特許第6922933号(P6922933)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6922933光学フィルム、製造方法、及び多層フィルム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6922933
(24)【登録日】2021年8月2日
(45)【発行日】2021年8月18日
(54)【発明の名称】光学フィルム、製造方法、及び多層フィルム
(51)【国際特許分類】
   C08J 5/18 20060101AFI20210805BHJP
   C08J 7/00 20060101ALI20210805BHJP
   B32B 7/12 20060101ALI20210805BHJP
   G02B 1/04 20060101ALI20210805BHJP
   G06F 3/041 20060101ALN20210805BHJP
【FI】
   C08J5/18CES
   C08J7/00 306
   B32B7/12
   G02B1/04
   !G06F3/041 495
【請求項の数】7
【全頁数】26
(21)【出願番号】特願2018-566050(P2018-566050)
(86)(22)【出願日】2018年1月18日
(86)【国際出願番号】JP2018001453
(87)【国際公開番号】WO2018142959
(87)【国際公開日】20180809
【審査請求日】2020年9月10日
(31)【優先権主張番号】特願2017-15994(P2017-15994)
(32)【優先日】2017年1月31日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000229117
【氏名又は名称】日本ゼオン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】特許業務法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】幸本 壮悟
【審査官】 石塚 寛和
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2017/002868(WO,A1)
【文献】 特開2012−198529(JP,A)
【文献】 国際公開第2011/118661(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08J 5/00−5/02、5/12−5/22、7/00
B32B 1/00−43/00
G02B 1/04、5/00
G06F 3/041
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
脂環式構造含有重合体を含む結晶化樹脂を主成分とする光学フィルムであって、
前記結晶化樹脂の結晶化度が30%以上であり、
少なくとも一方の面の算術平均粗さが2.5nm以下であり、
少なくとも一方の面の表層における、炭素元素に対する酸素元素の組成比が1/10以上であり、
かつ、炭素元素に対する窒素元素の組成比が1/20以下である、光学フィルム。
【請求項2】
脂環式構造含有重合体を含む結晶化樹脂を主成分とする光学フィルムであって、
前記結晶化樹脂の結晶化度が30%以上であり、
少なくとも一方の面の算術平均粗さが2.5nm以下であり、
少なくとも一方の面において、
全表面自由エネルギーが70mN/m以上、分散成分の表面自由エネルギーが40mN/m以下、分極成分の表面自由エネルギーが25mN/m以上、かつ、水素結合成分の表面自由エネルギーが10mN/m以上である、学フィルム。
【請求項3】
学フィルムの製造方法であって、
前記光学フィルムは、脂環式構造含有重合体を含む結晶化樹脂を主成分とし、
前記結晶化樹脂の結晶化度が30%以上であり、
少なくとも一方の面の算術平均粗さが2.5nm以下である、光学フィルムであって、
前記製造方法は、
脂環式構造含有重合体を含む結晶性樹脂フィルムを結晶化させて結晶化樹脂フィルムを得る工程と、
前記結晶化樹脂フィルムのプラズマ処理を行うプラズマ処理工程と、を含み、
前記プラズマ処理を、ガス雰囲気下で行い、
前記ガスは窒素ガスを含み、且つ、酸素ガス及び二酸化炭素ガスから選ばれる一種以上のガスを含み、
前記ガスにおける窒素に対する酸素の重量比が5.50×10-3以上1.30×10-1以下である、光学フィルムの製造方法。
【請求項4】
光学フィルムの製造方法であって、
前記光学フィルムは、脂環式構造含有重合体を含む結晶化樹脂を主成分とし、
前記結晶化樹脂の結晶化度が30%以上であり、
少なくとも一方の面の算術平均粗さが2.5nm以下である、光学フィルムであって、
前記製造方法は、
脂環式構造含有重合体を含む結晶性樹脂フィルムを結晶化させて結晶化樹脂フィルムを得る工程と、
前記結晶化樹脂フィルムのプラズマ処理を行うプラズマ処理工程と、を含み、
前記プラズマ処理を、ガス雰囲気下で行い、
前記ガスは窒素ガス及び酸素ガスを含み、
前記ガスにおける窒素に対する酸素の重量比が5.50×10-3以上3.50×10-2以下である、学フィルムの製造方法。
【請求項5】
光学フィルムの製造方法であって、
前記光学フィルムは、脂環式構造含有重合体を含む結晶化樹脂を主成分とし、
前記結晶化樹脂の結晶化度が30%以上であり、
少なくとも一方の面の算術平均粗さが2.5nm以下である、光学フィルムであって、
前記製造方法は、
脂環式構造含有重合体を含む結晶性樹脂フィルムを結晶化させて結晶化樹脂フィルムを得る工程と、
前記結晶化樹脂フィルムのプラズマ処理を行うプラズマ処理工程と、を含み、
前記プラズマ処理を、ガス雰囲気下で行い、
前記ガスは窒素ガス及び二酸化炭素ガスを含み、
前記ガスにおける窒素に対する酸素の重量比が2.50×10-2以上1.30×10-1以下である、学フィルムの製造方法。
【請求項6】
前記プラズマ処理を、大気圧下で行う、請求項3〜5のいずれか1項に記載の光学フィルムの製造方法。
【請求項7】
請求項1または2に記載の光学フィルムと、
被接着層と、
前記光学フィルムと前記被接着層との間に設けられた接着層と、を有する多層フィルム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学フィルム、その製造方法、及び当該光学フィルムを含む多層フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示装置、有機エレクトロルミネッセンス表示装置等の表示装置においては、樹脂製の光学フィルムを設けることが広く行われている。例えば、タッチパネル等の使用者の動作を検出する機能を有する表示装置においては、可撓性を有する樹脂製の光学フィルムをその表面に設け、タッチセンサーを構成することが知られている。
【0003】
そのような光学フィルムは、耐熱性、可撓性等の特性が求められる。そのような特性を備えるフィルムとして、結晶化した、脂環式構造含有重合体を含む樹脂を用いることが提案されている(例えば特許文献1及び2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2014−105291号公報
【特許文献2】特開2016−008283号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
表示装置に組み込まれる光学フィルムは、上述の特性に加えて、接着性、即ち装置の他の構成要素との接着を容易に達成しうる能力が求められる。例えば、タッチセンサーを構成する光学フィルムは、装置自体の耐久性を高いものとするため、タッチセンサーを構成する他の要素と、高い剥離強度で接着しうることが求められている。しかしながら、従来の結晶化した脂環式構造含有重合体を含む樹脂を用いたフィルムでは、上述したような高い接着性を確保するのが困難であり、層間剥離が発生する傾向があった。
【0006】
従って、本発明の目的は、高い耐熱性、高い可撓性、及び高い接着性を有する光学フィルムならびに、該光学フィルムを容易に製造しうる製造方法を提供するとともに、高い耐熱性、高い可撓性を有し、且つ、層間剥離の発生を抑制し、耐久性が高い多層フィルムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、前記課題を解決するために検討した結果、脂環式構造含有重合体を含む結晶化樹脂を主成分とする光学フィルムの、当該結晶化樹脂の結晶化度を30%以上とし、かつ、光学フィルムの少なくとも一方の面の算術平均粗さを2.5nm以下とすることにより、高い耐熱性、高い可撓性、及び高い接着性を有し、かつ、層間剥離の発生を抑制することができることを見出した。また、本発明者は、脂環式構造含有重合を含む結晶性樹脂フィルムを結晶化して得られた結晶化樹脂フィルムをプラズマ処理することにより、上述のような特性を有する光学フィルムを容易に得ることができるということを見出した。本発明は、これらの知見に基づき完成されたものである。
本発明によれば、下記のものが提供される。
【0008】
〔1〕 脂環式構造含有重合体を含む結晶化樹脂を主成分とする光学フィルムであって、
前記結晶化樹脂の結晶化度が30%以上であり、
少なくとも一方の面の算術平均粗さが2.5nm以下である、光学フィルム。
〔2〕 少なくとも一方の面の表層における、炭素元素に対する酸素元素の組成比が1/10以上であり、
かつ、炭素元素に対する窒素元素の組成比が1/20以下である、〔1〕に記載の光学フィルム。
〔3〕 少なくとも一方の面において、
全表面自由エネルギーが70mN/m以上、分散成分の表面自由エネルギーが40mN/m以下、分極成分の表面自由エネルギーが25mN/m以上、かつ、水素結合成分の表面自由エネルギーが10mN/m以上である、〔1〕または〔2〕に記載の光学フィルム。
