(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記チャック本体は、双極電極を構成する第4電極及び第5電極を更に有し、該第4電極及び該第5電極は、前記フォーカスリングと前記チャック本体との間で静電引力を発生させるために、前記外周領域内に設けられている、請求項2に記載の静電チャック。
前記基台、前記誘電体層、及び、前記チャック本体には、前記誘電体層の側と反対側の前記外周領域の表面において開口する第1の流路が形成されている、請求項2〜6の何れか一項に記載の静電チャック。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、図面を参照して種々の実施形態について詳細に説明する。なお、各図面において同一又は相当の部分に対しては同一の符号を附すこととする。
【0024】
図1は、一実施形態に係るプラズマ処理装置を概略的に示す図である。
図1には、一実施形態に係るプラズマ処理装置10の縦断面における構造が概略的に示されている。
図1に示すプラズマ処理装置10は、容量結合型のプラズマ処理装置である。
【0025】
プラズマ処理装置10は、チャンバ本体12を備えている。チャンバ本体12は、略円筒形状を有している。チャンバ本体12は、その内部空間をチャンバ12cとして提供している。チャンバ本体12は、例えばアルミニウムから構成されている。チャンバ本体12は接地電位に接続されている。チャンバ本体12の内壁面、即ち、チャンバ12cを画成する壁面には、耐プラズマ性を有する膜が形成されている。この膜は、陽極酸化処理によって形成された膜、又は、酸化イットリウムから形成された膜といったセラミック製の膜であり得る。また、チャンバ本体12の側壁には通路12gが形成されている。基板Wがチャンバ12cに搬入されるとき、また、基板Wがチャンバ12cから搬出されるときに、基板Wは通路12gを通過する。チャンバ本体12の側壁にはゲートバルブ14が取り付けられている。通路12gは、ゲートバルブ14により開閉可能となっている。
【0026】
チャンバ12c内では、支持部15が、チャンバ本体12の底部から上方に延在している。支持部15は、略円筒形状を有しており、石英といった絶縁材料から形成されている。支持部15上にはステージ16が搭載されており、ステージ16は支持部15によって支持されている。ステージ16は、チャンバ12c内において基板Wを支持するように構成されている。ステージ16は、電極プレート18及び静電チャック20を含んでいる。電極プレート18は、導電性を有しており、略円盤形状を有している。電極プレート18は、例えばアルミニウムから形成されている。静電チャック20は、電極プレート18上に設けられている。静電チャック20は、基台22、誘電体層24、及び、チャック本体26を含んでいる。基台22は、導電性を有し、下部電極を構成している。基台22は、電極プレート18上に設けられており、電極プレート18に電気的に接続されている。
【0027】
基台22内には、流路22fが設けられている。流路22fは、熱交換媒体用の流路である。熱交換媒体としては、液状の冷媒、或いは、その気化によって基台22を冷却する冷媒(例えば、フロン)が用いられる。流路22fには、チャンバ本体12の外部に設けられたチラーユニットから配管23aを介して熱交換媒体が供給される。流路22fに供給された熱交換媒体は、配管23bを介してチラーユニットに戻される。このように、流路22fには、当該流路22fとチラーユニットとの間で循環するように、熱交換媒体が供給される。
【0028】
プラズマ処理装置10には、ガス供給ライン25が設けられている。ガス供給ライン25は、ガス供給機構からの伝熱ガス、例えばHeガスを、チャック本体26の上面と基板Wの裏面(下面)との間に供給する。
【0029】
チャンバ本体12の底部からは、筒状部28が上方に延在している。筒状部28は、支持部15の外周に沿って延在している。筒状部28は、導電性を有し、略円筒形状を有している。筒状部28は、接地電位に接続されている。筒状部28上には、絶縁部29が設けられている。絶縁部29は、絶縁性を有し、例えば石英といったセラミックから形成されている。絶縁部29は、略円筒形状を有しており、電極プレート18の外周、及び、静電チャック20の外周に沿って延在している。静電チャック20のチャック本体26の外周領域上には、フォーカスリングFRが搭載される。フォーカスリングFRは、略環状板形状を有しており、例えばシリコン又は炭化シリコン(SiC)から形成されている。フォーカスリングFRは、チャック本体26の基板搭載領域のエッジ及び基板Wのエッジを囲むように設けられる。
【0030】
プラズマ処理装置10は、上部電極30を更に備えている。上部電極30は、ステージ16の上方に設けられている。上部電極30は、部材32と共にチャンバ本体12の上部開口を閉じている。部材32は、絶縁性を有している。上部電極30は、この部材32を介してチャンバ本体12の上部に支持されている。
【0031】
上部電極30は、天板34及び支持体36を含んでいる。天板34の下面は、チャンバ12cを画成している。天板34には、複数のガス吐出孔34aが設けられている。複数のガス吐出孔34aの各々は、天板34を板厚方向(鉛直方向)に貫通している。この天板34は、限定されるものではないが、例えばシリコンから形成されている。或いは、天板34は、アルミニウム製の母材の表面に耐プラズマ性の膜を設けた構造を有し得る。この膜は、陽極酸化処理によって形成された膜、又は、酸化イットリウムから形成された膜といったセラミック製の膜であり得る。
【0032】
支持体36は、天板34を着脱自在に支持する部品である。支持体36は、例えばアルミニウムといった導電性材料から形成され得る。支持体36の内部には、ガス拡散室36aが設けられている。ガス拡散室36aからは、複数のガス孔36bが下方に延びている。複数のガス孔36bは、複数のガス吐出孔34aにそれぞれ連通している。支持体36には、ガス拡散室36aにガスを導くガス導入口36cが形成されており、このガス導入口36cには、ガス供給管38が接続されている。
【0033】
ガス供給管38には、バルブ群42及び流量制御器群44を介して、ガスソース群40が接続されている。ガスソース群40は、複数のガスソースを含んでいる。バルブ群42は複数のバルブを含んでおり、流量制御器群44は複数の流量制御器を含んでいる。流量制御器群44の複数の流量制御器の各々は、マスフローコントローラ又は圧力制御式の流量制御器である。ガスソース群40の複数のガスソースはそれぞれ、バルブ群42の対応のバルブ及び流量制御器群44の対応の流量制御器を介して、ガス供給管38に接続されている。プラズマ処理装置10は、ガスソース群40の複数のガスソースのうち選択された一以上のガスソースからのガスを、個別に調整された流量で、チャンバ12cに供給することが可能である。
