(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記アルキルアミンは、ペンチルアミン、ヘキシルアミン、ヘプチルアミン、オクチルアミン、ノニルアミン、デシルアミン、ウンデシルアミン、ドデシルアミン、N−ラウロイルサルコシン、及びこれらの組み合わせから選択される、請求項1に記載の組成物。
【発明を実施するための形態】
【0026】
「CMP組成物」は、以下に記載され、また「CMPスラリー」、「研磨組成物」などとも称され、基板の誘電体含有表面から誘電体材料を除去するために有用である。スラリーは、パターン誘電体材料の領域を包含する基板の表面をCMP処理するのに有用であり、研磨、バルク除去などと称される除去プロセスを含む。好ましいスラリーは、パターン誘電体材料の高い除去速度を伴うパターン誘電体材料のバルク除去に有用であり、低いトレンチ損失及び高い平坦化効率と組み合わされている。
【0027】
記載されているスラリーは、液体キャリアと、液体キャリア中に分散された研磨粒子と、シクロデキストリン、シクロデキストリンと複合物を形成することが可能なアルキルアミン化合物と、を含む。このスラリーは、他の化学材料、添加物、または少数の内容物、特に界面活性剤、触媒、酸化剤、阻害剤、pH調整剤を任意選択的に含むことができる。
【0028】
このCMP組成物は、シクロデキストリンを含む。シクロデキストリンは、多数の糖分子でできたよく知られた化合物群であり、三次元管状または環状リング構造に形成され、そのような化合物は、環状オリゴ糖と称される。シクロデキストリンは、各単位同士間を1〜4個の結合により接続されたα−D−グルコピラノシド分子単位(図の下方を参照)から成る。説明されているように、研磨スラリーにおいて有用なシクロデキストリンの形状は、六員環であるα(アルファ)−シクロデキストリン、七員環であるβ(ベータ)−シクロデキストリン、八員環であるγ(ガンマ)−シクロデキストリンを含む。
【化1】
【0029】
シクロデキストリンは、組成物中に所望のシクロデキストリン−アルキルアミン複合体の量の存在をもたらすために有効な量でCMP組成物中に存在することができ、特に、シクロデキストリンを含有していないそれ以外の同じスラリーに対して、平坦化効率、誘電体材料の除去速度、またはそれらの両方などのスラリーの性能特性に影響を及ぼす。
【0030】
本発明によれば、本明細書中に説明されているように、シクロデキストリンがパターン誘電体を処理するための、アルキルアミン化合物をも含有するCMPスラリー中に存在する場合、パターン誘電体除去速度は、シクロデキストリンの存在により改善することができる。別の言い方をすれば、アルキルアミンは、平坦化効率を改善するのに有用であるが、単一で(シクロデキストリンなしで)使用される場合、アルキルアミンはまた、パターン誘電体の除去速度を著しく低下させることができる。スラリー中に存在するシクロデキストリンは、アルキルアミンにより提供された平坦化効率の改善を可能にし、同時にパターン誘電体除去速度の実質的な低下を防ぐことが見出された。シクロデキストリンは、アルキルアミンが平坦化効率を改善するように機能することができるが、アルキルアミンはパターン誘電体除去速度の著しい減少を引き起こすことを防ぐことができる。このため、好ましい組成物実施形態によれば、(アルキルアミンをも含有する)スラリーが誘電体材料のCMP除去ステップに使用される場合、同一の、ただしシクロデキストリンを含有しないスラリーを使った同一のプロセスの除去速度に対して、そのプロセスの除去速度が増加するような量で、シクロデキストリンをその組成物中に含めることができる。
【0031】
CMP組成物中のシクロデキストリンの特定量は、処理される具体的な基板、ならびに、例えば研磨粒子、アルキルアミン、触媒、酸化剤、阻害剤などの種類及び量などの、スラリー中の他の内容物の種類及び量などの因子に依存し得る。ある特定の有用な実施形態では、シクロデキストリンは、組成物の全重量を基準として約0.01〜約2重量パーセントのシクロデキストリン、例えば約0.02〜約1.5重量パーセントの範囲内の量でスラリー中に存在することができる。これらの量は、CMP組成物を使用する箇所の場合であり、CMP濃縮組成物の場合は、より多くなる。
【0032】
アルキルアミン化合物(または略してただ単に「アルキルアミン」)は、スラリー中に存在する場合、シクロデキストリン−アルキルアミン複合体(以下を参照)を形成し、同時に基板の誘電体含有表面を効果的に処理するCMP組成物を作り出す任意の種類のものとすることができる。好ましくは、アルキルアミンは、アルキルアミン、シクロデキストリン、及びシクロデキストリン−アルキルアミン複合体を含有するスラリー、かつ、平坦化効率、及びパターン誘電体の望ましくは高い除去速度の所望の組み合わせなどの処理特性の有用なまたは有利な組み合わせを示すスラリーを生成するように、選択することができる。
【0033】
誘電体含有基板表面を処理するためのCMP組成物の内容物選択を考慮することの中には、ある特定のアルキル含有化合物(例えば、窒素含有アルキル含有界面活性剤)を包含する、ある特定の種類の化学材料が、CMP処理中にシリコン酸化物(例えば、TEOS)などの誘電体材料の除去を阻害することができることが含まれる。したがって、説明されているように、ある特定の種類のアルキルアミンは、誘電体含有基板表面の処理における平坦化効率を改善するスラリー中に含まれることができる。しかし、平坦化効率を改善するスラリー中にアルキルアミンを含めることは、アルキルアミンがパターン誘電体の除去速度に実質的な低下をもたらす場合、望ましくない。説明されているように、アルキルアミンと一緒にスラリー中にシクロデキストリンを含めることは、アルキルアミンは、誘電体除去速度において実質的な低下を引き起こさずに、平坦化効率の所望の改善を提供することを可能にする。例えば、平坦化効率における所与の改善は、シクロデキストリンもまた存在する場合、より少ないアルキルアミンの量を用いて達成することができる。
【0034】
説明されているように、好ましいアルキルアミン化合物は、スラリー中に含まれることができ、また平坦化効率における所望の改善を作り出し、同時にまた、パターン誘電体の除去速度における所望されない低下を引き起こさない。典型的な実施形態では、アルキルアミンは、シクロデキストリンをもまた含有するスラリー中に存在し、アルキルアミンとシクロデキストリンとの組み合わせを含有していない例外の同じスラリーに対して、25、15、10、または好ましくは5パーセント超だけしかパターン誘電体の除去速度を低下させない量で、存在することができる。
【0035】
アルキルアミンは、アルキル基(式IではR
1として識別されている)を含み、このアルキル基は、飽和時の一般式C
nH
2n+1を有する炭化水素を意味し、ただし、任意選択的にいくつかの不飽和量、例えば1、2、または3個の炭素−炭素二重結合、置換、またはヘテロ原子を含んでもよい。アルキル基は、直鎖状または分岐状であってもよい炭化水素鎖を含む。アルキル基は、置換されていてもよいか、または置換されていなくてもよく、例えば、アルキル基は、炭素結合水素原子の代わりに、ハロゲン原子、水酸基などの1つ以上の非水素置換基を任意選択的に含んでもよい。アルキル基は、またヘテロ原子(酸素、硫黄、窒素)を含むこともでき、この基は、帯電されていてもよいか、または帯電されていなくてもよい。好ましいアルキル基は、帯電されておらず、ヘテロ原子または置換を含有する必要がなく、飽和されていてもよく、またはせいぜい小さな不飽和レベル、例えば1、2、もしくは3個の炭素−炭素二重結合を含む。
【0036】
アルキルアミン化合物は、化学技術において一般に理解されている「ポリマー」または「オリゴマー」ではない比較的低い分子量の分子である。また、このアルキルアミンは、1個の酸性基もまたは複数の酸性基も必要とせず、好ましくは含まない。したがって、このアルキルアミン化合物は、米国特許出願第2012/0270400号に記載の「ポリマー化合物」とは異なり、それらのポリマーは、1モル当たり少なくとも1,000グラムの分子量を有し、1個のペンダント酸性基または多数のペンダント酸性基を含有する。その特許出願に記載されているポリマー組成物とは対照的に、本出願で説明されているアルキルアミン化合物は、非ポリマーかつ非オリゴマー化合物と考えられる種類の比較的小さい分子である。アルキルアミン化合物の分子量は、1モル当たり1,000グラム未満、例えば1モル当たり900、800、700、または500グラム未満とすることができる。この分子量範囲内に入れるため、アルキル基(例えば、式I中のR
1)は、75個未満の炭素原子、例えば50、40、30、または20個の炭素原子を含有することができる。本出願に記載のアルキルアミンもまた、米国特許出願第2012/0270400号(ポリマー骨格からの側鎖として)に記載されているような酸性基(例えば、カルボン酸基)の存在を必要とせず、かつ除外することができる。
【0037】
アルキル基は、その基が、シクロデキストリン分子の開放された、通常疎水性の内部空間内に配置されるようになることが可能な化学構造を有し、例えば、アルキルアミン分子が、スラリー中でシクロデキストリン分子と一緒に存在する間中、説明されたアルキルアミン−シクロデキストリン複合体を形成する。複合体を形成するため、アルキル基は、好ましくは相対的に直鎖状または非高度分岐状としてもよく、その結果、その基は、シクロデキストリン化合物の疎水性内部に固定してかつ熱力学的に配置されるようになることが可能になる。アルキル基が、シクロデキストリン分子の内部空間に配置されているとき、(実質的に疎水性でもある)アルキル基は、2つの分子間に共有またはイオン化学結合を伴わずにシクロデキストリン分子の内部空間と関連付けられていると考えられている。
【0038】
アルキル基はまた、液状担体中で、結果としてあるレベルの溶解度を有するアルキルアミン化合物の1つとすることができ、その液状担体により、アルキルアミン化合物の所望の量(濃度)が、輸送、保管、及び使用中の有用な安定性を伴って(濃縮液としてか、または使用箇所において)CMP組成物中で溶解するようになることを可能にする。アルキル基の長さが長いほど、より短い長さのアルキル基と比較して、水性溶媒(すなわち、水性担体)中で可溶しにくくすることができる。
【0039】
アルキルアミン化合物のアミン基は、第一級アミン、第二級アミン、第三級アミン、または第四級アンモニウムとすることができる。アミン基は、7未満のpHを有するスラリー中に存在する場合などの中性から低いpHでプラスに帯電させることができる。アミン基のpKaは、使用中、スラリーのpH超とすることができ、その結果、アミン基は、使用中、スラリーの中で、例えば4超、5超、または8もしくは9超、例えば第一級アルキルアミンの場合、約9〜約11の範囲内で、陽イオン性となる。
【0040】
スラリー中でシクロデキストリンを伴い、説明されたような良好な性能特性を有する複合体を形成することができるアルキルアミンのいくつかの非限定例は、式Iの構造を有する化合物を含む。
【化2】
式中、
nは、1または2などの整数、好ましくは1であり、
Xは、N
+であり、
R
