(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
規格ISO15901−1:2005に従い水銀圧入法により測定される細孔半径が5〜30nmの範囲の細孔の合計容積(α)に対する、細孔半径が30〜700nmの範囲の細孔の合計容積(β)の比(β/α)が0.45〜3.0の範囲である、請求項6に記載のオレフィン重合用固体触媒成分。
【発明を実施するための形態】
【0011】
<オレフィン重合用固体触媒成分の製造方法>
本発明の製造方法は、チタン原子、マグネシウム原子、ハロゲン原子および内部電子供与体を含むオレフィン重合用固体触媒成分の製造方法であって、
ハロゲン化チタン化合物および溶媒を含むハロゲン化チタン化合物溶液と、マグネシウム化合物とを接触させ、固体生成物を含むスラリーを得る工程(I)を有し、
工程(I)において、下記式(2)で表されるCに対する下記式(1)で表されるAの比(A/C)が、3以下である。
A=a/b (1)
(式中、aは、ハロゲン化チタン化合物溶液に含まれるハロゲン化チタン化合物の体積(mL)を、bは、ハロゲン化チタン化合物溶液に含まれる溶媒の体積(mL)を表す。)
C=a/c (2)
(式中、aは、ハロゲン化チタン化合物溶液に含まれるハロゲン化チタン化合物の体積(mL)を、cは、固体生成物を含むスラリーに含まれる溶媒の体積(mL)を表す。)
【0012】
本明細書において、”オレフィン重合用固体触媒成分”とは、少なくともトルエン中で固形分として存在し、有機アルミニウム化合物等のオレフィン重合用助触媒と組み合されることにより、オレフィン重合用触媒となるものを意味する。
【0013】
ハロゲン化チタン化合物は、ハロゲン原子およびチタン原子を含有し、少なくとも一つのハロゲン原子がチタン原子に結合している化合物を意味する。具体例としては、四塩化チタン、四臭化チタン、および四ヨウ化チタンのようなテトラハロゲン化チタン;メトキシチタントリクロリド、エトキシチタントリクロリド、n−プロポキシチタントリクロリド、n−ブトキシチタントリクロリド、およびエトキシチタントリブロミドのようなトリハロゲン化モノアルコキシチタン;ジメトキシチタンジクロリド、ジエトキシチタンジクロリド、ジiso−プロポキシチタンジクロリド、ジ−n−プロポキシチタンジクロリド、およびジエトキシチタンジブロミドのようなジハロゲン化ジアルコキシチタン;トリメトキシチタンクロリド、トリエトキシチタンクロリド、トリiso−プロポキシチタンクロリド、トリ−n−プロポキシチタンクロリド、およびトリ−n−ブトキシチタンクロリドのようなモノハロゲン化トリアルコキシチタンが挙げられる。好ましくはテトラハロゲン化チタン、またはトリハロゲン化モノアルコキシチタンであり、より好ましくテトラハロゲン化チタンであり、さらに好ましくは四塩化チタンである。ハロゲン化チタン化合物は、それぞれ単独で用いてもよいし、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0014】
オレフィン重合用固体触媒成分におけるチタン原子の一部または全部が、ハロゲン化チタン化合物に由来する。オレフィン重合用固体触媒成分におけるハロゲン原子の一部または全部が、ハロゲン化チタン化合物に由来する。
【0015】
マグネシウム化合物は、マグネシウム原子を含有する化合物であればよく、具体例としては、下式(i)〜(iii)で表される化合物が挙げられる。
MgR
1kX
2-k・・・(i)
Mg(OR
1)
mX
2-m・・・(ii)
MgX
2・nR
1OH・・・(iii)
(式中、kは0≦k≦2を満足する数であり;mは0<m≦2を満足する数であり;nは0≦n≦3を満足する数であり;R
1は炭素原子数1〜20のハイドロカルビル基であり;Xはハロゲン原子である。)
【0016】
式(i)〜(iii)におけるR
1としては、アルキル基、アラルキル基、アリール基、アルケニル基等が挙げられ、これらの基に含まれる水素原子の一部または全ては、ハロゲン原子、ハイドロカルビルオキシ基、ニトロ基、スルホニル基、シリル基等で置換されていてもよい。R
1のアルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、およびn−オクチル基のような直鎖状アルキル基;iso−プロピル基、iso−ブチル基、tert−ブチル基、iso−ペンチル基、ネオペンチル基、および2−エチルヘキシル基のような分岐状アルキル基;シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロへプチル基、およびシクロオクチル基のような環状アルキル基等が挙げられ、好ましくは炭素原子数1〜20の直鎖状アルキル基または炭素原子数3〜20の分岐状アルキル基である。R
1のアラルキル基としては、ベンジル基、およびフェネチル基が挙げられ、好ましくは炭素原子数7〜20のアラルキル基である。R
1のアリール基としては、フェニル基、ナフチル基、およびトリル基等が挙げられ、好ましくは炭素原子数6〜20のアリール基である。R
1のアルケニル基としては、ビニル基、アリル基、3−ブテニル基、および5−ヘキセニル基のような直鎖状アルケニル基;イソブテニル基、および4−メチル−3−ペンテニル基のような分岐状アルケニル基;2−シクロヘキセニル基、および3−シクロヘキセニル基のような環状アルケニル基が挙げられ、好ましくは炭素原子数2〜20の直鎖状アルケニル基および炭素原子数3〜20の分岐状アルケニル基である。複数のR
1は同一でも異なってもよい。
【0017】
上記の式(i)〜(iii)におけるXとしては、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、およびフッ素原子を挙げることができ、好ましくは塩素原子である。複数のXは同一でも異なっていてもよい。
【0018】
式(i)〜(iii)のマグネシウム化合物の具体例としては、ジメチルマグネシウム、ジエチルマグネシウム、ジiso−プロピルマグネシウム、ジブチルマグネシウム、ジヘキシルマグネシウム、ジオクチルマグネシウム、エチルブチルマグネシウム、ジシクロへキシルマグネシウム、およびブチルオクチルマグネシウムのようなジアルキルマグネシウム;マグネシウムジメトキシド、マグネシウムジエトキシド、マグネシウムジプロポキシド、マグネシウムジブトキシド、マグネシウムジヘキシルオキシド、マグネシウムジオクチルオキシド、およびマグネシウムジシクロヘキシルオキシドのようなマグネシウムジアルコキシド;メチルマグネシウムクロリド、エチルマグネシウムクロリド、iso−プロピルマグネシウムクロリド、n−ブチルマグネシウムクロリド、t−ブチルマグネシウムクロリド、ヘキシルマグネシウムクロリド、iso−ブチルマグネシウムクロリド、ベンジルマグネシウムクロリド、メチルマグネシウムブロミド、エチルマグネシウムブロミド、iso−プロピルマグネシウムブロミド、n−ブチルマグネシウムブロミド、t−ブチルマグネシウムブロミド、ヘキシルマグネシウムブロミド、iso−ブチルマグネシウムブロミド、ベンジルマグネシウムブロミド、メチルマグネシウムイオダイド、エチルマグネシウムイオダイド、iso−プロピルマグネシウムイオダイド、n−ブチルマグネシウムイオダイド、t−ブチルマグネシウムイオダイド、ヘキシルマグネシウムイオダイド、iso−ブチルマグネシウムイオダイド、ベンジルマグネシウムイオダイドのようなアルキルマグネシウムハライド;メトキシマグネシウムクロライド、エトキシマグネシウムクロライド、イソプロポキシマグネシウムクロライド、ブトキシマグネシウムクロライド、およびヘキシルオキシマグネシウムクロライドのようなアルコキシマグネシウムハライド;フェニルオキシマグネシウムクロライドのようなアリールオキシマグネシウムハライド;フッ化マグネシウム、塩化マグネシウム、臭化マグネシウム、およびヨウ化マグネシウムのようなハロゲン化マグネシウムが挙げられる。
【0019】
中でも、好ましくはハロゲン化マグネシウムまたはマグネシウムジアルコキシドである。ハロゲン化マグネシウムとしては、好ましくは塩化マグネシウムである。マグネシウムジアルコキシドとしては、好ましくは炭素原子数1〜20のアルキル基を持つマグネシウムジアルコキシドであり、さらに好ましくは炭素原子数1〜10のアルキル基を持つマグネシウムジアルコキシドであり、特に好ましくはマグネシウムジメトキシド、マグネシウムジエトキシド、マグネシウムジプロポキシド、マグネシウムジ(iso−プロポキシド)、またはマグネシウムジブトキシドである。
【0020】
ハロゲン化マグネシウムは、市販のものをそのまま用いてもよいし、市販のものをアルコールに溶解した溶液を炭化水素液体中に滴下することによって生じる沈殿物を、液体と分離して用いてもよいし、米国特許第6,825,146号公報、国際公開第1998/044009号パンフレット、国際公開第2003/000754号パンフレット、国際公開第2003/000757号パンフレット、または国際公開第2003/085006号パンフレットに記載の方法等に基づいて製造したものを用いてもよい。
【0021】
マグネシウムジアルコキシドの製造方法としては、例えば、金属マグネシウムとアルコールとを触媒の存在下接触させる方法(例えば特開平4−368391号公報、特開平3−74341号公報、特開8−73388号公報、および国際公開第2013/058193号パンフレット)が挙げられる。アルコールとしては、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、およびオクタノールが挙げられる。触媒としては、ヨウ素、塩素、および臭素のようなハロゲン;ヨウ化マグネシウム、および塩化マグネシウムのようなハロゲン化マグネシウムが挙げられ、好ましくはヨウ素である。
【0022】
マグネシウム化合物は、担体物質に担持されていてもよい。担体物質としては、例えば、SiO
2、Al
2O
3、MgO、TiO
2、およびZrO
2のような多孔質無機酸化物;ポリスチレン、スチレン−ジビニルベンゼン共重合体、スチレン−エチレングリコールジメタクリル酸共重合体、ポリアクリル酸メチル、ポリアクリル酸エチル、アクリル酸メチル−ジビニルベンゼン共重合体、ポリメタクリル酸メチル、メタクリル酸メチル−ジビニルベンゼン共重合体、ポリアクリロニトリル、アクリロニトリル−ジビニルベンゼン共重合体、ポリ塩化ビニル、ポリエチレン、およびポリプロピレンのような有機多孔質ポリマーが挙げられる。これらのうち好ましくは、多孔質無機酸化物であり、より好ましくは、SiO
2である。
【0023】
担体物質として好ましくは、マグネシウム化合物を該担体物質に有効に固定化する観点から、多孔質であり、規格ISO15901−1:2005に従い水銀圧入法で求めた細孔半径10〜780nmである細孔の合計容積が、0.3cm
3/g以上である多孔質の担体物質がより好ましく、0.4cm
3/g以上である多孔質の担体物質がさらに好ましい。また、細孔半径10〜780nmである細孔の合計容積が、細孔半径2〜100μmである細孔の合計容積に対して25%以上である多孔質の担体物質が好ましく、30%以上である多孔質の担体物質がより好ましい。
【0024】
マグネシウム化合物は、それぞれ単独で用いてもよいし、二種以上を組み合わせて用いてもよい。マグネシウム化合物は、本発明の効果が得られる範囲においてマグネシウム化合物および溶媒を含むマグネシウム化合物スラリーの形態でハロゲン化チタン化合物溶液と接触させてもよいが、溶媒を含まない形態であることが好ましく、粉体であることがより好ましい。
【0025】
オレフィン重合用固体触媒成分におけるマグネシウム原子の一部または全部が、マグネシウム化合物に由来する。また、オレフィン重合用固体触媒成分におけるハロゲン原子の一部が、マグネシウム化合物に由来し得る。
【0026】
内部電子供与体は、オレフィン重合用固体触媒成分に含まれる1つまたは複数の金属原子に対して電子対を供与可能な有機化合物を意味し、具体的には、モノエステル化合物、ジカルボン酸エステル化合物、ジオールジエステル化合物、β−アルコキシエステル化合物、およびジエーテル化合物等が挙げられる。
【0027】