【0034】
筒状部28とチャンバ本体12の側壁との間には、バッフルプレート48が設けられている。バッフルプレート48は、例えば、アルミニウム製の母材に酸化イットリウム等のセラミックを被覆することにより構成され得る。このバッフルプレート48には、多数の貫通孔が形成されている。バッフルプレート48の下方においては、排気管52がチャンバ本体12の底部に接続されている。この排気管52には、排気装置50が接続されている。排気装置50は、自動圧力制御弁といった圧力制御器、及び、ターボ分子ポンプなどの真空ポンプを有しており、チャンバ12cを減圧することができる。
【0035】
プラズマ処理装置10は、第1の高周波電源62を更に備えている。第1の高周波電源62は、プラズマ生成用の第1の高周波を発生する電源である。第1の高周波は、27〜100MHzの範囲内の周波数、例えば60MHzの周波数を有する。第1の高周波電源62は、整合器63を介して上部電極30に接続されている。整合器63は、第1の高周波電源62の出力インピーダンスと負荷側(上部電極30側)のインピーダンスを整合させるための回路を有している。なお、第1の高周波電源62は、整合器63を介して電極プレート18に接続されていてもよい。第1の高周波電源62が電極プレート18に接続されている場合には、上部電極30は接地電位に接続される。
【0036】
プラズマ処理装置10は、第2の高周波電源64を更に備えている。第2の高周波電源64は、基板Wにイオンを引き込むためのバイアス用の第2の高周波を発生する電源である。第2の高周波の周波数は、第1の高周波の周波数よりも低い。第2の高周波の周波数は、400kHz〜13.56MHzの範囲内の周波数であり、例えば、400kHzである。第2の高周波電源64は、整合器65を介して電極プレート18に接続されている。整合器65は、第2の高周波電源64の出力インピーダンスと負荷側(電極プレート18側)のインピーダンスを整合させるための回路を有している。
【0037】
一実施形態においては、プラズマ処理装置10は、制御部Cntを更に備え得る。制御部Cntは、プロセッサ、記憶装置、入力装置、表示装置等を備えるコンピュータであり、プラズマ処理装置10の各部を制御する。具体的に、制御部Cntは、記憶装置に記憶されている制御プログラムを実行し、当該記憶装置に記憶されているレシピデータに基づいてプラズマ処理装置10の各部を制御する。これにより、プラズマ処理装置10は、レシピデータによって指定されたプロセスを実行するようになっている。
【0038】
以下、静電チャック20として採用され得る幾つかの実施形態の静電チャックについて説明する。
【0040】
図2は、第1の実施形態に係る静電チャックの断面図である。
図2に示す静電チャック20Aは、プラズマ処理装置10の静電チャック20として用いられ得る。静電チャック20Aは、基台22及び誘電体層24を有している。また、静電チャック20Aは、チャック本体26として、チャック本体26Aを有している。
【0041】
基台22は、導電性を有しており、略円盤形状を有している。基台22は、例えば、アルミニウムから形成されている。基台22は、電極プレート18上に設けられている。基台22は、電極プレート18に電気的に接続されている。この基台22は、下部電極を構成しており、当該基台22には、電極プレート18を介して高周波(第2の高周波、又は、第1の高周波及び第2の高周波)が供給される。基台22の内部には、上述した流路22fが形成されている。流路22fは、基台22内において、例えば渦巻き状に延在している。
【0042】
誘電体層24は、基台22上に設けられており、当該基台22に固定されている。誘電体層24は、誘電体から形成されている。
図3の(a)、
図3の(b)、
図3の(c)は、例示の誘電体層の断面図である。
図3の(a)に示す誘電体層24A、
図3の(b)に示す誘電体層24B、
図3の(c)に示す誘電体層24Cは、誘電体層24として採用され得る。
【0043】
誘電体層24Aは、セラミック、例えば酸化アルミニウム又は酸化イットリウムの膜であり、基台22の上面の上に設けられている。誘電体層24Aは、例えば、基台22の上面に対するセラミックの溶射により形成される。誘電体層24Bは、接着層241及び樹脂層242を有する。樹脂層242は、接着層241によって基台22の上面に固定されている。樹脂層242は、例えばポリイミドから形成されている。誘電体層24Cは、樹脂製の膜である。誘電体層24Cは、基台22の上面に直接的に接合されている。誘電体層24Cは、基台22の上面に対して、レーザーによって接合されるか、或いは、アンカー効果を利用して接合される。誘電体層24Cは、例えばフッ素系樹脂から形成されている。
【0044】
誘電体層24A、24B、又は、24Cといった誘電体層24の厚みは、50μm以上500μm以下である。このような厚みを有する誘電体層24は、熱による基台22の変形に追従し得る。基台22とチャック本体26との間での熱交換を促進させるために、誘電体層24の厚みは、所定値以下の熱抵抗を有するように設定される。熱抵抗は、誘電体層24の厚みを当該誘電体層24の熱伝導率で除した値として定義される。
【0045】
図2に戻り、チャック本体26Aは、誘電体層24上に搭載される。チャック本体26Aは、その上に載置される基板Wを静電引力により保持するように構成されている。この静電引力は、クーロン力又はジョンソン・ラーベック力である。チャック本体26Aは、セラミック本体260、第1電極261、第2電極262、第3電極263、第4電極264、及び、第5電極265を有している。
【0046】
セラミック本体260は、略円盤形状を有している。セラミック本体260は、基板搭載領域260a及び外周領域260bを有している。基板搭載領域260aは、その上に基板Wが載置される領域である。基板搭載領域260aは、略円盤形状を有している。外周領域260bは、略環状板形状の領域であり、基板搭載領域260aを囲むように延在している。基板搭載領域260aの裏面(誘電体層24の側の表面)と外周領域260bの裏面(誘電体層24の側の表面)は、セラミック本体260の連続する平坦な裏面(下面)、即ち、チャック本体26Aの裏面を構成している。一方、外周領域260bの上面は、基板搭載領域260aの上面よりも、チャック本体26Aの裏面の近くで延在している。外周領域260b上には、フォーカスリングFRが、基板搭載領域260aのエッジ及び基板Wのエッジを囲むように搭載される。
【0047】
図4は、チャック本体の外周領域を含む箇所における静電チャックの断面図である。