1は、非荷電、直鎖状、もしくは分岐状、飽和もしくは不飽和(例えば、1、2、または3個の炭素−炭素二重結合を含有する)アルキル基であり、5〜約75個の炭素原子を含有し、
R
2、R
3、及びR
4は、独立して
水素、
置換されていてもよいか、もしくは置換されていなくてもよく、ヘテロ原子を任意選択的に含んでもよく、かつ12個未満の炭素原子を含有する、アリール基もしくはシクロアルキル基、
置換されていてもよいか、もしくは置換されていなくてもよく、ヘテロ原子を任意選択的に含んでもよく、かつ12個未満の炭素原子を含有する直鎖状もしくは分岐状、飽和もしくは不飽和アルキル基、から選択することができ、
R
2、R
3、及びR
4のうちの2つまたは3つは、置換されていてもよいか、もしくは置換されていなくてもよく、ヘテロ原子を任意選択的に含んでもよい飽和もしくは不飽和環構造を形成することができ、環及び任意選択的置換基は、12個未満の炭素原子を含有する。
【0041】
式Iにおいて、各R
1、R
2、R
3、及びR
4は、置換され、帯電され、飽和され、または不飽和されているアルキル基でもよく、ヘテロ原子を含有するアルキル基でもよい。X原子は、スラリーpHにより、CMPプロセスでの使用中のスラリーの中で、陽イオン性に帯電し、例えば、そのX原子は、使用中のスラリーの中に存在する場合、N
+となる。「置換された」基(例えば、置換アルキル)とは、炭素結合された水素原子が、非水酸原子(例えば、ハライド)、またはアミン、水酸化物などの官能基によって内部で置き換えられる基を指す。ある特定の実施形態では、nは、1または2である。nが1である場合、化合物は、陽イオン性に帯電した窒素イオン(N
+)であるX原子の存在に基づいて、モノカチオン性となる。
【0042】
ある特定の実施形態では、アルキルアミンは、式Iで表される通りであり、
式中、Xは、N
+であり、
R
1は、非荷電、直鎖状、もしくは分岐状、飽和もしくは不飽和のアルキル基であり、好ましくは置換されておらず、好ましくはヘテロ原子を含まず、5〜約40個の炭素原子を含有し、
各R
2、R
3、及びR
4は、独立して、水素、または1〜6個の炭素原子を有するアルキル(例えば、飽和アルキル、例えば飽和直鎖状アルキル)である。
【0043】
他の実施形態では、アルキルアミンは、式Iの通りであり、式中、Xは、N
+であり、R
1は、5〜30個の炭素原子を含有する直鎖状、飽和、非荷電のアルキル基であり、R
2、R
3、及びR
4は、説明されている通りであり、例えば、独立して、水素、及び1〜6個または1〜3個の炭素原子などの12個未満の炭素原子を含有するアルキル基、から選択することができる。特にそのような実施形態では、各R
2、R
3、及びR
4は、水素とすることができる。
【0044】
ある特定の実施形態では、R
1は、単なるアルキル基であるか、またはR
1〜R
4群のいかなる非水素群のうちで最も大きいアルキル基である。R
1は、シクロデキストリン分子と関連付け、シクロデキストリン−アルキルアミン複合体を形成するアルキルアミン化合物のアルキル基と考えられることが可能である。例えば、R
1は、5〜75個の炭素原子、例えば6〜40、50、または60個の炭素原子、または7〜15、20個の炭素原子を含有することができ、R
1は、その炭素骨格に沿って、または炭素骨格に取り付けられた水素原子を置き換える置換基として、1個以上のヘテロ原子を任意選択的に含有することができ、またR
1は、飽和、もしくは不飽和(例えば、骨格に1、2、または3個の炭素−炭素二重結合を含有することができる)、直鎖状、もしくは分岐状とすることができる。シクロデキストリン分子の内部空間と関連付けしているR
1を簡単にするため、R
1は、好ましくは飽和され、またはほとんど飽和されている非帯電直鎖アルキル基、例えば5〜20個、例えば6〜18個、例えば7〜18個の炭素原子を有する直鎖アルキルであってもよい。
【0045】
ある特定の実施形態では、各R
2、R
3、及びR
4は、独立して、水素、またはR
1より少ない炭素原子、例えば多くても8、10、12、もしくは20個の炭素原子、例えば1〜10個の炭素原子、1〜8個、1〜6個、または1〜4個の炭素原子を含有する直鎖状もしくは分岐状アルキル基である。いくつかの実施形態では、R
2、R
3、及びR
4は、すべて水素である。
【0046】
ある特定の実施形態では、アルキルアミンは、ペンチルアミン、ヘキシルアミン、ヘプチルアミン、オクチルアミン、ノニルアミン、デシルアミン、ウンデシルアミン、ドデシルアミン、N−ラウロイルサルコシン、tert−オクチルアミン、N−メチル−N−オクチルアミン、ジヘキシルアミン、N−(sec−ブチル)−N−プロピルアミン、N,N−ジメチルデシルアミン、これらの官能基をそれらの構造内に含有するより大きな分子、及びこれらの組み合わせから選択することができる。
【0047】
有用なまたは好ましいとして説明されたアルキルアミン化合物とは対照的に、ある特定の他のアルキルアミン化合物は、例えばパターン誘電体の除去速度における実質的な低下を伴わずに改善された平坦化効率を提供することが可能であると説明されたような好ましいCMP組成物を提供するには有効ではない。これらの例としては、N,N,N’,N’,−ペンタメチル−N−タロウ−1,3−プロパンジアンモニウムジクロライド、ならびに1,6−ジアミノヘキサン、1,8−ジアミノオクタン、及び1,12−ジアミノドデカンなどのいくつかのジアミンが含まれる。
【0048】
アルキルアミンは、誘電体含有基板表面を処理する場合、改善された平坦化効率などのスラリーの所望の処理性能特性を提供するのに有効な量でスラリー中に含められることができる。例えば、アルキルアミンは、そのアルキルアミンの同じ種類及び量を含有していないそれ以外の同じスラリーと比較して平坦化効率を改善する量でスラリー中に含められることができる。また、スラリー中にシクロデキストリンも存在していると、スラリーのパターン誘電体除去速度もまた、高くなり、例えばアルキルアミンが存在することにより、実質的にそれほど低下しない。
【0049】
特別なスラリー中に使用されるアルキルアミンの量は、処理される(例えば、研磨される)具体的な基板、及びスラリー中の他の内容物などの因子に依存し得る。ある特定の有用な実施形態では、アルキルアミンは、使用箇所で(すなわち、CMP処理中)、その組成物の全重量を基準として約0.001〜約0.5重量パーセントのアルキルアミン、例えば約0.01〜約0.5重量パーセントのアルキルアミンの範囲内の量で、スラリー中に存在することができる。これらの量は、使用箇所でのCMP組成物にとって有用であり、例えば「組成物を使用する」とは、CMP処理中に使用する間のスラリーの中で、を意味し、より高いレベルのアルキルアミンが、CMP濃縮組成物中に存在することになる。
【0050】
シクロデキストリンに対して、アルキルアミンの量は、複合体の所望の量がスラリー中に形成することが可能な量とすることができる。シクロデキストリンに対するアルキルアミンの有用な量は、おおよそシクロデキストリン及びアルキルアミンの化学量論量である量、すなわちこれらの2つの化合物のおおよその等モル量としてよい。例えば、シクロデキストリンに対するアルキルアミンのモル比は、1モルのシクロデキストリン当たり0.5〜1.5モルのアルキルアミン、例えば1モルのシクロデキストリン当たり0.75〜1.25モルのアルキルアミン、または1モルのシクロデキストリン当たり約0.9〜1.1モルのアルキルアミンの範囲内にあってもよい。
【0051】
代替的に、アルキルアミンが2つのアルキル置換基(例えば、式IのR
1及びR
2が両方ともアルキル基である)を含むある特定の実施形態によれば、シクロデキストリンに対するアルキルアミンのモル比は、例えば(2つのアルキル置換基を有する)1モルのアルキルアミン当たり約2モルのシクロデキストリンの範囲内で異なってもよく、より一般的には、1モルのアルキルアミン当たり1〜3モルのシクロデキストリン、例えば1モルのアルキルアミン当たり1.5〜2.5モルのシクロデキストリンの範囲内で異なってもよい。
【0052】
本明細書で説明されているようなスラリー中では、アルキルアミンは、5個以上の炭素原子を含有する少なくとも1つの置換基(式IのR
1)を有し、α−、β−、またはγ−シクロデキストリンと一緒に複合体を形成することが可能である。理論にとらわれずに、アルキルアミン化合物のアルキル基は、単一のシクロデキストリン分子と関連付けられるようになることができ、「複合体」を形成する。アルキル基は、アルキル基とシクロデキストリンとの間で形成される化学的結合(共有またはイオン)なしに、環状(管式、環式)シクロデキストリン分子の疎水性内部空間に配置されるようになることができる。シクロデキストリン分子と関連付けられて、そのように配置されたアルキルアミン分子は、本明細書中で「シクロデキストリン−アルキルアミン複合体」または単に「複合体」と称される。この複合体は、シクロデキストリン分子から離れるように拡がっているアミン基を含有するアルキルアミンの一部を含む。
【0053】
スラリー中に存在する複合体の量は、スラリー中のアルキルアミンの量、スラリー中のシクロデキストリンの量、スラリー中の他の内容物の量及び種類、ならびにアルキルアミン(特にアルキル基)の化学的同一性、及びスラリーの各状態におけるシクロデキストリン化合物と関連し、かつ一緒に複合体を形成するその傾向、すなわちアルキルアミン及びシクロデキストリン分子と、複合体との間の平衡定数に依存する。好ましくは、アルキルアミンの量が高いと、シクロデキストリンと一緒に複合化されるようになり、例えばアルキルアミンの少なくとも50、70、80、90パーセント以上が、アルキルアミンとの複合体の一部となる。非複合化アルキルアミンの存在は、例えば、使用中または(沈降形式の)保管中に所望されない凝集、及び研磨粒子の粒子サイズの増大を引き起こすことによって、研磨粒子の不安定性を作り出す影響をもたらす可能性がある。説明されているように、組成物は、保管中及び使用中は、安定であることが好ましく、したがって、複合体の形で、高いパーセンテージのアルキルアミン化合物を含むことが好ましい。任意選択的に、かつ好ましくは、シクロデキストリンの量は、化学量論的に過剰な量、例えば、非複合化アルキルアミン化合物の存在を回避するため、(モル基準上での)アルキルアミン化合物当たり少なくとも1、3、または5パーセント過剰のシクロデキストリンの量とすることができる。
【0054】
一般的に、複合体は、誘電体含有基板表面を研磨する場合、スラリーの所望の処理性能特性を提供するのに有効な量で存在することができ、そのような特性は、所望の平坦化効率及び所望のパターン誘電体除去速度を含んでいる。複合体の特別な量は、処理される具体的な基板、及び研磨粒子などのスラリー中の他の内容物などの因子に基づいて選択することができる。ある特定の有用な実施形態では、アルキルアミン−シクロデキストリン複合体は、組成物の全重量を基準として約0.001〜約2.5重量パーセントの複合体、例えば、組成物の全重量を基準として約0.01〜約0.5重量パーセントの複合体の範囲の量でスラリー中に存在することができる。これらの量は、使用箇所でのCMP組成物中の複合体の量を指し、したがって、濃度がより高い複合体が、CMP濃縮物中に存在することになる。
【0055】
