【実施例】
【0043】
本発明を実施例に基づき説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
実施例1
(混合層形成工程)
試薬瓶にDGEBA(未硬化ポリマー、エポキシ樹脂:2,2−ビス(4−グリシジルオキサフェニル)プロパン)、PEG200(ポロゲン:ポリエチレングリコール、東京化成工業社製)、BACM(アミン硬化剤:4,4'−メチレンビス(シクロヘキシルアミン))を所定量加えて混合溶液を調製した。アミン活性水素のエポキシ基に対する比γ(2[NH
2]/[epoxy])が0.8〜1.5となるようにエポキシ樹脂とアミン硬化剤を計量し、これらモノマーの総量が30重量%となるようにポロゲンを加えた。
混合溶液をSUS基板に滴下して、熱硬化性樹脂とポロゲンとを含む混合物層を形成した。
【0044】
(熱硬化工程)
混合物層を、オーブンにて120℃、20分間及び80℃、30分間加熱することで、複数の孔を備えた接着層を形成した。
(除去工程)
その後、イオン交換水に一晩浸漬してポロゲンを除去し、常温、真空下で2時間乾燥させ白色のモノリス膜を得た。
SUS基板(SUS430)は、電子線で10mm×50mm×0.48mmに切断したものを用いた。
【0045】
作製したモノリス膜を以下の条件で観察した。
(1)作製したモノリス膜の表面モルフォロジーのSEM観察を、金属非蒸着、加速電圧0.8〜1.0kV、スポット径10で行った。SEM観察には走査型電子顕微鏡(VE−9800、KEYENCE社製)を用いた。
(2)作製した400〜600μm厚のモノリス膜をSUS基板からはがし、液体窒素で冷却した後ガラス棒で砕いたものについて、BET吸着法による空隙率測定を行った。BET吸着法による測定には、真空前処理装置(BELPREP−vacII、マイクロトラック・ベル社製)とガス吸着量測定装置(BELSORP−max、マイクロトラック・ベル社製)を用いた。
【0046】
(3)作製したモノリス膜をSUS基板からはがし、約1mm四方に切断した試料を用いて、窒素気流下(流量50mL/min)、昇温速度10℃/minでTG−DTA測定を行った.熱分解開始温度(T
d5)は水分の蒸発による重量変化が見られなくなった時の重量を基準として算出した。最大分解温度(T
max)はTG微分曲線の極大値として求めた。測定には、示差熱熱重量同時測定装置(DTG−60、島津製作所社製)を用いた。
【0047】
(加熱工程)
次に、所定の温度に加熱した熱プレス器の下部プレートに、モノリス膜を作製した金属基板、樹脂基板の順に接合面積10mm×10mmにて重ねて載せ、室温の上部プレートで一定時間〜0MPaの力で軽く押さえ、表1に記載した条件で熱溶着させて基板複合体を得た。樹脂基板はダイヤモンドカッターにて幅10mm×長さ50mmに切断した表1に示す6種の樹脂基板を用いた。
【0048】
表1中、PETはポリエチレンテレフタレート(タキロン社製)、PCはポリカーボネート(アズワン社製)、POMはポリオキシメチレン(アズワン社製)、ABSはアクリルニトリルブタジエンスチレン樹脂(アズワン社製)、PPはポリプロピレン(アズワン社製)、PEはポリエチレン(アズワン社製)を意味する。
【0049】
【表1】
【0050】
比較例1
モノリス膜を介在させないこと以外は、実施例1と同様にして金属基板と樹脂基板とからなる基板複合体を作製した。
【0051】
(試験、観察及び分析)
得られた基板複合体について、以下の試験、観察及び分析を行った。
(1)引張りせん断試験
基板複合体(試験片)を、つかみ具間距離50mm、試験片幅10mm、引張り速度1mm/minの条件の引張りせん断試験に付した。試験片厚さは表2の各樹脂基板の値とした。接合強度を式(1)より算出した(式中、L
maxは最大負荷を意味する)。
接合強度(MPa)=L
max(N)/100(mm
2) (1)
また、つかみ具間距離30mm、試験片幅10mm、引張り速度0.3mm/minで引張り試験を行い、ひずみが0.05〜0.25%となる範囲の傾きより基板複合体の弾性率を求めた。
【0052】
(2)破断面の観察
引張りせん断試験後の試験片について、金属基板側の破断面は金属非蒸着、加速電圧0.8〜1.0kV、スポット径10で、樹脂層側の破断面はAu蒸着(30〜45秒間スパッタリング)、加速電圧2.0〜3.0kV、スポット径8〜10の条件でSEMを用いて観察を行った。
【0053】
(評価)
(1)孔径、細孔数、空隙率
異なるアミン硬化剤の比率(γ=0.8、1.0及び1.2)で硬化させることにより得られたモノリス膜表面のSEM画像を
図2(a)〜(c)に、γに対する各パラメータ(空隙率及び平均孔径)のプロットの相関を
図3(a)及び(b)に、細孔数と平均孔径同士の相関を
図4に示す。モノリス膜表面の平均孔径及び単位面積当たりの細孔数はSEM画像より測定した。空隙率は各試験片についてモノリス膜の重量、膜厚、面積を測定し算出した密度ρと平滑なモノリス膜の密度ρ
0より式(2)を用いて計算した。
空隙率(%)=(1−ρ/ρ
0)×100 (2)
アミン硬化剤の比率を増やすほど、空隙率は下がり、平均孔径は大きくなるという傾向を得た。また、平均孔径の増大に対して、細孔数の対数値は線形的に減少するという相関が見られた。この結果から、アミン硬化剤の比率が多いほど架橋点密度も増大し、相分離後、より平滑な膜に近い構造が形成されると考えられる。以上より、アミン硬化剤の比率を調節することによって空隙率、孔径、細孔数を変化させることは可能であることが分かった。
【0054】
(2)BET比表面積
二種類のアミン硬化剤の比率(γ=1.0及び0.5)で硬化させたモノリス膜についてBET吸着測定を行った。γ=1.0で硬化させたモノリス膜の比表面積は、0.584m
2/g(N
2)及び0.662m
2/g(Kr)であった。また、γ=0.5で硬化させたモノリス膜の比表面積は、0.121m
2/g(N
2)であった。これら比表面積値から、γが大きい方が共連続構造を形成できることが推察される。
【0055】
(3)耐熱性
γ=0.8で硬化させた場合のモノリス膜について、熱重量分析により得られたTG−DTA曲線を
図5に示す。