図4に示すように、一実施形態においては、チャック本体26Aの外周領域260b、誘電体層24、基台22、及び、電極プレート18には、誘電体層24と反対側の外周領域260bの表面(上面)において開口する流路20f(第1の流路)が形成されている。流路20fは、電極プレート18及び基台22の内部においては、絶縁性の配管70によって提供されている。流路20fには、ガス供給部71(第1のガス供給部)及び排気装置72(第1の排気装置)が選択的に接続される。ガス供給部71は、流路20fを介してフォーカスリングFRの裏面(下面)にガスを供給する。排気装置72は、流路20fを介してフォーカスリングFRの裏面を真空引きする。
【0048】
図2に戻り、第1電極261は、基板搭載領域260a内に設けられている。第1電極261は、膜状の電極である。第1電極261は、スイッチSW1を介して直流電源DS1(第1の直流電源)に接続されている。直流電源DS1は、第1電極261に印加される直流電圧を発生する。プラズマ発生中に直流電源DS1からの直流電圧が第1電極261に印加されるとチャック本体26Aとプラズマから電荷を受け取った基板Wとの間に静電引力が発生する。発生した静電引力により、基板Wは、チャック本体26Aに引き付けられて、当該チャック本体26Aに固定される。
【0049】
以下、
図2と共に
図5を参照する。
図5は、第1の実施形態に係る静電チャックの第2〜第5の電極を示す図である。なお、
図5では、便宜的に、第2〜第5の電極が同一の水平レベルにあるように示されているが、静電チャック20Aにおいては、第4電極264及び第5電極265は、第2電極262及び第3電極263よりも上方に設けられている。
【0050】
図2及び
図5に示すように、第2電極262及び第3電極263は、セラミック本体260の基板搭載領域260a内に設けられている。第2電極262及び第3電極263は、双極電極を構成している。第4電極264及び第5電極265は、外周領域260b内に設けられている。第4電極264及び第5電極265は、双極電極を構成している。第4電極264及び第5電極265は、第2電極262及び第3電極263よりも、誘電体層24から離れている。換言すると、第2電極262及び第3電極263は、第4電極264及び第5電極265よりも、セラミック本体260内において誘電体層24の近く、即ち、セラミック本体260の裏面の近くに設けられている。
【0051】
第2電極262及び第3電極263は、膜状の電極であり、
図5に示すように、櫛歯形状を有している。第2電極262と第3電極263は、一方向に沿ってそれらの櫛歯が交互に配列されるように、設けられている。第4電極264及び第5電極265は、膜状の電極であり、
図5に示すように、同心の環形状を有している。
図6は、第4電極及び第5電極の別の例を示す平面図である。
図6に示すように、第4電極264及び第5電極265は、櫛歯形状を有していてもよく、周方向に沿ってそれらの櫛歯が交互に配列されるように、設けられていてもよい。
【0052】
図2に戻り、第2電極262には、スイッチSW2を介して直流電源DS2(第2の直流電源)が電気的に接続されている。第3電極263には、スイッチSW3を介して直流電源DS3(第3の直流電源)が電気的に接続されている。第4電極264には、スイッチSW4を介して直流電源DS4(第4の直流電源)が電気的に接続されている。第5電極265には、スイッチSW5を介して直流電源DS5(第5の直流電源)が電気的に接続されている。
【0053】
直流電源DS2は、第2電極262に印加される電圧を発生する。直流電源DS3は、第3電極263に印加される電圧を発生する。直流電源DS2から第2電極262に印加される電圧と直流電源DS3から第3電極263に印加される電圧は、互いに逆の極性を有する。直流電源DS2から第2電極262に電圧が印加され、直流電源DS3から第3電極263に電圧が印加されると、チャック本体26Aと誘電体層24との間で静電引力が発生する。発生した静電引力により、チャック本体26Aは、誘電体層24に引き付けられる。なお、直流電源DS2から第2電極262に電圧を印加し、直流電源DS3から第3電極263に電圧を印加することにより、プラズマを介さずとも、即ち、プラズマが発生していない状態でも、チャック本体26Aと誘電体層24との間で静電引力を発生させることが可能である。したがって、チャック本体26Aを誘電体層24に任意のタイミングで引き付けることが可能である。
【0054】
直流電源DS4は、第4電極264に印加される電圧を発生する。直流電源DS5は、第5電極265に印加される電圧を発生する。直流電源DS4から第4電極264に印加される電圧と直流電源DS5から第5電極265に印加される電圧は、互いに逆の極性を有する。直流電源DS4から第4電極264に電圧が印加され、直流電源DS5から第5電極265に電圧が印加されると、チャック本体26AとフォーカスリングFRとの間には静電引力が発生する。発生した静電引力により、フォーカスリングFRは、チャック本体26Aに引き付けられて、チャック本体26Aに固定される。なお、直流電源DS4から第4電極264に電圧を印加し、直流電源DS5から第5電極265に電圧を印加することにより、プラズマを介さずとも、即ち、プラズマが発生していない状態でも、チャック本体26AとフォーカスリングFRとの間で静電引力を発生させることが可能である。したがって、フォーカスリングFRをチャック本体26Aに任意のタイミングで引き付けることが可能である。
【0055】
図7は、チャック本体の裏面を示す平面図である。
図2及び
図7に示すように、チャック本体26Aの裏面、即ち、セラミック本体260の裏面は、溝260gを提供している。一例において、溝260gは、複数の同心円、及び、当該同心円の中心から放射方向に延びる複数の線分に沿って延在している。誘電体層24、基台22、及び、電極プレート18には、溝260gに接続する流路20g(第2の流路)が形成されている。流路20gは、少なくとも部分的に配管によって提供されている。流路20gには、ガス供給部73(第2のガス供給部)及び排気装置74(第2の排気装置)が選択的に接続される。ガス供給部73は、流路20gを介して溝260gにガスを供給する。排気装置74は、流路20g及び溝260gを介してチャック本体26Aの裏面を真空引きする。なお、溝260gは、チャック本体26Aの側の誘電体層24の表面に形成されていてもよい。
【0056】
図2に示すように、静電チャック20Aには、温度センサ76及び温度センサ77が設けられている。温度センサ76(第2の温度センサ)は、チャック本体26Aの温度を測定するように構成されている。温度センサ76は、蛍光温度計又は熱電対といった任意の温度センサであり得る。温度センサ76によって測定されたチャック本体26Aの温度測定値は、制御部Cntに送信される。温度センサ77(第1の温度センサ)は、基台22の温度を測定するように構成されている。温度センサ77は、蛍光温度計又は熱電対といった任意の温度センサであり得る。温度センサ77によって測定された基台22の温度測定値は、制御部Cntに送信される。
