特許第6916900号(P6916900)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6916900長尺位相差フィルム、長尺積層体、画像表示装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6916900
(24)【登録日】2021年7月20日
(45)【発行日】2021年8月11日
(54)【発明の名称】長尺位相差フィルム、長尺積層体、画像表示装置
(51)【国際特許分類】
   G02B 5/30 20060101AFI20210729BHJP
   G02F 1/13363 20060101ALI20210729BHJP
【FI】
   G02B5/30
   G02F1/13363
【請求項の数】11
【全頁数】42
(21)【出願番号】特願2019-558217(P2019-558217)
(86)(22)【出願日】2018年12月4日
(86)【国際出願番号】JP2018044529
(87)【国際公開番号】WO2019111880
(87)【国際公開日】20190613
【審査請求日】2020年6月2日
(31)【優先権主張番号】特願2017-235139(P2017-235139)
(32)【優先日】2017年12月7日
(33)【優先権主張国】JP
(31)【優先権主張番号】特願2018-177721(P2018-177721)
(32)【優先日】2018年9月21日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】306037311
【氏名又は名称】富士フイルム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100152984
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 秀明
(74)【代理人】
【識別番号】100148080
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 史生
(72)【発明者】
【氏名】久門 義明
【審査官】 植野 孝郎
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−191756(JP,A)
【文献】 特開2009−292869(JP,A)
【文献】 特開2015−227955(JP,A)
【文献】 特開2008−302524(JP,A)
【文献】 国際公開第2018/101207(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 5/30
G02F 1/13
G02F 1/1335
G02F 1/13363
G09F 9/00
G09F 9/30
H01L27/32
H01L51/50
H05B33/02
B32B 1/00−43/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂フィルムからなる長尺支持体と、前記長尺支持体の一方の面側に配置される長尺状の光学異方性層とを含む長尺位相差フィルムであって、
前記長尺支持体は、厚みが10μm〜50μmであり、かつ、幅手方向弾性率が4.3GPa〜6.0GPaであり、かつ、幅手方向の線熱膨張率が10ppm/℃〜35ppm/℃であり、
前記光学異方性層は逆波長分散性の重合性液晶化合物を含む重合性液晶組成物からなるものであり、
前記長尺位相差フィルムを85℃、500時間の加熱条件で処理した際の面内位相差変化ΔReが0.94〜1.02である、長尺位相差フィルム。
【請求項2】
前記長尺支持体の140℃における幅手方向弾性率が1.5GPa〜3.0GPaである、請求項1に記載の長尺位相差フィルム。
【請求項3】
前記長尺支持体のRe(550)が0nm〜10nm、Rth(550)が−20nm〜40nmである、請求項1または2に記載の長尺位相差フィルム。
【請求項4】
前記長尺支持体と、前記光学異方性層との間に、前記光学異方性層に接して配向層を有する、請求項1〜3のいずれか一項に記載の長尺位相差フィルム。
【請求項5】
前記光学異方性層のRe(550)が100nm〜250nmである、請求項1〜4のいずれか一項に記載の長尺位相差フィルム。
【請求項6】
前記光学異方性層のRe(550)が100nm〜160nmであり、前記光学異方性層の面内遅相軸が前記長尺支持体の長手方向に対して30°〜50°の角度を成している、請求項5に記載の長尺位相差フィルム。
【請求項7】
前記光学異方性層が、前記長尺支持体と接しているか、
前記長尺支持体と、前記光学異方性層との間に、前記光学異方性層に接して配向層を有しており、
かつ、前記光学異方性層が、剥離可能に設けられている、請求項1〜6のいずれか一項に記載の長尺位相差フィルム。
【請求項8】
前記重合性液晶組成物が、重合性基を3〜6つ有する重合性化合物を含む、請求項1〜7のいずれか一項に記載の長尺位相差フィルム。
【請求項9】
前記重合性液晶組成物が、重合性基を2〜6つ有する重合性化合物を含み、
前記重合性化合物の含有量が、前記重合性液晶化合物および前記重合性化合物の合計100質量部において、5〜30質量部である、請求項1〜7のいずれか一項に記載の長尺位相差フィルム。
【請求項10】
請求項1〜のいずれか一項に記載の長尺位相差フィルムと、長尺直線偏光フィルムとを積層してなる、長尺積層体。
【請求項11】
請求項10に記載の長尺積層体から切り出された偏光板を含む、画像表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、長尺位相差フィルム、長尺積層体、画像表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、位相差フィルムと偏光子とを有する偏光板が、光学補償や反射防止などを目的として、液晶表示装置や有機電界発光装置などに用いられている。これらは高い生産性と安定した品質を実現するため、ロールトゥロールプロセスで製造されるのが一般的である。
近年、可視光域の光線が混在している合成波である白色光に対して、全ての波長の光線に対応して同様の効果を与えることができる偏光板(いわゆる広帯域偏光板)の開発が進められており、特に、偏光板が適用される装置の薄型化の要求から、偏光板に含まれる位相差フィルムについても薄型化が求められている。
上記の要求に対して、例えば特許文献1および2においては、位相差フィルムの形成に使用する重合性化合物として、逆波長分散性の重合性液晶化合物の利用が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2014/010325号
【特許文献2】特開2011−207765号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1および2に記載されている逆波長分散性の重合性液晶(重合性液晶化合物)を用いて形成された位相差フィルムは、少ない層数で優れた広帯域偏光板を与えることができる。
しかしながら、厚み50μm以下の薄い樹脂フィルム(支持体)の上に逆波長分散性の重合性液晶(重合性液晶化合物)を用いて形成した位相差フィルム(光学異方性層に該当)を有する偏光板を作製し、実用上の態様(例えば、有機電界発光方式のスマートフォンの反射防止を目的とした円偏光板として用いる態様)に合わせて、この偏光板を両側からガラスに挟みこみ、高温下の条件に長時間曝した場合、面内の中央部に赤みムラが生じることが分かった。
【0005】
本発明者らの検討によれば、赤みムラが生じている領域において、位相差フィルムのレターデーション(Re)が大きく変動しており、これによって色味変化を生じていることが分かった。
【0006】
本発明の課題は、上記従来技術の問題点を解消し、経時によって赤味ムラが発生することを抑制できる長尺位相差フィルム、長尺積層体および画像表示装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この課題を解決するために、本発明は、以下の構成を有する。
【0008】
[1] 樹脂フィルムからなる支持体と、長尺支持体の一方の面側に配置される長尺状の光学異方性層とを含む長尺位相差フィルムであって、長尺支持体は、厚みが10μm〜50μm、かつ、幅手方向弾性率が4.3GPa〜6.0GPaであり、かつ、幅手方向の線熱膨張率が20×10-6/℃〜40×10-6/℃であり、光学異方性層は逆波長分散性の重合性液晶化合物を含む重合性液晶組成物からなるものであり、長尺位相差フィルムの切片を85℃、500時間の加熱条件で処理した際の面内位相差変化ΔReが0.94〜1.02である、長尺位相差フィルム。
[2] 長尺支持体の140℃における幅手方向弾性率が1.5GPa〜3.0GPaである、[1]に記載の長尺位相差フィルム。
[3] 長尺支持体のRe(550)が0nm〜10nm、Rth(550)が−20nm〜40nmである、[1]または[2]に記載の長尺位相差フィルム。
[4] 長尺支持体と、長尺光学異方性層との間に、光学異方性層に接して配向層を有する、[1]〜[3]のいずれかに記載の長尺位相差フィルム。
[5] 光学異方性層のRe(550)が100nm〜250nmである、[1]〜[4]のいずれかに記載の長尺位相差フィルム。
[6] 光学異方性層のRe(550)が100nm〜160nmであり、光学異方性層の面内遅相軸が長尺支持体の長手方向に対して30°〜50°の角度を成している、[5]に記載の長尺位相差フィルム。
[7] 光学異方性層が、長尺支持体と接しているか、
長尺支持体と、光学異方性層との間に、光学異方性層に接して配向層を有しており、
かつ、光学異方性層が、剥離可能に設けられている、[1]〜[6]に記載の長尺位相差フィルム。
[8] [1]〜[7]のいずれかに記載の長尺位相差フィルムと、長尺直線偏光フィルムとを積層してなる、長尺積層体。
[9] [8]に記載の長尺積層体から切り出された偏光板を含む、画像表示装置。
[10]樹脂フィルムからなる長尺支持体を長手方向に搬送しつつ、
逆波長分散性の重合性液晶化合物を含む重合性液晶組成物を長尺支持体の一方の面に塗布し塗膜を形成する塗布工程と、
塗膜を硬化させて光学異方性層を形成する硬化工程と、を行う長尺位相差フィルムの製造方法であって、
前記長尺支持体は、厚みが10μm〜50μmであり、かつ、幅手方向弾性率が4.3GPa〜6.0GPaであり、かつ、幅手方向の線熱膨張率が10ppm/℃〜35ppm/℃であり、
硬化工程において、塗膜を80℃以上140℃以下に加熱しつつ硬化を行う長尺位相差フィルムの製造方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、経時によって赤味ムラが発生することを抑制できる長尺位相差フィルムが得られ、これを用いた高品質な偏光板、画像表示装置を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、本発明の、長尺位相差フィルム、長尺積層体、および、画像表示装置について説明する。
なお、本明細書において「〜」を用いて表される数値範囲は、「〜」の前後に記載される数値を下限値および上限値として含む範囲を意味する。
また、角度について「直交」および「平行」とは、厳密な角度±10°の範囲を意味するものとし、角度について「同一」および「異なる」は、その差が5°未満であるか否かを基準に判断できる。
また、本明細書では、「可視光」とは、380〜780nmのことをいう。また、本明細書では、測定波長について特に付記がない場合は、測定波長は550nmである。
次に、本明細書で用いられる用語について説明する。
【0011】
<遅相軸>
本明細書において、「遅相軸」とは、面内において屈折率が最大となる方向を意味する。なお、位相差フィルムの遅相軸という場合は、位相差フィルム全体の遅相軸を意図する。
【0012】
<Re(λ)、Rth(λ)>
面内レターデーションおよび厚み方向のレターデーションの値は、AxoScan OPMF−1(オプトサイエンス社製)を用い、測定波長の光を用いて測定した値をいう。
具体的には、AxoScan OPMF−1にて、平均屈折率((Nx+Ny+Nz)/3)と膜厚(d(μm))を入力することにより、
遅相軸方向(°)
Re(λ)=R0(λ)
Rth(λ)=((nx+ny)/2−nz)×d
が算出される。
なお、R0(λ)は、AxoScan OPMF−1で算出される数値として表示されるものであるが、Re(λ)を意味している。
【0013】
[長尺位相差フィルム]
