(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記制御部は、前記リング領域の隣り合う2つの円弧状の前記領域に異なる前記吸着圧力を発生させると共に前記第2基板の接合面と前記基板の接合面とを全面で接合させる前に、前記対向保持部による前記第2基板の保持を解除する、請求項1〜3のいずれか1項に記載の接合装置。
保持部の基板を吸着する吸着面に、前記基板を吸着する吸着圧力を発生させ、前記吸着面に吸着されている前記基板と、前記基板とは別の第2基板とを向い合せて接合する、接合方法であって、
前記吸着面を構成する複数の領域のそれぞれに発生させる前記吸着圧力を複数の吸着圧力調整部によって独立に制御し、
前記保持部は、複数の前記領域を区画するリブを含み、
前記吸着面の径方向中心には、一の前記吸着圧力調整部によって前記吸着圧力を調整する円状の前記領域が配置され、
前記円状の前記領域の径方向外側には、一の前記吸着圧力調整部によって前記吸着圧力を調整する円弧状の前記領域と、別の前記吸着圧力調整部によって前記吸着圧力を調整する別の円弧状の前記領域とが、前記吸着面の周方向に交互に繰り返し配置され、それぞれ、90°周期で4つずつ配置され、リング領域を形成し、
前記第2基板の中心部を前記基板の中心部に接触させ、続いて、前記第2基板の接合面と前記基板の接合面とを全面で接合させる間、前記基板を前記吸着面に吸着し、且つ前記リング領域の隣り合う2つの円弧状の前記領域に異なる前記吸着圧力を発生させることで、前記基板に生じる歪みを制御する、接合方法。
前記リング領域の隣り合う2つの円弧状の前記領域に異なる前記吸着圧力を発生させると共に前記第2基板の接合面と前記基板の接合面とを全面で接合させる前に、前記吸着面に対向配置される対向保持部による前記第2基板の保持を解除する、請求項5〜7のいずれか1項に記載の接合方法。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本開示の実施形態について図面を参照して説明する。各図面において、同一の又は対応する構成には、同一の又は対応する符号を付して説明を省略する。以下の説明において、X軸方向、Y軸方向、Z軸方向は互いに垂直な方向であり、X軸方向およびY軸方向は水平方向、Z軸方向は鉛直方向である。鉛直軸を回転中心とする回転方向をΘ方向とも呼ぶ。本明細書において、下方とは鉛直下方を意味し、上方とは鉛直上方を意味する。
【0009】
<接合システム>
図1は、一実施形態にかかる接合システムを示す平面図である。
図2は、一実施形態にかかる接合システムを示す側面図である。
図3は、一実施形態にかかる第1基板および第2基板の接合前の状態を示す側面図である。
図1に示す接合システム1は、第1基板W1と第2基板W2とを接合することによって重合基板T(
図7(b)参照)を形成する。
【0010】
第1基板W1は、例えばシリコンウェハや化合物半導体ウェハなどの半導体基板に複数の電子回路が形成された基板である。また、第2基板W2は、例えば電子回路が形成されていないベアウェハである。第1基板W1と第2基板W2とは、略同径を有する。なお、第2基板W2に電子回路が形成されていてもよい。
【0011】
以下では、第1基板W1を「上ウェハW1」と記載し、第2基板W2を「下ウェハW2」、重合基板Tを「重合ウェハT」と記載する場合がある。また、以下では、
図3に示すように、上ウェハW1の板面のうち、下ウェハW2と接合される側の板面を「接合面W1j」と記載し、接合面W1jとは反対側の板面を「非接合面W1n」と記載する。また、下ウェハW2の板面のうち、上ウェハW1と接合される側の板面を「接合面W2j」と記載し、接合面W2jとは反対側の板面を「非接合面W2n」と記載する。
【0012】
図1に示すように、接合システム1は、搬入出ステーション2と、処理ステーション3とを備える。搬入出ステーション2および処理ステーション3は、X軸正方向に沿って、搬入出ステーション2および処理ステーション3の順番で並べて配置される。また、搬入出ステーション2および処理ステーション3は、一体的に接続される。
【0013】
搬入出ステーション2は、載置台10と、搬送領域20とを備える。載置台10は、複数の載置板11を備える。各載置板11には、複数枚(例えば、25枚)の基板を水平状態で収容するカセットCS1,CS2,CS3がそれぞれ載置される。例えば、カセットCS1は上ウェハW1を収容するカセットであり、カセットCS2は下ウェハW2を収容するカセットであり、カセットCS3は重合ウェハTを収容するカセットである。
【0014】
搬送領域20は、載置台10のX軸正方向側に隣接して配置される。かかる搬送領域20には、Y軸方向に延在する搬送路21と、この搬送路21に沿って移動可能な搬送装置22とが設けられる。搬送装置22は、Y軸方向だけでなく、X軸方向にも移動可能かつZ軸周りに旋回可能であり、載置板11に載置されたカセットCS1〜CS3と、後述する処理ステーション3の第3処理ブロックG3との間で、上ウェハW1、下ウェハW2および重合ウェハTの搬送を行う。
【0015】
なお、載置板11に載置されるカセットCS1〜CS3の個数は、図示のものに限定されない。また、載置板11には、カセットCS1,CS2,CS3以外に、不具合が生じた基板を回収するためのカセット等が載置されてもよい。
【0016】
処理ステーション3には、各種装置を備えた複数の処理ブロック、例えば3つの処理ブロックG1,G2,G3が設けられる。例えば処理ステーション3の正面側(
図1のY軸負方向側)には、第1処理ブロックG1が設けられ、処理ステーション3の背面側(
図1のY軸正方向側)には、第2処理ブロックG2が設けられる。また、処理ステーション3の搬入出ステーション2側(
図1のX軸負方向側)には、第3処理ブロックG3が設けられる。
【0017】
第1処理ブロックG1には、上ウェハW1および下ウェハW2の接合面W1j,W2jを改質する表面改質装置30が配置される。表面改質装置30は、上ウェハW1および下ウェハW2の接合面W1j,W2jにおけるSiO
2の結合を切断して単結合のSiOとすることで、その後親水化されやすくするように当該接合面W1j,W2jを改質する。
【0018】