モノエステル化合物は、分子内に1つのエステル結合(−CO−O−)を有する有機化合物を意味し、芳香族カルボン酸エステル化合物および脂肪族カルボン酸エステル化合物が好ましい。芳香族カルボン酸エステル化合物としては、安息香酸メチル、安息香酸エチル、安息香酸プロピル、安息香酸ブチル、安息香酸ペンチル、安息香酸ヘキシル、安息香酸オクチル、トルイル酸メチル、トルイル酸エチル、トルイル酸プロピル、トルイル酸ブチル、トルイル酸ペンチル、トルイル酸ヘキシルおよびトルイル酸オクチル等が挙げられる。脂肪族カルボン酸エステル化合物としては、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、酢酸ペンチル、酢酸ヘキシル、酢酸オクチル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、プロピオン酸プロピル、プロピオン酸ブチル、プロピオン酸ペンチル、プロピオン酸ヘキシル、プロピオン酸オクチル、酪酸メチル、酪酸エチル、酪酸プロピル、酪酸ブチル、酪酸ペンチル、酪酸ヘキシル、酪酸オクチル、吉草酸メチル、吉草酸エチル、吉草酸プロピル、吉草酸ブチル、吉草酸ペンチル、吉草酸ヘキシル、吉草酸オクチル、カプロン酸メチル、カプロン酸エチル、カプロン酸プロピル、カプロン酸ブチル、カプロン酸ペンチル、カプロン酸ヘキシル、カプロン酸オクチル、エナント酸メチル、エナント酸エチル、エナント酸プロピル、エナント酸ブチル、エナント酸ペンチル、エナント酸ヘキシル、エナント酸オクチル、カプリル酸メチル、カプリル酸エチル、カプリル酸プロピル、カプリル酸ブチル、カプリル酸ペンチル、カプリル酸ヘキシル、カプリル酸オクチル、ペラルゴン酸メチル、ペラルゴン酸エチル、ペラルゴン酸プロピル、ペラルゴン酸ブチル、ペラルゴン酸ペンチル、ペラルゴン酸ヘキシル、ペラルゴン酸オクチル、カプリン酸メチル、カプリン酸エチル、カプリン酸プロピル、カプリン酸ブチル、カプリン酸ペンチル、カプリン酸ヘキシル、カプリン酸オクチル、ラウリン酸メチル、ラウリン酸エチル、ラウリン酸プロピル、ラウリン酸ブチル、ラウリン酸ペンチル、ラウリン酸ヘキシル、ラウリン酸オクチル、ミリスチン酸メチル、ミリスチン酸エチル、ミリスチン酸プロピル、ミリスチン酸ブチル、ミリスチン酸ペンチル、ミリスチン酸ヘキシル、ミリスチン酸オクチル、パルミチン酸メチル、パルミチン酸エチル、パルミチン酸プロピル、パルミチン酸ブチル、パルミチン酸ペンチル、パルミチン酸ヘキシル、パルミチン酸オクチル、マルガリン酸メチル、マルガリン酸エチル、マルガリン酸プロピル、マルガリン酸ブチル、マルガリン酸ペンチル、マルガリン酸ヘキシル、マルガリン酸オクチル、ステアリン酸メチル、ステアリン酸エチル、ステアリン酸プロピル、ステアリン酸ブチル、ステアリン酸ペンチル、ステアリン酸ヘキシルおよびステアリン酸オクチル等が挙げられる。
【0028】
ジカルボン酸エステル化合物は、分子内に2つのエステル結合(−CO−O−)を有する化合物であって、ジカルボン酸の2つのカルボキシル基が一価のアルコールでエステル化された構造を有する化合物を意味し、芳香族ジカルボン酸エステル化合物および脂肪族ジカルボン酸エステル化合物が好ましい。芳香族ジカルボン酸エステル化合物は、例えば芳香族ジカルボン酸または芳香族ジカルボン酸ジハライドと、一価のアルコールとから合成可能な化合物であり、具体的には、フタル酸ジメチル、フタル酸ジエチル、フタル酸ジプロピル、フタル酸ジイソプロピル、フタル酸ジイソブチル、フタル酸ジノルマルブチル、フタル酸ジターシャリーブチル、フタル酸ジペンチル、フタル酸ジヘキシル、フタル酸ジオクチル、イソフタル酸ジメチル、イソフタル酸ジエチル、イソフタル酸ジプロピル、イソフタル酸ジブチル、イソフタル酸ジペンチル、イソフタル酸ジヘキシル、イソフタル酸ジオクチル、テレフタル酸ジメチル、テレフタル酸ジエチル、テレフタル酸ジプロピル、テレフタル酸ジブチル、テレフタル酸ジペンチル、テレフタル酸ジヘキシルおよびテレフタル酸ジオクチル等が挙げられる。脂肪族ジカルボン酸エステル化合物は、例えば脂肪族ジカルボン酸または脂肪族ジカルボン酸ジハライドと、一価のアルコールとから合成可能な化合物であり、具体的には、エタン二酸ジメチル、エタン二酸ジエチル、エタン二酸ジプロピル、エタン二酸ジブチル、エタン二酸ジペンチル、エタン二酸ジヘキシル、エタン二酸ジオクチル、プロパン二酸ジメチル、プロパン二酸ジエチル、プロパン二酸ジプロピル、プロパン二酸ジブチル、プロパン二酸ジペンチル、プロパン二酸ジヘキシル、プロパン二酸ジオクチル、ブタン二酸ジメチル、ブタン二酸ジエチル、ブタン二酸ジプロピル、ブタン二酸ジブチル、ブタン二酸ジペンチル、ブタン二酸ジヘキシル、ブタン二酸ジオクチル、ペンタン二酸ジメチル、ペンタン二酸ジエチル、ペンタン二酸ジプロピル、ペンタン二酸ジブチル、ペンタン二酸ジペンチル、ペンタン二酸ジヘキシル、ペンタン二酸ジオクチル、ヘキサン二酸ジメチル、ヘキサン二酸ジエチル、ヘキサン二酸ジプロピル、ヘキサン二酸ジブチル、ヘキサン二酸ジペンチル、ヘキサン二酸ジヘキシル、ヘキサン二酸ジオクチル、(E)−ブタ−2−エン二酸ジメチル、(E)−ブタ−2−エン二酸ジエチル、(E)−ブタ−2−エン二酸ジプロピル、(E)−ブタ−2−エン二酸ジブチル、(E)−ブタ−2−エン二酸ジペンチル、(E)−ブタ−2−エン二酸ジヘキシル、(E)−ブタ−2−エン二酸ジオクチル、(Z)−ブタ−2−エン二酸ジメチル、(Z)−ブタ−2−エン二酸ジエチル、(Z)−ブタ−2−エン二酸ジプロピル、(Z)−ブタ−2−エン二酸ジブチル、(Z)−ブタ−2−エン二酸ジペンチル、(Z)−ブタ−2−エン二酸ジヘキシル、(Z)−ブタ−2−エン二酸ジオクチル、シクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸ジメチル、シクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸ジエチル、シクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸ジプロピル、シクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸ジブチル、シクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸ジペンチル、シクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸ジヘキシル、シクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸ジオクチル、1,2−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸ジメチル、1,2−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸ジエチル、1,2−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸ジプロピル、1,2−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸ジブチル、1,2−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸ジペンチル、1,2−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸ジヘキシル、1,2−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸ジオクチル、3−メチルシクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸ジメチル、3−メチルシクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸ジエチル、3−メチルシクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸ジプロピル、3−メチルシクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸ジブチル、3−メチルシクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸ジペンチル、3−メチルシクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸ジヘキシル、3−メチルシクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸ジオクチル、3、6−ジメチルシクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸ジメチル、3、6−ジメチルシクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸ジエチル、3、6−ジメチルシクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸ジプロピル、3、6−ジメチルシクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸ジブチル、3、6−ジメチルシクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸ジペンチル、3、6−ジメチルシクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸ジヘキシルおよび3、6−ジメチルシクロヘキサン−1,2−ジカルボン酸ジオクチル等が挙げられる。
【0029】
ジオールジエステル化合物は、分子内に2つのエステル結合(−CO−O−)を有する化合物であって、ジオールの2つの水酸基のそれぞれが、モノカルボン酸またはジカルボン酸のカルボキシル基をエステル化した構造を有する化合物を意味し、具体的には、1,2−ジベンゾエートプロパン、1,2−ジアセチルオキシプロパン、1,2−ジベンゾエートブタン、1,2−ジアセチルオキシブタン、1,2−ジベンゾエートシクロヘキサン、1,2−ジアセチルオキシシクロヘキサン、1,3−ジベンゾエートプロパン、1,3−ジアセチルオキシプロパン、2,4−ジベンゾエートペンタン、2,4−ジアセチルオキシペンタン、1,2−ジベンゾエートシクロペンタン、1,2−ジアセチルオキシシクロペンタン、1,2−ジベンゾエート−4−tert−ブチル−6−メチルベンゼン、1,2−ジアセチルオキシ−4−tert−ブチル−6−メチルベンゼン、1,3−ジベンゾエート−4−tert−ブチル−6−メチルベンゼンおよび1,3−ジアセチルオキシ−4−tert−ブチル−6−メチルベンゼン等が挙げられる。
【0030】
β−アルコキシエステル化合物は、アルコキシカルボニル基を有し、該アルコキシカルボニル基のβ位にアルコキシ基を有する化合物を意味し、具体的には、2−メトキシメチル−3,3−ジメチルブタン酸メチル、2−メトキシメチル−3,3−ジメチルブタン酸エチル、2−メトキシメチル−3,3−ジメチルブタン酸プロピル、2−メトキシメチル−3,3−ジメチルブタン酸ブチル、2−メトキシメチル−3,3−ジメチルブタン酸ペンチル、2−メトキシメチル−3,3−ジメチルブタン酸ヘキシル、2−メトキシメチル−3,3−ジメチルブタン酸オクチル、3−メトキシ−2−フェニルプロピオン酸メチル、3−メトキシ−2−フェニルプロピオン酸エチル、3−メトキシ−2−フェニルプロピオン酸プロピル、3−メトキシ−2−フェニルプロピオン酸ブチル、3−メトキシ−2−フェニルプロピオン酸ペンチル、3−メトキシ−2−フェニルプロピオン酸ヘキシル、3−メトキシ−2−フェニルプロピオン酸オクチル、2−エトキシメチル−3,3−ジメチルブタン酸メチル、2−エトキシメチル−3,3−ジメチルブタン酸エチル、2−エトキシメチル−3,3−ジメチルブタン酸プロピル、2−エトキシメチル−3,3−ジメチルブタン酸ブチル、2−エトキシメチル−3,3−ジメチルブタン酸ペンチル、2−エトキシメチル−3,3−ジメチルブタン酸ヘキシル、2−エトキシメチル−3,3−ジメチルブタン酸オクチル、3−エトキシ−2−フェニルプロピオン酸メチル、3−エトキシ−2−フェニルプロピオン酸エチル、3−エトキシ−2−フェニルプロピオン酸プロピル、3−エトキシ−2−フェニルプロピオン酸ブチル、3−エトキシ−2−フェニルプロピオン酸ペンチル、3−エトキシ−2−フェニルプロピオン酸ヘキシル、3−エトキシ−2−フェニルプロピオン酸オクチル、2−プロピルオキシメチル−3,3−ジメチルブタン酸メチル、2−プロピルオキシメチル−3,3−ジメチルブタン酸エチル、2−プロピルオキシメチル−3,3−ジメチルブタン酸プロピル、2−プロピルオキシメチル−3,3−ジメチルブタン酸ブチル、2−プロピルオキシメチル−3,3−ジメチルブタン酸ペンチル、2−プロピルオキシメチル−3,3−ジメチルブタン酸ヘキシル、2−プロピルオキシメチル−3,3−ジメチルブタン酸オクチル、3−プロピルオキシ−2−フェニルプロピオン酸メチル、3−プロピルオキシ−2−フェニルプロピオン酸エチル、3−プロピルオキシ−2−フェニルプロピオン酸プロピル、3−プロピルオキシ−2−フェニルプロピオン酸ブチル、3−プロピルオキシ−2−フェニルプロピオン酸ペンチル、3−プロピルオキシ−2−フェニルプロピオン酸ヘキシル、3−プロピルオキシ−2−フェニルプロピオン酸オクチル、2−メトキシベンゼンカルボン酸メチル、2−メトキシベンゼンカルボン酸エチル、2−メトキシベンゼンカルボン酸プロピル、2−メトキシベンゼンカルボン酸ブチル、2−メトキシベンゼンカルボン酸ペンチル、2−メトキシベンゼンカルボン酸ヘキシル、2−メトキシベンゼンカルボン酸オクチル、2−エトキシベンゼンカルボン酸メチル、2−エトキシベンゼンカルボン酸エチル、2−エトキシベンゼンカルボン酸プロピル、2−エトキシベンゼンカルボン酸ブチル、2−エトキシベンゼンカルボン酸ペンチル、2−エトキシベンゼンカルボン酸ヘキシルおよび2−エトキシベンゼンカルボン酸オクチル等が挙げられる。
