(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の発光素子用基板、モジュール、及び表示装置の各実施形態について説明する。本発明は、以下の実施形態に何ら限定されず、本発明の目的の範囲内において、適宜変更を加えて実施することができる。
【0023】
<発光素子用基板>
本発明の発光素子用基板について説明する。本発明に係る発光素子用基板1は、
図1に示す通り、可撓性を有する樹脂基板11の表面に、反射層18が配置されている。そして、反射層18の表面には、接着層12を介して、金属層等からなる導電性の金属配線部13が形成されている。又、発光素子用基板1は、発光素子2が実装される領域を除く部分を覆う態様で、その最表面に更に、表面反射材16を備えるものであってもよい。
【0024】
[反射層]
反射層18は、熱硬化性樹脂と、光反射性充填材と、を含有してなり光反射性を有する樹脂層である。反射層18の光反射性は、具体的には、波長450nmにおける反射率が80%以上であればよく、好ましくは85%以上である。波長450nmにおける反射率が80%以上、好ましくは85%以上であることによって、発光素子2からの光のうち、少なくともエネルギーが高くて樹脂基板損傷のリスクが高い波長450nm程度の青色の光が、樹脂基板11に到達することを抑制することができるため、これにより、発光素子2からの光による樹脂基板11の穴あき等の損傷のリスクを十分に低減することができる。尚、波長450nmにおける反射率は、例えば、JIS K7375−2008(プラスチック−全光線透過率及び全光線反射率)に準じる測定方法により、紫外可視分光光度計(島津製作所製紫外可視分光光度計UV−2550)を用いて、光を入射したときの光の反射率(%)により求めることができる。
【0025】
又、反射層18は、熱硬化性樹脂を主剤樹脂とし、以下に記す各種の白色顔料等の光反射性充填材を所定量範囲で含有する。反射層18の波長450nmにおける反射率を80%以上好ましくは85%以上とするために、反射層18中における光反射性充填材の含有量は、10質量%以上85質量%以下であればよく、30質量%以上85質量%以下であることがより好ましい。反射層18に含有させる光反射性充填材としては、酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化ケイ素、酸化チタン、酸化マグネシウム、酸化アンチモン、水酸化アルミニウム、硫酸バリウム、炭酸マグネシウム、炭酸バリウム及びガラスフィラー等の白色顔料から選ばれる少なくとも1種類以上の顔料を用いることができる。又、これらのうちでも、主剤樹脂との間における屈折率差がより大きい方が好ましいという観点から、屈折率2.5程度の酸化チタンを最も好ましく用いることができる。
【0026】
反射層18に用いる熱硬化性樹脂としては、例えば、フッ素樹脂とアクリル系樹脂との混合物又はシリコーン系樹脂、エポキシ樹脂等を挙げることができる。接着層12との密着性の熱硬化性樹脂はガラス転移温度(TG)が高いものが好ましい。
【0027】
上記のフッ素樹脂とアクリル系樹脂との混合物に用いられるフッ素樹脂としては、テトラフルオロエチレンとヒドロキシル基含有ビニルエーテルとの共重合物、クロロトリフルオロエチレンとヒドロキシル基含有ビニルエーテルとの共重合物等が例示される。これらの中でも、クロロトリフルオロエチレンとヒドロキシル基含有ビニルエーテルとの共重合物が好適に使用される。このような樹脂の一例として、質量平均分子量1000以上30000以下、水酸基価5mg/g以上200mg/g以下のクロロトリフルオロエチレンとジエチレングリコールモノアリルエーテルと酪酸ビニルとの共重合物が挙げられる。
【0028】
上記のフッ素樹脂とアクリル系樹脂との混合物に用いられるアクリル樹脂としては、アクリル酸−2−ヒドロキシエチル、アクリル酸−2−ヒドロキシプロピル、アクリル酸−2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル等のヒドロキシル基を有するアクリル化合物と、アクリル酸若しくはアルキル基としてメチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基、t−ブチル基、2−エチルヘキシル基、シクロヘキシル基等を有するアルキルアクリレート系モノマーと、を共重合させたものが挙げられる。