特許第6923744号(P6923744)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6923744
(24)【登録日】2021年8月2日
(45)【発行日】2021年8月25日
(54)【発明の名称】硬化物、光学部材、レンズ、及び化合物
(51)【国際特許分類】
   G02B 1/04 20060101AFI20210812BHJP
   G02B 3/00 20060101ALI20210812BHJP
   C08F 20/36 20060101ALI20210812BHJP
【FI】
   G02B1/04
   G02B3/00
   C08F20/36
【請求項の数】14
【全頁数】42
(21)【出願番号】特願2020-506578(P2020-506578)
(86)(22)【出願日】2019年3月13日
(86)【国際出願番号】JP2019010133
(87)【国際公開番号】WO2019176972
(87)【国際公開日】20190919
【審査請求日】2020年8月17日
(31)【優先権主張番号】特願2018-46342(P2018-46342)
(32)【優先日】2018年3月14日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】306037311
【氏名又は名称】富士フイルム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000109
【氏名又は名称】特許業務法人特許事務所サイクス
(72)【発明者】
【氏名】白岩 直澄
(72)【発明者】
【氏名】師岡 直之
【審査官】 藤岡 善行
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2017/115649(WO,A1)
【文献】 特開2017−125009(JP,A)
【文献】 中国特許出願公開第106977527(CN,A)
【文献】 特開2010−059242(JP,A)
【文献】 特開2006−241048(JP,A)
【文献】 特開2014−194411(JP,A)
【文献】 特開平10−307399(JP,A)
【文献】 Chemistry - A European Journal,2017年,23,P.15974-15983
【文献】 Journal of Heterocyclic Chemistry,2010年,Vol.48,P.50-56
【文献】 Angewandte Chemie,1960年,72,P.973-981
【文献】 日本化学雑誌,1959年 7月10日,第80巻第7号,806頁
【文献】 Angewandte Makromolekulare Chemie,1975年,43,P.125-143
【文献】 Supramolecular Chemistry,2012年,Vol.24,No.2,P.101-105
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 1/04
C08F 20/36
G02B 3/00
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式1で表される化合物を含む硬化性組成物を硬化させてなる硬化物であって、波長587nmにおける複屈折Δnが0.00≦Δn≦0.01である硬化物;
【化1】
式中、Arは、置換基を有していてもよいキノキサリン環からなる2価の基又は置換基を有していてもよいキナゾリン環からなる2価の基を表し、
1、L2はそれぞれ独立に、単結合、−O−、−S−、−C(=O)−、−OC(=O)−、−C(=O)O−、−OC(=O)O−、−NR101C(=O)−、−C(=O)NR102−、−OC(=O)NR103−、−NR104C(=O)O−、−SC(=O)−、及び−C(=O)S−からなる群から選択される連結基を表し、R101、R102、R103、R104は、それぞれ独立に、−Sp3−Pol3又はハロゲン原子を表し、
Sp1、Sp2、Sp3はそれぞれ独立に単結合又は2価の連結基を表し、
Pol1、Pol2、Pol3はそれぞれ独立に水素原子又は重合性基を表し、
一般式1で表される化合物は、少なくとも一つの重合性基を有する。
【請求項2】
一般式1で表される化合物を含む硬化性組成物を硬化させてなる硬化物であって、波長587nmにおける複屈折Δnが0.00≦Δn≦0.01である硬化物;
【化2】
式中、Arは一般式2−1〜2−5で表されるいずれかの基を表し、
1、L2はそれぞれ独立に、単結合、−O−、−S−、−C(=O)−、−OC(=O)−、−C(=O)O−、−OC(=O)O−、−NR101C(=O)−、−C(=O)NR102−、−OC(=O)NR103−、−NR104C(=O)O−、−SC(=O)−、及び−C(=O)S−からなる群から選択される連結基を表し、R101、R102、R103、R104は、それぞれ独立に、−Sp3−Pol3又はハロゲン原子を表し、
Sp1、Sp2、Sp3はそれぞれ独立に単結合又は2価の連結基を表し、
Pol1、Pol2、Pol3はそれぞれ独立に水素原子又は重合性基を表し、
一般式1で表される化合物は、少なくとも一つの重合性基を有する
【化3】
一般式2−1〜2−5中、Z1、Z2、Z3、Z4は、それぞれ独立に、水素原子、置換基を有していてもよい炭素数1〜20の脂肪族炭化水素基、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルコキシ基、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルコキシカルボニル基、置換基を有していてもよい炭素数3〜20の脂環式炭化水素基、置換基を有していてもよい炭素数6〜20の芳香族炭化水素基、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、−NR1213、SR12、又は置換基を有していてもよい芳香族複素環を表し、Z1及びZ2は、互いに結合して置換基を有していてもよい芳香族炭化水素環又は置換基を有していてもよい芳香族複素環を形成していてもよく、R12及びR13は、それぞれ独立に水素原子又は置換基を有していてもよい炭素数1〜6のアルキル基を表し、
1、T2,T5、T6は、それぞれ独立に、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、−L6−Sp6−Pol6、置換基を有していてもよい炭素数3〜20の脂環式炭化水素基、置換基を有していてもよい炭素数6〜20の芳香族炭化水素基、置換基を有していてもよい芳香族複素環基、NR1213、又はSR12を表し、T1及びT2は、互いに結合して置換基を有していてもよい芳香族炭化水素環又は置換基を有していてもよい芳香族複素環を形成していてもよく、
6はL1と同義であり、
Sp6は単結合、又は置換基を有していてもよい炭素数1から30の直鎖アルキレン基、及び置換基を有していてもよい炭素数1から30の直鎖アルキレン基において1つもしくは隣接しない2つ以上の−CH2−が−O−、−S−、−C(=O)−、−OC(=O)−、−C(=O)O−、−OC(=O)O−、−NR201C(=O)−、−C(=O)NR202−、−OC(=O)NR203−、−NR204C(=O)O−、−SC(=O)−、又は−C(=O)S−で置換された基からなる群から選択される連結基であり、R201、R202、R203、R204は、それぞれ独立に、−Sp4−Pol4又はハロゲン原子を表し、
Sp4は単結合又は2価の連結基を表し、
Pol4及びPol6は、それぞれ独立にPol1と同義であり、
3、T4は、置換基を有していてもよい炭素数6〜12の2価の芳香族炭化水素基又は置換基を有していてもよい2価の芳香族複素環基を表す。
【請求項3】
Arが一般式2−1〜2−3で表されるいずれかの基である請求項2に記載の硬化物。
【請求項4】
Sp1、Sp2が、単結合、又は置換基を有していてもよい炭素数1から30の直鎖アルキレン基、及び置換基を有していてもよい炭素数1から30の直鎖アルキレン基において1つもしくは隣接しない2つ以上の−CH2−が−O−、−S−、−C(=O)−、−OC(=O)−、−C(=O)O−、−OC(=O)O−、−NR201C(=O)−、−C(=O)NR202−、−OC(=O)NR203−、−NR204C(=O)O−、−SC(=O)−、又は−C(=O)S−で置換された基からなる群から選択される連結基であり、R201、R202、R203、R204は、それぞれ独立に、−Sp4−Pol4又はハロゲン原子を表し、
Sp4は単結合又は2価の連結基を表し、
Pol4は水素原子又は重合性基を表す、請求項1〜3のいずれか一項に記載の硬化物。
【請求項5】
1、L2がいずれも−O−、−OC(=O)−、−OC(=O)O−、又は−O−C(=O)NH−である請求項1〜4のいずれか一項に記載の硬化物。
【請求項6】
前記重合性基がいずれも(メタ)アクリロイルオキシ基である請求項1〜5のいずれか一項に記載の硬化物。
【請求項7】
Pol1−Sp1−L1−及びPol2−Sp2−L2−が同一である請求項1〜6のいずれか一項に記載の硬化物。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか一項に記載の硬化物を含む光学部材。
【請求項9】
請求項1〜7のいずれか一項に記載の硬化物を含むレンズ。
【請求項10】
一般式1で表される化合物;
【化4】
式中、Arは、一般式2−1〜2−5で表されるいずれかの基を表し、
1、L2はそれぞれ独立に、単結合、−O−、−S−、−C(=O)−、−OC(=O)−、−C(=O)O−、−OC(=O)O−、−NR101C(=O)−、−C(=O)NR102−、−OC(=O)NR103−、−NR104C(=O)O−、−SC(=O)−、及び−C(=O)S−からなる群から選択される連結基を表し、R101、R102、R103、R104は、それぞれ独立に、−Sp3−Pol3又はハロゲン原子を表し、
Sp1、Sp2は、置換基を有していてもよい炭素数1から30の直鎖アルキレン基、及び置換基を有していてもよい炭素数1から30の直鎖アルキレン基において1つもしくは隣接しない2つ以上の−CH2−が−O−、−S−、−C(=O)−、−OC(=O)−、−C(=O)O−、−OC(=O)O−、−NR201C(=O)−、−C(=O)NR202−、−OC(=O)NR203−、−NR204C(=O)O−、−SC(=O)−、又は−C(=O)S−で置換された基からなる群から選択される連結基であり、R201、R202、R203、R204は、それぞれ独立に、−Sp4−Pol4又はハロゲン原子を表し、
Sp3、Sp4は単結合又は2価の連結基を表し、
Pol1、Pol2、Pol3、Pol4はそれぞれ独立に水素原子又は式Pol−1〜式Pol−6のいずれかで表される重合性基を表し、
一般式1で表される化合物は、少なくとも一つの重合性基を有する
【化5】
一般式2−1〜2−5中、Z1、Z2、Z3、Z4は、それぞれ独立に、水素原子、置換基を有していてもよい炭素数1〜20の脂肪族炭化水素基、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルコキシ基、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルコキシカルボニル基、置換基を有していてもよい炭素数3〜20の脂環式炭化水素基、置換基を有していてもよい炭素数6〜20の芳香族炭化水素基、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、−NR1213、SR12、又は置換基を有していてもよい芳香族複素環を表し、Z1及びZ2は、互いに結合して置換基を有していてもよい芳香族炭化水素環又は置換基を有していてもよい芳香族複素環を形成していてもよく、R12及びR13は、それぞれ独立に水素原子又は置換基を有していてもよい炭素数1〜6のアルキル基を表し、
1、T2,T5、T6は、それぞれ独立に、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、−L6−Sp6−Pol6、置換基を有していてもよい炭素数3〜20の脂環式炭化水素基、置換基を有していてもよい炭素数6〜20の芳香族炭化水素基、置換基を有していてもよい芳香族複素環基、NR1213、又はSR12を表し、T1及びT2は、互いに結合して置換基を有していてもよい芳香族炭化水素環又は置換基を有していてもよい芳香族複素環を形成していてもよく、
