【実施例1】
【0017】
図1に、本発明の実施の形態における欠陥観察装置の一例を示す。本実施形態の欠陥観察装置は、半導体デバイスの製造工程において発生するウェーハ上の欠陥を観察する装置に適用したものである。
【0018】
101は被検査物であるウェーハである。102はウェーハ101を詳細観察する電子顕微鏡(以下、SEMと記述)である。103はウェーハ101上の欠陥を光学的に検出して、その欠陥位置情報を取得する光学顕微鏡である。104はウェーハ101を載置可能なステージであり、ウェーハ101の任意の場所をSEM102及び光学顕微鏡103の視野内に移動可能とするものである。105は真空槽であり、SEM102、ステージ104、光学顕微鏡103の対物レンズ113はこの中に納められている。
【0019】
光学顕微鏡103の内部を説明する。110は照明光源である。照明光源110より出射されたレーザ光は真空封し窓111を通り、照明位置を制御するミラー112で反射し、ウェーハ101表面上の任意の位置に照射される。113は試料101より反射した散乱光を採光する為の対物レンズである。対物レンズ113を通った光は真空封し窓114を通り、結像レンズ115によりマイクロレンズアレイ117上に結像された後、撮像素子116で電気信号に変換される。マイクロレンズアレイ117とは、格子状に微小レンズを配列したレンズユニットである。
図1では真空槽105の内側に対物レンズ113、外側に結像レンズ115を配置する構成を示したが、試料101からの散乱光をマイクロレンズアレイ117上に結像でき、かつ真空槽105の真空を破らないものであれば、一体型のレンズであって真空槽105の内側、あるいは外側、あるいは内外両側にまたがるものであっても構わない。
【0020】
制御部106は、ステージ制御回路118、SEM撮像系制御回路119、画像処理回路120、外部入出力I/F121、CPU122、メモリ123より構成され、これらはバス124に接続され、相互に情報の入出力が可能となっている。ステージ制御回路118によりステージ104の制御が行われ、SEM撮像系制御回路119によりSEM102の制御及び検出画像信号のメモリ123への記憶を行う。画像処理回路120は、光学顕微鏡103の撮像素子116から得られる画像データを演算処理し、撮像画像内の欠陥位置を検出する。外部入出力I/F121は、端末107への表示情報出力及び、端末107からの情報入力、記憶装置108への情報入出力、ネットワーク109を介して図示しない欠陥検査装置や上位管理システムなどとの情報入出力を行う。メモリ123に記憶された画像データはCPU122により演算処理される。
【0021】
以上のように構成される欠陥観察装置において、特に、光学顕微鏡103は、欠陥検査装置(図示せず)で検出した欠陥の位置情報を用いて、ウェーハ101上の欠陥の位置を再検出(以下、検出と記述)する機能を有し、制御部106は光学顕微鏡103で検出された欠陥の位置情報に基づいて欠陥の位置情報を補正する位置補正手段としての機能を有し、SEM102は制御部106で補正された欠陥位置情報に基づき、欠陥を観察する機能を有する構成となっている。ステージ104は、光学顕微鏡103で検出した欠陥がSEM102で観察できるように移動できる構成となっている。
【0022】
図2に、画像処理回路120の詳細を示す。画像処理回路120はデータI/F201、マスク画像データ記憶部202、画像情報記憶部203、演算部204、欠陥分類部206から構成され、これらは内部バス205に接続している。光学顕微鏡103で得られた画像は画像情報記憶部203で記憶される。マスク画像データ記憶部202にはマスク画像が予め登録されている。演算部204は、画像情報記憶部203に記憶された画像データと、マスク画像データ記憶部202に記憶されたマスク画像を用いて演算処理を行い、光学顕微鏡103で検出した画像内の欠陥位置を特定する。欠陥分類部206は、
図13の説明で後述するように、選択されたマスク画像に基づいて欠陥種類を分類する。データI/F201は、内部バス205と、制御部106内のバス124とに接続され、画像処理回路120と、制御部106の中の他の処理部との間でのデータ授受を行う。
【0023】
図3および
