(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記計測用マーカは、前記被写体の実寸サイズを示す第1の計測用マーカ、又は、前記計測補助光によって形成される前記被写体上の交差ライン、及び前記交差ライン上に前記被写体の大きさの指標となる目盛りからなる第2の計測用マーカを含む請求項5記載の内視鏡装置。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1に示すように、内視鏡装置10は、内視鏡12と、光源装置14と、プロセッサ装置16と、モニタ18と、ユーザーインターフェース19とを有する。内視鏡12は光源装置14と光学的に接続され、且つ、プロセッサ装置16と電気的に接続される。プロセッサ装置16は、画像を表示するモニタ18(表示部)に電気的に接続されている。ユーザーインターフェース19は、プロセッサ装置16に接続されており、プロセッサ装置16に対する各種設定操作等に用いられる。なお、ユーザーインターフェース19は図示したキーボードの他、マウスなどが含まれる。
【0015】
内視鏡12は、被検体内に挿入される挿入部12aと、挿入部12aの基端部分に設けられた操作部12bと、挿入部12aの先端側に設けられる湾曲部12c及び先端部12dを有している。操作部12bのアングルノブ12eを操作することにより、湾曲部12cは湾曲動作する。この湾曲動作に伴って、先端部12dが所望の方向に向けられる。
【0016】
内視鏡12は、通常モードと、測長モードとを備えており、これら2つのモードは内視鏡12の操作部12bに設けられたモード切替スイッチ13aによって切り替えられる。通常モードは、照明光によって観察対象を照明するモードである。測長モードは、照明光又は計測補助光を観察対象に照明し、且つ、観察対象の撮像により得られる撮像画像上に、観察対象の大きさなどの測定に用いられる計測用マーカを表示する。計測補助光は、被写体の計測に用いられる光である。
【0017】
また、内視鏡12の操作部12bには、撮像画像の静止画の取得を指示する静止画取得指示を操作するためのフリーズスイッチ13b(静止画取得指示部)が設けられている。ユーザーがフリーズスイッチ13bを操作することにより、モニタ18の画面がフリーズ表示し、合わせて、静止画取得を行う旨のアラート音(例えば「ピー」)を発する。そして、フリーズスイッチ13bの操作タイミング前後に得られる撮像画像の静止画が、プロセッサ装置16内の静止画保存部37(
図3参照)に保存される。また、測長モードに設定されている場合には、撮像画像の静止画と合わせて、後述する計測情報も保存することが好ましい。なお、静止画保存部37はハードディスクやUSB(Universal Serial Bus)メモリなどの記憶部である。プロセッサ装置16がネットワークに接続可能である場合には、静止画保存部37に代えて又は加えて、ネットワークに接続された静止画保存サーバ(図示しない)に撮像画像の静止画を保存するようにしてもよい。
【0018】
なお、フリーズスイッチ13b以外の操作機器を用いて、静止画取得指示を行うようにしてもよい。例えば、プロセッサ装置16にフットペダルを接続し、ユーザーが足でフットペダル(図示しない)を操作した場合に、静止画取得指示を行うようにしてもよい。モード切替についてのフットペダルで行うようにしてもよい。また、プロセッサ装置16に、ユーザーのジェスチャーを認識するジェスチャー認識部(図示しない)を接続し、ジェスチャー認識部が、ユーザーによって行われた特定のジェスチャーを認識した場合に、静止画取得指示を行うようにしてもよい。モード切替についても、ジェスチャー認識部を用いて行うようにしてもよい。
【0019】
また、モニタ18の近くに設けた視線入力部(図示しない)をプロセッサ装置16に接続し、視線入力部が、モニタ18のうち所定領域内にユーザーの視線が一定時間以上入っていることを認識した場合に、静止画取得指示を行うようにしてもよい。また、プロセッサ装置16に音声認識部(図示しない)を接続し、音声認識部が、ユーザーが発した特定の音声を認識した場合に、静止画取得指示を行うようにしてもよい。モード切替についても、音声認識部を用いて行うようにしてもよい。また、プロセッサ装置16に、タッチパネルなどのオペレーションパネル(図示しない)を接続し、オペレーションパネルに対してユーザーが特定の操作を行った場合に、静止画取得指示を行うようにしてもよい。モード切替についても、オペレーションパネルを用いて行うようにしてもよい。
