特許第6921791号(P6921791)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6921791
(24)【登録日】2021年7月30日
(45)【発行日】2021年8月18日
(54)【発明の名称】炭酸リチウムの製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/54 20060101AFI20210805BHJP
   C22B 3/06 20060101ALI20210805BHJP
   C22B 3/44 20060101ALI20210805BHJP
   C22B 7/00 20060101ALI20210805BHJP
   C22B 26/12 20060101ALI20210805BHJP
   C01D 15/08 20060101ALI20210805BHJP
   B09B 3/00 20060101ALI20210805BHJP
【FI】
   H01M10/54
   C22B3/06
   C22B3/44 101A
   C22B3/44 101Z
   C22B7/00 C
   C22B26/12
   C01D15/08
   B09B3/00 304Z
   B09B3/00ZAB
【請求項の数】12
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2018-163502(P2018-163502)
(22)【出願日】2018年8月31日
(65)【公開番号】特開2020-35723(P2020-35723A)
(43)【公開日】2020年3月5日
【審査請求日】2020年2月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】502362758
【氏名又は名称】JX金属株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000523
【氏名又は名称】アクシス国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】有吉 裕貴
(72)【発明者】
【氏名】富田 功
(72)【発明者】
【氏名】阿部 洋
【審査官】 山崎 雄司
(56)【参考文献】
【文献】 特開2014−162982(JP,A)
【文献】 特開2012−092004(JP,A)
【文献】 特公平04−049489(JP,B2)
【文献】 特開平11−310414(JP,A)
【文献】 中国特許出願公開第106129511(CN,A)
【文献】 国際公開第2011/082444(WO,A1)
【文献】 特開2012−121780(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 10/54
B09B 3/00
C01D 15/08
C22B 3/06
C22B 3/44
C22B 7/00
C22B 26/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
Co、Ni及びMnからなる群から選択される少なくとも一種の金属とLiとを含有する電池正極材成分を含むリチウムイオン電池廃棄物から、炭酸リチウムを製造する方法であって、前記リチウムイオン電池廃棄物に対して湿式処理を施し、それにより前記リチウムイオン電池廃棄物から前記電池正極材成分の前記金属の少なくとも一種を分離させて、粗炭酸リチウムを得た後、
前記粗炭酸リチウムを、炭酸ガスの供給下で液体中に溶解させる溶解工程と、前記溶解工程で得られるリチウム溶解液を加熱し、炭酸を脱離させる脱炭酸工程とを含み、
前記溶解工程で、粗炭酸リチウムを液体中に溶解させる際に、反応槽内で攪拌機を用いて前記液体を攪拌し、前記反応槽の内径(D)に対する前記攪拌機の攪拌翼の直径(d)の比(d/D)を、0.2〜0.5とし、
前記溶解工程の前に、粗炭酸リチウムを洗浄する洗浄工程をさらに含む、炭酸リチウムの製造方法。
【請求項2】
前記溶解工程で、粗炭酸リチウムを投入した前記液体の体積(V)に対する前記攪拌機の攪拌動力(P)の比(P/V)を、0.3kW/m3〜1.0kW/m3とする、請求項1に記載の炭酸リチウムの製造方法。
【請求項3】
前記溶解工程で、前記攪拌機の周速を、1.3m/s〜1.9m/sとする、請求項1又は2に記載の炭酸リチウムの製造方法。
【請求項4】
前記溶解工程で、前記液体への炭酸ガスの供給速度を、0.6L/min/L以下とする、請求項1〜3のいずれか一項に記載の炭酸リチウムの製造方法。
【請求項5】
前記洗浄工程で、前記粗炭酸リチウムの湿重量に対して0.5倍〜2倍の純水で、前記粗炭酸リチウムをリパルプ洗浄する、請求項1〜4のいずれか一項に記載の炭酸リチウムの製造方法。
【請求項6】
