(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
第1のブロックA及び第2のブロックBを有するブロックコポリマーを含み、前記第1のブロックA中に存在する前記モノマー単位M2は、前記第1のブロックA中の全ての前記モノマー単位M1を基準として、15mol%未満であり、前記第2のブロックB中に存在する前記モノマー単位M1は、前記第2のブロックB中の全ての前記モノマー単位M2を基準として、15mol%未満であることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一項に記載の組成物。
前記リン基担持モノマー単位M1に関して及び/又は前記側鎖保有モノマー単位M2に関して、少なくとも1つのセクションAA中において前記ポリマー骨格に沿った方向に勾配構造を有することを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一項に記載の組成物。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の第1の態様は、ポリマー骨格と、このポリマー骨格に結合された側鎖とを有するコポリマー、特に固体粒子のための分散剤、具体的には無機バインダー組成物のための分散剤であって、少なくとも1種のリン基担持モノマー単位M1と、少なくとも1種の側鎖保有モノマー単位M2とを含み、このコポリマーが、ポリマー骨格に沿った方向でモノマー単位M1及び/又はモノマー単位M2の非ランダム分布を有する、コポリマー、特に固体粒子のための分散剤、具体的には無機バインダー組成物のための分散剤に関する。
【0013】
コポリマー
用語「リン基担持モノマー」及び「リン基担持モノマー単位」は、少なくとも1個のリン原子を有するモノマー又は重合モノマーを特に意味する。このリン原子は、好ましくは+III及び/又は+Vの酸化状態である。リン基担持モノマー単位は、具体的にはリン酸基及び/又はホスホン酸基を含む。これらの酸性基はまた、脱プロトン化形態のアニオンの形態又は対イオン若しくはカチオンとの塩の形態も取ることができる。少なくとも1個のリン原子に加えて、リン基担持モノマー単位は、1個若しくは複数個のヘテロ原子、1個若しくは複数個のアルキレン基及び/又は1個若しくは複数個のアルキレンオキシド基を特に有することができる。このヘテロ原子は、例えば窒素であることができ、この窒素は、特にアミン基及び/又はアミド基の一部である。
【0014】
「非ランダム分布」は、この場合、モノマー単位M1及び/又はモノマー単位M2の非統計学的分布を意味すると理解される。これは、リン基担持モノマー単位M1及び/又は側鎖保有モノマー単位M2が、例えば交互に若しくはブロック型の様式で及び/又は勾配構造でコポリマー中に配置されていることを意味する。
【0015】
このコポリマーの構造を、例えば核スピン共鳴分光法(NMR分光法)により分析して決定することができる。具体的には、
1H及び
13C NMR分光法により、このコポリマー中の隣接基の影響に基づいて及び統計学的評価を使用して、このコポリマー中のモノマー単位の配列をそれ自体既知の方法で決定することが可能である。
【0016】
好ましくは、リン基担持モノマー単位M1は、例えば、それぞれリン酸基及び/又はホスホン酸基を含む(メタ)アクリルエステル、(メタ)アクリルアミド、ビニルエーテル、アリルエーテル、メタアリルエーテル及び/又はイソプレニルエーテルをベースとする。
【0017】
側鎖保有モノマー単位M2は、ポリアルキレンオキシド側鎖、特にポリエチレンオキシド側鎖及び/又はポリプロピレンオキシド側鎖を特に含む。
【0018】
より具体的には、リン基担持モノマー単位M1は、式I:
【化1】
の構造を有する。
【0019】
側鎖保有モノマー単位M2は、式II:
【化2】
の構造を好ましくは含み、
式中、
R
1が、それぞれの場合に独立して、式Ia:
【化3】
の基であり、及びLが、式(Ib):
【化4】
の構造を有し、
ここで、それぞれの場合に独立して、a=0〜5、b=0又は1、c=0又は1、d=0〜5、e=0又は1、f=1〜10、g=0〜5、h=1〜5、i=0又は1、j=0又は1であり、
Gが、それぞれの場合に独立して、−O−又は−NH−であり、
各Qが、他から独立して、水素、1〜5個の炭素原子を有するアルキル基及び/又はPO
3M
2であり、
各Kが、他から独立して、水素、化学結合、又は1〜3個の炭素原子を有するアルキレン基であり、
R
2、R
3、R
5及びR
6が、それぞれの場合に独立して、H、又は1〜5個の炭素原子を有するアルキル基であり、
R
4及びR
7が、それぞれの場合に独立して、H、−COOM、又は1〜5個の炭素原子を有するアルキル基であり、
Mが、互いに独立して、H
+、アルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオン、二価若しくは三価の金属イオン、アンモニウムイオン又は有機アンモニウム基を表し、
m=0、1又は2であり、
p=0又は1であり、
Xが、それぞれの場合に独立して、−O−又は−NH−であり、
R
8が式−[AO]
n−R
aの基であり、
ここで、A=C
2〜C
4−アルキレンであり、R
aがH、C
1〜C
20−アルキル基、−シクロアルキル基又は−アルキルアリール基であり、
n=2〜250、特に10〜200である。
【0020】
モノマー単位M2に対するモノマー単位M1のモル比は、有利には0.5〜6、特に0.7〜4、好ましくは0.9〜3.8、更に好ましくは1.0〜3.7又は2〜3.5の範囲である。
【0021】
語句−PO
3M
2は、式−PO(OM)
2の化合物を意味しており、ホスホン酸基をベースとする。
【0022】
R
1に関して、具体的にはa+b≧1の場合、特に加えてc=1の場合である。
【0023】
具体的には、a≧1且つb=0、特に加えてc=1である。好ましくは、a=1〜2、b=0且つc=1である。また、より好ましくは、a=0且つb≧1、特にa=0、b=1且つc=1である。
【0024】
好ましくはd=1〜5及び/又はf=1である。
【0025】
有利な実施形態では、モノマー単位M1のR
1ラジカルにおいて、a=0、b=1、c=1、G=−O−、d=1〜2、Q=H、e=0又は1、f=1且つj=0である。具体的には、R
2=H又はCH
3、R
3=R
4=Hである。より好ましくはd=2である。特に好ましくは、モノマー単位M1のR
1ラジカルにおいて、a=0、b=1、c=1、G=−O−、d=1〜2、Q=H、e=1、f=1且つj=0、具体的にはR
2=H又はCH
3且つR
3=R
4=Hである。
【0026】
或いは、R
1が−PO(OM)
2及び/又は−O−PO(OM)
2である場合に有利であり得る。この場合、a=0、b=0、c=0、d=0、e=0又は1、f=1且つj=0である。より具体的には、そのようなR
1の選択は、本コポリマーが勾配構造を有する場合に状況によっては有利であり得る。
【0027】
別の有利な実施形態では、モノマー単位M1のR
1ラジカルにおいて、a=0、b=1、c=1、G=−NH−、d=0〜2、Q=H又はCH
3、e=0、f=1且つj=0である。具体的には、R
2=H又はCH
3、R
3=R
4=Hである。
【0028】
j=1の場合、好ましくは、g=0、i=0、h=1且つKは−CH
2−又は化学結合である。加えて、この場合、具体的にはe=0且つf=1である。
【0029】
存在する場合、Qは特に水素及び/又はメチル基である。より具体的には、Qは水素である。
【0030】
イオン性モノマー単位M2中、有利には全てのモノマー単位M2の少なくとも75mol%、具体的には少なくとも90mol%、特に少なくとも95mol%又は少なくとも99mol%中のX基が−O−(=酸素原子)である。
【0031】
有利には、R
5=H又はCH
3、R
6=R
