(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記(1−2)、前記(1−3)、前記(2−2)及び前記(2−3)における前記の2価以上の連結基の分子量が10〜1000である、請求項1又は2に記載の内視鏡用可撓管。
前記層Aが、ポリウレタンエラストマー(d)及びポリアミドエラストマー(e)の少なくとも1種を樹脂成分として含有する、請求項1〜5のいずれか1項に記載の内視鏡用可撓管。
前記含リン化合物(b1)及び前記チオエーテル化合物(b2)の含有量の合計が、前記層A中の前記樹脂成分100質量部に対して0.01〜5質量部である、請求項1〜6のいずれか1項に記載の内視鏡用可撓管。
前記ヒンダードアミン化合物(c)の含有量が、前記層A中の前記樹脂成分100質量部に対して0.01〜5質量部である、請求項1〜7のいずれか1項に記載の内視鏡用可撓管。
前記層A中の、前記含リン化合物(b1)の含有量及び前記チオエーテル化合物(b2)の含有量の合計:前記ヒンダードアミン化合物(c)の含有量が質量比で、1:50〜50:1である、請求項1〜8のいずれか1項に記載の内視鏡用可撓管。
前記ヒンダードアミン化合物(c)の含有量が、前記層A中の前記樹脂成分100質量部に対して0.5〜5質量部である、請求項1〜12のいずれか1項に記載の内視鏡用可撓管。
前記(1−2)、前記(1−3)、前記(2−2)及び前記(2−3)における前記の2価以上の連結基の分子量が10〜1000である、請求項15又は16に記載の内視鏡用可撓管基材被覆用樹脂組成物。
前記含リン化合物(b1)の含有量及び前記チオエーテル化合物(b2)の含有量の合計:前記ヒンダードアミン化合物(c)の含有量が質量比で、1:50〜50:1である、請求項15〜17のいずれか1項に記載の内視鏡用可撓管基材被覆用樹脂組成物。
前記(1−2)、前記(1−3)、前記(2−2)及び前記(2−3)における前記の2価以上の連結基の分子量が10〜1000である、請求項19又は20に記載の内視鏡用可撓管基材被覆用樹脂組成物のセット。
前記含リン化合物(b1)の含有量及び前記チオエーテル化合物(b2)の含有量の合計:前記ヒンダードアミン化合物(c)の含有量が質量比で、1:50〜50:1である、請求項19〜21のいずれか1項に記載の内視鏡用可撓管基材被覆用樹脂組成物のセット。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記各特許文献記載の技術等により内視鏡用可撓管の特性は高められてきた。その一方、内視鏡用可撓管の操作性、耐久性等に対する要求は年々高度化している状況にある。上記の点に鑑み、本発明は、成形時における樹脂層の欠陥を十分に抑制でき、また所望の十分な耐薬品性を有し、またトップコート層と樹脂層とのより高度な密着性をも実現した内視鏡用可撓管、これを用いた内視鏡型医療機器、この内視鏡用可撓管の樹脂層の形成に好適な、樹脂組成物及び樹脂組成物のセットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的は下記の手段により達成された。
<1>
可撓性を有する筒状の内視鏡用可撓管基材と、内視鏡用可撓管基材を被覆する樹脂層とを有する内視鏡用可撓管であって、
上記樹脂層が単層又は2層以上の複層であり、樹脂層のいずれかの層Aが、同一の層中に、樹脂成分としてのポリエステルエラストマー(a)と、含リン化合物(b1)及びチオエーテル化合物(b2)の少なくとも1種と、ヒンダードアミン化合物(c)とを含み、
上記含リン化合物(b1)が、
(1−1)下記一般式(1)で表される化合物、
(1−2)下記一般式(1)で表される化合物においてR
1、R
2又はR
3から水素原子1個を取り除いた1価の基が、2価以上の連結基又は単結合を介して、前記一般式(1)で表される別の1つ以上の化合物のR
1、R
2及びR
3の少なくとも1つと連結した構造の化合物、並びに、
(1−3)下記一般式(1)で表される化合物においてR
1、R
2及びR
3から選ばれる少なくとも1つの基から水素原子を合計で2個以上取り除いた2価以上の基が、2価以上の連結基又は単結合を介して、前記一般式(1)で表される別の1つ以上の化合物のR
1、R
2及びR
3の少なくとも1種と連結した構造の化合物
の少なくとも1種であり、かつ上記層A中の樹脂成分の酸化を抑制する作用を有する化合物であり、
上記チオエーテル化合物(b2)が、
(2−1)下記一般式(2)で表される化合物、
(2−2)下記一般式(2)で表される化合物においてR
4又はR
5から水素原子1個を取り除いた1価の基が、2価以上の連結基又は単結合を介して、前記一般式(2)で表される別の1つ以上の化合物のR
4及びR
5の少なくとも1つと連結した構造の化合物、並びに、
(2−3)下記一般式(2)で表される化合物においてR
4及びR
5から選ばれる少なくとも1つの基から水素原子を合計で2個以上取り除いた2価以上の基が、2価以上の連結基又は単結合を介して、前記一般式(2)で表される別の1つ以上の化合物の
R4及びR5の少なくとも1つと連結した構造の化合物
の少なくとも1種であり、かつ上記層A中の樹脂成分の酸化を抑制する作用を有する化合物である、内視鏡用可撓管。
【化1-1】
一般式(1)において、R
1及びR
2は、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基又はハロゲン原子を示し、R
3はアルキル基又はアリール基を示す。R
1、R
2及びR
3の少なくとも2つは、2価以上の基又は単結合を介して互いに連結してもよい。
一般式(2)において、R
4及びR
5は、アルキル基を示す。R
4及びR
5は、2価以上の基又は単結合を介して互いに連結してもよい。
<2>
上記一般式(1)において、R
1及びR
2は、炭素数1〜50のアルキル基、炭素数6〜50のアリール基、炭素数1〜50のアルコキシ基、炭素数6〜50のアリールオキシ基又はハロゲン原子を示し、R
3は炭素数1〜50のアルキル基又は炭素数6〜50のアリール基を示し、R
1、R
2及びR
3の少なくとも2つは、2価以上の基又は単結合を介して互いに連結してもよく、上記一般式(2)において、R
4及びR
5は、炭素数1〜50のアルキル基を示し、R
4及びR
5は、2価以上の基又は単結合を介して互いに連結してもよい、<1>に記載の内視鏡用可撓管。
<3>
上記(1−2)、上記(1−3)、上記(2−2)及び上記(2−3)における前記の2価以上の連結基の分子量が10〜1000である、<1>又は<2>に記載の内視鏡用可撓管。
<4>
上記層Aにおいて、上記樹脂成分中の上記ポリエステルエラストマー(a)の含有量が50質量%以上である、<1>〜<3>のいずれいか1つに記載の内視鏡用可撓管。
<5>
上記複層が、上記層Aと、ポリウレタンエラストマー(d)を含む層Bとを有する、<1>〜<4>のいずれいか1つに記載の内視鏡用可撓管。
<6>
上記層Aが、ポリウレタンエラストマー(d)及びポリアミドエラストマー(e)の少なくとも1種を樹脂成分として含有する、<1>〜<5>のいずれか1つに記載の内視鏡用可撓管。
<7>
上記含リン化合物(b1)及び上記チオエーテル化合物(b2)の含有量の合計が、上記層A中の上記樹脂成分100質量部に対して0.01〜5質量部である、<1>〜<6>のいずれか1つに記載の内視鏡用可撓管。
<8>
上記ヒンダードアミン化合物(c)の含有量が、上記層A中の上記樹脂成分100質量部に対して0.01〜5質量部である、<1>〜<7>のいずれか1つに記載の内視鏡用可撓管。
<9>
上記層A中の、上記含リン化合物(b1)の含有量及び上記チオエーテル化合物(b2)の含有量の合計:上記ヒンダードアミン化合物(c)の含有量が質量比で、1:50〜50:1である、<1>〜<8>のいずれか1つに記載の内視鏡用可撓管。
【0007】
<
10>
上記ヒンダードアミン化合物(c)が下記一般式(3)で表される構造部位を有する化合物である、<1>〜<
9>のいずれか1つに記載の内視鏡用可撓管。
【化1-2】
一般式(3)中、R
6〜R
9は、水素原子又は炭素数1〜12のアルキル基を示す。R
10は水素原子、炭素数1〜18のアルキル基又は−OR
11を示す。R
11は水素原子又は炭素数1〜20のアルキル基を示す。*は結合位置を示す。
【0008】
<
11>
上記ヒンダードアミン化合物(c)が下記式(3−1)で表される化合物又は下記式(3−2)で表される構成成分を有する化合物である、<1>〜<
10>のいずれか1つに記載の内視鏡用可撓管。
【化1-3】
式中、R
6〜R
10は、それぞれ一般式(3)のR
6〜R
10と同義である。qは2以上の整数を示し、D
1はq価の連結基を示す。rは正の整数を示す。Qはs+2価の連結基を示す。sは1又は2を示す。
【0009】
<12>
トップコート層を有する、<1>〜<11>のいずれか1つに記載の内視鏡用可撓管。
<13>
上記ヒンダードアミン化合物(c)の含有量が、上記層A中の上記樹脂成分100質量部に対して0.5〜5質量部である、<1>〜<12>のいずれか1つに記載の内視鏡用可撓管。
<14>
<1>〜<13>のいずれか1つに記載の内視鏡用可撓管を具備する、内視鏡型医療機器。
<15>
樹脂成分としてのポリエステルエラストマー(a)と、含リン化合物(b1)及びチオエーテル化合物(b2)の少なくとも1種と、ヒンダードアミン化合物(c)とを含む、内視鏡用可撓管基材被覆用樹脂組成物であって、
上記含リン化合物(b1)が、
(1−1)下記一般式(1)で表される化合物、
(1−2)下記一般式(1)で表される化合物においてR
1、R
2又はR
3から水素原子1個を取り除いた1価の基が、2価以上の連結基又は単結合を介して、前記一般式(1)で表される別の1つ以上の化合物のR
1、R
2及びR
3の少なくとも1つと連結した構造の化合物、並びに、
(1−3)下記一般式(1)で表される化合物においてR
1、R
2及びR
3から選ばれる少なくとも1つの基から水素原子を合計で2個以上取り除いた2価以上の基が、2価以上の連結基又は単結合を介して、前記一般式(1)で表される別の1つ以上の化合物のR
1、R
2及びR
3の少なくとも1種と連結した構造の化合物
の少なくとも1種であり、かつ
前記樹脂成分の酸化を抑制する作用を有する化合物であり、
上記チオエーテル化合物(b2)が、
(2−1)下記一般式(2)で表される化合物、
(2−2)下記一般式(2)で表される化合物においてR
4又はR
5から水素原子1個を取り除いた1価の基が、2価以上の連結基又は単結合を介して、前記一般式(2)で表される別の1つ以上の化合物のR
4及びR
5の少なくとも1つと連結した構造の化合物、並びに、
(2−3)下記一般式(2)で表される化合物においてR
4及びR
5から選ばれる少なくとも1つの基から水素原子を合計で2個以上取り除いた2価以上の基が、2価以上の連結基又は単結合を介して、前記一般式(2)で表される別の1つ以上の化合物の
