(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記遮光部は、前記真空紫外光の進行方向に延びて筒状に形成されると共に前記光照射部及び前記基板間において前記基板寄りの位置に設けられた筒状遮光部材と、板状に形成された板状遮光部材とを有し、
前記板状遮光部材は、前記筒状遮光部材の下方に設けられている、請求項1記載の光照射装置。
前記複数の光照射部は、照射する前記真空紫外光の照度値、照射する前記真空紫外光の光線角度、及び前記基板との離間距離の少なくとも一つが互いに異なる、請求項1〜14のいずれか一項記載の光照射装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
直径300mm程度の基板に対して上述した光を照射する工程を実施する場合には、照射距離を短くしつつ照射強度を担保する観点から、複数のランプが基板上に配置される。ここで、各ランプは点光源であり、ウェハにおける照射範囲は円形となる。照射範囲が円形である場合には、各ランプの照射範囲が重ならないように各ランプを配置すると、光が照射されない(あるいは照射強度が弱くなる)部分が生じてしまう。一方で、照射強度が弱くなる部分が生じないようにするためには、各ランプの照射範囲の一部を重ねる必要があり、この場合には重なる部分の照射強度が極端に強くなることが問題となる。以上のように、基板に対して複数のランプにより光を照射する構成においては、基板の照射面に均一に光を照射することが難しい。
【0005】
そこで、本開示は、基板の照射面における光照射分布の均一性を向上させることが可能な光照射装置を説明する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様に係る光照射装置は、光源を頂点とした円錐状の光路をとる真空紫外光を基板に向けて照射する複数の光照射部と、複数の光照射部から照射される真空紫外光の照射範囲の重なり部分を遮光するように、各光照射部に対応して設けられた遮光部と、を備え、遮光部は、真空紫外光の進行方向から見て多角形状に形成されている。
【0007】
本開示の光照射装置では、円錐状の光路をとって基板に向けて照射される複数の真空紫外光の重なり部分が、各光照射部に対応して設けられた多角形状の遮光部によって遮光されている。ここで、基板における照射範囲が円形となる複数の点光源から基板に光が照射される場合、各光の照射範囲が重ならないように各点光源を配置すると、照射範囲が円形であることから光が照射されない部分(あるいは照射強度が弱くなる部分)が生じてしまう。一方で、光が照射されない部分(あるいは照射強度が弱くなる部分)が生じないようにするためには、各点光源から照射される光の照射範囲の一部を重ねる必要があり、この場合には重なる部分の照射強度が極端に強くなることが問題となる。このように、従来、基板に対して複数の光源から光を照射する構成においては、基板の照射面に均一に光を照射することが困難であった。この点、本開示の光照射装置では、複数の真空紫外光の重なり部分を遮光する遮光部が真空紫外光の進行方向からみて多角形状に形成されている。これにより、基板における各真空紫外光の照射範囲が多角形状となる。このことで、照射範囲が円形である場合と異なり、照射範囲が重ならないようにしつつ光が照射されない部分(あるいは照射強度が弱くなる部分)が生じることを抑制できる。すなわち、本開示の光照射装置によれば、基板の照射面における光照射分布の均一性を向上させることができる。
【0008】
遮光部は、真空紫外光の進行方向に延びて筒状に形成された筒状遮光部材を有していてもよい。光照射部に対応して設けられた遮光部が高さ方向(真空紫外光の進行方向)に伸びて筒状に形成されていることにより、当該遮光部が対応する光照射部以外の光照射部(例えば隣の光照射部)からの真空紫外光の影響を適切に排除することができる。すなわち、他の光照射部の真空紫外光と照射範囲が重なることを適切に防止し、基板の照射面における光照射分布の均一性をより向上させることができる。
【0009】
遮光部の基板との離間距離を調整する離間距離調整部を更に備えていてもよい。遮光部(特に筒状の遮光部)が設けられることにより、当該遮光部の影が基板の照射面に投影されてしまい、当該影によって基板の照射面における光照射分布の均一性が悪化するおそれがある。この点、遮光部の高さ(基板との離間距離)が離間距離調整部によって調整されることにより、例えば隣り合う遮光部からの基板への照射光の広がりを調整することができ、照射光を互いに重ねあうこと等により影となる部分を解消することができる。
【0010】
