特許第6916042号(P6916042)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6916042抗原特異的インターフェロンγ産生促進用組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6916042
(24)【登録日】2021年7月19日
(45)【発行日】2021年8月11日
(54)【発明の名称】抗原特異的インターフェロンγ産生促進用組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 35/747 20150101AFI20210729BHJP
   A61K 31/715 20060101ALI20210729BHJP
   A61P 37/04 20060101ALI20210729BHJP
【FI】
   A61K35/747
   A61K31/715
   A61P37/04
【請求項の数】1
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2017-114061(P2017-114061)
(22)【出願日】2017年6月9日
(65)【公開番号】特開2018-203698(P2018-203698A)
(43)【公開日】2018年12月27日
【審査請求日】2020年5月26日
【微生物の受託番号】IPOD  FERM BP-10741
(73)【特許権者】
【識別番号】000006138
【氏名又は名称】株式会社明治
(74)【代理人】
【識別番号】100136319
【弁理士】
【氏名又は名称】北原 宏修
(74)【代理人】
【識別番号】100148275
【弁理士】
【氏名又は名称】山内 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100142745
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 世子
(72)【発明者】
【氏名】川鍋 啓誠
(72)【発明者】
【氏名】中村 真梨枝
(72)【発明者】
【氏名】牧野 聖也
【審査官】 渡部 正博
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−333919(JP,A)
【文献】 特表2015−528455(JP,A)
【文献】 特表2015−528456(JP,A)
【文献】 牧野聖也、ほか5名,Lactobacillus bulgaricus産生多糖体の免疫機能調節作用,Milk Sci.,2004年,Vol.53, No.3,p.161-164,特に、p.162,164
【文献】 牧野聖也,菌体外多糖を産生する乳酸菌で発酵したヨーグルトの免疫賦活作用,腸内細菌学雑誌,2015年,Vol.29,p.163-167,特に、p.164, p.165左欄第1段落
【文献】 牧野聖也、ほか1名,ヨーグルト乳酸菌が産生する菌体外多糖の利用と培養条件の影響,Japanese Journal of Lactic Acid Bacteria,2013年,Vol.24, No.1,pp.10-17
【文献】 牧野聖也、ほか5名,1073R-1乳酸菌で発酵したヨーグルトの免疫賦活作用におけるEPSの役割,日本農芸化学会大会講演要旨集,2015年,p.176,講演番号2G41p14
【文献】 GUANG-QING, Mu et al.,Enhancement effect of extracellular polysaccharides produced by lactic acid bacteria on immunologic,食品科学,2009年,Vol.30, No.5,p.260-262,特に、Abstract
【文献】 SHENBHAGARAMAN, R. et al.,Immunopotentiating properties of extracellular polysaccharide from Trametes hirsuta strain VKESR,Carbohydrate Polymers,2014年,Vol.106,p.299-304,特に、Abstract
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 35/00−35/768
A61K 31/00−31/80
A61P 1/00−43/00
A23L 33/00−33/29
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ラクトバチルス・デルブルッキー・サブスピーシーズ・ブルガリカス(Lactobacillus delbrueckii subsp. bulgaricus)OLL1073R−1株(受託番号:FERM BP−10741)によって産生される菌体外多糖体を有効成分とする抗原特異的インターフェロンγ産生促進用組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、抗原特異的インターフェロンγ産生促進用組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
過去に、細胞性免疫の活性化などを目的とした飲食品、健康食品、機能性食品、医薬品、化粧品(以下「細胞性免疫活性化組成物」という。)に利用可能な化合物として「フコイダンオリゴ糖」を利用することが提案されている(例えば、特開2007−039341号公報等参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−039341号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、フコイダンオリゴ糖を得るためには、藻類からフコイダンを抽出した後、そのフコイダンを酸や酵素を用いて加水分解する必要がある。
