(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0017】
<第1の実施形態>
以下、第1の実施形態に係る研削盤について、
図1〜
図8を参照しながら説明する。
【0018】
図1に示すように、第1の実施形態に係る研削盤1は、研削盤本体10と、切屑凝集装置11と、検出装置12とを備えている。第1の実施形態に係る研削盤1は、ワークWを研削して平歯車等の歯車を形成する、いわゆる歯車研削盤である。
【0019】
研削盤本体10は、研削油Oを供給しながら、研削砥石KでワークWを研削する装置である。
図1に示すように、研削盤本体10は、研削砥石Kを装着して回転する研削スピンドル101と、ワークWを下方から支持して保持するテーブル102とを備えている。研削砥石KがワークWに対し同期回転しながら接触することでワークWが研削され、歯車形状に加工される。この研削によってワークWの切屑が発生する。なお、ワークWおよびその切屑の材質は、例えば、鉄、鋼などである。
また、研削盤本体10は、ワークWの加工中に研削油Oを研削箇所に吐出するクーラントノズル(以下、「ノズル」と称する。)を備えている。このノズルNから吐出される研削油Oによって、研削の円滑性の確保と、ワークWの切屑の除去と、ワークWおよび研削砥石Kの除熱が行われる。吐出された研削油Oは、研削によって生じたワークWの切屑を含みながら、流路Dを通じて、後述する切屑凝集装置11に流れていく。
【0020】
切屑凝集装置11は、研削盤本体10にて吐出された研削油Oが流れる流路Dにて、当該研削油Oに含まれるワークWの切屑を凝集させ、その凝集体(クラスタ)を形成する。
図1に示すように、切屑凝集装置11は、研削盤本体10の側壁面等に引き回された流路D周りに取り付けられる。
切屑凝集装置11の具体的な構造および「切屑の凝集体」については後述する。
【0021】
(切屑凝集装置および検出装置の構造)
図2、
図3は、それぞれ、第1の実施形態に係る切屑凝集装置および検出装置の構造を示す図である。
【0022】
検出装置12は、切屑凝集装置11に設置されたカメラCと、当該カメラCに接続されたコンピュータ120とを備えている。コンピュータ120は、カメラCによって生成された画像データの取得、および、当該画像データに基づく各種演算処理が可能なコンピュータである。
【0023】
図2、
図3に示すように、第1の実施形態に係る切屑凝集装置11は、永久磁石である磁石Mと、ヨークYとを備えている。
磁石MおよびヨークYは、流路Dが延びる方向(±X方向)に交差(直交)する磁場を印加する磁場印加部として機能する。即ち、ヨークYが、磁石Mの上下方向(±Z方向)の各端面から流路Dの上下方向の各端面にかけてそれぞれ延びるように配置されることで、磁石Mが発生させる磁力線が流路Dの上下方向に導かれる。これにより、流路Dの上下方向に磁場が印加される(
図3に示す「磁力線」参照)。
ここで、流路D内を流れる研削油Oに含まれる切屑は、鉄、鋼等の磁性体であるから、当該切屑が、流路Dに印加された磁場に引き寄せられる。これにより、流路Dの上下方向(±Z方向)の内壁に、切屑の凝集体(クラスタ)が形成される。以下、磁場によって流路D内に形成される切屑の凝集体を、単に「凝集体」と称する。
【0024】
また、
図2に示すように、流路Dの所定位置(磁石MおよびヨークYが配置される位置)には、観察窓αが設けられている。
図2、
図3に示すように、検出装置12のカメラCは、当該カメラCの光軸が観察窓αの面に向かって略垂直となるように配置される。これにより、カメラCは、流路Dの外側から、当該流路Dの内壁に形成される凝集体Rを撮影可能となる。
【0025】
(検出装置の機能構成)
図4は、第1の実施形態に係る検出装置の機能構成を示す図である。
図4に示すように、検出装置12は、コンピュータ120と、カメラCとを有する。検出装置12のコンピュータ120は、汎用のコンピュータであってよく、例えば、
図4に示すように、CPU121、操作部122、表示部123、メモリ124および接続インタフェース125等によって構成される。
【0026】
CPU121は、プログラムやデータをメモリ124上に読み出し、処理を実行することで、後述の各機能を実現する演算装置である。
操作部122は、例えば、マウス、タッチパネルおよびキーボード等で構成され、オペレータの指示を受けてCPU121に各種操作等を入力する。
