特許第6918211号(P6918211)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6918211
(24)【登録日】2021年7月26日
(45)【発行日】2021年8月11日
(54)【発明の名称】基板処理装置及び半導体装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/205 20060101AFI20210729BHJP
   C23C 16/44 20060101ALI20210729BHJP
【FI】
   H01L21/205
   C23C16/44 Z
【請求項の数】8
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2020-510225(P2020-510225)
(86)(22)【出願日】2018年3月27日
(86)【国際出願番号】JP2018012337
(87)【国際公開番号】WO2019186681
(87)【国際公開日】20191003
【審査請求日】2020年9月1日
(73)【特許権者】
【識別番号】318009126
【氏名又は名称】株式会社KOKUSAI ELECTRIC
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】岡嶋 優作
(72)【発明者】
【氏名】西堂 周平
(72)【発明者】
【氏名】吉田 秀成
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 隆史
【審査官】 長谷川 直也
(56)【参考文献】
【文献】 特開平02−268420(JP,A)
【文献】 特開2011−003689(JP,A)
【文献】 特開2008−199040(JP,A)
【文献】 特開2011−176178(JP,A)
【文献】 特開2002−334868(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/18−21/20、21/205、
21/31−21/32、21/34−21/36、
21/365、21/469−21/475、
21/67−21/683、21/84−21/86、
C23C 16/00−16/56、
C30B 1/00−35/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の基板を配列させて保持する基板保持具と、
下方に前記基板保持具を出し入れ可能な開口を有する筒状の内管と、上端を塞がれ下端外周にフランジが設けられ、前記内管を囲むように構成された筒状の外管とを有する反応管と、
前記反応管の上方及び側方を取り囲む炉体と、
前記炉体の内側を加熱するヒータと、
前記フランジがシール部材を介して接続する相手側部材と、
前記基板保持具と前記相手側部材の間に配置される断熱構造体と、
前記反応管内で前記基板保持具に保持された前記複数の基板にガスを供給するガス供給機構と、を備え、
前記反応管は、前記フランジの付近において、前記内管と前記外管の間の空間と前記外管の外とを流体的に連通させる排気管と、前記内管の外面に沿って前記排気管に対向する位置に設けられた光線散乱板とを有するように構成されている基板処理装置。
【請求項2】
請求項1に記載の基板処理装置であって、
前記光線散乱板が、前記内管の外面上に浮かせて設置されるように構成されている基板処理装置。
【請求項3】
請求項1に記載の基板処理装置であって、
前記内管は、前記排気管に対向する位置に、前記内管の内側と外側を流体的に連通させる中間排気口を有し、
前記光線散乱板は、前記中間排気口と同形の開口を有するように構成されている基板処理装置。
【請求項4】
請求項1に記載の基板処理装置であって、
前記光線散乱板は、内部に形成された複数のボイドによって不透明化されるように構成される基板処理装置。
【請求項5】
請求項2に記載の基板処理装置であって、
前記光線散乱板は、前記光線散乱板が有する3つ以上の複数の蝶番が、前記複数の蝶番とそれぞれ対を成すように前記内管に形成された複数の蝶番に嵌合することで、前記内管に装着される基板処理装置。
【請求項6】
請求項1に記載の基板処理装置であって、
前記反応管は、前記相手側部材の上面であって、前記排気管の下部に設けられた部分冷却ブロックを有する基板処理装置。
【請求項7】
請求項6に記載の基板処理装置であって、
前記部分冷却ブロックは、前記フランジと前記排気管の間に食い込む部分冷却部を有し、部分冷却部の少なくとも一部は、シール部材の上に重なるように構成される基板処理装置。