【0058】
図8は、第2の実施形態に係る静電チャックの断面図である。
図8に示す第2の実施形態の静電チャック20Bは、プラズマ処理装置10の静電チャック20として用いられ得る。静電チャック20Bは、チャック本体26Aの代わりにチャック本体26Bを有する。チャック本体26Bは、セラミック本体260内における電極の位置に関して、チャック本体26Aと異なっている。チャック本体26Bのセラミック本体260内では、第2電極262、第3電極263、第4電極264、及び、第5電極265が、同一の平面に沿って形成されている。即ち、第2電極262からセラミック本体260の裏面までの距離、第3電極263からセラミック本体260の裏面までの距離、第4電極264からセラミック本体260の裏面までの距離、及び、第5電極265からセラミック本体260の裏面までの距離は、互いに同一である。その他の点において、静電チャック20Bは、静電チャック20Aと同様の構成を有する。
【0060】
図9は、第3の実施形態に係る静電チャックの断面図である。
図9に示す第3の実施形態の静電チャック20Cは、プラズマ処理装置10の静電チャック20として用いられ得る。以下、静電チャック20Cが、静電チャック20A及び静電チャック20Bと異なる点について説明する。静電チャック20Cは、チャック本体26A及びチャック本体26Bに代えて、チャック本体26Cを有している。チャック本体26Cは、第4電極及び第5電極を有していない。チャック本体26Cのセラミック本体260内には、第1電極261、第2電極262、及び、第3電極263が設けられている。
【0061】
図10は、第3の実施形態に係る静電チャックの第2及び第3の電極を示す図である。
図9及び
図10に示すように、チャック本体26Cでは、第2電極262及び第3電極263は、膜状の電極であり、セラミック本体260内において渦巻き状に延在している。チャック本体26Cでは、第2電極262及び第3電極263は、同一の平面に沿って設けられている。チャック本体26Cでは、第2電極262及び第3電極263は、基板搭載領域260a及び外周領域260bにわたって設けられている。
【0062】
静電チャック20Cによれば、第2電極262及び第3電極263のそれぞれに、直流電源DS2及び直流電源DS3から互いに逆極性の電圧が印加されることにより、チャック本体26Cが誘電体層24に引き付けられ、且つ、フォーカスリングFRがチャック本体26Cに引き付けられる。
【0063】
上述した静電チャック20A、20B、又は、20Cの何れかである静電チャック20では、第1電極261に電圧を印加することにより、チャック本体26と基板Wとの間で静電引力が発生する。発生した静電引力により、基板Wはチャック本体26に保持される。また、第2電極262及び第3電極263に互いに逆極性の電圧が印加されることにより、チャック本体26と誘電体層24との間で静電引力が発生する。発生した静電引力により、チャック本体26は、誘電体層24に引き付けられて、当該誘電体層24に固定され、当該誘電体層24を介して基台22に固定される。したがって、静電チャック20によれば、接着剤を用いずに、チャック本体26が基台22に固定される。また、基台22とチャック本体26との間に温度差が生じている場合には、基台22の温度とチャック本体26の温度との間の温度差が小さくなってから、静電引力により誘電体層24を介してチャック本体26を基台22に固定することができる。したがって、チャック本体26の剥がれ及びチャック本体26の割れを抑制することができる。また、静電チャック20の反りを抑制することができる。
【0064】
また、残留電荷等に起因して、フォーカスリングFRがチャック本体26の外周領域260bに引き付けられていても、流路20fにガスを供給することにより、フォーカスリングFRをチャック本体26の外周領域260bから取り外すことができる。
【0065】
また、残留電荷等に起因して、チャック本体26が誘電体層24に引き付けられていても、流路20gにガスを供給することにより、チャック本体26を誘電体層24から取り外すことができる。
【0066】
以下、プラズマ処理装置10の静電チャック20を運用する方法の実施形態について説明する。
図11及び
図12は、一実施形態に係るプラズマ処理装置の静電チャックを運用する方法を示す流れ図である。
図13及び
図14は、
図11及び
図12に示す方法に関連するタイミングチャートである。
図13及び
図14のタイミングチャートにおいて、横軸は時間を示している。また、
図13及び
図14のタイミングチャートにおいて、縦軸は、第1電極261の電圧、第2電極262の電圧及び第3電極263の電圧、第4電極264の電圧及び第5電極265の電圧、チャンバ12cの圧力、チャック本体26の裏面の圧力、フォーカスリングFRの裏面の圧力、チャック本体26の温度、基台22の温度を表している。
【0067】
図13及び
図14における第1電極261の電圧に関するタイミングチャートにおいて、「0」は第1電極261に電圧が印加されていないことを示しており、「H」は第1電極261に電圧が印加されていることを示している。第2電極262の電圧及び第3電極263の電圧に関するタイミングチャートにおいて、「0」は第2電極262及び第3電極263に電圧が印加されていないことを示しており、「L」は第2電極262及び第3電極263のそれぞれに絶対値が小さい電圧が印加されていることを示しており、「H」は第2電極262及び第3電極263のそれぞれに絶対値が大きい電圧が印加されていることを示している。第4電極264の電圧及び第5電極265の電圧に関するタイミングチャートにおいて、「0」は第4電極264及び第5電極265に電圧が印加されていないことを示しており、「H」は第4電極264及び第5電極265のそれぞれに電圧が印加されていることを示している。チャンバ12cの圧力に関するタイミングチャートにおいて、「L」はチャンバ12cの圧力が低いことを示しており、「H」はチャンバ12cの圧力が高いことを示している。チャック本体26の裏面の圧力に関するタイミングチャートにおいて、「L」はチャック本体26の裏面の圧力が低いことを示しており、「H」はチャック本体26の裏面の圧力が高いことを示している。フォーカスリングFRの裏面の圧力に関するタイミングチャートにおいて、「L」はフォーカスリングFRの裏面の圧力が低いことを示しており、「H」はフォーカスリングFRの裏面の圧力が高いことを示している。チャック本体26の温度に関するタイミングチャートにおいて、「L」はチャック本体26の温度が低いことを示しており、「H」は、チャック本体26の温度が高いことを示している。基台22の温度に関するタイミングチャートにおいて、「L」は基台22の温度が低いことを示しており、「H」は、基台22の温度が高いことを示している。
