(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6918233
(24)【登録日】2021年7月26日
(45)【発行日】2021年8月11日
(54)【発明の名称】真空蒸着装置用の蒸着源
(51)【国際特許分類】
C23C 14/24 20060101AFI20210729BHJP
H05B 33/10 20060101ALI20210729BHJP
H01L 51/50 20060101ALI20210729BHJP
【FI】
C23C14/24 A
H05B33/10
H05B33/14 A
【請求項の数】2
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2020-523574(P2020-523574)
(86)(22)【出願日】2019年5月8日
(86)【国際出願番号】JP2019018352
(87)【国際公開番号】WO2019235118
(87)【国際公開日】20191212
【審査請求日】2020年2月5日
(31)【優先権主張番号】特願2018-110671(P2018-110671)
(32)【優先日】2018年6月8日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000231464
【氏名又は名称】株式会社アルバック
(74)【代理人】
【識別番号】110000305
【氏名又は名称】特許業務法人青莪
(72)【発明者】
【氏名】中村 寿充
(72)【発明者】
【氏名】清 健介
【審査官】
山本 一郎
(56)【参考文献】
【文献】
特開2017−186603(JP,A)
【文献】
韓国公開特許第10−2014−0103583(KR,A)
【文献】
韓国公開特許第10−2018−0047087(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C23C 14/24
H01L 51/50
H05B 33/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
真空チャンバ内に配置され、昇華性の有機材料を昇華させて被蒸着物に対して蒸着するための真空蒸着装置用の蒸着源において、
被蒸着物に向けて昇華した有機材料を噴出する噴出口を有する外容器と、この外容器にその壁面から間隔を置いて内挿されて昇華性の有機材料を収容する内容器と、内容器内の有機材料の加熱を可能とする加熱手段とを備え、
内容器は、網目の大きさが#10〜#50の範囲の金属メッシュを有底筒状の輪郭に成形した筒状体で構成されて、外容器の内側壁と対向する部分に昇華した有機材料の連通を許容する複数の透孔を有し、
前記外容器は、前記噴出口を構成するように鉛直方向上面を開口したものであり、
内容器の外側壁と外容器の内側壁との少なくとも一方に複数のスペーサ部材が設けられ、内容器をその底壁側から外容器内に挿入すると、スペーサ部材により外容器に対して内容器が位置決めされて内容器の外側壁と外容器の内側壁との間に1mm〜30mmの範囲の隙間が形成されることを特徴とする真空蒸着装置用の蒸着源。
【請求項2】
前記内容器は、その外底壁に脚片が設けられ、内容器の外底壁と外容器の内底壁との間に1mm〜30mmの範囲の隙間が形成されることを特徴とする請求項1記載の真空蒸着装置用の蒸着源。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、真空チャンバ内に配置されて、昇華性の材料を昇華させて被蒸着物に対して蒸着するための真空蒸着装置用の蒸着源に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば有機EL素子の製造工程においては、真空雰囲気中で基板などの被蒸着物にアルミキノリノール錯体(Alq
3)や芳香族ジアミンなどの昇華性の材料(有機材料)を蒸着する工程があり、この蒸着工程には真空蒸着装置が広く利用されている。このような真空蒸着装置に用いられる蒸着源は例えば特許文献1で知られている。このものは、鉛直方向上面を開口した坩堝と、坩堝を加熱する誘導コイルなどの加熱手段とを備える(従来技術の欄、参照)。