【請求項8】
複数の基板を配列させて保持する基板保持具と、
下方に前記基板保持具を出し入れ可能な開口を有する筒状の内管と、上端を塞がれ下端外周にフランジが設けられ、前記内管を囲むように構成された筒状の外管とを有する反応管と
前記反応管の上方及び側方を取り囲む炉体と、
前記炉体の内側を加熱するヒータと、
前記フランジがシール部材を介して接続する相手側部材と、
前記基板保持具と前記相手側部材の間に配置される断熱構造体と、
前記反応管内で前記基板保持具に保持された前記複数の基板にガスを供給するガス供給機構と、を備え、
前記反応管は、前記フランジの付近において、前記内管と前記外管の間の空間と前記外管の外とを流体的に連通させる排気管と、前記内管の外面に沿って前記排気管に対向する位置に設けられた光線散乱板とを有、前記反応管の前記反応管の上方及び側方を取り囲む炉体の内側をヒータで加熱しつつ、前記基板を処理する半導体装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板処理装置の炉口部構造に係り、特に炉口部の耐熱対策技術に関する。
【背景技術】
【0002】
基板処理装置の一例として半導体製造装置があり、さらに半導体製造装置の一例として縦型装置があることが知られている。この種の基板処理装置として、反応管内に、ウエハ、すなわち基板を多段に保持する基板保持部材としてのボートを有し、この複数の基板を保持した状態で反応管内の処理室にて基板を処理するものがあることが知られている。縦型装置では基板保持部材によって複数の基板を垂直方向に配列して保持し、処理室内に搬入する。その後、処理室外に設置されたヒータなどの過熱装置によって基板を加熱した状態で処理室内に処理ガスを導入し、基板に対して薄膜形成処理等が行われる。
【0003】
なお、特許文献1には、このような基板処理装置で、基板や基板保持部材や加熱装置からの熱の影響を低減させ、Oリング等のシール部材の焼損を防止するための不透明石英で形成された円筒形状の遮熱リングを、Oリングの斜め上方に配置する構造が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011−3689号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
基板処理装置の反応管では、炉口部品と連結する際に反応管固定リングを使用しており、この反応管固定リングには、冷却水の流路が設けられ、反応管と炉口部の間に設置しているOリング部分に対する冷却機能を果たしている。しかしながら、反応管内の排気効率を向上させる目的で、反応管の排気管の口径を大きくした場合、底面のフランジと排気管が近くなり、反応管固定リングを排気管下まで設けることができない場合がある。この場合、排気管下のOリングの冷却機能が低下し、温度制限を行う必要が出てくる。特許文献1に記載のような円筒形状の遮蔽リングも排気管下まで設けることは困難である。
【0006】
本発明の目的は、上記の課題を解決し、排気管の口径を広げた場合においても、排気管下のOリング部分の温度上昇を抑えることが可能な構成を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様によれば、複数の基板を配列させて保持する基板保持具と、下方に基板保持具を出し入れ可能な開口を有する筒状の内管と、上端を塞がれ下端外周にフランジが設けられ内管を囲むように構成された筒状の外管とを有する反応管と、反応管の上方及び側方を取り囲む炉体と、炉体の内側を加熱するヒータと、フランジがシール部材を介して接続する相手側部材と、基板保持具と相手側部材の間に配置される断熱構造体と、反応管内で保持された複数の基板にガスを供給するガス供給機構と、を備え、反応管は、フランジ付近において、内管と外管の間の空間と外管の外とを流体的に連通させる排気管と、内管の外面に沿って排気管に対向する位置に設けられた散乱板を有する構成が提供される。
【発明の効果】
【0008】
ヒータからの輻射を抑える散乱板の設置により、石英反応管と炉口部下に配置しているシール部材の排気管下部分の温度上昇を効率よく抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明が適用される縦型熱処理装置の一構成例を示す図である。
図2】本発明の基板処理装置の課題を説明するための模式図である。
図3】実施例1に係る、基板処理装置の要部を示す図である。