【0020】
図2に示すように、内視鏡12の先端部は略円形となっており、内視鏡12の撮像光学系を構成する光学部材のうち最も被写体側に位置する対物レンズ21と、被写体に対して照明光を照射するための照明レンズ22と、後述する計測補助光を被写体に照明するための計測補助用レンズ23と、処置具を被写体に向けて突出させるための開口24と、送気送水を行うための送気送水ノズル25とが設けられている。
【0021】
対物レンズ21の光軸Axは、紙面に対して垂直な方向に延びている。縦の第1方向D1は、光軸Axに対して直交しており、横の第2方向D2は、光軸Ax及び第1方向D1に対して直交する。対物レンズ21と計測補助用レンズ23とは、第1方向D1に沿って配列されている。
【0022】
図3に示すように、光源装置14は、光源部26と、光源制御部27とを備えている。光源部26(照明光光源部)は、被写体を照明するための照明光を発生する。光源部26から出射された照明光は、ライトガイド28に入射され、照明レンズ22を通って被写体に照射される。光源部26としては、照明光の光源として、白色光を出射する白色光源、又は、白色光源とその他の色の光を出射する光源(例えば青色光を出射する青色光源)を含む複数の光源等が用いられる。光源制御部27は、プロセッサ装置16のシステム制御部41と接続されている。光源制御部27は、システム制御部41からの指示に基づいて光源部26を制御する。システム制御部41(発光用制御部)は、光源制御部27に対して、光源制御に関する指示を行う他に、計測補助光出射部30の光源30a(
図4参照)も制御する。システム制御部41による光源制御の詳細については後述する。
【0023】
内視鏡12の先端部12dには、照明光学系29a、撮像光学系29b、及び計測補助光出射部30が設けられている。照明光学系29aは照明レンズ22を有しており、この照明レンズ22を介して、ライトガイド28からの光が観察対象に照射される。撮像光学系29bは、対物レンズ21及び撮像素子32を有している。観察対象からの反射光は、対物レンズ21を介して、撮像素子32に入射する。これにより、撮像素子32に観察対象の反射像が結像される。
【0024】
撮像素子32はカラーの撮像センサであり、被検体の反射像を撮像して画像信号を出力する。この撮像素子32は、CCD(Charge Coupled Device)撮像センサやCMOS(Complementary Metal-Oxide Semiconductor)撮像センサ等であることが好ましい。本発明で用いられる撮像素子32は、R(赤)、G(緑)B(青)の3色のRGB画像信号を得るためのカラーの撮像センサである。撮像素子32は、撮像制御部33によって制御される。
【0025】
撮像素子32から出力される画像信号は、CDS・AGC回路34に送信される。CDS・AGC回路34は、アナログ信号である画像信号に相関二重サンプリング(CDS(Correlated Double Sampling))や自動利得制御(AGC(Auto Gain Control))を行う。CDS・AGC回路34を経た画像信号は、A/D変換器(A/D(Analog /Digital)コンバータ)35により、デジタル画像信号に変換される。A/D変換されたデジタル画像信号は、通信I/F(Interface)36を介して、プロセッサ装置16に入力される。
【0026】
プロセッサ装置16は、内視鏡12の通信I/F36と接続される通信I/F(Interface)38と、信号処理部39と、表示制御部40と、システム制御部41とを備えている。通信I/Fは、内視鏡12の通信I/F36から伝送されてきた画像信号を受信して信号処理部39に伝達する。信号処理部39は、通信I/F38から受けた画像信号を一時記憶するメモリを内蔵しており、メモリに記憶された画像信号の集合である画像信号群を処理して、撮像画像を生成する。なお、信号処理部39では、測長モードに設定されている場合には、撮像画像に対して、血管などの構造を強調する構造強調処理や、観察対象のうち正常部と病変部などとの色差を拡張した色差強調処理を施すようにしてもよい。