〔4〕 〔1〕〜〔3〕のいずれか一項に記載の光学フィルムの製造方法であって、
脂環式構造含有重合体を含む結晶性樹脂フィルムを結晶化させて結晶化樹脂フィルムを得る工程と、
結晶化樹脂フィルムのプラズマ処理を行うプラズマ処理工程と、を含む、光学フィルムの製造方法。
〔5〕 前記プラズマ処理を、大気圧下で行う、〔4〕に記載の光学フィルムの製造方法。
〔6〕 前記プラズマ処理を、ガス雰囲気下で行い、
前記ガスは窒素ガスを含み、且つ、酸素ガス及び二酸化炭素ガスから選ばれる一種以上のガスを含み、
前記ガスにおける窒素に対する酸素の重量比が5.50×10-3以上1.30×10-1以下である、〔4〕または〔5〕に記載の光学フィルムの製造方法。
〔7〕 前記プラズマ処理を、ガス雰囲気下で行い、
前記ガスは窒素ガス及び酸素ガスを含み、
前記ガスにおける窒素に対する酸素の重量比が5.50×10-3以上3.50×10-2以下である、〔4〕〜〔6〕のいずれか一項に記載の光学フィルムの製造方法。
〔8〕 前記プラズマ処理を、ガス雰囲気下で行い、
前記ガスは窒素ガス及び二酸化炭素ガスを含み、
前記ガスにおける窒素に対する酸素の重量比が2.50×10-2以上1.30×10-1以下である、〔4〕〜〔7〕のいずれか一項に記載の光学フィルムの製造方法。
〔9〕 〔1〕〜〔3〕のいずれか一項に記載の光学フィルムと、
被接着層と、
前記光学フィルムと前記被接着層との間に設けられた接着層と、を有する多層フィルム。
【発明の効果】
【0009】
本発明の光学フィルムは、高い耐熱性、高い可撓性、及び高い接着性を有する。本発明の光学フィルムの製造方法によれば、そのような光学フィルムを容易に製造しうる。本発明の多層フィルムは、高い耐熱性、高い可撓性、及び高い接着性を有し、かつ、層間剥離の発生を抑制し、耐久性が高い。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明について実施形態及び例示物を示して詳細に説明する。ただし、本発明は以下に示す実施形態及び例示物に限定されるものではなく、本発明の請求の範囲及びその均等の範囲を逸脱しない範囲において任意に変更して実施しうる。
【0011】
以下の説明において、「長尺」のフィルムとは、幅に対して5倍以上の長さを有するフィルムをいい、好ましくは10倍若しくはそれ以上の長さを有し、具体的にはロール状に巻き取られて保管又は運搬される程度の長さを有するフィルムをいう。フィルムの幅に対する長さの割合の上限は、特に限定されないが、例えば100,000倍以下としうる。
【0012】
以下の説明において、要素の方向が「平行」、「垂直」及び「直交」とは、別に断らない限り、本発明の効果を損ねない範囲内、例えば±5°の範囲内での誤差を含んでいてもよい。
【0013】
〔1.光学フィルム〕
本発明の光学フィルムは、脂環式構造含有重合体を含む結晶化樹脂を主成分とし、前記結晶化樹脂の結晶化度が30%以上である。また、本発明の光学フィルムは、少なくとも一方の面の算術平均粗さが2.5nm以下である。「主成分」とは、その含有量が全体の50重量%以上のものをいう(以下にて同じ)。本発明の光学フィルムは、結晶化樹脂以外の任意成分を含みうる一方、結晶化樹脂のみからなるものともしうる。即ち、光学フィルムにおける結晶化樹脂の割合の上限は、100重量%としうる。
【0014】
本発明において、結晶化樹脂の結晶化度は、30%以上であり、好ましくは50%以上、より好ましくは60%以上である。結晶化度の上限は、理想的には100%であるが、通常は90%以下、又は80%以下としうる。
【0015】
結晶化度は、光学フィルムに含まれる結晶性を有する脂環式構造含有重合体のうち、結晶化したものの割合を示す指標である。本発明において、光学フィルムは、その30%以上が結晶化している結晶性の脂環式構造含有重合体を含む。光学フィルムに含まれる脂環式構造含有重合体の結晶化度は、X線回折法によって測定しうる。具体的には、JIS K0131に準じて、広角X線回折装置(例えばRINT 2000、株式会社リガク製)を用いて、結晶性部分からの回析X線強度を求め、全体の回析X線強度との比から、下記式(I)によって結晶化度を求めうる。
Xc=K・Ic/It (I)
上記式(I)において、Xcは被検試料の結晶化度、Icは結晶性部分からの回析X線強度、Itは全体の回析X線強度、Kは補正項を、それぞれ表す。
【0016】
結晶化樹脂は、脂環式構造含有重合体を含む結晶性樹脂を結晶化させることにより形成しうる。
【0017】
脂環式構造含有重合体とは、分子内に脂環式構造を有する重合体であって、環状オレフィンを単量体として用いた重合反応によって得られうる重合体又はその水素添加物をいう。また、脂環式構造含有重合体は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
【0018】
脂環式構造含有重合体が有する脂環式構造としては、例えば、シクロアルカン構造及びシクロアルケン構造が挙げられる。これらの中でも、熱安定性などの特性に優れる光学フィルムが得られ易いことから、シクロアルカン構造が好ましい。1つの脂環式構造に含まれる炭素原子の数は、好ましくは4個以上、より好ましくは5個以上であり、好ましくは30個以下、より好ましくは20個以下、特に好ましくは15個以下である。1つの脂環式構造に含まれる炭素原子の数が上記範囲内にあることで、機械的強度、耐熱性、及び成形性が高度にバランスされる。
【0019】
脂環式構造含有重合体において、全ての構造単位に対する脂環式構造を有する構造単位の割合は、好ましくは30重量%以上、より好ましくは50重量%以上、特に好ましくは70重量%以上である。脂環式構造含有重合体における脂環式構造を有する構造単位の割合を前記のように多くすることにより、高い可撓性等の本発明の効果をより高めることができる。脂環式構造を有する構造単位の割合の上限は、100重量%としうる。
また、脂環式構造含有重合体において、脂環式構造を有する構造単位以外の残部は、格別な限定はなく、使用目的に応じて適宜選択しうる。
【0020】
結晶性樹脂に含まれる脂環式構造含有重合体は、結晶性を有する。ここで、「結晶性を有する脂環式構造含有重合体」とは、融点Tmを有する(すなわち、示差走査熱量計(DSC)で融点を観測することができる)脂環式構造含有重合体をいう。脂環式構造含有重合体の融点Tmは、好ましくは200℃以上、より好ましくは230℃以上であり、好ましくは290℃以下である。このような融点Tmを有する脂環式構造含有重合体を用いることによって、本発明における所望の結晶化度を容易に達成しうる。
【0021】
脂環式構造含有重合体の重量平均分子量(Mw)は、好ましくは1,000以上、より好ましくは2,000以上であり、好ましくは1,000,000以下、より好ましくは500,000以下である。このような重量平均分子量を有する脂環式構造含有重合体は、成形加工性と可撓性とのバランスに優れる。
【0022】
脂環式構造含有重合体の分子量分布(Mw/Mn)は、好ましくは1.0以上、より好ましくは1.5以上であり、好ましくは4.0以下、より好ましくは3.5以下である。ここで、Mnは数平均分子量を表す。このような分子量分布を有する脂環式構造含有重合体は、成形加工性に優れる。
脂環式構造含有重合体の重量平均分子量(Mw)及び分子量分布(Mw/Mn)は、テトラヒドロフランを展開溶媒とするゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)により、ポリスチレン換算値として測定しうる。
【0023】
脂環式構造含有重合体のガラス転移温度Tgは、特に限定されないが、通常は85℃以上、通常170℃以下である。
【0024】
前記の脂環式構造含有重合体としては、例えば、下記の重合体(α)〜重合体(δ)が挙げられる。これらの中でも、可撓性に優れる光学フィルムが得られ易いことから、結晶性を有する脂環式構造含有重合体としては、重合体(β)が好ましい。
重合体(α):環状オレフィン単量体の開環重合体であって、結晶性を有するもの。
重合体(β):重合体(α)の水素添加物であって、結晶性を有するもの。
重合体(γ):環状オレフィン単量体の付加重合体であって、結晶性を有するもの。
重合体(δ):重合体(γ)の水素添加物等であって、結晶性を有するもの。
【0025】
具体的には、脂環式構造含有重合体としては、ジシクロペンタジエンの開環重合体であって結晶性を有するもの、及び、ジシクロペンタジエンの開環重合体の水素添加物であって結晶性を有するものがより好ましく、ジシクロペンタジエンの開環重合体の水素添加物であって結晶性を有するものが特に好ましい。ここで、ジシクロペンタジエンの開環重合体とは、全構造単位に対するジシクロペンタジエン由来の構造単位の割合が、通常50重量%以上、好ましくは70重量%以上、より好ましくは90重量%以上、特に好ましくは100重量%の重合体をいう。
【0026】
前記のような結晶性を有する脂環式構造含有重合体は、例えば、国際公開第2016/067893号に記載の方法により、製造しうる。
【0027】
結晶性樹脂において、結晶性を有する脂環式構造含有重合体の割合は、好ましくは50重量%以上、より好ましくは70重量%以上、特に好ましくは90重量%以上である。結晶性を有する脂環式構造含有重合体の割合を前記範囲の下限値以上にすることにより、光学フィルムの可撓性を高めることができる。結晶性を有する脂環式構造含有重合体の割合の上限は、100重量%としうる。
【0028】