又、共重合のために使用されるモノマーとして、更に、アクリルアミド、N−アルキルアクリルアミド、N,N−ジアルキルアクリルアミド(アルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基、t−ブチル基、2−エチルヘキシル基、シクロヘキシル基等が挙げられる)、N−アルコキシアクリルアミド、N,N−ジアルコキシアクリルアミド(アルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、ブトキシ基、イソブトキシ基等が挙げられる)、N−メチロールアクリルアミド、N−フェニルアクリルアミド等のアミド基含有モノマー、グリシジルアクリレート、アリルグリシジルエーテル等のグリシジル基含有モノマー、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル、マレイン酸、アルキルマレイン酸モノエステル、フマル酸、アルキルフマル酸モノエステル、イタコン酸、アルキルイタコン酸モノエステル、アクリロニトリル、塩化ビニリデン、エチレン、プロピレン、塩化ビニル、酢酸ビニル、ブタジエン等のエチレン性不飽和結合を有する各種の化合物を使用してもよい。これらの中でもアクリル酸メチルとアクリル酸2−エチルヘキシルとの共重合体、アクリル酸メチルとアクリル酸2−エチルヘキシルとアクリル酸ヒドロキシエチルとの共重合体が好適に使用される。又、このような樹脂の好ましい質量平均分子量としては、1000以上300000以下が挙げられる。
【0029】
反射層18は、例えば、これらの樹脂と硬化剤とを含有するコーティング液を塗布し乾燥することで形成することができる。例えば、複数の架橋性置換基を有する樹脂化合物とNCO基を有するポリイソシアネート化合物とを反応させ硬化することで形成することができる。
【0030】
反射層18の厚さは5μm以上250μm以下であることが好ましく、10μm以上100μm以下であることがより好ましく、20μm以上50μm以下であることが特に好ましい。反射層18の厚さが5μm未満である場合、可撓性を有する樹脂基板11の変形に十分に追随できずに反射層18に剥がれや欠けが生じる場合があるため好ましくない。一方、反射層の厚さが250μmを超えると、発光素子用基板1の十分な可撓性を保持することが難しくなり、又、重量増大によるハンドリング性の低下にもつながるおそれがある。
【0031】
以上説明した反射層18は、波長450nmにおける反射率が80%以上である。よって、これを備える発光素子用基板1は、青色発光素子用の基板として特に有用である。
【0032】
[樹脂基板]
樹脂基板11は、可撓性を有するフィルム状又はシート状のものである限り特に限定されないが、熱可塑性樹脂が用いられることが好ましい。本明細書において「可撓性を有する」とは、「曲率半径を通常1m、好ましくは50cm、より好ましくは30cm、更に好ましくは10cm、特に好ましくは5cmに曲げることが可能であることをいう。
【0033】
但し、樹脂基板11の材料には、使用目的に応じた所定の耐熱性及び絶縁性を有するものであることは求められる。このような樹脂として、耐熱性と加熱時の寸法安定性、機械的強度、及び耐久性に優れるポリイミド樹脂(PI)や、ポリエチレンナフタレート(PEN)を用いることができる。中でも、アニール処理等の耐熱性向上処理を施すことによって耐熱性と寸法安定性を向上させたポリエチレンナフタレート(PEN)を好ましく用いることができる。又、難燃性の無機フィラー等の添加によって難燃性を向上させたポリエチレンテレフタレート(PET)も樹脂基板11の材料樹脂として選択することができる。
【0034】
樹脂基板11は、熱収縮開始温度が100℃以上のもの、又は、上記のアニール処理等によって、同温度が100℃以上となるように耐熱性を向上させたものを用いることが好ましい。通常発光素子から発せられる熱により同素子周辺部は90℃程度の温度に達する。この観点から、基板樹脂を形成する熱可塑性樹脂は、上記温度以上の耐熱性を有するものであることが好ましい。
【0035】
尚、本明細書における「熱収縮開始温度」とは、TMA装置に測定対象の熱可塑性樹脂からなるサンプルフィルムをセットし、荷重1gをかけて、昇温速度2℃/分で120℃まで昇温し、その時の収縮量(%表示)を測定し、このデータを出力して温度と収縮量を記録したグラフから、収縮によって、0%のベースラインから離れる温度を読みとり、その温度を熱収縮開始温度としたものである。又、本明細書における「熱硬化温度」とは、測定対象の熱硬化型樹脂を加熱した際の熱硬化反応の立ち上がり位置の温度を測定算出し、その温度を熱硬化温度としたものである。
