特許第6920317号(P6920317)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6920317リグニン含有樹脂組成物の製造方法及びリグニン含有樹脂成形品
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6920317
(24)【登録日】2021年7月28日
(45)【発行日】2021年8月18日
(54)【発明の名称】リグニン含有樹脂組成物の製造方法及びリグニン含有樹脂成形品
(51)【国際特許分類】
   C08L 97/00 20060101AFI20210805BHJP
   C08H 7/00 20110101ALI20210805BHJP
   C08L 101/00 20060101ALI20210805BHJP
   C08L 61/06 20060101ALI20210805BHJP
   C08J 3/21 20060101ALI20210805BHJP
【FI】
   C08L97/00
   C08H7/00
   C08L101/00
   C08L61/06
   C08J3/21CEZ
【請求項の数】6
【全頁数】25
(21)【出願番号】特願2018-538400(P2018-538400)
(86)(22)【出願日】2017年9月4日
(86)【国際出願番号】JP2017031813
(87)【国際公開番号】WO2018047772
(87)【国際公開日】20180315
【審査請求日】2020年3月16日
(31)【優先権主張番号】特願2016-177152(P2016-177152)
(32)【優先日】2016年9月9日
(33)【優先権主張国】JP
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成28年度、国立研究開発法人科学技術振興機構戦略的創造研究推進事業(先端的低炭素化技術開発)「天然多環芳香族からの単環芳香族の単離・製造技術開発」に係る委託事業、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
(73)【特許権者】
【識別番号】000183646
【氏名又は名称】出光興産株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002620
【氏名又は名称】特許業務法人大谷特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小山 啓人
(72)【発明者】
【氏名】山尾 忍
(72)【発明者】
【氏名】岡野 匡貴
【審査官】 櫛引 智子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−112841(JP,A)
【文献】 特開昭52−150414(JP,A)
【文献】 特表平06−506967(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L,C08H,C08J
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
リグニン含有材料中のリグニンを分離する処理によって、可溶化したリグニンと該可溶化したリグニンを溶解する溶媒とを含むリグニン含有溶液を得る工程(A)、
前記リグニン含有溶液に樹脂として熱硬化性樹脂を添加してリグニン−樹脂含有溶液を得る工程(B)、及び
前記リグニン−樹脂含有溶液から前記溶媒を除去する工程(C1)を含むリグニン含有樹脂組成物の製造方法。
【請求項2】
リグニン含有材料中のリグニンを分離する処理によって、可溶化したリグニンと該可溶化したリグニンを溶解する溶媒とを含むリグニン含有溶液を得る工程(A)、
前記リグニン含有溶液に樹脂を添加してリグニン−樹脂含有溶液を得る工程(B)、及び
前記リグニン−樹脂含有溶液に水及び双極子モーメントが0.25d以下の炭化水素から選ばれる少なくとも1種の溶媒を混合する工程(C2)含むリグニン含有樹脂組成物の製造方法。
【請求項3】
前記リグニン含有材料が、植物系バイオマス、植物系バイオマスを糖化する過程で得られる糖化残渣及び植物系バイオマスを糖化する過程で得られる副生成物からなる群から選択される少なくとも1種である請求項1又は2に記載のリグニン含有樹脂組成物の製造方法。
【請求項4】
前記リグニン含有材料中のリグニンを分離する処理が、オルガノソルブ法、加圧熱水法、水蒸気爆砕法、アンモニア処理法、アンモニア爆砕法、酸処理法、アルカリ処理法、酸化分解法、熱分解法及びマイクロ波加熱法からなる群から選択される少なくとも1種の方法により行われる請求項1〜3のいずれか1項に記載のリグニン含有樹脂組成物の製造方法。
【請求項5】
前記樹脂が、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、メラミン樹脂、ユリア樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、シリコーン樹脂、及びアルキド樹脂からなる群から選択される少なくとも1種である請求項1〜4のいずれか1項に記載のリグニン含有樹脂組成物の製造方法。
【請求項6】
前記樹脂が、ノボラック系フェノール樹脂及びレゾール系フェノール樹脂からなる群から選択される少なくとも1種のフェノール樹脂である請求項1〜4のいずれか1項に記載のリグニン含有樹脂組成物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リグニンを含む樹脂を製造するためのリグニン含有樹脂組成物の製造方法、及びリグニン含有樹脂組成物を成形して得られるリグニン含有樹脂成形品に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の環境意識の高まりにより、バイオマス由来の原料が望まれるようになってきている。しかし、バイオマス由来の原料は、例えば、バイオエタノールの製造において特に顕著となったように、デンプンや糖など食料と競合する原料を用いる場合が多く、これにより食料価格上昇や食糧生産の減少に繋がるなど問題が指摘されていた。そこで、現在、食料と競合しないセルロース系バイオマスからバイオ燃料・バイオ化学品を製造する技術が注目されている。
【0003】
セルロース系バイオマスとして、例えば、パームヤシの樹幹及び空房、パームヤシ果実の繊維及び種子、バガス(さとうきび(高バイオマス量さとうきびを含む))の搾り滓)、ケーントップ(さとうきびのトップ及びリーフ)、稲わら、麦わら、籾殻、トウモロコシの穂軸・茎葉・トウモロコシ残渣(コーンストーバー、コーンコブ、コーンハル)、ソルガム(スイートソルガムを含む)残渣、ヤトロファ種皮及び殻、カシュ―殻、木材チップ、スイッチグラス、ネピアグラス、エリアンサス、エネルギー作物、エナジーケーンなどが挙げられる。これらのセルロース系バイオマスは、いずれも糖に変換できるセルロースやヘミセルロース以外にリグニンを含有している。
【0004】
リグニンは、通常、前処理及び糖化処理の段階で、セルロースやヘミセルロースと分離され固体の残渣として残る。残渣として残るリグニンは、現在のところ、燃料として使用することで有効利用されている。しかし、リグニンのさらなる有効活用という観点から、リグニンの付加価値をさらに高くすることができるリグニンの利用が望まれている。そのようなリグニンの利用の1つとして、リグニンの樹脂組成物の原料としての利用が挙げられる(例えば、特許文献1及び2参照)。
【0005】
特許文献1には、リグニン含有材料を、水及びアルコールを含む混合溶媒中で、所定の条件で処理することで得られるリグニン分解物と熱可塑性樹脂とを含有する熱可塑性樹脂組成物が開示されている。この熱可塑性樹脂組成物は、流動性及び難燃性が高く、環境性に優れている。
また、特許文献2には、水と炭素数4〜8の脂肪族アルコールから選ばれる少なくとも1種のアルコールとの混合溶媒である第1の溶媒中において、草本系バイオマスを原料として、所定の条件の下で処理した後に該第1の溶媒が二相分離する温度において分液するアルコール相からアルコールを除去して得られるリグニンに、該第1の溶媒に含まれる前記アルコールを除く有機溶媒の単独又は該有機溶媒と水との混合溶媒である第2の溶媒を添加し、該第2の溶媒に該リグニンを溶解させた溶液から該第2の溶媒を除去して得られる精製リグニンと、該精製リグニンと反応可能な官能基を有するリグニン反応性化合物とを含有する樹脂組成物が開示されている。この樹脂組成物は、加工性、強度及び耐熱性が良好である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2014−15579号公報
【特許文献2】特開2016−60813号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述したように、特許文献1及び特許文献2にそれぞれ記載されている樹脂組成物は、加工性及び強度が優れている。しかし、さらに良好な加工性及び強度を有する樹脂組成物を得られることが望ましい。また、そのような樹脂組成物をさらに効率よく製造できることがより望ましい。そこで、本発明は、加工性及び強度が優れている樹脂組成物を効率的に製造することができるリグニン含有樹脂組成物の製造方法、及びそのような優れた加工性及び強度を有するリグニン含有樹脂組成物を用いたリグニン含有樹脂成形品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