【0068】
方法MTは、制御部Cntによるプラズマ処理装置10の各部の制御により実行され得る。なお、方法MTは、静電チャック20A又は静電チャック20Bを静電チャック20として有するプラズマ処理装置10において実行可能である。但し、第4電極264及び第5電極265への電圧の印加を、第2電極262及び第3電極263への電圧の印加から独立して行わなければ、方法MTは、静電チャック20Cを静電チャック20として有するプラズマ処理装置10においても実行可能である。
【0069】
方法MTは、工程ST1で開始する。工程ST1では、チャック本体26が誘電体層24上に搭載され、フォーカスリングFRがチャック本体26の外周領域260b上に搭載される。工程ST1の実行期間(
図13に示す時点t1から時点t2までの期間)では、第1電極261、第2電極262、第3電極263、第4電極264、及び、第5電極265のそれぞれには電圧は印加されない。工程ST1の実行期間では、チャンバ12cは減圧されておらず、その圧力は比較的高く、例えば大気圧に設定されている。工程ST1の実行期間では、流路20g及び溝260gが排気装置74によって減圧されておらず、したがって、チャック本体26の裏面の圧力は比較的高い。工程ST1の実行期間では、流路20fが排気装置72によって減圧されておらず、フォーカスリングFRの裏面の圧力は高い。また、工程ST1の実行期間では、流路22fに低温の熱交換媒体が供給されておらず、基台22の温度及びチャック本体26の温度は比較的高い温度に設定されている。
【0070】
続く工程ST2では、チャック本体26の裏面及びフォーカスリングFRの裏面が真空引きされる。工程ST2の実行期間(
図13に示す時点t2から時点t3までの期間)では、第1電極261、第2電極262、第3電極263、第4電極264、及び、第5電極265のそれぞれには電圧は印加されない。工程ST2の実行期間では、チャンバ12cは減圧されておらず、その圧力は比較的高い。工程ST2の実行期間では、流路20g及び溝260gが排気装置74によって減圧される。したがって、チャック本体26の裏面が真空引きされる。工程ST2の実行期間では、流路20fが排気装置72によって減圧される。したがって、フォーカスリングFRの裏面が真空引きされる。また、工程ST2の実行期間では、流路22fに低温の熱交換媒体が供給されておらず、基台22の温度及びチャック本体26の温度は比較的高い温度に設定されている。
【0071】
続く工程ST3では、ゲートバルブ14により通路12gが閉じられて、チャンバ12cが閉鎖される。工程ST3の実行期間(
図13に示す時点t3から時点t4までの期間)では、第1電極261、第2電極262、第3電極263、第4電極264、及び、第5電極265のそれぞれには電圧は印加されない。工程ST3の実行期間では、チャンバ12cは減圧されておらず、その圧力は比較的高い。工程ST3の実行期間では、流路20g及び溝260gが排気装置74によって減圧される。工程ST3の実行期間では、流路20fが排気装置72によって減圧される。また、工程ST3の実行期間では、流路22fに低温の熱交換媒体が供給されておらず、基台22の温度及びチャック本体26の温度は比較的高い温度に設定されている。
【0072】
続く工程ST4では、フォーカスリングFRがチャック本体26に固定され、チャック本体26が誘電体層24を介して基台22に仮固定される。工程ST4の実行期間(
図13に示す時点t4から時点t5までの期間)では、第1電極261には電圧は印加されない。工程ST4の実行期間では、直流電源DS2から第2電極262にその絶対値が比較的小さい電圧が印加され、直流電源DS3から第3電極263にその絶対値が比較的小さい電圧が印加される。したがって、工程ST4の実行期間では、チャック本体26は、比較的小さい静電引力により、誘電体層24に引き付けられる。工程ST4の実行期間では、直流電源DS4から第4電極264に電圧が印加され、直流電源DS5から第5電極265に電圧が印加される。したがって、チャック本体26の外周領域260bとフォーカスリングFRとの間で静電引力が発生し、フォーカスリングFRがチャック本体26の外周領域260bに引き付けられて、チャック本体26に固定される。工程ST4の実行期間では、チャンバ12cは減圧されておらず、その圧力は比較的高い。工程ST4の実行期間では、流路20g及び溝260gが排気装置74によって減圧される。工程ST4の実行期間では、流路20fが排気装置72によって減圧される。また、工程ST4の実行期間では、流路22fに低温の熱交換媒体が供給されておらず、基台22の温度及びチャック本体26の温度は比較的高い温度に設定されている。
【0073】
続く工程ST5では、チャンバ12cが減圧される。工程ST5の実行期間(
図13に示す時点t5から時点t6までの期間)では、第1電極261には電圧は印加されない。工程ST5の実行期間では、工程ST4に継続して、直流電源DS2から第2電極262にその絶対値が比較的小さい電圧が印加され、直流電源DS3から第3電極263にその絶対値が比較的小さい電圧が印加される。工程ST5の実行期間では、工程ST4に継続して、直流電源DS4から第4電極264に電圧が印加され、直流電源DS5から第5電極265に電圧が印加される。工程ST5の実行期間では、チャンバ12cは排気装置50によって減圧され、その圧力が低い圧力に設定される。工程ST5の実行期間では、流路20g及び溝260gが排気装置74によって減圧される。工程ST5の実行期間では、流路20fが排気装置72によって減圧される。また、工程ST5の実行期間では、流路22fに低温の熱交換媒体が供給されておらず、基台22の温度及びチャック本体26の温度は比較的高い温度に設定されている。
【0074】
続く工程ST6では、基台22の温度が低温(低下された温度)に調整される。工程ST6の実行期間(
図13に示す時点t6から時点t7までの期間)では、第1電極261には電圧は印加されない。工程ST6の実行期間では、工程ST5に継続して、直流電源DS2から第2電極262にその絶対値が比較的小さい電圧が印加され、直流電源DS3から第3電極263にその絶対値が比較的小さい電圧が印加される。工程ST6の実行期間では、工程ST5に継続して、直流電源DS4から第4電極264に電圧が印加され、直流電源DS5から第5電極265に電圧が印加される。工程ST6の実行期間では、チャンバ12cは排気装置50によって減圧され、その圧力が低い圧力に設定される。工程ST6の実行期間では、流路20g及び溝260gが排気装置74によって減圧される。工程ST6の実行期間では、流路20fが排気装置72によって減圧される。また、工程ST6の実行期間の開始時点に、流路22fへの低温の熱交換媒体の供給が開始される。したがって、工程ST6の実行期間では、基台22の温度は急速に低下する。また、工程ST6の実行期間では、チャック本体26の温度は比較的低速で低下する。なお、流路22fへの低温の熱交換媒体への供給は、工程ST6の開始時点(