図5中、実線は左縦軸と、点線は右縦軸と、温度との関係を意味する。100℃付近での吸熱を伴う重量減少は吸着水の蒸発と考えられ、196℃で一度停止した。その後200℃以降で再び重量減少が見られ、これは発熱を伴うことから熱分解と判断される。
【0056】
(4)せん断試験
(a)γ=0.99〜1.01で硬化させたモノリス膜を作製したSUS基板とPET基板(樹脂基板)を熱溶着させた基板複合体について、引張りせん断試験より得られた荷重−変位曲線を
図6に、式(1)より算出した接合強度を表2に示す。熱溶着は、
図7のようにSUS基板とPET基板の接合部のみを上下ステージに挟み、20秒間行った。熱溶着温度は170℃とした。
【0057】
熱溶着を20秒間行った場合、途中で基板破壊することなく接合強度を測定できた。極性樹脂であるPETは、SUS基板上に平滑なエポキシ硬化膜を作製することでも接合強度は増大したが、モノリス膜を作製することで更に接着強度を増大できた。
破断後の試験片を
図8に示す。
図8から、基板破壊が生じなかったことが分かる。
【0058】
【表2】
【0059】
(b)γ=0.98で硬化させたモノリス膜を作製したSUS基板とPET及びPC基板を熱溶着させた基板複合体について、引張りせん断試験より得られた荷重−変位曲線を
図9(a)及び(b)に、接合強度を表3に示す。熱溶着は
図10のようにSUS基板とPET及びSUS基板とPC基板全体を上下ステージに挟み、PET基板は100℃で180秒間、PC基板は200℃で180秒間行った。熱溶着温度は、ステージ内で基板が大変形せずかつ測定に十分な接合強度が得られる温度として、Tgよりそれぞれ30℃及び50℃高い温度に設定した。
【0060】
【表3】
【0061】
熱溶着温度を100℃に下げたため、PET基板との接合強度は170℃で熱溶着させた場合と比較して(表2参照)、総じて低い接合強度となった。
【0062】
(5)アミン添加量による破断面の違い
(a)PET
γ=1.19でモノリス膜を作製したSUS基板との基板複合体について、接合強度と破断形態をγ=0.98の場合とともに表4に示す。表4中、Mixは、破断がSUS界面とPET界面とで生ずる場合が混在していることを意味する。また、それぞれのアミン硬化剤の比率(γ)における破断後の試験片を
図11(a)及び(b)に、破断面を1000倍に拡大したSEM画像を
図12及び13に示す。
図12及び13中、(a)モノリス膜表面、(b)はPET表面の画像を意味する。
【0063】
【表4】
【0064】
アミン硬化剤の比率が多いとモノリス膜表面の孔径は大きくなるが、PETにおいて接合強度は低下する結果を得た。破断形態については、より強度が高いγ=0.98の場合にSUS基板/モノリス膜とPET基板/モノリス膜両方の界面での剥離が混在した。また、破断面のSEM画像より、γ=0.98の場合にPETがよりモノリス膜表面の細孔に入り込んでいることが分かった。モノリス膜表面の細孔に残っているPETはやや引き伸ばされた形状をしており、アンカー効果の発現が示唆される。これより、100℃という低い熱溶着条件では共連続構造の接合強度向上への寄与が大きいと考えられる。
【0065】
(b)PC
γ=1.55でモノリス膜を作製したSUS基板との基板複合体について、接合強度と破断形態をγ=0.98の場合とともに表5に示す。また、それぞれのアミン添加量における破断後の試験片のSEM画像を
図14(a)〜(c)に示す。
図14(a)は破断形態がSUS界面破断の場合、
図14(b)は凝集破壊の場合、
図14(c)はPC界面破断の場合の画像である。更に、γ=1.55の場合における破断面のSEM画像を
図15(a)及び(b)に示す。
図15(a)はモノリス膜表面の、
図15(b)はPC表面のSEM画像である。
【0066】
【表5】
【0067】
PCの場合、アミン硬化剤の比率が多くなると接合強度が増大する結果となった。また破断形態は、SUS基板/モノリス膜界面剥離、モノリス膜凝集破壊、そしてPC基板/モノリス膜界面剥離と全ての基板複合体において別々となり、SUS基板/モノリス膜界面の相互作用、PC基板/モノリス膜界面の相互作用、及びモノリス層の強度がほぼ同等であったと推測される。破断面のSEM画像はPC基板/モノリス膜界面剥離となったγ=1.55の場合のみ示した。
【0068】
(c)POM、ABS、PP、PE
γ=0.95〜1.04で硬化させたモノリス膜を作製したSUS基板と種々の樹脂基板を熱溶着させた基板複合体について、引張りせん断試験より得られた荷重−変位曲線の各樹脂における接合強度を表6に示す。
【0069】
【表6】
【0070】
そのままのSUS基板に熱溶着させた場合と比較すると、POM、PP、PEにおいては1.5〜3倍の接合強度増大が見られ、ABSでは30倍以上の増大となった。これより、接合強度増大には、モノリス膜の共連続構造が大きく寄与していることが分かる。
モノリス膜を作製したSUS基板と各樹脂基板との基板複合体について、POM、ABS、PP、PEの順に、破断後の試験片を
図16(a)〜(d)に、モノリス膜側の破断面SEM画像を
図17(a)〜(d)に、樹脂側の破断面SEM画像を
図18(a)〜(d)に示す。
【0071】
POM、PP、PEでは多数が樹脂基板/モノリス膜で界面剥離しており、一部SUS基板/モノリス膜と樹脂基板/モノリス膜界面での剥離が混在する破断形態が見られた。ABSではSUS基板/モノリス膜界面のみでの剥離例が多く見られた。また、SEM画像よりモノリス膜表面の細孔に樹脂が残っていることが分かった。POM、PP、PEでは樹脂が針状に引き伸ばされ、ABSでは樹脂があまり伸びずに破断した様子が観察された。これより、いずれの場合も熱溶着の際に溶融した樹脂がモノリス膜へ入り込んだことが確認され、共連続構造の寄与によってアンカー効果が発現したものと考えられる。
【0072】
(6)モルフォロジーと接合強度の相関
(a)膜厚
γ=0.95〜1.04とγ=1.24〜1.50で、表面モルフォロジーを揃えて作製したモノリス膜について、樹脂種毎の、膜厚に対するSUS基板/モノリス膜/樹脂の基板複合体の接合強度を
図19(a)〜(d)に示す。
