(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記アミノ酸が、グリシン、2,3‐ジアミノプロピオン酸、アラニン、アルギニン、アスパラギン、セリン、オルニチン、クレアチン、トレオニン、及び、2‐アミノ酪酸の中から選択される少なくとも1つであることを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載のCO2除去方法。
前記イオン液体の含有率が、前記親水性ポリマー層に含まれている親水性ポリマー、前記アミノ酸、及び、前記脱プロトン化剤の合計重量に対して20wt%以下であることを特徴とする請求項8〜10の何れか1項に記載のCO2除去方法。
前記アミノ酸が、グリシン、2,3‐ジアミノプロピオン酸、アラニン、アルギニン、アスパラギン、セリン、オルニチン、クレアチン、トレオニン、及び、2‐アミノ酪酸の中から選択される少なくとも1つであることを特徴とする請求項12または13に記載のCO2除去装置。
前記イオン液体の含有率が、前記親水性ポリマー層に含まれている親水性ポリマー、前記アミノ酸、及び、前記脱プロトン化剤の合計重量に対して20wt%以下であることを特徴とする請求項12〜17の何れか1項に記載のCO2除去装置。
【発明を実施するための形態】
【0029】
本発明に係るCO
2除去方法(以下、適宜、「本方法」と称す。)及びCO
2除去装置(以下、適宜、「本装置」と称す。)の実施形態につき、図面に基づいて説明する。
【0030】
本方法は、CO
2選択透過膜を用いて、CO
2、N
2、及びO
2を含む処理対象ガスから、CO
2を選択的に除去する方法である。本方法は、人の居住空間、特に、密閉居住空間における二酸化炭素濃度制御に適応可能なように、処理対象ガスに対する処理温度範囲は、15℃以上、且つ、50℃以下、好ましくは40℃以下、より好ましくは35℃以下、更に好ましくは30℃以下に設定されており、また、処理対象ガスはCO
2濃度がドライベースで、0mol%を超え、且つ、3mol%以下、好ましくは2mol%以下、更に好ましくは1mol%以下のものを対象としている。尚、本方法及び本装置におけるCO
2濃度の当該下限値及び上限値は、CO
2選択透過膜の膜性能に対する臨界的条件を規定するものではなく、人の居住空間におけるCO
2濃度として、本方法及び本装置によって当該CO
2濃度が、人が正常に生活できる範囲にまで低下することを前提として、本方法を適用する前の当該CO
2濃度の許容限度を示すものである。つまり、本方法及び本装置は、従来の工業用途のCO
2除去方法及び装置と異なり、対象とする処理対象ガスのCO
2濃度は低く設定されている。
【0031】
本方法は、上述のように、人の居住空間への適応を想定しているため、CO
2除去処理に伴うO
2損失量を極めて低く抑える必要があり、CO
2選択透過膜としては、上記処理温度範囲及び上記CO
2濃度の処理対象ガスに対して、高いCO
2/O
2選択性を発揮し得る、アミノ酸と前記アミノ酸のアミノ基のプロトン化を防止する脱プロトン化剤を含有するゲル状の親水性ポリマーを備えたCO
2促進輸送膜を使用する。親水性ポリマーは、多孔質膜に担持され、膜状の親水性ポリマー層を形成する。
【0032】
更に、本方法において、CO
2促進輸送膜の透過側圧力を、1kPa以上、CO
2促進輸送膜の透過側の雰囲気温度での飽和水蒸気圧未満にして、CO
2促進輸送膜の供給側より減圧することで、CO
2促進輸送膜の供給側と透過側の間にCO
2分圧差を発生させて、処理対象ガス中のCO
2を選択的に透過側に通過させて除去するのが好ましい。CO
2促進輸送膜の供給側圧力が大気圧である場合、透過側圧力が上記圧力範囲内において低圧であるほど、膜の供給側から透過側へのCO
2透過の推進力となるCO
2分圧差を確保できる。一方、透過側圧力が高い方が、後述するように透過側の相対湿度が高くなり、CO
2とアミノ酸との反応に必要な膜中の水分を確保することができる。つまり、透過側圧力が上記圧力範囲内であれば、膜の供給側から透過側へのCO
2透過の推進力となるCO
2分圧差を確保しつつ、CO
2とアミノ酸との反応に必要な膜中の水分を確保できる。尚、CO
2促進輸送膜の供給側圧力は大気圧に限定されるものではなく、透過側圧力より高圧であれば、大気圧より低圧であっても良く、また、大気圧より高圧であっても良い。
【0033】
また、上述のCO
2促進輸送膜の透過側圧力を供給側より減圧する減圧法に代えて、CO
2促進輸送膜の供給側と透過側を等圧にして、透過側にスイープガスを供給するスイープガス法を用いて、CO
2促進輸送膜の供給側と透過側の間にCO
2分圧差を発生させて、処理対象ガス中のCO
2を選択的に透過側に通過させて除去することも可能である。また、減圧法とスイープガス法を組み合わせても良い。
【0034】
CO
2促進輸送膜で使用されるアミノ酸は、化学的溶解拡散機構におけるCO
2と選択的に反応するキャリアとして機能する。化学的溶解拡散機構では、CO
2とキャリアの反応に水分が必要である。具体的に説明すると、膜内の二酸化炭素(CO
2)と第1級アミン(RNH
2)の反応は、通常以下の(化1)の反応経路式に示す反応を繰り返し、全体として(化2)の総括反応式に示す化学反応を示す。これより、膜内の水分が多いほど化学平衡は生成物側(右側)にシフトし、二酸化炭素の透過が促進されることが分かる。
【0035】
(化1)
CO
2+2RNH
2 → RNHCOO
−+RNH
3+
RNHCOO
−+H
2O → RNH
2+HCO
3−
(化2)
CO
2+RNH
2+H
2O → HCO
3−+RNH
3+
【0036】
従って、本方法では、処理対象ガスをCO
2促進輸送膜の供給側に供給するとともに、水蒸気を発生させてCO
2促進輸送膜に供給する。これにより、処理対象ガス中のCO
2は、膜中のキャリアと反応して、化学的溶解拡散機構によりCO
2促進輸送膜の供給側から透過側に透過し、処理対象ガス中のO
2及びN
2は、物理的溶解拡散機構によりCO
2促進輸送膜の供給側から透過側に透過する。後述するように、化学的溶解拡散機構によるCO
2パーミアンスは、物理的溶解拡散機構によるO
2パーミアンス及びN
2パーミアンスより大きいため、処理対象ガス中のCO
2は、CO
2促進輸送膜を介して、O
2及びN
2に対して選択的に透過し、処理対象ガスから選択的に除去される。
【0037】
CO
2キャリアとして機能するアミノ酸として、グリシン、2,3‐ジアミノプロピオン酸(DAPA)、アラニン、アルギニン、アスパラギン、セリン、オルニチン、クレアチン、トレオニン、2‐アミノ酪酸等が、好適に使用できる。
【0038】
アミノ酸は水に溶解すると、アミノ基(NH
2)がプロトン化してNH
3+となって解離するが、上記(化2)に示すように、二酸化炭素はプロトン化したアミノ基(NH
