特許第6924818号(P6924818)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 富士フイルム株式会社の特許一覧

特許6924818薬液の精製方法、薬液の製造方法、及び、薬液
<>
  • 特許6924818-薬液の精製方法、薬液の製造方法、及び、薬液 図000027
  • 特許6924818-薬液の精製方法、薬液の製造方法、及び、薬液 図000028
  • 特許6924818-薬液の精製方法、薬液の製造方法、及び、薬液 図000029
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6924818
(24)【登録日】2021年8月4日
(45)【発行日】2021年8月25日
(54)【発明の名称】薬液の精製方法、薬液の製造方法、及び、薬液
(51)【国際特許分類】
   B01D 61/14 20060101AFI20210812BHJP
   B01D 61/58 20060101ALI20210812BHJP
   B01D 65/06 20060101ALI20210812BHJP
   B01D 69/02 20060101ALI20210812BHJP
   B01D 71/26 20060101ALI20210812BHJP
   B01D 71/28 20060101ALI20210812BHJP
   B01D 71/32 20060101ALI20210812BHJP
   B01D 71/40 20060101ALI20210812BHJP
   B01D 71/10 20060101ALI20210812BHJP
【FI】
   B01D61/14 500
   B01D61/58
   B01D65/06
   B01D69/02
   B01D71/26
   B01D71/28
   B01D71/32
   B01D71/40
   B01D71/10
【請求項の数】14
【全頁数】48
(21)【出願番号】特願2019-509363(P2019-509363)
(86)(22)【出願日】2018年3月20日
(86)【国際出願番号】JP2018010918
(87)【国際公開番号】WO2018180735
(87)【国際公開日】20181004
【審査請求日】2019年9月20日
(31)【優先権主張番号】特願2017-71159(P2017-71159)
(32)【優先日】2017年3月31日
(33)【優先権主張国】JP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】306037311
【氏名又は名称】富士フイルム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100152984
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 秀明
(74)【代理人】
【識別番号】100148080
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 史生
(72)【発明者】
【氏名】上村 哲也
【審査官】 青木 太一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2016−073922(JP,A)
【文献】 特開2003−251120(JP,A)
【文献】 特開2016−201426(JP,A)
【文献】 特開2010−234344(JP,A)
【文献】 特開2007−025341(JP,A)
【文献】 特開2002−113334(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 53/22
B01D 61/00−71/82
C02F 1/44
C11D 7/26
C11D 7/32
C11D 7/34
C11D 7/50
G03F 7/16
H01L 21/027
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
フィルタを用いて、有機溶剤を含有する被精製液をろ過する精製工程を有する、薬液の精製方法であって、
前記フィルタとして、以下の試験における要件1又は要件2を満たすフィルタを用いる、薬液の精製方法。
試験:前記有機溶剤からなる試験液1500mlと前記フィルタとを、23℃の条件下にて、24時間接触させ、接触後の前記試験液中におけるFe、Al、Cr、Ni、及び、Tiからなる群から選択される少なくとも1種の金属を含有する粒子の含有量が、以下の要件1又は2を満たす。
要件1:前記試験液がFe、Al、Cr、Ni、及び、Tiからなる群から選択される少なくとも1種の金属を含有する粒子を1種含有する場合、前記試験液中における1種の前記粒子の含有量が2.45質量ppt以下である。ただし、接触後の前記試験液がFe、Al、Cr、Ni、及び、Tiからなる群から選択される少なくとも1種の金属を含有するイオンを1種含有する場合、前記試験液中における1種の前記イオンの含有量が10質量ppb以下であり、接触後の前記試験液がFe、Al、Cr、Ni、及び、Tiからなる群から選択される少なくとも1種の金属を含有するイオンを2種以上含有する場合、前記試験液中における2種以上の前記イオンの合計含有量が10質量ppb以下である。
要件2:前記試験液が、Fe、Al、Cr、Ni、及び、Tiからなる群から選択される少なくとも1種の金属を含有する粒子を2種以上含有する場合、前記試験液中における2種以上の前記粒子の合計含有量が2.45質量ppt以下である。ただし、接触後の前記試験液がFe、Al、Cr、Ni、及び、Tiからなる群から選択される少なくとも1種の金属を含有するイオンを1種含有する場合、前記試験液中における1種の前記イオンの含有量が10質量ppb以下であり、接触後の前記試験液がFe、Al、Cr、Ni、及び、Tiからなる群から選択される少なくとも1種の金属を含有するイオンを2種以上含有する場合、前記試験液中における2種以上の前記イオンの合計含有量が10質量ppb以下である。
【請求項2】
疎水性フィルタであるフィルタを用いて、有機溶剤を含有する被精製液をろ過する精製工程を有する、薬液の精製方法であって、
前記フィルタとして、以下の試験における要件1又は要件2を満たすフィルタを用いる、薬液の精製方法。
試験:前記有機溶剤からなる試験液1500mlと前記フィルタとを、23℃の条件下にて、24時間接触させ、接触後の前記試験液中におけるFe、Al、Cr、Ni、及び、Tiからなる群から選択される少なくとも1種の金属を含有する粒子の含有量が、以下の要件1又は2を満たす。
要件1:前記試験液がFe、Al、Cr、Ni、及び、Tiからなる群から選択される少なくとも1種の金属を含有する粒子を1種含有する場合、前記試験液中における1種の前記粒子の含有量が5.0質量ppm以下である。ただし、接触後の前記試験液がFe、Al、Cr、Ni、及び、Tiからなる群から選択される少なくとも1種の金属を含有するイオンを1種含有する場合、前記試験液中における1種の前記イオンの含有量が10質量ppb以下であり、接触後の前記試験液がFe、Al、Cr、Ni、及び、Tiからなる群から選択される少なくとも1種の金属を含有するイオンを2種以上含有する場合、前記試験液中における2種以上の前記イオンの合計含有量が10質量ppb以下である。
要件2:前記試験液が、Fe、Al、Cr、Ni、及び、Tiからなる群から選択される少なくとも1種の金属を含有する粒子を2種以上含有する場合、前記試験液中における2種以上の前記粒子の合計含有量が5.0質量ppm以下である。ただし、接触後の前記試験液がFe、Al、Cr、Ni、及び、Tiからなる群から選択される少なくとも1種の金属を含有するイオンを1種含有する場合、前記試験液中における1種の前記イオンの含有量が10質量ppb以下であり、接触後の前記試験液がFe、Al、Cr、Ni、及び、Tiからなる群から選択される少なくとも1種の金属を含有するイオンを2種以上含有する場合、前記試験液中における2種以上の前記イオンの合計含有量が10質量ppb以下である。
【請求項3】
ナイロン、ポリフルオロカーボン、セルロース、ケイソウ土、ポリスチレン、及び、ガラスからなる群から選択される少なくとも1種の材料成分からなるフィルタを用いて、有機溶剤を含有する被精製液をろ過する精製工程を有する、薬液の精製方法であって、
前記フィルタとして、以下の試験における要件1又は要件2を満たすフィルタを用いる、薬液の精製方法。
試験:前記有機溶剤からなる試験液1500mlと前記フィルタとを、23℃の条件下にて、24時間接触させ、接触後の前記試験液中におけるFe、Al、Cr、Ni、及び、Tiからなる群から選択される少なくとも1種の金属を含有する粒子の含有量が、以下の要件1又は2を満たす。
要件1:前記試験液がFe、Al、Cr、Ni、及び、Tiからなる群から選択される少なくとも1種の金属を含有する粒子を1種含有する場合、前記試験液中における1種の前記粒子の含有量が5.0質量ppm以下である。ただし、接触後の前記試験液が有機不純物を含有する場合、前記試験液中における前記有機不純物の含有量が10質量ppm以下であり、前記有機不純物が、下記式(1)〜(7)からなる群から選択される少なくとも1種の化合物を含有する。ただし、接触後の前記試験液がFe、Al、Cr、Ni、及び、Tiからなる群から選択される少なくとも1種の金属を含有するイオンを1種含有する場合、前記試験液中における1種の前記イオンの含有量が10質量ppb以下であり、接触後の前記試験液がFe、Al、Cr、Ni、及び、Tiからなる群から選択される少なくとも1種の金属を含有するイオンを2種以上含有する場合、前記試験液中における2種以上の前記イオンの合計含有量が10質量ppb以下である。
要件2:前記試験液が、Fe、Al、Cr、Ni、及び、Tiからなる群から選択される少なくとも1種の金属を含有する粒子を2種以上含有する場合、前記試験液中における2種以上の前記粒子の合計含有量が5.0質量ppm以下である。ただし、接触後の前記試験液が有機不純物を含有する場合、前記試験液中における前記有機不純物の含有量が10質量ppm以下であり、前記有機不純物が、下記式(1)〜(7)からなる群から選択される少なくとも1種の化合物を含有する。ただし、接触後の前記試験液がFe、Al、Cr、Ni、及び、Tiからなる群から選択される少なくとも1種の金属を含有するイオンを1種含有する場合、前記試験液中における1種の前記イオンの含有量が10質量ppb以下であり、接触後の前記試験液がFe、Al、Cr、Ni、及び、Tiからなる群から選択される少なくとも1種の金属を含有するイオンを2種以上含有する場合、前記試験液中における2種以上の前記イオンの合計含有量が10質量ppb以下である。
【化1】
【請求項4】
接触後の前記試験液が有機不純物を含有する場合、前記試験液中における前記有機不純物の含有量が10質量ppm以下である、請求項1又は2に記載の薬液の精製方法。
【請求項5】
前記有機不純物が、下記式(1)〜(7)からなる群から選択される少なくとも1種の化合物を含有する、請求項に記載の薬液の精製方法。
【化2】
【請求項6】
更に、前記精製工程の前に、洗浄液を用いて、前記フィルタを洗浄する工程を有し、
前記洗浄液の溶解度パラメータが16(MPa)1/2を超える、請求項1〜のいずれか一項に記載の薬液の精製方法。
【請求項7】
前記洗浄液が、ジメチルスルホキシド、n−メチルピロリドン、ジエチレングリコール、エチレングリコール、ジプロピレングリコール、プロピレングリコール、炭酸エチレン、炭酸プロピレン、スルホラン、シクロヘキサン、シクロヘキサノン、シクロヘプタノン、シクロペンタノン、2−ヘプタノン、及び、γ−ブチロラクトンからなる群から選択される少なくとも1種である、請求項に記載の薬液の精製方法。
【請求項8】
前記フィルタが、ナイロン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリフルオロカーボン、セルロース、ケイソウ土、ポリスチレン、及び、ガラスからなる群から選択される少なくとも1種の材料成分からなる請求項1に記載の、薬液の精製方法。
【請求項9】
前記精製工程が、少なくとも2枚の前記フィルタに前記被精製液を通液して、前記被精製液をろ過する工程である、請求項1〜のいずれか一項に記載の薬液の精製方法。
【請求項10】
前記精製工程が、少なくとも2枚の前記フィルタに前記被精製液を通液して、前記被精製液をろ過する工程であり
前記フィルタが、疎水性フィルタ、及び、親水性フィルタを少なくとも含む、請求項1、3、及び、のいずれか一項に記載の薬液の精製方法。
【請求項11】
前記精製工程において前記被精製液が通液される最も後段のフィルタが前記親水性フィルタである、請求項1に記載の薬液の精製方法。
【請求項12】