結晶性樹脂は、結晶性を有する脂環式構造含有重合体に加えて、任意の成分を含みうる。任意の成分としては、例えば、フェノール系酸化防止剤、リン系酸化防止剤、イオウ系酸化防止剤等の酸化防止剤;ヒンダードアミン系光安定剤等の光安定剤;石油系ワックス、フィッシャートロプシュワックス、ポリアルキレンワックス等のワックス;ソルビトール系化合物、有機リン酸の金属塩、有機カルボン酸の金属塩、カオリン及びタルク等の核剤;ジアミノスチルベン誘導体、クマリン誘導体、アゾール系誘導体(例えば、ベンゾオキサゾール誘導体、ベンゾトリアゾール誘導体、ベンゾイミダゾール誘導体、及びベンゾチアソール誘導体)、カルバゾール誘導体、ピリジン誘導体、ナフタル酸誘導体、及びイミダゾロン誘導体等の蛍光増白剤;ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、サリチル酸系紫外線吸収剤、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤等の紫外線吸収剤;タルク、シリカ、炭酸カルシウム、ガラス繊維等の無機充填材;着色剤;難燃剤;難燃助剤;帯電防止剤;可塑剤;近赤外線吸収剤;滑剤;フィラー、及び、軟質重合体等の、結晶性を有する脂環式構造含有重合体以外の任意の重合体;などが挙げられる。また、任意の成分は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
【0029】
本発明の光学フィルムは、少なくとも一方の面の算術平均粗さが2.5nm以下である。光学フィルムの少なくとも一方の面の算術平均粗さを前記のようにすることにより、高い接着性と、層間剥離の発生を抑制する等の本発明の効果が得られる。
光学フィルムの少なくとも一方の面の算術平均粗さは、好ましくは2.0nm以下であり、より好ましくは1.5nm以下であり、さらにより好ましくは1.2nm以下であり、さらに小さい0.5nm以下とすることもできる。光学フィルムの少なくとも一方の面の算術平均粗さを上記のようにすることにより、高い接着性、及び層間剥離の発生を抑制する等の本発明の効果を容易に達成しうる。算術平均粗さの下限は特に限定されず、理想的には0nmとしうる。
光学フィルムは、いずれか一方の面のみの算術平均粗さが2.5nm以下であってもよいし、両方の面の算術平均粗さが2.5nm以下であってもよい。また、光学フィルムの二つの面の算術平均粗さは同一であっても相違していてもよい。
【0030】
光学フィルムの面の算術平均粗さは、走査型プローブ顕微鏡を用い、JIS B0601:1994に基づき測定しうる。ここで、算術平均粗さとは、測定される断面曲線から、カットオフ値λcの高域フィルタによって長波長成分を遮断して輪郭曲線(粗さ曲線)を求め、その曲線の基準長さにおける高さ(平均線から測定曲線までの距離)の絶対値の平均値のことである。
【0031】
本発明の光学フィルムの、少なくとも一方の面の表層における、炭素元素に対する酸素元素の組成比(以下、「酸素元素の組成比」ともいう)は、好ましくは1/10以上であり、より好ましくは1/9以上であり、特に好ましくは1/8以上であり、好ましくは1/5以下である。本発明の光学フィルムの、少なくとも一方の面の表層における、酸素元素の組成比を上記範囲とすることにより、高い接着性と、層間剥離の発生を抑制する等の本発明の効果を容易に達成しうる。
本発明において、「表層」とは、光学フィルムの最表面から5nmの深さの部分をいう。本発明において、元素の組成比とは、原子の数の比である。例えば、「炭素元素に対する酸素元素の組成比が1/10」とは、炭素原子10個に対する酸素原子の割合が1個であることをいう。
【0032】
本発明の光学フィルムの、少なくとも一方の面の表層における、炭素元素に対する窒素元素の組成比(以下、「窒素元素の組成比」ともいう)は、好ましくは1/20以下であり、より好ましくは1/30以下であり、特に好ましくは1/40以下であり、さらに好ましくは理想的には0である。本発明の光学フィルムの少なくとも一方の面の表層における、窒素元素の組成比を上記範囲とすることにより、高い接着性と、層間剥離の発生を抑制する等の本発明の効果を容易に達成しうる。
【0033】
本発明において、好ましくは、光学フィルムの少なくとも一方の面の表層における、酸素元素の組成比が1/10以上であり、かつ、窒素元素の組成比が1/20以下である。
本発明において、光学フィルムの少なくとも一方の面の表層における、酸素元素の組成比及び窒素元素の組成比を上記範囲とすることにより、当該面の算術平均粗さを小さくして、高い接着性と層間剥離の発生を抑制する等の本発明の効果を、より容易に達成しうる。
【0034】
光学フィルムの両方の面の算術平均粗さが、いずれも2.5nm以下である場合、いずれか一方の面の表層における、酸素元素の組成比及び窒素元素の組成比が上記範囲であってもよいし、両方の面の表層における、酸素元素の組成比及び窒素元素の組成比が上記範囲であってもよい。また、光学フィルムの二つの面の表層における酸素元素の組成比及び窒素元素の組成比は同一であっても相違していてもよい。好ましくは、光学フィルムの一方の面、又は両方の面のそれぞれが、上に述べた算術平均粗さの要件を満たし且つ上に述べた酸素元素及び窒素元素の組成比の要件を満たす。かかる複数の要件を満たす面を有することにより、好ましい本発明の効果を得ることができる。
【0035】
本発明の光学フィルムの面の表層における、酸素元素の組成比及び窒素元素の組成比は、X線光電子分光法(X-ray Photoelectron Spectroscopy;XPS)によって測定しうる。XPS法では、一般に、測定試料表面の深さ数ナノメートル(例えば5nm)における元素の存在比率が測定されることから、光学フィルムの面の表層における、元素の組成比を測定することができる。
【0036】
本発明の光学フィルムの、少なくとも一方の面において、全表面自由エネルギーは好ましくは60mN/m以上であり、より好ましくは65mN/m以上であり、特に好ましくは70mN/m以上である。全表面自由エネルギーは高いほうが理想的であるため、上限は特に限定されないが、例えば145mN/m以下としうる。
本発明の光学フィルムの、少なくとも一方の面において、分散成分の表面自由エネルギーは好ましくは40mN/m以下であり、より好ましくは35mN/m以下である。分散成分の表面自由エネルギーは低い値ほど理想的であるため、下限は特に限定されないが、例えば15mN/m以上としうる。
本発明の光学フィルムの、少なくとも一方の面において、分極成分の表面自由エネルギーは好ましくは20mN/m以上であり、より好ましくは25mN/m以上であり、特に好ましくは30mN/m以上である。分極成分の表面自由エネルギーは高いほうが理想的であるため、上限は特に限定されないが、例えば90mN/m以下としうる。
本発明の光学フィルムの、少なくとも一方の面において、水素結合成分の表面自由エネルギーは好ましくは5mN/m以上であり、より好ましくは8mN/m以上であり、特に好ましくは10mN/m以上である。水素結合成分の表面自由エネルギーは高いほうが理想的であるため、上限は特に限定されないが、例えば40mN/m以下としうる。
【0037】
本発明においては、光学フィルムの少なくとも一方の面において、全表面自由エネルギーが70mN/m以上、分散成分の表面自由エネルギーが40mN/m以下、分極成分の表面自由エネルギーが25mN/m以上、かつ、水素結合成分の表面自由エネルギーが10mN/m以上であるのが好ましい。本発明の光学フィルムの少なくとも一方の面において、全表面自由エネルギー、分散成分の表面自由エネルギー、分極成分の表面自由エネルギー及び水素結合成分の表面自由エネルギーを上記範囲とすることにより、該面の算術平均粗さを小さくすることができ、これにより高い接着性と、層間剥離の発生を抑制する等の本発明の効果を、容易に達成しうる。
【0038】
光学フィルムの両方の面の算術平均粗さが2.5nm以下である場合、いずれか一方の面の、全表面自由エネルギー、分散成分の表面自由エネルギー、分極成分の表面自由エネルギー及び水素結合成分の表面自由エネルギーが上記範囲であってもよいし、両方の面において、各表面自由エネルギーが上記範囲であってもよい。また、光学フィルムの二つの面の各表面自由エネルギーは同一であっても相違していてもよい。好ましくは、光学フィルムの一方の面、又は両方の面のそれぞれが、上に述べた算術平均粗さの要件を満たし且つ上に述べた表面自由エネルギーの要件を満たす。より好ましくは、光学フィルムの一方の面、又は両方の面のそれぞれが、上に述べた算術平均粗さの要件を満たし且つ上に述べた酸素元素及び窒素元素の組成比の要件を満たし且つ上に述べた表面自由エネルギーの要件を満たす。かかる複数の要件を満たす面を有することにより、好ましい本発明の効果を得ることができる。
【0039】
光学フィルムの面の、分散成分の表面自由エネルギーrLd、分極成分の表面自由エネルギーrLp及び水素結合成分の表面自由エネルギーrLhは、表面自由エネルギーの分散成分、分極成分、及び水素結合成分が既知である試薬を使用して接触角を測定し、Forkesの拡張理論式(下記(1)〜(3)式)により求めることができる。
【0040】
L=rLd+rLp+rLh(1)
s=rsd+rsp+rsh(2)
L(1+cosθ)=2(rsd・rLd1/2+2(rsp・rLp1/2+2(rsh・rLh))1/2(3)
【0041】
上記式(1)〜(3)中、rLは光学フィルムの全表面自由エネルギー、rLdは光学フィルムの分散成分の表面自由エネルギー、rLpは光学フィルムの分極成分の表面自由エネルギー、rLhは光学フィルムの水素結合成分の表面自由エネルギーを示し、rSは試薬の全表面自由エネルギー、rsdは試薬の分散成分の表面自由エネルギー、rspは試薬の分極成分の表面自由エネルギー、rshは試薬の水素結合成分の表面自由エネルギー、θは試薬の接触角を示す(以下において同じ)。
