特許第6920904号(P6920904)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6920904シミュレータ、該シミュレータを備える注入装置又は撮像システム、及びシミュレーションプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6920904
(24)【登録日】2021年7月29日
(45)【発行日】2021年8月18日
(54)【発明の名称】シミュレータ、該シミュレータを備える注入装置又は撮像システム、及びシミュレーションプログラム
(51)【国際特許分類】
   A61B 6/03 20060101AFI20210805BHJP
   A61M 5/142 20060101ALI20210805BHJP
【FI】
   A61B6/03 375
   A61M5/142 530
【請求項の数】13
【全頁数】22
(21)【出願番号】特願2017-130873(P2017-130873)
(22)【出願日】2017年7月4日
(65)【公開番号】特開2019-13296(P2019-13296A)
(43)【公開日】2019年1月31日
【審査請求日】2020年6月26日
(73)【特許権者】
【識別番号】504136568
【氏名又は名称】国立大学法人広島大学
(73)【特許権者】
【識別番号】391039313
【氏名又は名称】株式会社根本杏林堂
(74)【代理人】
【識別番号】100094112
【弁理士】
【氏名又は名称】岡部 讓
(74)【代理人】
【識別番号】100101498
【弁理士】
【氏名又は名称】越智 隆夫
(74)【代理人】
【識別番号】100107401
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 誠一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100120064
【弁理士】
【氏名又は名称】松井 孝夫
(74)【代理人】
【識別番号】100154162
【弁理士】
【氏名又は名称】内田 浩輔
(74)【代理人】
【識別番号】100182257
【弁理士】
【氏名又は名称】川内 英主
(72)【発明者】
【氏名】檜垣 徹
(72)【発明者】
【氏名】粟井 和夫
(72)【発明者】
【氏名】中村 優子
(72)【発明者】
【氏名】増田 和正
(72)【発明者】
【氏名】弓場 孝治
(72)【発明者】
【氏名】根本 茂
【審査官】 井上 香緒梨
(56)【参考文献】
【文献】 特表2000−506398(JP,A)
【文献】 国際公開第2016/084373(WO,A1)
【文献】 特開2016−032764(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2017/0181714(US,A1)
【文献】 特開2006−297091(JP,A)
【文献】 特開2009−022804(JP,A)
【文献】 特開2008−264568(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 6/00−6/14
A61B 5/055
A61B 8/00−8/15
A61M 5/00−5/52
G01T 1/161−1/166
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
造影剤量を取得する薬液情報取得部と、
目標画素値の目標持続時間を取得する目標値取得部と、
造影剤の注入プロトコルを取得するプロトコル取得部と、
前記注入プロトコル及び前記造影剤量に基づいて、被写体の組織の画素値の経時変化をシミュレーションして、前記目標画素値が維持される予測持続時間を求める予測部とを備え、
前記予測部は、前記予測持続時間を前記目標持続時間と比較し、前記予測持続時間が前記目標持続時間より短い場合には、シミュレーションで使用した使用造影剤量よりも多量の造影剤を注入する場合の前記経時変化を再シミュレーションして、前記予測持続時間を再度求め、前記予測持続時間が前記目標持続時間より長い場合には、前記使用造影剤量よりも少量の造影剤を注入する場合の前記経時変化を再シミュレーションして、前記予測持続時間を再度求め
前記予測部は、前記予測持続時間が前記目標持続時間より短い場合には、重み付け係数を所定の値に乗じて算出された量を前記使用造影剤量に加算して前記経時変化を再シミュレーションし、前記予測持続時間が前記目標持続時間より長い場合には、前記重み付け係数を所定の値に乗じて算出された量を前記使用造影剤量から減算して前記経時変化を再シミュレーションする、シミュレータ。
【請求項2】
前記予測部は、造影剤の注入速度及び注入時間の少なくとも一方を変動させて、前記再シミュレーションを行う、請求項1に記載のシミュレータ。
【請求項3】
表示部を制御する制御部を備え、
前記制御部は、前記再シミュレーションの結果において、前記目標画素値に達しない場合又は前記目標持続時間に達しない場合には、シミュレーション条件の修正提案を表示させる、請求項1又は2に記載のシミュレータ。
【請求項4】
表示部を制御する制御部を備え、
前記制御部は、前記注入プロトコルにおける造影剤の注入量を表示させる、請求項1又は2に記載のシミュレータ。
【請求項5】
前記予測部は、前記再シミュレーションの結果のうち、前記目標持続時間と前記予測持続時間との差分が最も少ないシミュレーション結果に対応する注入プロトコルを最適な注入プロトコルとして記憶部に記憶させる、請求項1から4のいずれか1項に記載のシミュレータ。
【請求項6】
前記予測部は、前記再シミュレーションの結果のうち、前記予測持続時間の長さが前記目標持続時間以上であり且つ前記使用造影剤量が最も少ないシミュレーション結果に対応する注入プロトコルを最適な注入プロトコルとして記憶部に記憶させる、請求項1から4のいずれか1項に記載のシミュレータ。
【請求項7】
前記薬液情報取得部は、ユーザーが選択した薬剤名に対応する粘稠度、浸透圧比及び前記造影剤量を取得する、請求項1から6のいずれか1項に記載のシミュレータ。
【請求項8】
前記組織には、腎臓が含まれ、
前記予測部は、所定の排出速度に基づく造影剤の排出量を算出し、前記腎臓の毛細血管内の造影剤から前記排出量を減じて前記経時変化をシミュレーションする、請求項1から7のいずれか1項に記載のシミュレータ。
【請求項9】
前記組織には、尿管が含まれ、
前記予測部は、前記腎臓の前記毛細血管から前記排出量の造影剤を前記尿管に移動させて前記経時変化をシミュレーションする、請求項8に記載のシミュレータ。
【請求項10】
前記予測部は、前記組織を血流方向に沿って分割した複数のコンパートメントのそれぞれにおいて前記経時変化をシミュレーションする、請求項1から9のいずれか1項に記載のシミュレータ。
【請求項11】
被写体の組織における画素値の経時変化をコンピューターに予測させるシミュレーションプログラムであって、前記コンピューターを
造影剤量を取得する薬液情報取得部、
目標画素値の目標持続時間を取得する目標値取得部、
造影剤の注入プロトコルを取得するプロトコル取得部、及び
前記注入プロトコル及び前記造影剤量に基づいて、前記経時変化をシミュレーションして、前記目標画素値が維持される予測持続時間を求める予測部として機能させ、
前記予測部は、前記予測持続時間を前記目標持続時間と比較し、前記予測持続時間が前記目標持続時間より短い場合には、シミュレーションで使用した使用造影剤量よりも多量の造影剤を注入する場合の前記経時変化を再シミュレーションして、前記予測持続時間を再度求め、前記予測持続時間が前記目標持続時間より長い場合には、前記使用造影剤量よりも少量の造影剤を注入する場合の前記経時変化を再シミュレーションして、前記予測持続時間を再度求め
前記予測部は、前記予測持続時間が前記目標持続時間より短い場合には、重み付け係数を所定の値に乗じて算出された量を前記使用造影剤量に加算して前記経時変化を再シミュレーションし、前記予測持続時間が前記目標持続時間より長い場合には、前記重み付け係数を所定の値に乗じて算出された量を前記使用造影剤量から減算して前記経時変化を再シミュレーションする、シミュレーションプログラム。
【請求項12】
造影剤量を取得する薬液情報取得部と、
目標画素値の目標持続時間を取得する目標値取得部と、
造影剤の注入プロトコルを取得するプロトコル取得部と、
前記注入プロトコル及び前記造影剤量に基づいて、被写体の組織の画素値の経時変化をシミュレーションして、前記目標画素値が維持される予測持続時間を求める予測部とを備え、