3+)とは反応せず、フリーのアミノ基(NH
2)と反応する。このため、アミノ酸と
当量以上のアルカリを添加することで、全てのNH
3+をNH
2に変換でき、アミノ酸のCO
2キャリアとしての機能が最大化される。当該アルカリとしては、プロトン化したNH
3+からプロトンを奪い、NH
2に変換できるだけの強塩基性を有するものであれば良く、CsOH等のアルカリ金属元素の水酸化物または炭酸塩を好適に利用できる。
【0039】
尚、
当量以上にアルカリが添加された場合、余剰のアルカリが二酸化炭素と反応し、例えばCsOHの場合下記の(化3)に示すように、炭酸塩が生成される。この場合、当該炭酸塩は、アミノ酸とともにCO
2キャリアとして機能する(特許文献2参照)。
【0040】
(化3)
CO
2 + CsOH → CsHCO
3
CsHCO
3 + CsOH → Cs
2CO
3 + H
2O
【0041】
また、上記(化3)より、例えば脱プロトン化剤として水酸化セシウム(CsOH)を用いても、炭酸セシウム(Cs
2CO
3)を用いても、最終のpH値が同じであれば、同等物となる。同様に、水酸化リチウムと炭酸リチウム、水酸化ナトリウムと炭酸ナトリウム、水酸化カリウムと炭酸カリウム、水酸化ルビジウムと炭酸ルビジウムについても、夫々、同等物の関係にある。
【0042】
CO
2促進輸送膜を構成する親水性ポリマーとして、例えば、ポリビニルアルコール−ポリアクリル酸塩共重合体(PVA/PAA塩共重合体)、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリアクリル酸(PAA)、キトサン、ポリビニルアミン、ポリアリルアミン、及び、ポリビニルピロリドン等が使用できるが、必ずしもこれらに限定されるものではない。また、親水性ポリマー層は、親水性ポリマーが架橋されて三次元網目構造を形成しているハイドロゲルを一部または全部とするハイドロゲル層であっても良い。ハイドロゲルは、水を吸収することにより膨潤する性質を有する場合が多い。親水性ポリマーがPVA/PAA塩共重合体またはポリビニルアルコールの場合のハイドロゲルの架橋度は、グルタルアルデヒド等のジアルデヒド化合物、ホルムアルデヒドなどのアルデヒド化合物、等の架橋剤の添加量により調節することができる。尚、当業者において、PVA/PAA塩共重合体は、PVA/PAA共重合体と呼ばれることもある。
【0043】
親水性ポリマー層を担持する多孔質膜は、機械的強度、親水性ポリマー層との密着性を有するものが好ましく、更に、多孔度(空隙率)が55%以上で、細孔径は0.1〜1μmの範囲にあるのが好ましい。本実施形態では、これらの条件を備えた多孔質膜として、四フッ化エチレン重合体(PTFE)多孔膜を使用する。PTFE膜は親水性PTFEを使用しても良い。多孔質膜が親水性の場合、親水性ポリマー層は、多孔質膜の細孔内にも形成される。尚、多孔質膜は、PTFE膜に限定されるものではない。PTFE膜以外では、例えば、ポリエーテルスルホン、ポリフッ化ビニル、ポリフッ化ビニリデン、ポリフェニレンスルフィド、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリイミド、高分子量ポリエステル、耐熱性ポリアミド、アラミド、ポリカーボネート等の樹脂材料、金属、ガラス、セラミックス等の無機材料等が使用できる。
【0044】
多孔質膜の形状は、平板状、曲面状(例えば、球面状、円柱側面状)、筒状(例えば、円筒状)等の種々の形状が考えられる。多孔質膜が筒状の場合、親水性ポリマー層は、筒状の多孔質膜の外側と内側の何れの側に形成されても良い。また、多孔質膜が筒状の場合、筒状の多孔質膜の外側と内側の何れの側を、処理対象ガスを供給する供給側としても良い。
【0045】
更に、親水性ポリマー層は、CO
2キャリアとしてのアミノ酸と脱プロトン化剤以外に、イオン液体(イオン性流体とも呼ばれる。)を含んでも良い。尚、イオン液体の含有率は、イオン液体を除く親水性ポリマー層の総重量、つまり、親水性ポリマー層に含まれている親水性ポリマー、アミノ酸、脱プロトン化剤の合計重量に対し、30wt%以下が好ましく、20wt%以下がより好ましく、10wt%以下が更に好ましい。イオン液体の含有率が高すぎると膜の強度が低下し、特に、膜の透過側と供給側に圧力差がある条件では選択性も低下してしまうためである。尚、親水性ポリマー層中にイオン液体が含まれる場合の上記含有率は、0wt%より大きく、好ましくは、0.5wt%以上である。
【0046】
一般に、CO
2促進輸送膜を100℃以上の高温環境で使用すると、親水性ポリマーの架橋が進行し、CO
2キャリアによる二酸化炭素の促進輸送が阻害されCO
2パーミアンスが低下する虞があるところ、イオン液体が含まれることで、当該架橋の進行が抑制される結果、高温下での使用によるCO
2パーミアンスの低下が抑制されることが期待される。しかしながら、本実施形態では、CO
2促進輸送膜は15℃以上50℃以下の概ね室温環境での使用を想定しているため、イオン液体は、架橋の進行によるCO
2パーミアンスの低下を抑制するためではなく、下記に示すイオン液体の効果等により、低CO
2分圧差下で、CO
2パーミアンスとCO
2/O
2選択性の少なくとも何れか一方の向上が図れる場合に使用する。イオン液体を添加することで、親水性ポリマー層を担持する多孔質膜と塗工液との親和性が向上し、製膜性が向上し、部分的に多孔質膜上に親水性ポリマー層が形成されていない箇所ができてしまうことを抑制する効果がある。また、イオン液体を適切に添加することにより、塗布する上で適切な粘度に塗工液を調節することが可能である。そのため、特に、大きな面積の膜を作製する場合には有用である。
【0047】
イオン液体として、下記のカチオン、アニオンの組合せよりなる化合物から選択される化学物質が利用できる。
カチオン:アンモニウムイオン、ホスホニウムイオン、ピリジニウムイオン、イミダゾリウムイオン、ピロリジニウムイオン、ピペリジニウムイオン。
アニオン:アミノ酸イオン、塩化物イオン、臭化物イオン、四フッ化ホウ素イオン、硝酸イオン、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドイオン、ヘキサフルオロリン酸イオン、または、トリフルオロメタンスルホン酸イオン。
【0048】
