(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記主排出ラインは、前記背圧弁の下流側で複数の分岐排出ラインに分岐した後に再び合流して1つの排出ラインとなり、前記複数の分岐排出ラインの各々に開閉弁が設けられている、請求項14に記載の基板処理装置。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して本発明の一実施の形態について説明する。なお、本件明細書に添付する図面に示されている構成には、図示と理解のしやすさの便宜上、サイズ及び縮尺等が実物のそれらから変更されている部分が含まれうる。
【0012】
[基板処理システムの構成]
図1に示すように、基板処理システム1は、ウエハWに洗浄液を供給して洗浄処理を行う複数の洗浄装置2(
図1に示す例では2台の洗浄装置2)と、洗浄処理後のウエハWに付着している乾燥防止用の液体(本実施形態ではIPA:イソプロピルアルコール)を、超臨界状態の処理流体(本実施形態ではCO
2:二酸化炭素)と接触させて除去する複数の超臨界処理装置3(
図1に示す例では6台の超臨界処理装置3)と、を備える。
【0013】
この基板処理システム1では、載置部11にFOUP100が載置され、このFOUP100に格納されたウエハWが、搬入出部12及び受け渡し部13を介して洗浄処理部14及び超臨界処理部15に受け渡される。洗浄処理部14及び超臨界処理部15において、ウエハWは、まず洗浄処理部14に設けられた洗浄装置2に搬入されて洗浄処理を受け、その後、超臨界処理部15に設けられた超臨界処理装置3に搬入されてウエハW上からIPAを除去する乾燥処理を受ける。
図1中、符合「121」はFOUP100と受け渡し部13との間でウエハWを搬送する第1の搬送機構を示し、符合「131」は搬入出部12と洗浄処理部14及び超臨界処理部15との間で搬送されるウエハWが一時的に載置されるバッファとしての役割を果たす受け渡し棚を示す。
【0014】
受け渡し部13の開口部にはウエハ搬送路162が接続されており、ウエハ搬送路162に沿って洗浄処理部14及び超臨界処理部15が設けられている。洗浄処理部14には、当該ウエハ搬送路162を挟んで洗浄装置2が1台ずつ配置されており、合計2台の洗浄装置2が設置されている。一方、超臨界処理部15には、ウエハWからIPAを除去する乾燥処理を行う基板処理装置として機能する超臨界処理装置3が、ウエハ搬送路162を挟んで3台ずつ配置されており、合計6台の超臨界処理装置3が設置されている。ウエハ搬送路162には第2の搬送機構161が配置されており、第2の搬送機構161は、ウエハ搬送路162内を移動可能に設けられている。受け渡し棚131に載置されたウエハWは第2の搬送機構161によって受け取られ、第2の搬送機構161は、ウエハWを洗浄装置2及び超臨界処理装置3に搬入する。なお、洗浄装置2及び超臨界処理装置3の数及び配置態様は特に限定されず、単位時間当たりのウエハWの処理枚数及び各洗浄装置2及び各超臨界処理装置3の処理時間等に応じて、適切な数の洗浄装置2及び超臨界処理装置3が適切な態様で配置される。
【0015】
洗浄装置2は、例えばスピン洗浄によってウエハWを1枚ずつ洗浄する枚葉式の装置として構成される。この場合、ウエハWを水平に保持した状態で鉛直軸線周りに回転させながら、洗浄用の薬液や薬液を洗い流すためのリンス液をウエハWの処理面に対して適切なタイミングで供給することで、ウエハWの洗浄処理を行うことができる。洗浄装置2で用いられる薬液及びリンス液は特に限定されない。例えば、アルカリ性の薬液であるSC1液(すなわちアンモニアと過酸化水素水の混合液)をウエハWに供給し、ウエハWからパーティクルや有機性の汚染物質を除去することができる。その後、リンス液である脱イオン水(DIW:DeIonized Water)をウエハWに供給し、SC1液をウエハWから洗い流すことができる。さらに、酸性の薬液である希フッ酸水溶液(DHF:Diluted HydroFluoric acid)をウエハWに供給して自然酸化膜を除去し、その後、DIWをウエハWに供給して希フッ酸水溶液をウエハWから洗い流すこともできる。
【0016】