R4及びR5の少なくとも1つと連結した構造の化合物
の少なくとも1種であり、かつ
前記樹脂成分の酸化を抑制する作用を有する化合物である、内視鏡用可撓管基材被覆用樹脂組成物。
【化1-4】
一般式(1)において、R
1及びR
2は、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基又はハロゲン原子を示し、R
3はアルキル基又はアリール基を示す。R
1、R
2及びR
3の少なくとも2つは、2価以上の基又は単結合を介して互いに連結してもよい。
一般式(2)において、R
4及びR
5は、アルキル基を示す。R
4及びR
5は、2価以上の基又は単結合を介して互いに連結してもよい。
<16>
上記一般式(1)において、R
1及びR
2は、炭素数1〜50のアルキル基、炭素数6〜50のアリール基、炭素数1〜50のアルコキシ基、炭素数6〜50のアリールオキシ基又はハロゲン原子を示し、R
3は炭素数1〜50のアルキル基又は炭素数6〜50のアリール基を示し、R
1、R
2及びR
3の少なくとも2つは、2価以上の基又は単結合を介して互いに連結してもよく、上記一般式(2)において、R
4及びR
5は、炭素数1〜50のアルキル基を示し、R
4及びR
5は、2価以上の基又は単結合を介して互いに連結してもよい、<15>に記載の内視鏡用可撓管基材被覆用樹脂組成物。
<17>
上記(1−2)、上記(1−3)、上記(2−2)及び上記(2−3)における前記の2価以上の連結基の分子量が10〜1000である、<15>又は<16>に記載の内視鏡用可撓管基材被覆用樹脂組成物。
<18>
上記含リン化合物(b1)の含有量及び上記チオエーテル化合物(b2)の含有量の合計:上記ヒンダードアミン化合物(c)の含有量が質量比で、1:50〜50:1である、<15>〜<17>のいずれか1つに記載の内視鏡用可撓管基材被覆用樹脂組成物。
<19>
樹脂成分としてのポリエステルエラストマー(a)と、含リン化合物(b1)及びチオエーテル化合物(b2)の少なくとも1種と、ヒンダードアミン化合物(c)とを含む樹脂組成物(A)と、ポリエステルエラストマー(a1)、ポリウレタンエラストマー(d)及びポリアミドエラストマー(e)の少なくとも1種とを含む樹脂組成物(B)とを組み合わせた、内視鏡用可撓管基材被覆用樹脂組成物のセットであって、
上記含リン化合物(b1)が、
(1−1)下記一般式(1)で表される化合物、
(1−2)下記一般式(1)で表される化合物においてR
1、R
2又はR
3から水素原子1個を取り除いた1価の基が、2価以上の連結基又は単結合を介して、前記一般式(1)で表される別の1つ以上の化合物のR
1、R
2及びR
3の少なくとも1つと連結した構造の化合物、並びに、
(1−3)下記一般式(1)で表される化合物においてR
1、R
2及びR
3から選ばれる少なくとも1つの基から水素原子を合計で2個以上取り除いた2価以上の基が、2価以上の連結基又は単結合を介して、前記一般式(1)で表される別の1つ以上の化合物のR
1、R
2及びR
3の少なくとも1種と連結した構造の化合物
の少なくとも1種であり、かつ
前記樹脂成分の酸化を抑制する作用を有する化合物であり、
上記チオエーテル化合物(b2)が、
(2−1)下記一般式(2)で表される化合物、
(2−2)下記一般式(2)で表される化合物においてR
4又はR
5から水素原子1個を取り除いた1価の基が、2価以上の連結基又は単結合を介して、前記一般式(2)で表される別の1つ以上の化合物のR
4及びR
5の少なくとも1つと連結した構造の化合物、並びに、
(2−3)下記一般式(2)で表される化合物においてR
4及びR
5から選ばれる少なくとも1つの基から水素原子を合計で2個以上取り除いた2価以上の基が、2価以上の連結基又は単結合を介して、前記一般式(2)で表される別の1つ以上の化合物の
R4及びR5の少なくとも1つと連結した構造の化合物
の少なくとも1種であり、かつ
前記樹脂成分の酸化を抑制する作用を有する化合物である、内視鏡用可撓管基材被覆用樹脂組成物のセット。
【化2】
一般式(1)において、R
1及びR
2は、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基又はハロゲン原子を示し、R
3はアルキル基又はアリール基を示す。R
1、R
2及びR
3の少なくとも2つは、2価以上の基又は単結合を介して互いに連結してもよい。
一般式(2)において、R
4及びR
5は、アルキル基を示す。R
4及びR
5は、2価以上の基又は単結合を介して互いに連結してもよい。
<20>
上記一般式(1)において、R
1及びR
2は、炭素数1〜50のアルキル基、炭素数6〜50のアリール基、炭素数1〜50のアルコキシ基、炭素数6〜50のアリールオキシ基又はハロゲン原子を示し、R
3は炭素数1〜50のアルキル基又は炭素数6〜50のアリール基を示し、R
1、R
2及びR
3の少なくとも2つは、2価以上の基又は単結合を介して互いに連結してもよく、上記一般式(2)において、R
4及びR
5は、炭素数1〜50のアルキル基を示し、R
4及びR
5は、2価以上の基又は単結合を介して互いに連結してもよい、<19>に記載の内視鏡用可撓管基材被覆用樹脂組成物のセット。
<21>
上記(1−2)、上記(1−3)、上記(2−2)及び上記(2−3)における前記の2価以上の連結基の分子量が10〜1000である、<19>又は<20>に記載の内視鏡用可撓管基材被覆用樹脂組成物のセット。
<22>
上記含リン化合物(b1)の含有量及び上記チオエーテル化合物(b2)の含有量の合計:上記ヒンダードアミン化合物(c)の含有量が質量比で、1:50〜50:1である、<19>〜<21>のいずれか1つに記載の内視鏡用可撓管基材被覆用樹脂組成物のセット。
【0010】
本発明の説明において、樹脂層に含まれる「樹脂成分」とは、エラストマーを意味する。以下、「樹脂成分」を単に「樹脂」と称することもある。
本発明の説明において、特定の符号で示された置換基や連結基等(以下、置換基等という)が複数あるとき、あるいは複数の置換基等を同時若しくは択一的に規定するときには、それぞれの置換基等は互いに同一でも異なっていてもよいことを意味する。また、特に断らない場合であっても、複数の置換基等が隣接するときにはそれらが互いに連結したり縮環したりして環を形成していてもよい意味である。
本発明の説明において置換ないし無置換を明記していない置換基(連結基についても同様)については、本発明の効果を損なわない範囲で、その基に任意の置換基を有していてもよい意味である。これは置換ないし無置換を明記していない化合物についても同義である。
【発明の効果】
【0011】
本発明の内視鏡用可撓管は、成形時における樹脂層の欠陥を十分に抑制でき、所望の十分な耐薬品性を有し、またトップコート層と樹脂層とのより高度な密着性を実現することができる。本発明の内視鏡型医療機器は、上記の優れた特性を有する内視鏡用可撓管を具備する機器である。また、本発明の内視鏡用可撓管基材被覆用樹脂組成物及び内視鏡用可撓管基材被覆用樹脂組成物のセットは、上記特性を有する内視鏡用可撓管の樹脂層の構成材料として好適に用いることができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の内視鏡型医療機器の好ましい実施形態について、電子内視鏡を例に説明する。電子内視鏡には内視鏡用可撓管が組み込まれており(以下、内視鏡用可撓管を単に「可撓管」と称することもある)、医療用機器として広く用いられる。
図1に示した例において、電子内視鏡2は、体腔内に挿入される挿入部3と、挿入部3の基端部分に連設された本体操作部5と、プロセッサ装置や光源装置に接続されるユニバーサルコード6とを備えている。挿入部3は、本体操作部5に連設される可撓管3aと、そこに連設されるアングル部3bと、その先端に連設され、体腔内撮影用の撮像装置(図示せず)が内蔵された先端部3cとから構成される。挿入部3の大半の長さを占める可撓管3aは、そのほぼ全長にわたって可撓性を有し、特に体腔等の内部に挿入される部位はより可撓性に富む構造となっている。
【0014】
<可撓管>
可撓管3a(内視鏡用可撓管)は、
図2に示すように、最内側に金属帯片11aを螺旋状に巻回することにより形成される螺旋管11に、金属線を編組してなる筒状網体12を被覆して両端に口金13をそれぞれ嵌合した可撓管基材14とし、さらに、その外周面に樹脂層15が被覆された構成となっている。また、樹脂層15の外面に、耐薬品性のある例えばフッ素等を含有したコート層16をコーティングしている。螺旋管11は、1層だけ図示されているが、同軸に2層重ねにして構成してもよい。なお、樹脂層15及びコート層16は、層構造を明確に図示するため、可撓管基材14の径に比して厚く描いている。
【0015】
本実施形態に係る樹脂層15は、可撓管基材14の外周面を被覆する。樹脂層15は、可撓管基材14の軸回りの全周面を被覆する内層17と、内層17の軸回りの全周面を被覆する外層18とを積層した2層構成である。内層17の材料には、軟質樹脂が使用され、外層18の材料には、硬質樹脂が使用される。なお、本発明の別の好ましい実施形態には、樹脂層15が、1層(層A)で構成される態様及び3層以上(層Aを含む)で構成される態様がある。
【0016】
本実施形態において、樹脂層15は、可撓管基材14の長手方向(軸方向)においてほぼ均一な厚みで形成される。樹脂層15の厚みは、例えば、0.2mm〜1.0mmであり、可撓管3aの外径Dは、例えば、11〜14mmである。内層17及び外層18の厚みは、可撓管基材14の軸方向において、樹脂層15の全体の厚みに対して、各層17、18の厚みの割合が変化するように形成されている。具体的には、アングル部3bに取り付けられる可撓管基材14の一端14a側(先端側)は、樹脂層15の全厚みに対して、内層17の厚みの方が外層18の厚みよりも大きい。そして、一端14aから本体操作部5に取り付けられる他端14b側(基端側)に向かって、徐々に内層17の厚みが漸減し、他端14b側では、外層18の厚みの方が内層17の厚みよりも大きくなっている。
【0017】
本実施形態の一端14aにおいて、内層17の厚みの割合が最大であり、本実施形態の他端14bにおいて、外層18の厚み割合が最大である。内層17の厚み:外層18の厚みは、一端14aにおいて、9:1であり、他端14bにおいて、1:9である。両端14a及び14bの間は、内層17と外層18の厚みの割合が逆転するように変化させている。これにより、可撓管3aは、一端14a側と、他端14b側の硬度に差が生じ、一端14a側が軟らかく、他端14b側が硬くなるように軸方向において柔軟性が変化する。上記内層及び外層は、一端における厚みの割合は、さらに5:95〜40:60(内層:外層)であり、他端における厚みの割合が95:5〜60:40(内層:外層)の範囲にあることが好ましい。
【0018】