また、イオン液体の具体例として、1‐エチル‐3‐メチルイミダゾリウムグリシネイト、テトラブチルホスホニウムグリシネイト、テトラブチルホスホニウムプロリネイト、1‐エチル‐3‐メチルイミダゾリウムクロリド、1‐エチル‐3‐メチルイミダゾリウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド、テトラブチルホスホニウムアラニン、テトラブチルホスホニウムセリン、テトラエチルホスホニウムグリシネイト、テトラメチルホスホニウムグリシネイト、テトラメチルアンモニウムグリシネイト、テトラエチルアンモニウムグリシネイト、テトラブチルアンモニウムグリシネイト、1‐アリル‐3‐エチルイミダゾリウムブロミド、1‐エチル‐3‐メチルイミダゾリウムブロミド、1‐(2‐ヒドロキシエチル)‐3‐メチルイミダゾリウムブロミド、1‐(2‐メトキシエチル)‐3‐メチルイミダゾリウムブロミド、1‐オクチル‐3‐メチルイミダゾリウムクロリド、N,N‐ジエチル‐N‐メチル‐N‐(2‐メトキシエチル)アンモニウムテトラフルオロボラート、エチルメチルイミダゾリウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、エチルメチルイミダゾリウムビストリフルオロメタンスルホン酸、エチルメチルイミダゾリウムジシアナミド、及び、塩化トリヘキシルテトラデシルホスホニウム等が利用できる。
【0049】
更に、アミノ基がCO
2との反応性を有するため、イオン液体は、特に、アミノ基を有するアミノ酸イオン液体であることが好ましい。アミノ酸イオンとして用いられるアミノ酸は、第1級アミノ基(−NH2)、第2級アミノ基(−NH−)及び第3級アミノ基(−N=)から選ばれる1種または2種以上のアミノ基とカルボキシル基とを有する化合物であればよく、天然でも非天然でもよい。
【0050】
アミノ酸イオンは、例えば、アルギニン、ヒスチジン、リシン、アスパラギン酸、グルタミン酸、セリン、トレオニン、アスパラギン、グルタミン、システイン、グリシン、プロリン、アラニン、イソロイシン、ロイシン、メチオニン、フェニルアラニン、トリプトファン、チロシン及びバリンからなる群より選ばれる少なくとも1種のアミノ酸から形成されるイオンである。これらのアミノ酸のアミノ基が有する水素原子の一部又は全部が、アルキル基又はアリール基によって置換されていてもよい。例えば、第2級アミノ基を有するN−アルキルアミノ酸及びN−アリールアミノ酸、第3級アミノ基を有するN,N−ジアルキルアミノ酸及びN−アルキル−N−アリールアミノ酸が用いられ得る。当該アミノ酸イオン液体の具体例として、例えば、1‐エチル‐3‐メチルイミダゾリウムグリシネイト、テトラブチルホスホニウムグリシネイト、テトラブチルホスホニウムプロリネイト、テトラブチルホスホニウムアラニン、テトラブチルホスホニウムセリン、テトラエチルホスホニウムグリシネイト、テトラメチルホスホニウムグリシネイト、テトラメチルアンモニウムグリシネイト、テトラエチルアンモニウムグリシネイト、テトラブチルアンモニウムグリシネイト等が利用できる。
【0051】
更に、O
2及びN
2に対するバリア性の観点から、イオン液体(特に、アミノ酸イオン液体)の分子量は小さい方が好ましく、当該分子量は、1000以下が好ましく、500以下がより好ましく、200以下が更に好ましい。尚、当該分子量の下限値は、イオン液体として使用し得る化学物質の分子量の最小値となる。
【0052】
次に、CO
2促進輸送膜の製造方法の一例を説明する。
【0053】
先ず、親水性ポリマーとアミノ酸を含む水溶液からなる塗工液を作製する(工程1)。より詳細には、水に親水性ポリマーを添加して、例えば室温で3日以上攪拌し、得られた溶液に、更にアミノ酸と脱プロトン化剤を添加して、溶解するまで攪拌して塗工液を得る。尚、親水性ポリマー層内にイオン液体が含まれる場合は、工程1において、アミノ酸と脱プロトン化剤を添加する際に、イオン液体も添加する。
【0054】
次に、工程1で得た塗工液中の気泡を除去するために、遠心分離(例えば、回転数5000rpmで30分間)を行う(工程2)。
【0055】
次に、工程2で得た塗工液を、PTFE多孔膜の面上に、アプリケータで塗布し、均一に広げる(工程3)。尚、塗工液の塗布厚は、後述する工程4でゲル化された後の親水性ポリマー層(アミノ酸と脱プロトン化剤等の添加物を含む)の単位面積当たりの重量(以下、適宜「ゲル重量」と称する。)が、1mg/cm
2以上100mg/cm
2以下、好ましくは、2.5mg/cm
2以上80mg/cm
2以下、更に好ましくは、5mg/cm
2以上60mg/cm
2以下となるように調整する。尚、親水性ポリマー層のゲル重量は、PTFE多孔膜の面上に塗布した塗工液の重量に、親水性ポリマーとアミノ酸と脱プロトン化剤等の添加物の合計の重量分率を乗じて得られるゲル化後の親水性ポリマー層の重量を、塗布面積で除して得られる。尚、ゲル重量が1mg/cm
2未満になると、均質な製膜が困難となる。ここで、PTFE多孔膜は、親水性PTFE、疎水性PTFE、或いは、親水性PTFEと疎水性PTFEの積層体の何れでも良い。塗工液は、親水性PTFE多孔膜を使用する場合は、細孔内に浸透するが、疎水性PTFE多孔膜を使用する場合は、細孔内には浸透しない。
【0056】
次に、塗工液を塗布したPTFE多孔膜を、例えば室温で約半日自然乾燥させ、塗工液をゲル化させゲル状の親水性ポリマー層を生成する(工程4)。尚、工程4において、自然乾燥させたPTFE多孔膜を、更に、120℃程度の温度で、2時間程度熱架橋しても良い。尚、親水性ポリマー層をハイドロゲル化する場合の架橋度を、ジアルデヒド化合物或いはアルデヒド化合物等の架橋剤の添加により調節する場合は、当該架橋剤を上記工程1において塗工液に添加する。
【0057】
以上説明した工程1〜4を経て、本方法で使用されるCO
2促進輸送膜が作製される。尚、CO
2促進輸送膜が平板状である場合等において、必要に応じて、完成したCO
2促進輸送膜の親水性ポリマー層の露出面を、PTFE多孔膜等の多孔質膜で被覆して、保護するのも好ましい。
【0058】
次に、上記製造方法で作製したCO
2促進輸送膜の各種サンプルを用いて、本方法におけるCO
2除去性能の評価を行った結果を説明する。本実施形態では、CO
2除去性能の下記の評価1〜7は、使用したサンプルの製膜条件及び測定条件の種々の組み合わせに対してCO
2促進輸送膜の膜性能を各別に測定することにより行った。CO
2促進輸送膜の膜性能の測定は、
図1に示す評価装置を使用した減圧法と、
図2に示す評価装置を使用したスイープガス法を適宜使い分けて行った。減圧法とスイープガス法の何れの場合も、CO
2促進輸送膜の供給側と透過側間にCO
2分圧差が生じ得るため、CO
2促進輸送膜の膜性能を測定することができる。従って、CO
2分圧差及び透過側の相対湿度が同じであれば、同じ測定結果が得られるものと考えられる。本実施形態では、透過側の相対湿度に関連する透過側圧力が膜性能に与える影響を調べた評価4において、減圧法を採用した。
【0059】
本実施形態では、減圧法及びスイープガス法の何れの場合も、評価用のCO
2促進輸送膜1の各サンプルは、2枚の円環状のガスケットで挟持された状態で、ガス透過セル2の供給側室3と透過側室4の間に固定されている。処理対象ガスを構成するCO
2、N
2、及びO