前記洗浄工程で、前記リパルプ洗浄を複数回にわたって繰り返す、請求項に記載の炭酸リチウムの製造方法。
【請求項7】
前記粗炭酸リチウムを得るに当り、
前記リチウムイオン電池廃棄物から前記電池正極材成分の前記金属の少なくとも一種を分離させた後の酸性溶液を中和する中和工程と、前記中和工程で得られる中和後液中のLiを炭酸化する炭酸化工程とをさらに含む、請求項1〜のいずれか一項に記載の炭酸リチウムの製造方法。
【請求項8】
前記酸性溶液が、Niイオンを含むとともに、Mgイオンを含み、
前記中和工程で、前記酸性溶液のpHを12.0〜13.0に上昇させる、請求項に記載の炭酸リチウムの製造方法。
【請求項9】
前記酸性溶液が、Niイオンを含むとともに、Mgイオンを含まず、
前記中和工程で、前記酸性溶液のpHを10.0〜10.5に上昇させる、請求項に記載の炭酸リチウムの製造方法。
【請求項10】
前記溶解工程で、前記粗炭酸リチウムを純水でリパルプし、前記純水に炭酸イオンを供給して、前記粗炭酸リチウムを溶解させる、請求項1〜のいずれか一項に記載の炭酸リチウムの製造方法。
【請求項11】
前記溶解工程で、25℃で前記純水に前記粗炭酸リチウムの全量が溶解したと仮定した場合にLi濃度が7g/L〜9g/Lとなる量の前記純水を用いる、請求項10に記載の炭酸リチウムの製造方法。
【請求項12】
リチウムイオン電池に用いる炭酸リチウムを製造する、請求項1〜11のいずれか一項に記載の炭酸リチウムの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この明細書は、所定の金属を含有する電池正極材成分を含むリチウムイオン電池廃棄物に対して湿式処理を施し、炭酸リチウムを製造する方法に関する技術を開示するものである。
【背景技術】
【0002】
たとえば近年は、製品寿命等の理由で廃棄されるリチウムイオン電池廃棄物から、そこに含まれるニッケルやコバルト等の有価金属を湿式処理等により回収することが、資源の有効活用の観点から広く検討されている。
【0003】
このような有価金属の回収の一例として具体的には、はじめに、リチウムイオン電池廃棄物を焙焼し、その後に破砕、篩別を順に行い、不純物であるアルミニウム等をある程度除去する(特許文献1等参照)。
次いで、篩別の篩下に得られる粉末状の電池粉を浸出液に添加して浸出し、電池粉に含まれ得るリチウム、ニッケル、コバルト、マンガン、銅、アルミニウム等を液中に溶解させる。そしてその後、浸出後液に溶解している各金属元素を分離させて回収する。ここでは、浸出後液に浸出しているそれぞれの金属を分離させるため、浸出後液に対し、分離させる金属に応じた複数段階の溶媒抽出及び逆抽出等を施す(特許文献2〜4等参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2015−195129号公報
【特許文献2】特開2005−149889号公報
【特許文献3】特開2009−193778号公報
【特許文献4】特許第4581553号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述したような湿式処理を施して得られる粗炭酸リチウムは、リチウムの品位が比較的低いものであることから、その用途によっては、リチウム品位を高める精製が必要になる場合がある。
【0006】
この精製では、粗炭酸リチウムに含まれる不純物を除去するため、粗炭酸リチウムに対し、炭酸ガスの供給下で液中に溶解させる溶解工程と、その後、溶解工程で得られるLi溶解液を加熱して炭酸を脱離させ、Li溶解液中のLiイオンを炭酸リチウムとして析出させる脱炭酸工程とを行うことが有効であると考えられる。
しかるに、上記の溶解工程で単純に炭酸ガスを液体中に通しても、炭酸ガスの反応効率を十分に高めることができないという問題があった。
【0007】
この明細書は、このような問題に対し、粗炭酸リチウムを炭酸ガスの供給下で液体中に溶解させる際に、ガス反応効率を有効に高めることのできる炭酸リチウムの製造方法を提案するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この明細書で開示する炭酸リチウムの製造方法は、Co、Ni及びMnからなる群から選択される少なくとも一種の金属とLiとを含有する電池正極材成分を含むリチウムイオン電池廃棄物から、炭酸リチウムを製造する方法であって、前記リチウムイオン電池廃棄物に対して湿式処理を施し、それにより前記リチウムイオン電池廃棄物から前記電池正極材成分の前記金属の少なくとも一種を分離させて、粗炭酸リチウムを得た後、前記粗炭酸リチウムを、炭酸ガスの供給下で液体中に溶解させる溶解工程と、前記溶解工程で得られるリチウム溶解液を加熱し、炭酸を脱離させる脱炭酸工程とを含み、前記溶解工程で、粗炭酸リチウムを液体中に溶解させる際に、反応槽内で攪拌機を用いて前記液体を攪拌し、前記反応槽の内径(D)に対する前記攪拌機の攪拌翼の直径(d)の比(d/D)を、0.2〜0.5とし、前記溶解工程の前に、粗炭酸リチウムを洗浄する洗浄工程をさらに含むものである。