本発明の長尺位相差フィルムは、長尺支持体上に、少なくとも重合性液晶組成物を用いて形成された長尺状の光学異方性層を含む。
長尺支持体は、厚みが10μm〜50μmであり、かつ、幅手方向弾性率が4.3GPa〜6.0GPaであり、かつ、幅手方向の線熱膨張率が10ppm/℃〜35ppm/℃である。
光学異方性層は逆波長分散性の重合性液晶化合物を含む重合性液晶組成物からなるものである。
長尺位相差フィルムの切片を85℃、500時間の加熱条件で処理した際の面内位相差変化ΔReが0.94〜1.02である。
【0014】
本発明の長尺位相差フィルムから希望の大きさにフィルムを切り出すことで、枚葉状の位相差フィルムを得ることができる。そこで、本明細書内では特に断らず単に位相差フィルム、光学異方性層と称する場合、長尺状か枚葉状かは区別しないものとする。なお、以下に述べる位相差フィルムおよび光学異方性に係る種々の物性、特性に関しては、長尺位相差フィルムの全領域で完全に均一である必要はなく、特に指定しない場合、こうした長尺フィルムにおいて本来の目的および/または機能に即して使用することができる部分に対して適用されるべきものである。
本発明の長尺位相差フィルムは、各種画像表示装置に適用可能であるが、特に有機EL表示装置用途に用いることが好ましい。
【0015】
前述のとおり、逆波長分散性の重合性液晶化合物を用いて形成された位相差フィルムは、少ない層数で優れた広帯域偏光板を与えることができる。しかしながら、厚み50μm以下の薄い樹脂フィルム(支持体)の上に逆波長分散性の重合性液晶化合物を用いて光学異方性層を形成した位相差フィルムを画像表示装置に用いた場合に、経時によって赤みムラが生じるという問題が発生することがわかった。
【0016】
本発明者らの検討によれば、赤みムラが生じている領域において、位相差フィルムのレターデーション(Re)が大きく変動しており、これによって色味変化を生じていることが分かった。この点についてさらに検討を行ったところ、位相差フィルムのレターデーション(Re)が大きく変動する原因は、光学異方性層における液晶層中の重合性液晶化合物の重合反応率が低いために、熱、湿度あるいは経時によって光学異方性層が劣化してしまうためであることがわかった。
【0017】
逆波長分散性の重合性液晶化合物を用いて逆波長分散性の光学異方性層を形成する場合には、重合開始剤の量を少なくする必要がある。これは、重合開始剤の量を多くすると、順分散性の光学異方性層となってしまうためである。しかしながら、重合開始剤の量を少なくすると、光学異方性層中の重合性液晶化合物の重合反応率が比較的低く留まる。そのため、化学構造上の種々の分解や外的要因で液晶分子の配向緩和を受け、熱、湿度あるいは経時によって光学異方性層が劣化してしまう。そのため、位相差フィルムのレターデーション(Re)が変動してしまい、赤味ムラが生じるという問題が発生することがわかった。
【0018】
ここで、本発明者らは、重合開始剤の量を少なくしても、重合性液晶化合物の配向を固定する硬化処理を高温で行うことで、重合性液晶化合物の重合反応率を高くすることができ、形成した光学異方性層の耐久性を向上できることを見出した。
しかしながら、薄い樹脂フィルムを支持体として用いる場合には、加熱によって樹脂フィルムが伸びてシワが発生してしまうおそれがあるため、重合反応率を高くするのに十分な加熱をすることが難しい。
【0019】
特に、長尺位相差フィルムを製造するべくロールトゥロールプロセスを行う場合、硬化処理の前には液晶配向処理が行われており、得られた配向状態を保つためには加熱条件に細心の注意を払う必要がある。発明者らがかかる連続的な加熱と硬化のプロセスを種々検討したところ、光学異方性層の耐久性が向上する加熱および硬化条件に際して長尺支持体が幅手方向にたわみ、たわみを残したまま硬化処理すると得られた長尺状位相差フィルムにシワやたわみ等の変形および光学特性の顕著なムラを生じることがわかった。
長尺支持体は加熱により熱膨張し、その応力と長尺支持体の搬送に係る種々の応力とが複合した結果、長尺支持体の幅手方向にかかる応力が長尺支持体の剛性を上回ると長尺支持体が座屈してたわみを生じると推定される。
【0020】
発明者らは、こうした耐久性向上と光学ムラの発生という2つの課題を解決すべく鋭意検討した結果、逆波長分散性の重合性液晶組成物を用いるに際し、特定の長尺支持体を適用することで、光学特性と耐久性に優れた位相差フィルムを与え、かつ、ロールトゥロールプロセスにおいて光学特性のムラを伴わない高品質な位相差フィルムが得られることを見出した。
【0021】
すなわち、本発明の長尺位相差フィルムは、長尺支持体の幅手方向弾性率を4.3GPa〜6.0GPaとし、かつ、幅手方向の線熱膨張率を10ppm/℃〜35ppm/℃とする。長尺支持体の幅手方向の線熱膨張率を上記の範囲とし、かつ、長尺支持体の幅手方向弾性率を高めて幅方向の剛性を確保することで、硬化時に加熱することが好ましい逆波長分散性の重合性液晶組成物を、薄手の長尺支持体に適用した場合でも、たわみに起因する各種のムラや長尺支持体のシワ、折れを伴うことなく、高品質で生産性に優れた長尺位相差フィルムを得ることができる。
また、光学異方性層の耐久性が向上する加熱および硬化条件にした場合でも、長尺支持体が幅手方向にたわむことを抑制できるため、重合性液晶化合物の重合反応率を高くして耐久性を向上できる。具体的には、長尺位相差フィルムの切片を85℃、500時間の加熱条件で処理した際の面内位相差変化ΔReを0.94〜1.02と小さくすることができる。
すなわち、このような本発明の長尺位相差フィルムは耐久試験条件下でもその位相差値変化や寸法変化が少ない優れた位相差フィルムである。
【0022】
本発明の長尺位相差フィルムは、面内位相差変化ΔReが0.94〜1.02と小さく、画像表示装置等に組み込んだ場合でも、熱、湿度および経時等によって位相差フィルムのレターデーション(Re)が変動しにくいため、面内の中央部に赤みムラが生じることを抑制することができる。
【0023】
ここで、面内位相差変化ΔReは、長尺位相差フィルムの切片を85℃、500時間の加熱条件で処理する前の面内位相差Rea(550)と、処理した後の面内位相差Reb(550)とから、下記の式で表される。
ΔRe=Reb/Rea
ここで、Rea(550)およびReb(550)は、測定波長550nmにおける位相差フィルムの切片の面内位相差である。
また、位相差フィルムの切片は、長尺位相差フィルムの任意の位置から切り出した140mm×70mmの大きさのサンプルである。
【0024】
赤みムラをより好適に抑制できる観点から、面内位相差変化ΔReは、0.96〜1.01であるとより好ましい。
【0025】
位相差フィルムの膜厚は、部材の薄型化の観点から、100μm以下であることが好ましく、50μm以下であることがより好ましく、25μm以下であることがさらに好ましい。製造適性の観点から、5μm以上であることが好ましく、10μm以上であることがより好ましく、15μm以上であることがさらに好ましい。なお、位相差フィルムの膜厚とは、位相差フィルムが複数の層を有する場合には、この層を含めた全体の膜厚を指す。
【0026】
長尺位相差フィルムの長さは、100m〜10000mであることができ、250m〜7000mが好ましく、1000m〜6000mがより好ましい。また、幅は400〜3000mmであることができ、500〜2500mmが好ましく、600〜1750mmであることがより好ましい。この範囲であると、ロールトゥロールプロセスにおける経済性を高め、かつ、長手方向、幅手方向の均一性にすぐれた長尺位相差フィルムを製造することができる。
【0027】
また、本発明の長尺位相差フィルムは、長尺支持体と光学異方性層とからなる構成に限定はされず、他の層を有していてもよい。また、光学異方性層が長尺支持体上に直接形成される構成に限定はされず、長尺支持体と光学異方性層との間に他の層を有していてもよい。例えば、長尺支持体と光学異方性層との間に、光学異方性層に接する配向層を有していてもよい。
配向層(配向膜)は、重合性液晶化合物の配向方向を規定する機能を有する層である。光学異方性層に接して配向層を有することで、光学異方性層を形成する際に、光学異方性層となる塗膜中の重合性液晶化合物を均一かつ効率よく望ましい配向状態へ導くことができる。
【0028】
次に、本発明の長尺位相差フィルムを構成する構成要素について説明する。
【0029】
<長尺支持体>
本発明の長尺位相差フィルムの長尺支持体は長尺状であり、透明であるのが好ましい。具体的には可視光領域の直線光透過率が80%以上であるのが好ましい。このような支持体としては、例えば、ポリマーフィルムの長尺体が挙げられる。ロール状の巻回体として取り扱うに際し柔軟性と強度を兼ね備えた点で、支持体はポリマーフィルムであることが好ましい。
【0030】
こうしたポリマーフィルムを構成する樹脂としては、例えばセルロースアシレート等のセルロース類、ポリメチルメタクリレートならびにその他の(メタ)アクリレート類の共重合体等の(メタ)アクリル樹脂類、ポリスチレン、フマル酸ポリマー、シクロオレフィンポリマー、ポリエチレンやポリプロピレン等のポリオレフィン、ポリエチレンテレフタレートに代表されるポリエステル類、ポリカーボネート類、およびそれらの共重合体などが例示される。
【0031】
ここで、前述のとおり、本発明の長尺位相差フィルムにおいて、長尺支持体はその厚みが10μm〜50μmの範囲であり、かつ、幅手方向弾性率が4.3GPa〜6.0GPaの範囲であり、かつ、幅手方向の線熱膨張率が20×10-6/℃〜40×10-6/℃である。
【0032】
長尺支持体の厚みは、長尺位相差フィルムの薄型化等の観点から、50μm以下が好ましく、25以下がより好ましい。一方、光学異方性層の支持性、ハンドリング中のシワ発生等の観点から、10μm以上が好ましく、15μm以上がより好ましい。
【0033】
長尺支持体の幅手方向弾性率は、長尺支持体の長手方向と直交する方向の弾性率をストログラフにより測定することで求めることができる。光学異方性層の形成時に熱によって長尺支持体にシワ等が発生することを抑制できる観点から、長尺支持体の幅手方向弾性率は、4.3GPa以上が好ましく、4.5GPa以上がより好ましい。一方、長尺支持体の可撓性の観点から、長尺支持体の幅手方向弾性率は、6.0GPa以下が好ましく、5.5GPa以下がより好ましい。
なお、長尺支持体の幅手方向弾性率は、特に記載がない限り、常温(25℃)における弾性率である。
【0034】
また、長尺支持体の140℃における幅手方向弾性率は、1.5GPa〜3.0GPaであることが好ましく、1.7GPa〜3.0GPaであることがより好ましい。140℃における幅手方向弾性率を上記範囲とすることで、光学異方性層の形成時に熱によって長尺支持体にシワ等が発生することをより好適に抑制できる。
【0035】
長尺支持体の幅手方向の線熱膨張率は、光学異方性層の形成時に熱によって長尺支持体にシワ等が発生することを抑制できる観点から、40×10-6/℃以下が好ましく、38×10-6/℃以下がより好ましい。一方、長尺支持体のの可撓性の観点から、長尺支持体の幅手方向の線熱膨張率は、20×10-6/℃以上が好ましく、30×10-6/℃以上がより好ましい。
【0036】
長尺支持体の幅手方向の線熱膨張率は、TMA(Thermal Mechanical Analysis)により測定することができる。
【0037】
支持体の光学特性は必要に応じ種々設定することができ、好ましい一態様として、光学的に等方性であることができる。より具体的には、Re(550)は0nm〜10nmであることができ、0nm〜5nmの範囲がより好ましい。また、Rth(550)は−20nm〜40nmであることができ、−10nm〜20nmであることがより好ましい。また、好ましい別の一態様として、長尺支持体のRe(550)が100nm〜350nmであり、Nz値が0.1〜0.9であり、遅相軸が長尺支持体の長手方向に平行または直交であることができる。
【0038】
上述の条件を満たすフィルムとして、例えばセルロースアシレートフィルム、シクロオレフィンフィルム、(メタ)アクリル樹脂フィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリカーボネートフィルム等が挙げられる。
【0039】
(セルロースアシレートフィルム)
本発明に用いる長尺支持体として、セルロースアシレートフィルムを用いることができる。透明性と強度を兼ね備え、後述する各層との密着性あるいは易剥離性を容易に制御できる点で好ましく用いられる。セルロースアシレートフィルムとしては、セルロースアシレート樹脂を含み、さらに必要に応じて添加剤を含むフィルムを用いることができる。セルロースアシレートフィルムは、溶液製膜により作製することができ、また、溶融製膜を用いて作製してもよい。