【0031】
ジエーテル化合物は、分子内に2つのエーテル結合を有する化合物を意味し、具体的には、1,2−ジメトキシプロパン、1,2−ジエトキシプロパン、1,2−ジプロピルオキシプロパン、1,2−ジブトキシプロパン、1,2−ジ−tert−ブトキシプロパン、1,2−ジフェノキシプロパン、1,2−ジベンジルオキシプロパン、1,2−ジメトキシブタン、1,2−ジエトキシブタン、1,2−ジプロピルオキシブタン、1,2−ジブトキシブタン、1,2−ジ−tert−ブトキシブタン、1,2−ジフェノキシブタン、1,2−ジベンジルオキシブタン、1,2−ジメトキシシクロヘキサン、1,2−ジエトキシシクロヘキサン、1,2−ジプロピルオキシシクロヘキサン、1,2−ジブトキシシクロヘキサン、1,2−ジ−tert−ブトキシシクロヘキサン、1,2−ジフェノキシシクロヘキサン、1,2−ジベンジルオキシシクロヘキサン、1,3−ジメトキシプロパン、1,3−ジエトキシプロパン、1,3−ジプロピルオキシプロパン、1,3−ジブトキシプロパン、1,3−ジ−tert−ブトキシプロパン、1,3−ジフェノキシプロパン、1,3−ジベンジルオキシプロパン、2,4−ジメトキシペンタン、2,4−ジエトキシペンタン、2,4−ジプロピルオキシペンタン、2,4−ジブトキシペンタン、2,4−ジ−tert−ブトキシペンタン、2,4−ジフェノキシペンタン、2,4−ジベンジルオキシペンタン、1,2−ジメトキシシクロペンタン、1,2−ジエトキシシクロペンタン、1,2−ジプロピルオキシシクロペンタン、1,2−ジブトキシシクロペンタン、1,2−ジ−tert−ブトキシシクロペンタン、1,2−ジフェノキシシクロペンタン、1,2−ジベンジルオキシシクロペンタン、9,9−ビス(メトキシメチル)フルオレン、9,9−ビス(エトキシメチル)フルオレン、9,9−ビス(プロピルオキシメチル)フルオレン、9,9−ビス(ブトキシメチル)フルオレン、9,9−ビス−tert−ブトキシメチルフルオレン、9,9−ビス(フェノキシメチル)フルオレン、9,9−ビス(ベンジルオキシメチル)フルオレン、1,2−ジメトキシベンゼン、1,2−ジエトキシベンゼン、1,2−ジプロピルオキシベンゼン、1,2−ジブトキシベンゼン、1,2−ジ−tert−ブトキシベンゼン、1,2−ジフェノキシベンゼンおよび1,2−ジベンジルオキシベンゼン等が挙げられる。
【0032】
また、特開2011−246699号公報に記載された内部電子供与体も例示することができる。
【0033】
中でも、好ましくは、ジカルボン酸エステル化合物、ジオールジエステル化合物およびβ−アルコキシエステル化合物である。内部電子供与体は、それぞれ単独で用いてもよいし、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0034】
工程(I)におけるハロゲン化チタン化合物の使用量は、工程(I)において使用されるマグネシウム化合物中の総マグネシウム原子1molあたり、通常0.01mol〜100mol、好ましくは0.03mol〜50mol、より好ましくは0.05mol〜30molである。
【0035】
工程(I)における溶媒は、工程(I)で生成する固体生成物およびオレフィン重合用固体触媒成分に対して不活性であることが好ましい。溶媒としては、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタンおよびデカンのような脂肪族炭化水素;ベンゼン、トルエンおよびキシレンのような芳香族炭化水素;シクロヘキサン、シクロペンタン、メチルシクロヘキサンおよびデカリンのような脂環式炭化水素;1,2−ジクロルエタンおよびモノクロルベンゼンのようなハロゲン化炭化水素;並びにジエチルエーテル、ジブチルエーテル、ジイソアミルエーテルおよびテトラヒドロフランのようなエーテル化合物等を挙げることができる。中でも、芳香族炭化水素またはハロゲン化炭化水素が好ましく、トルエンがより好ましい。溶媒は、それぞれ単独で用いてもよいし、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0036】
本発明において、ハロゲン化チタン化合物溶液とマグネシウム化合物との接触は、通常、窒素ガスおよびアルゴンガスのような不活性気体雰囲気下で行われる。これらを接触させて固体生成物を含むスラリーを得る方法として、ハロゲン化チタン化合物溶液へマグネシウム化合物を添加する方法を例示することができる。
【0037】
上記ハロゲン化チタン化合物溶液へマグネシウム化合物を添加する方法において、マグネシウム化合物の添加は一度に行ってもよいし、任意の複数回に分けて行ってもよい。また、連続的にマグネシウム化合物を添加してもよい。また、マグネシウム化合物は粉体であることが好ましく、本発明の効果が得られる範囲でマグネシウム化合物と溶媒との混合物であってもよい。
【0038】
各成分を互いに接触させる方法としては、スラリー法や機械的粉砕法(例えばボールミルにより成分を粉砕しながら接触させる方法)のような公知の方法を例示することができる。
【0039】
ハロゲン化チタン化合物溶液におけるハロゲン化チタン化合物の量は、該溶液に含まれる溶媒1mLに対して、通常0.001〜50mL、好ましくは0.01〜25mL、より好ましくは0.05〜10mL、さらに好ましくは0.1〜1.0mLである。
【0040】
ハロゲン化チタン化合物溶液とマグネシウム化合物とを互いに接触させる際の温度は、通常−20℃〜50℃であり、好ましくは−5℃〜20℃である。接触の時間は、通常0.01〜48時間であり、好ましくは0.1〜36時間であり、さらに好ましくは1〜24時間である。
【0041】
工程(I)において、下記式(2)で表されるCに対する下記式(1)で表されるAの比(A/C)が、3以下となるようハロゲン化チタン化合物溶液と、マグネシウム化合物との接触が行われる。なお、A/Cの値を算出するための固体生成物を含むスラリーに含まれる溶媒の体積は、ハロゲン化チタン化合物溶液全量と、マグネシウム化合物の全量との接触が完了した時点のスラリー中に含まれる溶媒の体積である。
A=a/b (1)
(式中、aは、ハロゲン化チタン化合物溶液に含まれるハロゲン化チタン化合物の体積(mL)を、bは、ハロゲン化チタン化合物溶液に含まれる溶媒の体積(mL)を表す。)
C=a/c (2)
(式中、aは、ハロゲン化チタン化合物溶液に含まれるハロゲン化チタン化合物の体積(mL)を、cは、固体生成物を含むスラリーに含まれる溶媒の体積(mL)を表す。)
【0042】
A/Cは、好ましくは2.5以下であり、より好ましくは2以下であり、さらに好ましくは1.8以下であり、特に好ましくは1.5以下である。A/Cは1以上である。
【0043】
A/Cは、すなわち、c/bであり、工程(I)開始時の溶媒の体積に対する工程(I)終了時の溶媒の体積の比であり得る。従来の製造方法では、工程(I)で使用される溶媒は、マグネシウム化合物のスラリー調製にのみ用いられるか、ハロゲン化チタン化合物溶液とマグネシウム化合物スラリーとの両方を調製するために用いられ、且つマグネシウム化合物スラリー中の溶媒の量がハロゲン化チタン化合物溶液中の溶媒の量よりも多い。一方、本発明の製造方法では、工程(I)で使用される溶媒は、ハロゲン化チタン化合物溶液と、マグネシウムと溶媒との混合物の両方を調製する場合は、ハロゲン化チタン化合物溶液の調製により多くの量が用いられ、あるいはハロゲン化チタン化合物溶液の調製にのみ使用される(A/Cが3以下となる)。
【0044】
固体生成物は、ハロゲン化チタン化合物とマグネシウム化合物との反応物である。スラリーに含まれる溶媒は、ハロゲン化チタン化合物溶液における溶媒を含み、マグネシウム化合物スラリーにおける溶媒および/または工程(I)の最中に単独で添加した溶媒をさらに含み得る。すなわち、A/Cが1より大きい場合、増えた分の溶媒は、マグネシウム化合物スラリーにおける溶媒および/または工程(I)の最中に単独で添加した溶媒に由来し得る。
【0045】
本発明の製造方法では、A/Cが3以下であるため、工程(I)の反応開始時から反応終了時までの溶媒の変化量が小さい。そのため、工程(I)では、反応開始時から反応終了時まで、均一性が高い反応を実現することができる。このような条件で製造したオレフィン重合用固体触媒成分を含むオレフィン重合用触媒を用いる場合、オレフィンを重合して得られるオレフィン重合体の立体規則性が高くなり得る(後述の実施例も参照)。また、このような条件で製造した重合用固体触媒成分を含むオレフィン重合用触媒を用いる場合、スラリー重合法または溶液重合法、バルク重合法、気相重合法により粒子状のオレフィン重合体を製造する場合に微粉量の少ない重合体粒子を与え得る。
【0046】
内部電子供与体を添加するタイミングは任意である。例えば、工程(I)に先立って反応器に添加しておいてもよいし、ハロゲン化チタン化合物溶液に混合されていてもよいし、マグネシウム化合物に混合されていてもよいし、工程(I)の最中に添加してもよいし、工程(I)の後に固体生成物を含むスラリーへ添加してもよいし、これらの組合せでもよい。
【0047】
本発明の製造方法において、内部電子供与体の使用量は、工程(I)において使用されるマグネシウム化合物中の総マグネシウム原子1molあたり、通常0.001〜5mol、好ましくは0.01〜0.5molである。
【0048】
一実施形態において、粒子性状改良の観点から、工程(I)の後に固体生成物を含むスラリーへ内部電子供与体を添加することが好ましい。すなわち、本発明の製造方法は、一実施形態において、固体生成物を含むスラリーへ内部電子供与体を添加する工程(II)を有することが好ましい。
【0049】
内部電子供与体の添加のタイミングに関わらず、固体生成物と内部電子供与体とを互いに反応させる際の温度は、通常−20℃〜150℃であり、好ましくは−5℃〜135℃であり、より好ましくは30℃〜120℃である。反応時間は、通常0.1〜12時間であり、好ましくは0.5〜10時間である。固体生成物と内部電子供与体との反応は、通常、窒素ガスおよびアルゴンガスのような不活性気体雰囲気下で行われる。
【0050】
工程(I)および工程(II)は、それぞれ通常撹拌しながら実施され、撹拌は、下記式(5)で表される撹拌翼の周速vが、通常0.1〜10m/秒の範囲、好ましくは0.5〜5.0m/秒の範囲、より好ましくは1.0〜3.0m/秒の範囲である条件で行われる。
v=n×d (5)
(式中、nは、撹拌翼の回転速度(rad/秒)を表し、dは、撹拌翼の翼径(m)を表す。)
【0051】
反応終了後、得られた固体をオレフィン重合用固体触媒成分としてもよいし、あるいは得られた固体を前駆体として、ハロゲン化チタン化合物とマグネシウム化合物と内部電子供与体とのうちの1つ以上とさらに接触させて得られた固体をオレフィン重合用固体触媒成分としてもよい。本発明の製造方法は、一実施形態において、得られた前駆体と、ハロゲン化チタン化合物、マグネシウム化合物および内部電子供与体のうちの1つ以上とを接触させる工程(III)を有する。
【0052】