通常、リグニン含有材料中のリグニンを分離する処理により可溶化したリグニンは、溶媒に抽出された後、溶媒を除去して固化され、様々な用途に用いられる。しかし、本発明者らは、可溶化したリグニンが、固化する前の段階の溶媒に溶解している状態で、可溶化したリグニンと樹脂とを混合することにより、リグニンを含有した樹脂組成物を効率的に製造できるとともに、そのように製造した樹脂組成物の強度等の特性が優れていることを見出し、本発明を完成させた。
すなわち本発明は、以下の[1]〜[6]である。
[1]リグニン含有材料中のリグニンを分離する処理によって、可溶化したリグニンと可溶化したリグニンを溶解する溶媒とを含むリグニン含有溶液を得る工程(A)、リグニン含有溶液に樹脂を添加してリグニン−樹脂含有溶液を得る工程(B)、及びリグニン−樹脂含有溶液から溶媒を除去する工程(C1)を含むリグニン含有樹脂組成物の製造方法。
[2]リグニン含有材料中のリグニンを分離する処理によって、可溶化したリグニンと可溶化したリグニンを溶解する溶媒とを含むリグニン含有溶液を得る工程(A)、リグニン含有溶液に樹脂を添加してリグニン−樹脂含有溶液を得る工程(B)、及びリグニン−樹脂含有溶液に水及び双極子モーメントが0.25d以下の炭化水素から選ばれる少なくとも1種の溶媒を混合する工程(C2)を含むリグニン含有樹脂組成物の製造方法。
[3]リグニン含有材料が、植物系バイオマス、植物系バイオマスを糖化する過程で得られる糖化残渣及び植物系バイオマスを糖化する過程で得られる副生成物からなる群から選択される少なくとも1種である上記[1]又は[2]に記載のリグニン含有樹脂組成物の製造方法。
[4]リグニン含有材料中のリグニンを分離する処理が、オルガノソルブ法、加圧熱水法、水蒸気爆砕法、アンモニア処理法、アンモニア爆砕法、酸処理法、アルカリ処理法、酸化分解法、熱分解法及びマイクロ波加熱法からなる群から選択される少なくとも1種の方法により行われる上記[1]〜[3]のいずれか1つに記載のリグニン含有樹脂組成物の製造方法。
[5]樹脂が、ノボラック系フェノール樹脂及びレゾール系フェノール樹脂からなる群から選択される少なくとも1種のフェノール樹脂である上記[1]〜[4]のいずれか1つに記載のリグニン含有樹脂組成物の製造方法。
[6]上記[1]〜[5]のいずれか1つに記載のリグニン含有樹脂組成物の製造方法によって得られたリグニン含有樹脂組成物を用いてなるリグニン含有樹脂成形品。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、加工性及び強度が優れている樹脂組成物を効率的に製造することができるリグニン含有樹脂組成物の製造方法、及び優れた加工性及び強度を有するリグニン含有樹脂組成物を用いたリグニン含有樹脂成形品を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
[第1の実施形態]
本発明の第1の実施形態に係るリグニン含有樹脂組成物の製造方法について、以下に説明する。
[リグニン含有樹脂組成物の製造方法]
本発明の第1の実施形態に係るリグニン含有樹脂組成物の製造方法は、リグニン含有材料中のリグニンを分離する処理によって、可溶化したリグニンと可溶化したリグニンを溶解する溶媒とを含むリグニン含有溶液を得る工程(A)、リグニン含有溶液に樹脂を添加してリグニン−樹脂含有溶液を得る工程(B)、及びリグニン−樹脂含有溶液から溶媒を除去する工程(C1)を含む。以下、可溶化したリグニンを可溶化リグニンと呼ぶ。これにより、樹脂と混合するために、固化した可溶化リグニンを溶媒に再び溶解させる必要がないので、効率的に、リグニン含有樹脂組成物を製造することができる。また、可溶化リグニンを固化させずに樹脂と混合することができるために、樹脂に対して可溶化リグニンを、分子レベルでより均一に混合することができる。これにより、樹脂組成物の加工性及び樹脂組成物の硬化物の強度等の樹脂組成物の特性がより良好になる。
【0011】
(工程(A))
工程(A)では、リグニン含有材料中のリグニンを分離する処理によって、可溶化したリグニンと可溶化したリグニンを溶解する溶媒とを含むリグニン含有溶液を得る。
【0012】
<リグニン>
リグニンは、プロピルフェノールとその誘導体とを構造ユニットとし、これらが三次元的に結合した化合物である。
【0013】
<リグニン含有材料>
リグニン含有材料は、例えば、植物系バイオマス、リグニン含有樹脂、植物系バイオマスを糖化する過程で得られる副生成物、及びパルプ製造過程で得られる副生成物からなる群から選ばれる少なくとも1種であってもよい。さらに、リグニン含有材料としては、上述したものの他、セルロース系バイオマスを糖化する過程で得られる糖化残渣、及びパルプ製造過程で得られる黒液が挙げられる。セルロース系バイオマスを糖化する過程で、セルロース及びヘミセルロースを加水分解して糖を取り出した残りの残渣は、リグニンを主成分とする固体である。このため、この残渣をリグニン含有材料として用いることができる。入手容易性や本発明において適用する製造方法との適合性の観点から、好ましいリグニン含有材料は、植物系バイオマス、植物系バイオマスを糖化する過程で得られる糖化残渣及び植物系バイオマスを糖化する過程で得られる副生成物からなる群から選択される少なくとも1種である。
【0014】
植物系バイオマスとしては、木本系バイオマス及び草本系バイオマスが挙げられる。木本系バイオマスとしては、スギ、ヒノキ、ヒバ、サクラ、ユーカリ、ブナ、タケ等の針葉樹又は広葉樹が挙げられる。草本系バイオマスとしては、パームヤシの樹幹・空房、パームヤシ果実の繊維及び種子、バガス(さとうきび及び高バイオマス量さとうきびの搾り滓)、ケーントップ(さとうきびのトップ・リーフ)、稲わら、麦わら、籾殻、トウモロコシの穂軸・茎葉・残渣(コーンストーバー、コーンコブ、コーンハル)、ソルガム(スイートソルガムを含む)残渣、ヤトロファ種皮・殻、カシュ―殻、スイッチグラス、ネピアグラス、エリアンサス、高バイオマス収量作物、エネルギー作物、エナジーケーン等が挙げられる。これらの中でも、入手容易性や本発明において適用する製造方法との適合性の観点から、草本系バイオマスが好ましく、パームヤシの空房、麦わら、トウモロコシの茎葉及び/又は残渣、バガス、ケーントップ、エナジーケーン、それら有用成分抽出後の残渣がより好ましく、バガス、ケーントップ、エナジーケーン、それら有用成分抽出後の残渣がさらに好ましい。なお、有用成分には、例えば、ヘミセルロース、糖質、ミネラル、水分などが含まれる。
【0015】
植物系バイオマスは、粉砕されたものを用いることもできる。また、ブロック、チップ、粉末、いずれの形状でもよい。さらに、乾燥、含水、いずれの状態でもよい。
【0016】
<リグニン含有材料中のリグニンを分離する処理>
リグニン含有材料中のリグニンを分離する処理は、例えば、オルガノソルブ法、加圧熱水法、水蒸気爆砕法、アンモニア処理法、アンモニア爆砕法、酸処理法、アルカリ処理法、酸化分解法、熱分解及びマイクロ波加熱法からなる群から選択される少なくとも1種の方法により行われる。樹脂の溶解性に優れた溶媒を得られる点及び溶媒を容易に除去できる点から、リグニンを分離する処理は、オルガノソルブ法、水蒸気爆砕法、酸処理法及びアルカリ処理法からなる群から選択される少なくとも1種の方法により行われることが好ましく、オルガノソルブ法がより好ましい。
【0017】
オルガノソルブ法とは、有機溶媒又は水と有機溶媒との混合溶媒を用いて、高温、高圧下でリグニン含有材料を処理する方法である。この方法により、可溶化リグニン、及び可溶化リグニンを溶解する有機溶媒を含むリグニン含有溶液を得ることができる。この場合、処理に用いた有機溶媒をそのまま用いてリグニン含有溶液としてもよい。また、この処理方法によって処理されたリグニン含有材料から後述の可溶性リグニンを抽出する溶媒を用いて、リグニン含有溶液としてもよい。
【0018】
[有機溶媒]
有機溶媒は、飽和または不飽和の、直鎖アルコール及び分岐アルコールのいずれであってもよい。その他、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類、エチレングリコール、ポリエチレングリコール、テトラヒドロフラン等のエーテル類であってもよい。また、有機溶媒は単独でも、複数を混合したものでもよい。
中でも、メタノール、エタノール、プロパノール、1−ブタノール、2−メチル−1−プロパノール、2−ブタノール、2−メチル−2−プロパノール、ペンタノール、ヘキサノール、ヘプタノール、オクタノール、アセトン及びテトラヒドロフランから選らばれる少なくとも1種が好ましく、1−ブタノール、2−メチル−1−プロパノール、2−ブタノール、エタノール、ペンタノール、ヘキサノール及びアセトンから選ばれる1種以上であることがより好ましく、1−ブタノール、2−メチル−1−プロパノール、2−ブタノール、エタノール及びアセトンから選ばれる少なくとも1種であることがさらに好ましく、1−ブタノール、2−メチル−1−プロパノール、2−ブタノールであることがさらに好ましく、1−ブタノールであることが特に好ましい。