【0042】
表面自由エネルギーの各成分が既知である試薬としては、例えば、純水、ジヨードメタン、エチレングリコール等が挙げられる。これらの試薬の全表面自由エネルギー、分散成分の表面自由エネルギー、分極成分の表面自由エネルギー、及び水素結合成分の表面自由エネルギーは表1に記載の通りである(単位はmN/m)。
【0043】
【表1】
【0044】
本発明において、光学フィルムは、ヘイズが小さいことが好ましい。具体的には、好ましくは3.0%未満、より好ましくは2%未満、特に好ましくは1%未満であり、理想的には0%である。このようにヘイズが小さいフィルムは、光学フィルムとして好適に用いることができる。
【0045】
前記ヘイズは、光学フィルムの中央部を中心に、該フィルムを50mm×50mmの正方形に切り出し、サンプルを得て、このサンプルについて、ヘイズメーターを用いて測定しうる。
【0046】
本発明において、光学フィルムは、通常、耐熱性に優れる。具体的には、光学フィルムの耐熱温度は、通常150℃以上である。このように高い耐熱温度を有する光学フィルムは、例えば車両用の樹脂フィルムなどの耐熱性が要求される用途において、好適に用いうる。
【0047】
前記耐熱温度は、下記の方法で測定しうる。光学フィルムに張力を掛けない状態で、ある評価温度の雰囲気下で10分放置する。その後、目視で光学フィルムの面状を確認する。光学フィルムの表面の形状に凹凸が確認できなかった場合、その光学フィルムの耐熱温度が、前記の評価温度以上であると判定できる。
【0048】
本発明において、光学フィルムは、高い全光線透過率を有することが好ましい。具体的には、光学フィルムの全光線透過率は、好ましくは80%以上、より好ましくは85%以上、特に好ましくは88%以上である。前記全光線透過率は、紫外・可視分光計を用いて、波長400nm〜700nmの範囲で測定しうる。
【0049】
また、光学フィルムは、耐屈曲性に優れることが好ましい。光学フィルムの耐屈曲性は、具体的には、耐屈曲度で表しうる。前記耐折度は、好ましくは10000回以上、より好ましくは50000回以上、特に好ましくは100000回以上である。耐折度は高いほど好ましいため、耐折度の上限に制限は無いが、例えば1,000,000回以下としうる。
【0050】
光学フィルムの耐屈曲性は、フレキシブルディスプレイデバイス耐久試験規格「IEC−62715−6−1」で提示された方法を元にした試験により、下記の方法で測定しうる。
試料としての光学フィルムから、幅15mm±0.1mm、長さ約110mmの試験片を切り出す。この際、フィルムがより強く延伸された方向が試験片の約110mmの辺と平行になるように試験片を作製する。そして試験はユアサシステム機器株式会社製、卓上型耐久試験機(DLDMLH−FS)を用いた、面状体無負荷U字伸縮試験の方法により行った。屈曲の条件は、曲げ半径1mm、伸縮速度80回/分、最大伸縮回数を20万回とした。この折り曲げを継続し、試験片が破断するまでの往復折り曲げ回数を測定する。
10枚の試験片を作製して、前記の方法により、試験片が破断するまでの往復折り曲げ回数を10回測定する。こうして測定された10回の測定値の平均を、当該光学フィルムの耐折度(MIT耐折回数)とする。
【0051】
光学フィルムは、通常、低吸水性に優れる。光学フィルムの低吸水性は、具体的には、吸水率で表しうる。前記吸水率は、通常0.1%以下、好ましくは0.08%以下、より好ましくは0.05%以下である。
【0052】
光学フィルムの吸水率は、下記の方法で測定しうる。
試料としてのフィルムから、試験片を切り出し、試験片の重量を測定する。その後、この試験片を、23℃の水中に24時間浸漬して、浸漬後の試験片の重量を測定する。そして、浸漬前の試験片の重量に対する、浸漬によって増加した試験片の重量の割合を、吸水率(%)として算出しうる。
【0053】
また、光学フィルムの残留溶媒量は、1.0重量%以下、より好ましくは0.5重量%以下、特に好ましくは0.1重量%以下である。残留溶媒量をこの所望の値とすることで光学フィルムのカール量を抑制することができる。残留溶媒量は通常、ガスクロマトグラフィーで求めうる。
【0054】
光学フィルムの厚みは、好ましくは1μm以上、より好ましくは5μm以上、特に好ましくは10μm以上であり、好ましくは100μm以下、より好ましくは75μm以下、特に好ましくは50μm以下である。光学フィルムの厚みを前記下限値以上にすることにより、光学フィルムの機械的強度を高めることができる。光学フィルムの厚みを前記上限値以下にすることにより、光学フィルムの厚みを薄くできる。
【0055】
〔2.光学フィルムの製造方法〕
本発明の光学フィルムは、下記工程(3)及び(4)を含む製造方法により製造しうる。本発明の光学フィルムの製造方法は、工程(3)及び(4)に加えて、下記工程(1)及び(2)のいずれか一方または双方を含んでもよい。
工程(1):脂環式構造含有重合体を含む結晶性樹脂を成形し、結晶化度3%未満の結晶性樹脂フィルムを得る工程。
工程(2):脂環式構造含有重合体を含む結晶性樹脂フィルムを延伸する工程。
工程(3):脂環式構造含有重合体を含む結晶性樹脂フィルムを結晶化させて結晶化樹脂フィルムを得る工程。
工程(4):結晶化樹脂フィルムのプラズマ処理を行うプラズマ処理工程。
【0056】
〔2.1.工程(1)〕
工程(1)は、脂環式構造含有重合体を含む結晶性樹脂を、任意の成形方法により成形することにより行いうる。成形方法の例としては、射出成形法、溶融押出成形法、プレス成形法、インフレーション成形法、ブロー成形法、カレンダー成形法、注型成形法、及び圧縮成形法が挙げられる。これらの中でも、厚みの制御が容易であることから、溶融押出成形法が好ましい。
【0057】
溶融押出成形法によって結晶性樹脂フィルムを製造する場合、押出成形の条件は、好ましくは下記の通りである。シリンダー温度(溶融樹脂温度)は、好ましくはTm以上、より好ましくは(Tm+20)℃以上であり、好ましくは(Tm+100)℃以下、より好ましくは(Tm+50)℃以下である。また、キャストロール温度は、好ましくは(Tg−30)℃以上であり、好ましくはTg以下、より好ましくは(Tg−15)℃以下である。このような条件で結晶性樹脂フィルムを製造することにより、好ましい厚みの結晶性樹脂フィルムを容易に製造できる。ここで、「Tm」は脂環式構造含有重合体の融点を表し、「Tg」は脂環式構造含有重合体のガラス転移温度を表す。工程(1)で得られた結晶性樹脂フィルムの結晶化度は3%未満としうる。下限は特に限定されないが0%以上としうる。
【0058】
〔2.2.工程(2)〕
工程(2)では、結晶性樹脂フィルムの延伸を行う。
結晶性樹脂フィルムの延伸方法に格別な制限は無く、任意の延伸方法を用いうる。延伸方法の例としては、結晶性樹脂フィルムを長手方向に一軸延伸する方法(縦一軸延伸法)、結晶性樹脂フィルムを幅方向に一軸延伸する方法(横一軸延伸法)等の、一軸延伸法;結晶性樹脂フィルムを長手方向に延伸すると同時に幅方向に延伸する同時二軸延伸法、結晶性樹脂フィルムを長手方向及び幅方向の一方に延伸した後で他方に延伸する逐次二軸延伸法などの二軸延伸法;並びに結晶性樹脂フィルムを幅方向に対し0°超90°未満といった、幅方向に対し平行でも垂直でもない斜め方向に延伸する方法(斜め延伸法)が挙げられる。
【0059】
前記の縦一軸延伸法としては、例えば、ロール間の周速の差を利用した延伸方法などが挙げられる。
また、前記の横一軸延伸法としては、例えば、テンター延伸機を用いた延伸方法などが挙げられる。
さらに、前記の同時二軸延伸法としては、例えば、ガイドレールに沿って移動可能に設けられ且つ結晶性樹脂フィルムを固定しうる複数のクリップを備えたテンター延伸機を用いて、クリップの間隔を開いて結晶性樹脂フィルムを長手方向に延伸すると同時に、ガイドレールの広がり角度により結晶性樹脂フィルムを幅方向に延伸する延伸方法などが挙げられる。
また、前記の逐次二軸延伸法としては、例えば、ロール間の周速の差を利用して結晶性樹脂フィルムを長手方向に延伸した後で、その結晶性樹脂フィルムの両端部をクリップで把持してテンター延伸機により幅方向に延伸する延伸方法などが挙げられる。
さらに、前記の斜め延伸法としては、例えば、結晶性樹脂フィルムに対して長手方向又は幅方向に左右異なる速度の送り力、引張り力又は引取り力を付加しうるテンター延伸機を用いて結晶性樹脂フィルムを斜め方向に連続的に延伸する延伸方法などが挙げられる。
【0060】
結晶性樹脂フィルムを延伸する場合の延伸温度は、脂環式構造含有重合体のガラス転移温度Tgに対し、好ましくは(Tg−30)℃以上、より好ましくは(Tg−10)℃以上であり、好ましくは(Tg+60)℃以下、より好ましくは(Tg+50)℃以下である。このような温度範囲で延伸を行うことにより、結晶性樹脂フィルムに含まれる重合体分子を適切に配向させることができる。
【0061】
結晶性樹脂フィルムを延伸する場合の延伸倍率は、所望の光学特性、厚み、強度などにより適宜選択しうるが、通常は1倍超、好ましくは1.01倍以上であり、通常は10倍以下、好ましくは5倍以下である。ここで、例えば二軸延伸法のように異なる複数の方向に延伸を行う場合、延伸倍率は各延伸方向における延伸倍率の積で表される総延伸倍率のことである。延伸倍率を前記範囲の上限値以下にすることにより、フィルムが破断する可能性を小さくできるので、光学フィルムの製造を容易に行うことができる。
【0062】