説明されているように、スラリーは、任意の有用な種類または量の研磨粒子を含むことができる。好ましいスラリーは、パターン誘電体、例えば基板表面のパターン酸化物領域などの基板の誘電体領域を研磨または平坦化するために有効である粒子を含む。好ましい研磨粒子の例としては、セリア(例えば、CeO
2)、ジルコニア(例えば、ZrO
2)、シリカ(任意の各種形状)、またはこれらの組み合わせが含まれ、好ましくは、そのような粒子は、酸性pHを有するように説明されているスラリー中に存在する場合、陽イオン性の電荷を有する。
【0056】
スラリーは、パターン誘電体を研磨する際、特に有用であり得ることから、その粒子は、基板表面から銅、銀、タングステン、または別の金属などの金属材料を除去する目的で含まれている研磨粒子の実質的ないかなる量も必要とせず、好ましくは除外することができる。したがって、好ましいスラリーの研磨粒子は、好ましくは陽イオン性に帯電したセリア粒子、ジルコニア粒子、シリカ粒子、またはこれらの組み合わせから構成され、または本質的に構成され得、好ましくは金属基板表面を研磨または平坦化するのに有用な粒子のごくわずかな量をも除外することができ、そのような粒子は、金属表面を研磨するために有用であることが知られているある特定の種類の金属酸化物、例えばアルミナ粒子を含む。そのようなスラリーは、全重量スラリーを基準とした、セリア系、シリカ系、またはジルコニア系粒子以外のせいぜい0.1重量パーセントの研磨粒子、例えば、全重量スラリーを基準とした、セリア、シリカ、またはジルコニア系粒子以外の0.05または0.01重量パーセント未満の研磨粒子を含むことができる。交代で、述べられているように、そのようなスラリーは、スラリー中の全重量研磨粒子当たり、セリア系、シリカ系、またはジルコニア系粒子以外のせいぜい0.5重量パーセントの研磨粒子、例えば、スラリー中の全重量研磨粒子当たり、セリア系、シリカ系、またはジルコニア系粒子以外の0.1、0.05、または0.01重量パーセント未満の研磨粒子を含むことができる。これらの量は、使用箇所でのCMP組成物の場合であり、より高い濃度の研磨粒子が、CMP処理において使用するために希釈されたCMP濃縮組成物中に存在することになる。
【0057】
好ましいコロイド状の研磨粒子は、酸性pHでCMP組成物中に存在している場合、正電荷または「ゼータ電位」を有する。CMPスラリー中の粒子上の電荷は、一般にゼータ電位(または運動電位)と称される。粒子のゼータ電位は、その粒子を取り囲んでいるイオンの電荷と、CMP組成物のバルク溶液の電荷との間の電位差を指す(例えば、液状担体及びその中に溶解されている任意の他の含有成分)。ゼータ電位は、一般に、水性溶媒のpHに依存する。所与のCMP組成物の場合、その粒子の等電点は、ゼータ電位がゼロとなるpHとして定義される。pHが、等電点から離れるように増加または減少するにつれ、表面電荷(したがってゼータ電位)は、それに対応して(負または正のゼータ電位の値に向かって)減少または増加する。CMP組成物などの分散のゼータ電位は、Dispersion Technologies,Inc(Bedford Hills,NY)から市販されているModel DT−1202 Acoustic and Electro−acoustic spectrometerを使って取得することができる。
【0058】
本発明のある特定の実施形態によれば、CMP組成物中の研磨粒子(例えば、セリア研磨粒子)のゼータ電位は、その粒子が組成物中に存在する場合、正となり、例えば、少なくとも20ミリボルト(mV)のゼータ電位、好ましくは20〜70mVの範囲内のゼータ電位となる。具体的なゼータ電位は、スラリーのpHにより影響を受け、CMP組成物が使用されるCMPプロセスの種類に基づいて有用な範囲内で選択することができる。例えば20〜40mVの有用な範囲の下方端におけるゼータ電位は、誘電体、例えばシリコン酸化物の選択除去を使用するCMPプロセスに好適となり得る。例えば、50〜70mVの有用な範囲の下方端におけるゼータ電位は、シリコン酸化物、例えばTEOSなどのバルク誘電体材料の選択除去を使用するCMPプロセスに好適となり得る。
【0059】
誘電体材料を処理するために有用なセリア粒子は、CMP技術においてよく知られており、かつ市販されている。例として、とりわけ、湿式処理セリア、焼成セリア、及び金属ドープセリアと称される種類が挙げられる。同様に、誘電体材料を研磨するために有用なジルコニア粒子は、CMP技術においてよく知られており、かつ市販されている。例として、とりわけ、金属ドープジルコニア及び非金属ドープジルコニアが挙げられる。金属ドープジルコニアの中には、0.1〜25重量パーセントの範囲内で、優先的にドーパント元素を有するセリウム−、カルシウム−、マグネシウム−、及びイットリウムドープジルコニアがある。
【0060】
本出願記載のスラリー中に使用するためのある特定の好ましいセリア粒子は、本出願者の同時係属出願である2015年3月に出願された「Polishing Composition Containing Ceria Abrasive」と題する米国仮特許出願第14/639,564号に記載されている内容を含む。好ましいCMP組成物は、陽イオン性に帯電した湿式プロセスセリア粒子を含む当該仮出願に記載されている研磨粒子を含むことができる。その中に、サイズ、組成物、提供方法、粒子サイズ分布、または他の機械的もしくは物理的特性に基づいて、単一の種類の研磨粒子または複数の異なる種類の研磨粒子を含むことができるスラリーについて記載されている。その記載及び本出願記載は、「第1の」研磨粒子を含有する組成物について言及し、それは、組成物が少なくともこの「第1の」種類の研磨粒子を含有し、任意選択的に「第1の」研磨粒子と異なる追加の研磨粒子を含有してもよい(ただし、含有する必要はない)ことを意味している。
【0061】
セリア研磨粒子は、様々な異なるプロセスにより作製することができる。例えば、セリア研磨粒子は、コロイドセリア粒子を含んだ沈殿セリア粒子または縮重合セリア粒子とすることができる。
【0062】
もう1つの特別な例として、セリア研磨粒子(例えば、第1の研磨粒子として)は、以下のプロセスにより作製された湿式プロセスセリア粒子とすることができる。湿式プロセスセリア粒子を合成する際の第1のステップは、水中にセリア前駆体を溶解することが可能である。このセリア前駆体は、任意の好適なセリア前駆体とすることができ、任意の好適な電荷のセリウムイオン、例えばCe
3+またはCe
4+を有するセリウム塩を含むことができる。好適なセリア前駆体には、例えば、セリウムIII硝酸塩、セリウムIV硝酸アンモニウム、セリウムIII炭酸塩、セリウムIV硫酸塩、及びセリウムIII塩化物が挙げられる。好ましくは、そのセリア前駆体は、セリウムIII硝酸塩である。
【0063】
セリア前駆体溶液のpHを増加させると、非晶質Ce(OH)
3を形成することができる。その溶液のpHを、任意の好適なpHに、例えば約10以上のpH、例えば約10.5以上のpH、約11以上のpH、約12以上のpHに増加させることができる。通常、その溶液は、約14以下のpH、例えば約13.5以下のpH、または約13以下のpHを有する。溶液のpHを増加させるために、任意の好適な塩基を使用することができる。好適な塩基には、例えば、KOH、NaOH、NH
4OH、及び水酸化テトラメチルアンモニウムが挙げられる。エタノールアミン及びジエタノールアミンなどの有機塩基もまた、好適である。その溶液は、pHが増加するにつれ、白くかつ曇ったようになり、そして非晶質Ce(OH)
3を形成する。
【0064】
セリア前駆体溶液は、通常、数時間の間、混合され、例えば約1時間以上、例えば、約2時間以上、約4時間以上、約6時間以上、約8時間以上、約12時間以上、約16時間以上、約20時間以上、または約24時間以上の間、混合される。通常、その溶液は、約1時間〜約24時間、例えば約2時間、約8時間、または約12時間の間、混合される。混合が完了すると、その溶液は、加圧容器に移され、そして加熱することができる。
【0065】
次いで、セリア前駆体溶液は、任意の好適な温度に加熱することができる。例えば、その溶液は、約50℃以上、例えば約75℃以上、約100℃以上、約125℃以上、約150℃以上、約175℃以上、または約200℃以上の温度に加熱することができる。代替的に、または加えて、その溶液は、約500℃以下、例えば約450℃以下、約400℃以下、約375℃以下、約350℃以下、約300℃以下、約250℃以下、約225℃以下、または約200℃以下の温度に加熱することができる。このため、その溶液は、前述の終点のうち任意の2つにより制限された範囲内の温度に加熱することができる。例えば、その溶液は、約50℃〜約300℃、例えば約50℃〜約275℃、約50℃〜約250℃、約50℃〜約200℃、約75℃〜約300℃、約75℃〜約250℃、約75℃〜約200℃、約100℃〜約300℃、約100℃〜約250℃、または約100℃〜約225℃の温度に加熱することができる。
【0066】
セリア前駆体溶液は、通常、数時間の間加熱される。例えば、その溶液は、約1時間以上、例えば約5時間以上、約10時間以上、約25時間以上、約50時間以上、約75時間以上、約100時間以上、または約110時間以上の間、加熱することができる。代替的に、または加えて、その溶液は、約200時間以下、約180時間以下、約165時間以下、約150時間以下、約125時間以下、約115時間以下、または約100時間以下の間、加熱することができる。このため、その溶液は、前述の終点のうち任意の2つにより制限された期間、加熱することができる。例えば、その溶液は、約1時間〜150時間、例えば約5時間〜130時間、約10時間〜120時間、約15時間〜115時間、または約25時間〜100時間の間、加熱することができる。
【0067】
加熱後、セリア前駆体溶液は、濾過され、沈殿セリア粒子を分離することができる。沈殿粒子は、過剰水を使って濯ぎ、未反応のセリア前駆体を除去することができる。沈殿粒子及び過剰水の混合物は、濾過された後に続いて各濯ぎステップに進み、不純物を除去する。ひとたび適切に濯がれると、セリア粒子は、追加の処理、例えば焼結のために乾燥され、またはセリア粒子は、直接再分散させることができる。
【0068】
セリア粒子は、任意選択的に乾燥され、再分散の前に焼結させることができる。「焼結」及び「焼成」という用語は、本明細書中では、交換可能に使用され、以下に説明される条件の下でセリア粒子の加熱に言及する。セリア粒子を焼結することは、それらの結果としての結晶化度に影響を及ぼす。どんな特別な理論にもとらわれないように期待するならば、高温でかつ延長された期間の間セリア粒子を焼結することにより、粒子の結晶格子構造中の欠陥を低下させると考えられている。任意の好適な方法が、使用され、セリア粒子を焼結することができる。一例として、セリア粒子は、乾燥させることができ、次いで高温で焼結させることができる。乾燥は、室温で、または高温で実行することができる。特に、乾燥は、約20℃〜約40℃、例えば約25℃、約30℃、または約35℃の温度で実行することができる。代替的に、または加えて、乾燥は、約80℃〜約150℃、例えば約85℃、約100℃、約115℃、約125℃、または約140℃の高温で実行することができる。セリア粒子が乾燥した後、それらは、粉砕され、粉末を作り出すことができる。粉砕は、ジルコニアなどの任意の好適な研削材を使って実行することができる。