なお、表面改質装置30では、例えば減圧雰囲気下において処理ガスである酸素ガスまたは窒素ガスが励起されてプラズマ化され、イオン化される。そして、かかる酸素イオン又は窒素イオンが、上ウェハW1および下ウェハW2の接合面W1j,W2jに照射されることにより、接合面W1j,W2jがプラズマ処理されて改質される。
【0019】
第2処理ブロックG2には、表面親水化装置40と、接合装置41とが配置される。表面親水化装置40は、例えば純水によって上ウェハW1および下ウェハW2の接合面W1j,W2jを親水化するとともに、接合面W1j,W2jを洗浄する。表面親水化装置40では、例えばスピンチャックに保持された上ウェハW1または下ウェハW2を回転させながら、当該上ウェハW1または下ウェハW2上に純水を供給する。これにより、上ウェハW1または下ウェハW2上に供給された純水が上ウェハW1または下ウェハW2の接合面W1j,W2j上を拡散し、接合面W1j,W2jが親水化される。
【0020】
接合装置41は、親水化された上ウェハW1と下ウェハW2とを分子間力により接合する。かかる接合装置41の構成については、後述する。
【0021】
第3処理ブロックG3には、
図2に示すように、上ウェハW1、下ウェハW2および重合ウェハTのトランジション(TRS)装置50,51が下から順に2段に設けられる。
【0022】
また、
図1に示すように、第1処理ブロックG1、第2処理ブロックG2および第3処理ブロックG3に囲まれた領域には、搬送領域60が形成される。搬送領域60には、搬送装置61が配置される。搬送装置61は、例えば鉛直方向、水平方向および鉛直軸周りに移動自在な搬送アームを有する。かかる搬送装置61は、搬送領域60内を移動し、搬送領域60に隣接する第1処理ブロックG1、第2処理ブロックG2および第3処理ブロックG3内の所定の装置に上ウェハW1、下ウェハW2および重合ウェハTを搬送する。
【0023】
また、
図1に示すように、接合システム1は、制御装置70を備える。制御装置70は、接合システム1の動作を制御する。制御装置70は、例えばコンピュータで構成され、
図2に示すようにCPU(Central Processing Unit)71と、メモリなどの記憶媒体72と、入力インターフェース73と、出力インターフェース74とを有する。制御装置70は、記憶媒体72に記憶されたプログラムをCPU71に実行させることにより、各種の制御を行う。また、制御装置70は、入力インターフェース73で外部からの信号を受信し、出力インターフェース74で外部に信号を送信する。
【0024】
制御装置70のプログラムは、情報記憶媒体に記憶され、情報記憶媒体からインストールされる。情報記憶媒体としては、例えば、ハードディスク(HD)、フレキシブルディスク(FD)、コンパクトディスク(CD)、マグネットオプティカルデスク(MO)、メモリーカードなどが挙げられる。尚、プログラムは、インターネットを介してサーバからダウンロードされ、インストールされてもよい。
【0025】
<接合装置>
図4は、一実施形態にかかる接合装置を示す平面図である。
図5は、一実施形態にかかる接合装置を示す側面図である。
【0026】
図4に示すように、接合装置41は、内部を密閉可能な処理容器100を有する。処理容器100の搬送領域60側の側面には、上ウェハW1、下ウェハW2および重合ウェハTの搬入出口101が形成され、当該搬入出口101には開閉シャッタ102が設けられている。
【0027】
処理容器100の内部は、内壁103によって、搬送領域T1と処理領域T2に区画される。上述した搬入出口101は、搬送領域T1における処理容器100の側面に形成される。また、内壁103にも、上ウェハW1、下ウェハW2および重合ウェハTの搬入出口104が形成される。
【0028】
搬送領域T1には、トランジション110、ウェハ搬送機構111、反転機構130および位置調節機構120が、例えば搬入出口101側からこの順番で並べて配置される。
【0029】
トランジション110は、上ウェハW1、下ウェハW2および重合ウェハTを一時的に載置する。トランジション110は、例えば2段に形成され、上ウェハW1、下ウェハW2および重合ウェハTのいずれか2つを同時に載置することができる。
【0030】
ウェハ搬送機構111は、
図4および
図5に示すように、たとえば鉛直方向(Z軸方向)、水平方向(Y軸方向、X軸方向)および鉛直軸周りに移動自在な搬送アームを有する。ウェハ搬送機構111は、搬送領域T1内、又は搬送領域T1と処理領域T2との間で上ウェハW1、下ウェハW2および重合ウェハTを搬送することが可能である。
【0031】
位置調節機構120は、上ウェハW1および下ウェハW2の水平方向の向きを調節する。具体的には、位置調節機構120は、上ウェハW1および下ウェハW2を保持して回転させる図示しない保持部を備えた基台121と、上ウェハW1および下ウェハW2のノッチ部の位置を検出する検出部122と、を有する。位置調節機構120は、基台121に保持された上ウェハW1および下ウェハW2を回転させながら検出部122を用いて上ウェハW1および下ウェハW2のノッチ部の位置を検出することにより、ノッチ部の位置を調節する。これにより、上ウェハW1および下ウェハW2の水平方向の向きが調節される。
【0032】
反転機構130は、上ウェハW1の表裏面を反転させる。具体的には、反転機構130は、上ウェハW1を保持する保持アーム131を有する。保持アーム131は、水平方向(X軸方向)に延伸する。また保持アーム131には、上ウェハW1を保持する保持部材132が例えば4箇所に設けられている。
【0033】
保持アーム131は、例えばモータなどを備えた駆動部133に支持される。保持アーム131は、かかる駆動部133によって水平軸周りに回動自在である。また、保持アーム131は、駆動部133を中心に回動自在であると共に、水平方向(X軸方向)に移動自在である。駆動部133の下方には、例えばモータなどを備えた他の駆動部(図示せず)が設けられる。この他の駆動部によって、駆動部133は、鉛直方向に延伸する支持柱134に沿って鉛直方向に移動できる。
【0034】
このように、保持部材132に保持された上ウェハW1は、駆動部133によって水平軸周りに回動できると共に鉛直方向及び水平方向に移動することができる。また、保持部材132に保持された上ウェハW1は、駆動部133を中心に回動して、位置調節機構120と後述する上チャック140との間を移動することができる。
【0035】