表示部123は、例えば、液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイ等であって、CPU121による処理の結果を表示する。
メモリ124は、CPU121のワークエリア等として用いられる揮発性のメモリ(RAM)である。
接続インタフェース125は、外部装置とのインタフェースである。本実施形態においては、接続インタフェース125は、切屑凝集装置11に設置されたカメラC(
図2、
図3参照)と接続される。
【0027】
CPU121は、プログラムに従って動作することで、画像取得部1211、パラメータ取得部1212および判定部1213として機能する。
画像取得部1211は、カメラCによって生成された画像データを取得する。
パラメータ取得部1212は、カメラCによって生成された画像データを解析して、凝集体Rに関するパラメータを取得する。本実施形態においては、パラメータ取得部1212は、「凝集体Rに関するパラメータ」として、凝集体Rの体積変化量(凝集体Rの単位時間当たりの体積の変化の度合い(m
3/秒))と相関性を有するパラメータを取得する。より具体的には、パラメータ取得部1212は、「凝集体Rの体積変化量と相関性を有するパラメータ」として、後述する二値化画像データG2(
図6参照)に示される“白”の領域(領域β)のピクセル数の変化量(ピクセル数/秒)を取得する。
判定部1213は、凝集体Rに関するパラメータに基づいて研削砥石Kの研削性能を回復させる措置(例えば、研削砥石Kのドレッシング、または、新たな研削砥石Kへの交換)を行うべきか否かの判定を行う。
【0028】
(検出装置の処理フロー)
図5は、第1の実施形態に係る検出装置の処理フローを示す図である。
また、
図6〜
図8は、それぞれ、第1の実施形態に係る検出装置の処理を説明するための図である。
【0029】
図5に示す処理フローは、例えば、研削盤本体10に対し、研削を開始する旨の操作が入力された時点から開始され、以降、一定時間ごと(例えば、1秒ごと)に繰り返し実行される。
【0030】
研削盤本体10での研削が開始されると、CPU121(画像取得部1211)は、カメラCに対して撮影を指示する信号を出力し、当該撮影によって生成された撮影画像データG1を取得する(ステップS01)。
図6には、ステップS01で取得される画像データである撮影画像データG1の例が示されている。
図6に示すように、撮影画像データG1には、流路D内において形成されている凝集体Rが示されている。
【0031】
次に、CPU121(パラメータ取得部1212)は、ステップS01で取得された撮影画像データG1を処理して、二値化画像データG2を取得する(ステップS02)。
図6には、撮影画像データG1が処理されて得られた二値化画像データG2の例が示されている。
【0032】
次に、CPU121(パラメータ取得部1212)は、二値化画像データG2のうち、凝集体Rに対応する領域β(
図6の二値化画像データG2に示される“白”の領域)のピクセル数をカウントする。そして、CPU121は、今回取得された二値化画像データG2における領域βのピクセル数と、前回の処理フローで取得された二値化画像データG2における領域βのピクセル数との差分である「ピクセル数の変化量」(ピクセル数/秒)を、凝集体Rの体積変化量とみなして演算する(ステップS03)。
【0033】
次に、CPU121(判定部1213)は、ステップS03で演算されたピクセル数の変化量(ピクセル数/秒)と予め規定した判定閾値とを対比して、当該ピクセル数の変化量が判定閾値以上であるか否かを判定する(ステップS05)。
【0034】
ピクセル数の変化量が判定閾値以上である場合(ステップS04:YES)、CPU121は、特段の処理を行うことなく処理を終了する(所定時間経過後、ステップS01に戻る)。他方、ピクセル数の変化量が判定閾値未満である場合(ステップS04:NO)、CPU121は、表示部123に警告画像を表示させる等して、オペレータに対し、研削砥石Kのドレッシングまたは交換を促す(ステップS05)。
【0035】
ここで、
図7、
図8を参照しながら、ステップS04の判定処理について詳細に説明する。
【0036】
一般に、「砥石の切れ味」と「切屑形状」との間には、