オレフィン重合用固体触媒成分または上記前駆体は、不要物を除去するために、溶媒によって洗浄することが好ましい。溶媒は、前駆体またはオレフィン重合用固体触媒成分に対して不活性であることが好ましく、溶媒としてペンタン、ヘキサン、ヘプタン、およびオクタンのような脂肪族炭化水素;ベンゼン、トルエンおよびキシレンのような芳香族炭化水素;シクロヘキサンおよびシクロペンタンのような脂環式炭化水素;並びに1,2−ジクロルエタンおよびモノクロルベンゼンのようなハロゲン化炭化水素を例示することができる。中でも、芳香族炭化水素またはハロゲン化炭化水素が特に好ましい。洗浄に使用する溶媒の量は一段階の接触につき、オレフィン重合用固体触媒成分または前駆体1gあたり例えば0.1mL〜1000mLとすることができる。好ましくは1gあたり1mL〜100mLである。洗浄は、一段階の接触につき通常、1〜5回行われる。洗浄の温度は通常−50〜150℃、好ましくは0〜140℃、さらに好ましくは60〜135℃である。洗浄の時間は、好ましくは1〜120分であり、さらに好ましくは2〜60分である。
【0053】
工程(III)は溶媒中で行うことが好ましい。工程(III)における溶媒の説明は、工程(I)における溶媒の説明と同様である。工程(III)においてハロゲン化チタン化合物を接触させる場合、該ハロゲン化チタン化合物の量は、通常0.1〜10mL/mL溶媒、好ましくは0.1〜1.0mL/mL溶媒である。工程(III)においてマグネシウム化合物を接触させる場合、該マグネシウム化合物の量は、通常0.01〜10g/mL溶媒、好ましくは0.1〜1.0g/mL溶媒である。工程(III)において内部電子供与体を接触させる場合、該内部電子供与体の量は、通常0.001〜5mL/mL溶媒、好ましくは0.005〜0.5mL/mL溶媒、より好ましくは0.01〜0.1mL/mL溶媒である。
【0054】
工程(III)におけるハロゲン化チタン化合物、マグネシウム化合物および内部電子供与体の種類はそれぞれ、工程(I)または(II)におけるものと同じであってもよいし、異なっていてもよい。
【0055】
工程(III)の温度は、通常−20℃〜150℃であり、好ましくは−5℃〜130℃であり、より好ましくは40℃〜120℃の範囲である。接触の時間は、通常0.1〜12時間であり、好ましくは1〜8時間である。本発明において、前駆体と、ハロゲン化チタン化合物、マグネシウム化合物および内部電子供与体のうちの1つ以上とを接触との接触は、通常、窒素ガスおよびアルゴンガスのような不活性気体雰囲気下で行われる。工程(III)は、1回でもよいし、複数回繰り返してもよい。
【0056】
反応終了後、得られた固体をオレフィン重合用固体触媒成分とすることができる。オレフィン重合用固体触媒成分は上述と同様に、溶媒によって洗浄することが好ましい。また、洗浄後に乾燥(例えば、減圧乾燥)してもよい。
【0057】
<オレフィン重合用固体触媒成分>
本発明のオレフィン重合用固体触媒成分は、一実施形態において、上記の製造方法で得られるオレフィン重合用固体触媒成分である。
【0058】
本発明のオレフィン重合用固体触媒成分は、別の実施形態において、以下のオレフィン重合用固体触媒成分である。以下のオレフィン重合用固体触媒成分は、一例において、上記の製造方法で得られる。
モノエステル化合物、脂肪族ジカルボン酸エステル化合物、ジオールジエステル化合物、β−アルコキシエステル化合物およびジエーテル化合物からなる群から選択される少なくとも一種の内部電子供与体と、チタン原子と、マグネシウム原子と、ハロゲン原子とを含み、
下記要件(I)〜(IV)を満たす、オレフィン重合用固体触媒成分。
(I)規格ISO15901−1:2005に従い水銀圧入法により測定される全細孔容積が0.95〜1.80mL/gであり、規格ISO15901−1:2005に従い水銀圧入法により測定される比表面積が60〜170m
2/gであること。
(II)規格ISO13320:2009に従い、レーザ回折・散乱法により測定される体積基準の粒子径分布において、10μm以下である成分の累積百分率が6.5%以下であること。
(III)規格ISO15472:2001に従い、X線光電子分光法により得られる酸素原子の1s軌道に帰属されるピークを波形分離して得られるピーク成分のうち、ピークトップの結合エネルギーが532eV以上534eV以下の範囲であるピーク成分の面積(F)に対する、ピークトップの結合エネルギーが529eV以上532eV未満の範囲であるピーク成分の面積(G)の比(G/F)が0.33以下であること。
(IV)チタン含有量が1.50〜3.40wt%であること。
【0059】
チタン原子、マグネシウム原子およびハロゲン原子の由来についてはそれぞれ、上記と同様である。モノエステル化合物、脂肪族ジカルボン酸エステル化合物、ジオールジエステル化合物、β−アルコキシエステル化合物およびジエーテル化合物の説明も、上記と同様である。一例において、内部電子供与体は、好ましくはジオールジエステル化合物またはβ−アルコキシエステル化合物であり、より好ましくはβ−アルコキシエステル化合物であり、さらに好ましくは2−エトキシメチル−3,3−ジメチルブタン酸エチルである。
【0060】
要件(I)について、以下に説明する。
規格ISO15901−1:2005に従い水銀圧入法により測定される全細孔容積は、0.95〜1.80mL/gであり、好ましくは1.00〜1.70mL/gであり、より好ましくは1.10〜1.60mL/gである。全細孔容積が0.95mL/g以上であると、重合体の生産性が向上する。全細孔容積が1.80mL/g以下であると、十分な触媒粒子強度が確保できる。
規格ISO15901−1:2005に従い水銀圧入法により測定される比表面積は、60〜170m
2/gであり、好ましくは80〜150m
2/gであり、より好ましくは88〜130m
2/gである。比表面積が60m
2/g以上であると、得られる重合体中に含まれるべたつき成分を低減できる。比表面積が170m
2/g以下であると、十分な触媒粒子強度が確保できる。
【0061】
要件(II)について、以下に説明する。
規格ISO13320:2009に従い、レーザ回折・散乱法により測定される体積基準の粒子径分布において、10μm以下である成分の累積百分率は6.5%以下であり、6.2%以下であることが好ましく、6.0%以下であることがより好ましく、5.5%以下であることがさらに好ましい。累積百分率が6.5%以下であると、重合プロセスのファウリングトラブルを抑制できる。
【0062】
要件(III)について、以下に説明する。
規格ISO15472:2001に従い、X線光電子分光法により得られる酸素原子の1s軌道に帰属されるピークを波形分離して得られるピーク成分のうち、結合エネルギーが532eV以上534eV以下の範囲にピークトップを有するピーク成分の面積(F)に対する、結合エネルギーが529eV以上532eV未満の範囲にピークトップを有するピーク成分の面積(G)の比(G/F)が0.33以下であり、0.30以下であることが好ましく、0.28以下であることがより好ましい。G/Fが0.33以下であると、重合において、べたつき成分の生成を抑制できる。
【0063】
要件(IV)について、以下に説明する。
チタン含有量は、1.50〜3.40wt%であり、好ましくは1.6〜3.0wt%である。チタン含有量が3.40wt%以下であると、得られる重合体に含まれるべたつき成分を低減でき、チタン含有量が1.5wt%以上であると、重合体の生産性を改善できる。
【0064】
なお、本発明の製造方法で製造したオレフィン重合用固体触媒成分も、一実施形態において、要件(I)〜(III)の少なくとも1つ、少なくとも2つ、または全部を満たし得る。
【0065】
オレフィン重合用固体触媒成分中のチタン原子の含有量は、一例において、通常1.5〜3.4重量%であり、好ましくは1.8〜3.0重量%である。チタン原子の含有量は、例えば、後述の実施例の方法で求めることができる。
【0066】
オレフィン重合用固体触媒成分中の内部電子供与体の含有量は、一例において、通常5〜20重量%であり、好ましくは10〜15重量%である。内部電子供与体の含有量は、例えば、後述の実施例の方法で求めることができる。
【0067】
オレフィン重合用固体触媒成分中のアルコキシ基の含有量は、一例において、通常2.0重量%以下であり、好ましくは1.5重量%以下である。アルコキシ基の含有量は、例えば、後述の実施例の方法で求めることができる。
【0068】
本発明のオレフィン重合用固体触媒成分によれば、後述のとおり、これを含むオレフィン重合用触媒を用いてオレフィンを重合した場合に立体規則性の高い重合体を与え得る。
【0069】
<オレフィン重合用触媒>
一実施形態において、本発明のオレフィン重合用固体触媒成分と、有機アルミニウム化合物とを例えば公知の方法によって接触させることによって、オレフィン重合用触媒を製造することができる。また、別の実施形態において、本発明のオレフィン重合用固体触媒成分と、有機アルミニウム化合物と、外部電子供与体とを接触させることによって、オレフィン重合用触媒を製造することができる。
【0070】
そのため、本発明のオレフィン重合用触媒は、一実施形態において、本発明のオレフィン重合用固体触媒成分および有機アルミニウム化合物を含む。また、本発明のオレフィン重合用触媒は、別の実施形態において、本発明のオレフィン重合用固体触媒成分、有機アルミニウム化合物および外部電子供与体を含む。
【0071】
本発明で用いられる有機アルミニウム化合物は、炭素−アルミニウム結合を1つ以上有する化合物であり、具体的には、特開平10−212319号公報に記載された化合物を例示することができる。中でも、好ましくは、トリアルキルアルミニウム、トリアルキルアルミニウムとジアルキルアルミニウムハライドとの混合物、または、アルキルアルモキサンであり、さらに好ましくはトリエチルアルミニウム、トリiso−ブチルアルミニウム、トリエチルアルミニウムとジエチルアルミニウムクロリドとの混合物またはテトラエチルジアルモキサンである。
【0072】
本発明で用いられる外部電子供与体としては、特許第2950168号公報、特開2006−96936号公報、特開2009−173870号公報、および特開2010−168545号公報に記載された化合物を例示することができる。中でも、好ましくは酸素含有化合物または窒素含有化合物である。酸素含有化合物として、アルコキシケイ素、エーテル、エステル、およびケトンを例示することができる。中でも、好ましくはアルコキシケイ素またはエーテルである。
【0073】
外部電子供与体としてのアルコキシケイ素は、下式(iv)〜(vi)のいずれかで表される化合物が好ましい。
R
2hSi(OR
3)
4-h・・・(iv)
Si(OR
4)
3(NR
5R
6)・・・(v)
Si(OR
4)
3(NR
7)・・・(vi)
[式中、R
2は炭素原子数1〜20のハイドロカルビル基、または水素原子であり;R
3は炭素原子数1〜20のハイドロカルビル基であり;hは0≦h<4を満たす整数である。R
2およびR
3の一方または両方が複数存在する場合、複数のR
2およびR
3は互いに同じであっても異なってもよい。R
4は、炭素原子数1〜6のハイドロカルビル基であり;R
5およびR
6は水素原子または炭素原子数1〜12のハイドロカルビル基であり;NR
7は、炭素原子数5〜20の環状アミノ基である。]
【0074】
上式(iv)におけるR
2およびR
3のハイドロカルビル基としては、アルキル基、アラルキル基、アリール基、アルケニル基等が挙げられ、R
2およびR
3のアルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、およびn−オクチル基のような直鎖状アルキル基;iso−プロピル基、iso−ブチル基、tert−ブチル基、iso−ペンチル基、ネオペンチル基、および2−エチルヘキシル基のような分岐状アルキル基;シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロへプチル基、およびシクロオクチル基のような環状アルキル基が挙げられ、好ましくは炭素原子数1〜20の直鎖状、分岐状もしくは環状アルキル基である。R
2およびR
3のアラルキル基としては、ベンジル基、およびフェネチル基が挙げられ、好ましくは炭素原子数7〜20のアラルキル基である。R
2およびR
3のアリール基としては、フェニル基、トリル基、およびキシリル基が挙げられ、好ましくは炭素原子数6〜20のアリール基である。R
2およびR
3のアルケニル基としては、ビニル基、アリル基、3−ブテニル基、および5−ヘキセニル基のような直鎖状アルケニル基;iso−ブテニル基、および5−メチル−3−ペンテニル基のような分岐状アルケニル基;2−シクロヘキセニル基、および3−シクロヘキセニル基のような環状アルケニル基が挙げられ、好ましくは炭素原子数2〜10のアルケニル基である。
【0075】