前記予測部は、前記予測持続時間を前記目標持続時間と比較し、前記予測持続時間が前記目標持続時間より短い場合には、シミュレーションで使用した使用造影剤量よりも多量の造影剤を注入する場合の前記経時変化を再シミュレーションして、前記予測持続時間を再度求め、前記予測持続時間が前記目標持続時間より長い場合には、前記使用造影剤量よりも少量の造影剤を注入する場合の前記経時変化を再シミュレーションして、前記予測持続時間を再度求め、
前記予測部は、前記使用造影剤量をV、前記目標時持続間をT、前記予測持続時間をT、重みづけ係数をWとしたとき、再シミュレーションするときの使用造影剤量Vn+1を下記式によって算出する、シミュレータ。
n+1=V+W(T−T
【請求項13】
前記予測部は、前記再シミュレーションの繰り返し回数に応じて、前記重みづけ係数の値を小さくする、請求項1から12のいずれか一項に記載のシミュレータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、組織の画素値の経時変化をシミュレーションするシミュレータ、該シミュレータを備える注入装置又は撮像システム、及びシミュレーションプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、被写体の組織における画素値の経時変化を予測するシミュレータが提案されている。特許文献1には、被写体情報と、注入プロトコルと、組織情報とに基づいて、組織を血流方向に沿って分割した複数のコンパートメントのそれぞれの画素値の経時変化を予測する予測部を備えるシミュレータが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2016/084373号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載のシミュレータでは、目標持続時間に渡って目標画素値を維持するような注入プロトコルを使用することが想定されていない。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するため、本発明の一例としてのシミュレータは、造影剤量を取得する薬液情報取得部と、目標画素値の目標持続時間を取得する目標値取得部と、造影剤の注入プロトコルを取得するプロトコル取得部と、前記注入プロトコル及び前記造影剤量に基づいて、被写体の組織の画素値の経時変化をシミュレーションして、予測持続時間を求める予測部とを備え、前記予測部は、前記予測持続時間を前記目標持続時間と比較し、前記予測持続時間が前記目標持続時間より短い場合には、シミュレーションで使用した使用造影剤量よりも多量の造影剤を注入する場合の前記経時変化を再シミュレーションして、前記予測持続時間を再度求め、前記予測持続時間が前記目標持続時間より長い場合には、前記使用造影剤量よりも少量の造影剤を注入する場合の前記経時変化を再シミュレーションして、前記予測持続時間を再度求める。
【0006】
これにより、目標持続時間に渡って目標画素値を維持するような注入プロトコルを使用した場合の、被写体の組織における画素値の経時変化をシミュレーションすることができる。
【0007】
本発明のさらなる特徴は、添付図面を参照して例示的に示した以下の実施例の説明から明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】シミュレータの概略ブロック図である。
図2】シミュレータの表示部に表示されるメイン画面である。
図3】シミュレータの表示部に表示される自動最適化画面である。
図4】自動最適化のフローチャートである。
図5】注入装置及び撮像システムの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明を実施するための例示的な実施形態を、図面を参照して詳細に説明する。ただし、以下の実施形態で説明する寸法、材料、形状、構成要素の相対的な位置は任意であり、本発明が適用される装置の構成又は様々な条件に応じて変更できる。また、特別な記載がない限り、本発明の範囲は、以下に具体的に記載された実施形態に限定されるものではない。
【0010】
特に言及した場合を除き、造影剤という用語は、造影剤単体と、造影剤に加えて他の溶媒及び添加物を含む薬液との両方を含む。また、以下では、特に言及した場合を除き、画素値という用語は、造影されている撮像部位における、CT値、関心領域(ROI)に含まれる画素のCT値の和若しくは平均値、又は関心領域のSD値(標準偏差値)を含む。さらに、画素値は、これらの値から造影されていない撮像部位における値(例えば、単純CTにおける撮像部位のCT値)を減算して得られた値を含む。関心領域は予め設定されているか、又はユーザーが関心領域を選択することができる。
【0011】
[第1実施形態]
図1に示すように、被写体の組織における画素値の経時変化を予測するシミュレータ(灌流シミュレータ)20は、被写体である被験者に関する被写体情報を取得する被写体情報取得部11を備えている。この被写体情報は、例えば、ヘモグロビン量、体重、身長、体表面積、心機能、心拍数、一回拍出量、心拍出量、推定糸球体濾過量(eGFR)、クレアチニン値、年齢、性別、除脂肪体重、ボディマス指数、循環血液量、被験者番号(被験者ID)、被験者の疾病及び副作用の履歴、被験者氏名、生年月日、血液量、及び血流速度を含んでいる。
【0012】
被写体情報取得部11は、シミュレータ20の入力部27を介して、ユーザーが入力した被写体情報を取得する。また、被写体情報取得部11は、シミュレータ20の記憶部24又は外部記憶装置(サーバー)から被写体情報を取得してもよい。このようなサーバーとしては、例えば、RIS(Radiology Information System)、PACS(Picture Archiving and Communication System)、HIS(Hospital Information System)、検像システム、及び画像作成用ワークステーションがある。さらに、被写体情報取得部11は、図5に示す撮像装置3又は注入装置2から被写体情報を取得してもよい。
【0013】
また、シミュレータ20は、造影剤の注入プロトコルを取得するプロトコル取得部12を備える。このプロトコル取得部12は、入力部27を介してユーザーが入力した注入プロトコルを取得する。注入プロトコルは、一例として、薬液の注入時間及び注入速度を含んでいる。さらに、注入プロトコルは、注入方法、造影剤注入箇所、注入量、注入タイミング、造影剤濃度、注入圧力、及び注入速度の加速度を含んでいてもよい。また、プロトコル取得部12は、記憶部24、外部記憶装置又は注入装置2から注入プロトコルを取得してもよい。
【0014】
注入プロトコルは、造影剤の注入時間及び注入速度、生理食塩水の注入時間及び注入速度、造影剤の後押し注入の有無、注入速度の増減、クロス注入の有無、リンク速度設定の有無、及び注入用チューブの体積等の情報を含んでいてもよい。このクロス注入とは、注入開始から設定された時間が経過するまで、生理食塩水の注入速度より高速で造影剤を注入した後、注入速度が徐々に減少するように造影剤を注入すると同時に、注入速度が徐々に増加するように生理食塩水を注入する注入方法である。また、リンク速度設定とは、造影剤と生理食塩水の注入速度が同一になるように、両者の注入速度をリンクさせる設定である。
【0015】
また、シミュレータ20は、被写体の組織情報を取得する組織情報取得部13を備えている。この組織情報は、例えば、組織におけるコンパートメント数(血管及び臓器の分割コンパートメント数)、組織の体積(血管腔の体積)、毛細血管の体積、細胞外液腔の体積、単位組織あたりの血流量(血流速度)、組織における造影剤の染み出し速度(毛細血管透過性表面積)、組織における造影剤の染み戻り速度(毛細血管透過性表面積)、及び組織生来の画素値を含んでいる。コンパートメント数は、小さな体積を有する組織よりも大きな体積を有する組織の方が多くなるように設定してもよい。
【0016】
組織情報取得部13は、入力部27を介してユーザーが入力した組織情報を取得する。組織には、心臓(右心室及び左心室)、血管、腎臓、尿管、その他の臓器及び筋肉が含まれる。そして、予測部16が組織生来の画素値を取得した場合、各組織の生来の画素値に基づいて造影剤による増強の程度が予測される。また、組織情報取得部13は、記憶部24、外部記憶装置又は注入装置2から組織情報を取得してもよい。
【0017】