光照射部は、重水素ランプを含んで構成されていてもよい。重水素ランプが用いられることにより、波長が200nm以下の真空紫外光に加えて、波長が200nmよりも大きい近紫外光についても基板に対して照射することができる。このように、重水素ランプから照射される光のスペクトルの波長域は比較的広いため、例えば基板の表面にレジストパターンが形成されている場合において、当該レジストパターンは様々な波長の光のエネルギーを受けることとなる。これにより、レジストパターンの表面においては様々な反応が起こることによって流動性が高くなり、その結果、当該表面の荒れの改善効果を向上させることができる。
【0011】
重水素ランプは、波長が200nm以下、例えば、波長が160nm以下の真空紫外光を発生させてもよい。重水素ランプでは、例えば160nm以下が連続スペクトルのピークの波長となるため、当該160nm以下の真空紫外光を発生させることによって、例えば基板の表面にレジストパターンが形成されている場合において、表面の荒れの改善効果をより向上させることができる。
【0012】
複数の光照射部は、照射する真空紫外光の照度値、照射する真空紫外光の光線角度、及び基板との離間距離の少なくとも一つが互いに異なっていてもよい。このように、複数の光照射部について、照度値、光線角度、又は光照射部の高さ(基板との離間距離)を互いに異ならせることによって、照射分布を積極的に調整することができ、照射状況に応じて、基板の照射面における光照射分布の均一性をより向上させることができる。
【0013】
遮光部の上方において真空紫外光を拡散させる拡散部を更に備えていてもよい。照射光は光源(ランプ)の内部電極構造に由来して強度のばらつきが存在する。この点、遮光部の上方に拡散部が設けられていることにより、照射光のばらつきが平均化され、基板の照射面における光照射分布の均一性をより向上させることができる。
【0014】
基板の照射面を光照射部に対向させた状態で基板を回転させる基板回転部を更に備えていてもよい。これにより、照射場所が変化することとなるので、照射面における光照射分布の均一性をより向上させることができる。
【0015】
遮光部又は基板を、基板の照射面に平行な方向に往復移動させる平行移動部を更に備えていてもよい。この場合においても、照射場所が変化することとなるので、照射面における光照射分布の均一性をより向上させることができる。なお、照射面に平行な方向に往復移動させる態様においては、基板を回転させる態様と異なり、照射場所が変化しない部分(例えば回転中心)が生じにくい。また、遮光部は、真空紫外光の反射率が90%以下の材質によって構成されていてもよい。
【0016】
筒状遮光部材は、前記光照射部及び前記基板間の略全域にわたって、前記進行方向に延びていてもよい。これにより、他の光照射部の真空紫外光と照射範囲が重なることをより適切に抑制することができる。
【0017】
筒状遮光部材は、光照射部及び基板間において、基板寄りの位置に設けられていてもよい。真空紫外光を用いる場合には、真空ポンプによって真空引きをして処理室内を低酸素状態とする必要がある。筒状遮光部材が光照射部及び基板間の略全域に設けられている場合には、処理室内において真空ポンプによる排気が行いにくくなり、上述した真空引きを円滑に行うことができないおそれがある。この点、筒状遮光部材が基板寄りの領域に(のみ)設けられることにより、筒状遮光部材を光照射部及び基板間の略全域に設ける場合と比較して、上述した真空引きを行いやすくすることができる。
【0018】
筒状遮光部材は、前記光照射部及び前記基板間の全長の半分以下の長さであってもよい。これにより、処理室内の真空引きをより行いやすくすることができる。
【0019】
遮光部は、板状に形成された板状遮光部材を有していてもよい。このように、板状の薄い部材が遮光部材として用いられることにより、処理室内での真空ポンプによる排気を阻害することなく、適切に処理室内の真空引きを行うことができる。
【0020】
遮光部は、真空紫外光の進行方向に延びて筒状に形成されると共に光照射部及び基板間において基板寄りの位置に設けられた筒状遮光部材と、板状に形成された板状遮光部材とを有し、板状遮光部材は、筒状遮光部材の下方に設けられていてもよい。このように筒状遮光部材と板状遮光部材を組み合わせて用いることにより、筒状遮光部材によって真空紫外光の照射範囲が重なることを適切に抑制しつつ、筒状遮光部材の下方に設けられた板状遮光部材によって真空紫外光の照射範囲を適切に限定することができる。また、板状遮光部材を用いることによって、筒状遮光部材の長さを短くすることができ、真空ポンプによる排気を適切に行い処理室内の真空引きを適切に行うことができる。
【0021】
板状遮光部材は、筒状遮光部材の下端に接するように設けられていてもよい。これにより、筒状遮光部材と板状遮光部材との間から真空紫外光が漏れ出すことを抑制し、真空紫外光の照射範囲が重なることを適切に抑制することができる。
【0022】