6はL1と同義であり、
Sp6は単結合、又は置換基を有していてもよい炭素数1から30の直鎖アルキレン基、及び置換基を有していてもよい炭素数1から30の直鎖アルキレン基において1つもしくは隣接しない2つ以上の−CH2−が−O−、−S−、−C(=O)−、−OC(=O)−、−C(=O)O−、−OC(=O)O−、−NR201C(=O)−、−C(=O)NR202−、−OC(=O)NR203−、−NR204C(=O)O−、−SC(=O)−、又は−C(=O)S−で置換された基からなる群から選択される連結基であり、R201、R202、R203、R204は、それぞれ独立に、−Sp4−Pol4又はハロゲン原子を表し、
Sp4は単結合又は2価の連結基を表し、
Pol4及びPol6は、それぞれ独立にPol1と同義であり、
3、T4は、置換基を有していてもよい炭素数6〜12の2価の芳香族炭化水素基、又は置換基を有していてもよい2価の芳香族複素環基を表す。
【請求項11】
Arが一般式2−1〜2−3で表されるいずれかの基である請求項10に記載の化合物。
【請求項12】
1、L2がいずれも−O−、−OC(=O)−、−OC(=O)O−、又は−O−C(=O)NH−である請求項10又は11に記載の化合物。
【請求項13】
Pol1−Sp1−L1−及びPol2−Sp2−L2−が同一である請求項10〜12のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項14】
前記重合性基がいずれも(メタ)アクリロイルオキシ基である請求項10〜13のいずれか一項に記載の化合物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、硬化物、光学部材、レンズ、及び化合物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、カメラ、ビデオカメラあるいはカメラ付携帯電話、テレビ電話あるいはカメラ付ドアホンなどの撮像モジュールの光学部材にはガラス材料が用いられていた。ガラス材料は様々な光学特性を備えており、環境耐性に優れるため好ましく用いられてきたが、軽量化や小型化が容易ではなく、加工性や生産性が悪いという欠点を有していた。これに対し、樹脂硬化物は、大量生産が可能であり、加工性にも優れているため、近年、様々な光学部材に用いられるようになってきている。
【0003】
近年、撮像モジュールの小型化に伴い、撮像モジュールに用いられる光学部材を小型化することが求められているが、光学部材を小型化していくと、色収差の問題が生じる。樹脂硬化物を用いた光学部材においては、硬化性組成物に種々の添加物を加えて硬化後の特性を変えることで、アッベ数を調整して色収差の補正を行うことが検討されている。
【0004】
例えば、特許文献1には、4,4’−ビス(アリール)ジフェニルスルホン骨格モノマーを用いて、アッベ数(νd)及び部分分散比(θg,F)が高く、かつ複屈折率が低い色収差補正機能の高い特性を有する成形体、光学素子及び上記成形体を得るための光学用組成物を提供することができることが開示されている。
【0005】
一方、特許文献2には、キノキサリン環基又はキナゾリン環基を有する液晶モノマーが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2014−43565号公報
【特許文献2】特開2017−125009号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、光学部材製造のための、アッベ数(νd)が低く、かつ部分分散比(θg,F)が高い硬化物を提供することを課題とする。特に、特許文献1に記載の硬化物と比較しても部分分散比が高く、特許文献2に記載の硬化物のような複屈折性を示さない硬化物を提供することを課題とする。本発明はまた、高機能の光学部材及びレンズを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは上記課題の解決のために鋭意検討し、キノキサリン環基又はキナゾリン環基を有する化合物を用いることによりアッベ数が低く、かつ高い部分分散比の硬化物を得ることができることを見出した。
すなわち、本発明は以下の<1>〜<15>を提供するものである。
【0009】
<1>一般式1で表される化合物を含む硬化性組成物を硬化させてなる硬化物であって、波長587nmにおける複屈折Δnが0.00≦Δn≦0.01である硬化物;
【0010】
【化1】
【0011】
式中、Arは、キノキサリン環又はキナゾリン環からなる群より選択される環構造を含む2価の基を表し、
、Lはそれぞれ独立に、単結合、−O−、−S−、−C(=O)−、−OC(=O)−、−C(=O)O−、−OC(=O)O−、−NR101C(=O)−、−C(=O)NR102−、−OC(=O)NR103−、−NR104C(=O)O−、−SC(=O)−、及び−C(=O)S−からなる群から選択される連結基を表し、R101、R102、R103、R104は、それぞれ独立に、−Sp−Pol又はハロゲン原子を表し、
Sp、Sp、Spはそれぞれ独立に単結合又は2価の連結基を表し、
Pol、Pol、Polはそれぞれ独立に水素原子又は重合性基を表し、
一般式1で表される化合物は、少なくとも一つの重合性基を有する。
<2>Arが一般式2−1〜2−5で表されるいずれかの基である<1>に記載の硬化物;
【0012】
【化2】
【0013】
一般式2−1〜2−5中、Z、Z、Z、Zは、それぞれ独立に、水素原子、置換基を有していてもよい炭素数1〜20の脂肪族炭化水素基、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルコキシ基、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルコキシカルボニル基、置換基を有していてもよい炭素数3〜20の脂環式炭化水素基、置換基を有していてもよい炭素数6〜20の芳香族炭化水素基、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、−NR1213、SR12、又は置換基を有していてもよい芳香族複素環を表し、Z及びZは、互いに結合して置換基を有していてもよい芳香族炭化水素環又は置換基を有していてもよい芳香族複素環を形成していてもよく、R12及びR13は、それぞれ独立に水素原子又は置換基を有していてもよい炭素数1〜6のアルキル基を表し、
、T,T、Tは、それぞれ独立に、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、−L−Sp−Pol、置換基を有していてもよい炭素数3〜20の脂環式炭化水素基、置換基を有していてもよい炭素数6〜20の芳香族炭化水素基、置換基を有していてもよい芳香族複素環基、NR1213、又はSR12を表し、T及びTは、互いに結合して置換基を有していてもよい芳香族炭化水素環又は置換基を有していてもよい芳香族複素環を形成していてもよく、
はLと同義であり、
Spは単結合、又は置換基を有していてもよい炭素数1から30の直鎖アルキレン基、及び置換基を有していてもよい炭素数1から30の直鎖アルキレン基において1つもしくは隣接しない2つ以上の−CH−が−O−、−S−、−C(=O)−、−OC(=O)−、−C(=O)O−、−OC(=O)O−、−NR201C(=O)−、−C(=O)NR202−、−OC(=O)NR203−、−NR204C(=O)O−、−SC(=O)−、又は−C(=O)S−で置換された基からなる群から選択される連結基であり、R201、R202、R203、R204は、それぞれ独立に、−Sp−Pol又はハロゲン原子を表し、
Spは単結合又は2価の連結基を表し、
Pol及びPolは、それぞれ独立にPolと同義であり、
、Tは、置換基を有していてもよい炭素数6〜12の2価の芳香族炭化水素基又は置換基を有していてもよい2価の芳香族複素環基を表す。
【0014】
<3>Arが一般式2−1〜2−3で表されるいずれかの基である<2>に記載の硬化物。
<4>Sp、Spが、単結合、又は置換基を有していてもよい炭素数1から30の直鎖アルキレン基、及び置換基を有していてもよい炭素数1から30の直鎖アルキレン基において1つもしくは隣接しない2つ以上の−CH−が−O−、−S−、−C(=O)−、−OC(=O)−、−C(=O)O−、−OC(=O)O−、−NR201C(=O)−、−C(=O)NR202−、−OC(=O)NR203−、−NR204C(=O)O−、−SC(=O)−、又は−C(=O)S−で置換された基からなる群から選択される連結基であり、R201、R202、R203、R204は、それぞれ独立に、−Sp−Pol又はハロゲン原子を表し、
Spは単結合又は2価の連結基を表し、
Polは水素原子又は重合性基を表す、<1>〜<3>のいずれかに記載の硬化物。
<5>L、Lがいずれも−O−、−OC(=O)−、−OC(=O)O−、又は−O−C(=O)NH−である<1>〜<4>のいずれかに記載の硬化物。
<6>上記重合性基がいずれも(メタ)アクリロイルオキシ基である<1>〜<5>のいずれかに記載の硬化物。
<7>Pol−Sp−L−及びPol−Sp−L−が同一である<1>〜<6>のいずれかに記載の硬化物。
<8><1>〜<7>のいずれかに記載の硬化物を含む光学部材。
<9><1>〜<7>のいずれかに記載の硬化物を含むレンズ。
<10>一般式1で表される化合物;
【0015】
【化3】
【0016】
式中、Arは、キノキサリン環又はキナゾリン環からなる群より選択される環構造を含む2価の基を表し、
、Lはそれぞれ独立に、単結合、−O−、−S−、−C(=O)−、−OC(=O)−、−C(=O)O−、−OC(=O)O−、−NR101C(=O)−、−C(=O)NR102−、−OC(=O)NR103−、−NR104C(=O)O−、−SC(=O)−、及び−C(=O)S−からなる群から選択される連結基を表し、R101、R102、R103、R104は、それぞれ独立に、−Sp−Pol又はハロゲン原子を表し、
Sp、Spは、単結合、又は置換基を有していてもよい炭素数1から30の直鎖アルキレン基、及び置換基を有していてもよい炭素数1から30の直鎖アルキレン基において1つもしくは隣接しない2つ以上の−CH−が−O−、−S−、−C(=O)−、−OC(=O)−、−C(=O)O−、−OC(=O)O−、−NR201C(=O)−、−C(=O)NR202−、−OC(=O)NR203−、−NR204C(=O)O−、−SC(=O)−、又は−C(=O)S−で置換された基からなる群から選択される連結基であり、R201、R202、R203、R204は、それぞれ独立に、−Sp−Pol又はハロゲン原子を表し、
Sp、Spは単結合又は2価の連結基を表し、
Pol、Pol、Pol、Polはそれぞれ独立に水素原子又は重合性基を表し、
一般式1で表される化合物は、少なくとも一つの重合性基を有する。
<11>Arが一般式2−1〜2−5で表されるいずれかの基である<10>に記載の化合物;
【0017】
【化4】
【0018】
一般式2−1〜2−5中、Z、Z、Z、Zは、それぞれ独立に、水素原子、置換基を有していてもよい炭素数1〜20の脂肪族炭化水素基、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルコキシ基、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルコキシカルボニル基、置換基を有していてもよい炭素数3〜20の脂環式炭化水素基、置換基を有していてもよい炭素数6〜20の芳香族炭化水素基、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、−NR1213、SR12、又は置換基を有していてもよい芳香族複素環を表し、Z及びZは、互いに結合して置換基を有していてもよい芳香族炭化水素環又は置換基を有していてもよい芳香族複素環を形成していてもよく、R12及びR13は、それぞれ独立に水素原子又は置換基を有していてもよい炭素数1〜6のアルキル基を表し、
