(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記塗布工程、前記照射工程、前記配向工程および前記硬化工程の組み合わせを2回以上繰り返して2層以上のコレステリック液晶層を形成する液晶フィルムの製造方法であって、
2回以上の前記照射工程において、同一パターンの前記パターンマスクを介して光を照射し、かつ、各前記照射工程における光の照射量を互いに異ならせる請求項1〜10のいずれか一項に記載の液晶フィルムの製造方法。
請求項1〜11のいずれか一項に記載の液晶フィルムの製造方法の前記硬化工程の後に、硬化した前記塗布膜の表面又は前記支持体の裏面に円偏光板を貼着する工程を有する機能性フィルムの製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の液晶フィルムの製造方法について詳細に説明する。なお、本明細書において「〜」を用いて表される数値範囲は、「〜」の前後に記載される数値を下限値および上限値として含む範囲を意味する。
また、本明細書において、「直交」および「平行」とは、本発明が属する技術分野において許容される誤差の範囲を含むものとする。例えば、「直交」および「平行」とは、厳密な直交あるいは平行に対して±10°未満の範囲内であることなどを意味し、厳密な直交あるいは平行に対しての誤差は、5°以下であることが好ましく、3°以下であることがより好ましい。
また、「直交」および「平行」以外で表される角度、例えば、15°や45°等の具体的な角度についても、本発明が属する技術分野において許容される誤差の範囲を含むものとする。例えば、本発明においては、角度は、具体的に示された厳密な角度に対して、±5°未満であることなどを意味し、示された厳密な角度に対する誤差は、±3°以下であるのが好ましく、±1°以下であるのが好ましい。
【0012】
本明細書において、「(メタ)アクリレート」は、「アクリレートおよびメタクリレートのいずれか一方または双方」の意味で使用される。
本明細書において、「同一」は、技術分野で一般的に許容される誤差範囲を含むものとする。また、本明細書において、「全部」、「いずれも」または「全面」などというとき、100%である場合のほか、技術分野で一般的に許容される誤差範囲を含み、例えば99%以上、95%以上、または90%以上である場合を含むものとする。
【0013】
可視光は電磁波のうち、ヒトの目で見える波長の光であり、380nm〜780nmの波長域の光を示す。非可視光は、380nm未満の波長域または780nmを超える波長域の光である。
またこれに限定されるものではないが、可視光のうち、420nm〜490nmの波長域の光は、青色光であり、495nm〜570nmの波長域の光は、緑色光であり、620nm〜750nmの波長域の光は、赤色光である。
赤外光のうち、近赤外光は780nm〜2500nmの波長域の電磁波である。紫外光は波長10〜380nmの範囲の光である。
本明細書において、選択反射波長とは、対象となる物(部材)における透過率の極小値をTmin(%)とした場合、下記の式で表される半値透過率:T1/2(%)を示す2つの波長の平均値のことを言う。
半値透過率を求める式: T1/2=100−(100−Tmin)÷2
【0014】
本明細書において、「ヘイズ」は、日本電色工業株式会社製のヘーズメーターNDH−2000を用いて測定される値を意味する。
理論上は、ヘイズは、以下式で表される値を意味する。
(380〜780nmの自然光の散乱透過率)/(380〜780nmの自然光の散乱透過率+自然光の直透過率)×100%
散乱透過率は分光光度計と積分球ユニットを用いて、得られる全方位透過率から直透過率を差し引いて算出することができる値である。直透過率は、積分球ユニットを用いて測定した値に基づく場合、0°での透過率である。つまり、ヘイズが低いということは、全透過光量のうち、直透過光量が多いことを意味する。
屈折率は、波長589.3nmの光に対する屈折率である。
【0015】
本明細書において、Re(λ)、Rth(λ)は、各々、波長λにおける面内のレターデーション、および、厚さ方向のレターデーションを表す。特に記載がないときは、波長λは、550nmとする。
本明細書において、Re(λ)、Rth(λ)は、AxoScan OPMF−1(オプトサイエンス社製)において、波長λで測定した値である。AxoScanにて平均屈折率((Nx+Ny+Nz)/3)と膜厚(d(μm))を入力することにより、
遅相軸方向(°)
Re(λ)=R0(λ)
Rth(λ)=((Nx+Ny)/2−Nz)×d
が算出される。
なお、R0(λ)は、AxoScanで算出される数値として表示されるものであるが、Re(λ)を意味している。
【0016】
本明細書において、屈折率Nx、Ny、Nzは、アッベ屈折計(NAR−4T、アタゴ(株)製)を使用し、光源にナトリウムランプ(λ=589nm)を用いて測定する。また波長依存性を測定する場合は、多波長アッベ屈折計DR−M2(アタゴ(株)製)にて、干渉フィルタとの組み合わせで測定できる。
また、ポリマーハンドブック(JOHN WILEY&SONS,INC)、各種光学フィルムのカタログの値を使用することもできる。主な光学フィルムの平均屈折率の値を以下に例示する:セルロースアシレート(1.48)、シクロオレフィンポリマー(1.52)、ポリカーボネート(1.59)、ポリメチルメタクリレート(1.49)、ポリスチレン(1.59)である。
【0017】
本発明の液晶フィルムの製造方法は、
長尺な支持体を長手方向に送り出す送出工程と、
送り出した支持体を長手方向に搬送しつつ、コレステリック液晶化合物と感光性のキラル剤とを含む液晶組成物を支持体表面に塗布する塗布工程と、
未乾燥状態の液晶組成物の塗布膜にキラル剤が感光する波長の光を照射する照射工程と、
塗布膜を加熱して液晶を配向する配向工程と、
配向した塗布膜を硬化する硬化工程と、をこの順に有し、
照射工程において、支持体側に配置されたパターンマスクを介して塗布膜に光を照射し、
パターンマスクは、キラル剤が感光する波長の光に対する透過率が異なる3以上の領域を有する多階調のパターンマスクであり、
照射工程において、多階調のパターンマスクを介して塗布膜に光を照射することで、塗布膜の領域に応じて光の照射量を異ならせる液晶フィルムの製造方法である。
【0018】
また、本発明の機能性フィルムの製造方法は、
上記液晶フィルムの製造方法の硬化工程の後に、硬化した塗布膜の表面または支持体の裏面に円偏光板を貼着する工程を有する機能性フィルムの製造方法である。
【0019】
<液晶フィルムの製造方法>
以下に、本発明の液晶フィルムの製造方法の好適な実施態様の一例について図面を参照して説明する。
図1に、本発明の液晶フィルムの製造方法(以下、「本発明の製造方法」ともいう)を実施する液晶フィルムの製造装置(以下、「製造装置」ともいう)の一例の模式的な図を示す。また、
図2に、
図1に示す製造装置により実施される液晶フィルムの製造方法の一例を説明するための模式図を示す。
なお、本発明における図は模式図であり、各部の大きさ、各層の厚みの関係、および、位置関係などは必ずしも実際のものとは一致しない。以下の図も同様である。
【0020】
図1に示す製造装置100aは、長尺な支持体12aを用いて、ロールトゥロール(以下、「RtoR」ともいう)によって液晶フィルムの製造を行うものである。周知のように、RtoRとは、長尺な被処理物を巻回してなるロールから被処理物を送り出して、長手方向に搬送しつつ成膜等の処理を行い、処理済の被処理物を、再度、ロール状に巻回する製造方法である。
【0021】
製造装置100aは、一例として、送り出しローラ102と、第1搬送部120と、塗布部150と、第2搬送部122と、露光部152と、加熱部154と、硬化部156と、第3搬送部124と、巻取りローラ116と、を有する。第1搬送部120、第2搬送部122および第3搬送部124は、搬送用のローラ等を有し、長尺な被処理物を所定の経路で搬送するものである。
なお、製造装置100aは、図示した部材以外にも、搬送ローラ対、支持体のガイド部材、各種のセンサなど、長尺な被処理物を搬送しつつ塗布による成膜を行なう公知の装置に設けられる各種の部材を有してもよい。