前記被精製液をろ過する際のろ過差圧が250kPa以下である、請求項〜1のいずれか一項に記載の薬液の精製方法。
【請求項13】
前記有機溶剤が、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、乳酸エチル、メトキシプロピオン酸メチル、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、γ−ブチロラクトン、ジイソアミルエーテル、酢酸ブチル、酢酸イソアミル、イソプロパノール、及び、4−メチル−2−ペンタノールからなる群から選択される少なくとも1種である、請求項1〜1のいずれか一項に記載の薬液の精製方法。
【請求項14】
請求項1〜1のいずれか一項に記載の薬液の精製方法を有する薬液の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薬液の精製方法、薬液の製造方法、及び、薬液に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイスの製造には、フォトリソグラフィプロセスが用いられている。フォトリソグラフィプロセスにおいては、半導体ウェハ(以下、「ウェハ」ともいう。)等の基板をプリウェットし、次に、感活性光線性又は感放射線性組成物(以下、「レジスト組成物」ともいう。)を塗布し、感活性光線性又は感放射線性膜(以下、「レジスト膜」ともいう。)を形成する。更に、形成されたレジスト膜を露光し、露光されたレジスト膜を現像して、現像後のレジスト膜をリンスして、ウェハ上にレジストパターンが形成される。
【0003】
近年、半導体デバイスの微細化に伴い、フォトリソグラフィーの各工程において基板上に発生し得る欠陥を抑制することが求められている。
特許文献1には、「筐体とろ過膜が一体となった一体型ろ過器を具備する回転塗布装置を用いて、半導体装置製造用基板上にリソグラフィー用塗布膜形成用組成物を回転塗布し、リソグラフィー用塗布膜形成用組成物を塗布した半導体装置製造用基板を加熱することで、半導体装置製造用基板上にリソグラフィー用塗布膜を形成する方法であって、一体型ろ過器として、有機溶剤を毎分10mlの速度で24時間循環させた際に抽出されるろ過器一個当たりの溶出物の重量が3mg以下のものを用いることを特徴とするリソグラフィー用塗布膜の形成方法」が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2016−201426号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明者らは、特許文献1に記載されたリソグラフィー用塗布膜の形成方法を用いて製造された半導体基板について検討したところ、欠陥の発生は抑制されるものの、得られる半導体基板において金属配線のショート(短絡)が発生する場合があることを知見した。
【0006】
そこで、本発明は、フォトリソグラフィプロセスにより製造される半導体基板において、ショートの発生を抑制できる(以下、「ショート発生抑制性能を有する」ともいう。)薬液が得られる薬液の精製方法を提供することを課題とする。
また、本発明は、薬液の製造方法、及び、薬液を提供することも課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を達成すべく鋭意検討した結果、以下の構成により上記課題を達成することができることを見出した。
【0008】
[1] フィルタを用いて、有機溶剤を含有する被精製液をろ過する精製工程を有する、薬液の精製方法であって、フィルタとして、以下の試験における要件1又は要件2を満たすフィルタを用いる、薬液の精製方法。
試験:有機溶剤からなる試験液1500mlとフィルタとを、23℃の条件下にて、24時間接触させ、接触後の試験液中におけるFe、Al、Cr、Ni、及び、Tiからなる群から選択される少なくとも1種の金属を含有する粒子の含有量が、以下の要件1又は2を満たす。
要件1:試験液がFe、Al、Cr、Ni、及び、Tiからなる群から選択される少なくとも1種の金属を含有する粒子を1種含有する場合、試験液中における1種の粒子の含有量が5.0質量ppm以下である。
要件2:試験液が、Fe、Al、Cr、Ni、及び、Tiからなる群から選択される少なくとも1種の金属を含有する粒子を2種以上含有する場合、試験液中における2種以上の粒子の合計含有量が5.0質量ppm以下である。
[2] 接触後の試験液がFe、Al、Cr、Ni、及び、Tiからなる群から選択される少なくとも1種の金属を含有するイオンを1種含有する場合、試験液中における1種のイオンの含有量が10質量ppb以下であり、接触後の試験液がFe、Al、Cr、Ni、及び、Tiからなる群から選択される少なくとも1種の金属を含有するイオンを2種以上含有する場合、試験液中における2種以上のイオンの合計含有量が10質量ppb以下である、[1]に記載の薬液の精製方法。
[3] 接触後の試験液が有機不純物を含有する場合、試験液中における有機不純物の含有量が10質量ppm以下である、[1]又は[2]に記載の薬液の精製方法。
[4] 有機不純物が、式(1)〜(7)からなる群から選択される少なくとも1種の化合物を含有する、[3]に記載の薬液の精製方法。
[5] 更に、精製工程の前に、洗浄液を用いて、フィルタを洗浄する工程を有し、
洗浄液の溶解度パラメータが16(MPa)1/2を超える、[1]〜[4]のいずれかに記載の薬液の精製方法。
[6] 洗浄液が、ジメチルスルホキシド、n−メチルピロリドン、ジエチレングリコール、エチレングリコール、ジプロピレングリコール、プロピレングリコール、炭酸エチレン、炭酸プロピレン、スルホラン、シクロヘキサン、シクロヘキサノン、シクロヘプタノン、シクロペンタノン、2−ヘプタノン、及び、γ−ブチロラクトンからなる群から選択される少なくとも1種である、[5]に記載の薬液の精製方法。
[7] フィルタが、ナイロン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリフルオロカーボン、セルロース、ケイソウ土、ポリスチレン、及び、ガラスからなる群から選択される少なくとも1種の材料成分からなる[1]〜[6]のいずれかに記載の、薬液の精製方法。
[8] 精製工程が、少なくとも2枚以上のフィルタに被精製物を通液して、被精製物をろ過する工程である、[8]に記載の薬液の精製方法。
[9] フィルタが、疎水性フィルタ、及び、親水性フィルタを少なくとも含む、[1]〜[8]のいずれかに記載の薬液の精製方法。
[10] 精製工程において前記被精製液が通液される最も後段のフィルタが親水性フィルタである、[9]に記載の薬液の精製方法。
[11] 薬液をろ過する際のろ過差圧が250kPa以下である、[8]〜[10]のいずれかに記載の薬液の精製方法。
[12] 有機溶剤が、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、乳酸エチル、メトキシプロピオン酸メチル、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、γ−ブチロラクトン、ジイソアミルエーテル、酢酸ブチル、酢酸イソアミル、イソプロパノール、及び、4−メチル−2−ペンタノールからなる群から選択される少なくとも1種である、[1]〜[11]のいずれかに記載の薬液の精製方法。
[13] [1]〜[12]のいずれかに記載の薬液の精製方法を含有する薬液の製造方法。
[14] [13]に記載の薬液の製造方法により製造された薬液。
[15] [13]に記載の薬液の製造方法により製造され、有機溶剤が、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、乳酸エチル、メトキシプロピオン酸メチル、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、γ−ブチロラクトン、ジイソアミルエーテル、酢酸ブチル、酢酸イソアミル、イソプロパノール、及び、4−メチル−2−ペンタノールからなる群から選択される少なくとも1種である、薬液。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、ショート発生抑制性能を有する(以下、「本発明の効果を有する」ともいう。)薬液が得られる薬液の精製方法を提供することができる。
また、本発明によれば、薬液の製造方法、及び、薬液を提供することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の実施形態に係る薬液の製造方法を適用することができる薬液の製造装置の第一形態を示す概略図である。
図2】本発明の実施形態に係る薬液の製造方法を適用することができる薬液の製造装置の第二形態を示す概略図である。
図3】本発明の実施形態に係る薬液の製造方法を適用することができる薬液の製造装置の第三形態を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明について詳細に説明する。
以下に記載する構成要件の説明は、本発明の代表的な実施形態に基づいてなされることがあるが、本発明はそのような実施形態に限定されるものではない。
なお、本明細書において、「〜」を用いて表される数値範囲は、「〜」の前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む範囲を意味する。
また、本発明において「準備」というときには、特定の材料を合成又は調合して備えることのほか、購入等により所定の物を調達することを含む意味である。
また、本発明において、「ppm」は「parts-per-million(10−6)」を意味し、「ppb」は「parts-per-billion(10−9)」を意味し、「ppt」は「parts-per-trillion(10−12)」を意味し、「ppq」は「parts-per-quadrillion(10−15)」を意味する。
また、本発明において、1Å(オングストローム)は、0.1nmに相当する。
また、本発明における基(原子群)の表記において、置換及び無置換を記していない表記は、本発明の効果を損ねない範囲で、置換基を有さない基と共に置換基を有する基をも包含するものである。例えば、「炭化水素基」とは、置換基を有さない炭化水素基(無置換炭化水素基)のみならず、置換基を有する炭化水素基(置換炭化水素基)をも包含するものである。このことは、各化合物についても同義である。
また、本発明における「放射線」とは、例えば、遠紫外線、極紫外線(EUV;Extreme ultraviolet)、X線、又は、電子線等を意味する。また、本発明において光とは、活性光線又は放射線を意味する。本発明中における「露光」とは、特に断らない限り、遠紫外線、X線又はEUV等による露光のみならず、電子線又はイオンビーム等の粒子線による描画も露光に含める。
【0012】
[薬液の精製方法]
本発明の実施形態に係る薬液の精製方法は、フィルタを用いて、有機溶剤を含有する非精製液をろ過する精製工程を有する、薬液の精製方法であって、フィルタとして、後述する試験における要件1又は要件2を満たすフィルタを用いる、薬液の精製方法である。
上記薬液の精製方法によれば、本発明の効果を有する薬液を精製することができる。
【0013】
本発明者らは、半導体基板において金属配線のショートが発生する原因について鋭意検討した結果、半導体基板上に特定の金属の粒子が存在すると、その金属の粒子が不純物を巻き込んで錯体を形成し、上記錯体が金属配線をショートさせる原因となり得ることを知見した。本発明者らは、上記特定の金属の粒子が、フォトリソグラフィーの各工程において使用される薬液に由来することを更に知見し、上記薬液中に含有される特定の金属の粒子を減少させる方法について更に検討を重ねた結果、有機溶剤を含有する被精製液をろ過する精製工程で用いられるフィルタとして、所定の要件を満たすものを用いると、得られる半導体基板における金属配線のショートが発生しにくい(ショート発生抑制性能を有する)薬液が得られることを知見し、本発明を完成させた。
以下では、本発明に実施形態に係る薬液の精製方法について、工程ごとに説明する。
【0014】
〔精製工程:薬液を精製する工程〕
(試験液中の特定金属を少なくとも1種含有する粒子の含有量)
本発明の実施形態に係る薬液の精製方法は、フィルタを用いて、有機溶剤を含有する被精製液を精製する工程を有する。この際用いるフィルタは、以下の試験における要件1又は要件2を満たす。
試験は、有機溶剤からなる試験液1500mlとフィルタとを、23℃の条件下にて、24時間接触させ、接触後の試験液中におけるFe、Al、Cr、Ni、及び、Ti(以下「特定金属」ともいう。)からなる群から選択される少なくとも1種の金属を含有する粒子の含有量を測定するものである。なお、上記粒子としては、典型的には、Feを含有する粒子、Alを含有する粒子、Crを含有する粒子、Niを含有する粒子、及び、Tiを含有する粒子が挙げられるが、後述する測定方法によって粒子として検出されるものを意図し、特定金属同士が複合化した状態である粒子(例えば、FeとAlとを含有する粒子)も含まれる。
