となるまでトルエンを減圧除去し、シロップ状の生成物を得た。
事前混合物3
4−カルボキシベンゾトリアゾールの量を122.4g(0.75mol)とした以外は事前混合物2と同様の手法を用いて調製した。
【0045】
上記成分を、下記表1及び表2記載の組成に従い配合し、熱2本ロールにて均一に溶融混合、冷却、粉砕して組成物を得た。得られた各組成物を、以下に示す方法に従い評価した。結果を表1及び表2に記載した。
【0046】
接着試験
15mm×15mm厚さ0.15mmの銅合金(Olin C7025)製基板上に、175℃×120秒間、成型圧6.9MPaの条件でトランスファー成型により、底面積10mm2高さ3.5mmで表1及び表2に記載された各組成物の成型物を成型した後、180℃×4時間のポストキュアにより試験片を得た。次いで、ダイシェアテスター(DAGE製)を用いて、該成型物にせん断速度0.2mm/sでせん断力を加え、基板表面から剥がれる時のせん断強さを測定した。銀めっき基板、ニッケルめっき基板についても同様に試験片の作製、試験を行った。
【0047】
耐リフロー性評価
銅合金(C7025)製QFP100pinリードフレーム上に0.7mm×0.7mmのシリコン製チップ(厚み300μm)を銀ペースト(Henkel社製)により実装した評価基板を用い、表1及び表2に記載された各組成物により、175℃×120秒間、成型圧6.9MPaの条件でトランスファー封止し、180℃×4時間ポストキュアにより試験片を得た。該試験片を湿度60%、85℃で168時間静置した後、260℃IRリフロー処理を行い、パッケージの剥離の有無を超音波探傷装置にて観察し、剥離発生個数の確認を行った。
【0048】
【表1】
【0049】
【表2】
【0050】
比較例2、3から、ベンゾトリアゾール誘導体、アミノアルキルシラン誘導体それぞれ単独成分の配合では接着力の大幅な改善には至らず、組み合わせることが重要であることが確認できる。また、比較例4、5から、それぞれ上記成分の配合モル比が0.5〜1.5の範囲から外れてしまうと単独成分の配合の場合と同程度の接着力しか発揮されない結果となった。また、比較例7から、ベンゾトリアゾール誘導体、アミノアルキルシラン誘導体の添加量が多すぎると耐リフロー性が低下することが確認された。これは、シランカップリング剤からアルコールが発生し、リフロー時に揮発するため、添加量が過剰となると耐リフロー性の低下につながっていると考えられる。
これらの結果から、特に銅と親和性の高いベンゾトリアゾールが金属表面に配列し、ベンゾトリアゾール中に存在するカルボン酸部分とアミノアルキルシランが相互作用することで高い接着性を与えているものと考えられる。
【産業上の利用可能性】
【0051】
本発明の半導体封止用エポキシ樹脂組成物は、硫黄原子を含まないため、硫酸イオンの発生や硫化による金属劣化の心配がない。また、銅、ニッケルといった金属への接着力が高く、良好な耐リフロー性を与える。そのため、銅ワイヤーや銅基板への利用が考えられる半導体装置の他、エンジン周辺において、高温に晒され、硫黄等の含有成分の分解が懸念される車載用デバイス等に好適に使用され得る。また、ニッケルに対する接着性を有し、通常ポリイミド等で被覆しなければ信頼性確保が難しかったニッケル基板をそのまま使用することができ、工程の削減にもつながることから産業的に有意義である。