【発明の効果】
【0009】
上記の炭酸リチウムの製造方法によれば、溶解工程にて、反応槽内で攪拌機を用いて前記液体を攪拌し、前記反応槽の内径(D)に対する前記攪拌機の攪拌翼の直径(d)の比(d/D)を、0.2〜0.5とすることにより、ガス反応効率を有効に高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】一の実施形態に係る炭酸リチウムの製造方法を示すフロー図である。
図2】溶解工程で用いることのできる反応槽の概略図である。
図3】実施例の炭酸ガス供給速度の変化に対する炭酸ガス反応効率の変化を示すグラフである。
図4】実施例の異なる炭酸ガス供給速度でのガス供給量の変化に対するLi濃度の変化を示すグラフである。
図5】実施例の異なる炭酸ガス供給速度でのガス供給量の変化に対するpHの変化を示すグラフである。
図6】実施例の攪拌速度を変化させた場合のLi濃度の変化を示すグラフである。
図7】実施例の攪拌機の異なる羽根形状での炭酸ガス供給量の変化に対するLi濃度の変化を示すグラフである。
図8】実施例の異なる攪拌機羽根形状での炭酸ガス供給量の変化に対するpHの変化を示すグラフである。
図9】実施例の炭酸ガス供給量の変化に対するLi濃度の変化を示すグラフである。
図10】実施例の炭酸ガス供給量の変化に対するpHの変化を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に、この明細書で開示する発明の実施の形態について詳細に説明する。
一の実施形態に係る炭酸リチウムの製造方法は、図1に例示するように、リチウムイオン電池廃棄物に所定の湿式処理を施した後の酸性溶液に対し、中和工程及び炭酸化工程をこの順序で行い、さらに、これにより得られる粗炭酸リチウムに対して洗浄工程、溶解工程及び脱炭酸工程を順次に行うものである。それにより、炭酸リチウムを製造することができる。ここでは、これらの工程のうち、詳細については後述するが、粗炭酸リチウムを炭酸ガスの供給下で溶解させる溶解工程が肝要であり、このときの炭酸ガスの反応効率を高めることを目的とする。
【0012】
(リチウムイオン電池廃棄物)
リチウムイオン電池廃棄物は、携帯電話その他の種々の電子機器、自動車等の様々な機械ないし装置で使用され得るリチウムイオン電池の廃棄物である。より具体的には、たとえば、電池製品の寿命や製造不良またはその他の理由によって廃棄もしくは回収されたもの等であり、このようなリチウムイオン電池廃棄物を対象とすることにより、資源の有効活用を図ることができる。
【0013】
リチウムイオン電池廃棄物には、Mn、Ni及びCoを含有するリチウム金属塩である正極活物質の他、C(カーボン)、Fe及びCuを含む負極材や、正極活物質が、たとえばポリフッ化ビニリデン(PVDF)その他の有機バインダー等によって塗布されて固着されたアルミニウム箔(正極基材)、リチウムイオン電池廃棄物の周囲を包み込む外装としてのアルミニウムを含む筐体が含まれることがある。具体的には、リチウムイオン電池廃棄物には、正極活物質を構成するLi、Ni、Co及びMnのうちの一種の元素からなる単独金属酸化物および/または、二種以上の元素からなる複合金属酸化物、並びに、Al、Cu、Fe、C等が含まれ得る。
【0014】
この実施形態では、リチウムイオン電池廃棄物は、少なくとも、Co、Ni及びMnからなる群から選択される少なくとも一種の金属と、Liとを含有する電池正極材成分を含むものとし、場合によってはさらに、Al、Cu、Fe及びCからなる群から選択される少なくとも一種の金属を含む場合がある。
【0015】
リチウムイオン電池廃棄物は前処理として、たとえば、加熱施設にて所定の温度及び時間で加熱する焙焼処理や、焙焼後にローター回転式もしくは衝撃式の破砕機等を用いる破砕処理、破砕後の粉粒体を所定の目開きの篩で篩分けする篩別処理等が施されたものであってもよい。このような前処理を得ることにより、リチウムイオン電池廃棄物は、アルミニウム箔と正極活物質を結着させているバインダーが分解されるとともに、AlやCu等が除去される他、電池正極材成分が湿式処理の浸出で溶解しやすい形態となる。
【0016】
(湿式処理)
湿式処理では一般に、上述したリチウムイオン電池廃棄物を、硫酸もしくは塩酸その他の鉱酸などの酸で浸出させる。ここでは、リチウムイオン電池廃棄物に含まれる金属の溶解を促進させるため、過酸化水素水を添加してもよい。それにより、リチウムイオン電池廃棄物中の金属が溶解した浸出後液が得られる。
そして、この浸出後液に対して、中和もしくは硫化または溶媒抽出等を行い、たとえばFe、Al、Cu等を除去した後、溶液中に残るCo、Ni及びMnのうちの少なくとも一種を、それらの各金属に応じた条件の溶媒抽出・逆抽出等で順次に回収する。