【0015】
上記試験において、試験液は有機溶剤からなる。すなわち、試験液は、そのフィルタを用いて精製されるべき被精製物が含有する有機溶剤と同一種類の有機溶剤からなる。なお、精製する被精製物が、2種以上の有機溶剤の混合物である場合には、その混合物(同一種類の有機溶剤を、同一比率で混合したもの)を用いて試験を行う。なお、試験は、後述するクリーンルームで行われることが好ましい。
【0016】
フィルタから抽出される特定金属を少なくとも1種含有する粒子(以下「特定金属粒子」ともいう。)の量をより容易に評価できる点で、試験液には、試験前の段階で特定金属粒子が含有されていないことが好ましい。一方で、試験前の段階で、試験液に特定金属粒子が含有されている場合、まず、試験前の試験液中における特定金属粒子の含有量を測定し、試験後の試験液中における特定金属粒子の含有量を測定し、その差を計算し、本実施形態における「接触後の試験液中における特定金属粒子の含有量」とする。すなわち、「接触後の試験液中における特定金属粒子の含有量」とは、特定金属粒子の試験液への抽出量を意味する。
【0017】
なお、特定金属粒子の含有量の測定には、Agilent 8800 トリプル四重極ICP−MS(Inductively Coupled Plasma−Mass Spectrometry、半導体分析用、オプション#200)を用いる。上記測定装置によれば、試験液中における特定金属粒子の含有量を測定できる。なお、測定条件は、実施例に記載したとおりである。
また、上述した装置の他、特定金属粒子の含有量の測定に使用し得る装置としては、PerkinElmer社製 NexION350Sのほか、例えば、アジレントテクノロジー社製、Agilent 8900などが挙げられる。
【0018】
試験液とフィルタとを接触させる方法としては、典型的には、密閉容器に収容された試験液に、フィルタを浸漬し、恒温庫で保管する方法が挙げられる。次に、接触後の試験液からフィルタを取り出し、接触後の試験液中に含有される特定金属粒子の含有量を測定する。この際の測定方法は、すでに説明したとおりである。
【0019】
・要件1
要件1は、接触後の試験液が特定金属粒子を1種含有する場合、試験液中における特定金属粒子の含有量が、接触後の試験液の全質量に対して5.0質量ppm以下である。
なお、接触後の試験液が特定金属粒子を1種含有する場合、接触後の試験液中における特定金属粒子の含有量としては、接触後の試験液の全質量に対して0.30質量ppm以下がより好ましく、10質量ppb以下が更に好ましく、1.0質量ppb以下が特に好ましい。下限値としては特に制限されないが、一般に0.01質量ppt以上が好ましい。
【0020】
・要件2
要件2は、接触後の試験液が、特定金属粒子を2種以上含有する場合、接触後の試験液中における2種以上の特定金属粒子の合計含有量が、接触後の試験液の全質量に対して5.0質量ppm以下である。
なお、接触後の試験液が特定金属粒子を2種以上含有する場合、接触後の試験液中における2種以上の特定金属粒子の合計含有量は、接触後の試験液の全質量に対して、0.30質量ppm以下がより好ましく、10質量ppb以下が更に好ましく、1.0質量ppb以下が特に好ましい。下限値としては特に制限されないが、一般に0.01質量ppt以上が好ましい。
【0021】
接触後の試験液中は、特定金属以外の金属を含有する粒子を含有してもよい。接触後の試験液中における特定金属以外の金属を含有する粒子も含めた、金属粒子の合計含有量としては特に制限されないが、より優れた本発明の効果を有する薬液が得られる点で、接触後の試験液の全質量に対して、5.0質量ppm以下が好ましく、100質量ppb以下がより好ましい。下限値としては特に制限されないが、一般に0.01質量ppt以上が好ましい。
なお、接触後の試験液中における特定金属粒子の含有量の定義、及び、測定方法は、特定金属粒子の含有量の定義、及び、測定方法として説明したものと同様である。
【0022】
(試験液中の特定金属を含有するイオンの含有量)
本発明の実施形態に係る薬液の精製方法としては、より優れた本発明の効果を有する薬液が得られる点で、上記接触後の試験液が、以下の要件3、又は、要件4を満たすことがより好ましい。
要件3:接触後の試験液が特定金属を少なくとも1種含有するイオンを1種含有する場合、試験液中における1種のイオンの含有量が10質量ppb以下である。
要件4:接触後の試験液が特定金属を少なくとも1種含有するイオンを2種以上含有する場合、試験液中における2種以上のイオンの合計含有量が10質量ppb以下である。
【0023】
なお、フィルタから抽出される特定金属を含有するイオン(以下「特定金属イオン」ともいう。)の量をより容易に評価できる点で、試験液には、試験前の段階で特定金属イオンが含有されていないことが好ましい。一方で、試験前の段階で、試験液に特定金属イオンが含有されている場合、まず、試験前の試験液中における特定金属イオンの含有量を測定し、試験後の試験液中における特定金属イオンの含有量を測定し、その差を計算し、本実施形態における「接触後の試験液中における特定金属イオンの含有量」とする。すなわち、「接触後の試験液中における特定金属イオンの含有量」とは、特定金属イオンの試験液への抽出量を意図する。
また、本明細書において、特定金属イオンとは、特定金属自体のイオン(例えば、Fe2+等が挙げられる。)、及び、特定金属を含有する錯イオン(例えば、[Ni(NH2+等が挙げられる。)等を意図する。
【0024】
なお、特定金属イオンの含有量の測定には、Agilent 8800 トリプル四重極ICP−MS(半導体分析用、オプション#200)を用いる。上記測定装置によれば、試験液中における特定金属イオンの含有量を測定できる。なお、測定条件は、実施例に記載したとおりである。
【0025】
・要件3
要件3は、接触後の試験液が特定金属イオンを1種含有する場合、試験液中における1種のイオンの含有量が、接触後の試験液の全質量に対して、10質量ppb以下である。
なお、接触後の試験液中が特定金属イオンを1種含有する場合、接触後の試験液中における特定金属イオンの含有量としては、接触後の試験液の全質量に対して3.5質量ppb以下がより好ましく、1.0質量ppb以下が特に好ましい。下限値としては特に制限されないが、一般に0.01質量ppt以上が好ましい。
【0026】
・要件4
要件4は、接触後の試験液が、特定金属イオンを2種以上含有する場合、接触後の試験液中における2種以上の特定金属イオンの合計含有量が、接触後の試験液の全質量に対して10質量ppb以下である。
なお、接触後の試験液が特定金属イオンを2種以上含有する場合、接触後の試験液中における2種以上の特定金属イオンの合計含有量は、接触後の試験液の全質量に対して、3.5質量ppb以下がより好ましく、1.0質量ppb以下が特に好ましい。下限値としては特に制限されないが、一般に0.01質量ppt以上が好ましい。
【0027】
(試験液中における有機不純物の含有量)
本発明の実施形態に係る薬液の精製方法としては、より優れた本発明の効果を有する薬液が得られる点で、上記試験液が、以下の要件5を満たすことがより好ましい。
要件5:試験液が有機不純物を含有する場合、試験液中における有機不純物の含有量が10質量ppm以下である。
なお、本明細書において、有機不純物とは、有機溶剤とは異なる有機化合物であって、有機溶剤(薬液が有機溶剤の混合物を含有する、すなわち、試験液が有機溶剤の混合物である場合は、その混合物)の全質量に対して、10000質量ppm以下の含有量で含有される有機化合物を意図する。つまり、本明細書においては、上記有機溶剤の全質量に対して10000質量ppm以下の含有量で含有される有機化合物は、有機不純物に該当し、有機溶剤には該当しないものとする。
なお、複数種の有機化合物が有機溶剤に含有される場合であって、各有機化合物が上述した10000質量ppm以下の含有量で含有される場合には、それぞれが有機不純物に該当する。
【0028】
なお、フィルタから抽出される有機不純物の量をより容易に評価できる点で、試験液には、試験前の段階で有機不純物が含有されていないことが好ましい。一方で、試験前の段階で、試験液に有機不純物が含有されている場合、まず、試験前の試験液中における有機不純物の含有量を測定し、試験後の試験液中における有機不純物の含有量を測定し、その差を計算し、本実施形態における「接触後の試験液中における有機不純物の含有量」とする。すなわち、「接触後の試験液中における有機不純物の含有量」とは、有機不純物の試験液への抽出量を意図する。
【0029】
なお、有機不純物の含有量の測定には、ガスクロマトグラフ質量分析装置(製品名「GCMS−2020」、島津製作所社製)を用いる。なお、測定条件は、実施例に記載したとおりである。また、特に制限されないが、有機不純物が高分子量化合物の場合には、Py−QTOF/MS(パイロライザー四重極飛行時間型質量分析)、Py−IT/MS(パイロライザーイオントラップ型質量分析)、Py−Sector/MS(パイロライザー磁場型質量分析)、Py−FTICR/MS(パイロライザーフーリエ変換イオンサイクロトロン型質量分析)、Py−Q/MS(パイロライザー四重極型質量分析)、及び、Py−IT−TOF/MS(パイロライザーイオントラップ飛行時間型質量分析)等の手法で分解物から構造の同定や濃度の定量をしても良い。例えば、Py−QTOF/MSは島津製作所社製等の装置を用いることができる。
【0030】
・要件5
要件5においては、接触後の試験液が有機不純物を含有する場合、試験液中における有機不純物の含有量が接触後の試験液の全質量に対して、10質量ppm以下であり、より優れた本発明の効果を有する薬液が得られる点で、3.0質量ppm以下がより好ましく、2.5質量ppm以下が更に好ましい。下限としては特に制限されないが、一般に0.10質量ppm以上が好ましい。
【0031】
有機不純物としては、例えば、以下の式I〜Vで表される化合物が挙げられる。
【0032】
【化2】
【0033】
式I中、R及びRは、それぞれ独立に、アミノ基、アリール基、アルキル基、若しくは、シクロアルキル基を表すか、又は、互いに結合し、環を形成している。
及びRがアミノ基以外である場合の炭素数としては、特に制限されないが、一般に、1〜20であることが多い。
【0034】
式II中、R及びRは、それぞれ独立に、水素原子、アミノ基、アリール基、アルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基、若しくは、シクロアルケニル基を表すか、又は、互いに結合して環を形成している。但し、R及びRの双方が水素原子であることはない。
及びRがアミノ基以外である場合の炭素数としては特に制限されないが、一般に1〜20であることが多い。
【0035】
式III中、Rは、アルキル基、アリール基、又は、シクロアルキル基を表し、炭素数としては、一般に1〜20であることが多い。
【0036】
式IV中、R及びRは、それぞれ独立に、アルキル基、アリール基、若しくはシクロアルキル基を表すか、又は、互いに結合し、環を形成している。R及びRの炭素数としては特に制限されないが、一般に1〜20であることが多い。
【0037】
式V中、R及びRは、それぞれ独立に、アルキル基、アリール基、アルキルオキシ基、若しくは、シクロアルキル基を表すか、又は、互いに結合し、環を形成している。Lは、単結合、又は、2価の連結基を表す。
及びRの炭素数としては特に制限されないが、一般に1〜20であることが多い。
【0038】
また、有機不純物としては、式VIで表される化合物も挙げられる。
【0039】
【化3】
【0040】
式VI中、R61〜R65はそれぞれ独立にアルキル基を表し、その炭素数としては特に制限されず、一般に1〜10であることが多い。
【0041】
要件5としては、より優れた本発明の効果を有する薬液が得られる点で、有機不純物が、以下の式(1)〜(7)からなる群から選択される少なくとも1種の化合物を含有することが好ましい。
【0042】
【化4】
【0043】
(フィルタ)
本発明の実施形態における精製工程において、用いられるフィルタとしては特に制限されず、公知のフィルタを用いることができる。なかでも、より優れた本発明の効果を有する薬液が得られる点で、フィルタとしては、ナイロン、ポリエチレン(高密度、及び、高分子量のものを含む)、ポリプロピレン(高密度、及び、高分子量のものを含む)、ポリフルオロカーボン(例えば、ポリテトラフルオロエチレン:PTFE等)、セルロース、ケイソウ土、ポリスチレン、及び、ガラスからなる群から選択される少なくとも1種の材料成分を含有することが好ましい。
【0044】