【0040】
セルロースアシレート樹脂としては、トリアセチルセルロース、ジアセチルセルロース、および、アセチル基の一部を高級アシル基や芳香族アシル基、アルコキシ基、置換アルコキシ基で置換したセルロースを用いることができる。セルロースアシレートにおいて、セルロースの水酸基への置換度については特に限定されないが、適度な透湿性や吸湿性を付与するため、セルロースの水酸基へのアシル置換度が2.00〜3.00であることが好ましい。更には置換度が2.30〜2.98であることが好ましく、2.70〜2.96であることがより好ましく、2.80〜2.94であることが更に好ましい。
【0041】
添加剤としては、例えば特開2005−154764号公報、特開2013−228720号公報、特開2014−81619号公報、特開2014−178519号公報、特開2015−227956号公報、特開2016−6439号公報、特開2016−164668号公報、特開2017-106975号公報に記載の各種添加剤を用いることができる。
【0042】
添加剤の好ましい一例として、下記一般式で表される繰り返し単位を有するポリエステル添加剤が挙げられる。
【0043】
一般式(1)
【0044】
【化1】
【0045】
(一般式(1)中、X、Yは2価の連結基を表す。)
【0046】
Xとしては、置換基を有していてもよい炭素数2〜20のアルキレン基、ポリオキシアルキレン基、アルケニレン基、フェニレン基、ナフチレン基、複素環芳香族基であることができる。なお、上記アルキレン基、アルケニレン基、および、ポリオキシアルキレン基中のアルキレン基は、脂環構造を有していてもよい。
Yとしては、置換基を有していてもよい炭素数2〜20のアルキレン基、ポリオキシアルキレン基、アルケニレン基、フェニレン基、ナフチレン基、複素環芳香族基であることができる。なお、上記アルキレン基、アルケニレン基、および、ポリオキシアルキレン基中のアルキレン基は、脂環構造を有していてもよい。
これらの2価の連結基中に酸素原子、窒素原子などの炭素以外の分子を含んでもよい。上述した置換基としては、アルキル基、アルコキシ基、水酸基、アルコキシ置換アルキル基、カルボキシル基などが挙げられる。
【0047】
上述した一般式(1)で表される繰り返し単位として、位相差特性とフィルムの弾性率に優れる点で、Xは炭素数2〜10の非環状の2価の連結基を表し、Yは3〜6員環の脂環構造を含む炭素数3〜12の連結基を表すものであることが好ましい。脂環構造は、3〜6員環であり、5〜6員環が好ましく、具体的には、シクロプロピレン基、1,2−シクロブチレン基、1,3−シクロブチレン基、1,2−シクロペンチレン基、1,3−シクロペンチレン基、1,2−シクロへキシレン基、1,3−シクロへキシレン基、1,4−シクロへキシレン基などが挙げられる。
【0048】
上記記一般式(1)で表される繰り返し単位を有するポリエステル添加剤の水酸基末端の水素原子は、モノカルボン酸由来のアシル基(以下、モノカルボン酸残基とも言う)で置換されていてもよい(以下、水酸基末端の水素原子が封止されているとも言う)。このとき、上記ポリエステルの両末端はモノカルボン酸残基となっている。末端を疎水性官能基で保護することにより、添加剤の凝集力が抑えられてフィルムへの相溶性や化合物の取扱性が良好となり、また温湿度安定性、偏光板の偏光子耐久性に優れたフィルムを得ることができる。
【0049】
ここで、残基とは、上記ポリエステルの部分構造で、上記ポリエステルを形成している単量体の特徴を有する部分構造を表す。例えばモノカルボン酸R−COOHより形成されるモノカルボン酸残基はR−CO−である。Rとしては、置換基を有していてもよい炭素数1〜10のアルキル基、脂環アルキル基、芳香族基が挙げられる。好ましくは脂肪族モノカルボン酸残基であり、モノカルボン酸残基が炭素数2〜10の脂肪族モノカルボン酸残基であることがより好ましく、炭素数2〜3の脂肪族モノカルボン酸残基であることがさらに好ましく、炭素数2の脂肪族モノカルボン酸残基であることが特に好ましい。
【0050】
上記ポリエステルの水酸基価が10mgKOH/g以下であることが偏光子耐久性を改善する観点から好ましく、5mgKOH/g以下であることがより好ましく、0mgKOH/gであることが特に好ましい。また、上記ポリエステルの数平均分子量(Mw)は500〜3000であることができ、700〜2000がより好ましい。この範囲であると相溶性にすぐれ、かつ、フィルム製造時や使用時の添加剤の揮散が少なく安定したフィルムを得ることができる。
【0051】
また、添加剤の好ましい別の一例として、糖骨格構造中の置換可能な基(例えば、水酸基、カルボキシル基)の少なくとも1つと、少なくとも1種の置換基とがエステル結合されている化合物(糖エステル化合物)を用いることができる。より具体的には、ピラノース構造又はフラノース構造の少なくとも1種を1〜12個有する化合物(M)、もしくは、フラノース構造もしくはピラノース構造の少なくとも1種を2個結合した化合物(D)の水酸基(以下、単にOH基という)の全てもしくは一部をアルキルエステル化した糖エステル化合物が好ましく用いられる。
【0052】
化合物(M)の例としては、グルコース、ガラクトース、マンノース、フルクトース、キシロース、あるいはアラビノースが挙げられ、好ましくはグルコース、フルクトースであり、より好ましくはグルコースである。化合物(D)の例としては、ラクトース、スクロース、ニストース、1F−フラクトシルニストース、スタキオース、マルチトール、ラクチトール、ラクチュロース、セロビオース、マルトース、セロトリオース、マルトトリオース、ラフィノース、および、ケストースが挙げられる。このほか、ゲンチオビオース、ゲンチオトリオース、ゲンチオテトラオース、キシロトリオース、ガラクトシルスクロースなども挙げられる。中でも、グルコース、スクロース、ラクトースが好ましい。
【0053】
化合物(M)及び化合物(D)中のOH基の全てもしくは一部をアルキルエステル化するために脂肪族モノカルボン酸、脂環構造を有するモノカルボン酸、芳香族モノカルボン酸を用いることが好ましい。こうしたモノカルボン酸として、酢酸、プロピオン酸、酪酸、イソ酪酸、安息香酸、シクロヘキサンカルボン酸などが挙げられる。これらモノカルボン酸を2種類以上併用してもよい。
【0054】
その他の添加剤として、可塑剤、紫外線吸収剤、架橋剤、マット剤(無機微粒子)、酸化防止剤、ラジカルスカベンジャー等を加えてもよい。後述するように本発明の位相差フィルムの支持体に偏光板保護フィルムを兼ねさせて偏光板を構成する場合においては、偏光子の耐久性を向上させる作用を付与する観点で、さらに下記一般式で表される化合物を含むことが好ましい。
【0055】
一般式(2)
【0056】
【化2】
【0057】
(一般式(2)中、R11、R13及びR15は、各々独立に、水素原子、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数3〜20のシクロアルキル基、炭素数2〜20のアルケニル基または炭素数6〜20の芳香族基を表す。)
こうした化合物は、例えば国際公開公報WO2014/112575号公報に記載のものを使用することができる。
【0058】
本発明で用いられるセルロースアシレートフィルムは、発明協会公開技報(公技番号2001−1745、発明協会)に記載の方法を用いて作製できる。
これらのセルロースアシレートフィルムは、必要に応じ一軸、または二軸に延伸処理して得ることができ、好ましくは幅手方向に延伸したものを用いることができる。また、斜め方向に延伸したものであることもできる。一方向への延伸倍率としては1.02〜1.50倍であることができ、1.05倍〜1.30倍であることが好ましい。延伸処理を行うことにより、本発明の趣旨に適した物性制御を行うことができる。
【0059】
セルロースアシレートフィルムにおいては、ガラス転移温度が140〜200℃であることができ、160〜190℃であることがより好ましく、170〜185℃であることが特に好ましい。この範囲であると、本発明で課題とする熱たわみへの耐性がより優れたものとなり、また、延伸処理による物性制御が容易である。ガラス転移温度は、動的粘弾性測定装置により、そのtanδのピーク値として求めることができる。
【0060】
<配向層>
本発明の長尺位相差フィルムには、光学異方性層を形成する重合性液晶組成物の配向方向を規定する機能を有する配向膜(配向層)が含まれていてもよい。これにより、重合性液晶組成物を均一かつ効率よく望ましい配向状態へ導くことができる。
【0061】
配向膜の一例としては、ポリマー等の有機化合物を含む層のラビング処理膜や無機化合物の斜方蒸着膜、マイクログルーブを有する膜、あるいはω−トリコサン酸やジオクタデシルメチルアンモニウムクロライド、ステアリル酸メチルの如き有機化合物のラングミュア・ブロジェット法によるLB(Langmuir-Blodgett)膜を累積させた膜などが挙げられる。さらに光の照射で配向機能が生じる配向膜なども挙げられる。
配向膜として、ポリマーなどの有機化合物を含む層(ポリマー層)の表面をラビング処理して形成されたものを好ましく用いることができる。ラビング処理は、ポリマー層の表面を紙や布で一定方向(好ましくは支持体の長手方向)に数回こすることにより実施される。配向膜の形成に使用するポリマーとしては、ポリイミド、ポリビニルアルコール、特許第3907735号公報の段落番号[0071]〜[0095]に記載の変性ポリビニルアルコール、特開平9−152509号公報に記載された重合性基を有するポリマー等を用いることが好ましい。
【0062】
また、配向膜として、光配向性の素材に偏光または非偏光を照射して配向層とした、いわゆる光配向膜(光配向層)を用いることも好ましい態様である。光配向膜には、垂直方向または斜め方向から偏光照射する工程、または、斜め方向から非偏光照射する工程により配向規制力を付与することが好ましい。光配向膜を利用することで、後述する重合性液晶化合物を優れた対称性で配向させることが可能である。
【0063】
光配向膜に用いられる光配向材料としては、例えば、特開2006−285197号公報、特開2007−76839号公報、特開2007−138138号公報、特開2007−94071号公報、特開2007−121721号公報、特開2007−140465号公報、特開2007−156439号公報、特開2007−133184号公報、特開2009−109831号公報、特許第3883848号、特許第4151746号に記載のアゾ化合物、特開2002−229039号公報に記載の芳香族エステル化合物、特開2002−265541号公報、特開2002−317013号公報に記載の光配向性単位を有するマレイミドおよび/またはアルケニル置換ナジイミド化合物、特許第4205195号、特許第4205198号に記載の光架橋性シラン誘導体、特表2003−520878号公報、特表2004−529220号公報、特許第4162850号に記載の光架橋性ポリイミド、ポリアミド、またはエステル、特開平9−118717号公報、特表平10−506420号公報、特表2003−505561号公報、国際公開第2010/150748号、特開2013−177561号公報、特開2014−12823号公報に記載の光二量化可能な化合物、特にシンナメート化合物、カルコン化合物、クマリン化合物が挙げられる。特に好ましい例としては、アゾ化合物、光架橋性ポリイミド、ポリアミド、エステル、シンナメート化合物、カルコン化合物が挙げられる。
【0064】
配向膜の厚さは、配向機能を発揮することができれば特に限定されないが、0.01〜5μmであることが好ましく、0.05〜2μmであることがさらに好ましい。この範囲であると優れた配向規制力が発揮でき異物欠陥を抑制する効果が高い。
【0065】
支持体および配向膜は、それぞれの機能を果たす層として別々に設けられていてもよいし、支持体が配向膜を兼ねる、すなわち、支持体表面が配向規制力を有している様態をとってもよい。また、支持体と配向膜とが別々に設けられている場合は、支持体と配向膜とが接して設けられてもよいし、支持体と配向膜との間に機能層を介在させてもよい。支持体表面に配向膜を設けることなく直接に配向規制力を付与する手段として、支持体表面に上述したラビングや偏光照射等の処理を施す、支持体を延伸して支持体を構成する高分子を一定方向に配向させるといった手法をとることができる。支持体と配向膜との間に介在させうる上述の機能層として、バリア層、衝撃緩和層、易剥離層、易接着層等が挙げられる。
【0066】
<光学異方性層>
