特許第6921568号(P6921568)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6921568積層体の貼着方法および積層体の貼着装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6921568
(24)【登録日】2021年7月30日
(45)【発行日】2021年8月18日
(54)【発明の名称】積層体の貼着方法および積層体の貼着装置
(51)【国際特許分類】
   B29C 65/54 20060101AFI20210805BHJP
【FI】
   B29C65/54
【請求項の数】4
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2017-53372(P2017-53372)
(22)【出願日】2017年3月17日
(65)【公開番号】特開2018-154046(P2018-154046A)
(43)【公開日】2018年10月4日
【審査請求日】2020年1月30日
(73)【特許権者】
【識別番号】000224101
【氏名又は名称】藤森工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100124419
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 敬也
(74)【代理人】
【識別番号】100162293
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷 久生
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 喬彬
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 考勇
【審査官】 馳平 憲一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2016−175401(JP,A)
【文献】 特開平06−042269(JP,A)
【文献】 特開平07−108502(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 63/00−63/48
65/00−65/82
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の板状物あるいはシート状物を貼り合わせるための貼着方法であって、
複数の板状物あるいはシート状物を積層させてなる積層体を複数個並べて設置可能な基台と、
その基台に対向するように設けられた対向板と、
その対向板の内面に接合するように取り付けられたゴム製の膜状体とを備えた貼着装置を用い、
前記基台に設置された複数の積層体を前記基台側から加熱しながら、前記対向板と前記膜状体とによって形成された密封空間に流体を注入することにより膜状体を膨張させて、前記基台に設置された複数個の積層体を同時に押圧するものであり、
前記貼着装置が、前記膜状体の可動領域を、積層体に対して一定の押圧力を加え得る均一押圧領域よりも広くし、かつ、膨張させた前記膜状体によって押圧される積層体の設置領域を、前記均一押圧領域よりも狭くしたものであり、なおかつ、
縦・横それぞれの方向における前記膜状体の可動領域aと前記均一押圧領域bとの長さの比a/bが1.1以上1.8以下に調整されているとともに、縦・横それぞれの方向における前記膜状体の均一押圧領域bと前記基台上の積層体の設置領域cとの長さの比b/cが1.1以上1.8以下以下に調整されていることを特徴とする積層体の貼着方法。
【請求項2】
積層体を構成する複数の板状物あるいはシート状物の内の少なくとも一部が、熱接着性樹脂を含んだものであることを特徴とする請求項1に記載の積層体の貼着方法。
【請求項3】
複数の板状物あるいはシート状物を貼り合わせるための貼着装置であって、
複数の板状物あるいはシート状物を積層させてなる積層体を複数個並べて設置可能な基台と、
その基台に対向するように設けられた対向板と、
その対向板の内面に接合するように取り付けられたゴム製の膜状体とを有しており、