精製工程は、少なくとも2枚のフィルタに被精製液を通液してろ過する工程が好ましい。言い換えれば、少なくとも2枚のフィルタを直列に用いて、被精製液を2枚のフィルタに順次通液してろ過する工程が好ましい。なお、精製工程は、3枚以上のフィルタに被精製液を通液してろ過する工程がより好ましい。言い換えれば、精製工程は、2枚以上(好ましくは3枚以上)のフィルタを用いて、被精製液を精製する工程が好ましい。
【0045】
その際、第1フィルタ(被精製液をはじめに通液するフィルタ、前段のフィルタ)でのろ過は、1回のみでもよいし、2回以上行ってもよい。異なるフィルタを組み合わせて2回以上ろ過を行う場合には、各フィルタは、互いに同じ種類のものであってもよいし、互いに種類の異なるものであってもよい。
なかでも、より優れた本発明の効果を有する薬液が得られる点で、使用する2枚以上のフィルタは、疎水性フィルタ、及び、親水性フィルタを少なくとも含むことが好ましい。言い換えれば、2枚以上のフィルタを用いた精製工程においては、フィルタとして1枚以上の疎水性フィルタと、1枚以上の親水性フィルタとを用いることが好ましい。
なお、明細書において疎水性とは、フィルタの25℃における水接触角が、45°以上であることを意図し、親水性とは、フィルタの25℃における水接触角が45°未満であることを意図する。
【0046】
精製工程が、2枚以上のフィルタを通して被精製液をろ過する工程である場合、被精製液を各フィルタに通す順番としては特に制限されないが、精製工程において、被精製液が通液される最も後段の(本明細書において、精製工程の最後に被精製液が通液するフィルタを「最も後段のフィルタ」という。)フィルタは、親水性フィルタが好ましい。親水性フィルタは、被精製液が含有する特定金属粒子、及び、特定金属を含有するイオンとの相互作用がより強く、上記をより吸着しやすい。従って、得られる薬液中における特定金属粒子、及び、特定金属を含有するイオンの含有量を所望の範囲に制御しやすくなる。
なお、以下の説明では、第1フィルタ、及び、第2フィルタの用語を用いて2種以上のフィルタを通して被精製液をろ過する形態について説明する。ここで、第1フィルタは、第2フィルタより前に被精製液が通液されるフィルタ、を意味する。
また、第1フィルタ、及び、第2フィルタは、それぞれ要件1又は要件2を満たすフィルタであり、要件3又は4、及び、要件5を満たすことが好ましい。
【0047】
精製工程が、2枚以上のフィルタに被精製液を順次通液して、被精製液をろ過する工程である場合、被精製液を通液際のフィルタの前後の差圧(以下、「ろ過差圧」ともいう。)としては特に制限されないが、250kPa以下が好ましく、200kPa以下が好ましい。下限としては特に制限されないが、50kPa以上が好ましい。ろ過差圧が250kPa以下であると、フィルタに過剰な圧が掛かるのを防止できるため溶出物の低減が期待できる。
【0048】
精製工程が、2枚以上のフィルタ通して被精製液をろ過する工程である場合、各フィルタの孔径の関係は特に制限されないが、異なっていることが好ましい。
第1フィルタの孔径と比較して、第2フィルタの孔径が同じ、又は、小さい方が好ましい。また、異なる孔径の第1フィルタを2枚用いてもよい。
なお、本明細書において、フィルタの孔径とは、フィルタメーカーの公称値を参照できる。市販のフィルタとしては、例えば、日本ポール株式会社、アドバンテック東洋株式会社、日本インテグリス株式会社(旧日本マイクロリス株式会社)又は株式会社キッツマイクロフィルタ等が提供する各種フィルタの中から選択できる。また、ポリアミド製の「P−ナイロンフィルター(孔径0.02μm、臨界表面張力77mN/m)」;(日本ポール株式会社製)、高密度ポリエチレン製の「PE・クリーンフィルタ(孔径0.02μm)」;(日本ポール株式会社製)、及び高密度ポリエチレン製の「PE・クリーンフィルタ(孔径0.01μm)」;(日本ポール株式会社製)も使用できる。
【0049】
第2フィルタの孔径が第1フィルタより小さいものを用いる場合には、第2フィルタの孔径と第1フィルタの孔径との比(第2フィルタの孔径/第1フィルタの孔径)は、0.01〜0.99が好ましく、0.1〜0.9がより好ましく、0.2〜0.9が更に好ましい。第2フィルタの孔径を上記範囲とすることにより、被精製液に混入している微細な異物がより確実に除去される。
【0050】
得られた薬液の保管に際して、薬液中における特定金属粒子、及び、特定金属を含有するイオンの増加を抑制する観点からは、薬液と、フィルタの材質との関係は、フィルタの材質から導き出せるハンセン溶解度パラメータ空間における相互作用半径(R0)と、薬液に含有される有機溶剤から導き出せるハンセン空間の球の半径(Ra)とした場合のRaとR0の関係式(Ra/R0)≦1を満たす組み合わせであって、これらの関係式を満たすフィルタ材質で精製された薬液であることが好ましい。(Ra/R0)≦0.98が好ましく、(Ra/R0)≦0.95がより好ましい。下限としては、0.5以上が好ましく、0.6以上がより好ましく、0.7が更に好ましい。メカニズムは定かではないが、この範囲内であると、長期保管時における薬液中における特定金属粒子及びイオン含有量の増加が抑制される。
これらのフィルタ及び、有機溶剤の組み合わせとしては、特に限定されないが、米国US2016/0089622号公報のものが挙げられる。
【0051】
ろ過圧力はろ過精度に影響を与えることから、ろ過時における圧力の脈動は可能な限り少ない方が好ましい。
【0052】
ろ過速度は特に限定されないが、より優れた本発明の効果を有する薬液が得られる点で、1.0L/分/m以上が好ましく、0.75L/分/m以上がより好ましく、0.6L/分/m以上が更に好ましい。
フィルタにはフィルタ性能(フィルタが壊れない)を保障する耐差圧が設定されており、この値が大きい場合にはろ過圧力を高めることでろ過速度を高めることができる。つまり、上記ろ過速度上限は、通常、フィルタの耐差圧に依存するが、通常、10.0L/分/m以下が好ましい。一方で、ろ過圧力を下げることで薬液中に溶解している粒子状の異物又は不純物の量を効率的に低下させることができ、目的に応じて圧力を調整できる。
【0053】
ろ過圧力は、より優れた本発明の効果を有する薬液が得られる点で、0.001〜1.0MPaが好ましく、0.003〜0.5MPaがより好ましく、0.005〜0.3MPaが更に好ましい。特に、孔径が小さいフィルタを使用する場合には、ろ過の圧力を下げることで薬液に溶解している粒子状の異物又は不純物の量を効率的に低下させることができる。孔径が20nmより小さいフィルタを使用する場合には、ろ過の圧力は、0.005〜0.3MPaであることが特に好ましい。
【0054】
また、ろ過フィルタのポアサイズが小さくなるとろ過速度が低下する。しかし、同種のろ過フィルタを、複数個で、並列に接続することでろ過面積が拡大してろ過圧力が下がるので、これにより、ろ過速度低下を補償することが可能になる。
【0055】
精製工程は、以下の各工程を有することがより好ましい。なお、精製工程は、以下の各工程を1回有してもよいし、複数回有してもよい。また、以下の各工程の順序は特に制限されない。なお、以下の工程で使用される各フィルタは、上記要件1又は要件2を満たすフィルタであり、要件3又は要件4、及び、要件5を満たすフィルタが好ましい。
1.粒子除去工程
2.金属イオン除去工程
3.有機不純物除去工程
以下では、上記工程について、それぞれ説明する。
【0056】
<粒子除去工程>
精製工程は、粒子除去工程を有してもよい。粒子除去工程は、粒子除去フィルタを用いて、被精製液中の、粒子を除去する工程である。
粒子除去フィルタの形態としては、特に制限されないが、例えば、除粒子径が20nm以下のフィルタが挙げられる。
なお、フィルタの除粒子径としては、1〜15nmが好ましく、1〜12nmがより好ましい。除粒子径が15nm以下だと、より微細な粒子を除去でき、除粒子径が1nm以上だと、ろ過効率が向上する。
ここで、除粒子径とは、フィルタが除去可能な粒子の最小サイズを意味する。例えば、フィルタの除粒子径が20nmである場合には、直径20nm以上の粒子を除去可能である。
粒子除去フィルタの材質としては、例えば、6−ナイロン、及び6、6−ナイロンなどのナイロン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリイミド、ポリアミドイミド、並びに、ポリフルオロカーボン等が挙げられる。
ポリイミド、及び/又は、ポリアミドイミドは、カルボキシ基、塩型カルボキシ基及び−NH−結合からなる群より選択される少なくとも1つを有するものであってもよい。耐溶剤性については、ポリフルオロカーボン、ポリイミド及び/又はポリアミドイミドが優れる。また、金属イオンを吸着する観点からは、6−ナイロン、及び6、6−ナイロンなどのナイロン、が特に好ましい。
【0057】
精製工程が、粒子除去工程を有する場合、粒子除去フィルタを複数用いてもよい。粒子除去フィルタを複数用いる場合、更に、一方のフィルタとしては、除粒子径が50nm以上のフィルタ(例えば、孔径が50nm以上の微粒子除去用の精密濾過膜)が好ましい。被精製液に、コロイド化した不純物等の微粒子が存在する場合には、除粒子径が20nm以下であるフィルタ(例えば、孔径が20nm以下の精密濾過膜)を用いて濾過する前に、除粒子径が50nm以上のフィルタ(例えば、孔径が50nm以上の微粒子除去用の精密濾過膜)を用いて被精製液のろ過を実施することで、除粒子径が20nm以下であるフィルタ(例えば、孔径が20nm以下の精密ろ過膜)のろ過効率が向上し、粒子の除去性能がより向上する。
【0058】
<金属イオン除去工程>
精製工程は、金属イオン除去工程を有してもよい。金属イオン除去工程は、被精製液を金属イオン吸着フィルタに通過させる工程が好ましい。
金属イオン吸着フィルタとしては特に制限されず、公知の金属イオン吸着フィルタが挙げられる。
なかでも、金属イオン吸着フィルタとしては、イオン交換可能なフィルタが好ましい。ここで、吸着対象となる金属イオンは、特定金属を含有するイオン、及び、それ以外の金属を含有するイオンが挙げられる。金属イオン吸着フィルタは、金属イオンの吸着性能が向上するという観点から、表面に酸基を含有することが好ましい。酸基としては、スルホ基、及び、カルボキシ基等が挙げられる。
金属イオン吸着フィルタを構成する基材(材質)としては、セルロース、ケイソウ土、ナイロン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、及び、ポリフルオロカーボン等が挙げられる。金属イオンを吸着する効率の観点からは、ナイロンが特に好ましい。
【0059】
<有機不純物除去工程>
精製工程は、有機不純物除去工程を有してもよい。有機不純物除去工程としては、被精製液を有機不純物吸着フィルタに通過させる工程が好ましい。
有機不純物吸着フィルタとしては特に制限されず、公知の有機不純物吸着フィルタが挙げられる。
なかでも、有機不純物吸着フィルタとしては、有機不純物の吸着性能が向上する点で、有機不純物と相互作用可能な有機物骨格を表面に有すること(言い換えれば、有機不純物と相互作用可能な有機物骨格によって表面が修飾されていること)が好ましい。有機不純物と相互作用可能な有機物骨格としては、例えば、有機不純物と反応して有機不純物を有機不純物吸着フィルタに捕捉できるような化学構造が挙げられる。より具体的には、有機不純物としてn−長鎖アルキルアルコール(有機溶剤として1−長鎖アルキルアルコールを用いた場合の構造異性体)を含有する場合には、有機物骨格としては、アルキル基が挙げられる。また、有機不純物としてジブチルヒドロキシトルエン(BHT)を含む場合には、有機物骨格としてはフェニル基が挙げられる。
有機不純物吸着フィルタを構成する基材(材質)としては、活性炭を担持したセルロース、ケイソウ土、ナイロン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、及び、ポリフルオロカーボン等が挙げられる。
また、有機不純物吸着フィルタには、特開2002−273123号公報及び特開2013−150979号公報に記載の活性炭を不織布に固着したフィルタも使用できる。
【0060】
有機不純物吸着フィルタとしては、上記で示した化学吸着(有機不純物と相互作用可能な有機物骨格を表面に有する有機不純物吸着フィルタを用いた吸着)以外に、物理的な吸着方法も適用できる。
例えば、有機不純物としてBHTを含む場合、BHTの構造は10オングストローム(=1nm)よりも大きい。そのため、孔径が1nmの有機不純物吸着フィルタを用いることで、BHTはフィルタの孔を通過できない。つまり、BHTは、フィルタによって物理的に捕捉されるので、被精製液から除去される。このように、有機不純物の除去は、化学的な相互作用だけでなく物理的な除去方法を適用することでも可能である。ただし、この場合には、3nm以上の孔径のフィルタが「粒子除去フィルタ」として用いられ、3nm未満の孔径のフィルタが「有機不純物吸着フィルタ」として用いられる。