図4】実施例2に係る、基板処理装置の要部を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下本発明を実施するための形態を図面に従い順次説明するが、まず本発明が適用される基板処理装置の一例として、縦型熱処理装置の一構成とその課題を図1図2を使って説明する。
【0011】
図1に示すように、基板処理装置1は、半導体集積回路の製造における熱処理工程を実施する縦型熱処理装置として構成され、処理炉2を備えている。処理炉2は、それを均一に加熱するために、ヒータ3を有する。ヒータ3は円筒形状であり、保持板としてのヒータベースに支持されることにより、基板処理装置1の設置床に対して垂直に据え付けられている。ヒータ3は、ガスを熱で励起させる活性化機構としても機能する。
【0012】
ヒータ3の内側に、反応容器を構成する反応管4が配設されている。反応管4は、例えば石英(SiO2)または炭化シリコン(SiC)等の耐熱性材料からなり、上端が閉塞し下端が開口した円筒形状に形成されている。反応管4は、下端のフランジ4Cにおいて互いに結合した外管4Aと内管4Bとを有する2重管構造を有する。外管4Aと内管4Bの上端は閉じられ、内管4Bの下端は開口している。そのフランジ4Cは、外管4Aよりも大きな外径を有し、外側へ突出している。反応管4の下端寄りには、外管4A内と連通する排気ポート4Dが設けられ、反応管4全体は石英などの単一の材料で一体に形成される。なお、外管4Aと内管4Bからなる2重構造は、両者が互いに結合した一体構造のものに限らず、分離可能な構造のものであっても良い。
【0013】
マニホールド5は、円筒又は円錐台形状で金属製又は石英製であり、反応管4の下端を支えるように設けられる。マニホールド5の内径は、反応管4の内径、すなわち、フランジ4Cの内径よりも大きく形成されている。これにより、反応管4の下端のフランジ4Cとシールキャップ19との間に円環状の空間が形成される。この空間もしくはその周辺の部材を炉口部と総称する。
【0014】
内管4Bは、排気ポート4Dよりも反応管の奥側で、その側面において内側と外側を連通させる主排気口4Eを有し、また、主排気口4Eと反対の位置において供給スリット4Fを有する。主排気口4Eは、ウエハ7が配置されている領域に対して開口する単一の縦長の開口である。供給スリット4Fは、円周方向に伸びたスリットであり、各ウエハ7に対応するように垂直方向に複数並んで設けられている。外管4Aと内管4Bの間の空間(以後、排気空間Sと呼ぶ)には、供給スリット4Fの位置に対応させて、原料ガス等の処理ガスを供給する1本以上のノズル8が設けられている。ノズル8には、処理ガスを供給するガス供給管9がマニホールド5を貫通してそれぞれ接続されている。
【0015】
内管4Bは更に、排気ポート4Dよりも反応管4の奥側で且つ主排気口4Eよりも開口側の位置に、処理室6と排気空間Sとを連通させる複数の副排気口4Gが設けられる。また、フランジ4Cにも、処理室6と排気空間S下端とを連通させる複数の底排気口4H等が形成される。言い換えれば、排気空間Sの下端は、フランジ4Cによって底排気口4H等を除き閉塞されている。副排気口4G、底排気口4Hは、主に後述の軸パージガスを排気するように機能する。
【0016】
ガス供給管9の流路上には、上流方向から順に、流量制御器であるマスフローコントローラ(MFC)10および開閉弁であるバルブ11が設けられている。バルブ11よりも下流側では、不活性ガスを供給するガス供給管12がガス供給管9に接続されている。ガス供給管12には、上流方向から順に、MFC13およびバルブ14が設けられている。主に、ガス供給管9、MFC10、バルブ11により、処理ガス供給系である処理ガス供給部が構成される。このように、ノズル8、ガス供給管9、12、MFC10、13、バルブ11、14等で構成されるガス供給機構を用いて、図1に示した基板処理装置は、第1の原料ガスを前記複数の基板に供給する第1工程と、パージガスを前記複数の基板に供給する第2工程と、第2の原料ガスを前記複数の基板に供給する第3工程と、パージガスを前記複数の基板に供給する第4工程と、を順次繰り返すことにより、基板処理を実行する。
【0017】
ノズル8は、ガス供給空間4内に、反応管4の下部から立ち上がるように設けられている。ノズル8の側面や上端には、ガスを供給する1ないし複数のノズル孔8Hが設けられている。複数のノズル孔8Hは、供給スリット4Fのそれぞれの開口に対応させて、反応管4の中心を向くように開口させることで、内管4Bを通り抜けてウエハ7に向けてガスを噴射することができる。
【0018】
