特許第6924955号(P6924955)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6924955断線検出装置、断線検出方法、及びプローブ先端検出装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6924955
(24)【登録日】2021年8月5日
(45)【発行日】2021年8月25日
(54)【発明の名称】断線検出装置、断線検出方法、及びプローブ先端検出装置
(51)【国際特許分類】
   G01R 31/72 20200101AFI20210812BHJP
   G01R 31/54 20200101ALI20210812BHJP
   G01D 5/22 20060101ALI20210812BHJP
   G01B 7/00 20060101ALI20210812BHJP
   H01L 21/66 20060101ALN20210812BHJP
【FI】
   G01R31/72
   G01R31/54
   G01D5/22 B
   G01B7/00 101E
   !H01L21/66 B
【請求項の数】8
【全頁数】23
(21)【出願番号】特願2017-156858(P2017-156858)
(22)【出願日】2017年8月15日
(65)【公開番号】特開2019-35653(P2019-35653A)
(43)【公開日】2019年3月7日
【審査請求日】2020年6月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】000151494
【氏名又は名称】株式会社東京精密
(74)【代理人】
【識別番号】100083116
【弁理士】
【氏名又は名称】松浦 憲三
(72)【発明者】
【氏名】山添 直幸
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 亜嵐
(72)【発明者】
【氏名】高取 正美
(72)【発明者】
【氏名】森 敏郎
(72)【発明者】
【氏名】田中 琢
【審査官】 永井 皓喜
(56)【参考文献】
【文献】 特開平11−183107(JP,A)
【文献】 特開平7−128388(JP,A)
【文献】 特許第6149338(JP,B2)
【文献】 特開平3−73807(JP,A)
【文献】 特開2017−133989(JP,A)
【文献】 特開平9−251032(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01R 31/72
G01R 31/54
G01R 31/50
H01L 21/66
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
線形可変差動変圧器に設けられている2個の二次コイルから、それぞれ個別の信号線を介して出力された2種類の信号をそれぞれ取得する信号取得部と、
前記信号線ごとの断線の有無と、前記断線の有無に応じて変化する前記2種類の信号の双方の電圧値との対応関係を予め取得し、前記信号取得部が取得した前記2種類の信号の前記双方の電圧値に基づき、前記対応関係を参照して、前記信号線ごとの断線の有無を判定する第1判定処理を行う判定部と、
を備え、
前記判定部は、前記双方の電圧値がそれぞれ予め定められた個別閾値よりも小さくなるか否かに基づき、前記信号線ごとの断線の有無を個別に判定する第2判定処理を行い、
前記信号取得部が取得した前記2種類の信号のうち前記個別閾値が小さい方を第1信号とし、前記個別閾値が大きい方を第2信号として、断線した前記信号線から出力される前記第1信号の電圧値を第1断線電圧値とした場合、前記第1信号の前記個別閾値は、前記第2信号の電圧値が予め定めた判定閾値よりも小さくなる範囲内では前記第1断線電圧値の最大値よりも小さく設定され、
前記第2信号の前記個別閾値は、前記第1断線電圧値の最大値よりも大きく設定され、
前記対応関係には、前記第1信号に対応する前記信号線の断線を示す前記双方の電圧値のそれぞれの第1電圧範囲が含まれており、
前記第1信号の電圧値に対応する前記第1電圧範囲は、前記第1信号の前記個別閾値よりも大きく且つ前記第2信号の前記個別閾値よりも小さい範囲に設定され、
前記第2信号の電圧値に対応する前記第1電圧範囲は、前記判定閾値よりも小さい範囲に設定されている断線検出装置。
【請求項2】
前記第1信号の電圧値及び第2信号の電圧値がそれぞれ前記第1電圧範囲の範囲外である場合、前記判定部は、前記第1信号に対応する前記信号線の断線の有無を前記第2判定処理により判定する請求項に記載の断線検出装置。
【請求項3】
断線した前記信号線から出力される前記第2信号の電圧値を第2断線電圧値とした場合、前記第1信号の前記個別閾値は、前記第1信号の電圧値が前記判定閾値よりも大きくなる範囲内では前記第2断線電圧値よりも大きく設定され、
前記対応関係には、前記第2信号に対応する前記信号線が正常であることを示す前記双方の電圧値のそれぞれの第2電圧範囲が含まれており、
前記第1信号の電圧値に対応する前記第2電圧範囲は、前記判定閾値よりも大きい範囲に設定され、
前記第2信号の電圧値に対応する前記第2電圧範囲は、前記第1信号の前記個別閾値よりも大きく且つ前記第2信号の前記個別閾値よりも小さい範囲に設定されている請求項1又は2に記載の断線検出装置。
【請求項4】
前記第1信号の電圧値及び第2信号の電圧値がそれぞれ前記第2電圧範囲の範囲外である場合、前記判定部は、前記第2信号に対応する前記信号線の断線の有無を前記第2判定処理により判定する請求項に記載の断線検出装置。
【請求項5】
前記判定閾値は、前記第2信号の前記個別閾値よりも大きい値に設定されている請求項1から4のいずれか1項に記載の断線検出装置。
【請求項6】
ウェハの電極にプローブを接触させて前記ウェハの検査を行うプローバに設けられ、前記プローブの先端を検出するプローブ先端検出装置において、
接触面と、
前記接触面を、前記プローブに対向する対向位置から前記プローブに向けて相対移動させる移動部と、
前記接触面と一体に移動するコアの位置に応じて2個の二次コイルから、それぞれ個別の信号線を介して2種類の信号を出力する線形可変差動変圧器と、
請求項1からのいずれか1項に記載の断線検出装置と、
を備えるプローブ先端検出装置。
【請求項7】
前記二次コイルごとに出力された前記2種類の信号に基づき、前記接触面への前記プローブの先端の接触を検出する接触検出部を備える請求項に記載のプローブ先端検出装置。
【請求項8】
線形可変差動変圧器に設けられている2個の二次コイルから、それぞれ個別の信号線を介して出力された2種類の信号をそれぞれ取得する信号取得ステップと、
前記信号線ごとの断線の有無と、前記断線の有無に応じて変化する前記2種類の信号の双方の電圧値との対応関係を予め取得し、前記信号取得ステップで取得した前記2種類の信号の前記双方の電圧値に基づき、前記対応関係を参照して、前記信号線ごとの断線の有無を判定する第1判定処理ステップと、
前記双方の電圧値がそれぞれ予め定められた個別閾値よりも小さくなるか否かに基づき、前記信号線ごとの断線の有無を個別に判定する第2判定処理ステップと、
を有し、
前記信号取得ステップが取得した前記2種類の信号のうち前記個別閾値が小さい方を第1信号とし、前記個別閾値が大きい方を第2信号として、断線した前記信号線から出力される前記第1信号の電圧値を第1断線電圧値とした場合、前記第1信号の前記個別閾値は、前記第2信号の電圧値が予め定めた判定閾値よりも小さくなる範囲内では前記第1断線電圧値の最大値よりも小さく設定され、
前記第2信号の前記個別閾値は、前記第1断線電圧値の最大値よりも大きく設定され、
前記対応関係には、前記第1信号に対応する前記信号線の断線を示す前記双方の電圧値のそれぞれの第1電圧範囲が含まれており、
前記第1信号の電圧値に対応する前記第1電圧範囲は、前記第1信号の前記個別閾値よりも大きく且つ前記第2信号の前記個別閾値よりも小さい範囲に設定され、
前記第2信号の電圧値に対応する前記第1電圧範囲は、前記判定閾値よりも小さい範囲に設定されている断線検出方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、線形可変差動変圧器の信号線の断線を検出する断線検出装置、断線検出方法、及びプローブ先端検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ウェハ(半導体ウェハともいう)の表面には、同一の電気素子回路を有する複数の半導体チップが形成されている。ウェハは、ダイサーで各半導体チップに個々に切断される前に、ウェハテストシステムにより個々の半導体チップの電気的特性が検査される。このウェハテストシステムは、プローバとテスタとを備える(特許文献1参照)。