上式(iv)で表されるアルコキシケイ素の具体例としては、シクロヘキシルメチルジメトキシシラン、シクロヘキシルエチルジメトキシシラン、ジiso−プロピルジメトキシシラン、tert−ブチルエチルジメトキシシラン、tert−ブチル−n−プロピルジメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ジシクロブチルジメトキシシラン、ジシクロペンチルジメトキシシラン、テトラエトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、iso−ブチルトリエトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、sec−ブチルトリエトキシシラン、シクロヘキシルトリエトキシシラン、シクロペンチルトリエトキシシランが挙げられる。
【0076】
上式(v)および(vi)におけるR
4のハイドロカルビル基としては、アルキル基、アルケニル基等が挙げられ、R
4のアルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、n−ペンチル基、およびn−ヘキシル基のような直鎖状アルキル基;iso−プロピル基、iso−ブチル基、tert−ブチル基、iso−ペンチル基、およびネオペンチル基のような分岐状アルキル基;シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、およびシクロヘキシル基のような環状アルキル基が挙げられ、好ましくは炭素原子数1〜6の直鎖状アルキル基である。R
4のアルケニル基としては、ビニル基、アリル基、3−ブテニル、および5−ヘキセニル基のような直鎖状アルケニル基;iso−ブテニル基、および5−メチル−3−ペンテニル基のような分岐状アルケニル基;2−シクロヘキセニル基、および3−シクロヘキセニル基のような環状アルケニル基が挙げられ、好ましくは炭素原子数2〜6の直鎖状アルケニル基であり、特に好ましくはメチル基およびエチル基である。
【0077】
上式(v)におけるR
5およびR
6のハイドロカルビル基としては、アルキル基、アルケニル基等が挙げられ、R
5およびR
6のアルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、n−ペンチル基、およびn−ヘキシル基のような直鎖状アルキル基;iso−プロピル基、iso−ブチル基、tert−ブチル基、iso−ペンチル基、およびネオペンチル基のような分岐状アルキル基;シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、およびシクロヘキシル基のような環状アルキル基が挙げられ、好ましくは炭素原子数1〜6の直鎖状アルキル基である。R
5およびR
6のアルケニル基としては、ビニル基、アリル基、3−ブテニル基、および5−ヘキセニル基のような直鎖状アルケニル基;iso−ブテニル基、および5−メチル−3−ペンテニル基のような分岐状アルケニル基;2−シクロヘキセニル基、および3−シクロヘキセニル基のような環状アルケニル基が挙げられ、好ましくは炭素原子数2〜6の直鎖状アルケニル基であり、特に好ましくはメチル基およびエチル基である。
【0078】
上式(v)で表されるアルコキシケイ素の具体例としては、ジメチルアミノトリメトキシシラン、ジエチルアミノトリメトキシシラン、ジ−n−プロピルアミノトリメトキシシラン、ジメチルアミノトリエトキシシラン、ジエチルアミノトリエトキシシラン、ジ−n−プロピルアミノトリエトキシシラン、メチルエチルアミノトリエトキシシラン、メチル−n−プロピルアミノトリエトキシシラン、tert−ブチルアミノトリエトキシシラン、ジiso−プロピルアミノトリエトキシシラン、メチルiso−プロピルアミノトリエトキシシランが挙げられる。
【0079】
上式(vi)におけるNR
7の環状アミノ基としては、パーヒドロキノリノ基、パーヒドロイソキノリノ基、1,2,3,4−テトラヒドロキノリノ基、1,2,3,4−テトラヒドロイソキノリノ基、オクタメチレンイミノ基が挙げられる。
【0080】
上式(vi)で表されるアルコキシケイ素の具体例としては、パーヒドロキノリノトリエトキシシラン、パーヒドロイソキノリノトリエトキシシラン、1,2,3,4−テトラヒドロキノリノトリエトキシシラン、1,2,3,4−テトラヒドロイソキノリノトリエトキシシラン、オクタメチレンイミノトリエトキシシランが挙げられる。
【0081】
外部電子供与体のエーテルとして、好ましくは環状エーテル化合物である。環状エーテル化合物とは、環構造内に少なくとも一つの−C−O−C−結合を有する複素環式化合物であり、さらに好ましくは環構造内に少なくとも一つの−C−O−C−O−C−結合を有する環状エーテル化合物であり、特に好ましくは1,3−ジオキソラン、または1,3−ジオキサンである。
【0082】
外部電子供与体は、それぞれ単独で用いてもよく、また二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0083】
オレフィン重合用固体触媒成分と、有機アルミニウム化合物と、外部電子供与体とを接触させる方法は、オレフィン重合用触媒が生成される限り、特に限定されない。接触は溶媒の存在下または非存在下で行われる。これらの接触混合物を重合槽に供給してもよいし、各成分を別々に重合槽に供給して重合槽中で接触させてもよいし、任意の二成分の接触混合物と残りの成分とを別々に重合槽に供給してこれらを重合槽中で接触させてもよい。
【0084】
有機アルミニウム化合物の使用量は、オレフィン重合用固体触媒成分1mgに対して、通常0.01〜1000μmolであり、好ましくは0.1〜500μmolである。
【0085】
外部電子供与体の使用量は、オレフィン重合用固体触媒成分1mgに対して、通常0.0001〜1000μmolであり、好ましくは0.001〜500μmolであり、より好ましくは0.01〜150μmolである。
【0086】
本発明のオレフィン重合用触媒によれば、後述のとおり、これを用いてオレフィンを重合した場合に立体規則性の高い重合体を与え得る。
【0087】
<オレフィン重合体の製造方法>
本発明のオレフィン重合体の製造方法は、本発明のオレフィン重合用触媒の存在下でオレフィンを重合する。
【0088】
オレフィンとしては、エチレンおよび炭素原子数3以上のα−オレフィンを例示することができる。α−オレフィンとして、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテン、および1−デセンのような直鎖状モノオレフィン;3−メチル−1−ブテン、3−メチル−1−ペンテン、および4−メチル−1−ペンテンのような分岐鎖状モノオレフィン;ビニルシクロヘキサンのような環状モノオレフィン;並びに、これらの2種以上の組合せを例示することができる。中でも、好ましくはエチレンもしくはプロピレンの単独重合、または、エチレンもしくはプロピレンを主成分とする複数種のオレフィンの共重合である。上記の複数種のオレフィンの組合せは、2種類またはそれ以上の種類のオレフィンの組合せを含んでいてもよく、共役ジエンや非共役ジエンのような多不飽和結合を有する化合物とオレフィンとの組合せを含んでいてもよい。
【0089】
本発明のオレフィン重合体の製造方法で製造されるオレフィン重合体は、好ましくはエチレン単独重合体、プロピレン単独重合体、1−ブテン単独重合体、1−ペンテン単独重合体、1−ヘキセン単独重合体、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−1−ブテン共重合体、エチレン−1−ヘキセン共重合体、プロピレン−1−ブテン共重合体、プロピレン−1−ヘキセン共重合体、エチレン−プロピレン−1−ブテン共重合体、エチレン−プロピレン−1−ヘキセン共重合体、または、これらを多段重合して得られる重合体である。
【0090】
本発明のオレフィン重合用触媒を形成する方法は、一実施形態において、以下の工程からなる方法が好ましい場合がある:
(i)オレフィン重合用固体触媒成分および有機アルミニウム化合物の存在下、少量のオレフィン(本来の重合(通常、本重合と言われる)で使用されるオレフィンと同一または異なる)を重合させ(生成されるオレフィン重合体の分子量を調節するために水素のような連鎖移動剤を用いてもよいし、外部電子供与体を用いてもよい)、該オレフィンの重合体で表面が覆われた触媒成分を生成させる工程(該重合は通常、予備重合と言われ、したがって該触媒成分は通常、予備重合触媒成分と言われる)
(ii)予備重合触媒成分と、有機アルミニウム化合物および外部電子供与体とを接触させる工程。
【0091】
予備重合は好ましくは、プロパン、ブタン、イソブタン、ペンタン、イソペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、シクロヘキサン、ベンゼンおよびトルエンのような不活性炭化水素を溶媒とするスラリー重合である。
【0092】
上記工程(i)で用いられる有機アルミニウム化合物の量は、工程(i)で用いられる固体触媒成分中のチタン原子1mol当たり、通常0.5mol〜700mol、好ましくは0.8mol〜500mol、特に好ましくは1mol〜200molである。
【0093】
予備重合されるオレフィンの量は、工程(i)で用いられるオレフィン重合用固体触媒成分1g当たり通常0.01g〜1000g、好ましくは0.05g〜500g、特に好ましくは0.1g〜200gである。
【0094】
上記工程(i)のスラリー重合におけるオレフィン重合用固体触媒成分のスラリー濃度は、好ましくは1〜500g−オレフィン重合用固体触媒成分/リットル−溶媒、特に好ましくは3〜300g−オレフィン重合用固体触媒成分/リットル−溶媒である。
【0095】
予備重合の温度は、好ましくは−20℃〜100℃、特に好ましくは0℃〜80℃である。予備重合における気相部のオレフィンの分圧は、好ましくは0.01MPa〜2MPa、特に好ましくは0.1MPa〜1MPaであるが、予備重合の圧力や温度において液状であるオレフィンについては、この限りではない。予備重合の時間は、好ましくは2分間〜15時間である。
【0096】
予備重合における、オレフィン重合用固体触媒成分、有機アルミニウム化合物およびオレフィンを重合槽へ供給する方法として、以下の方法(1)および(2)を例示することができる:
(1)オレフィン重合用固体触媒成分と有機アルミニウム化合物とを供給した後、オレフィンを供給する方法
(2)オレフィン重合用固体触媒成分とオレフィンとを供給した後、有機アルミニウム化合物を供給する方法。
【0097】
予備重合における、オレフィンを重合槽へ供給する方法として、以下の方法(1)および(2)を例示することができる:
(1)重合槽内の圧力を所定の圧力に維持するようにオレフィンを重合槽へ順次供給する方法
(2)オレフィンの所定量の全量を一括して重合槽へ供給する方法。
【0098】
予備重合で用いられる外部電子供与体の量は、オレフィン重合用固体触媒成分中に含まれるチタン原子1molに対して、通常0.01mol〜400mol、好ましくは0.02mol〜200mol、特に好ましくは、0.03mol〜100molであり、有機アルミニウム化合物1molに対して、通常0.003mol〜5mol、好ましくは0.005mol〜3mol、特に好ましくは0.01mol〜2molである。
【0099】
予備重合における、外部電子供与体を重合槽へ供給する方法として、以下の方法(1)および(2)を例示することができる:
(1)外部電子供与体を単独で重合槽へ供給する方法
(2)外部電子供与体と有機アルミニウム化合物との接触物を重合槽へ供給する方法。
【0100】
本重合時の有機アルミニウム化合物の使用量は、オレフィン重合用固体触媒成分中のチタン原子1molあたり、通常1mol〜1000mol、特に好ましくは5mol〜600molである。
【0101】
本重合で外部電子供与体を使用する場合の外部電子供与体の使用量は、オレフィン重合用固体触媒成分中に含まれるチタン原子1molあたり、通常0.1mol〜2000mol、好ましくは0.3mol〜1000mol、特に好ましくは0.5mol〜800molであり、有機アルミニウム化合物1molあたり、通常0.001mol〜5mol、好ましくは0.005mol〜3mol、特に好ましくは0.01mol〜1molである。
【0102】