【0036】
又、発光素子用基板1には、例えば、LED表示装置のバックライト等としての一体化時に、発光素子用基板に必要とされる絶縁性を付与し得る絶縁性を有する樹脂であることが求められる。一般的には、基板は、その体積固有抵抗率が10
14Ω・cm以上であることが好ましく、10
18Ω・cm以上であることがより好ましい。尚、体積固有抵抗率の測定は、例えばエーディーシー製デジタル超高抵抗/微少電流計5450/5451等を用いることによって測定することができる。
【0037】
樹脂基板の厚さは、特に限定されないが、可撓性を有する樹脂基板とする場合には、耐熱性及び絶縁性と、製造コストのバランスとの観点から、概ね10μm以上100μm以下程度であることが好ましい。又、ロール・トゥ・ロール方式による製造を行う場合の生産性を良好に維持する観点からも上記厚さ範囲であることが好ましい。
【0038】
[接着層]
反射層18の表面への金属配線部13の形成は、接着層12を介したドライラミネート法によって行われることが好ましい。接着層12には、光反射性充填材が含有されていないか、又は、光反射性充填材が含有される場合、その含有量が40質量%以下であることが好ましい。又、接着層12は、全可視光線の85%以上を透過する光透過性の薄膜層であることが好ましい。このような接着層12を形成する接着剤として、公知の樹脂系接着剤を適宜用いることができる。それらの樹脂系接着剤のうち、ウレタン系、ポリカーボネート系、又はエポキシ系の接着剤等を特に好ましく用いることができる。
【0039】
接着層12は、接着強度の観点からは、光反射性充填材が含有されていないことが好ましいが、上記範囲内で光反射性充填材を含有させたものであってもよい。これにより、接着層12の接着強度を必要な範囲に維持しながら樹脂基板11への光の到達を低減することができる。接着層12に含有させることができる光反射性充填材としては、反射層18に含有させることができるものと同様の酸化チタン等の各種の白色顔料を用いることができる。
【0040】
[金属配線部]
金属配線部13は、金属層等の導電性基材によって形成される配線パターンである。金属配線部13は、
図1に示す通り、その一の部分と、当該一の部分と離間して形成される他の部分との間に、発光素子2が実装可能となるような形状で形成される。尚、このような発光素子用基板1においては、樹脂基板11の表面における発光素子2が実装されることが想定される領域内に、金属配線部13が形成されていない部分が存在する。この発光素子2の実装が想定される領域内であって、金属配線部13が存在しない水平領域のことを発光素子用基板1における金属配線部非存在領域17というものとする。反射層18は、少なくとも、この金属配線部非存在領域17において形成されていることが発光素子用基板1において必須である。
【0041】
金属配線部13の配置は、発光素子2を実装することができる配置であれば特定の配置等に限定されない。但し、発光素子用基板1においては、基板の一方の表面の少なくとも80%以上、好ましくは90%、より好ましくは95%以上の範囲が、この金属配線部13によって被覆されていることが好ましい。これにより金属配線部13が形成されてなる発光素子用基板1において求められる放熱性の向上に寄与することができる。
【0042】
金属配線部13を構成する金属の熱伝導率λは200W/(m・K)以上が好ましく、300W/(m・K)以上がより好ましい。金属配線部13を構成する金属の電気抵抗率Rは3.00×10
−8Ω・m以下が好ましく、2.50×10
−8Ω・m以下がより好ましい。ここで、熱伝導率λの測定は、例えば、京都電子工業社製の熱伝導率計QTM−500を用いることができ、電気抵抗率Rの測定は、例えば、ケースレー社製の6517B型エレクトロメータを用いることができる。これによれば、例えば、銅の場合、熱伝導率λは403W/(m・K)であり、電気抵抗率Rは1.55×10
−8Ω・mとなる。これにより、放熱性と電気伝導性の両立を図ることができる。より具体的には、発光素子2からの放熱性が安定し、電気抵抗の増加を防げるので、発光素子間の発光バラツキが小さくなって発光素子の安定した発光が可能となり、又、発光素子の寿命も延長される。更に、熱による基板等の周辺部材の劣化も防止できるので、発光素子用基板1をバックライトとして組み込んだ画像表示装置自体の製品寿命も延長できる。