【0019】
[混合溶媒]
上記有機溶媒と水との混合溶媒を用いる際には、有機溶媒としては、上述したものを用いることができ、好ましいものも同様である。水としては、例えば、水道水、工業用水、イオン交換水、蒸留水等を用いることができる。
【0020】
加圧熱水法とは、臨界点(374℃、22MPa)付近の亜臨界領域の高温、高圧状態の水中でリグニン含有材料を処理する方法である。この処理方法によって処理されたリグニン含有材料から後述の溶媒を用いて可溶性リグニンを抽出することにより、可溶化リグニン、及び可溶化リグニンを溶解する溶媒を含むリグニン含有溶液を得ることができる。
【0021】
水蒸気爆砕法とは、リグニン含有材料に水蒸気を圧入し、瞬時に圧力を開放することでリグニン含有材料を爆砕する方法である。そして、爆砕したリグニン含有材料から後述の溶媒を用いて可溶性リグニンを抽出することにより、可溶化リグニン、及び可溶化リグニンを溶解する溶媒を含むリグニン含有溶液を得ることができる。
【0022】
アンモニア処理法とは、加熱、加圧されたアンモニア存在下で、リグニン含有材料を処理する方法である。この方法により、可溶化リグニン、及び可溶化リグニンを溶解するアンモニアを含むリグニン含有溶液を得ることができる。この場合、処理に用いたアンモニア水溶液をそのまま用いてリグニン含有溶液としてもよい。また、この処理方法によって処理されたリグニン含有材料から後述の可溶性リグニンを抽出する溶媒を用いて、リグニン含有溶液としてもよい。
【0023】
アンモニア爆砕法とは、加熱、加圧されたアンモニア存在下で、瞬時に圧力を開放することでリグニン含有材料を爆砕する方法である。そして、爆砕したリグニン含有材料から後述の溶媒を用いて可溶性リグニンを抽出することにより、可溶化リグニン、及び可溶化リグニンを溶解する溶媒を含むリグニン含有溶液を得ることができる。
【0024】
酸処理法とは、希硫酸、リン酸、希塩酸、希硝酸等の無機酸又はギ酸、酢酸、シュウ酸、リンゴ酸等の有機酸などを用いて、リグニン含有材料を処理する方法である。この方法により、可溶化リグニン、及び可溶化リグニンを溶解する酸を含むリグニン含有溶液を得ることができる。この場合、処理に用いた酸水溶液をそのまま用いてリグニン含有溶液としてもよい。また、この処理方法によって処理されたリグニン含有材料から後述の可溶性リグニンを抽出する溶媒を用いて、リグニン含有溶液としてもよい。
【0025】
アルカリ処理法とは、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム等を用いて、リグニン含有材料を処理する方法である。この方法により、可溶化リグニン、及び可溶化リグニンを溶解するアルカリを含むリグニン含有溶液を得ることができる。この場合、処理に用いたアルカリ水溶液をそのまま用いてリグニン含有溶液としてもよい。また、この処理方法によって処理されたリグニン含有材料から後述の可溶性リグニンを抽出する溶媒を用いて、リグニン含有溶液としてもよい。
【0026】
酸化分解法とは、有機過酸化物、過酸化水素、酸素などを酸化剤として、リグニン含有材料を酸化分解する方法である。この処理方法によって処理されたリグニン含有材料から後述の溶媒を用いて可溶性リグニンを抽出することにより、可溶化リグニン、及び可溶化リグニンを溶解する溶媒を含むリグニン含有溶液を得ることができる。
【0027】
熱分解法とは、急速あるいは遅速などで、物質を加熱し、リグニン含有材料を分解する方法である。そして、分解したリグニン含有材料から後述の溶媒を用いて可溶性リグニンを抽出することにより、可溶化リグニン、及び可溶化リグニンを溶解する溶媒を含むリグニン含有溶液を得ることができる。
【0028】
マイクロ波加熱法とは、マイクロ波と物質の相互作用による、物質の加熱を利用し、リグニン含有材料を熱分解する方法である。そして、熱分解したリグニン含有材料から後述の溶媒を用いて可溶性リグニンを抽出することにより、可溶化リグニン、及び可溶化リグニンを溶解する溶媒を含むリグニン含有溶液を得ることができる。
【0029】
上記可溶性リグニンを抽出する溶媒として、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、テトラヒドロフラン、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルエーテル、エチレングリコール、ポリエチレングリコール、酢酸エチル、アセトニトリル、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、トルエン、ベンゼン等が挙げられる。これらは、1種単独で、又は2種以上を混合して使用することができる。好ましい溶媒は、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール及びアセトンからなる群から選択される少なくとも1種である。また、可溶性リグニンを抽出する溶媒は水をさらに含んでもよい。
【0030】
(工程(B))
工程(B)では、リグニン含有溶液に樹脂を添加してリグニン−樹脂含有溶液を得る。
【0031】
<樹脂>
工程(B)で用いる樹脂は、可溶性リグニンを溶解している溶媒に溶解する樹脂であれば、特に限定されるものではなく、熱硬化性樹脂でもよく、熱可塑性樹脂であってもよい。しかし、リグニン含有樹脂組成物に好適な用途の成形品を成形する成形方法を考えると、好ましい樹脂は熱硬化性樹脂である。工程(B)で用いる樹脂には、例えばノボラック系フェノール樹脂、レゾール系フェノール樹脂等のフェノール樹脂を使用することができる。また、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、メラミン樹脂、ユリア樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、シリコーン樹脂、アルキド樹脂等の他の一般的な熱硬化性樹脂やポリカーボネート系樹脂、スチレン系樹脂、ポリスチレン系エラストマー、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリアクリル系樹脂(ポリメチルメタクリレート樹脂等)、ポリ塩化ビニル樹脂、酢酸セルロース樹脂、ポリアミド樹脂、テレフタル酸とエチレングリコール、テレフタル酸と1,4−ブタンジオールの組み合わせのポリエステルに代表される低融点ポリエステル樹脂(PET、PBT等)、ポリ乳酸及び/又はポリ乳酸を含む共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン樹脂(ABS樹脂)、ポリフェニレンオキサイド樹脂(PPO)、ポリケトン樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリフェニレンスルフィド樹脂(PPS)、フッ素樹脂、ケイ素樹脂、ポリイミド樹脂、ポリベンズイミダゾール樹脂、ポリアミドエラストマー等、及びこれらと他のモノマーとの共重合体等の他の一般的な熱可塑性樹脂も用いることができる。
リグニンと同様に、フェノール性水酸基を有しており、リグニンと反応することができ、リグニンの希釈剤としても使用可能であることから、上記樹脂の中でフェノール樹脂が好ましく、ノボラック系フェノール樹脂及びレゾール系フェノール樹脂からなる群から選択される少なくとも1種のフェノール樹脂がより好ましい。
【0032】
樹脂の配合量は、高い強度を有する樹脂組成物を得られるという観点から、通常、リグニン含有溶液中のリグニン固形分100質量部に対して、好ましくは10〜2000質量部であり、より好ましくは20〜1000質量部であり、さらに好ましくは50〜500質量部である。
【0033】
(工程(C1))
工程(C1)では、リグニン−樹脂含有溶液から溶媒を除去する。溶媒を除去する方法としては、例えば、加熱しながら、リグニン−樹脂含有溶液の雰囲気を減圧状態又は真空状態にし、溶媒を揮発させる方法、リグニン−樹脂含有溶液を中和するあるいはリグニン−樹脂含有溶液に貧溶媒(水、炭化水素等)を添加することで生じる固形分を固液分離する方法、及び溶媒を揮発させる方法と固液分離する方法を組み合わせる方法がある。
【0034】
(リグニン含有樹脂組成物に含有可能なその他の化合物)
<リグニン反応性化合物>
上記樹脂の他に、リグニンと反応可能な官能基を有するリグニン反応性化合物をリグニン含有樹脂組成物に含有させることが可能である。リグニンと反応可能な官能基を有する化合物としては、例えば(i)フェノール化合物と親電子置換反応を生じる化合物(工程(B)で用いる樹脂を除く)、(ii)エポキシ基を有する化合物(上記工程(B)で用いる樹脂を除く)、及び(iii)イソシアネート基を有する化合物(工程(B)で用いる樹脂を除く)等が挙げられる。
リグニンは、フェノール性の構造単位を有することから、フェノール樹脂及びエポキシ樹脂等のベース樹脂原料、エポキシ樹脂の添加剤(硬化剤)、熱可塑性樹脂の添加剤等として適用できる。
なお、工程(B)においてリグニン反応性化合物を樹脂とともに添加してもよいし、工程(B)と工程(C1)との間にリグニン反応性化合物を添加する工程を設けてもよいし、工程(C1)の後にリグニン反応性化合物を添加してもよい。なお、工程(C1)の後に、リグニン−樹脂含有溶液から溶媒を除去して得られたリグニン含有樹脂にリグニン反応性化合物を添加する方法として、例えば、リグニン含有樹脂及びリグニン反応性化合物の混合物を、混練機を用いて混練する方法がある。