処理領域T2には、上ウェハW1の上面(非接合面W1n)を上方から吸着保持する上チャック140と、下ウェハW2を載置して下ウェハW2の下面(非接合面W2n)を下方から吸着保持する下チャック141とが設けられる。下チャック141は、上チャック140の下方に設けられ、上チャック140と対向配置可能に構成される。
【0036】
図5に示すように、上チャック140は、上チャック140の上方に設けられた上チャック保持部150に保持される。上チャック保持部150は、処理容器100の天井面に設けられる。上チャック140は、上チャック保持部150を介して処理容器100に固定される。
【0037】
上チャック保持部150には、下チャック141に保持された下ウェハW2の上面(接合面W2j)を撮像する上部撮像部151が設けられている。上部撮像部151には、例えばCCDカメラが用いられる。
【0038】
下チャック141は、下チャック141の下方に設けられた第1の下チャック移動部160に支持される。第1の下チャック移動部160は、後述するように下チャック141を水平方向(X軸方向)に移動させる。また、第1の下チャック移動部160は、下チャック141を鉛直方向に移動自在、且つ鉛直軸周りに回転可能に構成される。
【0039】
第1の下チャック移動部160には、上チャック140に保持された上ウェハW1の下面(接合面W1j)を撮像する下部撮像部161が設けられている(
図5参照)。下部撮像部161には、例えばCCDカメラが用いられる。
【0040】
第1の下チャック移動部160は、第1の下チャック移動部160の下面側に設けられ、水平方向(X軸方向)に延伸する一対のレール162、162に取り付けられている。第1の下チャック移動部160は、レール162に沿って移動自在に構成されている。
【0041】
一対のレール162、162は、第2の下チャック移動部163に配設されている。第2の下チャック移動部163は、当該第2の下チャック移動部163の下面側に設けられ、水平方向(Y軸方向)に延伸する一対のレール164、164に取り付けられている。そして、第2の下チャック移動部163は、レール164に沿って水平方向(Y軸方向)に移動自在に構成される。なお、一対のレール164、164は、処理容器100の底面に設けられた載置台165上に配設されている。
【0042】
第1の下チャック移動部160および第2の下チャック移動部163等により、位置合わせ部166が構成される。位置合わせ部166は、下チャック141をX軸方向、Y軸方向およびΘ方向に移動させることにより、上チャック140に保持されている上ウェハW1と、下チャック141に保持されている下ウェハW2との水平方向位置合わせを行う。また、位置合わせ部166は、下チャック141をZ軸方向に移動させることにより、上チャック140に保持されている上ウェハW1と、下チャック141に保持されている下ウェハW2との鉛直方向位置合わせを行う。
【0043】
なお、本実施形態の位置合わせ部166は、下チャック141をX軸方向、Y軸方向およびΘ方向に移動させることにより、上ウェハW1と下ウェハW2との水平方向位置合わせを行うが、本開示の技術はこれに限定されない。位置合わせ部166は、上チャック140と下チャック141とを相対的にX軸方向、Y軸方向およびΘ方向に移動できればよい。例えば、位置合わせ部166は、下チャック141をX軸方向およびY軸方向に移動させると共に、上チャック140をΘ方向に移動させることにより、上ウェハW1と下ウェハW2との水平方向位置合わせを行ってもよい。
【0044】
また、本実施形態の位置合わせ部166は、下チャック141をZ軸方向に移動させることにより、上ウェハW1と下ウェハW2との鉛直方向位置合わせを行うが、本開示の技術はこれに限定されない。位置合わせ部166は、上チャック140と下チャック141とを相対的にZ軸方向に移動できればよい。例えば、位置合わせ部166は、上チャック140をZ軸方向に移動させることにより、上ウェハW1と下ウェハW2との鉛直方向位置合わせを行ってもよい。
【0045】
図6は、一実施形態にかかる上チャックおよび下チャックを示す断面図であって、上ウェハと下ウェハの接合直前の状態を示す断面図である。
図7(a)は、一実施形態にかかる上ウェハと下ウェハとの接合途中の状態を示す断面図である。
図7(b)は、一実施形態にかかる上ウェハと下ウェハとの接合完了時の状態を示す断面図である。
図6、
図7(a)および
図7(b)において、実線で示す矢印は真空ポンプによる空気の吸引方向を示す。
【0046】
上チャック140および下チャック141は、例えば真空チャックである。下チャック141が特許請求の範囲に記載の保持部に対応し、上チャック140が特許請求の範囲に記載の対向保持部に対応する。なお、後述するように、上チャック140が特許請求の範囲に記載の保持部に対応し、下チャック141が特許請求の範囲に記載の対向保持部に対応してもよい。上チャック140は、上ウェハW1を吸着する吸着面140aを、下チャック141に対向する面(下面)に有する。一方、下チャック141は、下ウェハW2を吸着する吸着面141aを、上チャック140に対向する面(上面)に有する。
【0047】
上チャック140は、チャックベース170を有する。チャックベース170は、上ウェハW1と同径もしくは上ウェハW1より大きい径を有する。チャックベース170は、支持部材180によって支持される。支持部材180は、平面視において少なくともチャックベース170を覆うように設けられ、チャックベース170に対して例えばネジ止めによって固定されている。支持部材180は、処理容器100の天井面に設けられた複数の支持柱181(
図5参照)に支持される。支持部材180および複数の支持柱181で上チャック保持部150が構成される。
【0048】
支持部材180およびチャックベース170には、支持部材180およびチャックベース170を鉛直方向に貫通する貫通孔176が形成される。貫通孔176の位置は、上チャック140に吸着保持される上ウェハW1の中心部に対応している。かかる貫通孔176には、ストライカー190の押圧ピン191が挿通される。
【0049】
ストライカー190は、支持部材180の上面に配置され、押圧ピン191と、アクチュエータ部192と、直動機構193とを備える。押圧ピン191は、鉛直方向に沿って延在する円柱状の部材であり、アクチュエータ部192によって支持される。