7=H且つX=−O−である。そのため、例えば(メタ)アクリルエステル、ビニルエーテル、(メタ)アリルエーテル又はイソプレノールエーテルから生じるコポリマーを調製することが可能である。
【0032】
特に有利な実施形態では、R
2及びR
5は、それぞれ40〜60mol%のHと40〜60mol%の−CH
3との混合物である。
【0033】
更に有利な実施形態では、R
2=H、R
5=−CH
3且つR
3=R
4=R
6=R
7=Hである。
【0034】
別の有利な実施形態では、R
2=R
5=H又は−CH
3且つR
3=R
4=R
6=R
7=Hである。
【0035】
側鎖保有モノマー単位M2中のR
8ラジカルは、このモノマー単位中の全てのR
8ラジカルを基準として特に少なくとも50mol%、特に少なくとも75mol%、好ましくは少なくとも95mol%又は少なくとも99mol%の程度までポリエチレンオキシドからなる。エチレンオキシド単位の割合は、本コポリマー中の全てのアルキレンオキシド単位を基準として特に75mol%超、特に90mol%超、好ましくは95mol%超、具体的には100mol%である。
【0036】
より具体的には、R
8は本質的に疎水性基を有さず、特に3個以上の炭素原子を有するアルキレンオキシドを有しない。これは、3個以上の炭素原子を有するアルキレンオキシドの割合が全てのアルキレンオキシドを基準として5mol%未満、特に2mol%未満、好ましくは1mol%未満又は0.1mol%未満であることを特に意味する。具体的には、3個以上の炭素原子を有するアルキレンオキシドは存在せず、即ちこのアルキレンオキシドの割合は0mol%である。
【0037】
R
aは、有利にはH及び/又はメチル基である。特に有利には、A=C
2−アルキレンであり、且つR
aはH又はメリル基である。
【0038】
より具体的には、パラメータn=10〜150、特にn=15〜100、好ましくはn=17〜70、具体的にはn=19〜45又は20〜25である。具体的には、これにより、指定された好ましい範囲内で優れた分散効果が達成される。
【0039】
特に好ましいのは、R
1に関して、a=0、b=1、c=1、G=−O−、d=1〜2、Q=H、e=0又は1、f=1且つj=0であり、R
2及びR
5が、互いに独立して、H、−CH
3又はそれらの混合であり、R
3及びR
6が、互いに独立して、H又は−CH
3、好ましくはHであり、R
4及びR
7が、互いに独立して、H又は−COOM、好ましくはHであり、且つ全てのモノマー単位M2の少なくとも75mol%、具体的には少なくとも90mol%、特に少なくとも99mol%中のXが−O−であるコポリマーである。
【0040】
本コポリマーが、モノマー単位M1及びM2と化学的に特に異なる少なくとも1種の更なるモノマー単位MSを含む場合に更に有利であり得る。具体的には、複数種の異なる更なるモノマー単位MSが存在し得る。このようにして、このコポリマーの特性を更に変更し、且つ例えば特定の用途に関してこの特性を調整することが可能である。
【0041】
特に有利には、少なくとも1種の更なるモノマー単位MSは、式III:
【化5】
のモノマー単位であり、
式中、
R
5’、R
6’、R
7’、m’及びp’が、R
5、R
6、R
7、m及びpに関して定義された通りであり、
Yが、それぞれの場合に独立して、化学結合又は−O−であり、
Zが、それぞれの場合に独立して、化学結合、−O−又は−NH−であり、
R
9が、それぞれの場合に独立して、それぞれ1〜20個の炭素原子を有するアルキル基、シクロアルキル基、アルキルアリール基、アリール基、ヒドロキシアルキル基又はアセトキシアルキル基である。
【0042】
更なるモノマー単位MSの有利な例は、m’=0であり、p’=0であり、Z及びYが化学結合を表し、且つR
9が、6〜10個の炭素原子を有するアルキルアリール基である更なるモノマー単位MSである。
【0043】
また、適しているのは、特にm’=0であり、p’=1であり、Yが−O−であり、Zが化学結合を表し、且つR
9が、1〜4個の炭素原子を有するアルキル基である更なるモノマー単位MSでもある。
【0044】
更に適しているのは、m’=0であり、p’=1であり、Yが化学結合であり、Zが−O−であり、且つR
9が、1〜6個の炭素原子を有するアルキル基及び/又はヒドロキシアルキル基である更なるモノマー単位MSである。
【0045】
特に有利には、少なくとも1種の更なるモノマー単位MSは、重合した酢酸ビニル、スチレン及び/又はヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート(特にヒドロキシエチルアクリレート)からなる。
【0046】
具体的には、本コポリマーの多分散度(=重量平均分子量M
W/数平均分子量M
n)は<1.5、具体的には1.0〜1.4、特に1.1〜1.3の範囲である。
【0047】
コポリマー全体の重量平均分子量M
Wは、特に10,000〜150,000g/mol、有利には12,000〜80,000g/mol、特に12,000〜50,000g/molの範囲である。これに関連して、重量平均分子量M
W又は数平均分子量M
n等の分子量を、標準としてポリエチレングリコール(PEG)を用いるゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)によって決定する。この技術は、それ自体当業者に既知である。
【0048】
本コポリマーは、具体的には、本質的に直鎖構造を有するポリマーである。これは、このコポリマーの全てのモノマー単位が単一の及び/又は非分枝のポリマー鎖中に配置されていることを特に意味する。具体的には、このコポリマーは星型構造を有さず、及び/又はこのコポリマーは分枝ポリマーの一部ではない。より具体的には、このコポリマーは、中心分子に結合した様々な方向に延びる複数(特に3つ以上)のポリマー鎖が存在するポリマーの一部ではない。
【0049】
勾配構造を有するコポリマー
好ましい実施形態では、本コポリマーは、リン基担持モノマー単位M1に関して及び/又は側鎖保有モノマー単位M2に関して、ポリマー骨格に沿った方向で少なくとも1つのセクションAA中に勾配構造を有する。
【0050】
換言すると、本発明のコポリマーでは、リン基担持モノマー単位M1に関して及び/又は側鎖保有モノマー単位M2に関して、ポリマー骨格に沿った方向で少なくとも1つのセクションAA中に濃度勾配が存在する。
【0051】
この場合の用語「勾配構造」又は「濃度勾配」とは、特にコポリマー骨格に沿った方向での少なくとも1つのセクションにおけるモノマー単位の局所濃度の連続的変化のことである。「濃度勾配」の別の用語は「濃度傾斜」である。
【0052】
この濃度勾配は、例えば本質的に一定であることができる。これは、コポリマー骨格の方向での少なくとも1つのセクションAAにおけるそれぞれのモノマー単位の局所濃度の直線的な減少又は増加に対応する。しかしながら、この濃度勾配がコポリマー骨格の方向で変化することも可能である。この場合、それぞれのモノマー単位の局所濃度は非直線的に減少又は増加する。この濃度勾配は、コポリマーの少なくとも10種、特に少なくとも14種、好ましくは少なくとも20種又は少なくとも40種のモノマー単位に特に及ぶ。
【0053】
対照的に、例えばブロックコポリマーの場合に起こるようなモノマーの濃度の突然の又は急な変化は濃度勾配と称さない。
【0054】
これに関連して、語句「局所濃度」は、ポリマー骨格中の所与の点での特定のモノマーの濃度を指す。実際には、例えばコポリマーの調製中のモノマー変換を決定することにより、局所濃度又は局所濃度の平均を確認することができる。この場合、特定の期間内で変換されたモノマーを確認することができる。平均局所濃度は、対象の期間内に変換されたモノマーの総モル量に対する、この対象の期間内に変換された特定のモノマーのモル分率の比に特に対応する。
【0055】