【0022】
製造装置100aにおいて、長尺な支持体12aを巻回してなるロール130を、送り出しローラ102に装填する。
ロール130から支持体12aを引き出して、第1搬送部120、塗布部150、第2搬送部122、露光部152、加熱部154、硬化部156および第3搬送部124を通過して巻取りローラ116に到る所定の経路に挿通させる。
また、調製したコレステリック液晶層となる液晶組成物を塗布部150の塗布ノズル104に供給し、塗布を行う。
【0023】
RtoRを利用する製造装置100aでは、ロール130からの支持体12aの送り出しと、コレステリック液晶層18を形成した支持体12a(積層フィルム23d)の巻き取りとを同期して行なう。これにより、長尺な支持体12aを所定の搬送経路で長手方向に搬送しつつ、塗布部150において調製した液晶組成物を支持体12aに塗布し、露光部152において塗布膜を露光し、次いで、加熱部154において塗布膜を加熱して液晶を配向し、さらに、硬化部156において紫外線照射および/または加熱等を行なって塗布膜を硬化させてコレステリック液晶層18を形成する。さらに、巻取りローラ116において支持体12a上にコレステリック液晶層18が形成された長尺な積層フィルム23dをロール状に巻回して、ロール132とする。
なお、本発明において、液晶フィルムとは、コレステリック液晶層を有するフィルム状物であり、
図1および
図2に示す例においては、コレステリック液晶層18が支持体12aの表面に積層された積層フィルム23dが本発明の液晶フィルムである。コレステリック液晶層18は、支持体12aに積層された状態で用いられても良いし、支持体12aから剥離されて用いられてもよい。
【0024】
図2にS1で示す送出工程において、ロール130から送り出される支持体12aは、PETフィルム等の樹脂フィルムにパターンマスクが形成されたものである。
【0025】
支持体12aを形成する樹脂フィルムとしては、基板(支持体)として利用されている、透明性を有する公知のシート状物が、各種、利用可能である。
【0026】
具体的には、低密度ポリエチレン(LDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリアミド(PA)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリアクリトニトリル(PAN)、ポリイミド(PI)、透明ポリイミド、ポリメタクリル酸メチル樹脂(PMMA)、ポリカーボネート(PC)、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、ポリプロピレン(PP)、ポリスチレン(PS)、ABS、シクロオレフィン・コポリマー(COC)、シクロオレフィンポリマー(COP)、および、トリアセチルセルロース(TAC)などの、各種の樹脂材料からなるフィルム(樹脂フィルム)が、好適に例示される。
【0027】
本発明においては、このようなフィルムの表面に、保護層、接着層、光反射層、反射防止層、遮光層、平坦化層、緩衝層、応力緩和層、離型層等の、必要な機能を発現する層(膜)が形成されているものを、支持体12aとして用いてもよい。
【0028】
支持体12aが有するパターンマスクは、後述する露光部152で照射する光(キラル剤が感光する波長の光)に対する透過率が異なる3以上の領域を有する多階調のパターンマスクである。
このようなパターンマスクは、例えば、印刷によって形成することができ、樹脂フィルムの表面に形成されるインク層の光透過率が、領域によって異なるように印刷することによって、所望のパターンのマスクとすることができる。具体的には、グレースケール印刷(
図6参照)、あるいは、カラー印刷(
図8参照)によって形成することができる。
【0029】
支持体12aの厚みは、薄すぎると支持性が低下し、搬送中に折れ曲がり等が発生するおそれがある。一方、厚すぎると可撓性が低下し、搬送し難くなったり、ロールに巻き取った際に大型化したり、あるいは、形成したコレステリック液晶層を支持体12aから剥離するのが難しくなるおそれがある。
以上の観点から、支持体12aの厚みは、20μm〜100μmが好ましく、60μm〜100μmがより好ましい。
【0030】
図1に示すように、ロール130から送り出された支持体12aは、第1搬送部120を通過して、塗布部150に到る。塗布部150おいて支持体12aに塗布処理がなされる。なお、
図1に示す例では、塗布部150での塗布に際し、支持体12aはバックアップローラ106に巻き掛けられた状態で、塗布ノズル104によって液晶組成物が塗布される。バー塗布など、バックアップローラ106無しで塗布可能な方法で塗布を行なう場合には、バックアップローラ106は無くてもよい。
図2にS2で示すように、塗布工程において、塗布部104がコレステリック液晶化合物と感光性キラル剤とを含む液晶組成物を支持体12aの表面に塗布して塗布膜21aを形成する。支持体12aと塗布膜21aとの積層体を積層フィルム23aとする。
液晶組成物については後に詳述する。
【0031】
塗布工程における塗布方法としては、エクストルージョン塗布、グラビア塗布、ダイ塗布、バー塗布、アプリケータ塗布等の塗布法、あるいは、フレキソ印刷等の印刷法の公知の方法を適用できる。
中でも、支持体12a表面に凹凸(パターンマスクとなるインク層による凹凸など)があっても塗布ムラを抑制することができる等の観点からバー塗布が好ましい。
【0032】
また、塗布膜21aは、支持体12aのパターンマスク側に形成されてもよいが、パターンマスクとは反対側の面に形成されるのが好ましい。すなわち、パターンマスクは、支持体12aの塗布膜21aが形成される面とは反対側の面(裏面)に形成されるのが好ましい。
【0033】
次に、
図1に示すように、積層フィルム23aは第2搬送部122を通過して露光部152に到る。露光部152において積層フィルム23aは照射工程を施される。
図2にS3で示すように、照射工程において、露光装置108が支持体12a側から、すなわち、パターンマスクを介して未乾燥状態の塗布膜21aに光を照射する。露光装置108が照射する光は、塗布膜21a(液晶組成物)中のキラル剤が感光する波長の光である。従って、露光処理によって露光した塗布膜21bが形成される。露光した塗布膜21b中では、感光性キラル剤が感光し、その構造が変化する。
支持体12aと露光した塗布膜21bとの積層体を積層フィルム23bとする。
【0034】
ここで、パターンマスクは、キラル剤が感光する波長の光に対する透過率が異なる3以上の領域を有する多階調のパターンマスクである。従って、露光した塗布膜21bは、パターンマスクのパターンに対応して、領域ごとに異なる照射量の光が照射される。
ここで、感光性キラル剤の感光による構造変化の変化量は、照射量に応じて異なる。そのため、露光した塗布膜21bは、パターンマスクのパターンに応じて領域ごとにキラル剤の構造変化の変化量が異なるものとなる。
【0035】
露光に用いる光の波長は、感光性キラル剤の種類等に応じて設定すればよい。
また、光の照射量も、感光性キラル剤の種類、パターンマスクの光透過率等に応じて設定すればよい。
【0036】
次に、
図1に示すように、積層フィルム23bは搬送されて加熱部154に到る。加熱装置110において積層フィルム23bは、塗布膜が乾燥され、配向処理を施される。
図2にS4で示すように、配向工程において、露光した塗布膜21bを加熱装置110が加熱することで、塗布膜21b中の液晶化合物を配向する。加熱処理によって、キラル剤の構造に応じて液晶化合物を配向した塗布膜21cが形成される。
ここで、前述のとおり塗布膜21c中においては、露光量が異なる3以上の領域がある。そのため、それぞれの領域では露光量に応じてコレステリック液晶相の螺旋ピッチの長さが異なる構造となる。後に詳述するが、コレステリック液晶相における選択反射波長は、コレステリック液晶相における螺旋構造のピッチに依存する。従って、コレステリック液晶相の螺旋ピッチの長さが異なる3以上の領域を形成することで、選択反射波長が異なる3以上の領域が形成される。
支持体12aと配向した塗布膜21cとの積層体を積層フィルム23cとする。
【0037】
次に、