【0027】
表示制御部40は、信号処理部39によって生成された撮像画像をモニタ18に表示する。システム制御部41は、内視鏡12に設けられた撮像制御部33を介して、撮像素子32の制御を行う。撮像制御部33は、撮像素子32の制御に合わせて、CDS/AGC34及びA/D35の制御も行う。
【0028】
図4に示すように、計測補助光出射部30(特定光光源部)は、光源30aと、回折光学素子DOE30b(Diffractive Optical Element)と、プリズム30cと、計測補助用レンズ23とを備える。光源30aは、撮像素子32の画素によって検出可能な色の光(具体的には可視光)を出射するものであり、レーザー光源LD(Laser Diode)又はLED(Light Emitting Diode)等の発光素子と、この発光素子から出射される光を集光する集光レンズとを含む。
【0029】
光源30aが出射する光の波長は、例えば、600nm以上650nm以下の赤色光であることが好ましい。もしくは、495nm以上570nm以下の緑色光を用いてもよい。光源30aはシステム制御部41によって制御され、システム制御部41からの指示に基づいて光出射を行う。DOE30bは、光源から出射した光を、計測情報を得るための計測補助光(特定光)に変換する。
【0030】
プリズム30cは、DOE30bで変換後の計測補助光の進行方向を変えるための光学部材である。プリズム30cは、対物レンズ21及びレンズ群を含む撮像光学系の視野と交差するように、計測補助光の進行方向を変更する。計測補助光の進行方向の詳細についても、後述する。プリズム30cから出射した計測補助光Lmは、計測補助用レンズ23を通って、被写体へと照射される。計測補助光が被写体に照射されることにより、
図5に示すように、被写体において、円状領域としてのスポットSPが形成される。このスポットSPの位置は、位置特定部によって特性され、また、スポットSPの位置に応じて、実寸サイズを表す計測用マーカが設定される。設定された計測用マーカは、撮像画像上に表示される。なお、計測用マーカには、後述するように、第1の計測用マーカ、第2の計測用マーカなど複数の種類が含まれ、いずれの種類の計測用マーカを撮像画像上に表示するかについては、ユーザーの指示によって選択が可能となっている。ユーザーの指示としては、例えば、ユーザーインターフェース19が用いられる。
【0031】
なお、計測補助用レンズ23に代えて、内視鏡の先端部12dに形成される計測補助用スリットとしてもよい。また、計測補助用レンズ23には、反射防止コート(AR(Anti-Reflection)コート)(反射防止部)を施すことが好ましい。このように反射防止コートを設けるのは、計測補助光が計測補助用レンズ23を透過せずに反射して、被写体に照射される計測補助光の割合が低下すると、後述する位置特定部50が、計測補助光により被写体上に形成されるスポットSPの位置を認識し難くなるためである。
【0032】
なお、計測補助光出射部30は、計測補助光を撮像光学系の視野に向けて出射できるものであればよい。例えば、光源30aが光源装置に設けられ、光源30aから出射された光が光ファイバによってDOE30bにまで導光されるものであってもよい。また、プリズム30cを用いずに、光源30a及びDOE30bの向きを光軸Axに対して斜めに設置することで、撮像光学系の視野を横切る方向に計測補助光Lmを出射させる構成としてもよい。
【0033】
計測補助光の進行方向については、
図6に示すように、計測補助光Lmの光軸Lmが対物レンズ21の光軸Axと交差する状態で、計測補助光Lmを出射する。観察距離の範囲Rxにおいて観察可能であるとすると、範囲Rxの近端Px、中央付近Py、及び遠端Pzでは、各点での撮像範囲(矢印Qx、Qy、Qzで示す)における計測補助光Lmによって被写体上に形成されるスポットSPの位置(各矢印Qx、Qy、Qzが光軸Axと交わる点)が異なることが分かる。なお、撮像光学系の撮影画角は2つの実線101で挟まれる領域内で表され、この撮影画角のうち収差の少ない中央領域(2つの点線102で挟まれる領域)で計測を行うようにしている。
【0034】