、T,T、Tは、それぞれ独立に、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、−L−Sp−Pol、置換基を有していてもよい炭素数3〜20の脂環式炭化水素基、置換基を有していてもよい炭素数6〜20の芳香族炭化水素基、置換基を有していてもよい芳香族複素環基、NR1213、又はSR12を表し、T及びTは、互いに結合して置換基を有していてもよい芳香族炭化水素環又は置換基を有していてもよい芳香族複素環を形成していてもよく、
はLと同義であり、
Spは単結合、又は置換基を有していてもよい炭素数1から30の直鎖アルキレン基、及び置換基を有していてもよい炭素数1から30の直鎖アルキレン基において1つもしくは隣接しない2つ以上の−CH−が−O−、−S−、−C(=O)−、−OC(=O)−、−C(=O)O−、−OC(=O)O−、−NR201C(=O)−、−C(=O)NR202−、−OC(=O)NR203−、−NR204C(=O)O−、−SC(=O)−、又は−C(=O)S−で置換された基からなる群から選択される連結基であり、R201、R202、R203、R204は、それぞれ独立に、−Sp−Pol又はハロゲン原子を表し、
Spは単結合又は2価の連結基を表し、
Pol及びPolは、それぞれ独立にPolと同義であり、
、Tは、置換基を有していてもよい炭素数6〜12の2価の芳香族炭化水素基、又は置換基を有していてもよい2価の芳香族複素環基を表す。
【0019】
<12>Arが一般式2−1〜2−3で表されるいずれかの基である<11>に記載の化合物。
<13>L、Lがいずれも−O−、−OC(=O)−、−OC(=O)O−、又は−O−C(=O)NH−である<11>又は<12>に記載の化合物。
<14>Pol−Sp−L−及びPol−Sp−L−が同一である<10>〜<13>のいずれかに記載の化合物。
<15>上記重合性基がいずれも(メタ)アクリロイルオキシ基である<10>〜<14>のいずれかに記載の化合物。
【発明の効果】
【0020】
本発明により、アッベ数(νd)が低く、かつ部分分散比(θg,F)が高い硬化物が提供される。本発明の硬化物により、高機能の光学部材及びレンズを提供することができる。また、本発明によって、アッベ数(νd)が低く、かつ部分分散比(θg,F)が高い硬化物を提供することができる新規化合物が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下において、本発明について詳細に説明する。以下に記載する構成要件の説明は、代表的な実施形態や具体例に基づいてなされることがあるが、本発明はそのような実施形態に限定されない。なお、本明細書において「〜」を用いて表される数値範囲は「〜」前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む範囲を意味する。
【0022】
なお、本明細書中において、“(メタ)アクリレート”はアクリレート及びメタクリレートのいずれか一方又は双方を表し、“(メタ)アクリロイル”はアクリロイル及びメタクリロイルのいずれか一方又は双方を表す。本発明におけるモノマーは、オリゴマー及びポリマーと区別され、重量平均分子量が1000以下の化合物をいう。
【0023】
<硬化物>
本発明の硬化物は、一般式1で表される化合物を含有する硬化性組成物から形成されるものである。本発明の硬化物は一般式1で表される化合物が重合することにより得られるものであるが、本発明の硬化物は未反応の一般式1で表される化合物を含んでいてもよい。
【0024】
一般式1で表される化合物は、その構造に、キノキサリン環、又はキナゾリン環を含む。本発明者らは、一般式1で表される化合物を含有する硬化性組成物から形成された硬化物は、アッベ数(νd)が低く、かつ部分分散比(θg,F)が高いことを見出した。上記化合物は近紫外領域に吸収を持つことから、屈折率の異常分散性を表し、これにより、複合レンズとして用いた場合に色収差補正機能を高めることができると考えられる。本発明者らは、さらに、一般式1で表される化合物を含有する硬化性組成物から形成された硬化物は湿熱環境による屈折率変化が小さいことを見出した。
【0025】
硬化物のアッベ数(νd)及び部分分散比(θg,F)は、カルニュー精密屈折計KPR−2000(株式会社島津デバイス製造製)を用いて測定した値である。具体的には、硬化性組成物を、直径20mm、厚み2mmの透明ガラス型に注入し、酸素濃度1%以下の雰囲気下200℃で加熱することで硬化物を成形し(加熱工程)、この硬化物についてアッベ数(νd)及び部分分散比(θg,F)を測定する。硬化物のアッベ数(νd)及び部分分散比(θg,F)は、下記式により算出される。なお、硬化物を成形する際には、上記加熱工程に代えて紫外線照射工程を採用してもよく、加熱工程と紫外線照射工程の両方を採用してもよい。
νd=(nd−1)/(nF−nC)
θg,F=(ng−nF)/(nF−nC)
ここで、ndは波長587.56nmにおける屈折率、nFは波長486.13nmにおける屈折率、nCは波長656.27nmにおける屈折率、ngは波長435.83nmにおける屈折率を表す。
【0026】
本発明の硬化物のアッベ数は、特に限定されるものではないが、35以下であることが好ましく、30以下であることがより好ましく、29以下であることがさらに好ましく、28以下であることが特に好ましい。また、本発明の硬化物のアッベ数は、特に限定されるものではないが、1以上であることが好ましく、3以上であることがより好ましく、5以上であることがさらに好ましく、7以上であることが特に好ましい。
【0027】
本発明の硬化物の部分分散比θg,Fは特に限定されるものではないが、0.65以上であることが好ましく、0.70以上であることがより好ましく、0.75以上であることが特に好ましい。また、本発明の硬化物の部分分散比θg,Fは特に限定されるものではないが、2以下であることが好ましく、1.8以下であることがより好ましく、1.7以下であることが特に好ましい。
【0028】
本発明の硬化物の波長587nmにおける複屈折Δn(本明細書において、複屈折Δn(587nm)ということがある)は0.00≦Δn≦0.01である。複屈折Δn(587nm)は、0.001以下であることが好ましく、0.001未満であることがさらに好ましい。このように複屈折率が小さい硬化物を撮像モジュールの光学部材に使用することにより、結像位置がずれにくく鮮明な像を得ることができる。複屈折Δn(587nm)の下限値は0.00001又は0.0001であってもよい。
【0029】
硬化物の複屈折Δn(587nm)は以下の方法で求めることができる。フィルム状のサンプルを作製し、複屈折評価装置(例えば、WPA−100、株式会社フォトニックラティス社製)を用いて、サンプルの中心を含む直径10mm円内の複屈折を測定し、波長587nmにおける複屈折の平均値を求めることにより複屈折Δn(587nm)を得ることができる。
【0030】
(一般式1で表される化合物)
本発明の硬化物は、下記一般式1で表される化合物を含む硬化性組成物を硬化させたものである。
【0031】
【化5】
【0032】
式中、Arは、キノキサリン環又はキナゾリン環からなる群より選択される環構造を含む2価の基を表し、
、Lはそれぞれ独立に、単結合、−O−、−S−、−C(=O)−、−OC(=O)−、−C(=O)O−、−OC(=O)O−、−NR101C(=O)−、−C(=O)NR102−、−OC(=O)NR103−、−NR104C(=O)O−、−SC(=O)−、及び−C(=O)S−からなる群から選択される連結基を表し、R101、R102、R103、R104は、それぞれ独立に、−Sp−Pol又はハロゲン原子を表し、
Sp、Sp、Spはそれぞれ独立に単結合又は2価の連結基を表し、
Pol、Pol、Polはそれぞれ独立に水素原子又は重合性基を表し、
一般式1で表される化合物は、少なくとも一つの重合性基を有する。
以下、各置換基について説明する。
【0033】
本明細書において、脂肪族炭化水素基というときは、直鎖もしくは分岐のアルカン、直鎖もしくは分岐のアルケン、又は直鎖もしくは分岐のアルキンから、任意の水素原子を1つ除いて得られる基を表す。本明細書において、脂肪族炭化水素基は好ましくは、直鎖もしくは分岐のアルカンから、任意の水素原子を1つ除いて得られるアルキル基である。アルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、1−メチルブチル基、3−メチルブチル基、ヘキシル基、1−メチルペンチル基、4−メチルペンチル基、ヘプチル基、1−メチルヘキシル基、5−メチルヘキシル基、オクチル基、1−メチルヘプチル基、ノニル基、1−メチルオクチル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基、ノナデシル基、エイコシル基等が挙げられる。
脂肪族炭化水素基(無置換)は、炭素数1〜12のアルキル基が好ましく、メチル基、エチル基が特に好ましい。
【0034】
本明細書において、アルキル基というときは、直鎖もしくは分岐のアルキル基を表す。アルキル基としては、上記の例が挙げられる。アルキル基を含む基(アルコキシ基、アルコキシカルボニル基等)中のアルキル基についても同様である。
また、本明細書において、直鎖アルキレン基としては、上記アルキル基のうち、直鎖アルキル基から末端の炭素に結合する水素原子をそれぞれ1つずつ除いて得られる基が挙げられる。
【0035】
本明細書において、脂環式炭化水素基というとき、シクロアルカンから、任意の水素原子を1つ除いて得られるシクロアルキル基を表す。脂環式炭化水素基の例としては、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、シクロノニル基、シクロデシル基等が挙げられ、炭素数3〜12のシクロアルキル基が好ましい。
【0036】
本明細書において、芳香族炭化水素環は、炭素原子のみにより環を形成している芳香環を意味する。芳香族炭化水素環は、単環であっても縮合環であってもよい。炭素数6〜14の芳香族炭化水素環が好ましい。芳香族炭化水素環の例としては、ベンゼン、ナフチレン、アントラセン、フェナントレン等が挙げられる。本明細書において、芳香族炭化水素環が他の環に結合しているというときは、芳香族炭化水素環は1価又は2価の芳香族炭化水素基として他の環に置換していればよい。
【0037】
本明細書において、1価の基について芳香族炭化水素基というとき、芳香族炭化水素環から、任意の水素原子を1つ除いて得られる1価の基を表す。1価の芳香族炭化水素基としては、炭素数6〜14の芳香族炭化水素基が好ましく、例としては、フェニル基、ビフェニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基、1−アントラセニル基、2−アントラセニル基、3−アントラセニル基、4−アントラセニル基、9−アントラセニル基、1−フェナントリル基、2−フェナントリル基、3−フェナントリル基、4−フェナントリル基、9−フェナントリル基等が挙げられる。これらのうち、フェニル基が好ましい。
【0038】
本明細書において、2価の基について芳香族炭化水素基というとき、上記1価の芳香族炭化水素基から任意の水素原子を1つ除いて得られる2価の基を表す。2価の芳香族炭化水素基の例としては、フェニレン基、ビフェニレン基、ナフチレン基、フェナントリレン基等が挙げられ、フェニレン基が好ましく、1,4−フェニレン基がより好ましい。
【0039】
本明細書において、芳香族複素環は、炭素原子及びヘテロ原子により環が形成されている芳香環を意味する。ヘテロ原子としては酸素原子、窒素原子、及び硫黄原子などが挙げられる。芳香族複素環は、単環であっても縮合環であってもよく、環を構成する元素の数は、5〜20が好ましく、5〜14がより好ましい。環を構成する元素におけるヘテロ原子の数は特に限定されないが1〜3個であることが好ましく、1〜2個であることがより好ましい。芳香族複素環の例としては、フラン、チオフェン、ピロール、イミダゾール、イソチアゾール、イソオキサゾール、ピリジン、ピラジン、キノリン等が挙げられる。本明細書において、芳香族複素環が他の環に結合しているというときは、芳香族複素環は1価又は2価の芳香族複素環基として他の環に置換していればよい。
【0040】
本明細書において、1価の基について芳香族複素環基というとき、芳香族複素環から、任意の水素原子を1つ除いて得られる1価の基を表す。1価の芳香族複素環基の例としては、フリル基、チエニル基、ピロリル基、イミダゾリル基、イソチアゾリル基、イソオキサゾリル基、ピリジル基、ピラジニル基、キノリル基等が挙げられる。これらのうち、フリル基、チエニル基が好ましく、2−フリル基、2−チエニル基がより好ましい。