なお、内層17と外層18との厚みの割合は、上記例のように5:95〜95:5の範囲内とすることが好ましい。この範囲内とすることで、薄い方の樹脂の押し出し量もより精密に制御することができる。
【0019】
内層17及び外層18に用いる軟質樹脂及び硬質樹脂は、成形後の硬度を表す指標である100%モジュラス値の差が1MPa以上であることが好ましく、3MPa以上であることがより好ましい。溶融状態の樹脂の流動性を表す指標である150℃〜300℃の成形温度における溶融粘度の差は、2500Pa・s以下であることが好ましい。これにより、内層17及び外層18からなる樹脂層15は、良好な成形精度と、先端側と基端側において必要な硬度差の両方が確保される。
【0020】
<可撓管の製造方法>
樹脂層が内層と外層からなる2層構造の可撓管の製造方法の一例について以下に説明するが、樹脂層が1層あるいは3層以上の態様も、下記方法に準じて製造することができる。
【0021】
内層と外層との少なくとも2層で構成された樹脂層を形成するに当たり、
(i)上記内層を構成する、第1樹脂材料を準備し、他方
(ii)上記外層を構成する、第2樹脂材料を準備し、
(iii)上記第1樹脂材料と上記第2樹脂材料とを上記可撓管基材の周囲に溶融混練して押し出し成形し、上記樹脂層を上記可撓管基材に被覆することが好ましい。
【0022】
図3、
図4に基づき可撓管3a(
図1、
図2)の製造方法について説明すると、その樹脂層15を成形するために連続成形機を用いることが好ましい。連続成形機20は、ホッパ、スクリュー21a及び22aなどからなる周知の押し出し部21及び22と、可撓管基材14の外周面に樹脂層15を被覆成形するためのヘッド部23と、冷却部24と、連結可撓管基材31をヘッド部23へ搬送する搬送部25(供給ドラム28と、巻取ドラム29)と、これらを制御する制御部26とからなるものを用いることが好ましい。ヘッド部23は、ニップル32、ダイス33、及びこれらを固定的に支持する支持体34からなるものが好ましい。このような装置の構成例としては、例えば、特開2011−72391号公報の
図3〜5に記載の装置を使用することができる。
【0023】
ダイス33の内部を所定の成形温度に加熱することが好ましい。成形温度は、150℃〜300℃の範囲に設定されることが好ましい。装置内の加熱部を加熱温調することにより軟質樹脂39及び硬質樹脂40の各温度を高温にすることができるが、これに加え、スクリュー21a及び22aの各回転数が高い程、軟質樹脂39及び硬質樹脂40の各温度をさらに高くすることができ、それぞれの流動性を高めることができる。このとき、連結可撓管基材31の搬送速度を一定とし、溶融状態の軟質樹脂39及び硬質樹脂40の各吐出量を変更することにより、内層17及び外層18の各成形厚みを調整することができる。
【0024】
連続成形機20で連結可撓管基材31に樹脂層15を成形するときのプロセスについて説明すると、連続成形機20が成形工程を行うときは、押し出し部21及び22から溶融状態の軟質樹脂39及び硬質樹脂40がヘッド部23へと押し出される。これとともに、搬送部25が動作して連結可撓管基材31がヘッド部23へと搬送される。このとき、押し出し部21及び22は、軟質樹脂39及び硬質樹脂40を常時押し出してヘッド部23へ供給する状態であり、押し出し部21及び22からゲート35及び36へ押し出された軟質樹脂39及び硬質樹脂40は、エッジを通過して合流し、重なった状態で樹脂通路38を通って成形通路37へ供給される。これにより、軟質樹脂39を使用した内層17と硬質樹脂40を使用した外層18が重なった2層成形の樹脂層15が形成される。
【0025】
連結可撓管基材31は、複数の可撓管基材14が連結されたものであり、成形通路37内を搬送中に、複数の可撓管基材14に対して連続的に樹脂層15が成形される。1つの可撓管基材の一端14a側(先端側)から他端14b側(基端側)まで樹脂層15を成形するとき、押し出し部21及び22による樹脂の吐出を開始した直後は、内層17の厚みを厚くとる。そして、他端14b側へ向かう中間部分で徐々に外層18の厚みの割合を漸増させる。これにより、上記の傾斜的な樹脂層15の厚み割合となるように樹脂の吐出量を制御することが好ましい。
【0026】
ジョイント部材30は、2つの可撓管基材14の連結部であるので、制御部26は押し出し部21及び22の吐出量の切り替えに利用される。具体的には、制御部26は、1本の可撓管基材14の他端14b側(基端側)における厚みの割合から、次の可撓管基材14の一端14a側(先端側)の厚みの割合になるように、押し出し部21及び22の吐出量を切り替えることが好ましい。次の可撓管基材14の一端14a側から他端14b側まで樹脂層15を成形するときは、同様に一端側から他端側へ向かって徐々に外層の厚みが大きくなるように、押し出し部21及び22が制御されることが好ましい。
【0027】
最後端まで樹脂層15が成形された連結可撓管基材31は、連続成形機20から取り外された後、可撓管基材14からジョイント部材30が取り外され、各可撓管基材14に分離される。次に、分離された可撓管基材14に対して、樹脂層15の上にコート層16がコーティングされて、可撓管3aが完成する。完成した可撓管3aは、電子内視鏡の組立工程へ搬送される。
【0028】
(樹脂層)
本発明の可撓管の樹脂層は単層又は複層からなり、樹脂層の最外層が層A(ポリエステルエラストマー(a)(樹脂成分)と、含リン化合物(b1)及びチオエーテル化合物(b2)の少なくとも1種(含リン化合物(b1)及び/又はチオエーテル化合物(b2))と、ヒンダードアミン化合物(c)とを含有する層)からなることが好ましい。ここで樹脂層の「最外層」とは、樹脂層が1層構造である場合にはこの樹脂層を意味し、2層以上の複層構造である場合には、可撓管の樹脂層のうち最も表層側の樹脂層を意味する。本発明の可撓管は、更に外側の層(トップコート層など)を設けることが好ましい。
【0029】
本発明の可撓管は、上記樹脂層の構成を有することにより、成形時の気泡の発生に伴う樹脂層の欠陥が生じにくく、また所望の十分な耐薬品性を実現でき、またトップコート層と樹脂層との高度な密着性を実現することができる。この理由は定かではないが、含リン化合物(b1)及びチオエーテル化合物(b2)の少なくとも1種が、可撓管成形時等の熱による樹脂の劣化反応(酸化)を抑制することが一因と考えられる。すなわち、樹脂成分から生じた酸化劣化物をすみやかに分解することにより、ポリエステルエラストマー(a)等の樹脂のオリゴマー等への分解が抑制されることが一因と考えられる。
なお、本発明の可撓管の樹脂層が複層の場合、層Aが最外層でなくとも、すなわち、内層ないし中間層であっても、本発明の可撓管は上記作用効果を奏する。これは、内層ないし中間層のポリエステルエラストマー(a)等の樹脂の劣化反応を抑制することにより、内層ないし中間層内部での劣化物の生成若しくは気泡の発生又はこれらの両方を抑制することができ、外層への劣化物の泳ぎだし若しくは気泡による外層樹脂の形状の乱れ又はこれらの両方を抑制できることが一因と考えられる。
【0030】
−ポリエステルエラストマー(a)−
本発明において、ポリエステルエラストマー(a)は、可撓管の形成に適用可能な通常のポリエステルエラストマーを用いることができる。
すなわち、本発明に用いられるポリエステルエラストマー(a)は、結晶性ポリエステルからなるハードセグメントと、ポリエーテル又はポリエステルからなるソフトセグメントとにより構成された共重合体である。
ハードセグメントとしては、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート等が挙げられる。
ソフトセグメントとしては、ポリテトラメチレングリコール、ポリプロピレングリコール等のポリアルキレングリコール、ビスフェノールAエチレンオキサイド付加物、ビスフェノールAプロピレンオキサイド付加物及びポリカプロラクトン等のポリエステルなどが挙げられる。
本発明において「ポリエステルエラストマー」は、ウレタン結合及びアミド結合の少なくともいずれかを有してもよい。この場合、エステル結合、ウレタン結合及びアミド結合のうちエステル結合の数が最も多い。また、「ポリエステルエラストマー」は、分子中にウレタン結合を含まず、かつアミド結合を含まないことが好ましい。
ポリエステルエラストマー(a)は1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0031】
−含リン化合物(b1)−
含リン化合物(b1)は、下記一般式(1)で表される構造を有する化合物が好ましい。
【化3】
【0032】
一般式(1)において、R
1及びR
2は、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基又はハロゲン原子を示し、R
3はアルキル基又はアリール基を示す。R
1、R
2及びR
3の少なくとも2つは、2価以上の基又は単結合を介して互いに連結してもよい。
本発明において、一般式(1)で表される構造を有する化合物とは、一般式(1)で表される化合物の他、下記(a)及び(b)の化合物が含まれる。
【0033】
(a)R
1、R
2又はR
3から水素原子1個を取り除いた1価の基が、2価以上の基又は単結合を介して、一般式(1)で表される別の1つ以上(好ましくは1〜3の整数個)の化合物のR
1、R
2及びR
3の少なくとも1つ(R
1、R
2及び/又はR
3)と連結した構造の化合物、及び、
(b)R
1、R
2及びR
3から選ばれる少なくとも1つの基から水素原子を合計で2個以上取り除いた2価以上の基(例えば、水素原子を2個取り除いた場合は2価の基となり、3個取り除いた場合は3価の基となる。)が、2価以上の基又は単結合を介して、一般式(1)で表される別の1つ以上(好ましくは1〜3の整数個)の化合物のR
1、R
2及びR
3の少なくとも1種と連結した構造の化合物。
すなわち、本発明において一般式(1)で表される構造を有する化合物とは、一般式(1)で表される化合物と、一般式(1)で表される構造が1分子中に複数存在する構造の化合物とを含む意味である。
【0034】
上記一般式(1)におけるR
1、R
2及びR