【0003】
プローバは、ウェハをウェハチャック上に固定した状態で、ウェハチャックとプローブ(プローブ針ともいう)を有するプローブカードとを相対移動させることにより、半導体チップの電極(電極パッドともいう)にプローブを電気的に接触させる。テスタは、プローブに接続された端子を介して、半導体チップの電極に各種の試験信号を供給すると共に、この試験信号の供給に応じて電極から出力される信号を受信及び解析することで、半導体チップが正常に動作するか否かを検査する。
【0004】
このようなウェハテストシステムによるウェハの検査では、プローバに設置されたプローブカードのプローブの先端をウェハに正確に接触させる必要がある。このため、プローバでのウェハの検査の前段階として、プローブの先端位置の検出が実行される。
【0005】
特許文献2及び特許文献3には、プローブに対向する位置に設けられた接触式のプローブ先端検出装置を用いてプローブの先端位置を検出するプローバ(プローブ装置という)が開示されている。この接触式のプローブ先端検出装置を用いることにより、プローブの先端位置を高精度に検出することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2004−079733号公報
【特許文献2】特開2009−204492号公報
【特許文献3】特開2013−179329号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記特許文献2及び特許文献3に記載のプローブ先端検出装置として、例えば、線形可変差動変圧器(Linear Variable Differential Transformer:LVDT)を利用することが考えられる。具体的には、Z軸方向(上下方向)に移動自在に保持された接触面をプローブの下方側から上昇させてプローブの先端に接触させ、この接触に伴う接触面のZ軸方向の微小移動をLVDTで検出することにより、プローブの先端位置を高精度に検出することができる。
【0008】
ところで、接触面のZ軸方向の微小移動は、LVDTに設けられている2種類の二次コイルからそれぞれ信号線を介して出力される信号に基づき検出される。このため、信号線が断線していると、プローブの先端との接触に伴う接触面のZ軸方向の微小移動を検出することができない。その結果、接触面を上昇させ過ぎることにより、プローブと接触面との衝突が発生して、プローブが破損するおそれがある。
【0009】
そこで、LVDTの2種類の2次コイルからそれぞれ出力される信号の電圧値を監視し、2種類の信号の電圧値がそれぞれ個別に定めた個別閾値よりも小さくなるか否かに基づき、個々の信号線の断線の有無を判定する方法が考えられる。この際に、信号線が断線している場合であっても、信号線自体の静電容量によって、この信号線を介して検出される電圧値は零にはならず低い電圧が検出される。
【0010】
このような断線時に検出される電圧の最大値は、信号線が正常な状態で検出される電圧の最小値よりも大きくなったり、或いは最小値に近接したりする場合がある。その結果、信号線の断線の有無を判定する個別閾値の設定が困難になる。このため、仮に検出される電圧値が個別閾値よりも大きい場合でも信号線が断線している可能性、或いは電圧値が個別閾値よりも小さい場合でも信号線が正常である可能性がある。従って、LVDTから出力される信号線の断線の有無を高精度に判定することが困難である。
【0011】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、線形可変差動変圧器(LVDT)から出力される信号線の断線の有無を高精度に判定することができる断線検出装置、断線検出方法、及びプローブ先端検出装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の目的を達成するための断線検出装置は、線形可変差動変圧器に設けられている2個の二次コイルから、それぞれ個別の信号線を介して出力された2種類の信号をそれぞれ取得する信号取得部と、信号線ごとの断線の有無と、断線の有無に応じて変化する2種類の信号の双方の電圧値との対応関係を予め取得し、信号取得部が取得した2種類の信号の双方の電圧値に基づき、対応関係を参照して、信号線ごとの断線の有無を判定する第1判定処理を行う判定部と、を備える。
【0013】
この断線検出装置によれば、断線している信号線から出力される信号の電圧値が信号線自体の静電容量によって零にならない場合でも、信号線の断線の有無を高精度に判定することができる。
【0014】
本発明の他の態様に係る断線検出装置において、判定部は、双方の電圧値がそれぞれ予め定められた個別閾値よりも小さくなるか否かに基づき、信号線ごとの断線の有無を個別に判定する第2判定処理を行う。これにより、信号線の断線の有無を高精度に判定することができる。
【0015】
本発明の他の態様に係る断線検出装置において、信号取得部が取得した2種類の信号のうち個別閾値が小さい方を第1信号とし、個別閾値が大きい方を第2信号として、断線した信号線から出力される第1信号の電圧値を第1断線電圧値とした場合、第1信号の個別閾値は、第2信号の電圧値が予め定めた判定閾値よりも小さくなる範囲内では第1断線電圧値の最大値よりも小さく設定され、第2信号の個別閾値は、第1断線電圧値の最大値よりも大きく設定され、対応関係には、第1信号に対応する信号線の断線を示す双方の電圧値のそれぞれの第1電圧範囲が含まれており、第1信号の電圧値に対応する第1電圧範囲は、第1信号の個別閾値よりも大きく且つ第2信号の個別閾値よりも小さい範囲に設定され、第2信号の電圧値に対応する第1電圧範囲は、判定閾値よりも小さい範囲に設定されている。これにより、第1信号に対応する信号線の断線の有無を高精度に判定することができる。
【0016】
本発明の他の態様に係る断線検出装置において、第1信号の電圧値及び第2信号の電圧値がそれぞれ第1電圧範囲の範囲外である場合、判定部は、第1信号に対応する信号線の断線の有無を第2判定処理により判定する。第1判定処理と第2判定処理とを行うことで、第1信号に対応する信号線の断線の有無を高精度に判定することができる。
【0017】
本発明の他の態様に係る断線検出装置において、断線した信号線から出力される第2信号の電圧値を第2断線電圧値とした場合、第1信号の個別閾値は、第1信号の電圧値が判定閾値よりも大きくなる範囲内では第2断線電圧値よりも大きく設定され、対応関係には、第2信号に対応する信号線が正常であることを示す双方の電圧値のそれぞれの第2電圧範囲が含まれており、第1信号の電圧値に対応する第2電圧範囲は、判定閾値よりも大きい範囲に設定され、第2信号の電圧値に対応する第2電圧範囲は、第1信号の個別閾値よりも大きく且つ第2信号の個別閾値よりも小さい範囲に設定されている。これにより、第2信号に対応する信号線の断線の有無を高精度に判定することができる。
【0018】
本発明の他の態様に係る断線検出装置において、第1信号の電圧値及び第2信号の電圧値がそれぞれ第2電圧範囲の範囲外である場合、判定部は、第2信号に対応する信号線の断線の有無を第2判定処理により判定する。第1判定処理と第2判定処理とを行うことで、第2信号に対応する信号線の断線の有無を高精度に判定することができる。
【0019】
本発明の他の態様に係る断線検出装置において、判定閾値は、第2信号の個別閾値よりも大きい値に設定されている。
【0020】
本発明の目的を達成するためのプローブ先端検出装置は、ウェハの電極にプローブを接触させてウェハの検査を行うプローバに設けられ、プローブの先端を検出するプローブ先端検出装置において、接触面と、接触面を、プローブに対向する対向位置からプローブに向けて相対移動させる移動部と、接触面と一体に移動するコアの位置に応じて2個の二次コイルから、それぞれ個別の信号線を介して2種類の信号を出力する線形可変差動変圧器と、上述の断線検出装置と、を備える。
【0021】
このプローブ先端検出装置によれば、信号線の断線の有無を高精度に判定することができるので、接触面へのプローブの接触を確実に検出することができるので、接触面とプローバとの衝突によるプローバの破損を防止することができる。
【0022】
本発明の他の態様に係るプローブ先端検出装置において、二次コイルごとに出力された2種類の信号に基づき、接触面へのプローブの先端の接触を検出する接触検出部を備える。
【0023】
