特許第6922927号(P6922927)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6922927リチウムイオン二次電池用負極材、リチウムイオン二次電池用負極及びリチウムイオン二次電池
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6922927
(24)【登録日】2021年8月2日
(45)【発行日】2021年8月18日
(54)【発明の名称】リチウムイオン二次電池用負極材、リチウムイオン二次電池用負極及びリチウムイオン二次電池
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/587 20100101AFI20210805BHJP
   H01M 4/36 20060101ALI20210805BHJP
   C01B 32/21 20170101ALI20210805BHJP
【FI】
   H01M4/587
   H01M4/36 C
   H01M4/36 D
   C01B32/21
【請求項の数】10
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2018-550011(P2018-550011)
(86)(22)【出願日】2016年11月14日
(86)【国際出願番号】JP2016083714
(87)【国際公開番号】WO2018087928
(87)【国際公開日】20180517
【審査請求日】2019年10月28日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004455
【氏名又は名称】昭和電工マテリアルズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】特許業務法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中村 喜重
(72)【発明者】
【氏名】岡部 圭児
(72)【発明者】
【氏名】本棒 英利
【審査官】 宮田 透
(56)【参考文献】
【文献】 特開2015−082381(JP,A)
【文献】 特開2015−185443(JP,A)
【文献】 国際公開第2006/025376(WO,A1)
【文献】 特開2015−069818(JP,A)
【文献】 特開2015−110506(JP,A)
【文献】 国際公開第2003/063274(WO,A1)
【文献】 稲垣 道夫ら,黒鉛化度の評価,炭素,日本,炭素材料学会,1984年 7月25日,1984巻,118号,pp.165-175
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 4/00− 4/62
C01B 32/21
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
X線回折法より求めた平均面間隔d002が0.335nm〜0.339nmであり、核となる第一の炭素相としての黒鉛材料と、前記第一の炭素相の表面の少なくとも一部に配置される第二の炭素相としての非晶質炭素と、を含み、かつ下記(1)及び(2)を満たす炭素材料を含む、リチウムイオン二次電池用負極材。
(1)個数基準の粒度分布において、差分の相対粒子量q0が最頻値となるときの粒子径が11.601μm以下である。
(2)個数基準の粒度分布において、粒子径11.601μmのときの差分の相対粒子量q0Aと、粒子径7.806μmのときの差分の相対粒子量q0Bとの比(q0A/q0B)が1.20〜3.00である。
【請求項2】
77Kでの窒素吸着測定より求めた比表面積が0.5m/g〜6.0m/gである、請求項1に記載のリチウムイオン二次電池用負極材。
【請求項3】
ラマン分光測定のR値が0.1〜1.0である、請求項1又は請求項2に記載のリチウムイオン二次電池用負極材。
【請求項4】
前記炭素材料は、体積基準の粒度分布において、小粒子径側から体積累積分布曲線を描いた場合に、粒子径が9.516μmのときの積算値Q3が全体の4.0%以上である請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載のリチウムイオン二次電池用負極材。
【請求項5】
前記炭素材料は、体積基準の粒度分布において、小粒子径側から体積累積分布曲線を描いた場合に、累積が50%となるときの粒子径(50%D)が1μm〜20μmである請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載のリチウムイオン二次電池用負極材。
【請求項6】
前記炭素材料は、体積基準の粒度分布において、小粒子径側から体積累積分布曲線を描いた場合に、累積が99.9%となるときの粒子径(99.9%D)が63μm以下である請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載のリチウムイオン二次電池用負極材。
【請求項7】
前記炭素材料は、タップ密度が0.90g/cm〜2.00g/cmである請求項1〜請求項6のいずれか1項に記載のリチウムイオン二次電池用負極材。
【請求項8】
前記炭素材料は、ペレット密度が1.55g/cm以下である請求項1〜請求項7のいずれか1項に記載のリチウムイオン二次電池用負極材。
【請求項9】
請求項1〜請求項8のいずれか1項に記載のリチウムイオン二次電池用負極材を含む負極材層と、集電体と、を含むリチウムイオン二次電池用負極。
【請求項10】
請求項9に記載のリチウムイオン二次電池用負極と、正極と、電解質と、を含むリチウムイオン二次電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リチウムイオン二次電池用負極材、リチウムイオン二次電池用負極及びリチウムイオン二次電池に関する。
【背景技術】
【0002】
リチウムイオン二次電池は、ニッケル水素電池、鉛蓄電池等の他の二次電池に比べて軽量で高い入出力特性を有することから、近年、電気自動車、ハイブリッド型電気自動車等に用いられる高入出力用電源として注目されている。
リチウムイオン二次電池が1991年に製品化されて以来、その高エネルギー密度化と入出力特性のさらなる向上は、今なお強く望まれている。そのための手段として、リチウムイオン二次電池の負極に含まれる負極材を改良する技術は重要な位置を占めている(例えば、特許文献1及び特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平4−370662号公報
【特許文献2】特開平5−307956号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
リチウムイオン二次電池の負極材の材料としては、黒鉛、非晶質炭素等の炭素材料が広く用いられている。
黒鉛は炭素原子の六角網面が規則正しく積層した構造を有し、積層した網面の端部よりリチウムイオンの挿入・脱離反応が進行して充放電を行う。
また、非晶質炭素は、六角網面の積層が不規則であるか、網目構造を有しないため、リチウムイオンの挿入・脱離反応は全表面で進行することとなり、入出力特性に優れたリチウムイオンが得られやすい。また、非晶質炭素は、黒鉛とは対照的に、結晶性が低く、電解液との反応を低く抑えることができ、寿命特性に優れるといった特徴を有する。
【0005】
黒鉛は、リチウムイオンの挿入脱離反応が端部でのみ進行するため入出力性能が充分とは言えない。また、結晶性が高く表面の反応性が高いために、特に高温において、電解液との反応性が高くなることがあり、リチウムイオン二次電池の寿命特性の点で改善の余地がある。一方、非晶質炭素は、黒鉛よりも結晶性が低いことにより、結晶構造が不規則であり、エネルギー密度が充分とはいえない。