【0003】
ここで、上記種の材料は一般に熱伝導率が悪く、その上、液相を経て気化する材料と異なり、加熱時、坩堝内での材料の対流が発生しない。このため、上記従来例の蒸発源にて、坩堝内に例えば粉末状の材料を充填し、真空雰囲気中で加熱手段により坩堝を加熱すると、直接伝熱する坩堝の壁面に接触した材料から昇華していく。このとき、坩堝の上面開口を臨む、充填した材料の上層部分からは、昇華した材料が坩堝の上面開口を通って被蒸着物に向けて飛散するが、それより下方に位置する下層部分で昇華した材料は、その周囲に存在する比較的低温(言い換えると、未だ昇華温度まで加熱されていない)材料と衝突して固体に戻ってしまう。結果として、限られた範囲からしか昇華した材料が飛散しないことで、同一の圧力下での単位時間当たりの昇華量が少なくて被蒸着物に対する蒸着レートが低い(つまり、生産性が低い)という問題がある。このような場合、坩堝の加熱温度を高くすることが考えられるが、アルミキノリノール錯体や芳香族ジアミンといった(有機)材料の場合、加熱温度を高くすると、蒸着源にて材料が分解してしまい、素子の性能を決める所望の膜質を持つ薄膜を蒸着できない。このことから、上記種の昇華性の材料を蒸着する真空蒸着装置の蒸着源として、比較的低い温度で高い蒸着レートが得られるものの開発が近年求められるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−1529号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、以上の点に鑑み、昇華性の材料を蒸着するときに、単位時間当たりの昇華量を多くできて被蒸着物に対する蒸着レートの高い真空蒸着装置用の蒸着源を提供することをその課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、真空チャンバ内に配置され、昇華性の
有機材料を昇華させて被蒸着物に対して蒸着するための本発明の真空蒸着装置用の蒸着源は、被蒸着物に向けて昇華した
有機材料を噴出する噴出口を有する外容器と、この外容器にその壁面から間隔を置いて内挿されて昇華性の
有機材料を収容する内容器と、内容器内の
有機材料の加熱を可能とする加熱手段とを備え、内容器
は、網目の大きさが#10〜#50の範囲の金属メッシュを有底筒状の輪郭に成形した筒状体で構成されて、外容器の内側壁と対向する部分に昇華した
有機材料の連通を許容する複数の透孔
を有し、前記外容器は、前記噴出口を構成するように鉛直方向上面を開口したものであり、内容器の外側壁と外容器の内側壁との少なくとも一方に複数のスペーサ部材が設けられ、内容器をその底壁側から外容器内に挿入すると、スペーサ部材により外容器に対して内容器が位置決めされて内容器の外側壁と外容器の内側壁との間に1mm〜30mmの範囲の隙間が形成されることを特徴とする。
【0007】
本発明によれば、蒸着源の内容器内に、例えば粉末状とした昇華性の材料を充填し、真空雰囲気中で例えば外容器を加熱手段により加熱すると、外容器からの輻射熱により透孔を通して直接加熱される材料や、輻射熱で加熱される内容器から直接伝熱する材料から昇華する。この昇華した材料は、各透孔から、外容器の内壁面と内容器の外壁面との間の空間のコンダクタンスにより当該空間を経て外容器の噴出口へと導かれ、この噴出口から被蒸着物に向けて飛散される。このように本発明では、この昇華した材料の殆どが各透孔へと取り出され、比較的低温の材料(つまり、非加熱の材料)と衝突して固体に戻ることが可及的に抑制されるため(言い換えると、昇華した材料が飛散していく面積が増加するため)、限られた範囲からしか昇華した材料が飛散しない上記従来例のものと比較して飛躍的に昇華量が増加し、被蒸着物に対する蒸着レートを高くすることができる。その結果、本発明の真空蒸着装置用の蒸着源は、低い加熱温度でも高い蒸着レートが得られるため、アルミキノリノール錯体や芳香族ジアミンといった有機材料の蒸着に最適なものとなる。なお、内容器と外容器との間の隙間は、外容器からの輻射により効率よく加熱できる一方で、昇華した材料が各透孔から上記空間を経て外容器の噴出口へと効率よく取り出すことができるように、1mm〜30mmの範囲に設定される。