【0017】
(酸性溶液)
酸性溶液は、上記のリチウムイオン電池廃棄物に対して湿式処理を施して得られたものであって、Li及び不純物が溶解したものである。
このような酸性溶液の一例としては、上述した湿式処理で、浸出後液に対して施す複数段階の溶媒抽出もしくは中和等のうち、ニッケルを回収するための溶媒抽出で、ニッケルを抽出した後に得られるNi抽出後液や、当該ニッケルを抽出するとともに逆抽出し、さらに電解採取を行ってニッケルを回収した後に得られるNi電解後液等とすることができる。
その他、酸性溶液として、上記のリチウムイオン電池廃棄物を水等に添加し、主として、そのうちのリチウムを水等に浸出させて得られるLi浸出液を用いることもできる。なおこの場合、湿式処理は、リチウムイオン電池廃棄物中のリチウムを水等に浸出させる処理を意味する。
【0018】
Ni電解後液のpHは、たとえば−1〜2、一般には0〜1であり、上記のNi抽出後液のpHは、たとえば1〜4、一般には2〜3であり、上記のLi浸出液のpHは、たとえば9〜13、一般には10〜12である。
上述したNi抽出後液やNi電解後液、Li浸出液は、必要に応じて、溶媒抽出によりリチウムを濃縮させた後に用いることができ、一般にこのようなリチウムの濃縮により、たとえばpHが0〜1程度の酸性溶液になる。
【0019】
酸性溶液に含まれる不純物としては、リチウムイオン電池廃棄物に含まれる成分のうち、湿式処理で分離されずに残留したものを挙げることができる。具体的に図1に示す実施形態では、酸性溶液は、Liとともに、不純物としてNi、Na、Ca、Mg及びSO4を含む。
【0020】
酸性溶液は、Liイオンを、たとえば2g/L〜20g/L、典型的には5g/L〜12g/Lで含み、Niイオンを、たとえば50g/L〜150g/L、典型的には70g/L〜100g/Lで含むものとすることができる。特に酸性溶液が上記の電解後液である場合に、Niイオンはこのような濃度範囲となることが多い。
また、酸性溶液はさらに、Naイオンを、たとえば30g/L〜70g/L、典型的には40g/L〜60g/Lで含み、Caイオンを、たとえば0.001g/L〜0.1g/L、典型的には0.01g/L〜0.05g/Lで含み、Mgイオンを、たとえば0.01g/L〜10g/L、典型的には0.05g/L〜5g/Lで含み、SO4イオンを、たとえば1g/L〜200g/L、典型的には10g/L〜100g/Lで含むことがある。
【0021】
なかでも、酸性溶液に含まれ得るMgイオンは、これの方法では炭酸リチウムの精製まで除去されずに残って品位の低下を招くので、この実施形態のように後述の中和工程で除去することが好適である。Mgイオンは、より典型的には0.1g/L〜2g/L、さらには0.2g/L〜2g/Lで含まれることがある。
【0022】
なお図1に示す実施形態にはないが、酸性溶液に含まれ得るイオンとしては、Co、Mn、Si、Cl等がある。
【0023】
(中和工程)
上述したような酸性溶液にアルカリを添加して酸性溶液を中和し、それにより、酸性溶液中のNiイオンやMgイオンを固体として沈殿させ、これを固液分離により分離させて除去する。その結果、NiイオンやMgイオンが除去されてリチウムイオンを含む中和後液が得られる。
【0024】
中和工程で用いるアルカリとしては、酸性溶液のpHを有効に上昇させることができるものであれば特に問わず、たとえば、NaOH、Ca(OH)2、CaO、CaCO3等を挙げることができる。Ca塩を用いる場合は、酸性溶液に含まれ得るSO4イオンがCa塩によってCaSO4となり、これも固液分離で除去することができる。
Ca塩のなかでも特にCa(OH)2が、反応制御や設備のスケーリング防止の点で好ましい。なお、CaOでは添加時に発熱してしまうため、設備内部にスケールが発生し、反応槽実容積の低下や配管閉塞などの可能性があり、CaCO3では、所定のpHまで上げられないことが懸念される。
但し、Ca塩では中和物量が増えて濾過器が大きくなることがあるので、この観点では、NaOHを用いることが好ましい。NaOHも、SO4イオンを有効に除去することができる。
【0025】
アルカリの添加量は、酸性溶液に含まれ得るNiイオン、Mgイオン及びフリー酸の中和に必要な量の、1.0倍モル当量〜1.5倍モル当量とすることが好ましい。アルカリの添加量が少なすぎると、NiイオンやMgイオン、フリー酸の一部が沈殿除去されないことが懸念され、この一方で、添加量が多すぎると、単純にコストが増加するとともに、残渣発生量が増えてしまうことにより、濾過性の悪化に繋がるおそれがある。この観点から、アルカリの添加量は、好ましくは1.1倍モル当量〜1.2倍モル当量とする。
【0026】