【0005】
このように、フコイダンオリゴ糖を得るためには少なくとも抽出・加水分解の2つの工程を経る必要があり、製造時のランニングコストや人件費が高くなってしまうおそれが高い。このため、フコイダンオリゴ糖を利用する細胞性免疫活性化組成物の製造コストが高くなってしまうことが十分に想定される。
【0006】
本発明の課題は、製造コストの抑制を期待できる抗原特異的インターフェロンγ産生促進用組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1局面に係る抗原特異的インターフェロンγ産生促進用組成物は、ラクトバチルス・デルブルッキー・サブスピーシーズ・ブルガリカス(Lactobacillus delbrueckii subsp. bulgaricus)OLL1073R−1株によって産生される菌体外多糖体を有効成分とする。すなわち、ラクトバチルス・デルブルッキー・サブスピーシーズ・ブルガリカス(Lactobacillus delbrueckii subsp. bulgaricus)OLL1073R−1株(受託番号:FERM BP−10741)によって産生される菌体外多糖体を細胞性免疫活性化組成物としてまたはその一成分として使用する。また、ここにいう「組成物」には、医薬品,サプリメントおよび食品添加剤等の製剤、飲食品(動植物そのものを除く。)ならびに飲食品組成物(加工された飲食品を含む。)等の動物(ヒトを含む)が摂取し得る物が含まれる。
【0008】
本願発明者らの鋭意検討の結果、本発明の第1局面に係る菌体外多糖体が、抗原特異的にインターフェロンγの産生を促進させて病原体の感染や腫瘍の発生を抑制することができることが明らかとされた
【0009】
そして、この菌体外多糖体は、例えば、菌体外多糖体を生成し得る特定の乳酸菌を乳に投入しその乳を発酵させることによって生成することができる。すなわち、この菌体外多糖体は基本的に一工程で製造することができる。このため、菌体外多糖体を利用する抗原特異的インターフェロンγ産生促進用組成物は、製造コストを抑制できることが期待できる
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】メラノーマ抗原で免疫したマウスを用いた実施例・比較例(実施例1・実施例2・比較例1・比較例2・比較例3・比較例4)の抗原・菌体外多糖体の培地添加条件およびその条件から得られる結果をまとめたグラフ図である。
図2】インフルエンザウイルス抗原で免疫したマウスを用いた実施例・比較例(実施例3・比較例5・比較例6・比較例7)の抗原・菌体外多糖体の培地添加条件およびその条件から得られる結果をまとめたグラフ図である。
図3】非免疫マウスを用いた実施例・比較例(比較例8・比較例9・比較例10・比較例11)の抗原・菌体外多糖体の培地添加条件およびその条件から得られる結果をまとめたグラフ図である。
図4】ヒトB型肝炎ウイルス抗原で免疫したマウスを用いた実施例・比較例(実施例4・比較例12・比較例13・比較例14)の抗原・菌体外多糖体の培地添加条件およびその条件から得られる結果をまとめたグラフ図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下では、本発明の実施の形態を示すことにより本発明を詳細に説明するが、本発明は、以下に記載する個々の形態には限定されない。
【0012】
本発明の実施の形態に係る細胞性免疫活性化組成物は、菌体外多糖体を有効成分として含む。ここで、菌体外多糖体は、菌体外多糖体を生成する能力を有する特定の乳酸菌(以下「菌体外多糖体生成乳酸菌」と称する。)が乳を発酵する際に生成され得る。すなわち、菌体外多糖類は、菌体外多糖体生成乳酸菌を乳入りの培地で培養した際の培養物、代謝物等に含まれ得る。乳は、哺乳動物から得られる。ここで、哺乳動物の種類は特に限定されないが、例えば、ヒト,サル,ゴリラ,マントヒヒ,チンパンジー等の霊長動物や、ウマ,ウシ,スイギュウ,ヒツジ,ヤギ,ブタ,ラクダ,シカ等の家畜動物、イヌ,ネコ等の愛玩動物等が挙げられる。また、乳は、生乳であることが好ましいが、その加工品である殺菌乳,脱脂乳,全脂粉乳,部分脱脂乳,脱脂粉乳,全脂濃縮乳,脱脂濃縮乳,クリーム,バター,バターミルク,ホエイ,ホエイタンパク質濃縮物(WPC),ホエイタンパク質単離物(WPI)等であってもよい。
【0013】
菌体外多糖体生成乳酸菌としては、例えば、ラクトバチルス・デルブルッキー・サブスピーシーズ・ブルガリカス(Lactobacillus delbrueckii subsp. bulgaricus)が挙げられる。なお、この乳酸菌の中でもラクトバチルス・デルブルッキー・サブスピーシーズ・ブルガリクスOLL1073R−1株(受託番号:FERM BP−10741)が特に好ましい。ここで、ラクトバチルス・デルブルッキー・サブスピーシーズ・ブルガリクスOLL1073R−1株は、2006年11月29日付(受託日)で、独立行政法人産業技術総合研究所特許生物寄託センター(茨城県つくば市東1−1−1 つくばセンター 中央第6)に、受託番号でFERM BP−10741としてブタペスト条約に基づき国際寄託されている乳酸菌である。なお、独立行政法人産業技術総合研究所特許生物寄託センターの特許微生物寄託業務は2012年4月1日をもって独立行政法人製品評価技術基盤機構に承継されており、独立行政法人製品評価技術基盤機構特許生物寄託センターは2013年4月1日をもって日本国千葉県木更津市かずさ鎌足2−5−8の独立行政法人製品評価技術基盤機構事業所内に移転している。