【0041】
一般式1において、Arで表されるキノキサリン環又はキナゾリン環からなる群より選択される環構造を含む2価の基としては、例えば、置換基を有していてもよいキノキサリン環からなる2価の基、又は置換基を有していてもよいキナゾリン環からなる2価の基が挙げられる。これらの2価の基の結合手の位置は特に限定されず、キノキサリン環又はキナゾリン環上のいずれかの炭素原子、及びキノキサリン環又はキナゾリン環に置換する置換基中のいずれかの原子(好ましくは炭素原子)からなる群より選択される2つであればよい。これらのうち、キノキサリン環又はキナゾリン環上のいずれかの炭素原子からなる群より選択される2つであるか、又は置換基中のいずれかの原子からなる群より選択される2つであることが好ましい。
【0042】
キノキサリン環又はキナゾリン環上での結合手の位置は特に限定されないが、5〜8位から選択される2つであることが好ましく、5位及び8位、又は6位及び7位がより好ましい。
【0043】
結合手がキノキサリン環又はキナゾリン環に置換する置換基にあるとき、上記置換基は置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基又は芳香族複素環基であることが好ましく、置換基を有していてもよい炭素数6〜12の芳香族炭化水素基であることがより好ましく、置換基を有していてもよいフェニル基(結合手を有する状態としては、置換基を有していてもよいフェニレン基)であることがさらに好ましく、フェニル基(結合手を有する状態としては、フェニレン基)であることが特に好ましい。フェニル基に結合手が有る場合は、その位置は4位(キノキサリン環又はキナゾリン環への結合位置を1位とする)にあること(すなわち、1,4−フェニレン基)が好ましい。
【0044】
Arは、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素環及び置換基を有していてもよい芳香族複素環からなる群より選択される基の1つ又は2つがキノキサリン環又はキナゾリン環に直接結合している構造を含むことが好ましく、置換基を有していてもよい炭素数6〜12の芳香族炭化水素環からなる群より選択される基の1つ又は2つがキノキサリン環又はキナゾリン環に直接結合している構造を含むことがより好ましく、ベンゼン環の1つ又は2つがキノキサリン環又はキナゾリン環に直接結合している構造を含むことがさらに好ましい。
【0045】
Arは、下記一般式2−1〜2−5で表されるいずれかの基であることが好ましい。
【化6】
【0046】
一般式2−1〜2−5中、Z、Z、Z、Zは、1価の基を表し、それぞれ独立に、水素原子、置換基を有していてもよい炭素数1〜20の脂肪族炭化水素基、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルコキシ基、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルコキシカルボニル基、置換基を有していてもよい炭素数3〜20の脂環式炭化水素基、置換基を有していてもよい炭素数6〜20の芳香族炭化水素基、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、−NR1213、SR12、又は置換基を有していてもよい芳香族複素環基を表し、Z及びZは、互いに結合して置換基を有していてもよい芳香族炭化水素環又は置換基を有していてもよい芳香族複素環を形成していてもよく、R12及びR13は、それぞれ独立に水素原子又は置換基を有していてもよい炭素数1〜6のアルキル基を表す。
【0047】
なお、一般式2−1〜2−5中の各置換基の説明において、「置換基を有していてもよい」というときの置換基としては、酸クロリド(−COCl)や−OTf(−O−SOCF)等の脱離性の高すぎるもの(分解しやすいもの)でない限り、特に限定されないが、例えば、ハロゲン原子(例えばフッ素原子、塩素原子、臭素原子)、ヒドロキシ基、アミノ基、シアノ基、ニトロ基、ニトロソ基、カルボキシ基、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基、炭素数1〜6のアルコキシカルボニル基、炭素数1〜6のアルキルカルボニルオキシ基、炭素数1〜6のアルキルカルボニル基、炭素数1〜6のアルキルスルフィニル基、炭素数1〜6のアルキルスルホニル基、炭素数1〜6のフルオロアルキル基、炭素数1〜6のアルキルスルファニル基、炭素数1〜6のN−アルキルアミノ基、炭素数2〜12のN,N−ジアルキルアミノ基、炭素数1〜6のN−アルキルスルファモイル基、炭素数2〜12のN,N−ジアルキルスルファモイル基等が挙げられる。これらの置換基のうち、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基、炭素数1〜6のフルオロアルキル基が好ましく、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヒドロキシ基、メチル基、メトキシ基、フルオロメチル基がより好ましい。
【0048】
、Zは、それぞれ独立に、水素原子もしくは置換基を有していてもよい炭素数1〜20の脂肪族炭化水素基であるか、又はZ及びZは、互いに結合して置換基を有していてもよい芳香族炭化水素環を形成していることが好ましく、それぞれ独立に、水素原子もしくはメチル基であるか、又はZ及びZは、互いに結合してベンゼン環を形成していることがより好ましい。
、Zは、それぞれ独立に、水素原子もしくは置換基を有していてもよい炭素数1〜20の脂肪族炭化水素基であることが好ましく、それぞれ独立に、水素原子もしくはメチル基であることがより好ましい。
【0049】
一般式2−1、2−2及び一般式2−4、2−5中、T、T、T、Tは、1価の基を表し、それぞれ独立に、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、−L−Sp−Pol、置換基を有していてもよい炭素数3〜20の脂環式炭化水素基、置換基を有していてもよい炭素数6〜20の芳香族炭化水素基、置換基を有していてもよい芳香族複素環基、NR1213、又はSR12を表す。
【0050】
はLと同義であるが、例示される連結基の記載において、左側がキノキサリン環又はキナゾリン環に結合し、右側がSpに結合するものとする。Lは、単結合、−O−、−OC(=O)−、−C(=O)O−であることが好ましく、単結合であることがより好ましい。
【0051】
Spは単結合、又は置換基を有していてもよい炭素数1から30の直鎖アルキレン基、及び置換基を有していてもよい炭素数1から30の直鎖アルキレン基において1つもしくは隣接しない2つ以上の−CH−が−O−、−S−、−C(=O)−、−OC(=O)−、−C(=O)O−、−OC(=O)O−、−NR201C(=O)−、−C(=O)NR202−、−OC(=O)NR203−、−NR204C(=O)O−、−SC(=O)−、又は−C(=O)S−で置換された基からなる群から選択される連結基である。R201、R202、R203、R204は、それぞれ独立に、−Sp−Pol又はハロゲン原子を表し、Spは単結合又は2価の連結基を表し、Pol及びPolは、それぞれ独立にPolと同義である。
【0052】
Spとしては、置換基を有していてもよい炭素数1から10の直鎖アルキレン基、及び置換基を有していてもよい炭素数1から10の直鎖アルキレン基において1つもしくは隣接しない2つ以上の−CH−が−O−、−C(=O)−、−OC(=O)−、−C(=O)O−、−OC(=O)O−で置換された基からなる群から選択される連結基が好ましい。
Polで示される重合性基としては後述のPolと同じ重合性基が例示され、重合性基としての好ましい範囲も同様である。Polとしては水素原子が好ましい。
【0053】
−L−Sp−Polとしては、例えば、水素原子、−L−Sp−Polで示される基として挙げられる後述の例、ならびに、置換基を有していてもよい炭素数1〜20の脂肪族炭化水素基、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルコキシ基からなる群から選択される基、又は、これらの基の末端において重合性基を有する基が挙げられる。
【0054】
、Tとしては、それぞれ独立に、置換基を有していてもよい炭素数6〜20の芳香族炭化水素基、置換基を有していてもよい芳香族複素環基、置換基を有していてもよい炭素数1〜20の脂肪族炭化水素基、又は−L−Sp−Polで示される基として挙げられる後述の例が好ましく、置換基を有していてもよいフェニル基、ビフェニル基、ナフチル基、炭素数1〜6のアルキル基、フリル基、又はチエニル基がより好ましく、フェニル基、4−ビフェニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基、炭素数1〜6のアルキル基、2−フリル基、又は2−チエニル基がさらに好ましく、フェニル基が特に好ましい。
【0055】
及びTは同じであっても異なっていてもよいが同じであることが好ましい。ただし、T及びTの一方が置換基を有していてもよいフェニル基であり、他方が水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基であることも好ましい。
、Tのうち少なくとも1つは水素原子ではないことが好ましい。また、T及びTのうち少なくとも1つは、置換基を有していてもよい炭素数6〜20の芳香族炭化水素基、又は置換基を有していてもよい芳香族複素環基であることが好ましい。
【0056】
及びTは、互いに結合して置換基を有していてもよい芳香族炭化水素環又は置換基を有していてもよい芳香族複素環を形成していてもよい。このとき、T及びTは、互いに結合して置換基を有していてもよい芳香族炭化水素環を形成していることが好ましく、置換基を有していてもよいベンゼン、置換基を有していてもよいナフチレン、置換基を有していてもよいアントラセン、又は置換基を有していてもよいフェナントレンを形成していることがより好ましく、ベンゼン又はフェナントレンを形成していることがさらに好ましい。
【0057】
、Tは、それぞれ独立に、置換基を有していてもよい炭素数6〜20の芳香族炭化水素基、置換基を有していてもよい芳香族複素環基、置換基を有していてもよい炭素数1〜20の脂肪族炭化水素基、又は−L−Sp−Polで示される基として挙げられる後述の例が好ましく、水素原子、置換基を有していてもよいフェニル基、ビフェニル基、ナフチル基、炭素数1〜6のアルキル基、フリル基、又はチエニル基がより好ましく、水素原子、フェニル基、4−ビフェニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基、炭素数1〜6のアルキル基、2−フリル基、又は2−チエニル基がさらに好ましく、水素原子又はフェニル基が特に好ましい。
【0058】
及びTは同じであっても異なっていてもよい。Tが上記の好ましい置換基のいずれかであり、Tが水素原子であることも好ましい。
、Tのうち少なくとも1つは水素原子ではないことが好ましい。また、T及びTのうち少なくとも1つは置換基を有していてもよい炭素数6〜20の芳香族炭化水素基、又は置換基を有していてもよい芳香族複素環基であることが好ましい。
【0059】
一般式2−3中、T、Tは2価の連結基を表し、置換基を有していてもよい炭素数6〜12の2価の芳香族炭化水素基、又は置換基を有していてもよい2価の芳香族複素環基を表す。T、Tとしては、置換基を有していてもよい炭素数6〜12の2価の芳香族炭化水素基が好ましく、炭素数6〜10の2価の芳香族炭化水素基がより好ましく、フェニレン基がさらに好ましく、1,4−フェニレン基が特に好ましい。
及びTは同じであっても異なっていてもよいが同じであることが好ましい。
【0060】
一般式1におけるArは、一般式2−1〜2−3で表されるいずれかの基であることがより好ましい。合成が容易であり、原料が安価に入手できるためである。
【0061】