また、シミュレータ20は、造影剤量を取得する薬液情報取得部14を備えている。この薬液情報取得部14は、薬液に関する薬液情報をさらに取得する。ここで薬液情報取得部14は、入力部27を介してユーザーが入力した薬液情報を取得する。この薬液情報は、例えば、粘稠度、浸透圧比、造影剤量、生理食塩水量、製品ID、製品名称、化学分類、含有成分、濃度、消費期限、シリンジ容量、シリンジ耐圧、シリンダ内径、ピストンストローク、及びロット番号を含んでいる。
【0018】
薬液情報取得部14は、記憶部24、外部記憶装置又は注入装置2から薬液情報を取得してもよい。さらに、薬液情報取得部14は、注入装置2に内蔵された読取部から薬液情報を取得してもよい。この読取部は、注入ヘッドに搭載されるシリンジに取り付けられたデータキャリアから薬液情報を読み取る。このデータキャリアは、例えば、RFIDチップ、ICタグ、又はバーコードである。
【0019】
また、シミュレータ20は、目標画素値の目標持続時間を取得する目標値取得部15を備えている。ユーザーは、目標画素値及び目標持続時間の少なくとも一方を、入力部27から入力することができる。
【0020】
また、シミュレータ20は、被写体の組織の画素値の経時変化をシミュレーションして、予測持続時間を求める予測部16を備えている。この予測部16は、取得した注入プロトコル及び造影剤量に基づいて、被写体の組織の画素値の経時変化をシミュレーションして、目標画素値が維持される予測持続時間を求める。
【0021】
具体的に、予測部16は、被写体情報取得部11から、被写体情報として、ヘモグロビン量(g/dL)、体重(kg)、身長(cm)、心機能(%)、心拍数(bpm)、体表面積(m2)、心拍出量(L/min)、及びeGFRを受け取る。代替的に、予測部16は、体表面積、心拍出量、及び推定糸球体濾過量の少なくとも1つを算出してもよい。例えば、体表面積は、体重及び身長に基づいて、藤本式、デュボア式又は新谷式によって算出できる。また、心拍出量は、体表面積、心機能及び心拍数に基づいて算出できる。また、eGFRは、クレアチニン値、年齢及び性別に基づいて算出できる。
【0022】
心機能は、平均的心機能を100%としたときに、平均的心機能に対して優れていれば増加し(例えば120%)、劣っていれば低減する(例えば80%)ように、ユーザーが設定する。また、心機能に代替するパラメータとして、測定された心拍出量(L/min)、又は平均的心拍出量に対する測定された心拍出量の割合を用いてもよい。
【0023】
また、予測部16は、プロトコル取得部12から、注入プロトコルとして、造影剤の注入時間(sec)及び注入速度(mL/sec)、生理食塩水の注入時間(sec)及び注入速度(mL/sec)、クロス注入の有無、及びリンク速度設定の有無を取得する。さらに、予測部16は、組織情報取得部13から、組織情報として、組織におけるコンパートメント数、組織の体積、毛細血管の体積、細胞外液腔の体積、血流速度、毛細血管透過性表面積、毛細血管透過性表面積、及び組織生来の画素値を取得する。また、予測部16は、薬液情報取得部14から、薬液情報として、造影剤濃度(mgI/mL)、浸透圧比、粘稠度(mPs.s)、造影剤量(mL)、及び総ヨード量(mgI)を取得する。そして、予測部16は、総ヨード量と被写体の体重から、体重1kgあたりのヨード量(mgI/kg)を算出する。
【0024】
また、予測部16は、入力部27を介して管電圧(kV)等の検査情報を取得することができる。この検査情報は、一例として検査番号(検査ID)、検査部位、検査日時、薬液種類、薬液名称、及び撮像する部位に関する部位情報を含んでいてもよい。この部位情報は、撮像対象として選択される部位(範囲)を特定できる情報である。例えば部位情報は、撮像部位名、撮像方法の名称、及び薬液の注入部位から撮像部位までの距離を含む。さらに、予測部16は、入力部27からユーザーが入力した、解析時間(sec)等の付加情報を取得できる。この解析時間は、予測の対象となる時間の長さであり、時間濃度曲線(TDCカーブ)のX軸(図2)の長さに対応する。
【0025】
そして、予測部16は、被写体の組織を血流方向に沿って分割した複数のコンパートメントのそれぞれにおいて、被写体の組織における画素値の経時変化をシミュレーションする。このシミュレーションは、被写体情報と、注入プロトコルと、組織情報とに基づいて実行される。その後、予測部16は、時間ごとの各コンパートメントの画素値を、各組織と関連付けて記憶部24に記憶させる。
【0026】
シミュレータ20は、CPU等からなる制御部25と、制御プログラムを記憶している記憶部24とを備えている。この制御部25は、記憶部24に記憶された制御プログラムに従ってシミュレータ20の各部を制御している。また、制御部25は、被写体情報取得部11、プロトコル取得部12、組織情報取得部13、薬液情報取得部14、及び目標値取得部15を有している。そして、記憶部24に実装された制御プログラムに対応して制御部25が各種処理を実行することにより、各部が各種機能として論理的に実現される。さらに、制御部25は、表示部26を制御する表示制御部としても機能する。
【0027】
記憶部24は、制御部25が動作するためのシステムワークメモリであるRAM(Random Access Memory)、プログラム若しくはシステムソフトウェアを格納するROM(Read Only Memory)、又はハードディスクドライブを有する。また、記憶部24は、被写体の組織における画素値の経時変化をコンピューター(制御部25)に予測させるシミュレーションプログラムを記憶している。
【0028】
このシミュレーションプログラムは、コンピューターを、造影剤量を取得する薬液情報取得部14、目標画素値の目標持続時間を取得する目標値取得部15、造影剤の注入プロトコルを取得するプロトコル取得部12、及び注入プロトコル及び造影剤量に基づいて、経時変化をシミュレーションして、予測持続時間を求める予測部16として機能させる。さらに、シミュレーションプログラムは、コンピューターを、予測持続時間を目標持続時間と比較し、予測持続時間が目標持続時間より短い場合には、シミュレーションで使用した使用造影剤量よりも多量の造影剤を注入する場合の経時変化を再シミュレーションして、予測持続時間を再度求め、予測持続時間が目標持続時間より長い場合には、使用造影剤量よりも少量の造影剤を注入する場合の経時変化を再シミュレーションして、予測持続時間を再度求める、予測部16として機能させる。このシミュレーションプログラムは、コンピューター読み取り可能な記録媒体に記憶させることができる。
【0029】
代替的に、制御部25は、CD(Compact Disc)及びDVD(Digital Versatile Disc)、CF(Compact Flash)カード等の可搬記録媒体、又はインターネット上のサーバー等の外部記憶媒体に記憶された制御プログラム及びシミュレーションプログラムに従って、各種処理を制御することもできる。
【0030】
また、シミュレータ20は、各組織のコンパートメントを画素値に応じた濃度の色で表示する表示部26を備えている。そして、制御部25は、画素値の経時変化に応じて、表示部26に表示された各組織のコンパートメントの濃淡を変更する。そのために、制御部25は、記憶部24から選択された時間におけるコンパートメントの画素値を読み出して、コンパートメントの濃淡を変更する。この表示部26には、メイン画面(図2)及び自動最適化画面(図3)等の操作画面が表示される。また、表示部26には、注入プロトコル、装置の入力状態、設定状態、及び注入結果が表示されてもよい。
【0031】
また、シミュレータ20は、被写体情報取得部11、プロトコル取得部12、組織情報取得部13、及び薬液情報取得部14に接続された入力部27を備えている。この入力部27としては、例えばキーボードを用いることができる。代替的に、入力部27と表示部26とを兼用するタッチパネルを用いてもよい。
【0032】
[画素値の経時変化の予測]
被写体の各組織は、組織情報取得部13から取得された組織の分割コンパートメント数に応じて、血流方向に沿って複数のコンパートメントに分割されている。予測部16は、予測対象のコンパートメントを含む組織の体積と、当該組織の毛細血管体積と、当該組織の細胞外液腔体積とを、分割コンパートメント数で除算して、各コンパートメントについて画素値の経時変化を予測する。例えば、分割コンパートメント数が15である場合、予測部16は、組織の体積と、毛細血管体積と、細胞外液腔体積とのそれぞれを、15で除算した値に基づいて画素値の経時変化を予測する。
【0033】