【0043】
尚、金属配線部13の表面抵抗値は、500Ω/□以下が好ましく、300Ω/□以下がより好ましく、更に100Ω/□以下が好ましく、特に50Ω/□以下が好ましい。下限は0.005Ω/□程度である。
【0044】
金属配線部13の材料として用いられる金属としては、アルミニウム、金、銀、銅等の金属層が例示できる。金属配線部13の厚さは、発光素子用基板に要求される耐電流の大きさ等に応じて適宜設定すればよく、特に限定されないが、一例として厚さ10μm以上50μm以下が挙げられる。放熱性向上の観点から、金属配線部13の厚さは、10μm以上であることが好ましい。又、金属層厚みが上記下限値に満たないと、基板の熱収縮の影響が大きく、はんだリフロー処理時に処理後の反りが大きくなり易いため、この観点からも金属配線部13の厚さは10μm以上であることが好ましい。同厚さが、50μm以下であることによって、十分な可撓性を保持することができ、重量増大によるハンドリング性の低下等も防止できる。
【0045】
[ハンダ層]
発光素子用基板においては、金属配線部13と発光素子2との接合については、ハンダ層14を介した接合を行うことが好ましい。このハンダによる接合は、例えば、リフロー方式、或いは、レーザー方式によって行うことができる。
【0046】
[絶縁保護膜]
絶縁性保護膜15は、本発明においては必須の構成要件ではないが、絶縁性保護膜を設ける場合には、上述の通り、熱硬化型インキ、UV硬化性インキ又はカバーレイフィルムによって、金属配線部13と発光素子用基板の表面上の電気的接合が必要となる一部分を除いた他の部分に、主として発光素子用基板の耐マイグレーション特性を向上させるために形成される。
【0047】
熱硬化型インキとしては、熱硬化温度が100℃以下程度のものであれば、公知のインキを適宜好ましく用いることができる。具体的には、ポリエステル系樹脂、エポキシ系樹脂、エポキシ系及びフェノール系樹脂、エポキシアクリレート樹脂、シリコーン系樹脂等、を其々ベース樹脂とする絶縁性インキを好ましく用いることができるインキの代表例として挙げることができる。又、これらのうちでも、ポリエステル系の熱硬化型の絶縁インキは、可撓性に優れる点から、発光素子用基板1の絶縁性保護膜15を形成するための材料として特に好ましい。
【0048】
又、絶縁性保護膜15を形成する熱硬化型インキ又はUV硬化性のインキは、例えば、二酸化チタン等の無機白色顔料を更に含有する白色のインキであってもよい。絶縁性保護膜15を白色化することで、反射性の向上並びに意匠性の向上を図ることができる。
【0049】
尚、以上の絶縁性の熱硬化型インキによる絶縁性保護膜15の形成は、スクリーン印刷等公知の方法によって行うことができる。
【0050】
カバーレイフィルムを用いる場合には、例えばポリイミド樹脂等の耐熱性の高い樹脂フィルムに接着剤を塗布し、樹脂基板11上に貼り付けることで形成することができる。
【0051】
[表面反射材]
図1に示すように、発光素子用基板1は、更に、表面反射材16を備えるものであってもよい。表面反射材16は、必要に応じて、以下に詳細を説明するモジュール10において、発光能力を向上させることを目的として、発光素子用基板1の発光面側の最表面に、発光素子2の実装部分を除いて積層される。発光素子の発光を反射し、所定の方向へ導くための反射面を持つ部材であれば特に限定されないが、白色ポリエステル発泡タイプの白色ポリエステル、白色ポリエチレン樹脂、銀蒸着ポリエステル等を、最終製品の用途とその要求スペック等に応じて適宜用いることができる。
【0052】
[発光素子]
発光素子2は、発光素子用基板1上に配置される。発光素子2は、一方の面に一対の電極を有し、一対の電極を介して金属配線部13と電気的に接続している。ここで用いられる発光素子2は形状や大きさ等が特に限定されない。発光素子2の発光色としては、用途に応じて任意の波長のものを選択することができるが、青色に発光する発光素子を用いることができる。青色発光素子とは波長430nm以上500nm以下の光を放出可能な発光素子を意味するが、例えば、430nm以上470nm以下に発光波長のピークを持つ青色発光の発光素子を用いることが好ましい。発光素子2としては、GaN系やInGaN系を用いることができる。InGaN系としては、In
XAl
YGa
1−X−YN(0≦X≦1、0≦Y≦1、X+Y<1)等を用いることができる。