【0035】
(i)フェノール化合物と親電子置換反応を生じる化合物
フェノール化合物と親電子置換反応を生じる化合物としては、ホルムアルデヒド、ホルムアルデヒド供与硬化剤化合物、及びホルムアルデヒド等価化合物等が挙げられる。商業的には、ヘキサメチレンテトラミン、ヘキサホルムアルデヒド、及びパラホルムアルデヒドを用いることができる。一例として、ヘキサメチレンテトラミンである場合には、リグニン及び樹脂、並びにヘキサメチレンテトラミンは、下記の含有量であることが好ましい。
すなわち、リグニン及び樹脂の合計の含有量は、リグニン含有樹脂組成物中30質量%以上98質量%以下であることが好ましく、ヘキサメチレンテトラミンの含有量は、リグニン含有樹脂組成物中2質量%以上50質量%以下であることが好ましい。ヘキサメチレンテトラミンの含有量が上記範囲であると、外観及び物性の良好な硬化物が得られる。この観点から、ヘキサメチレンテトラミンの含有量は、リグニン含有樹脂組成物中5質量%以上30質量%以下であることがより好ましく、10質量%以上20質量%以下であることがさらに好ましい。
【0036】
また、フェノール化合物と親電子置換反応を生じる化合物としてヘキサメチレンテトラミンを用いる場合、樹脂はフェノール樹脂であることが好ましい。上述のように、リグニンは、フェノール性の構造単位を有することから、フェノール樹脂は、樹脂組成物の加工性、強度、及び耐熱性等の物性を低下させない範囲でリグニンの希釈剤、増量剤等として用いることができる。
樹脂としてフェノール樹脂を用いる場合には、リグニンの含有量はリグニン含有樹脂組成物中5質量%以上90質量%以下であり、フェノール樹脂を10質量%以上95質量%以下含む樹脂混合物の含有量は、リグニン含有樹脂組成物中30質量%以上98質量%以下であり、ヘキサメチレンテトラミンの含有量は、リグニン含有樹脂組成物中2質量%以上50質量%以下であることが好ましい。
【0037】
(ii)エポキシ基を有する化合物
エポキシ基を有する化合物は、いわゆるエポキシ樹脂と称される範疇に属するものである。一例としては、2,2−ビス(4’−ヒドロキシフェニル)プロパン(ビスフェノールAと称される)、ビス(2−ヒドロキシフェニル)メタン(ビスフェノールFと称される)、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン(ビスフェノールSと称される)、4,4’−ジヒドロキシビフェニル、レゾルシン、サリゲニン、トリヒドロキシジフェニルジメチルメタン、テトラフェニロールエタン、これらのハロゲン置換体及びアルキル基置換体、ブタンジオール、エチレングリコール、エリスリット、ノボラック、グリセリン、ポリオキシアルキレン等のヒドロキシル基を分子内に2個以上含有する化合物とエピクロルヒドリン等から合成されるグリシジルエーテル系エポキシ樹脂;該ヒドロキシル基を分子内に2個以上含有する化合物とフタル酸グリシジルエステル等から合成されるグリシジルエステル系エポキシ樹脂;アニリン、ジアミノジフェニルメタン、メタキシレンジアミン、1,3−ビスアミノメチルシクロヘキサン等の第一又は第二アミンとエピクロロヒドリン等から合成されるグリシジルアミン系エポキシ樹脂等のグリシジル基を含むエポキシ樹脂;エポキシ化大豆油、エポキシ化ポリオレフィン、ビニルシクロヘキセンジオキサイド、ジシクロペンタジエンジオキサイド等々のグリシジル基を含まないエポキシ樹脂が挙げられる。これらの中でもリグニンと化学構造が類似して相溶性の良好なクレゾールノボラック型エポキシ樹脂及びフェノールノボラック型エポキシ樹脂が好ましい。
【0038】
リグニン中のフェノール性水酸基と、エポキシ基を有する化合物中のエポキシ基の当量比(フェノール性水酸基/エポキシ基)が0.7以上1.3以下であることが好ましい。
フェノール性水酸基/エポキシ基が1に近いと、いずれかの官能基の未反応分が減少し、外観が良好で、強度も維持しやすい。この観点から、リグニン中のフェノール性水酸基/エポキシ基は、より好ましくは、0.8以上1.2以下であり、さらに好ましくは、0.9以上1.1以下である。
【0039】
また、リグニン反応性化合物としてエポキシ基を有する化合物を用いる場合、樹脂はフェノール樹脂であることが好ましい。樹脂としてフェノール樹脂を用いる場合には、リグニンの含有量は、リグニン含有樹脂組成物中5質量%以上90質量%以下であり、フェノール樹脂を10質量%以上95質量%以下含む樹脂混合物中のフェノール性水酸基の合計と、該エポキシ樹脂中のエポキシ基の当量比(フェノール性水酸基の合計/エポキシ基)が0.7以上1.3以下であることが好ましい。
【0040】
リグニン反応性化合物としてエポキシ基を有する化合物を用いる場合、硬化反応促進の目的に応じて硬化促進剤をリグニン含有樹脂組成物に適宜含有させることができる。具体例としては2−メチルイミダゾール、2−エチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール等のイミダゾ−ル類、2−(ジメチルアミノメチル)フェノール、1,8−ジアザ−ビシクロ(5,4,0)ウンデセン−7等の第3級アミン類、トリフェニルホスフィン等のホスフィン類、テトラブチルアンモニウム塩、トリイソプロピルメチルアンモニウム塩、トリメチルデカニルアンモニウム塩、セチルトリメチルアンモニウム塩などの4級アンモニウム塩、トリフェニルベンジルホスホニウム塩、トリフェニルエチルホスホニウム塩、テトラブチルホスホニウム塩などの4級ホスホニウム塩、オクチル酸スズ等の金属化合物等が挙げられる。4級ホスホニウム塩のカウンターイオンとしては、ハロゲン、有機酸イオン、水酸化物イオン等が挙げられ、特に、有機酸イオン、水酸化物イオンが好ましい。
硬化促進剤の含有量は、リグニン含有樹脂組成物中0.1質量%以上10質量%以下であることが好ましい。硬化促進剤の含有量が、上記範囲であると反応性に優れ、耐熱性及び強度にも優れた樹脂組成物を得ることができる。この観点から、硬化促進剤の含有量は、リグニン含有樹脂組成物中0.3質量%以上5質量%以下であることがより好ましく、0.5質量%以上3質量%以下であることがさらに好ましい。
なお、工程(B)において硬化促進剤を樹脂とともに添加してもよいし、工程(B)と工程(C1)との間に硬化促進剤を添加する工程を設けてもよいし、工程(C1)の後に硬化促進剤を添加してもよい。なお、工程(C1)の後に、リグニン−樹脂含有溶液から溶媒を除去して得られたリグニン含有樹脂に硬化促進剤を添加する方法として、例えば、リグニン含有樹脂及び硬化促進剤の混合物を、混練機を用いて混練する方法がある。
【0041】
(iii)イソシアネート基を有する化合物
イソシアネート基を有する化合物は、ポリイソシアネート、またはポリイソシアネートとポリオールを反応させて得られるものである。ポリイソシアネートとしては、トリレンジイソシアネート(TDI)、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、ポリメリックMDI(MDI−CR)、カルボジイミド変性MDI(液状MDI)等の芳香族ポリイソシアネート及びノルボルナンジイソシアネート(NBDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、4,4’−メチレン−ビス(シクロヘキシルイソシアネート)(水添MDI)、キシリレンジイソシアネート(XDI)等の脂肪族ポリイソシアネートや、ブロックイソシアネートを挙げることができる。これらの中でも、トリレンジイソシアネート(TDI)、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)を用いることが好ましい。
【0042】
リグニン中のフェノール性水酸基とアルコール性水酸基との合計と、イソシアネート化合物中のイソシアネート基の当量比(フェノール性水酸基とアルコール性水酸基との合計/イソシアネート基)が0.8以上1.2以下であることが好ましい。フェノール性水酸基とアルコール性水酸基との合計/イソシアネート基が上記範囲内であれば、いずれかの官能基の未反応量が少なくなり、硬化速度、外観、物性に関する不良現象が少なくなる。
この観点から、リグニン中のフェノール性水酸基とアルコール性水酸基との合計と、イソシアネート化合物中のイソシアネート基の当量比(フェノール性水酸基とアルコール性水酸基との合計/イソシアネート基)は、より好ましくは、0.85以上1.15以下であり、さらに好ましくは0.9以上1.1以下である。
【0043】
また、リグニン反応性化合物としてイソシアネート基を有する化合物を用いる場合、樹脂はフェノール樹脂であることが好ましい。この場合には、リグニンの含有量は、リグニン含有樹脂組成物中5質量%以上90質量%以下であり、フェノール樹脂を10質量%以上95質量%以下含む樹脂混合物中のフェノール性水酸基とアルコール性水酸基との合計と、該イソシアネート化合物中のイソシアネート基の当量比(フェノール性水酸基とアルコール性水酸基との合計/イソシアネート基)が0.8以上1.2以下であることが好ましい。
【0044】