モノマーの変換を、それ自体既知の方法で(例えば、液体クロマトグラフィー、特に高速液体クロマトグラフィー(HPLC)を用いて)及び使用するモノマーの量を考慮して決定することができる。コポリマーの構造を
1H及び
13CのNMR分光法により上記したように決定することができる。
【0056】
本コポリマーはまた、例えば連続して配置されている、勾配構造を有する複数のセクションAA(特に2つ、3つ、4つ又はそれを超えるセクションAA)を有することもできる。存在する場合、異なる勾配構造又は濃度傾斜がそれぞれ異なるセクションAA中に存在することができる。
【0057】
好ましくは、少なくとも1つのセクションAAにおいて、少なくとも1種のリン基担持モノマー単位M1の局所濃度がポリマー骨格に沿って連続的に増加し、少なくとも1種の側鎖保有モノマー単位M2の局所濃度がポリマー骨格に沿って連続的に減少し、逆も同様である。
【0058】
少なくとも1つのセクションAAの第1の端部でのリン基担持モノマー単位M1の局所濃度は、このセクションAAの第2の端部と比べて特に低く、このセクションAAの第1の端部での側鎖保有モノマー単位M2の局所濃度は、このセクションAAの第2の末端と比べて高く、逆も同様である。
【0059】
より具体的には、少なくとも1つのセクションAAを等しい長さの10個のサブセクションに分割する場合、ポリマー骨格に沿ったそれぞれのサブセクション中の少なくとも1種のリン基担持モノマー単位M1の平均局所濃度は、少なくとも3つ、特に少なくとも5つ又は8つの連続するサブセクションで増加し、ポリマー骨格に沿ったそれぞれのサブセクション中の少なくとも1種の側鎖保有モノマー単位M2の平均局所濃度は、少なくとも3つ、特に少なくとも5つ又は8つの連続するサブセクションで減少し、逆も同様である。
【0060】
具体的には、連続するサブセクション中の少なくとも1種のリン基担持モノマー単位M1の平均局所濃度の増加又は減少は本質的に一定であり、有利には、この連続するサブセクション中の少なくとも1種の側鎖保有モノマー単位M2の平均局所濃度の減少又は増加も同様に本質的に一定である。
【0061】
有利な実施形態では、勾配構造を有する少なくとも1つのセクションAAは、ポリマー骨格の全長を基準として少なくとも30%、特に少なくとも50%、好ましくは少なくとも75%又は90%の長さを有する。
【0062】
有利には、少なくとも1つのセクションAAは、ポリマー骨格中のモノマー単位の総数を基準としてモノマー単位の少なくとも30%、特に少なくとも50%、好ましくは少なくとも75%又は90%の割合を有する。
【0063】
具体的には、少なくとも1つのセクションAAは、コポリマー全体の重量平均分子量を基準として少なくとも30%、特に少なくとも50%、好ましくは少なくとも75%又は90%の重量割合を有する。
【0064】
そのため、濃度勾配又は勾配構造を有する勾配構造を有するセクションAAが特に重要である。
【0065】
濃度勾配を有する少なくとも1つのセクションAAは、5〜70個、特に7〜40個、好ましくは10〜25個のモノマー単位M1と、5〜70個、特に7〜40個、好ましくは10〜25個のモノマー単位M2とを有利に含む。
【0066】
より具体的には、本コポリマーは、少なくとも50mol%、具体的には少なくとも75mol%、特に少なくとも90mol%又は95mol%の程度までリン基担持モノマー単位M1と側鎖保有モノマー単位M2とからなる。
【0067】
リン基担持モノマー単位M1の少なくとも30mol%、特に少なくとも50mol%、好ましくは少なくとも75mol%、具体的には少なくとも90mol%又は少なくとも95mol%が、勾配構造を有する少なくとも1つのセクションAA中に存在する場合に有利である。
【0068】
同様に有利には、側鎖保有モノマー単位M2の少なくとも30mol%、特に少なくとも50mol%、好ましくは少なくとも75mol%、具体的には少なくとも90mol%又は少なくとも95mol%が、勾配構造を有する少なくとも1つのセクション中に存在する。
【0069】
特に好ましくは、2つの後者の条件が同時に適用される。
【0070】
別の有利な実施形態では、本コポリマーは、勾配構造を有する少なくとも1つのセクションAAに加えて更なるセクションABを有し、このセクションAB全体にわたりモノマーの一定の局所濃度及び/又はモノマーの統計学的若しくはランダムな分布が本質的に存在する。セクションABは、例えば、単一種のモノマーからなってもよく、又は統計学的分布で複数の異なるモノマーからなってもよい。しかしながら、セクションABでは勾配構造は特に存在せず、且つポリマー骨格に沿って濃度勾配は存在しない。
【0071】
このコポリマーはまた、化学的及び/又は構造的観点から互いに異なり得る複数の更なるセクションAB(例えば、2つ、3つ、4つ又はそれを超えるセクションAB)を有してもよい。
【0072】
好ましくは、少なくとも1つのセクションAAは更なるセクションABに直接隣接する。
【0073】
驚くべきことに、この種のコポリマーは、可塑化効果及び経時的なその維持に関して状況次第で更に有利であることが見出された。
【0074】
より具体的には、更なるセクションABは、リン基担持モノマー単位M1及び/又は側鎖保有モノマー単位M2を含む。
【0075】
本発明の一実施形態では、更なるセクションABは、この更なるセクションAB中に存在する全てのモノマーを基準として、例えば、有利には少なくとも30mol%、特に少なくとも50mol%、好ましくは少なくとも75mol%、具体的には少なくとも90mol%又は少なくとも95mol%のリン基担持モノマー単位M1を含む。更なるセクションAB中に存在する側鎖保有モノマー単位M2の任意の割合は、この更なるセクション中の全てのモノマー単位M1を基準として具体的には25mol%未満、特に10mol%未満又は5mol%未満である。より具体的には、この更なるセクションAB中に側鎖保有モノマー単位M2が存在しない。
【0076】
本発明の更なる且つ特に有利な実施形態では、更なるセクションABは、この更なるセクションAB中に存在する全てのモノマー単位を基準として少なくとも30mol%、特に少なくとも50mol%、好ましくは少なくとも75mol%、具体的には少なくとも90mol%又は少なくとも95mol%の側鎖保有モノマー単位M2を含む。この場合、この更なるセクションAB中に存在するリン基担持モノマー単位M1の任意の割合は、この更なるセクションAB中の全てのモノマー単位M2を基準として具体的には25mol%未満、特に10mol%未満又は5mol%未満である。より具体的には、この更なるセクションAB中にリン基担持モノマー単位M1が存在しない。
【0077】
この更なるセクションABが合計で5〜70個、特に7〜40個、好ましくは10〜25個のモノマー単位を含む場合に適切であることが見出された。これらは、特にリン基担持モノマー単位M1及び/又は側鎖保有モノマー単位M2である。
【0078】
本質的に一定の局所濃度を有する少なくとも1つの更なるセクションAB中のモノマー単位の数に対する、勾配構造を有する少なくとも1つのセクションAA中のモノマー単位の数の比は、有利には99:1〜1:99、特に10:90〜90:10、好ましくは80:20〜20:80、特に70:30〜30:70の範囲である。
【0079】
存在する場合、少なくとも1種の更なるモノマー単位MSは、少なくとも1つのセクションAA及び/又は更なるセクションABの一部であることができる。少なくとも1種の更なるモノマー単位MSがコポリマーの追加セクションの一部であることも可能である。より具体的には、異なる更なるモノマー単位MSが異なるセクション中に存在することができる。
【0080】