2は、マスフローコントローラ(MFC)及び弁を通過した下流側で合流した後、バブラー5により水蒸気が添加されることで調湿され、デミスター6で余分な水滴が除去され、所定の混合比のフィードガスFGとして、ガス透過セル2の供給側室3に供給される。フィードガス中のCO
2促進輸送膜
1を通過しなかった供給側室3内のフィードガスFG’は、湿度計7を経由して系外に排気される。本実施形態では、ガス透過セル2の動作温度を一定に維持するために、ガス透過セル2を恒温水槽8内に設置しており、また、バブラー5とデミスター6も、別の恒温水槽9内に設置している。本実施形態では、下記の評価6及び7を除き、供給側室3内の相対湿度は75%に調整されている。
図1及び
図2に例示する評価装置では、バブラー5で発生する水蒸気をフィードガスFGに添加し、相対湿度の調整を行っているが、バブラー5に代えて、水を加熱して水蒸気を発生する水蒸気発生器を別途設け、該水蒸気発生器の発生した水蒸気をフィードガスFGに添加する構成としても良い。また、デミスター6は必ずしも設ける必要はない。
【0060】
減圧法では、透過側室4にニードル弁10を介してスクロール型の真空ポンプ11を接続し、透過側室4内の透過側圧力Psを所定の圧力まで減圧する。減圧した圧力は、透過側室4に接続した真空計12で計測される。透過側室4内から真空ポンプ11で吸引された処理済ガスPGは、真空ポンプ11の下流側でヘリウムガス(He)が添加され、冷却トラップ13で水蒸気が除去された後、ガスクロマトグラフィ14で、ガス組成が定量される。本実施形態の減圧法では、供給側室3内の供給側圧力Pfは大気圧(101.3kPa)である。
【0061】
スイープガス法では、スイープガスSG(本実施形態では、ヘリウムガス(He)を使用)を、マスフローコントローラ(MFC)及び弁を経由して透過側室4に供給される。透過側室4からスイープガスSGとともに送出される処理済ガスPGは、冷却トラップ13で水蒸気が除去された後、ガスクロマトグラフィ14で、ガス組成が定量される。本実施形態のスイープガス法では、透過側圧力Ps及び供給側圧力Pfは大気圧(101.3kPa)である。
【0062】
ところで、同じ物理的溶解拡散機構でCO
2促進輸送膜1中を透過するN
2とO
2では、上述したように、O
2パーミアンスがN
2パーミアンスより大きいため、CO
2/N
2選択性(=CO
2パーミアンス/N
2パーミアンス)はCO
2/O
2選択性(=CO
2パーミアンス/O
2パーミアンス)より更に高くなる(本実施形態の場合、約1.9倍である)。よって、本実施形態におけるCO
2促進輸送膜の膜性能の測定では、CO
2パーミアンス、O
2パーミアンス、及び、CO
2/O
2選択性の3項目の膜性能のみを測定し、N
2パーミアンスとCO
2/N
2選択性の測定は割愛した。従って、当該3項目の膜性能を測定では、フィードガスFG中のN
2は不要であるため、測定の便宜上、フィードガスFG中のN
2濃度は0%とした。尚、本方法で使用するCO
2促進輸送膜は、CO
2パーミアンスは大きい程、O
2パーミアンスは小さい程、CO
2/O
2選択性は高い程、高性能と判断される。
【0063】
次に、下記の評価1〜7における膜性能の測定内容と、当該測定で用いたサンプル#1〜#15について説明する。サンプル#1〜#15のPTFE多孔膜としては、疎水性PTFE多孔膜上に親水性化したPTFE多孔膜を重ねた直径47mmの積層体を共通に使用した。尚、CO
2促進輸送膜1の各サンプル#1〜#15を挟持するガスケットは、内径37mm、外径57mmのものを使用した。また、各サンプル#1〜#15の親水性ポリマー層は、何れも三次元網目構造を有するハイドロゲルである。尚、評価1〜7における膜性能の測定結果を示す
図3〜
図16において、CO
2パーミアンス、O
2パーミアンス、及び、CO
2/O
2選択性は、夫々、KCO
2、KO
2、及び、α(CO
2/O
2)と表記されている。
【0064】
[評価1]
評価1では、親水性ポリマー中のCO
2キャリアの違いが、上記3項目の膜性能に与える影響を、サンプル#1及び#2を用いてスイープガス法により調べた。上記3項目の膜性能の測定結果を
図3に示す。尚、フィードガスFG中のドライベースでのCO
2濃度及びO
2濃度は、0.7mol%と99.3mol%に固定した。また、処理温度は26.7℃に設定した。
【0065】
サンプル#1及び#2の親水性ポリマーは、PVA/PAA塩共重合体(Cs塩)であり、親水性ポリマー層のゲル重量は、約25mg/cm
2である。サンプル#1のCO
2キャリアは、アミノ酸であるグリシンを使用し、脱プロトン化剤としてCsOHを使用した。よって、サンプル#1では、CsOHは専ら脱プロトン化剤として機能し、CO
2キャリアとしては殆ど機能していない。後述するサンプル#3〜#15においても、サンプル#1と同様に、CO
2キャリアとして、アミノ酸であるグリシンを使用し、脱プロトン化剤としてCsOHを使用しており、CsOHは専ら脱プロトン化剤として機能し、CO
2キャリアとしては機能していないか、或いは、殆ど機能していない。尚、CO
2キャリアとして使用するアミノ酸は、グリシンに限定されるものではなく、例えば、DAPAであっても良い。サンプル#2では、CO
2キャリアとしてのアミノ酸は添加しておらず、脱プロトン化剤のCsOHをCO
2キャリアとして使用した。サンプル#1及び#2では、親水性ポリマー中にイオン液体は添加されていない。尚、PVA/PAA塩共重合体(Cs塩)は、PAA(ポリアクリル酸)を構成する構造単位が、アクリル酸セシウム塩由来であることを意味する。
【0066】
サンプル#1及び#2の作製時の上記製造方法の工程1で作製した塗工液中の親水性ポリマー、H
2O、グリシン、CsOHの重量分率を、サンプル#1及び#2の各CO
2キャリアを適正に比較するため、サンプル#1に対して、記載順に、0.0388:0.790:0.0567:0.114と設定し、サンプル#2に対して、0.0404:0.824:0:0.136と設定した。尚、CsOHは1水和物として添加しており、1水和物分のH
2Oの重量は、H
2Oの重量分率に加算している。サンプル#1で添加されたCsOHは、グリシンに対して僅かに
当量を超えている。
【0067】
サンプル#1及び#2におけるCO
2促進輸送膜の膜組成は、CO
2キャリアの種類だけが異なり、それ以外は同じである。サンプル#1は、CO
2キャリアとしてアミノ酸であるグリシンを使用しており、本方法で使用するCO
2促進輸送膜の一実施例である。サンプル#2は、比較例であり、CO
2キャリアとしてCsOHを使用しており、本方法で使用しないCO
2促進輸送膜である。サンプル#1及び#2の上記3項目の膜性能の測定結果を比較すると、サンプル#1の方が、CO
2パーミアンスは大きく、O
2パーミアンスは小さく、CO
2/O