【0008】
本発明において、前記外容器が鉛直方向上面を開口した坩堝で構成されるような場合、前記内容器は、上面を開口した有底の筒状体で構成され、この筒状体の外底壁に脚片が設けられる構成を採用してもよい。これによれば、脚片側を下にして内容器を坩堝内に挿入し、その脚片を坩堝の内底壁に当接させるだけで、坩堝内に内容器を簡単にセットでき、この状態では、坩堝の内側壁と内容器の外測壁との間の空間(第1空間)に加えて、坩堝の内底壁と内容器の外底壁との間にも、昇華した材料が通過する空間(第2空間)を画成する一定の隙間が形成されることで、より一層、昇華量を増加させることができ、有利である。この場合、坩堝の内側壁または内容器の外側壁の少なくとも一方に複数のスペーサ部材を設けておけば、内容器を設置するだけで、上記第1空間を画成する一定の隙間が形成されるように坩堝内に内容器を同心に位置決めでき、有利である。
【0009】
なお、本発明において、上記筒状体としては、金属メッシュのように所定径の金属製線材を格子状に組み付けてなるもの、パンチングメタルのように金属製板材に蒸気が通過する円形またはスリット状の開口(透孔)を開設したものや、エキスパンドメタルを筒状に成形したものを用いることができ、他方で、上記筒状体を多孔質のセラミックスのように蒸気が通過する多数の細孔を有する多孔質体で構成することもできる。また、蒸気が通過する透孔を有するものであれば、複数の金属メッシュを重ねて厚みを持たせたものや、金属製線材を絡ませて不織布状に形成したもので上記筒状体を構成することもできる。例えば、上記筒状体を金属メッシュで構成する場合、その線径が、Φ0.2〜1.0mmの範囲で、昇華した材料の連通を許容する透孔となる網目の大きさが、#10〜#50の範囲とすることが好ましい。このような金属メッシュであれば、粉状の材料を充填しても、一般にアルミキノリノール錯体や芳香族ジアミンなどの昇華性の材料(有機材料)は凝集性があるため、各網目から殆ど漏れ出ることなく積み上げられ、また、その一部が漏れ出たとして、外容器の内底壁に積もるだけで、その後に外容器が加熱されたときに昇華するので、特段の問題は生じない。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】(a)は、本発明の実施形態の蒸着源を備える真空蒸着装置を模式的に示す断面図。(b)は、蒸着源を分解して説明する断面図。
【
図2】(a)は、本発明の蒸着源からの昇華した材料の飛散の様子を示す部分拡大断面図。(b)は、従来例の蒸着源からの昇華した材料の飛散の様子を示す部分拡大断面図。
【
図3】加熱温度に対する蒸着レートの変化を説明するグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して、被蒸着物を矩形の輪郭を持つ所定厚さのガラス基板(以下、「基板Sw」という)、蒸着物質を昇華性の有機材料とし、基板Swの一方の面に所定の薄膜を蒸着する場合を例に本発明の真空蒸着装置用の蒸着源の実施形態を説明する。以下において、「上」、「下」といった方向を示す用語は、真空蒸着装置の設置姿勢を示す
図1を基準にする。
【0012】
図1を参照して、Dmは、本実施形態の蒸着源DSを備える真空蒸着装置である。真空蒸着装置Dmは、真空チャンバ1を備え、真空チャンバ1には、特に図示して説明しないが、排気管を介して真空ポンプが接続され、所定圧力(真空度)に真空引きして真空雰囲気を形成できるようになっている。また、真空チャンバ1の上部には基板搬送装置2が設けられている。基板搬送装置2は、成膜面としての下面を開放した状態で基板Swを保持するキャリア21を有し、図外の駆動装置によってキャリア21、ひいては基板Swを真空チャンバ1内の一方向に所定速度で移動するようになっている。基板搬送装置2としては公知のものが利用できるため、これ以上の説明は省略する。