板状遮光部材は、進行方向から見て、光を通す領域の大きさが筒状遮光部材よりも小さくてもよい。これにより、板状遮光部材によって真空紫外光の照射範囲を適切に限定することができる。
【0023】
板状遮光部材は、筒状遮光部材の下端から離間するように設けられていてもよい。これにより、真空ポンプによる真空引きをより適切に行うことができる。
【発明の効果】
【0024】
本開示によれば、基板の照射面における光照射分布の均一性を向上させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明の実施形態について図面を参照して説明するが、以下の本実施形態は、本発明を説明するための例示であり、本発明を以下の内容に限定する趣旨ではない。説明において、同一要素又は同一機能を有する要素には同一符号を用いることとし、重複する説明は省略する。
【0027】
[基板処理装置の構成]
図1は、本実施形態の基板処理装置を示す模式図(縦断側面図)である。
図1に示す基板処理装置1は、ウェハW(基板)に対して所定の処理を行う装置である。ウェハWは、円板状を呈するが、円形の一部が切り欠かれていたり、多角形などの円形以外の形状を呈するウェハを用いてもよい。ウェハWは、例えば、半導体基板、ガラス基板、マスク基板、FPD(Flat Panel Display)基板その他の各種基板であってもよい。本実施形態では、基板処理装置1が、ウェハWに光を照射することにより、ウェハWの表面に形成されたレジストパターンの表面の荒れを改善する装置であるとして説明する。なお、当該レジストパターンは、ウェハWに形成されたレジスト膜が露光され、現像されることにより形成されるものである。
【0028】
図1に示すように、基板処理装置1は、処理容器21と、載置台20と、筐体43と、光照射装置4と、を備える。なお、
図1においては、光照射装置4に含まれる構成の一部のみを示している。
【0029】
処理容器21は、例えば大気雰囲気中に設けられた真空容器であり、搬送機構(不図示)によって搬送されたウェハWを収納する容器である。基板処理装置1では、処理容器21内にウェハWが収納された状態でウェハWに対する処理が行われる。処理容器21の側壁には、搬送口22が形成されている。搬送口22は、処理容器21に対してウェハWを搬入出するための開口である。搬送口22は、ゲートバルブ23によって開閉される。
【0030】
載置台20は、処理容器21内に設けられた円形の台である。載置台20は、その中心にウェハWの中心が重なるようにしてウェハWを水平に載置する。載置台20を厚さ方向(垂直方向)に貫通するようにして、例えば3本の昇降ピン(不図示)が設けられている。当該昇降ピンは、その下端が昇降機構(不図示)に接続されており、昇降機構によって垂直方向に移動(昇降)可能とされている。昇降ピンは、昇降機構によって上昇した状態において、その上端が載置台20の上面よりも上方に達し、搬送口22を介して処理容器21内に進入した搬送機構(不図示)との間でウェハWの受け渡しを行う。
【0031】
筐体43は、処理容器21の上部に設けられている。筐体43は、光照射装置4の複数の重水素ランプ40(光照射部)を収容している。光照射装置4は、レジストパターンの表面の荒れ(凸凹)の改善を目的とした、ウェハWの表面への光の照射に係る構成である。以下、
図2及び
図3も参照しながら、光照射装置4の詳細について説明する。
【0032】
[光照射装置の構成]
図2は、
図1の基板処理装置1の光照射装置4を示す模式図である。
図3は、光照射装置4の照射範囲を示す説明図(照射範囲を平面視した図)である。
図2に示すように、光照射装置4は、複数の重水素ランプ40(光照射部)と、複数の多角形筒50(筒状遮光部材)と、を備えている。
【0033】
重水素ランプ40は、波長が200nm以下の真空紫外光をウェハWに向けて照射する。より詳細には、重水素ランプ40は、例えば115nm〜400nmの波長の光、すなわち115nm〜400nmの連続スペクトルをなす光を照射する。上述したように、重水素ランプ40から照射される光には真空紫外光(Vacuum Ultra Violet Light:VUV光)、すなわち波長が10nm〜200nmである光が含まれる。また、重水素ランプ40から照射される光には、真空紫外光(真空紫外線)の他に、波長が200nmよりも大きい近紫外光(近紫外線)についても含まれる。本実施形態の重水素ランプ40から照射される光の連続スペクトルのピークの波長は、例えば160nm以下、150nm以上である。
【0034】