被写体の組織は、右心室、大動脈、静脈、動脈、脳(頭)、上肢、心筋(右冠動脈が支配的な心筋、前下行枝が支配的な心筋、回旋枝が支配的な心筋)、肺、肝臓、胃、脾臓、膵臓、腸管、腎臓、尿管、下肢、左心室、上行大動脈、下行大動脈、及び腹部大動脈を含む。そして、上肢静脈から注入された造影剤は、右心室、肺、左心室、大動脈(上行大動脈、下行大動脈)を介して各臓器に移動し、その後、静脈を介して右心室に到達する。そして、体内に注入された造影剤は、腎臓及び尿管を介して体外に排出される。
【0034】
予測部16は、血流方向における上流及び下流のそれぞれに向かって右心室から順に各組織の画素値の経時変化を予測する。例えば、予測部16は、最初に右心室の予測を行い、次いで右心室に対して血流方向の上流側に位置する大静脈及び静脈と、右心室に対して血流方向の下流側に位置する動脈とを含む第2組織群の予測を行う。すなわち、予測部16は、血流方向における上流及び下流のそれぞれに向かって造影剤の注入箇所に近い組織から順に各組織の画素値の経時変化を予測する。
【0035】
また、予測部16は、各組織(血管及び臓器)における画素値の変化を時間関数として求めるために、例えば下記式1のような微分方程式を用いる。ここでは、コンパートメントに流入する造影剤の濃度をCとし、コンパートメントから流出する造影剤の濃度をCとし、コンパートメントの体積をVとし、コンパートメントにおける単位組織あたりの血流量(血流速度)をQとしている。
【0036】
【数1】
【0037】
さらに、予測部16は、右心室、左心室、血管以外の組織における画素値の変化を求めるために、造影剤が毛細血管から細胞外液腔へと透過する際の染み出し速度と、細胞外液腔から毛細血管へと透過する際の染み戻り速度とを考慮する。そのため、予測部16は、例えば下記式2及び式3のような微分方程式を用いている。ここでは、細胞外液腔の体積をVecとし、細胞外液腔の造影剤の濃度をCecとし、毛細血管の体積をVivとし、毛細血管の造影剤の濃度をCivとし、染み出し速度をPSとし、染み戻り速度をPSとしている。
【0038】
【数2】
【0039】
【数3】
【0040】
上記微分方程式を解くことにより、注入開始からの経過時間と画素値(造影剤濃度)の変化が時間関数として求められる。この予測に用いられるパラメータの例として、胃については、120mL以上160mL以下の組織体積、2mL以上5mL以下の毛細血管体積、12mL以上18mL以下の細胞外液腔体積、120mL/min以上180mL/min以下の単位組織あたり血流量(動脈血流速度)、15以上25以下の染み出し速度、及び15以上25以下の染み戻り速度が用いられる。
【0041】
また、脾臓については、120mL以上160mL以下の組織体積、10mL以上15mL以下の毛細血管体積、45mL以上65mL以下の細胞外液腔体積、150mL/min以上250mL/min以下の単位組織あたり血流量、15以上25以下の染み出し速度、及び15以上25以下の染み戻り速度が用いられる。
【0042】
また、膵臓については、120mL以上150mL以下の組織体積、3mL以上6mL以下の毛細血管体積、30mL以上50mL以下の細胞外液腔体積、120mL/min以上180mL/min以下の単位組織あたり血流量、15以上25以下の染み出し速度、及び15以上25以下の染み戻り速度が用いられる。
【0043】
また、腸管については、1800mL以上2000mL以下の組織体積、30mL以上40mL以下の毛細血管体積、500mL以上600mL以下の細胞外液腔体積、0.4mL/min以上0.5mL/min以下の単位組織あたり血流量、150以上250以下の染み出し速度、及び150以上250以下の染み戻り速度が用いられる。この染み出し速度及び染み戻り速度は、毛細血管面積と透過性(permeability)の積により算出できる。例えば、人体内の毛細血管の総面積を800m2と仮定して、各臓器ごとにその重量に応じた毛細血管面積を割り当てる。そして、全ての臓器の透過性を1ml/min/gと仮定して、染み出し速度及び染み戻り速度が求められる。
【0044】
さらに、予測部16は、隣り合うコンパートメント間での造影剤の拡散を考慮する。すなわち、予測部16は、隣り合うコンパートメント間において、濃度の高いコンパートメントの造影剤濃度を低下させて、濃度の低いコンパートメントの造影剤濃度を増加させるように画素値の経時変化を予測する。ここで、予測部16は、濃度差が大きい場合には、造影剤濃度の低下量及び増加量を大きくする。
【0045】
また、予測部16は、造影剤の浸透圧比が大きいときには、造影剤濃度の低下量及び増加量を大きくする。さらに、予測部16は、コンパートメント同士の接触面積が大きい場合には、造影剤濃度の低下量及び増加量を大きくする。具体的に、予測部16は、異なる組織のコンパートメント同士が隣り合う場合には、接触面積が小さくなるため、造影剤濃度の低下量及び増加量を小さくする。そして、予測部16は、同じ組織のコンパートメント同士が隣り合う場合には、接触面積が大きくなるため、造影剤濃度の低下量及び増加量を大きくする。
【0046】
[造影剤の排出]
実際の体内に注入された造影剤の一部は、腎臓及び尿管を介して体外に排出されるため再循環しない。そのため、予測部16は、所定の排出速度に基づく造影剤の排出量を算出し、腎臓の毛細血管内の造影剤から当該排出量を減じてシミュレーションする。その結果、腎臓に到達した造影剤の一部が、体全体(血漿中)の合計造影剤量から減算される。具体的に、予測部16は、腎臓に到達した造影剤を、毛細血管、細胞外液腔、及び細胞実質に割り当てる。その後、予測部16は、腎臓の毛細血管に割り当てられた造影剤を3分割して、腎動脈、腎臓の細胞外液腔、及び尿管に割り当てる。すなわち、予測部16は、腎臓の毛細血管から排出量の造影剤を尿管に移動させてシミュレーションする。この尿管に移動された造影剤は、体内には戻らないため、体全体の合計造影剤量からは減算される結果となる。
【0047】
尿管に移動させる造影剤は、腎臓の毛細血管内の造影剤濃度に比例して多くなる。すなわち、造影剤の排出速度(mL/sec)は、毛細血管内の造影剤濃度に比例して増加する。この造影剤濃度は、単位時間(例えば10msec)毎の組織(コンパートメント)中の造影剤及び血液に対する造影剤の割合である。また、実際の体内に注入された造影剤は、eGFRに比例して多くなる。そこで、予測部16は、eGFRに調整係数を乗算して得た値を、さらに造影剤濃度に乗算して造影剤の排出速度を求める。この調整係数は、0より大きく5より小さい値である。造影剤の排出をシミュレーションすることによって、体全体の合計造影剤量が経時的に減少するため、より精度の高いシミュレーションを行うことができる。さらに、予測部16は、尿管中の造影剤が尿に押されて膀胱に移動することをシミュレーションするように、所定時間が経過すると尿管内の造影剤を減算してもよい。
【0048】
シミュレーションが終了すると、予測部16は、シミュレーション結果を記憶部24に順次記憶させる。このシミュレーション結果は、組織に関連付けられた時間ごとの画素値の情報が含まれている。そして、表示部26は、複数のコンパートメントを含む各組織の予測画像を模式的に表示する。さらに、制御部25は、記憶部24から画素値を読み出して、画素値の経時変化に応じて各コンパートメントの濃淡を変更するように表示部26を制御する。
【0049】
[メイン画面]
図2を参照して、表示部26に表示される一例としてのメイン画面について説明する。メイン画面は各種数値を入力するための操作画面であり、メイン画面の右側には予測画像41が配置されている。また、メイン画面の左上側には条件設定欄42が配置されており、メイン画面の中央上側には時間濃度曲線欄43が配置されている。また、メイン画面の中央下側には表示ボタン44が配置されており、メイン画面の右下側には患者設定欄45が配置されている。
【0050】
時間濃度曲線欄43において、横軸は注入開始からの経過時間(sec)に対応し、縦軸は画素値(HU)に対応する。ただし、合計造影剤量を表示させる場合、縦軸は造影剤量(mL)に対応する。この時間濃度曲線欄43には、複数の組織の時間濃度曲線を重ねて表示させることができる。この場合、制御部25は、各時間濃度曲線を異なる色で表示する。
【0051】
ユーザーは、時間濃度曲線欄43の下側のスクロールバー431を操作して、現在時点バー432を図2中左右に動かすことができる。制御部25は、ユーザーがスクロールバー431を操作して選択した時間における各コンパートメントの画素値を記憶部24から読み出す。そして、制御部25は、読み出した画素値を予測画像41に反映させ、表示部26に表示させる。例えば、図2においては、注入開始から31.0sec経過時点が選択され、当該時点の予測画像41が表示されている。初期設定では、注入開始時、つまり0sec経過時点における予測画像41が表示される。