少なくとも1つのセクションAA中に存在する場合、少なくとも1種の更なるモノマー単位MSは、この第1のセクションAA中の全てのモノマー単位を基準として0.001〜80mol%、好ましくは20〜75mol%、特に30〜70mol%の少なくとも1つのセクションAA中での割合を有利に有する。
【0081】
更なるセクションAB中に存在する場合、少なくとも1種の更なるモノマー単位MSは、この更なるセクションAB中の全てのモノマー単位を基準として0.001〜80mol%、好ましくは20〜75mol%、特に30〜70mol%又は50〜70mol%の更なるセクションAB中での割合を特に有する。
【0082】
有利な実施形態では、少なくとも1種の更なるモノマー単位MSは、少なくとも1つのセクションAA及び/又は更なるセクションAB中に、それぞれのセクション中の全てのモノマー単位を基準として20〜75mol%、特に30〜70mol%の割合で存在する。
【0083】
有利な実施形態では、本コポリマーは少なくとも1つのセクションAAからなる。別の有利な実施形態では、本コポリマーは、少なくとも1つのセクションAAと更なるセクションABとからなる。特に、後者の場合に極めて良好で長期にわたる可塑化効果が得られる。
【0084】
しかしながら、例えば、本コポリマーが少なくとも2つの異なるセクションAA及び/又は少なくとも2つの異なる更なるセクションABを含むことも可能である。
【0085】
特に有利なコポリマーは、以下の特徴のうちの少なくとも1つ又は複数を有する:
i)このコポリマーは、少なくとも75mol%、特に少なくとも90mol%又は95mol%の程度までリン基担持モノマー単位M1及び側鎖保有モノマー単位M2からなり、
ii)このコポリマーは、少なくとも1つのセクションAA及び更なるセクションABを含むか、又はこれらのセクションからなり、
iii)更なるセクションABは、このセクションAB中に存在する全てのモノマー単位を基準として側鎖保有モノマー単位M2を特に少なくとも50mol%、好ましくは少なくとも75mol%、具体的には少なくとも90mol%又は少なくとも95mol%含む。この更なるセクションAB中に存在するリン基担持モノマー単位M1の任意の割合は、この更なるセクションAB中の全てのモノマー単位M2を基準として25mol%未満、特に10mol%未満又は5mol%未満であり、
iv)このコポリマー中のモノマー単位M2に対するモノマー単位M1のモル比が0.5〜6、好ましくは0.8〜3.5の範囲であり、
v)R
1に関して、a=0、b=1、c=1、G=−O−、d=1〜2、Q=H、e=0又は1、f=1且つj=0である。より好ましくは、d=2であり、
vi)R
2及びR
5がH又はCH
3、好ましくはCH
3であり、
vii)R
3=R
4=R
6=R
7=Hであり、
viii)m=0且つp=1であり、
ix)X=−O−であり、
x)A=C
2−アルキレンであり、且つn=10〜150、好ましくは15〜50であり、
xi)R
a=H又は−CH
3、好ましくはCH
3である。
【0086】
特に好ましいのは、少なくとも特徴(i)〜(iv)を全て有するセクションAA及びABからなるコポリマーである。更に好ましいのは、特徴(i)〜(xi)を全て有するコポリマーである。更に好ましいのは、それぞれの場合に好ましい実施で特徴(i)〜(xi)を全て満たすコポリマーである。
【0087】
ブロック構造を有するコポリマー
同様に有利なのは、少なくとも1つの第1のブロックAと少なくとも1つの第2のブロックBとを含むコポリマーであって、第1のブロックAが式Iのリン基担持モノマー単位M1を有し、且つ第2のブロックBが式IIの側鎖保有モノマー単位M2を有する、コポリマーである。
【0088】
より具体的には、第1のブロックA中に存在するモノマー単位M2の任意の割合は、この第1のブロックA中の全てのモノマー単位M1を基準として25mol%未満、特に10mol%以下であり、且つ第2のブロックB中に存在するモノマー単位M1の任意の割合は、この第2のブロックB中の全てのモノマー単位M2を基準として25mol%未満、特に10mol%以下である。
【0089】
式Iの複数の異なるモノマー単位M1及び/又は式IIの複数の異なるモノマー単位M2が本発明のコポリマー中に存在してもよい。
【0090】
第1のブロックA中のモノマー単位M1及び任意の更なるモノマー単位は、統計学的又はランダムな分布で特に存在する。第2のブロックB中のモノマー単位M2及び任意の更なるモノマーも同様に統計学的又はランダムな分布で特に存在する。
【0091】
換言すると、少なくとも1つのブロックA及び/又は少なくとも1つのブロックBは、好ましくは、それぞれランダムモノマー分布を有する成分ポリマーの形態を取る。
【0092】
少なくとも1つの第1のブロックAは、5〜70個、特に7〜40個、好ましくは10〜25個のリン基担持モノマー単位M1を有利に含み、及び/又は少なくとも1つの第2のブロックBは、5〜70個、特に7〜50個、好ましくは20〜40個の側鎖保有モノマー単位M2を含む。
【0093】
好ましくは、第1のブロックA中に存在するモノマー単位M2の任意の割合は、この第1のブロックA中の全てのモノマー単位M1を基準として15mol%未満、具体的には10mol%未満、特に5mol%未満又は1mol%未満である。加えて、第2のブロックB中に存在するモノマー単位M1の任意の割合は、この第2のブロックB中の全てのモノマー単位M2を基準として有利には15mol%未満、具体的には10mol%未満、特に5mol%未満又は1mol%未満である。有利には、両方の条件が同時に満たされる。
【0094】
特に有利には、例えば、第1のブロックA中に存在するモノマー単位M2の任意の割合は15mol%未満(この第1のブロックA中の全てのモノマー単位M1を基準とする)であり、且つ第2のブロックB中に存在するモノマー単位M1の任意の割合は10mol%未満(この第2のブロックB中の全てのモノマー単位M2を基準とする)である。
【0095】
そのため、モノマー単位M1及びM2は、本質的に空間的に離れており、これはブロックコポリマーの分散効果の利益に寄与し且つ遅延問題に関して有利である。
【0096】
第1のブロックAは、この第1のブロックA中の全てのモノマー単位を基準として具体的には少なくとも20mol%、具体的には少なくとも50mol%、特に少なくとも75mol%又は少なくとも90mol%の程度まで式Iのモノマー単位M1からなる。第2のブロックBは、この第2のブロックB中の全てのモノマー単位を基準として有利には少なくとも20mol%、具体的には少なくとも50mol%、特に少なくとも75mol%又は少なくとも90mol%の程度まで式IIのモノマー単位M2からなる。
【0097】
このブロックコポリマー中のモノマー単位M2に対するモノマー単位M1のモル比は、特に0.5〜6、特に0.7〜4、好ましくは0.9〜3.8、更に好ましくは1.0〜3.7又は2〜3.5の範囲である。これにより、無機バインダー組成物において最適な分散効果が達成される。
【0098】
このブロックコポリマーが上記で説明した少なくとも1種の更なるモノマー単位MSを含む場合に更に有利であり得る。具体的には、複数種の異なる更なるモノマー単位MSが存在し得る。このようにして、このブロックコポリマーの特性を更に変更し、且つ例えば特定の用途に関してこの特性を調整することが可能である。
【0099】
少なくとも1種の更なるモノマー単位MSは、第1のブロックA及び/又は第2のブロックBの一部であり得る。少なくとも1種の更なるモノマー単位MSがブロックコポリマーの追加ブロックの一部であることも可能である。より具体的には、異なるモノマー単位MSが異なるブロック中に存在し得る。
【0100】
第1のブロックA中に存在する場合、少なくとも1種の更なるモノマー単位MSは、この第1のブロックA中の全てのモノマー単位を基準として0.001〜80mol%、好ましくは20〜75mol%、特に30〜70mol%の第1のブロックA中の割合を有利に有する。