排気ポート4Dには、処理室6内の雰囲気を排気する排気管15が接続されている。排気管15には、処理室6内の圧力を検出する圧力検出器としての圧力センサ16および圧力調整部としてのAPC(Auto Pressure Controller)バルブ17を介して、真空排気装置としての真空ポンプ18が接続されている。APCバルブ17は、真空ポンプ18を作動させた状態で弁を開閉することで、処理室6内の真空排気および真空排気停止を行うことができる。更に、真空ポンプ18を作動させた状態で、圧力センサ16により検出された圧力情報に基づいて弁開度を調節することで、処理室6内の圧力を調整することができるように構成される。
【0019】
マニホールド5の下方には、マニホールド5の下端開口を気密に閉塞可能な炉口蓋体としてのシールキャップ19が設けられている。シールキャップ19は、例えばステンレスやニッケル基合金等の金属からなり、円盤状に形成されている。シールキャップ19の上面には、マニホールド5の下端と当接するシール部材としてのOリング19Aが設けられている。このシール部材としてOリングは、マニホールド5の上面に、フランジ4Cの下端と当接するよう設置することもできる。シールキャップ19上面には、マニホールド5の下端内周より内側の部分に対し、シールキャップ19を保護するカバープレート20が設置されている。カバープレート20は、例えば、石英、サファイヤ、またはSiC等の耐熱耐蝕性材料からなり、円盤状に形成されている。
【0020】
基板保持具としてのボート21は、複数枚、例えば25〜200枚のウエハ7を、水平姿勢で、かつ、互いに中心を揃えた状態で垂直方向に整列させて多段に支持する。そこではウエハ7は、一定の間隔を空けて配列させる。ボート21は、例えば石英やSiC等の耐熱性材料からなる。反応管4は、ボート21を安全に搬入出可能な最小限の内径を有することが望ましい場合がある。
【0021】
ボート21の下部には断熱アセンブリ22が配設されている。断熱アセンブリ22は、上下方向の熱の伝導或いは伝達が小さくなるような構造を有し、通常、内部に空洞を有する。内部は軸パージガスによってパージされうる。反応管4において、ボート21が配置されている上部分を処理領域A、断熱アセンブリ22が配置されている下部分を断熱領域Bと呼ぶ。
【0022】
シールキャップ19の処理室6と反対側には、ボート21を回転させる回転機構23が設置されている。回転機構23には、軸パージガスのガス供給管24が接続されている。ガス供給管44cには、上流方向から順に、MFC25およびバルブ26が設けられている。
【0023】
ボートエレベータ27は、反応管4の外部下方に垂直に備えられ、シールキャップ19を昇降させる昇降、搬送機構として動作する。これにより、シールキャップ19に支えられたボート21およびウエハ7が、処理室6内外に搬入出される。なお、シールキャップ19が最下位置に降りている間、シールキャップ19の代わりに反応管4の下端開口を塞ぐシャッタが設けられうる。
【0024】
外管4Aの外壁には、温度検出器28が設置されている。温度検出器28は、上下に並んで配列された複数の熱電対によって構成されうる。温度検出器28により検出された温度情報に基づきヒータ3への通電具合を調整することで、処理室6内の温度が所望の温度分布となる。
【0025】
コントローラ29は、基板処理装置1全体を制御するコンピュータであり、MFC10,13、バルブ11,14、圧力センサ16、APCバルブ17、真空ポンプ18、ヒータ3、温度検出器28、回転機構23、ボートエレベータ27等と電気的に接続され、それらから信号を受け取ったり、それらを制御したりする。
【0026】
図1では図示を省略したが、基板処理装置1において、反応管4と、その下端のフランジ4Cと炉口部の蓋体であるシールキャップ19との間の円環状の空間を構成する炉口部品とを連結するため反応管固定リングが使用される。図2の(a)、(b)にその縦断面図、横断面図として、反応管固定リング29を使用する基板処理装置1を模式的に示した。基板処理装置1において、ヒータ3を使って加熱を行うと、フランジの下端と、当節する炉口部のマニホールドの間に設置されたOリングが高温になる。そのため、反応管固定リング29の内部には図示を省略した冷却水の流路が設けられており、フランジとマニホールドの間などに設置しているOリング部分に対する冷却機能を果たしている。しかしながら、反応管内の排気効率を向上させる目的で、反応管4の排気口径、すなわち排気管15の口径を大きくした場合、図2に模式的に示すように、シールキャップ19と排気管15が近くなり、排気口の排気管15の下まで反応管固定リング29を設けることができない。この場合、排気口、すなわち排気管15の下に位置するOリングの冷却機能が低下するため、ヒータによる加熱の温度制限を行うことが必要になる。以下、この課題を解決するための本発明の各種の実施例について説明する。