本発明の目的を達成するための断線検出方法は、線形可変差動変圧器に設けられている2個の二次コイルから、それぞれ個別の信号線を介して出力された2種類の信号をそれぞれ取得する信号取得ステップと、信号線ごとの断線の有無と、断線の有無に応じて変化する2種類の信号の双方の電圧値との対応関係を予め取得し、信号取得ステップで取得した2種類の信号の双方の電圧値に基づき、対応関係を参照して、信号線ごとの断線の有無を判定する第1判定処理ステップと、を有する。
【0024】
本発明の他の態様に係る断線検出方法において、双方の電圧値がそれぞれ予め定められた個別閾値よりも小さくなるか否かに基づき、信号線ごとの断線の有無を個別に判定する第2判定処理ステップを有する。
【発明の効果】
【0025】
本発明は、線形可変差動変圧器から出力される信号線の断線の有無を高精度に判定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】本発明の断線検出装置及びプローブ先端検出装置として機能するウェハテストシステムの概略図である。
図2】プローブ高さ検出器の断面図である。
図3】プローバの電気的構成の一部を示したブロック図である。
図4】第1信号線及び第2信号線の各々の断線の有無に応じて変化する第1信号の電圧値と第2信号の電圧値とを示したグラフである。
図5】プローバによる第1信号線及び第2信号線の断線検出の流れを示したフローチャートである。
図6】第1信号線及び第2信号線の各々の断線の有無に応じて変化する2種類の両信号の双方の電圧値を示したグラフであって、通常位置範囲内の双方の電圧値を示したグラフである。
図7】通常位置範囲の範囲内に限定して第1信号線及び第2信号線の断線検出(第1判定処理及び第2判定処理)を行う場合の流れを示したフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0027】
[ウェハテストシステムの構成]
図1は、本発明の断線検出装置及びプローブ先端検出装置として機能するウェハテストシステム9の概略図である。以下、図中の上下方向であるZ軸方向の上方及び上面を適宜「上方」及び「上面」といい、Z軸方向の下方及び下面を適宜「下方」及び「下面」という。
【0028】
ウェハテストシステム9は、ウェハWに形成された複数の半導体チップ(不図示)の各々の電気的特性を検査する。このウェハテストシステム9は、プローバ10とテスタ30とを備える。
【0029】
プローバ10は、ウェハW上の各半導体チップ(不図示)の電極にプローブ25を接触させる。テスタ30は、プローブ25に電気的に接続され、各半導体チップの電気的検査のために各半導体チップに電圧を印加して各半導体チップの特性を検査する。なお、プローバ10は、本発明のプローブ先端検出装置として機能する。
【0030】
プローバ10は、基台11と、ベース12と、Yステージ13と、Xステージ14と、Zθステージ15と、ウェハチャック16と、プローブ位置検出カメラ18と、プローブ高さ検出器20と、高さ調整機構21,27と、ウェハアライメントカメラ19と、ヘッドステージ22と、カードホルダ23と、プローブカード24と、プローブ25と、を備える。
【0031】
基台11の上面には、略平板状のベース12が固定されている。なお、基台11の代わりに脚部材を用いてもよいし、或いは基台11を省略してもよい。
【0032】
ベース12の上面には、不図示のY移動部を介して略平板状のYステージ13がY軸方向に移動自在に支持されている。Y移動部は、ベース12の上面に設けられ且つY軸に平行なガイドレールと、Yステージ13の下面に設けられ且つガイドレールに係合するスライダと、Yステージ13をY軸方向に移動させるモータ等の駆動機構と、を備える。このY移動部を駆動することにより、ベース12上でYステージ13と、後述のXステージ14及びZθステージ15等とが一体的にY軸方向に移動される。
【0033】
Yステージ13の上面には、不図示のX移動部を介して略平板状のXステージ14がX軸方向に移動自在に支持されている。X移動部は、Yステージ13の上面に設けられ且つX軸に平行なガイドレールと、Xステージ14の下面に設けられ且つガイドレールに係合するスライダと、Xステージ14をX軸方向に移動させるモータ等の駆動機構と、を備える。このX移動部を駆動することにより、Yステージ13上でXステージ14及び後述のZθステージ15等が一体的にX軸方向に移動される。
【0034】
Xステージ14の上面には、Zθステージ15及び高さ調整機構21,27が設けられている。Zθステージ15の内部には、不図示のZθ移動部が設けられている。また、Zθステージ15の上面には、不図示のZθ移動部を介して、ウェハチャック16が保持されている。このZθ移動部は、例えば、Zθステージ15の上面をZ軸方向に移動自在な昇降機構と、且つこの上面をZ軸の軸周りに回転させる回転機構とを有する。このため、Zθ移動部は、Zθステージ15の上面に保持されているウェハチャック16をZ軸方向に移動させると共に、Z軸の軸周りに回転させる。
【0035】
ウェハチャック16の上面であるチャック上面16aには、真空吸着等の各種保持方法によりウェハWが保持される。また、ウェハチャック16には、そのチャック上面16aに保持しているウェハWの温度調整を行うための不図示の温度調整部が設けられている。
【0036】
ウェハチャック16は、既述のYステージ13とXステージ14とZθステージ15とにより、ベース12に対してXYZ軸方向に移動自在に支持されている共に、Z軸の軸周りに回転自在に支持されている。これにより、ウェハチャック16に保持されているウェハWと、後述のプローブ25とを相対移動させることができる。
【0037】
高さ調整機構21は、後述のプローブ位置検出カメラ18のZ軸方向の昇降を行う。また、高さ調整機構27は、後述のプローブ高さ検出器20のZ軸方向の昇降を行う。高さ調整機構21,27は、公知の直線的な移動機構であればよく、例えばリニアガイド機構及びボールネジ機構等が用いられる。
【0038】
ヘッドステージ22は、例えばプローバ10の不図示の筐体の天板を構成しており、不図示の支柱等によってウェハチャック16(ウェハW)の上方に支持されている。ヘッドステージ22は、略環状に形成されており、その中央部にはプローブカード24を保持する略環状のカードホルダ23が設けられている。従って、ヘッドステージ22はカードホルダ23の外周を保持し、且つカードホルダ23はプローブカード24の外周を保持する。すなわち、ヘッドステージ22は、カードホルダ23を介してプローブカード24を保持する。
【0039】
プローブカード24は複数のプローブ25を有している。これらプローブ25は、検査対象のウェハWの不図示の各半導体チップの電極の配置パターンに対応するパターンでプローブカード24に配置されている。カードホルダ23及びプローブカード24は、半導体チップの種類に応じて交換される。
【0040】
プローブ位置検出カメラ18は、Xステージ14上の高さ調整機構21に取り付けられている。プローブ位置検出カメラ18は、例えば針合せ顕微鏡を備えたカメラであり、プローブカード24のプローブ25を下方から撮影する。このプローブ位置検出カメラ18にて撮影されたプローブ25の画像に基づき、プローブ25の位置を検出することができる。具体的には、プローブ25の先端位置のXY座標がプローブ位置検出カメラ18の位置座標から検出され、プローブ25の先端位置のZ座標がプローブ位置検出カメラ18の焦点位置から検出される。
【0041】
また、プローブ位置検出カメラ18は、Yステージ13及びXステージ14によりウェハチャック16と一体にXY軸方向に移動可能である。なお、プローブ位置検出カメラ18のZ軸方向の昇降は、既述の通り高さ調整機構21により行われる。
【0042】
ウェハアライメントカメラ19は、ベース12上に設けられた不図示の支柱によって、プローブカード24の側方位置で、且つウェハチャック16よりも上方側の位置に支持されている。なお、ウェハアライメントカメラ19は、例えばリニアガイド機構及びボールネジ機構等の不図示のカメラ昇降機構によりZ軸方向に移動可能である。
【0043】
ウェハアライメントカメラ19は、ウェハチャック16に保持されているウェハWの半導体チップ(不図示)を上方から撮影する。このウェハアライメントカメラ19にて撮影された半導体チップの画像に基づき、半導体チップの電極の位置を検出することができる。これにより、ウェハアライメントカメラ19で得られた情報とプローブ位置検出カメラ18で得られたプローブ25の先端の位置情報とに基づき、プローブ25とウェハWの半導体チップの電極とのXY面内の二次元的な位置合わせ(アライメント)を行うことができる。
【0044】