前記基台に設置された複数の積層体を前記基台側から加熱しながら、前記対向板と前記膜状体とによって形成された密封空間に流体を注入することにより膜状体を膨張させて、前記基台に設置された複数個の積層体を同時に押圧するものであるとともに、
前記膜状体の可動領域が、積層体に対して一定の押圧力を加え得る均一押圧領域よりも広くなっており、かつ、膨張させた前記膜状体によって押圧される積層体の設置領域が、前記均一押圧領域よりも狭くなっており、なおかつ、
縦・横それぞれの方向における前記膜状体の可動領域aと前記均一押圧領域bとの長さの比a/bが1.1以上1.8以下に調整されているとともに、縦・横それぞれの方向における前記膜状体の均一押圧領域bと前記基台上の積層体の設置領域cとの長さの比b/cが1.1以上1.8以下以下に調整されていることを特徴とする積層体の貼着装置。
【請求項4】
前記基台の表面に積層体を設置するための凹部が設けられていることを特徴とする請求項3に記載の積層体の貼着装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、合成樹脂等によって形成された複数の部材(パーツ)を貼り合わせて積層体を形成するための貼着方法、およびその貼着方法に適した貼着装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
合成樹脂等によって形成された複数の部材を貼り合わせて積層体を形成するための方法としては、従来から、貼り合わせ界面に接着剤を塗布し、乾燥させた接着剤と被着材である2つの部材との間に働く物理的あるいは化学的な相互作用を利用して、それらの2つの部材を貼り合わせる方法が知られている。たとえば、特許文献1には、溝や突起部を設けた2つの部材を紫外線硬化型の接着剤で貼り合わせることによって、2つの部材の界面に微細な流路や空隙を有するチップを形成する方法が開示されている。
【0003】
また、複数の部材を貼り合わせて積層体を形成するための別の方法として、特許文献2の如く、複数の合成樹脂製の部材を重ねた積層体を加熱・加圧することによって、各部材を熱接着させてなる積層体を形成する方法も知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2015−108616号公報
【特許文献2】国際公開WO2009/139407号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1の如き、2つの部材を接着剤で貼り合わせる方法は、接着剤を乾燥させるために時間が掛かるため、効率的に積層体を形成することができない上、接着剤の塗布斑によって2つの部材の貼り合わせ強度が変動してしまう、という不具合がある。また、上記特許文献2の如き、複数の部材を熱圧着する方法は、加える圧力が変動すると、各積層体において形成される流路や空隙の形状が均一なものとならないし、複数の積層体に加える圧力を均一に調整するのが困難であるため、複数の積層体を一度に製造するのが難しい、という不具合もある。
【0006】
本発明の目的は、上記従来の積層体の貼着方法の問題点を解消し、複数の部材を貼着してなる積層体を、短時間の内に効率的に製造することができる上、製造される積層体の貼り合わせ強度や流路や空隙の形状等の特性のバラツキを低く抑制することが可能で実用的な積層体の貼着方法を提供することにある。また、そのような積層体の貼着方法に好適に用いることができる貼着装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の内、請求項1に記載された発明は、複数の板状物あるいはシート状物を貼り合わせるための貼着方法であって、複数の板状物あるいはシート状物を積層させてなる積層体を複数個並べて設置可能な基台と、その基台に対向するように設けられた対向板と、その対向板の内面に接合するように取り付けられたゴム製の膜状体とを備えた貼着装置を用い、前記基台に設置された複数の積層体を前記基台側から加熱しながら、前記対向板と前記膜状体とによって形成された密封空間に流体を注入することにより膜状体を膨張させて、前記基台に設置された複数個の積層体を同時に押圧するものであり、前記貼着装置が、前記膜状体の可動領域を、積層体に対して一定の押圧力を加え得る均一押圧領域よりも広くし、かつ、膨張させた前記膜状体によって押圧される積層体の設置領域を、前記均一押圧領域よりも狭くしたものであり、なおかつ、縦・横それぞれの方向における前記膜状体の可動領域aと前記均一押圧領域bとの長さの比a/bが1.1以上1.8以下に調整されているとともに、縦・横それぞれの方向における前記膜状体の均一押圧領域bと前記基台上の積層体の設置領域cとの長さの比b/cが1.1以上1.8以下以下に調整されていることを特徴とするものである。