【0101】
第2のブロックB中に存在する場合、少なくとも1種の更なるモノマー単位MSは、この第2のブロックB中の全てのモノマー単位を基準として0.001〜80mol%、好ましくは20〜75mol%、特に30〜70mol%又は50〜70mol%の第2のブロックB中の割合を特に有する。
【0102】
有利な実施形態では、少なくとも1種の更なるモノマー単位MSは、第1のブロックA及び/又は第2のブロックB中に、それぞれのブロック中の全てのモノマー単位を基準として20〜75mol%、特に30〜70mol%の割合で存在する。
【0103】
更に有利な実施形態では、第1のブロックAと第2のブロックBとの間に、第1及び第2のブロックと化学的及び/又は構造的に異なる少なくとも1つの更なるブロックCが配置されている。
【0104】
有利には、少なくとも1つの更なるブロックCは、上記で説明したモノマー単位MSを含むか、又はこのモノマー単位MSからなる。しかしながら、このモノマー単位MSに加えて又はこのモノマー単位MSの代わりに、更なるモノマー単位が存在することも可能である。
【0105】
より具体的には、少なくとも1つの更なるブロックCは、少なくとも50mol%、特に少なくとも75mol%、好ましくは少なくとも90mol%又は少なくとも95mol%の程度まで上記で説明したモノマー単位MSからなる。
【0106】
特に有利な実施形態では、本発明のブロックコポリマーは、ブロックAとブロックBとからなるジブロックコポリマーである。
【0107】
同様に適しているのは、第1のブロックAからなる少なくとも2つのブロック及び/又は第2のブロックBからなる少なくとも2つのブロックを含むブロックコポリマーである。より具体的には、これらは、第1のブロックAの2つの例と第2のブロックBの1つの例とを含むブロックコポリマー又は第1のブロックAの1つの例と第2のブロックBの2つの例とを含むブロックコポリマーである。この種のブロックコポリマーは、トリブロックコポリマー、テトラブロックコポリマー又はペンタブロックコポリマーの形態を特に取り、好ましくはトリブロックコポリマーの形態を取る。テトラブロックコポリマー及びペンタブロックコポリマーに1つ又は2つの更なるブロックが存在し、例えば上記で説明したCブロックタイプのブロックが存在する。
【0108】
特に有利なブロック構造は、以下の特徴のうちの少なくとも1つ又は複数を有する:
i)ブロックAが7〜40個、特に10〜25個のモノマー単位M1を有し、且つブロックBが7〜50個、特に20〜40個のモノマー単位M2を有し、
ii)第1のブロックAが、この第1のブロックA中の全てのモノマーを基準として少なくとも75mol%、好ましくは少なくとも90mol%の程度まで式Iのモノマー単位M1からなり、
iii)第2のブロックBが、この第2のブロックB中の全てのモノマーを基準として少なくとも75mol%、好ましくは少なくとも90mol%の程度まで式IIのモノマー単位M2からなり、
iv)このブロックコポリマー中のモノマー単位M2に対するモノマー単位M1のモル比が0.5〜6、好ましくは0.8〜3.5の範囲であり、
v)R
1に関して、a=0、b=1、c=1、G=−O−、d=1〜2、Q=H、e=0又は1、f=1且つj=0である。より好ましくは、d=2であり、
vi)R
2及びR
5がH又はCH
3、好ましくはCH
3であり、
vii)R
3=R
4=R
6=R
7=Hであり、
viii)m=0且つp=1であり、
ix)X=−O−であり、
x)A=C
2−アルキレンであり、且つn=10〜150、好ましくは15〜50であり、
xi)R
a=H又は−CH
3、好ましくはCH
3である。
【0109】
特に好ましいのは、少なくとも特徴(i)〜(iv)を全て有する、ブロックA及びBからなるジブロックコポリマーである。更に好ましいのは、特徴(i)〜(xi)を全て有するジブロックコポリマーである。更に好ましいのは、それぞれの場合に好ましい実施で特徴(i)〜(xi)を全て満たすジブロックコポリマーである。
【0110】
同様に有利なのは、特に順序A−C−BでブロックA、B及びCからなるトリブロックコポリマーであり、このトリブロックコポリマーは少なくとも特徴(i)〜(iv)を全て有する。更に好ましいのは、特徴(i)〜(xi)を全て有するトリブロックコポリマーである。更に好ましいのは、それぞれの場合に好ましい実施で特徴(i)〜(xi)を全て満たすトリブロックコポリマーである。ブロックCは、上記で説明したモノマー単位MSを有利に含む、又はブロックCはこのモノマー単位MSからなる。
【0111】
特定の実施形態では、これらのジブロックコポリマー又はトリブロックコポリマーはまた、ブロックA及びB中において、上記で説明した更なるモノマー単位MSも更に含み、特に式IIIの更なるモノマー単位MSも更に含む。
【0112】
コポリマーの調製
本発明の更なる態様は、コポリマー、特に上記で説明したコポリマーを調製する方法であって、リン基担持モノマーm1と側鎖保有モノマーm2とを一緒に重合させて、リン基担持モノマーm1及び/又は側鎖保有モノマーm2の非ランダム分布を形成する方法に関する。
【0113】
リン基担持モノマーm1は、重合の完了時、コポリマーの上記したリン基担持モノマー単位M1に対応する。側鎖保有モノマーm2は、重合の完了時、上記で説明した側鎖保有モノマー単位M2に同様に対応する。
【0114】
側鎖保有モノマーm2はポリアルキレンオキシド側鎖、好ましくはポリエチレンオキシド側鎖及び/又はポリプロピレンオキシド側鎖を特に含む。
【0115】
リン基担持モノマーm1は、例えば、それぞれリン酸基及び/又はホスホン酸基を含む(メタ)アクリルエステル、(メタ)アクリルアミド、ビニルエーテル、アリルエーテル、メタアリルエーテル及び/又はイソプレニルエーテルをベースとする。
【0116】
より具体的には、イオン性モノマーm1は、式IV:
【化6】
の構造を有する。
【0117】
側鎖保有モノマーm2は、式V:
【化7】
の構造を好ましくは有し、
式中、
R
1〜R
8及びX基並びにパラメータm及びpが、コポリマーに関連して上記で説明したように定義される。
【0118】
更に有利な実施形態では、重合中に少なくとも1種の更なるモノマーmsが存在し(このモノマーmsは重合する)、且つこのモノマーmsは、特に式VI:
【化8】
のモノマーであり、
式中、
R
5’、R
6’、R
7’、R
9’、Y、Z、m’及びp’が、上記で定義された通りである。
【0119】
具体的には、リン基担持モノマーm1は、下記の化合物のうちの1つ又は複数から選択される。
【0125】
特に好ましいのは、化合物番号1、2、3、5、6、7、10、11、16及び17である。これらのアクリレート及び/又はメタクリレートが非常に特に有利である。特に化合物番号1、2、5及び6である。
【0126】
このコポリマーは、リビングフリーラジカル重合(living free−radical polymerization)によって特に調製される。
【0127】
フリーラジカル重合は、基本的に開始、成長及び停止の3つのステップに分けることができる。
【0128】
「リビングフリーラジカル重合」は「制御されたフリーラジカル重合」とも称され、他の状況ではそれ自体が当業者に既知である。この用語は、本質的に連鎖停止反応(移動及び停止)が起こらない連鎖成長プロセスを包含する。そのため、リビングフリーラジカル重合は、本質的に不可逆的な移動反応又は停止反応の非存在下で進行する。この基準は、例えば、重合開始剤が重合中の非常に早い段階で既に使い尽くされており、且つ反応性が異なる種間での交換がそれ自体少なくとも連鎖成長と同じ程度に速やかに進行する場合に満たされ得る。この重合中、特に活性鎖末端の数が本質的に一定のままである。これにより、重合プロセス全体にわたり継続する鎖の同時成長が本質的に可能になる。これにより、相応して分子量分布又は多分散度が狭くなる。