【0061】
〔洗浄工程:フィルタを洗浄する工程〕
本発明の実施形態に係る薬液の精製方法は、フィルタを洗浄する工程を更に有することが好ましい。フィルタを洗浄する方法としては特に制限されないが、洗浄液にフィルタを浸漬する、洗浄液をフィルタに通液する、及び、それらを組み合わせる方法が挙げられる。
フィルタを洗浄することによって、上記試験液に係る各要件を満足するよう、フィルタから抽出される成分の量をコントロールすることが容易となり、結果として、より優れた本発明の効果を有する薬液が得られる。
【0062】
洗浄液としては特に制限されず、公知の洗浄液を用いることができる。洗浄液としては特に制限されず、水、及び、有機溶剤等が挙げられる。有機溶剤としては、薬液が含有し得る有機溶剤、例えば、アルキレングリコールモノアルキルエーテルカルボキシレート、アルキレングリコールモノアルキルエーテル、乳酸アルキルエステル、アルコキシプロピオン酸アルキル、環状ラクトン(好ましくは炭素数4〜10)、環を有してもよいモノケトン化合物(好ましくは炭素数4〜10)、アルキレンカーボネート、アルコキシ酢酸アルキル、及び、ピルビン酸アルキル等であってもよい。
【0063】
より具体的には、洗浄液としては、例えば、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジメチルスルホキシド、n−メチルピロリドン、ジエチレングリコール、エチレングリコール、ジプロピレングリコール、プロピレングリコール、炭酸エチレン、炭酸プロピレン、スルホラン、シクロヘキサン、シクロヘキサノン、シクロヘプタノン、シクロペンタノン、2−ヘプタノン、及び、γ−ブチロラクトン、並びに、これらの混合物等が挙げられる。
【0064】
なかでも、より優れた本発明の効果を有する薬液が得られる点で、洗浄液の溶解度パラメータが、16(MPa)1/2を超えることが好ましく、18.0以上がより好ましく、18.9以上が更に好ましい。溶解度パラメータの上限値としては特に制限されないが、一般に30.0以下が好ましい。
溶解度パラメータとは分子凝集エネルギーの平方根で表される値である。Polymer HandBook(Second Edition)第IV章 Solubility Parameter Valuesに記載があり、その値を本明細書における溶解度パラメータとする。また、単位は(MPa)1/2であり、25℃における値を指す。
なお、データの記載がないものについては、R.F.Fedors,Polymer Engineering Science,14,p147−154(1974)に記載の方法で計算した値を本明細書における溶解度パラメータとする。
また、洗浄液が2種以上の溶剤の混合溶剤である場合、洗浄液の溶解度パラメータは、混合した各溶剤の体積分率と各溶剤の溶解度パラメータとの積の和とする。例えば、水(溶解度パラメータ:23.4)とアセトン(溶解度パラメータ:10.0)とを水/アセトン=0.5/0.5(体積比)で混合した混合溶剤の溶解度パラメータは、23.4×0.5+10.0×0.5=16.7である。
【0065】
なかでも、より優れた本発明の効果を有する点で、洗浄液としてはジメチルスルホキシド(26.7)、n−メチルピロリドン(23.0)、ジエチレングリコール(29.1)、エチレングリコール(28.5)、ジプロピレングリコール(31.2)、プロピレングリコール(30.2)、炭酸エチレン(29.6)、炭酸プロピレン(27.6)、スルホラン(25.9)、シクロヘキサノン(19.6)、シクロヘプタノン(19.7)、シクロペンタノン(18.9)、2−ヘプタノン(21.2)、及び、γ−ブチロラクトン(25.5)からなる群から選択される少なくとも1種が好ましい。
【0066】
[薬液の製造方法]
本発明の実施形態に係る薬液の製造方法は、既に説明した薬液の精製方法を有する薬液の製造方法である。以下では、図1〜3を用いて、本発明の実施形態に係る薬液の製造方法について説明する。
【0067】
(第一形態)
図1は、本発明の実施形態に係る薬液の製造方法を適用することができる薬液の製造装置の第一形態を示す概略図である。図1に示す薬液の製造装置10においては、タンク11と、充填装置12とが、管路13で連結されており、図1中の矢印Fに沿って被精製液が移送される。管路13の途中には、ろ過装置14が3つ連続して設けられており、それぞれのろ過装置14は1つのフィルタを有している。被精製液は、まず、タンク11に貯留される。次に、弁16が開かれて、ポンプ15が稼動すると、被精製液は、矢印Fに沿って、充填装置12に移送される。この間、被精製液は、3つのろ過装置14が有するフィルタを順に通ってろ過される。
なお、製造装置10においては、ろ過装置に導入した被精製液の全量をフィルタでろ過する、全量ろ過方式(デッドエンド方式)の装置を例示するが、本発明の実施形態に係る精製装置としては上記に制限されず、導入した被精製液を精製済み被精製液と濃縮液とに分離する(更に濃縮液を再度被精製液としてフィルタに導入する場合もある)クロスフロー方式のろ過装置であってもよく、これらを組合せた方式であってもよい。
なお、図1の薬液の製造装置10は、ろ過装置14を3つ備える形態を示しているが、本発明の実施形態に係る薬液の製造方法を適用することができる薬液の製造装置としてはこれに制限されず、少なくとも1つのろ過装置14を備えていればよい。
【0068】
・精製工程(第一形態)
本実施形態に係る薬液の製造方法は、既に説明した薬液の精製方法を有する。薬液の製造装置10を用いて、薬液を精製する方法としては、典型的には、タンク11に貯留した被精製液を、矢印Fの方向に移送し、ろ過装置14を通過させることによって行われる。このとき、使用されるフィルタは、既に説明した所定の要件を満たすフィルタである。
【0069】
・洗浄工程(第一形態)
本実施形態に係る薬液の製造方法は、既に説明した洗浄工程を有することが好ましい。薬液の製造方法が洗浄工程を有する場合、フィルタの洗浄は、上記薬液の製造装置10の外で行われてもよい。言い換えれば、製造装置10が備えるろ過装置14からフィルタを外して、図示しない洗浄装置(例えば、洗浄槽等)を用いてフィルタを洗浄し、洗浄後のフィルタを薬液の製造装置10に装着すればよい。
また、フィルタの洗浄は、上記薬液の製造装置10を用いて行うこともできる。すなわち、タンク11に洗浄液を貯留する。次に、洗浄液を矢印Fに沿って充填装置12まで移送する。この間、洗浄液によって、各ろ過装置14(及びこれに装着されたフィルタ)と、管路13とが洗浄される。この方法によれば、フィルタに加えてタンク11、及び、管路13等の接液部を同時に洗浄することができるため好ましい。
【0070】
(第二形態)
図2は、本発明の実施形態に係る薬液の製造方法を適用することができる薬液の製造装置の第二形態を示す概略図である。図2に示す薬液の製造装置20においては、タンク11と、充填装置12とが、管路13で連結されており、管路13の途中には、3つのろ過装置14が連続して備えられており、それぞれのろ過装置14は1つのフィルタを含有している。また、ろ過装置14の後には、タンク11に連結する循環管路21と管路13とを連結する弁22が備えられている。
【0071】
・精製工程(第二形態)
被精製液は、まず、タンク11に貯留される。次に、弁16が開かれ、ポンプ15が稼動し、被精製液は、3つのろ過装置14が含有するフィルタを順に通ってろ過される。ろ過された被精製液は、更に、弁22を経て循環管路21を通って再びタンク11に戻る(図2中の矢印F1)。薬液の製造装置20は、循環管路21を備えるため、精製工程において、被精製液を循環させながら、各ろ過装置14を2回以上通過させる、循環ろ過を行うことができる。
すなわち、タンク11に戻ったろ過済みの被精製液は、再びポンプ15によって管路13中に備えられたろ過装置14を通過させてろ過される。このとき、被精製液は、再び循環管路21からタンク11に戻してもよいし、弁22から管路13を経て充填装置12に送液されてもよい。
【0072】
・洗浄工程(第二形態)
本実施形態に係る薬液の製造方法は既に説明した洗浄工程を有することが好ましい。薬液の製造方法が洗浄工程を有する場合、フィルタの洗浄は、上記薬液の製造装置20を用いて行うこともできる。すなわち、タンク11に洗浄液を貯留し、洗浄液を矢印F2に沿ってタンク11まで循環移送する間に、各ろ過装置14(及びこれに装着されたフィルタ)と、管路13とを洗浄液を通過させることにより洗浄すればよい。更に、タンク11に循環移送された洗浄液を再度用いて上記を繰り返してもよい(循環洗浄)。この方法によれば、フィルタが所望の清浄度となるまで、洗浄液を循環させながらより効率的にフィルタを洗浄することができる。
【0073】
(第三形態)
図3は、本発明の実施形態に係る薬液の製造方法を適用することができる薬液の製造装置の第三形態を示す概略図である。図3に示す薬液の製造装置30においては、タンク11と、充填装置12とが、管路13で連結されており、管路13の途中には、3つのろ過装置14が連続して備えられており、それぞれのろ過装置14は1つのフィルタを含有している。また、ろ過装置14の後には、タンク11に連結する循環管路21と管路13とを連結する弁22が備えられている。
また、薬液の製造装置30は、蒸留塔31を備え、蒸留塔31は、蒸留管路32を通じてタンク11と連結している。また、タンク11は、管路13、弁33、蒸留塔循環管路34、及び、弁35を通じて、原料投入管路36と連結しており、原料投入管路36は蒸留塔31と連結している。
【0074】
・精製工程(第三形態)
薬液の製造装置30においては、被精製液は、まず、原料投入管路36から、蒸留塔31に導入され、蒸留塔31で蒸留される。蒸留された被精製液は、図示しない濃縮装置によって濃縮され、蒸留管路32を経てタンク11に貯留される。タンク11に貯留された被精製液は、図中のF1の経路で循環ろ過されるか、又は、図中のF2の経路でろ過される。上記経路によって被精製液を精製する方法としては、第一形態、及び、第二形態で説明したのと同様である。
【0075】
・洗浄工程(第三形態)
本実施形態に係る薬液の製造方法は既に説明した洗浄工程を有することが好ましい。薬液の製造方法が洗浄工程を有する場合、フィルタの洗浄は、上記薬液の製造装置30を用いて行うこともできる。すなわち、タンク11に洗浄液を貯留し、洗浄液を矢印F1に沿ってタンク11まで循環移送する間に、洗浄液を、各ろ過装置14(及びこれに装着されたフィルタ)と、管路13とを通過させることにより洗浄すればよい。更に、タンク11に循環移送された洗浄液を再度用いて上記を繰り返してもよい(循環洗浄)。この方法によれば、所望の清浄度となるまで、洗浄液を循環させながらより効率的にフィルタを洗浄することができる。
また、タンク11に貯留された洗浄液を蒸留塔循環管路34、及び、原料投入管路36を経て蒸留塔31へ導入(矢印F3)し、洗浄液を蒸留してから、図示しない濃縮装置で濃縮し、蒸留管路32を経て再びタンク11へ洗浄液を循環移送(矢印F4)してもよい。上記の方法によれば、フィルタだけでなく、各管路、及び、蒸留塔31の接液部もあわせて洗浄することができる。
【0076】
〔その他の工程〕
本発明の実施形態に係る薬液の製造方法は、上記以外にも、本発明の効果を損なわない範囲内において、他の工程を有してもよい。他の工程としては例えば、蒸留工程、イオン交換工程、及び、除電工程が挙げられる。
【0077】
<蒸留工程>
蒸留工程は、被精製液を蒸留して不純物を除去する工程を意図する。
上記蒸留工程で用いることができる蒸留塔の一形態としては、例えば、蒸留塔の接液部(接液部の定義は後述する)が、非金属材料、及び、電解研磨された金属材料からなる群から選択される少なくとも1種から形成される蒸留塔が挙げられる。
なお、非金属材料、及び、電解研磨された金属材料の形態は後述する。
【0078】
<イオン交換工程>
イオン交換工程は、被精製液をイオン交換ユニットに通過させる工程を意図する。被精製液をイオン交換ユニットに通過させる方法としては特に制限されず、既に説明した薬液の製造装置の管路の途中に、イオン交換ユニットを配置し、上記イオン交換ユニットに、加圧又は無加圧で有機溶剤を通過させる方法が挙げられる。
【0079】
イオン交換ユニットとしては特に制限されず、公知のイオン交換ユニットを用いることができる。イオン交換ユニットとしては、例えば、塔状の容器内にイオン交換樹脂を収容したもの、及び、イオン吸着膜等が挙げられる。
【0080】
イオン交換工程の一形態としては、イオン交換樹脂としてカチオン交換樹脂又はアニオン交換樹脂を単床で設けたもの、カチオン交換樹脂とアニオン交換樹脂とを複床で設けたもの、及び、カチオン交換樹脂とアニオン交換樹脂とを混床で設けたものを用いる工程が挙げられる。