そして洗浄装置2は、DIWによるリンス処理を終えたら、ウエハWを回転させながら、乾燥防止用の液体としてIPAをウエハWに供給し、ウエハWの処理面に残存するDIWをIPAと置換する。その後、ウエハWの回転を緩やかに停止する。このとき、ウエハWには十分量のIPAが供給され、半導体のパターンが形成されたウエハWの表面はIPAが液盛りされた状態となり、ウエハWの表面にはIPAの液膜が形成される。ウエハWは、IPAが液盛りされた状態を維持しつつ、第2の搬送機構161によって洗浄装置2から搬出される。
【0017】
このようにしてウエハWの表面に付与されたIPAは、ウエハWの乾燥を防ぐ役割を果たす。特に、洗浄装置2から超臨界処理装置3へのウエハWの搬送中におけるIPAの蒸発によってウエハWに所謂パターン倒れが生じてしまうことを防ぐため、洗浄装置2は、比較的大きな厚みを有するIPA膜がウエハWの表面に形成されるように、十分な量のIPAをウエハWに付与する。
【0018】
洗浄装置2から搬出されたウエハWは、第2の搬送機構161によって、IPAが液盛りされた状態で超臨界処理装置3の処理容器内に搬入され、超臨界処理装置3においてIPAの乾燥処理が行われる。
【0020】
以下、超臨界処理装置3について
図2〜
図4を参照して説明する。
【0021】
図2及び
図3に示すように、処理容器301は、ウエハWの搬入出用の開口部312が形成された容器本体311と、処理対象のウエハWを水平に保持する保持板316と、この保持板316を支持するとともに、ウエハWを容器本体311内に搬入したとき開口部312を密閉する蓋部材315とを備える。
【0022】
容器本体311は、例えば直径300mmのウエハWを収容可能な処理空間が内部に形成された容器である。容器本体311の内部の一端側に流体供給ヘッダー(
第2流体供給部)317が設けられ、他端側に流体排出ヘッダー(流体排出部)318が設けられている。図示例では、流体供給ヘッダー317は、多数の開口(
第2流体供給口)が設けられたブロック体からなり、流体排出ヘッダー318は多数の開口(流体排出口)が設けられた管からなる。流体供給ヘッダー317の
第2流体供給口は、保持板316により保持されたウエハWの上面よりやや高い位置にあることが好ましい。
【0023】
流体供給ヘッダー317及び流体排出ヘッダー318の構成は図示例に限定されず、例えば、流体排出ヘッダー318をブロック体から形成してもよく、流体供給ヘッダー317を管から形成してもよい。
【0024】
保持板316を下方から見ると、保持板316は、ウエハWの下面のほぼ全域を覆っている。 保持板316は、蓋部材315側の端部に開口316aを有している。保持板316の上方の空間にある処理流体は、開口316aを通って、流体排出ヘッダー318に導かれる(
図3の矢印F5参照)。
【0025】
流体供給ヘッダー317は、実質的に水平方向へ向けて処理流体を容器本体311(処理容器301)内に供給する。ここでいう水平方向とは、重力が作用する鉛直方向と垂直な方向であって、通常は、保持板316に保持されたウエハWの平坦な表面が延在する方向と平行な方向である。
【0026】
流体排出ヘッダー318を介して、処理容器301内の流体が処理容器301の外部に排出される。流体排出ヘッダー318を介して排出される流体には、流体供給ヘッダー317を介して処理容器301内に供給された処理流体の他に、ウエハWの表面に付着していて処理流体に溶け込んだIPAも含まれる。
【0027】
容器本体311の底部には、処理流体を処理容器301の内部に供給する流体供給ノズル(
第1流体供給部)341が設けられている。図示例では、流体供給ノズル341は、容器本体311の底壁に穿たれた開口からなる。流体供給ノズル341は、ウエハWの中心部の下方(例えば、真下)に位置し、ウエハWの中心部(例えば、垂直方向上方)に向けて、処理流体を処理容器301内に供給する。
【0028】
処理容器301は、さらに、不図示の押圧機構を備える。この押圧機構は、処理空間内に供給された超臨界状態の処理流体によってもたらされる内圧に抗して、容器本体311に向けて蓋部材315を押し付け、処理空間を密閉する役割を果たす。また、処理空間内に供給された処理流体が超臨界状態の温度を保てるように、容器本体311の天井壁及び底壁に、断熱材、テープヒータなど(図示せず)を設けることが好ましい。