図1に示すように、積層フィルム23cは搬送されて硬化部156に到る。硬化部156において積層フィルム23cは硬化処理を施される。
図2にS5で示すように、硬化工程において、配向した塗布膜21cを硬化部112が硬化させてコレステリック液晶層18を形成する。これにより、コレステリック液晶層18を有する液晶フィルムが作製される。支持体12aとコレステリック液晶層18との積層体を積層フィルム23dとする。
塗布膜21cの硬化の方法としては、紫外線等の光照射による光硬化、および、加熱による熱硬化等の公知の硬化方法が利用可能である。
光照射により硬化を行なう場合には、パターンマスクとは反対側の面側から塗布膜21cに光を照射するのが好ましい。
【0038】
次に、作製した液晶フィルム(積層フィルム23d)は、第3搬送部124を通過して巻取りローラ116にてロール状に巻回してロール132とする。
作製した液晶フィルムのコレステリック液晶層は、選択反射波長の異なる3以上の領域がマスクパターンに応じたパターンで形成された構成を有するため、各領域が選択反射波長の光を反射することで、これに応じた色およびパターンの画像を表示することができる。
【0039】
従来のように、コレステリック液晶の塗布液を基板に塗布し乾燥した後に、塗布膜に紫外線を照射して硬化させる際に、パターンマスクを用いて露光を行う構成では、乾燥により塗布膜中の液晶化合物が動きにくくなっているため、露光を行なっても液晶化合物の螺旋構造のピッチの変化量が所望の変化量よりも少なくなってしまう。そのため、所望の選択反射波長とすること、すなわち、所望の色味が再現できないという問題があった。
このような場合でも露光量を多くすれば所望の選択反射波長とすることができるが、露光量が多いと未露光部に光が漏れて未露光部も露光されてしまい、露光部と未露光部との(選択反射波長が異なる領域間の)境界が滲んで精細さが十分に得られないという問題があることがわかった。
また、パターンマスクとして、遮光部と透過部を有する2値のパターンマスクを用いる構成では、2値のパターンマスクを用いる場合には、コレステリック液晶層に選択反射波長が異なる3種以上の領域を形成する際に、パターンマスクを変えて複数回露光を行なう必要がある。そのため、より多色のコレステリック液晶層を形成するためには、多くの工程が必要となり製造効率が悪いという問題があることがわかった。
【0040】
これに対して、本発明の製造方法においては、液晶組成物の塗布膜を加熱乾燥する前に、未乾燥状態の塗布膜に対して露光を行なうので、塗布膜中の液晶化合物が動きやすく、少ない露光量でも液晶化合物の螺旋構造のピッチの変化量を所望の変化量とすることができる。そのため、容易に所望の選択反射波長とすること、すなわち、所望の色味が再現できる。また、露光量が少ないため、隣接する領域(露光量が異なる領域)に光が漏れることを抑制でき、選択反射波長が異なる領域間の境界が滲むことがなく、精細な画像を得ることができる。
また、パターンマスクとして、キラル剤が感光する波長の光に対する透過率が異なる3以上の領域を有する多階調のパターンマスクを用いるため、一度の露光で、コレステリック液晶層に選択反射波長が異なる3以上の領域を形成することができる。そのため、多色のコレステリック液晶層を少ない工程で効率よく製造することができる。
このように本発明の製造方法は、精細で所望の色階調の画像を表示できるコレステリック液晶層を得ることができ、高い生産性を有する。
【0041】
ここで、パターンマスクは、キラル剤が感光する波長の光に対する透過率が異なる3以上の領域を有するものであればよいが、より多くの色を再現して階調を高くできる等の観点から、パターンマスクは、透過率が異なる領域を8以上有するのが好ましく、256以上有するのがより好ましい。
【0042】
また、
図1に示す例においては、作製した液晶フィルムをロール状に巻き取る構成としたが、これに限定はされず、作製した液晶フィルムを所定の大きさに裁断する裁断部を有する構成としてもよい。
【0043】
また、硬化工程における塗布膜の硬化方法が光硬化である場合には、硬化工程において照射する光の波長は、照射工程において照射する光の波長とは異なる波長であることが好ましく、照射工程において照射する光の波長が硬化工程において照射する光の波長よりも長波長であるのが好ましい。具体的には、照射工程において照射する光の波長は、キラル剤が感光する波長であって、重合開始剤が開裂しない波長であるのが好ましい。
硬化工程と照射工程とで、照射する光の波長を異ならせることで照射工程における光照射で塗布膜が硬化してしまうことを抑制でき、液晶化合物の螺旋構造のピッチの変化量を所望の変化量とすることができる。
【0044】
照射工程において照射する光の波長は、キラル剤の種類に応じてキラル剤が感光する波長を選択すればよい。具体的には、照射工程において照射する光の波長は、350nm〜400nmが好ましい。すなわち、この波長範囲で感光するキラル剤を用いるのが好ましい。
また、照射工程において照射する光の照射量は、キラル剤の種類等に応じて所望の選択反射波長となる照射量を設定すればよい。
【0045】
硬化工程において照射する光の波長は、重合開始剤等の種類に応じて、選択すればよい。具体的には、硬化工程において照射する光の波長は、300nm〜350nmが好ましい。すなわち、この波長範囲で重合反応を開始可能な重合開始剤を用いるのが好ましい。
また、硬化工程において照射する光の照射量は、重合開始剤等の種類等に応じて設定すればよい。
【0046】
また、
図1に示す例では、照射工程において光照射を一度行なう構成としたが、光照射を二度以上に分けて行なう構成としてもよい。例えば、照射工程が第一照射ステップと第二照射ステップとを有する構成としてもよい。
照射工程における光照射を二度以上に分けて行なう構成とすることで、露光によるキラル剤の構造変化をより好適に調整することができ、所望の選択反射波長とすることができる。
【0047】
その際、第一照射ステップにおける光の照射量が第二照射ステップにおける光の照射量よりも少ないことが好ましい。
キラル剤の構造変化は、光の照射量の合計が少ないときには、光の照射量に対する変化量が大きく、光の照射量の合計が多くなるほど、光の照射量に対する変化量が小さくなる。従って、第一照射ステップにおける光の照射量を第二照射ステップにおける光の照射量よりも少なくすることで、露光によるキラル剤の構造変化をより好適に調整することができる。
【0048】
また、照射工程が第一照射ステップと第二照射ステップとの照射量の合計は、200mJ/cm
2以下であるのが好ましい。
照射量の合計を200mJ/cm
2以下とすることで、未露光部の露光が防げる点で好ましい。
【0049】
また、第一照射ステップおよび第二照射ステップにおいて、照射する光のピーク波長を異ならせる構成としてもよい。
第一照射ステップにおける光のピーク波長をキラル剤が感光する光のピーク波長からずらした波長とし、第二照射ステップにおける光のピーク波長をキラル剤が感光する光のピーク波長と一致させることで、実質的に、光の照射量を調整することができる。
具体的には、例えば、キラル剤の光吸ピークが365nmで、250nm〜450nmの範囲で裾野を有するスペクトルであれば、第一照射ステップでは、裾野付近の265nmの光を照射し、第二照射ステップでは、ピークの365nmの光を照射することで、実質的に、光の照射量を調整することができる。
【0050】
また、
図1に示す例では、コレステリック液晶層18を形成した直後に、ロール132に巻き取る構成としたが、ロール132に巻き取る前に、コレステリック液晶層18の表面に保護フィルム等を貼着する工程を有していてもよい。
【0051】
さらに、
図2にS6で示すように、液晶フィルムを作製した後、コレステリック液晶層18を円偏光板16に転写する工程を有し、コレステリック液晶層18と円偏光板16とを有する機能性フィルムを作製する構成としてもよい。
具体的には、コレステリック液晶層18を形成した後、ロール132に巻き取る前に、コレステリック液晶層18の表面に円偏光板16を貼着する構成であってもよいし、コレステリック液晶層18を形成した後、ロール132に巻き取った後に、ロール132を一般的な貼合装置に装填して、コレステリック液晶層18の表面に円偏光板16を貼着する構成としてもよい。