プローブ高さ検出器20は、後述の図3に示すLVDT制御部51及び統括制御部60と共に本発明のプローブ先端検出装置として機能するものである。プローブ高さ検出器20は、Xステージ14上の既述の高さ調整機構27に取り付けられている。なお、図1ではプローブ高さ検出器20を簡略化して図示しており、その詳細な構造については後述の図2で説明する。
【0045】
プローブ高さ検出器20は、プローブ位置検出カメラ18の高さの基準となる基準面からのプローブ25の先端の高さを検出する。プローブ高さ検出器20は、いわゆる接触式の検出器であって、物理的にプローブ25の先端に接触することにより、プローブ25の先端の高さを検出する。ここで、基準面とはプローバ10の全般において高さの基準となる面であり、任意に設定されるものである。例えば基準面は、Xステージ14の上面に設定される。
【0046】
また、プローブ高さ検出器20は、接触面20aと線形可変差動変圧器であるLVDT106(図2参照)と、を備える。プローブ高さ検出器20は、プローブ25に対向する対向位置、すなわちプローブ25の下方から接触面20aをプローブ25に向けて上昇させ、接触面20aがプローブ25に接触した場合に、この接触に伴う接触面20aのZ軸方向(下方)の微小移動をLVDT106で検出する。これにより、LVDT106から出力された信号と、高さ調整機構27から出力された高さに関する信号とに基づき、プローブ25の先端の高さに関する情報が得られる。すなわち、接触面20aにプローブ25の先端が接触した時点での基準面からの接触面20aの高さを、プローブ25の先端の高さとして検出することができる。
【0047】
既述の高さ調整機構21は、プローブ25の先端の高さの検出結果に基づいて、基準面からのプローブ位置検出カメラ18の高さを変化させる。すなわち、高さ調整機構21は、プローブ25の先端の高さの検出結果に基づいて、プローブ位置検出カメラ18をプローブ25の先端からワーキングディスタンスだけ離れた高さに調整する。このように、プローブ高さ検出器20等により一度検出したプローブの先端の高さを使用してプローブ位置検出カメラの高さを調整することで、プローブ位置検出カメラ18を上昇させ過ぎることが防止される。その結果、プローブ位置検出カメラ18を上昇させた場合にプローブ位置検出カメラ18がプローブ25の先端に衝突することが防止される。
【0048】
テスタ30は、テスタ本体31と、テスタ本体31に設けられたコンタクトリング32とを備えている。プローブカード24には、各プローブ25に接続される端子が設けられている。そして、コンタクトリング32は、プローブカード24の各端子に接触可能な配置パターンで配置されたスプリングプローブを有する。テスタ本体31は、不図示の支持機構により、プローバ10に対して保持される。
【0049】
[プローブ高さ検出器の構成]
図2は、プローブ高さ検出器20の断面図である。プローブ高さ検出器20は、既述の基準面からのプローブ25の先端の高さの検出に用いられるものであり、LVDT106を用いて接触面20aとプローブ25との接触を検出する。プローブ高さ検出器20は、ベース102と、エアベアリング103と、上下可動部104と、コイルバネ105と、LVDT106と、を備えている。
【0050】
ベース102は、高さ調整機構27上に取り付けられている。ベース102は略環状に形成されており、その中心にはZ軸方向に平行な貫通穴102aが形成されている。また、ベース102の上面には、エアベアリング103が設けられている。なお、ベース102は、高さ調整機構27の上に取り付けられる必要はなく、例えば、高さ調整機構27の側方に取り付けられてもよく、高さ調整機構27により高さ調整可能な構成であればいずれでもよい。
【0051】
エアベアリング103は、略円筒状に形成されており、Z軸方向に平行な保持穴103aを有している。この保持穴103aの中心のXY軸方向の位置と、既述の貫通穴102aの中心のXY軸方向の位置とは一致している。符号Cは、保持穴103a及び貫通穴102aの双方の中心を通る中心軸である。エアベアリング103は、保持穴103aに挿通された後述の上下可動部104の上下移動軸110をZ軸方向に移動自在に保持する。
【0052】
また、エアベアリング103には、その外周面から保持穴103aの内面に貫通した不図示のエア供給穴が形成されており、このエア供給穴を介してエア供給源107から保持穴103a内にエアが供給される。これにより、保持穴103aの内面と上下移動軸110の外面との間に不図示のエア層が形成されるので、上下移動軸110がエアベアリング103(保持穴103a)により非接触でガイドされる。
【0053】
さらに、エアベアリング103の下端部の外周面には、その周方向に沿って環状の鍔部103bが形成されている。
【0054】
上下可動部104は、エアベアリング103により非接触でZ軸方向に移動自在に保持される。この上下可動部104は、上下移動軸110と、ストッパリング111と、バネ受け部112と、ステージ台座113と、ステージ114と、を備える。
【0055】
上下移動軸110は、既述の通り、エアベアリング103の保持穴103aに挿通され、エアベアリング103により非接触でZ軸方向に移動自在に保持される。この上下移動軸110の外周面の下端部には、略環状のストッパリング111が外嵌されている。また、上下移動軸110の上面には、バネ受け部112が固定されている。
【0056】
ストッパリング111の外径は、保持穴103aの直径よりも大きく形成されている。バネ受け部112は、円板部112aと、この円板部112aの下面に設けられた嵌合部112bとを備える。円板部112aの外径は、コイルバネ105の外径よりも大きく形成されている。嵌合部112bは、コイルバネ105の上側の開口部に嵌合する。
【0057】
ステージ台座113は、バネ受け部112の上面に固定されている。このステージ台座113の上面には、ステージ114が固定される。ステージ114の上面は既述の接触面20aとなる。
【0058】
コイルバネ105は、Z軸方向に圧縮された状態で鍔部103bとバネ受け部112との間に取り付けられる。コイルバネ105の下側の開口部には既述のエアベアリング103の上端部が挿入される。これにより、コイルバネ105の下端が鍔部103bの上面に当接する。一方、コイルバネ105の上側の開口部には、既述の嵌合部112bが嵌合する。このため、コイルバネ105は、バネ受け部112を介して上下可動部104の各部(ステージ114等)をZ軸方向の上方へ付勢する。その結果、ストッパリング111が保持穴103aの下側の開口縁部に当接し、ステージ114のZ軸方向の高さ位置が一定に維持される。
【0059】
LVDT106は、ベース102の下面に設けられている。このLVDT106は、鉄心などのコア106aと、コイル106bとを備える。コア106aは、上下移動軸110の下面に固定されており、Z軸方向の下方に延びている。このコア106aの中心軸は、既述の中心軸Cと一致している。従って、コア106aは、上下移動軸110及びステージ114(接触面20a)等と一体にZ軸方向に移動する。
【0060】
コイル106bは、Z軸方向に平行な略円筒形状を有している。このコイル106bの内部には、コア106aが非接触で挿入されている。コイル106bは、一次コイル108と、2種類の二次コイル109A,109Bとにより構成されている。一次コイル108は、後述のLVDT制御部51(図3参照)から駆動用信号線L0を介して入力される交流信号である励磁信号Sig0(発振信号ともいう)により励磁される。これにより、一次コイル108から発生した磁束が、この一次コイル108にそれぞれ隣接している二次コイル109A,109Bと結合する。
【0061】
二次コイル109A,109Bは、一次コイル108が励磁されている場合に、コア106aのZ軸方向の変位により誘導電圧(誘起電圧ともいう)を発生する。コア106aが二次コイル109A側に移動すると、二次コイル109Aに結合される磁束が二次コイル109Bに結合される磁束よりも多くなる。このため、二次コイル109Aから出力される誘導電圧が増加し、逆に二次コイル109Bから出力される誘導電圧が減少するため、差動電圧(二次コイル109A,109Bの誘導電圧の電圧差)が発生する。
【0062】
また、コア106aが二次コイル109B側に移動すると、二次コイル109Bに結合される磁束が二次コイル109Aに結合される磁束よりも多くなる。このため、二次コイル109Bから出力される誘導電圧が増加し、逆に二次コイル109Aから出力される誘導電圧が減少するため、差動電圧が発生する。さらに、コア106aが初期位置、すなわち等しい磁束が二次コイル109A,109Bにそれぞれ結合する位置にコア106aがある場合、二次コイル109A,109Bからそれぞれ出力される誘導電圧が等しくなり、差動電圧は零となる。
【0063】