3で示されるアルキル基は、直鎖、分岐、環状の置換若しくは無置換のアルキル基を示し、好ましくは炭素数1〜50、更に好ましくは炭素数1〜30、特に好ましくは炭素数1〜20である。好ましい例としては、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、シクロプロピル、ブチル、イソブチル、t−ブチル、s−ブチル、ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、t−ペンチル、ヘキシル、シクロヘキシル、ヘプチル、シクロペンチル、オクチル、2−エチルヘキシル、ノニル、デシル、ドデシル、テトラデシル、ヘキサデシル、オクタデシル、エイコシル、ドコシル、トリアコンチルを挙げることができる。より好ましくは、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、t−ブチル、s−ブチル、ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、ヘキシル、シクロヘキシル、オクチル、2−エチルヘキシル、ドデシル、ヘキサデシル、オクタデシルであり、さらに好ましくは、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、ブチル、t−ブチル、ペンチル、イソペンチル、ヘキシル、シクロヘキシル、オクチル、2−エチルヘキシル、ドデシル、ヘキサデシル、オクタデシルである。
【0035】
R
1、R
2及びR
3で示されるアルキル基はさらに置換基を有していてもよい。この置換基としては、ハロゲン原子、アルキル基(シクロアルキル基を含む)、アルケニル基(シクロアルケニル基、ビシクロアルケニル基を含む)、アルキニル基、アリール基、シアノ基、ヒドロキシ基、ニトロ基、カルボキシ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アシルオキシ基、カルバモイルオキシ基、アルコキシカルボニルオキシ基、アリールオキシカルボニルオキシ基、アミノ基(アニリノ基を含む)、アシルアミノ基、アミノカルボニルアミノ基、アルコキシカルボニルアミノ基、アリールオキシカルボニルアミノ基、アシル基、アリールオキシカルボニル基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基等が例として挙げられる。
【0036】
更に詳しくは、上記置換基としては、ハロゲン原子(例えば、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子)、アルキル基〔(直鎖、分岐、環状の置換若しくは無置換のアルキル基を示す。それらは、アルキル基(好ましくは炭素数1〜30のアルキル基、例えばメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、t−ブチル、n−オクチル、エイコシル、2−クロロエチル、2−シアノエチル、2―エチルヘキシル)、シクロアルキル基(好ましくは、炭素数3〜30の置換若しくは無置換のシクロアルキル基、例えば、シクロヘキシル、シクロペンチル、4−n−ドデシルシクロヘキシル)、ビシクロアルキル基(好ましくは、炭素数5〜30の置換若しくは無置換のビシクロアルキル基、つまり、炭素数5〜30のビシクロアルカンから水素原子を1個取り去った1価の基である。例えば、ビシクロ[1.2.2]ヘプタン−2−イル、ビシクロ[2.2.2]オクタン−3−イル)、更に環構造が多いトリシクロ構造なども包含するものである。以下に説明する置換基の中のアルキル基(例えばアルキルチオ基のアルキル基)もこのような概念のアルキル基を示す。)、アルケニル基(好ましくは炭素数2〜30の置換若しくは無置換のアルケニル基、例えば、ビニル、アリル、プレニル、ゲラニル、オレイル)、シクロアルケニル基(好ましくは、炭素数3〜30の置換若しくは無置換のシクロアルケニル基、つまり、炭素数3〜30のシクロアルケンの水素原子を1個取り去った1価の基である。例えば、2−シクロペンテン−1−イル、2−シクロヘキセン−1−イル)、ビシクロアルケニル基(置換若しくは無置換のビシクロアルケニル基、好ましくは、炭素数5〜30の置換若しくは無置換のビシクロアルケニル基、つまり二重結合を1個持つビシクロアルケンの水素原子を1個取り去った1価の基である。例えば、ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン−1−イル、ビシクロ[2.2.2]オクト−2−エン−4−イル)を包含するものである。〕、
【0037】
アルキニル基(好ましくは、炭素数2〜30の置換若しくは無置換のアルキニル基、例えば、エチニル、プロパルギル、トリメチルシリルエチニル)、アリール基(好ましくは炭素数6〜30の置換若しくは無置換のアリール基、例えばフェニル、p−トリル、ナフチル、m−クロロフェニル、o−ヘキサデカノイルアミノフェニル)、複素環基(好ましくは5又は6員の置換若しくは無置換の、芳香族若しくは非芳香族の複素環化合物から1個の水素原子を取り除いた1価の基であり、更に好ましくは、炭素数3〜30の5員若しくは6員の芳香族の複素環基である。例えば2−フラニル、2−チエニル、2−ピリミジニル、2−ベンゾチアゾリニル)、シアノ基、ヒドロキシ基、ニトロ基、カルボキシ基、アルコキシ基(好ましくは、炭素数1〜32の置換若しくは無置換のアルコキシ基、例えば、メトキシ、エトキシ、イソプロポキシ、t−ブトキシ、n−オクチルオキシ、2−メトキシエトキシ、アリールオキシ基(好ましくは、炭素数6〜30の置換若しくは無置換のアリールオキシ基例えば、フェノキシ、2−メチルフェノキシ、4−t−ブチルフェノキシ、3−ニトロフェノキシ、2−テトラデカノイルアミノフェノキシ)、シリルオキシ基(好ましくは、炭素数3〜20のシリルオキシ基、例えば、トリメチルシリルオキシ、t−ブチルジメチルシリルオキシ)、複素環オキシ基(好ましくは、炭素数2〜30の置換若しくは無置換の複素環オキシ基、1−フェニルテトラゾール−5−オキシ、2−テトラヒドロピラニルオキシ)、アシルオキシ基(好ましくはホルミルオキシ基、炭素数2〜30の置換若しくは無置換のアルキルカルボニルオキシ基、炭素数6〜30の置換若しくは無置換のアリールカルボニルオキシ基、例えば、ホルミルオキシ、アセチルオキシ、ピバロイルオキシ、ステアロイルオキシ、ベンゾイルオキシ、p−メトキシフェニルカルボニルオキシ)、カルバモイルオキシ基(好ましくは、炭素数1〜30の置換若しくは無置換のカルバモイルオキシ基、例えば、N,N−ジメチルカルバモイルオキシ、N,N−ジエチルカルバモイルオキシ、モルホリノカルボニルオキシ、N,N−ジ−n−オクチルアミノカルボニルオキシ、N−n−オクチルカルバモイルオキシ)、アルコキシカルボニルオキシ基(好ましくは、炭素数2〜30の置換若しくは無置換アルコキシカルボニルオキシ基、例えばメトキシカルボニルオキシ、エトキシカルボニルオキシ、t−ブトキシカルボニルオキシ、n−オクチルカルボニルオキシ、アリールオキシカルボニルオキシ基(好ましくは、炭素数7〜30の置換若しくは無置換のアリールオキシカルボニルオキシ基、例えば、フェノキシカルボニルオキシ、p−メトキシフェノキシカルボニルオキシ、p−n−ヘキサデシルオキシフェノキシカルボニルオキシ)、
【0038】
アミノ基(好ましくは、アミノ基、炭素数1〜30の置換若しくは無置換のアルキルアミノ基、炭素数6〜30の置換若しくは無置換のアニリノ基、例えば、アミノ、メチルアミノ、ジメチルアミノ、アニリノ、N−メチル−アニリノ、ジフェニルアミノ)、アシルアミノ基(好ましくは、ホルミルアミノ基、炭素数1〜30の置換若しくは無置換のアルキルカルボニルアミノ基、炭素数6〜30の置換若しくは無置換のアリールカルボニルアミノ基、例えば、ホルミルアミノ、アセチルアミノ、ピバロイルアミノ、ラウロイルアミノ、ベンゾイルアミノ、3,4,5−トリ−n−オクチルオキシフェニルカルボニルアミノ)、アミノカルボニルアミノ基(好ましくは、炭素数1〜30の置換若しくは無置換のアミノカルボニルアミノ、例えば、カルバモイルアミノ、N,N−ジメチルアミノカルボニルアミノ、N,N−ジエチルアミノカルボニルアミノ、モルホリノカルボニルアミノ)、アルコキシカルボニルアミノ基(好ましくは炭素数2〜30の置換若しくは無置換のアルコキシカルボニルアミノ基、例えば、メトキシカルボニルアミノ、エトキシカルボニルアミノ、t−ブトキシカルボニルアミノ、n−オクタデシルオキシカルボニルアミノ、N−メチルーメトキシカルボニルアミノ)、アリールオキシカルボニルアミノ基(好ましくは、炭素数7〜30の置換若しくは無置換のアリールオキシカルボニルアミノ基、例えば、フェノキシカルボニルアミノ、p−クロロフェノキシカルボニルアミノ、m−n−オクチルオキシフェノキシカルボニルアミノ)、スルファモイルアミノ基(好ましくは、炭素数0〜30の置換若しくは無置換のスルファモイルアミノ基、例えば、スルファモイルアミノ、N,N−ジメチルアミノスルホニルアミノ、N−n−オクチルアミノスルホニルアミノ)、アルキル及びアリールスルホニルアミノ基(好ましくは炭素数1〜30の置換若しくは無置換のアルキルスルホニルアミノ、炭素数6〜30の置換若しくは無置換のアリールスルホニルアミノ、例えば、メチルスルホニルアミノ、ブチルスルホニルアミノ、フェニルスルホニルアミノ、2,3,5−トリクロロフェニルスルホニルアミノ、p−メチルフェニルスルホニルアミノ)、
【0039】
スルファニル基、アルキルチオ基(好ましくは、炭素数1〜30の置換若しくは無置換のアルキルチオ基、例えばメチルチオ、エチルチオ、n−ヘキサデシルチオ)、アリールチオ基(好ましくは炭素数6〜30の置換若しくは無置換のアリールチオ、例えば、フェニルチオ、p−クロロフェニルチオ、m−メトキシフェニルチオ)、複素環チオ基(好ましくは炭素数2〜30の置換若しくは無置換の複素環チオ基、例えば、2−ベンゾチアゾリルチオ、1−フェニルテトラゾール−5−イルチオ)、スルファモイル基(好ましくは炭素数0〜30の置換若しくは無置換のスルファモイル基、例えば、N−エチルスルファモイル、N−(3−ドデシルオキシプロピル)スルファモイル、N,N−ジメチルスルファモイル、N−アセチルスルファモイル、N−ベンゾイルスルファモイル、N−(N’−フェニルカルバモイル)スルファモイル)、スルホ基、アルキル及びアリールスルフィニル基(好ましくは、炭素数1〜30の置換若しくは無置換のアルキルスルフィニル基、6〜30の置換若しくは無置換のアリールスルフィニル基、例えば、メチルスルフィニル、エチルスルフィニル、フェニルスルフィニル、p−メチルフェニルスルフィニル)、
【0040】
アルキル及びアリールスルホニル基(好ましくは、炭素数1〜30の置換若しくは無置換のアルキルスルホニル基、炭素数6〜30の置換若しくは無置換のアリールスルホニル基、例えば、メチルスルホニル、エチルスルホニル、フェニルスルホニル、p−メチルフェニルスルホニル)、アシル基(好ましくはホルミル基、炭素数2〜30の置換若しくは無置換のアルキルカルボニル基、炭素数7〜30の置換若しくは無置換のアリールカルボニル基、炭素数4〜30の置換若しくは無置換の炭素原子でカルボニル基と結合している複素環カルボニル基、例えば、アセチル、ピバロイル、2−クロロアセチル、ステアロイル、ベンゾイル、p−n−オクチルオキシフェニルカルボニル、2―ピリジルカルボニル、2−フリルカルボニル)、アリールオキシカルボニル基(好ましくは、炭素数7〜30の置換若しくは無置換のアリールオキシカルボニル基、例えば、フェノキシカルボニル、o−クロロフェノキシカルボニル、m−ニトロフェノキシカルボニル、p−t−ブチルフェノキシカルボニル)、アルコキシカルボニル基(好ましくは、炭素数2〜30の置換若しくは無置換のアルコキシカルボニル基、例えば、メトキシカルボニル、エトキシカルボニル、t−ブトキシカルボニル、n−オクタデシルオキシカルボニル)、