【0129】
換言すると、制御されたフリーラジカル重合又はリビングフリーラジカル重合は、停止反応又は移動反応が可逆的であるか又は非存在の場合であっても特に顕著である。開始後、反応全体にわたり活性部位が適宜保存される。全てのポリマー鎖が同時に形成(開始)され、全時間にわたり連続的に成長する。この活性部位のフリーラジカル官能基は、重合させるモノマーの完全な変換後であっても依然として理想的に保存される。この制御された重合の特別な性質により、様々なモノマーの逐次的付加により、勾配コポリマー又はブロックコポリマー等の明確に定義される構造の調製が可能になる。
【0130】
対照的に、例えば欧州特許出願公開第1110981A2号明細書(花王株式会社)で説明されている従来のフリーラジカル重合では、3つのステップ(開始、成長及び停止)の全てが並行して進行する。活性な成長鎖のそれぞれの寿命は非常に短く、鎖の鎖成長中のモノマー濃度は本質的に一定のままである。このようにして形成されたポリマー鎖は、更なるモノマーの付加に適したいかなる活性中心も有しない。そのため、この機構は、ポリマーの構造のいかなる制御も可能ではない。従って、従来のフリーラジカル重合による勾配構造又はブロック構造の調製は概して不可能である(例えば、“Polymere:Synthese,Synthese und Eigenschaften”[Polymers:Synthesis,Synthesis and Properties];著者:Koltzenburg,Maskos,Nuyken;Verlag:Springer Spektrum;ISBN:97−3−642−34772−6及び“Fundamentals of Controlled/living Radical Polymerization”;発行者:Royal Society of Chemistry;編集者:Tsarevsky,Sumerlin;ISBN:978−1−84973−425−7を参照されたい)。
【0131】
そのため、「リビングフリーラジカル重合」には、従来の「フリーラジカル重合」又は非リビング若しくは非制御の方法で行うフリー重合との明確な差異が存在する。
【0132】
本重合は、好ましくは、可逆的付加−開裂連鎖移動重合(RAFT)、ニトロキシド媒介重合(NMP)及び/又は原子移動ラジカル重合(ATRP)によって行われる。
【0133】
可逆的付加−開裂連鎖移動重合では、重合の制御は可逆的連鎖移動反応によって達成される。具体的には、成長するフリーラジカル鎖が、中間フリーラジカルを形成するRAFT剤と呼ばれるものに付加する。次いで、このRAFT剤が、別のRAFT剤及び成長に利用可能なフリーラジカルを再編成するような方法で断片化する。このようにして、全ての鎖にわたり成長の確率が均一に分布する。形成されるポリマーの平均鎖長は、RAFT剤の濃度及び反応変換に比例する。使用されるRAFT剤は、特に有機硫黄化合物である。特に適しているのは、ジチオエステル、ジチオカルバメート、トリチオカーボネート及び/又はキサンテートである。この重合は、開始剤又は熱自己開始による従来の方法で開始させることができる。
【0134】
ニトロキシド媒介重合では、ニトロキシドと活性鎖末端とが可逆的に反応して休眠種(dormant species)と呼ばれるものが形成される。活性鎖末端と不活性鎖末端との間の平衡は休眠種側に強く、これは活性種の濃度が非常に低いことを意味する。そのため、2つの活性鎖が会合して停止する確率が最小化される。適切なNMP剤の例は、2,2,6,6−テトラメチルピペリジンN−オキシド(TEMPO)である。
【0135】
原子移動ラジカル重合(ATRP)では、連鎖停止反応(例えば、不均化又は再結合)が非常に大幅に抑制される程度まで遷移金属錯体及び制御剤(ハロゲンベース)を添加することにより、フリーラジカルの濃度が低下する。
【0136】
これに関連して、可逆的付加−開裂連鎖移動重合(RAFT)が特に好ましいことが見出されている。
【0137】
重合に使用する開始剤は、より好ましくは、フリーラジカル開始剤としてのアゾ化合物及び/又は過酸化物、下記からなる群から選択される少なくとも1つの代表であり得る:過酸化ジベンゾイル(DBPO)、ジ−tert−ブチルペルオキシド、過酸化ジアセチル、アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)、α,α’−アゾジイソブチルアミジン二塩酸塩(AAPH)及び/又はアゾビスイソブチルアミジン(AIBA)。
【0138】
重合を水溶液又は水中で行う場合、α,α’−アゾジイソブチルアミジン二塩酸塩(AAPH)が開始剤として有利に使用される。
【0139】
重合の制御のため、具体的には、下記からなる群からの1つ又は複数の代表を使用する:ジチオエステル、ジチオカルバメート、トリチオカーボネート及び/又はキサンテート。
【0140】
重合が少なくとも部分的に、好ましくは完全に水溶液中で行われる場合に有利であることが更に見出されている。
【0141】
より具体的には、重合中、遊離している側鎖保有モノマーm2に対する、遊離しているリン基担持モノマーm1のモル比を少なく一時的に変更する。
【0142】
具体的には、このモル比の変更として、段階的及び/又は連続的な変更が挙げられる。そのため、効率的に制御可能な方法でブロック構造及び/若しくは濃度勾配又は勾配構造を形成することが可能である。
【0143】
任意選択により、重合中、遊離している側鎖保有モノマーm2に対する、遊離しているリン基担持モノマーm1のモル比の連続的又は段階的変更のいずれかが行われる。この段階的変更は、特に連続的変更が実施される前に行われる。このようにして、例えば、構造が異なる2つ以上のセクションを含むコポリマーを得ることができる。
【0144】
ブロック及び/又は勾配構造を有するコポリマーの形成のため、好ましくは、リン基担持モノマーm1及び側鎖保有モノマーm2の少なくとも一部を異なる時間に添加する。
【0145】
更に好ましい実施形態では、重合において、第1の工程a)でリン基担持モノマーm1の一部が変換又は重合され、及び所定の変換の達成後、第2の工程b)で依然として未変換のリン基担持モノマーm1が側鎖保有モノマーm2と一緒に重合される。工程a)は、特に本質的に側鎖保有モノマーm2の非存在下で行われる。
【0146】
このようにして、簡単且つ安価な方法で、重合したリン基担持モノマーm1から本質的になるセクションと、それに続く勾配構造を有するセクションとを有するコポリマーが調製可能である。
【0147】
特に好ましい実施形態によれば、重合において、第1の工程a)で側鎖保有モノマーm2の一部が変換又は重合され、及び所定の変換の達成後、第2の工程b)で依然として未変換の側鎖保有モノマーm2がリン基担持モノマーm1と一緒に重合される。工程a)は、特に本質的にリン基担持モノマーm1の非存在下で行われる。
【0148】
このようにして、例えば、簡単且つ安価な方法で、重合した側鎖保有モノマーm2から本質的になるセクションと、それに続く勾配構造を有するセクションとを有するコポリマーが調製可能である。
【0149】
ここで、工程a)及びb)を即時に連続して行うことが有利である。このようにして、工程a)及びb)での重合反応の程度を可能な限り最高に維持することが可能である。
【0150】
工程a)における重合は、特にリン基担持モノマーm1又は側鎖保有モノマーm2の0.1〜100mol%、特に1〜95mol%、好ましくは10〜90mol%、具体的には25〜85mol%が変換又は重合されるまで行われる。
【0151】
モノマーm1及びm2の変換又は重合の進行をそれ自体既知の方法でモニタリングすることができ、例えば、液体クロマトグラフィー(特に高速液体クロマトグラフィー(HPLC))を用いてモニタリングすることができる。
【0152】