従って、コア106aがZ軸方向に変位、例えばZ軸方向に振動すると、二次コイル109A,109Bからそれぞれ位相の異なる正弦波状の信号が出力される(図4参照)。
【0064】
二次コイル109Aには第1信号線L1が接続されている。このため、二次コイル109Aから出力された誘導電圧に基づく第1信号Sig1は、第1信号線L1からアンプ50を介してLVDT制御部51に入力される(図3参照)。また、二次コイル109Bには第2信号線L2が接続されている。このため、二次コイル109Bから出力された誘導電圧に基づく第2信号Sig2は、第2信号線L2からアンプ50を介してLVDT制御部51に入力される(図3参照)。なお、第1信号線L1及び第2信号線L2は、本発明の信号線に相当する。また、第1信号Sig1及び第2信号Sig2は、コア106aのZ軸方向の位置(変位)を示す信号である。
【0065】
二次コイル109Aから出力される第1信号Sig1と、二次コイル109Bから出力される第2信号Sig2とに基づき、後述の統括制御部60(図3参照)は、コア106aのZ軸方向の位置を検出する。これにより、接触面20aとプローブ25との接触に伴うコア106aのZ軸方向の微小移動を検出することができる。なお、コア106aのZ軸方向の位置とは、二次コイル109A,109Bからそれぞれ出力される誘導電圧が等しくなる(差動電圧が零となる)コア106aの位置を基準位置とした場合、この基準位置からのコア106aの変位量を指す。
【0066】
このようにプローブ高さ検出器20では、LVDT106を用いて接触面20aに対するプローブ25の先端の接触を検出するため、この接触の検出精度[接触応答性(敏感性)]を向上させることができる。その結果、既述の基準面からのプローブ25の先端の高さの測定精度を向上させることができる。また、接触面20aへのプローブ25の先端の接触に伴うステージ114等のZ軸方向の移動量(押込量)及び接触に伴うZ軸方向の押圧力を精度良く検出することができる。
【0067】
[プローバ10の要部の電気的構成]
図3は、プローバ10の電気的構成の一部を示したブロック図である。なお、図3では、プローブ25の先端高さの検出に係る構成、及び第1信号線L1及び第2信号線L2の各々の断線の有無の検出(判定)に係る構成のみを図示し、ウェハWの検査等のプローバ10の他の制御に係る構成は公知技術であるので図示は省略する。
【0068】
図3に示すように、二次コイル109Aは第1信号線L1を介してアンプ50に接続し、二次コイル109Bは第2信号線L2を介してアンプ50に接続している。
【0069】
アンプ50は、二次コイル109Aから第1信号線L1を介して入力される第1信号Sig1と、二次コイル109Bから第2信号線L2を介して入力される第2信号Sig2とをそれぞれ増幅し、増幅した第1信号Sig1及び第2信号Sig2(以下、両信号Sig1,Sig2という)をLVDT制御部51へ出力する。なお、アンプ50は後述のLVDT制御部51と一体化していてもよく、さらに両信号Sig1,Sig2の信号レベル(電圧)が十分に高ければ省略してもよい。
【0070】
LVDT制御部51は、後述の統括制御部60の制御の下、LVDT106の作動を制御する。このLVDT制御部51は、発振器51Aと、公知の信号入力インタフェース等で構成される信号取得部51Bとを備える。なお、LVDT制御部51は、後述の統括制御部60に設けられていてもよい。また、CPU(Central Processing Unit)或いはFPGA(field-programmable gate array)に所定の制御プログラムを実行させることにより、CPU或いはFPGAをLVDT制御部51(発振器51A及び信号取得部51B)として機能させるようにしてもよい。
【0071】
発振器51Aは、後述の統括制御部60の制御の下、既述の駆動用信号線L0を介して一次コイル108に励磁信号Sig0を出力する。これにより、一次コイル108が励磁されるため、コア106aのZ軸方向に変位に応じて二次コイル109Aから第1信号Sig1が出力されると共に、二次コイル109Bから第2信号Sig2が出力される。すなわち、LVDT106が作動する。
【0072】
信号取得部51Bは、アンプ50から増幅された両信号Sig1,Sig2をそれぞれ取得し、これら両信号Sig1,Sig2を、統括制御部60のプローブ高さ検出部62と判定部63とにそれぞれ出力する。
【0073】
統括制御部60は、例えばCPU或いはFPGA含む各種の演算部と処理部とメモリ等により構成されており、プローバ10の各部の動作を統括制御する。この統括制御には、高さ調整機構27によるプローブ高さ検出器20の高さ制御、及びLVDT106の制御(発振器51Aから出力される励磁信号Sig0の振幅及び周波数制御)等が含まれる。
【0074】
[統括制御部の機能]
統括制御部60は、所定の制御プログラムを実行することで、プローブ高さ検出部62、判定部63、及び記憶部65として機能する。なお、既述の通り、統括制御部60の各種機能の中で、プローブ25の先端高さの検出に係る機能及び第1信号線L1及び第2信号線L2の各々の断線の有無の検出(判定)に係る機能以外の機能については、公知技術であるので図示を省略している。
【0075】
プローブ高さ検出部62は、既述のプローブ高さ検出器20と共に本発明の接触検出部として機能する。このプローブ高さ検出部62には、信号取得部51Bの他に、高さ調整機構27が接続されている。
【0076】
プローブ高さ検出部62は、信号取得部51Bから入力される両信号Sig1,Sig2に基づき、接触面20aへのプローブ25の先端の接触に伴うコア106aのZ軸方向の微小移動を検出する。これにより、接触面20aへのプローブ25の先端の接触が検出される。そして、プローブ高さ検出部62は、接触面20aへのプローブ25の先端の接触が検出されると、高さ調整機構27から入力される高さに関する信号に基づき、基準面からのプローブ25の先端の高さを検出する。
【0077】
判定部63は既述の信号取得部51Bと共に本発明の断線検出装置を構成する。すなわち、LVDT制御部51及び統括制御部60により本発明の断線検出装置が構成されている。この判定部63は、信号取得部51Bから入力される第1信号Sig1の電圧値V1及び第2信号Sig2の電圧値V2、すなわち2種類の両信号Sig1,Sig2の双方の電圧値V1,V2に基づいて、第1信号線L1及び第2信号線L2の各々(信号線ごと)の断線の有無を判定する。
【0078】
具体的に判定部63は、第1判定処理と第2判定処理とを行う。第1判定処理については詳しくは後述するが、判定部63が、双方の電圧値V1,V2に基づいて第1信号線L1の断線の有無を判定し、且つ双方の電圧値V1,V2に基づいて第2信号線L2の断線の有無を判定する判定処理である。
【0079】
<第2判定処理>
第2判定処理とは、信号取得部51Bから判定部63に入力される2種類の両信号Sig1,Sig2の双方の電圧値V1,V2が、両信号Sig1,Sig2ごとに予め定められた個別閾値よりも小さくなるか否かに基づき、判定部63が、第1信号線L1及び第2信号線L2の断線の有無を個別判定する判定処理である。なお、本明細書でいう「個別閾値よりも小さい」とは個別閾値未満を指し、「個別閾値よりも大きい」とは個別閾値以上を指す。
【0080】
具体的に判定部63は、第1信号Sig1の電圧値V1が、予め定められた第1個別閾値Th1を下回るか否かに基づき、第1信号線L1の断線の有無を判定する。また、判定部63は、第2信号Sig2の電圧値V2が、予め定められた第2個別閾値Th2を下回るか否かに基づき、第2信号線L2の断線の有無を判定する。第1個別閾値Th1及び第2個別閾値Th2は、予め記憶部65に記憶されているので、判定部63は、記憶部65内の第1個別閾値Th1及び第2個別閾値Th2を参照して、第2判定処理を行う。
【0081】
記憶部65には、既述の制御用プログラム、第1個別閾値Th1、及び第2個別閾値Th2の他に、詳しくは後述する判定閾値Th3、第1電圧範囲R1、及び第2電圧範囲R2が予め記憶されている。
【0082】
図4は、第1信号線L1及び第2信号線L2の各々の断線の有無に応じて変化する第1信号Sig1の電圧値V1と第2信号Sig2の電圧値V2とを示したグラフである。なお、グラフの横軸は、既述のコア106aのZ軸方向の位置(mm)、すなわち、既述の基準位置からのコア106aのZ軸方向の変位量(mm)を示す。このZ軸方向の変位量には、上下移動軸110等のZ軸下方向への押し込み量及び上下移動軸110等のZ軸上方向の引き出し量が含まれる。また、グラフの縦軸は電圧(mV)である。
【0083】