以上のように、計測補助光の光軸Lmを光軸Axと交差する状態で、計測補助光Lmを出射することによって、観察距離の変化に対するスポット位置の移動の感度が高いことから、被写体の大きさを高精度に計測することができる。そして、計測補助光が照明された被写体を撮像素子32で撮像することによって、スポットSPを含む撮像画像が得られる。撮像画像では、スポットSPの位置は、対物レンズ21の光軸Axと計測補助光Lmの光軸Lmとの関係、及び観察距離に応じて異なるが、観察距離が近ければ、同一の実寸サイズ(例えば5mm)を示すピクセル数が多くなり、観察距離が遠ければピクセル数が少なくなる。
【0035】
したがって、詳細を後述するように、スポットSPの位置と被写体の実寸サイズに対応する計測情報(ピクセル数)との関係を示す情報を予め記憶しておくことで、スポットSPの位置から計測情報を算出することができる。
【0036】
システム制御部41による光源制御の詳細について説明する。通常モードに設定されている場合には、システム制御部41は、光源装置14の光源部26に対して、照明光を常時発するように指示する。これにより、光源部26からは照明光が発せられる。照明光は、ライトガイド28を介して、被写体に照射される。なお、通常モードの場合には、計測補助光出射部30の光源30aは停止している。
【0037】
一方、測長モードに設定されている場合には、システム制御部41は、光源装置14の光源部26に対して、照明光を連続的に発光するように制御し、且つ、計測補助光出射部30の光源30aに対して、計測補助光Lmを特定フレーム間隔にて点灯と減光を繰り返すように制御する。具体的には、
図7に示すように、特定フレーム間隔を1フレーム間隔とした場合には、照明光のみが点灯(on)され、計測補助光Lmが消灯(off)する発光フレームFLxと、照明光と計測補助光Lmの両方が点灯(on)される発光フレームFLyとが交互に行われる。発光フレームFLxの場合には、照明光によって照明された被写体を撮像素子32で撮像して得られる撮像画像として、第1撮像画像が得られる。また、発光フレームFLyの場合には、照明光及び計測補助光によって照明された被写体を撮像素子32で撮像して得られる撮像画像として、第2撮像画像が得られる。なお、発光フレームFLxにおいては、計測補助光を完全に消灯するのではなく、発光フレームFLyと比較して、計測補助光の光強度を特定値まで減少させる減光を行うようにしてもよい。なお、撮像画像は3色のRGB画像とするが、その他のカラー画像(輝度信号Y、色差信号Cr、Cb)であってもよい。
【0038】
図8に示すように、プロセッサ装置16の信号処理部39は、スポットSP(特定領域)の位置認識、及び計測用マーカの設定を行うために、第2撮像画像におけるスポットSPの位置を特定する位置特定部50と、スポットSPの位置に基づいて、第1撮像画像又は第2撮像画像を加工して特定画像を生成する画像加工部52とを備えている。特定画像は、表示制御部40によって、モニタ18に表示される。なお、信号処理部39は、測長モードに設定されている場合には、撮像画像として、第1撮像画像と第2撮像画像が入力される。これら第1撮像画像又は第2撮像画像は、通信I/F38(画像取得部)で取得される。
【0039】
位置特定部50は、スポットSPの位置の特定の妨げになるノイズ成分を除去するノイズ成分除去部53を有している。第2撮像画像中において、スポットSPを形成する計測補助光の色とは異なるものの、計測補助光に近い色(計測補助光近似色)が含まれている場合には、スポットSPの位置を正確に特定することができないことがある。そこで、ノイズ成分除去部53は、計測補助光近似色の成分をノイズ成分として第2撮像画像から除去する。位置特定部50は、ノイズ成分が除かれたノイズ除去済みの第2撮像画像に基づいて、スポットSPの位置を特定する。
【0040】
ノイズ成分除去部53は、色情報変換部54と、二値化処理部56と、マスク画像生成部58と、除去部60を備えている。ノイズ除去済みの第2撮像画像を得るための処理の流れについて、