前記のような延伸処理を結晶性樹脂フィルムに施すことにより、所望の特性を有する光学フィルムを得ることができる。また、延伸処理を行うことにより、光学フィルムのヘイズを低減することができる。特定の理論に拘束されるものではないが、かかるヘイズの低減は、結晶性の重合体の分子を配向させることにより、結晶化の工程における結晶化の速度が速くなり、結晶核が小さい結晶化樹脂が得られることによるものと考えられる。
【0063】
〔2.3.工程(3)〕
工程(3)は、脂環式構造含有重合体を含む結晶性樹脂フィルムを結晶化させて結晶化樹脂フィルムを得る工程である。工程(3)では、結晶性樹脂フィルムを結晶化させて、結晶化度が30%以上の結晶化樹脂を主成分とする結晶化樹脂フィルムを得る。結晶化は、結晶性樹脂フィルムの少なくとも二の端辺を保持して緊張させた状態で所定の温度範囲にすることにより行いうる。
【0064】
結晶性樹脂フィルムを緊張させた状態とは、結晶性樹脂フィルムに張力がかかった状態をいう。ただし、この結晶性樹脂フィルムを緊張させた状態には、結晶性樹脂フィルムが実質的に延伸される状態を含まない。また、実質的に延伸されるとは、結晶性樹脂フィルムのいずれかの方向への延伸倍率が通常1.1倍以上になることをいう。
【0065】
結晶性樹脂フィルムを保持する場合、適切な保持具によって結晶性樹脂フィルムを保持する。保持具は、結晶性樹脂フィルムの端辺の全長を連続的に保持しうるものでもよく、間隔を空けて間欠的に保持しうるものでもよい。例えば、所定の間隔で配列された保持具によって結晶性樹脂フィルムの端辺を間欠的に保持してもよい。
【0066】
結晶化工程において、結晶性樹脂フィルムは、当該結晶性樹脂フィルムの少なくとも二の端辺を保持されて緊張した状態にされる。これにより、保持された端辺の間の領域において結晶性樹脂フィルムの熱収縮による変形が妨げられる。結晶性樹脂フィルムの広い面積において変形を妨げるためには、対向する二の端辺を含む端辺を保持して、その保持された端辺の間の領域を緊張した状態にすることが好ましい。例えば、矩形の枚葉の結晶性樹脂フィルムでは、対向する二の端辺(例えば、長辺側の端辺同士、又は、短辺側の端辺同士)を保持して前記二の端辺の間の領域を緊張した状態にすることで、その枚葉の結晶性樹脂フィルムの全面において変形を妨げることができる。また、長尺の結晶性樹脂フィルムでは、幅方向の端部にある二の端辺(即ち、長辺側の端辺)を保持して前記二の端辺の間の領域を緊張した状態にすることで、その長尺の結晶性樹脂フィルムの全面において変形を妨げることができる。このように変形を妨げられた結晶性樹脂フィルムは、熱収縮によってフィルム内に応力が生じても、シワ等の変形の発生が抑制される。結晶性樹脂フィルムとして延伸処理を施された延伸フィルムを用いる場合は、延伸方向(二軸延伸の場合は延伸倍率が大きい方向)と直交する少なくとも二の端辺を保持することで変形の抑制がより確実なものとなる。
【0067】
結晶化工程における変形をより確実に抑制するためには、より多くの端辺を保持することが好ましい。よって、例えば、枚葉の結晶性樹脂フィルムでは、その全ての端辺を保持することが好ましい。具体例を挙げると、矩形の枚葉の結晶性樹脂フィルムでは、四つの端辺を保持することが好ましい。
【0068】
結晶性樹脂フィルムの端辺を保持しうる保持具としては、結晶性樹脂フィルムの端辺以外の部分では結晶性樹脂フィルムと接触しないものが好ましい。このような保持具を用いることにより、より平滑性に優れる光学フィルムを得ることができる。
【0069】
また、保持具としては、保持具同士の相対的な位置を結晶化工程においては固定しうるものが好ましい。このような保持具は、結晶化工程において保持具同士の位置が相対的に移動しないので、結晶化工程における結晶性樹脂フィルムの実質的な延伸を抑制しやすい。
【0070】
好適な保持具としては、例えば、矩形の結晶性樹脂フィルム用の保持具として、型枠に所定間隔で設けられ結晶性樹脂フィルムの端辺を把持しうるクリップ等の把持子が挙げられる。また、例えば、長尺の結晶性樹脂フィルムの幅方向の端部にある二の端辺を保持するための保持具としては、テンター延伸機に設けられ結晶性樹脂フィルムの端辺を把持しうる把持子が挙げられる。
【0071】
長尺の結晶性樹脂フィルムを用いる場合、その結晶性樹脂フィルムの長手方向の端部にある端辺(即ち、短辺側の端辺)を保持してもよいが、前記の端辺を保持する代わりに結晶性樹脂フィルムの結晶化処理を施される領域の長手方向の両側を保持してもよい。例えば、結晶性樹脂フィルムの結晶化処理を施される領域の長手方向の両側に、結晶性樹脂フィルムを熱収縮しないように保持して緊張させた状態にしうる保持装置を設けてもよい。このような保持装置としては、例えば、2つのロールの組み合わせ、押出機と引き取りロールとの組み合わせ、などが挙げられる。これらの組み合わせによって結晶性樹脂フィルムに搬送張力等の張力を加えることで、結晶化処理を施される領域において当該結晶性樹脂フィルムの熱収縮を抑制できる。そのため、前記の組み合わせを保持装置として用いれば、結晶性樹脂フィルムを長手方向に搬送しながら当該結晶性樹脂フィルムを保持できるので、光学フィルムの効率的な製造ができる。
【0072】
結晶化工程では、前記のように結晶性樹脂フィルムの少なくとも二の端辺を保持して緊張させた状態で、当該結晶性樹脂フィルムを、脂環式構造含有重合体のガラス転移温度Tg以上、脂環式構造含有重合体の融点Tm以下の温度にする。前記のような温度にされた結晶性樹脂フィルムにおいては、脂環式構造含有重合体の結晶化が進行する。そのため、この結晶化工程により、結晶化した脂環式構造含有重合体を含む結晶化樹脂フィルムが得られる。この際、結晶化樹脂フィルムの変形を妨げながら緊張した状態にしているので、結晶化樹脂フィルムの平滑性を損なうことなく、結晶化を進めることができる。
【0073】
結晶化工程における温度範囲は、前記のように、脂環式構造含有重合体のガラス転移温度Tg以上、脂環式構造含有重合体の融点Tm以下の温度範囲において任意に設定しうる。中でも、結晶化の速度が大きくなるような温度に設定することが好ましい。結晶化工程における結晶性樹脂フィルムの温度は、好ましくは(Tg+20)℃以上、より好ましくは(Tg+30)℃以上であり、好ましくは(Tm−20)℃以下、より好ましくは(Tm−40)℃以下である。結晶化工程における温度を前記範囲の上限以下にすることにより、光学フィルムの白濁を抑制できるので、光学的に透明なフィルムが求められる場合に適した光学フィルムが得られる。
【0074】
結晶性樹脂フィルムを前記のような温度にする場合、通常、結晶性樹脂フィルムの加熱を行う。この際に用いる加熱装置としては、加熱装置と結晶性樹脂フィルムとの接触が不要であることから、結晶性樹脂フィルムの雰囲気温度を上昇させうる加熱装置が好ましい。好適な加熱装置の具体例を挙げると、オーブン及び加熱炉が挙げられる。
【0075】
結晶化工程において、結晶性樹脂フィルムを前記の温度範囲に維持する処理時間は、好ましくは1秒以上、より好ましくは5秒以上であり、好ましくは30分以下、より好ましくは10分以下である。結晶化工程で、脂環式構造含有重合体の結晶化を十分に進行させることにより、光学フィルムの可撓性を高めることができる。また、処理時間を前記範囲の上限以下にすることにより、光学フィルムの白濁を抑制できるので、光学的に透明なフィルムが求められる場合に適した光学フィルムが得られる。
【0076】
〔2.4.工程(4)〕
工程(4)では、結晶化樹脂フィルムを、プラズマ処理する(プラズマ処理工程)。
従来の結晶化樹脂を用いた光学フィルムにおいて、層間剥離の発生傾向が多かったのは、結晶化樹脂フィルムの表面に脆弱層が形成されていることが一因であると推測された。
工程(4)において結晶化樹脂フィルムをプラズマ処理することにより、脆弱層が削られるとともに、当該面の算術平均粗さを小さくすることができ、その結果、少なくとも一方の面の算出平均粗さが2.5nm以下の結晶化樹脂フィルムを容易に得ることができる。
【0077】
プラズマ処理工程は大気圧下で行っても真空下で行ってもよいが、生産性の観点から、大気圧下で行うのが好ましい。大気圧下でのプラズマ処理は、例えば、大気圧プラズマ表面処理装置(製品名「RD640」、積水化学工業社製)を用いて行うことができる。
【0078】
プラズマ処理工程は、水素ガス、ヘリウムガス、窒素ガス、酸素ガス、二酸化炭素ガス、アルゴンガスから選択される1種以上のガス雰囲気下で行うことが好ましく、窒素ガス、ならびに、酸素ガス及び二酸化炭素ガスから選ばれる一種以上のガスを含む、ガス雰囲気下で行うことが、より好ましい。
【0079】
工程(4)においては、窒素ガス、ならびに酸素ガス及び二酸化炭素ガスから選ばれる一種以上のガスを、窒素に対する酸素の重量比が5.50×10-3以上1.30×10-1以下となるように含むガス雰囲気下で、結晶化樹脂フィルムをプラズマ処理することが好ましい。
【0080】
窒素ガス及び酸素ガスを用いる場合、窒素ガス及び酸素ガスを、窒素に対する酸素の重量比が5.50×10-3以上3.50×10-2以下となるように含むガス雰囲気下で、プラズマ処理を行うのが好ましく、8.0×10-3以上、1.5×10-2以下となるように含むガス雰囲気下でプラズマ処理を行うのが、より好ましい。プラズマ処理工程を窒素ガス及び酸素ガスを上記の重量比となるように含むガス雰囲気下で行うことで、結晶化樹脂フィルムの面の算術平均粗さを2.5nm以下とすることが、より容易となる。
【0081】
窒素ガス及び二酸化炭素ガスを用いる場合、窒素ガス及び二酸化炭素ガスを、窒素に対する酸素の重量比が2.50×10-2以上1.30×10-1以下となるように含むガス雰囲気下で、プラズマ処理を行うのが好ましく、3.5×10-2以上1.0×10-1以下となるように含むガス雰囲気下でプラズマ処理を行うのが、より好ましい。プラズマ処理工程を窒素ガス及び二酸化炭素ガスを上記の重量比となるように含むガス雰囲気下で行うことで、結晶化樹脂フィルムの面の算術平均粗さを2.5nm以下とすることが、より容易となる。