グラフ中の「V1(L1正常)」は、正常な第1信号線L1から出力される第1信号Sig1の電圧値V1を示し、「V1(L1断線)」は、断線した第1信号線L1から出力される第1信号Sig1の電圧値V1を示す。また、グラフ中の「V2(L2正常)」は、正常な第2信号線L2から出力される第2信号Sig2の電圧値V2を示し、「V2(L2断線)」は、断線した第2信号線L2から出力される第2信号Sig2の電圧値V2を示す。
【0084】
図4のグラフでは、コア106aのZ軸方向の位置の移動可能範囲が所定の範囲(−5mm〜+5mm)に設定されており、コア106aのZ軸方向の位置により第1象限(0mm〜+5mm)及び第2象限(−5mm〜0mm)の2つに区画されている。ここで、プローブ高さ検出器20に組み込まれた本実施形態のLVDT106では、コア106aのZ軸方向の位置が、特定の範囲(−2mm〜+5mm)[以下、単に通常位置範囲NRという]に基本的に収まるものとして説明を行う。この通常位置範囲NRは、プローバ10(プローブ高さ検出器20)の種類等に応じて変わる。
【0085】
図4に示すように、通常位置範囲NR内において、正常な第1信号Sig1の電圧値V1の最小値は約180mV前後であり、150mVよりも小さくなることはない。また、通常位置範囲NR内において、正常な第2信号Sig2の電圧値V2の最小値は約230mV前後であり、200mVよりも小さくなることはない。
【0086】
従って、本実施形態では、第1個別閾値Th1を150mVに設定すると共に、第2個別閾値Th2を200mVに設定して、判定部63による第1信号線L1及び第2信号線L2の信号線ごと(以下、「両信号線L1,L2ごと」と略す)の断線の有無を個別判定している。
【0087】
この際に、断線している第1信号線L1から出力される第1信号Sig1の電圧値V1である第1断線電圧値V1、及び断線している第2信号線L2から出力される第2信号Sig2の電圧値V2である第2断線電圧値V2は、既述の通り信号線自体の静電容量によって零にはならない。そして、コア106aのZ軸方向の位置の全範囲(−5mm〜+5mm)に亘っての両断線電圧値V1,V2の双方の最大値が共に約170mV前後になる。このため、上述の第2個別閾値Th2(200mV)は、両断線電圧値V1,V2の双方の最大値よりも大きく設定されているのに対し、上述の第1個別閾値Th1(150mV)は、両断線電圧値V1,V2の双方の最大値よりも小さく設定されている。
【0088】
従って、コア106aのZ軸方向の位置が第2象限内の位置範囲W1(−5mm〜約−1mm)では、第1信号線L1が断線している場合であっても、第1信号Sig1の電圧値V1が第1個別閾値Th1(150mV)よりも大きくなる可能性がある。このため、コア106aのZ軸方向の位置が通常位置範囲NR内の一部(−2mm〜約−1mm)である場合、或いは通常位置範囲NR外(−5mm〜−2mm)である場合、第1信号Sig1の電圧値V1が第1個別閾値Th1よりも大きくなったとしても、第1信号線L1が断線している可能性がある。
【0089】
また、コア106aのZ軸方向の位置が第2象限内の位置範囲W2(−5mm〜約−3mm)では、第2信号線L2が正常な場合であっても、第2信号Sig2の電圧値V2が第2個別閾値Th2(200mV)よりも小さくなる。このため、コア106aのZ軸方向の位置が通常位置範囲NR外(−5mm〜約−3mm)となる場合、第2信号Sig2の電圧値V2が第2個別閾値Th2よりも小さくなったとしても、第2信号線L2が断線しておらず正常である可能性がある。
【0090】
なお、コア106aの全移動可能範囲(−5mm〜+5mm)では、正常な第2信号線L2から出力される第2信号Sig2の電圧値V2の最小値が、既述の第1信号Sig1の電圧値V1と同様に約180mV前後であり、150mVよりも小さくなることはない。このため、電圧値V1,V2がそれぞれ第1個別閾値Th1(150mV)よりも小さくなれば両信号線L1,L2がそれぞれ確実に断線していると判定できるが、電圧値V1,V2がそれぞれ第1個別閾値Th1(150mV)よりも大きくなる場合には断線の有無を確実に判定できない。
【0091】
このように上記の第2判定処理のみでは、コア106aのZ軸方向の位置によっては、両信号線L1,L2の断線の有無を正確に判定できない。また、両信号線L1,L2が、それぞれ正常である場合の両信号Sig1,Sig2の電圧値V1,V2の最小値は共に約180mVであり、逆にそれぞれ断線している場合の両信号Sig1,Sig2の両断線電圧値V1,V2の最大値は共に約170mVであり、両者は近接している。このため、これら最小値と最大値との間に収まるような第1個別閾値Th1及び第2個別閾値Th2をそれぞれ設定して、第2判定処理により第1信号線L1及び第2信号線L2の断線の有無を個別判定することは困難である。
【0092】
そこで、本実施形態の判定部63は、第2判定処理の他に第1判定処理を行って、両信号線L1,L2の各々の断線の有無を判定する。
【0093】
[第1判定処理]
図3及び図4に示すように、判定部63は第1判定処理を行う場合、両信号線L1,L2ごとの断線の有無と、前述の断線の有無に応じて変化する両信号Sig1,Sig2の双方の電圧値V1,V2との対応関係を示す第1電圧範囲R1及び第2電圧範囲R2を記憶部65から取得する。そして、判定部63は、信号取得部51Bから取得した両信号Sig1,Sig2の双方の電圧値V1,V2に基づき、第1電圧範囲R1を参照して第1信号線L1の断線の有無を判定すると共に、双方の電圧値V1,V2に基づき,第2電圧範囲R2を参照して第2信号線L2の断線の有無を判定する。
【0094】
<第1電圧範囲R1について>
第1電圧範囲R1は、既述の第2象限の位置範囲W1での第1信号線L1の断線を示す双方の電圧値V1,V2の範囲を予め定めたものである。第1断線電圧値V1は、位置範囲W1において第1個別閾値Th1よりも大きくなる。一方、第2個別閾値Th2は第1断線電圧値V1の最大値よりも大きく設定されているので、位置範囲W1の内外に関係なく第1断線電圧値V1の最大値が第2個別閾値Th2よりも大きくなることはない。
【0095】
従って、第2象限の位置範囲W1内において、信号取得部51Bから入力された第1信号Sig1の電圧値V1が第1個別閾値Th1より大きく且つ第2個別閾値Th2より小さくなる場合、第1信号線L1が断線していると判定できる。また逆に、この電圧値V1が第2個別閾値Th2よりも大きくなる場合、位置範囲W1の内外に関係なく第1信号線L1が正常とあると判定できる。
【0096】
ここで、第1信号線L1が正常な場合においても、コア106aのZ軸方向の位置が第1象限内の一部範囲(+3mm〜+5mm)では、信号取得部51Bから入力された第1信号Sig1の電圧値V1が第1個別閾値Th1より大きく且つ第2個別閾値Th2より小さくなる。このため、電圧値V1が第1個別閾値Th1より大きく且つ第2個別閾値Th2より小さくなる場合、コア106aのZ軸方向の位置が第2象限の位置範囲W1内であれば第1信号線L1が断線していると判定でき、逆にコア106aのZ軸方向の位置が第1象限内であれば第1信号線L1が正常であると判定できる。そして、コア106aのZ軸方向の位置が第2象限の位置範囲W1内であるか否かについては、信号取得部51Bから入力される第2信号Sig2の電圧値V2に基づき判定できる。
【0097】
具体的に、本実施形態では電圧値V2が約300mVよりも小さくなる場合、コア106aのZ軸方向の位置が第2象限の位置範囲W1内であると判定することができる。このため、本実施形態では300mVを判定閾値Th3と定め、電圧値V2が判定閾値Th3よりも小さくなるか否かに基づき、コア106aの位置が第2象限の位置範囲W1内であるか、或いは第1象限内であるかを判定する。
【0098】
以上のように、電圧値V1に対応する第1電圧範囲R1は、第1個別閾値Th1(150mV)よりも大きく且つ第2個別閾値Th2(200mV)よりも小さい範囲に設定されている。また、電圧値V2に対応する第1電圧範囲R1は、判定閾値Th3(300mV)よりも小さい範囲に設定されている。なお、第2信号線L2が正常である場合には、電圧値V2が150mV、すなわち第1個別閾値Th1よりも小さくなることはないので、既述の電圧値V2に対応する第1電圧範囲R1は、第1個別閾値Th1よりも大きく且つ判定閾値Th3よりも小さい範囲である。
【0099】
そして、双方の電圧値V1,V2ごとの第1電圧範囲R1に関する情報は、既述の判定閾値Th3に関する情報と共に、記憶部65に記憶されている。これにより、判定部63は、第2判定処理では第1信号線L1の断線の有無が正確に判定されない場合でも、両信号Sig1,Sig2の双方の電圧値V1,V2が共に第1電圧範囲R1を満たすか否かを判定する第1判定処理により、第1信号線L1が断線しているか否かを判定できる。