本重合の温度は、通常−30℃〜300℃、好ましくは20℃〜180℃である。重合圧力は特に制限されず、工業的かつ経済的であるという点で、一般に常圧〜10MPa、好ましくは200kPa〜5MPa程度である。重合はバッチ式または連続式であり、重合方法としてプロパン、ブタン、イソブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタンおよびオクタンのような不活性炭化水素を溶媒とするスラリー重合法または溶液重合法や、重合温度において液状であるオレフィンを媒体とするバルク重合法や、気相重合法を例示することができる。
【0103】
本重合で得られる重合体の分子量を調節するために、連鎖移動剤(例えば、水素や、ジメチル亜鉛およびジエチル亜鉛のようなアルキル亜鉛)を用いてもよい。
【0104】
本発明によれば、オレフィンを重合した場合に立体規則性の高い重合体を与えるオレフィン重合用触媒、および該オレフィン重合用触媒を製造するためのオレフィン重合用固体触媒成分を得ることができる。また、該オレフィン重合用触媒を用いてオレフィンを重合することにより、立体規則性の高いオレフィン重合体を得ることができる。本発明のオレフィン重合用固体触媒成分はアイソタクチック立体規則性オレフィン重合体用触媒として特に好適である。
【0105】
アイソタクチック立体規則性の尺度としては、CXS含有量が用いられることがある。
CXS含有量は、一例において、通常2.0重量%以下であり、好ましくは1.5重量%以下であり、より好ましくは1.0重量%以下である。CXS含有量は、例えば、後述の実施例の方法で求めることができる。
【0106】
また、一実施形態において、本発明のオレフィン重合用固体触媒成分およびオレフィン重合用触媒は、気相重合法により粒子状のオレフィン重合体を製造する場合に微粉量の少ない重合体粒子を与え得る。一例において、オレフィン重合体中の微粉(1mm以下)量は、好ましくは4.0重量%以下、より好ましくは3.0重量%以下であり得る。
【0107】
以下に実施例を示し、本発明の実施の形態についてさらに詳しく説明する。
【実施例】
【0108】
[固体触媒成分の組成分析]
(1)チタン原子の含有量
固体サンプル約20mgを2規定の希硫酸約30mLで分解した後、これに過剰となる3重量%過酸化水素水3mLを加え、得られた液状サンプルの410nmの特性吸収を、規格JIS K0115:2004に従い、日本分光社製紫外可視分光光度計V−650型により測定し、別途作成しておいた検量線に基づきチタン原子の含有量を求めた。
【0109】
(2)アルコキシ基の含有量
固体サンプル約2gを水100mLで分解した後、得られた液状サンプル中のアルコキシ基に対応するアルコール量を、規格JIS K0114:2012に従いガスクロマトグラフィー内部標準法を用いて求め、得られた結果をアルコキシ基含有量に換算した。
【0110】
(3)内部電子供与体の含有量
固体触媒成分約300mgをN,N−ジメチルアセトアミド100mLに溶解させた後、規格JIS K0114:2012に従い、溶液中の内部電子供与体量をガスクロマトグラフィー内部標準法で求めた。
【0111】
(4)細孔容積
規格ISO15901−1:2005に従い水銀圧入法により細孔半径約0.0018〜100μmの範囲における固体触媒成分の細孔分布を測定した。細孔半径はWashburnの式を用いて算出した。測定装置としてはmicrometritics社製オートポアIV9520を用いた。試料は大気および水分と接触しないように取扱い、前処理は実施しなかった。得られた測定データより細孔容積を求めた。
【0112】
(5)固体触媒成分の中心粒径(D50)および粒径10μm以下成分の累積百分率
規格ISO13320:2009に従い、中心粒径(D50)および粒径10μm以下成分の累積百分率を、レーザ回折・散乱法により分析した。測定装置としてレーザ回折式粒度分布測定装置(マルバーン社製「マスターサイザー3000」)を用い、屈折率はトルエンを1.49、固体触媒成分を1.53−0.1iとした。アルミナ等で予め水分を除去しておいたトルエン溶媒を、開口部を窒素シールした分散装置(ハイドロMV)に投入して測定セルを含めた循環系内部を該溶媒で満たした。撹拌速度は2,000rpmに設定し、かつ超音波分散処理せずに測定セル内の溶媒を循環させながら散乱強度3〜10%となるように粉末試料を投入して粒度を測定した。得られた粒度体積基準分布図(チャート)より中心粒径(D50)および粒径10μm以下成分の累積百分率を求めた。試料は大気および水分と接触しないように取扱い、前処理は実施しなかった。
【0113】
(6)結合エネルギー
結合エネルギーは、規格ISO15472:2001に従いX線光電子分光(XPS)分析法により測定した。測定装置としてKratos Analitycal社製AXIS ULTRA DLDを用い、下記測定条件で、測定を行い、酸素原子の1s軌道に帰属されるピークを得た。なお、測定においては、炭素原子1s軌道に帰属されるピークが285.0eVとなるようエネルギー軸を補正した。
<測定条件>
光源:単色化AlKα線(1486.6 eV)
管電流:10mA
管電圧:15kV、0.1eVステップ
測定時の装置内真空度:10
−8〜10
−9torrの範囲
中和銃:使用
【0114】
得られた酸素原子の1s軌道に帰属されるピークのうち、結合エネルギーが532eV以上534eV以下の範囲にピークトップを有する成分のピークと、結合エネルギーが529eV以上532eV未満の範囲にピークトップを有する成分のピークについて、それぞれ半価幅および強度をフィッティングパラメータとして、複数の70%Gaussianおよび30%Lorentzianの線形を用いて波形分離を行い、結合エネルギーが532eV以上534eV以下の範囲にピークトップを有する成分の面積(F)、および、結合エネルギーが529eV以上532eV未満の範囲にピークトップを有する成分の面積(G)をそれぞれ求めた。
【0115】
[重合体の分析]
(1)重合活性
重合反応に用いた固体触媒成分単位重量当たりの得られた重合体の重量を重合活性(単位:g−重合体/g−固体触媒成分)とした。
【0116】
(2)キシレン可溶成分量(CXS:単位=重量%)
オレフィン重合体の20℃キシレン可溶成分量(以下CXSと略す)は以下のように測定した。
1gの重合体を200mLの沸騰したキシレンに溶解させた後、50℃まで徐冷し、次いで氷水に浸し撹拌しながら20℃まで冷却し、20℃で3時間放置した。析出した重合体を濾別し、濾液中に残存した重合体の重量百分率をCXSとした。
【0117】
(3)極限粘度([η]:単位=dL/g)
オレフィン重合体の極限粘度(以下[η]と略す)は以下のように測定した。
ウベローデ型粘度計を用いて、濃度0.1g/dL、0.2g/dL、および、0.5g/dLの3つの試料の還元粘度を測定した。極限粘度は、参考文献「高分子溶液、高分子実験学11」(1982年共立出版株式会社刊)第491項に記載の計算方法、すなわち、還元粘度を濃度に対してプロットし、濃度をゼロに外挿する外挿法によって求めた。テトラリンを溶媒として用いて、温度135℃で測定を行った。
【0118】
(4)重合体中の微粉量
重合パウダーに、予め帯電防止剤としてショーワグローブ社製静電気除去スプレーSB−8を散布した。分級機としては振動篩器および篩目開き1mmの篩を用い、振幅0.35mmで振盪し、5分おきに重量を測定し、重量変化が無くなった時点の篩下成分の重量を得た。重合パウダー全体に対する得られた篩下成分の重量百分率を微粉量とした。
【0119】
(製造例1)
(1)3,3−ジメチルブタン酸エチルの合成
室温で、窒素置換した500mL4口丸底フラスコに、3,3−ジメチルブタン酸120gとN,N−ジメチルホルムアミド78mgとを加えた。フラスコ内の混合物に、55℃で、塩化チオニル129gを4時間かけて滴下し、その後2時間反応を行った。得られた混合物を、0〜5℃に冷却した後、エタノール52.2gを3時間かけて滴下し、0〜10℃で反応を行った。得られた反応溶液に、ヘプタン81.6gを加えた後、水78g、45重量%炭酸カリウム水溶液142g、さらに水78gで洗浄した。減圧濃縮して3,3−ジメチルブタン酸エチル212g得た。
20℃で、窒素置換した3.0L4口丸底フラスコに、ジイソプロピルアミン114.6gとテトラヒドロフラン681gとを加えた。フラスコ内の混合物に、5℃以下で20重量%ノルマルブチルリチウムシクロヘキサン溶液363gを6時間かけて加えた。
(2)2−エトキシメチル−3,3−ジメチルブタン酸エチルの合成
3,3−ジメチルブタン酸エチルを67重量%含むノルマルヘプタン溶液204gを2時間かけて滴下した。次にクロロメチルエチルエーテルを50重量%含むノルマルヘプタン溶液215gを8時間かけて滴下した。得られた反応溶液を20℃に昇温して1時間反応を行った後、16重量%硫酸水溶液695gを滴下した。抽出溶媒としてノルマルヘプタン251gを用い、有機成分を抽出した。有機成分は水584gで洗浄した後、減圧濃縮してから蒸留することで、2−エトキシメチル−3,3−ジメチルブタン酸エチル115.8g(収率60.5%、純度98.3%)を得た。
【0120】
[実施例1]
(1)オレフィン重合用固体触媒成分の合成
工程(1−1A):撹拌機、滴下ロートおよび温度計を備えた100mLのフラスコを窒素で置換した。該フラスコに、トルエン36.0mLおよび四塩化チタン22.5mLを投入し、撹拌して、四塩化チタンのトルエン溶液を得た。フラスコ内の温度を10℃とした後、同温度でマグネシウムジエトキシド(球状、粒径65μm、かさ密度0.279g/mL)0.75gを6分おきに10回投入した。その後、フラスコ内のスラリーを10℃で30分間撹拌して、フタル酸ジノルマルブチル1.80mLをフラスコ内に投入した。次いで、フラスコ内の温度を110℃へ昇温し、同温度で2時間、フラスコ内の混合物を撹拌した。得られた混合物を固液分離して固体を得た。該固体を100℃にてトルエン52.5mLで3回洗浄した。表1に、固体生成物を含むスラリーを得る工程の結果を示す。
工程(1−1B):洗浄後の固体にトルエン22.5mLを投入し、スラリーを形成した。該スラリーに四塩化チタン15.0mLを投入して混合物を形成し、110℃で1時間混合物を攪拌した。その後、攪拌した混合物を固液分離し、該固体を100℃にてトルエン52.5mLで3回洗浄し、さらに室温にてヘキサン52.5mLで3回洗浄し、洗浄後の固体を減圧乾燥してオレフィン重合用固体触媒成分を得た。この固体触媒成分の、チタン原子含有量は3.34重量%であり、エトキシ基含有量は0.66重量%であり、内部電子供与体含有量は13.78重量%であり、XPS分析による酸素原子1s軌道に由来し、結合エネルギーが532〜534eVの範囲にピークトップを有するピーク成分量は80.6面積%であり、前記結合エネルギーが529〜532eVの範囲にピークトップを有するピーク成分量は19.4面積%であった。水銀圧入法による全細孔容積は0.95mL/gであり、細孔半径5〜30nmの範囲の細孔の合計容積は0.115mL/gであり、細孔半径30〜700nmの範囲の細孔の合計容積は0.071mL/gであり、比表面積は83.49m
2/gであった。またレーザ回折・散乱法による中心粒径は55.8μmであり、粒径10μm以下成分の累積百分率は6.2%であった。該オレフィン重合用固体触媒成分の分析結果を表2および表3に示す。
【0121】
(2)プロピレンの重合
内容積3Lの撹拌機付きオートクレーブを十分乾燥した後、その内部を真空にした。トリエチルアルミニウム(有機アルミニウム化合物)2.63mmol、シクロヘキシルエチルジメトキシシラン(外部電子供与体)0.26mmol、および実施例1(1)で合成したオレフィン重合用固体触媒成分5.55mgをオートクレーブに加えた。次いで、プロピレン780gおよび水素0.2MPaをオートクレーブに加えた。オートクレーブの温度を80℃に昇温し、80℃で1時間プロピレンを重合した。重合反応終了後、未反応モノマーをパージし、プロピレン重合体を得た。触媒単位量当たりの重合体の生成量(重合活性)は78,600g−重合体/g−固体触媒成分であった。この重合体のCXSは1.35wt%、[η]は1.13dL/g、重合体中の微粉量は2.5重量%であった。得られた重合体の分析結果を表4に示す。
【0122】
[比較例1]
(1)オレフィン重合用固体触媒成分の合成