図7に示すような関係が知られている。即ち、砥石に含まれる砥粒の目つぶれ、切屑の目詰まり等(砥石の摩耗)により、切屑の形が変化する(帯川利之ら,はじめての生産加工学1,pp.108−109,(2016)参照)。より具体的には、ドレッシング直後のように砥石の摩耗が進行していない場合、“流れ型”と呼ばれる長い切屑が多く生成される。一方、加工を経て、摩耗が進行した場合、“むしり型”と呼ばれる短い切屑が生成しやすくなる。このような関係を利用して、切屑形状に基づいて研削砥石Kの摩耗状態を把握することが可能である。
しかしながら、研削盤本体10にて発生する切屑は、幅が10μm程度と小さい一方で、研削油Oの流量は、100L/min程度と大量であるため、研削油O中の切屑の形状を直接的に観察することは難しい。そこで、本実施形態に係る研削盤1は、上述した通り、研削油Oが流れる流路Dの延在方向(±X方向)と交差するように磁場を印加し、当該磁場に引き寄せられて形成される凝集体Rの体積変化量に基づいて切屑の形状を推定する。
これにより、凝集体Rの体積変化量に基づいて、研削砥石Kの摩耗状態を推定することが可能となる。
【0037】
図8は、砥石の摩耗状態と、凝集体Rの体積変化量との関連性を評価するために行われた実験の結果の一例である。
図8は、「ドレッシング後」(摩耗が進行していない砥石による研削)、「中間」、「摩耗」(摩耗が進行している砥石による研削)のそれぞれの条件下における凝集体Rの体積変化量(ピクセル数の変化量(ピクセル/秒))の相対比較を行った結果を示している(「ドレッシング後」を“1”としている)。
図8に示すように、「摩耗」に比べ、「ドレッシング後」の方が、磁場の印加によって形成される凝集体Rの体積変化量が大きいことが読み取れる。即ち、砥石の摩耗が進行していない場合は、長い切屑(“流れ型”の切屑)が多い(
図7参照)ため、切屑同士の絡み合いが多く発生し、凝集体Rの体積変化量が大きくなると考えられる。
ステップS04の判定処理に用いるピクセル数の変化量(ピクセル/秒)の判定閾値は、
図8に示す例のような実験結果に基づき、研削砥石Kの研削性能を回復させる措置を行うべき摩耗状態に対応する値に予め規定されている。
【0038】
(作用・効果)
以上の通り、第1の実施形態に係る研削盤1は、研削油Oを供給しながら、研削砥石KでワークWを研削する研削盤本体10と、研削によって生じたワークWの切屑を含む研削油Oが流れる流路Dと、流路Dが延びる方向に交差する磁場を印加する磁場印加部(磁石MおよびヨークY)と、磁場によって形成される凝集体Rに関するパラメータを取得する検出装置12と、を備えている。
このような構成とすることで、ワークWの研削が行われている最中に発生する切屑の形状を、凝集体Rに関するパラメータに基づいて推定することができる。したがって、推定された切屑の形状に基づいてインプロセスで研削砥石Kの摩耗状態を把握することができる。
【0039】
また、第1の実施形態に係る検出装置12は、凝集体Rを撮影可能なように設置されたカメラCを備える。また、検出装置12は、カメラCによって生成された撮影画像データG1を解析して、凝集体Rの体積変化量と相関性を有するパラメータ(二値化画像データG2における“白”のピクセル数の変化量(ピクセル数/秒))を取得するコンピュータ120(パラメータ取得部1212)を備える。
【0040】
このようにすることで、凝集体Rの体積変化量をカメラCによる撮影画像に基づいて精度良く計測することができる。そして、当該計測された凝集体Rの体積変化量に基づいて、精度良く研削砥石Kの摩耗状態を推定することができる。
【0041】
また、第1の実施形態に係る検出装置12は、凝集体Rの体積変化量と相関性を有するパラメータ(二値化画像データG2における“白”のピクセル数の変化量)に基づいて、研削砥石Kの研削性能を回復させる措置を行うべきか否かの判定を行う判定部1213を更に備える。
このようにすることで、検出装置12は、研削砥石Kの研削性能を回復させる措置を行うべきか否かを自動的に判断してオペレータに通知することができる。
【0042】
(第1の実施形態の変形例)
以上、第1の実施形態に係る研削盤1について詳細に説明したが、研削盤1の具体的な態様は、上述のものに限定されることはなく、要旨を逸脱しない範囲内において種々の設計変更等を加えることは可能である。
以下、第1の実施形態の第1変形例について、
図9〜
図10を参照しながら説明する。
【0043】
図9は、第1の実施形態の第1変形例に係る検出装置の機能構成を示す図である。