図9を用いて説明する。色情報変換部54は、RGB画像である第1撮像画像を第1色情報画像に変換し、RGB画像である第2撮像画像を第2色情報画像に変換する。色情報としては、例えば、HSV(H(Hue(色相))、S(Saturation(彩度))、V(Value(明度)))とすることが好ましい。その他、色情報として、色差Cr、Cbとしてもよい。二値化処理部56は、第1色情報画像を二値化して二値化第1色情報画像にし、第2色情報画像を二値化して二値化第2色情報画像にする。二値化するための閾値は、計測補助光の色を含む二値化用閾値とする。
図10、
図11に示すように、二値化第1色情報画像には、ノイズ成分の色情報62が含まれる。二値化第2色情報画像には、計測補助光の色情報64の他に、ノイズ成分の色情報62が含まれる。
【0041】
マスク画像生成部58は、二値化第1色情報画像と二値化第2色情報画像とに基づいて、第2撮像画像から、ノイズ成分の色情報を除去し、また、計測補助光の色情報を抽出するためのマスク画像を生成する。マスク画像生成部58は、
図12に示すように、二値化第1撮像画像に含まれるノイズ成分から、ノイズ成分を有するノイズ成分の領域63を特定する。そして、マスク画像生成部58は、
図13に示すように、二値化第2色情報画像のうち、計測補助光の色情報64の領域について色情報を抽出する抽出領域とし、ノイズ成分の領域について色情報を抽出しない非抽出領域とするマスク画像を生成する。なお、ノイズ成分の領域63は、ノイズ成分の色情報62が占める領域よりも大きくすることが好ましい。これは、手ぶれ等が生ずる場合には、ノイズ成分の色情報62の領域は、手ぶれ等が無い場合と比較して大きくなるためである。また、
図10〜
図13は、二値化第1色情報画像、二値化第2色情報画像、ノイズ成分の領域、マスク画像の説明のために模式的に記載したものである。
【0042】
除去部60は、マスク画像を用いて第2色情報画像から色情報の抽出を行うことによって、ノイズ成分の色情報が除去され、且つ、計測補助光の色情報が抽出されたノイズ除去済み第2色情報画像が得られる。ノイズ除去済み第2色情報画像は、色情報をRGB画像に戻すRGB変換処理を行うことによって、ノイズ除去済み第2撮像画像となる。位置特定部50は、ノイズ除去済み第2撮像画像に基づいて、スポットSPの位置の特定を行う。ノイズ除去済み第2撮像画像は、ノイズ成分が除かれているため、スポットSPの位置を正確に特定することができる。
【0043】
画像加工部52は、画像選択部70とマーカ用テーブルとを有している。画像選択部70は、第1撮像画像又は第2撮像画像のうち、スポットSPの位置に基づく加工を行う対象画像である加工対象画像を選択する。画像加工部52は、加工対象画像として選択された画像に対して、スポットSPの位置に基づく加工を行う。画像選択部70は、スポットSPの位置に関する状態に基づいて、加工対象画像の選択を行う。なお、画像選択部70は、ユーザーによる指示により、加工対象画像の選択を行うようにしてもよい。ユーザーによる指示には、例えば、ユーザーインターフェース19を用いられる。
【0044】
具体的には、スポットSPが特定期間中、特定範囲内に入っている場合には、被写体又は内視鏡の先端部12dに動きが少ないと考えられるため、第1撮像画像を加工対象画像として選択する。このように動きが少ない場合には、スポットSPが無くとも、被写体に含まれる病変部に容易に位置合わせすることができると考えられる。また、第1撮像画像には、計測補助光の色成分が含まれないため、被写体の色再現性を損ねることがない。一方、スポットSPの位置が特定期間中、特定範囲内に入っていない場合には、被写体又は内視鏡の先端部12の動きが大きいと考えられるため、第2撮像画像を加工対象画像として選択する。このように動きが大きい場合には、ユーザーは、スポットSPが病変部に位置するように、内視鏡12を操作する。これにより、病変部への位置合わせがし易くなる。
【0045】
画像加工部52は、第2撮像画像におけるスポットSPの位置に基づいて、計測用マーカとして、被写体の実寸サイズを示す第1の計測用マーカを生成する。画像加工部52は、第2撮像画像におけるスポットSPの位置と被写体の実寸サイズを示す第1の計測用マーカとの関係を記憶したマーカ用テーブル72を参照して、スポットの位置からマーカの大きさを算出する。そして、画像加工部52では、マーカの大きさに対応する第1の計測用マーカを生成する。
【0046】