【0014】
本発明の実施の形態に係る細胞性免疫活性化組成物は、動物、特にヒトに摂取されることによって、その機能を発揮する。なお、ここにいう「ヒト」は、老若男女を問わず、乳児から高齢者まで、幅広い年齢層のヒトであってよい。すなわち、この細胞性免疫活性化組成物は、例えば、子供の細胞性免疫活性化、成人や高齢者の細胞性免疫活性化のために用いることができる。また、ここにいう「摂取」とは、ヒトの体内に入れば摂取経路に限定はなく、例えば、経口摂取、経管摂取、経腸摂取など、公知の摂取方法の全てによって実現され得る。このとき、典型的には、消化管を経由する経口摂取、経腸摂取が挙げられるが、経口摂取が好ましく、飲食による経口摂取がより好ましい。
【0015】
本発明の実施の形態に係る細胞性免疫活性化組成物には、菌体外多糖体が含まれていればそれでよく、その含有量は特に限定されないが、細胞性免疫活性化組成物が液状体である場合、菌体外多糖体は30μg/mL以上含有されるのが好ましく、60μg/mL以上含有されるのがより好ましく、90μg/mL以上含有されるのがさらに好ましく、120μg/mL以上含有されるのがさらに好ましく、150μg/mL以上含有されるのが特に好ましい。なお、菌体外多糖体の含有量は多ければ多いほどその効果が高まることが期待されるが、上限は、例えば0.5mg/mLである。
【0016】
本発明の実施の形態に係る細胞性免疫活性化組成物の単位包装あたりの質量は特に限定されないが、効果を十分に得ることができ且つ一回で摂取し切りやすいとの観点から、50g以上500g以下の範囲内であることが好ましく、60g以上200g以下の範囲内であることがより好ましく、80g以上150g以下の範囲内であることがさらに好ましく、100g以上120g以下の範囲内であることが最も好ましい。また、上述の単位包装とは、袋、箱、容器当たりの単位包装のみならず、それらに含まれる一回あたりの単位包装であってもよいし、一日当たりの単位包装であってもよい。なお、複数の日数、例えば1週間分の摂取に適切な数量をまとめて包装したもの、または複数の個包装を含むもの等とすることもできる。
【0017】
本発明の実施の形態において、細胞性免疫活性化組成物は、1週間以上、好ましくは2週間以上、より好ましくは4週間以上、継続して摂取することが望ましい。なお、本発明の実施の形態に係る細胞性免疫活性化組成物は安全に摂取できるため、摂取期間は特に限定されず、永久的に継続することができる。また、この細胞性免疫活性化組成物は、一部の期間にのみ継続的に摂取されてもよいし、任意の期間で断続的に摂取されてもよい。
【0018】
本発明の実施の形態に係る細胞性免疫活性化組成物は、医薬品または飲食品として使用することができる。その医薬品または飲食品は、細胞性免疫活性化効果を有する点で有用である。本発明の実施の形態に係る細胞性免疫活性化組成物を医薬品または飲食品として使用する場合には、単独の菌体外多糖体生成乳酸菌から得られた菌体外多糖体を使用してもよく、または2種類以上の菌体外多糖体生成乳酸菌から得られた菌体外多糖体を組み合わせて使用してもよい。
【0019】
本発明の実施の形態に係る細胞性免疫活性化組成物を医薬品または飲食品として利用するに際し、細胞性免疫活性化組成物の状態は限定されず、ペースト化物、噴霧乾燥物、凍結乾燥物、真空乾燥物、ドラム乾燥物、媒体に分散させた液状物、希釈剤で希釈した希釈物、乾燥物をミルなどで破砕した破砕物などの状態のものを使用することができる。
【0020】
さらに、本発明の実施の形態に係る細胞性免疫活性化組成物は、保健機能食品や病者用食品(細胞性免疫活性化食品等)とすることもできる。保健機能食品制度は、内外の動向、従来からの特定保健用食品制度との整合性を踏まえて、通常の食品のみならず錠剤、カプセル等の形状をした食品を対象として設けられたものである。そして、同制度では、特定保健用食品(個別許可型)と栄養機能食品(規格基準型)の2種類の類型が規定されている。本発明の実施の形態に係る細胞性免疫活性化組成物を、特定保健用食品等の特別用途食品や栄養機能食品として、ヒト等の動物に投与することにより、例えば、細胞性免疫の活性化が可能となる。
【0021】
本発明の実施の形態に係る細胞性免疫活性化組成物に、その用途、効能、機能、有効成分の種類、機能性成分の種類、摂取方法などの説明を表示することが好ましい。ここにいう「表示」は、医薬品、医薬部外品、保健機能食品、特定保健用食品、一般食品、健康補助食品、健康食品およびサプリメントそれぞれにおいて適した表示とすべきである。また、ここにいう「表示」には、需要者に対して上記説明を知らしめるための全ての表示が含まれる。この表示は、上述の表示内容を想起・類推させ得るような表示であればよく、表示の目的、表示の内容、表示する対象物・媒体などの如何に拘わらない全てのあらゆる表示を含み得る。例えば、製品の包装・容器に上記説明を表示すること、製品に関する広告・価格表もしくは取引書類に上記説明を表示して展示もしくは頒布すること、またはこれらを内容とする情報を電磁気的(インターネットなど)方法により提供することが挙げられる。
【0022】
本発明の実施の形態に係る細胞性免疫活性化組成物を包装してなる製品が例えば飲食品である場合、その飲食品には、例えば「細胞性免疫活性化」との表示や、「細胞性免疫を活性化させる」との表示が付されることが好ましい。
【0023】