【0006】
上記のような黒鉛と非晶質炭素の性質の違いを踏まえ、黒鉛に由来する高エネルギー密度と非晶質炭素に由来する高寿命特性とを両立しうる炭素材料として、黒鉛からなる核材の表面に非晶質炭素の層を形成した状態の炭素材料が提案されている。
【0007】
近年、特に車載用途において、走行距離を伸ばすために電池の高容量化のニーズがいっそう高まっている。そのため、車載用途においても民生用途と同様に、電極の高密度化が検討されている。その中で、電極の高密度化による入出力特性の低下が懸念されており、高容量化と入出力特性の両立が課題となっている。すなわち、黒鉛と非晶質炭素を複合化するのみでは解決が困難な課題への取り組みが求められている。
【0008】
本発明は、高い充放電効率を維持しながら、入出力特性と寿命特性にも優れるリチウムイオン二次電池を製造可能なリチウムイオン二次電池用負極材及びリチウムイオン二次電池用負極、並びにこれを用いて製造されるリチウムイオン二次電池を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するための手段には、以下の実施態様が含まれる。
<1>X線回折法より求めた平均面間隔d002が0.335nm〜0.339nmであり、77Kでの窒素吸着測定より求めた比表面積が0.5m/g〜6.0m/gであり、かつ下記(1)及び(2)を満たす炭素材料を含む、リチウムイオン二次電池用負極材。
(1)個数基準の粒度分布において、差分の相対粒子量q0が最頻値となるときの粒子径が11.601μm以下である。
(2)個数基準の粒度分布において、粒子径11.601μmのときの差分の相対粒子量q0Aと、粒子径7.806μmのときの差分の相対粒子量q0Bとの比(q0A/q0B)が1.20〜3.00である。
【0010】
<2>X線回折法より求めた平均面間隔d002が0.335nm〜0.339nmであり、ラマン分光測定のR値が0.1〜1.0であり、かつ下記(1)及び(2)を満たす炭素材料を含む、リチウムイオン二次電池用負極材。
(1)個数基準の粒度分布において、差分の相対粒子量q0が最頻値となるときの粒子径が11.601μm以下である。
(2)個数基準の粒度分布において、粒子径11.601μmのときの差分の相対粒子量q0Aと、粒子径7.806μmのときの差分の相対粒子量q0Bとの比(q0A/q0B)が1.20〜3.00である。
【0011】
<3>X線回折法より求めた平均面間隔d002が0.335nm〜0.339nmであり、核となる第一の炭素相と、前記第一の炭素相の表面の少なくとも一部に配置される第一の炭素相とは異なる第二の炭素相と、を含み、かつ下記(1)及び(2)を満たす炭素材料を含む、リチウムイオン二次電池用負極材。
(1)個数基準の粒度分布において、差分の相対粒子量q0が最頻値となるときの粒子径が11.601μm以下である。
(2)個数基準の粒度分布において、粒子径11.601μmのときの差分の相対粒子量q0Aと、粒子径7.806μmのときの差分の相対粒子量q0Bとの比(q0A/q0B)が1.20〜3.00である。
【0012】
<4>前記炭素材料は、体積基準の粒度分布において、小粒子径側から体積累積分布曲線を描いた場合に、粒子径が9.516μmのときの積算値Q3が全体の4.0%以上である<1>〜<3>のいずれか1項に記載のリチウムイオン二次電池用負極材。
【0013】
<5>前記炭素材料は、体積基準の粒度分布において、小粒子径側から体積累積分布曲線を描いた場合に、累積が50%となるときの粒子径(50%D)が1μm〜20μmである<1>〜<4>のいずれか1項に記載のリチウムイオン二次電池用負極材。
【0014】
<6>前記炭素材料は、体積基準の粒度分布において、小粒子径側から体積累積分布曲線を描いた場合に、累積が99.9%となるときの粒子径(99.9%D)が63μm以下である<1>〜<5>のいずれか1項に記載のリチウムイオン二次電池用負極材。
【0015】
<7>前記炭素材料は、タップ密度が0.90g/cm〜2.00g/cmである<1>〜<6>のいずれか1項に記載のリチウムイオン二次電池用負極材。
【0016】
<8>前記炭素材料は、ペレット密度が1.55g/cm以下である<1>〜<7>のいずれか1項に記載のリチウムイオン二次電池用負極材。
【0017】
<9><1>〜<8>のいずれか1項に記載のリチウムイオン二次電池用負極材を含む負極材層と、集電体と、を含むリチウムイオン二次電池用負極。
【0018】
<10><9>に記載のリチウムイオン二次電池用負極と、正極と、電解質と、を含むリチウムイオン二次電池。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、高い充放電効率を維持しながら、入出力特性と寿命特性にも優れるリチウムイオン二次電池を製造可能なリチウムイオン二次電池用負極材及びリチウムイオン二次電池用負極、並びにこれを用いて製造されるリチウムイオン二次電池が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明を実施するための形態について詳細に説明する。但し、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。以下の実施形態において、その構成要素(要素ステップ等も含む)は、特に明示した場合を除き、必須ではない。数値及びその範囲についても同様であり、本発明を制限するものではない。
【0021】
本明細書において「工程」との語には、他の工程から独立した工程に加え、他の工程と明確に区別できない場合であってもその工程の目的が達成されれば、当該工程も含まれる。
本明細書において「〜」を用いて示された数値範囲には、「〜」の前後に記載される数値がそれぞれ最小値及び最大値として含まれる。
本明細書中に段階的に記載されている数値範囲において、一つの数値範囲で記載された上限値又は下限値は、他の段階的な記載の数値範囲の上限値又は下限値に置き換えてもよい。また、本明細書中に記載されている数値範囲において、その数値範囲の上限値又は下限値は、実施例に示されている値に置き換えてもよい。
本明細書において組成物中の各成分の含有率又は含有量は、組成物中に各成分に該当する物質が複数種存在する場合、特に断らない限り、組成物中に存在する当該複数種の物質の合計の含有率又は含有量を意味する。
本明細書において組成物中の各成分の粒子径は、組成物中に各成分に該当する粒子が複数種存在する場合、特に断らない限り、組成物中に存在する当該複数種の粒子の混合物についての値を意味する。
本明細書において「層」又は「膜」との語には、当該層又は膜が存在する領域を観察したときに、当該領域の全体に形成されている場合に加え、当該領域の一部にのみ形成されている場合も含まれる。
本明細書において「積層」との語は、層を積み重ねることを示し、二以上の層が結合されていてもよく、二以上の層が着脱可能であってもよい。
【0022】
<リチウムイオン二次電池用負極材(1)>
本実施形態のリチウムイオン二次電池用負極材(以下、単に「負極材」と呼ぶ場合がある)は、X線回折法より求めた平均面間隔d002が0.335nm〜0.339nmであり、77Kでの窒素吸着測定より求めた比表面積が0.5m/g〜6.0m/gであり、かつ下記(1)及び(2)を満たす炭素材料を含む。
(1)個数基準の粒度分布において、差分の相対粒子量q0が最頻値となるときの粒子径が11.601μm以下である。
(2)個数基準の粒度分布において、粒子径11.601μmのときの差分の相対粒子量q0Aと、粒子径7.806μmのときの差分の相対粒子量q0Bとの比(q0A/q0B)が1.20〜3.00である。
【0023】
本実施形態の負極材を用いることで、高い充放電効率を維持しながら、入出力特性と寿命特性にも優れるリチウムイオン二次電池を製造可能である。