このように酸性溶液にアルカリを添加することにより、アルカリの添加後の酸性溶液のpHを12.0〜13.0とすることが好適である。アルカリ添加後の酸性溶液のpHが低すぎる場合は、除去対象成分であるNiやMgの除去が不十分となり、炭酸リチウムの品位を下げる原因となる可能性がある。一方、アルカリ添加後の酸性溶液のpHが高すぎる場合は、液中に不純物として両性金属が含まれていた場合に、再溶解してしまう可能性がある。
【0027】
ここで、酸性溶液に含まれるNiを除去するに当り、酸性溶液にMgイオンが含まれない場合は、Niイオンを有効に除去するため、アルカリ添加後の酸性溶液のpHを9〜10.5、好ましくは10.0〜10.5とすることができる。
一方、酸性溶液にMgイオンが含まれる場合は、アルカリ添加後の酸性溶液のpHを12〜13とすることにより、Mgも沈殿して、これもNiとともに除去することができる。この観点から、アルカリ添加後の酸性溶液のpHは12.0〜13.0、好ましくは12.0〜12.5とすることがより一層好ましい。
【0028】
なお、酸性溶液にアルカリを添加した後、酸性溶液を所定の時間にわたって撹拌して、反応を促進させることができる。なお、反応効率改善の観点から、温度を比較的高くし、撹拌は比較的強く行うことが好ましい。
【0029】
アルカリの添加によりNi、Mgを水酸化物等の所定の化合物として沈殿させた後は、フィルタープレスやシックナー等の公知の装置ないし方法を用いて固液分離を行い、沈殿物と中和後液とに分離することができる。沈殿物にはNi、Mgの化合物が含まれ、この一方で、中和後液はNi、Mgがほぼ除去されており、Liが溶解した状態で存在する。
中和後液中のNi濃度は5mg/L以下、特に1mg/L以下であることが好ましく、またMg濃度は、5mg/L以下、特に1mg/以下であることが好ましい。この中和工程で、できる限り多くのNi、Mgを除去しておくことが好適である。
【0030】
(炭酸化工程)
上記の中和工程でニッケルを除去して得られた中和後液に対し、炭酸化工程を行い、中和後液に含まれるLiを炭酸化し、最終的に得られる炭酸リチウムに比して品位が低い粗炭酸リチウムを一先ず得る。
【0031】
ここでは、中和後液中のLiを炭酸化するため、中和後液に炭酸塩を添加し、又は炭酸ガスを吹き込むことにより、中和後液中のLiイオンを粗炭酸リチウムとして回収する。不純物の増加を防止するとの観点からは、炭酸ガスの吹込みのほうが好ましい。炭酸塩の添加では、不純物成分を添加することになるからである。
【0032】
中和後液に炭酸液を添加する場合、この炭酸塩としては、炭酸ナトリウム等を挙げることができる。具体的には、たとえば、中和後液中のLiに対し、Li2SO4+Na2CO3→Li2CO3+Na2SO4の想定反応において、1.0〜2.0倍モル当量、好ましくは1.0〜1.2倍モル当量の炭酸塩を添加することができる。炭酸塩の添加量が少なすぎると、中和後液中のLiを炭酸リチウムとしきれずロスすることが懸念され、この一方で、多すぎると、炭酸リチウムに硫酸ナトリウムの混入量が増え、後工程での洗浄を強化する必要が生じ、洗浄液へのLiの溶解ロスが増えてしまうおそれがある。
【0033】
炭酸塩の添加ないし炭酸ガスの吹込み後は、たとえば、液温を50℃〜90℃の範囲内として必要に応じて撹拌し、0.5時間〜2時間、典型的には1時間にわたってこの温度を保持することができる。
【0034】
(洗浄工程)
洗浄工程では、上記の炭酸化工程で得られた粗炭酸リチウムの洗浄を行う。ここでは、粗炭酸リチウムに含まれる不純物のうち、主としてSO4の少なくとも一部、さらにはNaの少なくとも一部を除去することを目的とする。特にこの段階で、粗炭酸リチウムに含まれるSO4の品位を下げれば下げるほど、後述の溶解工程及び脱炭酸工程を経て最終的に得られる炭酸リチウムのSO4の品位を大きく低減することができるので有効である。
【0035】
より詳細には、粗炭酸リチウムを、その粗炭酸リチウムの湿重量に対して0.5倍〜2倍、好ましくは1倍〜1.5倍の純水等の洗浄水でリパルプ洗浄することができる。洗浄に用いる純水の量が多すぎる場合は、粗炭酸リチウムの大きい溶解度によるLiのロスが懸念される。一方、純水の量が少なすぎる場合は、SO4を期待したほど除去できないことが考えられる。ここで湿重量とは、炭酸化後に固液分離して回収した炭酸リチウムの未乾燥状態での重量(kg−wet)を意味する。
なおここで、リパルプ洗浄とは、固液分離後のケーキを所定量の水に投入後撹拌しスラリー化させ、再度固液分離操作を実施することを意味する。また、純水とは、少なくともMg、好ましくはさらにNaとCaを含まない水を意味する。
【0036】
洗浄時の温度は50℃〜90℃とすることが好ましく、また洗浄時間は0.5時間〜1時間とすることが好ましい。温度がこの範囲から外れると、低温側では炭酸リチウムの溶解度が上がり溶解ロスが増え、高温側では水分の揮発による不純物の再濃縮が起こる不都合が考えられ、また時間がこの範囲から外れると、短時間側では水洗不足、高温側ではコスト増加となる可能性がある。
【0037】