2選択性は高く、3項目ともサンプル#2より高性能であることが明らかである。
【0068】
[評価2]
評価2では、親水性ポリマーの種類、親水性ポリマー層中のイオン液体の有無及び種類、及び、親水性ポリマーのゲル重量が、上記3項目の膜性能に与える影響を、サンプル#3〜#7を用いてスイープガス法により調べた。サンプル#3〜#7は、何れも本方法で使用するCO
2促進輸送膜の実施例である。上記3項目の膜性能の測定結果を
図4〜
図9に示す。尚、フィードガスFG中のドライベースでのCO
2濃度及びO
2濃度は、0.7mol%と99.3mol%に固定した。また、処理温度は26.7℃に設定した。尚、サンプル#3〜#7の夫々は、親水性ポリマーのゲル重量の異なる、つまり、上述の製造方法の工程3における塗工液の塗布厚の異なる複数のサンプルで構成される。
【0069】
サンプル#3〜#7の親水性ポリマーは、サンプル#3及び#6がPAA(Na塩)であり、サンプル#4及び#7がPVA/PAA塩共重合体(Na塩)であり、サンプル#5が、PVA/PAA塩共重合体(Cs塩)である。尚、PAA(Na塩)及びPVA/PAA塩共重合体(Na塩)は、PAA(ポリアクリル酸)を構成する構造単位が、アクリル酸ナトリウム塩由来であることを意味する。
【0070】
サンプル#3〜#7のCO
2キャリアは、何れもアミノ酸であるグリシンを使用し、脱プロトン化剤としてCsOHを使用した。
【0071】
サンプル#3〜#7のイオン液体は、サンプル#3〜#5では、イオン液体が添加されておらず、サンプル#6では、テトラブチルホスホニウムグリシネイト([P4444][Gly]、分子量:333.49)が添加され、サンプル#7では、1‐エチル‐3‐メチルイミダゾリウムグリシネイト([EMIM][Gly]、分子量:185.22)が添加されている。サンプル#6及びサンプル#7では、イオン液体は、親水性ポリマー、グリシン、CsOHの合計重量に対して、夫々、9.9wt%と9.3wt%の比率で添加されている。
【0072】
サンプル#3は、ゲル重量が2.4mg/cm
2〜19.9mg/cm
2の範囲の8個のサンプルで構成され、サンプル#4は、ゲル重量が7.1mg/cm
2〜12.5mg/cm
2の範囲の6個のサンプルで構成され、サンプル#5は、ゲル重量が6mg/cm
2〜18.2mg/cm
2の範囲の8個のサンプルで構成され
、サンプル#6は、ゲル重量が3.5mg/cm
2〜9mg/cm
2の範囲の2個のサンプルで構成され、サンプル#7は、ゲル重量が7.2mg/cm
2〜12.6mg/cm
2の範囲の4個のサンプルで構成されている。
【0073】
図4は、サンプル#3〜#5のCO
2パーミアンスとゲル重量との関係を示し、
図5は、サンプル#3〜#5のO
2パーミアンスとゲル重量との関係を示し、
図6は、サンプル#3〜#5のCO
2/O
2選択性とゲル重量との関係を示す。サンプル#3〜#5におけるCO
2促進輸送膜の膜組成は、親水性ポリマーの種類だけが異なり、それ以外は同じである。以下、サンプル#3〜#5の上記3項目の膜性能の測定結果を比較検討する。
【0074】
図4より、CO
2パーミアンスは、サンプル#3とサンプル#5については、親水性ポリマーの種類に関係なく、ゲル重量の増加とともに、緩やかに低下する傾向が見られる。サンプル#4については、ゲル重量の増加とともに緩やかに低下する傾向は見られない。これらの傾向は、後述する評価4の結果とも符合する(
図11参照)。
【0075】
図5より、O
2パーミアンスは、サンプル#3とサンプル#5については、親水性ポリマーの種類に関係なく、ゲル重量の増加とともに低下する傾向が、CO
2パーミアンスより大きく表れている。サンプル#4についても、大まかな傾向として、O
2パーミアンスはゲル重量の増加とともに低下している。これらの傾向は、後述する評価4の結果とも符合する(
図12参照)。
【0076】
図6より、CO
2/O
2選択性は、サンプル#3〜#5については、ゲル重量の増加とともに増加する傾向が見られる。これらの傾向は、後述する評価4の結果とも符合する(
図13参照)。サンプル#3〜#5については、親水性ポリマーの種類に関係なく、ゲル重量が2mg/cm
2〜20mg/cm
2の範囲において、2000以上の高いCO
2/O
2選択性が得られている。尚、後述の評価3及び評価4の結果を総合すると、ゲル重量が20mg/cm
2を超える範囲でも、CO
2/O
2選択性は、ゲル重量の増加とともに増加する傾向が見られる。よって、ゲル重量が100mg/cm
2程度まで増加しても、CO
2/O
2選択性及びO
2パーミアンスの点では好ましいが、CO
2パーミアンスが低下するので、同じCO
2除去量を確保するには大きな膜面積が必要となるため、100mg/cm
2程度を超えて大きくするメリットは無いと考えられる。
【0077】
図7は、サンプル#3、#4、#6、#7のCO
2パーミアンスとゲル重量との関係を示し、
図8は、サンプル#3、#4、#6、#7のO
2パーミアンスとゲル重量との関係を示し、
図9は、サンプル#3、#4、#6、#7のCO
2/O
2選択性とゲル重量との関係を示す。サンプル#3、#4、#6、#7におけるCO
2促進輸送膜の膜組成は、サンプル#3と#6の間、及び、サンプル#4と#7の間では、親水性ポリマー層中のイオン液体の有無で相違し、それ以外は同じである。以下、サンプル#3と#6、サンプル#4と#7の上記3項目の膜性能の測定結果を比較検討する。
【0078】
サンプル#3と#6、及び、サンプル#4と#7は、夫々イオン液体の有無で相違するが、
図7〜
図9の上記3項目の膜性能の測定結果からは、イオン液体の有無による膜性能の違いは顕著には見られない。サンプル#6及び#7においても、親水性ポリマーの種類及びイオン液体の種類に関係なく、2000以上の高いCO
2/O
2選択性が得られている。
【0079】
[評価3]
評価3では、評価2に加えて、親水性ポリマー層中のイオン液体の種類が上記3項目の膜性能に与える影響を、サンプル#8〜#11を用いてスイープガス法により調べた。サンプル#8〜#11は、何れも本方法で使用するCO
2促進輸送膜の実施例である。上記3項目の膜性能の測定結果を
図10に示す。尚、フィードガスFG中のドライベースでのCO
2濃度及びO
2濃度は、0.7mol%と99.3mol%に固定した。また、処理温度は26.7℃に設定した。
【0080】
サンプル#8〜#11の親水性ポリマーは、何れもPVA/PAA塩共重合体(Cs塩)であり、親水性ポリマー層のゲル重量は、約25mg/cm
2である。サンプル#8〜#11のCO
2キャリアは、何れもアミノ酸であるグリシンを使用し、脱プロトン化剤としてCsOHを使用した。
【0081】