なお、以上のような表示を行うために使用する文言は、上述の例に限定されず、そのような意味と同義である文言であってもかまわない。そのような文言としては、例えば、需要者に対して、「細胞性免疫が活性化する」、「病原体の感染抑制に役立つ」あるいは「腫瘍の発生抑制に役立つ」等の種々の文言が許容され得る。
【0024】
本発明の実施の形態に係る細胞性免疫活性化組成物を飲食品とする場合、飲食品の種類は特に限定されない。飲食品は、例えば、牛乳、加工乳、清涼飲料、発酵乳、ヨーグルト、チーズ、その他の乳製品、パン、ビスケット、クラッカー、ピッツァクラスト、調製粉乳、流動食、病者用食品、乳幼児用粉乳等食品、妊産婦・授乳婦用粉乳等食品、栄養食品等であってよい。このような飲食品の製造にあたっては、本発明の実施の形態に係る細胞性免疫活性化組成物の有効成分である菌体外多糖体をそのまま使用したり、他の飲食品ないし食品成分と混合したりするなど、通常の食品組成物における製法を利用することができる。また、飲食品の形状についても特に限定されず、通常用いられる飲食品の形状であればかまわない。例えば、固体状(粉末、顆粒状を含む)、ペースト状、液状、懸濁状などのいずれの形状でもよく、またこれらに限定されない。このとき、乳飲料、発酵乳、清涼飲料、ゼリー飲料、タブレット、粉末食品がより好ましく、ヨーグルトはさらに好ましい。
【0025】
本発明の実施の形態に係る細胞性免疫活性化組成物の有効成分である菌体外多糖体には、水、タンパク質、糖質、脂質、ビタミン類、ミネラル類、有機酸、有機塩基、果汁、フレーバー、機能性成分、食品添加物等、通常の食品に含まれる成分であれば問題なく添加することができる。上記飲食物の製造において、タンパク質源として、例えば大豆タンパク質、乳タンパク質、鶏卵タンパク質、肉タンパク質等の動植物性タンパク質、これら加水分解物等の、食品製造に通常使用されるタンパク質またはタンパク質含有原材料を使用することができる。糖類の供給源の例としては、加工澱粉(テキストリンのほか、可溶性澱粉、ブリティッシュスターチ、酸化澱粉、澱粉エステル、澱粉エーテル等)、食物繊維などが挙げられる。脂質源としては、例えば、ラード、魚油等、これらの分別油、水素添加油、エステル交換油等の動物性油脂;パーム油、サフラワー油、コーン油、ナタネ油、ヤシ油、これらの分別油、水素添加油、エステル交換油等の植物性油脂などが挙げられる。ビタミン類としては、例えば、ビタミンA、カロテン類、ビタミンB群、ビタミンC、ビタミンD群、ビタミンE、ビタミンK群、ビタミンP、ビタミンQ、ナイアシン、ニコチン酸、パントテン酸、ビオチン、イノシトール、コリン、葉酸などが挙げられ、ミネラル類としては、例えば、カルシウム、カリウム、マグネシウム、ナトリウム、銅、鉄、マンガン、亜鉛、セレンなどが挙げられる。有機酸としては、例えば、リンゴ酸、クエン酸、乳酸、酒石酸などが挙げられる。機能性成分として、例えばオリゴ糖、グルコサミン、コラーゲン、セラミド、ローヤルゼリー、ポリフェノールなどが挙げられる。食品添加物として、例えば乳化剤、安定剤、増粘剤、ゲル化剤、甘味剤、酸味料、保存料、抗酸化剤、pH調整剤、着色剤、香料などが挙げられる。バター、乳性ミネラル、クリーム、ホエイ、非タンパク態窒素、シアル酸、リン脂質、乳糖等の各種乳由来成分などは本発明の実施の形態に係る飲食品の製造に好適に用いることのできる成分の例である。また、本発明の実施の形態に係る細胞性免疫活性化組成物には、細胞性免疫活性化効果を有する任意の成分、例えば、フコイダンオリゴ糖等が添加されてもよい。
【0026】
これらの成分は、2種以上を組み合わせて使用することができる。また上記原材料は、天然物、天然物加工品、合成品および/またはこれらを多く含む食品のいずれを用いてもよい。
【0027】
ところで、本願発明者らは、上述の細胞性免疫活性化組成物が細胞傷害性T細胞の活性化を有意に高めることを確認している。このため、本発明の実施の形態に係る細胞性免疫活性化組成物は、細胞傷害性T細胞活性化組成物とも言える。また、細胞傷害性T細胞の活性化により病原体の感染や腫瘍の発生を抑制することが知られていることから、本発明の実施の形態に係る細胞性免疫活性化組成物は、病原体感染抑制組成物、腫瘍発生抑制組成物とも言える。すなわち、本発明の実施の形態に係る細胞性免疫活性化組成物を包装してなる製品が例えば飲食品である場合、その飲食品には、例えば、「細胞傷害性T細胞活性化」との表示や、「病原体感染抑制」、「腫瘍発生抑制」との表示、その他これらの表示に類する等が付されてもよい。
【0028】
また、本願発明者らは、上述の細胞性免疫活性化組成物の具体的な作用効果として、抗原特異的なインターフェロンγの産生を強力に促進することを確認している。このとき、抗原は、特に限定されないが、例えばメラノーマ抗原、インフルエンザウイルス抗原、ヒトB型肝炎ウイルス抗原等が挙げられる。このため、本発明の実施の形態に係る細胞性免疫活性化組成物は、抗原特異的インターフェロンγ産生促進用組成物とも言える。
【0029】
本発明の実施の形態に係る細胞性免疫活性化組成物の有効成分である菌体外多糖体を病原体感染防御医薬品や腫瘍縮小医薬品とすることもできる。そのような医薬品を製造する場合、菌体外多糖体は、破砕あるいは未粉砕した処理物として使用することができる。また、この際に使用する菌体外多糖体は、単独の菌体外多糖体生成乳酸菌から得られた菌体外多糖体であってもよいし、2種類以上の菌体外多糖体生成乳酸菌から得られた菌体外多糖体を組み合わせたものであってもよい。
【0030】
上記医薬品中における菌体外多糖体の含有量は、その目的、用途に応じて任意に定めることができる。含有量の一例として、150μg/mLを占めることが挙げられるが、本発明の実施の形態ではこれに限定されない。