スポットの位置の特定と第1の計測用マーカの生成が完了すると、表示制御部40は、照明光によって照明された被写体を撮像して得られる第1撮像画像(スポットSPが写り込んでいない)に対して、スポットの位置にスポット表示部と、第1の計測用マーカをモニタ18に表示する。なお、測長モードを用いる実際の内視鏡診断においては、ユーザーは、内視鏡の先端部12dを患者の患部にまで到達するまで、内視鏡12を患者の体内に挿入または抜去する。内視鏡の先端部12dが患部に到達したら、患部に対して、計測補助光又は計測用マーカを位置合わせする。計測用マーカを用いて患部のサイズを計測する。患部のサイズに基づく診断の結果によって、患部に関する処置(切除等)についての方針を決定する。
【0047】
第1の計測用マーカとしては、例えば、十字型の計測マーカを用いる。この場合、
図14に示すように、観察距離が近端Pxに近い場合には、被写体の腫瘍tm1上に形成されたスポット表示部SP1の中心に合わせて、実寸サイズ5mm(第2撮像画像の水平方向及び垂直方向)を示す十字型のマーカM1が表示される。腫瘍tm1と十字型のマーカM1により定められる範囲とはほぼ一致しているため、腫瘍tm1は5mm程度と計測することができる。なお、第1撮像画像に対しては、スポット表示部を表示せず、第1の計測用マーカのみを表示するようにしてもよい。
【0048】
なお、第1撮像画像では、計測補助光Lmによって形成されるスポットは写り込んでいないため、認識したスポットSPの位置に対応する部分に、スポットの位置であることが分かるような明るさ及び色によってスポット表示部を表示する。スポットの色と被写体の観察部分の色が同じような色(赤色)の場合、色がにじんで観察部分の視認性が低下することがあるが、このように、スポットが写り込んでいない第1撮像画像に、スポットを表したスポット表示部を表示することで、計測補助光による色のにじみを避けることができるため、観察部分の視認性を低下させることはない。
【0049】
同様にして、
図15に示すように、観察距離が中央付近Pyに近い場合、被写体の腫瘍tm2上に形成されたスポット表示部SP2の中心に合わせて、実寸サイズ5mm(第2撮像画像の水平方向及び垂直方向)を示す十字型のマーカM2が表示される。また、
図16に示すように、被写体の腫瘍tm3上に形成されたスポット表示部SP3の中心に合わせて、実寸サイズ5mm(第2撮像画像の水平方向及び垂直方向)を示す十字型のマーカM3が表示される。以上のように、観察距離によって撮像素子32の撮像面におけるスポットの位置が異なり、これに従って、マーカの表示位置も異なっている。以上の
図14〜
図16に示すように、観察距離が長くなるにつれて同一の実寸サイズ5mmに対応する第1の計測用マーカの大きさが小さくなっている。
【0050】
なお、
図14〜
図16では、スポットSPの中心とマーカの中心を一致させて表示しているが、計測精度上問題にならない場合には、スポットSPから離れた位置に第1の計測用マーカを表示してもよい。ただし、この場合にもスポットの近傍に第1の計測用マーカを表示することが好ましい。また、第1の計測用マーカを変形して表示するのではなく、撮像画像の歪曲収差を補正し変形させない状態の第1の計測用マーカを補正後の撮像画像に表示するようにしてもよい。
【0051】
また、
図14〜
図16では、被写体の実寸サイズ5mmに対応する第1の計測用マーカを表示しているが、被写体の実寸サイズは観察対象や観察目的に応じて任意の値(例えば、2mm、3mm、10mm等)を設定してもよい。また、
図14〜
図16では、第1の計測用マーカを、縦線と横線が直交する十字型としているが、
図17に示すように、十字型の縦線と横線の少なくとも一方に、目盛りMxを付けた目盛り付き十字型としてもよい。また、第1の計測用マーカとして、縦線、横線のうち少なくともいずれかを傾けた歪曲十字型としてもよい。また、第1の計測用マーカを、十字型と円を組み合わせた円及び十字型としてもよい。その他、第1の計測用マーカを、スポット表示部から実寸サイズに対応する複数の測定点EPを組み合わせた計測用点群型としてもよい。また、第1の計測用マーカの数は一つでも複数でもよいし、実寸サイズに応じて第1の計測用マーカの色を変化させてもよい。
【0052】