より具体的には、本コポリマーは、少なくとも50mol%、具体的には少なくとも75mol%、特に少なくとも90mol%又は95mol%の程度までリン基担持モノマーm1及び側鎖保有モノマーm2からなる。
【0153】
本コポリマーを液体又は固体の形態で調製することができる。より好ましくは、このコポリマーは溶液又は分散液の構成成分として存在し、このコポリマーの割合は、特に10〜90重量%、好ましくは25〜65重量%である。これは、このコポリマーを例えばバインダー組成物に非常に効率的に添加し得ることを意味する。このコポリマーを溶液、特に水溶液で調製する場合、更なる処理を省略することが更に可能である。
【0154】
別の有利な実施形態によれば、コポリマーを物質の固体状態、特に粉末の形態、ペレット及び/又はシートの形態で調製する。これにより、コポリマーの輸送が特に簡単になる。このコポリマーの溶液又は分散液を例えば噴霧乾燥によって物質の固体状態へ変換することができる。
【0155】
反応レジメンに従って、本発明の方法により、制御された方法で所与の又は明確に定義された構造を有するポリマーを調製することが可能である。より具体的には、例えば、ブロック構造を有するコポリマー及び/又は勾配構造を有するコポリマーを得ることができる。
【0156】
勾配構造を有するコポリマーの調製
勾配構造を含むコポリマーの調製には以下の手順が特に好ましいことが見出されている:第1の工程a)において、側鎖保有モノマーm2の少なくとも一部を反応又は重合させ、所定の変換の達成後、第2の工程b)において、リン基担持モノマーm1を未変換の側鎖保有モノマーm2と一緒に重合させる。具体的には、工程a)をリン基担持モノマーm1の非存在下で行う。
【0157】
第1の工程a)において、リン基担持モノマーm1の少なくとも一部を反応又は重合させ、所定の変換の達成後、第2の工程b)において、側鎖保有モノマーm2を重合させ、任意選択で、任意の未変換のリン基担持モノマーm1と一緒に重合させることも可能である。具体的には、工程a)を側鎖保有モノマーm2の非存在下で行う。
【0158】
より具体的には、前者の方法により、効率的且つ安価な方法で、重合した側鎖保有モノマーm2から本質的になるセクションと、それに続く勾配構造を有するセクションとを有するコポリマーを調製することが可能である。
【0159】
工程a)における重合は、特に、側鎖保有モノマーm2又はリン基担持モノマーm1の1〜74mol%、好ましくは10〜70mol%、具体的には25〜70mol%、特に28〜50mol%又は30〜45mol%が変換又は重合されるまで行われる。
【0160】
更に有利な実施形態では、工程a)及び/又は工程b)において、上記で説明した式VIの少なくとも1種の更なる重合性モノマーmsが存在する。この少なくとも1種の更なる重合性モノマーmsは、この場合、モノマーm1及び/又はモノマーm2と一緒に特に重合する。
【0161】
或いは、工程a)及び工程b)に加えて、少なくとも1種の更なる重合性モノマーmsの重合のための更なる工程c)を提供することが可能である。このようにして、追加セクションCを有するコポリマーを調製することが可能である。より具体的には、工程c)を時間的に工程a)と工程b)との間で行うことができる。そのため、追加セクションCは、空間的にセクションAAとセクションABとの間に配置される。
【0162】
或いは、工程c)を工程a)及びb)の前に又は後に行うことが可能である。そのため、追加セクションCは、セクションAAの後又はセクションABの前に配置され得る。
【0163】
モノマーm1、m2、ms及び任意の更なるモノマーの有利な割合、比及び配置は、モノマー単位M1、M2及びMSに関連して説明されている既に上記で列挙した割合、比及び配置に対応する。
【0164】
ブロック構造を有するコポリマーの調製
ブロック構造を含むコポリマーの調製には以下の手順が特に好ましいことが見出されている:第1の工程a)において、側鎖保有モノマーm2の少なくとも一部が反応又は重合され、及び所定の変換の達成後、第2の工程b)において、リン基担持モノマーm1が、任意選択で、任意の依然として未変換の側鎖保有モノマーm2と一緒に重合される。具体的には、工程a)は、リン基担持モノマーm1の非存在下で行われる。
【0165】
工程a)における重合は、特に最初の帯電モノマーm2の75〜95mol%、好ましくは85〜95mol%、特に86〜92mol%が変換/重合されるまで行われる。
【0166】
より具体的には、工程b)における重合は、それに応じて最初の帯電モノマーm1の75〜95mol%、特に80〜92mol%が変換/重合されるまで行われる。
【0167】
しかしながら、原則として工程a)及びb)の順序を切り替えてもよい。
【0168】
或いは、工程a)及び工程b)に加えて、少なくとも1種の更なる重合性モノマーmsの重合のための更なる工程c)を提供することが可能である。このようにして、追加ブロックCを有するブロックコポリマーを調製することが可能である。より具体的には、工程c)を時間的に工程a)と工程b)との間で行う。そのため、追加ブロックCは、空間的にAブロックとBブロックとの間に配置される。
【0169】
モノマーm1、m2、ms及び任意の更なるモノマーの有利な割合、比及び配置は、モノマー単位M1、M2及びMSに関連して説明されている既に上記で列挙した割合、比及び配置に対応する。
【0170】
コポリマーの使用
本発明は、固体粒子のための分散剤としての上記で説明したコポリマーの使用に更に関する。
【0171】
用語「固体粒子」は、無機物質及び有機物質で構成された粒子を意味する。具体的には、この固体粒子は無機粒子及び/又は無機質粒子である。
【0172】
特に有利には、このコポリマーは、無機バインダー組成物のための分散剤として使用される。このコポリマーを、無機バインダー組成物の可塑化、減水及び/又は施工性の改善のために特に使用することができる。
【0173】
より具体的には、このコポリマーを、無機バインダー組成物の施工性を拡大するために使用することができる。
【0174】
このコポリマーは、金属体及び/又は金属基材(metallic substrate)への無機バインダー組成物の付着を増加させるために更に使用され得、特に硬化状態での付着を増加させるために使用され得る。金属体又は金属基材は、特に表面上で鋼鉄及び/又は鉄からなる物体である。例えば、これらの金属体又は金属基材は建造物の構造物であることができ、例えば建物構造物又は橋構造物であることができる。驚くべきことに、本発明のコポリマーを含む無機バインダー組成物は、本発明のコポリマーを含まない類似の無機バインダー組成物と比べて金属体及び/又は金属基材への付着が良好であることが見出されている。
【0175】
本発明は、上記で説明した少なくとも1種のコポリマーを含む無機バインダー組成物に更に関する。
【0176】
この無機バインダー組成物は少なくとも1種の無機バインダーを含む。語句「無機バインダー」は、水和反応において水の存在下で反応して固体水和物又は水和物相を生じるバインダーを意味すると特に理解される。これは、例えば、水硬性バインダー(例えば、セメント若しくは水硬性石灰)、潜在的な水硬性バインダー(例えば、スラグ)、ポゾランバインダー(pozzolanic binder)(例えば、フライアッシュ)又は非水硬性バインダー(石膏若しくはしっくい)であり得る。
【0177】
より具体的には、無機バインダー又は無機バインダー組成物は、水硬性バインダー、好ましくはセメントを含む。特に好ましいのは、35重量%以上のセメントクリンカー含有量を有するセメントである。より具体的には、このセメントはCEM I型、CEM II型、CEM III型、CEM IV型又はCEM V型(規格EN 197−1に従う)である。無機バインダー全体中の水硬性バインダーの割合は、有利には少なくとも5重量%、特に少なくとも20重量%、好ましくは少なくとも35重量%、特に少なくとも65重量%である。更に有利な実施形態では、この無機バインダーは、95重量%以上の水硬性バインダーの程度まで特にセメント又はセメントクリンカーからなる。