【0031】
上述の菌体外多糖体を有効成分とする医薬品の投与量は、投与経路、ヒトを含む投与対象動物の年齢、体重、症状など、種々の要因を考慮して、適宜設定することができる。適当な投与量の一例として、有効成分として0.1g〜1000g/kg/dayを挙げることができるが、本発明の実施の形態ではこれに限定されない。例えば、感染防御や腫瘍縮小の目的で長期間に亘って摂取する場合には、上記範囲よりも少量であってもよい。また、本有効成分は安全性の問題が見当たらないため、上記範囲よりも多量に使用しても差し支えない。
【0032】
上記医薬品の剤型は、菌体外多糖体を腸内に到達させるため、経口投与が可能な剤型が好ましい。本発明の実施の形態による医薬品の好ましい剤型の例としては、例えば錠剤、丸剤、被覆錠剤、カプセル剤、顆粒剤、散剤、液剤、懸濁剤、乳剤、シロップ剤、トローチ剤等を挙げることができる。これらの各種製剤は、常法に従って主薬である菌体外多糖体に、賦形剤、結合剤、崩壊剤、滑沢剤、安定剤、着色剤、矯味矯臭剤、溶解補助剤、懸濁剤、界面活性剤、コーティング剤などの、医薬の製剤技術分野において通常使用し得る補助剤を混ぜ合わせることによって製剤化することができる。
【0033】
また、菌体外多糖体を医薬品として使用する場合には、例えば、経口投与の場合、菌体外多糖体をそのまま摂取させることができるが、例えば医薬品の一般的な製法に従い、錠剤、顆粒剤、粉末剤、カプセル剤、散剤とすることができる。
【0034】
上記医薬品における菌体外多糖体の含有量は、剤形、用法、患者の年齢、性別、脳機能の程度、及びその他の条件等により適宜設定することができる。
【0035】
上記医薬品は経口投与するのが好ましい。この医薬品を投与することにより、病原体の感染を防御したり、腫瘍を縮小させたりする。よって、この医薬品は、細胞変異に起因する種々の症状の改善又は予防に有用である。また、本発明の実施の形態に係る細胞性免疫活性化効果を損なわない限り、菌体外多糖体を有効成分とする本医薬品と、他の医薬を併用してもかまわない。
【実施例】
【0036】
以下、実施例を示して本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0037】
(調製例)
ラクトバチルス・デルブルッキー・サブスピーシーズ・ブルガリカス(Lactobacillus delbrueckii subsp. bulgaricus OLL1073R-1)の10質量%脱脂粉乳培地培養物中の菌体外多糖体を精製した。具体的には、以下に示すようにして菌体外多糖体を精製した。
【0038】
10質量%の脱脂粉乳培地を90℃で殺菌してから45℃に冷却した後、その培地に乳酸菌スターターとしてのラクトバチルス・デルブルッキー・サブスピーシーズ・ブルガリカスOLL1073R−1(FERM BP−10741)を1質量%接種した。37℃で18時間培養した後、培地を約4℃に冷却して乳酸菌スターターの培養を停止させた。そして、得られた培養物に対し、終濃度が10質量%になるように100質量%のトリクロロ酢酸を添加して混合し、その混合物を4℃、12,000×gで20分間、遠心分離した。遠心分離処理により得られた上清を採り、その上清に2倍量の冷エタノールを加え、そのエタノール添加上清を4℃で一晩静置した。その後、エタノール添加上清を4℃、12,000×gで20分間、遠心分離し、得られた沈殿物を超純水に溶解させた。この水溶液を、超純水に対して透析した後、その透析処理液にDNase(EC 3.1.21.1、シグマ・アルドリッチ社製)、RNase(type I−AS、EC 3.1.27.5、シグマ・アルドリッチ社製)、proteinase K(EC 3.4.21.64、シグマ・アルドリッチ社製)を加えて、透析処理液を37℃で酵素処理した。酵素処理液を90℃で10分間加熱することによって、酵素処理を停止させた後、その酵素処理液に2倍量のエタノールを加え、そのエタノール添加酵素処理液を4℃で一晩静置した。その後、エタノール添加酵素処理液を4℃、12,000×gで20分間、遠心分離し、得られた沈殿物を超純水に溶解させた。この水溶液を超純水に対して透析し、透析後の水溶液を凍結乾燥して菌体外多糖体の精製物とした。なお、透析には、Spectrum Laboratories社製の透析膜(molecular weight cutoff 6,000−8,000)を用いた。
【0039】
(実施例1)
100μLのComplete Freund’s Adjuvant(和光純薬工業株式会社)、10μLのメラノーマ抗原溶液(H−2D human gp100 Peptide KVPRNQDWL,MBL社製,抗原濃度:10mg/mL)、80μLのリン酸緩衝液、および、10μLのヒトB型肝炎ウイルス抗原(I−A HBc helper peptide TPPAYRPPNAPIL,MBL社製、抗原濃度:10mg/mL)を量り取って混ぜ合わせた後、この混合液を十分に乳化させて200μLの抗原乳化液を調製した。なお、この抗原乳化液には、100μgのメラノーマ抗原が含まれている。そして、この抗原乳化液200μLを4つ調製した後、各抗原乳化液を8週齢の雌のC57BL/6Jマウス(日本チャールスリバー社製)4匹それぞれの腹腔に注射した。すなわち、各マウスには100μgのメラノーマ抗原が注入されたことになる。なお、各マウスへのメラノーマ抗原注入後、各マウスの体内でメラノーマ抗原に特異的なCD8+T細胞が増殖し、やがて機能的に成熟した細胞傷害性T細胞となって、マウスの体内を循環する。
【0040】