【0100】
ここで判定閾値Th3に関する情報は、第1電圧範囲R1(及び後述の第2電圧範囲R2も同様)に関する情報に含めることができるので、必ずしも図3に示したように判定閾値Th3に関する情報を記憶部65に別途記憶させる必要はない。
【0101】
<第2電圧範囲R2について>
第2電圧範囲R2は、既述の第2象限の位置範囲W2で第2信号線L2が正常であることを示す双方の電圧値V1,V2の範囲を予め定めて記憶部65に記憶したものである。既述の通り、正常な第2信号線L2から出力される第1信号Sig2の電圧値V2は、第2象限の位置範囲W2内において、第2個別閾値Th2よりも小さくなるが、第1個別閾値Th1よりは大きくなる。
【0102】
ここで、第2信号線L2が断線している場合でも、コア106aのZ軸方向の位置が第1象限内の一部範囲(約+2mm〜+5mm)では、信号取得部51Bから入力された第2信号Sig2の第2断線電圧値V2が第1個別閾値Th1より大きく且つ第2個別閾値Th2より小さくなる。
【0103】
この際に、第2断線電圧値V2は、正常な第1信号線L1から出力される第1信号Sig1の電圧値V1が既述の判定閾値Th3(300mV)よりも大きくなる範囲内(特に第2象限内)では第1個別閾値Th1(150mV)よりも小さくなる。換言すると、第1個別閾値Th1は、電圧値V1が既述の判定閾値Th3よりも大きくなる範囲内(特に第2象限内)では、第2断線電圧値V2よりも大きくなるように設定されている。
【0104】
このため、第1信号Sig1の電圧値V1が判定閾値Th3よりも大きくなる場合、第2信号線L2が正常であれば第2信号Sig2の電圧値V2が第1個別閾値Th1よりも小さくなることはない。従って、電圧値V2が第1個別閾値Th1より大きく且つ第2個別閾値Th2より小さくなる場合、第1信号Sig1の電圧値V1が判定閾値Th3よりも大きくなれば第2信号線L2が正常であると判定でき、逆に第1信号Sig1の電圧値V1が判定閾値Th3よりも小さくなれば第2信号線L2が断線していると判定できる。
【0105】
以上のように、電圧値V1に対応する第2電圧範囲R2は、判定閾値Th3(300mV)よりも大きい範囲に設定されている。また、電圧値V2に対応する第2電圧範囲R2は、第1個別閾値Th1(150mV)よりも大きく且つ第2個別閾値Th2(200mV)よりも小さい範囲に設定されている。
【0106】
そして、双方の電圧値V1,V2ごとの第2電圧範囲R2に関する情報は、既述の第1電圧範囲R1に関する情報と同様に記憶部65に記憶されている。これにより、判定部63は、第2判定処理では第2信号線L2の断線の有無(第2信号線L2が正常であるか否か)が正確に判定されない場合であっても、両信号Sig1,Sig2の双方の電圧値V1,V2が共に第2電圧範囲R2を満たすか否かを判定する第1判定処理により、第2信号線L2が断線しているか否かを判定できる。
【0107】
<判定部の動作>
判定部63は、信号取得部51Bから入力された両信号Sig1,Sig2の双方の電圧値V1,V2がそれぞれ第1電圧範囲R1を満たす場合、前述の第1判定処理により第1信号線L1の断線の有無を判定する。逆に判定部63は、双方の電圧値V1,V2の少なくとも一方が第1電圧範囲R1を満たさない場合、前述の第2判定処理により第1信号線L1の断線の有無を判定する。
【0108】
また、判定部63は、信号取得部51Bから入力された両信号Sig1,Sig2の双方の電圧値V1,V2がそれぞれ第2電圧範囲R2を満たす場合、前述の第1判定処理により第2信号線L2の断線の有無を判定する。逆に判定部63は、双方の電圧値V1,V2の少なくとも一方が第2電圧範囲R2を満たさない場合、前述の第2判定処理により第2信号線L2の断線の有無を判定する。
【0109】
なお、判定部63による第1判定処理及び第2判定処理を並行して実施してもよい。この場合、判定部63が、第1判定処理では第1信号線L1が断線していると判定し、第2判定処理では第1信号線L1が正常であると判定した場合、第1判定処理の判定結果が優先される。また、判定部63が、第1判定処理では第2信号線L2が正常であると判定し、第2判定処理では第2信号線L2が断線していると判定した場合にも、第1判定処理の判定結果が優先される。これにより、第1信号線L1及び第2信号線L2の各々の断線の有無を正確に判定することができる。
【0110】
<プローバの作用:断線検出>
次に、図5を用いて上記構成のプローバ10の作用、特に第1信号線L1及び第2信号線L2の断線検出方法について説明する。図5は、プローバ10による第1信号線L1及び第2信号線L2の断線検出の流れを示したフローチャートである。なお、プローバ10の他の動作(プローブ25の先端及び高さ検出、ウェハWの検査等)については公知技術であるため、ここでは具体的な説明は省略する。
【0111】
図5に示すようにプローバ10が作動すると、LVDT制御部51の発振器51Aから駆動用信号線L0を介して一次コイル108に励磁信号Sig0が入力され、一次コイル108が励磁される。これにより、コア106aのZ軸方向に変位に応じて二次コイル109Aから第1信号線L1を介して第1信号Sig1が出力されると共に、二次コイル109Bから第2信号線L2を介して第2信号Sig2が出力される。その結果、LVDT制御部51の信号取得部51Bにより第1信号Sig1及び第2信号Sig2がそれぞれ取得される(ステップS1、本発明の信号取得ステップに相当)。
【0112】
そして、信号取得部51Bは、取得した両信号Sig1,Sig2をプローブ高さ検出部62と判定部63とにそれぞれ出力する。これにより、プローブ高さ検出部62によるプローブ25の先端の高さ検出が実行される。一方、信号取得部51Bから両信号Sig1,Sig2の入力を受けた判定部63は、記憶部65内の第1個別閾値Th1、第2個別閾値Th2、判定閾値Th3、第1電圧範囲R1、及び第2電圧範囲R2に関する情報をそれぞれ参照する。
【0113】
そして、判定部63は、最初に信号取得部51Bから入力される両信号Sig1,Sig2の双方の電圧値V1,V2のうち、電圧値V2が第1個別閾値Th1(150mV)より小さくなる否か、すなわち電圧値V2が第2電圧範囲R2の範囲外であるか否かを判定する(ステップS2)。判定部63は、電圧値V2が第1個別閾値Th1(150mV)よりも小さくなる場合、電圧値V2が第2電圧範囲R2の範囲外であるため、第2判定処理により第2信号線L2の断線の有無を判断する(ステップS2でYES)。この場合、電圧値V2は当然のことながら第2個別閾値Th2(200mV)よりも小さくなるため、判定部63は第2信号線L2が断線していると判定する(ステップS3、本発明の第2判定処理ステップに相当)。
【0114】
一方、判定部63は、電圧値V2が第1個別閾値Th1(150mV)よりも大きくなる場合、この電圧値V2が第2個別閾値Th2(200mV)よりも小さくなるか否か、すなわち電圧値V2が第2電圧範囲R2の範囲内であるか否かを判定する(ステップS4)。そして、判定部63は、電圧値V2が第2個別閾値Th2(200mV)よりも小さくなる場合(ステップS4でYES)、すなわち電圧値V2が第2電圧範囲R2内となる場合、電圧値V1が判定閾値Th3(300mV)よりも大きくなるか、すなわち電圧値V1も第2電圧範囲R2内となるか否か判定する(ステップS5)。
【0115】
判定部63は、電圧値V1が判定閾値Th3(300mV)よりも大きくなる場合(ステップS5でYES)、すなわち電圧値V1も第2電圧範囲R2内となる場合、第1判定処理により第2信号線L2が正常とあると判定する(ステップS5でYES、ステップS6、本発明の第1判定処理ステップに相当)。
【0116】
また、判定部63は、電圧値V1が判定閾値Th3(300mV)よりも小さくなる場合(ステップS5でNO)、すなわち電圧値V1が第2電圧範囲R2の範囲外となる場合、第2判定処理により第2信号線L2の断線の有無を判断する。この場合、既述のステップS4でNOと判定したように、電圧値V2は第2個別閾値Th2(200mV)よりも小さくなるため、判定部63は第2信号線L2が断線していると判定する(ステップS7、本発明の第2判定処理ステップに相当)。
【0117】
一方、既述のステップS4において電圧値V2が第2個別閾値Th2(200mV)よりも大きくなる場合(ステップS4でNO)、判定部63は、第2判定処理により第2信号線L2の断線の有無を判断する。図示は省略するが、この場合、電圧値V2は第2個別閾値Th2(200mV)よりも大きくなるため、判定部63は第2信号線L2が正常である判定する(第2判定処理ステップに相当)。