【0009】
請求項2に記載された発明は、請求項1に記載された発明において、積層体を構成する複数の板状物あるいはシート状物の内の少なくとも一部が、熱接着性樹脂を含んだものであることを特徴とするものである。
【0010】
請求項3に記載された発明は、複数の板状物あるいはシート状物を貼り合わせるための貼着装置であって、複数の板状物あるいはシート状物を積層させてなる積層体を複数個並べて設置可能な基台と、その基台に対向するように設けられた対向板と、その対向板の内面に接合するように取り付けられたゴム製の膜状体とを有しており、前記基台に設置された複数の積層体を前記基台側から加熱しながら、前記対向板と前記膜状体とによって形成された密封空間に流体を注入することにより膜状体を膨張させて、前記基台に設置された複数個の積層体を同時に押圧するものであるとともに、前記膜状体の可動領域が、積層体に対して一定の押圧力を加え得る均一押圧領域よりも広くなっており、かつ、膨張させた前記膜状体によって押圧される積層体の設置領域が、前記均一押圧領域よりも狭くなっており、なおかつ、縦・横それぞれの方向における前記膜状体の可動領域aと前記均一押圧領域bとの長さの比a/bが1.1以上1.8以下に調整されているとともに、縦・横それぞれの方向における前記膜状体の均一押圧領域bと前記基台上の積層体の設置領域cとの長さの比b/cが1.1以上1.8以下以下に調整されていることを特徴とするものである。
【0011】
請求項4に記載された発明は、請求項3に記載された発明において、前記基台の表面に積層体を設置するための凹部が設けられていることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0012】
請求項1に記載の積層体の貼着方法によれば、基台に設置されて加熱されている複数の積層体に、膨張させた膜状体により一斉に押圧することによって、複数の積層体を一度に製造することができる(すなわち、各積層体の構成部材である複数の板状物あるいはシート状物を同時に貼着することができる)。また、請求項1に記載の積層体の貼着方法によれば、膜状体の膨張率を調整することによって、積層体に掛ける圧力を容易に微調整することができるので、圧力に敏感な材料(過剰な圧力により損傷し易い材料や、被貼界面に凹凸や内部空間を設ける構造を形成したもの等)からなる積層体でも、歩留まり良く効率的に、かつ、精度良く製造することができる。また、複数の積層体に小さな圧力を長時間に亘って均一かつ持続的に加えることによって、大きな負荷を加えることなくマイルドに積層体を製造することができ、貼着した積層体の面内の均一性も優れている。
【0013】
また、請求項1に記載の積層体の貼着方法によれば、膨張させた膜状体によって複数の積層体を同一の圧力で押圧することが可能となるため、各積層体の被貼着物(板状物あるいはシート状物)同士の貼着強度(熱接着強度)を均一なものとすることができる。さらに、請求項1に記載の積層体の貼着方法は、膜状体の可動領域a、均一押圧領域bとの比(a/b(縦・横それぞれの長さの比))が1.1以上1.8以下となり、膜状体の均一押圧領域bと基台上の積層体の設置領域cとの比(b/c(縦・横それぞれの長さの比))が1.1以上1.8以下以下となるように調整されているため、膨張させた膜状体により各積層体に加えられる圧力がより均一性の高いものとなる上、製造上のロスが小さくなる。
【0014】
請求項2に記載の積層体の貼着方法によれば、より低温・低圧力で積層体を貼着することができるので、温度や圧力に敏感な材料からなる積層体をより効率的に製造することが可能となる。
【0015】