図9に示すように、第1の実施形態の第1変形例に係る検出装置12(CPU121)は、第1の実施形態の判定部1213の機能に替えて、以下に説明する形状推定部1213Aとして機能する。
形状推定部1213Aは、凝集体Rに関するパラメータに基づいて切屑の形状(
図7に示す「流れ型」、「むしり型」等)を推定する。
【0044】
図10は、第1の実施形態の第1変形例に係る検出装置の処理フローを示す図である。
図10に示す処理フローは、第1の実施形態(
図5)と同様に、研削盤本体10に対し、研削を開始する旨の操作が入力された時点から開始され、以降、一定時間ごとに繰り返し実行される。
【0045】
研削盤本体10での研削が開始されると、CPU121(画像取得部1211)は、カメラCに対して撮影を指示する信号を出力し、当該撮影によって生成された撮影画像データG1(
図6参照)を取得する(ステップS11)。
【0046】
次に、CPU121(パラメータ取得部1212)は、ステップS01で取得された撮影画像データG1を処理して、二値化画像データG2(
図6参照)を取得する(ステップS12)。
【0047】
次に、CPU121(パラメータ取得部1212)は、二値化画像データG2のうち、凝集体Rに対応する領域βのピクセル数をカウントし、前回の処理フローで取得された二値化画像データG2における領域βのピクセル数との差分(即ち、ピクセル数の変化量(ピクセル数/秒))を演算する(ステップS13)。
【0048】
次に、CPU121(形状推定部1213A)は、ステップS13で演算されたピクセル数の変化量(ピクセル数/秒)に対応する切屑の形状を特定するとともに、当該特定結果を表示部123に表示させる(ステップS14)。ここで、形状推定部1213Aが特定する「切屑の形状」は、例えば、a1〜a2(ピクセル/秒)→「流れ型」、a2〜a3(ピクセル/秒)→「むしり型」、・・などと、予め規定されたピクセル数の変化量(ピクセル/秒)の区分別に割り当てられているものとしてよい。
【0049】
以上のように、第1の実施形態の第1変形例に係る研削盤1は、ピクセル数の変化量(ピクセル/秒)に基づいて視認することができない切屑の形状を推定するとともに、切屑の形状の推定結果を表示部123に表示してオペレータに通知する態様であってもよい。
このようにすることで、オペレータは、表示部123に表示される切屑形状の推定結果を目視して、研削砥石Kの研削性能を回復させる措置を行うべきか否かを判断することができる。
【0050】
また、第1の実施形態の他の変形例においては、研削盤1は、上述の判定部1213、形状推定部1213Aを具備せず、単に、パラメータ取得部1212によって演算されたピクセル数の変化量(ピクセル/秒)の演算結果を表示部123に表示する態様であってもよい。この場合、オペレータは、表示されたピクセル数の変化量(ピクセル/秒)の演算結果を視認して、研削砥石Kの研削性能を回復させる措置を行うべきか否かを判断してもよい。
【0051】
また、第1の実施形態の他の変形例においては、研削盤1は、単に、撮影画像データG1、二値化画像データG2の一方または両方を表示部123に表示する態様であってもよい。この場合、オペレータは、表示された撮影画像データG1、二値化画像データG2を視認して、研削砥石Kの研削性能を回復させる措置を行うべきか否かを判断してもよい。
【0052】
また、以上に説明した第1の実施形態およびその変形例に係る研削盤1(検出装置12)は、切屑の形状(流れ型、むしり型、等)が異なることで、「凝集体Rに関するパラメータ」の一態様である「凝集体の体積変化量」に違いが生じることに着目することを説明した。しかし、第1の実施形態の他の変形例においてはこの態様に限定されない。
【0053】
例えば、第1の実施形態の第2変形例に係る研削盤1は、「凝集体Rに関するパラメータ」の例として、「凝集体の大きさ」に着目してもよい。
即ち、切屑の形状(流れ型、むしり型、等)が異なることで、切屑同士が絡み合って結合する力が相違することから、流路D内における研削油Oの流れの中で最終的に形成される凝集体Rの大きさ(凝集体Rの体積の飽和量(m
3))が異なってくる。つまり、研削砥石Kの研削性能が高いほど最終的に流路D内に形成される凝集体Rが大きくなることから、当該凝集体Rの大きさに基づいて、研削砥石Kの摩耗状態を推定することができる。
