(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記カバー配置工程において、前記検査用カバー、前記検査用カバーを支持するカバー支持部及び前記検査用媒体によって、前記検査用媒体に検査吐出された液滴を収容する密閉空間を形成することを特徴とする、請求項7〜10のいずれか一項に記載の液滴吐出方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、液滴検査では、カメラの数には限りがあるため、液滴吐出ヘッドから検査用の媒体上に液滴を検査吐出した後、カメラが撮像すべき領域を一度に撮像することは困難である。そこで、撮像すべき領域を複数に分割し、1つのカメラが移動して、これら分割された領域毎に液滴を撮像している(以下、この撮像を分割撮像という)。このように分割撮像する場合、一の領域を撮像している間に、他の領域では液滴が乾燥してしまう場合がある。かかる場合、撮像画像から計測される液滴の面積が変化するため、液適量を正確に計測することができない。
【0008】
しかしながら、上述した特許文献1を含め従来の検査方法では、このように液滴が経時的に乾燥することは考慮されておらず、液適量を正確に計測することができない。特に液滴の乾燥しやすさは機能液の種類によって異なるため、ある機能液を用いた場合は液滴が乾燥せずに検査できるが、別の機能液を用いた場合には液滴が乾燥して適切に検査できないといったばらつきが生じ得る。したがって、従来の液滴検査には改善の余地がある。
【0009】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、検査用媒体に検査吐出された液滴の乾燥を抑制し、液滴検査を適切に行うことを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決する本発明は、ワークに機能液の液滴を吐出して描画する液滴吐出装置であって、前記ワークに液滴を吐出する液滴吐出ヘッドと、前記液滴吐出ヘッドからの検査吐出を受ける検査用媒体と、前記検査用媒体に検査吐出された液滴を覆う検査用カバーと、前記検査用カバーを通して、前記検査用媒体に検査吐出された液滴を撮像する撮像部と
、前記撮像部を支持する撮像支持部と、を有し、前記液滴吐出ヘッドからの検査吐出時、前記検査用カバーは前記撮像支持部に保持されていることを特徴としている。
別な観点による本発明は、ワークに機能液の液滴を吐出して描画する液滴吐出装置であって、前記ワークに液滴を吐出する液滴吐出ヘッドと、前記液滴吐出ヘッドからの検査吐出を受ける検査用媒体と、前記検査用媒体に検査吐出された液滴を覆う検査用カバーと、前記検査用カバーを通して、前記検査用媒体に検査吐出された液滴を撮像する撮像部と、前記検査用媒体を水平方向に移動させる媒体移動機構と、を有し、前記液滴吐出ヘッドからの検査吐出時、前記検査用カバーは前記媒体移動機構に保持されていることを特徴としている。
【0011】
本発明によれば、液滴吐出ヘッドから検査用媒体に液滴を検査吐出した後、検査用媒体に検査吐出された液滴を覆うように検査用カバーを配置する。そうすると、この検査用カバーにより液滴の蒸発が抑制され、液滴の乾燥を抑制することができる。その後、検査用媒体に検査吐出された液滴を、検査用カバーを通して撮像部により撮像する。この撮像は、検査用カバーが液滴を覆った状態で行われるので、やはり液滴の乾燥が抑制され、撮像画像における液滴の面積の変化を抑制することができる。したがって、撮像画像から液滴の面積を正確に計測することができ、さらに当該液滴の面積から液滴量を正確に換算することができる、その結果、液滴検査を適切に行うことができる。
【0012】
前記液滴吐出装置において、前記検査用カバーは、透明な材質であって、光の反射を低減又は防止するカバーであってもよい。
【0013】
前記液滴吐出装置は、前記検査用カバーを支持するカバー支持部をさらに有し、前記検査用カバー、前記カバー支持部及び前記検査用媒体は、前記検査用媒体に検査吐出された液滴を収容する密閉空間を形成してもよい。
【0014】
前記液滴吐出装置において、前記密閉空間は複数に区画されていてもよい。
【0015】
前記液滴吐出装置において、前記検査用媒体には前記液滴吐出ヘッドから検査吐出された液滴が浸透し、前記検査用カバーは、液滴が浸透した前記検査用媒体上に配置されてもよい。
【0018】