マーカ用テーブル72の作成方法について、以下説明する。スポットの位置とマーカの大きさとの関係は、実寸サイズのパターンが規則的に形成されたチャートを撮像することで得ることができる。例えば、スポット状の計測補助光をチャートに向けて出射し、観察距離を変化させてスポットの位置を変えながら実寸サイズと同じ罫(5mm)もしくはそれより細かい罫(例えば1mm)の方眼紙状のチャートを撮像し、スポットの位置(撮像素子32の撮像面におけるピクセル座標)と実寸サイズに対応するピクセル数(実寸サイズである5mmが何ピクセルで表されるか)との関係を取得する。
【0053】
図18に示すように、(x1、y1)は、撮像素子32の撮像面におけるスポットSP4のX、Y方向のピクセル位置(左上が座標系の原点)である。スポットSP4の位置(x1、y1)での、実寸サイズ5mmに対応するX方向ピクセル数をLx1とし、Y方向ピクセル数をLy1とする。このような測定を、観察距離を変えながら繰り返す。
図19は、
図18と同じ5mm罫のチャートを撮像した状態を示しているが、
図18の状態よりも撮影距離が遠端に近い状態であり、罫の間隔が狭く写っている。
図31の状態において、撮像素子32の撮像面におけるスポットSP5の位置(x2、y2)での実寸サイズ5mmに対応するX方向ピクセル数をLx2とし、Y方向ピクセル数をLy2とする。そして、観察距離を変えながら、
図18、19のような測定を繰り返し、結果をプロットする。なお、
図18、19では、対物レンズ21の歪曲収差を考慮せず表示している。
【0054】
図20は、スポットの位置のX座標とLx(X方向ピクセル数)との関係を示しており、
図21は、スポットの位置のY座標とLxとの関係を示している。Lxは
図20の関係よりX方向位置の関数として、Lx=g1(x)と表され、また、Lxは、
図21の関係より、Y方向位置の関数として、Lx=g2(y)として表される。g1、g2は上述のプロット結果から、例えば、最小二乗法により求めることができる。
【0055】
なお、スポットのX座標とY座標とは一対一に対応しており、関数g1、g2のいずれを用いても、基本的に同じ結果(同じスポット位置に対しては同じピクセル数)が得られるため、第1の計測用マーカの大きさを算出する場合には、どちらの関数を用いてもよく、g1、g2のうち位置変化に対するピクセル数変化の感度が高い方の関数を選んでもよい。また、g1、g2の値が大きく異なる場合には、「スポットの位置を認識できなかった」と判断してもよい。
【0056】
図22は、スポット位置のX座標とLy(Y方向ピクセル数)との関係を表しており、
図23は、スポット位置のY座標とLyとの関係を表している。
図22の関係より、LyはX方向位置の座標としてLy=h1(x)と表され、
図23の関係より、LyはY方向位置の座標としてLy=h2(y)として表される。Lyについても、Lxと同様に関数h1、h2のいずれを用いてもよい。
【0057】
以上のように得られた関数g1、g2、h1、h2については、ルックアップテーブル形式によってマーカ用テーブルに記憶される。なお、関数g1、g2については、関数形式でマーカ用テーブルに記憶するようにしてもよい。
【0058】
なお、第2実施形態では、第1の計測用マーカとして、
図24に示すように、大きさが異なる3つの同心円状のマーカM4A、M4B、M4C(大きさはそれぞれ直径が2mm、5mm、10mm)を、腫瘍tm4上に形成されたスポット表示部SP4を中心として、第1撮像画像上に表示するようにしてもよい。この3つの同心円状のマーカは、マーカを複数表示するので切替の手間が省け、また、被写体が非線形な形状をしている場合でも計測が可能である。なお、スポットを中心として同心円状のマーカを複数表示する場合には、大きさや色をマーカ毎に指定するのではなく、複数の条件の組合せを予め用意しておきその組み合わせの中から選択できるようにしてもよい。
【0059】
図24では、3つの同心円状のマーカを全て同じ色(黒)で表示しているが、複数の同心円状のマーカを表示する場合、マーカによって色を変えた複数の色付き同心円状のマーカとしてもよい。
図25に示すように、マーカM5Aは赤色を表す点線、マーカM5Bは青色を表す実線、マーカM5Cは白を表す一点鎖線で表示している。このようにマーカの色を変えることで識別性が向上し、容易に計測を行うことができる。
【0060】
また、第1の計測用マーカとしては、複数の同心円状のマーカの他、