本発明の長尺位相差フィルムは、長尺支持体上に、少なくとも重合性液晶組成物を用いて形成された長尺状の光学異方性層を含む。
上記光学異方性層は、波長450nmで測定した面内レターデーション値であるRe(450)と、波長550nmで測定した面内レターデーション値であるRe(550)と、波長650nmで測定した面内レターデーションの値であるRe(650)とが、Re(450)<Re(550)<Re(650)の関係にある。すなわち、この関係は、上述した逆波長分散性を表す関係といえる。このような特性を有する光学異方性層は、各波長で均一な偏光変換特性を与えるために、後述するλ/4板や、種々の光学機能層、光学補償層として好適に用いることができる。面内レターデーションRe(550)は、100nm〜350nmであることができ、100nm〜250nmがより好ましい。
各波長における面内レターデーション値の測定方法は、上述した通りである。
【0067】
上記光学異方性層の厚みは、目的とする位相差に対して用いる重合性液晶組成物が有する屈折率異方性とを勘案して適宜設定することができるが、一例として0.5μm〜5μmであることが好ましく、0.7μm〜4μmであることがより好ましく、1μm〜3μmであることがさらに好ましい。この範囲であると、異物や配向異常等の故障が抑制されて面内均一性が高く、層表面・層内部ともに堅牢で耐久性に優れた光学異方性層を得られる。
【0068】
光学異方性層となる重合性液晶組成物は、逆波長分散性の重合性液晶化合物を含有する。さらに必要に応じ、その他の重合性化合物、レベリング剤、溶媒、その他の成分を含むことができる。
【0069】
(逆波長分散性の重合性液晶化合物)
本明細書において「逆波長分散性」の重合性液晶化合物とは、これを用いて作製された位相差層の特定波長(可視光範囲)における位相差、典型的には面内のレターデーション(Re)値を測定した際に、測定波長が大きくなるにつれてRe値が同等または高くなるものをいい、後述するようにRe(450)<Re(550)<Re(650)の関係を満たすものをいう。Re(λ)に代えてRth(λ)で同様の関係を満たす場合も含まれる。
【0070】
また、本明細書にける重合性液晶化合物とは、重合性基を有する液晶化合物のことを指す。特定重合性液晶化合物の重合性基の種類は特に制限されず、例えば、アクリロイル基、メタクリロイル基、ビニル基、スチリル基、アリル基などが挙げられる。
【0071】
特定液晶化合物の種類は特に制限されないが、その形状から、棒状タイプ(棒状液晶化合物)と円盤状タイプ(円盤状液晶化合物。ディスコティック液晶化合物)に分類できる。さらにそれぞれ低分子タイプと高分子タイプがある。高分子とは一般に重合度が100以上のものを指す(高分子物理・相転移ダイナミクス,土井 正男 著,2頁,岩波書店,1992)。本発明では、いずれの液晶化合物を用いることもできる。2種以上の棒状液晶化合物、2種以上の円盤状液晶化合物、または、棒状液晶化合物と円盤状液晶化合物との混合物を用いてもよい。
これらの中でも、棒状液晶化合物を用いることが好ましい。棒状液晶化合物をホモジニアス(水平)配向させることで、形成される位相差フィルムを後述するようなポジティブAプレートとして機能させることが容易になるという利点がある。
【0072】
逆波長分散性の液晶化合物は、上記のように逆波長分散性のフィルムを形成できるものであれば特に限定されず、例えば、特開2008−297210号公報に記載の一般式(I)で表される化合物(特に、段落番号[0034]〜[0039]に記載の化合物)、特開2010−84032号公報に記載の一般式(1)で表される化合物(特に、段落番号[0067]〜[0073]に記載の化合物)、後述する一般式(II)で表される液晶化合物等を用いることができる。
【0073】
上述した特定液晶化合物は、逆波長分散性により優れるという観点から、下記一般式(II)で表される液晶化合物を含むことが好ましい。
【0074】
−G−D−Ar−D−G−L ・・・一般式(II)
【0075】
上記一般式(II)中、DおよびDはそれぞれ独立に、単結合、−CO−O−、−C(=S)O−、−CR−、−CR−CR−、−O−CR−、−CR−O−CR−、−CO−O−CR−、−O−CO−CR−、−CR−O−CO−CR−、−CR−CO−O−CR−、−NR−CR−または−CO−NR−を表す。
、R、RおよびRはそれぞれ独立に、水素原子、フッ素原子または炭素数1〜4のアルキル基を表す。R、R、RおよびRのそれぞれが複数存在する場合には、複数のR、複数のR、複数のRおよび複数のRはそれぞれ、互いに同一でも異なっていてもよい。
およびGはそれぞれ独立に、炭素数5〜8の2価の脂環式炭化水素基を表し、上記脂環式炭化水素基に含まれるメチレン基は、−O−、−S−、−NH−で置換されていてもよい。
およびLはそれぞれ独立に、1価の有機基を表し、LおよびLからなる群から選ばれる少なくとも1種が、重合性基を有する1価の基を表す。
Arは、下記一般式(II−1)、(II−2)、(II−3)または(II−4)で表される2価の芳香環基を表す。
【0076】
【化3】
【0077】
上記一般式(II−1)〜(II−4)中、Qは、−S−、−O−、または−NR11−を表し、
11は、水素原子または炭素数1〜6のアルキル基を表し、
は、炭素数6〜12の芳香族炭化水素基、または、炭素数3〜12の芳香族複素環基を表し(なお、上記芳香族炭化水素基および上記芳香族複素環基は置換基を有していてもよい)、
、ZおよびZはそれぞれ独立に、水素原子または炭素数1〜20の脂肪族炭化水素基、炭素数3〜20の脂環式炭化水素基、1価の炭素数6〜20の芳香族炭化水素基、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、−NR1213または−SR12を表し、
およびZは、互いに結合して芳香環または芳香族複素環を形成してもよく、R12およびR13はそれぞれ独立に、水素原子または炭素数1〜6のアルキル基を表し、
およびAはそれぞれ独立に、−O−、−NR21−、−S−および−CO−からなる群から選ばれる基であって、R21は、水素原子または置換基を表し、Xは、水素原子または置換基が結合していてもよい第14族〜第16族の非金属原子(好ましくは、=O、=S、=NR’、=C(R’)R’が挙げられる(ここでR’は置換基を表す))を表し、
Axは、芳香族炭化水素環および芳香族複素環からなる群から選ばれる少なくとも一つの芳香環を有する、炭素数2〜30の有機基を表し、好ましくは、芳香族炭化水素環基;芳香族複素環基;芳香族炭化水素環および芳香族複素環からなる群から選ばれる少なくとも一つの芳香環を有する、炭素数3〜20のアルキル基;芳香族炭化水素環および芳香族複素環からなる群から選ばれる少なくとも一つの芳香環を有する、炭素数3〜20のアルケニル基;芳香族炭化水素環および芳香族複素環からなる群から選ばれる少なくとも一つの芳香環を有する、炭素数3〜20のアルケニル基が挙げられ、
Ayは、水素原子、置換基を有していてもよい炭素数1〜6のアルキル基、または、芳香族炭化水素環および芳香族複素環からなる群から選ばれる少なくとも一つの芳香環を有する炭素数2〜30の有機基を表し、この有機基の好適態様は、上記Axの有機基の好適態様と同じであり、
AxおよびAyにおける芳香環はそれぞれ、置換基を有していてもよく、AxとAyは結合して、環を形成していてもよく、
は、水素原子、または、置換基を有していてもよい炭素数1〜6のアルキル基を表す。
なお、置換基としては、ハロゲン原子、アルキル基、ハロゲン化アルキル基、アルケニル基、アリール基、シアノ基、アミノ基、ニトロ基、ニトロソ基、カルボキシ基、炭素数1〜6のアルキルスルフィニル基、炭素数1〜6のアルキルスルホニル基、炭素数1〜6のフルオロアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基、炭素数1〜6のアルキルスルファニル基、炭素数1〜6のN−アルキルアミノ基、炭素数2〜12のN,N−ジアルキルアミノ基、炭素数1〜6のN−アルキルスルファモイル基、炭素数2〜12のN,N−ジアルキルスルファモイル基、またはこれらを組み合わせた基等が挙げられる。
【0078】
一般式(II)で表される液晶化合物の各置換基の定義および好ましい範囲については、特開2012−21068号公報に記載の化合物(A)に関するD、D、G、G、L、L、R、R、R、R、X、Y、Q、Qに関する記載をそれぞれD、D、G、G、L、L、R、R、R、R、Q、Y、Z、およびZについて参照でき、特開2008−107767号公報に記載の一般式(I)で表される化合物についてのA、A、およびXに関する記載をそれぞれA、A、およびXについて参照でき、国際公開第2013/018526号に記載の一般式(I)で表される化合物についてのAx、Ay、Qに関する記載をそれぞれAx、Ay、Qについて参照できる。Zについては特開2012−21068号公報に記載の化合物(A)に関するQの記載を参照できる。
【0079】
特に、L、Lで示される有機基としては、それぞれ、特に、−D−G−Sp−Pで表される基であることが好ましい。
は、Dと同義である。
は、単結合、炭素数6〜12の2価の芳香環基もしくは複素環基、または炭素数5〜8の2価の脂環式炭化水素基を表し、上記脂環式炭化水素基に含まれるメチレン基は、−O−、−S−、−NR−で置換されていてもよく、ここでRは水素原子または炭素数1〜6のアルキル基を表す。
Spは、単結合、−(CH−、−(CH−O−、−(CH−O−)−、−(CHCH−O−)、−O−(CH−、−O−(CH−O−、−O−(CH−O−)−、−O−(CHCH−O−)、−C(=O)−O−(CH−、−C(=O)−O−(CH−O−、−C(=O)−O−(CH−O−)−、−C(=O)−O−(CHCH−O−)、−C(=O)−N(R)−(CH−、−C(=O)−N(R)−(CH−O−、−C(=O)−N(R)−(CH−O−)−、−C(=O)−N(R)−(CHCH−O−)、−(CH−O−(C=O)−(CH−C(=O)−O−(CH−で表されるスペーサー基を表す。ここで、nは2〜12の整数を表し、mは2〜6の整数を表し、Rは水素原子または炭素数1〜6のアルキル基を表す。また、上記各基における−CH−の水素原子は、メチル基で置換されていてもよい。
は重合性基を示す。
【0080】
重合性基は、特に限定されないが、ラジカル重合またはカチオン重合可能な重合性基が好ましい。
ラジカル重合性基としては、一般に知られているラジカル重合性基を用いることができ、好適なものとして、アクリロイル基またはメタクリロイル基を挙げることができる。この場合、重合速度はアクリロイル基が一般的に速いことが知られており、生産性向上の観点からアクリロイル基が好ましいが、メタクリロイル基も高複屈折性液晶の重合性基として同様に使用することができる。
カチオン重合性基としては、一般に知られているカチオン重合性を用いることができ、具体的には、脂環式エーテル基、環状アセタール基、環状ラクトン基、環状チオエーテル基、スピロオルソエステル基、ビニルオキシ基などを挙げることができる。中でも、脂環式エーテル基、ビニルオキシ基が好適であり、エポキシ基、オキセタニル基、ビニルオキシ基が特に好ましい。
特に好ましい重合性基の例としては下記が挙げられる。
【0081】
【化4】
【0082】
なお、本明細書において、「アルキル基」は、直鎖状、分枝鎖状、または環状のいずれでもよく、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、1,1−ジメチルプロピル基、n−ヘキシル基、イソヘキシル基、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等が挙げられる。
【0083】
一般式(II)で表される液晶化合物の好ましい例を以下に示すが、これらの液晶化合物に限定されるものではない。
【0084】
【化5】
【0085】
【化6】
【0086】
【化7】
【0087】
なお、上記式中、「*」は結合位置を表す。
【0088】
【化8】
【0089】
【化9】
【0090】
【化10】
【0091】
【化11】
【0092】
【化12】
【0093】
一般式(II)で表される液晶化合物を用いる場合には、特定液晶化合物中の一般式(II)で表される液晶化合物の含有量は、60〜100質量%であることが好ましく、70〜100質量%であることがより好ましく、70〜90質量%であることがさらに好ましい。70質量%以上であることで、逆波長分散性により優れる。これらのうち複数を併用してもよい。
【0094】
(重合性棒状化合物)