リグニン反応性化合物としてイソシアネート基を有する化合物を用いる場合、 硬化反応促進の目的に応じて、硬化促進剤を適宜含有させることができる。硬化促進剤としては、例えば、ジルコニウムやアルミニウムの有機金属系触媒、ジブチルスズラウレート、DBUのフェノール塩、オクチル酸塩、アミン、イミダゾール等が挙げられるが、着色性の点で、有機金属系触媒、例えば、アルミニウムsec−ブチレート、エチルアセトアセテートアルミニウムジイソプロピレート、ジルコニウムトリブトキシアセチルアセトネート、ジルコニウムテトラアセチルアセトネート等が特に好ましい。硬化促進剤の含有量は、リグニン含有樹脂組成物中0.001質量%以上1.0質量%以下であることが好ましく、0.05質量%以上0.5質量%以下であることがさらに好ましい。
なお、工程(B)において硬化促進剤を樹脂とともに添加してもよいし、工程(B)と工程(C1)との間に硬化促進剤を添加する工程を設けてもよいし、工程(C1)の後に硬化促進剤を添加してもよい。なお、工程(C1)の後に、リグニン−樹脂含有溶液から溶媒を除去して得られたリグニン含有樹脂に硬化促進剤を添加する方法として、例えば、リグニン含有樹脂及び硬化促進剤の混合物を、混練機を用いて混練する方法がある。
【0045】
<無機充填材、有機充填材>
リグニン含有樹脂組成物に充填材をさらに含有させてもよい。充填材は、無機充填材であっても有機充填剤であってもよい。
無機充填材としては、例えば、球状又は破砕状の溶融シリカ、結晶シリカ等のシリカ粉末、アルミナ粉末、ガラス粉末、ガラス繊維、ガラスフレーク、マイカ、タルク、炭酸カルシウム、アルミナ、水和アルミナ、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、窒化ケイ素、炭化ケイ素、窒化チタン、酸化亜鉛、炭化タングステン、酸化マグネシウム等が挙げられる。
また有機充填材としては炭素繊維、アラミド繊維、紙粉、セルロース繊維、セルロース粉、籾殻粉、果実殻・ナッツ粉、キチン粉、澱粉等が挙げられる。
無機充填材及び有機充填材は単独あるいは複数の組み合わせで含有されてよく、その含有量は目的に応じて決定される。無機充填材及び/又は有機充填材が含有される場合には、無機充填材及び/又は有機充填剤の含有量が適量であることが良好な物性や成形性を得るために望ましい。この観点から、無機充填材及び/又は有機充填剤の含有量は、リグニン含有樹脂組成物中、その含有量の上限値は、0質量%超400質量%であることが好ましく、より好ましくは、0質量%以上300質量%以下であり、さらに好ましくは、0質量%以上250質量%以下である。
なお、工程(B)において充填材を樹脂とともに添加してもよいし、工程(B)と工程(C1)との間に充填材を添加する工程を設けてもよいし、工程(C1)の後に充填材を添加してもよい。なお、工程(C1)の後に、リグニン−樹脂含有溶液から溶媒を除去して得られたリグニン含有樹脂に充填材を添加する方法として、例えば、リグニン含有樹脂及び充填材の混合物を、混練機を用いて混練する方法がある。
【0046】
<その他の添加剤>
本発明のリグニン含有樹脂組成物を用いて製造される成形品の特性を損ねない範囲で各種添加剤をリグニン含有樹脂組成物に含有させることができる。また、目的に応じてさらに、相溶化剤、界面活性剤等をリグニン含有樹脂組成物に含有させることができる。
界面活性剤としては、例えば、ステアリン酸、パルミチン酸、オレイン酸等の直鎖脂肪酸、またロジン類との分岐・環状脂肪酸等が挙げられるが、特にこれらに限定されない。
さらに、上述したものの他にリグニン含有樹脂組成物が含有可能な添加剤としては、可撓化剤、熱安定剤、紫外線吸収剤、難燃剤、帯電防止剤、消泡剤、チキソトロピー性付与剤、離型剤、酸化防止剤、可塑剤、低応力化剤、カップリング剤、染料、光散乱剤、少量の熱可塑性樹脂等が挙げられる。これらは、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を混合して使用してもよい。
なお、工程(B)において上述の添加剤を樹脂とともに添加してもよいし、工程(B)と工程(C1)との間に上述の添加剤を添加する工程を設けてもよいし、工程(C1)の後に上述の添加剤を添加してもよい。
【0047】
[リグニン含有樹脂成形品]
本発明の第1の実施形態のリグニン含有樹脂成形品は、本発明の第1の実施形態のリグニン含有樹脂組成物を用いてなる。上述したように、本発明の第1の実施形態のリグニン含有樹脂組成物の製造方法によって得られたリグニン含有樹脂組成物は、強度が優れているため、本発明の第1の実施形態のリグニン含有樹脂成形品は優れた強度を有する。
【0048】
本発明の第1の実施形態のリグニン含有樹脂成形品には、熱硬化性樹脂成形品として、例えば、住宅用の断熱材、電子部品、フラックサンド用樹脂、コーテッドサンド用樹脂、含浸用樹脂、積層用樹脂、FRP成型用樹脂、自動車部品、自動車タイヤの補強材等が挙げられる。
また、熱可塑性樹脂成形品として、例えば、特開2014−15579号公報、国際公開第2016/104634号等に挙げられる従来公知の手法を用いて得られる樹脂組成物の成形品は、電気電子製品、情報通信機器、OA機器、機械、自動車、産業資材、建材分野などに用いることができる。
【0049】
<成形品の製造方法>
本発明の第1の実施形態のリグニン含有樹脂成形品を製造するためのリグニン含有樹脂成形品の製造方法は、例えば、本発明の第1の実施形態のリグニン含有樹脂組成物の製造方法によって得られたリグニン含有樹脂組成物を所定形状に成形する工程を含む。上述したように、本発明の第1の実施形態のリグニン含有樹脂組成物は優れた加工性を有するので、本発明の第1の実施形態のリグニン含有樹脂組成物を用いることによって、リグニン含有樹脂成形品を容易に製造することができる。
【0050】
<成形>
所定形状に成形する方法としては、樹脂組成物を成形できれば特に限定されない。例えば、樹脂組成物が熱硬化性樹脂組成物である場合は、所定形状に成形する方法には、圧縮成形法、射出成形法、トランスファー成形法、中型成形、FRP成形法等が挙げられる。また、樹脂組成物が熱可塑性樹脂組成物である場合は、所定形状に成形する方法には、押出成形法、射出成形法等が挙げられる。
【0051】
[第2の実施形態]
本発明の第2の実施形態に係るリグニン含有樹脂組成物の製造方法について、以下に説明する。
[リグニン含有樹脂組成物の製造方法]
本発明の第2の実施形態に係るリグニン含有樹脂組成物の製造方法は、リグニン含有材料中のリグニンを分離する処理によって、可溶化したリグニンと可溶化したリグニンを溶解する溶媒とを含むリグニン含有溶液を得る工程(A)、リグニン含有溶液に樹脂を添加してリグニン−樹脂含有溶液を得る工程(B)、及びリグニン−樹脂含有溶液と、リグニン−樹脂含有溶液に水及び双極子モーメントが0.25d以下の炭化水素から選ばれる少なくとも1種の溶媒とを混合する工程(C2)を含む。以下、可溶化したリグニンを可溶化リグニンと呼ぶ。これにより、第1の実施形態の場合と同様に、樹脂と混合するために、固化した可溶化リグニンを溶媒に再び溶解させる必要がないので、効率的に、リグニン含有樹脂組成物を製造することができる。また、可溶化リグニンを固化させずに樹脂と混合することができるために、樹脂に対して可溶化リグニンを、分子レベルでより均一に混合することができる。これにより、樹脂組成物の加工性及び樹脂組成物の硬化物の強度等の樹脂組成物の特性がより良好になる。
【0052】
(工程(A)及び工程(B))
本発明の第2の実施形態に係るリグニン含有樹脂組成物の製造方法における工程(A)及び工程(B)は、本発明の第1の実施形態に係るリグニン含有樹脂組成物の製造方法における工程(A)及び工程(B)と同様であるので、本発明の第2の実施形態に係るリグニン含有樹脂組成物の製造方法における工程(A)及び工程(B)の説明は省略する。
【0053】
本発明の第2の実施形態に係るリグニン含有樹脂組成物の製造方法において用いることができるリグニン反応性化合物、硬化促進剤、無機充填材、有機充填材及びその他の添加剤は、本発明の第1の実施形態に係るリグニン含有樹脂組成物の製造方法において用いることができるものと同様であるので、本発明の第2の実施形態に係るリグニン含有樹脂組成物の製造方法において用いることができるリグニン反応性化合物、硬化促進剤、無機充填材、有機充填材及びその他の添加剤の説明は省略する。
なお、上述のリグニン反応性化合物等を工程(B)においてリグニン反応性化合物を樹脂とともに添加してもよいし、工程(B)と後述の工程(C2)との間に上述のリグニン反応性化合物等を添加する工程を設けてもよいし、後述の工程(C3)または工程(C4)の後に上述のリグニン反応性化合物等を添加してもよい。
【0054】
(工程(C2))
工程(C2)では、リグニン−樹脂含有溶液に水及び双極子モーメントが0.25d以下の炭化水素から選ばれる溶媒の少なくとも1種の溶媒を混合する。当該工程(C2)は、リグニン−樹脂含有溶液中のリグニンを精製する工程に該当する。当該処理工程を経ることにより、リグニン−樹脂含有溶液中のリグニンは精製リグニンとなる。なお、混合方法は、リグニン−樹脂含有溶液と上記溶媒とが均一に混合できれば、特に限定されない。混合に用いられる装置には、例えば、エッジランナー、撹拌混合機、ロールミル、コーンミル、フラットストーンミル、スピードラインミル、ボールミル、ビーズミル、サンドグラインドミル、パールミル、アトライター、縦型ミキサー、ニーダー、高速かき混ぜ機(ディゾルバー)等が挙げられる。