図26に示すように、各同心円を歪曲させた複数の歪曲同心円状のマーカを用いてもよい。この場合、歪曲同心円状のマーカM6A、マーカM6B、マーカM6Cが、腫瘍tm5に形成されたスポット表示部SP5を中心に第1撮像画像に表示されている。
【0061】
なお、計測補助光については、被写体に照射された場合に、スポットとして形成される光を用いているが、その他の光を用いるようにしてもよい。例えば、被写体に照射された場合に、
図27に示すように、被写体上に交差ライン80として形成される平面状の計測補助光を用いるようにしてもよい。この場合には、計測用マーカとして、交差ライン80及び交差ライン上に被写体の大きさ(例えば、ポリープP)の指標となる目盛り82からなる第2の計測用マーカを生成する。平面状の計測補助光を用いる場合には、位置特定部50は、交差ライン80(特定領域)の位置を特定する。交差ライン80が下方に位置する程、観察距離が近く、交差ライン80が上方に位置する程、観察距離が遠くなる。そのため、交差ライン80が下方に位置する程、目盛り82の間隔は大きくなり、交差ライン80が上方に位置する程、目盛り82の間隔は小さくなる。
【0062】
なお、上記実施形態では、撮像画像上に計測用マーカを表示するために、特定光として、計測補助光を用いているが、特定光は、その他の用途に用いてもよい。例えば、被写体に含まれる蛍光成分(自家蛍光、薬剤蛍光)を励起発光させるために、特定光として、励起光を用いる。この場合には、
図28に示すように、光源装置14内に、励起光を発光する励起光光源部90を設ける。そして、
図29に示すように、位置特定部50は、照明光とともに励起光を発光した場合に得られる第2撮像画像から、蛍光成分の領域(特定領域)の位置を特定する。また、画像加工部52内に設けられた蛍光表示用領域設定部92は、蛍光成分の領域の位置に応じて、蛍光成分を表示するための蛍光表示用領域を設定する。そして、
図30に示すように、照明光のみを発光し、励起光を発光しない場合に得られる第1撮像画像上に、蛍光表示用領域94を表示した特定画像をモニタ18に表示する。これにより、励起光成分が含まれない第1撮像画像上に蛍光成分の領域を表示することにより、被写体の色再現性を損ねることなく、蛍光成分の領域を観察することができる。
【0063】
上記実施形態において、信号処理部39、表示制御部40、システム制御部41といった各種の処理を実行する処理部(processing unit)のハードウェア的な構造は、次に示すような各種のプロセッサ(processor)である。各種のプロセッサには、ソフトウエア(プログラム)を実行して各種の処理部として機能する汎用的なプロセッサであるCPU(Central Processing Unit)、FPGA (Field Programmable Gate Array) などの製造後に回路構成を変更可能なプロセッサであるプログラマブルロジックデバイス(Programmable Logic Device:PLD)、各種の処理を実行するために専用に設計された回路構成を有するプロセッサである専用電気回路などが含まれる。
【0064】
1つの処理部は、これら各種のプロセッサのうちの1つで構成されてもよいし、同種または異種の2つ以上のプロセッサの組み合せ(例えば、複数のFPGAや、CPUとFPGAの組み合わせ)で構成されてもよい。また、複数の処理部を1つのプロセッサで構成してもよい。複数の処理部を1つのプロセッサで構成する例としては、第1に、クライアントやサーバなどのコンピュータに代表されるように、1つ以上のCPUとソフトウエアの組み合わせで1つのプロセッサを構成し、このプロセッサが複数の処理部として機能する形態がある。第2に、システムオンチップ(System On Chip:SoC)などに代表されるように、複数の処理部を含むシステム全体の機能を1つのIC(Integrated Circuit)チップで実現するプロセッサを使用する形態がある。このように、各種の処理部は、ハードウェア的な構造として、上記各種のプロセッサを1つ以上用いて構成される。
【0065】
さらに、これらの各種のプロセッサのハードウェア的な構造は、より具体的には、半導体素子などの回路素子を組み合わせた形態の電気回路(circuitry)である。