【0053】
[アンダーフィル]
図4は、本発明の他の実施形態のモジュールの部分断面図である。
図4の実施形態のモジュールのように接着層12と発光素子2との間にアンダーフィル21を配置することもできる。アンダーフィル21は、発光素子2と接着層12との接合強度を高めることができる。アンダーフィル21はエポキシ樹脂、シリコーン樹脂等の熱硬化性樹脂が好ましい。又、アンダーフィル21は接着層12との接合強度を高める材質が好ましく、アンダーフィル21と接着層12とは同一種類の材料を用いることが好ましいが、異なる材料であってもよい。
【0054】
[封止部材]
樹脂基板11の上には、発光素子2を封止する封止部材19が配置されていることが好ましい。発光素子2を埃や水分から保護することができるからである。封止部材19は、エポキシ樹脂、変成エポキシ樹脂、シリコーン樹脂又は変成シリコーン樹脂であることが好ましい。
【0055】
[蛍光体]
封止部材19中には、蛍光体20を含有させてもよい。蛍光体20は発光素子2からの光を吸収し、異なる波長の光を放出するものであり、緑色、黄色、赤色等の光を放出する。蛍光体20は、YAG、シリケート等の酸化物蛍光体、CASN、SCASN等の窒化物蛍光体、KSF等のフッ化物蛍光体等を用いることができる。
【0056】
<発光素子用基板の製造方法>
発光素子用基板1の製造方法は特に限定されない。適宜、従来公知の電子基板の製造方法によって製造することができる。発光素子用基板1は、例えば、以下に記載したエッチング工程を経ることによって製造することができる。又、選択する材料樹脂に応じて、予め当該樹脂にアニール処理による耐熱性向上処理を施すことが好ましい。
【0057】
[アニール処理]
本発明において必須ではないが、アニール処理を行う場合には、従来公知の熱処理手段を用いることができる。アニール処理温度の一例としては、樹脂基板がPENである場合には、ガラス転移温度から融点の範囲、更に具体的には160℃から260℃、より好ましくは180℃から230℃の範囲である。アニール処理時間としては、10秒から5分程度が例示できる。このような熱処理条件によれば、一般的に80℃程度であるPENの熱収縮開始温度を、100℃程度に向上させることができる。
【0058】
[エッチング工程]
アニール処理を経た樹脂基板の表面に、金属配線部の材料とする金属層の金属配線部13を積層して発光素子用基板の材料とする積層体を得ることができる。積層方法としては、金属層を接着剤によって樹脂基板の表面に接着する方法を挙げることができる。コストや生産性の面からは、金属層をウレタン系の接着剤によって樹脂基板の表面に接着する方法が有利である。
【0059】
次に、上記の積層体の金属層の表面に、金属配線部13の形状にパターニングされたエッチングマスクを形成する。エッチングマスクは、将来、金属配線部13となる金属層の配線パターン形成部分がエッチング液による腐食を免れるために設けられる。エッチングマスクを形成する方法は特に限定されず、例えば、フォトレジスト又はドライフィルムを用いる際、フォトマスクを通して感光させた後で現像することにより積層シートの表面にエッチングマスクを形成してもよいし、インクジェットプリンター等の印刷技術により積層シートの表面にエッチングマスクを形成してもよい。
【0060】
次に、エッチングマスクに覆われていない箇所における金属層を浸漬液により除去する。これにより、金属層のうち、金属配線部13となる箇所以外の部分が除去される。
【0061】
最後に、アルカリ性の剥離液を使用して、エッチングマスクを除去する。これにより、エッチングマスクが金属配線部13の表面から除去される。
【0062】
[絶縁性保護膜及び表面反射材形成工程]
金属配線部形成後、必要に応じて絶縁性保護膜15及び表面反射材16を更に積層する。これらの積層は公知の方法によって行うことができる。採用する材料によりスクリーン印刷等の印刷法或いは、ドライラミネーション、熱ラミネーション法等、各種のラミネート処理方法によることができる。
【0063】
<モジュール>
モジュール10は、上述の発光素子用基板1に、発光素子2を実装することにより、得ることができる。
【0064】