【0050】
アクチュエータ部192は、たとえば電空レギュレータ(図示せず)から供給される空気により一定方向(ここでは鉛直下方)に一定の圧力を発生させる。アクチュエータ部192は、電空レギュレータから供給される空気により、上ウェハW1の中心部と当接して当該上ウェハW1の中心部にかかる押圧荷重を制御することができる。また、アクチュエータ部192の先端部は、電空レギュレータからの空気によって、貫通孔176を挿通して鉛直方向に昇降自在になっている。
【0051】
アクチュエータ部192は、直動機構193に支持される。直動機構193は、例えばモータを内蔵した駆動部によってアクチュエータ部192を鉛直方向に移動させる。
【0052】
ストライカー190は、以上のように構成されており、直動機構193によってアクチュエータ部192の移動を制御し、アクチュエータ部192によって押圧ピン191による上ウェハW1の押圧荷重を制御する。
【0053】
ストライカー190は、上チャック140に吸着保持されている上ウェハW1と、下チャック141に吸着保持されている下ウェハW2とを押付け合せる。具体的には、ストライカー190は、上チャック140に吸着保持されている上ウェハW1を変形させることにより、下ウェハW2に押付け合せる。
【0054】
チャックベース170の下面には、上ウェハW1の非接合面W1nに接触する複数のピン171が設けられている。チャックベース170、複数のピン171等で上チャック140が構成される。上チャック140の上ウェハW1を吸着保持する吸着面140aは径方向に複数の領域に区画され、区画された領域毎に吸着圧力の発生と吸着圧力の解除とがなされる。
【0055】
なお、下チャック141は、上チャック140と同様に構成されてよい。下チャック141は、下ウェハW2の非接合面W2nに接触する複数のピン204を有する。下チャック141の下ウェハW2を吸着保持する吸着面141aは径方向に複数の領域に区画され、区画された領域毎に吸着圧力の発生と吸着圧力の解除とがなされる。
【0056】
<接合方法>
図8は、一実施形態にかかる接合システムが実行する処理の一部を示すフローチャートである。なお、
図8に示す各種の処理は、制御装置70による制御下で実行される。
【0057】
まず、複数枚の上ウェハW1を収容したカセットCS1、複数枚の下ウェハW2を収容したカセットCS2、および空のカセットCS3が、搬入出ステーション2の所定の載置板11に載置される。その後、搬送装置22によりカセットCS1内の上ウェハW1が取り出され、処理ステーション3の第3処理ブロックG3のトランジション装置50に搬送される。
【0058】
次に、上ウェハW1は、搬送装置61によって第1処理ブロックG1の表面改質装置30に搬送される。表面改質装置30では、所定の減圧雰囲気下において、処理ガスである酸素ガスが励起されてプラズマ化され、イオン化される。この酸素イオンが上ウェハW1の接合面W1jに照射されて、当該接合面W1jがプラズマ処理される。これにより、上ウェハW1の接合面W1jが改質される(ステップS101)。
【0059】
次に、上ウェハW1は、搬送装置61によって第2処理ブロックG2の表面親水化装置40に搬送される。表面親水化装置40では、スピンチャックに保持された上ウェハW1を回転させながら、当該上ウェハW1上に純水を供給する。そうすると、供給された純水は上ウェハW1の接合面W1j上を拡散し、表面改質装置30において改質された上ウェハW1の接合面W1jに水酸基(シラノール基)が付着して当該接合面W1jが親水化される(ステップS102)。また、接合面W1jの親水化に用いる純水によって、上ウェハW1の接合面W1jが洗浄される。
【0060】
次に、上ウェハW1は、搬送装置61によって第2処理ブロックG2の接合装置41に搬送される。接合装置41に搬入された上ウェハW1は、トランジション110を介してウェハ搬送機構111により位置調節機構120に搬送される。そして位置調節機構120によって、上ウェハW1の水平方向の向きが調節される(ステップS103)。
【0061】
その後、位置調節機構120から反転機構130の保持アーム131に上ウェハW1が受け渡される。続いて搬送領域T1において、保持アーム131を反転させることにより、上ウェハW1の表裏面が反転される(ステップS104)。すなわち、上ウェハW1の接合面W1jが下方に向けられる。
【0062】
その後、反転機構130の保持アーム131が回動して上チャック140の下方に移動する。そして、反転機構130から上チャック140に上ウェハW1が受け渡される。上ウェハW1は、ノッチ部を予め決められた方向に向けた状態で、上チャック140にその非接合面W1nが吸着保持される(ステップS105)。
【0063】
上ウェハW1に上述したステップS101〜S105の処理が行われている間、下ウェハW2の処理が行われる。まず、搬送装置22によりカセットCS2内の下ウェハW2が取り出され、処理ステーション3のトランジション装置50に搬送される。
【0064】
次に、下ウェハW2は、搬送装置61によって表面改質装置30に搬送され、下ウェハW2の接合面W2jが改質される(ステップS106)。なお、ステップS106における下ウェハW2の接合面W2jの改質は、上述したステップS101と同様である。
【0065】
その後、下ウェハW2は、搬送装置61によって表面親水化装置40に搬送され、下ウェハW2の接合面W2jが親水化される(ステップS107)。また、接合面W2jの親水化に用いる純水によって、接合面W2jが洗浄される。なお、ステップS107における下ウェハW2の接合面W2jの親水化は、上記ステップS102における上ウェハW1の接合面W1jの親水化と同様である。
【0066】
その後、下ウェハW2は、搬送装置61によって接合装置41に搬送される。接合装置41に搬入された下ウェハW2は、トランジション110を介してウェハ搬送機構111により位置調節機構120に搬送される。そして位置調節機構120によって、下ウェハW2の水平方向の向きが調節される(ステップS108)。
【0067】
その後、下ウェハW2は、ウェハ搬送機構111によって下チャック141に搬送され、下チャック141に吸着保持される(ステップS109)。下ウェハW2は、ノッチ部を予め決められた方向、すなわち、上ウェハW1のノッチ部と同じ方向に向けた状態で、下チャック141にその非接合面W2nが吸着保持される。