【0024】
本実施形態の負極材の組成は、上述した条件を満たす炭素材料を含むのであれば特に制限されない。本実施形態の効果を得る観点からは、負極材全体に占める炭素材料の割合は50質量%以上であることが好ましく、80質量%以上であることがより好ましく、90質量%以上であることがさらに好ましく、100質量%であることが特に好ましい。
【0025】
(炭素材料)
炭素材料のX線回折法より求めた平均面間隔d002は、0.335nm〜0.339nmである。
平均面間隔d002の値は、0.3354nmが黒鉛結晶の理論値であり、この値に近いほどエネルギー密度が大きくなる傾向にある。平均面間隔d002の値が上記範囲内の場合、優れたリチウムイオン二次電池の初回充放電効率とエネルギー密度が得られる傾向にある。
【0026】
本実施形態において炭素材料の平均面間隔d002は、X線(CuKα線)を炭素材料の試料に照射し、回折線をゴニオメーターにより測定して得た回折プロファイルより、回折角2θ=24°〜27°付近に現れる炭素002面に対応した回折ピークより、ブラッグの式を用いて算出することができる。
【0027】
炭素材料の平均面間隔d002の値は、リチウムイオン二次電池のエネルギー密度の観点からは小さい方が好ましい。具体的には、例えば、0.335nm〜0.337nmであることが好ましい。
炭素材料の平均面間隔d002の値は、例えば、炭素材料に対して行う熱処理の温度を高くすることで小さくなる傾向にあるため、この性質を利用して平均面間隔d002を上記範囲内に調節することができる。
【0028】
炭素材料の77Kでの窒素吸着測定より求めた比表面積(以下、N比表面積と呼ぶ場合がある)は、0.5m/g〜6.0m/gである。
炭素材料のN比表面積が上記範囲内であると、入出力特性と初回効率のバランスが良好に維持される傾向にある。
炭素材料のN比表面積は、77Kでの窒素吸着測定より得た吸着等温線からBET法を用いて求めることができる。
【0029】
リチウムイオン二次電池の入出力特性と初回効率のバランスの観点からは、N比表面積は1.0m/g〜5.0m/gであることが好ましい。
比表面積は、例えば、炭素材料の体積平均粒子径を大きくする、炭素材料に対して行う熱処理の温度を高くする、炭素材料の表面を改質する等の方法により値を小さくできる傾向にあるため、この性質を利用してN比表面積を上記範囲内に設定することができる。
【0030】
炭素材料は、個数基準の粒度分布において、差分の相対粒子量q0が最頻値となるときの粒子径が11.601μm以下である。差分の相対粒子量q0が最頻値となる粒子径が11.601μmを超えると、粒子径の大きい炭素材料の割合が増えるため、炭素材料の粒子の表面から内部へのリチウムイオンの拡散距離が長くなり、リチウムイオン二次電池の入出力特性が低下する傾向にある。
【0031】
差分の相対粒子量q0が最頻値となる粒子径は、11.601μm又は9.516μmであることが好ましく、11.601μmであることがより好ましい。
【0032】
炭素材料は、粒子径が11.601μmのときの差分の相対粒子量q0と、粒子径が9.516μmのときの差分の相対粒子量q0の合計値が25以上であることが好ましく、30以上であることがより好ましく、32以上であることがさらに好ましい。
【0033】
炭素材料は、個数基準の粒度分布において、粒子径11.601μmのときの差分の相対粒子量q0Aと、粒子径7.806μmのときの差分の相対粒子量q0Bとの比(q0A/q0B)が1.20〜3.00である。
q0A/q0Bの値が1.20未満であると、入出力特性が低下する傾向にある。
q0A/q0Bの値が3.00を超えると、炭素材料の粒子同士の接触が悪くなり、リチウムイオン二次電池の寿命特性が低下する傾向にある。
入出力特性と寿命特性の観点からは、q0A/q0Bの値は、1.20〜2.20の範囲であることが好ましく、1.25〜2.10の範囲であることがより好ましい。
【0034】
本明細書において炭素材料の個数基準の粒度分布は、粒子径0.1μm〜2000μmの範囲を対数比で50分割して得られる。例えば、粒子径は、n=(2000/0.1)^(1/50)を求め、0.1×n、0.1×n^2、・・・、0.1×n^50から得られる。0.1μm〜2000μmの範囲における粒子径ごとの相対粒子量q0の合計値は100となる。
表1には、実施例2で用いた炭素材料の個数基準における差分の相対粒子量q0の値と粒子径をあわせて示す。
【0035】
【表1】
【0036】
炭素材料は、体積基準の粒度分布において、小粒子径側から体積累積分布曲線を描いた場合に、粒子径が9.516μmのときの積算値Q3が全体の4.0%以上であることが好ましく、9.0%以上であることがより好ましい。
粒子径が9.516μmのときの積算値Q3が全体の4.0%以上であると、炭素材料中に含まれる微小な粒子により粒子間の接触点が充分に確保され、リチウムイオン二次電池の寿命特性が向上する傾向にある。
【0037】
上記積算値Q3の上限は特に制限されないが、30%以下であることが好ましく、20%以下であることがより好ましい。
【0038】
炭素材料は、体積基準の粒度分布において、小粒子径側から体積累積分布曲線を描いた場合に、累積が50%となるときの粒子径(50%D、以下、体積平均粒子径とも称する)が1μm〜20μmであることが好ましく、3μm〜18μmであることがより好ましく、5μm〜15μmであることがさらに好ましい。
炭素材料の体積平均粒子径が1μm以上であると、比表面積が大きすぎてリチウムイオン二次電池の初回充放電効率が低下することが抑制される傾向にある。一方、炭素材料の体積平均粒子径が20μm以下であると、粒子径が大きすぎて粒子表面から内部へのLiの拡散距離が長くなり、リチウムイオン二次電池の入出力特性が低下することが抑制される傾向にある。
【0039】
炭素材料は、体積基準の粒度分布において、小粒子径側から体積累積分布曲線を描いた場合に、累積が99.9%となるときの粒子径(99.9%D、以下、最大粒子径とも称する)が63μm以下であることが好ましく、50μm以下であることがより好ましく、45μm以下であることがさらに好ましい。
炭素材料の最大粒子径が63μm以下であると、電極を作製する際に極板を薄膜化しやすく、入出力特性への影響が抑制される傾向にある。
【0040】
本明細書において炭素材料の体積基準の粒度分布は、個数基準の粒度分布と同様に、0.1μm〜2000μmの範囲を対数比で50分割して得られる。体積基準の粒度分布は、個数基準の粒度分布と同様の方法で測定することができる。
【0041】
本明細書において炭素材料の粒度分布は、公知の方法により測定することができる。例えば、炭素材料の試料を界面活性剤とともに精製水中に分散させて調製した分散液を、レーザー回折式粒度分布測定装置の試料水槽に入れ、ポンプで循環させながら1分間超音波をかけて、以下の測定条件においてレーザー回折式で測定して得られる。レーザー回折式粒度分布測定装置としては、例えば、(株)島津製作所の「SALD−3000J」を用いることができる。ここで、出力条件として「個数」又は「体積」を選択することで、個数基準の粒度分布又は体積基準の粒度分布を得ることができる。
【0042】
(測定条件の設定)
測定回数:1回
測定間隔:2秒
平均回数:64回
測定吸光度範囲:0.01〜0.2
(任意粒子径・%テーブル設定)
範囲:0.1μm〜2000μm
分割数:50
【0043】
本実施形態の炭素材料は、例えば、粒子径の異なる炭素材料を2種以上組み合わせることで得ることができる。
このような炭素材料の組み合わせとしては、体積平均粒子径が8μm〜12μmの炭素材料と体積平均粒子径が14μm〜18μmの炭素材料の組み合わせ、体積平均粒子径が9μm〜11μmの炭素材料と体積平均粒子径が15μm〜17μmの炭素材料の組み合わせ等が挙げられる。