【0029】
図4に示すように、超臨界処理装置3は、超臨界状態の処理流体例えば16〜20MPa(メガパスカル)程度の高圧の処理流体の供給源である流体供給タンク51を有する。流体供給タンク51には、主供給ライン50が接続されている。主供給ライン50は、途中で、処理容器301内の流体供給ヘッダー(
第2流体供給部)317に接続された
第2供給ライン63と、流体供給ノズル(
第1流体供給部)341に接続された
第1供給ライン64とに分岐する。
【0030】
流体供給タンク51と流体供給ヘッダー317との間(つまり主供給ライン50及びこれに連なる
第2供給ライン63)には、開閉弁52a、オリフィス55a、フィルタ57及び開閉弁52bが、上流側からこの順で設けられている。
第1供給ライン64は、フィルタ57及び開閉弁52bとの間の位置で主供給ライン50から分岐している。
第1供給ライン64には、開閉弁52cが設けられている。
【0031】
オリフィス55aは、ウエハWの保護のため、流体供給タンク51から供給される処理流体の流速を低下させるために設けられる。フィルタ57は、主供給ライン50を流れる処理流体に含まれる異物(パーティクル原因物質)を取り除くために設けられる。
【0032】
超臨界処理装置3はさらに、開閉弁52d及び逆止弁58aを介してパージ装置62に接続されたパージガス供給ライン70、及び開閉弁52e及びオリフィス55cを介して超臨界処理装置3の外部空間に接続された排出ライン71を有する。パージガス供給ライン70及び排出ライン71は、主供給ライン50、
第2供給ライン63及び
第1供給ライン64に接続されている。
【0033】
パージガス供給ライン70は、例えば、流体供給タンク51から処理容器301に対する処理流体の供給が停止している間に、処理容器301を不活性ガスで満たして清浄な状態を保つ目的で使用される。排出ライン71は、例えば超臨界処理装置3の電源オフ時において、開閉弁52aと開閉弁52bとの間の供給ライン内に残存する処理流体を外部に排出するために用いられる。
【0034】
処理容器301内の流体排出ヘッダー318には、主排出ライン65が接続されている。主排出ライン65は、途中で、第1排出ライン66、第2排出ライン67、第3排出ライン68及び第4排出ライン69に分岐する。
【0035】
主排出ライン65及びこれに連なる第1排出ライン66には、開閉弁52f、背圧弁59、濃度センサ60及び開閉弁52gが、上流側から順に設けられている。
【0036】
背圧弁59は、一次側圧力(これは処理容器301内の圧力に等しい)が設定圧力を越えたときに開弁して、二次側に流体を流すことにより一次側圧力を設定圧力に維持するように構成されている。背圧弁59の設定圧力は制御部4により随時変更することが可能である。
【0037】
濃度センサ60は、主排出ライン65を流れる流体のIPA濃度を計測するセンサである。
【0038】
開閉弁52gの下流側において、第1排出ライン66には、ニードル弁(可変絞り)61a及び逆止弁58bが設けられている。ニードル弁61aは、第1排出ライン66を通って超臨界処理装置3の外部に排出される流体の流量を調整するバルブである。
【0039】
第2排出ライン67、第3排出ライン68及び第4排出ライン69、濃度センサ60と開閉弁52gとの間の位置において、主排出ライン65から分岐している。第2排出ライン67には、開閉弁52h、ニードル弁61b及び逆止弁58cが設けられている。第3排出ライン68には、開閉弁52i及び逆止弁58dが設けられている。第4排出ライン69には、開閉弁52j及びオリフィス55dが設けられている。
【0040】
第2排出ライン67及び第3排出ライン68は第1の排出先例えば流体回収装置に接続されており、第4排出ライン69は第2の排出先例えば超臨界処理装置3外部の大気空間または工場排気系に接続されている。
【0041】
処理容器301から流体を排出する場合、開閉弁52g、52h、52i、52jのうちの1以上のバルブが開状態とされる。特に超臨界処理装置3の停止時には、開閉弁52jを開き、濃度センサ60と濃度センサ60と開閉弁52gとの間の第1排出ライン66に存在する流体を超臨界処理装置3の外部に排出してもよい。