このように、重水素ランプ40から照射される光のスペクトルの波長域は比較的広いため、ウェハW表面のレジストパターンは様々な光のエネルギーを受けることとなり、その結果として当該レジストパターンの表面では様々な反応が起こる。具体的には、レジスト膜を構成する分子中の様々な位置における化学結合が切断されて様々な化合物が生成されるため、光照射前にレジスト膜に存在していた分子が持つ配向性が解消され、レジスト膜の表面自由エネルギーが低下し、内部応力が低下する。すなわち、光源として重水素ランプ40を用いることにより、レジストパターンの表面の流動性が高くなり、その結果としてウェハWの表面の荒れの改善効果を向上させることができる。
【0035】
ここで、レジスト膜に照射される光については、波長が大きいほどレジスト膜の深層へ到達しやすい。この点、重水素ランプ40から照射される光のスペクトルのピークの波長は、上述したように真空紫外光の帯域(10nm〜200nm)に含まれているため、重水素ランプ40から照射される光について、比較的大きい波長を持つ光の強度は小さい。このため、重水素ランプ40から照射される光でレジスト膜の深層へ到達するものは少なく、レジスト膜の深層においては上記の分子の結合の切断を抑えることができる。すなわち、光源として重水素ランプ40を用いることにより、レジストパターンにおいて光照射により反応する領域を表面側に限定することができる。
【0036】
重水素ランプ40は、ガウシアン分布の光と比較して強度分布がフラットなトップハット型の光を生成する。なお、トップハット型の光であっても、強度分布が完全にフラットになっているわけではなく、中央側(光源41の直下)から離れるにしたがって光の強度が弱くなる。重水素ランプ40は、点光源である光源41(
図1参照)から出射される広がりを持った光を照射し、具体的には、光源41を頂点とした円錐状の光路をとる真空紫外光をウェハWに向けて照射する。このように、重水素ランプ40から照射される光は、遮光等を行わない場合には、照射面において照射範囲が円形となるものであるが、後述する多角形筒50によって一部が遮光されることにより、ウェハWの照射面においては、照射範囲が多角形状(本実施形態の例では六角形状)となる(詳細は後述)。なお、
図1及び
図2等においては、真空紫外光の光路のうち最も外側の光路が一点鎖線で示されている。
【0037】
光照射装置4は、複数の重水素ランプ40を備えている。各重水素ランプ40は、ウェハWの照射面における光照射分布が均一になるように、所定の間隔で配置されている。例えば、
図3に示すように、ウェハWの中心の直上に1つの重水素ランプ40が設けられるとともに、円板状のウェハWの円周上(詳細には円周の少し内側)に沿って等間隔で6個の重水素ランプ40が設けられる。なお、重水素ランプ40と多角形筒50との間には、シャッター(不図示)が設けられていてもよい。なお、複数の重水素ランプ40は、互いに、照射する真空紫外光の照度値、照射する真空紫外光の光線角度、及びウェハWとの離間距離が同一とされる。
【0038】
多角形筒50は、複数の重水素ランプ40から照射される真空紫外光の照射範囲の重なりを遮光するように、各重水素ランプ40に対応して設けられた遮光部である。多角形筒50は、重水素ランプ40から照射される真空紫外光の端部領域の発光を除去(吸収、カット)することにより、複数の重水素ランプ40から照射される真空紫外光の照射範囲の重なりを遮光するものであってもよい。多角形筒50が重水素ランプ40に対応して設けられているとは、多角形筒50が重水素ランプ40に一対一で対応し、重水素ランプ40の光源41の直下に設けられていることをいう(
図3参照)。より具体的には、多角形筒50は、真空紫外光の進行方向から見て、その中心軸上に光源41が位置するように設けられている。多角形筒50は、重水素ランプ40及びウェハW間の略全域にわたって、真空紫外光の進行方向に延びている。重水素ランプ40及びウェハW間の略全域とは、少なくとも重水素ランプ40及びウェハW間の全長の半分以上の長さである。多角形筒50は、重水素ランプ40及びウェハW間の略全域にわたって延びていることによって、他の重水素ランプ40の真空紫外光と照射範囲が重なることを適切に抑制することができる。
【0039】
多角形筒50は、真空紫外光の進行方向から見て多角形状、具体的には正六角形状に形成されている(
図3参照)。
図3に示すように、複数の多角形筒50は、真空紫外光の進行方向から見ると、隣り合う多角形筒50同士が隙間なく密着して設けられている。より詳細には、複数の多角形筒50のうち、ウェハWの中心の上方に位置する重水素ランプ40に対応して設けられた多角形筒50は、正六角形の各辺が他の多角形筒50(ウェハWの円周上に沿って等間隔で設けられた重水素ランプ40に対応して設けられた6個の多角形筒50)の対向する辺と接して設けられている。また、複数の多角形筒50のうち、ウェハWの円周上に沿って等間隔で設けられた重水素ランプ40に対応して設けられた6個の多角形筒50は、1辺が中央の多角形筒50の対向する辺と接するとともに、2辺が上記円周上で隣り合う多角形筒50の隣り合う辺と接している。