【0069】
セリア粒子は、任意の好適なオーブンの中で、かつ任意の好適な温度で焼結させることができる。例えば、セリア粒子は、約200℃以上、例えば約215℃以上、約225℃以上、約250℃以上、約275℃以上、約300℃以上、約350℃以上、または約375℃以上の温度で焼結させることができる。代替的に、または加えて、セリア粒子は、約1000℃以下、例えば約900℃以下、約750℃以下、約650℃以下、約550℃以下、約500℃以下、約450℃以下、または約400℃以下の温度で焼結させることができる。このため、セリア粒子は、前述の終点のうち任意の2つにより制限された温度で、加熱させることができる。例えば、セリア粒子は、約200℃〜約1000℃、例えば約250℃〜約800℃、約300℃〜約700℃、約325℃〜約650℃、約350℃〜約600℃、約350℃〜約550℃、約400℃〜約550℃、約450℃〜約800℃、約500℃〜約1000℃、または約500℃〜約800℃の温度で焼結させることができる。
【0070】
セリア粒子は、任意の好適な延べ時間の間で焼結させることができる。例えば、セリア粒子は、約1時間以上、例えば約2時間以上、約5時間以上、または約8時間以上の間で、焼結させることができる。代替的に、または加えて、セリア粒子は、約20時間以下、例えば約18時間以下、約15時間以下、約12時間以下、または約10時間以下の間で、焼結させることができる。このため、セリア粒子は、前述の終点のうち任意の2つにより制限された期間で、焼結させることができる。例えば、セリア粒子は、約1時間〜約20時間、例えば約1時間〜約15時間、約1時間〜約10時間、約1時間〜約5時間、約5時間〜約20時間、または約10時間〜約20時間の間で、焼結させることができる。
【0071】
セリア粒子はまた、種々の温度で、かつ上述された範囲内の種々の延べ時間の間で、焼結させることもできる。例えば、セリア粒子は、ゾーン加熱炉中で焼結させることができ、その過熱路は、そのセリア粒子を、種々の延べ時間に対する1つ以上の温度にさらす。一例として、セリア粒子は、約1時間以上の間、約200℃〜約1000℃の温度で焼結されせることができ、次いで約1時間以上の間、約200℃〜約1000℃の範囲内にある異なる温度で、焼結させることもできる。
【0072】
乾燥、粉砕、及び任意選択の焼結などの後、セリア粒子は、好適な液体担体、例えば水性担体、特に水の中に再分散させることができる。セリア粒子が、焼結される場合、次いでセリア粒子は、焼結終了後に再分散される。セリア粒子を再分散させるために、任意の好適なプロセスを使用することができる。通常、セリア粒子は、好適な酸を使って、セリア粒子及び水の混合物のpHを下げることによって再分散される。pHが下がるにつれ、セリア粒子の表面は、陽イオン性のゼータ電位を発展させる。この陽イオン性のゼータ電位は、セリア粒子同士間の斥力を作り出し、この斥力によりセリア粒子の再分散を容易にする。混合物のpHを下げるために、任意の好適な酸を使用することができる。好適な酸の例には、塩酸及び硝酸が挙げられる。高い水溶性及び親水性官能基を有する有機酸もまた、好適である。好適な有機酸には、例えば、とりわけ酢酸が挙げられる。H
3PO
4及びH
2SO
4などの多価陰イオンを有する酸は、一般的に好ましくない。その混合物は、任意の好適なpHに下げることができる。例えば、その混合物のpHは、約2〜約5、例えば約2.5、約3、約3.5、約4、または約4.5に下げることができる。通常、その混合物のpHは、約2未満に下げられない。
【0073】
再分散されたセリア粒子は、粉砕され、それらの粒子サイズを縮小することができる。好ましくは、セリア粒子は、再分散と同時に粉砕することができる。粉砕は、ジルコニアなどの任意の好適な粉砕材料を使って実行することができる。また、粉砕は、高周波音による分解または湿式ジェット法を使って実行することができる。粉砕後、セリア粒子は、濾過され、任意の残留大粒子を除去することができる。例えば、セリア粒子は、0.3μm以上、例えば0.4μm以上、または0.5μm以上の孔径を有するフィルタを使って濾過することができる。
【0074】
ある特定の研磨粒子(例えば、第1の研磨粒子)は、約40nm〜約100nmの平均粒径を有することができる。この1個の粒子の粒径とは、その粒子を包含する最小球形の直径である。粒径は、任意の種々の既知で好適な技術を使って測定することができる。例えば、粒径は、ディスク型遠心分離機を使って、すなわち分画遠心沈降(DCS)により、測定することができる。好適なディスク型遠心分離粒径測定機器は、例えば、CPS Instruments社(Prairieville,LA)から、例えばCPS Disc Centrifuge Model DC24000UHRが市販されている。他に特に規定がなければ、本明細書中で報告され、また主張されている平均粒径値は、ディスク型遠心分離測定に基づいている。
【0075】
好ましいセリア研磨粒子(例えば、第1の研磨粒子)は、約40nm以上、例えば約45nm以上、約50nm以上、約55nm以上、約60nm以上、約65nm以上、約70nm以上、約75nm以上、または約80nm以上の平均粒径を有することができる。代替的に、または加えて、セリア研磨粒子は、約100nm以下、例えば約95nm以下、約90nm以下、約85nm以下、約80nm以下、約75nm以下、約70nm以下、または約65nm以下の平均粒径を有することができる。このため、セリア研磨粒子は、前述の終点のうち任意の2つにより制限された範囲内の平均粒径を有することができる。例えば、セリア研磨粒子(例えば、第1の研磨粒子)は、約40nm〜約100nm、例えば約40nm〜約80nm、約40nm〜約75nm、約40nm〜約60nm、約50nm〜約100nm、約50nm〜約80nm、約50nm〜約75nm、約50nm〜約70nm、約60nm〜約100nm、約60nm〜約80nm、約60nm〜約85nm、または約65nm〜約75nmの平均粒径を有することができる。好ましい研磨粒子(例えば、第1の研磨粒子)は、約60nm〜約80nmの平均粒径、例えば約65nmの平均粒径、約70nmの平均粒径、または約75nmの平均粒径を有することができる。
【0076】
研磨粒子(例えば、第1の研磨粒子)は、任意の有用な濃度(例えば、全重量濃度当たり)で、CMP組成物中に存在することができる。有用な濃度の典型的な範囲(例えば、使用箇所での)は、約0.005〜約2重量パーセントのCMP組成物とすることができる。例えば、第1の研磨粒子は、約0.005重量パーセント以上、例えば、約0.0075重量パーセント以上、約0.01重量パーセント以上、約0.025重量パーセント以上、約0.05重量パーセント以上、約0.075重量パーセント以上、約0.1重量パーセント以上、または約0.25重量パーセント以上の濃度で、CMP組成物中に存在することができる。代替的に、または加えて、第1の研磨粒子は、約2重量パーセント以下、例えば約1.75重量パーセント以下、約1.5重量パーセント以下、約1.25重量パーセント以下、約1重量パーセント以下、約0.75重量パーセント以下、約0.5重量パーセント以下、または約0.25重量パーセント以下の濃度で、CMP組成物中に存在することができる。このため、研磨粒子(例えば、第1の研磨粒子)は、前述の終点のうち任意の2つにより制限された範囲内の濃度で、CMP組成物中に存在することができる。例えば、研磨粒子(例えば、第1の研磨粒子)は、全重量スラリーを基準として、約0.005重量パーセント〜約2重量パーセント、例えば、約0.005重量パーセント〜約1.75重量パーセント、約0.005重量パーセント〜約1.5重量パーセント、約0.005重量パーセント〜約1.25重量パーセント、約0.005重量パーセント〜約1重量パーセント、約0.01重量パーセント〜約2重量パーセント、約0.01重量パーセント〜約1.5重量パーセント、約0.05重量パーセント〜約2重量パーセント、約0.05重量パーセント〜約1.5重量パーセント、約0.1重量パーセント〜約2重量パーセント、約0.1重量パーセント〜約1.5重量パーセント、約0.1重量パーセント〜約1重量パーセントの濃度で、CMP組成物中に存在することができる。これらの濃度は、使用箇所でのCMP組成物スラリーの場合とすることができ、より高い濃度は、CMP濃縮物中に含まれることができる。
【0077】
ある特定の好ましいスラリーの種類は、この範囲の低い終点、例えば、全重量CMP組成物を基準として約0.1重量パーセント〜約0.5重量パーセント、例えば約0.15重量パーセント〜約0.4重量パーセント、約0.15重量パーセント〜約0.35重量パーセント、または約0.2重量パーセント〜約0.3重量パーセントで、第1の研磨粒子を含有することができる。より好ましくは、スラリーは、約0.1重量パーセント〜約0.3重量パーセント、例えば約0.1重量パーセント、約0.15重量パーセント、約0.2重量パーセント、約0.25重量パーセントの濃度で、第1の研磨粒子を含有することができる。
【0078】
好ましい第1の研磨粒子は、少なくとも約300nmの粒径分布を有することができる。粒径分布は、最大粒子の粒径と最小粒子の粒径との間の差を指す。例えば、第1の研磨粒子は、少なくとも約315nm、例えば少なくとも約320nm、少なくとも約325nm、少なくとも約330nm、少なくとも約340nm、少なくとも約350nm、少なくとも約355nm、少なくとも約360nm、少なくとも約365nm、少なくとも約370nm、少なくとも約375nm、または少なくとも約380nmの粒径分布を有することができる。好ましくは、第1の研磨粒子は、少なくとも約320nm、例えば少なくとも約325nm、少なくとも約335nm、または少なくとも約350nmの粒径分布を有することができる。また好ましくは、第1の研磨粒子は、約500nmより大きくない、例えば約475nm以下、約450nm以下、約425nm以下、または約415nm以下の粒径分布を有することができる。このため、研磨粒子(例えば、第1の研磨粒子)は、前述の終点のうち任意の2つにより制限された範囲内の粒径分布を有することができる。例えば、研磨粒子は、約315nm〜約500nm、例えば約320nm〜約480nm、約325nm〜約475nm、約335nm〜約460nm、または約340nm〜約450nmの粒径分布を有することができる。
【0079】
説明されている第1の研磨粒子は、少なくとも約300nmの粒径分布を有する好ましい粒子を伴った、任意の好適な最大粒径及び任意の好適な最小粒径を有することができる。例えば、研磨粒子は、約1nm〜約50nm、例えば約1nm〜約40nm、約1nm〜約30nm、約1nm〜約25nm、約1nm〜約20nm、約5nm〜約25nm、または約10nm〜約25nmの最小粒径を有することができる。好ましくは、第1の研磨粒子は、約10nm〜約30nm、例えば約15nm、約20nm、または約25nmの最小粒径を有することができる。研磨粒子は、約250nm〜約500nm、例えば約250nm〜約450nm、約250nm〜約400nm、約300nm〜約500nm、または約300nm〜約400nmの最大粒径を有することができる。好ましくは、第1の研磨粒子は、約350nm〜約450nm、例えば約375nm、約400nm、または約425nmの最大粒径を有することができる。