【0013】
基板搬送装置2によって搬送される基板Swと蒸着源DSとの間には、板状のマスクプレート3が設けられている。本実施形態では、マスクプレート3は、基板Swと一体に取り付けられて基板Swと共に基板搬送装置2によって搬送されるようになっている。なお、マスクプレート3は、真空チャンバ1に予め固定配置しておくこともできる。マスクプレート3には、板厚方向に貫通する複数の開口31が形成され、これら開口31がない位置にて昇華した材料の基板Swに対する蒸着範囲が制限されることで所定のパターンで基板Swに成膜(蒸着)されるようになっている。マスクプレート3としては、インバー、アルミ、アルミナやステンレス等の金属製の他、ポリイミド等の樹脂製のものが用いられる。そして、真空チャンバ1の底面には、基板Swに対向させて本実施形態の蒸着源DSが設けられている。
【0014】
蒸着源DSは、本実施形態の外容器を構成する坩堝4を有する。坩堝4は、鉛直方向上面を開口した有底筒状の輪郭を有し、モリブデン、チタン、ステンレスやカーボンなどの熱伝導が良く、高融点の材料から形成されている。この場合、坩堝4の上面開口41が本実施形態における昇華した材料の噴出口を構成する。坩堝4の周囲には、シースヒータやランプヒータ等の公知のものからなる加熱手段Htが設けられている。そして、坩堝4に、本実施形態の内容器を構成する筒状体5が内挿される。筒状体5は、坩堝4と同様、モリブデン、チタンやステンレスなどの熱伝導が良く、高融点の材料で構成され、本実施形態では、線材51を格子状に組み付けてなる金属メッシュを有底筒状の輪郭を持つように成形したものであり、金属メッシュの各網目52の部分が本実施形態の透孔を構成するようになっている。この場合、線材51の線径は、Φ0.2〜1.0mmの範囲で、また、網目52の大きさは、#10〜#50の範囲とすることが好ましい。網目(開口)52が大きすぎると、材料を保持できないといった不具合が生じる一方で、網目52が小さすぎると、昇華した材料の通過が阻害されるといった不具合が生じる。
【0015】
筒状体5の外底壁53には、棒状の脚片54が間隔を存して複数立設されている。また、本実施形態の外側壁を構成する筒状体5の外周壁55には、棒状のスペーサ部材56が坩堝4の内底壁42から同一の高さ位置でかつ周方向に間隔を存して複数立設されている。大気圧下の真空チャンバ1内で坩堝4に筒状体5を設置する場合、坩堝4の上面開口41に、筒状体5をその脚片54側から挿入し、各スペーサ部材56を、本実施形態の内側壁を構成する坩堝4の内周面43に沿って摺動させながら筒状体5を下方に移動させる。そして、各脚片54が坩堝4の内底面42に当接すると、坩堝4に筒状体5が同心に位置決め設置される。この状態では、坩堝4の内周面43と筒状体5の外周壁55との間に、スペーサ部材56の長さに相当する隙間W1からなる第1空間6aが画成され、これに加えて、坩堝4の内底面42と筒状体5の外底壁53との間に、スペーサ部材56の長さに相当する隙間W2からなる第2空間6bが画成される。
【0016】
脚片54やスペーサ部材56の長さは、真空チャンバ1を真空雰囲気とした状態で加熱手段Htにより坩堝4を加熱したとき、この坩堝4からの輻射により効率よく加熱できる一方で、第1空間6a及び第2空間6bのコンダクタンスにより、昇華した有機材料が金属メッシュの各網目52から第1空間6a及び第2空間6bを経て坩堝4の上面開口41へと効率よく導くことができるように、1mm〜30mmの範囲に設定される。坩堝4に筒状体5を内挿した後、筒状体5に昇華性の有機材料7が充填される。
【0017】
本実施形態の蒸着源での蒸着に用いられる有機材料7としては、アルミキノリノール錯体(Alq
3)や芳香族ジアミンなどが挙げられ、粉末状にしたものが筒状体5の上面開口から充填されるようになっている。このように筒状体5に粉末状の有機材料7を充填しても、これらの有機材料7は凝集性があるため、金属メッシュの各網目52からは殆ど漏れ出ることなく積み上げられる。なお、その一部が漏れ出たとして、坩堝4の内底面42上に積もるだけで、その後に坩堝4が加熱されたときに昇華し、第1空間6a及び第2空間6bを経て坩堝4の上面開口41へと導かれるので、特段の問題は生じない。