発光素子用基板1を用いたモジュール10の製造方法について説明する。金属配線部13への発光素子2の接合は、ハンダ加工により好ましく行うことができる。このハンダによる接合は、リフロー方式、或いは、レーザー方式によることができる。リフロー方式は、金属配線部13にハンダを介して発光素子2を搭載し、その後、発光素子用基板をリフロー炉内に搬送して、リフロー炉内で金属配線部13に所定温度の熱風を吹きつけることで、ハンダペーストを融解させ、発光素子2を金属配線部13にハンダ付けする方法である。又、レーザー方式とは、レーザーによってハンダを局所的に加熱して、発光素子2を金属配線部13にハンダ付けする手法である。尚、ハンダ材料は樹脂基板11の耐熱性に合わせSn−Bi系、Sn−Cu系、Sn−Ag−Cu系等のハンダを用いてもよい。
【0065】
金属配線部13への発光素子2のハンダ接合を行う際は、発光素子用基板1における裏面側からのレーザー照射によって、ハンダのリフローを行う方法とすることが好ましい。これにより、加熱によるハンダの有機成分の発火とそれに伴う基材の損傷をより確実に抑制することが可能となる。
【0066】
<表示装置>
図2は、モジュール10を用いた表示装置100の層構成の概略を模式的に示す斜視図である。表示装置100は、所定の間隔でマトリクス状に配列された複数のLED素子等の発光素子2を駆動(発光)することによって、文字や映像等の情報(画像)をモニター3に表示する。発光素子2は、発光素子用基板1の金属配線部13に実装されている。又、モジュール10から放熱される熱を更に効率よく外部に放射するための放熱構造4が樹脂基材の裏面側に設置されていることが更に好ましい。本発明のモジュール10を用いることにより画面サイズ(対角線の長さ)が65インチ以上の大型の表示装置を従来よりも低コストで且つ品質の安定性を向上させて製造することができる。
【0067】
<発光素子用基板の奏する効果>
樹脂基材からなる樹脂基板は、発光素子からの光、なかでも、短波長で高エネルギーの青色の光によって劣化が促進し易い。これに対し、発光素子用基板1は、樹脂基板11、波長450nmにおける反射率が80%以上という高い反射率を有する反射層18、及び接着層12とを、この順で積層する構成としたことにより、接着層12の接着強度を保持したまま、発光素子2からの青色の光を有効に遮蔽できるという優れた効果を有するものである。又、更に加えて、以下の効果も奏するものである。
【0068】
まず、樹脂基板11上の層構成を、反射層18と接着層12という2層構成によって形成することにより、反射層18のみならず、所定の屈折率を持つ接着層12においても反射が生じるので、多層にすることで反射率を向上することができる。この点からは、接着層を構成する樹脂としては、高屈折率(すなわち高反射率)の観点から、ウレタン樹脂(n=1.43)に比べて、ポリカーボネート樹脂(n=1.59)やエポキシ樹脂(n=1.55以上1.612以下)が好ましく用いられ、これにより、更なる反射率の向上を図ることができる。
【0069】
尚、反射層18と接着層12とで熱収縮率差が存在すると、発光素子2を実装するためのハンダ接合の際に生じる熱(例えば樹脂基板11がPETの場合には150℃程度)によって、シワ等の不具合が生じることになるので、反射層18と接着層12との熱収縮率(JIS K7133、150℃×30分)の差が、10%以下であることが好ましい。
【実施例】
【0070】
以下、実施例を示して、本発明を更に具体的に説明するが、本発明は、以下の実施例に限定されない。
【0071】
<試験用試料の作成>
下記の各材料を用いて、本発明の発光素子用基板の効果を確認するための試験用の試料を作成した。
【0072】
[樹脂基板]
実施例及び比較例の試料を作成するための樹脂基板として以下の2種類の樹脂フィルムを用意し、それぞれ下記表1に記載の通りに各試料毎に使い分けた。
樹脂フィルムA:ポリエチレンナフタレート樹脂フィルム(帝人社製「QFグレード」)50μm。この樹脂フィルムAは、特に難燃性を向上させる処理が行われた特殊グレードのPENフィルムである。
樹脂フィルムB:ポリエチレンナフタレート樹脂フィルム(帝人社製「テオネックス」)50μm。この樹脂フィルムBは、汎用的に用いられる透明性の高い一般グレードのPENフィルムである。
【0073】
[反射層]
反射層を形成するためのコーティング液として以下の3種類のコーティング液を調合して、それぞれ下記表1に記載の通りに各試料毎に使い分けた。