図4を用いて本光学系におけるマイクロレンズアレイの作用を説明する。
図4は、
図3の303で示した部分の拡大図である。
図3は、ウェーハ101上の点300および301から出た光線の撮像素子116までの光路を示す図である。
図3では光学系を対物レンズ113と結像レンズ115に分け、対物レンズ113と結像レンズ115の間に作られる瞳領域に空間フィルタ302を示しているが、ここに示す空間フィルタ302は仮想的なものであり、本構成のマイクロレンズアレイの作用が従来の空間フィルタと同等の効果を持つことを説明するために描いたものである。点300から出た光線は、空間フィルタの開口部を通過する太い実線で示す光線(
図4の400に対応)と、空間フィルタ302で遮蔽される細い実線で示す光線に分かれる。
図3では説明のために、空間フィルタ302で遮蔽された後も光路を細い実線で示している(
図4の401に対応)。
【0024】
図4のマイクロレンズ410、411はマイクロレンズアレイ117を構成するレンズであり、ウェーハの結像面に置かれている。図より、マイクロレンズ410はウェーハ101上の点300の位置に対応し(400及び401は、ウェーハ101上の点300から出射した光の光路である)、マイクロレンズ410を通過した光が入射する撮像素子の画素404、405、406は、各光線が結像レンズ115の通過した位置に対応する。対物レンズ113と結像レンズ115の間に作られる瞳空間では、光線は平行になっているので、画素404、405、406は瞳面の空間位置に対応する。すなわち、
図3の空間フィルタ302の例では、空間フィルタの開口部分は画素404、405に対応し、遮蔽部分は画素406に対応する。これより空間フィルタ302を置かなくても撮像素子116で受光後、従来、空間フィルタ302により遮蔽されていた光線が入射する画素を無効化する処理を行えば、マイクロレンズ410に対応する微小な領域において、空間フィルタ302と等価な効果を得ることができる。
図4では有効とする画素404,405を白い四角、無効とする画素406を黒い四角で示している。
【0025】
図3、
図4ではマイクロレンズアレイ117、撮像素子116を1次元的に示しているが、実際にはマイクロレンズアレイ117はマイクロレンズが格子状に面的な広がりを持ち、撮像素子116はエリアセンサである。
図4のマイクロレンズ410に対応する1列3画素で示す部分は、欠陥の種類ごとの空間フィルタ形状を実用的に表現できる平面画素数で構成すればよい。同様にしてウェーハ101上の点301には、マイクロレンズ411と撮像素子の画素407,408,409が対応する。このようにして、例えばN×N個のマイクロレンズで構成されるマイクロレンズアレイを利用すれば、ウェーハ上の視野全体をN×Nの解像度で検出でき、また空間フィルタをM×Mの解像度で表現するためには、有効画素数N×N×M×Mのエリアセンサで撮像すればよい。以降、マイクロレンズアレイはN×Nで構成され、1個のマイクロレンズの視野をM×M画素で撮像するものとする。
【0026】
特許文献1の
図21(a)には、散乱光シミュレーションを用いて算出されたウェーハ表面からの散乱光のラジアル偏光(P偏光)成分と、アジマス偏光(S偏光)成分の強度分布が開示されている。
図5は両者の強度を合計したもので、ウェーハからの散乱光により観察される光強度分布の模擬図である。散乱光強度が強いほど白く描いている。
【0027】
同じく、特許文献1の
図21(b)には、直径18nmの球状異物からの散乱光のラジアル偏光(P偏光)成分と、アジマス偏光(S偏光)成分の強度分布が開示されている。
図6は両者の強度を合計したもので、直径18nmの球状異物の散乱光により観察される光強度分布の模擬図である。
図5と同様に散乱光強度が強いほど白く描いている。
【0028】
図7は特許文献1の
図34に開示されている空間フィルタの遮光板のひとつを示すものであり、
図5に示したウェーハからの散乱光と、
図6に示した球状異物からの散乱光を弁別するものである。黒の部分が遮蔽部、白の部分が開口部である。
図7の遮蔽部、開口部と、
図5、
図6の光強度分布を比較すると、
図5のウェーハからの散乱光の大部分は空間フィルタで遮蔽され、
