(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6924648
(24)【登録日】2021年8月4日
(45)【発行日】2021年8月25日
(54)【発明の名称】ホウ素含有ガスおよびフッ化水素ガスを使用した原子層エッチング
(51)【国際特許分類】
H01L 21/302 20060101AFI20210812BHJP
H01L 21/3065 20060101ALI20210812BHJP
【FI】
H01L21/302 201A
H01L21/302 104Z
【請求項の数】19
【外国語出願】
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2017-154337(P2017-154337)
(22)【出願日】2017年8月9日
(65)【公開番号】特開2018-26566(P2018-26566A)
(43)【公開日】2018年2月15日
【審査請求日】2020年5月26日
(31)【優先権主張番号】62/373,232
(32)【優先日】2016年8月10日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】000219967
【氏名又は名称】東京エレクトロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100091214
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 進介
(72)【発明者】
【氏名】ロバート ディー.クラーク
(72)【発明者】
【氏名】カンダバラ エヌ.タピリー
【審査官】
佐藤 靖史
(56)【参考文献】
【文献】
国際公開第2016/100873(WO,A1)
【文献】
特開平09−246581(JP,A)
【文献】
特開2016−131238(JP,A)
【文献】
特開2009−064991(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/302
H01L 21/3065
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
原子層エッチング(ALE)の方法であって、
基板を提供するステップと;
プラズマの不在下で、前記基板をフッ化水素(HF)ガスおよびホウ素含有ガスに曝露して、前記基板をエッチングするステップであって、ここで、前記曝露することは、フッ化水素ガスとホウ素含有ガスに交互に曝露することを包含し、前記基板をさらにエッチングするために少なくとも1回繰り返されるステップと;
を含む、方法。
【請求項2】
前記ホウ素含有ガスが水素化ホウ素、ハロゲン化ホウ素、ホウ素アミド、有機ホウ化物、またはそれらの組合せを含有する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記ホウ素含有ガスが、BH3、BCl3、B(CH3)3、およびB(N(CH3)2)3からなる群から選択される、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
原子層エッチング(ALE)の方法であって、
金属酸化物膜を含有する基板を提供するステップと;
前記基板をフッ化水素(HF)ガスに曝露して、前記金属酸化物膜上にフッ素化表面層を形成するステップと;
前記基板をホウ素含有ガスに曝露して、前記フッ素化表面層を前記金属酸化物膜から除去するステップであって、前記曝露するステップはプラズマの不在下で行われる、ステップと;
を含む、方法。
【請求項5】
前記金属酸化物膜をさらにエッチングするために、前記曝露が少なくとも1回繰り返される、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記ホウ素含有ガスが水素化ホウ素、ハロゲン化ホウ素、ホウ素アミド、有機ホウ化物、またはそれらの組合せを含有する、請求項4に記載の方法。
【請求項7】
前記ホウ素含有ガスが、BH3、BCl3、B(CH3)3、およびB(N(CH3)2)3からなる群から選択される、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記金属酸化物膜が、Al2O3、HfO2、TiO2、ZrO2、Y2O3、La2O3、UO2、Lu2O3、Ta2O5、Nb2O5、ZnO、MgO、CaO、BeO、V2O5、FeO、FeO2、CrO、Cr2O3、CrO2、MnO、Mn2O3、RuO、CoO、WO3、およびそれらの組合せからなる群から選択される、請求項4に記載の方法。
【請求項9】
不活性ガスでガスパージするステップを前記曝露ステップの間にさらに含む、請求項4に記載の方法。
【請求項10】
原子層エッチング(ALE)の方法であって、
第1のフッ素化表面層を有する金属酸化物膜を含む基板を提供するステップと;