メラノーマ抗原の注入から1週間経過後に上述のマウスらを安楽殺した。そして、各マウスから脾臓を取り出して各マウスの脾細胞をプールした。その後、同脾細胞を5×10cells/mLで5well培養した。なお、この脾細胞培養時、メラノーマ抗原が10μg/mLとなるように、また、菌体外多糖体が150μg/mLとなるように、培地に上述のメラノーマ抗原溶液および菌体外多糖体(上記調製例で調製したもの)を添加した。培養開始から72時間経過後に、抗原特異的に産生されたインターフェロンγの上清濃度を、BD OptEIA Mouse IFN−γ ELISA Set(Becton,Dickinson and Company社製)を用いて測定してその測定値の平均と標準誤差を求めたところ、その平均は891pg/mLであり、標準誤差は204pg/mLであった。
【0041】
(実施例2)
脾細胞培養時、メラノーマ抗原が0.1μg/mLとなるように培地にメラノーマ抗原溶液を添加した以外は、実施例1と同様にして抗原乳化液を調製してマウスの腹腔に注射し、実施例1と同様にして脾細胞を5well培養し、実施例1と同様にしてインターフェロンγの上清濃度を測定してその測定値の平均と標準誤差を求めた。その結果、その平均は256pg/mLであり、標準誤差は85pg/mLであった。
【0042】
(実施例3)
抗原乳化液調製時および培地への抗原添加時においてメラノーマ抗原溶液(H−2D human gp100 Peptide KVPRNQDWL,MBL社製,抗原濃度:10mg/mL)をインフルエンザウイルス抗原溶液(H−2D Influenza NP peptide ASNENMDTM,MBL社製)に代えた以外は、実施例1と同様にして抗原乳化液を調製してマウスの腹腔に注射し、実施例1と同様にして脾細胞を5well培養し、実施例1と同様にしてインターフェロンγの上清濃度を測定してその測定値の平均と標準誤差を求めた。その結果、その平均は13240pg/mLであり、標準誤差は3818pg/mLであった。
【0043】
(実施例4)
50μLのComplete Freund’s Adjuvant(和光純薬工業株式会社)、5μLのヒトB型肝炎ウイルス抗原溶液(I−Ad HBc helper peptide TPPAYRPPNAPIL,MBL社製,抗原濃度:10mg/mL)、45μLのリン酸緩衝液を量り取って混ぜ合わせた後、この混合液を十分に乳化させて100μLの抗原乳化液を調製した。なお、この抗原乳化液には、50μgのヒトB型肝炎ウイルス抗原が含まれている。そして、この抗原乳化液100μLを3つ調製した後、各抗原乳化液を8週齢の雌のC57BL/6Jマウス(日本チャールスリバー社製)3匹それぞれの尾根部皮下に注射した。すなわち、各マウスには50μgのヒトB型肝炎ウイルス抗原が注入されたことになる。なお、各マウスへのヒトB型肝炎ウイルス抗原注入後、各マウスの体内でヒトB型肝炎ウイルス抗原に特異的なCD4+T細胞が増殖し、やがて機能的に成熟し、細胞性免疫を強力に誘導するTh1細胞となって、マウスの体内を循環する。
【0044】
ヒトB型肝炎ウイルス抗原の注入から1週間経過後に上述のマウスらを安楽殺した。そして、各マウスから脾臓を取り出して各マウスの脾細胞をプールした。その後、同脾細胞を2×10cells/mLで8well培養した。なお、この脾細胞培養時、ヒトB型肝炎ウイルス抗原が10μg/mLとなるように、また、菌体外多糖体が150μg/mLとなるように培地に上述のヒトB型肝炎ウイルス抗原溶液および菌体外多糖体を添加した。培養開始から48時間経過後に、抗原特異的に産生されたインターフェロンγの上清濃度を、BD OptEIA Mouse IFN−γ ELISA Set(Becton,Dickinson and Company社製)を用いて測定してその測定値の平均と標準誤差を求めたところ、その平均は19709pg/mLであり、標準誤差は712pg/mLであった。
【0045】
(比較例1)
脾細胞培養時の培地に菌体外多糖体を添加しなかった以外は、実施例1と同様にして抗原乳化液を調製してマウスの尾根部皮下に注射し、実施例1と同様にして脾細胞を5well培養し、実施例1と同様にしてインターフェロンγの上清濃度を測定してその測定値の平均と標準誤差を求めた。その結果、その平均は168pg/mLであり、標準誤差は48pg/mLであった。
【0046】
(比較例2)
脾細胞培養時の培地に菌体外多糖体を添加しなかった以外は、実施例1と同様にして抗原乳化液を調製してマウスの尾根部皮下に注射し、実施例2と同様にして脾細胞を5well培養し、実施例1と同様にしてインターフェロンγの上清濃度を測定してその測定値の平均と標準誤差を求めた。その結果、その平均は74pg/mLであり、標準誤差は13pg/mLであった。
【0047】
(比較例3)
培地への抗原添加時においてメラノーマ抗原溶液をインフルエンザウイルス抗原溶液(H−2D Influenza NP peptide ASNENMDTM,MBL社製)に代え、脾細胞培養時の培地に菌体外多糖体を添加しなかった以外は、実施例1と同様にして抗原乳化液を調製してマウスの尾根部皮下に注射し、実施例1と同様にして脾細胞を5well培養し、実施例1と同様にしてインターフェロンγの上清濃度を測定してその測定値の平均と標準誤差を求めた。その結果、その平均は37pg/mLであり、標準誤差は12pg/mLであった。
【0048】
(比較例4)
培地への抗原添加時においてメラノーマ抗原溶液をインフルエンザウイルス抗原溶液(H−2D Influenza NP peptide ASNENMDTM,MBL社製)に代えた以外は、実施例1と同様にして抗原乳化液を調製してマウスの尾根部皮下に注射し、実施例1と同様にして脾細胞を5well培養し、実施例1と同様にしてインターフェロンγの上清濃度を測定してその測定値の平均と標準誤差を求めた。その結果、その平均は137pg/mLであり、標準誤差は58pg/mLであった。