重合性組成物には、上述の逆波長分散性の重合性液晶化合物以外に、重合性棒状化合物を加えることができる。この重合性棒状化合物は液晶性の有無を問わない。重合性棒状化合物の添加により、重合性組成物の相転移温度や配向性、重合による配向固定時の配向安定性を改善することができる。
特定液晶化合物と混合して重合性組成物として扱うため、特定液晶化合物と相溶性が高いものであれば好ましく用いることができる。特に、特開2015−163596に記載の式(I)の構造のものを好ましく用いることができる。
添加量は、上述の逆波長分散性の液晶化合物に対して0〜30%が好ましく、0〜20%がさらに好ましい。
【0095】
(重合開始剤)
光学異方性層を形成する重合性液晶組成物は、重合開始剤を含むことができる。
使用する重合開始剤は、紫外線照射によって重合反応を開始可能な光重合開始剤であるのが好ましい。
光重合開始剤としては、例えば、α−カルボニル化合物(米国特許第2367661号、同2367670号の各明細書記載)、アシロインエーテル(米国特許第2448828号明細書記載)、α−炭化水素置換芳香族アシロイン化合物(米国特許第2722512号明細書記載)、多核キノン化合物(米国特許第3046127号、同2951758号の各明細書記載)、トリアリールイミダゾールダイマーとp−アミノフェニルケトンとの組み合わせ(米国特許第3549367号明細書記載)、アクリジンおよびフェナジン化合物(特開昭60−105667号公報、米国特許第4239850号明細書記載)およびオキサジアゾール化合物(米国特許第4212970号明細書記載)、アシルフォスフィンオキシド化合物(特公昭63−40799号公報、特公平5−29234号公報、特開平10−95788号公報、特開平10−29997号公報記載)等が挙げられる。
【0096】
本発明においては、光学異方性層の耐久性がより良好となる理由から、重合開始剤がオキシム型の重合開始剤(米国特許第5496482号明細書記載)であるのが好ましく、具体的には、下記式(III)で表される重合開始剤であるのがより好ましい。
【0097】
【化13】
【0098】
ここで、上記式(III)中、Xは、水素原子またはハロゲン原子を表し、Yは、1価の有機基を表す。
また、Ar3は、2価の芳香族基を表し、L6は、炭素数1〜12の2価の有機基を表し、R10は、炭素数1〜12のアルキル基を表す。
【0099】
上記式(III)中、Xが示すハロゲン原子としては、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられ、なかでも、塩素原子であるのが好ましい。
また、上記式(III)中、Ar3が示す2価の芳香族基としては、上記式(II)中のAr2として例示した芳香族炭化水素環および芳香族複素環からなる群から選ばれる少なくとも1つの芳香環を有する2価の基などが挙げられる。
また、上記式(III)中、L6が示す炭素数1〜12の2価の有機基としては、例えば、炭素数1〜12の直鎖状もしくは分岐状のアルキレン基が挙げられ、具体的には、メチレン基、エチレン基、プロピレン基等が好適に挙げられる。
また、上記式(III)中、R10が示す炭素数1〜12のアルキル基としては、具体的には、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基等が好適に挙げられる。
また、上記式(III)中、Yが示す1価の有機基としては、例えば、ベンゾフェノン骨格((C652CO)を含む官能基が挙げられる。具体的には、下記式(2a)および下記式(2b)で表される基のように、末端のベンゼン環が無置換または1置換であるベンゾフェノン骨格を含む官能基が好ましい。
【0100】
【化14】
【0101】
ここで、上記式(3a)および上記式(3b)中、*は結合位置、すなわち、上記式(III)におけるカルボニル基の炭素原子との結合位置を表す。
【0102】
上記式(III)で表されるオキシム型の重合開始剤としては、例えば、下記式S−1で表される化合物や、下記式S−2で表される化合物などが挙げられる。
【0103】
【化15】
【0104】
本発明においては、上記重合開始剤の含有量は特に限定されないが、重合開始剤の含有量は、本発明の重合性液晶組成物に含まれる特定液晶化合物100質量部に対して、0.5〜10質量部であることが好ましく、1〜5質量部であることがより好ましい。
【0105】
(配向制御剤)
重合性液晶組成物には、必要に応じて、配向制御剤を含有することができる。配向制御剤としては、例えば、低分子の配向制御剤や高分子の配向制御剤を用いることができる。低分子の配向制御剤としては、例えば、特開2002−20363号公報の段落0009〜0083、特開2006−106662号公報の段落0111〜0120や、特開2012−211306公報の段落0021−0029の記載を参酌することができ、この内容は本願明細書に組み込まれる。また、高分子の配向制御剤としては、例えば、特開2004−198511号公報の段落0021〜0057の記載や、特開2006−106662号公報の段落0121〜0167を参酌することができ、この内容は本願明細書に組み込まれる。
配向制御剤の使用量は、重合性液晶組成物中における液晶組成物の固形分の0.01〜10質量%であることが好ましく、0.05〜5質量%であることがさらに好ましい。配向制御剤を用いることにより、例えば、液晶化合物を層の表面と並行に配向したホモジニアス配向状態とすることができる。
【0106】
(その他重合性化合物)
重合性液晶組成物は、上記の特定液晶化合物以外の重合性化合物を含有してもよい。
ここで、重合性化合物が有する重合性基は特に限定されず、例えば、(メタ)アクリロイル基、ビニル基、スチリル基、アリル基等が挙げられる。なかでも、(メタ)アクリロイル基を有しているのが好ましい。
【0107】
本発明においては、位相差フィルムの耐久性が向上する理由などから、重合性基を2つ以上有する重合性化合物であるのが好ましく、重合性基を2〜6つ有する重合性化合物であるのがより好ましい。
【0108】
このような重合性化合物としては、例えば、特開2014−077068号公報の[0030]〜[0033]段落に記載された式(M1)、(M2)、(M3)で表される化合物が挙げられ、より具体的には、同公報の[0046]〜[0055]段落に記載された具体例が挙げられる。
重合性化合物は、1種単独で用いてもよいし、2種以上併用してもよい。
【0109】
本発明においては、上記重合性化合物を含有する場合の含有量は特に限定されないが、上述した特定液晶化合物および上記重合性化合物の合計100質量部において、1〜40質量部であるのが好ましく、5〜30質量部であるのがより好ましい。
【0110】
(溶媒)
重合性液晶組成物は、位相差フィルムを形成する作業性等の観点から、有機溶媒を含有するのが好ましい。
有機溶媒としては、具体的には、例えば、ケトン類(例えば、アセトン、2−ブタノン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、シクロペンタノンなど)、エーテル類(例えば、ジオキサン、テトラヒドロフランなど)、脂肪族炭化水素類(例えば、ヘキサンなど)、脂環式炭化水素類(例えば、シクロヘキサンなど)、芳香族炭化水素類(例えば、トルエン、キシレン、トリメチルベンゼンなど)、ハロゲン化炭素類(例えば、ジクロロメタン、ジクロロエタン、ジクロロベンゼン、クロロトルエンなど)、エステル類(例えば、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチルなど)、水、アルコール類(例えば、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、シクロヘキサノールなど)、セロソルブ類(例えば、メチルセロソルブ、エチルセロソルブなど)、セロソルブアセテート類、スルホキシド類(例えば、ジメチルスルホキシドなど)、アミド類(例えば、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミドなど)等が挙げられ、これらを1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0111】
(その他の成分)
重合性液晶組成物は、上記以外の他の成分を含有してもよく、例えば、上記以外の液晶化合物、レベリング剤、界面活性剤、配向助剤、可塑剤、架橋剤、湿熱耐久性改良剤、増感剤、紫外線吸収剤、色素、ラジカルクエンチャーなどが挙げられる。
【0112】
(光学異方性層の光学特性、配向状態)
本発明の長尺位相差フィルムにおける光学異方性層は、目的に応じ種々の光学特性を付与することができる。これらの光学特性は、上述した重合性液晶組成物の配向状態や厚みを制御することにより得ることができる。本発明の一態様として、ポジティブAプレートであるλ/4板であることができる。また、本発明の別の一態様として、ポジティブCプレートであることができる。
【0113】
(ポジティブAプレート)
本発明の位相差フィルムに含まれる光学異方性層は、ポジティブAプレートであることができる。上述した重合性組成物において、棒状の重合性液晶化合物を用いてこれを水平配向(ホモジニアス配向)させることにより、ポジティブAプレートを得ることができる。
【0114】
なお、本明細書において、ポジティブAプレートは以下のように定義する。ポジティブAプレート(正のAプレート)は、フィルム面内の遅相軸方向(面内での屈折率が最大となる方向)の屈折率をnx、面内の遅相軸と面内で直交する方向の屈折率をny、厚さ方向の屈折率をnzとしたとき、式(A1)の関係を満たすものである。なお、ポジティブAプレートはRthが正の値を示す。
式(A1) nx>ny≒nz
なお、上記「≒」とは、両者が完全に同一である場合だけでなく、両者が実質的に同一である場合も包含する。「実質的に同一」とは、例えば、(ny−nz)×d(ただし、dはフィルムの厚みである)が、−10nm〜10nm、好ましくは−5nm〜5nmの場合も「ny≒nz」に含まれる。
【0115】
ポジティブAプレートの製造方法の詳細は、例えば、特開2008−225281号公報や特開2008−026730号公報などの記載を参酌できる。
【0116】
(λ/4板)
本発明の位相差フィルムに含まれる光学異方性層は、λ/4板の特性を持つことが好ましい。λ/4板とは、特定の波長λnmにおける面内レターデーションRe(λ)がRe(λ)=λ/4を満たすかそれに近い位相差板(位相差フィルム)のことをいう。
この式は、可視光域のいずれかの波長(例えば、λ=550nm)において達成されていればよいが、波長550nmにおける面内レターデーションRe(550)が、100nm≦Re(550)≦160nmの関係を満たすことが好ましく、110nm≦Re(550)≦150nmを満たすことがより好ましい。
【0117】
上述した逆波長分散性の重合性液晶組成物を用いれば、波長450nmおよび波長650nmでもRe(λ)=λ/4に近い位相差を有することになり、順分散性の液晶組成物を用いるより広い波長範囲でλ/4板として作用する光学異方性層を得ることができる。こうした広帯域λ/4板は、例えば光学異方性層の遅相軸を直線偏光板の透過軸と30°〜50°、好ましくは45°に配置して積層して得られる円偏光板(直線偏光板側からの入射光が、λ/4板側から円偏光として出射する)において好適な広帯域円偏光板を形成することに寄与し、後述するように、例えば画像表示装置における内部反射防止用フィルムとして好適に利用することができる。
このように長尺位相差フィルムを広帯域円偏光板として用いる場合には、光学異方性層の面内遅相軸が長尺支持体の長手方向に対して30°〜50°の角度を成していることが好ましい。
【0118】
(ポジティブCプレート)
本発明の位相差フィルムに含まれる光学異方性層は、ポジティブCプレートとすることができる。上述した重合性組成物において、棒状の重合性液晶化合物を用いてこれを垂直配向(ホメオトロピック配向)させることにより、ポジティブCプレートを得ることができる。
【0119】
なお、本明細書において、ポジティブCプレートは以下のように定義する。ポジティブCプレート(正のCプレート)は、フィルム面内の一方向の屈折率をnx、nxの方向と直交する方向に屈折率をny、厚さ方向の屈折率をnzとしたとき、式(C1)の関係を満たすものである。なお、ポジティブCプレートはRthが負の値を示す。
式(C1) nx≒ny<nz
なお、上記「≒」とは、両者が完全に同一である場合だけでなく、両者が実質的に同一である場合も包含する。「実質的に同一」とは、例えば、(nx−ny)×d(ただし、dはフィルムの厚みである)が、−10nm〜10nm、好ましくは−5nm〜5nmの場合も「nx≒ny」に含まれる。