【0040】
また、多角形筒50は、真空紫外光の進行方向に伸びて筒状に形成されている(
図2参照)。多角形筒50は、真空紫外光に対して反射率が低く吸収(カット)率が高いものであればどのような材質によって構成されていてもよい。反射率が低い材質とは、例えば真空紫外光の反射率が90%以下、例えば60%以下の材質をいう。具体的には、多角形筒50の材質としては、SUS又はアルミ等の基材の表面に反射率を低減させる有機膜を塗布したもの、上述した基材の表面に凸凹面を形成するためのブラスト処理、粗面化処理を施したもの等を用いることができる。なお、粗面化処理とは、例えば基材であるアルミに対して行うアルマイト処理等である。真空雰囲気であることを考慮すると上述したSUS又はアルミ等の金属を基材としてもよいが、低アウトガスの樹脂材料等を基材として用いてもよい。多角形筒50は光源41の直下からウェハWの照射面に近接する位置まで伸びている。このように、重水素ランプ40の直下に設けられた多角形筒50がウェハWの照射面に近接する位置まで伸びていることにより、各重水素ランプ40から照射される真空紫外光は、光源41からウェハWの照射面に到達するまで対応する多角形筒50内を通過することとなり、ウェハWにおける照射範囲は、多角形筒50の形状(
図3参照)に応じた範囲となる。上述したように、複数の多角形筒50は連続している(隙間なく密着している)ため、互いに隣り合う多角形筒50を通過した真空紫外光のウェハWにおける照射範囲は互いに連続するとともに重複していない(あるいは、重複範囲が小さい)。
【0041】
なお、多角形筒50は、重水素ランプ40の光源41から出射された真空紫外光の強度が弱い部分(中心から離れた部分)が遮光可能となるように、形状が決定されてもよい。多角形筒50は、例えば最も強度が強い部分の70〜80%、例えば90%以上の強度を担保できる部分以外の光が遮光されるように、形状が決定される。
【0042】
[作用効果]
上述したように、本実施形態に係る基板処理装置1の光照射装置4は、波長が200nm以下であって光源41を頂点とした円錐状の光路をとる真空紫外光をウェハWに向けて照射する複数の重水素ランプ40と、複数の重水素ランプ40から照射される真空紫外光の照射範囲の重なり部分を遮光するように、各重水素ランプ40に対応して設けられた多角形筒50と、を備え、多角形筒50は、真空紫外光の進行方向から見て多角形状に形成されている。
【0043】
従来、ウェハWにおける照射範囲が円形となる複数の点光源からウェハWに光が照射される場合には、ウェハWの照射面に均一に光を照射することが困難であった。このことについて、比較例に係る光照射装置の説明図である
図4(a)及び
図4(b)を参照して説明する。
図4(a)は、複数の重水素ランプ40が設けられた光照射装置を模式的に示している。
図4(b)は、
図4(a)に示す光照射装置の照射強度を示しており、具体的には、破線は各重水素ランプ40の照射強度を示しており、実線は隣り合う重水素ランプ40の合計の照射強度を示している。
図4(a)及び
図4(b)に示すように、各光の照射範囲が極力重ならないように重水素ランプ40が配置された場合(
図4(a)中に示す中央の重水素ランプ40及び右側の重水素ランプ40を参照)には、照射範囲が円形であることから光の照射強度が弱くなる部分E2(
図4(b)参照)が生じてしまう。一方で、照射強度が弱くなる部分E2が生じないようにするためには、各点重水素ランプ40から照射される光の照射範囲を十分に重ねる(
図4(a)に示す中央の重水素ランプ40及び左側の重水素ランプ40を参照)必要があり、この場合には重なる部分E1(
図4(b)参照)の照射強度が極端に強くなることが問題となる。このように、従来、ウェハWに対して複数の光源から光を照射する構成においては、ウェハWの照射面に均一に光を照射することが困難であった。
【0044】
この点、本実施形態に係る光照射装置4では、円錐状の光路をとってウェハWに向けて照射される複数の真空紫外光の重なり部分が、各重水素ランプ40に対応して設けられた多角形筒50によって遮光されている。これにより、ウェハWにおける各真空紫外光の照射範囲が多角形状となる。照射範囲が
図4に示す比較例のように円形ではなく、多角形状(具体的には正六角形状)となることにより、隣り合う多角形筒50を通過した真空紫外光の照射範囲を互いに連続させるとともに重複させない(あるいは重複範囲を小さくする)ことが可能となる。すなわち、本実施形態の光照射装置4によれば、ウェハWの照射面における光照射分布の均一性を向上させることができる。
【0045】