また、円偏光板16を貼着した後には、支持体12aを剥離する工程を有していてもよい。
【0052】
円偏光板16としては限定はなく、直線偏光板とλ/4板とを積層した構成の円偏光板等を用いることができる。また、円偏光板16は、コレステリック液晶層18によって反射される円偏光の旋回方向とは逆向きの円偏光を透過するものとする。
【0053】
コレステリック液晶層18と円偏光板16とを積層した構成とすることで、コレステリック液晶層18側(以下、表面側ともいう)から入射した光のうち、コレステリック液晶層18では、選択反射波長の一方の円偏光が反射され、それ以外の光はコレステリック液晶層18を透過し、円偏光板16に入射する。円偏光板16に入射した光のうち、他方の円偏光は円偏光板16を透過する。
一方、円偏光板16側(以下、裏面側ともいう)から入射した光は、円偏光板16により他方の円偏光に変換されて円偏光板16を透過し、コレステリック液晶層18に入射する。
円偏光板16を透過した他方の円偏光は、コレステリック液晶層18のコレステリック液晶相の螺旋の旋回方向と逆の旋回方向であるため、コレステリック液晶層18で反射されずにコレステリック液晶層18を透過する。
従って、コレステリック液晶層18と円偏光板16とを積層した機能性フィルムを表面側から観察した際には、裏面側から入射し透過する他方の円偏光により、機能性フィルムの向こう側の光景が視認されるとともに、コレステリック液晶層18の反射領域の選択反射波長の光が視認される。すなわち、表面側から見た際には、機能性フィルムの向こう側の光景とともに、コレステリック液晶層18のパターン形状に応じた模様の画像が視認される。
一方、機能性フィルムを裏面側から観察した際には、表面側から入射し透過する左円偏光により、機能性フィルムの向こう側の光景が視認されるが、表面側からは観察できるコレステリック液晶層18により表示される画像は視認されない。
このようにコレステリック液晶層18と円偏光板16とを積層した機能性フィルムは、透明性を有していながら、一方の面側(コレステリック液晶層側)から見た画像と、他方の面側(円偏光板側)から見た画像とが異なるフィルムとすることができる。
【0054】
なお、コレステリック液晶層18と円偏光板16との間には、粘着層を有していてもよい。
また、円偏光板をコレステリック液晶層の表面に貼着する構成に限定はされず、円偏光板を支持体の裏面に貼着する構成であってもよい。すなわち、コレステリック液晶層と支持体と円偏光板とを有する機能性フィルムとしてもよい。
【0055】
ここで、
図1および
図2に示す例においては、支持体12aがパターンマスクを有する構成としたが、これに限定はされず、パターンマスクを有するフィルムを支持体に貼着する構成としてもよい。
図3に、本発明の液晶フィルムの製造方法の他の一例を実施する製造装置を模式的に示す。
【0056】
図3に示す製造装置100bは、RtoRによって液晶フィルムの製造を行なうものである。製造装置100bは、送り出しローラ102と、供給ローラ140と、第1搬送部120と、塗布部150と、第2搬送部122と、露光部152と、加熱部154と、硬化部156と、第3搬送部124と、回収ローラ144と、巻取りローラ116と、を有する。
なお、
図3に示す製造装置100bは、供給ローラ140および回収ローラ144を有する以外は、
図1に示す製造装置100aによる製造方法と同じであるので同じ部位には同じ符号を付し以下の説明は異なる部位を主に行なう。また、
図3に示す製造装置100bによる製造方法は、支持体12bにマスクフィルム14を貼着する工程および剥離する工程を有する以外は、
図1に示す製造装置100aによる製造方法と同じであるので、以下の説明は異なる工程を主に行なう。
【0057】
製造装置100bにおいて、長尺な支持体12bを巻回してなるロール130を、送り出しローラ102に装填する。なお、支持体12bには、パターンマスクが形成されていない。
ロール130から支持体12bを引き出して、第1搬送部120、塗布部150、第2搬送部122、露光部152、加熱部110、硬化部154および第3搬送部124を通過して巻取りローラ116に到る所定の経路に挿通させる。
また、調製したコレステリック液晶層となる液晶組成物を塗布部104の所定位置に充填する。
【0058】
また、供給ローラ140には、基材フィルム20と基材フィルム20の表面にパターンマスクとして形成されたインク層22とを有するマスクフィルム14(
図4参照)を巻回してなるロール142を装填し、ロール142からマスクフィルム14を引き出して、第1搬送部120から第3搬送部124に到る所定の搬送経路に挿通させる。供給ローラ140は、支持体12bの搬送方向において、送り出しローラと第1搬送部120との間に配置されている。
【0059】
また、第3搬送部124の搬送ローラの位置において、支持体12bからマスクフィルム14を剥離して、支持体12bから剥離したマスクフィルム14を回収ローラ144に挿通させる。回収ローラ144は、支持体12bの搬送方向において、第3搬送部124と巻取りローラ116との間に配置されて、マスクフィルム14をロール146に回収するものである。
【0060】
製造装置100bでは、ロール130からの支持体12bの送り出しと、コレステリック液晶層18を形成した支持体12b(積層フィルム23d)の巻き取りとを同期して行なう。
まず、長尺な支持体12bを所定の搬送経路で長手方向に搬送しつつ、マスクフィルム14を支持体12bの裏面に貼着して積層フィルム25aとする(
図4参照)。
次に、塗布部104において調製した液晶組成物を支持体12bの表面に塗布して積層フィルム25bとする(
図5参照)。
【0061】
次に、露光部152において塗布膜を露光する。その際、支持体12bに貼着したマスクフィルム14側から塗布膜21aに光を照射する。
ここで、マスクフィルム14が有するパターンマスクは、インク層22によってキラル剤が感光する波長の光に対する透過率が異なる3以上の領域が形成されている、多階調のパターンマスクである。従って、パターンマスクを介して塗布膜21aに光を照射することで、パターンマスクのパターンに対応して、領域ごとに異なる照射量の光が照射されて、選択反射波長が異なる3以上の領域を形成することができる。
【0062】
その際、パターンマスク(インク層22)側を支持体12bに貼着するのが好ましい。
本発明の製造方法は、RtoRで支持体12bを搬送しながら光の照射を行なうため、塗布膜に対して、種々の方向から光が入射することになるため、光が漏れてしまい、領域の境界が滲んでしまうおそれがある。従って、パターンマスクとを支持体12bに貼着してパターンマスクと塗布膜との距離を短くすることで、光の漏れを抑制でき、より精細な画像を形成することができる。
【0063】
次いで、加熱部110において塗布膜を加熱して液晶を配向し、さらに、硬化部112において紫外線照射および/または加熱等を行なって塗布膜を硬化させてコレステリック液晶層18を形成して、マスクフィルム14、支持体12bおよびコレステリック液晶層18を有する積層フィルム25eとする。
その後、支持体12bからマスクフィルム14を剥離する。剥離したマスクフィルム14は、回収ローラ144においてロール状に巻回してロール146とする。
さらに、巻取りローラ116において支持体12b上にコレステリック液晶層18が形成された長尺な積層フィルム23dをロール状に巻回して、ロール132とする。
【0064】
このように、パターンマスクが形成された基材フィルム(マスクフィルム14)を支持体の裏面に貼着して照射工程(露光)を行なう構成としてもよい。
なお、
図3に示す例では、マスクフィルム14を支持体12bに貼着した状態で、塗布工程、照射工程、配向工程、および、硬化工程を行なう構成としたが、少なくとも、照射工程をマスクフィルム14を支持体12bに貼着した状態で行なえばよく、他の工程は、マスクフィルム14を貼着しない状態で行なってもよい。
例えば、塗布工程の後に支持体12bにマスクフィルム14を貼着する構成であってもよい。あるいは、支持体12bにマスクフィルム14が貼着された積層体をロール状に巻回したロール130を送り出しローラ102に装填して、支持体12bにマスクフィルム14が貼着された積層体を被処理物として送り出す構成としてもよい。