請求項3に記載の積層体の貼着装置は、基台に設置されて加熱されている複数の積層体に、膨張させた膜状体により一斉に押圧することによって、複数の積層体を一度に製造することができる(すなわち、各積層体の構成部材である複数の板状物あるいはシート状物を同時に貼着することができる)。また、請求項4に記載の積層体の貼着装置によれば、膜状体の膨張率を調整することによって、積層体に掛ける圧力を容易に微調整することができるので、圧力に敏感な材料からなる積層体でも、歩留まり良く効率的に、かつ、精度良く製造することができる。
【0016】
請求項4に記載の積層体の貼着装置は、基台に形成された凹部に複数の積層体を嵌め込み設置することによって、膨張させた膜状体によって複数の積層体を押圧する際の位置ずれを防止することができるため、非常に精度良く積層体を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】積層体の貼着装置の外観を示す斜視図である。
図2】(a)は上側部材の底面図であり、(b)は上側部材の鉛直断面図(aにおけるA−A線断面図)である。
図3】基台と上側部材とを組み付けた状態を示す説明図(斜視図)である。
図4】積層体の貼着装置を用いて積層体を製造する様子を示す説明図である(aは、基台の凹部に積層体を設置する様子を示す斜視図であり、bは、対向板と膜状体とによって形成されるキャビティ内にエアーを充填する前の様子を示す右側面図であり、cは、キャビティ内にエアーを充填した後の様子を示す右側面図である)。
図5】金属プレートを利用して基台の凹部内へ積層体を設置した状態を示す説明図(右側面図)である。
図6】基台の変更例を示す説明図(aは、凹部に仕切り板を設けた基台の平面図であり、bは、各凹部に取り出し補助部を連設した基台の平面図である)。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明に係る積層体の貼着方法、および貼着装置の一実施形態について図面に基づいて詳細に説明する。
【0019】
<積層体>
本発明に係る積層体の貼着方法および装着装置によって貼着される積層体としては、プラスチック、ガラス、シリコン、金属等によって形成された複数の板状物あるいはシート状物(パーツ)を積層したものを挙げることができ、その種類は特に限定されない。板状物あるいはシート状物の形成材料のプラスチックとしては、高密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、各種の環状ポリオレフィン、ポリメチルメタクリレート、ポリノルボルネン、ポリフェニレンオキサイド、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリエステル、フェノール樹脂、エポキシ樹脂等の熱可塑性樹脂を挙げることができる。また、ガラスとしては、石英ガラス、無アルカリガラス、ホウケイ酸ガラス、ソーダライムガラス等を挙げることができ、金属としては、銀、ニッケル、アルミニウム合金、ステンレス、ハステロイ、チタン等を挙げることができる。加えて、板状物あるいはシート状物は、上記したプラスチック、ガラス、シリコン、金属等からなる単一物でも良いし、2種類以上の材質によって形成されたものでも良い。
【0020】
<積層体の貼着装置の構造>
図1〜4は、本発明に係る積層体の貼着装置(以下、単に貼着装置という)の一例を示したものであり、貼着装置1は、被着体である積層体L,L・・を設置するための基台2と、それらの積層体L,L・・を押圧するためのゴム製の膜状体4を備えた上側部材3とによって構成されている。以下、具体的な寸法を示して本発明を説明するが、当該寸法の開示は、より本発明を明確にするために寸法を示す意図での開示であり、本発明はそれらの具体的な寸法のもののみに限定されない。
【0021】
基台2は、金属(アルミニウム)によって、所定の大きさ(縦×横×高さ(厚み)=210mm×150mm×30mm)の扁平な直方体状に形成されている。そして、上面の中央部分(周囲の端縁から所定の長さだけ内側に入った部分)には、複数の積層体L,L・・を横に並べて嵌め込み設置可能な所定の大きさ(縦×横×深さ=122mm×62mm×8mm)の凹部5が形成されている。また、基台2の左右の側面の前後の端縁際には、上側部材3と螺着するためのネジ溝を周設したネジ孔(図示せず)が設けられている。