【実施例1】
【0027】
本実施例は、複数の基板を配列させて保持する基板保持具と、下方に基板保持具を出し入れ可能な開口を有する筒状の内管と、上端を塞がれ下端外周にフランジが設けられ内管を囲むように構成された筒状の外管とを有する反応管と、反応管の上方及び側方を取り囲む炉体と、炉体の内側を加熱するヒータと、フランジがシール部材を介して接続する相手側部材と、基板保持具と相手側部材の間に配置される断熱構造体と、反応管内で保持された複数の基板にガスを供給するガス供給機構とを備え、反応管は、フランジ付近において、内管と外管の間の空間と外管の外とを流体的に連通させる排気管と、内管の外面に沿って排気管に対向する位置に設けられた散乱板を有する基板処理装置の実施例である。
【0028】
図3は実施例1の要部の構成を示す模式図である。本実施例の反応管の内管4Bの外面に沿って、排気管15に対向する位置にのみ設けられる散乱板30を有する基板処理装置の要部を模式的に示した。輻射(赤外線等の光線)を散乱する輻射ネットからなる散乱板30は、排気管15に略対面する位置であって、ヒータから排気管下のOリング19Bへ直接届く輻射を散乱、反射させるように、ヒータ上部からOリング19Bへ引いた直線と、ヒータ下部からOリングへ引いた直線の間の高さを覆うように設置する。なお、図3の(a)、(b)に示す通り、散乱板30は、熱輻射の到来方向を考慮した位置に設けられるが、中間排気口を塞がないように散乱板30には開口30Aを形成しておく。すなわち、内管4Bは、排気管15に対向する位置に、内管の内側と外側を流体的に連通させる副排気口(中間排気口)4Gを有しているため、新たに設置した散乱板30は、この副排気口4Gを塞がないように副排気口4Gと同形の開口30Aを有するよう構成する。
【0029】
本実施例の散乱板30は、内部に微小な空洞、内泡であるボイドが多数形成されることで不透明化された石英を用いることが望ましい。この種の不透明石英は、火加工を行っても不透明性が保たれる。ボイドのサイズによって波長透過率が変わるため、反応炉の温度である600−1000℃に応じて適切なサイズのボイドを選ぶと良い。
【0030】
また、散乱板30は、反応管内管と面で接触すると、パーティクル発生原因となるため、接触箇所を極力少なくする必要がある。本実施例では、図3の(a)、(b)に示すように、差込側の蝶番31を散乱板30の両側端に上下2箇所の計4箇所に設け、反応管内管4Bの外面に対応させて設けた受け側の蝶番32に上方から差込み、嵌合させて装着する。図3では、4箇所の蝶番を使ったが、最低3個の蝶番を使い、製造上の交差を考慮した上でガタができるだけ少なくなるように設計することが望ましい。すなわち、散乱板30は、3つ以上の複数の蝶番で引っ掛けて内管4Bに装着される。なお、装着された散乱板30の裏面、すなわち装着される内側面は、反応管内管の外面からわずかに浮かせた状態で設置する。
【0031】
散乱板30は熱を吸収するものであっても良い。また、散乱板30に変えて、金属膜を石英等で挟み込んだ構造の反射板でも良い。また反応管と一体に構成しても良い。例えば反応管の内管4Bに直接、金属膜や誘電体多層膜(TiO2やTaO3を含む)を形成し、その上に石英その他のセラミックの厚膜をかぶせて保護する構成としても良い。本明細書においては、これら散乱機能を有する板状構成物を散乱板と総称する。
【0032】
本実施例によれば、円筒形状の遮熱リングを用いることなく、反応管内管の排気口に対向する位置にヒータからの輻射を抑える散乱板を設置することにより、フランジと相手側部材の間などに設置されるシール部材の排気口下部分の温度上昇を効率よく抑えることが可能となる。
【実施例2】
【0033】
本実施例は、複数の基板を配列させて保持する基板保持具と、下方に基板保持具を出し入れ可能な開口を有する筒状の内管と、上端を塞がれ下端外周にフランジが設けられ、内管を囲むように構成された筒状の外管とを有する反応管と、反応管の上方及び側方を取り囲む炉体と、炉体の内側を加熱するヒータと、フランジがシール部材を介して接続する相手側部材と、基板保持具と相手側部材の間に配置される断熱構造体と、反応管で保持された複数の基板にガスを供給するガス供給機構とを備え、反応管は、フランジ付近において、内管と外管の間の空間と外管の外とを流体的に連通させる排気管と、相手側部材の上面であって、排気管下部に設けられた部分冷却ブロックとを有する基板処理装置の実施例である。