粒子径の異なる炭素材料を2種組み合わせる場合の比率としては、例えば、質量比で7:3〜3:7の範囲内、質量比で6:4〜4:6の範囲内等が挙げられる。
【0044】
炭素材料は、タップ密度が0.90g/cm〜2.00g/cmであることが好ましく、1.00g/cm〜1.50g/cmであることがより好ましく、1.05g/cm〜1.30g/cmであることがさらに好ましい。
炭素材料のタップ密度が0.90g/cm以上であると、負極を作製する際に用いる結着剤等の有機物の量を少なくでき、リチウムイオン二次電池のエネルギー密度が大きくなる傾向にある。一方、炭素材料のタップ密度が2.00g/cm以下であると、入出力特性が良好となる傾向にある。
【0045】
炭素材料のタップ密度は、例えば、炭素材料の体積平均粒子径を大きくすること等によってその値が高くなる傾向があり、この性質を利用してタップ密度を上記範囲内に設定することができる。
【0046】
炭素材料を含む負極材全体としてのタップ密度は、0.90g/cm〜3.00g/cmであってもよい。負極材のタップ密度を調節する方法としては、炭素材料に加えて、後述する金属成分等を含有させる方法が挙げられる。
【0047】
本明細書において炭素材料又は負極材のタップ密度は、容量100cmのメスシリンダーに試料粉末100cmをゆっくり投入し、メスシリンダーに栓をし、このメスシリンダーを5cmの高さから250回落下させた後の試料粉末の質量(g)を容積(cm)で除して得られる値(g/cm)を意味する。
【0048】
炭素材料は、ペレット密度が1.55g/cm以下であることが好ましく、1.50g/cm以下であることがより好ましい。ペレット密度が1.55g/cm以下であると、電極を高密度化したときに炭素材料の粒子間の空隙が少なくなりすぎて粒子近傍のイオン濃度が低下し、リチウムイオン二次電池の入出力特性が低下するのが抑制される傾向がある。
【0049】
炭素材料のペレット密度は、例えば、炭素材料の体積平均粒子径を小さくすること等によってその値が低くなる傾向があり、この性質を利用してペレット密度を上記範囲内に設定することができる。
【0050】
炭素材料を含む負極材全体としてのペレット密度は、1.10g/cm〜2.00g/cmであってもよい。負極材のペレット密度を調節する方法としては、炭素材料に対して行う熱処理の温度を制御する方法が挙げられる。
【0051】
本発明において炭素材料又は負極材のペレット密度は、成型器に試料粉末1.00gを投入し、油圧プレスにて1.0tの圧力で加圧した後の試料の厚み(cm)と断面積(cm)とから得られる体積で質量(g)を除して得られる値(g/cm)を意味する。
【0052】
炭素材料は、ラマン分光測定のR値が0.1〜1.0であることが好ましく、0.2〜0.8であることがより好ましく、0.3〜0.7であることがさらに好ましい。R値が0.1以上であると、リチウムイオンの挿入及び脱離に用いられる黒鉛格子欠陥が充分存在し、入出力特性の低下が抑制される傾向にある。R値が1.0以下であると、電解液の分解反応が充分に抑制され、初回効率の低下が抑制される傾向にある。
【0053】
R値は、ラマン分光測定において得られたラマン分光スペクトルにおいて、1580cm−1付近の最大ピークの強度Igと、1360cm−1付近の最大ピークの強度Idの強度比(Id/Ig)と定義する。ここで、1580cm−1付近に現れるピークとは、通常、黒鉛結晶構造に対応すると同定されるピークであり、例えば1530cm−1〜1630cm−1に観測されるピークを意味する。また1360cm−1付近に現れるピークとは、通常、炭素の非晶質構造に対応すると同定されるピークであり、例えば1300cm−1〜1400cm−1に観測されるピークを意味する。
【0054】
本明細書においてラマン分光測定は、レーザーラマン分光光度計(型番:NRS−1000、日本分光株式会社)を用い、リチウムイオン二次電池用負極材を平らになるようにセットした試料板にアルゴンレーザー光(励起波長:532nm)を照射して測定を行う。
【0055】
炭素材料の材質としては、黒鉛(人造黒鉛、天然黒鉛、黒鉛化メゾフェーズカーボン、黒鉛化炭素繊維等)、低結晶性炭素、メゾフェーズカーボンなどの炭素材料が挙げられる。充放電容量を大きくする観点からは、炭素材料の少なくとも一部が黒鉛であることが好ましい。
【0056】
炭素材料の形状は特に制限されない。例えば、鱗片状、球状、塊状等が挙げられる。高いタップ密度を得る観点からは、球状であることが好ましい。これらの炭素材料から前述した物性を備えた炭素材料を適宜選択すればよい。炭素材料は1種を単独で用いても、材質、形状等の異なる2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0057】
炭素材料は、核となる第一の炭素相と、その表面の少なくとも一部に配置される(例えば、核を被覆する)第一の炭素相とは異なる第二の炭素相とを含む複合材料であってもよい。炭素材料を異なる複数種の炭素相から構成することにより、所望の物性又は性質をより効果的に発揮しうる炭素材料を得ることができる。
【0058】
炭素材料が核となる第一の炭素相と、その表面の少なくとも一部に配置される第二の炭素相とを含む複合材料である場合、第一の炭素相と第二の炭素相の組み合わせとしては、第一の炭素相と、第一の炭素相と結晶性の異なる第二の炭素相の組み合わせが挙げられ、第一の炭素相と、第一の炭素相よりも結晶性の低い(d002の値が第一の炭素相よりも大きい)第二の炭素相の組み合わせが好ましい。
【0059】
炭素材料が、核となる第一の炭素相と、第一の炭素相よりも結晶性の低い第二の炭素相とを含む複合材料である場合、核となる第一の炭素相の材質が上述した黒鉛から選択されることが好ましい。この場合、第二の炭素相は第一の炭素相よりも結晶性の低いもの(以下、低結晶炭素相とも称する)から選択されることが好ましい。
【0060】
第一の炭素相よりも結晶性が低い第二の炭素相の材質は特に制限されず、所望の性質に応じて適宜選択される。第二の炭素相の好ましい例としては、熱処理により炭素質に変化し得る有機化合物(炭素前駆体)から得られる炭素相が挙げられる。具体的には、エチレンヘビーエンドピッチ、原油ピッチ、コールタールピッチ、アスファルト分解ピッチ、ポリ塩化ビニル等の有機化合物を熱分解して生成するピッチ、ナフタレン等を超強酸の存在下で重合させて作製される合成ピッチなどが挙げられる。また、ポリ塩化ビニル、ポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルブチラール等の熱可塑性合成高分子、デンプン、セルロース等の天然高分子などを炭素前駆体として用いることもできる。
【0061】
炭素材料が上述した複合材料である場合、核となる第一の炭素相は、平均面間隔d002が0.335nm〜0.339nmの範囲の黒鉛材料であることが、充放電容量増大の観点から好ましい。特に、d002が0.335nm〜0.338nmの範囲、好ましくは0.335nm〜0.337nmの範囲の黒鉛材料を用いる場合、充放電容量が330mAh/g〜370mAh/gと大きく良好なリチウムイオン二次電池が得られる傾向にある。
【0062】
第一の炭素相となる黒鉛材料は、体積平均粒子径(50%D)が1μm〜20μmであることが好ましい。黒鉛材料の体積平均粒子径が1μm以上であると、原料黒鉛中に微粉が適度な量で含まれ、核材に炭素前駆体としての有機化合物を付着させる工程での凝集の発生が抑制され、両者がより均等に混合される傾向にある。黒鉛材料の体積平均粒子径が20μm以下であると、負極材中での粗大粒子の混在が抑制され、負極材の塗工の際に筋引きなどの発生が抑制される傾向にある。
【0063】