【0068】
次に、上チャック140に保持された上ウェハW1と下チャック141に保持された下ウェハW2との水平方向の位置調節が行われる(ステップS110)。具体的には、鉛直方向視で、上ウェハW1の接合面W1jに形成された複数のアライメントマークと、下ウェハW2の接合面W2jに形成された複数のアライメントマークとが重なるように、水平方向位置(例えばX軸方向位置、Y軸方向位置およびΘ方向位置を含む。)が調節される。
【0069】
次に、上チャック140に保持された上ウェハW1と下チャック141に保持された下ウェハW2との鉛直方向位置の調節を行う(ステップS111)。具体的には、第1の下チャック移動部160が下チャック141を鉛直上方に移動させることによって、下ウェハW2を上ウェハW1に接近させる。これにより、
図6に示すように、下ウェハW2の接合面W2jと上ウェハW1の接合面W1jとの間隔Sは所定の距離、たとえば50μm〜200μmに調整される。
【0070】
次に、上チャック140による上ウェハW1の中央部の吸着保持を解除した後(ステップS112)、
図7(a)に示すように、ストライカー190の押圧ピン191を下降させることによって、上ウェハW1の中心部を押し下げる(ステップS113)。上ウェハW1の中心部が下ウェハW2の中心部に接触し、上ウェハW1の中心部と下ウェハW2の中心部とが所定の力で押圧されると、押圧された上ウェハW1の中心部と下ウェハW2の中心部との間で接合が開始する。その後、上ウェハW1と下ウェハW2とを中心部から外周部に向けて徐々に接合するボンディングウェーブが発生する。
【0071】
ここで、上ウェハW1の接合面W1jと下ウェハW2の接合面W2jはそれぞれステップS101,S106において改質されているため、まず、接合面W1j,W2j間にファンデルワールス力(分子間力)が生じ、当該接合面W1j,W2j同士が接合される。さらに、上ウェハW1の接合面W1jと下ウェハW2の接合面W2jはそれぞれステップS102,S107において親水化されているため、接合面W1j,W2j間の親水基が水素結合し、接合面W1j,W2j同士が強固に接合される。
【0072】
その後、押圧ピン191によって上ウェハW1の中心部と下ウェハW2の中心部を押圧した状態で、上チャック140による上ウェハW1の全体の吸着保持を解除する(ステップS114)。これにより、
図7(b)に示すように、上ウェハW1の接合面W1jと下ウェハW2の接合面W2jが全面で当接し、上ウェハW1と下ウェハW2が接合される。その後、押圧ピン191を上チャック140まで上昇させ、下チャック141による下ウェハW2の吸着保持を解除する。
【0073】
その後、重合ウェハTは、搬送装置61によって第3処理ブロックG3のトランジション装置51に搬送され、その後、搬入出ステーション2の搬送装置22によってカセットCS3に搬送される。こうして、一連の接合処理が終了する。
【0074】
<下チャックによる下ウェハの歪みの制御>
図9は、一実施形態にかかる下チャック、真空ポンプおよび真空レギュレータを示す図である。
図9において、下チャック141の吸着面141aにおける水平方向角度と、その吸着面141aに吸着されたときの下ウェハW2(
図6等参照)の方向指数とを示す。なお、下ウェハW2の接合面W2jの面指数は(100)である。方向指数や面指数として用いられるミラー指数が負であることは、通常、数字の上に「−」(バー)を付すことによって表現するが、本明細書では数字の前に負の符号を付すことによって表現する。なお、
図9において、図面を見やすくするため、ピン204の図示を省略する。
【0075】
下チャック141は、
図6等に示すように、下ウェハW2を吸着する吸着面141aに、下ウェハW2を吸着する吸着圧力(例えば真空圧力)が独立に制御される複数の領域として、円状の第1領域210および第1領域210の径方向外側に配置される円環状の第2領域220を有する。例えば、下チャック141は、吸着面141aに、第1領域210と第2領域220とを区画する内周リブ201、および第2領域220の径方向外側に配置される外周リブ202とを有する。
【0076】
内周リブ201と外周リブ202とは、チャックベース203の上面に、同心円状に突設される。チャックベース203の上面には、内周リブ201や外周リブ202と同じ高さの複数のピン204が点在して突設される。内周リブ201、外周リブ202および複数のピン204は、同じ高さを有し、下ウェハW2を水平に保持する。
【0077】
また、下チャック141は、下ウェハW2を吸着する吸着圧力が独立に制御される複数の領域として、第2領域220を径方向に分割してなる複数のリング領域221、222を有する。例えば、下チャック141は、吸着面141aに、径方向外側のリング領域221と径方向内側のリング領域222とを区画する円環状の中間リブ205を有する。中間リブ205は、内周リブ201や外周リブ202と同心円状に配置される。中間リブ205は、内周リブ201や外周リブ202と同じ高さを有し、内周リブ201や外周リブ202と共に下ウェハW2を水平に保持する。
【0078】
また、下チャック141は、
図9に示すように、下ウェハW2を吸着する吸着圧力が独立に制御される複数の領域として、第2領域220の外周端(つまり最も径方向外側のリング領域221)を周方向に分割してなる複数の円弧領域A1、A2を有する。2つの円弧領域A1、A2は、周方向に交互に繰り返し配置され、例えばそれぞれ4つずつ配置される。例えば、下チャック141は、吸着面141aに、2つの円弧領域A1、A2を区画する分割リブ206を有する。分割リブ206は、放射状に複数(例えば8つ)配置される。分割リブ206は、内周リブ201や外周リブ202と同じ高さを有し、内周リブ201や外周リブ202と共に下ウェハW2を水平に保持する。各円弧領域A1、A2には、複数のピン204が点在して配置される。
【0079】