【0042】
超臨界処理装置3の流体が流れるラインの様々な場所に、流体の圧力を検出する圧力センサ及び流体の温度を検出する温度センサが設置される。
図4に示す例では開閉弁52aとオリフィス55aとの間に圧力センサ53a及び温度センサ54aが設けられ、オリフィス55aとフィルタ57との間に圧力センサ53b及び温度センサ54bが設けられ、フィルタ57と開閉弁52bとの間に圧力センサ53cが設けられ、開閉弁52bと処理容器301との間に温度センサ54cが設けられ、オリフィス55bと処理容器301との間に温度センサ54dが設けられている。また処理容器301と開閉弁52fとの間に圧力センサ53d及び温度センサ54fが設けられ、濃度センサ60と開閉弁52gとの間に圧力センサ53e及び温度センサ54gが設けられている。さらに、処理容器301内の流体の温度を検出するための温度センサ54eが設けられている。
【0043】
主供給ライン50及び
第2供給ライン63に、処理容器301に供給する処理流体の温度を調節するための4つのヒータHが設けられている。処理容器301よりも下流側の排出ラインにもヒータHを設けてもよい。
【0044】
主供給ライン50のオリフィス55aとフィルタ57の間には安全弁(リリーフ弁)56aが設けられ、処理容器301と開閉弁52fとの間には安全弁56bが設けられ、濃度センサ60と開閉弁52gの間には安全弁56cが設けられている。これらの安全弁56a〜56cは、これらの安全弁が設けられているライン(配管)内の圧力が過大になった場合等の異常時に、ライン内の流体を緊急的に外部に排出する。
【0045】
制御部4は、
図3に示す各種センサ(圧力センサ53a〜53e、温度センサ54a〜54g及び濃度センサ60等)から計測信号を受信し、各種機能要素に制御信号(開閉弁52a〜52jの開閉信号、背圧弁59の設定圧力調節信号、ニードル弁61a〜61bの開度調節信号等)を送信する。制御部4は、たとえばコンピュータであり、演算部18と記憶部19とを備える。記憶部19には、基板処理システム1において実行される各種の処理を制御するプログラムが格納される。演算部18は、記憶部19に記憶されたプログラムを読み出して実行することによって基板処理システム1の動作を制御する。プログラムは、コンピュータによって読み取り可能な記憶媒体に記録されていたものであって、その記憶媒体から制御部4の記憶部19にインストールされたものであってもよい。コンピュータによって読み取り可能な記憶媒体としては、たとえばハードディスク(HD)、フレキシブルディスク(FD)、コンパクトディスク(CD)、マグネットオプティカルディスク(MO)、メモリカードなどがある。
【0046】
[超臨界乾燥処理]
次に、超臨界状態の処理流体(例えば二酸化炭素(CO
2))を用いたIPAの乾燥メカニズムについて、
図5を参照して簡単に説明する。
【0047】
超臨界状態の処理流体Rが処理容器301内に導入された直後は、
図5(a)に示すように、ウエハWのパターンPの凹部内にはIPAのみが存在する。
【0048】
凹部内のIPAは、超臨界状態の処理流体Rと接触することで、徐々に処理流体Rに溶解し、
図5(b)に示すように徐々に処理流体Rと置き換わってゆく。このとき、凹部内には、IPA及び処理流体Rの他に、IPAと処理流体Rとが混合した状態の混合流体Mが存在する。
【0049】
凹部内でIPAから処理流体Rへの置換が進行するに従って、凹部内に存在するIPAが減少し、最終的には
図5(c)に示すように、凹部内には超臨界状態の処理流体Rのみが存在するようになる。
【0050】
凹部内からIPAが除去された後に、処理容器301内の圧力を大気圧まで下げることによって、
図5(d)に示すように、処理流体Rは超臨界状態から気体状態に変化し、凹部内は気体のみによって占められる。このようにしてパターンPの凹部内のIPAが除去され、ウエハWの乾燥処理は完了する。
【0051】
次に、上記の超臨界処理装置3を用いて実行される乾燥方法(基板処理方法)について説明する。なお、以下に説明する乾燥方法は、記憶部19に記憶された処理レシピ及び制御プログラムに基づいて、制御部4の制御の下で、自動的に実行される。
【0052】
<搬入工程>