イオン交換樹脂としては、イオン交換樹脂からの水分溶出を低減させるために、極力水分を含まない乾燥樹脂を使用することが好ましい。このような乾燥樹脂としては、市販品を用いることができ、オルガノ社製の15JS−HG・DRY(商品名、乾燥カチオン交換樹脂、水分2%以下)、及びMSPS2−1・DRY(商品名、混床樹脂、水分10%以下)等が挙げられる。上記イオン交換工程は、既に説明した蒸留工程の前に実施されることが好ましい。
【0081】
イオン交換工程の他の形態としては、イオン吸着膜を用いる工程が挙げられる。
イオン吸着膜を用いることで、高流速での処理が可能である。なお、イオン吸着膜としては特に制限されないが、例えば、ネオセプタ(商品名、アストム社製)等が挙げられる。
上記イオン交換工程は、既に説明した蒸留工程の後に実施されることが好ましい。上記イオン交換工程を経ることで、製造装置内で蓄積した不純物が流出した場合にこれを除去でき、移送管路として利用されるステンレス鋼(SUS)等の配管からの溶出物を除去できる。
【0082】
<除電工程>
除電工程は、被精製液を除電することで、帯電電位を低減させる工程を意図する。
除電方法としては特に制限されず、公知の除電方法を用いることができる。除電方法としては、例えば、被精製液を導電性材料に接触させる方法が挙げられる。
被精製液を導電性材料に接触させる接触時間は、0.001〜60秒が好ましく、0.001〜1秒がより好ましく、0.01〜0.1秒が更に好ましい。導電性材料としては、ステンレス鋼、金、白金、ダイヤモンド、及びグラッシーカーボン等が挙げられる。
被精製液を導電性材料に接触させる方法としては、例えば、導電性材料からなる接地されたメッシュを管路内部に配置し、ここに被精製液を通す方法等が挙げられる。
【0083】
製造装置の接液部(接液部の定義については後述する。)の材料としては特に制限されないが、より優れた欠陥抑制性能を有する薬液が得られる点で、非金属材料、及び、電解研磨された金属材料からなる群から選択される少なくとも1種から形成されることが好ましい。なお、本明細書において、「接液部」とは、流体が接する可能性がある部位(例えば、タンク内面、送液ポンプ、ダンパー、パッキン、Oリング、及び、管路内面等)で、かつ、その表面から厚み100nmの領域を意図する。
【0084】
非金属材料としては、特に限定されないが、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリエチレン−ポリプロピレン樹脂、又は、パーフルオロ樹脂などのフッ素含有樹脂材料が好ましく、金属原子の溶出が少ない観点から、フッ素含有樹脂がより好ましい。
【0085】
フッ素含有樹脂としては、パーフルオロ樹脂などが挙げられ、四フッ化エチレン樹脂(PTFE)、四フッ化エチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、四フッ化エチレン−六フッ化プロピレン共重合樹脂(FEP)、四フッ化エチレン−エチレン共重合体樹脂(ETFE)、三フッ化塩化エチレン−エチレン共重合樹脂(ECTFE)、フッ化ビニリデン樹脂(PVDF)、三フッ化塩化エチレン共重合樹脂(PCTFE)、及び、フッ化ビニル樹脂(PVF)等が挙げられる。
フッ素含有樹脂としては、四フッ化エチレン樹脂、四フッ化エチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体、又は、四フッ化エチレン−六フッ化プロピレン共重合樹脂が好ましい。
【0086】
上記金属材料としては、特に制限されず、公知の材料を用いることができる。
金属材料としては、例えば、クロム及びニッケルの含有量の合計が金属材料全質量に対して25質量%超である金属材料が挙げられ、なかでも、30質量%以上がより好ましい。金属材料におけるクロム及びニッケルの含有量の合計の上限値としては特に制限されないが、一般に90質量%以下が好ましい。
金属材料としては、例えば、ステンレス鋼、炭素鋼、合金鋼、ニッケルクロムモリブデン鋼、クロム鋼、クロムモリブデン鋼、マンガン鋼、及びニッケル−クロム合金等が挙げられる。
【0087】
ステンレス鋼としては、特に制限されず、公知のステンレス鋼を用いることができる。なかでも、ニッケルを8質量%以上含有する合金が好ましく、ニッケルを8質量%以上含有するオーステナイト系ステンレス鋼がより好ましい。オーステナイト系ステンレス鋼としては、例えば、SUS(Steel Use Stainless)304(Ni含有量8質量%、Cr含有量18質量%)、SUS304L(Ni含有量9質量%、Cr含有量18質量%)、SUS316(Ni含有量10質量%、Cr含有量16質量%)、及びSUS316L(Ni含有量12質量%、Cr含有量16質量%)等が挙げられる。
【0088】
ニッケル−クロム合金としては、特に制限されず、公知のニッケル−クロム合金を用いることができる。なかでも、ニッケル含有量が40〜75質量%、クロム含有量が1〜30質量%のニッケル−クロム合金が好ましい。
ニッケル−クロム合金としては、例えば、ハステロイ(商品名、以下同じ。)、モネル(商品名、以下同じ)、及びインコネル(商品名、以下同じ)等が挙げられる。より具体的には、ハステロイC−276(Ni含有量63質量%、Cr含有量16質量%)、ハステロイ−C(Ni含有量60質量%、Cr含有量17質量%)、及び、ハステロイC−22(Ni含有量61質量%、Cr含有量22質量%)等が挙げられる。
また、ニッケル−クロム合金は、必要に応じて、上記した合金の他に、更に、ホウ素、ケイ素、タングステン、モリブデン、銅、及びコバルト等を含有していてもよい。
【0089】
金属材料を電解研磨する方法としては特に制限されず、公知の方法を用いることができる。例えば、特開2015−227501号公報の0011〜0014段落、及び、特開2008−264929号公報の0036〜0042段落等に記載された方法を用いることができる。
【0090】
金属材料は、電解研磨されることにより表面の不動態層におけるクロムの含有量が、母相のクロムの含有量よりも多くなっているものと推測される。そのため、接液部が電解研磨された金属材料から形成された蒸留塔からは、有機溶剤中に金属原子を含有する金属不純物が流出しにくいため、不純物含有量が低減された蒸留済みの有機溶剤を得ることができるものと推測される。
なお、金属材料はバフ研磨されていてもよい。バフ研磨の方法は特に制限されず、公知の方法を用いることができる。バフ研磨の仕上げに用いられる研磨砥粒のサイズは特に制限されないが、金属材料の表面の凹凸がより小さくなりやすい点で、#400以下が好ましい。なお、バフ研磨は、電解研磨の前に行われることが好ましい。
【0091】
より優れた欠陥抑制性能を有する薬液が得られる点で、接液部は電解研磨されたステンレス鋼から形成されることが好ましい。特に、製造装置がタンクを備える場合、タンクの接液部が電解研磨されたステンレス鋼から形成されることがより好ましい。接液部におけるFeの含有量に対するCrの含有量の含有質量比(以下、「Cr/Fe」ともいう。)としては特に制限されないが、一般に、0.5〜4が好ましく、なかでも、処理液中に金属不純物、及び/又は、有機不純物がより溶出しにくい点で、0.5を超え、3.5未満がより好ましく、0.7以上、3.0以下がより好ましい。Cr/Feが0.5を超えると、タンク内からの金属溶出を抑えることができ、Cr/Feが3.5未満だとパーティクルの原因となる接液部のはがれ等が起きにくい。
上記金属材料中のCr/Feを調整する方法としては特に制限されず、金属材料中のCr原子の含有量を調整する方法、及び、電解研磨により、研磨表面の不動態層におけるクロムの含有量が、母相のクロムの含有量よりも多くする方法等が挙げられる。
【0092】
金属材料は皮膜技術が適用されていてもよい。
皮膜技術には、金属被覆(各種メッキ)、無機被覆(各種化成処理、ガラス、コンクリート、及び、セラミックス等)、及び、有機被覆(さび止め油、塗料、ゴム、及び、プラスチックス)の3種に大別されている。
好ましい皮膜技術としては、錆止め油、錆止め剤、腐食抑制剤、キレート化合物、可剥性プラスチック、及び、ライニング剤等による表面処理が挙げられる。
なかでも、各種のクロム酸塩、亜硝酸塩、ケイ酸塩、燐酸塩、オレイン酸、ダイマー酸、ナフテン酸等のカルボン酸、カルボン酸金属石鹸、スルホン酸塩、アミン塩、及び、エステル(高級脂肪酸のグリセリンエステルや燐酸エステル)等の腐食抑制剤;エチレンジアンテトラ酢酸、グルコン酸、ニトリロトリ酢酸、ヒドロキシエチルエチオレンジアミン三作酸、及び、ジエチレントリアミン五作酸等などのキレート化合物;フッ素樹脂ライニング等による表面処理が好ましい。より好ましいのは、燐酸塩処理又はフッ素樹脂ライニングによる表面処理である。
【0093】
〔クリーンルーム〕
上記薬液の精製、製造、容器の開封及び/又は洗浄、溶液の収容等を含めた取り扱い、処理分析、及び、測定は、全てクリーンルームで行うことが好ましい。クリーンルームは、14644−1クリーンルーム基準を満たすことが好ましい。ISO(国際標準化機構)クラス1、ISOクラス2、ISOクラス3、及び、ISOクラス4のいずれかを満たすことが好ましく、ISOクラス1又はISOクラス2を満たすことがより好ましく、ISOクラス1を満たすことが更に好ましい。
【0094】
[薬液]
本実施形態に係る薬液中における有機溶剤の含有量としては特に制限されないが、一般に薬液の全質量に対して、97.0〜99.999質量%が好ましく、99.9〜99.9質量%が好ましい。有機溶剤は1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。2種以上の有機溶剤を併用する場合には、合計含有量が上記範囲内であることが好ましい。
なお、本明細書において、有機溶剤とは、上記薬液の全質量に対して、1成分あたり10000質量ppmを超えた含有量で含有される液状の有機化合物を意図する。つまり、本明細書においては、上記薬液の全質量に対して10000質量ppmを超えて含有される液状の有機化合物は、有機溶剤に該当するものとする。
なお、本明細書において液状とは、25℃、大気圧下において、液体であることを意図する。
【0095】
上記有機溶剤の種類としては特に制限されず、公知の有機溶剤を用いることができる。有機溶剤としては、例えば、アルキレングリコールモノアルキルエーテルカルボキシレート、アルキレングリコールモノアルキルエーテル、乳酸アルキルエステル、アルコキシプロピオン酸アルキル、環状ラクトン(好ましくは炭素数4〜10)、環を有してもよいモノケトン化合物(好ましくは炭素数4〜10)、アルキレンカーボネート、アルコキシ酢酸アルキル、及び、ピルビン酸アルキル等が挙げられる。
また、有機溶剤としては、例えば、特開2016−57614号公報、特開2014−219664号公報、特開2016−138219号公報、及び、特開2015−135379号公報に記載のものを用いてもよい。
【0096】
有機溶剤としては、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)、プロピレングリコールモノエチルエーテル(PGEE)、プロピレングリコールモノプロピルエーテル(PGPE)、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)、乳酸エチル(EL)、メトキシプロピオン酸メチル(MPM)、シクロペンタノン(CyPn)、シクロヘキサノン(CyHe)、γ−ブチロラクトン(GBL)、ジイソアミルエーテル(DIAE)、酢酸ブチル(nBA)、酢酸イソアミル(iAA)、イソプロパノール(IPA)、及び、4−メチル−2−ペンタノール(MIBC)からなる群から選択される少なくとも1種を含有することが好ましく、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)、乳酸エチル(EL)、メトキシプロピオン酸メチル(MPM)、シクロヘキサノン(CyHe)、γ−ブチロラクトン(GBL)、酢酸ブチル(nBA)、酢酸イソアミル(iAA)、イソプロパノール(IPA)、及び、4−メチル−2−ペンタノール(MIBC)からなる群から選択される少なくとも1種を含有することがより好ましい。なお、有機溶剤は1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
【0097】
薬液は、有機溶剤以外のその他の成分を含有してもよい。その他の成分としては、例えば、金属不純物、有機不純物、界面活性剤、及び、水等が挙げられる。
【0098】
〔金属不純物〕
薬液は、金属不純物を含有することが好ましい。本明細書において金属不純物とは、金属を含有する粒子と、金属を含有するイオンの合計含有量を意図する。なお、薬液中における金属を含有する粒子、及び、金属を含有するイオンの含有量の測定には、Agilent 8800 トリプル四重極ICP−MS半導体分析用、オプション#200)を用いることができる。なお、測定条件は実施例に記載したとおりである。