一般式1中、L、Lはそれぞれ独立に、単結合、−O−、−S−、−C(=O)−、−OC(=O)−、−C(=O)O−、−OC(=O)O−、−NR101C(=O)−、−C(=O)NR102−、−OC(=O)NR103−、−NR104C(=O)O−、−SC(=O)−、及び−C(=O)S−からなる群から選択される連結基を表す。なお、上記の連結基の記載において、左側がArに結合し、右側がSp又はSpに結合するものとする。R101、R102、R103、R104は、それぞれ独立に、−Sp−Pol又はハロゲン原子を表す。L、Lはそれぞれ独立に、−O−、−OC(=O)−、−C(=O)O−、−OC(=O)O−、−NR101C(=O)−、−C(=O)NR102−、−OC(=O)NR103−、−NR104C(=O)O−であることが好ましく、−O−、−OC(=O)−、−OC(=O)O−、−OC(=O)NR103−であることがより好ましく、−O−であることがさらに好ましい。R101、R102、R103、R104は、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜4のアルキル基又はハロゲン原子であることが好ましい。
及びLは、同一でも異なっていてもよいが、同一であることが好ましい。
【0062】
Sp、Sp、Spはそれぞれ独立に単結合又は2価の連結基を表す。2価の連結基としては、以下の連結基、及び以下の連結基の二つ以上の組み合わせからなる群より選択される連結基が挙げられる:
【0063】
2価の連結基であるSp、Sp、Spの例としては、置換基を有していてもよい直鎖アルキレン基、置換基を有していてもよいシクロアルキレン基、置換基を有していてもよい2価の芳香族炭化水素基、置換基を有していてもよい2価の芳香族複素環基ならびに、置換基を有していてもよい直鎖アルキレン基、置換基を有していてもよいシクロアルキレン基、置換基を有していてもよい2価の芳香環基、及び置換基を有していてもよい2価の芳香族複素環基からなる群より選択される二つ以上の連結基が、単結合、−O−、−S−、−C(=O)−、−OC(=O)−、−C(=O)O−、−OC(=O)O−、−NR201C(=O)−、−C(=O)NR202−、−OC(=O)NR203−、−NR204C(=O)O−、−SC(=O)−、及び−C(=O)S−からなる群より選択される連結基を介して結合した連結基等が挙げられる。
【0064】
2価の連結基であるSp、Sp、Spの好ましい例としては、置換基を有していてもよい直鎖アルキレン基、置換基を有していてもよいシクロアルキレン基、置換基を有していてもよい2価の芳香族炭化水素基、ならびに、置換基を有していてもよい直鎖アルキレン基、置換基を有していてもよいシクロアルキレン基、及び置換基を有していてもよい2価の芳香環基からなる群より選択される二つ以上の連結基が、単結合、−O−、−C(=O)−、−OC(=O)−、−C(=O)O−、−OC(=O)O−、−NR201C(=O)−、及び−C(=O)NR202−からなる群より選択される連結基を介して結合した連結基等が挙げられる。
【0065】
なお、上記の連結基の記載において、左側がL、L又はN(Spの場合)に結合し、右側がPol、Pol又はPolに結合するものとする。
201、R202、R203、R204は、それぞれ独立に、−Sp−Pol又はハロゲン原子を表す。Sp及びPolは、それぞれSp及びPolと同義であり、好ましい範囲も同様である。R201、R202、R203、R204は、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜4のアルキル基又はハロゲン原子であることが好ましい。
【0066】
Sp、Sp、Sp中の置換基について「置換基を有していてもよい」というときの置換基は、酸クロリド(−COCl)や−OTf(−O−SOCF)等の脱離性の高すぎるもの(分解しやすいもの)でない限り、特に限定されないが、例えば、アルキル基、シクロアルキル基、アルコキシ基、アシル基、アシルオキシ基、アルコキシカルボニル基、アミド基、アミノ基、ハロゲン原子、ニトロ基、及びシアノ基ならびに、上記の置換基を2つ以上組み合わせて構成される基からなる群から選択される置換基が挙げられる。置換基は−Sp−Polで表される基であってもよい。Sp及びPolは、それぞれSp及びPolと同義であり、好ましい範囲も同様である。置換基の数は特に限定されず、置換基を1〜4個有していてもよい。2個以上の置換基を有するとき、2個以上の置換基は互いに同一であっても異なっていてもよい。
【0067】
Sp、Spで表される2価の連結基としては、それぞれ独立に、置換基を有していてもよい炭素数1から30の直鎖アルキレン基、及び置換基を有していてもよい炭素数1から30の直鎖アルキレン基において1つ又は隣接しない2つ以上の−CH−が−O−、−S−、−C(=O)−、−OC(=O)−、−C(=O)O−、−OC(=O)O−、−NR201C(=O)−、−C(=O)NR202−、−OC(=O)NR203−、−NR204C(=O)O−、−SC(=O)−、又は−C(=O)S−で置換された基からなる群から選択される連結基が好ましい。このようにSp、Spが主鎖に環状基を有していない連結基である化合物を用いることにより、硬化物の複屈折Δn(587nm)を0.00≦Δn(587nm)≦0.01に調整することが容易になる。
【0068】
Sp及びSpは同一でも異なっていてもよいが、同一であることが好ましい。
Sp及びSp中の炭素数1から30の直鎖アルキレン基において−CH−が上記の−O−、−S−、−C(=O)−、−OC(=O)−、−C(=O)O−、−OC(=O)O−、−NR201C(=O)−、−C(=O)NR202−、−OC(=O)NR203−、−NR204C(=O)O−、−SC(=O)−、及び−C(=O)S−からなる群より選択される他の2価の基に置換されているとき、置換された他の2価の基はL又はLに直接結合していないことが好ましい。すなわち、上記の他の2価の基に置換された部位はSpのL側末端及びSpのL側末端ではないことが好ましい。
【0069】
Sp、Spで表される2価の連結基としては、それぞれ独立に、置換基を有していてもよい炭素数1から20の直鎖アルキレン基、及び置換基を有していてもよい炭素数1から20の直鎖アルキレン基において1つ又は隣接しない2つ以上の−CH−が−O−、−C(=O)−、−OC(=O)−、−C(=O)O−、−OC(=O)O−、−NR201C(=O)−、−C(=O)NR202−、−OC(=O)NR203−、−NR204C(=O)O−で置換された基からなる群から選択される連結基がより好ましく、置換基を有していてもよい炭素数1から10の直鎖アルキレン基、及び置換基を有していてもよい炭素数1から10の直鎖アルキレン基において1つ又は隣接しない2つ以上の−CH−が−O−、−C(=O)−、−OC(=O)−、−C(=O)O−で置換された基からなる群から選択される連結基がさらに好ましく、置換基を有していないか、又はメチル基を置換基として有する炭素数1から10の直鎖アルキレン基、及び置換基を有していないか、又はメチル基を置換基として有する炭素数1から10の直鎖アルキレン基において1つ又は隣接しない2つ以上の−CH−が−O−、−C(=O)−、−OC(=O)−、−C(=O)O−で置換された基からなる群から選択される連結基が特に好ましい。
【0070】
Spで表される2価の連結基としては、単結合、又は置換基を有していてもよい炭素数1から10の直鎖アルキレン基が好ましく、置換基を有していてもよい炭素数1から5の直鎖アルキレン基がより好ましく、置換基を有していてもよい炭素数1から3の直鎖アルキレン基がさらに好ましく、無置換の直鎖アルキレン基が特に好ましい。
【0071】
Pol、Pol、Polは、それぞれ独立に水素原子又は重合性基を表す。重合性基としては、例えば以下の式Pol−1〜式Pol−6で表される重合性基が挙げられる。
【0072】
【化7】
【0073】
これらのうち、(メタ)アクリロイルオキシ基(Pol−1、Pol−2)が好ましい。
重合性基Pol又はPolのいずれか一方は(メタ)アクリロイルオキシ基であることが好ましく、双方が(メタ)アクリロイルオキシ基であることがより好ましい。
Pol及びPolは同一であっても異なっていてもよいが、同一であることが好ましい。
【0074】
一般式1で表される化合物は、少なくとも一つの重合性基を有する。一般式1で表される化合物は、少なくとも二つの重合性基を有することが好ましい。
【0075】
−Sp−Pol及び−Sp−Polとしては、それぞれ独立に、水素原子又は置換もしくは無置換の炭素数1〜4のアルキル基が好ましく、水素原子又は無置換の炭素数1〜4のアルキル基がより好ましい。
【0076】
Pol−Sp−L−又はPol−Sp−L−の具体的な構造の例としては、以下の構造が挙げられる。
なお、Pol−Sp−L−及びPol−Sp−L−は同一であっても異なっていてもよいが、同一であることが好ましい。
【0077】
【化8】
【0078】
なお、本明細書において、以下の構造は、エチレン基のいずれか一方の炭素にメチル基がそれぞれ結合した2つの部分構造が混在していることを示す。
【0079】
【化9】
【0080】
このように、一般式1で表される化合物では、直鎖アルキレン基に置換基が置換した構造を有している場合、その置換基の置換位置が相違する構造異性体が存在しうる。一般式1で表される化合物は、このような構造異性体の混合物であってもよい。
【0081】
一般式1で表される化合物は非液晶性の化合物であることが好ましい。
【0082】
以下において、本発明の硬化性組成物に好ましく用いられる一般式1で表される化合物の具体例を列挙するが、以下の化合物に限定されるものではない。なお、以下の構造式におけるMeはメチル基、Etはエチル基、iPrはi−プロピル基、nPrはn−プロピル基、nBuはn−ブチル基、tBuはt−ブチル基を表す。
【0083】
【化10】
【0084】
【化11】
【0085】
【化12】
【0086】
【化13】
【0087】
【化14】
【0088】
【化15】
【0089】
一般式1で表される化合物は、1個又は2個以上の不斉炭素を有する場合があるが、このような不斉炭素の立体化学についてはそれぞれ独立して(R)体又は(S)体のいずれかをとることができる。また、式(A)で表される化合物は光学異性体又はジアステレオ異性体などの立体異性体の混合物であってもよい。すなわち、式(A)で表される化合物は任意の一種の立体異性体であってもよく、立体異性体の任意の混合物であってもよく、ラセミ体であってもよい。
【0090】
硬化性組成物中における一般式1で表される化合物の含有量は、硬化性組成物の全質量に対して、30〜99質量%であることが好ましく、35質量%〜98質量%であることがより好ましく、40〜96質量%であることがさらに好ましい。一般式1で表される化合物の含有量を上記範囲内とすることにより、所定のアッベ数を有する硬化物において、予測される部分分散比(θg,F)よりも高い部分分散比(θg,F)が達成されやすくなる。
【0091】
硬化性組成物中には、一般式1で表される化合物が2種以上含有されていてもよい。一般式1で表される化合物が2種以上含有されている場合は、合計の含有量が上記範囲内であることが好ましい。
【0092】
(その他の成分)
本発明の硬化性組成物は、一般式1で表される化合物の他に、さらにその他の成分を含んでいてもよい。その他の成分としては、具体的には、例えば、(メタ)アクリレートモノマー、光ラジカル重合開始剤及び熱ラジカル重合開始剤から選択される少なくとも1種等が挙げられる。
【0093】
<(メタ)アクリレートモノマー>
硬化性組成物は、(メタ)アクリレートモノマーを含んでもよい。(メタ)アクリレートモノマーは、分子中に2つ以上の(メタ)アクリロイル基を有する多官能(メタ)アクリレートモノマーであってもよく、分子中に1つの(メタ)アクリロイル基を有する単官能(メタ)アクリレートモノマーであってもよい。
(メタ)アクリレートモノマーの具体例としては、特開2012−107191号公報の段落0037〜0046に記載の(メタ)アクリレートモノマーが挙げられる。
【0094】
本発明で用いられる(メタ)アクリレートモノマーとしては、単官能であっても多官能であってもよく、例えば、以下の、モノマー1(フェノキシエチルアクリレート)、モノマー2(ベンジルアクリレート)、モノマー3(トリシクロデカンジメタノールジアクリレート)又はモノマー4(ジシクロペンタニルアクリレート)などを挙げることができる。(メタ)アクリレートモノマーの分子量は100〜500であることが好ましい。
【0095】
【化16】
【0096】