洗浄装置2において洗浄処理が施されたウエハWが、その表面のパターンの凹部内がIPAに充填されかつその表面にIPAのパドルが形成された状態で、第2の搬送機構161により洗浄装置2から搬出される。第2の搬送機構161は、保持板316の上にウエハを載置し、その後、ウエハを載置した保持板316が容器本体311内に進入し、蓋部材315が容器本体311と密封係合する。以上によりウエハの搬入が完了する。
【0053】
次に、
図6のタイムチャートに示した手順に従い、処理流体(CO
2)が処理容器301内に供給され、これによりウエハWの乾燥処理が行われる。
図6に示す折れ線Aは、乾燥処理開始時点からの経過時間と処理容器301内の圧力との関係を示している。
【0054】
<昇圧工程>
まず昇圧工程T1が行われ、流体供給タンク51から処理容器301内に処理流体としてのCO
2(二酸化炭素)が供給される。具体的には、開閉弁52a,52c,52fが開状態とされ、開閉弁52b,52d,開閉弁52eが閉状態とされる。また、開閉弁52g,52h,52iが開状態とされ、開閉弁52jが閉状態とされる。ニードル弁61a,61bが予め定められた開度に調整される。また、背圧弁59の設定圧力が、処理容器301内のCO
2が超臨界状態を維持できる圧力例えば15MPaに設定される。これにより、流体供給タンク51から超臨界状態にある16MPa程度の圧力のCO
2が、ウエハWの中央部の真下にある流体供給ノズル341から保持板316の下面に向けて吐出される。
【0055】
流体供給ノズル341から吐出されたCO
2(
図3の矢印F1参照)は、ウエハWの下面を覆う保持板316に衝突した後に、保持板316の下面に沿って放射状に広がり(
図3の矢印F2参照)、その後、保持板316の端縁と容器本体311の側壁との間の隙間及び保持板316の開口316aを通って、ウエハWの上面側の空間に流入する(
図3の矢印F3参照)。背圧弁59は設定圧力(15MPa)まで全閉に維持されるので、処理容器301からCO
2は流出しない。このため、処理容器301内の圧力は徐々に上昇してゆく。
【0056】
昇圧工程T1の初期では、流体供給タンク51から超臨界状態で送り出されたCO
2の圧力は、オリフィス55aを通過するときに低下し、また、常圧状態にある処理容器301内に流入したときにも低下する。従って、昇圧工程T1の初期では、処理容器301内に流入するCO
2の圧力は臨界圧力(例えば約7MPa)より低く、つまり、CO
2は気体(ガス)の状態で処理容器301内に流入する。その後、処理容器301内へのCO
2の充填の進行とともに処理容器301内の圧力は増加してゆき、処理容器301内の圧力が臨界圧力を越えると、処理容器301内に存在するCO
2は超臨界状態となる。
【0057】
昇圧工程T1において、処理容器301内の圧力が増大して臨界圧力を越えると、処理容器301内の処理流体が超臨界状態となり、ウエハW上のIPAが超臨界状態の処理流体に溶け込み始める。すると、CO
2及びIPAからなる混合流体中におけるIPAとCO
2との混合比が変化してゆく。なお、混合比はウエハW表面全体において均一とは限らない。不測の混合流体の気化によるパターン倒れを防止するため、昇圧工程T1では、処理容器301内の圧力を、混合流体中のCO
2濃度に関わらず処理容器301内のCO
2が超臨界状態となることが保証される圧力ここでは15MPaまで昇圧する。ここで、「超臨界状態となることが保証される圧力」とは、
図7のグラフの曲線Cで示す圧力の極大値より高い圧力である。この圧力(15MPa)は、「処理圧力」と呼ばれる。
【0058】
<保持工程>
上記昇圧工程T1により、処理容器301内の圧力が上記処理圧力(15MPa)まで上昇したら、処理容器301の上流側及び下流側にそれぞれ位置する開閉弁52b及び開閉弁52fを閉じて、処理容器301内の圧力を維持する保持工程T2に移行する。この保持工程は、ウエハWのパターンPの凹部内にある混合流体中のIPA濃度及びCO
2濃度が予め定められた濃度(例えばIPA濃度が30%以下、CO
2濃度が70%以上)になるまで継続される。保持工程T2の時間は、実験により定めることができる。この保持工程T2において、他のバルブの開閉状態は、昇圧工程T1における開閉状態と同じである。