図13に示す時点t6)から後述の工程ST21の開始時点(
図14に示す時点t21)までの間、継続される。
【0075】
続く工程ST7では、誘電体層24に対してチャック本体26が一時的に引き付けられる。工程ST7の実行期間(
図13に示す時点t7から時点t8までの期間)では、第1電極261には電圧は印加されない。工程ST7の実行期間では、直流電源DS2から第2電極262にその絶対値が比較的小さい電圧(第1の電圧)が印加され、直流電源DS3から第3電極263にその絶対値が比較的小さい電圧(第2の電圧)が印加される。一実施形態において、工程ST7の実行期間では、直流電源DS2から第2電極262に断続的に第1の電圧が印加され、直流電源DS3から第3電極263に断続的に第2の電圧が印加される。例えば、直流電源DS2から第2電極262への数秒間の第1の電圧の印加と数秒間の第2電極262に対する電圧の印加の停止とが交互に実行され、直流電源DS3から第3電極263への数秒間の第2電圧の印加と数秒間の第3電極263に対する電圧の印加の停止とが交互に実行される。工程ST7の実行期間では、工程ST6に継続して、直流電源DS4から第4電極264に電圧が印加され、直流電源DS5から第5電極265に電圧が印加される。工程ST7の実行期間では、チャンバ12cは排気装置50によって減圧されている。工程ST7の実行期間では、流路20g及び溝260gが排気装置74によって減圧される。工程ST7の実行期間では、流路20fが排気装置72によって減圧される。また、工程ST7の実行期間では、工程ST6に継続して、流路22fに低温の熱交換媒体が供給される。
【0076】
方法MTでは、工程ST7の実行中に工程STJaが実行される。工程STJaでは、基台22の温度とチャック本体26の温度との間の温度差(第1の温度差)が、第1の所定値以下であるか否かについての第1の判定が実行される。基台22の温度は温度センサ77によって測定され、チャック本体26の温度は温度センサ76によって測定される。第1の所定値は、例えば5℃以上、10℃以下の範囲内の値である。工程STJaにおいて、第1の温度差が第1の所定値よりも大きいと判定された場合には、工程ST7の実行が継続される。一方、工程STJaにおいて、第1の温度差が第1の所定値以下であると判定された場合には、工程ST8が実行される。
【0077】
工程ST8では、チャック本体26が誘電体層24を介して基台22に固定される。工程ST8では、基台22の温度が低下された温度に調整されている状態で、誘電体層24とチャック本体26との間で静電引力が発生される。工程ST8の実行期間(
図13に示す時点t8から時点t9までの期間)では、第1電極261には電圧は印加されない。工程ST8の実行期間では、直流電源DS2から第2電極262にその絶対値が比較的大きい電圧(第3の電圧)が印加され、直流電源DS3から第3電極263にその絶対値が比較的大きい電圧(第4の電圧)が印加される。なお、上述の第1の電圧の絶対値は第3の電圧の絶対値よりも小さく、第2の電圧の絶対値は第4の電圧の絶対値よりも小さい。第2電極262への第3の電圧の印加及び第3電極263への第4の電圧の印加は、工程ST8の開始時点(
図13に示す時点t8)から後述の工程ST21の開始時点(
図14に示す時点t21)までの間、継続される。
【0078】
工程ST8の実行期間では、工程ST7に継続して、直流電源DS4から第4電極264に電圧が印加され、直流電源DS5から第5電極265に電圧が印加される。工程ST8の実行期間では、チャンバ12cは排気装置50によって減圧されている。工程ST8の実行期間では、流路20g及び溝260gが排気装置74によって減圧される。工程ST8の実行期間では、流路20fが排気装置72によって減圧される。また、工程ST8の実行期間では、工程ST7に継続して、流路22fに低温の熱交換媒体が供給される。
【0079】
続く工程ST9では、チャック本体26の基板搭載領域260a上に基板Wが載置される。工程ST9の実行期間(
図13に示す時点t9から時点t10までの期間)では、ゲートバルブ14が通路12gを開き、基板Wがチャンバ12cに搬入されて、基板搭載領域260a上に載置される。次いで、ゲートバルブ14が通路12gを閉じて、チャンバ12cを閉鎖する。
【0080】
工程ST9の実行期間では、第1電極261には電圧は印加されない。工程ST9の実行期間では、工程ST8に継続して、直流電源DS2から第2電極262に第3の電圧が印加され、直流電源DS3から第3電極263に第4の電圧が印加される。工程ST9の実行期間では、工程ST8に継続して、直流電源DS4から第4電極264に電圧が印加され、直流電源DS5から第5電極265に電圧が印加される。工程ST9の実行期間では、チャンバ12cは排気装置50によって減圧されている。工程ST9の実行期間では、流路20g及び溝260gが排気装置74によって減圧される。工程ST9の実行期間では、流路20fが排気装置72によって減圧される。また、工程ST9の実行期間では、工程ST8に継続して、流路22fに低温の熱交換媒体が供給される。
【0081】
続く工程ST10では、基板Wがチャック本体26に固定される。工程ST10の実行期間(
図13に示す時点t10から時点t11までの期間)では、直流電源DS1から第1電極261に電圧が印加される。これにより、チャック本体26と基板Wの間で静電引力は発生し、基板Wがチャック本体26に引き付けられて、チャック本体26によって保持される。なお、直流電源DS1から第1電極261への電圧の印加は、工程ST10の実行期間の開始時点(
図13に示す時点t10)から、後述の工程ST12の開始時点(
図13に示す時点t12)まで継続する。
【0082】
工程ST10の実行期間では、工程ST9に継続して、直流電源DS2から第2電極262に第3の電圧が印加され、直流電源DS3から第3電極263に第4の電圧が印加される。工程ST10の実行期間では、工程ST9に継続して、直流電源DS4から第4電極264に電圧が印加され、直流電源DS5から第5電極265に電圧が印加される。工程ST10の実行期間では、チャンバ12cは排気装置50によって減圧されている。工程ST10の実行期間では、流路20g及び溝260gが排気装置74によって減圧される。工程ST10の実行期間では、流路20fが排気装置72によって減圧される。また、工程ST10の実行期間では、工程ST9に継続して、流路22fに低温の熱交換媒体が供給される。
【0083】
続く工程ST11では、基板Wが処理される。例えば、プラズマ処理装置10のチャンバ12c内で処理ガスのプラズマが生成され、当該プラズマからの分子又は原子の活性種により、基板Wが処理される。工程ST11の実行期間(