【0099】
<金属を含有する粒子>
薬液中における金属を含有する粒子の含有量としては特に制限されないが、一般に、薬液の全質量に対して、合計で0.1〜40質量pptが好ましく、合計で1〜25質量pptがより好ましく、合計で1〜17質量pptが更に好ましく、1〜13質量pptが特に好ましい。金属を含有する粒子は、薬液中に、1種を単独で含有されていても、2種以上が含有されていてもよい。薬液が金属を含有する粒子を2種以上含有する場合には、合計含有量が上記範囲内であることが好ましい。
【0100】
なかでも、薬液がより優れた本発明の効果を有する点で、金属を含有する粒子のうち、特定金属粒子を1種含有する場合、薬液中における1種の粒子の含有量が、薬液の全質量に対して15質量ppt以下が好ましく、10質量ppt以下がより好ましく、7質量ppt以下が更に好ましく、3質量ppt以下が特に好ましい。下限としては特に制限されないが、一般に0.01質量ppt以上が好ましい。薬液が、上記の粒子を0.01質量ppt以上含有すると、フォトリソグラフィー工程において、半導体基板上に発生する様々な不純物をより凝集させやすく、欠陥が発生しにくい。従って、結果として、得られる半導体基板には、ショートがより発生しにくい。
【0101】
また、薬液が、金属を含有する粒子のうち、特定金属粒子を2種以上含有する場合、薬液中における2種以上の粒子の合計含有量が薬液の全質量に対して15質量ppt以下が好ましく、10質量ppt以下がより好ましく、7質量ppt以下が更に好ましく、3質量ppt以下が特に好ましい。下限としては特に制限されないが、一般に0.01質量ppt以上が好ましい。薬液が、上記の粒子を合計0.01質量ppt以上含有すると、フォトリソグラフィー工程において、半導体基板上に発生する不純物をより凝集させやすく、欠陥が発生しにくい。従って、結果として、得られる半導体基板には、ショートがより発生しにくい。
【0102】
本発明者らの検討によれば、特定金属(粒子及びイオン、中でも特に粒子)は、フォトリソグラフィー工程において、様々な不純物を巻き込んで導電性の錯体を形成しやすいことを知見しており、特に、薬液中の特定金属の粒子を所定の範囲以下とすることにより、薬液はより優れたショート発生抑制性能を有する。
【0103】
<金属を含有するイオン>
薬液中における金属を含有するイオンの含有量としては特に制限されないが、一般に、薬液の全質量に対して、合計で0.1〜45質量pptが好ましく、合計で1〜24質量pptがより好ましく、合計で2〜10質量pptが更に好ましい。金属を含有するイオンは、薬液中に、1種を単独で含有されていても、2種以上が含有されていてもよい。薬液が金属を含有するイオンを2種以上含有する場合には、合計含有量が上記範囲内であることが好ましい。
【0104】
なかでも、薬液がより優れた本発明の効果を有する点で、金属を含有するイオンのうち、特定金属イオンを1種含有する場合、薬液中における1種のイオンの含有量が、薬液の全質量に対して15質量ppt以下が好ましく、11質量ppt以下がより好ましく、8質量ppt以下が更に好ましい。下限としては特に制限されないが、一般に0.1質量ppt以上が好ましい。薬液が、上記のイオンを0.1質量ppt以上含有すると、フォトリソグラフィー工程において、半導体基板上に発生する不純物をより凝集させやすく、欠陥が発生しにくい。従って、結果として、得られる半導体基板には、ショートがより発生しにくい。
【0105】
また、薬液が、金属を含有するイオンのうち、特定金属イオンを2種以上含有する場合、薬液中における2種以上のイオンの合計含有量が、薬液の全質量に対して15質量ppt以下が好ましく、11質量ppt以下がより好ましく、8質量ppt以下が更に好ましい。下限としては特に制限されないが、一般に0.1質量ppt以上が好ましい。薬液が、上記のイオンを合計0.1質量ppt以上含有すると、フォトリソグラフィー工程において、半導体基板上に発生する様々な不純物をより凝集させやすく、欠陥が発生しにくい。従って、結果として、得られる半導体基板には、ショートがより発生しにくい。
【0106】
〔有機不純物〕
薬液は、有機不純物を含有してもよい。有機不純物の定義、薬液中における含有量測定方法、及び、好適形態について既に説明したとおりである。
薬液中における有機不純物の含有量としては特に制限されないが、より優れた本発明の効果を有する薬液が得られる点で、薬液の全質量に対して30質量ppm以下が好ましく、10質量ppm以下がより好ましく3質量ppm以下がより好ましく、1.9質量ppm以下がより好ましい。下限値としては特に制限されないが、有機不純物を含有しないことが好ましい。
薬液が有機不純物を含有する場合、有機不純物は金属に対して配位子として振る舞い、金属と錯体を形成する。この様な錯体は疎水性が高く、薬液を用いて処理した半導体基板表面に残存しやすい。そのため、金属を含有する上記の錯体が半導体基板上に残る結果となり、結果的に配線間のショートの原因になると考えられる。
【0107】
〔容器〕
上記薬液は、使用時まで一時的に容器内に保管してもよい。上記薬液を保管するための容器としては特に制限されず、公知の容器を用いることができる。
上記薬液を保管する容器としては、半導体用途向けに、容器内のクリーン度が高く、不純物の溶出が少ないものが好ましい。
使用可能な容器としては、具体的には、アイセロ化学(株)製の「クリーンボトル」シリーズ、及び、コダマ樹脂工業製の「ピュアボトル」等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0108】
容器としては、原材料及び薬液への不純物混入(コンタミ)防止を目的として、容器内壁を6種の樹脂による6層構造とした多層ボトル、又は、6種の樹脂による7層構造とした多層ボトルを使用することも好ましい。これらの容器としては例えば特開2015−123351号公報に記載の容器が挙げられる。
【0109】
この容器の接液部は、非金属材料、又は、ステンレス鋼により形成されたものであることが好ましい。
非金属材料としては、上述した蒸留塔の接液部に用いられる非金属材料で例示した材料が挙げられる。
特に、上記のなかでも、接液部がポリフルオロカーボンである容器を用いる場合、接液部がポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、又はポリエチレン−ポリプロピレン樹脂である容器を用いる場合と比べて、エチレン又はプロピレンのオリゴマーの溶出という不具合の発生を抑制できる。
このような接液部がポリフルオロカーボンである容器の具体例としては、例えば、Entegris社製 FluoroPurePFA複合ドラム等が挙げられる。また、特表平3−502677号公報の第4頁等、国際公開第2004/016526号の第3頁等、及び、国際公開第99/46309号の第9頁及び16頁等に記載の容器も用いることができる。なお、非金属材料の接液部とする場合、非金属材料中の薬液への溶出が抑制されていることが好ましい。
【0110】
容器としては、薬液と接触する接液部が、ステンレス鋼から形成されることも好ましく、電解研磨されたステンレス鋼から形成されることがより好ましい。
上記容器に薬液を収容した場合、容器内で保管される薬液中に、不純物金属、及び/又は、有機不純物がより溶出しにくい。
【0111】
上記ステンレス鋼の形態としては、蒸留塔の接液部の材質として既に説明したとおりである。また、電解研磨されたステンレス鋼についても同様である。
【0112】
上記容器の接液部を形成するステンレス鋼中におけるFe原子の含有量に対するCr原子の含有量の含有質量比(以下、「Cr/Fe」ともいう。)としては特に制限されないが、一般に、0.5〜4が好ましく、なかでも、容器内で保管される薬液中に不純物金属、及び/又は、有機不純物が更に溶出しにくい点で、0.5を超え、3.5未満がより好ましい。Cr/Feが0.5を超えると、容器内からの金属溶出を抑えることができ、Cr/Feが3.5未満だとパーティクルの原因となる内容器のはがれ等が起きにくい。
上記ステンレス鋼中のCr/Feを調整する方法としては特に制限されず、ステンレス鋼中のCr原子の含有量を調整する方法、及び、電解研磨により、研磨表面の不動態層におけるクロムの含有量が、母相のクロムの含有量よりも多くする方法等が挙げられる。
【0113】
容器は、溶液を収容前にその内部が洗浄されることが好ましい。洗浄に用いる液体としては、上記薬液そのもの、又は、上記薬液を希釈したものが好ましい。上記薬液は、製造後にガロン瓶又はコート瓶等の容器にボトリングし、輸送、保管されてもよい。ガロン瓶はガラス材料を使用したものであってもそれ以外であってもよい。
【0114】
保管における溶液中の成分の変化を防ぐ目的で、容器内を純度99.99995体積%以上の不活性ガス(チッソ、又はアルゴン等)で置換しておいてもよい。特に、含水率が少ないガスが好ましい。また、輸送、保管に際しては、常温でもよいが、変質を防ぐため、−20℃から30℃の範囲に温度制御してもよい。
【0115】
〔薬液の用途〕
上記実施形態に係る薬液は、半導体製造用に好ましく用いられる。具体的には、リソグラフィー工程、エッチング工程、イオン注入工程、及び、剥離工程等を含有する半導体デバイスの製造工程において、各工程の終了後、又は、次の工程に移る前に、有機物を処理するために使用され、具体的にはプリウェット液、現像液、リンス液、及び、剥離液等として好適に用いられる。例えばレジスト塗布前後の半導体基板のエッジエラインのリンスにも使用することができる。
また、上記薬液は、レジスト液(後述する)に含有される樹脂の希釈液としても用いることができる。また、他の有機溶剤、及び/又は、水等により希釈してもよい。
【0116】
また、上記薬液は、半導体製造用以外の他の用途でも好適に用いることができ、ポリイミド、センサー用レジスト、レンズ用レジスト等の現像液、及び、リンス液等としても使用することができる。
また、上記薬液は、医療用途又は洗浄用途の溶媒としても用いることができる。特に、容器、配管、及び、基板(例えば、ウェハ、及び、ガラス等)等の洗浄に好適に用いることができる。
【0117】
なかでも、上記実施形態に係る薬液は、プリウェット用としてより好ましく用いられる。すなわち、上記実施形態に係る薬液は、プリウェット液として用いることが好ましい。
【実施例】
【0118】
以下に実施例に基づいて本発明を更に詳細に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、及び、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更することができる。従って、本発明の範囲は以下に示す実施例により限定的に解釈されるべきものではない。
【0119】
[薬液の製造]
図3に記載した薬液の製造装置を用いて、有機溶剤を精製して薬液を製造した。
各薬液の精製は、表1に記載した各フィルタを使用した。各フィルタは、表1に記載した方法で洗浄した。
次に、各フィルタを表1に記載した各有機溶剤(表中の「試験液」欄に記載した。)1500mlに、23℃で、24時間接触させ、試験液を得た。
得られた試験液中における金属の粒子の含有量、金属を含有するイオンの含有量、及び、有機不純物の含有量をそれぞれ後述する方法により測定して、その結果を表1の各欄に記載した。
次に、上記洗浄後の各フィルタを図3に記載した薬液の製造装置にとりつけ、表1に記載した条件で有機溶剤を精製した。
このようにして得られた薬液について、薬液中における金属の粒子の含有量、金属を含有するイオン、及び、有機不純物の含有量を後述する方法により測定した。
【0120】
なお、実施例、及び、比較例に係る薬液の製造に際し、表1に記載した洗浄液、及び、有機溶剤は、純度99質量%以上の高純度グレードを用いた。
なお、各実施例、及び、比較例の薬液の精製において用いた各フィルタの略号は以下のとおりであり、「第1フィルタ」「第2フィルタ」及び「第3フィルタ」とは、図3における薬液の製造装置において、ポンプ15側から順に、各ろ過装置14装着されたフィルタを表している。
【0121】
・Nylon (5nm):Entegris社製、材質:ナイロン、孔径5nm、親水性フィルタに該当する。
・PE(5nm):Entegris社製、材質:ポリエチレン、孔径5nm、疎水性フィルタに該当する。
・PTFE(10nm):Entegris社製、材質:ポリテトラフルオロエチレン、孔径10nm、疎水性フィルタに該当する。
・PTFE(20nm):Entegris社製、材質:ポリテトラフルオロエチレン、孔径20nm、疎水性フィルタに該当する。
・IEX−PTFE (10nm)surfric acid:Entegris社製の10nm IEX PTFE(ポリテトラフルオロエチレン製の基材の表面にスルホ基を含有する孔径10nmのフィルタ、金属イオン吸着フィルタに該当する。親水性フィルタに該当する。)