なお、この場合、検出装置12(パラメータ取得部1212)は、「凝集体Rの大きさ」と相関性を有するパラメータとして、二値化画像データG2における領域βのピクセル数(“白”のピクセル数)を取得するものとしてよい。
【0054】
また、第1の実施形態の第3変形例に係る研削盤1は、「凝集体Rに関するパラメータ」の例として、撮影画像データG1に写される凝集体Rの「アスペクト比」に着目してもよい。
即ち、切屑の形状が長くなるほど(“流れ型”の切屑が多くなるほど)、縦長に流路Dを塞ぎやすくなることから、当該切屑の形状に応じて、形成される凝集体Rのアスペクト比(縦横の長さの比率)が変化するものと考えられる。そこで、磁場の印加により研削油Oに含まれる凝集体Rを形成することで、撮影画像データG1に写される凝集体Rの「アスペクト比」に基づいて、研削砥石Kの摩耗状態を推定することができる。
【0055】
また、第1の実施形態の第4変形例に係る研削盤1は、「凝集体Rに関するパラメータ」の例として、撮影画像データG1に写される凝集体Rの「エッジ量」、「エッジ方向」(またはその両方)に着目してもよい。
即ち、凝集体Rを構成する切屑の形状が異なることで、撮影画像データG1に含まれるエッジ量およびエッジ方向(撮影画像データG1の各画素と、当該画素の周辺画素との明るさの差(勾配)の大きさと方向)が変化する。具体的には、切屑が長いほど、長いエッジが検出されると考えられる。そこで、磁場の印加により研削油Oに含まれる凝集体Rを形成することで、撮影画像データG1に写される凝集体Rの「エッジ量」、「エッジ方向」に基づいて、研削砥石Kの摩耗状態を推定することができる。
【0056】
また、第1の実施形態の第5変形例に係る研削盤1は、「凝集体Rに関するパラメータ」の例として、撮影画像データG1に写される凝集体Rの「色合い」に着目してもよい。
即ち、研削砥石Kの摩耗状態に応じて、研削砥石K及びワークWに生じる摩擦熱が変化する。具体的には、研削砥石Kが摩耗するほど研削時に生じる摩擦熱が増加し、ワークWおよびその切屑が加熱される。そうすると、加熱により発生する切屑の色ムラが多くなるものと考えられる。そこで、磁場の印加により研削油Oに含まれる切屑を凝集させてその色合いを撮影可能な状態とすることで、当該撮影画像(撮影画像データG1)に写される凝集体Rの「色合い」に基づいて、研削砥石Kの摩耗状態を推定することができる。
【0057】
また、第1の実施形態の第6変形例に研削盤1は、撮影画像データG1に基づく、研削砥石Kの研削性能を回復させる措置を行うべきか否かの判断について学習済みの人工知能を具備する態様としてもよい。この場合、当該学習済みの人工知能が、逐次取得される撮影画像データG1に基づいて、研削砥石Kの研削性能を回復させる措置を行うべきか否かを判断してもよい。
【0058】
<第2の実施形態>
次に、第2の実施形態に係る研削盤について、
図11〜
図13を参照しながら説明する。
【0059】
(切屑凝集装置および検出装置の構造)
図11は、第2の実施形態に係る切屑凝集装置および検出装置の構造を示す図である。
図11に示すように、第2の実施形態に係る切屑凝集装置11は、磁石MおよびヨークYによって第1の実施形態と同様の構成とされる。
図11に示すように、第2の実施形態に係る検出装置12は、コンピュータ120と、当該コンピュータ120に接続されたホール素子Hとを有してなる。
ホール素子Hは、磁石MおよびヨークYにより、流路Dの延びる方向に直交して印加される磁場の磁束密度を計測する磁束密度検出センサである。ホール素子Hは、
図11に示すように、流路Dの外面とヨークYとの間に設置される。
【0060】
(検出装置の機能構成)
図12は、第2の実施形態に係る検出装置の機能構成を示す図である。
図12に示すように、第2の実施形態に係る検出装置12のコンピュータ120(CPU121)は、磁束密度取得部1211A、パラメータ取得部1212および判定部1213として機能する。
磁束密度取得部1211Aは、ホール素子Hを通じて、流路Dに印加される磁場の磁束密度を取得する。
第2の実施形態に係るパラメータ取得部1212は、ホール素子Hによる磁場の磁束密度の計測結果に基づいて、凝集体Rの体積変化量と相関性を有するパラメータを取得する。なお、本実施形態においては、「凝集体Rの体積変化量と相関性を有するパラメータ」とは、磁束密度取得部1211Aがホール素子Hを通じて取得する磁束密度の変化量(テスラ/秒)である。