【0080】
CMP組成物は、任意選択的に追加の研磨粒子(例えば、第2の研磨粒子、第3の研磨粒子など)を含有することができる。追加の研磨粒子は、例えば、第1の研磨粒子と異なる金属の金属酸化物研磨粒子、例えばチタニア(例えば、二酸化チタン)、ゲルマニア(例えば、二酸化ゲルマニウム、酸化ゲルマニウム)、マグネシア(例えば、酸化マグネシウム)、ニッケル酸化物、これらの共同形成された生成物、またはこれらの組み合わせとすることができる。また、追加の研磨粒子は、ゼラチン、ラテックス、セルロース、ポリスチレン、またはポリアクリレートの有機粒子とすることもできる。代替的に、CMP組成物は、約40nm〜約100nmの平均粒径及び少なくとも約300nmの粒径分布を有する湿式プロセスセリア粒子である第1の研磨粒子を含有することができ、そこではCMP組成物は、いかなる追加の(第2または第3の)研磨粒子を含まない。
【0081】
また、追加の研磨粒子は、CMP組成物の第1の研磨粒子、すなわちヒュームドセリア粒子または焼成セリア粒子などの、湿式プロセスセリア粒子でないセリア粒子と比較して、異なる種類のセリアである金属酸化物研磨粒子セリア(例えば、セリウム酸化物)とすることができる。代替的に、CMP組成物は、約40nm〜約100nmの平均粒径及び少なくとも約300nmの粒径分布を有する湿式プロセスセリア粒子である第1の研磨粒子を含有することができ、そこではCMP組成物は、いかなる追加のセリア研磨粒子を含まない。
【0082】
CMP組成物が追加の研磨粒子(例えば、第2の研磨粒子、第3の研磨粒子など)を含む場合、追加の研磨粒子は、任意の好適な平均粒径を有することができる。例えば、CMP組成物は、約1nm〜約60nm、例えば約1nm〜約55nm、約1nm〜約50nm、約1nm〜約40nm、約1nm〜約35nm、約1nm〜約30nm、約1nm〜約25nm、約1nm〜約20nm、約5nm〜約50nm、約5nm〜約35nm、または約15nm〜約30nmの平均粒径を有する第2の研磨粒子を含むことができる。代替的に、第2の研磨粒子は、約100nm〜約350nm、例えば約100nm〜約300nm、約105nm〜約350nm、約115nm〜約350nm、約135nm〜約325nm、約150nm〜約315nm、約175nm〜約300nm、約200nm〜約275nm、約225nm〜約250nmの平均粒径を有することができる。好ましくは、追加の研磨粒子(例えば、第2の研磨粒子、第3の研磨粒子など)は、約1nm〜約35nmの平均粒径、または約125nm〜約300nmの平均粒径を有することができる。
【0083】
追加の研磨粒子(例えば、全部で、第2の研磨粒子、第3の研磨粒子など)は、第1の研磨粒子に加えて、任意の好適な量でCMP組成物中に存在することができる。ある特定のスラリーの実施形態では、追加の研磨粒子は、スラリーの全重量を基準として、約0.005重量パーセント〜約2重量パーセントの濃度で存在することができる。例えば、追加の研磨粒子は、約0.005重量パーセント以上、例えば、約0.0075重量パーセント以上、約0.01重量パーセント以上、約0.025重量パーセント以上、約0.05重量パーセント以上、約0.075重量パーセント以上、約0.1重量パーセント以上、または約0.25重量パーセント以上の濃度で、CMP組成物中に存在することができる。代替的に、または加えて、追加の研磨粒子は、スラリーの全重量を基準として、約2重量パーセント以下、例えば約1.75重量パーセント以下、約1.5重量パーセント以下、約1.25重量パーセント以下、約1重量パーセント以下、約0.75重量パーセント以下、約0.5重量パーセント以下、または約0.25重量パーセント以下の濃度で、CMP組成物中に存在することができる。このため、追加の研磨粒子は、前述の終点のうち任意の2つにより制限された範囲内の濃度でCMP組成物中に存在することができる。例えば、好ましいCMP組成物は、約0.005重量パーセント〜約2重量パーセント、例えば約0.005重量パーセント〜約1.75重量パーセント、約0.005重量パーセント〜約1.5重量パーセント、約0.005重量パーセント〜約1.25重量パーセント、約0.005重量パーセント〜約1重量パーセント、約0.01重量パーセント〜約2重量パーセント、約0.01重量パーセント〜約1.75重量パーセント、約0.01重量パーセント〜約1.5重量パーセント、約0.05重量パーセント〜約2重量パーセント、約0.05重量パーセント〜約1.5重量パーセント、約0.1重量パーセント〜約2重量パーセント、または約0.1重量パーセント〜約1.5重量パーセントの濃度で、(説明された第1の研磨粒子の量に加えて)第2の研磨粒子を含むことができる。より好ましくは、追加の研磨粒子は、スラリーの全重量を基準として、約0.01重量パーセント〜約0.5重量パーセント、例えば約0.025重量パーセント、約0.05重量パーセント、約0.08重量パーセント、約0.1重量パーセント、約0.15重量パーセント、約0.2重量パーセント、約0.25重量パーセント、約0.3重量パーセント、約0.4重量パーセントの濃度で存在することができる。
【0084】
第1の研磨粒子、及び望ましくはCMP組成物中に存在する任意の追加研磨粒子は、CMP組成物中で、より具体的にはCMP組成物の水性担体中で、懸濁している。研磨粒子がCMP組成物中で懸濁している場合、研磨粒子は、好ましいことに、コロイド状に安定している。コロイド状という用語は、水性担体中での研磨粒子の懸濁を指す。コロイド状の安定性とは、時間が経過してもその懸濁が維持されることを指す。本発明の文脈では、研磨粒子が100mlのメスシリンダ中に置かれ、2時間の間放置されている場合、そのメスシリンダの下部50ml中の粒子濃度([B]g/mlを単位とする)と、そのメスシリンダの上部50ml中の粒子濃度([T]g/mlを単位とする)との間の差を、研磨組成物の初期粒子濃度([C]g/mlを単位とする)で除した値が、0.5以下(すなわち、{[B]−[T]}/[C]≦0.5)であるならば、研磨粒子は、コロイド状態で安定していると考えられる。この[B]−[T]}/[C]という値は、望ましくは、0.3以下であり、好ましくは0.1以下である。
【0085】
CMP組成物は、約7未満、例えば約1〜約6のpHを示すことができる。通常、CMP組成物は、約2以上のpHを有する。また、CMP組成物のpHは、通常、約6以下である。例えば、そのpHは、約1、2、3、または3.5〜約6の範囲内、例えば約3.5のpH、約4のpH、約4.5のpH、約5のpH、約5.5のpH、約6のpH、またはこれらのpH値のうち任意の2つにより定義された範囲内のpHとすることができる。
【0086】
CMP組成物は、任意選択的にpH調整剤を含むことができ、この調整剤は、任意の好適なpH調整剤とすることができる。例えば、pH調整剤は、無機塩基、アルキルアミン、アルコールアミン、第四アミン水酸化物、アンモニア、またはこれらの組み合わせとすることができる。特に、このpH調整剤は、水酸化カリウム、トリエタノールアミン、水酸化テトラメチルアンモニウム(TMAHもしくはTMA−OH)、または水酸化テトラエチルアンモニウム(TEAHもしくはTEA−OH)とすることができる。ある特定の好ましい実施形態では、このpH調整剤は、トリエタノールアミンとすることができる。
【0087】
研磨組成物のpHは、酸性化合物を含めることによって達成または維持することができる。好適な酸性pH調整剤には、酢酸、硝酸、過塩素酸、硫酸、リン酸、フタル酸、クエン酸、アジピン酸、シュウ酸、マロン酸、マレイン酸などが挙げられる。好適な緩衝材には、リン酸塩、硫酸塩、酢酸塩、マロン酸塩、シュウ酸塩、ホウ酸塩、アンモニウム塩などが挙げられる。
【0088】
CMP組成物は、水(例えば、脱イオン水)を含有する水性担体を含み、任意選択的に1つ以上の水混和性有機溶媒を含有することができる。使用可能な有機溶媒の例には、プロペニルアルコール、イソプロピルアルコール、エタノール、1−プロパノール、メタノール、1−ヘキサノールなどのアルコール、及びアセチルアルデヒド他などのアルデヒド、アセトン、ジアセトンアルコール、メチルエチルケトン他などのケトン、ギ酸エチル、ギ酸プロピル、酢酸エチル、酢酸メチル、乳酸メチル、乳酸ブチル、乳酸エチル他などのエステル、ジメチル・スルホキシド(DMSO)、テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジグリム他などのエーテル、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルイミダゾリジノン、N−メチルピロリドン他などのアミド、同じエチレングリコール、グリセロール、ジエチレングリコール、ジエチレングリコールモノメチルエーテル他などの多価アルコール及び誘導体、アセトニトリル、アミルアミン、イソプロピルアミン、イミダゾール、ジメチルアミン他などの窒素含有有機化合物が挙げられる。好ましくは、水性担体は、有機溶媒の量が全く存在しないか、または、例えば0.1、0.05、0.01、もしくは0.005重量パーセント未満などの有機溶媒の微々たる量しか有しない水のみである。
【0089】
CMP組成物は、添加剤として追加の内容物を含むことができる。任意選択的な添加剤の例には、ポリビニルピロリドン、ポリエチレングリコール(例えば、ポリエチレングリコール)、もしくはポリビニルアルコール(例えば、2−ヒドロキシエチルメタクリル酸及びメタクリル酸のコポリマー)などの非イオン性ポリマー、陽イオン性化合物、ピコリン酸、官能性ピリジンのN−オキシド(例えば、ピコリン酸N−オキシド)、でんぷん、またはこれらのうち2つもしくは3つ以上の組み合わせが挙げられる。
【0090】
ポリビニルピロリドンは、添加剤として有用であり、任意の好適な分子量を有することができる。例えば、添加剤としてのポリビニルピロリドンは、モル当たり約10,000グラム(g/mol)〜約1,000,000g/mol、例えば、最大もしくは約20,000g/mol、約30,000g/mol、約40,000g/mol、約50,000g/mol、または約60,000g/molの分子量を有することができる。
【0091】
スラリーが、添加剤として非イオン性ポリマーを含む場合、かつその非イオン性ポリマーがポリエチレングリコールである場合、そのポリエチレングリコールは、任意の好適な分子量を有することができる。例えば、そのポリエチレングリコールは、約200g/mol〜約200,000g/mol、例えば、約8,000g/mol、約100,000g/molの分子量を有することができる。
【0092】