上述した多角形筒50は、真空紫外光の進行方向に延びて筒状に形成されている。重水素ランプ40に対応して設けられた多角形筒50が高さ方向(真空紫外光の進行方向)に伸びて筒状に形成されていることにより、当該多角形筒50が対応する重水素ランプ40以外の重水素ランプ40(例えば隣の重水素ランプ40)からの真空紫外光の影響を適切に排除することができる。すなわち、他の重水素ランプ40の真空紫外光と照射範囲が重なることを適切に防止し、ウェハWの照射面における光照射分布の均一性をより向上させることができる。
【0046】
また、上述した光照射装置4は、重水素ランプ40を光照射部として用いることにより、波長が200nm以下の真空紫外光に加えて、波長が200nmよりも大きい近紫外光についてもウェハWに対して照射することができる。このように、重水素ランプ40から照射される光のスペクトルの波長域は比較的広いため、例えばウェハWの表面にレジストパターンが形成されている場合において、当該レジストパターンは様々な波長の光のエネルギーを受けることとなる。これにより、レジストパターンの表面においては様々な反応が起こることによって流動性が高くなり、その結果、当該表面の荒れの改善効果を向上させることができる。
【0047】
また、上述した重水素ランプ40は、波長が160nm以下の真空紫外光を発生させる。重水素ランプ40では、例えば160nm以下が連続スペクトルのピークの波長となるため、当該160nm以下の真空紫外光を発生させることによって、例えばウェハWの表面にレジストパターンが形成されている場合において、表面の荒れの改善効果をより向上させることができる。
【0048】
[変形例]
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。例えば、
図5に示すように、複数の光照射部のうち一部の重水素ランプ40xから照射される真空紫外光の照度値が、他の重水素ランプ40から照射される真空紫外光の照度値と異なっていてもよい。
図5に示す例では、重水素ランプ40xから照射される真空紫外光の照度値が重水素ランプ40から照射される真空紫外光の照度値よりも大きくされている。また、
図6に示すように、複数の光照射部のうち一部の重水素ランプ40yから照射される真空紫外光の光線角度が、他の重水素ランプ40から照射される真空紫外光の光線角度と異なっていてもよい。
図6に示す例では、重水素ランプ40yから照射される真空紫外光の光線角度が重水素ランプ40から照射される真空紫外光の光線角度よりも大きくされている。また、
図7に示すように、複数の光照射部のうち一部の重水素ランプ40zのウェハWとの離間距離が、他の重水素ランプ40のウェハWとの離間距離と異なっていてもよい。
図7に示す例では、重水素ランプ40zのウェハWとの離間距離が、重水素ランプ40のウェハWとの離間距離よりも小さくされている。このように、複数の光照射部について、照度値、光線角度、又は高さ(ウェハWとの離間距離)を互いに異ならせることによって、照射分布を積極的に調整することができ、光照射部からの照射状況に応じて、ウェハWの照射面における光照射分布の均一性をより向上させることができる。
【0049】
また、光照射装置は、
図8に示す離間距離調整部60を更に備えていてもよい。離間距離調整部60は、遮光部である多角形筒50のウェハWとの離間距離を調整する機構である。具体的には、離間距離調整部60は、コントローラ(不図示)の制御に応じて多角形筒50を昇降させることにより、多角形筒50のウェハWとの離間距離を調整する。上述したように、多角形筒50は照射範囲を多角形状にすることによりウェハWの照射面に均一に光を照射することを目的とした構成であるが、多角形筒50が設けられることにより、当該多角形筒50の影がウェハWの照射面に投影されてしまい、当該影によってウェハWの照射面における光照射分布の均一性が十分に図られないことが考えられる。この点、多角形筒50の高さ(ウェハWとの離間距離)が離間距離調整部60によって調整されることにより、例えば隣り合う多角形筒50からのウェハWへの照射光の広がりを調整することができ、照射光を互いに重ねあうこと等により影となる部分を解消することができる。なお、離間距離調整部60によって調整される多角形筒50の高さは、例えば、重水素ランプ40からの照射角、及び、ウェハWにおける各部の照度等を事前に評価することにより決定される。
【0050】
また、光照射装置は、