【0178】
或いは、無機バインダー又は無機バインダー組成物が他のバインダーを含むか又は他のバインダーからなる場合に有利な場合がある。これは、特に潜在的な水硬性バインダー及び/又はポゾランバインダーである。適切で潜在的な水硬性及び/又はポゾランバインダーは、例えばスラグ、フライアッシュ及び/又はシリカダストである。バインダー組成物は、同様に不活性物質、例えば石灰石、石英粉及び/又は顔料を含み得る。有利な実施形態では、この無機バインダーは、5〜95重量%、特に5〜65重量%、より好ましくは15〜35重量%の潜在的な水硬性及び/又はポゾランバインダーを含む。有利で潜在的な水硬性及び/又はポゾランバインダーは、スラグ及び/又はフライアッシュである。
【0179】
特に好ましい実施形態では、無機バインダーは、水硬性バインダー(特にセメント又はセメントクリンカー)と、潜在的な水硬性及び/又はポゾランバインダー(好ましくはスラグ及び/又はフライアッシュ)とを含む。この場合の潜在的な水硬性及び/又はポゾランバインダーの割合は、より好ましくは5〜65重量%、より好ましくは15〜35重量%である一方、少なくとも35重量%、特に少なくとも65重量%の水硬性バインダーが存在する。
【0180】
この無機バインダー組成物は、好ましくはモルタル組成物又はコンクリート組成物である。
【0181】
この無機バインダー組成物は、特に施工可能な無機バインダー組成物及び/又は水と共に構成されるものである。
【0182】
この無機バインダー組成物中のバインダーに対する水の重量比は、好ましくは0.25〜0.7、具体的には0.26〜0.65、好ましくは0.27〜0.60、特に0.28〜0.55の範囲である。
【0183】
有利には、本コポリマーを、バインダー含有量に基づいて0.01〜10重量%、特に0.1〜7重量%又は0.2〜5重量%の割合で使用する。
【0184】
本発明の追加の態様は、上記で説明したコポリマーを含む無機バインダー組成物を水の添加後に硬化させることによって得ることができる成形体、特に建築物の構成物)に関する。建設された構造物は、例えば、橋、建物、トンネル、道路又は滑走路であり得る。
【0185】
本発明は、金属体及び/又は金属基材と、本発明のコポリマーを含む無機バインダー組成物とを含む層状構造に更に関する。この無機バインダー組成物は、特に金属体及び/又は金属基材に少なくとも部分的に直接接触している。金属板又は金属基材は、特に表面上で鋼鉄及び/又は鉄からなる物体であり、例えば建造物の構造物(例えば、建物構造物又は橋構造物)である。ここで、無機バインダー組成物はペースト状又は硬化状態である。
【0186】
以下の実施例から本発明の更に有利な実施形態が明らかになるであろう。
【実施例】
【0187】
1.調製例
1.1 コポリマーCP1
RAFT重合によりブロックコポリマーを調製するために、50%メトキシポリエチレングリコール−1000メタクリレート28.74gを三つ口フラスコ中に秤量し、次いでH
2O 12.59gで希釈した。この溶液中に窒素流を緩やかに導入した。この反応混合物を80℃に加熱した。温度が達成したら直ちに、4−シアノ−4−(チオベンゾイル)ペンタン酸0.252gを添加した。10分後、次いでAIBN 0.045gを添加した。これ以降、HPLCにより変換を定期的に決定する。メトキシポリエチレングリコールメタクリレートに基づいて変換が約90%に達すると直ちに、MAPC−1−ホスホン酸(CAS:[87243−97−8])10.71gを添加した。この反応混合物を更に3時間にわたり撹拌し続けた。冷却後、残留するものは、約40%の赤みがかった溶液である。このようにして得られたコポリマーをこれ以降でコポリマーCP1と称する。
【0188】
このようにして得られたコポリマーをポリマーCP1と称し、このコポリマーは、メトキシポリエチレングリコールメタクリレートの実質的に完全な変換(90mol%)のために、側鎖保有モノマー単位(メトキシポリエチレングリコ−ルメタクリレート)が第1のブロック中に存在し、且つリン含有モノマー単位(MAPC−1−ホスホン酸)が本質的に空間的に別々に第2のブロック中に存在するブロック構造を有する。
【0189】
1.2 コポリマーCP2
RAFT重合により更なるブロックコポリマーを調製するために、50%メトキシポリエチレングリコール−1000メタクリレート28.74gを三つ口フラスコ中に秤量し、H
2O 12.59gで希釈した。この溶液中に窒素流を緩やかに導入した。この反応混合物を80℃に加熱した。温度が達成したら直ちに、4−シアノ−4−(チオベンゾイル)ペンタン酸0.252gを添加した。10分後、次いでAIBN 0.045gを添加した。これ以降、HPLCにより変換を定期的に決定する。メトキシポリエチレングリコールメタクリレートに基づいて変換が約90%に達すると直ちに、2−(ホスホノオキシ)エチルメタクリレート(CAS:[24599−21−1])7.5gを添加した。この反応混合物を更に3時間にわたり撹拌し続けた。冷却後、残留するものは、約40%の赤みがかった溶液である。
【0190】
このようにして得られたコポリマーをポリマーCP2と称し、このコポリマーも同様にブロック構造を有する。
【0191】
1.3 コポリマーR
比較例のポリマーを調製するために、還流冷却器、撹拌装置、温度計及び不活性ガス導入管を備えた丸底フラスコに50%メトキシポリエチレングリコール1000メタクリレート57.4g(0.03mol)と、脱イオン水25.9gと、またメタクリル酸6.21g(0.07mol)とを最初に充填する。この反応混合物を激しく撹拌しつつ80℃に加熱する。加熱中に及び残りの反応時間全てにわたり、この溶液に不活性ガス流を穏やかに通す。次いで、この混合物に4−シアノ−4−(チオベンゾイル)ペンタン酸378mg(1.4mmol)を添加する。この物質が完全に溶解した時点でAIBN 67mg(0.41mmol)を添加する。これ以降、HPLCにより変換を定期的に決定する。
【0192】
2種のモノマーの変換が85%を超えると直ちに、この反応を停止させる。残留するものは、固形分が約40%である透明で淡く赤みがかった水溶液である。このようにして得られるコポリマーをポリマーRと称し、このコポリマーはモノマー単位の統計学的分布を有する。
【0193】
2.セメントペースト
2.1 製造
試験目的で使用するセメントペーストは、セメント(CEM I 42.5 N、Normo 4、Holcim Schweizから入手可能である)及び水をベースとする。
【0194】
このセメントペーストのうちの1つを作製するために、このセメントを1分にわたりHobart中で乾式混合した。30秒以内に、それぞれのポリマー(割合:0.5重量%、セメント含有量を基準とする)を予め混合した補給水(セメントに対する水の比w/c=0.31)を添加し、この混合物を更に2.5分にわたり混合した。総湿式混合時間は、それぞれの場合に3分であった。
【0195】
2.2 セメントペースト試験
これら混合組成物の分散性を決定するために、一連の作製したセメントペーストのスランプ(ABM)を測定した。このセメントペーストのスランプ(ABM)をEN 1015−3に従って決定した。
【0196】
2.3 セメントペースト試験の結果
表1は、行ったセメントペースト試験の概要及び得られた結果を示す。実験V1は、比較目的のために行った、ポリマーを添加しないブランク実験である。
【0197】
【表6】
【0198】
これらの実験は、本発明のポリマー(実験V3)が従来のポリマー(実験V2)よりも可塑化性能に関して明らかな利点をもたらすことを示す。
【0199】
しかしながら、上記で説明した実施形態は、本発明の範囲内で必要に応じて改変され得る例示的な例にすぎないとみなされるべきである。