【0049】
(比較例5)
抗原乳化液調製時においてメラノーマ抗原溶液をインフルエンザウイルス抗原溶液(H−2D Influenza NP peptide ASNENMDTM,MBL社製)に代え、脾細胞培養時の培地に菌体外多糖体を添加しなかった以外は、実施例1と同様にして抗原乳化液を調製してマウスの尾根部皮下に注射し、実施例1と同様にして脾細胞を5well培養し、実施例1と同様にしてインターフェロンγの上清濃度を測定してその測定値の平均と標準誤差を求めた。その結果、その平均は169pg/mLであり、標準誤差は23pg/mLであった。
【0050】
(比較例6)
抗原乳化液調製時においてメラノーマ抗原溶液をインフルエンザウイルス抗原溶液(H−2D Influenza NP peptide ASNENMDTM,MBL社製)に代えた以外は、実施例1と同様にして抗原乳化液を調製してマウスの尾根部皮下に注射し、実施例1と同様にして脾細胞を5well培養し、実施例1と同様にしてインターフェロンγの上清濃度を測定してその測定値の平均と標準誤差を求めた。その結果、その平均は569pg/mLであり、標準誤差は146pg/mLであった。
【0051】
(比較例7)
脾細胞培養時の培地に菌体外多糖体を添加しなかった以外は、実施例3と同様にして抗原乳化液を調製してマウスの尾根部皮下に注射し、実施例3と同様にして脾細胞を5well培養し、実施例1と同様にしてインターフェロンγの上清濃度を測定してその測定値の平均と標準誤差を求めた。その結果、その平均は2538pg/mLであり、標準誤差は327pg/mLであった。
【0052】
(比較例8)
50μLのComplete Freund’s Adjuvant(和光純薬工業株式会社)、50μLのリン酸緩衝液を量り取って混ぜ合わせた後、この混合液を十分に乳化させて100μLの抗原未添加液を調製した。そして、この抗原未添加液100μLを3つ調製した後、各抗原未添加液を8週齢の雌のC57BL/6Jマウス(日本チャールスリバー社製)3匹それぞれの尾根部皮下に注射した。
【0053】
抗原未添加液の注入から1週間経過後に上述のマウスらを安楽殺した。そして、各マウスから脾臓を取り出して各マウスの脾細胞をプールした。その後、同脾細胞を2×10cells/mLで8well培養した。なお、この脾細胞培養時、培地に抗原および菌体外多糖体は一切添加されなかった。培養開始から48時間経過後にインターフェロンγの上清濃度を、BD OptEIA Mouse IFN−γ ELISA Set(Becton,Dickinson and Company社製)を用いて測定してその測定値の平均と標準誤差を求めたところ、その平均は77pg/mLであり、標準誤差は3pg/mLであった。
【0054】
(比較例9)
脾細胞培養時、菌体外多糖体(実施例1で調製したものと同一のもの)が150μg/mLとなるように培地に菌体外多糖体を添加した以外は、比較例8と同様にして抗原未添加液を調製してマウスの尾根部皮下に注射し、比較例8と同様にして脾細胞を8well培養し、比較例8と同様にしてインターフェロンγの上清濃度を測定してその測定値の平均と標準誤差を求めた。その結果、その平均は84pg/mLであり、標準誤差は6pg/mLであった。
【0055】
(比較例10)
脾細胞培養時、ヒトB型肝炎ウイルス抗原が10μg/mLとなるように培地にヒトB型肝炎ウイルス抗原溶液(I−Ad HBc helper peptide TPPAYRPPNAPIL,MBL社製,抗原濃度:10mg/mL)を添加した以外は、比較例8と同様にして抗原未添加液を調製してマウスの尾根部皮下に注射し、比較例8と同様にして脾細胞を8well培養し、比較例8と同様にしてインターフェロンγの上清濃度を測定してその測定値の平均と標準誤差を求めた。その結果、その平均は79pg/mLであり、標準誤差は4pg/mLであった。
【0056】
(比較例11)
脾細胞培養時、ヒトB型肝炎ウイルス抗原が10μg/mLとなるように、また、菌体外多糖体(実施例1で調製したものと同一のもの)が150μg/mLとなるように培地にヒトB型肝炎ウイルス抗原溶液(I−Ad HBc helper peptide TPPAYRPPNAPIL,MBL社製,抗原濃度:10mg/mL)および菌体外多糖体を添加した以外は、比較例8と同様にして抗原未添加液を調製してマウスの尾根部皮下に注射し、比較例8と同様にして脾細胞を8well培養し、比較例8と同様にしてインターフェロンγの上清濃度を測定してその測定値の平均と標準誤差を求めた。その結果、その平均は76pg/mLであり、標準誤差は3pg/mLであった。
【0057】
(比較例12)
脾細胞培養時の培地にヒトB型肝炎ウイルス抗原溶液および菌体外多糖体を添加しなかった以外は、実施例4と同様にして抗原乳化液を調製してマウスの尾根部皮下に注射し、実施例4と同様にして脾細胞を8well培養し、実施例1と同様にしてインターフェロンγの上清濃度を測定してその測定値の平均と標準誤差を求めた。その結果、その平均は74pg/mLであり、標準誤差は2pg/mLであった。
【0058】
(比較例13)
脾細胞培養時の培地にヒトB型肝炎ウイルス抗原溶液を添加しなかった以外は、実施例4と同様にして抗原乳化液を調製してマウスの尾根部皮下に注射し、実施例4と同様にして脾細胞を8well培養し、実施例1と同様にしてインターフェロンγの上清濃度を測定してその測定値の平均と標準誤差を求めた。その結果、その平均は161pg/mLであり、標準誤差は55pg/mLであった。