【0041】
カルバモイル基(好ましくは、炭素数1〜30の置換若しくは無置換のカルバモイル、例えば、カルバモイル、N−メチルカルバモイル、N,N−ジメチルカルバモイル、N,N−ジ−n−オクチルカルバモイル、N−(メチルスルホニル)カルバモイル)、アリール及び複素環アゾ基(好ましくは炭素数6〜30の置換若しくは無置換のアリールアゾ基、炭素数3〜30の置換若しくは無置換の複素環アゾ基、例えば、フェニルアゾ、p−クロロフェニルアゾ、5−エチルチオ−1,3,4−チアジアゾール−2−イルアゾ)、イミド基(好ましくは、N−スクシンイミド、N−フタルイミド)、ホスフィノ基(好ましくは、炭素数2〜30の置換若しくは無置換のホスフィノ基、例えば、ジメチルホスフィノ、ジフェニルホスフィノ、メチルフェノキシホスフィノ)、ホスフィニル基(好ましくは、炭素数2〜30の置換若しくは無置換のホスフィニル基、例えば、ホスフィニル、ジオクチルオキシホスフィニル、ジエトキシホスフィニル)、ホスフィニルオキシ基(好ましくは、炭素数2〜30の置換若しくは無置換のホスフィニルオキシ基、例えば、ジフェノキシホスフィニルオキシ、ジオクチルオキシホスフィニルオキシ)、ホスフィニルアミノ基(好ましくは、炭素数2〜30の置換若しくは無置換のホスフィニルアミノ基、例えば、ジメトキシホスフィニルアミノ、ジメチルアミノホスフィニルアミノ)、シリル基(好ましくは、炭素数3〜30の置換若しくは無置換のシリル基、例えば、トリメチルシリル、t−ブチルジメチルシリル、フェニルジメチルシリル)が挙げられる。
【0042】
上記の置換基の中で、水素原子を有するものは、この水素原子が更に上記の置換基で置換されていてもよい。そのような置換基の例としては、アルキルカルボニルアミノスルホニル基、アリールカルボニルアミノスルホニル基、アルキルスルホニルアミノカルボニル基、アリールスルホニルアミノカルボニル基、メチルスルホニルアミノカルボニル基、p−メチルフェニルスルホニルアミノカルボニル基、アセチルアミノスルホニル基、ベンゾイルアミノスルホニル基が挙げられる。
【0043】
R
1、R
2及びR
3で示されるアリール基は、置換若しくは無置換のアリール基を示し、好ましくは炭素数6〜50、更に好ましくは炭素数6〜30、特に好ましくは炭素数6〜20である。好ましい例としては、フェニル、2−メチルフェニル、3−メチルフェニル、4−メチルフェニル、2−エチルフェニル、4−エチルフェニル、2,4−ジメチルフェニル、2,6−ジメチルフェニル、2,4,6−トリメチルフェニル、1−ナフチル、2−ナフチル、2−クロロフェニル、3−クロロフェニル、4−クロロフェニル、2−メトキシフェニル、3−メトキシフェニル、4−メトキシフェニル、2−ベンジルフェニル、4−ベンジルフェニル、2−メチルカルボニルフェニル、4−メチルカルボニルフェニルを挙げることができる。
R
1、R
2及びR
3で示されるアリール基は更に好ましくは、フェニル、2−メチルフェニル、4−メチルフェニル、2−エチルフェニル、4−エチルフェニル、2,4−ジメチルフェニル、2,6−ジメチルフェニル、2,4,6−トリメチルフェニル、1−ナフチル、2−ナフチル、2−クロロフェニル、4−クロロフェニル、2−メトキシフェニル、3−メトキシフェニル、4−メトキシフェニル、2−ベンジルフェニル、又は4−ベンジルフェニルであり、特に好ましくは、フェニルである。
【0044】
R
1、R
2及びR
3で示される上述したアリール基はさらに置換基を有していてもよい。置換基の例としては、前述のR
1、R
2及びR
3で示されるアルキル基が有してもよい置換基を挙げることができる。
【0045】
R
1及びR
2で示されるアルコキシ基は、直鎖、分岐、環状の置換若しくは無置換のアルコキシ基を示す。好ましくは炭素数1〜50、更に好ましくは炭素数1〜30、特に好ましくは炭素数1〜20である。好ましい例としては、メトキシ、エトキシ、n−プロポキシ、イソプロポキシ、シクロプロポキシ、ブトキシ、イソブトキシ、t−ブトキシ、s−ブトキシ、ペンチルオキシ、イソペンチルオキシ、ネオペンチルオキシ、t−ペンチルオキシ、ヘキシルオキシ、シクロヘキシルオキシ、ヘプチルオキシ、シクロペンチルオキシ、オクチルオキシ、2−エチルヘキシルオキシ、ノニルオキシ、デシルオキシ、ドデシルオキシ、テトラデシルオキシ、ヘキサデシルオキシ、オクタデシルオキシ、エイコシルオキシ、ドコシルオキシ、トリアコンチルオキシを挙げることができる。更に好ましくは、メトキシ、エトキシ、n−プロポキシ、イソプロポキシ、ブトキシ、イソブトキシ、t−ブトキシ、s−ブトキシ、ペンチルオキシ、イソペンチルオキシ、ネオペンチルオキシ、ヘキシルオキシ、シクロヘキシルオキシ、オクチルオキシ、2−エチルヘキシルオキシ、ドデシルオキシ、ヘキサデシルオキシ、オクタデシルオキシであり、特に好ましくは、メトキシ、エトキシ、n−プロポキシ、イソプロポキシ、t−ブトキシ、ペンチルオキシ、イソペンチルオキシ、ヘキシルオキシ、シクロヘキシルオキシ、オクチルオキシ、2−エチルヘキシルオキシ、ドデシルオキシ、ヘキサデシルオキシ、オクタデシルオキシである。
R
1及びR
2で示される上述したアルコキシ基は、さらに置換基を有していてもよい。置換基の例としては、前述のR
1、R
2及びR
3で示されるアルキル基が有してもよい置換基を挙げることができる。
【0046】
R
1及びR
2で示されるアリールオキシ基は、置換若しくは無置換のアリールオキシ基を示し、好ましくは炭素数6〜50、更に好ましくは炭素数6〜30、特に好ましくは炭素数6〜20である。好ましい例としては、フェノキシ、2−メチルフェノキシ、3−メチルフェノキシ、4−メチルフェノキシ、2−エチルフェノキシ、4−エチルフェノキシ、2,4−ジメチルフェノキシ、2,4−ジ−t−ブチルフェノキシ、2,6−ジ−t−ブチルフェノキシ、2,6−ジメチルフェノキシ、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノキシ、2,4,6−トリメチルフェノキシ、2,4,6−トリ−t−ブチルフェノキシ、1−ナフチルオキシ、2−ナフチルオキシ、2−クロロフェノキシ、3−クロロフェノキシ、4−クロロフェノキシ、2−メトキシフェノキシ、3−メトキシフェノキシ、4−メトキシフェノキシ、2−ベンジルフェノキシ、4−ベンジルフェノキシ、2−メチルカルボニルフェノキシ、4−メチルカルボニルフェノキシを挙げることができる。
更に好ましくは、フェニル、2,4−ジ-t-ブチルフェノキシ、2,4,6−トリ−t−ブチルフェノキシなどを挙げることができる。
R
1及びR
2で示される上述したアリールオキシ基は、さらに置換基を有していてもよい。置換基の例としては、前述のR
1、R
2及びR
3で示されるアルキル基が有してもよい置換基を挙げることができる。
【0047】
一般式(1)において、樹脂と含リン化合物(b1)との相溶性の点からは、R
1及びR
2は、アルコキシ基又はアリールオキシ基が好ましく、R
3は、アルキル基又はアリール基が好ましい。
【0048】
一般式(1)で表される構造を有する化合物において、連結基としての上述した2価以上の基としては、前述のR
1、R
2及びR
3で示されるアルキル基で列挙した置換基において、1個以上の水素原子を取り除いた2価以上の基又はこれらの基の2つ以上を組み合わせた基を挙げることができる(なお、置換基から水素原子を1個取り除けば2価の基、2個取り除けば3価の基となる。)。この2価以上の基は2〜6価の基であることが好ましく、2〜4価の基であることがより好ましい。また上記の2価以上の基は有機基であることが好ましい。
上記の2価以上の基は、さらに置換基を有していてもよい。置換基の例としては、前述のR
1、R
2及びR
3で示されるアルキル基が有してもよい置換基を挙げることができる。
上記の2価以上の基の分子量は10〜1000であることが好ましい。
【0049】
上記の2価以上の基又は単結合の中でも、単結合、又は、アミノ基、アルキル基、アリール基、ビス-アリール基(アリールアリール基)、アリールアルキルアリール基、アリールオキシアリール基、アルコキシアルキル基、アルコキシアリール基、若しくはアルキルアリール基から1個以上の水素原子を取り除いた2価以上の基が好ましい。
【0050】
一般式(1)で表される構造を有する化合物が、一般式(1)で表される構造を1分子中に複数存在する化合物である場合、1分子中に有するリン原子の数は、2個以上20個以下であることが好ましく、2個以上10個以下であることがより好ましく、2個以上5個以下であることが更に好ましい。
【0051】
以下に、上記一般式(1)で表される化合物の具体例を示す。但し、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0055】
なお、一般式(1)で表される構造を有する化合物として、特表2011−527357号公報に記載の亜リン酸エステル化合物も好適に使用できる。
含リン化合物(b1)は1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0056】
−チオエーテル化合物(b2)−
チオエーテル化合物(b2)は、下記一般式(2)で表される構造を有する化合物が好ましい。
【化7】
【0057】
一般式(2)において、R
4及びR
5は、アルキル基を示す。R
4及びR
5は、2価以上の基又は単結合を介して互いに連結してもよい。
本発明において一般式(2)で表される構造を有する化合物とは、一般式(2)で表される化合物の他、下記(c)及び(d)の化合物が含まれる。
【0058】
(c)R
4又はR
5から水素原子1個を取り除いた1価の基が、2価以上の基又は単結合を介して、一般式(2)で表される別の1つ以上(好ましくは1〜3の整数個)の化合物のR
4及びR
5の少なくとも1つ(R
4及び/又はR
5)と連結した構造の化合物、及び、
(d)R
4及びR
5から選ばれる少なくとも1つの基から水素原子を合計で2個以上取り除いた2価以上の基(例えば、水素原子を2個取り除いた場合は2価の基となり、3個取り除いた場合は3価の基となる。)が、2価以上の基又は単結合を介して、一般式(2)で表される別の1つ以上(好ましくは1〜3の整数個)の化合物の
R4及びR5の少なくとも1つと連結した構造の化合物。
すなわち、本発明において一般式(2)で表される構造を有する化合物とは、一般式(2)で表される化合物と、一般式(2)で表される構造が1分子中に複数存在する構造の化合物とを含む意味である。
【0059】
R
4及びR