別な観点による本発明は、液滴吐出ヘッドからワークに機能液の液滴を吐出して描画する液滴吐出方法であって、前記液滴吐出ヘッドから検査用媒体に液滴を検査吐出する検査吐出工程と、前記検査用媒体に検査吐出された液滴を覆うように検査用カバーを配置するカバー配置工程と、前記検査用媒体に検査吐出された液滴を、前記検査用カバーを通して撮像部により撮像する撮像工程と、前記撮像部で撮像された画像に基づいて、前記液滴を検査する検査工程と、を有
し、前記検査吐出工程において、前記検査用カバーは、前記撮像部を支持する撮像支持部に保持されていることを特徴としている。
別な観点による本発明は、液滴吐出ヘッドからワークに機能液の液滴を吐出して描画する液滴吐出方法であって、前記液滴吐出ヘッドから検査用媒体に液滴を検査吐出する検査吐出工程と、前記検査用媒体に検査吐出された液滴を覆うように検査用カバーを配置するカバー配置工程と、前記検査用媒体に検査吐出された液滴を、前記検査用カバーを通して撮像部により撮像する撮像工程と、前記撮像部で撮像された画像に基づいて、前記液滴を検査する検査工程と、を有し、前記検査吐出工程において、前記検査用カバーは、前記検査用媒体を水平方向に移動させる媒体移動機構に保持されていることを特徴としている。
【0019】
前記液滴吐出方法において、前記検査用カバーは、透明な材質であって、光の反射を低減又は防止するカバーであってもよい。
【0020】
前記液滴吐出方法では、前記カバー配置工程において、前記検査用カバー、前記検査用カバーを支持するカバー支持部及び前記検査用媒体によって、前記検査用媒体に検査吐出された液滴を収容する密閉空間を形成してもよい。
【0021】
前記液滴吐出方法において、前記密閉空間は複数に区画されていてもよい。
【0022】
前記液滴吐出方法では、前記検査吐出工程において、前記液滴吐出ヘッドから検査吐出された液滴は前記検査用媒体に浸透し、前記カバー配置工程において、前記検査用カバーは、液滴が浸透した前記検査用媒体上に配置されてもよい。
【0025】
前記液滴吐出方法は、前記検査工程における検査結果に基づいて、前記液滴吐出ヘッドからの液滴の吐出量を調整する吐出量調整工程をさらに有してもよい。
【0026】
別な観点による本発明によれば、前記研液滴吐出方法を液滴吐出装置によって実行させるように、当該液滴吐出装置のコンピュータ上で動作するプログラムが提供される。
【0027】
また別な観点による本発明によれば、前記プログラムを格納した読み取り可能なコンピュータ記憶媒体が提供される。
【発明の効果】
【0028】
本発明によれば、検査用媒体に検査吐出された液滴の乾燥を抑制し、液滴検査を適切に行うことができる。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する要素においては、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0031】
<1.第1の実施形態>
先ず、本発明の第1の実施形態に係る液滴吐出装置の構成について、
図1及び
図2を参照して説明する。
図1は、本実施形態に係る液滴吐出装置1の構成の概略を模式的に示す側面図である。
図2は、本実施形態に係る液滴吐出装置1の構成の概略を模式的に示す平面図である。なお、以下においては、ワークWの主走査方向をX軸方向、主走査方向に直交する副走査方向をY軸方向、X軸方向及びY軸方向に直交する鉛直方向をZ軸方向、Z軸方向回りの回動方向をθ方向とする。
【0032】
液滴吐出装置1は、主走査方向(X軸方向)に延在して、ワークWを主走査方向に移動させるX軸テーブル10と、X軸テーブル10を跨ぐように架け渡され、副走査方向(Y軸方向)に延在する一対のY軸テーブル11、11とを有している。X軸テーブル10の上面には、一対のX軸ガイドレール12、12がX軸方向に延伸して設けられ、各X軸ガイドレール12には、X軸リニアモータ(図示せず)が設けられている。各Y軸テーブル11の上面には、Y軸ガイドレール13がY軸方向に延伸して設けられ、当該Y軸ガイドレール13には、Y軸リニアモータ(図示せず)が設けられている。
【0033】
一対のY軸テーブル11、11には、キャリッジユニット20と撮像ユニット30が設けられている。X軸テーブル10上には、ワークステージ40と吐出検査ユニット50が設けられている。X軸テーブル10の外側(Y軸負方向側)であって、一対のY軸テーブル11、11の間には、メンテナンスユニット70が設けられている。
【0034】
(キャリッジユニット)
キャリッジユニット20は、Y軸テーブル11において、複数、例えば10個設けられている。各キャリッジユニット20は、キャリッジプレート21と、キャリッジ回動機構22と、キャリッジ23と、液滴吐出ヘッド24とを有している。