また、例えば、照射工程と配向工程との間にマスクフィルム14を剥離する構成であってもよく、配向工程と硬化工程との間にマスクフィルム14を剥離する構成であってもよい。あるいは、マスクフィルム14を剥離せずに、巻取りローラ116においてマスクフィルム14が積層された状態でロール状に巻回してロール132とする構成であってもよい。
【0065】
なお、硬化工程において、マスクフィルム14が支持体12bに貼着された状態である場合には、マスクフィルム14とは反対側の面側に光を照射するのが好ましい。
【0066】
ここで、
図1及び
図2に示す例においては、支持体12a上に1層のコレステリック液晶層18を形成する構成としたが、これに限定はされず、塗布工程、照射工程、配向工程および硬化工程の組み合わせを2回以上行なって、2層以上のコレステリック液晶層を形成する構成としてもよい。
例えば、コレステリック液晶層を形成した支持体を被処理物として再度、製造装置に供給することで、コレステリック液晶層の上にコレステリック液晶層を形成する構成としてもよい。あるいは、製造装置が、支持体の搬送方向において、送り出しローラと巻取りローラとの間に、塗布部、露光部、加熱部および硬化部の組み合わせを2以上有する構成としてもよい。
【0067】
2回以上の照射工程を行なう場合には、同一パターンのパターンマスクを介して光を照射し、かつ、各照射工程における光の照射量を互いに異なるものとするのが好ましい。
これにより、コレステリック液晶層の表面に垂直な方向から見た際に、同じ位置での選択反射波長が、各コレステリック液晶層で異なるものとなる。この構成によって、複数のコレステリック液晶層の選択反射波長の光が混ざった色が視認される。すなわち、種々の色を再現することができる。例えば、コレステリック液晶層を3層構成とし、各コレステリック液晶層がそれぞれ赤色、緑色および青色を反射するものとすることで白色を再現することができる。
【0068】
(コレステリック液晶層)
次に、コレステリック液晶層について説明する。
コレステリック液晶層とは、コレステリック液晶相を含む層のことを言う。コレステリック液晶層はコレステリック液晶相を固定してなる層である。
コレステリック液晶層は、選択反射波長の光の右円偏光あるいは左円偏光を反射し、選択反射波長の他方の円偏光および他の波長域の光を透過する。
【0069】
コレステリック液晶相を固定した構造は、コレステリック液晶相となっている液晶化合物の配向が保持されている構造であればよく、典型的には、重合性液晶化合物をコレステリック液晶相の配向状態としたうえで、紫外線照射、加熱等によって重合、硬化し、流動性が無い層を形成して、同時に、また外場や外力によって配向形態に変化を生じさせることない状態に変化した構造であればよい。なお、コレステリック液晶相を固定した構造においては、コレステリック液晶相の光学的性質が保持されていれば十分であり、液晶化合物はもはや液晶性を示していなくてもよい。例えば、重合性液晶化合物は、硬化反応により高分子量化して、もはや液晶性を失っていてもよい。
【0070】
コレステリック液晶相の選択反射波長λは、コレステリック液晶相における螺旋構造のピッチP(=螺旋の周期)に依存し、コレステリック液晶相の平均屈折率nとλ=n×Pの関係に従う。そのため、この螺旋構造のピッチを調節することによって、選択反射波長を調節することができる。コレステリック液晶相のピッチは、重合性液晶化合物と共に用いるキラル剤の種類、またはその添加濃度に依存するため、これらを調節することによって所望のピッチを得ることができる。
また、選択反射を示す選択反射帯域(円偏光反射帯域)の半値幅Δλ(nm)は、コレステリック液晶相の屈折率異方性Δnと螺旋のピッチPとに依存し、Δλ=Δn×Pの関係に従う。そのため、選択反射帯域の幅の制御は、Δnを調節して行うことができる。Δnは、コレステリック液晶層を形成する液晶化合物の種類およびその混合比率、ならびに、配向時の温度により調節できる。なお、コレステリック液晶相における反射率はΔnに依存することも知られており、同程度の反射率を得る場合に、Δnが大きいほど、螺旋ピッチの数を少なく、すなわち膜厚を薄く、することができる。
螺旋のセンスおよびピッチの測定法については「液晶化学実験入門」日本液晶学会編 シグマ出版2007年出版、46頁、および「液晶便覧」液晶便覧編集委員会 丸善 196頁に記載の方法を用いることができる。
【0071】
コレステリック液晶相の反射光は円偏光である。反射光が右円偏光であるか左円偏光であるかは、コレステリック液晶相は螺旋の捩れ方向による。コレステリック液晶相による円偏光の選択反射は、コレステリック液晶相の螺旋の捩れ方向が右の場合は右円偏光を反射し、螺旋の捩れ方向が左の場合は左円偏光を反射する。
なお、コレステリック液晶相の旋回の方向は、コレステリック液晶層を形成する液晶化合物の種類または添加されるキラル剤の種類によって調節できる。
【0072】
反射する光の波長領域を広くするには、選択反射波長λをずらした層を順次積層することで実現することができる。また、ピッチグラジエント法と呼ばれる層内の螺旋ピッチを段階的に変化させる方法で、波長範囲を広げる技術も知られており、具体的にはNature 378、467−469(1995)、特開平6−281814号公報、および、特許4990426号公報に記載の方法などが挙げられる。
【0073】
本発明において、コレステリック液晶層の領域における選択反射波長は、可視光(380〜780nm程度)および近赤外光(780〜2000nm程度)のいずれの範囲にも設定することが可能であり、その設定方法は上述した通りである。
【0074】
ここで、前述のとおり、本発明の製造方法で作製する液晶フィルムにおいては、コレステリック液晶層は、選択反射波長が異なる3以上の領域を有する。
例えば、コレステリック液晶層は、赤色光(620nm〜750nmの波長域の光)を選択反射波長とする領域、緑色光(495nm〜570nmの波長域の光)を選択反射波長とする領域、および、青色光(420nm〜490nmの波長域の光)を選択反射波長とする領域を有する構成とすることができる。
また、赤外線を選択反射波長とする反射領域を有していてもよい。なお、赤外線とは、780nmを超え、1mm以下の波長領域の光であり、中でも、近赤外領域とは、780nmを超え、2000nm以下の波長領域の光である。
【0075】
(液晶組成物)
コレステリック液晶層の形成に用いる材料としては、液晶化合物および感光性キラル剤を含む液晶組成物が挙げられる。液晶化合物は重合性液晶化合物であることが好ましい。
重合性液晶化合物を含む液晶組成物はさらに界面活性剤、重合開始剤等を含んでいてもよい。
【0076】
−−重合性液晶化合物−−
重合性液晶化合物は、棒状液晶化合物であっても、円盤状液晶化合物であってもよいが、棒状液晶化合物であることが好ましい。
コレステリック液晶層を形成する棒状の重合性液晶化合物の例としては、棒状ネマチック液晶化合物が挙げられる。棒状ネマチック液晶化合物としては、アゾメチン類、アゾキシ類、シアノビフェニル類、シアノフェニルエステル類、安息香酸エステル類、シクロヘキサンカルボン酸フェニルエステル類、シアノフェニルシクロヘキサン類、シアノ置換フェニルピリミジン類、アルコキシ置換フェニルピリミジン類、フェニルジオキサン類、トラン類およびアルケニルシクロヘキシルベンゾニトリル類が好ましく用いられる。低分子液晶化合物だけではなく、高分子液晶化合物も用いることができる。
【0077】
重合性液晶化合物は、重合性基を液晶化合物に導入することで得られる。重合性基の例には、不飽和重合性基、エポキシ基、およびアジリジニル基が含まれ、不飽和重合性基が好ましく、エチレン性不飽和重合性基が特に好ましい。重合性基は種々の方法で、液晶化合物の分子中に導入できる。重合性液晶化合物が有する重合性基の個数は、好ましくは1〜6個、より好ましくは1〜3個である。重合性液晶化合物の例は、Makromol.Chem.,190巻、2255頁(1989年)、Advanced Materials 5巻、107頁(1993年)、米国特許第4683327号明細書、同5622648号明細書、同5770107号明細書、国際公開WO95/22586号公報、同95/24455号公報、同97/00600号公報、同98/23580号公報、同98/52905号公報、特開平1−272551号公報、同6−16616号公報、同7−110469号公報、同11−80081号公報、および特開2001−328973号公報などに記載の化合物が含まれる。2種類以上の重合性液晶化合物を併用してもよい。2種類以上の重合性液晶化合物を併用すると、配向温度を低下させることができる。