【0061】
(検出装置の処理フロー)
図13は、第2の実施形態に係る検出装置の処理フローを示す図である。
【0062】
図13に示す処理フローは、第1の実施形態と同様に、研削盤本体10に対し、研削を開始する旨の操作が入力された時点から開始され、以降、一定時間ごと(例えば、1秒ごと)に繰り返し実行される。
【0063】
研削盤本体10での研削が開始されると、磁束密度取得部1211Aは、ホール素子Hから入力される検出信号を取得し、当該検出信号に基づく磁束密度を取得する(ステップS21)。
【0064】
次に、パラメータ取得部1212は、ステップS21で今回取得された磁束密度と、前回の処理フローで取得された磁束密度との差分を計算し、当該差分である磁束密度の変化量(テスラ/秒)を、凝集体Rの体積変化量とみなして演算する(ステップS22)。
【0065】
次に、判定部1213は、ステップS23で演算された磁束密度の変化量(テスラ/秒)と予め規定した判定閾値とを対比して、磁束密度の変化量が判定閾値以上であるか否かを判定する(ステップS23)。
【0066】
磁束密度の変化量が判定閾値以上である場合(ステップS23:YES)、CPU121は、特段の処理を行うことなく処理を終了する(所定時間経過後、ステップS21に戻る)。他方、磁束密度の変化量が判定閾値未満である場合(ステップS23:NO)、CPU121は、表示部123に警告画像を表示させる等して、オペレータに対し、研削砥石Kのドレッシングまたは交換を促す(ステップS24)。
【0067】
ここで、ステップS23の判定処理について詳細に説明する。
【0068】
凝集体Rの体積変化量に基づいて当該切屑の形状、ひいては研削砥石Kの摩耗状態を推定可能であることは、
図7、
図8を用いて説明した通りである。
ここで、
図11に示すように、流路Dに印加される磁場の磁力線は、研削油O内に含まれる切屑を架橋としながら上下方向(±Z方向)に印加される。したがって、流路D内に形成される凝集体Rの体積が大きくなるにつれて磁力線が切屑の架橋を通る割合が増加し、流路Dの内部を上端から下端にかけて通る磁力線の数が多くなる。つまり、ホール素子Hを通じて検出される磁束密度は、凝集体Rの体積変化に対応して変化する。この関係を利用することで、磁束密度の変化量(テスラ/秒)に基づいて切屑の形状および研削砥石Kの摩耗状態を推定することができる。
ステップS23の判定処理に用いる磁束密度の変化量(テスラ/秒)の判定閾値は、研削砥石Kの研削性能を回復させる措置を行うべき摩耗状態に対応する値として予め規定されている。
【0069】
(作用・効果)
以上の通り、第2の実施形態に係る検出装置12は、流路Dに印加される磁場の磁束密度を計測するホール素子Hを備える。また、検出装置12は、ホール素子Hによる磁場の磁束密度の計測結果に基づいて、凝集体Rの体積変化量と相関性を有するパラメータ(磁束密度の変化量(テスラ/秒))を取得するコンピュータ120(パラメータ取得部1212)を備える。
【0070】
このようにすることで、凝集体Rの体積変化量をホール素子Hによる磁束密度の計測結果に基づいて計測することができる。そして、当該計測された凝集体Rの体積変化量に基づいて、精度良く研削砥石Kの摩耗状態を推定することができる。更に、ホール素子Hを通じた磁束密度の計測を行うだけで良いため、検出装置12全体を簡素な構成とすることができる。
【0071】
なお、第2の実施形態に係る検出装置12(パラメータ取得部1212)は、磁束密度の変化量(テスラ/秒)を演算するものとして説明したが、他の実施形態においてはこの態様に限定されない。
例えば、第2の実施形態の変形例に係るパラメータ取得部1212は、磁束密度取得部1211Aによって取得された磁束密度に、予め規定された有効検出面積(m
2)を乗ずることで、磁束(量)の変化量を演算する態様としてもよい。
【0072】
<その他の実施形態>
次に、その他の実施形態に係る研削盤について、
図14〜
図17を参照しながら説明する。以下に説明する各実施形態に係る研削盤は、第1、第2の実施形態に係る研削盤と対比して、検出装置12の態様がそれぞれ異なる。
【0073】
(切屑凝集装置および検出装置の構造)
図14は、第3の実施形態に係る切屑凝集装置および検出装置の構造を示す図である。