図9に示すウェハ回転部70(基板回転部)を更に備えていてもよい。ウェハ回転部70は、ウェハWの照射面を重水素ランプ40に対向させた状態でウェハWを回転させる機構である。具体的には、ウェハ回転部70は、ウェハWを載置する載置台20と回転軸を介して接続されており、コントローラ(不図示)の制御に応じて回転軸を回転させることにより載置台20及び該載置台20に載置されたウェハWを回転させる。ウェハWが回転することによって、重水素ランプ40の照射場所が変化することとなるので、ウェハWの照射面における光照射分布の均一性をより向上させることができる。なお、光照射装置は、ウェハWではなく、多角形筒50及び重水素ランプ40をウェハWに対して回転させるものであってもよい。また、光照射装置は、多角形筒50又はウェハWを、ウェハWの照射面に平行な方向(水平方向)に10mm程度往復移動させる平行移動部を更に備えていてもよい。この場合においても、重水素ランプ40の照射場所が変化することとなるので、ウェハWの照射面における光照射分布の均一性をより向上させることができる。なお、照射面に平行な方向に往復移動させる態様においては、ウェハWを回転させる態様と異なり、照射場所が変化しない部分(例えば回転中心)が生じにくいというメリットがある。例えば、複数本の多角形筒50及び重水素ランプ40を、ウェハWに対して回転させると共に並行な方向にスキャン動作させることにより、ウェハWの全面を同時に照射可能な数の重水素ランプ40を設けなくても、ウェハWの全面に対して真空紫外光を照射することができる。このように多角形筒50及び重水素ランプ40をスキャン動作等させる場合には、多角形筒50及び重水素ランプ40が少数(例えば1つずつ等)であってもよい。
【0051】
また、光照射装置は、
図10に示す拡散部80を更に備えていてもよい。拡散部80は、多角形筒50の上方において真空紫外光を拡散させる部材である。
図10に示す例では、拡散部80はメッシュ状の部材であり、真空紫外光の一部を反射拡散させる機能を有する。なお、拡散部80は真空紫外光の一部を反射拡散させるものであれば、棒状の部材等であってもよい。拡散部80では、真空紫外光を反射拡散させる部分の面積が、真空紫外光を下方に向かって通過させる部分の面積よりも小さい。照射光は光源(ランプ)の内部電極構造に由来して強度のばらつきが存在するところ、多角形筒50の上方に拡散部80が設けられていることにより、照射光のばらつきが平均化され、ウェハWの照射面における光照射分布の均一性をより向上させることができる。
【0052】
また、多角形筒50は真空紫外光の進行方向から見て正六角形状であるとして説明したがこれに限定されず、例えば
図11(a)に示すように多角形筒50xが四角形状であってもよい。また、多角形筒50の数は
図3に示した例に限定されず、例えば
図11(b)に示すように合計13個の多角形筒50yが設けられていてもよい。
【0053】
また、遮光部が多角形筒50であるとして説明したがこれに限定されず、遮光部は真空紫外光の進行方向から見て多角形状に形成されたものであれば、高さ方向に伸びる筒状の部材でなくてもよい。例えば、
図12に示されるように、遮光部は、板状に形成されたマスク200(板状遮光部材)を有していてもよい。マスク200は、多角形筒50と同様に、真空紫外光の進行方向から見て多角形状に形成されている。具体的には、
図13(a)に示されるように、真空紫外光の進行方向から見て六角形状のマスク200a又は四角形状のマスク200b等を用いることができる。マスク200は、多角形筒50と異なり、厚み(真空紫外光の進行方向の厚み)が小さい薄板状とされている。このようなマスク200を設けることによっても、ウェハWにおける各真空紫外光の照射範囲が多角形状となり、真空紫外光の照射範囲が重ならないようにしつつ光が照射されない部分(あるいは照射強度が弱くなる部分)が生じることを抑制できる。すなわち、マスク200によれば、ウェハWの照射面における光照射分布の均一性を向上させることができる。また、マスク200は、上述したように薄板状とされているため、多角形筒50を設ける場合と比較して、処理室内での真空ポンプによる排気を行いやすくすることができる。このことで、処理室内の真空引きをより適切に行うことができる。
【0054】
また、
図14に示されるように、遮光部は、真空紫外光の進行方向に延びて筒状に形成されると共に重水素ランプ40及びウェハW間においてウェハW寄りの位置(すなわち下方寄りの位置)に設けられた多角形筒250と、板状に形成されたマスク200とを有していてもよい。多角形筒250は、例えば重水素ランプ40及びウェハW間の全長の半分以下の長さとされる。このように、多角形筒250は、重水素ランプ40及びウェハW間の略全域に設けられた多角形筒50(
図2参照)と比べて小型であって且つウェハWに近い領域にのみ設けられている。マスク200は、多角形筒250の下方に設けられており、より詳細には、多角形筒250の下端に接するように設けられている。マスク200は、光の照射範囲を限定する観点から極力ウェハWに近い位置に設けられていてもよいが、アームによるウェハWの搬送が可能になる程度の距離(例えば30mm)だけウェハWから離間している。マスク200は、真空紫外光の進行方向から見て、光を通す領域の大きさが多角形筒250よりも小さくされている。これにより、マスク200によって真空紫外光の照射範囲を適切に限定することができる。