図19(a)〜(d)は、樹脂基板にPOM、ABS、PP及びPEを使用したグラフである。また、
図19(a)において、○は孔径7.6±2.3μmで孔数1858±895個/mm
2、◇は孔径16.4±1.4μmで孔数376±275個/mm
2のプロットに対応する。
図19(b)において、○は孔径12.8±8.4μmで孔数1456±949個/mm
2、◇は孔径35.34±11.9μmで孔数128±39個/mm
2のプロットに対応する。
図19(c)において、○は孔径9.2±1.5μmで孔数1752±295個/mm
2のプロットに対応する。
図19(d)において、○は孔径6.4±0.6μmで孔数2276±426個/mm
2のプロットに対応する。
【0073】
POMでは、膜厚が厚くなるにつれて接合強度は減少する傾向を示した。これは接着剤による接合での一般的な傾向と類似するが、モノリス膜が厚いほど熱溶着の際の熱がPOMへ伝わりにくく、モノリス膜の表層部より深くに侵入していないという可能性が考えられる。ABSでは、比較的小さい孔径の場合では膜厚の増大に対して接合強度が低下する傾向が見られたが、孔径が大きい場合では膜厚が薄くても低い接合強度を示した。PPやPEについては明確な傾向は見られなかった。
【0074】
(b)平均孔径と単位面積当たり細孔数
膜厚を揃えてγ=0.83〜1.55の範囲で作製したモノリス膜について、モノリス膜表面の平均孔径、及び単位面積当たりの細孔数に対するSUS基板/モノリス膜/樹脂の基板複合体の接合強度をそれぞれ
図20(a)〜(d)及び
図21(a)〜(d)に示す。
図20(a)〜(d)及び
図21(a)〜(d)は、樹脂基板にPOM、ABS、PP及びPEを使用したグラフである。また、
図20(a)及び
図21(a)において、○は膜厚152±4μm、△は膜厚228±8μmのプロットに対応する。
図20(b)及び
図21(b)において、○は膜厚154±15μm、△は膜厚258±13μmのプロットに対応する。
図20(c)及び
図21(c)において、○は膜厚150±16μmのプロットに対応する。
図20(d)及び
図21(d)において、○は膜厚154±9μmのプロットに対応する。
図20(a)〜
図21(d)から、特にABSでは、モノリス膜表面の孔径が増大する(あるいは細孔数が減少する)と接合強度は低下する傾向が見られた。
【0075】
(c)細孔断面積
モノリス膜を作製したSUS基板と各樹脂との基板複合体について、モノリス膜表面の細孔断面積に対する接合強度のプロットを
図22(a)〜(d)に示す。細孔断面積は、接合面範囲のモノリス膜表面にある細孔の断面積を総計した値として、式(3)より算出した。
断面積(mm
2)=πr
2×n×100(mm
2) (3)
r:平均孔径、n:単位面積当たりの孔数
図22(a)〜(d)は、樹脂基板にPOM、ABS、PP及びPEを使用したグラフである。また、
図22(a)において、○は膜厚152±4μm、△は膜厚228±8μmのプロットに対応する。
図22(b)において、○は膜厚154±15μm、△は膜厚258±13μmのプロットに対応する。
図22(c)において、○は膜厚150±16μmのプロットに対応する。
図22(d)において、○は膜厚154±9μmのプロットに対応する。
【0076】
ABSでは、細孔断面積の増大に対して接合強度が低下する傾向が見られ、膜厚の薄い方がその低下はより顕著であった。一方、POM及びPEでは、ABSとは逆に、細孔断面積の増大に対して接合強度が増大する傾向が見られ、その増大は膜厚の薄い方がより顕著であった。膜厚が薄いとより顕著に傾向が出るのは、熱が樹脂により伝わり易く、モノリス膜の奥まで樹脂が入り込むためではないかと推測される。
【0077】
(d)モノリス膜表面積
モノリス膜を作製したSUS基板と各樹脂基板との基板複合体について、モノリス膜内部の表面積に対する接合強度のプロットを
図23(a)〜(d)に示す。モノリス膜表面積は、接合面範囲のモノリス膜内部について、平均孔径を有し互いに連結していない球状空隙を仮定した近似値であり、式(4)より算出した。
表面積(mm
2)=4πr
2×(t/2r)×n×100(mm
2) (4)
r:平均孔径、t:膜厚、n:単位面積当たりの孔数
図23(a)〜(d)は、樹脂基板にPOM、ABS、PP及びPEを使用したグラフである。また、
図23(a)において、○は膜厚152±4μm、△は膜厚228±8μmのプロットに対応する。
図23(b)において、○は膜厚154±15μm、△は膜厚258±13μmのプロットに対応する。
図23(c)において、○は膜厚150±16μmのプロットに対応する。
図23(d)において、○は膜厚154±9μmのプロットに対応する。
全体として細孔数の場合と同様の傾向であった。
【0078】
(e)モルフォロジーと破断面の相関
γ=0.83及びγ=1.19〜1.55の条件でモノリス膜を作製したSUS基板/モノリス膜/樹脂の基板複合体について、破断面のSEM画像を
図24(a)〜
図27(d)に示す。これら図において、(a)〜(d)は、樹脂基板にPOM、ABS、PP及びPEを使用した場合の画像である。
図24及び25は、γ=0.83の場合、モノリス膜側の破断面及び樹脂基板側の破断面の画像であり、
図26及び27は、γ=1.19〜1.55の場合、モノリス膜側の破断面及び樹脂基板側の破断面の画像である。
【0079】
POM、PP、PEでは、孔径が小さい場合は針状に変形した樹脂が一つの細孔から一本ずつ伸びているが、孔径が大きい場合は一つの細孔から複数の針状樹脂が伸びている様子が見られた。ABSでは、孔径が大きいほど細孔に対して残った樹脂の占める面積が小さくなっている様子が見られた。また、特にABSやPEで、孔径が大きい場合の樹脂破断面では、細孔の中の微細構造を反映した形状が見られた。この粒子凝集状の微細構造は、相分離によって共連続構造が形成された後に、残った液相のポリマー分率から再度相分離が進行してできたものと考えられる。
【0080】
実施例2
モノリス膜の製造に際して、表7に示す温度条件を変えること以外は実施例1と同様にしてモノリス膜及び基板複合体を得た。得られたモノリス膜のSEM画像を
図28に示す。
【0081】
【表7】
【0082】