(メタ)アクリレートモノマーの入手方法については特に制限は無く、商業的に入手してもよく、合成により製造してもよい。商業的に入手する場合は、例えば、ビスコート#192 PEA(モノマー1)(大阪有機化学工業株式会社製)、ビスコート#160 BZA(モノマー2)(大阪有機化学工業株式会社製)、A−DCP(モノマー3)(新中村化学工業株式会社製)、FA−513AS(モノマー4)(日立化成工業株式会社製)を好ましく用いることができる。
【0097】
硬化性組成物が(メタ)アクリレートモノマーを含有する場合、(メタ)アクリレートモノマーの含有量は、硬化性組成物の全質量に対して、1〜80質量%であることが好ましく、2〜50質量%であることがより好ましく、3〜40質量%であることがさらに好ましい。硬化性組成物中の(メタ)アクリレートモノマー量を調整して硬化物が熱変化時の応力を緩和する機能を調整することができる。
【0098】
<ラジカル重合性基を側鎖に有する重合体>
一般式1で表される化合物を含む硬化性組成物は、上述した化合物とは別に、ラジカル重合性基を側鎖に有する重合体をさらに含んでもよい。ラジカル重合性基を側鎖に有する重合体は硬化性組成物の粘度を高める働きをするため、増粘剤もしくは増粘ポリマーと呼ぶこともできる。ラジカル重合性基を側鎖に有する重合体は、硬化性組成物の粘度の調整のために添加することができる。
【0099】
ラジカル重合性基を側鎖に有する重合体は、単独重合体であってもよく、共重合体であってもよい。中でも、ラジカル重合性基を側鎖に有する重合体は共重合体であることが好ましい。ラジカル重合性基を側鎖に有する重合体が共重合体である場合は、少なくとも一方の共重合成分がラジカル重合性基を有していればよい。また、ラジカル重合性基を側鎖に有する重合体が共重合体である場合は、側鎖にラジカル重合性基を有する単量体単位と、側鎖にアリール基を有する単量体単位を含む共重合体であることがより好ましい。
【0100】
ラジカル重合性基としては、(メタ)アクリレート基、ビニル基、スチリル基、アリル基等を挙げることができる。ラジカル重合性基を側鎖に有する重合体には、ラジカル重合性基を有する繰り返し単位が、5〜100質量%含まれていることが好ましく、10〜90質量%含まれていることがより好ましく、20〜80質量%含まれていることがさらに好ましい。
【0101】
以下において、本発明に好ましく用いられるラジカル重合性基を側鎖に有する重合体の具体例を列挙するが、ラジカル重合性基を側鎖に有する重合体は以下の構造に限定されるものではない。以下に示す具体例はいずれも共重合体であり、それぞれ2つ又は3つ近接して記載される構造単位を含むものである。例えば、最も上に記載されている具体例はメタクリル酸アリル−メタクリル酸ベンジルの共重合体である。
以下の構造式において、Ra及びRbは、それぞれ独立に、水素又はメチル基を表す。なお、1つのポリマー中における複数のRaは同一であっても、異なっていてもよい。また、nは0〜10の整数を表し、0〜2であることが好ましく、0又は1であることがより好ましい。
【0102】
【化17】
【0103】
【化18】
【0104】
ラジカル重合性基を側鎖に有する重合体の分子量(重量平均分子量)は、1,000〜10,000,000であることが好ましく、5,000〜300,000であることがより好ましく、10,000〜200,000であることがさらに好ましい。また、ラジカル重合性基を側鎖に有する重合体のガラス転移温度は、50〜400℃であることが好ましく、70〜350℃であることがより好ましく、100〜300℃であることがさらに好ましい。
【0105】
ラジカル重合性基を側鎖に有する重合体の含有量は、硬化性組成物の全質量に対して、40質量%以下であることが好ましく、30質量%以下であることがより好ましく、25質量%以下であることがさらに好ましい。なお、ラジカル重合性基を側鎖に有する重合体の含有量は、0質量%であってもよく、ラジカル重合性基を側鎖に有する重合体を添加しない態様も好ましい。
【0106】
(重合開始剤)
一般式1で表される化合物を含む硬化性組成物は、熱ラジカル重合開始剤及び光ラジカル重合開始剤から選択される少なくとも1種を含んでいることが好ましい。
【0107】
<熱ラジカル重合開始剤>
硬化性組成物は、熱ラジカル重合開始剤を含むことが好ましい。この作用によって、硬化性組成物を熱重合することにより、耐熱性が高い硬化物を成形することができる。
【0108】
熱ラジカル重合開始剤としては、具体的には以下の化合物を用いることができる。例えば、1,1−ジ(t−ヘキシルペルオキシ)シクロヘキサン、1,1−ジ(t−ブチルペルオキシ)シクロヘキサン、2,2−ジ(4,4−ジ−(t−ブチルペルオキシ)シクロヘキシル)プロパン、t−ヘキシルペルオキシイソプロピルモノカーボネート、t−ブチルペルオキシ−3,5,5−トリメチルヘキサノエート、t−ブチルペルオキシラウレート、ジクミルパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、t−ブチルペルオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ヘキシルペルオキシ−2−エチルヘキサノエート、クメンハイドロパーオキサイド、t−ブチルハイドロパーオキサイド、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキシル、2,3−ジメチル−2,3−ジフェニルブタン等を挙げることができる。
【0109】
熱ラジカル重合開始剤の含有量は、硬化性組成物の全質量に対して、0.01〜10質量%であることが好ましく、0.05〜5質量%であることがより好ましく、0.05〜2質量%であることがさらに好ましい。
【0110】
<光ラジカル重合開始剤>
硬化性組成物は、光ラジカル重合開始剤を含むことが好ましい。光ラジカル重合開始剤としては、具体的には以下の化合物を用いることができる。例えば、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルホスフィンオキシド、ビス(2,6−ジメチルベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルホスフィンオキシド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルホスフィンオキシド、ビス(2,6−ジクロルベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルホスフィンオキシド、1−フェニル−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、1−(4−イソプロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、1,2−ジフェニルエタンジオン、メチルフェニルグリオキシレート、1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン、2−ヒロドキシ−1−{4−[4−(2−ヒドロキシ−2−メチル−プロピオニル)−ベンジル]フェニル}−2−メチル−プロパン−1−オン、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、2−メチル−1−(4−メチルチオフェニル)−2−モルフォリノプロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン−1、2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニル−ホスフィンオキサイド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルホスフィンオキサイド等を挙げることができる。
【0111】
中でも、本発明では、光ラジカル重合開始剤として、BASF社製、イルガキュア184(1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン)、イルガキュア819(ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルホスフィンオキサイド)、イルガキュア651(2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン)、1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン、2−メチル−1−(4−メチルチオフェニル)−2−モルフォリノプロパン−1−オンを好ましく用いることができる。
【0112】
光ラジカル重合開始剤の含有量は、硬化性組成物の全質量に対して、0.01〜5.0質量%であることが好ましく、0.05〜1.0質量%であることがより好ましく、0.05〜0.5質量%であることがさらに好ましい。
なお、硬化性組成物は、光ラジカル重合開始剤と熱ラジカル重合開始剤の両方を含むことが好ましく、この場合、光ラジカル重合開始剤と熱ラジカル重合開始剤の合計含有量は、硬化性組成物の全質量に対して、0.01〜5質量%であることが好ましく、0.05〜1.0質量%であることがより好ましく、0.05〜0.5質量%であることがさらに好ましい。
【0113】
<その他の添加剤等>
本発明の趣旨に反しない限りにおいて、一般式1で表される化合物を含む硬化性組成物は上述した成分以外のポリマーやモノマー、分散剤、可塑剤、熱安定剤、離型剤等の添加剤を含んでいてもよい。
【0114】
一般式1で表される化合物を含む硬化性組成物の粘度は、20,000mPa・s以下であることが好ましく、15,000mPa・s以下であることがより好ましく、13,000mPa・s以下であることがさらに好ましく、10,000mPa・s以下であることが特に好ましい。硬化性組成物の粘度を上記範囲内とすることにより、硬化物を成形する際のハンドリング性を高め、高品質な硬化物を形成することができる。なお、硬化性組成物の粘度は、2,000mPa・s以上であることが好ましく、3,000mPa・s以上であることがより好ましく、4,000mPa・s以上であることがさらに好ましく、5,000mPa・s以上であることが特に好ましい。
【0115】
(硬化物の製造方法)
硬化物の製造方法は、上述した硬化性組成物を光硬化する工程及び/又は熱硬化する工程を含む。中でも、硬化物の製造方法は、硬化性組成物に光照射するか又は硬化性組成物を加熱することによって半硬化物を形成する工程と、得られた半硬化物に光照射するか又は半硬化物を加熱することによって硬化物を形成する工程と、を含むことが好ましい。
【0116】
<半硬化物を形成する工程>
半硬化物を形成する工程は転写工程を含むことが好ましい。転写工程は、上述した硬化性組成物に金型を押し当てる工程である。転写工程では、一対の金型の一方に注入された硬化性組成物に他方の金型を押し当てて硬化性組成物を押し広げる。
【0117】
硬化物の製造方法で用いる金型は、窒化クロム処理が施されたものであることが好ましい。これにより、後工程で行う離型工程で、良好な金型離型性を得ることができ、光学部材の製造効率を高めることができる。
【0118】
窒化クロム処理としては、例えば金型表面に窒化クロム膜を成膜する方法を挙げることができる。金型表面に窒化クロム膜を製膜する方法としては、例えばCVD(Chemical Vapor Deposition)法とPVD(Physical Vapor Deposition)法とがある。CVD法は、クロムを含む原料ガスと窒素を含む原料ガスとを高温で反応させて基体表面に窒化クロム膜を形成する方法である。また、PVD法は、アーク放電を利用して基体表面に窒化クロム膜を形成する方法(アーク式真空蒸着法)である。このアーク式真空蒸着法は、真空容器内に例えばクロムよりなる陰極(蒸発源)を配置し、陰極と真空容器の壁面との間でトリガを介してアーク放電を起こさせ、陰極を蒸発させると同時にアークプラズマによる金属のイオン化を図り、基体に負の電圧をかけておき、かつ真空容器に反応ガス(例えば窒素ガス)を数10mTorr(1.33Pa)程度入れることにより、イオン化した金属と反応ガスを基体の表面で反応させて化合物の膜を作るという方法である。本発明における金型表面の窒化クロム処理は、上記CVD法、又はPVD法により実施されている。
【0119】