【0055】
ここで、
図14の基板処理装置の基本構成についても説明する。
図14に示されるように、当該基板処理装置は、処理室210と、光源室212とを備える。処理室210は、筐体214と、回転保持部216と、ゲートバルブ218と、真空ポンプ222とを含む。筐体214は、例えば大気雰囲気中に設けられた真空容器の一部であり、図示しない搬送機構によって搬送されたウェハWを収納可能に構成されている。筐体214は、上方に向けて開口された有底筒状体を呈している。筐体214の壁面には、貫通孔214a,214cが設けられている。
【0056】
回転保持部216は、回転部216aと、シャフト216bと、保持部216cとを有する。回転部216aは、コントローラ(不図示)からの動作信号に基づいて動作し、シャフト216bを回転させる。回転部216aは、例えば電動モータ等の動力源である。保持部216cは、シャフト216bの先端部に設けられている。保持部216cは、ウェハWの姿勢が略水平の状態でウェハWを保持可能である。保持部216cにウェハWが載置された状態で回転部216aが回転すると、ウェハWは、その表面に対して垂直な軸(回転軸)周りで回転する。
【0057】
ゲートバルブ218は、筐体214の側壁の外表面に配置されている。ゲートバルブ218は、コントローラ(不図示)の指示に基づいて動作し、筐体214の貫通孔214aを閉鎖及び開放するように構成されている。ゲートバルブ218によって貫通孔214aが開放されている場合、筐体214に対してウェハWを搬入出可能である。すなわち、貫通孔214aはウェハWの出入口としても機能する。
【0058】
真空ポンプ222は、筐体214内から気体を排出して、筐体214内を真空状態(低酸素状態)とするように構成されている。
【0059】
光源室212は、筐体224と、仕切壁226と、シャッタ部材228と、複数の重水素ランプ40とを含む。
【0060】
筐体224は、例えば大気雰囲気中に設けられた真空容器の一部である。筐体224は、下方に向けて開口された有底筒状体を呈している。筐体224は、筐体224の開放端が筐体214の開放端に向かい合うように配置されている。
【0061】
仕切壁226は、筐体214,224の間に配置されており、筐体214内の空間と筐体224内の空間とを仕切るように構成されている。換言すれば、仕切壁226は、筐体214の天壁として機能すると共に、筐体224の底壁として機能する。すなわち、筐体224は、ウェハWの表面に垂直な方向において、筐体214と隣り合うように配置されている。仕切壁226によって仕切られた後の筐体224内の空間Vは、垂直方向における高さが水平方向におけるサイズと比較して小さい偏平空間となっている。
【0062】
仕切壁226には、複数の貫通孔226aが設けられている。複数の貫通孔226aは、垂直方向においてシャッタ部材228と重なり合うように配置されている。複数の貫通孔226aはそれぞれ、真空紫外光が透過可能な窓部材によって塞がれている。窓部材は、例えば、ガラス(例えば、フッ化マグネシウムガラス)であってもよい。
【0063】
シャッタ部材228は、空間V内に配置されており、重水素ランプ40が照射する真空紫外光を遮断及び通過可能に構成されている。シャッタ部材228は、例えば円板状を呈している。シャッタ部材228には、複数の貫通孔が設けられている。
【0064】
上述したような多角形筒250及びマスク200を組み合わせて用いることにより、多角形筒250によって真空紫外光の照射範囲が重なることを適切に抑制しつつ、多角形筒250の下方に設けられたマスク200によって真空紫外光の照射範囲を適切に限定することができる。また、マスク200を用いることによって、多角形筒250の長さを短くすることができ、真空ポンプ222による排気を適切に行い処理室210内の真空引きを適切に行うことができる。また、マスク200が多角形筒250の下端に接するように設けられていることにより、多角形筒250とマスク200との間から真空紫外光が漏れ出すことを抑制し、真空紫外光の照射範囲が重なることを適切に抑制することができる。なお、下方に設けられた小型の多角形筒250のみによって(すなわちマスク200を設けずに)遮光部が形成されていてもよい。
【0065】
なお、
図15に示されるように、マスク200は多角形筒250の下端から離間するように設けられていてもよい。これにより、真空ポンプ222による排気が行いやすくなり、真空ポンプ222による真空引きをより適切に行うことができる。
図15の構成では、真空紫外光の進行方向から見て、マスク200及び多角形筒50の光を通す領域の大きさが同程度とされてもよい。なお、真空引きを容易に行う観点から、多角形筒50に一又は複数の孔が設けられていてもよい。