【0078】
重合性液晶化合物の具体例としては、下記式(1)〜(11)に示す化合物が挙げられる。
【0080】
【化2】
[化合物(11)において、X
1は2〜5(整数)である。]
【0081】
また、上記以外の重合性液晶化合物としては、特開昭57−165480号公報に開示されているようなコレステリック相を有する環式オルガノポリシロキサン化合物等を用いることができる。さらに、前述の高分子液晶化合物としては、液晶を呈するメソゲン基を主鎖、側鎖、あるいは主鎖および側鎖の両方の位置に導入した高分子、コレステリル基を側鎖に導入した高分子コレステリック液晶、特開平9−133810号公報に開示されているような液晶性高分子、特開平11−293252号公報に開示されているような液晶性高分子等を用いることができる。
【0082】
また、液晶組成物中の重合性液晶化合物の添加量は、液晶組成物の固形分質量(溶媒を除いた質量)に対して、75〜99.9質量%であることが好ましく、80〜99質量%であることがより好ましく、85〜90質量%であることが特に好ましい。
【0083】
−−キラル剤(光学活性化合物)−−
キラル剤はコレステリック液晶相の螺旋構造を誘起する機能を有する。キラル化合物は、化合物によって誘起する螺旋の捩れ方向または螺旋ピッチが異なるため、目的に応じて選択すればよい。
キラル剤としては、特に制限はなく、公知の化合物(例えば、液晶デバイスハンドブック、第3章4−3項、TN(twisted nematic)、STN(Super-twisted nematic)用カイラル剤、199頁、日本学術振興会第142委員会編、1989に記載)、イソソルビド、イソマンニド誘導体を用いることができる。
キラル剤は、一般に不斉炭素原子を含むが、不斉炭素原子を含まない軸性不斉化合物あるいは面性不斉化合物もキラル剤として用いることができる。軸性不斉化合物または面性不斉化合物の例には、ビナフチル、ヘリセン、パラシクロファンおよびこれらの誘導体が含まれる。キラル剤は、重合性基を有していてもよい。キラル剤と液晶化合物とがいずれも重合性基を有する場合は、重合性キラル剤と重合性液晶化合物との重合反応により、重合性液晶化合物から誘導される繰り返し単位と、キラル剤から誘導される繰り返し単位とを有するポリマーを形成することができる。この態様では、重合性キラル剤が有する重合性基は、重合性液晶化合物が有する重合性基と、同種の基であることが好ましい。従って、キラル剤の重合性基も、不飽和重合性基、エポキシ基またはアジリジニル基であることが好ましく、不飽和重合性基であることがさらに好ましく、エチレン性不飽和重合性基であることが特に好ましい。
また、キラル剤は、液晶化合物であってもよい。
【0084】
なお、前述のとおり、コレステリック液晶層を製造する際に、光照射によってコレステリック液晶相の螺旋ピッチの大きさを制御するものである。従って、光に感応しコレステリック液晶相の螺旋ピッチを変化させ得るキラル剤(感光性キラル剤とも称する)を用いる。
感光性キラル剤とは、光を吸収することにより構造が変化し、コレステリック液晶相の螺旋ピッチを変化させ得る化合物である。このような化合物としては、光異性化反応、光二量化反応、および、光分解反応の少なくとも1つを起こす化合物が好ましい。
光異性化反応を起こす化合物とは、光の作用で立体異性化または構造異性化を起こす化合物をいう。光異性化化合物としては、例えば、アゾベンゼン化合物、および、スピロピラン化合物などが挙げられる。
また、光二量化反応を起こす化合物とは、光の照射によって、二つの基の間に付加反応を起こして環化する化合物をいう。光二量化化合物としては、例えば、桂皮酸誘導体、クマリン誘導体、カルコン誘導体、および、ベンゾフェノン誘導体などが挙げられる。
【0085】
上記感光性キラル剤としては、以下の一般式(I)で表されるキラル剤が好ましく挙げられる。このキラル剤は、光照射時の光量に応じてコレステリック液晶相の螺旋ピッチ(捻れ力、螺旋の捻れ角)などの配向構造を変化させ得る。
【0087】
一般式(I)中、Ar
1とAr
2は、アリール基または複素芳香環基を表す。
Ar
1とAr
2で表されるアリール基は、置換基を有していてもよく、総炭素数6〜40が好ましく、総炭素数6〜30がより好ましい。置換基としては、例えば、ハロゲン原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アルコキシ基、ヒドロキシル基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アシルオキシ基、カルボキシル基、シアノ基、または、複素環基が好ましく、ハロゲン原子、アルキル基、アルケニル基、アルコキシ基、ヒドロキシル基、アシルオキシ基、アルコキシカルボニル基、または、アリールオキシカルボニル基がより好ましい。
【0088】
このようなアリール基のうち、下記一般式(III)または(IV)式で表されるアリール基が好ましい。
【0090】
一般式(III)中のR
1および一般式(IV)中のR
2は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、複素環基、アルコキシ基、ヒドロキシル基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アシルオキシ基、カルボキシル基、または、シアノ基を表す。なかでも、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アルケニル基、アリール基、アルコキシ基、ヒドロキシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、または、アシルオキシ基が好ましく、アルコキシ基、ヒドロキシル基、または、アシルオキシ基がより好ましい。
一般式(III)中のL
1および一般式(IV)中のL
2は、それぞれ独立に、ハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基、または、ヒドロキシル基を表し、炭素数1〜10のアルコキシ基、または、ヒドロキシル基が好ましい。
lは0、1〜4の整数を表し、0、1が好ましい。mは0、1〜6の整数を表し、0、1が好ましい。l、mが2以上のときは、L
1とL
2は互いに異なる基を表してもよい。
【0091】
Ar
1とAr
2で表される複素芳香環基は、置換基を有していてもよく、総炭素数4〜40が好ましく、総炭素数4〜30がより好ましい。置換基としては、例えば、ハロゲン原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、アルコキシ基、ヒドロキシル基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アシルオキシ基、または、シアノ基が好ましく、ハロゲン原子、アルキル基、アルケニル基、アリール基、アルコキシ基、または、アシルオキシ基がより好ましい。
複素芳香環基としては、ピリジル基、ピリミジニル基、フリル基、および、ベンゾフラニル基などが挙げられ、この中でも、ピリジル基、または、ピリミジニル基が好ましい。
【0092】
液晶組成物における、キラル剤の含有量は、重合性液晶性化合物量の0.01モル%〜200モル%が好ましく、1モル%〜30モル%がより好ましい。
【0093】
−−重合開始剤−−