【0035】
キャリッジプレート21は、Y軸ガイドレール13に取り付けられ、当該Y軸ガイドレール13に設けられたY軸リニアモータによってY軸方向に移動自在になっている。なお、複数のキャリッジプレート21を一体としてY軸方向に移動させることも可能である。
【0036】
キャリッジプレート21の下面の中央には、キャリッジ回動機構22が設けられ、当該キャリッジ回動機構22の下端部にキャリッジ23が着脱自在に取り付けられている。キャリッジ23は、キャリッジ回動機構22によってθ方向に回動自在になっている。なお、ワークステージ40には、キャリッジ23を撮像するキャリッジアライメントカメラ(図示せず)が設けられている。そして、キャリッジアライメントカメラで撮像された画像に基づいて、キャリッジ回動機構22により、キャリッジ23のθ方向の位置が補正される。
【0037】
キャリッジ23の下面には、複数の液滴吐出ヘッド24が設けられている。本実施形態では、例えばX軸方向に3個、Y軸方向に2個、すなわち合計6個の液滴吐出ヘッド24が設けられている。液滴吐出ヘッド24の下面、すなわちノズル面には複数の吐出ノズル(図示せず)が形成され、当該吐出ノズルから機能液の液滴が吐出されるようになっている。
【0038】
(撮像ユニット)
撮像ユニット30は、吐出検査ユニット50の後述するメディア51に検査吐出された液滴を撮像する。
図3は、撮像ユニット30の構成の概略を模式的に示す側面図である。
図4は、撮像ユニット30を用いて液滴を撮像する様子を示す説明図である。
【0039】
撮像ユニット30は、撮像部としてのカメラ31と、検査用カバーとしてのカバー32及びカバー32を支持するカバー支持部33とを有している。カバー32とカバー支持部33は一体に構成され、以下の説明においては、これらカバー32とカバー支持部33をカバー体34という場合がある。
【0040】
図1に示すようにカメラ31とカバー体34は、一対のY軸テーブル11、11のうち、X軸正方向側のY軸テーブル11の側面に設けられた、撮像支持部としてのカメラ支持部35に支持されている。カメラ支持部35にはカメラ31を移動させる移動機構(図示せず)が設けられ、カメラ31はY軸方向に移動自在になっている。また、
図3に示すようにカメラ支持部35には、カバー体34を移動させる移動機構36が設けられている。移動機構36は、カバー支持部33の外周部を載置して保持する保持部36aを備え、X軸方向に移動することで、カバー体34の保持及び開放が自在になっている。また、カバー体34は、移動機構36によって鉛直方向に移動自在になっている。
【0041】
カメラ31は、例えばキャリッジユニット20(キャリッジ23)に対応して設けられ、例えば10個設けられている。また、カバー体34も、例えばキャリッジユニット20及びカメラ31に対応して設けられ、例えば10個設けられている。
【0042】
そして、
図4に示すように撮像ユニット30で、後述するメディア51に検査吐出された液滴Dを撮像する際には、当該液滴Dを覆うようにカバー体34をメディア51上に配置する。具体的にカバー体34は、1つのキャリッジ23が液滴Dを吐出するエリアA(以下、キャリッジエリアAという)を覆う。そして、カメラ31により、カバー32の上方から当該カバー32を通してキャリッジエリアAの液滴Dを撮像する。なお、カメラ31による撮像時には、照明器(図示せず)からの照明光が液滴Dに照らされる。本実施形態では、例えば照明器の光源として、例えば同軸型のLEDが用いられる。
【0043】
かかる場合、カバー32はカメラ31による撮像を可能にさせる必要があり、透明な材質が用いられる。また、反射光の干渉によるニュートンリングを抑制するため、カバー32には、照明光の反射を低減又は防止するカバーを用いてもよい。本実施形態では、カバー32として例えば低反射ガラスが用いられる。低反射ガラスは、ガラス表面に多層コーティングが施され、照明光の反射を低減することができる。但し、カバー32は上述した機能を有するものであれば任意のカバーを用いることができ、例えば反射防止ガラス(無反射ガラス)を用いてもよい。反射防止ガラスは、ガラス表面に極小の凹凸が形成され、反射光を拡散させ、照明光の反射を防止することができる。また、カバー32として、例えば透明なガラスや石英などの基板に、反射防止フィルムを貼ってもよい。
【0044】
カバー支持部33は、キャリッジエリアAの液滴Dを囲うように平面視において略矩形状を有している。そして、カバー体34をメディア51上に配置した際、カバー32、カバー支持部33及びメディア51で、密閉空間Eを形成する。なお、密閉空間Eの気密性を向上させるため、カバー支持部33をメディア51に密着させるのが好ましく、カバー支持部33には例えば弾性を有する材質を用いるのが好ましい。