さらに、下チャック141は、下ウェハW2を吸着する吸着圧力が独立に制御される複数の領域として、径方向内側のリング領域222を周方向に分割してなる複数の円弧領域B1、B2を有する。2つの円弧領域B1、B2は、周方向に交互に繰り返し配置され、例えばそれぞれ4つずつ配置される。例えば、下チャック141は、吸着面141aに、2つの円弧領域B1、B2を区画する分割リブ207を有する。分割リブ207は、放射状に複数(例えば8つ)配置される。分割リブ207は、内周リブ201や外周リブ202と同じ高さを有し、内周リブ201や外周リブ202と共に下ウェハW2を水平に保持する。各円弧領域B1、B2には、複数のピン204が点在して配置される。
【0080】
接合装置41は、下チャック141の吸着面141aを構成する複数の領域のそれぞれに独立に吸着圧力を発生させる複数の吸着圧力発生部として、例えば複数の真空ポンプ231〜234、241を有する。また、接合装置41は、複数の真空ポンプ231〜234、241のそれぞれによって発生させる吸着圧力を独立に調整する複数の吸着圧力調整部として、例えば複数の真空レギュレータ251〜254、261を有する。
【0081】
1つの真空ポンプ231は、1つの真空レギュレータ251が途中に設けられる配管を介して4つの円弧領域A1と接続される(
図9では1つの円弧領域A1と接続される配管のみ図示する。)。同様に、1つの真空ポンプ232は、1つの真空レギュレータ252が途中に設けられる配管を介して4つの円弧領域A2と接続される(
図9では1つの円弧領域A2と接続される配管のみ図示する。)。また、1つの真空ポンプ233は、1つの真空レギュレータ253が途中に設けられる配管を介して4つの円弧領域B1と接続される(
図9では1つの円弧領域B1と接続される配管のみ図示する。)。同様に、1つの真空ポンプ234は、1つの真空レギュレータ254が途中に設けられる配管を介して4つの円弧領域B2と接続される(
図9では1つの円弧領域B2と接続される配管のみ図示する。)。さらに、1つの真空ポンプ241は、1つの真空レギュレータ261が途中に設けられる配管を介して第1領域210と接続される。
【0082】
制御装置70が1つの真空ポンプ231を作動させると、1つの真空ポンプ231が4つの円弧領域A1に真空圧力を発生させ、その真空圧力が真空レギュレータ251において予め設定された設定値で維持され、その設定値に対応する吸着圧力が4つの円弧領域A1に発生する。真空レギュレータ251の設定値は、制御装置70によって変更可能であって、大気圧を基準として例えば−80kPa〜−5kPaの範囲で設定される。一方、制御装置70が真空ポンプ231の作動を停止させると、4つの円弧領域A1が大気圧に戻り、4つの円弧領域A1における吸着圧力の発生が解除される。その他の円弧領域A2、円弧領域B1、円弧領域B2、および第1領域210における吸着圧力の発生および解除は、円弧領域A1における吸着圧力の発生及び解除と同様であるため、説明を省略する。
【0083】
本実施形態の接合装置41は、複数の真空ポンプ231〜234、241および複数の真空レギュレータ251〜254、261を制御する制御装置70を有する。制御装置70は、
図1等では接合装置41の外部に設けられるが、接合装置41の一部として設けられてよい。制御装置70が、特許請求の範囲に記載の制御部に対応する。
【0084】
本実施形態の制御装置70は、第1領域210の少なくとも一部(例えば第1領域210の全体)と第2領域220の少なくとも一部(例えば円弧領域A2および円弧領域B1)とに異なる吸着圧力を同時に発生させる。これにより、吸着面141aに発生する吸着圧力の径方向における分布を制御でき、吸着面141aに吸着される下ウェハW2に生じる歪みを制御できる。
【0085】
第1領域210に発生させる吸着圧力と、円弧領域A2および円弧領域B1に発生させる吸着圧力とは、どちらが大きくてもよいし、どちらが小さくてもよい。尚、第1領域210に発生させる吸着圧力と、円弧領域A1および円弧領域B2に発生させる吸着圧力とは、本実施形態では同じであるが、どちらかが大きくてもよいし、どちらかが小さくてもよい。また、円弧領域A1および円弧領域B2には、吸着面141aに下ウェハW2を吸着する時に吸着圧力を発生させなくてもよい。つまり、本実施形態では下ウェハW2を吸着する時に吸着面141aの全体に吸着圧力を同時に発生させるが、吸着面141aの一部のみに吸着圧力を発生させてもよい。
【0086】
本実施形態によれば、下ウェハW2に生じる歪みを制御しながら下ウェハW2と上ウェハW1とを接合でき、下ウェハW2と上ウェハW1との貼合歪み(Distortion)を低減できる。貼合歪みは、例えば上ウェハW1に形成された複数のアライメントマークと下ウェハW2に形成された複数のアライメントマークとの平面視での位置ずれが最小になるように、上ウェハW1と下ウェハW2とを相対的に平行移動、回転移動および相似伸縮したときに残る位置ずれの大きさで表される。貼合歪みが許容範囲内に入るまで、吸着圧力の設定の変更と、変更後の設定に従って行われる接合と、接合後の貼合歪みの測定とが繰り返し行われてよい。吸着圧力の分布の変更は、過去に蓄積された複数のデータに基づき行われてよい。データは、吸着圧力の設定(または実績)と貼合歪みとの関係を示すものであればよく、情報記憶媒体に記憶されたものを読み出して用いる。
【0087】
本発明者は、鋭意研究を重ねた結果、貼合歪みの一因が下ウェハW2のヤング率等の物性の異方性にあることを見出した。下ウェハW2のヤング率等の物性は、周方向に周期的に変化する。この変化によって生じる貼合歪みは、下ウェハW2の径方向内側から径方向外側に向うほど顕著である。下ウェハW2の径方向内側から径方向外側に向うほど、例えば[0−11]方向と[001]方向との周方向における距離が離れるためである。
【0088】
そこで、本実施形態の制御装置70は、第1領域210の径方向外側に配置される第2領域220の一部(例えば円弧領域A1および円弧領域B2)と第2領域220の他の一部(例えば円弧領域A2および円弧領域B1)とに異なる吸着圧力を同時に発生させる。これにより、下ウェハW2の中心から外れた第2領域220において下ウェハW2に生じる歪を制御できる。
【0089】
円弧領域A1および円弧領域B2に発生させる吸着圧力と、円弧領域A2および円弧領域B1に発生させる吸着圧力とは、どちらが大きくてもよいし、どちらが小さくてもよい。尚、円弧領域A1に発生させる吸着圧力と、円弧領域B2に発生させる吸着圧力とは、本実施形態では同じであるが、どちらかが大きくてもよいし。どちらかが小さくてもよい。同様に、円弧領域A2に発生させる吸着圧力と、円弧領域B1に発生させる吸着圧力とは、本実施形態では同じであるが、どちらかが大きくてもよいし。どちらかが小さくてもよい。