図13に示す時点t11から時点t12までの期間)では、工程ST10に継続して、直流電源DS1から第1電極261に電圧が印加される。工程ST11の実行期間では、工程ST10に継続して、直流電源DS2から第2電極262に第3の電圧が印加され、直流電源DS3から第3電極263に第4の電圧が印加される。工程ST11の実行期間では、工程ST10に継続して、直流電源DS4から第4電極264に電圧が印加され、直流電源DS5から第5電極265に電圧が印加される。工程ST11の実行期間では、チャンバ12cは排気装置50によって減圧されている。工程ST11の実行期間では、流路20g及び溝260gが排気装置74によって減圧される。工程ST11の実行期間では、流路20fが排気装置72によって減圧される。また、工程ST11の実行期間では、工程ST10に継続して、流路22fに低温の熱交換媒体が供給される。なお、プラズマ処理が行われると、プラズマからの入熱により基板Wの温度、チャック本体26の温度、及び、基台22の温度は上昇する。
【0084】
基板Wの処理が終了すると、次いで、工程ST12が実行される。工程ST12では、チャック本体26による基板Wの固定が解除される。工程ST12の実行期間(
図13に示す時点t12から時点t13までの期間)では、直流電源DS1からの第1電極261への電圧の印加が停止される。工程ST12の実行期間では、工程ST11に継続して、直流電源DS2から第2電極262に第3の電圧が印加され、直流電源DS3から第3電極263に第4の電圧が印加される。工程ST12の実行期間では、工程ST11に継続して、直流電源DS4から第4電極264に電圧が印加され、直流電源DS5から第5電極265に電圧が印加される。工程ST12の実行期間では、チャンバ12cは排気装置50によって減圧されている。工程ST12の実行期間では、流路20g及び溝260gが排気装置74によって減圧される。工程ST12の実行期間では、流路20fが排気装置72によって減圧される。また、工程ST12の実行期間では、工程ST11に継続して、流路22fに低温の熱交換媒体が供給される。
【0085】
続く工程ST13では、基板Wがチャンバ12cから搬出される。工程ST13の実行期間(
図13に示す時点t13から開始する期間)では、ゲートバルブ14が通路12gを開き、基板Wがチャンバ12cから搬出される。次いで、ゲートバルブ14が通路12gを閉じる。
【0086】
工程ST13の実行期間では、工程ST12に継続して、第1電極261には電圧は印加されない。工程ST13の実行期間では、工程ST12に継続して、直流電源DS2から第2電極262に第3の電圧が印加され、直流電源DS3から第3電極263に第4の電圧が印加される。工程ST13の実行期間では、工程ST12に継続して、直流電源DS4から第4電極264に電圧が印加され、直流電源DS5から第5電極265に電圧が印加される。工程ST13の実行期間では、チャンバ12cは排気装置50によって減圧されている。工程ST13の実行期間では、流路20g及び溝260gが排気装置74によって減圧される。工程ST13の実行期間では、流路20fが排気装置72によって減圧される。また、工程ST13の実行期間では、工程ST12に継続して、流路22fに低温の熱交換媒体が供給される。なお、方法MTでは、複数の基板Wの処理のために、工程ST9〜工程ST13の実行が繰り返されてもよい。
【0087】
方法MTでは、工程ST13の実行後に、チャック本体26を保守するために、
図12に示すように、まず、工程ST21が実行される。工程ST21では、基台22に対するチャック本体26の固定が解除される。工程ST21の実行期間(
図14に示す時点t21から時点t23までの期間)では、第1電極261には電圧は印加されない。工程ST21の実行期間では、直流電源DS2から第2電極262への電圧の印加が停止され、直流電源DS3から第3電極263への電圧の印加が停止される。工程ST21の実行期間では、工程ST13に継続して、直流電源DS4から第4電極264に電圧が印加され、直流電源DS5から第5電極265に電圧が印加される。工程ST21の実行期間では、チャンバ12cは排気装置50によって減圧されている。工程ST21の実行期間では、流路20fが排気装置72によって減圧される。また、工程ST21の実行期間では、流路20g及び溝260gにガス供給部73からのガスが供給される。したがって、チャンバ12cの圧力よりも、チャック本体26の裏面における圧力は高くなる。
【0088】
方法MTでは、工程ST21の開始時点(
図14に示す時点t21)以降に、工程ST22が実行され、基台22の温度が高温(増加された温度)に調整される。工程ST23の実行期間(
図14では、時点t21から時点t23までの期間)では、基台22の流路22fに比較的高温の熱交換媒体が供給され得る。流路22fへの比較的高温の熱交換媒体の供給は、後述の工程ST26の開始時点まで継続し得る。
【0089】
続く工程ST23では、基台22の温度が増加された温度に調整されている状態で、誘電体層24にチャック本体26が一時的に引き付けられる。工程ST23の実行期間(
図14に示す時点t23から時点t24までの期間)では、第1電極261には電圧は印加されない。工程ST23の実行期間では、直流電源DS2から第2電極262にその絶対値が比較的小さい電圧(第5の電圧)が印加され、直流電源DS3から第3電極263にその絶対値が比較的小さい電圧(第6の電圧)が印加される。一実施形態において、工程ST23の実行期間では、直流電源DS2から第2電極262に断続的に第5の電圧が印加され、直流電源DS3から第3電極263に断続的に第6の電圧が印加される。例えば、直流電源DS2から第2電極262への数秒間の第5の電圧の印加と数秒間の第2電極262に対する電圧の印加の停止とが交互に実行され、直流電源DS3から第3電極263への数秒間の第6の電圧の印加と数秒間の第3電極263に対する電圧の印加の停止とが交互に実行される。第5の電圧の絶対値は、上述の第3の電圧の絶対値よりも小さく、第6の電圧の絶対値は、上述の第4の電圧の絶対値よりも小さい。工程ST23の実行期間では、工程ST21に継続して、直流電源DS4から第4電極264に電圧が印加され、直流電源DS5から第5電極265に電圧が印加される。工程ST23の実行期間では、チャンバ12cは排気装置50によって減圧されている。工程ST23の実行期間では、流路20g及び溝260gが排気装置74によって減圧される。工程ST23の実行期間では、流路20fが排気装置72によって減圧される。また、工程ST23の実行期間では、工程ST22に継続して、流路22fに高温の熱交換媒体が供給される。
【0090】