単一の添加剤または複数の添加剤は、任意の好適な濃度で、説明されたCMP組成物中に存在することができる。好ましくは、単一の添加剤または複数の添加剤は、約1ppm〜約500ppm、例えば約5ppm〜約400ppm、約10ppm〜約400ppm、約15ppm〜約400ppm、約20ppm〜約400ppm、約25ppm〜約400ppm、約10ppm〜約300ppm、約10ppm〜約250ppm、約30ppm〜約350ppm、約30ppm〜約275ppm、約50ppm〜約350ppm、または約100ppm〜約300ppmの濃度でCMP組成物中に存在することができる。さらに好ましくは、単一の添加剤または複数の添加剤は、約1ppm〜約300ppm、例えば約1ppm〜約275ppm、約1ppm〜約250ppm、約1ppm〜約100ppm、約1ppm〜約50ppm、約10ppm〜約250ppm、約10ppm〜約100ppm、または約35ppm〜約250ppmの濃度でCMP組成物中に存在する。
【0093】
特別な実施形態では、ピコリン酸は、スラリー中に含まれることができる。ピコリン酸の量は、1ppm〜1,000ppm、例えば100ppm〜約800ppm、例えば250ppm〜750ppmの範囲内の量などの任意の所望の量とすることができる。
【0094】
CMP組成物は、上述した1つ以上の添加剤、すなわちカルボン酸モノマー、スルホン酸化したモノマー、もしくはホスホン酸化したモノマーの1つ以上の陰イオン性コポリマー、及びアクリル酸塩、ポリビニルピロリドンもしくはポリビニルアルコール、ポリエチレングリコール、非イオン性ポリマー、シラン、官能性ピリジンのN−オキシド、でんぷん、及びシクロデキストリンに加えて、第四アミン、陽イオン性ポリビニルアルコール、陽イオン性セルロース、及びこれらの組み合わせから選択した陽イオン性ポリマーを任意選択的に含むことができる。代替的に、CMP組成物は、上述した1つ以上のこれらの添加剤を必要とせずに陽イオン性ポリマーを含むことができる。
【0095】
陽イオン性ポリマーは、第四アミン基を含有するか、または第四アミンモノマーから成るポリマーとすることができる。例えば、陽イオン性ポリマーは、ポリ(ビニルイミダゾリウム)、ポリ(メタクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウム)塩化物(ポリMADQUAT)などのポリ(メタクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウム)ハロゲン化物、ポリ(ジアリルジメチルアンモニウム)塩化物(ポリDADMAC)などのポリ(ジアリルジメチルアンモニウム)ハロゲン化物、及びポリクオタニウム−2から選択することができる。好ましくは、陽イオン性ポリマーが、第四アミンポリマーである場合、その陽イオン性ポリマーは、ポリ(ビニルイミダゾリウム)である。
【0096】
代替的に、陽イオン性ポリマーは、任意の好適な陽イオン性ポリビニルアルコールまたは陽イオン性セルロースとすることができる。好ましくは、陽イオン性ポリマーは、陽イオン性ポリビニルアルコールである。例えば、この陽イオン性ポリビニルアルコールは、Nippon Gosei GOHSEFIMER K210(商標)ポリビニルアルコール製品とすることができる。
【0097】
陽イオン性ポリマー(例えば、第四アミンポリマー、陽イオン性ポリビニルアルコール、陽イオン性セルロース、または全体でこれらの組み合わせ)は、任意の好適な濃度で、例えば、約1ppm〜約250ppm、例えば約1ppm〜約100ppm、約1ppm〜約50ppm、約1ppm〜約40ppm、約1ppm〜約25ppm、約5ppm〜約225ppm、約5ppm〜約100ppm、約5ppm〜約50ppm、約10ppm〜約215ppm、約10ppm〜約100ppm、約15ppm〜約200ppm、約25ppm〜約175ppm、約25ppm〜約100ppm、または約30ppm〜約150ppmの濃度でCMP組成物中に存在することができる。
【0098】
陽イオン性ポリマーが、ポリ(ビニルイミダゾリウム)である場合、その陽イオン性ポリマーは、好ましくは、約1ppm〜約10ppm、例えば約2ppm、約5ppm、約6ppm、約7ppm、約8ppm、または約9ppmの濃度でCMP組成物中に存在することができる。さらに好ましくは、陽イオン性ポリマーが、ポリ(ビニルイミダゾリウム)である場合、その陽イオン性ポリマーは、好ましくは、約1ppm〜約5ppm、例えば約2ppm、約3ppm、または約4ppmの濃度でCMP組成物中に存在することができる。
【0099】
CMP組成物はまた、任意選択的に、カルボン酸を含むことができる。このカルボン酸は、例えば約1〜約6、例えば約2〜約6、例えば約3.5〜約5のpKaを有する任意の好適なカルボン酸とすることができる。有用なカルボン酸の例には、酢酸、プロピオン酸、及びブタン酸が挙げられる。
【0100】
カルボン酸は、任意の好適な濃度でCMP組成物中に存在することができる。好ましくは、カルボン酸は、約10ppm〜約1000ppm、例えば約10ppm〜約500ppm、約10ppm〜約250ppm、約25ppm〜約750ppm、約25ppm〜約500ppm、約25ppm〜約250ppm、約30ppm〜約250ppm、約35ppm〜約350ppm、約50ppm〜約425ppm、約55ppm〜約400ppm、または約75ppm〜約350ppmの濃度でCMP組成物中に存在することができる。さらに好ましくは、カルボン酸は、約25ppm〜約150ppm、例えば約40ppm、約50ppm、約60ppm、約75ppm、約100ppm、または約125ppmの濃度でCMP組成物中に存在することができる。
【0101】
望ましくは、CMP組成物のpHは、カルボン酸のpKaの約2単位以内にあることができる。一例として、CMP組成物のpHが、約3.5である場合、カルボン酸のpKaは、好ましくは、約1.5〜約5.5である。
【0102】
CMP組成物が、陽イオン性ポリマーを含む場合、かつその陽イオン性ポリマーが、第四アミンポリマーである場合、CMP組成物はまた、好ましくはカルボン酸も含む。CMP組成物が、陽イオン性ポリマーを含み、かつその陽イオン性ポリマーが、陽イオン性ポリビニルアルコール及び陽イオン性セルロースから選択される場合、CMP組成物は、任意選択的にカルボン酸をさらに含む。
【0103】
CMP組成物は、界面活性剤またはレオロジー調整剤などの1つ以上の他の添加剤を任意選択的に含むことができ、それらの添加剤には、粘度増強剤及び凝固剤(例えば、ポリマーレオロジー調整剤、例えばウレタンポリマー)、分散剤、殺生物剤(例えば、KATHON(商標)LX)、または同種のものが含まれる。界面活性剤の例には、例えばアルキルアミン、陰イオン性界面活性剤、陰イオン性高分子電解質、非イオン性界面活性剤、両性界面活性剤、フッ素化された界面活性剤、これらの混合物が含まれる。これらの添加剤及び薬剤は、それらの存在が、パターン誘電体の除去速度などのスラリーの1つ以上の性能特性に所望されない負の影響を及ぼさない場合には、スラリー中に含められることができる。
【0104】
CMP組成物は、任意の有用な方法で内容物を組み合わせることによって提供することができ、それらの多くの例は、当業者によく知られている。CMP組成物は、バッチプロセスまたは連続プロセスの中で提供することができる。一般的に、CMP組成物は、好適な混合を用いて、その成分を任意の順序で組み合わせることによって提供され、その成分の均一な混合物(スラリー)を生成することができる。本明細書中で使用されている「成分」という用語は、個別の内容物(例えば、第1の研磨粒子、アルキルアミン、シクロデキストリン、pH調整剤など)、ならびに内容物の任意の組み合わせを含む。
【0105】
例えば、シクロデキストリン及びアルキルアミンを含む内容物は、所望の濃度で水に加えられることができる。次いで、その結果生じた水性溶液のpHを(所望に応じて)調整することができ、研磨粒子は、所望の濃度でその溶液に加えられることができる。他の内容物もまた、同時にその溶液中に組み込まれ、その内容物の均一な組み合わせを可能にする。内容物を加える順序は、結果として複合体の有効量に関する情報をもたらす任意の順序とすることができる。内容物を加える順序は、限定されないが、一連のステップは、アルキルアミン及びシクロデキストリンが組み合わさって、組成物中に他の内容物のほとんどが存在する前に、早い段階で複合体を形成することができるように、任意に選択することができる。
【0106】
CMP組成物は、使用前に間もなくまたは近いうち(例えば、使用前約1分以内、または使用前約1時間以内、または使用前約7日以内)に、CMP組成物に加えられる1つ以上の成分を使ってCMPプロセス中の使用前すぐにまたは即座に提供することができる。CMP組成物はまた、CMP研磨作業の間、または基板にスラリーを塗布する直前に、基板の表面で成分を混ぜることによって提供することができる。
【0107】
別の実施形態では、CMP組成物は、商業上輸送され、または保管されるように設計され、次いで使用直前に一度に適切な量の水性担体、特に水を用いて、使用のため希釈される濃縮物(または「CMP濃縮物」または「CMP組成濃縮物」)として提供することができる。これらの実施形態では、CMP組成濃縮物は、第1の研磨粒子、除去速度促進剤、pH調整剤、及び水の各量を含むことができ、水の適切な量を用いた濃縮物の希釈に基づくこれらの各量は、CMP組成物の各成分が、使用箇所でCMP組成物の上述で具体化された範囲内の量で、希釈されたCMP組成物中に存在するように、含まれている。さらに、この濃縮物は、使用中CMP組成物中に存在する水性担体(例えば、水)の留分を含有することができ、その結果、他の成分が、濃縮物中で少なくとも部分的にまたは完全に溶解されることを確実にすることができる。
【0108】
CMP組成物は、使用前、または使用直前にでさえ十分に提供することができるが、CMP組成物はまた、使用箇所でまたはその近くでCMP組成物の成分を混合することによって、生成することもできる。本明細書で使用される際、「使用箇所」という用語は、CMP組成物が、基板表面(例えば、研磨パッドまたは基板表面自体)に塗布される箇所を指す。CMP組成物が、使用箇所での混合によって提供される場合、CMP組成物の成分は、2つ以上の保管装置に別々に保管される。
【0109】
保管装置に収容された成分を混合して使用箇所またはその近傍でCMP組成物を生成するため、保管装置は、通常、各保管装置からCMP組成物の使用箇所(例えば、圧盤、研磨パッド、または基板表面)まで導入されている1つ以上フローラインと一緒に設けられている。「フローライン」という用語は、別々の保管庫から、その中に保管されている成分の使用箇所までの流れの経路を指す。1本以上のフローラインは、それぞれ、使用箇所に直接通じており、または2本以上のフローラインが使用されている状況では、2本以上のフローラインが、使用箇所に通じる単一のフローラインに任意の箇所で組み合わされている。さらに、1本以上のフローライン(例えば、個別のフローライン、または組み合わされたフローライン)のいずれも、最初に1台以上の他の装置(例えば、ポンプ装置、測定装置、混合装置など)に通じ、その後成分の使用箇所に到達する。
【0110】