【0090】
本実施形態の制御装置70は、第2領域220を径方向に分割してなる複数のリング領域221、222のうち、径方向外側のリング領域221の少なくとも一部(例えば円弧領域A1)と、径方向内側のリング領域222の少なくとも一部(例えば円弧領域B1)とに異なる吸着圧力を同時に発生させる。これにより、下ウェハW2の中心からの径方向距離に基づき下ウェハW2に生じる歪みを制御できる。
【0091】
本実施形態の制御装置70は、第2領域220の外周端を周方向に分割してなる複数の円弧領域のうち隣り合う円弧領域(ここでは、最も径方向外側のリング領域221に含まれる円弧領域A1と円弧領域A2)において、吸着圧力を独立に制御すると共に、異なる吸着圧力を同時に発生させる。下ウェハW2のヤング率等の物性は周方向に周期的に変化し、その変化によって生じる貼合歪みは下ウェハW2の外周端において最も顕著になるためである。
【0092】
同様に、制御装置70は、残りのリング領域(ここでは、径方向内側のリング領域222)を周方向に分割してなる複数の円弧領域のうち隣り合う円弧領域(例えば円弧領域B1と円弧領域B2)において、吸着圧力を独立に制御すると共に、異なる吸着圧力を同時に発生させてもよい。径方向外側のリング領域221だけではなく、径方向内側のリング領域222において下ウェハW2の歪みを制御することができる。下ウェハW2の直径が大きい場合に特に有効である。
【0093】
ところで、単結晶シリコンウェハのヤング率、ポアソン比、せん断弾性係数は、90°周期で変化する。[0−11]方向(0°方向)を基準とする90°周期の方向(0°方向、90°方向、180°方向、および270°方向)を、まとめて「0°基準90°周期方向」とも呼ぶ。また、[0−10]方向(45°方向)を基準とする90°周期の方向(45°方向、135°方向、225°方向、315°方向)を、まとめて「45°基準90°周期方向」とも呼ぶ。単結晶シリコンウェハのヤング率は、0°基準90°周期方向において最も高くなり、45°基準90°周期方向において最も低くなる。また、ポアソン比およびせん断弾性係数については、45°基準90°周期方向において最も高くなり、0°基準90°周期方向において最も低くなる。
【0094】
そこで、下ウェハW2が単結晶シリコンウェハである場合、
図9に示すように、0°基準90°周期方向に円弧領域A1が配置され、45°基準90°周期方向に円弧領域A2が配置されてよい。つまり、吸着圧力が独立に制御される2つの円弧領域A1、A2は、周方向に交互に繰り返し配置され、例えばそれぞれ4つずつ配置される。
【0095】
同様に、下ウェハW2が単結晶シリコンウェハである場合、
図9に示すように、0°基準90°周期方向に円弧領域B1が配置され、45°基準90°周期方向に円弧領域B2が配置されてよい。つまり、吸着圧力が独立に制御される2つの円弧領域B1、B2は、周方向に交互に繰り返し配置され、例えばそれぞれ4つずつ配置される。
【0096】
尚、本実施形態の制御装置70は、角度が同じ複数の円弧領域(例えば円弧領域A1と円弧領域B1、または円弧領域A2と円弧領域B2)において異なる吸着圧力を同時に発生させるが、本開示の技術はこれに限定されない。例えば、制御装置70は、角度が異なる複数の円弧領域(例えば円弧領域A1と円弧領域B2、または円弧領域A2と円弧領域B1)において異なる吸着圧力を同時に発生させてもよい。
【0097】
<変形、改良>
以上、本開示の基板処理装置および基板処理方法の実施形態などについて説明したが、本開示は上記実施形態などに限定されない。特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更、修正、置換、付加、削除、および組合わせが可能である。それらについても当然に本開示の技術的範囲に属する。
【0098】
上記実施形態の制御装置70は隣り合う円弧領域B1、B2において異なる吸着圧力を同時に発生させるが、本開示の技術はこれに限定されない。制御装置70は、隣り合う円弧領域B1、B2において同じ吸着圧力を発生させてもよい。この場合、径方向内側のリング領域222は、周方向に複数の円弧領域B1、B2に分割する必要がないため、
図10に示すように1つの円環領域Bのみで構成されてよい。1つの円環領域Bは、1つの真空レギュレータ253が途中に設けられる配管を介して1つの真空ポンプ233と接続される。円環領域Bにおける吸着圧力の発生および解除は、円弧領域A1における吸着圧力の発生及び解除と同様であるため、説明を省略する。
【0099】
上記実施形態の径方向外側のリング領域221と径方向内側のリング領域222とは、周方向に同じ数に分割されるが、周方向に異なる数に分割されてもよい。
図11に示すように、径方向外側のリング領域221の分割数は、径方向内側のリング領域222の分割数よりも多くてもよい。下ウェハW2の径方向内側から径方向外側に向うほど、貼合歪みが生じやすいためである。
【0100】
図11に示す下チャック141は、吸着圧力が独立に制御される複数の領域として、径方向外側のリング領域221を周方向に分割してなる3つの円弧領域A1、A2、A3を有する。円弧領域A3は、0°基準90°周期方向に配置される円弧領域A1と、45°基準90°周期方向に配置される円弧領域A2との間に配置される。これにより、下ウェハW2の周方向における吸着圧力分布をより精度良く制御できる。
【0101】
図11に示すように径方向外側のリング領域221を周方向に複数の円弧領域A1、A2、A3に分割する分割線(例えば分割リブ206)と、径方向内側のリング領域222を周方向に複数の円弧領域B1、B2に分割する分割線(例えば分割リブ207)とが周方向にずれていてもよい。径方向外側のリング領域221において吸着圧力が不連続に変わる箇所と、径方向内側のリング領域222において吸着圧力が不連続に変わる箇所とを周方向にずらすことができる。
【0102】
図11に示す4つの円弧領域A3は、1つの真空レギュレータ255が途中に設けられる配管を介して1つの真空ポンプ235と接続される(
図11には、1つの円弧領域A3と接続される配管のみ図示する。)。円弧領域A3における吸着圧力の発生および解除は、円弧領域A1における吸着圧力の発生及び解除と同様であるため、説明を省略する。