上述した洗浄操作は複数回にわたって行うことが好適である。洗浄回数を1回とし、上記の湿重量に対する純水の量を増やした場合、粗炭酸リチウムの大きな溶解度の故に、所定のSO4品位まで低減する際の、洗浄水へのLiのロスが大きくなるからである。この観点から、洗浄回数は、好ましくは2回〜3回とし、特に好ましくは2回とする。回数が多すぎても洗浄水へのLiの溶解ロスが増えることとなる。
【0038】
(溶解工程)
洗浄工程を経た粗炭酸リチウムに対しては、粗炭酸リチウムを炭酸ガスの供給下で液体中に溶解させる溶解工程を行う。
より詳細には、たとえば、はじめに粗炭酸リチウムを純水等の液体でリパルプすることができる。そして、その液体に炭酸ガスを吹き込んでこれを供給し、液体中に炭酸を溶解させる。これにより、Li2CO3+H2CO3→2LiHCO3の反応により、粗炭酸リチウムが液体中に溶解し、炭酸水素リチウム溶液としてのLi溶解液が得られる。なお、リパルプとは、固液分離後のケーキを所定量の水に投入後撹拌しスラリー化させることを意味する。
【0039】
ここにおいて、この実施形態では、粗炭酸リチウムを液体中に溶解させる際に、図2に概略図で示すような反応槽1内で、粗炭酸リチウムを投入した液体2を、攪拌機3を用いて攪拌する。そしてこのとき、攪拌機3の攪拌翼4の回転軸に直交する方向(図2では左右方向)で視て、円筒状等の反応槽1の内径(D)に対する攪拌翼4の直径(d)の比(d/D)を0.2〜0.5とする。攪拌翼4の直径(d)は、攪拌翼4の回転中心を通り、該回転中心を隔てて攪拌翼4の半径方向の最も外側に位置する端点どうしを結んだ線分の長さをいう。
【0040】
それにより、液体2中における炭酸ガスが分散して炭酸ガスの気泡径が微細になるので、液体中での炭酸ガスの滞留時間の増加、接触面積の増大等によって、粗炭酸リチウムと炭酸ガスとの反応効率を大きく高めることができる。なお、反応槽1の内径(D)に対する攪拌翼4の直径(d)の比(d/D)が小さすぎる場合は、反応効率を高めるために要する動力が大きくなることが懸念され、この一方で、その比(d/D)が大きすぎる場合は、反応効率を高めるために炭酸ガスの気泡径を微細にしようとした際の系の制御が困難となるおそれがある。この観点から、反応槽1の内径(D)に対する攪拌翼4の直径(d)の比(d/D)は、さらに0.3〜0.4とすることがより一層好ましい。
【0041】
液体2中の炭酸ガスの気泡を有効に微細化するとの観点から、攪拌機3は、剪断能力が大きいタービン系の攪拌翼4を有するものが好ましい。タービン系の攪拌翼4は、図示は省略するが、流体を整流するための静翼と、流体を圧縮したり流体のエネルギーを回転運動に変換したりするための動翼からなるものである。
【0042】
またここでは、粗炭酸リチウムを投入した液体2の体積(V)に対する攪拌機3の攪拌動力(P)の比(P/V)を、0.3kW/m3〜1.0kW/m3とすることが好適である。この比(P/V)が大きすぎると、運転コストの増加となる可能性があり、また小さすぎると、反応効率の低下となる懸念がある。したがって、上記の比(P/V)は、0.5kW/m3〜0.8kW/m3とすることが特に好ましい。なおここで、攪拌動力(P)は、攪拌機3の動力数(Np)、回転数(n)及び攪拌翼4の直径(d)から、式:P=Np×n3×d5により算出されるものである。このうち、動力数(Np)は、攪拌翼4の羽根形状に固有の値である。円筒状の反応槽1の場合、液体2の体積(V)は、反応槽1の内径(D)及び、反応槽1内の液体2の高さ(H)より、式:V=(D/2)2×π×Hで算出することができる。
【0043】
そしてまた、攪拌機3の周速は、好ましくは1.3m/s〜1.9m/s、より好ましくは1.4m/s〜1.8m/sとする。これはすなわち、周速が遅いと反応効率低下となることが考えられ、また周速が速いと運転コスト増加となる可能性が否めないからである。この周速は、羽根先端速度(m/s)=円周率×翼径(m)×回転数(s-1)を意味する。
【0044】
上述したように攪拌することにより、炭酸ガスの反応効率を有効に高めることができる。それ故に、この実施形態では、不純物品位を抑制するためのイオン交換樹脂等の使用を要しない。その結果、イオン交換樹脂等の使用に要する費用を削減可能である。但し、必要に応じてイオン交換樹脂を使用することもできる。
【0045】
また、反応槽1として、たとえば上端部等が開口した開放型容器状のものを使用しても、上述したように攪拌することにより、炭酸ガスの反応効率を有効に高めることが可能である。それ故に、密閉型ではなく開放型容器状の反応槽1を用いることが、設備コストを低減できる点で好適である。
【0046】
このような開放型容器状の反応槽1を用いた場合等において、反応槽1内で液体2に供給する炭酸ガスの供給速度が速いと、反応槽1の外部に漏出する未反応の炭酸ガスの量が増加することが懸念される。