第一の炭素相となる黒鉛材料は、77Kでの窒素吸着測定により求めた比表面積、すなわちBET比表面積(N比表面積)が0.1m/g〜30m/gであることが好ましく、0.5m/g〜25m/gであることがより好ましく、0.5m/g〜15m/gであることがさらに好ましい。黒鉛材料のN比表面積が0.1m/g以上であると、核材に炭素前駆体としての有機化合物を付着させる工程で凝集が生じにくい傾向にある。黒鉛材料のN比表面積が30m/g以下であると、比表面積が適度な範囲に維持され、有機化合物がより均等に付着する傾向にある。
【0064】
第一の炭素相となる黒鉛材料の形状としては、鱗片状、球状、塊状等が挙げられ、タップ密度増大の観点からは球形であることが好ましい。
【0065】
黒鉛材料の球形化度を表す指標としては、アスペクト比が挙げられる。本明細書において黒鉛材料のアスペクト比は「最大長垂直長/最大長」で得られる値であり、その最大値は1である。ここで、「最大長」とは黒鉛材料の粒子の輪郭線上の2点間の距離の最大値であり、「最大長垂直長」とは最大長となる2点間を結ぶ線分に垂直であって粒子の輪郭線上の2点を結ぶ線分のうち、最も長いものの長さである。
黒鉛材料のアスペクト比は、例えば、フロー式粒子像分析装置を用いて測定することができる。フロー式粒子像分析装置としては、シスメックス株式会社の「FPIA−3000」等が挙げられる。
【0066】
第一の炭素相となる黒鉛材料は、平均アスペクト比が0.1以上であることが好ましく、0.3以上であることがより好ましい。黒鉛材料の平均アスペクト比が0.1以上であると、黒鉛材料中の鱗片状黒鉛の割合が多すぎず、黒鉛材料のエッジ面の量を適切な範囲内に抑えることができる。エッジ面はベイサル面に比べて活性であることから、核材に炭素前駆体としての有機化合物を付着させる工程において、有機化合物がエッジ面により多く付着することが懸念されるが、平均アスペクト比が0.1以上であれば、有機化合物がより均等に核材に付着する傾向にある。その結果、得られる炭素材料における低結晶炭素と結晶炭素の分布がより均等になる傾向にある。
【0067】
負極材は、炭素材料に加え、必要に応じてその他の成分を含んでもよい。例えば、金属成分を含んでもよい。
金属成分としては、高容量化のため必要に応じて、Al、Si、Ga、Ge、In、Sn、Sb、Ag等のリチウムと合金化する元素からなる金属の粉末、Al、Si、Ga、Ge、In、Sn、Sb、Ag等のリチウムと合金化する元素を少なくとも含む多元系合金の粉末、リチウム合金の粉末などが挙げられる。金属成分は、1種を単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。また、負極材が金属成分を含む場合、金属成分は炭素材料とは別に添加されても、炭素材料と複合化した状態で添加されてもよい。
【0068】
負極材が炭素材料に加えて金属成分を含む場合、炭素材料のみを含む場合に比べて負極材全体のタップ密度が増大する傾向にある。例えば、負極材全体のタップ密度を0.3g/cm〜3.0g/cmとすることができる。負極材のタップ密度が大きいと、充放電反応が促進され負極抵抗が減少し、良好な入出力特性が得られる傾向にある。
【0069】
負極材が炭素材料に加えて金属成分を含む場合、その量は特に制限されない。例えば、負極材全体の1質量%〜50質量%となる量であってよい。
【0070】
<リチウムイオン二次電池用負極材(2)>
本実施形態のリチウムイオン二次電池用負極材は、X線回折法より求めた平均面間隔d002が0.335nm〜0.339nmであり、ラマン分光測定のR値が0.1〜1.0であり、かつ下記(1)及び(2)を満たす炭素材料を含む。
(1)個数基準の粒度分布において、差分の相対粒子量q0が最頻値となるときの粒子径が11.601μm以下である。
(2)個数基準の粒度分布において、粒子径11.601μmのときの差分の相対粒子量q0Aと、粒子径7.806μmのときの差分の相対粒子量q0Bとの比(q0A/q0B)が1.20〜3.00である。
【0071】
本実施形態の負極材において、各条件の詳細及び好ましい態様は、上述した実施形態の負極材に関する記載を参照することができる。
【0072】
<リチウムイオン二次電池用負極材(3)>
本実施形態のリチウムイオン二次電池用負極材は、X線回折法により求めた平均面間隔d002が0.335nm〜0.339nmであり、核となる第一の炭素相と、前記第一の炭素相の表面の少なくとも一部に配置される第一の炭素相とは異なる第二の炭素相と、を含み、かつ下記(1)及び(2)を満たす炭素材料を含む。
(1)個数基準の粒度分布において、差分の相対粒子量q0が最頻値となるときの粒子径が11.601μm以下である。
(2)個数基準の粒度分布において、粒子径11.601μmのときの差分の相対粒子量q0Aと、粒子径7.806μmのときの差分の相対粒子量q0Bとの比(q0A/q0B)が1.20〜3.00である。
【0073】
本実施形態の負極材において、各条件の詳細及び好ましい態様は、上述した実施形態の負極材に関する記載を参照することができる。
【0074】
<負極材の製造方法>
本実施形態の負極材の製造方法に特に制限はなく、負極材の製造に通常用いられている方法を採用することができる。
【0075】
炭素材料が、核となる第一の炭素相と、その表面の少なくとも一部に配置される第二の炭素相とを含む複合材料である場合、その製造方法としては、例えば、炭素前駆体となる有機化合物を第一の炭素相となる核材の表面に付着させた後、750℃〜1200℃の不活性雰囲気中で焼成して炭素前駆体を炭素化する方法が挙げられる。炭素前駆体として用いる有機化合物としては、炭素前駆体の例として上述した有機化合物が挙げられる。
【0076】
第一の炭素相の表面に炭素前駆体を付着させる方法は、特に制限されない。例えば、炭素前駆体を溶媒に溶解又は分散させた液体に第一の炭素相となる核材を混合した後に溶媒を除去する湿式方式、核材と炭素前駆体をそれぞれ固体の状態で混合して得た混合物に力学的エネルギーを加えることで付着させる乾式方式、CVD法等の気相方式などが挙げられる。炭素材料の比表面積の制御の観点からは、乾式方式により行うことが好ましい。
【0077】
乾式方法により第一の炭素相の表面に炭素前駆体を付着させる方法は、特に制限されない。例えば、第一の炭素と炭素前駆体の混合物を、内容物の混合及び撹拌の少なくとも一方が可能な構造を有する容器中に充填し、力学的エネルギーを加えつつ混合及び撹拌の少なくとも一方を行うことによって付着させることができる。具体的には、例えば、羽、スクリュー等の装置を備えた容器を用いて行うことができる。混合物に加える力学的エネルギーの大きさは、特に制限されない。例えば、0.360kJ/kg〜36000kJ/kgであることが好ましく、0.360kJ/kg〜7200kJ/kgであることがより好ましく、2.50kJ/kg〜2000kJ/kgであることがさらに好ましい。
【0078】
ここで混合物に加える力学的エネルギーとは、負荷(kW)に時間(h)を乗じて得た値を、充填した混合物の質量(kg)で除して得た値である。混合物に加える力学的エネルギーを上記範囲とすることで、第一の炭素の表面に炭素前駆体がより均等に付着し、得られる炭素材料における低結晶炭素と結晶性炭素の分布がより均等になる傾向にある。
【0079】