【0034】
図4は実施例2の要部の構成を示す模式図である。図2を用いて説明したように、反応管内の排気効率を向上させる目的で、反応管4の排気口径、すなわち排気管15の口径を大きくした場合、シールキャップ19と排気管15が近くなり、排気口下まで反応管固定リング29を設けることができない。そこで、本実施例においては、排気管15下部に部分冷却ブロックを食い込ませた構造とする。
【0035】
すなわち、図4の(a)、(b)に示すように、反応管4の排気口下の肉盛り部34に強度的に問題ない程度の切欠き部33を設け、この切欠き部33に、冷却水が循環可能な冷却ブロック35から伸びる、ステンレス鋼などの金属で構成した部分冷却ブロック36が部分的に入り込む形状とする。冷却ブロック35の設置位置は、図2で示した排気管15の下部の反応管固定リング29が存在しない部分に対応させる。
【0036】
図4の(a)、(b)に示すように、排気管15は反応管4への付け根付近における強度維持のため、肉盛り部34が設けられている。一方、排気管15はできるだけ反応管4の下方である炉口フランジ寄りに設けることが望ましいため、肉盛り部34は炉口フランジ4Cと一部繋がっている。本実施例では、この肉盛り部34の下部分において、強度的に問題が無い部分、すなわち斜め下に切欠き部33を形成し、その切欠き部33の内部に、部分冷却ブロック36が入り込む形状としている。この部分冷却ブロック36の設置により、相手側部材であるマニホールド5の上面に設置されたOリング19Bの上部を一部覆うように構成することで、輻射の反射効果も有している。
【0037】
図4の(c)、(d)に示すように、本実施例の構成にあっては、排気管15の下部の切欠き部33の内部に伸ばされた部分冷却ブロック36によって、反応管15の排気口下部分のシール部材であるOリング19Bの温度上昇を効率よく抑えることができる。同図の(c)に示す弾性部材38は、部分冷却ブロック36と反応管のフランジ部分とを密着させるふっ素樹脂シート又は熱伝導シートからなる弾性部材である。熱伝導シートは、例えば窒化アルミ等の高熱伝導性フィラーが樹脂に分散されたものである。 また、同図の(c)に示すように、マニホールド5の上面に設置されたOリング19Bの下にマニホールド15の内部で一周する冷却水路37を、冷却ブロック35とは別途に設置し、内部を流れる冷却水によってOリング19Bの冷却を行うよう構成することもできる。
【0038】
本実施例によれば、反応管の排気口下に部分冷却ブロックを配置することにより、排気口下部分のシール部材の温度上昇を効率よく抑えることができる。
【0039】
なお、本発明は上記した実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上記した実施例は本発明のより良い理解のために詳細に説明したのであり、必ずしも説明の全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施例の構成の一部を他の実施例の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施例の構成に他の実施例の構成を加えることが可能である。また、各実施例の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。上述した本発明の実施例の説明においては、反応管の内管と外管が一体になっているタイプのもので説明したが、これに限定されず、分離可能なタイプの反応管を備えた基板処理装置などにも適用できることは言うまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0040】
半導体基板等に対して、減圧下若しくは処理ガス雰囲気下或いは高温下で処理する装置に適用でき、例えば、CVD、PVD、ALD、エピタキシャル成長等の堆積や、表面に酸化膜、窒化膜を形成する処理、拡散処理、エッチング処理に適用できる。
【符号の説明】
【0041】
1 基板処理装置、 2 処理炉
3 ヒータ、 4 反応管
5 マニホールド、 6 処理室
7 ウエハ、 8 ノズル
9、12 ガス供給管、 10、13 MFC
11、14 バルブ
15 排気管、 16 圧力センサ
17 APCバルブ、 18 真空ポンプ
19 シールキャップ、 19A、19B Oリング
30 散乱板、 31、32 蝶番
33 切欠き部、 34 肉盛り部
35 冷却ブロック、 36 部分冷却ブロック
37 冷却水流路、 38 弾性部材
図1
図2
図3
図4