【0022】
一方、上側部材3は、基台2と対向するように配置される対向板6と、対向板6の下面に設置される膜状体4と、その膜状体4を対向板6に固着させるための支持フレーム7と、対向板6の前後左右のコーナーに鉛直に設けられた4本の支柱8,8・・とによって構成されている。対向板6は、金属(アルミニウム)によって、縦横が基台2と同じ大きさの(縦×横=210mm×150mm)の扁平な直方体状に形成されており、約10mmの高さ(厚みを有している)。また、支柱8,8・・は、金属(アルミニウム)によって所定の高さ(55mm)の四角柱状に形成されており、上端際の部分が、対向板6の左右の辺の前後の端縁際に固着された状態になっている。さらに、支柱8,8・・の下端際には、基台2と螺着するためのネジ孔(図示せず)が穿設されている。
【0023】
また、支持フレーム7は、金属(アルミニウム)によって、縦横が対向板6および基台2と同じ大きさの(縦×横=210mm×150mm)の扁平で一定幅(約15mm)の環状(扁平な直方体の中央部分をくり抜いた形状)に形成されており、約10mmの高さ(厚み)を有している。一方、膜状体4は、柔軟性を有するゴム(ブチルゴム)によって厚さ約2.0mmのシート状に形成されている。そして、図2の如く、対向板6の下側に膜状体4を配置させた状態で、図示しない螺着手段により支持フレーム7を対向板6に螺着することによって、膜状体4の周縁際が支持フレーム7および対向板6に挟み込まれて固着された状態になっている。
【0024】
さらに、対向板6の上面の略中央には、対向板6を鉛直方向に貫通するように、エアーの流路となる円筒管9が設けられており、対向板6の上面から突出した状態になっている。円筒管9には、開閉可能となりエアーを導通もしくは封止させるためにコックが設けられている(図示せず)。そして、その円筒管9の先端には、圧縮エアーを充填した圧力ボンベ(図示せず)が接続されている。また、円筒管9の側方には、圧力計10が設置されており、圧力を検知する部分が、対向板6の下面から露出した状態になっている。
【0025】
なお、上記の如く構成された貼着装置1においては、膜状体4の弾性率および厚みの観点から、図4(c)に示すように、支持フレーム7の開口部分(縦×横=180mm×120mm)が、概ね膜状体4の可動領域aとなっており、膜状体4の中央の横長な矩形状の部分(縦×横=150mm×90mm)が、概ね、積層体L,L・・に対して一定の押圧力を加え得る均一押圧領域bとなっている。また、上記の如く、凹部5(縦×横=122mm×62mm)が積層体L,L・・の設置領域cとなっている。したがって、貼着装置1においては、膜状体4の可動領域aが、均一押圧領域bよりも広くなっており(すなわち、可動領域aの縦・横の長さが、それぞれ、均一押圧領域bの縦・横の長さよりも長くなっており)、かつ、積層体L,L・・の設置領域cが、均一押圧領域bよりも狭くなっている(すなわち、設置領域cの縦・横の長さが、それぞれ、均一押圧領域bの縦・横の長さよりも短くなっている)。そして、貼着装置1の縦方向においては、膜状体4の可動領域aと均一押圧領域bとの比(a/b(長さの比))が1.2になっており、膜状体4の均一押圧領域bと積層体L,L・・の設置領域c(すなわち、凹部5の面積)との比(b/c(長さの比))が1.25になっている。また、貼着装置1の横方向においては、膜状体4の可動領域aと均一押圧領域bとの比(a/b)が約1.33になっており、膜状体4の均一押圧領域bと積層体L,L・・の設置領域cとの比(b/c)が約1.45になっている。
【0026】
<貼着装置による積層体の熱接着>
以下、上記した貼着装置1を用いて、複数の積層体L,Lを一度に熱接着する場合の貼着方法について説明する。なお、貼着装置1は、各種の積層体の熱接着が可能であるが、ここでは、厚さ2.0mmのナイロンシート、1.0mmの低密度ポリエチレンシート(熱接着性シート)、厚さ1.0mmのポリエステルシートをこの順で積層し、総厚み4.0mmの2枚の合成樹脂シートS,Sを、低密度ポリエチレンシート面が当接し合うように積層してなる積層体Lを熱接着する場合について説明する。なお、積層体Lは、所定の大きさの矩形状(縦×横=24mm×60mm)に形成されており、構成部材である合成樹脂シートS,Sには、中央の一部に熱接着性シートが積層されていない部分が形成されている。