【0018】
ここで、上記のような有機材料7は、一般に熱伝導率が悪く、その上、液相を経て気化する材料と異なり、加熱時、坩堝内での材料の対流は発生しない。このため、従来例の如く、有機材料7を坩堝Pc内に直接充填して蒸着する場合、
図2(a)に示すように、図外の加熱手段により坩堝Pcを加熱すると、直接伝熱する坩堝Pcの壁面に接触した有機材料7から昇華していくが、坩堝Pcの上面開口Poを臨む、充填した有機材料7の上層部分Puからは、昇華した有機材料7aが坩堝Pcの上面開口Poを通って基板(図示せず)に向けて飛散するが、それより下方に位置する下層部分Pdで昇華した有機材料7bは、その周囲に存在する比較的低温(言い換えると、未だ昇華温度まで加熱されていない)有機材料7と衝突して固体に戻ってしまう。結果として、限られた範囲からしか昇華した有機材料7が飛散しないことで、同一の圧力下での単位時間当たりの昇華量が少なくて被蒸着物に対する蒸着レートが低い。
【0019】
それに対して、本実施形態の蒸着源DSでは、真空雰囲気中で基板Swに有機材料7を蒸着する場合、加熱手段Htにより坩堝4を加熱すると、坩堝4からの輻射熱により各網目52を通して直接加熱される有機材料7や、輻射熱で加熱される金属メッシュの線材51から直接伝熱する有機材料7から昇華する。この昇華した有機材料71のうち、充填した有機材料7の上層部分からは直接坩堝4の上面開口41を通って、また、充填した有機材料7の下層部分からは、第1空間6aと第2空間6bのコンダクタンスにより、第1空間6aから、及び第2空間6bから第1空間6aを経て坩堝4の上面開口41へと導かれ、この噴出口から基板Swに向けて飛散される。
【0020】
このように本実施形態では、この昇華した有機材料71の殆どが金属メッシュの各網目52から取り出され、比較的低温の材料(つまり、非加熱の材料)と衝突して固体に戻ることが可及的に抑制されるため(言い換えると、昇華した材料が飛散していく面積が増加するため)、限られた範囲からしか昇華した材料が飛散しない上記従来例のものと比較して飛躍的に昇華量が増加し、被蒸着物に対する蒸着レートを高くすることができる。つまり、
図3に示すように、坩堝4,Pcの加熱温度に対する蒸着レートを測定すると、−〇−線で示す従来例のものと比較して、−●−線で示す本発明の実施形態のものでは、1.1〜2倍の蒸着レートが得られる。
【0021】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明の技術思想の範囲を逸脱しない限り、種々の変形が可能である。上記実施形態では、内容器として、金属メッシュを筒状に成形したものを例に説明したが、これに限定されるものではなく、パンチングメタルのように金属製板材に円形またはスリット状の開口(透孔)を開設したものを筒状に成形したものや、エキスパンドメタルを筒状に成形したものを用いることができ、他方で、上記筒状体を多孔質のセラミックスで構成することもでき、また、内容器の底壁に、必ずしも透孔を必要としない。この場合、透孔の孔径は、昇華した有機材料の通過を許容できるものであれば特に制限はなく、また、筒状体の外表面積に対する全透孔を合計総面積の比は、蒸着レートを考慮して適宜設定される。
【0022】
また、上記実施形態では、外容器として、上面を開口した坩堝4で構成するものを例に説明したが、第1空間6a及び第2空間6bのコンダクタンスを調整するために、坩堝4の上面に、少なくとも1本の噴射ノズルを設けた蓋体を装着するようにしてもよい。この場合、外容器としては、特に図示して説明しないが、収容箱の上面に噴射ノズルを列設したもの(所謂ラインソース)を用いることもできる。
【符号の説明】
【0023】
Dm…真空蒸着装置、DS…真空蒸着装置用の蒸着源、Ht…加熱手段、Sw…基板(被蒸着物)、1…真空チャンバ、4…坩堝(外容器)、41…上面開口(噴出口)、5…筒状体(内容器)、52…網目(透孔)。