CMP組成物の各成分は、独立して使用箇所に配送される(例えば、各成分は、各成分が研磨プロセス中に混合される基板表面に配送される)か、または各成分は、使用箇所に配送される前に速やかに組み合わせることができる。各成分は、それらが、使用箇所に到達する前の10秒未満で、好ましくは使用箇所に到達する前の5秒未満で、さらに好ましくは使用箇所に到達する前の1秒未満で、または使用箇所に各成分が到達するのとほぼ同時に組み合わされる(例えば、各成分が、基板または研磨パッドなどの使用箇所におけるディスペンサにて組み合わされる)場合、「使用箇所に配送する前直ちに」組み合わされる。各成分はまた、それらが、使用箇所から5メートル以内、例えば使用箇所から1メートル以内、または使用箇所からたった10cm以内(例えば、使用箇所から1cm以内)で組み合わされる場合、「使用箇所に配送する前直ちに」組み合わされる。
【0111】
CMP組成物の2つ以上の成分が、使用箇所に到達する前に組み合わされる場合、各成分は、フローライン中で組み合わされ、混合装置を使用せずに使用箇所に配送することができる。代替的に、1本以上のフローラインは、混合装置に通じさせ、2つ以上の成分の組み合わせを容易にすることができる。任意の好適な混合装置を使用することができる。例えば、混合装置は、2つ以上の成分が流れるノズルまたはジェット(例えば、高圧ノズルまたはジェット)とすることができる。代替的に、混合装置は、CMP組成物の2つ以上の成分が、コンテナ型混合装置に通じている1個以上の注入口、及び混合された成分が、直接か、または当該装置の他の構成要素を介して(例えば、1本以上のフローラインを介して)、使用箇所に配送されるように排出する少なくとも1個の排出口を備えるコンテナ型混合装置とすることができる。混合装置は、単一チャンバまたは2個以上のチャンバを備えてもよく、各チャンバは、少なくとも1個の注入口、及び少なくとも1個の排出口を有し、そこでは2つ以上の成分が各チャンバ中で組み合わされる。コンテナ型混合装置を使用する場合、この混合装置は、好ましくは均一にかき混ぜ、かつ各成分を組み合わせ、好ましくは不要な泡または空気の閉じ込めを起こさない混合機構を備える。混合機構は、一般に、当該技術分野で知られており、撹拌機、混合機、ミキサ、かき混ぜ用バッフル、ガススパージャーシステム、振動器などを備える。
【0112】
説明されているように、CMP組成物は、任意の好適な基板を研磨するのに有用であり、誘電体含有(例えば、シリコン酸化物含有)表面、とりわけ誘電体材料のトレンチ部により分離された誘電体隆起部を含むパターン誘電体の領域を有する表面を含む基板を研磨するのに特に有用である。典型的な基板は、フラットパネルディスプレイ、集積回路、メモリもしくは固定ディスク、層間絶縁膜(ILD)素子、微小電気機械システム(MEMS)、3D NANDデバイス、もしくは同種のもののコンポーネントとして使用するために処理される基板、またはシャロートレンチアイソレーション(STI)ステップを受け入れている任意の基板を含む。基板は、200ミリメートルウエハ、300ミリメートルウエハ、または450ミリメートルウエハなどのより大きなウエハとして、一般に、CMP及び半導体技術分野で言及されているウエハサイズであってもよい。
【0113】
任意の種類の基板の場合、基板表面は、表面構造または微細構成も含む下層上に配置された誘電体材料の連続かつ構造化された(非平坦な、非平滑な)層を備える。誘電体層表面のこの構造化された非平坦な領域は、「パターン誘電体」と称される。それは、結果として、下部層に存在するトレンチ及び孔を充填するように、起伏のある下層構造の上に配置された誘電体材料となる。すべてのトレンチまたは孔などを完全に充填することを確保し、トレンチまたは孔などを含む下層の表面を完全にカバレッジするには、誘電体材料は、過剰な量で堆積される。誘電体材料は、下層の起伏のある微細構造に一致した形状となり、トレンチにより分離された隆起部によって特徴付けられた、堆積された切れ目のない誘電体表面を作り出している。隆起部は、活性研磨及び材料除去の場所であり、ほとんどの誘電体材料が除去される場所を意味する。パターン誘電体材料はまた、「ステップ高さ」と称されるものにより特徴付けられ、これは、隣接するトレンチの誘電体材料の高さに対する、隆起部の誘電体材料の高さである。
【0114】
CMP組成物は、シャロートレンチアイソレーション(STI)または同様のプロセスを受け入れた基板を平坦化または研磨するのに、特に好適であり、これにより、誘電体が構造化された下層前面をコーティングし、パターン誘電体材料の領域を生成する。シャロートレンチアイソレーションを受け入れた基板の場合、典型的なステップ高さは、1,000オングストローム〜7,000オングストロームの範囲内とすることができる。
【0115】
説明されたCMP組成物はまた、インプロセス3D NANDフラッシュメモリデバイスである基板を平坦化または研磨するのにも有用である。そのような基板では、下層は、トレンチ、孔、または、例えばアスペクト比が少なくとも10:1、30:1、60:1、もしくは80:1などの高アスペクト比を有する他の構造を含む半導体材料で作製されている。そのような高アスペクト比の構造を有する表面が、誘電体材料によりコーティングされる場合、結果として生じるパターン誘電体は、高いステップ高さ、例えば実質的に7,000オングストロームより大きいステップ高さ、例えば10,000、20,000、30,000より大きい、または40,000以上のオングストロームを示す。
【0116】
基板の誘電体層は、任意の好適な誘電体材料を備え、本質的にそれらから成り、それらの材料の多くは、よく知られており、種々の形式のシリコン酸化物、及びシリコン酸化物系誘電体材料を含む。例えば、シリコン酸化物、またはシリコン酸化物系誘電体材料を含む誘電体層は、次の任意の1つ以上を備え、それらから成り、または本質的にそれらから成り、テトラエトキシシラン(TEOS)、高密度プラズマ(HDP)酸化物、リンケイ酸ガラス(PSG)、ボロンリンケイ酸ガラス(BPSG)、高アスペクト比(HARP)酸化物、スピンオン誘電体(SOD)酸化物、化学気相堆積(CVD)酸化物、プラズマ助長テトラエチルオルトシリケート(PETEOS)、熱酸化物、またはアンドープシリケートガラス(USG)である。
【0117】
過去に、パターン誘電体の平坦化を必要とする基板のいくつかの例が提供され、パターン誘電体材料の活性研磨領域下の場所にシリコン窒化物(例えば、「シリコン窒化物キャップ」または「ライナ」)、例えば構造化された半導体層のランド表面上の「キャップ」を含む。シリコン窒化物は、シリコン窒化物層に到達すると、活性領域で誘電体材料の研磨及び除去を停止させるように設計されている。シリコン窒化物層は、トレンチ損失及び最終微細構造のへこみを低減するような方法で研磨段差の材料除去を停止させる機能を果たす。しかしながら、このステップは、製造プロセスに多大なコストを加え、依然として完全にはへこみを防ぐことができない。
【0118】
本明細書のプロセスによれば、基板は、誘電体研磨及び除去ステップの意図された終了場所に配置されたシリコン窒化物ライナを含むことができる。他の実施形態では、基板は、活性領域から誘電体を除去するステップを終了する場所に配置されたシリコン窒化物「ライナ」または「キャップ」を必要とせず、任意選択的に、かつ好ましくは除外することができる。
【0119】
説明している通り、スラリーを使って、いくつかの方法により処理することができる基板のこれらの及び他の実施形態によれば、基板はまた、シリコン窒化物層、例えば誘電体層上に設けることもできる。隆起及び下部(例えば、トレンチ)構造を有する誘電体基板を処理する場合、シリコン窒化物層が、隆起及び下部の誘電体材料の上に配置され、CMP処理中にトレンチ部を保護し、平坦化効率を改善する。
【0120】
基板が、任意の好適な技術、特に化学機械研磨(CMP)装置を使ったCMP処理により、本明細書中で説明されたCMP組成物を用いて平坦化され、または研磨することができる。通常、CMP装置は、圧盤を備え、これは、使用中、動いており、軌道、直線、または円運動による速度を有し、研磨パッドを備え、これは、圧盤と接触し、動いているときは圧盤と一緒に移動し、キャリアを備え、これは、研磨パッドの表面に対して接触かつ移動することによって研磨される基板を保持する。研磨は、説明の通り、CMP組成物、通常は研磨パッドと接触しながら置かれた基板毎に生じ、次いで基板表面の少なくとも一部、例えばパターン誘電体材料を除去する。
【0121】
基板は、任意の好適な研磨パッド(例えば、研磨表面)と一緒に、化学機械CMP組成物を用いて、平坦化または研磨することができる。好適な研磨パッドは、例えば織られた及び織られていない研磨パッドを含む。さらに、好適な研磨パッドは、密度、硬度、厚さ、圧縮性、圧縮に対する反発機能、及び圧縮係数を変化させる任意の好適なポリマーを含むことができる。好適なポリマーには、例えば、ポリビニルクロライド、ポリビニルフルオライド、ナイロン、フルオロカーボン、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリアクリレート、ポリエーテル、ポリエチレン、ポリアミド、ポリウレタン、ポリスチレン、ポリプロピレン、これらの共形成品、及びこれらの混合物が挙げられる。
【0122】
好ましい方法によれば、パターン誘電体は、平坦化かつ研磨され、隆起部(初期の高さh0を有する)とトレンチ(初期のトレンチ厚さt0を有する)との間のステップ高さを低減する。この平坦化を効果的かつ効率的に達成するには、このプロセスは、トレンチの誘電体材料の実質的により小さい除去速度と一緒に、パターン誘電体材料の隆起部の高い除去速度を備える必要がある。好ましくは、このプロセスはまた、高い平坦化効率となり、任意選択的に低いトレンチ損失及び良好な自己停止動作を伴う。
【0123】
CMP研磨または平坦化中、誘電体材料は、隆起部から除去され、またより少ない量でトレンチから除去される。研磨中、隆起部の高さは、最終的に本質的にトレンチの高さと同じレベルになるように、減少する。このことは、例えば、ステップ高さが1,000オングストローム未満、例えば900、500、300、または250オングストローム未満まで低減することを意味する。隆起部の高さを低減することにより、トレンチ間の隆起部のパターンを除去し、パターンを効果的に除去し、平坦化された誘電体の領域、すなわち誘電体材料の実質的な平坦化領域を意味する「ブランケット」誘電体または「ブランケット酸化物」にパターンを変換する。
【0124】
処理される基板に依存して、初期のステップ高さは、少なくとも1,000、2,000、または5,000オングストロームとすることができ、実質的にはより大きく、例えば7,000オングストロームより大きく、または少なくとも10,000、20,000、30,000、または40,000オングストロームとすることができ、CMP処理のステップを開始する前に測定される。
【0125】
本明細書中で説明された基板のCMP平坦化の好ましいプロセスによれば、パターン誘電体は、5分未満、例えば3、2、または1分未満の時間でパターン誘電体のCMP処理により平坦化された表面に処理することができる。このことは、少なくとも7,000、または10,000、例えば20,000、30,000、または40,000オングストロームの初期ステップ高さを含むパターン誘電体を有する基板の場合に達成することができる。表面は、1,000オングストローム未満、例えば900オングストローム、500オングストローム、300オングストローム、または250オングストロームの(研磨による)低減されたステップ高さ(すなわち、「残りの」ステップ高さ)を達成する上で、効果的に平坦化されたと考えられる。