第一の炭素相の表面に炭素前駆体を付着させた後の状態のもの(中間製造物)は、さらに加熱焼成される。焼成温度は、炭素前駆体が炭素化しうる温度であれば特に制限されない。例えば、750℃〜2000℃であることが好ましく、800℃〜1800℃であることがより好ましく、900℃〜1400℃であることがさらに好ましい。焼成温度が750℃以上であると、リチウムイオン二次電池の充放電効率、入出力特性及びサイクル特性が良好に維持される傾向にあり、焼成温度が2000℃以下であると、低結晶性炭素部分の結晶性が高くなりすぎることが抑制される傾向にある。その結果、急速充電特性、低温充電特性、過充電安全性等の特性が良好に維持される傾向にある。焼成時の雰囲気は、中間製造物が酸化し難い雰囲気であれば特に制限されない。例えば、窒素ガス雰囲気、アルゴンガス雰囲気、自己分解ガス雰囲気等が適用できる。焼成に使用する炉の形式は、特に制限されない。例えば、電気及びガスの少なくとも一方を熱源としたバッチ炉、連続炉等が好ましい。
【0080】
<リチウムイオン二次電池用負極>
本実施形態のリチウムイオン二次電池用負極は、上述した負極材を含む負極材層と、集電体と、を含む。これにより、高い充放電効率を維持しながら、入出力特性と寿命特性にも優れるリチウムイオン二次電池を構成することが可能となる。リチウムイオン二次電池用負極は、上述した負極材を含む負極材層及び集電体の他、必要に応じて他の構成要素を含んでもよい。
【0081】
リチウムイオン二次電池用負極を作製する方法は、特に制限されない。例えば、負極材と有機結着剤を溶剤とともに撹拌機、ボールミル、スーパーサンドミル、加圧ニーダー等の分散装置を用いて混練してスラリー状の負極組成物を調製し、これを集電体の表面に付与して負極層を形成する方法、上記と同様にしてペースト状の負極組成物を調製し、シート状、ペレット状等の形状に成形し、これを集電体と一体化する方法などが挙げられる。
【0082】
有機結着剤は、特に限定されない。例えば、スチレン−ブタジエン共重合体、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロニトリル、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート等のエチレン性不飽和カルボン酸エステル、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、フマル酸、マレイン酸等のエチレン性不飽和カルボン酸、ポリフッ化ビニリデン、ポリエチレンオキサイド、ポリエピクロヒドリン、ポリフォスファゼン、ポリアクリロニトリル等のイオン導電性の大きな高分子化合物などが挙げられる。(メタ)アクリレートはアクリレートとメタクリレートの少なくとも一方を表す。
負極組成物に含まれる有機系結着剤の量は特に制限されないが、負極材と有機系結着剤の合計100質量部に対して0.5質量部〜20質量部であることが好ましい。
【0083】
負極組成物は、粘度を調整するための増粘剤を含んでもよい。増粘剤としては、例えば、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、エチルセルロース、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸(塩)、酸化スターチ、リン酸化スターチ、カゼイン等が挙げられる。
【0084】
負極組成物は、導電補助材を含んでもよい。導電補助材としては、例えば、カーボンブラック、グラファイト、アセチレンブラック等の炭素材料のほか、導電性を示す酸化物、窒化物等が挙げられる。導電補助剤の量は特に制限されないが、負極材100質量部に対して0.5質量%〜15質量%程度であってもよい。
【0085】
集電体の材質及び形状は、特に制限されない。例えば、アルミニウム、銅、ニッケル、チタン、ステンレス鋼等の金属材料を、箔状、穴開け箔状、メッシュ状等にしたものが挙げられる。さらには、ポーラスメタル(発泡メタル)等の多孔性材料、カーボンペーパーなども使用可能である。
【0086】
負極組成物を集電体に付与する方法は、特に限定されない。例えば、メタルマスク印刷法、静電塗装法、ディップコート法、スプレーコート法、ロールコート法、ドクターブレード法、コンマコート法、グラビアコート法、スクリーン印刷法等の塗布方法が挙げられる。負極組成物を集電体に付与した後は、負極組成物に含まれる溶剤を除去するために、熱風乾燥機、赤外線乾燥機又はこれらを組み合わせた乾燥機により乾燥させる。さらに必要に応じて平板プレス、カレンダーロール等による圧延処理を行う。
【0087】
負極材組成物をシート状、ペレット状等の形状に成形し、これを集電体と一体化する方法は、特に制限されない。例えば、ロール、プレス又はこれらの組み合わせを用いて公知の方法により行うことができる。一体化する際の圧力は、1MPa〜200MPa程度が好ましい。
【0088】
リチウムイオン二次電池用負極の負極密度は、1.3g/cm〜1.8g/cmであることが好ましく、1.4g/cm〜1.8g/cmであることがより好ましく、1.5g/cm〜1.7g/cmであることがさらに好ましい。負極密度が1.3g/cm以上であると、抵抗値が低下しにくく容量が高く維持される傾向にあり、1.8g/cm以下であると、レート特性及びサイクル特性の低下が抑制される傾向にある。
【0089】
<リチウムイオン二次電池>
本実施形態のリチウムイオン二次電池は、上述したリチウムイオン二次電池用負極と、正極と、電解質と、を含む。リチウムイオン二次電池は、例えば、リチウムイオン二次電池用負極と正極とをセパレータを介して対向するように容器内に配置し、電解質を溶媒に溶解して調製した電解液を容器内に注入することにより得ることができる。
【0090】
正極は、前記負極と同様にして、集電体の表面に正極材料を付与して正極層を形成することで得ることができる。集電体としては、アルミニウム、チタン、ステンレス鋼等の金属材料を箔状、穴開け箔状、メッシュ状等にした帯状のものを用いることができる。
【0091】
正極に用いる材料は、特に制限されない。例えば、リチウムイオンをドーピング又はインターカレーション可能な金属化合物、金属酸化物、金属硫化物、リン酸化合物等の正極活物質及びその他の材料が挙げられる。
正極活物質としては、コバルト酸リチウム(LiCoO)、ニッケル酸リチウム(LiNiO)、マンガン酸リチウム(LiMnO)、コバルト酸リチウムにおいてコバルトの少なくとも一部がニッケル及びマンガンの少なくとも一方で置換された複酸化物(LiCoNiMn、x+y+z=1)、これらの化合物においてコバルト、ニッケル及びマンガンの少なくとも一部が添加元素M’で置換された複酸化物(LiCoNiMnM’、a+b+c+d=1、M’:Al、Mg、Ti、Zr又はGe)、リチウムマンガンスピネル(LiMn)、リチウムバナジウム化合物、V、V13、VO、MnO、TiO、MoV、TiS、V、VS、MoS、MoS、Cr、Cr、及びオリビン型LiMPO(M:Co、Ni、Mn、Fe)が挙げられる。
その他の材料としては、ポリアセチレン、ポリアニリン、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリアセン等の導電性ポリマー、多孔質炭素などが挙げられる。
【0092】
セパレータとしては、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィンを主成分とした不織布、クロス、微孔フィルム又はこれらを組み合わせたものが挙げられる。なお、リチウムイオン二次電池の構造上、正極と負極が接触しない場合は、セパレータを省略してもよい。
【0093】
電解質としては、LiClO、LiPF、LiAsF、LiBF、LiSOCF等のリチウム塩が挙げられる。