【0045】
なお、密閉空間Eは、後述するように液滴Dの乾燥を抑制するという観点からは、できるだけ小さい方が好ましい。そこで、カバー支持部33(カバー32)の高さは、液滴Dがカバー32に干渉しない、またカメラ31の動作距離内に液滴Dが収まるなど、種々の装置的限定を考慮した上で、できるだけ小さく設定される。
【0046】
(ワークステージ)
図1及び
図2に示すようにワークステージ40は、例えば真空吸着ステージであり、ワークWを吸着して載置する。ワークステージ40は、当該ワークステージ40の下面側に設けられたステージ回動機構41によって、θ方向に回動自在に支持されている。なお、Y軸テーブル11のX軸負方向側であって、ワークステージ40の上方には、ワークステージ40上のワークWのアライメントマークを撮像するワークアライメントカメラ(図示せず)が設けられている。そして、ワークアライメントカメラで撮像された画像に基づいて、ステージ回動機構41により、ワークステージ40に載置されたワークWのθ方向の位置が補正される。
【0047】
ワークステージ40とステージ回動機構41は、ステージ回動機構41の下面側に設けられた第1のX軸スライダ42に支持されている。第1のX軸スライダ42は、X軸ガイドレール12に取り付けられ、当該X軸ガイドレール12に設けられたX軸リニアモータによってX軸方向に移動自在になっている。そして、ワークステージ40(ワークW)も、第1のX軸スライダ42によってX軸ガイドレール12に沿ってX軸方向に移動自在になっている。
【0048】
(吐出検査ユニット)
吐出検査ユニット50は、液滴吐出ヘッド24からの検査吐出を受けるユニットである。吐出検査ユニット50は、Y軸方向に延伸する検査用媒体としてのメディア51と、同じくY軸方向に延伸し、メディア51を吸着保持するメディア保持部52とを有している。本実施形態では、メディア51には、表面(上面)に撥液性を有するフィルムコーティングが施された撥液フィルムが用いられる。メディア51は、メディア保持部52が液滴吐出ヘッド24の直下に案内された際に、液滴吐出ヘッド24から吐出された液滴Dが着弾されるようになっている。また、メディア保持部52は、フィルム状のメディア51を平坦に吸着保持する。
【0049】
吐出検査ユニット50は、媒体移動機構としての第2のX軸スライダ60に搭載されている。第2のX軸スライダ60は、X軸ガイドレール12に取り付けられ、当該X軸ガイドレール12に設けられたX軸リニアモータによってX軸方向に移動自在になっている。そして、吐出検査ユニット50も、第2のX軸スライダ60によってX軸ガイドレール12に沿ってX軸方向に移動自在になっている。
【0050】
(メンテナンスユニット)
メンテナンスユニット70は、液滴吐出ヘッド24のメンテナンスを行い、当該液滴吐出ヘッド24の吐出不良を解消する。メンテナンスユニット70は、ワイピングユニット80と、吸引ユニット90とを有している。ワイピングユニット80と吸引ユニット90は、X軸テーブル10側からこの順でY軸方向に並べて配置されている。また、ワイピングユニット80と吸引ユニット90は、キャリッジ23の下方に位置するように配置されている。
【0051】
(ワイピングユニット)
ワイピングユニット80は、液滴吐出ヘッド24において複数の吐出ノズルが形成されたノズル面を払拭するユニットである。ワイピングユニット80は、払拭ローラ81を有している。そして、キャリッジ23がワイピングユニット80の上方に案内された際に、払拭ローラ81がキャリッジ23の液滴吐出ヘッド24のノズル面と接触して、当該ノズル面を払拭する。
【0052】
(吸引ユニット)
吸引ユニット90は、液滴吐出ヘッド24から機能液を吸引するユニットである。吸引ユニット90には、複数、例えば10個の分割吸引ユニット91がY軸方向に並べて設けられている。この分割吸引ユニット91の数は、キャリッジ23の数と同じである。各分割吸引ユニット91は、対応するキャリッジ23の液滴吐出ヘッド24を吸引して、当該液滴吐出ヘッド24の吐出ノズルから機能液を強制的に排出させる。また、各分割吸引ユニット91は、液滴吐出装置1が休止状態であるとき、液滴吐出ヘッド24のノズル面と密着して機能液の乾燥を抑制する。
【0053】