(1)せん断試験
共連続構造及び粒子凝集構造のモノリス膜を作製したSUS基板にPE基板を100℃で60秒熱溶着させた基板複合体について、引張りせん断試験より得られた荷重−変位曲線を
図29、接着強度を表8に示す。
図29中、実線が粒子凝集型に、点線が共連続構造のモノリス膜に対応する。
【0083】
【表8】
【0084】
共連続構造のモノリス膜の場合と比較して、粒子凝集型のモノリス膜の試験片はほぼ同様の接合強度を示した。この結果は、連結した粒子の隙間に樹脂が入り込み、共連続構造の場合と同様のアンカー効果を発現したためと推察される。
【0085】
(2)破断面の観察
粒子凝集型モノリス膜を作製したSUS基板/モノリス膜/PEの基板複合体の破断形態を
図30、モノリス膜側の破断面SEM画像を
図31(a)に、PE基板側の破断面SEM画像を
図31(b)に示す。
破断形態はPE基板/モノリス膜界面での剥離であった。共連続構造のモノリス膜の場合と同様に、連結した粒子の隙間から針状の樹脂が伸びていることから、粒子凝集構造でもアンカー効果が発現していると推察される。
【0086】
実施例3
SUS基板をCu基板に変更し、アミン活性水素のエポキシ基に対する比γ(2[NH
2]/[epoxy])を1.02とし、エポキシ樹脂とアミン硬化剤の総量が29.8重量%となるようにポロゲンを加えたこと以外は実施例1と同様にしてCu基板/モノリス膜複合体を得た。
上記Cu基板/モノリス膜複合体上に、実施例1と同じ条件で、6種の樹脂基板(POM、ABS、PP、PE、PET及びPC製)を熱融着させてCu基板/モノリス膜/樹脂の基板複合体を得た。得られた基板複合体を実施例と同じ引張りせん断試験に付した。樹脂基板としてPOM、ABS、PP及びPEを用いた基板複合体の引張りせん断試験より得られた荷重−変位曲線を
図32(a)〜(d)に、POM、ABS、PP、PE、PET及びPCを用いた基板複合体の接合強度を表9に示す。
【0087】
比較例2
モノリス膜を介在させないこと以外は、実施例3と同様にしてCu基板と樹脂基板とからなる基板複合体を作製した。得られた基板複合体を実施例と同じ引張りせん断試験に付した。結果を表9に示す。
【0088】
【表9】
【0089】
樹脂基板をそのままCu基板に熱溶着させた場合は、低い接合強度しか得られなかった。一方、モノリス膜を作製した場合は、接合強度が増大した。熱溶着温度を高くする、あるいは熱溶着時間を長くすることにより、高い接合強度が得られた。また、熱溶着温度を高く、かつ熱溶着時間を長くすることによって高い接合強度が得られた。上記に示した範囲の熱溶着温度より更に高い温度で熱溶着を行う、あるいは上記に示した範囲の熱溶着時間より更に長い温度で熱溶着を行うと、樹脂基板の変形が起こる頻度が高くなり、接合強度にばらつきが生じて正確な接合強度の測定が困難になった。
【0090】
実施例4
SUS基板をAl基板に変更すること以外は実施例1と同様にしてAl基板/モノリス膜/樹脂の基板複合体を得た。また、モノリス膜を使用しないこと以外は、Al基板/モノリス膜/樹脂の基板複合体と同様にして、Al基板/樹脂基板複合体を得た。尚、Al基板はPカッターで10mm×50mm×0.52mmに切断したものを用いた。Al基板はあらかじめ表面処理を施してから使用した。Al基板を10重量%の水酸化ナトリウム水溶液に室温で2.5分から10分間浸漬することによりAl基板表面の前処理を行った後、Al基板上にモノリス膜を作製した。処理後のAl基板上に4種の樹脂基板(POM、ABS、PP及びPE製)を熱融着させてAl基板/モノリス膜/樹脂の基板複合体を得た。得られた基板複合体を実施例1と同じ引張りせん断試験に付した。結果を表10に示す。
【0091】
比較例3
モノリス膜を介在させず、Al基板表面の前処理を行わないこと以外は、実施例4と同様にしてAl基板と樹脂基板とからなるAl基板/樹脂の基板複合体を作製した。得られた基板複合体を実施例と同じ引張りせん断試験に付した。結果を表10に示す。
【0092】
【表10】
【0093】
樹脂基板をそのままAl基板に熱溶着させた場合では、測定不能なほどに低い接合強度しか得られなかった。一方、モノリス膜を作製した場合、Al基板/モノリス膜/樹脂の基板複合体の接合強度は増大した。樹脂基板としてABSを用いたAl基板/モノリス膜/樹脂の基板複合体では、前処理時間2.5分から5分間の範囲で前処理時間が長くなるほど接合強度は大きくなった。樹脂基板としてPPあるいはPEを用いたAl基板/モノリス膜/樹脂の基板複合体では、前処理時間2.5分から10分間の範囲で前処理時間が長くなるほど接合強度は大きくなった。
【0094】
未処理のAl基板表面のSEM画像を
図33(a)に、Al基板を10重量%の水酸化ナトリウム水溶液に室温で5分間浸漬した後のAl基板表面の形態を
図33(b)に示す。水酸化ナトリウム水溶液を用いる前処理によってAl基板表面の酸化膜が除去されていることが分かる。このように酸化膜の除去ならびに表面平滑性の低減によって、Al基板へのエポキシモノリス膜をより固定できる。
ここで、Al基板表面の前処理は、アルカリ処理によって行うことができるが、一般にAl基板表面の前処理法として知られているものであれば特に制限はなく、酸を用いても前処理を行うことができる。また、ブラスト処理によっても前処理を行うことができる。
【0095】
実施例5
SUS基板をAl基板に変更すること、及びAl基板表面をブラスト処理によって前処理すること以外は実施例1と同様にして、Al基板/モノリス膜/樹脂の基板複合体を得た。ブラスト処理には、金属やすりあるいはサンドシート(シャイネックス社製サンドシート極荒#80、ST−01、ナイロン不織布製研磨粒子付き)を使用し、10分間金属基板表面を研磨した。得られた基板複合体を実施例1と同じ引張りせん断試験に付した。結果を表11に示す。
【0096】
【表11】
【0097】
表11に示すように、金属やすりあるいはサンドシートを用いてブラスト処理を行うことにより、接合強度の向上がみられた。エポキシモノリス膜が介在しない直接接合では全く接合強度が得られない樹脂との組み合わせにおいても、POMやABSの結果からわかるように、エポキシモノリス膜が介在することによりわずかながら接合強度が発現し、金属やすりあるいはサンドシートを用いたブラスト処理によりいずれの樹脂との組みあわせにおいても更に接合強度が増大した。