【0120】
(光学異方性の配向状態)
本発明の長尺位相差フィルムが有する光学異方性層は、溶液(a)を用いて測定される重合性液晶化合物の320nm〜400nmの範囲の極大吸収波長における光学異方性の配向秩序度S0が、−0.50<S0<−0.15であることができる。ここで、溶液(a)とは、使用する逆波長分散性の重合性液晶化合物を10−4mol/lの濃度になるようにクロロホルムに溶解させた溶液である。
光学異方性層の配向秩序度S(λ)は、式(S1)で表される値である。
S(λ)=(Ap−Av)/(Ap+2Av) ・・・式(S1)
[式(1)中、Apは、光学異方性層に含まれる逆波長分散性の重合性液晶化合物の配向方向(例えば、上記のポジティブAプレートであれば、面内遅相軸方向)に対して平行方向に偏光した光に対する吸光度を表す。Avは、光学フィルムに含まれる重合性液晶化合物の配向方向に対して垂直方向に偏光した光に対する吸光度を示す。]
光学フィルムの配向秩序度S(λ)は、λを逆波長分散性の重合性液晶化合物の320nm〜400nmにある吸収極大ピーク値として、その波長における偏光吸収測定により求めることができる。配向秩序度S0は、上述のように−0.50<S0<−0.15であることができ、好ましくは−0.48<S0<−0.20である。この範囲であると液晶化合物の結晶化を抑制しつつ、配向性、屈折率異方性、逆波長分散性に優れた光学異方性層を得ることができる。
【0121】
本発明の長尺位相差フィルムが有する光学異方性層の硬化処理直前の状態(「液晶層(未硬化)」とも称する)においては、上記液晶化合物がネマチック相かスメクチック相を呈した状態であることができる。上述の配向秩序度S0を高めてその効果を得るためには、スメクチック相を呈していることが好ましい。これらの状態は、後述するようにサーモトロピック液晶では温度で制御することができ、本発明に用いる重合性液晶性組成物は、スメクチック相を有する重合性液晶組成物であること好ましく、そのネマチック相からスメクチック相への相転移温度は20〜120℃であることができ、60℃以上であることが好ましく、80℃以上であるとより好ましい。この範囲であると、一般的な製膜装置が対応可能な温度域で配向秩序度の制御が可能であり、かつ、後述する加熱硬化条件でも配向性が崩れにくく、光学異方性層の耐久性と含まれる液晶化合物の配向秩序度とを両立させることが可能となる。
【0122】
本発明の光学異方性層がポジティブCプレートである場合は、面内位相差変化ΔReに代えて、下記式の厚さ方向位相差変化ΔRthを用いることができる。
ΔRth =|Rtha(550)−Rthb(550)|÷|Rtha(550)|
[ここで、Rtha(550)は測定波長550nmにおける、加熱前の位相差フィルム切片の厚み方向位相差を表し、Rthb(550)は85℃、500時間の加熱条件で処理した後の位相差フィルム切片の厚み方向位相差値を表す。]
本発明の光学異方層がポジティブCプレートである実施様態においては、ΔRthは0.94〜1.02であることができ、0.96〜1.01であるとより好ましい。
【0123】
こうした位相差フィルムは、高い配向秩序度と重合性液晶組成物の重合反応率とを両立することによって達成でき、具体的には以下に述べる位相差フィルムの製造方法によって実現することができる。
【0124】
[位相差フィルムの製造方法]
本発明の長尺位相差フィルムの形成方法は特に制限されず、公知の方法が挙げられる。
典型的には、長尺支持体上に、上記重合性液晶組成物を連続的に塗布して長尺状の塗膜を形成し、得られた塗膜に対して硬化処理(活性エネルギー線の照射(光照射処理)および/または加熱処理)を施すことにより、硬化させた塗膜(光学異方性層)を含む位相差フィルムを製造できる。なお、必要に応じて、前述した配向層、配向処理等を用いてもよい。
【0125】
ここで、本発明の長尺位相差フィルムの好適な製造方法は、
樹脂フィルムからなる長尺支持体を長手方向に搬送しつつ、
逆波長分散性の重合性液晶化合物を含む重合性液晶組成物を長尺支持体の一方の面に塗布し塗膜を形成する塗布工程と、
塗膜を硬化させて光学異方性層を形成する硬化工程と、を行う長尺位相差フィルムの製造方法であって、
長尺支持体は、厚みが10μm〜50μmであり、かつ、幅手方向弾性率が4.3GPa〜6.0GPaであり、かつ、幅手方向の線熱膨張率が10ppm/℃〜35ppm/℃であり、
硬化工程において、塗膜を80℃以上140℃以下に加熱しつつ硬化を行う長尺位相差フィルムの製造方法である。
【0126】
また、硬化工程は、活性エネルギー線の照射(光照射)によって塗膜を硬化させるものであるのが好ましい。活性エネルギー線は紫外線であるのが好ましい。
また、活性エネルギー線の照射は長尺支持体がバックアップロールに接している位置で行われるのが好ましい。
【0127】
また、本発明の長尺位相差フィルムは、長尺支持体を長手方向に搬送しつつ、搬送経路中で各工程を行う、いわゆる、ロールトゥロール(RtoR)で行うのが好ましい。
【0128】
上記重合性液晶組成物の塗布は、公知の方法(例えば、ワイヤーバーコーティング法、押し出しコーティング法、ダイレクトグラビアコーティング法、リバースグラビアコーティング法、ダイコーティング法)により実施できる。塗布の後、必要に応じ適度に加熱するか減圧することにより組成物に含まれる溶剤を除去することができる。乾燥は、後述する配向処理と同時に行われてもよい。
【0129】
重合性液晶組成物の塗工層に対する配向処理は、加熱することにより行うことができる。配向処理で形成される液晶相は、サーモトロピック性液晶化合物の場合、一般に温度の変化により転移させることができる。
用いる重合性液晶組成物がサーモトロピック性でスメクチック相を発現する場合、ネマチック相を発現する温度領域の方が、スメクチック相を発現する温度領域よりも高いことが一般的である。したがって、ネマチック相が発現する温度領域まで特定液晶化合物を加熱し、次に、特定液晶化合物がスメクチック相を発現する温度領域まで加熱温度を低下させることにより、特定液晶化合物をネマチック相からスメクチック相に転移させることができる。ネマチック層としたい場合、ならびに、重合性液晶性組成物はスメクチック相を有さない場合は、ネマチック相を示す温度あるいはネマチック相から等方層へ転移する温度以上に一旦加熱した後、ネマチック相を示す温度内に保つことで配向処理を行うことができる。
【0130】
本発明で用いる逆波長分散性の重合性液晶化合物が棒状液晶である場合、ネマチック相を発現する温度領域では、特定液晶化合物がモノドメインを形成するまで一定時間加熱する必要がある。加熱時間(加熱熟成時間)は、10秒間〜5分間が好ましく、10秒間〜3分間がさらに好ましく、10秒間〜2分間が最も好ましい。
【0131】
上述のように配向処理された塗膜に対しての硬化処理(活性エネルギー線の照射(光照射処理)および/または加熱処理)は、重合性液晶化合物の配向を固定するための固定化処理ということもできる。
固定化処理は、活性エネルギー線(好ましくは紫外線)の照射により行われることが好ましく、特定液晶化合物の重合により液晶が固定化される。この際、塗膜の温度を高くすることにより、重合反応を促進して耐久性に優れた光学異方性層を形成することができる。加熱条件としては、80℃〜140℃の範囲が好ましく、90℃〜140℃の範囲がより好ましい。この範囲であると、光学異方性層に優れた耐久性を付与しつつ、各素材の熱分解を抑えて高品質な長尺位相差フィルムを製造することができる。
また、活性エネルギー線の照射量は、重合性液晶化合物の種類、重合開始剤の種類、活性エネルギー線の種類等に応じて適宜設定すればよい。例えば、活性エネルギー線として紫外線を照射する場合には、100〜500mJ/cm2が好ましい。
【0132】
しかしながら冒頭に述べたように、配向処理後の高温加熱は形成された液晶の配向状態を崩すおそれがあり、加熱開始から硬化処理までは極めて短時間に処理されなければならないという制約がある。ゆえに、本発明の長尺位相差フィルムの製造では、加熱手段と硬化処理手段は連続またはほぼ同時に行われることが好ましい。加熱手段としては、雰囲気を高温にすることによる加熱、熱源と接触させることによる加熱、赤外線等の輻射により行う加熱等が挙げられるが、塗膜の昇温速度と加熱の均一性に優れる点で、ヒートロール等による接触加熱が好ましい。硬化処理手段として活性エネルギー線の照射を用いる場合は、照射装置と対向するバックアップロールがヒートロール(加熱手段)であることが好ましい。また、配向状態に影響を及ぼさない範囲で、加熱〜効果処理に先立ち予熱を行うことが好ましい。
【0133】
このようにして重合性液晶組成物の配向が固定された光学異方性層を含む長尺位相差フィルムは、必要に応じ後加熱処理、ライナーフィルムあるいは表面保護フィルムの付与を経て巻芯上に巻き取られた巻回体とすることができる。全長500mを超す長尺位相差フィルムである場合、巻き取られたフィルムがこすれあうのを防ぐ目的でフィルムの両端にナーリングを設けることができる。上述した幅手方向に高弾性率の長尺支持体を用いると、ナーリングで支持されたフィルム間の隙間が良好に保たれて面状故障が抑えられ、位相差フィルムの品質を高く維持することができる。
【0134】
[長尺積層体]
本発明の長尺積層体(長尺偏光板)は、上記長尺位相差フィルムと、長尺直線偏光フィルムと、を有する。位相差フィルムの説明については、上述した通りであるので省略する。
【0135】
<長尺直線偏光フィルム>
長尺直線偏光フィルムは、光を特定の直線偏光に変換する機能を有するいわゆる直線偏光子であればよい。偏光子としては、特に限定されないが、吸収型偏光子を利用することができる。
【0136】
偏光子の種類は特に制限はなく、通常用いられている偏光子を利用することができ、例えば、ヨウ素系偏光子、二色性染料を利用した染料系偏光子、ポリエン系偏光子、および、ワイヤーグリッドを用いた偏光子のいずれも用いることができる。ヨウ素系偏光子および染料系偏光子は、一般に、ポリビニルアルコールにヨウ素または二色性染料を吸着させ、延伸することで作製される。
また、偏光子として、サーモトロピック液晶性二色性色素(例えば、特開2011−237513号公報に記載の光吸収性異方性膜に用いられるサーモトロピック液晶性二色性色素)を用い、塗布等により作製した塗布型偏光子を用いることも好ましい。塗布型偏光子を用いることにより、ポリビニルアルコールを延伸した偏光子に対して、さらなる薄膜化が実現できる。また、曲げ等の外力が付加された場合においても、光学特性の変化が少ない偏光板を提供できる。
偏光子の厚みは特に制限されないが、典型的なポリビニルアルコール偏光子であれば1μm〜40μmであることが好ましく、2μm〜30μmであることがより好ましく、3μm〜20μmがさらに好ましい。上記厚みであれば、表示装置の薄型化に対応可能となる。塗布型偏光子であれば、0.5μm〜3μmの範囲であることができる。
【0137】
本発明の位相差フィルムの光学特性を適切に設計することによって、偏光子と積層することにより種々の高機能偏光板を得ることができる。例えば、本発明の位相差フィルムをλ/4板とし、その遅相軸を偏光子の透過軸と45°もしくは135°とすることによって、理想的な円偏光板を得ることができる。また、本発明の位相差フィルムの面内位相差Reを100〜150nmとし、その遅相軸を偏光子の透過軸と平行または直交とすることで、IPS方式の液晶ディスプレイパネルの光学補償層として用いることができる。この他にも、種々の光学設計を適用して偏光子と本発明の位相差フィルムとを組み合わせることで種々の光学異方性層付偏光板や、円偏光板、楕円偏光板を構成することができる。
【0138】
長尺積層体(長尺偏光板)は、長尺位相差フィルム(長尺支持体)の長手方向と、長尺直線偏光フィルムの吸収軸が一致するように作製することが一般的である。すなわち、長尺位相差フィルム(長尺支持体)の幅手方向と、長尺直線偏光フィルムの吸収軸は直交する関係にある。したがって、画像表示装置等に用いられる偏光板(切片)から、直線偏光フィルムの吸収軸が分かれば、長尺支持体の幅手方向も分かる。
【0139】
<その他の層>
(偏光子保護フィルム)
偏光子の表面上には、偏光子保護フィルムが配置されていてもよい。偏光子保護フィルムは、偏光子の片面上(位相差フィルム側とは反対側の表面上)にのみ配置されていてもよいし、偏光子の両面上に配置されていてもよい。
偏光子保護フィルムの構成は特に制限されず、例えば、いわゆる透明支持体やハードコート層であっても、透明支持体とハードコート層との積層体であってもよい。また、本発明の位相差フィルムの支持体層が偏光子保護フィルムを兼ねてもよい。