5で示されるアルキル基は、直鎖、分岐、環状の置換若しくは無置換のアルキル基を示す。好ましくは炭素数1〜50、更に好ましくは炭素数2〜30、特に好ましくは炭素数2〜20である。好ましい例としては、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、シクロプロピル、ブチル、イソブチル、t−ブチル、s−ブチル、ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、t−ペンチル、ヘキシル、シクロヘキシル、ヘプチル、シクロペンチル、オクチル、2−エチルヘキシル、ノニル、デシル、ドデシル、テトラデシル、ヘキサデシル、オクタデシル、エイコシル、ドコシル、トリアコンチルを挙げることができる。更に好ましくは、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、t−ブチル、s−ブチル、ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、ヘキシル、シクロヘキシル、オクチル、2−エチルヘキシル、ドデシル、ヘキサデシル、オクタデシルであり、特に好ましくは、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、ブチル、t−ブチル、ペンチル、イソペンチル、ヘキシル、シクロヘキシル、オクチル、2−エチルヘキシル、ドデシル、ヘキサデシル、オクタデシルである。
【0060】
R
4及びR
5で示される、置換アルキル基の置換基の例としては、前述の一般式(1)におけるR
1、R
2及びR
3で示されるアルキル基が有してもよい置換基を挙げることができる。
【0061】
R
4及びR
5で示される置換アルキル基のなかでも、アルコキシカルボニルアルキル基が好ましい。上記アルコキシカルボニルアルキル基におけるアルコキシカルボニル基の炭素数は、好ましくは炭素数2〜50、更に好ましくは炭素数5〜30、特に好ましくは炭素数9〜20である。
【0062】
一般式(2)で表される構造を有する化合物において、連結基としての上記2価以上の基は、上記一般式(1)で説明した、連結基としての2価以上の基と同様であり、好ましい範囲も同様である。
【0063】
以下に、上記一般式(2)で表される化合物の具体例を示す。但し、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0065】
チオエーテル化合物(b2)は1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0066】
−ヒンダードアミン化合物(c)−
上記ヒンダードアミン化合物(c)は下記一般式(3)で表される構造部位を有する化合物であることが好ましい。
【0068】
一般式(3)中、R
6〜R
9は水素原子又は炭素数1〜12(好ましくは炭素数1〜8、より好ましくは炭素数1〜5)のアルキル基を示す。R
6〜R
9で示されるアルキル基の具体例としては、メチル、エチル、n−ブチル、イソプロピル、s−ブチル、t−ブチル、t−ペンチル、t−ヘキシル及びt−オクチルが挙げられる。R
6〜R
9は1級の(直鎖の)アルキル基であることが好ましく、より好ましくはR
6〜R
9の全てが1級の(直鎖の)アルキル基(特に好ましくはメチル基)である。
【0069】
一般式(3)中、R
10は水素原子、炭素数1〜18(好ましくは炭素数1〜10、より好ましくは炭素数1〜5、さらに好ましくは炭素数1〜3、さらに好ましくは炭素数1又は2)のアルキル基、又は−OR
11を示し、R
11は水素原子又は炭素数1〜20(好ましくは炭素数1〜12)の直鎖、分岐ないし環状のアルキル基を示す。R
10は、なかでも水素原子であることが、一層高い耐薬品性を示すため好ましい。
【0070】
一般式(3)中、*は結合部位を示す。
【0071】
一般式(3)で表される構造部位を有する化合物は、好ましくは下記一般式(3−1)で表される化合物又は(3−2)で表される構成成分(好ましくは繰り返し単位)を有する化合物が好ましい。
【0073】
式中、R
6〜R
10は、それぞれ上記一般式(3)中のR
6〜R
10と同義であり、好ましい範囲も同じである。qは2以上の整数を示し、D
1はq価の連結基を示す。sは1又は2を示す。rは正の整数を示し、後記重合度の値の範囲が好ましい。Qはs+2価の連結基を示し、芳香族炭化水素基を含む基、イミノ基(NR
N)を含む基、トリアジン連結基を含む基等が挙げられる。R
Nの具体例は、水素原子、炭素数1〜20のアルキル基、一般式(3)で表されるピペリジル基含有基が挙げられる。
D
1で示される連結基の分子量は、100〜1000が好ましく、180〜600がより好ましい。また、Qで示される連結基の分子量は、100〜1000が好ましく、180〜600がより好ましい。
【0074】
一般式(3)で表される構造部位を有する化合物は、より好ましくは、下記式(3−A)〜(3−C)、(3−E)、(3−G)及び(3−H)のいずれかで表される化合物、下記式(3−D)で表される繰り返し単位を有するポリマー又はオリゴマー(好ましくは式(3D1)〜(3D3)のいずれかの繰り返し単位を有するポリマー又はオリゴマー)並びに下記式(3−F)で表される繰り返し単位を有するポリマー又はオリゴマーである。
【0077】
上記各式中R
31は一般式(3)中のR
10と同義であり、好ましい形態も同じである。
R
32は水素原子又は炭素数が1〜20(好ましくは炭素数1〜12、より好ましくは炭素数1〜8、さらに好ましくは炭素数1〜6)のアルキル基を示す。L
31は単結合又は炭素数1〜20(好ましくは炭素数1〜10)のアルキレン基を示す。R
Nは一般式(3−2)におけるR
Nと同義である。nは1〜20(好ましくは1〜10)の整数を示す(なお、式(3D3)において、nは4〜20(好ましくは4〜10)の整数を示す)。
式(3−G)中、Rのうち、少なくとも1つはHではなく、トリアジンを含む基である。式(3−H)中、波線は結合部位であることを示す。
【0078】
一般式(3)で表される構造部位を有する化合物がポリマー又はオリゴマーである場合、上記繰り返し単位の数(重合度)は2〜100であることが好ましく、2〜50であることがより好ましく、2〜10であることがさらに好ましい。また、ポリマー又はオリゴマーの末端構造に特に制限はないが、例えば、水素原子、置換又は無置換のアミノ基、置換又は無置換のトリアジル基とすることができる。
【0079】
ヒンダードアミン化合物(c)は1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0080】
樹脂層の層A(好ましくは最外層)を構成する樹脂成分中、ポリエステルエラストマー(a)の含有量は、50質量%以上であることが好ましく、より好ましくは55質量%以上、さらに好ましくは60質量%以上であり、さらに好ましくは65質量%以上である。
また、層Aを構成する樹脂成分中のポリエステルエラストマー(a)の含有量は100質量%でもよいが、95質量%以下とすることが好ましく、90質量%以下とすることがより好ましく、85質量%以下とすることがさらに好ましい。層A中のポリエステルエラストマー(a)の含有量を上記好ましい範囲内とし、残部に軟質樹脂をブレンドすることで、より優れた可撓性を付与することができる。
【0081】
樹脂層の層Aは樹脂成分としてポリエステルエラストマー(a)のみを有してもよく、樹脂成分としてポリエステルエラストマー(a)以外の成分を含んでもよい。樹脂層の層Aが樹脂成分としてポリエステルエラストマー(a)以外の成分を含むとき、この樹脂成分中においてポリエステルエラストマー(a)を除く残部には、より軟質の樹脂としてポリウレタンエラストマー(d)及びポリアミドエラストマー(e)の少なくとも1種が含まれることが好ましい。
【0082】
上記ポリウレタンエラストマー(d)としては、可撓管の形成に適用可能な通常のポリウレタンエラストマーを用いることができる。上記ポリアミドエラストマー(e)もまた、可撓管の形成に適用可能な通常のポリアミドエラストマーを用いることができる。なお、本発明において上記ポリウレタンエラストマー(d)はアミド結合を有しないことが好ましく、上記ポリアミドエラストマー(e)は、ウレタン結合を有しないことが好ましい。
【0083】
ポリウレタンエラストマー(d)及びポリアミドエラストマー(e)の少なくとも1種を含むことで、層Aを含む樹脂層とトップコート層との密着性を向上させることができる。樹脂層の層Aの樹脂成分中に、ポリウレタンエラストマー(d)及びポリアミドエラストマー(e)の少なくとも1種を含む場合において、ポリウレタンエラストマー(d)及びポリアミドエラストマー(e)の少なくとも1種の含有量は合計で、5質量%以上であることが好ましく、より好ましくは10質量%以上、さらに好ましくは20質量%以上である。また、樹脂層の層Aの樹脂成分中のポリウレタンエラストマー(d)及びポリアミドエラストマー(e)の少なくとも1種の含有量は合計で、50質量%以下であることが好ましく、より好ましくは40質量%以下、さらに好ましくは35質量%以下である。ポリウレタンエラストマー(d)及びポリアミドエラストマー(e)の少なくとも1種を上記含有量で含むことにより、好ましい弾発性と可撓性を維持するとともに、薬品に対する耐久性を維持しながら、上記密着性を向上させることができる。
ポリウレタンエラストマー(d)は1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。また、ポリアミドエラストマー(e)は1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0084】
樹脂層の層Aの好ましい態様では、上記含リン化合物(b1)及びチオエーテル化合物(b2)の少なくとも1種(上記含リン化合物(b1)及び/又はチオエーテル化合物(b2))を合計で、樹脂成分100質量部に対して、0.01質量部以上含有することが好ましく、0.05質量部以上含有することがより好ましい。また、上記含リン化合物(b1)及びチオエーテル化合物(b2)の少なくとも1種の含有量は合計で、樹脂成分100質量部に対して7質量部以下が好ましく、5質量部以下がより好ましい。含リン化合物(b1)及びチオエーテル化合物(b2)の少なくとも1種の含有量の合計が上記範囲内にあることで、これら化合物の樹脂中からの泳ぎだしをより抑えた、所望の効果を奏する層Aを得ることができる。
【0085】
樹脂層の層Aの好ましい態様では、上記ヒンダードアミン化合物(c)を、樹脂成分100質量部に対して、0.01質量部以上含有することが好ましく、より好ましくは0.1質量部以上であり、さらに好ましくは0.5質量部以上である。上限は、7質量部以下が好ましく、5質量部以下がより好ましい。ヒンダードアミン化合物(c)の含有量が上記範囲内にあることで、この化合物の樹脂中からの泳ぎだしをより抑えた、所望の効果を奏する層Aを得ることができる。
【0086】