これを防止するため、反応槽1内で液体2への炭酸ガスの供給速度は、0.6L/min/L以下とすることが好ましく、さらに0.4L/min/L以下とすることがより好ましい。これにより、液体2への炭酸ガスの溶解速度と粗炭酸リチウムの溶解速度を近いものとすることができ、未反応ガスの漏出を有効に防止することができる。一方、炭酸ガスの供給速度が遅すぎる場合は、反応効率は頭打ちとなる一方で動力コストがかかり、相対的なコストが上昇するおそれがあるので、液体2への炭酸ガスの供給速度は、たとえば0.2L/min/L以上、好ましくは0.3L/min/L以上とすることができる。
なお図示は省略するが、炭酸ガスは、たとえば、反応槽1の撹拌翼に噴きつけるように供給することができ、この場合、液体2中で攪拌されつつ反応しながら、上方側に向かって浮上する。これにより、炭酸ガスの気泡が攪拌翼で砕かれ、気泡径をより有効に微細にすることができる。
【0047】
なお、溶解前に粗炭酸リチウムをリパルプする際には、25℃で前記純水に前記粗炭酸リチウムの全量が溶解したと仮定した場合にLi濃度が7g/L〜9g/Lとなる量の純水を用いることが好ましい。このLi濃度は、炭酸水素リチウムとしての溶解度に近い範囲であり、温度により変化することから、リパルプ時の温度に合わせて当該範囲内で適宜調整することが望ましい。さらに好ましくは、25℃で前記純水に粗炭酸リチウムの全量が溶解したと仮定した場合にLi濃度が8g/L〜9g/Lとなる量の純水を用いる。
【0048】
また、リパルプ後に当該純水に炭酸ガスを吹き込む場合は、先述の想定反応において1.0倍モル当量〜3.0倍モル当量、特に1.3倍モル当量〜2.0倍モル当量の炭酸ガスを吹き込むことが好適である。炭酸ガスが多すぎると、除去対象成分であるCaの溶解が起こる懸念があり、また少なすぎると、炭酸リチウムの溶解が不十分となり、回収対象成分であるリチウムのロスとなることが考えられる。この実施形態では、上述したように攪拌することにより、炭酸ガスの使用量を減らすことができるので、製造コストを有効に低減することができる。
【0049】
反応終点は、pHにより管理することができる。具体的にはpHが、たとえば7.6〜7.9、特に好ましくは7.6〜7.7となった時点で、炭酸ガスの吹込みを停止することができる。これにより、Caを残渣として残して分離することが可能になる。ここでは、炭酸カルシウム及び炭酸水素カルシウムの溶解度に比して、硫酸カルシウムの溶解度が十分に小さいという性質を利用している。
【0050】
(脱炭酸工程)
溶解工程の後、そこで得られたLi溶解液を加熱して炭酸を脱離させ、Li溶解液中のLiイオンを炭酸リチウムとして析出させる。
ここでは、Li溶解液を、好ましくは50℃〜90℃の温度に加熱して濃縮し、Li溶解液から炭酸を炭酸ガスとして脱離させることができる。炭酸水素リチウムは温度の上昇に伴い、溶解度が低下する。脱炭酸工程では、炭酸水素リチウムと炭酸リチウムの溶解度差を利用して、加熱により、炭酸水素リチウムの生成によってLi溶解液に十分に溶解しているLiを、炭酸リチウムとして効果的に晶析させることができる。
【0051】
Li溶解液の加熱温度が50℃未満では、炭酸が有効に脱離しないことが懸念される。一方、当該加熱温度が90℃を超えると、沸騰による不具合が生じる可能性があるので、90℃を上限とすることとができる。この観点より、リチウム溶解液の加熱温度は、70℃〜80℃とすることがより一層好ましい。
【0052】
なおこの際に、体積比で3倍程度に加熱濃縮することもできるが、蒸発乾固するまで加熱濃縮しても、不純物品位に大きな影響を及ぼすことなしに、Liの回収率を向上させることができる。
脱炭酸工程により、比較的高い品位の炭酸リチウムを得ることができる。
【0053】
(洗浄工程)
脱炭酸工程の後、炭酸リチウムの不純物品位その他の条件によっては、炭酸リチウムを洗浄する洗浄工程を行ってもよい。但し、脱炭酸工程後のこの洗浄工程は省略することも可能である。
【0054】
この洗浄工程は、溶解工程前の洗浄工程と同様の条件及び手法で実施することができる。それにより、炭酸リチウムに含まれ得る付着水由来の不純物、たとえばSO4、さらにはNaを除去できる場合がある。この洗浄工程で洗浄水の量を増やしても可溶成分の不純物品位が改善されないことがあり、この場合、そのような不純物は脱炭酸工程の段階で結晶中に巻き込まれている可能性がある。
脱炭酸工程の加熱時の濃縮比が大きい場合は、この洗浄工程を行うことが、不純物の更なる除去の観点から好ましい。
【0055】
(炭酸リチウム)
以上より得られる炭酸リチウムは、その炭酸リチウム品位(純度)が、好ましくは99.2質量%以上、より好ましくは99.5質量%以上であることが好ましい。
特に、上述した製造方法で製造することにより、炭酸リチウム中のナトリウムの含有量を100質量ppm以下とすることができる。ナトリウムは、たとえば、当該炭酸リチウムをリチウムイオン電池の製造に用いる場合にリチウムイオンの動きを妨害することがあるので、このようにナトリウムを低濃度にできることは有効である。炭酸リチウムのナトリウム含有量は、さらには80質量ppm以下、50質量ppm以下とすることができる。