コーティング液A:複数の架橋性置換基を有するフッ素樹脂(ゼッフル:ダイキン社製、製品名:GK−570)と、複数の架橋性置換基を有するアクリル樹脂(質量平均分子量50,000、Tg40℃、水酸基価8.9mg/g)との混合樹脂に対して、光反射性充填材として酸化チタン(堺化学工業株式会社製、製品名R−5N:平均粒径0.25μm、アルミナ処理)を、樹脂100質量部に対して30質量部、則ち、硬化後の反射層中における光反射性充填材の含有量が23.1質量%となるように添加した。又、溶剤として酢酸エチル:酢酸ブチル=1:1の混合液を使用した。フッ素樹脂:アクリル樹脂=1:3の割合で樹脂主剤を調整した。主剤の固形分濃度は、43質量%以上45質量%以下とした。この混合物に対して、ペイントシェーカーを使用して60分間の撹拌を行った。又、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)とイソホロンジイソシアネート(IPDI)をNCO/OH比1.0に調整し、これを各コーティング液における硬化剤とした。これら主剤及び硬化剤は、使用(塗布)の直前に混合し、コーティング液Aとした。これを、上記各樹脂フィルムに塗布し硬化膜を作製することによって各試料の反射層を形成した。各試料毎の反射層の膜厚については表1に記載の通りの膜厚となるように塗布量を調整した。
コーティング液B:ポリフェニルシロキサン樹脂(商品名XE14−C2508:モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ)とポリジメチルシロキサン樹脂(商品名IVSM4500:モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ社製)を用いて、これに対して、アナターゼ型酸化チタン(商品名A−950:堺化学工業株式会社製)とルチル型酸化チタン(商品名GTR−100;堺化学工業株式会社製)と酸化アルミニウム(商品名AES12:住友化学株式会社製)を、樹脂100質量部に対して各々200質量部、則ち、硬化後の反射層中における光反射性充填材の含有量が80.0質量%となるように添加し、コーティング液Bとした。これを、上記各樹脂フィルムに塗布し硬化膜を作製することにより、反射層を形成した。各例毎の反射層の膜厚については表1に記載の通りの膜厚となるように塗布量を調整した。
コーティング液C:上記コーティング液Aと同材料を用いてコーティング液Cを調合した。コーティング液Cは、白色顔料として添加する上記の酸化チタンの添加量を樹脂100質量部に対して7質量部、則ち、硬化後の反射層中における光反射性充填材の含有量が6.5質量%となるように添加し、その他の調合はコーティング液1と同様の調合とした。
【0074】
[接着層]
実施例4の試料については、反射層上に更に接着層を形成した。接着剤としては、ウレタン系接着剤を用いて、同層の厚さが10μmとなるようにこれを塗布した。
【0075】
<反射率測定試験>
各実施例及び比較例について、各波長域における反射層の反射率を測定した。但し、実施例4の反射率については、接着層の上から光を照射して、接着層も含む積層体の表面の反射率を測定した。又、比較例1については、参考値として、樹脂フィルム自体の表面の反射率を測定した。測定には、紫外可視分光光度計(島津製作所製紫外可視分光光度計UV−2550)を用いた。各実施例及び比較例の波長450nmにおける反射率の測定結果を表1に、実施例1、2及び比較例1についての波長375nm〜500nmの範囲における上記測定結果を
図3に示す。
【0076】
<耐光性試験>
青色発光素子に対する耐光性試験として、実施例1〜3及び比較例2については反射層上から、実施例4については接着剤層上から、比較例1については樹脂フィルム上から、青色レーザー(日亜化学製レーザーダイオード、波長450nm、出力0.5W)を照射し、フィルムに穴が開いた時間を測定した。試験結果を下記表1に示す。
【0077】
【表1】
【0078】
表1より、波長450nmにおける反射率が90%以上である反射層がその表面に形成された樹脂基板は、穴あきまでの所要時間が十分に長くなっていることが確認された。又、実施例1と実施例3及び4の結果の比較より、表面の光反射率が異なることが推認される樹脂基板の種類によって、反射層自体の反射率と穴あき防止効果の結果は、実質的に変動しないことが分かる。又、接着材層の有無が上記効果に与える影響についてもほぼ上記同様である。これに加えて比較例2の結果を加味することにより、波長450nmにおける反射率が80%以上である反射層が配置されている本発明の発光素子用基板は、発光素子からの光に対する耐光性を有する発光素子用基板であることが分かる。