【0098】
実施例6
SUS基板表面を金属やすりによりブラスト処理すること以外は実施例1と同様にして、SUS基板/モノリス膜/PETの基板複合体を得た。ブラスト処理には、金属やすりを使用し、10分間金属基板表面を研磨した。得られた基板複合体を実施例1と同じ引張りせん断試験に付した。結果を表12に示す。
【0099】
【表12】
【0100】
表12に示すように、金属やすりを用いてSUS基板のブラスト処理を行うことにより、SUS基板/モノリス膜/PET複合体に対する接合強度の向上がみられた。このように、SUS基板/モノリス膜/PET複合体は、3.31MPaから6.09MPaの高い値を示し、アンカー効果の発現によってモノリス膜とPET間が強固に接合するため、他の接合部位であるSUS基板とモノリス膜間の接合も十分な強度をもつことが必要となる。SUS基板とモノリス膜間の接合には、通常の接着メカニズムを利用しているため、SUS基板表面を前処理することによって、接合強度を向上させることができる。
【0101】
実施例7
アミン活性水素のエポキシ基に対する比γ(2[NH
2]/[epoxy])を1.03〜1.11の範囲とし、モノマーの総量(エポキシ樹脂とアミン硬化剤の合計量)とポロゲンとの合計量に対するモノマーの総量(ω重量%)を30.1〜31.3の範囲に調製すること以外は実施例1と同様にしてSUS基板/モノリス膜複合体を得た。モノリス膜表面のSEM画像を
図34に示す。
【0102】
次に、上記SUS基板/モノリス膜複合体とPETからなる樹脂基板とを使用し、PET基板に対して100℃から160℃の範囲の熱溶着温度及び30秒から270秒間の範囲の熱溶着時間(表13に示す加熱条件)とすること以外は実施例1と同様にして接着強度を測定した。結果を表13に示す。
【0103】
【表13】
【0104】
硬化させたモノリス膜を作製したSUS基板とPET基板を熱溶着させた基板複合体について、引張りせん断試験より得られた接合強度は、熱溶着温度を高くする、あるいは熱溶着時間を長くすることにより、高い接合強度が得られた。熱溶着温度が140℃の場合、熱溶着時間とともに接合強度は増大し、熱溶着時間が150秒で最大値を示した。
【0105】
実施例8
実施例7と同様にして、SUS基板/モノリス膜複合体とPCからなる樹脂基板とを使用し、PC基板に対して180℃から200℃の範囲の熱溶着温度及び180秒から360秒間の範囲の熱溶着時間とすること以外は実施例7と同様にして接着強度を測定した。ここで用いた熱溶着温度ならびに熱溶着時間の範囲は、PC基板が大変形せずかつ測定に十分な接合強度が得られる温度の範囲とした。結果を表14に示す。
【表14】
【0106】
熱溶着温度を高くする、あるいは熱溶着時間を長くすることにより、高い接合強度が得られた。また、熱溶着温度を高く、かつ熱溶着時間を長くすることによって高い接合強度が得られた。熱溶着温度が180℃の場合、熱溶着時間とともに接合強度は増大し、熱溶着時間が280秒で最大値を示した。熱溶着温度が200℃の場合、熱溶着時間とともに接合強度は増大し、熱溶着時間が220秒で最大値を示した。
【0107】
実施例1から実施例5で示した方法を組みあわせ、加熱温度、加熱時間、金属基板の前処理を組み合わせて使用することもでき、これら種々の条件で作製した金属基板/モノリス膜/樹脂の基板複合体の最大接合強度の比較を表15に示す。SUS基板/モノリス膜複合体、Cu基板/モノリス膜複合体、及びAl基板/モノリス膜複合体と、POM、ABS、PP、PE、PET及びPCの組みあわせからなる金属基板/モノリス膜/樹脂複合体の接合強度は、SUS基板/モノリス膜/樹脂複合体に対して1.22MPaから5.13MPaの値を、Cu基板/モノリス膜/樹脂複合体に対して2.41MPaから6.88MPaの値を、及びAl基板/モノリス膜/樹脂複合体に対して0.71MPaから3.35MPaの値を示し、いずれの組みあわせの複合体に対しても、モノリス膜を用いない場合の比較例1から比較例4で示した0MPaから0.85MPaに比べて高い値を示し、アンカー効果によって高い接合強度が得られた。ここで表15に示した値は、それぞれの組みあわせの材料に対する上限値を示すものではなく、表に示した接合条件において、アンカー効果の発現によって接合強度の増大が得られたことを示すものである。
【0108】
【表15】
【0109】
実施例9
アミン活性水素のエポキシ基に対する比γ(2[NH
2]/[epoxy])を1.07とし、エポキシ樹脂とアミン硬化剤の総量が30.6重量%となるようにポロゲンを加えたこと以外は実施例1と同様にしてSUS基板/モノリス膜複合体を得た。得られたモノリス膜のSEM画像を
図35に示す。
モノリス膜上に木工用ボンド(コニシ社製、品番#10122、成分:酢酸ビニル樹脂41%、水59%)を0.1g/cm
2の量で塗布し、得られた塗膜上に木材(ラワン材、厚さ3mm)を25kg/m
2の力でSUS基板に向けて押圧し、一晩静置することで、SUS基板と木材とを接着した。得られた基板複合体を、引張速度を0.1mm/minとすること以外は実施例1と同じ引張りせん断試験に付した。結果を表16に示す。
【0110】
比較例4
モノリス膜を介在させないこと以外は、実施例9と同様にしてSUS基板と木材とを木工用ボンドで接着した。得られた基板複合体を実施例9と同じ引張りせん断試験に付した。結果を表16に示す。
【0111】
【表16】
【0112】
モノリス膜を介した方が、SUS基板と木材とを強く接着できることが分かる。なお、引張りせん断試験に接着強度を得るために応力(stress:MPa)を縦軸とし、伸び(strain:%)を横軸としてプロットしたグラフを
図36に示す。ピークの応力が、接着強度を意味する。
実施例9の基板複合体を引張りせん断試験も付した後の試験片について、木材側とモノリス膜側の破断面のSEM画像を
図37(a)及び(b)に示す。また、比較例4の基板複合体を引張りせん断試験に付した後の試験片について、木材側の破断面のSEM画像を