【0052】
ユーザーは、時間濃度曲線欄43の左側のスクロールバー433を操作して、画素値バー434を図2中上下に動かすことができる。制御部25は、ユーザーがスクロールバー433を操作して選択した位置における画素値を、スクロールバー433の下側に表示させる。例えば、図2においては、画素値350HUが選択され、スクロールバー433の下側に表示されている。また、ユーザーは、Y軸固定チェックボックス435を選択して、Y軸の最大値を固定できる(図2においてはY軸固定設定が選択されていない)。例えば、Y軸の最大値が400に固定された場合、合計造影剤量(例えば最大50.0mL)のみを表示させる場合であっても、Y軸の最大値は400で維持される。一方、Y軸固定設定が選択されていなければ、例えば最大50.0mLの合計造影剤量のみを表示させる場合、Y軸の最大値は50に変更される。
【0053】
また、ユーザーは、予測画像41の下側の操作ボタン411によって画像を操作することができる。操作ボタン411には、メイン画面の左から順に停止ボタン、再生ボタン、3倍速再生ボタン、10倍速再生ボタン、30倍速再生ボタン、及びリセットボタンが含まれている。ユーザーが再生ボタンを選択すると、経過時間に沿って予測画像41が連続的に動画として再生される。ユーザーが3倍速再生ボタン、10倍速再生ボタン、及び30倍速再生ボタンを選択すると、動画再生速度が増加する。これにより、ユーザーは、所望の時間における、各組織内の造影剤の位置を視覚により認識することができる。現在時点バー432は、予測画像41が連続的に再生されると、経過時間に対応してX軸に沿って移動する。また、ユーザーが停止ボタンを選択すると再生が一時停止する。ユーザーが、リセットボタンを選択すると再生が終了し、予測画像41は初期設定(0sec経過時点)に戻る。
【0054】
メイン画面の予測画像41の右側においては、ウィンドウ幅(WW)及びウィンドウレベル(WL)を選択するための複数のWL/WW選択ボタン412が配置されている。このウィンドウ幅は、画素値のコントラストの範囲に対応し、ウィンドウレベルは画面の明るさに対応する。図2においては、ウィンドウ幅400及びウィンドウレベル50が設定されている。ウィンドウレベルの値からウィンドウ幅の値の半分を減算して得られた値よりも画素値が小さい場合、表示部26は黒で表示する。また、ウィンドウレベルの値にウィンドウ幅の値の半分を加算して得た値よりも画素値が大きい場合、表示部26は白で表示する。さらに、表示部26は、造影されていない組織を生来の画素値で表示する。代替的に、メイン画面には、ウィンドウ幅及びウィンドウレベルを入力する入力欄を配置してもよい。
【0055】
表示する組織を選択するための複数の表示ボタン44は、時間濃度曲線欄43の下側に配置されている。ユーザーは、時間濃度曲線欄43に表示する組織を、表示ボタン44の中から選択することができる。図2では、肝動脈ボタン442及び合計造影剤量ボタン441が選択されている。ユーザーが合計造影剤量ボタン441を選択すると、体内に残留する造影剤の総量の変化が時間濃度曲線欄43に表示される。
【0056】
条件設定欄42では、薬剤情報、注入プロトコル、管電圧、及び解析時間を設定できる。具体的に、ユーザーは、薬剤プルダウンメニュー421を操作して、複数の薬剤名の中から1つを選択できる。ユーザーが薬剤を選択すると、薬液情報取得部14は、ユーザーが選択した薬剤名に対応する、造影剤濃度、粘稠度、浸透圧比及び造影剤量を取得する。造影剤濃度、粘稠度、浸透圧比及び造影剤量は、予め記憶部24に入力されている。
【0057】
また、薬液情報取得部14は、ユーザーが入力部27から入力した、造影剤濃度、粘稠度、浸透圧比及び造影剤量を取得することもできる。具体的に、ユーザーが造影剤濃度ボタンを選択すると、制御部25は造影剤濃度の入力画面を表示部26に表示する。そして、ユーザーは、当該入力画面から所望の造影剤濃度を入力できる。同様に、ユーザーは、造影剤濃度、粘稠度、浸透圧比及び造影剤量を入力できる。制御部25は、入力に応じて薬液情報取得部14が取得した造影剤濃度、粘稠度、浸透圧比及び造影剤量を、造影剤表示欄に表示する。
【0058】
造影剤設定欄では、ユーザーは、注入時間ボタン422を選択して、注入プロトコルにおける造影剤の注入時間を入力できる。ユーザーが注入時間ボタン422を選択すると、制御部25は注入時間の入力画面を表示部26に表示する。そして、ユーザーは、当該入力画面から所望の注入時間を入力できる。同様に、ユーザーは、注入速度ボタン423を選択して、注入プロトコルにおける造影剤の注入速度を入力できる。さらに、造影剤設定欄には、体重当たり造影剤量(mgI/kg)を入力できるように、体重当たり造影剤量ボタンを配置してもよい。この場合、体重当たり造影剤量が入力されると、予測部16は、体重当たり造影剤量に体重を乗算して、自動的に造影剤量を変更する。
【0059】
ユーザーは、クロス注入チェックボックス425を選択して、クロス注入の実行の有無を選択できる。図2においては、クロス注入の実行が選択されている。同様にユーザーは、リンク速度設定チェックボックス426を選択して、リンク速度設定の有無を選択できる。図2においては、リンク速度設定が選択されていない。
【0060】
生理食塩水(生食)設定欄では、ユーザーは、注入時間ボタン422を選択して、注入プロトコルにおける生理食塩水の注入時間を入力できる。ユーザーが注入時間ボタン422を選択すると、制御部25は注入時間の入力画面を表示部26に表示する。そして、ユーザーは、当該入力画面から所望の注入時間を入力できる。同様に、ユーザーは、注入速度ボタン423及び生理食塩水量ボタン424を選択して、注入プロトコルにおける生理食塩水の注入速度及び生理食塩水量をそれぞれ入力できる。
【0061】
生理食塩水設定欄の下側には、注入量表示画面427が配置されている。注入量表示画面427において、横軸は注入開始からの経過時間であり、縦軸は注入速度である。制御部25は、プロトコル取得部12が取得した注入プロトコルにおける注入量を注入量表示画面427に表示させる。図2においては、クロス注入の実行が設定されており、造影剤を注入速度4.0mL/secで注入し、所定時間経過後に注入速度を漸減するグラフが表示されている。このグラフにおいて、実線で囲まれた領域の面積が造影剤の注入量を表している。この場合、予測部16は、クロス注入を反映させた状態で各組織の画素値の経時変化を予測する。
【0062】
また、注入量表示画面427においては、注入開始から所定時間経過後に生理食塩水の注入を開始して、注入速度を漸増して所定時間経過後に注入速度4.0mL/secに到達するグラフが表示されている。このグラフにおいて、点線で囲まれた領域の面積が生理食塩水の注入量を表している。造影剤の注入量を表す領域、及び生理食塩水の注入量を表す領域は、それぞれ異なる色で塗り潰して表示してもよい。
【0063】
クロス注入の実行が選択されていない場合は、造影剤の注入が完了した時点から生理食塩水の注入が開始するグラフが表示される。例えば、注入開始から造影剤を注入速度4.0mL/secで注入し、50.0mLの造影剤の注入が完了した時点で、生理食塩水を注入速度4.0mL/secで注入し、25.0mLの生理食塩水の注入が完了した時点で注入が終了するようなグラフが表示される。
【0064】
リンク速度設定が選択されている場合は、造影剤の注入速度と生理食塩水の注入速度とが同一になるように設定される。例えば、造影剤の注入速度を4.0mL/secから5.0mL/secに変更した場合、生理食塩水の注入速度が自動的に5.0mL/secに設定される。この場合、生理食塩水の注入速度の入力を禁止してもよい。また、生理食塩水の注入速度を変更した場合に、造影剤の注入速度を自動的に設定してもよい。
【0065】
注入量表示画面427の下側には、管電圧ボタン428、解析時間ボタン429、及び更新ボタン420が配置されている。ユーザーは、管電圧ボタン428を選択して、管電圧を設定できる。ユーザーが管電圧ボタン428を選択すると、制御部25は管電圧の入力画面を表示部26に表示する。そして、ユーザーは、当該入力画面から所望の管電圧を入力できる。同様に、ユーザーは、解析時間ボタン429を選択して、解析時間を入力できる。
【0066】