工程(1−1A):撹拌機、滴下ロートおよび温度計を備えた100mLのフラスコを窒素で置換した。該フラスコに、トルエン1.0mLおよび四塩化チタン22.5mLを投入し、撹拌して、四塩化チタンのトルエン溶液を得た。次いでマグネシウムジエトキシド(球状、粒径65μm、かさ密度0.279g/mL)7.5gとトルエン35mLとから調製された懸濁液を、6分おきに10回に分けて、10℃の液温に保持した前記溶液中に添加した。その後、フラスコ内のスラリーを10℃で30分間撹拌して、フタル酸ジノルマルブチル1.80mLをフラスコ内に投入した。次いで、フラスコ内の温度を110℃へ昇温し、同温度で2時間、フラスコ内の混合物を撹拌した。得られた混合物を固液分離して固体を得た。該固体を100℃にてトルエン52.5mLで3回洗浄した。表1に、固体生成物を含むスラリーを得る工程の結果を示す。
工程(1−1B):洗浄後の固体にトルエン52.5mLを投入し、スラリーを形成した。該スラリーに四塩化チタン15.0mLを投入して混合物を形成し、110℃で1時間混合物を攪拌した。その後、攪拌した混合物を固液分離し、該固体を100℃にてトルエン52.5mLで3回洗浄し、さらに室温にてヘキサン52.5mLで3回洗浄し、洗浄後の固体を減圧乾燥してオレフィン重合用固体触媒成分を得た。この固体触媒成分のチタン原子含有量は3.45重量%であり、エトキシ基含有量は0.69重量%であり、内部電子供与体含有量は12.98重量%であり、XPS分析による酸素原子1s軌道に由来し、結合エネルギーが532〜534eVの範囲にピークトップを有するピーク成分量は74.9面積%であり、前記結合エネルギーが529〜532eVの範囲にピークトップを有するピーク成分量は25.1面積%であった。水銀圧入法による全細孔容積は0.92mL/gであり、細孔半径5〜30nmの範囲の細孔の合計容積は0.106mL/gであり、細孔半径30〜700nmの範囲の細孔の合計容積は0.073mL/gであり、比表面積は77.53m
2/gであった。またレーザ回折・散乱法による中心粒径は54.0μmであり、粒径10μm以下成分の累積百分率は6.6%であった。該オレフィン重合用固体触媒成分の分析結果を表2および表3に示す。
【0123】
(2)プロピレンの重合
重合触媒の形成および重合は、実施例1と同様に実施した。触媒単位量当たりの重合体の生成量(重合活性)は77,700g−重合体/g−固体触媒成分であった。この重合体のCXSは1.57wt%、[η]は1.12dL/g、重合体中の微粉量は4.4重量%であった。得られた重合体の分析結果を表4に示す。
【0124】
[実施例2]
(1)オレフィン重合用固体触媒成分の合成
工程(1−1A):撹拌機、滴下ロートおよび温度計を備えた100mLのフラスコを窒素で置換した。該フラスコに、トルエン36.0mLおよび四塩化チタン22.5mLを投入し、撹拌して、四塩化チタンのトルエン溶液を得た。フラスコ内の温度を0℃とした後、同温度でマグネシウムジエトキシド(球状、中心粒径37μm、かさ密度0.260g/mL)0.75gを6分おきに10回投入した。その後、フラスコ内のスラリーを0℃で90分間撹拌して、2−エトキシメチル−3,3−ジメチルブタン酸エチル0.60mLをフラスコ内に投入した。次いで10℃に昇温して同温度で2時間撹拌した後、昇温を開始した。60℃の時点で2−エトキシメチル−3,3−ジメチルブタン酸エチル4.80mLをフラスコ内に投入し、110℃まで昇温した。同温度で2時間、フラスコ内の混合物を撹拌した。得られた混合物を固液分離して固体を得た。該固体を100℃にてトルエン56.3mLで3回洗浄した。表1に、固体生成物を含むスラリーを得る工程の結果を示す。
工程(1−1B):洗浄後の固体にトルエン45.0mLを投入し、スラリーを形成した。該スラリーに四塩化チタン15.0mLを投入して混合物を形成し、70℃に昇温した。同温度で2−エトキシメチル−3,3−ジメチルブタン酸エチル0.75mLをフラスコ内に投入した後、110℃で1時間混合物を攪拌した。その後、攪拌した混合物を固液分離し、該固体を100℃にてトルエン56.3mLで3回洗浄し、さらに室温にてヘキサン56.3mLで3回洗浄し、洗浄後の固体を減圧乾燥してオレフィン重合用固体触媒成分を得た。この固体触媒成分のチタン原子含有量は1.86重量%であり、レーザ回折・散乱法による中心粒径は33.0μmであり、粒径10μm以下成分の累積百分率は3.9%であった。該オレフィン重合用固体触媒成分の分析結果を表2に示す。
【0125】
[比較例2]
(1)オレフィン重合用固体触媒成分の合成
工程(1−1A):撹拌機、滴下ロートおよび温度計を備えた100mLのフラスコを窒素で置換した後、該フラスコに、トルエン1.0mLおよび四塩化チタン22.5mLを投入し、撹拌して、四塩化チタンのトルエン溶液を得た。次いでマグネシウムジエトキシド(球状、粒径37μm、かさ密度0.260g/mL)7.5gとトルエン35mLとから調製された懸濁液を、6分おきに10回に分けて、0℃の液温に保持した前記混合溶液中に添加した。その後、フラスコ内のスラリーを0℃で90分間撹拌して、2−エトキシメチル−3,3−ジメチルブタン酸エチル0.60mLをフラスコ内に投入した。次いで10℃に昇温して同温度で2時間撹拌した後、昇温を開始した。60℃の時点で2−エトキシメチル−3,3−ジメチルブタン酸エチル4.80mLをフラスコ内に投入し、110℃まで昇温した。同温度で2時間、フラスコ内の混合物を撹拌した。得られた混合物を固液分離して固体を得た。該固体を100℃にてトルエン56.3mLで3回洗浄した。表1に、固体生成物を含むスラリーを得る工程の結果を示す。
工程(1−1B):洗浄後の固体にトルエン45.0mLを投入し、スラリーを形成した。該スラリーに四塩化チタン15.0mLを投入して混合物を形成し、70℃に昇温した。同温度で2−エトキシメチル−3,3−ジメチルブタン酸エチル0.75mLをフラスコ内に投入した後、110℃で1時間混合物を攪拌した。その後、攪拌した混合物を固液分離し、該固体を100℃にてトルエン56.3mLで3回洗浄し、さらに室温にてヘキサン56.3mLで3回洗浄し、洗浄後の固体を減圧乾燥してオレフィン重合用固体触媒成分を得た。この固体触媒成分のチタン原子含有量は1.89重量%であり、レーザ回折・散乱法による中心粒径は33.0μmであり、粒径10μm以下成分の累積百分率は4.4%であった。該オレフィン重合用固体触媒成分の分析結果を表2に示す。
【0126】
[実施例3]
(1)オレフィン重合用固体触媒成分の合成
工程(1−1A):撹拌機、滴下ロートおよび温度計を備えた100mLのフラスコを窒素で置換した後、該フラスコに、トルエン36.0mLおよび四塩化チタン22.5mLを投入し、撹拌して、四塩化チタンのトルエン溶液を得た。フラスコ内の温度を10℃とした後、同温度でマグネシウムジエトキシド0.75gを6分おきに10回投入した。その後、フラスコ内のスラリーを10℃で30分間撹拌した。次いで、フラスコ内の温度を昇温し、60℃の時点で2−エトキシメチル−3,3−ジメチルブタン酸エチル3.45mLをフラスコ内に投入し、110℃まで昇温した。その後、同温度で2時間、フラスコ内の混合物を撹拌した。得られた混合物を固液分離して固体を得た。該固体を100℃にてトルエン52.5mLで3回洗浄した。表1に、固体生成物を含むスラリーを得る工程の結果を示す。
工程(1−1B):洗浄後の固体にトルエン22.5mLを投入し、スラリーを形成した。該スラリーに四塩化チタン15.0mLおよび2−エトキシメチル−3,3−ジメチルブタン酸エチル0.75mLを投入して混合物を形成し、110℃で1時間混合物を攪拌した。その後、攪拌した混合物を固液分離し、該固体を100℃にてトルエン52.5mLで3回洗浄し、さらに室温にてヘキサン52.5mLで3回洗浄し、洗浄後の固体を減圧乾燥してオレフィン重合用固体触媒成分を得た。この固体触媒成分のチタン原子含有量は2.03重量%であり、エトキシ基含有量は0.33重量%であり、内部電子供与体含有量は14.38重量%であり、XPS分析による酸素原子1s軌道に由来し、結合エネルギーが532〜534eVの範囲にピークトップを有するピーク成分量は91.9面積%であり、前記結合エネルギーが529〜532eVの範囲にピークトップを有するピーク成分量は8.1面積%であった。またレーザ回折・散乱法による中心粒径は63.9μmであり、粒径10μm以下成分の累積百分率は5.2%であった。該オレフィン重合用固体触媒成分の分析結果を表2に示す。
【0127】
(2)プロピレンの重合
重合触媒の形成および重合は、実施例1と同様に実施した。触媒単位量当たりの重合体の生成量(重合活性)は47,500g−重合体/g−固体触媒成分であった。この重合体のCXSは0.72wt%、[η]は1.18dL/gであった。得られた重合体の分析結果を表4に示す。
【0128】
[実施例4]
(1)オレフィン重合用固体触媒成分の合成
工程(1−1A):撹拌機、滴下ロートおよび温度計を備えた100mLのフラスコを窒素で置換した。該フラスコに、トルエン36.0mLおよび四塩化チタン22.5mLを投入し、撹拌して、四塩化チタンのトルエン溶液を得た。フラスコ内の温度を0℃とした後、同温度でマグネシウムジエトキシド0.75gを6分おきに10回投入した。その後、フラスコ内の温度を昇温し、60℃の時点で2−エトキシメチル−3,3−ジメチルブタン酸エチル3.45mLをフラスコ内に投入し、110℃まで昇温した。その後、同温度で2時間、フラスコ内の混合物を撹拌した。得られた混合物を固液分離して固体を得た。該固体を100℃にてトルエン52.5mLで3回洗浄した。表1に、固体生成物を含むスラリーを得る工程の結果を示す。
工程(1−1B):洗浄後の固体にトルエン22.5mLを投入し、スラリーを形成した。該スラリーに四塩化チタン15.0mLおよび2−エトキシメチル−3,3−ジメチルブタン酸エチル0.75mLを投入して混合物を形成し、110℃で1時間混合物を攪拌した。その後、攪拌した混合物を固液分離し、該固体を100℃にてトルエン52.5mLで3回洗浄し、さらに室温にてヘキサン52.5mLで3回洗浄し、洗浄後の固体を減圧乾燥してオレフィン重合用固体触媒成分を得た。この固体触媒成分のチタン原子含有量は2.04重量%であり、エトキシ基含有量は0.35重量%であり、内部電子供与体含有量は14.5重量%であり、XPS分析による酸素原子1s軌道に由来し、結合エネルギーが532〜534eVの範囲にピーク位置を有するピーク成分量は95.0面積%であり、前記結合エネルギーが529〜532eVの範囲にピーク位置を有するピーク成分量は5.0面積%であった。またレーザ回折・散乱法による中心粒径は65.6μmであり、粒径10μm以下成分の累積百分率は4.6%であった。該オレフィン重合用固体触媒成分の分析結果を表2に示す。
【0129】
(2)プロピレンの重合
重合触媒の形成および重合は実施例1と同様に実施した。触媒単位量当たりの重合体の生成量(重合活性)は54,500g−重合体/g−固体触媒成分であった。この重合体のCXSは0.79wt%、[η]は1.20dL/gであった。得られた重合体の分析結果を表4に示す。
【0130】
[実施例5]
(1)オレフィン重合用固体触媒成分の合成
工程(1−1A):撹拌機、滴下ロートおよび温度計を備えた100mLのフラスコを窒素で置換した後、該フラスコに、トルエン36.0mLおよび四塩化チタン22.5mLを投入し、撹拌して、四塩化チタンのトルエン溶液を得た。フラスコ内の温度を0℃とした後、同温度でマグネシウムジエトキシド1.88gを30分おきに4回投入した後、0℃で1.5時間撹拌した。次いで、2−エトキシメチル−3,3−ジメチルブタン酸エチル0.60mLをフラスコ内に投入した後でフラスコ内の温度を10℃に昇温した。その後、同温度で2時間撹拌し、トルエン9.8mLを投入した。次いで、フラスコ内の温度を昇温し、60℃の時点でフラスコ内に2−エトキシメチル−3,3−ジメチルブタン酸エチル3.15mLを投入し、110℃まで昇温した。同温度で3時間、フラスコ内の混合物を撹拌した。得られた混合物を固液分離して固体を得た。該固体を100℃にてトルエン56.3mLで3回洗浄した。表1に、固体生成物を含むスラリーを得る工程の結果を示す。
工程(1−1B):洗浄後の固体にトルエン38.3mLを投入し、スラリーを形成した。該スラリーに四塩化チタン15.0mLおよび2−エトキシメチル−3,3−ジメチルブタン酸エチル0.75mLを投入して混合物を形成し、110℃で1時間混合物を攪拌した。その後、攪拌した混合物を固液分離し、該固体を60℃にてトルエン56.3mLで3回洗浄し、さらに室温にてヘキサン56.3mLで3回洗浄し、洗浄後の固体を減圧乾燥してオレフィン重合用固体触媒成分を得た。この固体触媒成分について、チタン原子含有量は2.53重量%であり、エトキシ基含有量は0.44重量%であり、内部電子供与体含有量は13.7重量%であり、XPS分析による酸素原子1s軌道に由来し、結合エネルギーが532〜534eVの範囲にピーク位置を有するピーク成分量は85.0面積%であり、前記結合エネルギーが529〜532eVの範囲にピーク位置を有するピーク成分量は15.0面積%であった。水銀圧入法による全細孔容積は1.43mL/gであり、細孔半径5〜30nmの範囲の細孔の合計容積は0.160mL/gであり、細孔半径30〜700nmの範囲の細孔の合計容積は0.317mL/gであり、比表面積は107.44m