液晶組成物が重合性化合物を含む場合は、重合開始剤を含有していることが好ましい。紫外線照射により重合反応を進行させる態様では、使用する重合開始剤は、紫外線照射によって重合反応を開始可能な光重合開始剤であることが好ましい。光重合開始剤の例には、α−カルボニル化合物(米国特許第2367661号、同2367670号の各明細書記載)、アシロインエーテル(米国特許第2448828号明細書記載)、α−炭化水素置換芳香族アシロイン化合物(米国特許第2722512号明細書記載)、多核キノン化合物(米国特許第3046127号、同2951758号の各明細書記載)、トリアリールイミダゾールダイマーとp−アミノフェニルケトンとの組み合わせ(米国特許第3549367号明細書記載)、アクリジンおよびフェナジン化合物(特開昭60−105667号公報、米国特許第4239850号明細書記載)およびオキサジアゾール化合物(米国特許第4212970号明細書記載)等が挙げられる。
液晶組成物中の光重合開始剤の含有量は、重合性液晶化合物の含有量に対して0.1〜20質量%であることが好ましく、0.5質量%〜12質量%であることがさらに好ましい。
【0094】
−−架橋剤−−
液晶組成物は、硬化後の膜強度向上、耐久性向上のため、任意に架橋剤を含有していてもよい。架橋剤としては、紫外線、熱、湿気等で硬化するものが好適に使用できる。
架橋剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えばトリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート等の多官能アクリレート化合物;グリシジル(メタ)アクリレート、エチレングリコールジグリシジルエーテル等のエポキシ化合物;2,2−ビスヒドロキシメチルブタノール−トリス[3−(1−アジリジニル)プロピオネート]、4,4−ビス(エチレンイミノカルボニルアミノ)ジフェニルメタン等のアジリジン化合物;ヘキサメチレンジイソシアネート、ビウレット型イソシアネート等のイソシアネート化合物;オキサゾリン基を側鎖に有するポリオキサゾリン化合物;ビニルトリメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)3−アミノプロピルトリメトキシシラン等のアルコキシシラン化合物などが挙げられる。また、架橋剤の反応性に応じて公知の触媒を用いることができ、膜強度および耐久性向上に加えて生産性を向上させることができる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
架橋剤の含有量は、3質量%〜20質量%が好ましく、5質量%〜15質量%がより好ましい。架橋剤の含有量が、3質量%未満であると、架橋密度向上の効果が得られないことがあり、20質量%を超えると、コレステリック液晶層の安定性を低下させてしまうことがある。
【0095】
−−その他の添加剤−−
液晶組成物中には、必要に応じて、さらに界面活性剤、重合禁止剤、酸化防止剤、水平配向剤、紫外線吸収剤、光安定化剤、色材、金属酸化物微粒子等を、光学的性能等を低下させない範囲で添加することができる。
【0096】
液晶組成物は溶媒を含んでいてもよい。溶媒としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、有機溶媒が好ましく用いられる。
有機溶媒としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類、アルキルハライド類、アミド類、スルホキシド類、ヘテロ環化合物、炭化水素類、エステル類、エーテル類などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、環境への負荷を考慮した場合にはケトン類が特に好ましい。上述の単官能重合性モノマーなどの上述の成分が溶媒として機能していてもよい。
【0097】
(λ/4板)
円偏光板を構成するλ/4板は、従来公知のλ/4板であり、λ/4板に入射する光が直線偏光の場合には円偏光にして出射し、λ/4板に入射する光が円偏光の場合には直線偏光にして出射する。
【0098】
λ/4板とは、ある特定の波長の直線偏光を円偏光に、または、円偏光を直線偏光に変換する機能を有する板である。より具体的には、所定の波長λnmにおける面内レターデーション値がRe(λ)=λ/4(または、この奇数倍)を示す板である。この式は、可視光域のいずれかの波長(例えば、550nm)において達成されていればよい。
なお、λ/4板は、光学異方性層のみからなる構成であっても、支持体に光学異方性層を形成した構成であってもよいが、λ/4板が支持体を有する場合には、支持体と光学異方性層との組み合わせが、λ/4板であることを意図する。
λ/4板は、公知のλ/4板が利用可能である。
【0099】
また、本発明の液晶フィルムにおいては、λ/4板は、厚さ方向のレターデーションであるRth(550)が少ないのが好ましい。
具体的には、Rth(550)が−50nm〜50nmであるのが好ましく、−30nm〜30nmであるのがより好ましく、Rth(λ)がゼロであるのがさらに好ましい。これにより、λ/4板に対して斜めに入射する円偏光を直線偏光に変換できる点で好ましい結果を得る。
【0100】
ここで、λ/4板はコレステリック液晶層18を透過して入射する他方の円偏光(コレステリック液晶層を透過する旋回方向の円偏光)が直線偏光になるように遅相軸を合わせて配置される。
【0101】
(直線偏光板)
円偏光板を構成する直線偏光板は、一方向の偏光軸を有し、特定の直線偏光を透過する機能を有する。
直線偏光板としては、ヨウ素化合物を含む吸収型偏光板やワイヤーグリッドなどの反射型偏光板等の一般的な直線偏光板が利用可能である。なお、偏光軸とは、透過軸と同義である。
吸収型偏光板としては、例えば、ヨウ素系偏光板、二色性染料を利用した染料系偏光板、および、ポリエン系偏光板の、いずれも用いることができる。ヨウ素系偏光板、および染料系偏光板は、一般に、ポリビニルアルコールにヨウ素または二色性染料を吸着させ、延伸することで作製される。
【0102】
ここで、直線偏光板は、λ/4板を透過して入射する直線偏光が透過するように、偏光軸を合わせて配置される。これにより、直線偏光板とλ/4板との組み合わせは、λ/4板側から入射した光のうち、他方の円偏光を直線偏光にして透過する円偏光板として機能する。すなわち、λ/4板と直線偏光板との組み合わせは、コレステリック液晶層18が反射する円偏光とは旋回方向が逆向きの円偏光を透過するものである。
【0103】
(粘着層)
粘着層は、コレステリック液晶層18とλ/4板(円偏光板)とを貼り合わせるものである。
粘着層は、対象となる層(シート状物)を貼り合わせられる物であれば、公知の各種の材料からなるものが利用可能であり、貼り合わせる際には流動性を有し、その後、固体になる、接着剤からなる層でもよいし、貼り合わせる際にゲル状(ゴム状)の柔らかい固体で、その後もゲル状の状態が変化しない、粘着剤からなる層でもよいし、接着剤と粘着剤との両方の特徴を持った材料からなる層でもよい。従って、粘着層は、光学透明接着剤(OCA(Optical Clear Adhesive))、光学透明両面テープ、紫外線硬化型樹脂等、シート状物の貼り合わせに用いられる公知のものを用いればよい。
【0104】
〔用途〕
本発明の液晶フィルムの用途は特に限定されないが、例えば、ビルの窓広告として窓ガラスに貼り付けられる広告媒体、車、タクシー、バス、電車などの窓ガラスに貼り付けられる広告媒体やライト部分やデザイン性の加飾、道路標識、住宅や店舗、水族館、動物園、植物館、美術館などの窓ガラス、遊戯機、遊戯用カード、下敷きなどの玩具や文房具、舞台、劇場用の器材、エレベータ、エスカレータ、階段などの透明部材、カバンや服、ゴーグルやサングラスなどのファッション部材、カベ、カーテンや床などのインテリアファブリクス用材料、POP広告(Point of purchase advertising)、名刺、ステッカー、はがき、写真、コースター、チケット、うちわ、せんす、テント、ブラインド、シャッター、防護用盾、衝立などのセパレーション、家電製品(カメラ、インスタントカメラ、PC(personal computer)、スマートフォン、テレビ、レコーダー、レンジ、オーディオプレーヤー、ゲーム機、VR(virtual reality)ヘッドセット、掃除機、洗濯機)、スマートフォンカバー、ぬいぐるみ、コップ、お皿、プレート、壺や花瓶、机、イス、CD(compact disc)、DVDケース、本、カレンダー、ペットボトル、食品包装容器、ギターやピアノなどの楽器、ラケット、バット、クラブ、ボールなどのスポーツ用品、迷路、観覧車、ジェットコースター、お化け屋敷などのアトラクション、造花、知育玩具、ボードゲーム、かさ、杖、時計、オルゴール、ネックレスなどの服飾材料、化粧品などの容器、ソーラーパネル、電灯やランプカバーとして用いることができる。