【0082】
窒素ガスならびに、酸素ガスまたは二酸化炭素ガスを用いる場合、窒素ガスの流量は好ましくは5〜15NL/分、二酸化炭素ガスまたは酸素ガスの流量は好ましくは0.025〜0.15NL/分である。プラズマ照射の出力は500〜3000Wであることが好ましい。プラズマ照射の周波数は出力に対応した共振周波数であることが好ましく、具体的には25〜100KHzの範囲が好ましい。プラズマ照射の照射速度は50〜500cm/分で行うことが好ましい。プラズマ発生源と処理対象の表面との距離は0.5〜3mmが好ましい。
【0083】
また、プラズマ照射を常圧下ではなく減圧下で行うときは、0.001〜10kPa(絶対圧)の低圧ガス(アルゴンガス、酸素ガス、窒素ガス、またはこれらの混合ガスなど)を用いてプラズマ処理を行うことが好ましい。低圧ガスとしては、窒素と酸素との混合ガスを用いることが特に好ましい。窒素と酸素との混合比は体積比で10:1〜1:10であることが好ましく、混合ガスの流量は0.1〜10NL/分であることが好ましい。プラズマ照射の出力は好ましくは50〜3000Wである。
【0084】
〔2.5.その他の工程〕
本発明の製造方法では、上に述べた工程の他に、任意の工程を行いうる。
任意の工程の一例としては、工程(1)の後に、結晶性樹脂フィルムの表面への改質処理を行うことが挙げられる。結晶性樹脂フィルムの表面への改質処理の例としては、コロナ放電処理、プラズマ処理、ケン化処理、紫外線照射処理などが挙げられる。中でも、処理効率の点などからコロナ放電処理及びプラズマ処理が好ましく、プラズマ処理がより好ましい。
【0085】
任意の工程の別の一例としては、工程(3)の後に、結晶化樹脂フィルムを熱収縮させ残留応力を除去する緩和工程が挙げられる。
【0086】
〔3.任意の層〕
本発明の光学フィルムは、任意の層を備えうる。任意の層としては、例えば、易接着層、導電層、反射防止層、ハードコート層、帯電防止層、防眩層、防汚層、セパレーターフィルム等層を挙げることができる。
【0087】
〔4.多層フィルム〕
本発明の多層フィルムは、光学フィルムと、被接着層と、前記光学フィルムと前記被接着層との間に設けられた接着層と、を有する。多層フィルムは、光学フィルムと、被接着層とが、接着剤を介して積層されてなる積層体である。
【0088】
接着層を構成する接着剤としては、ウレタン樹脂の層との接着を良好に達成しうる各種の接着剤を用いうる。具体的には、紫外線硬化型アクリル組成物、紫外線硬化型エポキシ組成物、或いはアクリルモノマーとエポキシモノマーが混合された紫外線硬化型重合組成物が挙げられる。
【0089】
被接着層は、表示装置の構成要素として用いうる部材であって、接着層による接着を容易に達成しうる任意のものとしうる。具体的には、ガラス板、金属板等の無機材料の層、及び樹脂の層としうる。樹脂の層を構成する材料の例としては、非結晶性の脂環式構造含有重合体樹脂、偏光板の偏光子を構成するポリビニルアルコールを主成分とする樹脂や偏光板保護フィルムを構成するセルロース系樹脂、結晶性の脂環式構造含有重合体樹脂、結晶性のポリエステル系樹脂、等が挙げられる。
【0090】
本発明の多層フィルムは、本発明の光学フィルムの面のうち、算術平均粗さが2.5nm以下の面と、被接着層とを、接着剤を介して貼合することにより製造しうる。具体的には、本発明の光学フィルムの面のうち、算術平均粗さが2.5nm以下の面に接着剤を塗布し、被接着層の一方の面と重ね合わせ、さらに必要に応じて接着剤を硬化させることにより、多層フィルムの製造を達成しうる。光学フィルムの面の両面が、算術平均粗さが2.5nm以下の面である場合は、光学フィルムのいずれか一方の面か又は両面に、接着剤を塗布して、被接着層を重ねて貼り合わせることにより、多層フィルムを製造することができる。
【0091】
本発明の多層フィルムは、結晶化樹脂からなる光学フィルムに基づく高い耐熱性、可撓性等の特性を有する。そして、本発明によれば、光学フィルムの少なくとも一方の面の算術平均粗さを2.5nm以下とすることにより、接着剤を介した被接着層との高い接着性及び高い剥離強度を有し、その結果、層間の剥離が発生する傾向が少なく、耐久性が高い多層フィルムを提供することができる。
【0092】
〔5.用途〕
本発明の光学フィルム及び多層フィルムは、任意の用途に用いうる。層間剥離の発生が少ないという利点を生かし、タッチパネルの構成要素であるタッチセンサーとして特に有用に用いうる。
【実施例】
【0093】
以下、実施例を示して本発明について具体的に説明する。ただし、本発明は以下に示す実施例に限定されるものではなく、本発明の請求の範囲及びその均等の範囲を逸脱しない範囲において任意に変更して実施しうる。
以下の説明において、量を表す「%」及び「部」は、別に断らない限り重量基準である。また、以下に説明する操作は、別に断らない限り、常温及び常圧の条件において行った。
【0094】
<評価方法>
(厚みの測定方法)
光学フィルム及び多層フィルムを構成する各層の厚みは、次のようにして測定した。サンプルとなるフィルムの各層の屈折率を、エリプソメトリー(ウーラム社製「M−2000」)を用いて測定した。その後、測定した屈折率を用いて、フィルムの厚みを、光干渉式膜厚計(大塚電子社製「MCPD−9800」)で測定した。
【0095】
(重量平均分子量及び数平均分子量)
重合体の重量平均分子量及び数平均分子量は、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)システム(東ソー社製「HLC−8320」)を用いて、ポリスチレン換算値として測定した。測定の際、カラムとしてはHタイプカラム(東ソー社製)を用い、溶媒としてはテトラヒドロフランを用いた。また、測定時の温度は、40℃であった。
【0096】
(結晶性樹脂の、ガラス転移温度Tg、融点Tm及び結晶化温度Tpc)
窒素雰囲気下で300℃に加熱した試料を液体窒素で急冷し、示差操作熱量計(DSC)を用いて、10℃/分で昇温して試料のガラス転移温度Tg、融点Tm及び結晶化温度Tpcをそれぞれ求めた。
【0097】
(重合体の水素化率の測定方法)
重合体の水素化率は、オルトジクロロベンゼン−d4を溶媒として、145℃で、1H−NMR測定により測定した。
【0098】
(重合体のラセモ・ダイアッドの割合)
オルトジクロロベンゼン−d4を溶媒として、200℃で、inverse−gated decoupling法を適用して、重合体の13C−NMR測定を行った。この13C−NMR測定の結果において、オルトジクロロベンゼン−d4の127.5ppmのピークを基準シフトとして、メソ・ダイアッド由来の43.35ppmのシグナルと、ラセモ・ダイアッド由来の43.43ppmのシグナルとを同定した。これらのシグナルの強度比に基づいて、重合体のラセモ・ダイアッドの割合を求めた。
【0099】
(結晶化度)
結晶化度は、JIS K0131に準じて、X線回折により確認した。具体的には、広角X線回折装置(RINT 2000、株式会社リガク製)を用いて、結晶化部分からの回析X線強度を求め、全体の回析X線強度との比から、下記式(I)によって結晶化度を求めた。
Xc=K・Ic/It (I)
上記式(I)において、Xcは被検試料の結晶化度、Icは結晶化部分からの回析X線強度、Itは全体の回析X線強度、Kは補正項を、それぞれ表す。
【0100】
(耐熱温度)
光学フィルムに張力をかけない状態で、一定の評価温度の雰囲気下で10分放置した後、目視で光学フィルムの表面の状態を観察した。評価温度は150℃から光学フィルムの表面に凸凹が確認されるまでの温度とし、10℃刻みとした。光学フィルムの表面に凹凸が確認できなかった評価温度のうち、最も高い温度を、その光学フィルムの耐熱温度とした。
【0101】
(耐屈曲性)
光学フィルムの耐屈曲性を、フレキシブルディスプレイデバイス耐久試験規格「IEC 62715−6−1」で提示された方法を元にした試験により、下記の方法で測定した。
試料としての光学フィルムから、幅15mm±0.1mm、長さ約110mmの試験片を切り出した。この際、フィルムがより強く延伸された方向が試験片の約110mmの辺と平行になるように試験片を作製した。ユアサシステム機器株式会社製、卓上型耐久試験機(DLDMLH−FS)を用いて面状体無負荷U字伸縮試験法により試験を行った。折り曲げの条件は、曲げ半径1mm、伸縮速度80回/分、最大伸縮回数を20万回とした。この折り曲げを、試験片が破断するまで継続し、試験片が破断したときの往復折り曲げ回数を測定した。
10枚の試験片を作製して、前記の方法により、試験片が破断するまでの往復折り曲げ回数を10回測定し、10回の測定値の平均を、当該光学フィルムの耐屈曲性(MIT耐折回数)とした。
【0102】
(算術平均粗さの測定方法)
光学フィルムの2つの面の算術平均粗さRaは、走査型プローブ顕微鏡(Dimension Icon ブルカーエイエックス社)を用い、JIS B 0601:1994に基づき測定を行った。
【0103】
(表層における元素組成比の測定)
光学フィルムの面の表層における、酸素元素の組成比及び窒素元素の組成比は、XPS測定分析装置(「PHI 5000 VersaProbe III」、アルバック・ファイ社製)を用いて測定した。
【0104】
(表面自由エネルギーの測定)
光学フィルムを、10cm角程度の大きさに切り出して、基材片を得た。この基材片の面において、純水(H2O)の接触角、ジヨードメタン(CH22)の接触角、及びエチレングリコールの接触角を、自動接触角計によって実測した。こうして測定された接触角のデータから、接触角計付属のソフトウェアによって、基材の面の表面自由エネルギー(全表面自由エネルギー、分散成分の表面自由エネルギー、分極成分の表面自由エネルギー、水素結合成分の表面自由エネルギー)を算出した。測定時の条件は、下記の通りである。