ハードコート層としては、公知の層を使用することができ、例えば、多官能モノマーを重合硬化して得られる層であってもよい。必要に応じ、ハードコート層にアンチグレア性や帯電防止性を付与してもよい。
また、透明支持体としては、公知の透明支持体を使用することができ、例えば、透明支持体を形成する材料としては、トリアセチルセルロースに代表される、セルロース系ポリマー(以下、セルロースアシレートという)や、熱可塑性ノルボルネン系樹脂(日本ゼオン(株)製のゼオネックス、ゼオノア、JSR(株)製のアートン等)、アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂を使用することができる。
偏光子保護フィルムの厚みは特に限定されないが、偏光板の厚みを薄くできることから40μm以下が好ましく、25μm以下がより好ましい。フィルムハンドリングの観点から5μm以上が好ましく、12μm以上であるとより好ましい。
【0140】
各層の間の密着性担保のために、各層の間に粘着層または接着層を配置してもよい。タッチパネル等の機能を複合化するために、各層いずれかに接して透明導電層や金属層の微細パターンを設けてもよい。
【0141】
[画像表示装置]
上記長尺積層体の一種である偏光板は、有機電界発光装置(好ましくは、有機EL(エレクトロルミネッセンス)表示装置)やLEDディスプレイ、液晶表示装置などの画像表示装置に好ましく用いることができる。
その際、長尺積層体から所望の大きさ(画像表示装置の表示領域の大きさ)に切り出しで偏光板として用いればよい。また、長尺積層体から切り出す際には、切り出す偏光板の長手方向と長尺積層体の長手方向とを一致させて切り出してもよいし、切り出す偏光板の長手方向と長尺積層体の幅手方向とを一致させて切り出してもよいし、切り出す偏光板の長手方向が長尺積層体の長手方向に対して斜め方向になるように切り出してもよい。
【0142】
<液晶表示装置>
液晶表示装置は、画像表示装置の一例であり、上述した本発明の長尺積層体から切り出した偏光板と、液晶セルとを有する。
なお、本発明においては、液晶セルの両側に設けられる偏光板のうち、フロント側の偏光板として本発明の偏光板を用いるのが好ましく、フロント側およびリア側の偏光板として本発明の偏光板を用いるのがより好ましい。また、偏光板に含まれる上記位相差フィルムは、液晶セル側に配置されることが好ましい。
すなわち、本発明の位相差フィルムは、光学補償フィルムとして好適に使用できる。
以下に、液晶表示装置を構成する液晶セルについて詳述する。
【0143】
(液晶セル)
液晶表示装置に利用される液晶セルは、VA(Virtical Alignment)モード、OCB(Optical Compensated Bend)モード、IPS(In−Place−Switching)モード、又はTN(Twisted Nematic)であることが好ましいが、これらに限定されるものではない。
TNモードの液晶セルでは、電圧無印加時に棒状液晶性分子が実質的に水平配向し、更に60〜120゜にねじれ配向している。TNモードの液晶セルは、カラーTFT液晶表示装置として最も多く利用されており、多数の文献に記載がある。
VAモードの液晶セルでは、電圧無印加時に棒状液晶性分子が実質的に垂直に配向している。VAモードの液晶セルには、(1)棒状液晶性分子を電圧無印加時に実質的に垂直に配向させ、電圧印加時に実質的に水平に配向させる狭義のVAモードの液晶セル(特開平2−176625号公報記載)に加えて、(2)視野角拡大のため、VAモードをマルチドメイン化した(MVAモードの)液晶セル(SID97、Digest of tech.Papers(予稿集)28(1997)845記載)、(3)棒状液晶性分子を電圧無印加時に実質的に垂直配向させ、電圧印加時にねじれマルチドメイン配向させるモード(n−ASMモード)の液晶セル(日本液晶討論会の予稿集58〜59(1998)記載)及び(4)SURVIVALモードの液晶セル(LCDインターナショナル98で発表)が含まれる。また、PVA(Patterned Vertical Alignment)型、光配向型(Optical Alignment)、及びPSA(Polymer−Sustained Alignment)のいずれであってもよい。これらのモードの詳細については、特開2006−215326号公報、及び特表2008−538819号公報に詳細な記載がある。
IPSモードの液晶セルは、棒状液晶分子が基板に対して実質的に平行に配向しており、基板面に平行な電界が印加することで液晶分子が平面的に応答する。IPSモードは電界無印加状態で黒表示となり、上下一対の偏光板の吸収軸は直交している。光学補償シート(光学補償フィルム)を用いて、斜め方向での黒表示時の漏れ光を低減させ、視野角を改良する方法が、特開平10−54982号公報、特開平11−202323号公報、特開平9−292522号公報、特開平11−133408号公報、特開平11−305217号公報、特開平10−307291号公報などに開示されている。
【0144】
<有機EL表示装置>
有機電界発光装置の一例である有機EL表示装置としては、例えば、視認側から、本発明の長尺積層体から切り出した円偏光板と、有機EL表示パネルとをこの順で有する態様が好適に挙げられる。円偏光板に含まれる位相差フィルムは、有機EL表示パネル側に配置されることが好ましい。
すなわち、本発明の位相差フィルムを含む円偏光板は、外部から入射する光がパネル電極等で反射されて表示光のコントラストを下げることを防ぐ、いわゆる反射防止フィルムとして使用される。また、有機EL表示パネルは、電極間(陰極および陽極間)に有機発光層(有機エレクトロルミネッセンス層)を挟持してなる有機EL素子を用いて構成された表示パネルである。有機EL表示パネルの構成は特に制限されず、公知の構成が採用される。
【0145】
[転写フィルム]
本発明の長尺位相差フィルムにおいて、支持体と光学異方性層との間、配向層と光学異方性層との間、支持体と配向層との間の少なくともいずれかで剥離可能に製造することによって、光学異方性層のみあるいは光学異方性層と支持体以外のその他の層とを含む積層体を、別の支持体あるいは偏光板等の被着体に転写し、高機能偏光板やそれを含む画像表示装置を構成することができる。すなわち、本発明の長尺位相差フィルムは、別の一態様として、支持体を仮支持体とした長尺転写フィルムとして利用することができる。
【実施例】
【0146】
以下、実施例を以って発明を詳細に説明する。
〔セルロースアシレートフィルム1の作製〕
(コア層セルロースアシレートドープの作製)
下記の組成物をミキシングタンクに投入し、攪拌して、各成分を溶解し、コア層セルロースアシレートドープとして用いるセルロースアセテート溶液を調製した。
─────────────────────────────────
コア層セルロースアシレートドープ
─────────────────────────────────
アセチル置換度2.88のセルロースアセテート 100質量部
特開2015−227955号公報の実施例に
記載されたポリエステル化合物B 12質量部
下記の化合物F 2質量部
メチレンクロライド(第1溶媒) 430質量部
メタノール(第2溶剤) 64質量部
─────────────────────────────────
【0147】
化合物F
【0148】
【化16】
【0149】
(外層セルロースアシレートドープの作製)
上記のコア層セルロースアシレートドープ90質量部に下記のマット剤溶液を10質量部加え、外層セルロースアシレートドープとして用いるセルロースアセテート溶液を調製した。
─────────────────────────────────
マット剤溶液
─────────────────────────────────
平均粒子サイズ20nmのシリカ粒子
(AEROSIL R972、日本アエロジル(株)製) 2質量部
メチレンクロライド(第1溶媒) 76質量部
メタノール(第2溶剤) 11質量部
上記のコア層セルロースアシレートドープ 1質量部
─────────────────────────────────
【0150】
(セルロースアシレートフィルム1の製膜)
上記コア層セルロースアシレートドープと上記外層セルロースアシレートドープを平均孔径34μmのろ紙および平均孔径10μmの焼結金属フィルターでろ過した後、上記コア層セルロースアシレートドープとその両側に外層セルロースアシレートドープとを3層同時に流延口から20℃の金属バンド上に流延した(バンド流延機)。溶剤含有率略20質量%の状態で剥ぎ取り、フィルムの幅方向の両端をテンタークリップで固定し、横方向に延伸倍率1.1倍で延伸しつつ乾燥した。その後、熱処理装置のロール間を搬送することによりさらに乾燥し、これを巻き取って厚み40μmの長尺状のセルロースアシレートフィルム1を作製した。フィルムのコア層は厚み36μm、コア層の両側に配置された外層はそれぞれ厚み2μmであった。得られたセルロースアシレートフィルム1の面内レターデーションは0nmであった。後述する評価方向によって測定した幅手方向弾性率、140℃における幅手方向弾性率、幅手方向の線熱膨張率は、表1の通りであった。
【0151】
(セルロースアシレートフィルム2の製膜)
セルロースアシレートフィルム1の製膜において、厚みを20μm(コア層の厚み15μm、コア層の両側に配置された外層の厚みはそれぞれ2.5μm)とした以外はセルロースアシレートフィルム1と同様にしてセルロースアシレートフィルム2を作製した。幅手方向弾性率、140℃における幅手方向弾性率、幅手方向の線熱膨張率は、表1の通りであった。
【0152】
(セルロースアシレートフィルム3および4)
セルロースアシレートフィルム3として市販のセルロースアセテートフィルム(ZRD40SL、富士フイルム(株)製)の長尺体を用いた。また、セルロースアシレートフィルム4として市販のセルロースアセテートフィルム(ZRD60SL、富士フイルム(株)製)の長尺体を用いた。幅手方向弾性率、140℃における幅手方向弾性率、幅手方向の線熱膨張率は、表1の通りであった。
【0153】
(光配向性基を有する重合体A1の合成)
冷却管および攪拌機を備えたフラスコに、重合開始剤として2,2’−アゾビス(イソブチロニトリル)1質量部、および、溶媒としてジエチレングリコールメチルエチルエーテル180質量部を仕込んだ。ここに、3,4−エポキシシクロヘキシルメチルメタアクリレート100質量部を加え、フラスコ内を窒素置換した後、緩やかに攪拌をした。溶液温度を80℃に上昇させ、この温度を5時間維持することにより、エポキシ基を有するポリメタクリレートを約35重量%含有する重合体溶液を得た。得られたエポキシ含有ポリメタクリレートの重量平均分子量Mwは25,000であった。
次いで、別の反応容器中に、上記で得たエポキシ含有ポリメタクリレートを含む溶液286質量部(ポリメタクリレートに換算して100質量部)、特開2015−26050号公報の合成例1の方法で得られた桂皮酸誘導体120質量部、触媒としてテトラブチルアンモニウムブロミド20質量部、および、希釈溶媒としてプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート150質量部を仕込み、窒素雰囲気下、90℃において12時間、撹拌下に反応を行った。反応終了後、反応混合物にプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート100質量部を加えて希釈し、これを3回水洗した。水洗後の有機相を大過剰のメタノール中に投入して重合体を沈殿させ、回収した沈殿物を40℃において12時間真空乾燥することにより、光配向性基を有する下記重合体A1を得た。
【0154】
【化17】
【0155】
(実施例1)
〔長尺位相差フィルムの作製〕
作製したセルロースアシレートフィルム1の片側の面に、下記の光配向膜用組成物1をバーコーターで連続的に塗布した。塗布後、120℃の加熱ゾーンにて1分間乾燥して溶剤を除去し、厚さ0.3μmの光異性化組成物層を形成した。続けて、鏡面処理バックアプロールに巻きかけながら、長手方向に偏光軸が45°の角度を成すように偏光紫外線照射(10mJ/cm2、超高圧水銀ランプ使用)することで、長尺状の光配向膜を形成した。
【0156】
─────────────────────────────────
光学配向膜用組成物1
─────────────────────────────────
上記の光配向性基を有する重合体A1 10質量部
ノムコートTAB(日清オイリオ(株)製) 1.52質量部
多官能エポキシ化合物(エポリードGT401、ダイセル社製)