【0059】
(比較例14)
脾細胞培養時の培地に菌体外多糖体を添加しなかった以外は、実施例4と同様にして抗原乳化液を調製してマウスの尾根部皮下に注射し、実施例4と同様にして脾細胞を8well培養し、実施例1と同様にしてインターフェロンγの上清濃度を測定してその測定値の平均と標準誤差を求めた。その結果、その平均は10056pg/mLであり、標準誤差は998pg/mLであった。
【0060】
(まとめ)
以上の実施例および比較例に記載の条件および結果を以下の表1にまとめた。なお、表1中、「gp100」は「メラノーマ抗原」を示し、「NP」は「インフルエンザウイルス抗原」を示し、「HBc」は「ヒトB型肝炎ウイルス抗原」を示し、「EPS」は「菌体外多糖体」を示し、「IFL−γ」は「インターフェロンγ」を示し、「−」は「未添加であること」を示す。
【0061】
また、この表1をグラフ化したものを図1〜4に示した。なお、図1中、左側の白棒は比較例1の結果を示し、その右隣りの黒棒は実施例1の結果を示し、中央の白棒は比較例2の結果を示し、その右隣りの黒棒は実施例2の結果を示し、右側の白棒は比較例3の結果を示し、その右隣りの黒棒は比較例4の結果を示している。また、図2中、左側の白棒は比較例5の結果を示し、その右隣りの黒棒は比較例6の結果を示し、右側の白棒は比較例7の結果を示し、その右隣りの黒棒は実施例3の結果を示している。また、図3中、左側の白棒は比較例8の結果を示し、その右隣りの黒棒は比較例9の結果を示し、右側の白棒は比較例10の結果を示し、その右隣りの黒棒は比較例11の結果を示している。さらに、図4中、左側の白棒は比較例12の結果を示し、その右隣りの黒棒は比較例13の結果を示し、右側の白棒は比較例14の結果を示し、その右隣りの黒棒は実施例4の結果を示している。
【0062】
【表1】
【0063】
(考察)
図1のグラフ図に示される結果より、ラクトバチルス・デルブルッキー・サブスピーシーズ・ブルガリカス(Lactobacillus delbrueckii subsp. bulgaricus OLL1073R-1)から得られた菌体外多糖体は、メラノーマ抗原免疫マウスの脾細胞培養時において培地に添加する抗原の種類に関わらず、インターフェロンγの産生を促進する効果があることが明らかとなった。また、メラノーマ抗原免疫マウスの脾細胞培養時において培地に添加する抗原を、マウス免疫時と同じ抗原であるメラノーマ抗原とした場合、菌体外多糖体はCD8+T細胞が産生する抗原特異的なインターフェロンγの産生を促進する効果をさらに高められること、さらに、その添加抗原濃度が高い程その効果が高くなることが明らかとなった。
【0064】
図2のグラフ図に示される結果より、ラクトバチルス・デルブルッキー・サブスピーシーズ・ブルガリカス(Lactobacillus delbrueckii subsp. bulgaricus OLL1073R-1)から得られた菌体外多糖体は、インフルエンザウイルス抗原免疫マウスの脾細胞培養時において培地に添加する抗原の種類に関わらず、インターフェロンγの産生を促進する効果があることが明らかとなった。また、インフルエンザウイルス抗原免疫マウスの脾細胞培養時において培地に添加する抗原を、マウス免疫時と同じ抗原であるインフルエンザウイルス抗原とした場合、菌体外多糖体はCD8+T細胞が産生する抗原特異的なインターフェロンγの産生を促進する効果をさらに高められることが明らかとなった。
【0065】
図3のグラフ図に示される結果より、ラクトバチルス・デルブルッキー・サブスピーシーズ・ブルガリカス(Lactobacillus delbrueckii subsp. bulgaricus OLL1073R-1)から得られた菌体外多糖体は、非免疫マウスの脾細胞に対してインターフェロンγの産生促進効果を奏しないことが明らかとなった。
【0066】
図4のグラフ図に示される結果より、ラクトバチルス・デルブルッキー・サブスピーシーズ・ブルガリカス(Lactobacillus delbrueckii subsp. bulgaricus OLL1073R-1)から得られた菌体外多糖体は、ヒトB型肝炎ウイルス抗原免疫マウスの脾細胞培養時において培地に添加する抗原を、マウス免疫時と同じ抗原であるヒトB型肝炎ウイルス抗原とした場合、CD4+T細胞が産生する抗原特異的なインターフェロンγの産生を促進する効果があることが明らかとなった。
【0067】
以上の結果より、ラクトバチルス・デルブルッキー・サブスピーシーズ・ブルガリカス(Lactobacillus delbrueckii subsp. bulgaricus OLL1073R-1)から得られた菌体外多糖体は、インターフェロンγの産生を促進する効果があり、特に免疫時と同じ抗原に対してはその効果がさらに顕著であったことから、菌体外多糖体はT細胞が産生する抗原特異的なインターフェロンγの産生を強力に促進する効果があると言える。
【産業上の利用可能性】
【0068】
本発明に係る細胞性免疫活性化組成物は、製造コストを低く抑えることができることを期待することができ、ヒトの健康を増進することに貢献し得る。具体的には、菌体外多糖体や、菌体外多糖体を多量に含有するヨーグルトなどの食品は細胞性免疫を活性化し、感染防御や腫瘍抑制に寄与する可能性が期待される。また、菌体外多糖体を含有する食品等を摂取することで、T細胞を介した細胞性免疫を活性化し、インフルエンザ等のウイルス感染防御やメラノーマ等の腫瘍抑制の効果が期待できる。
【受託番号】
【0069】
FERM BP−10741
図1
図2
図3
図4