2/gであった。またレーザ回折・散乱法による中心粒径は59.5μmであり、粒径10μm以下成分の累積百分率は5.3%であった。該オレフィン重合用固体触媒成分の分析結果を表2および表3に示す。
【0131】
(2)プロピレンの重合
重合触媒の形成および重合は、実施例1と同様に実施した。触媒単位量当たりの重合体の生成量(重合活性)は61,700g−重合体/g−固体触媒成分であった。この重合体のCXSは0.63wt%、[η]は1.20dL/gであった。得られた重合体の分析結果を表4に示す。
【0132】
[実施例6]
(1)オレフィン重合用固体触媒成分の合成
工程(1−1A):撹拌機、滴下ロートおよび温度計を備えた100mLのフラスコを窒素で置換した。該フラスコに、トルエン36.0mLおよび四塩化チタン22.5mLを投入し、撹拌して、四塩化チタンのトルエン溶液を得た。フラスコ内の温度を0℃とした後、同温度でマグネシウムジエトキシド1.88gを30分おきに4回投入した後、0℃で1.5時間撹拌した。次いで、2−エトキシメチル−3,3−ジメチルブタン酸エチル0.60mLをフラスコ内に投入した後でフラスコ内の温度を10℃に昇温した。その後、同温度で2時間撹拌し、トルエン9.8mLを投入した。次いで、フラスコ内の温度を昇温し、60℃の時点でフラスコ内に2−エトキシメチル−3,3−ジメチルブタン酸エチル3.15mLを投入し、110℃まで昇温した。同温度で3時間、フラスコ内の混合物を撹拌した。得られた混合物を固液分離して固体を得た。該固体を100℃にてトルエン52.5mLで3回洗浄した。表1に、固体生成物を含むスラリーを得る工程の結果を示す。
工程(1−1B):洗浄後の固体にトルエン29.1mLを投入し、スラリーを形成した。該スラリーに四塩化チタン15.0mLおよび2−エトキシメチル−3,3−ジメチルブタン酸エチル0.75mLを投入して混合物を形成し、110℃で1時間混合物を攪拌した。その後、攪拌した混合物を固液分離し、該固体を100℃にてトルエン29.1mLで3回洗浄し、さらに室温にてヘキサン52.5mLで3回洗浄し、洗浄後の固体を減圧乾燥してオレフィン重合用固体触媒成分を得た。この固体触媒成分のチタン原子含有量は2.56重量%であり、エトキシ基含有量は0.46重量%であり、内部電子供与体含有量は14.11重量%であり、XPS分析による酸素原子1s軌道に由来し、結合エネルギーが532〜534eVの範囲にピークトップを有するピーク成分量は87.8面積%であり、前記結合エネルギーが529〜532eVの範囲にピークトップを有するピーク成分量は12.2面積%であった。水銀圧入法による全細孔容積は1.35mL/gであり、細孔半径5〜30nmの範囲の細孔の合計容積は0.134mL/gであり、細孔半径30〜700nmの範囲の細孔の合計容積は0.298mL/gであり、比表面積は93.82m
2/gであった。またレーザ回折・散乱法による中心粒径は56.5μmであり、粒径10μm以下成分の累積百分率は5.2%であった。該オレフィン重合用固体触媒成分の分析結果を表2および表3に示す。
【0133】
(2)プロピレンの重合
重合触媒の形成および重合は、実施例1と同様に実施した。触媒単位量当たりの重合体の生成量(重合活性)は71,200g−重合体/g−固体触媒成分であった。この重合体のCXSは0.75wt%、[η]は1.22dL/gであった。得られた重合体の分析結果を表4に示す。
【0134】
[実施例7]
(1)オレフィン重合用固体触媒成分の合成
工程(1−1A):撹拌機、滴下ロートおよび温度計を備えた100mLのフラスコを窒素で置換した。該フラスコに、トルエン43.3mLおよび四塩化チタン15.2mLを投入し、撹拌して、四塩化チタンのトルエン溶液を得た。フラスコ内の温度を0℃とした後、同温度でマグネシウムジエトキシド1.88gを30分おきに4回投入した後、0℃で1.5時間撹拌した。次いで、2−エトキシメチル−3,3−ジメチルブタン酸エチル0.60mLをフラスコ内に投入した後でフラスコ内の温度を10℃に昇温した。その後、同温度で2時間撹拌し、トルエン7.4mLを投入した。次いで、フラスコ内の温度を昇温し、60℃の時点でフラスコ内に2−エトキシメチル−3,3−ジメチルブタン酸エチル3.00mLを投入し、110℃まで昇温した。同温度で3時間、フラスコ内の混合物を撹拌した。得られた混合物を固液分離して固体を得た。該固体を100℃にてトルエン52.5mLで3回洗浄した。表1に、固体生成物を含むスラリーを得る工程の結果を示す。
工程(1−1B):洗浄後の固体にトルエン29.1mLを投入し、スラリーを形成した。該スラリーに四塩化チタン15.0mLおよび2−エトキシメチル−3,3−ジメチルブタン酸エチル0.75mLを投入して混合物を形成し、110℃で1時間混合物を攪拌した。その後、攪拌した混合物を固液分離し、該固体を100℃にてトルエン52.5mLで3回洗浄し、さらに室温にてヘキサン52.5mLで3回洗浄し、洗浄後の固体を減圧乾燥してオレフィン重合用固体触媒成分を得た。この固体触媒成分のチタン原子含有量は2.17重量%であり、エトキシ基含有量は0.53重量%であり、内部電子供与体含有量は12.11重量%であり、XPS分析による酸素原子1s軌道に由来し、結合エネルギーが532〜534eVの範囲にピークトップを有するピーク成分量は83.3面積%であり、前記結合エネルギーが529〜532eVの範囲にピークトップを有するピーク成分量は16.7面積%であった。水銀圧入法による全細孔容積は1.39mL/gであり、細孔半径5〜30nmの範囲の細孔の合計容積は0.150mL/gであり、細孔半径30〜700nmの範囲の細孔の合計容積は0.298mL/gであり、比表面積は97.24m
2/gであった。またレーザ回折・散乱法による中心粒径は61.6μmであり、粒径10μm以下成分の累積百分率は5.3%であった。該オレフィン重合用固体触媒成分の分析結果を表2および表3に示す。
【0135】
(2)プロピレンの重合
重合触媒の形成および重合は、実施例1と同様に実施した。触媒単位量当たりの重合体の生成量(重合活性)は63,600g−重合体/g−固体触媒成分であった。この重合体のCXSは0.67wt%、[η]は1.19dL/gであった。得られた重合体の分析結果を表4に示す。
【0136】
[実施例8]
(1)オレフィン重合用固体触媒成分の合成
工程(1−1A):撹拌機、滴下ロートおよび温度計を備えた100mLのフラスコを窒素で置換した。該フラスコに、トルエン43.3mLおよび四塩化チタン15.2mLを投入し、撹拌して、四塩化チタンのトルエン溶液を得た。フラスコ内の温度を0℃とした後、同温度でマグネシウムジエトキシド1.88gを30分おきに4回投入した後、0℃で1.5時間撹拌した。次いで、フラスコ内の温度を10℃に昇温した。その後、同温度で2時間撹拌し、トルエン7.4mLを投入した。次いで、フラスコ内の温度を昇温し、60℃の時点でフラスコ内に2−エトキシメチル−3,3−ジメチルブタン酸エチル3.00mLを投入し、110℃まで昇温した。同温度で3時間、フラスコ内の混合物を撹拌した。得られた混合物を固液分離して固体を得た。該固体を100℃にてトルエン52.5mLで3回洗浄した。表1に、固体生成物を含むスラリーを得る工程の結果を示す。
工程(1−1B):洗浄後の固体にトルエン29.1mLを投入し、スラリーを形成した。該スラリーに四塩化チタン15.0mLを投入して混合物を形成し、110℃で1時間混合物を攪拌した。その後、攪拌した混合物を固液分離し、該固体を100℃にてトルエン52.5mLで3回洗浄し、さらに室温にてヘキサン52.5mLで3回洗浄し、洗浄後の固体を減圧乾燥してオレフィン重合用固体触媒成分を得た。この固体触媒成分のチタン原子含有量は2.74重量%であり、エトキシ基含有量は0.52重量%であり、内部電子供与体含有量は11.35重量%であり、XPS分析による酸素原子1s軌道に由来し、結合エネルギーが532〜534eVの範囲にピークトップを有するピーク成分量は88.1面積%であり、前記結合エネルギーが529〜532eVの範囲にピークトップを有するピーク成分量は11.9面積%であった。水銀圧入法による全細孔容積は1.48mL/gであり、細孔半径5〜30nmの範囲の細孔の合計容積は0.139mL/gであり、細孔半径30〜700nmの範囲の細孔の合計容積は0.368mL/gであり、比表面積は96.06m
2/gであった。またレーザ回折・散乱法による中心粒径は57.8μmであり、粒径10μm以下成分の累積百分率は4.5%であった。該オレフィン重合用固体触媒成分の分析結果を表2および表3に示す。
【0137】
(2)プロピレンの重合
重合触媒の形成および重合は、実施例1と同様に実施した。触媒単位量当たりの重合体の生成量(重合活性)は71,800g−重合体/g−固体触媒成分であった。この重合体のCXSは0.78wt%、[η]は1.17dL/gであった。得られた重合体の分析結果を表4に示す。
【0138】
[実施例9]
(1)オレフィン重合用固体触媒成分の合成
工程(1−1A):撹拌機、滴下ロートおよび温度計を備えた100mLのフラスコを窒素で置換した後、該フラスコに、トルエン43.3mLおよび四塩化チタン15.2mLを投入し、撹拌して、四塩化チタンのトルエン溶液を得た。フラスコ内の温度を0℃とした後、同温度でマグネシウムジエトキシド1.88gを30分おきに4回投入した後、0℃で1.5時間撹拌した。次いで、2−エトキシメチル−3,3−ジメチルブタン酸エチル0.60mLをフラスコ内に投入した後でフラスコ内の温度を10℃に昇温した。その後、同温度で2時間撹拌し、トルエン7.4mLを投入した。次いで、フラスコ内の温度を昇温し、60℃の時点でフラスコ内に2−エトキシメチル−3,3−ジメチルブタン酸エチル2.53mLを投入し、110℃まで昇温した。同温度で3時間、フラスコ内の混合物を撹拌した。得られた混合物を固液分離して固体を得た。該固体を100℃にてトルエン52.5mLで3回洗浄した。表1に、固体生成物を含むスラリーを得る工程の結果を示す。
工程(1−1B):洗浄後の固体にトルエン29.1mLを投入し、スラリーを形成した。該スラリーに四塩化チタン15.0mLおよび2−エトキシメチル−3,3−ジメチルブタン酸エチル0.75mLを投入して混合物を形成し、110℃で1時間混合物を攪拌した。その後、攪拌した混合物を固液分離し、該固体を100℃にてトルエン52.5mLで3回洗浄し、さらに室温にてヘキサン52.5mLで3回洗浄し、洗浄後の固体を減圧乾燥してオレフィン重合用固体触媒成分を得た。この固体触媒成分のチタン原子含有量は2.30重量%であり、エトキシ基含有量は0.44重量%であり、内部電子供与体含有量は12.56重量%であり、XPS分析による酸素原子1s軌道に由来し、結合エネルギーが532〜534eVの範囲にピークトップを有するピーク成分量は92.2面積%であり、前記結合エネルギーが529〜532eVの範囲にピークトップを有するピーク成分量は7.8面積%であった。水銀圧入法による全細孔容積は1.43mL/gであり、細孔半径5〜30nmの範囲の細孔の合計容積は0.165mL/gであり、細孔半径30〜700nmの範囲の細孔の合計容積は0.328mL/gであり、比表面積は94.27m
2/gであった。またレーザ回折・散乱法による中心粒径は54.9μmであり、粒径10μm以下成分の累積百分率は5.4%であった。該オレフィン重合用固体触媒成分の分析結果を表2および表3に示す。
【0139】
(2)プロピレンの重合
重合触媒の形成および重合は、実施例1と同様に実施した。触媒単位量当たりの重合体の生成量(重合活性)は61,100g−重合体/g−固体触媒成分であった。この重合体のCXSは0.69wt%、[η]は1.21dL/gであった。得られた重合体の分析結果を表4に示す。
【0140】
なお、下記表1の内部電子供与体の種類欄において”C”はフタル酸ジノルマルブチルを、”D”は2−エトキシメチル−3,3−ジメチルブタン酸エチルを、それぞれ意味する。
【0141】
【表1】
【0142】
【表2】
【0143】
【表3】
【0144】
【表4】