図6の球状異物からの散乱光の右半分は開口部を通過する。この結果、空間フィルタ通過後の散乱光は球状異物からのものが大部分となり、ウェーハ上の異物からの散乱光から、異物の散乱光を高感度に取り出すことができる。
【0029】
図5および
図6の強度分布は、
図3における対物レンズ113と結像レンズ115の間の空間の断面で観察されるものであるが、
図3の点300に直径18nmの球状異物があるとすれば、
図4に示すマイクロレンズ410に対応する撮像素子上でも、
図5と
図6の光の強度分布が生じ、その結果として対象の微小領域に対応する光強度分布画像を得ることができる。
【0030】
図8は
図7の空間フィルタをM×Mの解像度で画像化したものである。これがマスク画像であり、
図2のマスク画像データ記憶部202に記憶されるものである。
図8に示す画素の値を黒は0、白を1とする。対物レンズ113と結像レンズ115の間の空間断面で観察される像は、撮像素子上では上下左右反転するので、実際は
図8の上下左右も反転する。
【0031】
以下、
図9のフローチャートに従って、1枚のマスク画像での光学顕微鏡視野内における欠陥位置の検出処理を説明する。
図4に示すマイクロレンズ410を通して得られた対象の微小領域の光強度分布画像に対しマスク処理を施す。すなわち、微小領域光強度分布画像(以降、微小領域画像)の
図8の黒の画素に対応する画素を0に、白の画素に対応する画素は元の画素値を残す(S902)。これにより、従来の空間フィルタによる光の遮蔽と同様の効果を得ることができる。同様の処理をN×N個全てのマイクロレンズに対応する微小領域画像に対し行い、処理後のN×N枚の微小領域画像の中から、最大輝度、ないし近傍画素を含む平均で最大輝度を有する微小領域画像を選択する(S905)。本光学系の検出視野はN×Nのマイクロレンズアレイで決まっているので、最大輝度を有する微小領域画像に対応するマイクロレンズの位置により、検出視野内の欠陥位置を特定することができる(S908)。ただしS908のround()は除算の結果の整数部を表すこととし、mod()は剰余数を表すこととする。
【0032】
また、
図10に、マイクロレンズアレイのマイクロレンズの番号とX,Y座標の割り付け方の一例を示す。例えば
図9でMAX_POSITIONがN+2である場合は、Y=2、X=2となる。視野内の位置を実際の座標値に変換するためには、求めたX,Yに画素ピッチと結像倍率を乗じればよい。さらに光学顕微鏡103の視野中心と、ステージ104の原点との相対位置関係をキャリブレーションで定めておけば、光学系視野内の欠陥座標位置をステージ104の座標に変換でき、光学顕微鏡103で検出した欠陥位置より、欠陥をSEM102の視野中心に位置出しすることができる。
【0033】
欠陥の種類だけでなく、欠陥の方向によっても散乱光の強度分布が変化する。そのために、欠陥の方向に対応して複数のマスク画像を準備すれば、これに対応することができる。本発明の方法によれば、複数の種類の欠陥や複数の欠陥の方向に対するマスク画像を予め準備し、検出した微小領域光強度分布画像にマスク処理を施すことによりこれを実現できる。
【0034】
図11のフローチャートに従って、複数枚のマスク画像による光学顕微鏡視野内における欠陥位置の検出処理の内容を説明する。検出する欠陥種類の数をRとし、対応するマスク画像を準備する(S1101)。各マスク画像をマスク画像(r)と表すことにする。S1102からS1108まではマスク画像(r)に対する処理で、
図9で説明した内容と同じものである。最大輝度値MAX_VAL(r)とMAX_POSITION(r)を記録しながら(S1106)、全てのマスクを処理するまで繰り返す(S1110)。全てのマスク処理が終了したら、S1111からS1115のステップで、最大輝度を持つ画像番号(max_r)を検出する(S1113)。max_rから検出視野内の欠陥位置を特定する(S1116)。欠陥位置の特定方法は
図9で説明したものと同様である。
【0035】
以上の説明では最大輝度値MAX_VAL(r)を記録するとしたが、記録する最大輝度値は、マスク画像の1(空間フィルタの開口部に対応する部分)の面積で正規化されたもの、欠陥種類ごとに予め定めた係数を乗じたもの、あるいはマスク処理後の画像の輝度値を正規化した後に得られる最大輝度値、などによりMAX_VAL(r)を求めてもよい。