【0055】
<水>
水としては、例えば、水道水、工業用水、イオン交換水、蒸留水等を用いることができる。
【0056】
<双極子モーメントが0.25d以下の炭化水素>
双極子モーメントが0.25d以下の炭化水素としては、炭素数が5〜8である、飽和鎖状炭化水素、不飽和鎖状炭化水素、飽和環式炭化水素又は不飽和環式炭化水素が好ましい。炭化水素の双極子モーメントが0.25dを超えると、精製効率低下し、リグニンの耐熱性が悪くなるため好ましくない。ここで、「双極子モーメント」とは、Winmostar MOPAC AMI (MOP6W70)により算出される値である。かかる炭化水素として使用可能な化合物の一例を、その双極子モーメント値と共に以下に示す。
【0057】
【表1】
【0058】
上記炭化水素の双極子モーメントは、好ましくは0.23d以下であり、より好ましくは0.20d以下である。上記炭化水素の双極子モーメントの下限値はとくに限定されないが、例えば、0.00dである。
【0059】
<水及び双極子モーメントが0.25d以下の炭化水素から選ばれる少なくとも1種の溶媒の量>
水及び双極子モーメントが0.25d以下の炭化水素から選ばれる少なくとも1種の溶媒の量は、特に限定されないが、リグニン−樹脂含有溶液に混合する上記溶媒の量は、リグニン−樹脂含有溶液に対して容量で、好ましくは1倍以上50倍以下、より好ましくは1倍以上40倍以下、さらに好ましくは1倍以上30倍以下、特に好ましくは2倍以上20倍以下、最も好ましくは2倍以上15倍以下である。リグニン−樹脂含有溶液と混合する際の、水及び双極子モーメントが0.25d以下の炭化水素から選ばれる少なくとも1種の溶媒の量が容量で1倍未満であると、リグニン−樹脂含有溶液に含まれる軽質成分を十分に除去することができない。一方で、水及び双極子モーメントが0.25d以下の炭化水素から選ばれる少なくとも1種の溶媒の量が容量で50倍を超えると、効率よく目的の精製リグニンを回収することができない。なお、複数種の炭化水素溶媒を用いる場合には、上記溶媒の量とは、水と複数種の炭化水素溶媒の合計量を意味する。
【0060】
工程(C2)を経ることで、リグニン−樹脂含有溶液中のリグニンを精製して、リグニン−樹脂含有溶液中のリグニンは精製リグニンとなる。
具体的には、工程(C2)においては、リグニン−樹脂含有溶液に含まれるリグニンから軽質成分および重質成分を分離させることができる。軽質成分としては、例えば、バニリン等のフェノール類、フルフラール等の糖過分解物等が挙げられるが、特に限定されない。重質成分としては、例えば、重量平均分子量10000以上のリグニン等が挙げられるが、特に限定されない。
【0061】
リグニン−樹脂含有溶液と、水及び双極子モーメントが0.25d以下の炭化水素から選ばれる少なくとも1種の溶媒とを混合する上記工程(C2)における溶液温度は、溶液の安定性、リグニンの溶液への溶解度等を鑑みて、0℃以上100℃以下であることが好ましい。当該溶液温度は、より好ましくは10℃以上90℃以下、さらに好ましくは20℃以上80℃以下、特に好ましくは25℃以上70℃以下である。
【0062】
また、工程(C2)において、リグニン−樹脂含有溶液と、水及び双極子モーメントが0.25d以下の炭化水素から選ばれる少なくとも1種の溶媒とを混合する際には、必要に応じて撹拌を行ってもよい。また、撹拌を行った場合には、さらに必要に応じて静置分離を行ってもよい。静置時間は、通常、1分以上120分以下である。静置時間が1分以上であれば、精製リグニンとその他成分とを十分に分離することができる。また、静置時間の上限は120分で十分である。静置時間は、好ましくは5分以上100分以下、より好ましくは10分以上60分以下、さらに好ましくは15分以上30分以下である。
【0063】
(工程(C3)または工程(C4))
本発明の第2の実施形態においては、工程(C2)により得られる混合溶液が二相であるか一相であるかによって、以下の工程(C3)または(C4)を行うことが好ましい。
【0064】
工程(C2)により得られた混合溶液が二相である場合には、工程(C2)の後、工程(C3)を続けて行うことが好ましい。工程(C3)では、工程(C2)により得られるリグニン含有樹脂組成物を含む相を上記二相から分離し、分離した相を濃縮した後、得られた固形分を乾燥する。例えば、工程(C2)により得られた混合溶液が水相と有機相との二相、または水相と、有機相および双極子モーメントが0.25d以下の炭化水素相との二相に分かれた場合は、有機相側に目的とするリグニン含有樹脂組成物が溶解しているので、工程(C3)では有機相側を分離し、該有機相側を濃縮した後、得られた固形分を乾燥する。ここで、「有機相側」とは、双極子モーメント0.25d以下の炭化水素相と耐熱性リグニンを含有する有機相とで単一相を形成している場合に、水相と分離する、上記有機相を含む単一相を意味する。当然ながら、水相と有機相との二相に分離する場合には、「有機層側」とは有機相を意味する。また、工程(C2)により得られた溶液が、双極子モーメントが0.25d以下の炭化水素相と有機相(該炭化水素以外の有機相)との二相に分かれる場合には、有機相側に目的とするリグニン含有樹脂組成物が溶解しているので、工程(C3)では、有機相を分離し、該有機相を濃縮した後、得られた固形分を乾燥する。なお、二相の状態で固形分が生成している場合には、固液分離の後に、有機相(側)を分離する。
【0065】
工程(C2)により得られる混合溶液が一相である場合は、リグニン含有樹脂組成物は固体として沈殿している。この場合、溶解度差により固体は析出するので、軽質成分は溶液中に残る。そこで、工程(C2)により得られる混合溶液が一相である場合は、本発明の第2の実施形態に係るリグニン含有樹脂組成物の製造方法は、工程(C4)をさらに含むことが好ましい。工程(C4)では、固液分離し、得られた固体を乾燥する。また、得られた溶液を濃縮した後、得られた固形分を乾燥する。上述したように、軽質成分は溶液中に残るので、得られた固体を乾燥することによって、軽質成分の少ないリグニン含有樹脂組成物を得ることができる。また、得られた固形分を乾燥することによって、重質成分の少ないリグニン含有樹脂組成物を得ることができる。
【0066】
なお、有機相を濃縮させる方法は、有機相中の溶媒を揮発させ、有機相に溶解しているリグニン含有樹脂組成物の濃度を、リグニン含有樹脂組成物が有機相から析出するまで高くできる方法であれば特に限定されない。また、固形分を乾燥する方法も、固形分から溶媒を揮発させ、除去できる方法であれば特に限定されない。溶媒を揮発させる方法としては、溶媒を揮発させる物を、加熱したり、減圧もしくは真空の雰囲気に置いたりする方法等が挙げられる。
【0067】
[リグニン含有樹脂成形品]
本発明の第2の実施形態のリグニン含有樹脂成形品は、本発明の第2の実施形態のリグニン含有樹脂組成物を用いてなる。本発明の第2の実施形態のリグニン含有樹脂成形品は、本発明の第1の実施形態のリグニン含有樹脂成形品と同様に優れた強度を有する。さらに、例えば、リグニン−樹脂含有溶液に水及び双極子モーメントが0.25d以下の炭化水素から選ばれる少なくとも1種の溶媒を混合して、リグニン含有樹脂組成物中のリグニンは精製されるので、より精製されたリグニンを含有するリグニン含有樹脂成形品を得ることができる。なお、本発明の第2の実施形態のリグニン含有樹脂成形品の説明は、本発明の第1の実施形態のリグニン含有樹脂成形品の説明と共通するので、本発明の第2の実施形態のリグニン含有樹脂成形品の説明は省略する。
【0068】
[グルコースの製造方法]
上述の工程(A)で、リグニン含有材料中のリグニンを可溶化させる場合、可溶化したリグニンと可溶化したリグニンを溶解する溶媒とを含むリグニン含有溶液の他に、副産物として、セルロース含有固形物が得られる場合がある。このセルロース含有固形物を用いてグルコースを製造することができる。以下、一実施形態のグルコースの製造方法を説明する。
【0069】
一実施形態のグルコースの製造方法は、本発明の実施形態のリグニン含有熱硬化性樹脂組成物の製造方法におけるリグニン含有溶液を得る工程で副産物として得られたセルロース含有固形物を酵素糖化処理する工程を含む。これにより、本発明の実施形態のリグニン含有樹脂組成物の製造方法で、副産物として生成するセルロース含有固形物の有効利用を図ることができる。
【0070】
<酵素糖化処理>
酵素糖化処理とは、セルロース及びセルロースを分解して得られるセルロース分解物を酵素で加水分解してグルコースに変換する処理である。酵素糖化処理の条件は、例えば下記のとおりである。
セルロース含有固形物に含まれるセルロース及びセルロースを分解して得られるセルロース分解物に対して作用する酵素を、セルロース含有固形物100質量部に対して、0.1質量部以上200質量部以下とすることができる。また、酵素糖化処理に用いる酵素活性は、100U/g以上10000U/g以下とすることができる。さらに、酵素糖化処理における処理温度は、30℃以上70℃以下であれば、酵素が活性化し、糖化率を向上させることができる。酵素糖化処理における処理時間は、12時間以上168時間以下であれば、酵素が活性化し、糖化率を向上させることができる。
【0071】