電解質を溶解する溶媒としては、エチレンカーボネート、フルオロエチレンカーボネート、クロロエチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネート、ビニレンカーボネート、シクロペンタノン、シクロヘキシルベンゼン、スルホラン、プロパンスルトン、3−メチルスルホラン、2,4−ジメチルスルホラン、3−メチル−1,3−オキサゾリジン−2−オン、γ−ブチロラクトン、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、メチルプロピルカーボネート、ブチルメチルカーボネート、エチルプロピルカーボネート、ブチルエチルカーボネート、ジプロピルカーボネート、1,2−ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、1,3−ジオキソラン、酢酸メチル、酢酸エチル、トリメチルリン酸エステル、トリエチルリン酸エステル等の非水系溶媒が挙げられる。
【0094】
リチウムイオン二次電池における電極の構成は、特に限定されない。一般的には、正極及び負極と、必要に応じて正極と負極の間に設けられるセパレータとを重ねたものを、渦巻状に巻回した状態のもの(巻回式極板群)及び渦巻状に巻回しない板状のもの(積層式極板群)が挙げられる。
【0095】
リチウムイオン二次電池の種類は、特に限定されない。例えば、ラミネート型電池、ペーパー型電池、ボタン型電池、コイン型電池、積層型電池、円筒型電池、角型電池等が挙げられる。
【0096】
本実施形態の負極材は、充放電での入出力特性と寿命特性に優れているため、電気自動車、パワーツール、電力貯蔵用等の比較的大容量であることが要求されるリチウムイオン二次電池に好適に用いられる。中でも、電気自動車(EV)、ハイブリッド電気自動車(HEV)、プラグインハイブリッド電気自動車(PHEV)等の自動車用途では、加速性能及びブレーキ回生性能を向上させるため大電流での充放電が求められており、このような要求を満足する上で、入出力特性に優れる本実施形態の負極材を用いることが望ましい。
【実施例】
【0097】
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0098】
[実施例1]
体積平均粒子径が10μmの球状天然黒鉛(d002=0.336nm、平均アスペクト比=0.8)100質量部と、コールタールピッチ(軟化点98℃、残炭率(炭化率)50%)5質量部とを混合して得た混合物を、回転翼を配置したシリンダー内に入れ、シリンダーの内壁と回転翼の間で擦り合わせることにより、球状天然黒鉛の表面にコールタールピッチを付着させた。擦り合わせの工程は24kWの負荷で5分間行った(負荷:1800kJ/kg)。次いで窒素流通下、20℃/時間の昇温速度で1000℃まで昇温し、1時間保持してコールタールピッチを炭素化した。その後、カッターミルで解砕し、300メッシュ篩で篩分けを行い、その篩下を複合材料1として得た。
【0099】
体積平均粒子径が10μmの球状天然黒鉛の代わりに体積平均粒子径が16μmの球状天然黒鉛(d002=0.336nm、平均アスペクト比=0.8)100質量部を用いた以外は複合材料1と同様にして、複合材料2を得た。
【0100】
複合材料1と複合材料2を質量比が5:5(複合材料1:複合材料2)となるように混合して、炭素材料を作製した。得られた炭素材料について、下記に示す方法により、XRD解析、比表面積測定、粒度分布測定、タップ密度測定、及びペレット密度測定を行った。
【0101】
[XRD解析(平均面間隔d002の測定)]
炭素材料を石英製の試料ホルダーの凹部分に充填し、測定ステージにセットした。以下の測定条件において広角X線回折装置(株式会社リガク製)で測定を行った。
線源:CuKα線(波長=0.15418nm)
出力:40kV、20mA
サンプリング幅:0.010°
走査範囲:10°〜35°
スキャンスピード:0.5°/min
【0102】
[N比表面積測定]
炭素材料について、高速比表面積/細孔分布測定装置(MICROMERITICS社の「ASAP2010」)を用いて液体窒素温度(77K)での窒素吸着を多点法で測定し、BET法(相対圧範囲:0.05〜0.2)より算出した。
【0103】
[粒度分布測定]
炭素材料を界面活性剤と共に精製水中に分散させた溶液を、レーザー回折式粒度分布測定装置(株式会社島津製作所の「SALD−3000J」)の試料水槽に入れ、ポンプで循環させながら1分間超音波をかけて、以下の測定条件においてレーザー回折式で測定した。この際、出力条件を個数又は体積基準に設定して下記(1)〜(5)に該当する値を調べた。
【0104】
(測定条件の設定)
測定回数:1回
測定間隔:2秒
平均回数:64回
測定吸光度範囲:0.01〜0.2
(任意粒子径・%テーブル設定)
範囲:0.1〜2000μm
分割数:50
【0105】
(1)上記の粒度分布測定において出力条件の分布基準を「個数」として得られた個数基準の粒度分布における、差分の相対粒子量q0が最頻値となるときの粒子径を調べた。
【0106】
(2)上記の粒度分布測定において出力条件の分布基準を「個数」として得られた個数基準の粒度分布における、粒子径が11.601μmのときの差分の相対粒子量q0Aと、粒子径が7.806μmのときの差分の相対粒子量q0Bとの比(q0A/q0B)を算出した。
【0107】
(3)上記の粒度分布測定において出力条件の分布基準を「体積」として得られた体積基準の粒度分布において、小粒子径側から体積累積分布曲線を描いた場合に、粒子径が9.516μmのときの積算値Q3を調べた。
【0108】
(4)上記の粒度分布測定において出力条件の分布基準を「体積」として得られた体積基準の粒度分布において、小粒子径側から体積累積分布曲線を描いた場合に、累積が50%となるときの粒子径(50%D)を調べた。
【0109】
(5)上記の粒度分布測定において出力条件の分布基準を「体積」として得られた体積基準の粒度分布において、小粒子径側から体積累積分布曲線を描いた場合に、累積が99.9%となるときの粒子径(99.9%D)を調べた。
【0110】
[タップ密度測定]
容量100cmのメスシリンダーに炭素材料100cmをゆっくり投入し、メスシリンダーに栓をした。このメスシリンダーを5cmの高さから250回落下させた後の炭素材料の質量及び容積から求められる値をタップ密度とした。
【0111】
[ペレット密度測定]
13mm径の成型器(Carver社の13mm pellet die 型番3619)に炭素材料1.00gを投入し、油圧プレス機(Carver社の「Carver Standard Press」)にて1.0tの圧力で加圧した後の炭素材料の厚み及び断面積から求められる体積を炭素材料の質量で除した値をペレット密度とした。
【0112】
[平均アスペクト比]
炭素材料の平均アスペクト比は、フロー式粒子像分析装置(シスメックス株式会社の「FPIA−3000」)を用いて求めた。
【0113】
[初回充放電効率の測定]
作製した炭素材料98質量部に対し、増粘剤としてCMC(カルボキシメチルセルロース、第一工業製薬株式会社の「セロゲンWS−C」)の濃度が2質量%の水溶液をCMCの固形分で1質量部となるように加え、10分間混練を行った。次いで、混練物中の固形分濃度(負極材とCMCの合計)が40質量%〜50質量%となるように精製水を加え、10分間混練を行った。次いで、結着剤としてSBR(日本ゼオン株式会社の「BM−400B」)の濃度が40質量%の水分散液をSBRの固形分で1質量部となるように加え、10分間混合してペースト状の負極材組成物を作製した。この負極材組成物を厚さ40μmの電解銅箔に厚さ200μmのマスクを用いて直径9.5mmの円形となるよう塗布した。さらに、105℃で乾燥して水分を除去し、試料電極(負極)を作製した。
【0114】
次いで、上記試料電極、セパレータ、対極の順に積層したものを電池容器に入れ、エチレンカーボネート(EC)及びメチルエチルカーボネート(MEC)(ECとMECは体積比で1:3)の混合溶媒にLiPFを1.5モル/リットルの濃度になるように溶解した電解液を注入し、コイン電池を作製した。対極には金属リチウムを使用し、セパレータには厚さ20μmのポリエチレン微孔膜を使用した。
【0115】