【0056】
また上記のようにリチウムイオン電池廃棄物を原料とする製造方法によれば、炭酸リチウムの塩素含有量を、10質量ppm以下とすることができる。塩素は、リチウムイオン電池中のリチウムの化合物と化合物化するとともに吸湿性を有することから、塩素の含有量も少ないほうが好ましい。一般に炭酸リチウムは海水から製造されることが多いところ、海水から製造した炭酸リチウムは塩素を上述したほど低下させることが困難である。
なお、上述したナトリウムや塩素の含有量、品位は、自動試料燃焼装置イオンクロマトグラフにより測定する。
このような炭酸リチウムは、様々な用途に用いることができるが、とりわけリチウムイオン電池の製造に有効に用いることができる。
【実施例】
【0057】
次に、上述したような炭酸リチウムの製造方法を試験的に実施し、その効果を確認したので以下に説明する。但し、ここでの説明は単なる例示を目的としたものであり、これに限定されることを意図するものではない。
【0058】
<炭酸溶解>
粗炭酸リチウムを純水でリパルプ後に、炭酸ガスを吹込み、炭酸水素リチウム溶液とし再溶解させた。なお、その際のリパルプ時のパルプ濃度は、粗炭酸リチウム中のLi品位を基に、炭酸水素リチウム溶液として粗炭酸リチウムが全量溶解した際のリチウム液濃度が8.0g/Lとなるように設定した。
【0059】
(ガス供給速度)
炭酸ガスはボンベから供給し、流量を一定とし吹き込みを実施した。その際の炭酸ガス添加速度(供給速度)を変化させた場合の炭酸ガス反応効率を図3に示す。また、各炭酸ガス添加速度における、ガス供給量の変化に対するLi濃度とpHの変化を図4及び5にそれぞれ示す。
この結果より、炭酸ガス添加速度を低下させたほうが、目標Li濃度に到達するまで炭酸ガスを吹き込んだ際のリチウム液濃度が高くなる傾向があり、炭酸ガスの反応効率が高くなることが解かる。なお、炭酸ガス添加速度は、(炭酸ガス添加速度:L/min/L)=(炭酸ガス流量:L/min)/(スラリー容量:L)で算出される。
また反応終点は、pH7.6〜7.7とすることができ、Liは最大限溶かしつつ、不純物は最低限の溶解に留められる。
【0060】
(攪拌速度)
図6に、攪拌速度を変化させた場合の液体中のLi濃度の変化をグラフで示す。
図6より、炭酸ガスを3.0倍モル当量まで吹き込んだ際の、ガス添加時のスラリーの撹拌速度を早くするほど、Li液濃度は上昇傾向となり、また、回転速度を一定以上とするとガス反応効率が高くなることが解かる。但し、ガス反応効率が高くなるこの回転速度の閾値は、反応系により変化すると考えられる。
【0061】
(攪拌状態)
図7、8にそれぞれ、攪拌に用いる攪拌機の羽根形状を変化させた場合の、炭酸ガス供給量の変化に対するLi濃度、pHの変化をグラフで示す。ここでは、攪拌動力(P=Np×n3×d5、P:撹拌動力、Np:動力数、n:回転数、d:翼径)を考慮した。動力数は、羽根形状毎の固有値である。なお、このうちプロペラでは、n=500rpm、d=60mmであった。また、タービンとディスクタービンでは、n=400rpm、d=70mmであった。さらに、ミクロアジター(商品名:株式会社島崎エンジニアリング製)では、n=700rpm、d=50mmであった。
【0062】
また図9、10に、同一形状の撹拌翼での撹拌速度とガス添加速度の影響について、炭酸ガス供給量の変化に対するLi濃度とpHの変化をグラフで示す。なお、攪拌翼としては、ミクロアジターを用いた。
これらのグラフから解かるように、翼径と反応槽径の比率を一定とすると、形状によらず同等の結果が得られた。
【0063】
以上の結果より、撹拌速度は速くし、ガス添加速度は遅くすることが好ましいが、過剰とすると反応時間が延びるだけとなることが解かった。
【0064】
<脱炭酸>
50℃以上に加熱して、炭酸を脱離させて炭酸リチウムを再晶析させた。粗炭酸リチウム段階でNaとSO4品位以外を下げていたことにより、蒸発乾固し不純物も析出したとしても、炭酸カルシウムと硫酸ナトリウムとして析出するため、水洗により電池用途として問題無い品位まで低減可能であった。
蒸発乾固することで、乾燥処理は二回に増えるが、系内の水バランスへ及ぼす負荷を低減可能である。
【0065】
粗炭酸リチウム(精製前)と、上述した各工程を経た炭酸リチウム(精製後)のそれぞれの品位を表1に示す。表1より、不純物の含有量が十分に低減されたことが解かる。
【0066】
【表1】
【符号の説明】
【0067】
1 反応槽
2 液体
3 攪拌機
4 攪拌翼
D 反応槽の内径
H 反応槽内の液体の高さ
d 攪拌翼の直径
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10