【0027】
貼着装置1を用いて、複数の積層体L,L・・を一度に熱接着する場合には、まず、外部電源のスイッチをONにして基台2の内部の熱源(図示せず)に電源を投入することによって、基台2を所定の温度(約70℃)になるように加熱する。そして、基台2が所定の温度になった後には、図4(a)の如く、複数(5個)の積層体L,L・・を並べて、基台2の凹部5の内部に嵌め込み設置する。
【0028】
なお、貼着装置1を用いて、積層体L,L・・を熱接着する際に、膜状体4による均一な押圧力が積層体L,L・・に加わるようにするためには、積層体L,L・・の表面(上面)が基台2の表面と同じ高さか、基台2より上側に位置するように積層体L,L・・を設置するのが望ましい。それゆえ、積層体L,L・・の厚みが凹部5の深さに満たない場合には、たとえば、図5の如く、各積層体L,L・・の上下に、金属プレートP,P等を介在させて、それらの積層体L,L・・と金属プレートP,Pとを合わせた厚みが凹部5の深さを上回るように嵩上げするのが望ましい。積層体上に載せる金属プレートPは、図5にあるように積層体よりも面積の大きなものとすることもできる。金属プレートPに合うよう、図5のように基台2の形状に段差をつけることもできる。
【0029】
上記の如く、凹部5に複数の積層体L,L・・を並べて設置した後には、図3の如く、基台2の上面に対向板6が対向するように、上側部材3を基台2に組み付けて両者を固着する(すなわち、ネジ部材(図示せず)を用いて、上側部材3の支柱8,8・・の下端際を基台2に螺着する)。さらに、基台2と上側部材3とを固着した後には、円筒管9を介して圧力ボンベ(図示せず)内のエアーを対向板6と膜状体4とによって形成される密封空間(以下、キャビティCという)内へ充填する。そのようにキャビティC内にエアーが充填されると、そのエアーの圧力により膜状体4が膨張して、基台2の凹部5に設置された積層体L,L・・の上面を一定の圧力で押圧する。なお、キャビティC内の圧力は、圧力計10によって測定され、その測定値が、キャビティC内の圧力を予め設定された圧力に制御するためにフィードバックされる。
【0030】
そして、そのように膜状体4が膨張して基台2に設置された5個の積層体L,L・・が一定の圧力で押圧されると、それらの積層体L,L・・を構成している合成樹脂シートS,Sの界面が、膜状体4の押圧力と基台2から伝達される熱との相互作用によって一定の強度に熱接着される。
【0031】
<貼着装置を用いた積層体の貼着方法による効果>
貼着装置1は、上記の如く、2枚の合成樹脂シートS,Sを積層させてなる複数(5個)の積層体L,L・・を並べて設置可能な基台2と、その基台2に対向するように設けられた対向板6と、その対向板6の内面に取り付けられたゴム製の膜状体4とを有しており、対向板6と膜状体4とによって形成されるキャビティC(密封空間)にエアーを注入することにより膜状体4を膨張させて、基台2に設置された5個の積層体L,L・・を同時に押圧するものである。それゆえ、貼着装置1を用いた積層体の貼着方法によれば、合成樹脂シートS,Sが熱接着された複数の積層体L,L・・を同時に(一度に)効率良く製造することができる。また、貼着装置1を用いた貼着方法によれば、膜状体4の膨張率を調整することによって、各積層体L,L・・に掛ける圧力を容易に微調整することができるので、積層体L,L・・が圧力に敏感な材料(過剰な圧力により損傷し易い材料や、合成樹脂シートS,Sの貼着界面に流路等の微細構造を形成したもの等)からなる場合でも、歩留まり良く、かつ、精度良く製造することができる。
【0032】
また、積層体の貼着装置1は、基台2の表面に積層体L,L・・を設置するための凹部5が設けられているため、貼着装置1を用いた積層体の貼着方法によれば、凹部5に積層体L,L・・を嵌め込み設置することによって、膨張させた膜状体4によって積層体L,L・・を押圧する際の位置ずれを防止することができるので、非常に精度良く積層体L,L・・を製造することができる(合成樹脂シートS,Sを熱接着することができる)。
【0033】