【0105】
・接触角測定条件
システム:DropMaster700(協和界面科学製)
AutoDispenser AD−31(協和界面科学製)
制御解析ソフトウェア:FAMAS ver3.13
接触角測定法:懸滴法
視野:STD
解析法:Young−Laplace法
テフロン(登録商標)コート針:18G(もしくは22G)
液量:3μL〜4μL
測定待ち時間:3000ms
測定回数:n=10測定 平均値
【0106】
・表面自由エネルギーの計算方法
解析ソフトウェア:FAMAS ver3.13
解析理論名:Owens−Wendt
【0107】
(剥離強度の測定方法)
実施例及び比較例で得られた多層フィルムを、25mmの幅に裁断して、その光学フィルム側の面を、スライドガラスの表面に粘着剤にて貼合した。貼合に際し、粘着剤としては、両面粘着テープ(日東電工社製、品番「CS9621」)を用いた。貼合後、貼合物を12時間静値した。
その後、フォースゲージの先端の治具で被接着層の端部を挟み、スライドガラスの表面の法線方向に牽引することにより、90度剥離試験を実施した。牽引の際の剥離速度は20mm/分とした。被接着層が剥れる際に測定された力は、光学フィルムと被接着層とを剥離させるために要する力であるので、この力の大きさを剥離強度として測定した。
【0108】
〔製造例1.ジシクロペンタジエンの開環重合体の水素化物の製造〕
金属製の耐圧反応器を、充分に乾燥した後、窒素置換した。この金属製耐圧反応器に、シクロヘキサン154.5部、ジシクロペンタジエン(エンド体含有率99%以上)の濃度70%シクロヘキサン溶液42.8部(ジシクロペンタジエンの量として30部)、及び1−ヘキセン1.9部を加え、53℃に加温した。
【0109】
テトラクロロタングステンフェニルイミド(テトラヒドロフラン)錯体0.014部を0.70部のトルエンに溶解した溶液に、濃度19%のジエチルアルミニウムエトキシド/n−ヘキサン溶液0.061部を加えて10分間攪拌して、触媒溶液を調製した。
この触媒溶液を耐圧反応器に加えて、開環重合反応を開始した。その後、53℃を保ちながら4時間反応させて、ジシクロペンタジエンの開環重合体の溶液を得た。
得られたジシクロペンタジエンの開環重合体の数平均分子量(Mn)及び重量平均分子量(Mw)は、それぞれ、8750および28,100であり、これらから求められる分子量分布(Mw/Mn)は3.21であった。
【0110】
得られたジシクロペンタジエンの開環重合体の溶液200部に、停止剤として1,2−エタンジオール0.037部を加えて、60℃に加温し、1時間攪拌して重合反応を停止させた。ここに、ハイドロタルサイト様化合物(協和化学工業社製「キョーワード(登録商標)2000」)を1部加えて、60℃に加温し、1時間攪拌した。その後、濾過助剤(昭和化学工業社製「ラヂオライト(登録商標)#1500」)を0.4部加え、PPプリーツカートリッジフィルター(ADVANTEC東洋社製「TCP−HX」)を用いて吸着剤と溶液を濾別した。
【0111】
濾過後のジシクロペンタジエンの開環重合体の溶液200部(重合体量30部)に、シクロヘキサン100部を加え、クロロヒドリドカルボニルトリス(トリフェニルホスフィン)ルテニウム0.0043部を添加して、水素圧6MPa、180℃で4時間水素化反応を行った。これにより、ジシクロペンタジエンの開環重合体の水素化物を含む反応液が得られた。この反応液は、水素化物が析出してスラリー溶液となっていた。
【0112】
前記の反応液に含まれる水素化物と溶液とを、遠心分離器を用いて分離し、60℃で24時間減圧乾燥して、結晶性を有するジシクロペンタジエンの開環重合体の水素化物28.5部を得た。この水素化物の水素化率は99%以上、ガラス転移温度Tgは94℃、融点(Tm)は262℃、結晶化温度Tpcは170℃、ラセモ・ダイアッドの割合は89%であった。
【0113】
<実施例1>
(1−1.結晶化度3%未満の結晶性樹脂フィルムの製造)
製造例1で得たジシクロペンタジエンの開環重合体の水素化物100部に、酸化防止剤(テトラキス〔メチレン−3−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕メタン;BASFジャパン社製「イルガノックス(登録商標)1010」)0.5部を混合して、光学フィルムの材料となる結晶性樹脂を得た。この結晶性樹脂を以下において「樹脂A」ともいう。
【0114】
樹脂Aを、内径3mmΦのダイ穴を4つ備えた二軸押出機(東芝機械社製「TEM−37B」)に投入した。前記の二軸押出機によって、樹脂を熱溶融押出成形によりストランド状の成形体に成形した。この成形体をストランドカッターにて細断して、結晶性樹脂のペレットを得た。
【0115】
引き続き、得られたペレットを、Tダイを備える熱溶融押出フィルム成形機に供給した。このフィルム成形機を用いて、前記の樹脂Aからなる長尺のフィルム(幅120mm)を、27m/分の速度でロールに巻き取る方法にて製造した。前記のフィルム成形機の運転条件を、以下に示す。
・バレル温度設定:280℃〜290℃
・ダイ温度:270℃
・スクリュー回転数:30rpm
・キャストロール温度:70℃
これにより、長尺の結晶性樹脂フィルムを得た。得られたフィルムの厚みは20μmであった。このフィルムにおける結晶性樹脂の結晶化度は、0.7%であった。
【0116】
(1−2.延伸工程)
(1−1)で得られた長尺の結晶性樹脂フィルムを切り出し、350mm×350mmの正方形とした。この切り出しは、切り出された結晶性樹脂フィルムの正方形の各端辺が長尺の結晶性樹脂フィルムの長手方向又は幅方向に平行になるように行った。そして、切り出された結晶性樹脂フィルムを、小型延伸機(東洋精機製作所社製「EX10―Bタイプ」)に設置した。この小型延伸機は、フィルムの四つの端辺を把持しうる複数のクリップを備え、このクリップを移動させることによってフィルムを延伸できる構造を有している。
小型延伸機のオーブン温度を130℃に設定し、結晶性樹脂フィルムを、延伸温度130℃、延伸速度4.0mm/分で、長尺の結晶性樹脂フィルムの長手方向に対応する方向へ延伸倍率1.2倍で延伸した。これにより、延伸された結晶性樹脂フィルムを得た。
【0117】
(1−3.結晶化樹脂フィルムの製造)
(1−2)で延伸した結晶性樹脂フィルムを小型延伸機に設置した状態で加熱処理した。加熱処理は、結晶性樹脂フィルムの四つの端辺を保持した状態で、小型延伸機に付属する二次加熱板を結晶性樹脂フィルムの上側の面及び下側の面に近接させ、30秒間保持することによって行った。このとき二次加熱板の温度は170℃とし、フィルムとの距離は上下各々8mmとした。これにより、結晶性樹脂フィルム中の結晶性樹脂の結晶化が進行して、結晶化樹脂フィルムが得られた。
得られた結晶化樹脂フィルムにおける結晶化樹脂の結晶化度は71%であった。
【0118】
(1−4.光学フィルムの製造)
(1−3)で得られた結晶化樹脂フィルムの一方の面を、大気圧プラズマ表面処理装置(製品名「RD640」、積水化学工業株式会社製)を用いて、窒素ガスと酸素ガスとを99.5:0.5(重量%)で含むガス雰囲気下、プラズマ処理して光学フィルムを得た。プラズマ処理の条件は、出力1000w、電圧450V、電流0.65A、周波数60kHz、照射速度300cm/分、照射時間6秒、プラズマ発生源と処理対象の表面との距離は1mmであった。得られた光学フィルムのプラズマ処理面の算術平均粗さ(Ra)、表層の元素組成比、各表面エネルギーを測定し平均値を算出した。
【0119】
(1−5.多層フィルム)
被接着層としてノルボルネン系重合体を含む樹脂フィルム(商品名「ゼオノアフィルム ZF16−100」、ガラス転移温度160℃、厚み100μm、延伸処理されていないもの、日本ゼオン株式会社製)を用意した。
当該樹脂フィルムの一方の面にコロナ処理を施した。コロナ処理には、春日電機社製コロナ処理装置を用い、処理条件は、大気中、放電量150W/m2/分とした。
樹脂フィルムのコロナ処理した面に紫外線硬化接着剤(CRB1352 東洋インキ社製)を塗工し、ラミネータを使用して、(1−4)で製造した光学フィルムのプラズマ処理を行った面と貼合した。
貼合物に、高圧水銀ランプを用いて照度350mW/cm2、積算光量1000mJ/cm2の条件で紫外線を照射した。これにより、接着剤を架橋させ、接着層とした。
これにより、光学フィルムとしての結晶化樹脂の層と、接着層と、樹脂フィルムの層(被接着層)とをこの順に備える、多層フィルムを得た。得られた多層フィルムについて、剥離強度を測定した。
【0120】
<実施例2>
(2−4.光学フィルムの製造)
実施例1の(1−4)において、プラズマ処理のガス雰囲気を、窒素ガスと酸素ガスとを99.0:1.0(重量%)で含むガス雰囲気に変更したこと以外は、実施例1の(1−1)〜(1−4)と同様にして、光学フィルムを得た。得られた光学フィルムの算術平均粗さ(Ra)、表層の元素組成比、各表面エネルギーを測定した。
【0121】
(2−5.多層フィルム)
実施例1の(1−5)において、(1−4)で製造した光学フィルムに代えて、(2−4)で製造した光学フィルムを用いたこと以外は実施例1と同様にして、多層フィルムを得た。得られた多層フィルムについて、剥離強度を測定した。
【0122】
<実施例3>
(3−4.光学フィルムの製造)
実施例1の(1−4)において、プラズマ処理のガス雰囲気を、窒素ガスと酸素ガスとを98.0:2.0(重量%)で含むガス雰囲気に変更したこと以外は、実施例1の(1−1)〜(1−4)と同様にして、光学フィルムを得た。得られた光学フィルムの算術平均粗さ(Ra)、表層の元素組成比、各表面エネルギーを測定した。