【0059】
<流通工程>
保持工程T2の後、流通工程T3が行われる。流通工程T3は、処理容器301内からCO
2及びIPAの混合流体を排出して処理容器301内を降圧する降圧段階と、流体供給タンク51から処理容器301内にIPAを含まない新しいCO
2を供給して処理容器301内を昇圧する昇圧段階とを交互に繰り返すことにより行うことができる。
【0060】
流通工程T3は、例えば、開閉弁52b及び開閉弁52fを開状態として、背圧弁59の設定圧力の上昇及び下降を繰り返すことにより行われる。これに代えて、流通工程T3を、開閉弁52bを開きかつ背圧弁59の設定圧力を低い値に設定した状態で、開閉弁52fの開閉を繰り返すことにより行ってもよい。
【0061】
流通工程T3では、流体供給ヘッダー317を用いて処理容器301内にCO
2が供給される(
図3の矢印F4参照)。流体供給ヘッダー317は、流体供給ノズル341よりも大流量でCO
2を供給することができる。流通工程T3では、処理容器301内の圧力は臨界圧力よりも十分に高い圧力に維持されているため、大流量のCO
2がウエハW表面に衝突したり、ウエハW表面近傍を流れても乾燥の問題は無い。このため、処理時間の短縮を重視して流体供給ヘッダー317が用いられる。
【0062】
昇圧段階では、処理容器301内の圧力を上記処理圧力(15MPa)まで上昇させる。降圧段階では、処理容器301内の圧力を上記処理圧力から予め定められた圧力(臨界圧力よりも高い圧力)まで低下させる。降圧段階では、流体供給ヘッダー317を介して処理容器301内に処理流体が供給されるとともに流体排出ヘッダー318を介して処理容器301から処理流体が排気されることになるため、処理容器301内には、ウエハWの表面と略平行に流動する処理流体の層流が形成される(
図3の矢印F6参照)。
【0063】
流通工程を行うことにより、ウエハWのパターンの凹部内においてIPAからCO
2への置換が促進させる。凹部内においてIPAからCO
2への置換が進行してゆくに従って、
図7の左側に示すように混合流体の臨界圧力が低下してゆくので、各降圧段階の終了時における処理容器301内の圧力を、混合流体中のCO
2濃度に対応する混合流体の臨界圧力よりも高いという条件を満たしながら、徐々に低くしてゆくことができる。
【0064】
<排出工程>
流通工程T3により、パターンの凹部内においてIPAからCO
2への置換が完了したら、排出工程T4が行われる。排出工程T4は、開閉弁52a,52b,52c,52d,52eを閉状態とし、背圧弁59の設定圧力を常圧とし、開閉弁52f,52g,52h,52iを開状態とし、開閉弁52jを閉状態とすることにより行うことができる。排出工程T4により処理容器301内の圧力がCO
2の臨界圧力より低くなると、超臨界状態のCO
2は気化し、パターンの凹部内から離脱する。これにより、1枚のウエハWに対する乾燥処理が終了する。
【0065】
上記の実施形態によれば、昇圧工程T1において、ウエハWの下方にある流体供給ノズル341から処理容器301内にCO
2が供給される。このため、パターンの倒壊をより確実に防止することができる。この点について以下に述べる。
【0066】
ウエハWの表面上に存在する液体状態のIPAが気体状態のCO
2の流れに晒されると、IPAが蒸発し、このときにパターンの倒壊が生じるおそれがある。昇圧工程T1において、ウエハWの側方にある流体供給ヘッダー317から処理容器301内に気体状態のCO
2が供給されると、比較的高流速のCO
2の流れがIPAのパドルに直接衝突するか、あるいはIPAのパドルの近傍を通過するため、IPAの蒸発が生じやすい傾向にある。
【0067】
これに対して、本実施形態では、流体供給ノズル341から吐出されたCO
2は、ウエハWの表面または表面近傍の空間に向けて直接流れるのではなく、
保持板316の下面中央部に衝突した後に、保持板316の下面に沿って放射状に広がり、その後ウエハWの上面側の空間に流入する。つまり、本実施形態では、処理流体吐出口からウエハWの表面または表面近傍の空間に直接向かうCO
2の流れは存在しない。このため、処理容器301内に気体状態のCO
2を供給したことに起因するIPAの蒸発が大幅に抑制される。なお、気体状態のCO