図37(c)に示す。モノリス膜を介した場合、
図37(a)より、接着剤が破断していることが示されており、かつ
図37(b)より、接着剤がモノリス膜表面の細孔に入り込んでおり、アンカー効果の発現が示唆される。モノリス膜を介在させない場合、
図37(c)より、アンカー効果が全く発現していないことが示唆される。
【0113】
実施例10
アミン活性水素のエポキシ基に対する比γ(2[NH
2]/[epoxy])を1.23とし、エポキシ樹脂とアミン硬化剤の総量が30.2重量%となるようにポロゲンを加えたこと以外は実施例1と同様にしてSUS基板/モノリス膜複合体を得た。
モノリス膜上にプラモデル用接着剤(セメダイン社製、プラモデル用接着剤、スチロール樹脂:14%、アセトンとシクロヘキサンと酢酸ブチルの合計:86%)を0.05g/cm
2の量で塗布し、得られた塗膜上にポリスチレン板(HIKARI社製PS2031−1、厚さ1mm)を25kg/m
2の力でSUS基板に向けて押圧し、一晩静置することで、SUS基板とポリスチレン基板とを接着した。得られた基板複合体を、実施例9と同じ引張りせん断試験に付した。結果を表17に示す。
【0114】
比較例5
モノリス膜を介在させないこと以外は、実施例10と同様にしてSUS基板とポリスチレン板とをプラモデル用接着剤で接着した。得られた基板複合体を実施例10と同じ引張りせん断試験に付した。結果を表17に示す。
【0115】
【表17】
【0116】
モノリス膜を介した方が、SUS基板とポリスチレン基板とを強く接着できることが分かる。なお、引張りせん断試験に接着強度を得るために応力(stress:MPa)を縦軸とし、伸び(strain:%)を横軸としてプロットしたグラフを
図38に示す。ピークの応力が、接着強度を意味する。
実施例10の基板複合体を引張りせん断試験も付した後の試験片について、モノリス膜側の破断面のSEM画像を
図39に示す。モノリス膜を介した場合、接着剤がモノリス膜表面の細孔に入り込んでおり、アンカー効果の発現が示唆される。
【0117】
実施例11
アミン活性水素のエポキシ基に対する比γ(2[NH
2]/[epoxy])を1.24とし、エポキシ樹脂とアミン硬化剤の総量が30.2重量%となるようにポロゲンを加えたこと以外は実施例1と同様にしてSUS基板/モノリス膜複合体を得た。
ポリスチレン基板上に、1cm
2面積あたり、パスツールピペットを用いてトルエンを数滴(約0.05mL)滴下し、室温で10分間放置した後、ポリスチレン基板と、基板上にモノリス膜を作製したSUS基板とをダブルクリップ(幅15mm)で挟み一晩室温で放置後、70℃に加熱した真空オーブン中で1時間真空乾燥することで残ったトルエンを除去し、SUS基板とポリスチレン基板とを接着した。得られた基板複合体を、実施例9と同じ引張りせん断試験に付した。結果を表18に示す。
【0118】
比較例6
モノリス膜を介在させないこと以外は、実施例11と同様にしてSUS基板とポリスチレン基板とをトルエンで接着した。得られた基板複合体を実施例11と同じ引張りせん断試験に付した。結果を表18に示す。
【0119】
【表18】
【0120】
モノリス膜を介した方が、SUS基板とポリスチレン基板とを強く接着できることが分かる。なお、引張りせん断試験において接着強度を得るために応力(stress:MPa)を縦軸とし、伸び(strain:%)を横軸としてプロットしたグラフを
図40に示す。ピークの応力が、接着強度を意味する。
実施例11の基板複合体を引張りせん断試験も付した後の試験片について、ポリスチレン基板側とモノリス膜側の破断面のSEM画像を
図41(a)及び(b)に示す。モノリス膜を介した場合、
図41(a)より、ポリスチレンが破断していることが示されており、かつ
図41(b)より、ポリスチレンがモノリス膜表面の細孔に入り込んでおり、アンカー効果の発現が示唆される。
【0121】
実施例12
アミン活性水素のエポキシ基に対する比γ(2[NH
2]/[epoxy])を1.23とし、エポキシ樹脂とアミン硬化剤の総量が29.8重量%となるようにポロゲンを加えたこと以外は実施例1と同様にしてSUS基板/モノリス膜複合体を得た。
ポリメタクリル酸メチル(PMMA)基板上に、パスツールピペットを用いてアセトンを数滴(約0.05mL)滴下し、5分間放置した後、PMMA基板と、基板上にモノリス膜を作製したSUS基板とをダブルクリップ(幅15mm)で挟み、一晩室温で放置し、SUS基板とPMMA基板とを接着した。得られた基板複合体を、実施例9と同じ引張りせん断試験に付した。結果を表19に示す。
【0122】
比較例7
モノリス膜を介在させないこと以外は、実施例12と同様にしてSUS基板とPMMA板とをアセトンで接着した。得られた基板複合体を実施例12と同じ引張りせん断試験に付した。結果を表19に示す。
【0123】
【表19】
【0124】
モノリス膜を介した方が、SUS基板とPMMA基板とを強く接着できることが分かる。なお、引張りせん断試験において接着強度を得るために応力(stress:MPa)を縦軸とし、伸び(strain:%)を横軸としてプロットしたグラフを
図42に示す。ピークの応力が、接着強度を意味する。
実施例12の基板複合体を引張りせん断試験も付した後の試験片について、PMMA基板側とモノリス膜側の破断面のSEM画像を
図43(a)及び(b)に示す。モノリス膜を介した場合、
図43(a)より、PMMAが破断していることが示されており、かつ
図43(b)より、PMMAがモノリス膜表面の細孔に入り込んでおり、アンカー効果の発現が示唆される。
【0125】
実施例13
(モノリスシートの作製)
アミン活性水素のエポキシ基に対する比γ(2[NH
2]/[epoxy])を1.22とし、エポキシ樹脂とアミン硬化剤の総量が30.0重量%となるようにポロゲンを加え、表面未処理のAl基板上で作製したこと以外は実施例1と同様にしてAl基板/モノリス膜複合体を得た。Al基板/モノリス膜複合体の写真を
図44に示す。モノリス膜と未処理のAl基板の接着力は小さいため、Al基板上に作製したモノリス膜は容易にはく離でき、