12.2質量部
熱酸発生剤(サンエイドSI−60、三新化学工業(株)製)
0.55質量部
酢酸ブチル 300質量部
―――――――――――――――――――――――――――――――――
【0157】
ノムコートTAB
【0158】
【化18】
【0159】
引き続き、長尺状に形成された光配向膜上に、下記の光学異方性層形成用組成物1をダイコーターで塗布し、液晶層(未硬化)を形成した。その後、120℃に保ち、窒素雰囲気下(酸素濃度100ppm)で紫外線照射(超高圧水銀ランプ使用)によって配向を固定化し、厚さ2.3μmの光学異方性層を形成し、得られたフィルムを巻芯に巻き取って、長尺状の位相差フィルム1を作製した。得られた位相差フィルムの平均面内レターデーションRe(550)は140nmでRe(450)/Re(550)<1.0かつ1.0<Re(650)/Re(550)を満たしており、平均遅相軸方向は長手方向に対して45°であった。また、波長分散(Re(450)/Re(550))をAxoScanで測定したところ0.87であった。
【0160】
―――――――――――――――――――――――――――――――――
光学異方性層用塗布液(液晶1)
―――――――――――――――――――――――――――――――――
・下記液晶性化合物L−3 42.00質量部
・下記液晶性化合物L−4 42.00質量部
・下記重合性化合物A−1 16.00質量部
・下記重合開始剤S−1(オキシム型) 0.50質量部
・レベリング剤(下記化合物G−1) 0.20質量部
・ハイソルブMTEM(東邦化学工業社製) 2.00質量部
・NKエステルA−200(新中村化学工業社製) 1.00質量部
・メチルエチルケトン 424.8質量部
―――――――――――――――――――――――――――――――――
なお、下記液晶性化合物L−3およびL−4のアクリロイルオキシ基に隣接する基は、プロピレン基(メチル基がエチレン基に置換した基)を表し、下記液晶性化合物L−3およびL−4は、メチル基の位置が異なる位置異性体の混合物を表す。
【0161】
液晶化合物 L−3
【0162】
【化19】
【0163】
液晶化合物 L−4
【0164】
【化20】
【0165】
重合性化合物 A−1
【0166】
【化21】
【0167】
重合開始剤 S−1
【0168】
【化22】
【0169】
化合物 G−1
【0170】
【化23】
【0171】
(実施例2、比較例1および比較例3)
実施例1において、長尺セルロースアシレートフィルム2〜4を用いた以外は同様にして、実施例2、比較例1、および、比較例3の長尺位相差フィルムを作製した。結果を表1に示す。
【0172】
(実施例3)
実施例1において、重合性液晶組成物を以下の液晶2に代えた以外は実施例1と同様にして、実施例3の長尺位相差フィルムを作製した。結果を表1に示す。
【0173】
―――――――――――――――――――――――――――――――――
光学異方性層用塗布液(液晶2)
―――――――――――――――――――――――――――――――――
・下記液晶性化合物4 100.0質量部
・上記重合開始剤S−1 1.0質量部
・レベリング剤(上記化合物G−1) 0.40質量部
・シクロペンタノン 259質量部
―――――――――――――――――――――――――――――――――
【0174】
液晶性化合物4
【0175】
【化24】
【0176】
(実施例4)
液晶層を紫外線照射によって硬化させる際の紫外線照射量を150mJ/cm2とした以外は実施例2と同様にして、実施例4の長尺位相差フィルムを作製した。結果を表1に示す。
【0177】
(実施例5)
光学異方性層用塗布液を以下に示す液晶3に代え、液晶層を紫外線照射によって硬化させる際の紫外線照射量を150mJ/cm2とした以外は実施例1と同様にして実施例5の長尺位相差フィルムを作製した。結果を表1に示す。
【0178】
―――――――――――――――――――――――――――――――――
光学異方性層用塗布液(液晶3)
―――――――――――――――――――――――――――――――――
・下記液晶性化合物L−3 42.00質量部
・下記液晶性化合物L−4 42.00質量部
・下記重合性化合物A−1 16.00質量部
・下記重合性化合物B−1 6.00質量部
・下記重合開始剤S−1(オキシム型) 0.50質量部
・レベリング剤(下記化合物G−1) 0.20質量部
・ハイソルブMTEM(東邦化学工業社製) 2.00質量部
・NKエステルA−200(新中村化学工業社製) 1.00質量部
・メチルエチルケトン 424.8質量部
―――――――――――――――――――――――――――――――――
【0179】
重合性化合物B−1
【0180】
【化25】
【0181】
(実施例6)
長尺セルロースアシレートフィルム2を用いた以外は実施例5と同様にして実施例6の長尺位相差フィルムを作製した。結果を表1に示す。
【0182】
(実施例7、実施例8および実施例9)
重合性液晶組成物中の重合性化合物B−1をB−2,B−3,B−4に代えた以外は実施例6と同様にして実施例7〜9の長尺位相差フィルムを作製した。結果を表1に示す。
【0183】
重合性化合物B−2
【0184】
【化26】
【0185】
重合性化合物B−3
【0186】
【化27】
【0187】
重合性化合物B−4
【0188】
【化28】
【0189】
(実施例10)
セルロースアシレートフィルムとして、厚みが15μmのセルロースアセテートフィルムを用い、液晶層を紫外線照射によって硬化させる際の紫外線照射量を100mJ/cm2とした以外は実施例2と同様にして、実施例10の長尺位相差フィルムを作製した。結果を表1に示す。
【0190】
(比較例2)
比較例1において、液晶層を紫外線照射によって硬化させる際の温度を75℃とした以外は比較例1と同様にして長尺位相差フィルムを作製した。結果を表1に示す。
【0191】
得られた支持体、位相差フィルムの評価は以下のように行った。
(幅手方向弾性率)
長尺支持体の幅手方向弾性率は、テンシロン引張試験機(商品名:RTA−100;オリエンテック(株)製)を用い、ISO1184 1983に従い測定した。具体的には、25℃、60RH%雰囲気中で測定し、得られた荷重−歪曲線の傾きから弾性率を算出した。フィルムサンプルの伸長方向は、長尺支持体の幅手方向と一致するようにした。
【0192】
(140℃における幅手方向弾性率)
長尺支持体フィルムから切り出したフィルム試料5mm×30mm(サンプル長手方向が長尺支持体の幅手方向と一致)を、25℃、相対湿度60%で2時間以上調湿した後に、動的粘弾性測定装置(バイブロン:DVA−225(アイティー計測制御(株)製))で、つかみ間距離20mm、昇温速度2℃/分、測定温度範囲30℃〜250℃、周波数1Hzで動的粘弾性を測定し、140℃における貯蔵弾性率値を以って長尺支持体の140℃における幅手方向弾性率とした。
【0193】
(幅手方向の線熱膨張率)
サンプル長手方向が長尺支持体の幅手方向と一致するように幅3mm、長さ35mmのフィルムを切り出した。試料を、25℃60%RHの環境下で3時間以上調湿した後、TMA(Tharmal Mechanical Analyzer:TA instruments社製)を用いて、チャック間距離25.4mm、昇温条件30〜100℃(20℃/min)、張力0.04Nで測定を行い、試料の80℃におけるチャック間寸法から、40℃におけるチャック間寸法を差し引いた値ΔL(mm)を求め、ΔL/(25.4×10)を計算することによって長尺支持体の幅手方向の線熱膨張率を得た。
【0194】
(光学異方性層の液晶配向)
得られた長尺位相差フィルムから幅40mm、長さ40mmのフィルムを切り出した。試料をクロスニコル下の偏光顕微鏡(10倍の対物レンズ使用)で観察し液晶配向を確認した。
A:観察視野内で光漏れなし。クロスニコルから検光子を4°ずらして観察したときの光学模様が観察視野内で均一であった。
B:観察視野内で光漏れあり。クロスニコルから検光子を4°ずらして観察したときに光学模様が観察視野内で不均一であった(配向不良が観察された)。
【0195】
(フィルム面状)
得られた長尺位相差フィルムを巻きだして水平な定板上に静置し、目視でシワや折れ痕およびウェブのゆがみ等の面状を確認した。ゆがみは、棒状の蛍光灯を反射させてその反射像を観察することにより確認した。
A:シワ、折れ痕もゆがみも見られず、均一で平坦なフィルムであった
B:シワ、折れ痕は見られないが、フィルムにわずかにゆがみが見られた
C:明らかなシワや折れ痕が観察できた
【0196】
(位相差フィルムの面内位相差変化ΔRe)
7×14cm角に切り出した各位相差フィルムを25℃60%RHの環境下で3時間以上調湿した後、両側から粘着剤(特開2017−134414号公報、実施例1)を用いて同サイズのガラス板に挟み込み、Axo Scan(OPMF−1、Axometrics社製)を用いて、波長550nmにおけるレターデーション値(Rea)を測定した。その後、上記サンプルを85℃0%RHに保った恒温恒湿層にて500時間処理した後、25℃60%RHの環境下で3時間以上調湿してからAxo Scanにて面内位相差Reb(550)を測定し、その変化率から面内位相差変化ΔRe=Reb/Reaを定量した。
A:ΔRe=0.98以上1.01以下
B:ΔRe=0.96以上0.98未満、1.01より大きく1.02以下
C:ΔRe=0.94以上0.96未満
D:ΔRe=0.94未満、もしくは1.02より大きい
【0197】
(OLEDパネル実装での評価)
得られた実施例1の位相差フィルム1を、位相差フィルムのセルロースアシレートフィルム側を偏光板側とし、セルロースアシレートフィルム1が偏光板保護フィルムを兼ねる形でロールトゥロールプロセスにより長尺状の直線偏光板(吸収軸が長手方向にある)と貼合した後、一旦巻き取り、本発明の長尺積層体を作製した。さらに長尺積層体を巻きだして所定の形状に裁断して円偏光板1を得た。得られた円偏光板1の位相差フィルム側の表面に、特開2015−200861号公報実施例0124段落〜0127段落に記載のポジティブCプレート(ただし、550nmにおけるRthが−65nmとなるように、ポジティブCプレートの厚さは制御している)を転写貼合し、積層体1を得た。位相差フィルムの面内遅相軸と、直線偏光板の透過軸の成す角度は45°であった。
【0198】
次に、有機ELパネル搭載のSAMSUNG社製GALAXY SIIを分解し、円偏光板を剥離して、上記で作製した積層体1から、取りだした円偏光板と同じ形状、同じ透過軸方向になるよう切り出した積層体片をポジティブCプレート側がパネル側となるよう粘着剤を介して貼合し、OLED表示装置1を作製した。得られたOLED表示装置を黒表示状態にて自然光下で観察したところ、正面および斜め方向のいずれにおいてもムラがなく良好な黒表示性能を示した(評価:A)。
【0199】
次に、比較例1で得られた位相差フィルム11を位相差フィルム1に代えて用いた以外は前述と同様の操作を行い積層体11を作製し、積層体11から切り出した積層体片を有機ELパネルに装着して評価したところ、黒表示時においてパネルに筋状の色味ムラが観察された(評価:C)。
【0200】
(OLEDパネル実装での耐久性評価)
実施例2〜10で得られた位相差フィルム2〜10および比較例2〜3で得られた位相差フィルム12〜13についてもそれぞれ、上記と同様にして積層体を作製し、積層体から切り出した積層体片を有機ELパネルに装着した。
上記で実装した有機ELパネル上に、粘着剤を介してガラス板を貼り合わせ、85℃0%RHに保った恒温恒湿層にて500時間処理した後、25℃60%RHの環境下で3時間以上調湿して、黒表示状態にて自然光下で外観観察を実施した。
A:赤みムラは観察されず、良好な黒表示性能を示した
B:パネル端部に強度の弱いムラが観察された
C:パネル端部に強度の強いムラが観察された
D:全面に赤みムラが観察された
結果を表1および表2に示す。
【0201】
【表1】
【0202】
【表2】
【0203】
表1および表2から、長尺支持体の厚み、幅手方向弾性率、幅手方向の線熱膨張率、および、面内位相差変化ΔReが本発明の範囲内となる実施例は比較例に比べて、液晶配向が均一であり、フィルム面状が均一であり、赤みムラが少ないことがわかる。
また、実施例1、実施例2、および、実施例10の対比から、支持体の厚みは15μm以上であるのが好ましいことがわかる。
また、実施例2、実施例4、および、実施例6〜9の対比から、面内位相差変化ΔReは、0.96以上1.02以下が好ましく、0.98以上1.01以下がより好ましいことがわかる。
以上より本発明の効果は明らかである。