【0118】
次いで、判定部63は、第1信号線L1の断線の有無の判定を開始する。最初に判定部63は、電圧値V2が判定閾値Th3(300mV)より小さくなる否か、すなわち電圧値V2が第1電圧範囲R1の範囲内であるか否かを判定する(ステップS8)。判定部63は、電圧値V2が判定閾値Th3(300mV)よりも小さくなる場合、すなわち電圧値V2が第1電圧範囲R1の範囲内である場合(ステップS8でYES)、電圧値V1が第2個別閾値Th2(200mV)よりも小さくなり且つ第1個別閾値Th1(150mV)よりも大きくなるか否か、すなわち電圧値V1が第1電圧範囲R1の範囲内であるか否かを判定する(ステップS9)。
【0119】
なお、ステップS9の「V1<200mV」は、電圧値V1が第1個別閾値Th1(150mV)よりも大きくなり且つ第2個別閾値Th2(200mV)よりも小さくなる場合(第1判定処理)と、電圧値V1が第1個別閾値Th1(150mV)よりも小さくなる場合(第2判定処理)との双方を包含した記載である。
【0120】
判定部63は、電圧値V1が第1個別閾値Th1(150mV)よりも大きくなり且つ第2個別閾値Th2(200mV)よりも小さくなる場合(ステップS9でYES)、すなわち電圧値V1も第1電圧範囲R1の範囲内になる場合、第1判定処理により第1信号線L1が断線していると判定する(ステップS10、本発明の第1判定処理ステップに相当)。
【0121】
なお、判定部63は、電圧値V1が第1個別閾値Th1(150mV)よりも小さくなる場合には、電圧値V1が第1電圧範囲R1の範囲外となるため、ステップS10では第2判定処理により第1信号線L1が断線していると判定する(第2判定処理ステップに相当)。すなわち、上述のステップS9では第1判定処理及び第2判定処理に関わらず、電圧値V1が第2個別閾値Th2(200mV)よりも小さくなる場合、第1信号線L1が断線していると判定される。
【0122】
また、判定部63は、電圧値V1が第2個別閾値Th2(200mV)よりも大きくなる場合(ステップS9でNO)、すなわち電圧値V1が第1電圧範囲R1の範囲外となる場合、第2判定処理により第1信号線L1の断線の有無を判断する。この場合、電圧値V1は当然のことながら第1個別閾値Th1(150mV)よりも大きくなるため、判定部63は第1信号線L1が正常であると判定する(ステップS11、本発明の第2判定処理ステップに相当)。
【0123】
一方、既述のステップS8において電圧値V2が判定閾値Th3(300mV)よりも大きくなる場合(ステップS8でNo)、すなわち、電圧値V2が第1電圧範囲R1の範囲外となる場合、判定部63は、第2判定処理により第1信号線L1の断線の有無を判断する(ステップS12)。
【0124】
この場合、判定部63は、電圧値V1が第1個別閾値Th1(150mV)よりも小さい場合、第1信号線L1が断線していると判定する(ステップS12でYES、ステップS13、本発明の第2判定処理ステップに相当)。逆に判定部63は、電圧値V1が第1個別閾値Th1(150mV)よりも大きい場合、第1信号線L1が正常であると判定する(ステップS12でNO、ステップS14、本発明の第2判定処理ステップに相当)。
【0125】
以下、プローバ10のプローブ高さ検出器20及び高さ調整機構27が作動している間、上記ステップS1からステップS14までの処理が繰り返し実行される。なお、第1信号線L1及び第2信号線L2のいずれかが断線していると判定部63が判定した場合、統括制御部60は、プローブ高さ検出器20及び高さ調整機構27の作動を停止させると共に、判定部63の判定結果を不図示の表示部等に表示(警告表示)させる。
【0126】
[本実施形態の効果]
以上のように本実施形態のプローバ10(ウェハテストシステム9)では、信号取得部51Bから取得した両信号Sig1,Sig2の双方の電圧値V1,V2に基づき、第1電圧範囲R1を参照して第1信号線L1の断線の有無を判定すると共に、双方の電圧値V1,V2に基づき第2電圧範囲R2を参照して第2信号線L2の断線の有無を判定する第1判定処理を行うことができる。これにより、第2判定処理のみでは第1信号線L1及び第2信号線L2のそれぞれの断線の有無を判定することが困難な場合でもこの判定を行うことができる。その結果、第1信号線L1及び第2信号線L2のそれぞれの断線の有無の判定を高精度に行うことができる。
【0127】
また、判定部63の第1判定処理及び第2判定処理は単純な電圧判定であるので、判定部63をアナログのロジック回路(コンパレータ)で構成することができ、プローバ10の製造コストの増加を抑えられる。
【0128】
[他実施形態]
図6は、第1信号線L1及び第2信号線L2の各々の断線の有無に応じて変化する2種類の両信号Sig1,Sig2の双方の電圧値V1,V2を示したグラフであって、通常位置範囲NR内の双方の電圧値V1,V2を示したグラフである。上記実施形態では、既述の図4に示したように、コア106aの位置の全範囲(−5mm〜+5mm)で第1信号線L1及び第2信号線L2の断線の有無を判定しているが、本実施形態のLVDT106では、既述の通りコア106aのZ軸方向の位置が基本的には通常位置範囲NR(−2mm〜+5mm)に収まる。このため、図6に示すように、通常位置範囲NRの範囲内に限定して、判定部63による第1判定処理及び第2判定処理を行ってもよい。
【0129】
図7は、通常位置範囲NRの範囲内に限定して第1信号線L1及び第2信号線L2の断線検出(第1判定処理及び第2判定処理)を行う場合の流れを示したフローチャートである。図7に示すように、この場合には、既述の図5に示したフローチャート中のステップS4からステップS7までを省略することができる。
【0130】
具体的に、この他実施形態では第2判定処理は上記実施形態と基本的に同じであるが、第1判定処理については第1信号線L1の断線の有無のみを判定、すなわち両信号Sig1,Sig2の双方の電圧値V1,V2がそれぞれ第1電圧範囲R1を満たすか否かのみを判定すればよい。その結果、上記実施形態よりもシンプルなロジックで両信号線L1,L2の断線の有無を判定することができる。
【0131】
[その他]
上記実施形態では、第1個別閾値Th1を150mVに設定し、第2個別閾値Th2を200mVに設定し、判定閾値Th3を300mVに設定しているが、これら閾値の値はLVDT106の種類、及びプローブ高さ検出器20の種類等に応じて適宜変更される。
【0132】
上記実施形態では、本発明の断線検出装置を構成するLVDT制御部51及び統括制御部60(判定部63及び記憶部65)がプローバ10に組み込まれているが、プローバ10と別体に設けられていても良く、この場合、本発明の断線検出装置としては例えばパーソナルコンピュータ等の演算装置が用いられる。
【0133】
上記実施形態では、判定部63が記憶部65内から第1個別閾値Th1、第2個別閾値Th2、判定閾値Th3、第1電圧範囲R1、及び第2電圧範囲R2に関する情報を取得しているが、例えばこれらの情報をオペレータが入力、或いはインターネット上のサーバから取得してもよい。
【0134】
上記実施形態では判定部63により第1判定処理及び第2判定処理を選択的に行っているが、図4に示すような両信号線L1,L2の断線の有無と、双方の電圧値V1,V2との対応関係に基づき、位置範囲W1,W2以外の範囲についても双方の電圧値V1,V2に基づき既述の断線の有無を判定する第1判定処理を行ってもよい。
【0135】
上記実施形態では、プローバ10のプローブ高さ検出器20に用いられるLDVT106の第1信号線L1及び第2信号線L2の断線検出に本発明の断線検出装置及び断線検出方法を適用しているが、本発明はLDVT106を備える各種検出器或いは各種装置(測定装置等)に適用することができる。
【符号の説明】
【0136】
9…ウェハテストシステム,
10…プローバ,
20…プローブ高さ検出器,
20a…接触面,
21,27…高さ調整機構,
25…プローブ,
51…LVDT制御部,
51A…発振器,
51B…信号取得部,
60…統括制御部,
62…プローブ高さ検出部,
63…判定部,
65…記憶部,
106…LVDT,
106a…コア,
106b…コイル,
108…一次コイル,
109A,109B…二次コイル,
L1…第1信号線,
L2…第2信号線,
Sig1…第1信号,
Sig2…第2信号,
V1,V2…電圧値,
Th1…第1個別閾値,
Th2…第2個別閾値,
Th3…判定閾値
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7