図45に示すようなシート状のモノリス膜(以降、基板からはく離したモノリス膜をモノリスシートと称する)が得られる。上記の方法で作製したモノリスシートの膜厚は、0.328±0.049mmであった。
【0126】
モノリスシートの両面のうち、片面は実施例1で作製したAl基板上のモノリス膜の表面と同様の形状からなり(これをモノリス面と呼ぶ)、他面は、表面に細孔が観察されない平滑な面(これを平滑面と呼ぶ)を有する。モノリスシートの表面の形状を示すSEM画像を
図46に示す。
図46(a)は、モノリスシート作製時のAl基板と反対側の多孔構造(モノリス面)を、
図46(b)は、モノリスシート作製時のAl基板と接触していた面の平滑構造(平滑面)を示す。
ここで、モノリスシートを作製するために用いる基板として、モノリス膜と接着性の低い材料であれば、Al基板以外のものも使用でき、テフロン(登録商標)基板やPE基板やPP基板等のポリオレフィン基板をもちいることができる。また、モノリスシートの膜厚は、単位面積あたりに塗布するエポキシ樹脂、アミン硬化剤、及びポロゲンの量を調整することにより可能である。
また、モノリスシート作製時に希釈剤を用いて、モノリスシートの膜厚を小さくすることができる。モノリスシートは、多孔構造(モノリス面)と平滑構造(平滑面)を有するモノリスシートを単独で用いてもよく、それらを複数同時に用いてもよい。また、2枚のモノリスシートの平滑面どうしを貼り合わせると、両面に多孔構造(モノリス面)を有するモノリスシートとして用いることができる。2枚のモノリスシートの貼り合わせは、あらかじめ行ってもよく、基板複合体の作製と同時に行ってもよく、また、基板複合体を作製後に行ってもよい。更に、モノリスシートの平滑構造(平滑面)を多孔構造が露出するまで除去することによって、両面に多孔構造(モノリス面)を有するモノリスシートとして用いてもよい。
【0127】
(基板複合体の作製)
モノリスシートのモノリス面にプラモデル用接着剤(セメダイン社製、プラモデル用接着剤、スチロール樹脂:14%、アセトンとシクロヘキサンと酢酸ブチルの合計:86%)を0.05g/cm
2の量で塗布し、モノリス膜上に得られた塗膜上にポリスチレン基板(HIKARI社製PS2031−1、厚さ1mm)を25kg/m
2の力で押圧し、ポリスチレン基板とモノリスシートとを接着した。
次に、別のモノリスシートのモノリス面に二液型エポキシ接着剤(ニチバン社製Araldite、品番AR−30、主剤 エポキシ樹脂90%、その他10%、硬化剤 変性ポリアミン90%、その他10%)を0.05g/cm
2の量で塗布し、モノリス膜上に得られた塗膜上に25kg/m
2の力でSUS基板を押圧し、SUS基板とモノリスシートとを接着した。
【0128】
上記の、ポリスチレン基板に接着したモノリスシートの平滑面と、SUS基板に接着したモノリスシートの平滑面に、それぞれ二液型エポキシ接着剤(ニチバン社製Araldite、品番AR−30、主剤 エポキシ樹脂90%、その他10%、硬化剤 変性ポリアミン90%、その他10%)を0.05g/cm
2の量で塗布し、モノリス膜上に得られた塗膜面を貼り合わせ、ダブルクリップ(幅15mm)で挟み一晩室温で放置し、ポリスチレン基板/モノリスシート/SUS基板複合体を得た。得られた基板複合体を、実施例9と同じ引張りせん断試験に付した。結果を表20に示す。
【0129】
引張りせん断試験に接着強度を得るために応力(stress:MPa)を縦軸とし、伸び(strain:%)を横軸としてプロットしたグラフを
図47に示す。ピークの応力が、接着強度を意味する。ポリスチレン基板/モノリスシート/SUS基板複合体に対して、0.88±0.01MPaの接着強度が得られた。実施例13の基板複合体を引張りせん断試験も付した後の試験片について、ポリスチレン基板側とモノリスシート側の破断面のSEM画像を
図48(a)及び(b)に示す。モノリス膜を介した場合、
図48(a)より、ポリスチレンが破断していることが示されており、かつ
図48(b)より、ポリスチレンがモノリスシート表面の細孔に入り込んでおり、アンカー効果の発現が示唆される。
【0130】
実施例14
実施例13と同様にして、作製したモノリスシートのモノリス面に木工用ボンド(コニシ社製、品番#10122、成分:酢酸ビニル樹脂41%、水59%)を0.1g/cm
2の量で塗布し、モノリス膜上に得られた塗膜上に木材(ラワン材、厚さ3mm)を25kg/m
2の力でSUS基板に向けて押圧し、一晩静置することで、SUS基板と木材とを接着した。
次に、別のモノリスシートのモノリス面に二液型エポキシ接着剤(ニチバン社製Araldite、品番AR−30、主剤 エポキシ樹脂90%、その他10%、硬化剤 変性ポリアミン90%、その他10%)を0.05g/cm
2の量で塗布し、モノリス膜上に得られた塗膜上に25kg/m
2の力でSUS基板を押圧し、SUS基板とモノリスシートとを接着した。
【0131】
上記の、木材に接着したモノリスシートの平滑面と、SUS基板に接着したモノリスシートの平滑面に、それぞれ二液型エポキシ接着剤(ニチバン社製Araldite、品番AR−30、主剤 エポキシ樹脂90%、その他10%、硬化剤 変性ポリアミン90%、その他10%)を0.05g/cm
2の量で塗布し、得られた塗膜面を貼り合わせ、ダブルクリップ(幅15mm)で挟み一晩室温で放置後、真空下、70℃で1時間加熱し、木材/モノリスシート/SUSの基板複合体を得た。得られた基板複合体を、実施例9と同じ引張りせん断試験に付した。結果を表20に示す。
【0132】
引張りせん断試験に接着強度を得るために応力(stress:MPa)を縦軸とし、伸び(strain:%)を横軸としてプロットしたグラフを
図49に示す。ピークの応力が、接着強度を意味する。木材/モノリスシート/SUSの基板複合体に対して、2.50±0.31MPaの接着強度が得られた。
【0133】
実施例15
実施例13と同様にして、作製したモノリスシートのモノリス面に木工用ボンド(コニシ社製、品番#10122、成分:酢酸ビニル樹脂41%、水59%)を0.1g/cm
2の量で塗布し、モノリス膜上に得られた塗膜上に木材(ラワン材、厚さ3mm)を25kg/m
2の力でSUS基板に向けて押圧し、一晩静置することで、SUS基板と木材とを接着した。