前記基板を第1のホウ素含有ガスに曝露して、前記第1のフッ素化表面層を前記金属酸化物膜から除去するステップと;
前記基板をフッ化水素(HF)ガスに曝露して、前記金属酸化物膜上に第2のフッ素化表面層を形成するステップと;
前記基板を第2のホウ素含有ガスに曝露して、前記第2のフッ素化表面層を前記金属酸化物膜から除去するステップと;
を含む、ここで、前記曝露するステップはプラズマの不在下で行われる、方法。
【請求項11】
前記金属酸化物膜をさらにエッチングするために、前記HFガスおよび前記第2のホウ素含有ガスへの前記曝露が少なくとも1回繰り返される、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記第1および第2のホウ素含有ガスが水素化ホウ素、ハロゲン化ホウ素、ホウ素アミド、有機ホウ化物、またはそれらの組合せを含有する、請求項10に記載の方法。
【請求項13】
前記第1および第2のホウ素含有ガスが、BH3、BCl3、B(CH3)3、およびB(N(CH3)2)3からなる群から選択される、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記金属酸化物膜が、Al2O3、HfO2、TiO2、ZrO2、Y2O3、La2O3、UO2、Lu2O3、Ta2O5、Nb2O5、ZnO、MgO、CaO、BeO、V2O5、FeO、FeO2、CrO、Cr2O3、CrO2、MnO、Mn2O3、RuO、CoO、WO3、およびそれらの組合せからなる群から選択される、請求項10に記載の方法。
【請求項15】
前記金属酸化物膜が金属層を酸化させることによって形成される、請求項10に記載の方法。
【請求項16】
不活性ガスでガスパージするステップを前記曝露ステップの間にさらに含む、請求項10に記載の方法。
【請求項17】
前記第1のフッ素化表面層が水性HFによる湿式処理を使用して形成される、請求項10に記載の方法。
【請求項18】
前記第1のフッ素化表面層が乾式処理によって形成される、請求項10に記載の方法。
【請求項19】
前記乾式処理がHFガスまたは有機フッ素含有エッチングガスを包含する、請求項18に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2016年8月10日に出願された米国仮特許出願第62/373,232号明細書(その内容全体が参照により本明細書に援用される)に関連し、およびそれに対する優先権を主張する。
【0002】
本発明は、半導体の製造および半導体デバイスの分野に関し、特に、ホウ素含有ガスおよびフッ化水素(HF)ガスを使用した基板の原子層エッチング(ALE)に関する。
【背景技術】
【0003】
デバイスの特徴サイズが変更され続けるため、微細な特徴のエッチングを正確に制御することが大きい課題となりつつある。非常に縮小されたノードの10nm以下の場合、デバイスには、原子スケールの忠実度または非常に厳格なプロセス変動性が要求される。変動性のために、デバイス性能に対する大きい影響が存在する。これに関して、ALEなどの自己制御式で原子スケールの加工方法が必要となりつつある。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
基板のALEの方法が提供される。一実施形態によると、方法は、基板を提供するステップと、基板をHFガスおよびホウ素含有ガスに曝露して、基板をエッチングするステップとを含む。
【0005】
別の実施形態によると、方法は、金属酸化物膜を含む基板を提供するステップと、基板をHFガスに曝露して、金属酸化物膜上にフッ素化表面層を形成するステップと、基板をホウ素含有ガスに曝露して、フッ素化表面層を金属酸化物膜から除去するステップとを含む。金属酸化物膜をさらにエッチングするために、曝露は少なくとも1回繰り返され得る。
【0006】
さらに別の実施形態によると、方法は、第1のフッ素化表面層を有する金属酸化物膜を含む基板を提供するステップと、基板を第1のホウ素含有ガスに曝露して、第1のフッ素化表面層を金属酸化物膜から除去するステップと、基板をHFガスに曝露して、金属酸化物膜上に第2のフッ素化表面層を形成するステップと、基板を第2のホウ素含有ガスに曝露して、第2のフッ素化表面層を金属酸化物膜から除去するステップとを含む。金属酸化物膜をさらにエッチングするために、HFガスおよび第2のホウ素含有ガスへの曝露は少なくとも1回繰り返され得る。
【0007】
本発明のより詳細な理解および本発明に伴う利点の多くは、添付の図面と関連させて考慮する場合に以下の詳細な説明を参照することによってよりよく理解できるようになるため、容易に得られるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の一実施形態による基板の加工のためのプロセスフロー図である。
【
図2】本発明の一実施形態による基板の加工のためのプロセスフロー図である。