患者設定欄45は操作ボタン411の下側に配置されている。患者設定欄45では、体重、身長、心機能、及び心拍数を設定できる。制御部25は、被写体情報取得部11が取得した被写体情報に基づいて、予め体重、身長、心機能、及び心拍数を患者設定欄45に表示する。被写体情報取得部11は、ユーザーが入力部27から入力した、体重、身長、心機能、及び心拍数を取得することもできる。具体的に、ユーザーが体重ボタン451を選択すると、制御部25は体重の入力画面を表示部26に表示する。そして、ユーザーは、当該入力画面から被写体の体重を入力できる。同様に、ユーザーは、身長ボタン452、心機能ボタン453、及び心拍数ボタン454を選択して、被写体の身長、心機能及び心拍数をそれぞれ入力できる。
【0067】
また、患者設定欄45には、体表面積欄及び心拍出量欄が配置されている。予測部16は、被写体情報取得部11が取得した被写体の体重及び身長に基づいて体表面積を算出する。制御部25は、算出された体表面積を体表面積欄に表示する。ユーザーが被写体の体重等を入力した場合、被写体情報取得部11は入力された体重等を取得する。同様に、予測部16は、被写体情報取得部11が取得した被写体の体表面積、心機能及び心拍数に基づいて心拍出量を算出する。制御部25は、算出された心拍出量を心拍出量欄に表示する。
【0068】
さらに、患者設定欄45には、eGFR欄、クレアチニン値ボタン、年齢ボタン及び性別ボタンを配置してもよい。この場合、ユーザーは、クレアチニン値ボタン、年齢ボタン及び性別ボタンを選択して、被写体のクレアチニン値、年齢及び性別をそれぞれ入力できる。被写体情報取得部11は、入力されたクレアチニン値等を取得する。予測部16は、取得された被写体のクレアチニン値、年齢及び性別に基づいてeGFRを算出する。制御部25は、算出されたeGFRをeGFR欄に表示する。代替的に、被写体情報取得部11は、心拍数を外部測定器又は記憶部24から取得することもできる。さらに、被写体情報取得部11は、一回拍出量又は心拍出量を外部測定器から取得することもできる。一回拍出量が取得された場合、予測部16は、一回拍出量に心拍数を乗算して心拍出量を算出する。
【0069】
ユーザーは、設定が終了したら、更新ボタン420を選択する。これにより、入力された各種情報が取得され、予測部16は、取得された各種情報に従ってシミュレーションを行ってシミュレーション結果を記憶部24に記憶させる。その後、制御部25は、記憶部24からシミュレーション結果を読み出し、ユーザーが選択した表示ボタン44に対応する組織の予測画像41を表示する。同様に、制御部25は、ユーザーが選択した表示ボタン44に対応する組織の時間濃度曲線を時間濃度曲線欄43に表示する。
【0070】
図2のメイン画面タブの右側には、自動最適化タブ46及び組織設定タブ47が配置されている。ユーザーが自動最適化タブ46を選択すると、制御部25は自動最適化画面(図3)を表示部26に表示する。そして、ユーザーは、自動最適化画面から注入プロトコルの最適化を自動的に実行できる。また、ユーザーが組織設定タブ47を選択すると、制御部25は組織設定画面(不図示)を表示部26に表示する。そして、ユーザーは、組織設定画面から組織情報(例えば、組織の体積、毛細血管の体積、細胞外液腔の体積、単位組織あたりの血流量、組織における造影剤の染み出し速度、及び組織における造影剤の染み戻り速度)を入力できる。
【0071】
[自動最適化画面]
図3は注入プロトコルを自動で最適化するための自動最適化画面を示している。自動最適化画面の上側には最適化設定欄が配置され、自動最適化画面の下側にはプリセットボタン461と、ロードボタン462とが配置されている。ユーザーが自動最適化画面の最適化ボタン467を選択すると、予測部16は、注入プロトコルを自動的に最適化する。
【0072】
最適化設定欄には、ターゲットプルダウンメニュー463、目標画素値ボタン464、目標持続時間ボタン465、最大造影剤量ボタン466、最適化ボタン467、時間固定チェックボックス468、及び速度固定チェックボックス469が配置されている。ユーザーは、ターゲットプルダウンメニュー463を操作して、複数の組織の中から1つを選択できる。ユーザーがターゲット組織を選択すると、組織情報取得部13は、ユーザーが選択したターゲット組織に対応する組織情報を取得する。
【0073】
また、ユーザーは、目標画素値ボタン464を選択して、目標画素値を入力できる。ユーザーが目標画素値ボタン464を選択すると、制御部25は目標画素値の入力画面を表示部26に表示する。そして、ユーザーは、当該入力画面から所望の目標画素値を入力できる。同様に、ユーザーは、目標持続時間ボタン465、及び最大造影剤量ボタン466を選択して、目標持続時間及び最大造影剤量をそれぞれ入力できる。
【0074】
目標値取得部15は、入力された目標画素値及び目標持続時間を取得する。また、薬液情報取得部14は、入力された最大造影剤量を取得する。代替的に、薬液情報取得部14は、ユーザーが選択した薬剤名に基づいて、シリンジに充填されている造影剤量を最大造影剤量として取得してもよい。また、薬液情報取得部14は、造影剤単体の投与量(gI)とeFGRとの比が1未満となるように、最大造影剤量を制限してもよい。さらに、薬液情報取得部14は、eFGRと最大造影剤量とが関連付けられてテーブルを参照して最大造影剤量を取得してもよい。このテーブルは、予め記憶部24に記憶されている。
【0075】
さらに、ユーザーは、時間固定チェックボックス468又は速度固定チェックボックス469を選択して、時間固定又は速度固定の条件を選択できる。図3においては、速度固定の条件が選択されている。速度固定の条件が選択されると、予測部16は、注入速度を変更せずに再シミュレーションを実行する。時間固定の条件が選択されると、予測部16は、注入時間を変更せずに再シミュレーションを実行する。
【0076】
ユーザーは、プリセットボタン461を選択して、ボタン選択時に最適化設定欄に入力されている設定をプリセット1からプリセット4として保存できる。プリセットボタン461が選択されると、予測部16は、選択されたボタンに応じてプリセット1からプリセット4として入力されている設定を記憶部24に記憶させる。また、ユーザーは、ロードボタン462を選択して、プリセット1からプリセット4として保存された設定を読み出すことができる。ロードボタン462が選択されると、予測部16は、選択されたボタンに応じてプリセット1からプリセット4として記憶された設定のいずれかを記憶部24から読み出す。そして、予測部16は、読み出した設定を目標画素値等に反映させる。
【0077】
[自動最適化]
以下、図4のフローチャートを参照して、最適化について説明する。図4に示すように、ユーザーが最適化ボタン467を選択すると(S101)、予測部16は各種情報を取得する(S102)。具体的に、予測部16は、プロトコル取得部12から、造影剤の注入プロトコルを取得する。さらに、予測部16は、薬液情報取得部14から最大造影剤量を取得し、目標値取得部15から目標画素値及び目標持続時間を取得する。その後、予測部16は、取得した最大造影剤量に基づき、取得した注入プロトコルに従って最大造影剤量の半分を使用造影剤量として注入する場合の被写体の組織の画素値の経時変化をシミュレーションする。そして、予測部16は、シミュレーション結果から予測持続時間を求める(S103)。
【0078】
次に、予測部16は、求めた予測持続時間を目標持続時間と比較する(S104)。そして、予測持続時間が目標持続時間より短い場合(S105でYES)、予測部16は、前回のシミュレーションで使用した使用造影剤量よりも多量の造影剤を注入する場合の被写体の組織の画素値の経時変化を再シミュレーションする。つまり、予測部16は、使用造影剤量を増加させる(S106)。具体的に、再シミュレーションで使用する使用造影剤量Vn+1は、前回のシミュレーションで使用した使用造影剤量をV、目標時持続間をT、前回のシミュレーションで得られた予測持続時間T、とすると、下記式4によって算出される。ここで、重みづけ係数Wは、例えば0.5である。この重みづけ係数Wは、再シミュレーションの繰り返し回数に応じて小さくすることができる。
【0079】
【数4】
【0080】
例えば、前回のシミュレーションで使用した使用造影剤量Vを50mL、目標時持続間Tを8sec、予測持続時間Tを7.5sec、重みづけ係数Wを0.5とすると、下記式5のように再シミュレーションで使用する使用造影剤量50.25mLが算出される。
【0081】
【数5】
【0082】