上述の工程(A)で副産物として得られるセルロース含有固形物に含まれるセルロースは、リグニン含有量が少ないため、酸や酵素による糖化処理に好適に用いられる。
また、上述の工程(A)で副産物として得られるセルロース含有固形物は、他の方法によって得られるセルロース含有固形物に比べて、解繊されやすい状態になっている。このため、用途展開がしやすいという利点を有する。
【0072】
[セルロース含有固形物の他の用途]
上述の工程(A)で副産物として得られるセルロース含有固形物から、公知の手法を用いてエタノール、ブタノール、アセトンなどを得ることができる。
また、上述の工程(A)で副産物として得られるセルロース含有固形物からは、セルロースナノファイバー等の樹脂強化繊維・化学繊維代替としてのゴム及びタイヤ補強材、カルボキシメチルセルロース、オリゴ糖等の食品添加物、乳酸、コハク酸等の化学品を得ることができる。
【0073】
なお、本発明の第1及び第2の実施形態に係るリグニン含有樹脂組成物の製造方法は、それぞれ、本発明のリグニン含有樹脂組成物の製造方法の1つの実施形態に過ぎないので、本発明の第1及び第2の実施形態に係るリグニン含有樹脂組成物の製造方法は、本発明のリグニン含有樹脂組成物の製造方法を限定しない。
また、本発明の第1及び第2の実施形態に係るリグニン含有樹脂成形品の製造方法は、それぞれ、本発明のリグニン含有樹脂成形品の製造方法の1つの実施形態に過ぎないので、本発明の第1及び第2の実施形態に係るリグニン含有樹脂成形品の製造方法は、本発明のリグニン含有樹脂成形品の製造方法を限定しない。
【実施例】
【0074】
以下、本発明を実施例によりさらに詳細に説明する。本発明は、以下の実施例に限定されるものではない。
[リグニン含有樹脂の製造例]
<製造例1>
原料であるバガスに水を加えて固形物濃度10質量%程度の原料スラリーとした。
原料スラリーを、反応器(圧力容器)に供給し、超臨界状態又は亜臨界状態まで加熱した。加熱温度は170℃であった。
ここで得られた固形分と、1−ブタノール濃度34質量%で調製した水及び1−ブタノールの混合溶媒とを、内容積0.92LのSUS(ステンレス)製回分式装置に入れた。溶媒の合計量は、315gであった。原料仕込み濃度は、原料/溶媒=1/10として行った。
SUS製回分式装置の装置内を窒素でパージした後、200℃まで昇温し、2時間処理を行った。処理時間は、200℃に達してからの経過時間とした。また、熱電対にて処理温度を測定した。
処理終了後、SUS製回分式装置を冷却し、温度が室温付近まで下がった後、中味を全て取り出した。処理後、固形分と液相とを濾別した。
固形分に200gの水を加え、30分間攪拌後、固形分と液相とを濾別した。当該操作を3回繰り返し、セルロース含有固形物を得た。
液相は分液漏斗により、水相と1−ブタノール相とに液/液分離して、可溶化したリグニンと可溶化したリグニンを溶解する1−ブタノールを含むリグニン含有溶液(リグニン固形分3.5g)を得た。リグニン含有溶液にノボラック型フェノール樹脂(PR−53195(住友ベークライト株式会社製))1.9gを添加し、溶媒をエバポレーター(70℃、水浴)で除去した後、125℃の条件で真空乾燥して、リグニン含有樹脂を得た。
【0075】
<製造例2>
水と1−ブタノールの混合溶媒を1−ブタノール濃度50質量%で調製した以外は、製造例1と同様の操作によりリグニン含有樹脂を得た。
【0076】
<製造例3>
1−ブタノール濃度34質量%で調製した水及び1−ブタノールの混合溶媒の代わりにエタノール濃度50質量%で調製した水及びエタノールの混合溶媒を用いた以外は、製造例1と同様の操作を行った。なお、固液分離後のリグニン含有溶液は一相であったため、フェノール樹脂を添加後、エバポレーターで有機溶媒を除去することで、溶解度の低下により水中に沈殿した固形分を濾過により、固液分離した後、125℃の条件で真空乾燥して、リグニン含有樹脂を得た。
【0077】
<製造例4>
混合溶媒の有機溶媒として、エタノールの代わりにアセトンを用いた以外は、製造例3と同様の操作によりリグニン含有樹脂を得た。
【0078】
<製造例5>
混合溶媒の有機溶媒として、1−ブタノールの代わりに2−メチル−1−プロパノールを用いた以外は、製造例1と同様の操作によりリグニン含有樹脂を得た。
【0079】
<製造例6>
原料であるバガスを、超臨界状態又は亜臨界状態まで加熱処理をせずに、そのまま、水及び1−ブタノールの混合溶媒を用いて処理した以外は、製造例1と同様の操作によりリグニン含有樹脂を得た。
【0080】
<製造例7>
原料であるバガス30gと純水160gを、内容積0.92LのSUS製回分式装置に導入し、内容物を200rpmで攪拌しながら、200℃まで昇温し、2時間処理を行った。処理時間は、200℃に達してからの経過時間とした。また、熱電対にて温度を測定した。次いで、固形分と液相とを濾別した。この固形分をアセトン200mlに一晩浸漬し、固形分と液相とを濾別することでアセトン可溶部(リグニン固形分4.2g)を回収した。次いで、前記アセトン可溶部にノボラック型フェノール樹脂(PR−53195(住友ベークライト株式会社製))2.3gを添加し、溶媒をエバポレーター(70℃、水浴)で除去した後、125℃の条件で真空乾燥して、リグニン含有樹脂を得た。
【0081】
<製造例8>
原料であるバガスを適当な大きさにカットし、水蒸気爆砕装置の3Lの耐圧容器に入れ、3.5MPaの水蒸気を圧入し、3分間保持した。その後バルブを急速に開放することで爆砕処理物を得た。洗浄液のpHが6以上になるまで得られた爆砕処理物を水により洗浄して水溶性成分を除去した。得られた固形分100gにアセトン1000mlを加え、3時間攪拌した後、固形分と液相とを濾別することでアセトン可溶部(リグニン固形分4.0g)を回収した。次いで、前記アセトン可溶部にノボラック型フェノール樹脂(PR−53195(住友ベークライト株式会社製))2.2gを添加し、溶媒をエバポレーター(70℃、水浴)で除去した後、125℃の条件で真空乾燥して、リグニン含有樹脂を得た。
【0082】
<製造例9>
原料であるバガス120gに60gのp−クレゾールを収着させ、300mLの72%硫酸を加え、内容積0.92LのSUS製回分式装置に導入し、30℃、1時間で処理した。酸を除去した後、沈殿を乾燥させ、アセトン600mLで抽出し(リグニン固形分5.0g)、ノボラック型フェノール樹脂(PR−53195(住友ベークライト株式会社製))2.7gを添加後、ジエチルエーテルを用いて精製した。次いで、125℃の条件で真空乾燥して、リグニン含有樹脂を得た。
【0083】
<製造例10>
原料であるバガス30gを、95質量%の酢酸300gおよび硫酸0.9gと混合し、還流下において4時間処理した。処理後、固形分と液相とを濾別することで液相(リグニン固形分4.2g)を回収した。次いで、ノボラック型フェノール樹脂(PR−53195(住友ベークライト株式会社製))2.3gを添加し、エバポレーターを用いて液相中の酢酸を除去し、体積が1/10になるまで濃縮した後、その濃縮液の10倍量(質量基準)の水を添加し、濾過することにより、リグニン含有樹脂を得た。
【0084】
<製造例11>
ノボラック型フェノール樹脂の代わりにレゾール型フェノール樹脂(TD−2040C(DIC株式会社製))を用いた以外は、製造例1と同様の操作によりリグニン含有樹脂を得た。
【0085】
<製造例12>
ノボラック型フェノール樹脂の添加量を11.4gに変えた以外は、製造例1と同様の操作によりリグニン含有樹脂を得た。
【0086】
<比較製造例1>
リグニン含有溶液にノボラック型フェノール樹脂を添加しないで、1−ブタノールをエバポレーター(70℃、水浴)で除去して、リグニンを得た。
【0087】
[得られたリグニン含有樹脂の評価方法]
<軟化点>
製造例1〜10、12により得られたリグニン含有樹脂及び比較製造例1により得られたリグニンを、JIS K2207に準じて、環球法試験器を用いて、軟化点を測定した。結果を第2表に示す。
<成形性>
製造例1〜10、12により得られたリグニン含有樹脂を85質量部(リグニンおよびフェノール樹脂(PR−53195:住友ベークライト株式会社製)の比は表2参照)、ヘキサメチレンテトラミン15質量部、及び無機充填材40質量部を乳鉢に入れ、室温にて粉砕しつつ混合した後、オープンロール混練機を用いて100℃で混合したときの混合性を下記指標に基づき、評価した。また、比較製造例1により得られたリグニン55質量部、フェノール樹脂30質量部、ヘキサメチレンテトラミン15質量部及び無機充填材40質量部を乳鉢に入れ、室温にて粉砕しつつ混合した後、オープンロール混練機を用いて100℃で混合したときの混合性も下記指標に基づき、評価した。
結果を第2表に示す。
A…混合容易 B…やや混合困難 C…混合困難(均一に混ぜるのに時間を要する。)
【0088】
【表2】
【0089】
<結果>
製造例1〜10、12と比較製造例1とを比べてわかるように、リグニンとフェノール樹脂を予め溶液混合し均一にしておくことで、成形性が向上することがわかった。
【0090】
[実施例1〜12及び比較例1,2]
[ヘキサメチレンテトラミンを含んでなる樹脂成形品の評価]
製造例1〜12のリグニン含有樹脂及び比較製造例1のリグニンを用いて樹脂成形品を作製し、物性を評価した。
【0091】
<樹脂組成物の配合及び硬化物の成形方法>