サンプル#8〜#11のイオン液体は、サンプル#8では、1‐エチル‐3‐メチルイミダゾリウムクロリド([EMIM][Cl]、分子量:146.62)が添加され、サンプル#9では、テトラブチルホスホニウムグリシネイト([P4444][Gly]、分子量:333.49)が添加され、サンプル#10では、1‐エチル‐3‐メチルイミダゾリウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド([EMIM][Tf2N]、分子量:391.30)が添加され、サンプル#11では、テトラブチルホスホニウムプロリネイト([P4444][Pro]、分子量:359.52)が添加されている。
【0082】
サンプル#8〜#11の塗工液中の親水性ポリマー、H
2O、グリシン、CsOHの重量分率は、サンプル#1と同じであり、イオン液体は、親水性ポリマー、グリシン、CsOHの合計重量に対して、7.5wt%の比率で添加されている。
【0083】
サンプル#8〜#11におけるCO
2促進輸送膜の膜組成は、イオン液体の種類だけが異なり、それ以外は同じである。サンプル#8〜#11の上記3項目の膜性能の測定結果を比較すると、CO
2パーミアンスは、1.25×10
−5〜1.7×10
−5(mol・m
−2・s
−1・kPa
−1)となっており、イオン液体の種類によってばらついているが、概ね同程度のパーミアンスで、サンプル#1のイオン液体を添加しない場合より若干小さな値となっているが、サンプル#2の比較例よりは、4倍程度大きな値となっている。O
2パーミアンスは、5.19×10
−9〜7.69×10
−9(mol・m
−2・s
−1・kPa
−1)となっており、イオン液体の種類によってばらついているが、概ね同程度のパーミアンスで、サンプル#1のイオン液体を添加しない場合、及び、サンプル#2の比較例と、概ね同程度の値となっている。CO
2/O
2選択性は、1866〜2755となっており、イオン液体の種類によってばらついおり、サンプル#1のイオン液体を添加しない場合の半分程度であるが、1800以上の高い選択性が実現できており、サンプル#2の比較例よりは、3倍以上高い値となっている。以上より、サンプル#8〜#11の結果を見る限りにおいては、イオン液体を添加する効果は見られない。
【0084】
[評価4]
評価4では、親水性ポリマー層のゲル重量と透過側圧力が上記3項目の膜性能に与える影響を、サンプル#12及び#13を用いて減圧法により調べた。上記3項目の膜性能の測定結果を
図11〜
図13に示す。尚、フィードガスFG中のドライベースでのCO
2濃度及びO
2濃度は、0.7mol%と99.3mol%に固定した。また、処理温度は26.7℃に設定した。尚、サンプル#12は、親水性ポリマーのゲル重量の異なる、つまり、上述の製造方法の工程3における塗工液の塗布厚の異なる4個のサンプル#12A〜#12Dで構成される。サンプル#12A〜#12D、及び、サンプル#13は、何れも本方法で使用するCO
2促進輸送膜の実施例である。
【0085】
図11は、CO
2パーミアンスと透過側圧力との関係を示し、
図12は、O
2パーミアンスと透過側圧力との関係を示し、
図13は、CO
2/O
2選択性と透過側圧力との関係を示す。図
11では、全5サンプルに対して、CO
2パーミアンスと透過側圧力との関係を線形近似した直線を付加している。図
12及び図
13では、サンプル毎に、O
2パーミアンスと透過側圧力との関係、及び、CO
2/O
2選択性と透過側圧力との関係を線形近似した直線を付加している。
【0086】
サンプル#12及び#13の親水性ポリマーは、何れもPVA/PAA塩共重合体(Cs塩)であり、CO
2キャリアは、アミノ酸であるグリシンを使用し、脱プロトン化剤としてCsOHを使用した。
【0087】
サンプル#12及び#13のイオン液体は、サンプル#12では、テトラブチルホスホニウムグリシネイト([P4444][Gly]、分子量:333.49)が添加され、サンプル#13では、1‐エチル‐3‐メチルイミダゾリウムグリシネイト([EMIM][Gly]、分子量:185.22)が添加されている。イオン液体は、親水性ポリマー、グリシン、CsOHの合計重量に対して、夫々、8.1wt%(#12A,B,D)、6.1wt%(#12C)、7.6wt%(#13)の比率で添加されている。
【0088】
サンプル#12A〜#12Dの親水性ポリマーのゲル重量は、7mg/cm
2、12mg/cm
2、14mg/cm
2、22mg/cm
2と、順番に大きくなっており、サンプル#13の親水性ポリマーのゲル重量は13mg/cm
2である。
【0089】
図11から明らかなように、ゲル重量の違い、イオン液体の違いに大きく影響されず、透過側圧力の増加に伴い、ほぼ線形にCO
2パーミアンスが増加している。これは、水蒸気のパーミアンスがCO
2パーミアンスの約100倍と大きく、O
2パーミアンスがCO
2パーミアンスの約4000分の1〜約10000分の1と小さいため、透過側室内の水蒸気分圧P
H2Oは、ほぼ透過側圧力Psに等しいため、透過側室内の温度における飽和水蒸気圧をP
SATとすると、透過側室内の相対湿度RHは、以下の数1で表され、透過側圧力Psが大きいほど大きくなり、相対湿度RHが増加すると、親水性ポリマーの含水率が増して、拡散速度及び反応速度が増加して、透過速度が大きくなるためである。
【0090】
(数1)
RH=(P
H2O/P
SAT)×100≒(Ps/P
SAT)×100
【0091】
一方、
図12から明らかなように、O
2パーミアンスは、CO
2パーミアンスと同様に透過側圧力の増加に伴い増加するが、物理的溶解拡散機構によるため、ゲル重量の影響を大きく受け、ゲル重量の多いサンプルほど、O
2パーミアンスは小さい。尚、CO
2パーミアンスも、O
2パーミアンスほど顕著ではないが、ゲル重量の多いサンプルほど小さくなる傾向が僅かに存在する。
【0092】
図13から明らかなように、CO
2/O
2選択性は、ゲル重量の多いサンプルほど高く、また、透過側圧力の増加に伴い低下する傾向が見られる。透過側室4の温度が26.7℃の場合の飽和水蒸気圧は約3.5kPaであるので、
図13より、透過側圧力Psが1kPaから飽和水蒸気圧P
SAT(約3.5kPa)までの範囲で、ゲル重量が7mg/cm
2以上において、約3000以上の高いCO
2/O
2選択性を取り得ることが分かる。
【0093】
[評価5]
評価5では、フィードガスFGのCO
2分圧が上記3項目の膜性能に与える影響を、サンプル#14(本方法で使用するCO
2促進輸送膜の一実施例)を用いてスイープガス法により調べた。上記3項目の膜性能の測定結果を
図14に示す。フィードガスFGのCO
2分圧は、0.0986kPaから0.9866kPaまで6段階に増加させており、フィードガスFG中のドライベースでのCO
2濃度に換算すると、0.0999mol%から1mol%までに相当する。また、処理温度は26.7℃に設定した。尚、26.7℃での飽和水蒸気圧は、3.504kPaであるので、フィードガスFG中のドライベースでのCO