・IEX−PTFE (10nm)Imido:Entegris社製の10nm IEX PTFE(ポリテトラフルオロエチレン製の基材の表面にイミド基を有する孔径10nmのフィルタ、金属イオン吸着フィルタに該当する。親水性フィルタに該当する。)
・IEX−PTFE (10nm)carboxylic acid:Entegris社製の10nm IEX PTFE(ポリテトラフルオロエチレン製の基材の表面にカルボキシ基を有する孔径10nmのフィルタ、金属イオン吸着フィルタに該当する。親水性フィルタに該当する。)
・HDPE(10nm):Entegris社製、材質:高密度ポリエチレン、孔径10nm、疎水性フィルタに該当する。
・PP(20nm):Entegris社製、材質:ポリプロピレン、孔径20nm、疎水性フィルタに該当する。
・HDPE (3nm):Entegris社製、材質:高密度ポリエチレン、孔径3nm、疎水性フィルタに該当する。
・UPE(3nm):Entegris社製、材質:超高分子量ポリエチレン、孔径3nm、疎水性フィルタに該当する。
【0122】
表中の各洗浄液、及び、有機溶剤の略号は以下のとおりである。
・CyHe:シクロヘキサノン
・DMSO:ジメチルスルホキシド
・NMP:n−メチルピロリドン
・DEG:ジエチレングリコール
・EG:エチレングリコール
・DPG:ジプロピレングリコール
・PG:プロピレングリコール
・EC:炭酸エチレン
・PC:炭酸プロピレン
・Sulfolane:スルホラン
・CyPn:シクロペンタノン
・MAK:2−ヘプタノン
・GBL:ガンマブチロラクトン
・PGMEA:プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート
・PGME:プロピレングリコールモノメチルエーテル
・PGEE:プロピレングリコールモノエチルエーテル
・PGPE:プロピレングリコールモノプロピルエーテル
・EL:乳酸エチル
・MPM:メトキシプロピオン酸メチル
・DIAE:ジイソアミルエーテル
・nBA:酢酸ブチル
・iAA:酢酸イソアミル
・IPA:イソプロパノール
・MIBC:4−メチル−2−ペンタノール
【0123】
<試験液、及び、薬液中における、金属の粒子等の含有量の測定方法>
各実施例、及び、比較例に係る、試験液、及び、薬液中における金属の粒子の含有量、及び、金属を含有するイオンの含有量は以下の方法を用いて測定した。
測定には、Agilent 8800 トリプル四重極ICP−MS(半導体分析用、オプション#200)を用いた。上記測定装置によれば、各測定試料中における粒子である金属と、それ以外の金属(例えば、イオン等)とを分類し、それぞれの含有量を測定することができる。
【0124】
・測定条件
サンプル導入系は石英のトーチと同軸型PFA(パーフルオロアルコキシアルカン)ネブライザ(自吸用)、及び、白金インターフェースコーンを使用した。クールプラズマ条件の測定パラメータは以下のとおりである。
・RF(Radio Frequency)出力(W):600
・キャリアガス流量(L/min):0.7
・メークアップガス流量(L/min):1
・サンプリング深さ(mm):18
【0125】
<試験液、及び、薬液中における有機不純物の含有量>
試験液、及び、薬液中における有機不純物の含有量は、ガスクロマトグラフ質量分析装置(製品名「GCMS−2020」、島津製作所社製、測定条件は以下のとおり)を用いて測定した。
【0126】
(測定条件)
キャピラリーカラム:InertCap 5MS/NP 0.25mmI.D. ×30m df=0.25μm
試料導入法:スプリット 75kPa 圧力一定
気化室温度 :230℃
カラムオーブン温度:80℃(2min)−500℃(13min)昇温速度15℃/min
キャリアガス:ヘリウム
セプタムパージ流量:5mL/min
スプリット比:25:1
インターフェイス温度:250℃
イオン源温度:200℃
測定モード:Scan m/z=85〜500
試料導入量:1μL
【0127】
なお、上記方法により試験液、及び、薬液中に含有される有機不純物の含有量を測定したところいずれの薬液についても、式(1)〜(7)からなる群から選択される少なくとも1種の有機不純物を含有していた。
【0128】
[ショート発生抑制性能]
得られた薬液のショート発生抑制性能は以下の方法により測定した。
実施例及び比較例に記載した各薬液をプリウェット液として用いて、フォトレジストプロセスによってMOSFET(Metal-Oxide-Semiconductor Field-Effect Transistor)型テスト基板を作製した。得られたテスト基板についてTDDB(Time Dependent Dielectric Breakdown)試験を行い、薬液のショート発生抑制性能を評価した。具体的には、25℃の環境下で、テスト基板に20mA/cmの一定電流密度をかけ、ゲート絶縁膜の絶縁破壊が起きるまでの総電荷量Qbd[単位:C/cm]を測定した。結果は以下の基準により評価し、表1に示した。
AA:総電荷量Qbdが60[C/cm]以上だった。
A:総電荷量Qbdが50[C/cm]以上、60[C/cm]未満だった。
B:総電荷量Qbdが40[C/cm]以上、50[C/cm]未満だった。
C:総電荷量Qbdが30[C/cm]以上、40[C/cm]未満だった。
D:総電荷量Qbdが30[C/cm2]未満だった。
【0129】
【表1】
【0130】
【表2】
【0131】
【表3】
【0132】
【表4】
【0133】
【表5】
【0134】
【表6】
【0135】
【表7】
【0136】
【表8】

【0137】
【表9】
【0138】
【表10】
【0139】
【表11】
【0140】
【表12】
【0141】
【表13】
【0142】
【表14】
【0143】
【表15】
【0144】
【表16】
【0145】
【表17】
【0146】
【表18】
【0147】
【表19】
【0148】
【表20】
【0149】
表中、「材質」とあるのは、フィルタの材料成分を意味する。
なお、表1では、行ごとに各実施例及び各比較例に係る薬液の精製方法及び得られた薬液の性状、及び、評価について[表1]<1>その1〜[表1]<1>その10、又は、[表1]<2>その1〜[表1]<2>その10にわたって記載した。すなわち、実施例45の薬液であれば、フィルタの洗浄条件は、洗浄液としてシクロヘキサノン(溶解度パラメータ19.6(MPa)1/2)を用い、洗浄液にて各フィルタを通液し、10回循環させた。これを1セットとして3セット繰り返した。次に試験液としてシクロヘキサノンを用い、所定の方法により試験を行ったところ、洗浄後の第1フィルタに係る試験結果としては、試験液中における金属の粒子の含有量は、試験液の全質量に対して、Feを含有する粒子が0.15質量ppt、Alを含有する粒子が0.13質量ppt、Crを含有する粒子が0.05質量ppt、Niを含有する粒子が0.07質量ppt、Tiを含有する粒子が0.10質量pptであり、これらの合計が0.50質量pptであり、他の金属を含有する粒子も含めた合計含有量(以下単に「粒子全合計」という。)が1.5質量pptであった。また、試験液中における金属を含有するイオンの含有量は、試験液の全質量に対して、Feを含有するイオンが0.30質量ppt、Alを含有するイオンが0.25質量ppt、Crを含有するイオンが0.10質量ppt、Niを含有するイオンが0.13質量ppt、Tiを含有するイオンが0.20質量pptであり、これらの合計が0.98質量pptであり、他の金属を含有するイオンも含めた合計含有量(以下単に「イオン全合計」という。)が3.0質量pptであった。また、試験液中における有機不純物の含有量が0.50質量ppmであった。
次に、洗浄後の第2フィルタに係る試験結果としては、試験液中における金属の粒子の含有量は、試験液の全質量に対して、Feを含有する粒子が0.15質量ppt、Alを含有する粒子が0.13質量ppt、Crを含有する粒子が0.05質量ppt、Niを含有する粒子が0.07質量ppt、Tiを含有する粒子が0.10質量ppt、これらの合計が0.50質量pptであり、粒子全合計が1.4質量pptであった。また、試験液中における金属を含有するイオンの含有量は、試験液の全質量に対して、Feを含有するイオンが0.30質量ppt、Alを含有するイオンが0.25質量ppt、Crを含有するイオンが0.10質量ppt、Niを含有するイオンが0.13質量ppt、Tiを含有するイオンが0.20質量ppt、これらの合計が0.98質量pptであり、イオン全合計が2.9質量pptであった。また、試験液中における有機不純物の含有量が0.40質量ppmであった。
次に、洗浄後の第3フィルタに係る試験結果としては、試験液中における金属の粒子の含有量は、試験液の全質量に対して、Feを含有する粒子が0.15質量ppt、Alを含有する粒子が0.13質量ppt、Crを含有する粒子が0.05質量ppt、Niを含有する粒子が0.07質量ppt、Tiを含有する粒子が0.10質量ppt、これらの合計が0.50質量pptであり、粒子全合計が1.4質量pptであった。また、試験液中における金属を含有するイオンの含有量は、試験液の全質量に対して、Feを含有するイオンが0.30質量ppt、Alを含有するイオンが0.25質量ppt、Crを含有するイオンが0.10質量ppt、Niを含有するイオンが0.13質量ppt、Tiを含有するイオンが0.20質量ppt、これらの合計が0.98質量pptであり、イオン全合計が2.9質量pptであった。また、試験液中における有機不純物の含有量が0.32質量ppmであった。
また、薬液の精製条件として、第1フィルタには、IEX−PTFE (10nm)carboxylic acid(親水性)を、第2フィルタには、PTFE (10nm)(親水性)を、第3フィルタには、Nylon (5nm)(親水性)を用いた。ろ過差圧は、1から2段目(第1フィルタから第2フィルタ)が120kPa、2から3段目(第2フィルタから第3フィルタ)が110kPaだった。
また、洗浄後の薬液中には、金属の粒子が、薬液の全質量に対して、Feを含有する粒子が0.08質量ppt、Alを含有する粒子が0.06質量ppt、Crを含有する粒子が0.03質量ppt、Niを含有する粒子が0.03質量ppt、Tiを含有する粒子が0.05質量ppt、これらの合計として0.25質量pptで、粒子全合計として、0.8質量ppt含有され、金属を含有するイオンの含有量が、薬液の全質量に対して、Feを含有するイオンが0.30質量ppt、Alを含有するイオンが0.25質量ppt、Crを含有するイオンが0.10質量ppt、Niを含有するイオンが0.13質量ppt、Tiを含有するイオンが0.20質量ppt、これらの合計が0.78質量pptであり、イオン全合計として3.0質量ppt含有され、有機不純物が、0.3質量ppm含有され、残部は、シクロヘキサノンであった。この薬液のショート発生抑制性能は「AA」だった。
上記以外の実施例及び比較例についても上記と同様に表1に記載した。
【0150】
表1に記載した結果から、各実施例の薬液の精製方法によれば、本発明の効果であるショート発生抑制性能を有する薬液を得ることができた。一方、各比較例の薬液の精製方法によれば、本発明の効果を有する薬液を得ることはできなかった。
また、実施例44の薬液の精製方法と比較して、要件4を満たす実施例45の薬液の精製方法によれば、より優れた本発明の効果を有する薬液を得ることができた。
また、実施例47の精製方法と比較して、試験液中における有機不純物の含有量が10質量ppm以下である、実施例45の薬液の精製方法によれば、より優れた本発明の効果を有する薬液を得ることができた。
また、実施例33及び34の薬液の精製方法と比較して、洗浄液がシクロヘキサノンである実施例45の薬液の精製方法によれば、より優れた本発明の効果を有する薬液を得ることができた。
また、実施例1の薬液の精製方法と比較して、2枚以上のフィルタをとおして薬液を精製する実施例45の薬液の精製方法によれば、より優れた本発明の効果を有する薬液を得ることができた。
また、実施例43の薬液の精製方法と比較して、薬液が通る最後のフィルタが親水性フィルタである実施例45の薬液の精製方法によれば、より優れた本発明の効果を有する薬液を得るができた。
また、実施例18の薬液の精製方法と比較して、ろ過差圧が250kPa以下である、実施例45の薬液の精製方法によれば、より優れた本発明の効果を有する薬液を得ることができた。
【符号の説明】
【0151】
10、20、30 薬液の製造装置
11 タンク
12 充填装置
13 管路
14 ろ過装置
15 ポンプ
16、22、33、35 弁
21 循環管路
31 蒸留塔
32 蒸留管路
34 蒸留塔循環管路
36 原料投入管路
図1
図2
図3