図14に示すように、第3の実施形態に係る検出装置12は、超音波の発信および受信が可能な超音波センサF1、F2を備えている。超音波センサF1、F2は、流路Dの延びる方向(±X方向)に対し傾斜する軸線上において、流路Dを挟むように配置される。超音波センサF1、F2は、それぞれ、互いに発信する超音波を受信可能なように対向して配置される。
【0074】
検出装置12のコンピュータ120は、超音波センサF1が超音波を発信した時刻と超音波センサF2が当該超音波を受信した時刻の時間差Δt1、および、超音波センサF2が超音波を発信した時刻と超音波センサF1が当該超音波を受信した時刻の時間差Δt2を計測する。そして、コンピュータ120は、2つの時間差の差分(Δt2−Δt1)を演算することで、流路Dを流れる研削油Oの流速vを計測する。
【0075】
流路Dを流れる研削油Oの流速vは、凝集体Rの存在による流路Dの閉塞の度合いに応じて変化する。即ち、流路D内に形成される凝集体Rの体積が大きくなるにつれ、流路Dにおける閉塞が大きくなり、流路Dを流れる研削油Oの流速vは低下する。
第3の実施形態に係る研削盤1(検出装置12)は、以上の特性を利用して、超音波センサF1、F2を通じて計測される流速vの変化量を凝集体Rの体積変化量とみなし、当該流速vの変化量に基づいて研削砥石Kの摩耗状態を推定する。
【0076】
図15は、第4の実施形態に係る切屑凝集装置および検出装置の構造を示す図である。
図15に示すように、第4の実施形態に係る検出装置12は、液柱型差圧計Lを備えている。液柱型差圧計Lは、流路DにおけるヨークYが配置される位置(即ち、凝集体Rが形成される位置)よりも上流側と、流路DにおけるヨークYが配置される位置よりも下流側とを連結する液管L1と、当該液管L1に充填され、研削油Oよりも比重が大きい液体L2とによって構成される。
ここで、流路DにおけるヨークYが配置される位置よりも上流側の圧力を「上流側圧力」と称し、流路DにおけるヨークYが配置される位置よりも下流側の圧力を「下流側圧力」と称する。液柱型差圧計Lは、上流側圧力piと下流側圧力poとの差圧(pi−po)を、液管L1における液体L2の高さの差hとして示すことができる。
【0077】
流路Dを流れる研削油Oの差圧(pi−po)は、凝集体Rの存在による流路Dの閉塞の度合いに応じて変化する。即ち、流路D内に形成される凝集体Rの体積が大きくなるにつれ、流路Dにおける閉塞が大きくなり、流路Dを流れる研削油Oの差圧(pi−po)は増大する。
第4の実施形態に係る研削盤1(検出装置12)は、以上の特性を利用して、液柱型差圧計Lを通じて計測される差圧(pi−po)の変化量を凝集体Rの体積変化量とみなし、当該差圧(pi−po)の変化量に基づいて研削砥石Kの摩耗状態を推定する。
【0078】
図16は、第5の実施形態に係る切屑凝集装置および検出装置の構造を示す図である。
図16に示すように、第5の実施形態に係る検出装置12は、定電圧源E、電圧計V及び抵抗Riが接続されてなる電気特性検出回路Qを備えている。電気特性検出回路Qは、流路DのヨークYが配置される位置(即ち、凝集体Rが形成される位置)において対向するように配置された電極q1、q2に接続され、当該電極q1と電極q2との間の抵抗値Rf[Ω]を計測可能に構成される。
図16に示す例の場合、検出装置12のコンピュータ120は、電圧計Vから計測される電圧の計測結果Viに基づいて、Rf=(E/Vi−1)・Riを演算することで、抵抗値Rfを算出する。
【0079】
流路DのヨークYが配置される位置において対向するように配置された電極q1と電極q2との間の抵抗値Rfは、電極q1側に形成される凝集体Rと電極q2側に形成される凝集体Rとの間の距離Δzに応じて変化する。即ち、流路D内に形成される凝集体Rの体積が大きくなるにつれ、距離Δzが小さくなり、電極q1、q2間の抵抗値Rfが減少する。
第5の実施形態に係る研削盤1(検出装置12)は、以上の特性を利用して、電気特性検出回路Qを通じて計測される電極q1、q2間の抵抗値Rfの変化量を凝集体Rの体積変化量とみなし、当該抵抗値Rfの変化量に基づいて研削砥石Kの摩耗状態を推定する。
【0080】
また、第5の実施形態の変形例に係る検出装置12は、電極q1、q2間の抵抗値Rf[Ω]に替えて、電極q1、q2間の容量値Cf(キャパシタンス)[F]を算出する態様としてもよい。この場合、電気特性検出回路Qは、定電圧源Eに替えて交流電圧源を具備する態様とするのが好ましい。