【0105】
以上、本発明の液晶フィルムについて詳細に説明したが、本発明は上述の例に限定はされず、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、各種の改良や変更を行ってもよいのは、もちろんである。
【実施例】
【0106】
以下に実施例を挙げて本発明の特徴をさらに具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、試薬、使用量、物質量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更することができる。したがって、本発明の範囲は以下に示す具体例により限定的に解釈されるべきものではない。
【0107】
[実施例1]
実施例1として、
図1に示すような構成の製造装置100aを用いて液晶フィルムを作製した。
【0108】
(液晶組成物の調製)
下記に示す組成物を、25℃に保温された容器中にて、攪拌、溶解させ、コレステリック液晶インク液A(液晶組成物)を調製した。
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
コレステリック液晶インク液A
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
下記の液晶化合物1 1g
下記構造のキラル剤1 107mg
下記構造の水平配向剤1 1mg
開始剤:IRGACURE 907 (BASF社製) 40mg
IRGANOX1010 10mg
MEK(メチルエチルケトン) 1.6g
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
【0109】
【化5】
【0110】
【化6】
【0111】
【化7】
【0112】
(コレステリック液晶層の形成)
支持体12aとして、厚み50μmの富士フイルム(株)社製PETフィルムを用いた。支持体12aの裏面には、所定のパターンをカラーで印刷してパターンマスクを形成した。
【0113】
塗布工程として、上記で調製したコレステリック液晶インク液Aを支持体の表面にダイコーターを用いて塗布した。塗布は乾燥後の塗布層の厚みが2〜5μm程度になるように調整して、室温にて行い、塗布膜を形成した。
次に、照射工程として、室温でパターンマスクを介して、塗布膜にUV(紫外線、波長365nm)照射を50mJ/cm
2行った。なお、UV照射の光源として、LEDUVHLDL−200X180−U6PSC(CCS(株)社製)を用いた。
【0114】
次に、加熱工程として、照射工程後の塗布膜が積層された支持体を、90℃の熱風乾燥ゾーンで1分間加熱した。
次に、硬化工程として、窒素雰囲気下(酸素濃度500ppm以下)、室温で、加熱処理後の塗布膜に表面からUV照射(波長300〜350nm、200mJ/cm
2)を行い、塗布膜を硬化させてコレステリック液晶層を形成した。
なお、UV照射の光源として、UE0961−426−05CQT(岩崎電気(株)社製)を用いた。
その後、巻取りローラで巻き取った。
【0115】
[実施例2]
実施例2として、
図3に示すような構成の製造装置100bを用いて液晶フィルムを作製した。
具体的には、支持体12bとして、厚み50μmの富士フイルム(株)社製PETフィルムを用い、マスクフィルム14として、基材フィルム20(厚み100μm 東洋紡(株)社製 PETフィルム)に所定のパターンをカラーで印刷してパターンマスク(インク層22)を形成し、塗布工程の前に、マスクフィルム14を支持体12bに貼着し、硬化工程の後に、マスクフィルム14を剥離する構成とした以外は、実施例1と同様にして、液晶フィルムを作製した。
なお、マスクフィルム14は、パターンマスク側を支持体12bに貼着した。
【0116】
[実施例3]
マスクフィルム14の基材フィルム20側を支持体12bに貼着した以外は、実施例2と同様にして液晶フィルムを作製した。
【0117】
[実施例4]
照射工程において、2回照射を行なう構成とし、第一照射ステップの照射量を20mJ/cm
2とし、第二照射ステップの照射量を40mJ/cm
2とした以外は、実施例1と同様にして、液晶フィルムを作製した。
【0118】
[実施例5]
第一照射ステップの照射量を50mJ/cm
2とし、第二照射ステップの照射量を100mJ/cm
2とした以外は、実施例4と同様にして、液晶フィルムを作製した。
【0119】
[実施例6]
第一照射ステップの光の波長を385nm、照射量を50mJ/cm
2とし、第二照射ステップの波長を365nm、照射量を50mJ/cm
2とした以外は、実施例4と同様にして、液晶フィルムを作製した。
【0120】
[実施例7]
第一照射ステップの照射量を125mJ/cm
2とし、第二照射ステップの照射量を125mJ/cm
2とした以外は、実施例4と同様にして、液晶フィルムを作製した。
【0121】
[実施例8]
液晶組成物(コレステリック液晶インク液A)に含まれる開始剤として、IRGACURE 369 (BASF社製)、40mgを用い、硬化工程における光の波長を365nmとした以外は、実施例1と同様にして、液晶フィルムを作製した。
【0122】
[比較例1]
配向工程の後に照射工程を行なう構成とした以外は、実施例1と同様にして、液晶フィルムを作製した。
【0123】
[比較例2]
パターンマスクとして、白黒2値のパターンマスクを印刷により支持体に形成した以外は、実施例1と同様にして液晶フィルムを作製した。
【0124】
[比較例3]
パターンマスクとして、白黒2値のパターンマスクを印刷により支持体に形成した以外は、実施例2と同様にして液晶フィルムを作製した。
【0125】
<評価>
各実施例で作製した液晶フィルムについて、コレステリック液晶層側から目視で観察してパターンの精細度、および、色表示の階調性を評価し以下の基準で評価した。
【0126】
パターン精細度の評価
AA:かなり良好
A:良好
B:やや良好
C:パターンがぼやける。
【0127】
色表示の階調性の評価
A:階調性が高い
B:階調性がやや高い
C:2値、または、色が滲む。
結果を表1に示す。
また、実施例1のパターンマスクを撮影した画像を
図8に示し、実施例1で作製した液晶フィルムを撮影した画像を
図7に示す。なお、本発明においては、
図6に示すグレースケールのパターンマスクであっても同様の効果が得られる。また、
図7に示す液晶フィルムは、一部を評価のために切り取っている。
また、比較例2および3で用いた2値マスクの画像を
図9に示す。
【0128】
【表1】
【0129】
表1に示すように、本発明の製造方法で作製した実施例1〜8の液晶フィルムは、比較例と比べて、精細度および階調性が良好であることがわかる。
また、実施例2と実施例3との対比から、パターンマスクを支持体とは別のフィルムに形成し、支持体に貼着して照射工程を行なう構成とする場合には、パターンマスク側を支持体に貼着するのが好ましいことがわかる。
また、実施例1と実施例5および6との対比から、照射工程において光の照射を2回に分けて照射することで、精細度がより向上することがわかる。
また、実施例5および6と実施例7との対比から、照射量の合計は200mJ/cm
2以下とするのが好ましいことがわかる。
また、実施例1と実施例8との対比から、照射工程の光の波長と硬化工程の光の波長とを異ならせることが好ましいことがわかる。
【0130】
[実施例9]
実施例9として、
図10に示すパターンマスクを用いた以外は、実施例1と同様にして液晶フィルムを作製した。作製した液晶フィルムを撮影した画像を
図11に示す。
図10および
図11からわかるように、パターンマスクのパターンおよび濃淡に応じて、コレステリック液晶層の色、すなわち、選択反射波長が異なる領域が形成されるのがわかる。
以上の結果より本発明の効果は明らかである。