第3表、第4表に示す配合比で各成分を乳鉢に入れ、室温にて粉砕し、混合後、オープンロール混練機を用いて100℃にて5分間混合した後、室温まで冷却して樹脂組成物を得た。樹脂組成物を乳鉢で粉砕し、離型剤を塗布したアルミ板の間に挟み、真空プレス機を用いて、減圧下で100〜150℃にて60分間成形した。成形後、200℃にて120分間硬化処理し、成形品を得た。
【0092】
<曲げ強度測定方法>
得られた成形品から5mm×50mm×1mmの試料を切り出し、インストロン5566を用いて、3点曲げモード、スパン30mm、速度2mm/分の条件で、曲げ強度を測定した。
【0093】
【表3】
【0094】
【表4】
【0095】
フェノール樹脂:PR−53195(住友ベークライト株式会社製):ノボラック型フェノール樹脂
フェノール樹脂:TD−2040C(DIC株式会社):レゾール型フェノール樹脂
無機充填材1:ガラス繊維 GF CS3E479S(日東紡績株式会社製)
【0096】
<結果>
実施例1、12と比較例1、2とを比べてわかるように、同じ配合比率であれば、リグニンとフェノール樹脂を熱溶融で混合した樹脂組成物の硬化物よりも、リグニンとフェノール樹脂をリグニン含有溶液中で混合した樹脂組成物の硬化物の方が、成形品の曲げ強度が優れることがわかった。
【0097】
[実施例13〜22及び比較例3]
[エポキシ化合物を含んでなる樹脂組成物の評価]
製造例1〜10、比較製造例1のリグニン含有樹脂を用いて第5表に示す成分の含有量(質量部)の樹脂成形品を作製し、物性を評価した。
【0098】
<樹脂組成物の配合及び硬化物の成形方法>
第5表に示す配合比で各成分を乳鉢に入れ、室温にて粉砕し、混合後、オープンロール混練機を用い100℃にて5分間混合した後、室温まで冷却して樹脂組成物を得た。樹脂組成物を乳鉢で粉砕し、離型剤を塗布したアルミ板の間に挟み、真空プレス機を用いて、減圧下で150℃にて60分間成形した。成形後、200℃にて120分間硬化処理し、成形品を得た。
【0099】
<曲げ強度測定方法>
上述の方法により、曲げ強度を測定した。
【0100】
<リグニンのフェノール性水酸基当量(ph−OH量)及びアルコール性水酸基当量(Alc−OH)>
重クロロホルム、ピリジン、シクロヘキサノール(内部標準)を混合した溶媒をリグニンに加え、さらに、誘導体化試薬として2−chloro−4,4,5,5−tetramethyl−1,3,2−dioxaphospholaneを添加し、50℃、1時間加熱した。その後、以下の測定条件で31PNMR測定を実施した。
・パルス幅:30°
・繰り返し時間:2秒
・測定範囲:−60〜200ppm
・積算回数:200回
内部標準であるシクロヘキサノール由来シグナルを145.2ppmとし、150.0〜145.5ppmを脂肪族水酸基(Alc−OH)、144.7〜136.6ppmを芳香族水酸基(Ph−OH)として帰属し、積分値から脂肪族水酸基量(mol/g)及び芳香族水酸基量(mol/g)を算出した。
【0101】
<リグニン中のフェノール性水酸基(ph−OH)と、エポキシ基を有する化合物中のエポキシ基(EPO)の当量比>
上記で算出したリグニンのフェノール性水酸基当量及びリグニンの含有量と、エポキシ樹脂の仕様に記載されているエポキシ樹脂のエポキシ基当量及びエポキシ樹脂の含有量とに基づいて、リグニン中のフェノール性水酸基(ph−OH)と、エポキシ基を有する化合物中のエポキシ基(EPO)の当量比を算出した。
【0102】
【表5】
【0103】
フェノール樹脂:PR−53195(住友ベークライト株式会社製):ノボラック型フェノール樹脂(フェノール性水酸基当量:1.10×10−2mol/g)
エポキシ樹脂2:エピクロン N695(DIC株式会社製)(エポキシ基当量:4.65×10−3mol/g)
硬化促進剤:キュアゾール 2PZ−CN(四国化成株式会社製)
無機充填材2:ガラス繊維:JAFT591(旭ファイバーグラス株式会社製)
【0104】
<結果>
実施例13と比較例3とを比べてわかるように、同じ配合比率であれば、リグニンとフェノール樹脂を熱溶融で混合した樹脂組成物の硬化物よりも、リグニンとフェノール樹脂をリグニン含有溶液中で混合した樹脂組成物の硬化物の方が、成形品の曲げ強度が優れることがわかった。
【0105】
[実施例23〜28]
[イソシアネート化合物を含んでなる樹脂組成物の評価]
製造例1〜6のリグニン含有樹脂を用いて第6表に示す成分の含有量(質量部)の樹脂成形品を作製し、物性を評価した。
【0106】
<樹脂組成物の配合及び硬化物の成形方法>
第6表に示す配合比で各成分を乳鉢に入れ、室温にて粉砕し、混合後、オープンロール混練機を用い100℃にて5分間混合した後、室温まで冷却して、樹脂組成物を得た。樹脂組成物を乳鉢で粉砕し、離型剤を塗布したアルミ板の間に挟み、真空プレス機を用いて、減圧下で100℃にて60分間成形した。成形後、150℃にて60分間硬化処理し、成形品を得た。
【0107】
<曲げ強度測定方法>
上述の方法により、曲げ強度を測定した。
【0108】
<ガラス転移温度の測定方法>
ガラス転移温度の測定は固体粘弾性法によって測定した。得られた成形品から5mm×30mm×1mmの試料を切り出し、DMA8000(パーキンエルマージャパン株式会社製)を用いて、0℃〜300℃、若しくは限界最低弾性率に達するまで昇温温度2℃/分、1Hzで測定を行った。得られたtanδのピーク温度をガラス転移温度(Tg)とした。
【0109】
<リグニン中のフェノール性水酸基とアルコール性水酸基との合計と、イソシアネート化合物中のイソシアネート基の当量比>
上記で算出したリグニンのフェノール性水酸基当量及びアルコール性水酸基当量の合計及びリグニンの含有量と、イソシアネート化合物の仕様に記載されているイソシアネート化合物のイソシアネート基当量及びイソシアネート化合物の含有量とに基づいて、リグニン中のフェノール性水酸基(ph−OH量)とアルコール性水酸基(Alc−OH量)との合計と、イソシアネート化合物中のイソシアネート基の当量(NCO量)比を算出した。
【0110】
【表6】
【0111】
フェノール樹脂:住友ベークライト株式会社製「PR−53195」
イソシアネート:4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート試薬(イソシアネート基量8.00×10−3mol/g)
硬化促進剤:ジラウリン酸ジブチルすず(IV)試薬
アミノシラン:γ−アミノプロピルトリエトキシシラン 東レダウ株式会社製「SH6020」
無機充填材3:溶融シリカ 電気化学工業株式会社製「FD940」
【0112】
<結果>
リグニンとフェノール樹脂をリグニン含有溶液中で混合したリグニン樹脂組成物の成形品が十分な曲げ強度を示すことがわかった。
【0113】
[参考例1〜3]
[得られたセルロース含有固形物の評価方法]
<酵素糖化処理>
リグニン含有樹脂の製造例1〜3で得られたセルロース含有固形物1g(乾燥重量)を50mL遠沈管に投入し、121℃、20分間滅菌処理を行った。同様の滅菌処理を実施した酢酸緩衝液を液量が約20mL、pH5となるように、遠沈管に加え、その後、第7表に示す酵素量(ナガセケムテックス(株)製、セルライザーACE)を投入した。当該遠沈管を50℃の恒温槽中、120rpmで、72hr振盪した。
【0114】
0.625%のカルボキシメチルセルロースナトリウムの0.625%溶液(pH4.5)、4mlに、当該酵素1mlを加えて、40℃で30分間作用させたとき、1分間に1μmolのグルコースに相当する還元力を生成する活性を1CUNと表す。上記酵素は、1600CUN/g以上の酵素活性を有するものである。
【0115】
<セルロース含有固形物中のグルコース量の分析>
[前処理]
前処理として、ウィレーミルを用いて試料となる原料を粉砕し、105℃で乾燥した。
【0116】
[構成糖分析]
セルロース含有固形物の試料の適量を量りとり、72%硫酸を加え、30℃において、随時撹拌しながら1時間放置した。この反応液を純水と混釈しながら耐圧瓶に完全に移し、オートクレーブにて120℃で1時間処理した後、ろ液と残渣とを、ろ別した。ろ液中のグルコースについては、高速液体クロマトグラフ法により定量を行った。
【0117】
<酵素糖化して得られた糖の分析>
糖(グルコース)は高速液体クロマトグラフ(HPLC)にて分析した。
(i)測定条件
カラム:昭和電工株式会社製 Shodex SP−G(ガードカラム)+SP0810
移動相:蒸留水(HPLCグレード)
検出器:RI(セル内60℃)
カラム温度:80℃
注入量:50μL
検量線用標準試料:東京化成工業株式外は製 D−(+)−グルコース、D−(+)−キシロース
(ii)試料調製
ピペッターを用いて、10mLバイアル瓶に試料(溶液)を0.2mL採取する。
蒸留水を1.8mL添加し、よく混合する(10倍希釈)。
バイアル瓶に採取する。
【0118】
<計算方法>
検量線を用いて、グルコース濃度(g−グルコース/L)を算出する。
糖化率(%)=酵素糖化液中のグルコース量(g)/セルロース含有固形物中のグルコース量(g)×100
【0119】
結果を第7表に示す。
【0120】
【表7】
【0121】
製造例1〜3で得られるセルロース含有固形物は酵素糖化によりほぼ100%グルコースに変換された。