【
図3A-3D】本発明の一実施形態による基板の加工方法を断面図で概略的に示す。
【
図4】本発明の一実施形態による基板の加工のためのプロセスフロー図である。
【
図5A-5F】本発明の一実施形態による基板の加工方法を断面図で概略的に示す。
【
図6】本発明の一実施形態による基板の加工のためのプロセスフロー図である。
【
図7】本発明の一実施形態による基板の加工のためのプロセスフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
高度な半導体技術ノードのための高度な技術の開発では、半導体デバイスの製造者に対する前例のない課題が生じ、この場合、これらのデバイスはエッチングのばらつきの原子スケールでの生産管理が必要となる。ALEは、半導体産業では従来の連続エッチングに代わるものとして見られている。ALEは、連続自己制御反応を使用して材料の薄層を除去する基板加工技術の1つであり、原子スケール時代において必要なエッチングのばらつきの必須の制御を実現するための最も有望な技術の1つと見なされている。
【0010】
ALEは、連続自己制御反応を使用する膜エッチング技術として定義されることが多い。この概念は、第2の吸着ステップの代わりに除去が行われ、その結果として層が加えられるのでなく層毎の材料除去が行われることを除けば、原子層堆積(ALD)と類似している。最も単純なALEの実施は、表面改質(1)および除去(2)の2つの連続するステップからなる。表面改質により、十分に画定された厚さの薄い反応性表面層が形成され、この層は未改質の材料よりも後により容易に除去される。これらの薄い反応性表面層は、材料の最外層の化学組成および/または物理的構造の急激な勾配を特徴とする。除去ステップは、薄い反応性表面層の少なくとも一部が除去されながら、下にある基板が無傷のまま維持され、したがって次のエッチングサイクルに適切な状態に表面が「再設定」される。除去される材料の総量は、繰り返されるサイクルの数によって決定される。
【0011】
本発明の実施形態は、半導体デバイスを製造する方法を提供し、特に、HFガスおよびホウ素含有ガスを使用したALEを提供する。
図1は、本発明の一実施形態による基板の加工のためのプロセスフロー図である。プロセスフロー1は、100において基板を提供するステップと、および102において基板をHFガスおよびホウ素含有ガスに曝露して、基板をエッチングするステップとを含む。曝露は交互に行われ得、またはある程度時間的に重なってもよく、基板をさらにエッチングするために少なくとも1回繰り返され得る。ホウ素含有ガスは、水素化ホウ素、ハロゲン化ホウ素、ホウ素アミド、有機ホウ化物、またはそれらの組合せを含有することができる。ホウ素含有ガスは、BH
3、BCl
3、B(CH
3)
3、およびB(N(CH
3)
2)
3からなる群から選択され得る。一実施形態によると、基板は、ガス曝露によってエッチングされる金属酸化物膜を含む。金属酸化物膜は、Al
2O
3、HfO
2、TiO
2、ZrO
2、Y
2O
3、La
2O
3、UO
2、Lu
2O
3、Ta
2O
5、Nb
2O
5、ZnO、MgO、CaO、BeO、V
2O
5、FeO、FeO
2、CrO、Cr
2O
3、CrO
2、MnO、Mn
2O
3、RuO、CoO、WO
3、およびそれらの組合せからなる群から選択され得る。
【0012】
図2は、本発明の一実施形態による基板の加工のためのプロセスフロー図である。
図3A〜3Dも参照すると、プロセスフロー2は、200において、層300上に金属酸化物膜302を含む基板3を提供するステップを含む。たとえば、金属酸化物膜302は、Al
2O
3、HfO
2、TiO
2、ZrO
2、Y
2O
3、La
2O
3、UO
2、Lu
2O
3、Ta
2O
5、Nb
2O
5、ZnO、MgO、CaO、BeO、V
2O
5、FeO、FeO
2、CrO、Cr
2O
3、CrO
2、MnO、Mn
2O
3、RuO、CoO、WO
3、およびそれらの組合せからなる群から選択され得る。202において、基板3をHFガス306に曝露して、金属酸化物膜302上にフッ素化表面層304を形成する。204において、基板3に不活性ガス(たとえば、アルゴン(Ar)または窒素(N
2))をパージして、過剰のHFおよび反応副生成物を除去することができる。206において、基板3をホウ素含有ガス308に曝露して、フッ素化表面層304と反応させてフッ素化表面層304を除去する。反応副生成物は、基板3から脱着する揮発性BF
3種および金属含有種を含み、プロセスチャンバーから効率的に排出される。本発明者らは、ホウ素含有ガス308をフッ素化表面種とともに使用することで、有利には、プラズマの非存在下での低温熱ALEが可能となることを発見した。ホウ素含有ガス308は、水素化ホウ素、ハロゲン化ホウ素、ホウ素アミド、有機ホウ化物、またはそれらの組合せを含有することができる。ホウ素含有ガス308は、BH