方法MTでは、工程ST23の実行中に工程STJbが実行される。工程STJbでは、基台22の温度とチャック本体26の温度との間の温度差(第2の温度差)が、第2の所定値以下であるか否かについての第2の判定が実行される。基台22の温度は温度センサ77によって測定され、チャック本体26の温度は温度センサ76によって測定される。第2の所定値は、例えば5℃以上、10℃以下の範囲内の値である。工程STJbにおいて、第2の温度差が第2の所定値よりも大きいと判定された場合には、工程ST23の実行が継続される。一方、工程STJbにおいて、第2の温度差が第2の所定値以下であると判定された場合には、工程ST24が実行される。
【0091】
工程ST24では、第2電極262への電圧の印加及び第3電極263への電圧の印加が停止される。第2電極262への電圧の印加の停止及び第3電極263への電圧の印加の停止は、工程ST24の実行期間の開始時点(
図14に示す時点t24)以降、継続される。工程ST24の実行期間(
図14に示す時点t24から時点t25までの期間)では、第1電極261には電圧は印加されない。工程ST24の実行期間では、工程ST23に継続して、直流電源DS4から第4電極264に電圧が印加され、直流電源DS5から第5電極265に電圧が印加される。工程ST24の実行期間では、チャンバ12cは排気装置50によって減圧されている。工程ST24の実行期間では、流路20g及び溝260gにガス供給部73からのガスが供給される。工程ST24の実行期間では、流路20fが排気装置72によって減圧される。また、工程ST24の実行期間では、工程ST22に継続して、流路22fに高温の熱交換媒体が供給される。この工程ST24により、基台22に対するチャック本体26の固定が解除される。
【0092】
続く工程ST25では、チャック本体26に対するフォーカスリングFRの固定が解除され、チャンバ12cの圧力が、例えば大気圧まで、増加される。工程ST25の実行期間(
図14に示す時点t25から時点t26までの期間)では、第1電極261には電圧は印加されない。工程ST25の実行期間では、第2電極262への電圧の印加及び第3電極263への電圧の印加は停止されている。工程ST25の実行期間では、直流電源DS4から第4電極264への電圧の印加が停止され、直流電源DS5から第5電極265への電圧の印加が停止される。直流電源DS4から第4電極264への電圧の印加の停止、及び、直流電源DS5から第5電極265への電圧の印加の停止は、工程ST25の実行期間の開始時点以降、継続する。工程ST25の実行期間では、チャンバ12cの排気装置50による減圧が停止される。工程ST25の実行期間では、流路20g及び溝260gにガス供給部73からのガスが供給されてもよく、されなくてもよい。工程ST25の実行期間では、流路20fにガス供給部71からガスが供給され得る。また、工程ST25の実行期間では、工程ST24に継続して、流路22fに高温の熱交換媒体が供給され得る。
【0093】
続く工程ST26は、
図14に示す時点t26から開始する。工程ST26では、チャンバ12cが開放される。これにより、チャンバ12cの圧力は大気圧に設定される。続く工程ST27は、
図14に示す時点t27から開始する。工程ST27では、チャック本体26が取り外されて、当該チャック本体26の保守が行われる。
【0094】
方法MTでは、基台22の温度とチャック本体26の温度との間に大きな温度差が生じている状態において、工程ST7が実行されて、チャック本体26が比較的小さい静電引力で誘電体層24に引き付けられる。これにより、チャック本体26が誘電体層24を介して基台22に完全に固定されていない状態で、基台22の温度とチャック本体26の温度との間の温度差が減少される。そして、基台22の温度とチャック本体26の温度との間の温度差、即ち、第1の温度差が第1の所定値以下になると、工程ST8において、比較的大きい静電引力により、チャック本体26が誘電体層24を介して基台22に固定される。したがって、基台22の温度とチャック本体26の温度との間の温度差に起因する静電チャック20の損傷及び静電チャック20の機能不全が抑制される。
【0095】
一実施形態の工程ST7では、第1の電圧及び第2の電圧が断続的に第2電極262及び第3電極263にそれぞれ印加される。この実施形態によれば、静電チャック20の損傷がより確実に抑制される。
【0096】
一実施形態では、チャック本体26の保守のために、基台22及び誘電体層24からチャック本体26を取り外す場合には、基台22の温度が上述の低下された温度から増加される。この実施形態では、基台22の温度が増加された温度に調整されているときに、工程ST23において、チャック本体26が比較的小さい静電引力で誘電体層24に引き付けられる。これにより、チャック本体26が誘電体層24を介して基台22に完全に固定されていない状態で、基台22の温度とチャック本体26の温度との間の温度差が減少される。そして、基台22の温度とチャック本体26の温度との間の温度差、即ち、第2の温度差が第2の所定値以下になると、工程ST24において、基台22に対するチャック本体26の固定が解除される。したがって、基台22の温度とチャック本体26の温度との間の温度差に起因する静電チャック20の損傷が抑制される。また、チャック本体26の保守の際には、熱交換媒体用の基台22の流路22fと、当該流路22fに熱交換媒体を供給する流路(配管23a及び配管23bによって提供される流路)とを分離することなく、チャック本体26を基台22から分離することができる。したがって、チャック本体26の保守の際の熱交換媒体の漏れが抑制される。
【0097】
一実施形態の工程ST23では、第5の電圧及び第6の電圧が断続的に第2電極262及び第3電極263にそれぞれ印加される。この実施形態によれば、静電チャック20の損傷がより確実に抑制される。
【0098】
一実施形態において、工程ST21及び工程ST24のうち少なくとも一方の実行中に、流路20gを介して溝260gにガスが供給される。この実施形態では、残留電荷等に起因して、チャック本体26が誘電体層24に引き付けられていても、チャック本体26の溝260gにガスを供給することにより、チャック本体26を誘電体層24から取り外すことができる。
【0099】
以上、種々の実施形態について説明してきたが、上述した実施形態に限定されることなく種々の変形態様を構成可能である。上述した実施形態におけるプラズマ処理装置は、容量結合型のプラズマ処理装置であったが、上述した種々の実施形態のうち何れかの静電チャックを備えるプラズマ処理装置は、誘導結合型のプラズマ処理装置、マイクロ波といった表面波を用いてプラズマを生成するプラズマ処理装置といった、任意のプラズマ処理装置であってもよい。また、方法MTには、上述した種々の実施形態のうち何れかの静電チャックを備える任意のプラズマ処理装置が用いられ得る。