2濃度とウェットベースでのCO
2濃度に大きな差はない。
【0094】
サンプル#14の親水性ポリマーは、PAA(Na塩)であり、親水性ポリマー層のゲル重量は、約9mg/cm
2である。サンプル#14のCO
2キャリアは、アミノ酸であるグリシンを使用し、脱プロトン化剤としてCsOHを使用した。イオン液体は添加されていない。
【0095】
図14(A)は、サンプル#14のCO
2パーミアンス及びO
2パーミアンスとCO
2分圧との関係を示し、
図14(B)は、サンプル#14のCO
2/O
2選択性とCO
2分圧との関係を示す。
【0096】
図14(A)及び(B)より、CO
2パーミアンスは、CO
2分圧の上昇とともに低下する傾向が見られるのに対して、O
2パーミアンスは、CO
2分圧に関係なくほぼ一定である。従って、CO
2/O
2選択性は、CO
2分圧の上昇とともに低下する傾向が見られる。本実施形態では、処理対象ガスのCO
2濃度として、3mol%以下を想定しているが、評価5では、0.0999mol%未満と1mol%を超える範囲は測定していない。しかし、CO
2/O
2選択性について見れば、1mol%を超える範囲では、低下の程度が鈍化しているので、CO
2濃度が、例えば2mol%にまで上昇しても、2000前後の高いCO
2/O
2選択性は維持でき、更に、3mol%にまで上昇しても、1000以上の高いCO
2/O
2選択性は維持できるものと推測される。また、0.0999mol%未満の範囲では、10000を超える極めて高いCO
2/O
2選択性が得られることが明らかである。
【0097】
[評価6]
評価6では、供給側及び透過側の相対湿度が上記3項目の膜性能に与える影響を、サンプル#15(本方法で使用するCO
2促進輸送膜の一実施例)を用いてスイープガス法により調べた。上記3項目の膜性能は、CO
2分圧が0.7kPaの場合に、相対湿度が50%、60%、75%の3点で測定し、CO
2分圧が1.01kPaの場合に、相対湿度が50%、60%、70%の3点で測定した。また、処理温度は26.7℃に設定した。
【0098】
サンプル#15の親水性ポリマーは、PVA/PAA塩共重合体(Cs塩)であり、親水性ポリマー層のゲル重量は、約13mg/cm
2である。サンプル#15のCO
2キャリアは、アミノ酸であるグリシンを使用し、脱プロトン化剤として
当量のCsOHを使用した。イオン液体は添加されていない。
【0099】
CO
2分圧が0.7kPaと1.01kPaの場合における、上記3項目の膜性能の測定結果を
図15に示す。
図15(A)は、サンプル#15のCO
2パーミアンス及びO
2パーミアンスと相対湿度との関係を示し、
図15(B)は、サンプル#15のCO
2/O
2選択性と相対湿度との関係を示す。
【0100】
図15(A)及び(B)より、CO
2分圧に関係なく、CO
2パーミアンスとO
2パーミアンスは、相対湿度の上昇とともに増加する傾向が見られ、評価4におけるCO
2パーミアンスとO
2パーミアンスが透過側圧力の増加に伴い増加する結果と符合する。尚、CO
2/O
2選択性は、相対湿度の上昇とともに増加する傾向が見られる。評価6では、相対湿度が75%を超える範囲は測定していないが、CO
2/O
2選択性について見れば、相対湿度が75%〜100%の範囲においても、1000〜4000程度の高いCO
2/O
2選択性は維持できるものと推測される。また、CO
2分圧が0.7kPaと1.01kPaの間では、上記3項目の膜性能の測定結果に大きな差異がない点は、評価5の結果と符合する。
【0101】
[評価7]
評価7では、処理温度(CO
2促進輸送膜の雰囲気温度)が上記3項目の膜性能に与える影響を、評価6と同じサンプル#15を用いてスイープガス法により調べた。上記3項目の膜性能は、CO
2分圧が1.01kPa、供給側及び透過側の相対湿度が60%の場合に、処理温度が、22℃、25℃、26.7℃の3点で測定した。
【0102】
上記3項目の膜性能の測定結果を
図16に示す。
図16(A)は、サンプル#15のCO
2パーミアンス及びO
2パーミアンスと処理温度との関係を示し、
図16(B)は、サンプル#15のCO
2/O
2選択性と処理温度との関係を示す。
【0103】
図16(A)及び(B)より、CO
2パーミアンスとO
2パーミアンスとCO
2/O
2選択性は、何れも、処理温度の上昇とともに増加する傾向が見られる。本実施形態では、処理温度として、15℃〜50℃の温度範囲を想定しているが、評価7では、22℃未満の温度範囲と26.7℃を超える温度範囲は測定していない。しかし、26.7℃を超える温度範囲については、CO
2パーミアンスとCO
2/O
2選択性の両方が、処理温度の上昇とともに増加するので、より膜性能が高くなるので問題はない。また、22℃未満の温度範囲については、膜性能はより低下することは確かであるが、CO
2パーミアンスとCO
2/O
2選択性の低下は、処理温度の低下とともに鈍化する傾向が見られ、逆に、O
2パーミアンスの低下は、処理温度の低下とともに急峻になる傾向が見られるため、CO
2/O
2選択性について見れば、15℃〜22℃の温度範囲においても、2000〜3500程度の高いCO
2/O
2選択性は維持できるものと推測される。
【0104】
以上の評価1〜7の本方法におけるCO
2除去性能の評価結果より、本方法によれば、N
2、O
2、及び3mol%以下の微量のCO
2を含む処理対象ガスから、CO
2をN
2及びO
2に対して選択的に除去して、O
2の損失を抑制しつつ、処理対象ガス中の二酸化炭素濃度を低減することができることが分かる。
【0105】
[評価8]
上記評価1〜7では、CO
2促進輸送膜の膜性能として、CO
2パーミアンス、O
2パーミアンス、及び、CO
2/O
2選択性の3項目を測定したが、評価8では、サンプル#16及び#17を用いて、CO
2パーミアンス、N
2パーミアンス、及び、CO
2/N
2選択性を測定した。当該3項目の膜性能の測定結果を
図17に示す。測定方法及び測定条件は、評価1と同じである。尚、
図17中、当該3項目は、KCO
2、KN
2、及び、α(CO
2/N
2)と表記されている。
【0106】
サンプル#16とサンプル#1は、サンプル#1では、親水性化したPTFE多孔膜上に親水性ポリマー層が形成されているのに対して、サンプル#16では、親水性化したPTFE多孔膜を使用せず、疎水性PTFE多孔膜上に親水性ポリマー層が形成されている点で、相違するだけで、サンプル#16の親水性ポリマー層の組成及びゲル重量は、サンプル#1と同じである。
【0107】