3、BCl
3、B(CH
3)
3、およびB(N(CH
3)
2)
3からなる群から選択され得る。208において、基板200に不活性ガスをパージして、過剰のホウ素含有ガスおよび反応副生成物を除去することができる。プロセスの矢印210で示されるように、金属酸化物膜302をさらにエッチングするために、交互の曝露202〜208を少なくとも1回繰り返すことができる。交互の曝露202〜208が1つのALEサイクルを構成する。
【0013】
図4は、本発明の一実施形態による基板の加工のためのプロセスフロー図である。
図5A〜5Fも参照すると、プロセスフロー4は、400において、第1のフッ素化表面層504を有する金属酸化物膜502を含む基板5を提供するステップを含む。たとえば、金属酸化物膜502は、Al
2O
3、HfO
2、TiO
2、ZrO
2、Y
2O
3、La
2O
3、UO
2、Lu
2O
3、Ta
2O
5、Nb
2O
5、ZnO、MgO、CaO、BeO、V
2O
5、FeO、FeO
2、CrO、Cr
2O
3、CrO
2、MnO、Mn
2O
3、RuO、CoO、WO
3、およびそれらの組合せからなる群から選択され得る。第1のフッ素化表面層504は、湿式処理により(たとえば、水性HFを使用して)、または乾式処理により(たとえば、HFガスを使用して)形成することができる。一例では、第1のフッ素化表面層504は、有機フッ素含有エッチングガスを利用するエッチングプロセスによって形成され得る。402において、基板5を第1のホウ素含有ガス506に曝露して、第1のフッ素化表面層504を金属酸化物膜502から除去する。404において、基板5に不活性ガスをパージして、過剰の第1のホウ素含有ガスおよび反応副生成物を除去することができる。406において、基板5をHFガス508に曝露して、金属酸化物膜502上に第2のフッ素化表面層510を形成する。408において、基板5に不活性ガスをパージして、過剰のHFガスおよび反応副生成物を除去することができる。410において、基板500を第2のホウ素含有ガス512に曝露して、第2のフッ素化表面層510を金属酸化物膜502から除去する。
【0014】
第1および第2のホウ素含有ガス506および512は、水素化ホウ素、ハロゲン化ホウ素、ホウ素アミド、有機ホウ化物、またはそれらの組合せを含有することができる。第1および第2のホウ素含有ガス506および512は、独立して、BH
3、BCl
3、B(CH
3)
3、およびB(N(CH
3)
2)
3からなる群から選択され得る。プロセスの矢印412で示されるように、金属酸化物膜502をさらにエッチングするために、曝露404〜410を少なくとも1回繰り返すことができる。
【0015】
図6は、本発明の一実施形態による基板の加工のためのプロセスフロー図である。このプロセスフローは、HFガスおよびBH
3ガスの交互曝露を使用したAl
2O
3の代表的なALEの半反応および全反応を示している。反応副生成物は、基板から脱着する揮発性のBF
3種、AlH
3種、およびH
2O種を含み、プロセスチャンバーから効率的に排出される。
【0016】
図7は、本発明の一実施形態による基板の加工のためのプロセスフロー図である。このプロセスフローは、HFガスおよびBL
3ガスの交互曝露を使用したAl
2O
3の代表的なALEの半反応および全反応を示しており、ここで、Lは水素、ハロゲン、アミド、または有機基を含むことができる。BL
3の例としては、BH
3、BCl
3、B(CH
3)
3、およびB(N(CH
3)
2)
3が挙げられる。反応副生成物は、基板から脱着する揮発性のBF
3種、AlL
3種、およびH
2O種を含み、プロセスチャンバーから効率的に排出される。
【0017】
ホウ素含有ガスおよびHFガスを使用した原子層エッチングの複数の実施形態を記載してきた。本発明の実施形態の以上の記述は、例示および記述の目的で示している。これは、網羅的であることを意図したものでなく、開示される厳密な形態に本発明が限定されることを意図したものでもない。この記述および以下の請求項は、説明の目的でのみ使用され、限定として解釈すべきではない用語を含む。関連する技術分野の当業者であれば、以上の教示を考慮することで多くの修正形態および変形形態が可能であることを認識できる。したがって、本発明の範囲は、この詳細な説明によって限定されるのではなく、本明細書に添付の請求項によって限定されることが意図される。
【符号の説明】
【0018】
1 プロセスフロー
2 プロセスフロー
3 基板
4 プロセスフロー
5 基板
300 層
302 金属酸化物膜
304 フッ素化表面層
306 HFガス
308 ホウ素含有ガス
404〜410 曝露
412 矢印
500 基板
502 金属酸化物膜
504 第1のフッ素化表面層
506 第1のホウ素含有ガス
508 HFガス
510 第2のフッ素化表面層
512 第2のホウ素含有ガス