得られたコイン電池の試料電極と対極の間に、0.2mA/cmの定電流で0V(Vvs.Li/Li)まで充電し、次いで0Vの定電圧で電流が0.02mAになるまで充電した。次に30分の休止時間後に0.2mA/cmの定電流で2.5V(Vvs.Li/Li)まで放電する1サイクル試験を行い、初回充放電効率を測定した。初回充放電効率(%)は、(放電容量)/(充電容量)×100として算出した。ここでは、負極材の試料電極にリチウムイオンが吸蔵される場合を充電、逆に試料電極からリチウムイオンが放出される場合を放電とした。
【0116】
[寿命特性の評価]
初回充放電効率の測定に用いた負極材組成物と同様の方法で作製した負極材組成物を、厚さ40μmの電解銅箔に単位面積当りの塗布量が9.0mg/cmとなるようにクリアランスを調整したコンマコーターで塗工した。その後、ハンドプレスで電極密度を1.5g/cmに調整した。この電極を直径14mmの円盤状に打ち抜き、試料電極(負極)を作製した。この試料電極を用いた以外は初回充放電効率の測定と同様にして、コイン電池を作製した。
【0117】
上記で作製したコイン電池を用い、下記手順で寿命特性の評価を行った。
(1)0.48mAの定電流で0V(Vvs.Li/Li)まで充電し、次いで0Vの定電圧で電流が0.048mAになるまで充電した。
(2)30分の休止時間後に、0.48mAの定電流で1.5V(Vvs.Li/Li)まで放電する1サイクル試験を行い、放電容量を測定した。
(3)4.8mAの定電流で0V(Vvs.Li/Li)まで充電し、0Vの定電圧で電流が0.48mAになるまで充電した。
(4)30分の休止時間後に、4.8mAの定電流で1.5V(Vvs.Li/Li)まで放電した。
(5)上記(3)及び(4)の充放電サイクル試験を50サイクル行った。
上記のサイクルを50サイクル繰り返したときの1サイクル目からの放電容量維持率(=50サイクル目放電容量/1サイクル目放電容量×100)を測定した。放電容量維持率が高いほど、寿命特性に優れていると判断することができる。
【0118】
(入出力特性の評価)
寿命特性と同等の方法でコイン電池を作製し、下記手順で入出力特性の評価を行った。
(1)0.96mAの定電流で0V(Vvs.Li/Li)まで充電し、次いで電流値が0.096mAになるまで0Vで定電圧充電を行った。
(2)30分の休止時間後に、0.96mAの定電流で1.5V(Vvs.Li/Li)まで放電した。
(3)0.96mAの定電流で容量の半分まで充電を行った。
(4)4.8mA、14.4mA、24mAの電流値で10秒間放電を行い、その際の電圧降下(ΔV)を確認した。それぞれの電流値での試験の間には30分間の休止時間を置いた。
各電流値に対してΔVをプロットし、その傾きを抵抗値(Ω)とした。この値が小さいほど、入出力特性に優れると判断することができる。
【0119】
[実施例2]
複合材料1と複合材料2を質量比が4:6(複合材料1:複合材料2)となるように混合した以外は実施例1と同様にして炭素材料を作製し、その特性を調べた。また、コイン電池を作製してその性能を評価した。結果を表2に示す。
【0120】
[実施例3]
複合材料1と複合材料2を質量比が3:7(複合材料1:複合材料2)となるように混合した以外は実施例1と同様にして炭素材料を作製し、その特性を調べた。また、コイン電池を作製してその性能を評価した。結果を表2に示す。
【0121】
[実施例4]
複合材料1と複合材料2を質量比が6:4(複合材料1:複合材料2)となるように混合した以外は実施例1と同様にして炭素材料を作製し、その特性を調べた。また、コイン電池を作製してその性能を評価した。結果を表2に示す。
【0122】
[比較例1]
複合材料1と複合材料2を質量比が2:8(複合材料1:複合材料2)となるように混合した以外は実施例1と同様にして炭素材料を作製し、その特性を調べた。また、コイン電池を作製してその性能を評価した。結果を表2に示す。
【0123】
[比較例2]
複合材料2のみを用いた以外は実施例1と同様にして炭素材料を作製し、その特性を調べた。また、コイン電池を作製してその性能を評価した。結果を表2に示す。
【0124】
[比較例3]
複合材料1のみを用いた以外は実施例1と同様にして炭素材料を作製し、その特性を調べた。また、コイン電池を作製してその性能を評価した。結果を表2に示す。
【0125】
[比較例4]
体積平均粒子径が10μmの球状天然黒鉛の代わりに体積平均粒子径が22μmの球状天然黒鉛(d002=0.336nm、平均アスペクト比=0.7)100質量部を用いた以外は複合材料1と同様にして、複合材料3を得た。
複合材料3と複合材料2を質量比が5:5(複合材料3:複合材料2)となるように混合した以外は実施例1と同様にして炭素材料を作製し、その特性を調べた。また、コイン電池を作製してその性能を評価した。結果を表2に示す。
【0126】
[比較例5]
体積平均粒子径が22μmの球状天然黒鉛(d002=0.336nm、平均アスペクト比=0.7)を300メッシュの篩に通し、得られた篩下と複合材料2を質量比が5:5(篩下:複合材料2)となるように混合した以外は実施例1と同様にして炭素材料を作製し、その特性を調べた。また、コイン電池を作製してその性能を評価した。結果を表2に示す。
【0127】
[比較例6]
石炭系コールタールをオートクレーブにより400℃で熱処理し、生コークスを得た。この生コークスを粉砕した後、1200℃の不活性雰囲気中でカ焼を行い、コークス塊を得た。このコークス塊を分級機付きの衝撃粉砕機を用いて平均粒子径15μmに粉砕後、200メッシュの篩に通し、篩下を炭素粒子(d002=0.342nm)として得た。この炭素粒子100質量部とポリビニルアルコール(重合度1700、完全けん化型、炭化率15質量%)20質量部を混合して得た混合物を用いたこと以外は複合材料1と同様にして、複合材料4を得た。
複合材料4と複合材料2を質量比が5:5(複合材料4:複合材料2)となるように混合した以外は実施例1と同様にして炭素材料を作製し、その特性を調べた。また、コイン電池を作製してその性能を評価した。結果を表2に示す。
【0128】
[比較例7]
体積平均粒子径10μmの球状天然黒鉛(d002=0.336nm、平均アスペクト比=0.8)と体積平均粒子径16μmの球状天然黒鉛(d002=0.336nm、平均アスペクト比=0.8)を質量比が5:5となるように混合した以外は実施例1と同様にして炭素材料を作製し、その特性を調べた。また、コイン電池を作製してその性能を評価した。結果を表2に示す。
【0129】
[比較例8]
比較例6で作製した炭素粒子(d002=0.342nm)100質量部とコールタールピッチ30質量部と酸化鉄粉末5質量部を250℃で1時間混合した。得られた塊状物をピンミルで粉砕した後、型込みプレスで、密度1.52g/cmのブロック状に成形加工した。得られたブロックをマッフル炉で最高温度800℃にて焼成したのち、アチソン炉で自己分解ガス雰囲気下、2900℃にて黒鉛化を行った。次いで、黒鉛化したブロックを、ハンマーで粗砕した後、ピンミルで平均粒子径30μmの黒鉛粉末を得た。さらにこの黒鉛粉末を、球形化処理装置(ホソカワミクロン製、ファカルティ)を使用し、粉砕回転数1800回転/分(rpm)、分級回転数7000回転/分(rpm)で10分間の処理を行い、球形化人造黒鉛粉末を作製した。この球形化人造黒鉛粉末を200メッシュの篩に通し、篩下を炭素材料として得た。この炭素材料の特性を実施例1と同様にして調べた。また、コイン電池を作製してその性能を評価した。結果を表2に示す。
【0130】
【表2】
【0131】
表2に示す結果から明らかなように、本実施形態の炭素材料を含む負極材を用いて作製した実施例1〜4のリチウムイオン二次電池は、高い充放電効率を維持しながら、入出力特性と寿命特性にも優れていた。