電極q1と電極q2との間の容量値Cfは、電極q1側に形成される凝集体Rと電極q2側に形成される凝集体Rとの間の距離Δzに応じて変化する。即ち、流路D内に形成される凝集体Rの体積が大きくなるにつれ、距離Δzが小さくなり、電極q1、q2間の容量値Cfが減少する。
第5の実施形態の変形例に係る研削盤1(検出装置12)は、以上の特性を利用して、電気特性検出回路Qを通じて計測される電極q1、q2間の容量値Cfの変化量を凝集体Rの体積変化量とみなし、当該容量値Cfの変化量に基づいて研削砥石Kの摩耗状態を推定する。
【0081】
図17は、第6の実施形態に係る切屑凝集装置および検出装置の構造を示す図である。
図17に示すように、第6の実施形態に係る検出装置12は、X線照射装置X1とX線検出装置X2とを備えている。X線照射装置X1及びX線検出装置X2は、流路Dの延びる方向と交差する方向(±Y方向)において、流路Dを挟むように対向して配置される。
【0082】
X線照射装置X1は、所定の電圧が印加されることにより、流路Dに向けてX線を照射する。X線検出装置X2は、X線照射装置X1から照射されたX線のうち流路Dを透過したX線量(透過X線量Xi)を検出する。
【0083】
ここで、流路D内に形成される凝集体R(切屑)の主な成分は鉄であり、研削油Oと比較してX線透過率が低い。即ち、流路Dに形成される凝集体Rの体積が大きくなるにつれ、流路Dを透過するX線量(透過X線量Xi)は減少する。
第6の実施形態に係る研削盤1(検出装置12)は、以上の特性を利用して、X線照射装置X1及びX線検出装置X2を通じて計測される透過X線量Xiの変化量を凝集体Rの体積変化量とみなし、当該透過X線量Xiの変化量に基づいて研削砥石Kの摩耗状態を推定する。
【0084】
なお、第1の実施形態の変形例として説明した各種態様(第1変形例〜第6変形例)については、上述の第2の実施形態〜第6の実施形態に対してもそれぞれ適用可能である。
【0085】
また、上述の各種実施形態における切屑凝集装置11(磁場印加部)は、永久磁石である磁石MとヨークYとからなるものとして説明したが、他の実施形態においてはこの態様に限定されない。
例えば、他の実施形態においては、巻線(コイル)及び当該巻線への通電手段を有してなるものであってもよい。このようにすることで、電磁石により、流路Dに対する磁場の印加を所望に制御することができる。
【0086】
また、第1の実施形態に係る研削盤1は、「歯車研削盤」であるものとして説明したが、他の実施形態においてはこの態様に限定されない。即ち、他の実施形態に係る研削盤1は、歯車研削盤以外の研削盤において、上述した各実施形態に係る検出装置12が具備される態様であってもよい。
【0087】
なお、上述の各実施形態においては、上述した検出装置12のコンピュータ120の各種処理の過程は、プログラムの形式でコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記憶されており、このプログラムをコンピュータが読み出して実行することによって上記各種処理が行われる。また、コンピュータ読み取り可能な記録媒体とは、磁気ディスク、光磁気ディスク、CD−ROM、DVD−ROM、半導体メモリ等をいう。また、このコンピュータプログラムを通信回線によってコンピュータに配信し、この配信を受けたコンピュータが当該プログラムを実行するようにしても良い。
【0088】
上記プログラムは、上述した機能の一部を実現するためのものであってもよい。更に、上述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるもの、いわゆる差分ファイル(差分プログラム)であってもよい。
また、検出装置12のコンピュータ120は、それぞれの機能を全て具備する1台のコンピュータで構成されていても良いし、その機能の一部ずつを具備し、互いに通信可能に接続された複数のコンピュータで構成されていてもよい。
【0089】
以上のとおり、本発明に係るいくつかの実施形態を説明したが、これら全ての実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することを意図していない。これらの実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これらの実施形態およびその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。