【0103】
図9〜
図11に示す下チャック141は、吸着圧力が独立に制御される複数の領域として、第2領域220を径方向に分割してなる2つのリング領域221、222を有するが、リング領域の数は2つには限定されない。リング領域の数は1つでもよいし(つまり、第2領域220は径方向には分割されなくてもよいし)、リング領域の数は3つ以上でもよい。
【0104】
図12は、第3変形例にかかる下チャック、真空ポンプおよび真空レギュレータを示す図である。
図12に示す変形例の下チャック141は、吸着圧力が独立に制御される複数の領域として、第2領域220を径方向に分割してなる4つのリング領域221、222、223、224を有する。
【0105】
径方向外側から1番目のリング領域221は、周方向に交互に繰り返し並ぶ2つの円弧領域A1、A2で構成される。隣り合う2つの円弧領域A1、A2は、吸着圧力が独立に制御される。同様に、径方向外側から2番目のリング領域222は、周方向に交互に繰り返し並ぶ2つの円弧領域B1、B2で構成される。隣り合う2つの円弧領域B1、B2は、吸着圧力が独立に制御される。
【0106】
また、径方向外側から3番目のリング領域223は、周方向に交互に繰り返し並ぶ2つの円弧領域C1、C2で構成される。隣り合う2つの円弧領域C1、C2は、吸着圧力が独立に制御される。1つの真空ポンプ235は、1つの真空レギュレータ255が途中に設けられる配管を介して4つの円弧領域C1に接続される(
図12には、1つの円弧領域C1と接続される配管のみ図示する)。1つの真空ポンプ236は、1つの真空レギュレータ256が途中に設けられる配管を介して4つの円弧領域C2に接続される(
図12には、1つの円弧領域C2と接続される配管のみ図示する)。円弧領域C1、C2における吸着圧力の発生および解除は、円弧領域A1における吸着圧力の発生及び解除と同様であるため、説明を省略する。
【0107】
さらに、径方向外側から4番目のリング領域224は、周方向に交互に繰り返し並ぶ2つの円弧領域D1、D2で構成される。隣り合う2つの円弧領域D1、D2は、吸着圧力が独立に制御される。1つの真空ポンプ237は、1つの真空レギュレータ257が途中に設けられる配管を介して4つの円弧領域D1に接続される(
図12には、1つの円弧領域D1と接続される配管のみ図示する)。1つの真空ポンプ238は、1つの真空レギュレータ258が途中に設けられる配管を介して4つの円弧領域D2に接続される(
図12には、1つの円弧領域D2と接続される配管のみ図示する)。円弧領域D1、D2における吸着圧力の発生および解除は、円弧領域A1における吸着圧力の発生及び解除と同様であるため、説明を省略する。
【0108】
また、
図12に示す変形例の下チャック141は、吸着圧力が独立に制御される複数の領域として、第1領域210を径方向に分割してなる2つのリング領域211、212と1つの円領域213とを有する。径方向外側のリング領域211と径方向内側のリング領域212とは、円環状のリブによって区画される。また、径方向内側のリング領域212と円領域213とは、円環状のリブによって区画される。第1領域210の内部に配置される円環状のリブは、
図9等に示す内周リブ201や外周リブ202と同心円状に形成される。第1領域210の内部に配置される円環状のリブは、ピン204と同じ高さを有し、ピン204等と共に下ウェハW2を水平に保持する。なお、本変形例では、2つのリング領域211、212および円領域213が、特許請求の範囲に記載の分割領域に対応する。
【0109】
第1領域210において径方向外側から1番目のリング領域211は、1つの真空レギュレータ261が途中に設けられる配管を介して1つの真空ポンプ241と接続される。また、第1領域210において径方向外側から2番目のリング領域212は、1つの真空レギュレータ262が途中に設けられる配管を介して1つの真空ポンプ242と接続される。さらに、第1領域210において径方向外側から3番目の円領域213は、1つの真空レギュレータ263が途中に設けられる配管を介して1つの真空ポンプ243と接続される。リング領域211、212および円領域213における吸着圧力の発生および解除は、円弧領域A1における吸着圧力の発生及び解除と同様であるため、説明を省略する。
【0110】
本変形例の制御装置70は、隣り合う2つの分割領域(例えば径方向外側のリング領域211と径方向内側のリング領域212、および/または径方向内側のリング領域212と円領域213)において異なる吸着圧力を同時に発生させる。これにより、ストライカー190の押圧ピン191で押圧される下ウェハW2の中心部近傍の歪みを制御できる。
【0111】
なお、第1領域210を構成するリング領域の数は、
図12では2つであるが、1つでもよいし、3つ以上でもよい。また、第1領域210を構成するリング領域(例えばリング領域211)は、第2領域220を構成するリング領域(例えばリング領域221)と同様に、周方向に複数の領域に分割されてもよい。
【0112】
上記実施形態および上記変形例の下チャック141は下ウェハW2を真空吸着するが、静電吸着してもよい。この場合、吸着圧力発生部は、例えば下チャック141の内部に埋設される内部電極を含む。一方、吸着圧力調整部は、例えば内部電極に供給する電力を調整する電力調整部を含む。電力調整部は、例えば降圧型DC/DCコンバータまたは昇圧型DC/DCコンバータ等で構成される。
【0113】
上記実施形態および上記変形例では、下チャック141に吸着される下ウェハW2に生じる歪みを制御したが、上チャック140に吸着される上ウェハW1に生じる歪みを制御してもよい。つまり、本開示の技術を上チャック140に適用してもよく、上チャック140が特許請求の範囲に記載の保持部に対応し、下チャック141が特許請求の範囲に記載の対向保持部に対応してもよい。また、本開示の技術を上チャック140と下チャック141の両方に適用してもよい。さらに、本開示の技術を接合装置41以外の装置、例えばダイシング装置等に適用してもよい。本開示の技術は、基板を保持する保持部を有する装置であれば適用できる。
【0114】
本出願は、2018年1月17日に日本国特許庁に出願された特願2018−005987号に基づく優先権を主張するものであり、特願2018−005987号の全内容を本出願に援用する。