さらに、積層体の貼着装置1は、上記の如く、膜状体4の可動領域aを、積層体L,L・・に対して一定の押圧力を加え得る均一押圧領域bよりも広くし、かつ、膨張させた膜状体4によって押圧される積層体L,L・・の設置領域cを、均一押圧領域bよりも狭くしたものであるため、貼着装置1を用いた積層体の貼着方法によれば、基台2に設置されて加熱されている複数の積層体L,L・・に、膨張させた膜状体4に均等な圧力を加えて押圧することができるので、各積層体L,L・・の合成樹脂シートS,Sの貼り合わせ強度(熱接着強度)のバラツキを低く抑えることができる。
【0034】
<積層体の貼着方法、および貼着装置の変更例>
本発明に係る積層体の貼着方法の構成は、上記した各実施形態の態様に何ら限定されるものではなく、貼着装置の基台、上側部材(対向板、膜状体等)等の形状・寸法・構造・材質、積層体を加熱する温度等の構成を、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、必要に応じて適宜変更することができる。
【0035】
たとえば、本発明に係る貼着装置は、上記実施形態の如く、対向板と膜状体とによって形成される密封空間(キャビティ)内にエアーを注入して膜状体を膨張させるものに限定されず、水や油等のエアーとは異なる流体を密封空間内に注入して膜状体を膨張させるものでも良い。なお、上記実施形態の如く、貼着装置を、エアーを密封空間内に注入して膜状体を膨張させるものとした場合には、万が一流体が漏洩した場合でも復旧させ易い等のメリットがある。
【0036】
また、貼着装置は、上記実施形態の如く、5個の積層体を基台上に一定の方向に並べて設置するものに限定されず、4個以下あるいは6個以上の積層体を設置可能なものでも良いし、複数の積層体を異なる向きに設置可能なものでも良い。加えて、貼着装置は、上記実施形態の如く、複数の積層体を並べて設置可能な一連の凹部を設けたものに限定されず、図6(a)の如く、複数の積層体を別々に設置可能な仕切り11,11・・を凹部5に形成したものや、積層体の取り出しを容易にするための略半円形(略1/4球状)等の取り出し補助部(凹状部)12,12・・を各積層体の設置領域に連設(刻設)したもの等でも良い。
【0037】
また、貼着装置は、上記実施形態の如く、上側部材(対向板)の表面が平坦なものに限定されず、上側部材(対向板)の表面に、把持を容易にするための取手を設けたもの等でも良い。さらに、貼着装置は、上記実施形態の如く、上側部材(対向板)に固着された支柱を基台にネジ止めすることによって基台と対向板との距離を一定に保つものに限定されず、基台あるいは上側部材(対向板)に設けられたフック等の係着手段を、上側部材(対向板)あるいは基台に設けられた被着部に係着させることによって基台と対向板との距離を一定に保つもの等に変更することも可能である。
【0038】
また、貼着装置は、上記実施形態の如く、ブチルゴムからなる膜状体を上側部材(対向板)に装着したものに限定されず、シリコーンゴム等のブチルゴムとは異なるゴムからなる膜状体を上側部材(対向板)に装着したものでも良い。なお、上記実施形態の如く、ブチルゴムからなる膜状体を上側部材(対向板)に装着した場合には、膨張した膜状体による圧力を微調整し易い、というメリットがある。加えて、貼着装置は、上記実施形態の如きサイズのものに限定されず、必要に応じて大型化あるいは小型化することができる。
【0039】
加えて、本発明に係る積層体の貼着方法の構成は、上記実施形態の如く、基台に内蔵された熱源を利用して積層体を加熱するものに限定されず、貼着装置全体をオーブン等の中に入れて積層体を加熱するもの等に変更することも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0040】
本発明の積層体の貼着方法は、上記の如く優れた効果を奏するものであるから、複数の板状物あるいはシート状物を貼着(熱接着)させるための方法として好適に用いることができる。また、本発明の貼着装置は、かかる積層体の貼着方法を具現化するための装置として好適に用いることができる。
【符号の説明】
【0041】
1・・貼着装置
2・・基台
4・・膜状体
5・・凹部
6・・対向板
S・・合成樹脂シート
L・・積層体
図1
図2
図3
図4
図5
図6