予測部16は、造影剤の注入速度及び注入時間の少なくとも一方を変動させて再シミュレーションを行う。すなわち、使用造影剤量が増加するため、予測部16は、注入プロトコルの注入速度及び注入時間の少なくとも一方を変更する。具体的に、速度固定の条件が選択されている場合、予測部16は、注入プロトコルにおける注入速度を変更せずに注入時間を長くする。これにより、注入時間が長くなる結果、使用される造影剤量は増加する。時間固定の条件が選択されている場合、予測部16は、注入プロトコルにおける注入時間を変更せずに注入速度を増加させる。これにより、単位時間当たりの注入速度が増加する結果、使用される造影剤量は増加する。
【0083】
予測持続時間が目標持続時間より長い場合(S107でYES)、予測部16は、前回のシミュレーションで使用した使用造影剤量よりも少量の造影剤を注入する場合の被写体の組織の画素値の経時変化を再シミュレーションする。つまり、予測部16は、使用造影剤量を低減させる(S108)。例えば、前回のシミュレーションで使用した使用造影剤量Vを50mL、目標時持続間Tを8sec、予測持続時間Tを8.5sec、重みづけ係数Wを0.5とすると、下記式6のように再シミュレーションで使用する使用造影剤量49.75mLが算出される。
【0084】
【数6】
【0085】
同様に、予測部16は、造影剤の注入速度及び注入時間の少なくとも一方を変動させて再シミュレーションを行う。すなわち、使用造影剤量が低減するため、予測部16は、注入プロトコルの注入速度及び注入時間の少なくとも一方を変更する。具体的に、速度固定の条件が選択されている場合、予測部16は、注入プロトコルにおける注入速度を変更せずに注入時間を短くする。これにより、注入時間が短くなる結果、使用される造影剤量は減少する。時間固定の条件が選択されている場合、予測部16は、注入プロトコルにおける注入時間を変更せずに注入速度を低減させる。これにより、単位時間当たりの注入速度が低減する結果、使用される造影剤量は低減する。
【0086】
予測部16は、変更した注入プロトコルに従って算出した使用造影剤量を注入する場合の、被写体の組織の画素値の経時変化を再シミュレーションする(S109)。そして、予測部16は、再シミュレーション結果から予測持続時間を再度求める。その後、予測部16は、再シミュレーション結果及び再シミュレーションで使用した注入プロトコルを記憶部24に記憶させる。ここで、終了条件を満たす場合(S110でYES)には、再シミュレーションが終了する。この終了条件は、予測持続時間が目標持続時間と一致した場合、所定回数(例えば40回)再シミュレーションを実行した場合、再シミュレーション開始から所定時間(例えば10sec)経過した場合、又は変動が所定閾値以下になった場合である。この変動が所定閾値以下という条件は、再シミュレーション時の予測持続時間と前回の再シミュレーション時の予測持続時間との差分が所定閾値(例えば、0.01sec)以下という条件である。
【0087】
終了条件を満たさない場合(S110でNO)、予測部16は、求めた予測持続時間を目標持続時間と再度比較する(S104)。そして、予測部16は、予測持続時間が目標持続時間より短い場合、より多量の造影剤を注入する場合の被写体の組織の画素値の経時変化を再シミュレーションする。また、予測部16は、予測持続時間が目標持続時間より長い場合、より少量の造影剤を注入する場合の被写体の組織の画素値の経時変化を再シミュレーションする。そして、予測部16は、再シミュレーション結果から予測持続時間を再度求める。
【0088】
予測部16は、再シミュレーションを終了すると、記憶した再シミュレーション結果のうち、目標持続時間と予測持続時間の差分が最も少ないシミュレーション結果に対応する注入プロトコルを最適な注入プロトコルとして記憶部24に記憶させる。代替的に、予測部16は、再シミュレーション結果のうち、予測持続時間の長さが目標持続時間以上であり且つ使用造影剤量が最も少ないシミュレーション結果に対応する注入プロトコルを最適な注入プロトコルとして記憶部24に記憶させてもよい。
【0089】
続いて、制御部25は、自動最適化画面を閉じて、メイン画面を開く。同時に、予測部16は、最適な注入プロトコルの条件(造影剤量、造影剤の注入時間及び注入速度、生理食塩水量、及び生理食塩水の注入時間及び注入速度)を造影剤設定欄に反映させる。そして、制御部25は、最適化前の注入プロトコルを最適な注入プロトコルと置き換えて表示する。さらに、制御部25は、最適な注入プロトコルに対応するシミュレーション結果から時間濃度曲線を読み出して時間濃度曲線欄43に表示する。同様に、制御部25は、予測画像41を読み出して表示し、自動最適化が終了する。
【0090】
再シミュレーションの結果において、目標画素値に達しない場合又は目標持続時間に達しない場合、制御部25は、シミュレーション条件の修正提案を表示させる。つまり、再シミュレーションを終了したときに目標を達成していない場合、制御部25は、シミュレーション条件の修正提案を表示部26に表示させる。この修正提案では、一例として、管電圧の低減、造影剤量の増加(例えば造影剤量の5割増し)、注入速度の増加(例えば注入速度の5割増し)、又は解析時間の延長を、ユーザーに提案する。
【0091】
以上説明した第1実施形態に係る発明によれば、目標持続時間に渡って目標画素値を維持するような注入プロトコルを使用した場合の、被写体の組織における画素値の経時変化をシミュレーションすることができる。また、第1実施形態のシミュレータ20は、実際の組織における画素値の経時変化に近似したより高精度の予測を行うことができる。さらに、目標持続時間に渡って目標画素値を維持する最適な注入プロトコルを得ることができる。
【0092】
メイン画面には、ヘリカルスキャンボックスをさらに配置してもよい。ユーザーは、ヘリカルスキャンボックスを選択して、寝台移動速度(cm/sec)を入力することができる。このヘリカルスキャンボックスが選択されると、制御部25は、ヘリカルスキャンによる遅延時間を取得する。ここで、遅延時間は、頭を撮像してから各組織を撮像するまでの経過時間(寝台の移動時間)に対応し、予測画像41の上端から各組織までの長さに基づいて求められる。
【0093】
そして、制御部25は、ユーザーが選択した時間(現在時点)に遅延時間を加算した時間における画素値を記憶部24から読み出す。すなわち、制御部25は、取得した遅延時間を現在時点に加算して得られた時間における各組織の画素値を読み出す。これにより、ヘリカルスキャンを行った際の予測画像41を得ることができる。例えば、現在時点を注入開始直後の時点(0sec)とした場合に、制御部25は、脳については注入開始直後の画素値を示し、右心室については注入開始から5sec経過した時点の画素値を示す。また、制御部25は、肝臓については注入開始から7.5sec経過した時点の画素値を示す。
【0094】
[第2実施形態]
注入装置及び撮像システムの概略図である図5を参照して、シミュレータ20(図1)を備える撮像システム100について説明する。第2実施形態において、シミュレータ20は、撮像システム100及び注入装置2の少なくとも一方に搭載される。なお、第2実施形態の説明においては、第1実施形態との相違点について説明し、第1実施形態で説明した構成要素については説明を省略する。特に説明した場合を除き、同じ参照符号を付した構成要素は略同一の動作及び機能を奏し、その作用効果も略同一である。
【0095】
図5に示すように、撮像システム100は、造影剤を注入する注入装置2と、注入装置2に有線又は無線で接続され且つ被写体を撮像する医療用の撮像装置3とを備えている。この撮像装置3としては、例えば、MRI(Magnetic Resonance Imaging)装置、CT(Computed Tomography)装置、アンギオ撮像装置、PET(Positron Emission Tomography)装置、SPECT(Single Photon Emission Computed Tomography)装置、CTアンギオ装置、MRアンギオ装置、超音波診断装置、及び血管撮像装置等の各種医療用の撮像装置がある。以下ではCT装置について説明する。
【0096】
撮像装置3は、撮像プランに従って被写体を撮像する撮像部31と、撮像装置3の全体を制御する制御装置32を有している。この撮像プランには、例えば、撮像部位、実効管電圧、機種名、メーカー名、撮像時間、管電圧、撮像範囲、回転速度、ヘリカルピッチ、曝射時間、線量、及び撮像方法が含まれている。そして、制御装置32は、撮像プランに従うように撮像部31を制御して被写体を撮像する。さらに、制御装置32は、シミュレータ20としても機能する。また、制御装置32は、撮像部31、注入装置2、及びサーバー(外部記憶装置)と有線又は無線によって通信できる。
【0097】