ここで、金型は、一般的に2つの金型を組み合わせて内容物に加圧しながら加熱することができるようになっており、金型に低粘度の硬化性組成物を注入すると、成形型クリアランスへの漏れの原因となる。このため、金型に注入される硬化性組成物は、一定以上の粘度を有していることが好ましい。硬化性組成物の粘度を調整するために、硬化性組成物に上述したラジカル重合性基を側鎖に有する重合体を添加してもよい。
【0120】
金型を押し当てる工程の後には、半硬化物を形成する工程が設けられる。半硬化物は、金型内に注入された硬化性組成物を半硬化することで得られる。半硬化物を形成する工程では、光照射又は加熱を行う。本明細書では、このような工程を半硬化工程と呼ぶこともできる。
【0121】
半硬化工程では、本発明の硬化性組成物に対して光照射及び加熱のうち少なくとも一方を行う。半硬化において、光照射を行なった場合であっても加熱を行なった場合であっても、最終的に得られる硬化物のアッベ数、及び部分分散比(θg,F)には通常差異がない。半硬化工程では、25℃、周波数10Hzにおける複素粘度が10〜10mPa・sの半硬化物を形成することが好ましい。
【0122】
ここで、本明細書中において「半硬化物」とは、硬化性組成物を重合したものであり、完全に固体となっておらず、ある程度流動性を有する状態の物を意味する。硬化性組成物の重合体の、25℃、周波数10Hzにおける複素粘度が10〜10mPa・sである場合、その重合体は半硬化物である。すなわち、25℃、周波数10Hzにおける複素粘度の上限値として1.0×10mPa・s未満の物までを半硬化物とみなせる。一方、「硬化物」とは、硬化性組成物を重合により硬化させたものであり、完全に固体となっている状態の物を意味する。
【0123】
光照射に用いられる光は、紫外線又は可視光線であることが好ましく、紫外線であることがより好ましい。例えばメタルハライドランプ、低圧水銀ランプ、高圧水銀ランプ、超高圧水銀ランプ、殺菌ランプ、キセノンランプ、LED(Light Emitting Diode)光源ランプなどが好適に使用される。光照射時の雰囲気は、空気又は不活性ガス置換雰囲気であることが好ましく、酸素濃度1%以下になるまで空気を窒素置換した雰囲気であることがより好ましい。
【0124】
半硬化工程において、加熱半硬化工程を設ける場合、加熱半硬化は、加熱後の半硬化物の25℃、周波数10Hzにおける複素粘度が、10〜10mPa・sとなるように行うことが好ましい。
【0125】
本発明は、上述した方法で製造される半硬化物に関するものであってもよい。このような半硬化物は、後述する硬化物の製造方法に好ましく用いることができる。ここで、半硬化物の複素粘度の好ましい範囲は、上述した半硬化物を形成する工程における半硬化物の複素粘度の好ましい範囲と同様である。
【0126】
半硬化物には、光照射工程後において、光ラジカル重合開始剤が全て消費されていて全く含まれていなくてもよく、光ラジカル重合開始剤が残留していてもよい。
【0127】
また、半硬化物のガラス転移温度は、−150〜0℃であることが好ましく、−50〜0℃であることがより好ましく、−20〜0℃であることが特に好ましい。
【0128】
<硬化物を形成する工程>
硬化物を形成する工程は、半硬化物を成形型に入れ加圧変形し、加熱して熱重合させるか、もしくは光照射を行うことで光重合させることにより硬化物を得る重合工程を含むことが好ましい。本明細書では、このような工程を硬化工程と呼ぶこともできる。なお、硬化物を形成する工程における光照射の条件と加熱条件は、上述した半硬化工程における条件と同様である。
【0129】
硬化工程が熱重合工程である場合、重合工程で用いられる成形型のことを、熱成形用成形型とも言う。熱成形用成形型は、一般に2つの成形型を組み合わせて内容物に加圧しながら加熱することができる構成となっていることが好ましい。また、硬化物の製造方法では、硬化物を得る熱重合工程において、成形型として金型を用いることがより好ましい。このような熱成形用成形型としては、例えば、特開2009−126011号公報に記載のものを用いることができる。また、金型は、窒化クロム処理が施されたものであることが好ましい。
【0130】
熱重合工程では、成形型に入れた半硬化物を、加圧変形し、加熱して熱重合させて硬化物を得る。ここで、加圧変形と加熱は同時に行ってもよく、加圧変形した後で加熱を行ってもよく、加熱した後で加圧変形を行ってもよいが、その中でも加圧変形と加熱を同時に行うことが好ましい。また、加圧変形と加熱を同時に行った上で、加圧が安定してからさらに高温に加熱することも好ましい。
【0131】
熱重合工程では、半硬化物を150℃以上の温度で加熱して硬化させ、硬化物を得る。
加熱温度は、150℃以上であり、160〜270℃であることが好ましく、165〜250℃であることがより好ましく、170〜230℃であることがさらに好ましい。
この硬化工程では、加熱を行うとともに加圧変形を行うことが好ましい。これにより金型内面の反転形状を硬化物に精度よく転写することができる。
【0132】
加圧変形における圧力は、0.098MPa〜9.8MPaであることが好ましく、0.294MPa〜4.9MPaであることがより好ましく、0.294MPa〜2.94MPaであることが特に好ましい。
熱重合の時間は、30〜1000秒であることが好ましく、30〜500秒であることがより好ましく、60〜300秒であることが特に好ましい。熱重合時の雰囲気は、空気又は不活性ガス置換雰囲気であることが好ましく、酸素濃度1%以下になるまで窒素置換した雰囲気であることがより好ましい。
【0133】
硬化工程の後には、離型工程が設けられる。硬化工程で熱重合を行った場合、離型工程では、150〜250℃の温度範囲で硬化物から金型を引き離すことが好ましい。離型工程における温度を上記範囲内とすることにより、硬化物から金型を容易に引き離すことができ、製造効率を高めることができる。
【0134】
以上、本発明の硬化物の製造方法の一例について説明したが、本発明の構成はこれに限るものではなく、本発明を逸脱しない範囲で適宜変更が可能である。例えば、転写工程と半硬化工程で用いた金型を、そのまま硬化工程で用いてもよく、半硬化工程を行った後、半硬化物から金型を引き離し、この半硬化物を別の金型(熱成形用成形型)に移動させて硬化工程を行ってもよい。この場合、半硬化工程及び硬化工程で用いる金型には上述したクロム処理が施されていることが好ましい。
また、半硬化工程で、金型内の硬化性組成物に光照射を行うとともに、加熱を行うようにしてもよい。これにより、所望の硬化度を有する半硬化物を確実に得ることができる。
【0135】
(半硬化物)
半硬化物は、上述した硬化性組成物を半硬化することで形成することができる。半硬化物は、上述した半硬化物の製造方法によって製造されたものであることが好ましい。また、半硬化物は、25℃、周波数10Hzにおける複素粘度が10〜10mPa・sであることが好ましい。
本発明の硬化物は、上述した半硬化物を硬化することで形成されたものであってもよい。
【0136】
(サイズ)
本発明の硬化物は、最大厚みが0.1〜10mmであることが好ましい。最大厚みは、より好ましくは0.1〜5mmであり、特に好ましくは0.15〜3mmである。本発明の硬化物は、最大直径が1〜1000mmの円形状のものであることが好ましい。最大直径は、より好ましくは2〜200mmであり、特に好ましくは2.5〜100mmである。
【0137】
(光学部材)
本発明は、上述した硬化物を含む光学部材に関するものでもある。本発明の硬化物は、光学特性に優れた成形体であるため、光学部材に好ましく用いられる。本発明の光学部材の種類は、特に制限されない。特に、硬化性組成物の優れた光学特性を利用した光学部材、特に光を透過する光学部材(いわゆるパッシブ光学部材)として好適に利用することができる。このような光学部材を備えた光学機能装置としては、例えば、各種ディスプレイ装置(液晶ディスプレイやプラズマディスプレイ等)、各種プロジェクタ装置(OHP(Overhead projector)、液晶プロジェクタ等)、光ファイバー通信装置(光導波路、光増幅器等)、カメラやビデオ等の撮影装置等が例示される。
【0138】
また、光学機能装置に用いられるパッシブ光学部材としては、例えば、レンズ、プリズム、プリズムシート、パネル(板状成形体)、フィルム、光導波路(フィルム状やファイバー状等)、光ディスク、LEDの封止剤等が例示される。このようなパッシブ光学部材には、必要に応じて任意の被覆層、例えば摩擦や摩耗による塗布面の機械的損傷を防止する保護層、無機粒子や基材等の劣化原因となる望ましくない波長の光線を吸収する光線吸収層、水分や酸素ガス等の反応性低分子の透過を抑制あるいは防止する透過遮蔽層、防眩層、反射防止層、低屈折率層等や、任意の付加機能層が設けられてもよい。任意の被覆層の具体例としては、無機酸化物コーティング層からなる透明導電膜やガスバリア膜、有機物コーティング層からなるガスバリア膜やハードコート膜等が挙げられる。コーティング層を形成するためのコーティング法としては、真空蒸着法、CVD法、スパッタリング法、ディップコート法、スピンコート法等公知のコーティング法を用いることができる。
【0139】
(応用例)
本発明の硬化物から得られた光学部材は、特にレンズ基材に好ましく用いられる。本発明の硬化性組成物を用いて製造されたレンズ基材は低アッベ数を有し、好ましくは、高屈折性、光線透過性、軽量性を併せ持ち、光学特性に優れている。また、硬化性組成物を構成するモノマーの種類を適宜調整することにより、レンズ基材の屈折率を任意に調節することが可能である。
なお、本明細書中において「レンズ基材」とは、レンズ機能を発揮することができる単一部材を意味する。レンズ基材の表面や周囲には、レンズの使用環境や用途に応じて膜や部材を設けることができる。例えば、レンズ基材の表面には、保護膜、反射防止膜、ハードコート膜等を形成することができる。また、ガラスレンズ基材や、プラスチックレンズ基材に積層させた複合レンズにすることができる。さらにレンズ基材の周囲を基材保持枠などに嵌入して固定することもできる。但し、これらの膜や枠などは、レンズ基材に付加される部材であり、本明細書中でいうレンズ基材そのものとは区別される。
【0140】
レンズ基材をレンズとして利用するに際しては、レンズ基材そのものを単独でレンズとして用いてもよいし、上述した膜や枠、その他レンズ基材などを付加してレンズとして用いてもよい。レンズ基材を用いたレンズの種類や形状は、特に制限されない。
レンズ基材は携帯電話やデジタルカメラ等の撮像用レンズやテレビ、ビデオカメラ等の撮映レンズ、さらには車載レンズ、内視鏡レンズに使用されることが好ましい。
【実施例】
【0141】
以下に実施例と比較例を挙げて本発明の特徴をさらに具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更することができる。したがって、本発明の範囲は以下に示す具体例により限定的に解釈されるべきものではない。
【0142】
【化19】
【0143】
<化合物(VI−2Db)の合成>
2,4−ジクロロ−6,7−ジメトキシキナゾリン(VI−2Da)5.0g(19.3mmol)、フェニルボロン酸7.1g(57.9mmol)、ジクロロビス[ジ−t−ブチル(p−ジメチルアミノフェニル)ホスフィノ]パラジウム(II)1.1g、1,4−ジオキサン100mL、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液100mLを窒素雰囲気下で混合した。内温85℃で2時間撹拌した後、25℃に冷却し酢酸エチル300mL、水200mLを加え、洗浄、分液した。その後、濃縮を行い、カラムクロマトグラフィーで精製した。(収率77%)
【0144】
<化合物(VI−2D)の合成>
化合物(VI−2Db)5.0g、ピリジン塩酸塩50gを混合したのち、窒素雰囲気下、190℃で4時間撹拌した。その後、80℃で水300mLを滴下し、固体を析出させたのち、25℃に冷却した。固体をろ過後、容積比3:1の水−メタノール混合溶媒で洗浄した。(収率95%)
【0145】
<化合物(VI−1A)の合成>
特開2016−053149号公報の段落0113に記載の方法に従い合成した。
【0146】
<化合物(VI−2)の合成>