樹脂層の層Aの好ましい態様では、上記含リン化合物(b1)の含有量及び上記チオエーテル化合物(b2)の少なくとも1種の含有量の合計(上記含リン化合物(b1)の含有量及び/又は上記チオエーテル化合物(b2)の含有量):上記ヒンダードアミン化合物(c)の含有量が質量比で、1:50〜50:1であることが好ましく、1:30〜20:1であることがより好ましく、1:20〜10:1であることが特に好ましい。これらの添加剤の含有量が質量比で上記範囲内にあることで、添加剤間の拮抗作用を抑制し、耐薬品性等をより向上させることができるからである。
【0087】
上記樹脂層が複層から成る場合、層A(好ましくは最外層)以外の少なくとも1層がポリエステルエラストマー(a)、ポリウレタンエラストマー(d)及びポリアミドエラストマー(e)の少なくとも1種(ポリエステルエラストマー(a)、ポリウレタンエラストマー(d)及び/又はポリアミドエラストマー(e))を含有することが好ましい(以下、この層を「層B」という。)。層Aを含む樹脂層とトップコート層との密着性を向上させることができるため、層Bは少なくともポリウレタンエラストマー(d)を含有することがより好ましい。層Bはポリウレタンエラストマー(d)を主成分とすることが好ましく、この場合、ポリウレタンエラストマー(d)の含有量は層Bの樹脂成分中50質量%以上であることが好ましく、より好ましくは70質量%以上、さらに好ましくは80質量%以上、さらに好ましくは90質量%以上である。層B中の樹脂成分のすべてがポリウレタンエラストマー(d)であることも好ましいが、そうでない場合、残部はポリアミドエラストマー(e)及び/又はポリエステルエラストマー(a)の少なくとも1種(ポリアミドエラストマー(e)及び/又はポリエステルエラストマー(a))で構成されることが好ましい。
また、層Bは主成分がポリアミドエラストマー(e)であってもよい。例えば、ポリアミドエラストマー(e)を含有する層Bにおいて、ポリアミドエラストマー(e)の含有量を樹脂成分中50質量%以上としてもよく、70質量%以上とすることもできる。層B中の樹脂成分のすべてをポリアミドエラストマー(e)とすることもできるが、そうでない場合、残部はポリウレタンエラストマー(d)及びポリエステルエラストマー(a)の少なくとも1種(ポリウレタンエラストマー(d)及び/又はポリエステルエラストマー(a))で構成されることが好ましく、ポリウレタンエラストマー(d)で構成されることがより好ましい。
【0088】
上記の層Bは、最外層として用いるとき、含リン化合物(b1)及びチオエーテル化合物(b2)の少なくとも1種と、ヒンダードアミン化合物(c)を含むことが好ましい。これにより、可撓管の耐薬品性をより向上させることができる。層Bを内層ないし中間層に用いる場合には、耐薬品性よりも、外層との密着性等を考慮しこれらを含まないことが好ましい場合がある。層Bを最外層に用いる場合には、含リン化合物(b1)、チオエーテル化合物(b2)及びヒンダードアミン化合物(c)の好ましい含有量等は、上記層Aと同様である。
【0089】
(内視鏡用可撓管基材被覆用樹脂組成物)
本発明の可撓管は、本発明の内視鏡用可撓管基材被覆用樹脂組成物を用いて作製されることが好ましい。本発明の内視鏡用可撓管基材被覆用樹脂組成物は、ポリエステルエラストマー(a)と、含リン化合物(b1)及びチオエーテル化合物(b2)の少なくとも1種と、ヒンダードアミン化合物(c)とを含む。
【0090】
(内視鏡用可撓管基材被覆用樹脂組成物のセット)
本発明の可撓管のうち、樹脂層が複層であるものは、本発明の内視鏡用可撓管基材被覆用樹脂組成物のセット(以下、内視鏡用可撓管基材被覆用樹脂組成物のセットを単に「樹脂組成物のセット」とも称する。)を用いて作製されることが好ましい。本発明の樹脂組成物のセットは、ポリエステルエラストマー(a)と、含リン化合物(b1)及びチオエーテル化合物(b2)の少なくとも1種と、ヒンダードアミン化合物(c)とを含む本発明の樹脂組成物(A)と、ポリエステルエラストマー(a1)、ポリウレタンエラストマー(d)及びポリアミドエラストマー(e)の少なくとも1種(ポリエステルエラストマー(a1)、ポリウレタンエラストマー(d)及び/又はポリアミドエラストマー(e))とを含む樹脂組成物(B)とが、別々により分けられて含まれるセットである。
本発明の樹脂組成物のセットにおいて、ポリエステルエラストマー(a)と、ポリエステルエラストマー(a1)は同種でもよく、異種であってもよい。
【0091】
上記樹脂組成物(A)は、本発明の可撓管において、樹脂層の層Aを形成するために用いられる。一方、上記樹脂組成物(B)は、上記樹脂層の層A以外の層を構成するために用いられる。上記樹脂組成物(B)は、本発明の効果を損なわない範囲内で樹脂組成物(A)が含有する成分を含んでよい。
【0092】
上記ポリエステルエラストマー(a)と、含リン化合物(b1)及びチオエーテル化合物(b2)の少なくとも1種と、ヒンダードアミン化合物(c)とを含む樹脂組成物(A)における好ましい含有量比等は、上記層Aにおける各成分の好ましい含有量比等と同じである。
【0093】
本発明の可撓管は、内層1層と外層1層からなる2層構造の樹脂層を備えることが好ましい。この場合、内層は上記樹脂層の層Bで構成され、外層は上記樹脂層の層Aで構成される。それぞれの樹脂層の配合は下記のとおりであることが好ましい。
【0095】
PE:ポリエステルエラストマー(a)
PU:ポリウレタンエラストマー(d)
PA:ポリアミドエラストマー(e)
HA:ヒンダードアミン化合物(c)
P:含リン化合物(b1)
SE:チオエーテル化合物(b2)
( )は任意要素
【0096】
−物性−
適用されるエラストマーの分子量は特に限定されないが、耐薬品性向上の観点から、分子量1万〜100万が好ましく、分子量2万〜50万がより好ましく、分子量3万〜30万が特に好ましい。
本発明において、エラストマーの分子量は、特に断らない限り、重量平均分子量を意味する。重量平均分子量は、GPCによってポリスチレン換算の分子量として計測することができる。このとき、GPC装置HLC−8220(商品名、東ソー社製)を用い、溶離液としては、ポリエステルエラストマーの場合はクロロホルム、ポリウレタンエラストマーの場合はNMP(N−メチル−2−ピロリドン)、ポリアミドエラストマーの場合はm−クレゾール/クロロホルム(湘南和光純薬社製)を用いカラムはG3000HXL+G2000HXL(いずれも商品名、東ソー社製)を用い、23℃で流量は1mL/minで、RIで検出することとする。
【0097】
上記層B(好ましくは内層)の物性は好適に設定されていることが好ましい。例えば、A硬さ:JIS−K7215は、40以上であることが好ましく、50以上であることがより好ましく、60以上であることが特に好ましい。上限側の範囲は、98以下であることが好ましく、95以下であることがより好ましく、90以下であることが特に好ましい。
上記層Bの貯蔵弾性率E’は1MPa以上であることが好ましく、2MPa以上であることがより好ましく、3MPa以上であることが特に好ましい。上限側の範囲は、150MPa以下であることが好ましく、100MPa以下であることがより好ましく、50MPa以下であることが特に好ましい。上記層Bの損失弾性率E”は0.1MPa以上であることが好ましく、0.3MPa以上であることがより好ましく、0.5MPa以上であることが特に好ましい。上限側の範囲は、20MPa以下であることが好ましく、10MPa以下であることがより好ましく、5MPa以下であることが特に好ましい。上記層Bの損失正接は0.01以上であることが好ましく、0.03以上であることがより好ましく、0.05以上であることが特に好ましい。上限側の範囲は、1以下であることが好ましく、0.5以下であることがより好ましく、0.3以下であることが特に好ましい。
なお、本明細書において粘弾性に関する値は、特に断らない限り、25℃の値とする。測定方法は、JIS−K7244−4に準拠する。
【0098】
樹脂層の層Aの物性は好適に設定されていることが好ましい。例えば、D硬さ:JIS−K7215は、40以上であることが好ましく、45以上であることがより好ましく、55以上であることが特に好ましい。上限側の範囲は、90以下であることが好ましく、85以下であることが特に好ましい。
樹脂層の層Aの貯蔵弾性率E’は1MPa以上であることが好ましく、5MPa以上であることがより好ましく、10MPa以上であることが特に好ましい。上限側の範囲は、1GPa以下であることが好ましく、500MPa以下であることがより好ましく、300MPa以下であることが特に好ましい。樹脂層の層Aの損失弾性率E”は0.1MPa以上であることが好ましく、0.5MPa以上であることがより好ましく、1MPa以上であることが特に好ましい。上限側の範囲は、100MPa以下であることが好ましく、90MPa以下であることがより好ましく、80MPa以下であることが特に好ましい。樹脂層の層Aの損失正接は0.01以上であることが好ましく、0.03以上であることがより好ましく、0.05以上であることが特に好ましい。上限側の範囲は、1以下であることが好ましく、0.5以下であることがより好ましく、0.3以下であることが特に好ましい。
【0099】
上記層Bの100%モジュラス値は、0.5MPa以上であることが好ましく、1.0MPa以上であることがより好ましく、1.5MPa以上であることが特に好ましい。上限側の範囲は、20MPa以下であることが好ましく、15MPa以下であることがより好ましく、10MPa以下であることが特に好ましい。
樹脂層の層Aの100%モジュラス値は、1.0MPa以上であることが好ましく、1.5MPa以上であることがより好ましく、2.0MPa以上であることが特に好ましい。上限側の範囲は、80MPa以下であることが好ましく、70MPa以下であることがより好ましく、65MPa以下であることが特に好ましい。
なお、本明細書においてモジュラス値は、特に断らない限り、25℃の値とする。測定方法は、JIS−K7311に準拠する。
【0100】
上記樹脂層は、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−プロパノール(特定溶媒)に可溶であることが好ましい。上記特定溶媒に可溶であるとは、20℃で5質量%の溶解度を示すことを意味する。このように、特定溶媒に可溶であるとは、樹脂が三次元(架橋)構造を有していないという技術的意義を有し、内視鏡型医療機器用可撓管の樹脂層として可撓性を発揮するため好ましい。
【0101】
上記樹脂層は、それを構成するエラストマーが実質的に架橋していないことが好ましい。ここで、実質的に架橋していないとは、架橋されていないことのほか、樹脂がNMR等で検出可能な範囲で分岐構造を有していないことを言う。
本実施形態に係る樹脂層(特に第2層、外層)のエラストマーが実質的に架橋されていないことにより、内視鏡型医療機器用可撓管の樹脂層として可撓性と折り曲げ耐久性という性能を発揮するため好ましい。