【0126】
説明している通り、ある特定のプロセス及びスラリーによれば、アルキルアミン(のみ、またはシクロデキストリンと一緒に)を含有するスラリーを使ったプロセスの平坦化効率は、アルキルアミンを含有しない他の同じスラリーに対して改善することができ、アルキルアミンのみか、またはシクロデキストリンと組み合わせたアルキルアミンが、平坦化効率を改善することができる。ある特定のプロセス及びスラリーによれば、平坦化効率は、(アルキルアミンの存在のため)アルキルアミンを含有していないスラリーに対して増加させることができるが、誘電体材料の除去速度は、アルキルアミンを含有していないスラリーに対して実質的に低下しない。スラリー中に十分高いレベルでアルキルアミンを存在させると、パターン誘電体除去速度における低下が生じるが、シクロデキストリン(及びシクロデキストリンのアルキルアミンとの錯体形成)により、アルキルアミンのより少ない量の使用が、平坦化効率における所望の改善の達成を可能にし、または他の点では、除去速度における低下を防いでいる。異なる方法で考慮すると、アルキルアミンが、シクロデキストリンと錯体形成し、除去速度に関して低下する有害な効果を示す場合、アルキルアミンの量をより多く含むと、平坦化効率を改善することができる。除去速度と平坦化効率との間のどこかでトレードオフが可能であり、アルキルアミンが錯体形成される場合、平坦化効率の利得が大きくなるにつれ、除去速度の低下は小さくなる。しかしながら、ある点において、アルキルアミンの量は、錯体形成に必要とされる多量のシクロデキストリンの量が除去速度に悪影響を及ぼしている可能性があることから、錯体形成がされていても、最大値に到達し得る。
【0127】
高い活性除去速度及び良好な平坦化効率の両方が、誘電体含有基板を処理するため、CMPスラリー及びCMPプロセスにおいて所望されている。各々は、別個に望ましいが、平坦化効率の改善が、パターン誘電体材料の除去速度を実質的に低下させずに達成できるならば、その改善は、特に望ましいことである。
【0128】
説明されているように、スラリーを使ったある特定のプロセスによれば、トレンチ損失は低減することができ、平坦化効率は、アルキルアミンを含有していない他の点では同じスラリーに対して、改善されている。好ましいプロセス及びスラリーによれば、研磨中の平坦化に生じるトレンチ損失の量(例えば、「残り」ステップ高さが1,000オングストローム未満、例えば900、500、300、または250オングストローム未満によって定義される)は、所与の処理時間の間に、説明の通り、スラリー中のアルキルアミンの存在により減少し、すなわち、説明の通り、アルキルアミン化合物を含有するスラリーを使ったプロセスに対するトレンチ損失は、同じであるがアルキルアミンを含有していないスラリーを使って、同じ基板を処理するための同じプロセスを使って生じたトレンチ損失の量より実質的に小さい(例えば、少なくとも10パーセント小さい)。
【0129】
トレンチ損失がより小さいことはまた、改善された平坦化効率にも反映され、その平坦化効率は、あるプロセスに対して、トレンチ損失(オングストローム)で除したステップ高さ低下(オングストローム)を指す。本明細書の好ましいプロセスによれば、平坦化効率は、説明の通り、アルキルアミン化合物の存在により改善することができ、すなわち、アルキルアミンを含有する上述のスラリーを使った、上述のプロセスに対する平坦化効率は、同様のプロセス、及び他の条件は同じだがアルキルアミンを含有していないスラリーを使って生じた平坦化効率より実質的に大きい(例えば、少なくとも10パーセント大きい)、ただし、このとき、同じ基板を処理し、同じプロセス条件及び同じ装置を使っている。上述の通り、あるプロセスの望ましいレベルの平坦化効率(ステップ高さの減少をトレンチ損失で除した値)は、少なくとも2.0であり、好ましくは少なくとも3.0、例えば少なくとも約3.5とすることができる。代替的に、平坦化効率は、次の値として算出することができ、1−(除去されたトレンチ材料の量)/(除去された活性材料の量)。好ましいプロセスの単一の例として、開始ステップ高さ5000Åを有するSTI誘電体パターンの50秒研磨を基準として、CMPプロセスにおいて、少なくとも0.7、例えば少なくとも0.80、0.85、または0.87の平坦化効率を達成することができる。
【0130】
これらの同じプロセスにおいて、パターン誘電体の除去速度は、他の条件は同じでアルキルアミンを含有していない(またはアルキルアミン及びシクロデキストリンともに含有していない)スラリーを使った同じプロセスに対して、実質的に低下しない。好ましいアルキルアミン化合物は、平坦化効率における所望の改善を作り出す量で、(シクロデキストリンの入った)スラリー中に含めることができるが、一方で、例えば、他の条件は同じでアルキルアミン及びシクロデキストリンを含有していない同じスラリーに対して、25、15、10、または5パーセント未満までパターン誘電体の除去速度を低下させる量で、パターン誘電体の除去速度における実質的に所望されない低下を必ずしも引き起こすわけではない。
【実施例】
【0131】
説明されているような方法及び組成物は、シクロデキストリン−アルキルアミン複合体を含有するセリア系スラリーを必要とし、パターンニングされたバルクシリコン酸化物材料のCMP処理に有用である。シクロデキストリン−アルキルアミン複合体は、組成物添加剤として使用される場合、非常に高いパターン酸化物除去速度を維持し、同時に平坦化効率を向上させることから、例示的なスラリー及びプロセスの利点は、3D NAND産業のニーズと合致していることである。さらに、複合体及び研磨粒子(例えば、セリア系粒子)を含有しているスラリーは、この複合体からのPEの向上は、極めて顕著であり、別のPE促進剤よりも優れていることから、多少遅い除去速度が許容され得る場合でさえも、バルク(例えば、シリコン酸化物)研磨が必要とされる場合は、他の処理用途のためのPE向上用添加剤としても有用または有利であり得る。
【0132】
本開示は、シクロデキストリン−アルキルアミン複合体が、CMP組成物中に含まれることができ、改善された平坦化効率を提供し、パターン誘電体材料のバルク除去において除去速度低下のレベルが許容できるほど小さいことを発見したことに基づいている。例示的なプロセスでは、シクロデキストリン−アルキルアミン複合体は、パターンニングされたTEOS表面のトレンチ材料を保護する役割を果たし、セリア系スラリーを用いたCMP中にPEを向上させる。理論にとらわれずに、パッドの粗さが、トレンチに容易に到達しない場合、CMP処理の初期段階中、陽イオン性のアルキルアミン化合物のクーロン引力は、シクロデキストリンの水素結合と一緒に、トレンチに効果的に集中し、かつ保護する。このことは、トレンチ内の下部のシリコン酸化物の浸食を遅らせる保護層の形成につながり、それによって平坦化効率を向上させる。実験結果は、複合体の入っていない同じスラリーを使ったプロセスと比較すると、向上したPEは、IC1010(Dow社から市販されている)及びR200−01(Cabot Microelectronics社から市販されている)の両方の研磨パッド上にある200−mm及び300−mmの両方の研磨プラットフォームにおいて維持されていることを示している。
【0133】
実施例1
実施例1では、「対照スラリー」の研磨は、本出願者の同時係属出願である特許出願第14/639,564号に記載されているセリア系スラリーである。このスラリー(セリア粒子及びピコリン酸を含有している)は、以前に知られておらず、市販されておらず、またはいずれの特許出願にも公開されていないと思われる。「対照スラリー」(
図1中の正方形で示された「対照スラリー履歴」曲線で示されているように含んでいる)は、セリア粒子(0.3%)、ピコリン酸(500ppm)を含み、約4.0のpHを有する。対照スラリーのセリア粒子は、100ナノメートルの平均粒径であった。
【0134】
使用された研磨ツールは、Mirraであり、下方圧力は、3ポンド毎平方インチであり、スラリー流速は、150ミリリットル毎分であった。パターンウエハは、2マイクロメートルの初期ステップ高さを含み、TEOS(「パターンウエハ」)から成る。パターンウエハ上の研磨時間は、
図1の説明文中に秒で示されている。
ステップ高さは、時限研磨後の最終測定されたステップ高さである。最初のステップ高さは、20,000Åであった。
【0135】
図1に示すように、サブパッド(200mm)のないハードパッドを使った対照スラリーのPEは、アルキルアミンもしくは複合体を用いた平坦化効率の改善を示すため、アルキルアミン(のみ)と付した同一のスラリーに沿って、またはシクロデキストリン−アルキルアミン複合体と付して、描かれている。約5,000Åのトレンチ損失において、複合体付きスラリーは、約1,000Åの下部ステップ高さ残りを有する。この実施例では、改善のレベルは、シクロデキストリンによる錯体形成の有無で同じであるが、複合体を使用するスラリー中に必要なアルキルアミンの量は、アルキルアミンのみを有するスラリーの量の20%である。アルキルアミンはまた、高いレベルで除去速度を低下させることができるため、複合体は、除去速度を維持しながら必要なアルキルアミンの量を最小にするためのより良い選択である。
【0136】
シクロデキストリン−アルキルアミン複合体のスラリーへの添加と関係する顕著な速度低減はない。
【0137】
ステップ高さは、HRPを介して、トレンチの中央から、隆起構造端から300マイクロメートルの距離の隆起構造の上部まで測定された。隆起構造の端付近のその点から隆起構造の中央までのステップ高さ(CMP中回転する隆起構造のためゼロでない値、非常に大きい10mm隆起構造)は、F5xを用いて光学的に測定され、これらの値(F5x回転する隆起構造体及びHRPステップ高さ)は、一緒に加算され、トレンチの中央からステップの中央までの最終的にプロットされる隆起構造のステップ高さが得られる。
【0138】
実施例2
実施例2では、「対照スラリー」の研磨は、実施例1で説明された通りである。対照2スラリーは、Cabot Microelectronics社から市販されているD7295スラリーである。対照3スラリーは、Cabot Microelectronics社から市販されているD6720スラリーである。対照2及び3スラリーは、対照スラリーと同様のセリア及びピコリン酸を収容したが、シクロデキストリン−アルキルアミン複合体を収容しなかった。本発明のスラリー(正方形データポイントで示す)は、対照スラリー+本明細書中で述べた複合体である。
【0139】
使用された研磨ツールは、Mirraであり、下方圧力は、3ポンド毎平方インチであり、スラリー流速は、150ミリリットル毎分であった。パターンウエハは、0.5マイクロメートルの初期ステップ高さを含み、TEOS(「パターンウエハ」)から成る。
【0140】
図2に示すように、本発明のスラリーのPEは、複合体を含有し、IC1010パッド及びIC1000 X、Y穴あきパッドの両方を使って、セリア粒子を含有する3つのスラリー及び複合体なしを並べてプロットされている。その結果は、複合体を含有している本発明のスラリーを使った平坦化効率の改善を示している。