次に、別のモノリスシートのモノリス面にプラモデル用接着剤(セメダイン社製、プラモデル用接着剤、スチロール樹脂:14%、アセトンとシクロヘキサンと酢酸ブチルの合計:86%)を0.05g/cm
2の量で塗布し、モノリス膜上に得られた塗膜上にポリスチレン基板(HIKARI社製PS2031−1、厚さ1mm)を25kg/m
2の力で押圧し、ポリスチレン基板とモノリスシートとを接着した。
【0134】
上記の、木材に接着したモノリスシートの平滑面と、ポリスチレン基板に接着したモノリスシートの平滑面に、それぞれ二液型エポキシ接着剤(ニチバン社製Araldite、品番AR−30、主剤 エポキシ樹脂90%、その他10%、硬化剤 変性ポリアミン90%、その他10%)を0.05g/cm
2の量で塗布し、得られた塗膜面を貼り合わせ、ダブルクリップ(幅15mm)で挟み一晩室温で放置後、真空下、70℃で1時間加熱し、木材/モノリスシート/ポリスチレン基板の複合体を得た。得られた基板複合体を、実施例9と同じ引張りせん断試験に付した。結果を表20に示す。木材/モノリスシート/ポリスチレンの基板複合体に対して、0.68MPaの接着強度が得られた。
【0135】
実施例16
実施例13と同様にして、作製したモノリスシートのモノリス面にトルエンを0.1g/cm
2の量で塗布し、トルエンを塗布したモノリス面と、接合面にトルエンを0.1g/cm
2の量で塗布したPC基板のトルエンを塗布した面とを25kg/m
2の力で押圧し、ダブルクリップ(幅15mm)で挟み一晩室温で放置後、真空下、70℃で1時間加熱し、PC基板/モノリスシートの複合体を得た。次に、別のモノリスシートのモノリス面とPP基板とを170℃で60秒熱融着させてPP基板/モノリスシートの複合体を得た。
【0136】
PC基板/モノリスシートの複合体のモノリスシートの平滑面と、PP基板/モノリスシートの複合体の平滑面に、それぞれ二液型エポキシ接着剤(ニチバン社製Araldite、品番AR−30、主剤 エポキシ樹脂90%、その他10%、硬化剤 変性ポリアミン90%、その他10%)を0.05g/cm
2の量で塗布し、モノリスシートの平滑面どうしを25kg/m
2の力で押圧し、PC基板/モノリスシート複合体とPP基板/モノリスシートの複合体とを接着した。得られた基板複合体を、実施例9と同じ引張りせん断試験に付した。結果を表20に示す。PC基板/モノリスシート/モノリスシート/PP基板の複合体に対して、1.45MPaの接着強度が得られた。
【0137】
比較例8
木材(ラワン材、厚さ3mm)と、SUS基板とに、それぞれ二液型エポキシ接着剤(ニチバン社製Araldite、品番AR−30、主剤 エポキシ樹脂90%、その他10%、硬化剤 変性ポリアミン90%、その他10%)を0.05g/cm
2の量で塗布し、得られた塗膜面を貼り合わせ、ダブルクリップ(幅15mm)で挟み一晩室温で放置後、真空下、70℃で1時間加熱し、木材/SUS基板複合体を得た。得られた基板複合体を、実施例9と同じ引張りせん断試験に付した。結果を表20に示す。木材/SUS基板複合体に対して、0.103MPaの接着強度が得られた。
【0138】
比較例9
木材(ラワン材、厚さ3mm)に木工用ボンド(コニシ社製、品番#10122、成分:酢酸ビニル樹脂41%、水59%)を0.1g/cm
2の量で塗布し、得られた塗膜面をポリスチレン基板と貼り合わせ、ダブルクリップ(幅15mm)で挟み一晩室温で放置後、真空下、70℃で1時間加熱し、木材/SUSの基板複合体を得た。得られた基板複合体を、実施例9と同じ引張りせん断試験に付した。結果を表20に示す。木材/ポリスチレンの基板複合体に対して、0.27MPaの接着強度が得られた。
【0139】
比較例10
PC基板にトルエンを0.1g/cm
2の量で塗布し、PP基板と25kg/m
2の力で押圧し、ダブルクリップ(幅15mm)で挟み一晩室温で放置後、真空下、70℃で1時間加熱し、PC基板/PP基板の複合体を得た。得られた基板複合体を、実施例9と同じ引張りせん断試験に付した。結果を表21に示す。PC基板/PP基板複合体に対して、0.028MPaの接着強度が得られた。
【0140】
【表20】
【0141】
実施例13及び実施例14において、それぞれ実施例10及び実施例9の結果と同等の接着強度が得られ、モノリスシートを用いた基板複合体は、直接SUS板状にモノリス膜を作製した基板複合体と同様の接着強度を有することがわかる。また、実施例14及び実施例15において、それぞれ比較例8及び比較例9の結果に比べてそれぞれ高い接着強度が得られた。また、実施例16において、比較例10の結果に比べて高い接着強度が得られた。
【0142】
実施例17
アミン活性水素のエポキシ基に対する比γ(2[NH
2]/[epoxy])を1.25とし、エポキシ樹脂とアミン硬化剤の総量が30重量%となるようにポロゲンを加えたこと以外は実施例1と同様にしてSUS基板/モノリス膜複合体を得た。
SUS基板/モノリス膜複合体に、接着面積が50mm×150mmとなるように粘着テープ(ニチバン株式会社製、No.102N)を、2kgのハンドローラーを用いて、20mm/秒の速さで2往復させて圧着し、SUS基板/モノリス膜/粘着テープ複合を作製した。作製したSUS基板/モノリス膜/粘着テープ複合体を10mm/分の速度で180°剥離し、剥離強度を測定した。剥離強度は、剥離開始点から25mm以降に相当する部分の100mmの長さの剥離領域における平均荷重から求めた。結果を表21に示す。
【0143】
比較例11
ポロゲンを用いないことを除いて、実施例17と同様にして、SUS基板/エポキシ膜複合体を得た。ここでSUS基板上に形成されるエポキシ膜は、細孔を有さない密に詰まったバルク層のエポキシ膜であり、エポキシ表面上での細孔の有無、即ちアンカー効果の有無が剥離強度に及ぼす効果を明らかにするために用いた。結果を表21に示す。
【表21】
【0144】
実施例17において得られたSUS基板/モノリス膜/粘着テープ複合体の剥離強度は1.72±0.04N/cmであり、比較例11において得られた剥離強度1.29±0.12N/cmに比べて高く、モノリス膜のアンカー効果は粘着テープの剥離強度を増大した。