【0036】
欠陥位置を検出するマスク画像番号max_rにより、それに対応する欠陥の性質、例えば凹凸などの性質、がSEMの観察画像において顕在化されるよう、SEM観察画像の生成において、例えばSEMで検出される二次電子像、反射電子像を用いて観察画像を生成する際に、各画像の混合比などの画像撮像条件を欠陥ごとに変更することが可能となる。
【0037】
図12に、本光学系により欠陥座標を補正し、
図1に示したSEMでSEM欠陥画像を収集する手順を、
図1および
図2を参照しながら説明する。まず、観察対象であるウェーハ101をステージ104にロードする(S1201)。次に事前に検査装置で検出された欠陥の欠陥座標データを全体制御部106の外部入出力I/F121を介してメモリ123に読み込み(S1202)、その中から観察対象とするM点の欠陥を選択する(S1203)。欠陥の選択は予め設定されたプログラムによりCPU122が実行してもよいし、端末107を介してオペレータが選択してもよい。次にウェーハのアライメントを行う(S1204)。これは、ウェーハ上の座標で記述されている欠陥座標の位置に基づいてステージ104を移動したとき、目標である欠陥座標の位置がSEM102の視野、及び光学顕微鏡103の視野の中央付近に来るようにするため、ウェーハ上の座標が既知の位置決めマーク(アライメントマーク)を用いて、ウェーハ座標とステージ座標とを関連付けるものである。この関連付けの結果はアライメント情報としてメモリ123に記憶される。
【0038】
次に観察対象として選択された欠陥1からMについて、欠陥位置の補正を行う。まず、欠陥mを光学顕微鏡103の視野に移動する(S1206)。この移動は、メモリ123に記憶されている欠陥座標データと、アライメント情報から、CPU122で欠陥mに対応するステージ座標を計算し、これによりステージ制御回路118を介して、ステージ104を駆動することで行われる。ステージ移動終了後、
図11に示した処理にて欠陥
mの位置を特定し(S1100)、特定した欠陥の位置を補正欠陥位置
m として記憶する(S1207)。S1100実行の際には、光学顕微鏡103により撮像された欠陥mの画像は画像情報記憶部203に記憶され、この欠陥mの画像と、マスク画像データ記憶部202に記憶されているマスク画像が演算部204に読み出され、演算部204にてマスク処理および
図11のS1100で示した処理が実行される。以上のS1206、S1100,S1207の処理を欠陥m(m=1、・・・、M)に対し行う。検査装置によっては、検出した欠陥位置座標だけではなく、欠陥の特徴に関する情報も出力する装置もある。例えば、欠陥の特徴情報により欠陥が凸か凹かなどが事前に分かれば、これに合わせて使用するマスク画像を欠陥ごとに変更して使用してもよい。
【0039】
これを実現するためには、欠陥の特徴情報に対応する使用マスク画像を特定する情報を予めテーブルにしてメモリ123に記憶しておく。そして、前述した検査装置で検出された欠陥の欠陥座標データをメモリ123に読み込む際に、欠陥の特徴情報も読み込んでおく。CPU122により欠陥ごとに欠陥情報を読み出す際に、メモリ123に記憶されているテーブル情報を参照して使用するマスク画像特定情報を読み出し、マスク画像データ記憶部202から処理S1100実行の際に使用するマスク画像を読み出せばよい。
【0040】
全ての欠陥m(m=1、・・・、M)の補正欠陥位置m を取得した後、補正欠陥位置mをメモリ123より読み出し、この位置情報を必要に応じてステージ座標に変換の後、ステージ制御回路118に与えることにより欠陥mをSEM102の視野に順次移動し(S1211)、欠陥mのSEM画像を撮像する(S1212、S1213、S1214)。全ての欠陥のSEM画像撮像後、ウェーハをアンロード(S1215)し、処理を終了する。
【0041】
マスク画像は欠陥の種類や方向によって決まるものである。欠陥位置の検出のために使用したマスク画像から、欠陥の種類や方向がSEM撮像の前に分かる。これより、欠陥の種類や方向に応じて、欠陥が見やすい、最適な撮像条件を設定することが可能となる。また、欠陥位置の検出に使用したマスク画像から、欠陥の種類や方向が分かるので、これを欠陥の分類情報に利用することも可能となる。