2がウエハWの上面側の空間に流入したときには、CO
2の流速は、流体供給ノズル341から吐出されたときよりも大幅に小さくなっている。また、
第1供給ラインにはオリフィス55bがあるため、流体供給ノズル341から吐出されるCO
2の流速はもともと小さい。このことにより、IPAの蒸発がさらに抑制される。
【0068】
上記実施形態では、流体供給ノズル341の位置は、例えば処理容器301内に収容されたウエハWの中心部の真下としたが、これには限定されない。流体供給ノズル341の位置は、保持板316の下方、つまりウエハWが載置された保持板316を真上から見たときに流体供給ノズル341が見えない位置であればよい。言い換えれば、流体供給ノズル341から吐出されたCO
2ガスが流体供給ノズル341の下面またはウエハWの裏面(下面)に衝突するようになっていればよい。
【0069】
但し、流体供給ノズル341の位置が大きくウエハWの中心部の真下から外れると、処理容器301内におけるCO
2ガスの流れが不均一になり、CO
2ガスの流れがウエハWの表面に回り込むおそれがある。このため、流体供給ノズル341はウエハWの中心部の真下に近い位置に配置することが望ましい。また、CO
2ガスの流れがウエハWの表面に回り込むことを防止または抑制する観点から、流体供給ノズル341は鉛直方向上方または概ね直方向上方に向けてCO
2を吐出することが望ましい。
【0070】
上記実施形態では、昇圧工程T1の全期間にわたって、流体供給ノズル341のみからCO
2を処理容器301内に供給していたが、これには限定されない。処理容器301の圧力が処理流体であるCO
2の臨界圧力(約7MPa)を越えたら、流体供給ヘッダー317からCO
2を処理容器301内に供給してもよく、また、流体供給ヘッダー317及び流体供給ノズル341の両方からCO
2を処理容器301内に供給してもよい。これらの場合も、パターンの倒壊を防止することができる。
【0071】
但し、上記実施形態のように、昇圧工程T1の全期間にわたって、流体供給ノズル341のみからCO
2を処理容器301内に供給する方が好ましい。流体供給ヘッダー317から処理容器301内にCO
2を供給すると、供給されたCO
2がIPAまたはIPA及びCO
2の混合流体からなるパドルに直接的に衝突しパドルを撹拌するため、パーティクルが生じやすくなる傾向にあるからである。また、より確実にパターンの倒壊を防止することができるからである。
【0072】
実際に試験を行ったところ、昇圧工程T1の全期間にわたって、流体供給ノズル341のみからCO
2を処理容器301内に供給した場合には、パターンの倒壊が防止でき、パーティクルの発生も問題無いレベルであった。一方、昇圧工程T1の後半(処理容器301内圧力が約7MPaを越えた後)に、流体供給ヘッダー317からCO
2を供給した場合、並びに流体供給ヘッダー317及び流体供給ノズル341の両方からCO
2を供給した場合では、パターンの倒壊は防止できたが、パーティクルレベルが悪化した。
【0073】
但し、流体供給ヘッダー317を用いた方が流体供給ノズル341を用いる場合と比較して昇圧速度を高めることができるので、要求されるパーティクルレベル次第では、スループットを重視して、昇圧工程T1の後半に流体供給ヘッダー317を用いてCO
2を処理容器301内に供給してもよい。
【0074】
本発明は、上述の実施形態及び変形例に限定されるものではなく、当業者が想到しうる種々の変形が加えられた各種態様も含みうるものであり、本発明によって奏される効果も上述の事項に限定されない。したがって、本発明の技術的思想及び趣旨を逸脱しない範囲で、特許請求の範囲及び明細書に記載される各要素に対して種々の追加、変更及び部分的削除が可能である。
【0075】
例えば、乾燥処理に用いられる処理流体はCO
2以外の流体(例えばフッ素系の流体)であってもよく、基板に液盛りされた乾燥防止用の液体を超臨界状態で除去可能な任意の流体を処理流体として用いることができる。また乾燥防止用の液体もIPAには限定されず、乾燥防止用液体として使用可能な任意の液体を使用することができる。処理対象の基板は、上述した半導体ウエハWに限定されるものではなく、LCD用ガラス基板、セラミック基板等の他の基板であってもよい。