【0123】
(3−5.多層フィルム)
実施例1の(1−5)において、(1−4)で製造した光学フィルムに代えて、(3−4)で製造した光学フィルムを用いたこと以外は実施例1と同様にして、多層フィルムを得た。得られた多層フィルムについて、剥離強度を測定した。
【0124】
<実施例4>
(4−4.光学フィルムの製造)
実施例1の(1−4)において、プラズマ処理のガス雰囲気を、窒素ガスと二酸化炭素ガスとを97.0:3.0(重量%)で含むガス雰囲気に変更したこと以外は、実施例1の(1−1)〜(1−4)と同様にして、光学フィルムを得た。得られた光学フィルムの算術平均粗さ(Ra)、表層の元素組成比、各表面エネルギーを測定した。
【0125】
(4−5.多層フィルム)
実施例1の(1−5)において、(1−4)で製造した光学フィルムに代えて、(4−4)で製造した光学フィルムを用いたこと以外は実施例1と同様にして、多層フィルムを得た。得られた多層フィルムについて、剥離強度を測定した。
<実施例5>
(5−4.光学フィルムの製造)
実施例1の(1−4)において、プラズマ処理のガス雰囲気を、窒素ガスと二酸化炭素ガスとを95.0:5.0(重量%)で含むガス雰囲気に変更したこと以外は、実施例1の(1−1)〜(1−4)と同様にして、光学フィルムを得た。得られた光学フィルムの算術平均粗さ(Ra)、表層の元素組成比、各表面エネルギーを測定した。
【0126】
(5−5.多層フィルム)
実施例1の(1−5)において、(1−4)で製造した光学フィルムに代えて、(5−4)で製造した光学フィルムを用いたこと以外は実施例1と同様にして、多層フィルムを得た。得られた多層フィルムについて、剥離強度を測定した。
<実施例6>
(6−4.光学フィルムの製造)
実施例1の(1−4)において、プラズマ処理のガス雰囲気を、窒素ガスと二酸化炭素ガスとを90.0:10.0(重量%)で含むガス雰囲気に変更したこと以外は、実施例1の(1−1)〜(1−4)と同様にして、光学フィルムを得た。得られた光学フィルムの算術平均粗さ(Ra)、表層の元素組成比、各表面エネルギーを測定した。
【0127】
(6−5.多層フィルム)
実施例1の(1−5)において、(1−4)で製造した光学フィルムに代えて、(6−4)で製造した光学フィルムを用いたこと以外は実施例1と同様にして、多層フィルムを得た。得られた多層フィルムについて、剥離強度を測定した。
【0128】
<比較例1>
実施例1の(1−5)において(1−4)で製造した光学フィルムに代えて(1−3)で製造した結晶化樹脂フィルム(プラズマ処理前の結晶化樹脂フィルム)を用いたこと以外は実施例1と同様にして、多層フィルムを得た。得られた多層フィルムについて、剥離強度を測定した。
比較例1においては、多層フィルムの製造の際に実施例1の(1−3)の結晶化樹脂フィルムを用いたので、実施例1の(1−3)で製造した結晶化樹脂フィルムについて算術平均粗さ、表層の元素組成比、表面自由エネルギーを測定した。
【0129】
<比較例2>
(C2−4.光学フィルムの製造)
実施例1の(1−4)において、プラズマ処理のガス雰囲気を、窒素ガス雰囲気(窒素ガス100%)に変更したこと以外は、実施例1の(1−1)〜(1−4)と同様にして、光学フィルムを得た。得られた光学フィルムの算術平均粗さ(Ra)、表層の元素組成比、各表面エネルギーを測定した。
【0130】
(C2−5.多層フィルム)
実施例1の(1−5)において、(1−4)で製造した光学フィルムに代えて、(C2−4)で製造した光学フィルムを用いたこと以外は実施例1の(1−5)と同様にして、多層フィルムを得た。得られた多層フィルムについて、剥離強度を測定した。
【0131】
<比較例3>
(C3−4.光学フィルムの製造)
実施例1の(1−4)において、プラズマ処理のガス雰囲気を、窒素ガスと酸素ガスとを99.9:0.1(重量%)で含むガス雰囲気に変更したこと以外は、実施例1の(1−1)〜(1−4)と同様にして、光学フィルムを得た。得られた光学フィルムの算術平均粗さ(Ra)、表層の元素組成比、各表面エネルギーを測定した。
【0132】
(C3−5.多層フィルム)
実施例1の(1−5)において、(1−4)で製造した光学フィルムに代えて、(C3−4)で製造した光学フィルムを用いたこと以外は実施例1の(1−5)と同様にして、多層フィルムを得た。得られた多層フィルムについて、剥離強度を測定した。
【0133】
<比較例4>
(C4−4.光学フィルムの製造)
実施例1の(1−4)において、プラズマ処理のガス雰囲気を、窒素ガスと酸素ガスとを97.0:3.0(重量%)で含むガス雰囲気に変更したこと以外は、実施例1の(1−1)〜(1−4)と同様にして、光学フィルムを得た。得られた光学フィルムの算術平均粗さ(Ra)、表層の元素組成比、各表面エネルギーを測定した。
【0134】
(C4−5.多層フィルム)
実施例1の(1−5)において、(1−4)で製造した光学フィルムに代えて、(C4−4)で製造した光学フィルムを用いたこと以外は実施例1の(1−5)と同様にして、多層フィルムを得た。得られた多層フィルムについて、剥離強度を測定した。
【0135】
<比較例5>
(C5−4.光学フィルムの製造)
実施例1の(1−4)において、プラズマ処理のガス雰囲気を、窒素ガスと二酸化炭素ガスとを98.0:3.0(重量%)で含むガス雰囲気に変更したこと以外は、実施例1の(1−1)〜(1−4)と同様にして、光学フィルムを得た。得られた光学フィルムの算術平均粗さ(Ra)、表層の元素組成比、各表面エネルギーを測定した。
【0136】
(C5−5.多層フィルム)
実施例1の(1−5)において、(1−4)で製造した光学フィルムに代えて、(C5−4)で製造した光学フィルムを用いたこと以外は実施例1の(1−5)と同様にして、多層フィルムを得た。得られた多層フィルムについて、剥離強度を測定した。
【0137】
<比較例6>
(C6−4.光学フィルムの製造)
実施例1の(1−4)において、プラズマ処理のガス雰囲気を、窒素ガスと二酸化炭素ガスとを85.0:15.0(重量%)で含むガス雰囲気に変更したこと以外は、実施例1の(1−1)〜(1−4)と同様にして、光学フィルムを得た。得られた光学フィルムの算術平均粗さ(Ra)、表層の元素組成比、各表面エネルギーを測定した。
【0138】
(C6−5.多層フィルム)
実施例1の(1−5)において、(1−4)で製造した光学フィルムに代えて、(C6−4)で製造した光学フィルムを用いたこと以外は実施例1の(1−5)と同様にして、多層フィルムを得た。得られた多層フィルムについて、剥離強度を測定した。
【0139】
<比較例7>
(C7−4.光学フィルムの製造)
実施例1の(1−3)で製造した結晶化フィルムの一方の面に、エキシマランプ(EX-mini L12530-01、浜松フォトニクス社製)を用いて、焦点距離が3mm、空気下、エキシマ光(波長:175nm)を6秒間照射して光学フィルムを得た。得られた光学フィルムの算術平均粗さ(Ra)、表層の元素組成比、各表面エネルギーを測定した。
【0140】
(C7−5.多層フィルム)
実施例1の(1−5)において、(1−4)で製造した光学フィルムに代えて、(C7−4)で製造した光学フィルムを用いたこと以外は実施例1の(1−5)と同様にして、多層フィルムを得た。得られた多層フィルムについて、剥離強度を測定した。
【0141】
<比較例8>
(C8−4.光学フィルムの製造)
実施例1の(1−1)において、樹脂Aに代えて、非晶性のノルボルネン系樹脂(商品名「ZEONOR1600」、日本ゼオン社製、Tg163℃、屈折率1.53;以下において、「樹脂B」という)のペレットを用い、実施例1の(1−1)〜(1−2)と同様にして延伸されたフィルムを得た。得られたフィルムの一方の面に、実施例5の(5−4)と同様の条件でプラズマ処理を行い、光学フィルムを得た。得られた光学フィルムの算術平均粗さ(Ra)、表層の元素組成比、各表面エネルギーを測定した。
【0142】
(C8−5.多層フィルム)
実施例1の(1−5)において、(1−4)で製造した光学フィルムに代えて、(C8−4)で製造した光学フィルムを用いたこと以外は実施例1と同様にして、多層フィルムを得た。得られた多層フィルムについて、剥離強度を測定した。
【0143】
<結果>
実施例及び比較例の結果を、表2及び表3に示す。
表2および3には、樹脂の種類、実施例及び比較例のプラズマ処理条件(ガス比率(重量%)及び窒素に対する酸素の重量比)を併せて示した。
表2中、「プラズマ処理面の算術平均粗さ」とは、「光学フィルムの2つの面のうちプラズマ処理を行った面の算術平均粗さ」を意味し、「非処理面の算術平均粗さ」とは、「光学フィルムの2つの面のうちプラズマ処理を行っていない面の算術平均粗さ」を意味する。
表3中、「処理面の算術平均粗さ」とは、「光学フィルムの2つの面のうちプラズマ処理又はエキシマ処理を行った面の算術平均粗さ」を意味し、「非処理面の算術平均粗さ」とは、「光学フィルムの2つの面のうちプラズマ処理及びエキシマ処理のいずれも行っていない面の算術平均粗さ」を意味する。比較例1では光学フィルムの両面とも、表面処理を行っていないので非処理面に2つの面の算術平均粗さを記載した。表3中「両面共3.0」とは、光学フィルムの両方の面の算術平均粗さが3.0nmであることを意味する。
【0144】
【表2】
【0145】
【表3】
【0146】
実施例1〜6で得られた光学フィルムは、剥離強度が高いので、層間剥離の発生を抑制することができ、耐屈曲性が高いので可撓性に優れ、かつ、耐熱性も高いので、タッチパネルの構成要素であるタッチセンサー等として有用に用い得る。