撮像部31は、寝台と、被写体にX線を照射するX線源と、被写体を透過したX線を検出するX線検出器とを有している。この撮像部31は、被写体にX線を曝射し、被写体を透過したX線に基づいて被写体の体内を逆投影することで、被写体の透視画像を撮像する。代替的に、撮像部31は、ラジオ波又は超音波を用いて撮像してもよい。
【0098】
撮像装置3は、表示部としてのディスプレイ33を有している。このディスプレイ33は、制御装置32に接続されており、装置の入力状態、設定状態、撮像結果、及び各種情報を表示する。代替的に、制御装置32とディスプレイ33とは、一体的に構成することもできる。さらに、撮像装置3は、入力部34として、キーボード等のユーザインタフェースを有している。ユーザーは、薬液情報、注入プロトコル、組織情報、被写体情報及び目標値を、入力部34から撮像装置3に入力することができる。
【0099】
注入装置2は、注入プロトコルに従って造影剤を注入する注入ヘッド21を備えている。そして、注入装置2は、シリンジに充填された薬液、例えば、生理食塩水及び各種造影剤を被写体に注入する。また、注入装置2は、注入ヘッド21を保持するスタンド22と、注入ヘッド21に有線又は無線で接続されたコンソール23とを備えている。
【0100】
コンソール23は、注入ヘッド21を制御する制御装置として機能すると共に、シミュレータ20としても機能する。このコンソール23は、入力表示部として機能するタッチパネル26を備え、注入ヘッド21及び撮像装置3と有線又は無線で通信できる。このタッチパネル26は、注入プロトコル、装置の入力状態、設定状態、注入結果、及び各種情報を表示できる。注入装置2は、タッチパネル26に代えて、表示部としてのディスプレイと、入力部としてのキーボードとを備えていてもよい。
【0101】
注入装置2は、コンソール23に代えて、注入ヘッド21に接続された制御装置と、該制御装置に接続され且つ薬液の注入状況が表示される表示部(例えばタッチパネルディスプレイ)とを有していてもよい。この制御装置も、シミュレータ20として機能する。また、注入ヘッド21及び制御装置は、スタンド22と一体的に構成することもできる。さらに、スタンド22に代えて天吊部材を設け、該天吊部材を介して天井から注入ヘッド21を天吊することもできる。
【0102】
また、注入装置2は、注入ヘッド21を遠隔操作する遠隔操作装置(例えばハンドスイッチ又はフットスイッチ)を有していてもよい。この遠隔操作装置は、注入ヘッド21を遠隔操作して注入を開始又は停止することができる。さらに、注入装置2は、電源又はバッテリーを有していてもよい。この電源又はバッテリーは、注入ヘッド21又は制御装置のいずれかに設けることができ、これらとは別に設けることもできる。
【0103】
注入ヘッド21は、薬液が充填されたシリンジが搭載されるシリンジ保持部と、注入プロトコルに従ってシリンジ内の薬液を押し出す駆動機構とを備えている。また、注入ヘッド21は、駆動機構の動作を入力するための操作部212を有している。操作部212には、例えば駆動機構の前進ボタン、駆動機構の後進ボタン、及び最終確認ボタンが設けられている。さらに、注入ヘッド21は、注入条件、注入状況、装置の入力状態、設定状態、及び各種注入結果が表示されるヘッドディスプレイを備えていてもよい。
【0104】
造影剤が注入される際には、注入ヘッド21に搭載されたシリンジの先端部に延長チューブ等の付属品が接続される。そして、注入準備が完了すると、ユーザーが操作部212の最終確認ボタンを押す。これにより、注入ヘッド21は、注入を開始できる状態で待機する。注入を開始すると、シリンジから押し出された造影剤は、延長チューブを介して被写体の体内へ注入される。
【0105】
また、注入ヘッド21には、RFIDチップ、ICタグ、又はバーコード等のデータキャリアを有するプレフィルドシリンジ、及び種々のシリンジを搭載することができる。そして、注入ヘッド21は、シリンジに取り付けられたデータキャリアの読み取りを行う読取部(不図示)を備えている。このデータキャリアには、薬液に関する薬液情報が記憶されている。さらに、注入ヘッド21は、3つ以上のシリンジ保持部を有していてもよく、又は1つのみのシリンジ保持部を有していてもよい。
【0106】
注入装置2は、不図示のサーバー(外部記憶装置)から情報を受信することができ、サーバーへ情報を送信することもできる。また、撮像装置3も、サーバーから情報を受信することができ、サーバーへ情報を送信することもできる。このサーバーは、例えば、RIS(Radiology Information System)、PACS(Picture Archiving and Communication System)、及びHIS(Hospital Information System)である。
【0107】
サーバーには、予め検査オーダーが記憶されている。この検査オーダーは、被写体に関する被写体情報と、検査内容に関する検査情報とを備えている。また、サーバーは、撮像装置3から送信された画像のデータ等の撮像結果に関する情報と、注入装置2から送信された注入結果に関する情報を記憶することができる。なお、注入装置2及び撮像装置3を操作するために、外部の検像システム又は画像作成用ワークステーションを用いることもできる。
【0108】
第2実施形態の撮像装置3によれば、ユーザーは、ディスプレイ33で予測画像41を確認しながら撮像装置3を操作することができる。また、撮像装置3は、予測部16による予測結果に応じて撮像プランを変更できる。具体的に、撮像装置3は、シミュレーション結果において目標画素値又は目標持続時間に達するように、例えば管電圧又は管電流を変更できる。
【0109】
また、第2実施形態の注入装置2によれば、ユーザーは、コンソール23で予測画像41を確認しながら注入装置2を操作することができる。また、注入装置2は、自動最適化によって得られた最適な注入プロトコルと一致するように、例えば注入速度又は注入時間を変更できる。
【0110】
以上、各実施形態を参照して本発明について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。本発明に反しない範囲で変更された発明、及び本発明と均等な発明も本発明に含まれる。また、各実施形態及び各変形形態は、本発明に反しない範囲で適宜組み合わせることができる。
【0111】
例えば、シミュレータ20は、撮像装置3及び注入装置2の少なくとも一方に有線又は無線接続される外部コンピューターに搭載してもよい。この場合、シミュレータ20は、シミュレーション結果及び最適な注入プロトコルを、撮像装置3及び注入装置2に送信する。
【0112】
表示部26は、体の水平断面のみでなく、冠状断面の予測画像41を表示させることもできる。また、表示部26は、各組織がそれぞれ単独で表示されるようにコンパートメントを配置して、各コンパートメントを画素値に応じた濃度の色で表示してもよい。さらに、表示部26は、各コンパートメントを白黒以外の色で表示してもよい。
【0113】
制御部25は、各組織におけるコンパートメント数が異なるように、表示部26を制御してもよい。この場合、制御部25は、ユーザーが設定したコンパートメント数、又は予め記憶部24に記憶されたコンパートメント数を含むように各組織を表示させる。さらに、制御部25は、目標画素値及び予測持続時間を時間濃度曲線欄43に表示させてもよい。
【0114】
予測部16は、薬液の注入による単位組織あたりの血流量(血流速度)の変化を考慮してもよい。すなわち、予測部16は、薬液の注入速度が通常の血流速度よりも速い場合には、注入速度から血流速度を差し引いて得られた差分を血流速度に加算し、血流速度の上昇を考慮することができる。この場合、予測部16は、加算して得られた血流速度に基づいて画素値の経時変化を予測する。すなわち、予測部16は、画素値の経時変化を予測する際に、コンパートメントにおける単位組織あたりの血流速度Qに得られた差分を加算する。
【0115】
上記の実施形態の一部又は全部は、以下の付記のようにも記載されうるが、以下には限られない。
【0116】
(付記1)予測部は、再シミュレーションを所定回数又は所定時間に渡って繰り返す、シミュレータ。
【0117】
(付記2)予測部は、予測持続時間の長さが目標持続時間以上になるまで再シミュレーションを繰り返す、シミュレータ。
【符号の説明】
【0118】
2:注入装置、3:撮像装置、20:シミュレータ、12:プロトコル取得部、15:目標値取得部、16:予測部、21:注入ヘッド、26:表示部、100:撮像システム、14:薬液情報取得部、25:制御部、24:記憶部
図1
図2
図3
図4
図5