カルボン酸化合物(VI−1A)20.1g(67.4mmol)、酢酸エチル185mL、N,N−ジメチルアセトアミド46mL、及び2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール60mgを混合し、内温を0℃まで冷却した。混合物に、塩化チオニル7.75g(65.1mmol)を内温0〜5℃にて滴下した。5℃で60分間撹拌した後、化合物(VI−2D)8.7g(27.6mmol)、及びTHF52mLの溶液を、内温0〜8℃にて滴下した。
その後、N,N−ジイソプロピルエチルアミン16.8gを内温0〜10℃にて滴下した。内温20〜25℃で1時間撹拌した後、酢酸エチル40mL、水165mL、及び濃塩酸14mLを加え、洗浄した。有機層を飽和食塩水140mLで洗浄、分液し、続いて、飽和食塩水100mL、7.5wt%重曹水10mLで洗浄、分液した。その後、濃縮を行い、オイル状の組成物を得たのち、カラムクロマトグラフィーで精製した。(収率38%)
【0147】
H−NMR(300MHz,CDCl):δ(ppm)1.40−1.60(m,8H),1.60−1.80(m,8H),2.00−2.20(m,8H),2.20−2.40(m,4H),4.15(t,4H),4.24(t,4H),5.84(dd,2H),6.05−6.15(m,2H),6.40(dd,2H)、7.35(s,2H)、7.45−7.55(m,6H)、7.60−7.70(m,4H)
【0148】
【化20】
【0149】
<化合物(III−1D)の合成>
特開2017−125009号公報の実施例1記載の化合物(ex−2)合成において、フェニルグリオキサールをベンジルに変更した以外は同様の方法で合成した。(収率35%)
【0150】
<化合物(VI−1)の合成>
合成例1に記載されている化合物(VI−2)の合成法における化合物(VI−2D)を、化合物(III−1D)に変更した以外は合成例1と同様の方法で化合物(VI−1)を得た。(収率85%)
【0151】
H−NMR(300MHz,CDCl)δ(ppm):1.40−1.60(m,8H),1.60−1.80(m,8H),2.00−2.20(m,8H),2.20−2.40(m,4H),4.15(t,4H),4.24(t,4H),5.84(dd,2H),6.05−6.15(m,2H),6.40(dd,2H)、7.35(s、2H)、7.45−7.55(m,6H)、7.60−7.70(m,4H)
【0152】
【化21】
【0153】
<化合物(III−21D)の合成>
特開2017−125009号公報の実施例1記載の化合物(ex−2)の方法に従い合成した。(収率40%)
【0154】
<化合物(III−21)の合成>
カルボン酸化合物(I−1A)7.3g(33.7mmol)、酢酸エチル93mL、N,N−ジメチルアセトアミド23mL、及び2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール30mgを混合し、内温を0℃まで冷却した。混合物に、塩化チオニル3.88g(32.6mmol)を内温0〜5℃にて滴下した。5℃で60分間撹拌した後、化合物(III−21D)3.3g(13.8mmol)、及びTHF26mLの溶液を、内温0〜8℃にて滴下した。
その後、N,N−ジイソプロピルエチルアミン8.4gを内温0〜10℃にて滴下した。内温20〜25℃で1時間撹拌した後、酢酸エチル20mL、水82.5mL、及び濃塩酸7mLを加え、洗浄した。有機層を飽和食塩水70mLで洗浄、分液し、続いて、飽和食塩水50mL、7.5wt%重曹水5mLで洗浄、分液した。その後、濃縮を行い、オイル状の組成物を得たのち、カラムクロマトグラフィーで精製した。(収率84%)
【0155】
H−NMR(300MHz,CDCl):δ(ppm)2.80(t,4H)、2.90−3.00(m,4H)、4.30−4.40(m,8H)、5.85(d,2H)、6.05−6.15(m,2H)、6.43(d,2H)、7.40−7.50(m,2H)、7.50−7.60(m,3H)、8.07(d,2H)、9.30(s,1H)
【0156】
【化22】
【0157】
<化合物(III−1)の合成>
合成例3に記載されている化合物(III−21D)を、化合物(III−1D)に変更した以外は合成例3と同様の方法で化合物(III−1)を得た。(収率81%)
H−NMR(300MHz,CDCl):δ(ppm)2.80(t,4H)、2.95(t,4H)、4.30−4.40(m,8H)、5.85(d,2H)、6.05−6.15(m,2H)、6.43(d,2H)、7.35(s、2H)、7.45−7.60(m,6H)、7.60−7.70(m,4H)
【0158】
【化23】
【0159】
<化合物(I−1Db)の合成>
1,2−フェニレンジアミン(I−1Da)5.0g(46.2mmol)、p−アニシル12.5g(46.2mmol)、酢酸80mLを混合したのち、2−ヨードキシ安息香酸125mgを添加した。25℃で2時間撹拌したのち、析出した化合物(I−Db)をろ過し、メタノール50mLで洗浄した。(収率65%)
【0160】
<化合物(I−1D)の合成>
合成例1の化合物(VI−2D)の合成における化合物(VI−2Db)を化合物(I−Db)に変更した以外は同様の方法で化合物(I−1D)を得た。(収率93%)
【0161】
<化合物(I−1)の合成>
合成例3に記載されている化合物(III−21D)を、化合物(I−1D)に変更した以外は合成例3と同様の方法で化合物(I−1)を得た。(収率75%)
H−NMR(300MHz,CDCl):δ(ppm)2.80(t,4H)、2.92(t,4H)、4.30−4.40(m,8H)、5.85(d,2H)、6.05−6.15(m,2H)、6.43(d,2H)、7.10(d,4H)、7.70(d、4H)、7.70−7.80(m,2H)、8.10−8.20(m,2H)
【0162】
【化24】
【0163】
<化合物(I−24A)の合成>
化合物(I−1D)10.1g(32.2mmol)、ブロモ酢酸10.3g(74.1mmol)、臭化テトラブチルアンモニウム1g、THF260mL、N,N−ジメチルアセトアミド200mLを混合したのち、炭酸カリウム23.6gを少量ずつ添加した。その後内温を80℃に上げ、10時間撹拌した。その後25℃に冷却したのち、1N塩酸水700mLに溶液を添加し、析出した固体をろ過した。得られた固体をカラムクロマトグラフィーで精製した。(収率35%)
【0164】
<化合物(I−24)の合成>
カルボン酸化合物(I−24A)7.3g(16.9mmol)、酢酸エチル93mL、N,N−ジメチルアセトアミド30mL、及び2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール30mgを混合し、内温を0℃まで冷却した。混合物に、塩化チオニル3.88g(32.6mmol)を内温0〜5℃にて滴下した。5℃で60分間撹拌した後、2−ヒドロキシエチルアクリレート4.3g(37.2mmol)、及びTHF26mLの溶液を、内温0〜8℃にて滴下した。
その後、N,N−ジイソプロピルエチルアミン8.4gを内温0〜10℃にて滴下した。内温20〜25℃で1時間撹拌した後、酢酸エチル20mL、水82.5mL、及び、濃塩酸7mLを加え、洗浄した。有機層を飽和食塩水70mLで洗浄、分液し、続いて、飽和食塩水50mL、7.5wt%重曹水5mLで洗浄、分液した。その後、濃縮を行い、オイル状の組成物を得たのち、カラムクロマトグラフィーで精製した。(収率73%)
【0165】
H−NMR(300MHz,CDCl):δ(ppm)4.30−4.40(m,8H)、4.70(s,4H)、5.85(d,2H)、6.05−6.15(m,2H)、6.43(d,2H)、6.90(d,4H)、7.50(d、4H)、7.70−7.80(m,2H)、8.10−8.20(m,2H)
【0166】
【化25】
【0167】
<化合物IV−1Dの合成>
合成例5に記載されている化合物(I−1D)の合成法における1,2−フェニレンジアミンを、3,4−トルエンジアミンに変更した以外は合成例5と同様の方法で化合物(IV−1D)を得た。(収率60%)
【0168】
<化合物IV-13の合成>
カレンズMOI−EG(I−7A,昭和電工社製)4.4g(22.0mmol)、化合物(IV−1D)3.6g(10.9mmol)、N,N−ジメチルアセトアミド2mL、クロロホルム20mLを混合し、内温を60℃まで加熱した。12時間撹拌した後、室温へと冷却してさらに12時間撹拌した。次に飽和重曹水を加えて1時間撹拌した後、分液を行った。集めた有機層を1N塩酸、飽和食塩水で洗浄した後、無水硫酸ナトリウムで乾燥して、ロータリーエバポレーターにて溶媒を除去し、カラムクロマトグラフィーにて精製した。(収率78%)。
【0169】
H−NMR(400MHz,CDCl):δ(ppm)1.95(s,6H)、2.60(s,3H)、3.37(m,4H)、3.60−3.70(m,8H)、4.20(t,4H)、5.25(br,s,2H)、5.55(s,2H)、6.10(s,2H)、6.80−6.90(m,4H)、7.45−7.55(m、5H)、7.85−7.95(m、1H)、8.00−8.10(m、1H)
【0170】
<比較化合物(Z−1)の合成>
特開2014−43565号公報に記載される方法で下記構造を有する化合物を合成した。これを比較化合物Z−1とした。
【化26】
【0171】
(実施例1〜10及び比較例1)
<硬化性組成物の調製>
下記表に記載の組成となるように、一般式1で表される化合物又は比較化合物(成分(A))、モノマーB−1((メタ)アクリレートモノマー)(成分(B))、及び熱重合開始剤(t−ブチルペルオキシ−2−エチルヘキサノエート、製品名:Perbutyl O(日油株式会社製))を混合し、撹拌して均一にし、硬化性組成物を調製した。
【0172】
【化27】
【0173】
<光学特性測定用硬化物サンプル作製>
調製した硬化性組成物を、硬化物の厚みが2mmとなるように直径20mmの円形の透明ガラス型に注入し、酸素濃度1%以下の雰囲気下、200℃に加熱することで熱硬化物を作製した。
【0174】
<光学特性測定>
「複屈折Δn」は複屈折評価装置(WPA−100、株式会社フォトニックラティス社製)を用いて、作製した硬化物の中心を含む直径10mm円内の複屈折を測定し、平均値を算出した。
「屈折率(nd)」、「アッベ数(νd)」及び「部分分散比(θg,F)」は、硬化物サンプル作製方法(2)により得られた硬化物をV字ブロック状に加工し、カルニュー精密屈折計KPR−2000(株式会社島津デバイス製造製)を用いて測定した。各サンプルについて25℃で3回測定を行い、平均値を測定結果とした。
「屈折率(nd)」は、波長587.56nmにおける屈折率である。また、「アッベ数(νd)」及び「部分分散比(θg,F)」は、異なる波長における屈折率測定値から下記式により算出される値である。
νd=(nd−1)/(nF−nC)
θg,F=(ng−nF)/(nF−nC)
ここで、ndは波長587.56nmにおける屈折率、nFは波長486.13nmにおける屈折率、nCは波長656.27nmにおける屈折率、ngは波長435.83nmにおける屈折率を表す。
結果を表1に示す。
【0175】
<湿熱耐久性評価>
屈折率(nd)を測定した各サンプルを90℃、相対湿度90%に保たれた恒温恒湿槽に入れて24時間保管した後、取り出した。次いで、25℃、相対湿度60%で1時間放置した後、屈折率(nd)を測定し、湿熱試験前後での屈折率の変化量を以下のA〜Cの3段階で評価した。結果を表1に示す。
A:湿熱試験前後で屈折率変化が0.0005以下
B:湿熱試験前後で屈折率変化が0.0005より大きく、0.001以下
C:湿熱試験前後で屈折率変化が0.001より大きい
【0176】
【表1】
【0177】
表1に示す結果から、本発明の実施例では比較例1と比べて高い部分分散比(θg,F)が得られていることがわかる。
【0178】
<外観試験>
成分A及び成分Bの配合量のみが異なる実施例6、8〜10について、別途硬化物を作製して、外観試験を行った。
調製した硬化性組成物を、硬化物の厚みが2mmとなるように直径15mmの円形の透明ガラス型に注入し、酸素濃度1%以下の雰囲気下、200℃に加熱することで熱硬化物を作製した。
作製した硬化物をキーエンス社製デジタルマイクロスコープにて観察し、ゆがみやヒビといった形状変化が認められるものを不良品とし、発生していないものを良品とした。10個の硬化物を評価した結果、良品の数は実施例6が9個、実施例8が8個、実施例9が6個、実施例10が8個であった。