サンプル#16とサンプル#17は、サンプル#16では、親水性ポリマー層中にイオン液体が添加されていないのに対して、サンプル#17では、親水性ポリマー層中に、イオン液体として、テトラメチルアンモニウムグリシネイト([N1111][Gly]、分子量:148.2)が添加されている点で相違するだけで、それ以外は、サンプル#16とサンプル#17は同じである。尚、イオン液体は、親水性ポリマー、グリシン、CsOHの合計重量に対して、5.5wt%の比率で添加されている。
【0108】
サンプル#16とサンプル#17は、CO
2/N
2選択性が、5610と11200であり、高い選択性能を示している。サンプル#16とサンプル#17については、O
2パーミアンス及びCO
2/O
2選択性を測定しておらず、上述の通り、CO
2/N
2選択性からCO
2/O
2選択性は単純には類推できないが、イオン液体を添加したサンプル#17の方が、イオン液体を添加していないサンプル#16に比べて約2倍の高いCO
2/N
2選択性を示しているので、CO
2/O
2選択性についても、サンプル#17の方が、サンプル#16に比べて高くなるものと推測される。この結果は、評価2及び3の結果とは相違するが、イオン液体を適切に選択することで、膜性能の向上が図れることを示していると考えられる。
【0109】
以下、本装置の構成について、簡単に説明する。
【0110】
本装置は、CO
2選択透過膜を用いて、CO
2、N
2、及びO
2を含む処理対象ガスから、CO
2を選択的に除去する装置である。本装置は、人の居住空間、特に、密閉居住空間における二酸化炭素濃度制御に適応可能なように、処理対象ガスに対する処理温度範囲は15℃以上50℃以下に設定されており、また、処理対象ガスはCO
2濃度がドライベースで、0mol%を超え、且つ、3mol%以下、好ましくは、2mol%以下、更に好ましくは、1mol%以下のものを対象としている。
【0111】
本装置は、上述のように、人の居住空間への適応を想定しているため、CO
2除去処理に伴うO
2損失量を極めて低く抑える必要があり、CO
2選択透過膜としては、上記処理温度範囲及び上記CO
2濃度の処理対象ガスに対して、高いCO
2/O
2選択性を発揮し得る、アミノ酸と前記アミノ酸のアミノ基のプロトン化を防止する脱プロトン化剤とイオン液体を含有するゲル状の親水性ポリマーを備えたCO
2促進輸送膜を使用する。親水性ポリマーは、多孔質膜に担持され、膜状の親水性ポリマー層を形成する。
【0112】
本装置は、水蒸気を発生してCO
2促進輸送膜に供給する水蒸気発生装置を備える。但し、水蒸気発生装置は、本装置の処理対象となる処理対象ガス中の水蒸気濃度が、CO
2とアミノ酸との反応に必要な膜中の水分を確保できる程度に高ければ、必ずしも設ける必要はないが、汎用装置としては備えているのが好ましい。水蒸気発生装置は、
図1に示す減圧法による評価装置に設けたバブラー、または、水を加熱して水蒸気を発生する水蒸気発生器等で構成できる。
【0113】
更に、本装置は、CO
2促進輸送膜の透過側圧力を、1kPa以上、CO
2促進輸送膜の透過側の雰囲気温度での飽和水蒸気圧未満に調整する圧力調整装置を備え、CO
2促進輸送膜の透過側圧力を供給側より減圧することで、つまり、上述の減圧法により、CO
2促進輸送膜の供給側と透過側の間にCO
2分圧差を発生させて、処理対象ガス中のCO
2を選択的に透過側に通過させて除去する構成とするのが好ましい。減圧法におけるCO
2促進輸送膜の供給側圧力と透過側圧力の関係については、本方法の説明において既に説明した通りであるので、重複する説明は割愛する。圧力調整装置は、例えば、
図1に示す減圧法による評価装置に設けた真空ポンプと真空計等を備えて、真空計の測定値が所定の圧力範囲となるように、真空ポンプを制御する構成等が使用し得る。
【0114】
また、本装置は、減圧法に代えてスイープガス法を用いて、CO
2促進輸送膜の供給側と透過側の間にCO
2分圧差を発生させて、処理対象ガス中のCO
2を選択的に透過側に通過させて除去する構成とすることも可能である。当該スイープガス法による構成の場合は、上記減圧法による構成の圧力調整装置に代えて、スイープガスをCO
2促進輸送膜の透過側に供給するための、
図2に例示したようなスイープガス供給機構が必要となる。また、本装置は、減圧法とスイープガス法を組み合わせた構成としても良い。
【0115】
本装置で用いるCO
2促進輸送膜の構造及び製造方法は、本方法で用いるCO
2促進輸送膜の説明において既に説明した通りであるので、重複する説明は割愛する。
【0116】
以下、本方法及び本装置の別実施形態について説明する。本方法において、CO
2選択透過膜を透過したCO
2を含む透過ガスは、本装置の処理対象ガスと混合しない系外に廃棄されてもよいし、次工程に供給されてもよい。次工程としては、CO
2還元工程やCO
2固定化工程などが挙げられる。CO
2還元工程では、CO
2還元触媒に透過ガスを供給することで、CO
2還元触媒による透過ガスに含まれるCO
2から還元反応で水を生成することができる。また、CO
2固定化工程では、CO
2吸収液やCO
2吸着材などのCO
2を吸蔵することができる媒体に透過ガスを供給することで、透過ガスに含まれるCO
2
が化学吸収、化学吸着、物理吸着などの作用により固定化することができる。本方法と上記次工程とを組み合わせた場合、本方法は、CO
2選択透過膜を透過したCO
2を含む透過ガスが透過ガス以外のガス(スイープガス)と混合しない減圧法が好ましく、その結果、処理対象ガスよりもCO
2選択透過膜を透過したCO
2を含む透過ガスのCO
2濃度は高くなるため、上記の還元反応、化学
吸収、化学吸着、物理吸着の効率の向上が期待できる。
【0117】
減圧法による本方法とCO
2固定化工程を組み合わせた装置の具体例としては、
図18に示す本装置を拡張した構成が挙げられる。
図18に示すように、該装置は、CO
2選択透過膜15と、所定のCO
2除去能力をCO
2選択透過膜15が発現する減圧度にCO
2選択透過膜15の透過側の圧力を調整する真空ポンプ16と、該真空ポンプ16の下流に接続される、CO
2選択透過膜15を透過した透過ガスに含まれるCO
2を固定化するCO
2固定化装置17を備えて構成される。真空ポンプ16の運転時における真空ポンプ16の吐出側の圧力は略大気圧となることから、真空ポンプ16を経由することで、CO
2選択透過膜15を透過したCO
2を含む透過ガスは略大気圧であり、処理対象ガスよりも透過ガスに含まれるCO
2の分圧の方が高くなる。また、CO
2固定化装置17は、真空ポンプ16の排気量に応じて、圧力が略大気圧を維持するように容積を可変できる容器の中に、CO
2を吸蔵することができる媒体を配置されていることが好ましい。尚、
図18において、CO
2固定化装置17の容器内に配置されているCO
2を吸蔵することができる媒体を、CO
2還元触媒に置き換えると、減圧法による本方法とCO
2還元工程を組み合わせた本装置を拡張した構成になり得る。