【0102】
[トップコート層]
本実施形態の可撓管には、トップコート層(コート層)16が適用されている。トップコート層の材料は特に制限されないが、ウレタン塗料、アクリル塗料、フッ素塗料、シリコーン塗料、エポキシ塗料、ポリエステル塗料などが適用される。本実施形態の利点である樹脂層との密着性が顕著になり、かつ耐薬品性に優れる観点からは、ウレタン塗料、アクリル塗料、フッ素塗料が好ましい。トップコート層の被膜は通常の方法によればよいが、上記のコーティング成分を所定の溶媒に溶解させた溶液に必要により硬化剤を含有させ、硬化させる態様が挙げられる。硬化処理の仕方は、100〜200℃加熱することなどが挙げられる。
本実施形態におけるトップコート層を使用する主な目的は、可撓管表面の保護や艶出し、滑り性の付与、そして耐薬品性の付与である。そのため、トップコート層としては弾性率が高く、かつ表面が平滑になり、耐薬品性に優れるものが好ましい。トップコート層単独での貯蔵弾性率E’は1MPa以上であることが好ましく、5MPa以上であることがより好ましく、10MPa以上であることが特に好ましい。上限側の範囲は、1GPa以下であることが好ましく、500MPa以下であることがより好ましく、300MPa以下であることが特に好ましい。貯蔵弾性率E’を上記下限値以上とすることで、トップコート層としての表面保護機能を発揮することができ、また、上記上限値以下とすることで、得られる可撓管の可撓性を維持することができる。
【0103】
上記実施形態においては、軟質樹脂層(層B)を内層に、硬質樹脂層(層A)を外層に配して2層成形の樹脂層を形成しているが、硬質樹脂層を内層に、軟質樹脂層を外層に配してもよい。上記実施形態では、2層構成の樹脂層を例に説明しているが、別の実施形態では、樹脂層は2層以上の多層構成であってもよい。両層は互いに接して積層していなくてもよく、その間に他の機能層が介在していてもよい。
上記実施形態においては、撮像装置を用いて被検体の状態を撮像した画像を観察する電子内視鏡を例に上げて説明しているが、本発明はこれに限るものではなく、光学的イメージガイドを採用して被検体の状態を観察する内視鏡にも適用することができる。
【0104】
本発明に係る可撓管は、内視鏡用途に限らず、内視鏡型医療機器に対して広く適用することができる。例えば、内視鏡の先端にクリップやワイヤーを装備したもの、あるいはバスケットやブラシを装備した器具に適用することもでき、その優れた効果を発揮する。なお、内視鏡型医療機器とは、上述した内視鏡を基本構造とする医療機器のほか、遠隔操作型の医療機器など、可撓性を有し、体内に導入して用いられる医療ないし診療機器を広く含む意味である。
【実施例】
【0105】
以下に、本発明について実施例を通じてさらに詳細に説明するが、本発明がこれらにより限定して解釈されるものではない。
【0106】
(実施例・比較例)
下記表1に記載の配合(質量部)組成の樹脂組成物(それぞれ外層用及び内層用の樹脂混合物)を準備し、テクノベル社製の二軸混練機(製品名:KZW15−30MG)を用いてバレル設定温度220℃で、スクリュー回転数100rpmで溶融混練処理を行い、吐出された溶融状態の樹脂ストランドを水槽で冷却後、ペレタイザーでペレット形状の試料を作製した。
【0107】
得られたペレット状試料を、
図3及び
図4に示した連続成形機に導入して、内視鏡用可撓管を作製した。具体的には、直径5.0mm、長さ120cmの可撓管基材に下記表1の内層用樹脂混合物(組成物)及び外層用樹脂混合物(組成物)をこの順で被覆した。樹脂層の厚さは0.3mmであり、先端と後端の内外層比率は下記表2に記載のとおりとした。内層を有さない可撓管において、内外層比率は内層:外層=0:100として記載した。得られた可撓管を用いて、下記の試験を行った。結果を表2に示す。
【0108】
[過酢酸耐性]
可撓管から樹脂を引き剥がし、1cm×10cmサイズで切り出して試験片とし、50℃の0.3%過酢酸水溶液に150時間浸漬した。試験片を、よく表面を水洗した後に23℃×50%RH(相対湿度)で24時間乾燥後、テンシロン万能材料試験機RTF-1210(商品名、エー・アンド・デイ社製)を用いて伸度50%、100%、200%(伸度100%は2倍に伸ばしたことを意味する)での引張試験を行った。以下の基準で評価した。「B」以上が合格である。結果を表2に示した。
−評価基準−
A:伸度200%の引張試験でも破断しなかったもの
B:伸度100%の引張試験にて破断せず、伸度200%の引張試験にて破断したもの
C:伸度50%の引張試験では破断せず、伸度100%の引張試験にて破断したもの
D:伸度50%の引張試験にて破断したもの
【0109】
[成形時の発泡]
製造した可撓管の外層を目視で観察し、以下の基準で評価した。「B」以上が合格である。結果を表2に記載した。
−評価基準−
A:製造した可撓管100本のすべてにおいて、外層の成形時に、外層に発泡が生じなかった。
B:製造した可撓管100本のうち1〜3本の可撓管において、外層の成形時の発泡に起因する外層の途切れが観察された。
C:製造した可撓管100本のうち4本以上9本以下の可撓管において、外層の成形時の発泡に起因する外層の途切れが観察された。
D:製造した可撓管100本のうち10本以上の可撓管において、外層の成形時の発泡に起因する外層の途切れが観察された。
【0110】
[密着性評価]
得られた樹脂混合物を用いてシート状成形物を作製した。結果を表2に記載した。
(シート作製条件)
ミニテストプレス(東洋精機社製)を用いて、外層用の樹脂組成物を220℃に加熱し、10MPaで30秒間加圧し、厚さ0.5mm、10cm角のシートを成形した。
(トップコート層作製条件)
得られたシートに以下の条件でトップコート層を付与した。
トップコート層の材料として、オブリガートSS0068(商品名、AGCコーテック社製)主剤、硬化剤(AGCコーテック社製)を用い、これを、厚さ100μmのドクターブレードにより、上記成形したシートに塗布した。塗布したサンプルを室温(25℃)で乾燥後、80℃で10時間さらに乾燥し、トップコート層付き樹脂シートを作製した。トップコート層の厚さは0.02mmであった。
(トップコート層付き樹脂シートの過酢酸浸漬試験)
得られたトップコート付き樹脂シートを50℃の0.3%過酢酸水溶液に50時間浸漬した。表面を水洗した後に23℃×50%RHで24時間乾燥後、以下の密着性評価を実施した。
(密着性評価)
得られた過酢酸浸漬試験済みのトップコート層付き樹脂シートに対して、トップコート層の側にポリエステルテープ(3M社製、型番850、縦5cm、横1.5cm)を貼り付けたのちに、ポリエステルテープをはがし、樹脂シートからトップコートがはがれるかどうかを評価した。以下の評価基準において、「B」以上が合格である。
−評価基準−
A:試験を10回実施し、10回すべてにおいてトップコート層のはがれは生じなかった。
B:試験を10回実施し、10回のうち1〜3回においてトップコート層のはがれが生じた。
C:試験を10回実施し、10回のうち4〜9回においてトップコート層のはがれが生じた。
D:試験を10回実施し、10回すべてにおいてトップコート層のはがれが生じた。
【0111】
【表1】
【0112】
【表2】
【0113】
<表中の用語の説明>
エラストマー
(1)ポリエステルエラストマー(かっこ内はD硬さ:JIS−K7215)
PE−1:ハイトレル 7247(D72)、商品名、 東レデュポン社製
(重量平均分子量:8.1万、100%モジュラス 60.7MPa)
PE−2:ハイトレル 6347(D63)、商品名、東レデュポン社製
(重量平均分子量:8.2万、100%モジュラス 50.1MPa)
PE−3:アーニテル UM622(D62)、商品名、DSMジャパンエンジニアリング社製
(重量平均分子量:11.6万、100%モジュラス 45.0MPa)
PE−4:ぺルプレン E450B(D78)、商品名、東洋紡社製
(重量平均分子量:12.1万、100%モジュラス 70.3MPa)
【0114】
(2)ポリウレタンエラストマー(かっこ内はA硬さ:JIS−K7215)
PU−1:ミラクトラン E585(A85)、商品名、日本ミラクトラン社製
(重量平均分子量:9.9万、100%モジュラス 6.4MPa)
PU−2:エラストラン ET 1080(A80)、商品名、BASF社製
(重量平均分子量:12.4万、100%モジュラス 4.0MPa)
【0115】
(3)ポリアミドエラストマー(かっこ内はA硬さ:JIS−K7215)
PA−1:ぺバックス2533(A75)、商品名、アルケマ社製
(重量平均分子量:20.8万、100%モジュラス 4.4MPa)
PA−2:ぺバックス 3533(A83)、商品名、アルケマ社製
(重量平均分子量:17.1万、100%モジュラス 6.0MPa)
【0116】
ヒンダードアミン化合物(HA)
HA−1:アデカスタブ LA−63P(商品名) アデカ社製
【化13】
式中、波線は結合部位であることを示す。以下の式においても同様。式中、nは、1又は2を示す。
【0117】
HA−2:チマソーブ944FDL(商品名) BASF社製
【化14】
式中、nは、2〜5の整数を示す。
【0118】
HA−3:チヌビン 765(商品名) BASF社製
【化15】
【0119】
HA−4:フレイムスタブ NOR 116(商品名) BASF社製
【化16】
【0120】
HA−5:チマソーブ2020FDL(商品名) BASF社製
【化17】
式中、tは2〜4の整数を示す。nBuは、n−ブチル基を示す。
【0121】
含リン化合物
P−1:アデカスタブPEP−36(商品名) アデカ社製
【化18】
【0122】
P−2:アデカスタブHP−10(商品名) アデカ社製
【化19】
【0123】
S−1:アデカスタブ AO−412S(商品名) アデカ社製
【化20】
【0124】
S−2:アデカスタブ AO−503(商品名) アデカ社製
【化21】
【0125】
【表3】
【0126】
表2から明らかなように、本発明の規定を満たさない樹脂層を有する可撓管は、少なくともいずれか1つの評価項目が不合格であった。これに対して、本発明の可撓管は、成形時における樹脂層の欠陥を十分に抑制でき、所望の十分な耐薬品性を有し、またトップコート層と樹脂層とのより高度な密着性を実現することができることがわかる。
【0127】
本発明をその実施態様とともに説明したが、我々は特に指定しない限り我々の発明を説明のどの細部においても限定しようとするものではなく、添付の請求の範囲に示した発明の精神と範囲に反することなく幅広く解釈されるべきであると考える。
【0128】
本願は、2017年6月30日に日本国で特許出願された特願2017−129905に基づく優先権を主張するものであり、これはここに参照してその内容を本明細書の記載の一部として取り込む。