以上の液滴吐出装置1には、制御部100が設けられている。制御部100は、例えばコンピュータであり、データ格納部(図示せず)を有している。データ格納部には、例えばワークWに吐出される液滴Dを制御し、当該ワークWに所定のパターンを描画するための描画データ(ビットマップデータ)などが格納されている。また、制御部100は、プログラム格納部(図示せず)を有している。プログラム格納部には、液滴吐出装置1における各種処理を制御するプログラムや、駆動系の動作を制御するプログラムなどが格納されている。
【0054】
なお、前記データや前記プログラムは、例えばコンピュータ読み取り可能なハードディスク(HD)、フレキシブルディスク(FD)、コンパクトディスク(CD)、マグネットオプティカルデスク(MO)、メモリーカードなどのコンピュータに読み取り可能な記憶媒体に記録されていたものであって、その記憶媒体から制御部100にインストールされたものであってもよい。
【0055】
次に、以上のように構成された液滴吐出装置1を用いて行われるワーク処理について説明する。
図5は、かかるワーク処理の主な工程の例を示すフローチャートである。以下の説明では、X軸テーブル10上において、Y軸テーブル11よりX軸負方向側の位置を搬入出位置P1といい、一対のY軸テーブル11、11間の位置を処理位置P2といい、Y軸テーブル11よりX軸正方向側の位置を待機位置P3という。また、X軸テーブル10のY軸負方向側であって、一対のY軸テーブル11、11間の位置をメンテナンス位置P4という。
【0056】
先ず、
図6に示すように第2のX軸スライダ60によって、吐出検査ユニット50を待機位置P3から処理位置P2に移動させる。
図7に示すように処理位置P2では、吐出検査ユニット50のメディア51を液滴吐出ヘッド24の下方に配置し、当該メディア51に対して液滴吐出ヘッド24から液滴Dを検査吐出する(
図5のステップS1)。この際、メディア51には撥液フィルムが用いられているため、液滴Dはその形状を維持したまま存在する。なお、ステップS1では、カバー体34は移動機構36(カメラ支持部35)に保持されている。
【0057】
その後、
図8に示すように吐出検査ユニット50をX軸正方向側に移動させて、吐出検査ユニット50のメディア51をカメラ31の下方に配置する。続いて、
図9に示すように移動機構36によって、カバー体34を下降させ、メディア51上に配置する(
図5のステップS2)。このステップS2においてカバー体34は、キャリッジエリアAの液滴Dを覆うように配置される。そして、カバー体34とメディア51で、当該キャリッジエリアAの液滴Dを収容する密閉空間Eを形成する。この密閉空間Eでは液滴Dの飽和状態にすることができ、液滴Dは蒸発せず乾燥を抑制することができる。
【0058】
そして、カメラ31を密閉空間Eに対して適宜、Y軸方向に移動させて、
図9に示すようにカメラ31によりメディア51に検査吐出された液滴Dを撮像する(
図5のステップS3)。このステップS3において、カメラ31は、カバー32を通してキャリッジエリアAの液滴Dを撮像する。この撮像時、カバー32が透明であるので、カメラ31は液滴Dを適切に撮像することができる。また、カメラ31が液滴Dを撮像する際には、照明器からの照明光が液滴Dに照らされる。この点、カバー32には低反射ガラスが用いられているので、照明光の反射光の干渉によるニュートンリングを抑制することができる。
【0059】
ここで、
図10に示すようにステップS1では、1つのキャリッジ23からキャリッジエリアAに液滴Dが検査吐出される。上述したように本実施形態では、キャリッジ23、カメラ31、カバー体34の数はそれぞれ対応して同数であるため、ステップS2では、1つのキャリッジエリアAを覆うように1つのカバー体34が配置される。また、ステップS3では、カメラ31を移動させることで、キャリッジエリアAを複数に分割した分割エリア毎に液滴Dが撮像(分割撮像)される。
【0060】
また、カメラ31が移動して液滴Dを撮像する分割撮像においては、上述したように従来、一の分割エリアを撮像している間に、他の分割エリアでは液滴が乾燥していた。この点、本実施形態では、カバー体34とメディア51で密閉空間Eを形成される。そうすると、上述したように密閉空間Eを液滴Dの飽和状態にすることができ、液滴Dは蒸発しない。したがって、液滴Dの乾燥を抑制して、キャリッジエリアAにおいて複数の分割エリアの液滴Dを適切に撮像することができる。
【0061】
なお、分割エリアにおいて、実際に描画に用いられる液滴Dの外周部に、ダミーの液滴を吐出してもよい。かかる場合、外周部に吐出されたダミーの液滴の方が、その内側に吐出された液滴Dよりも乾燥しやすいので、当該内側の液滴Dの乾燥をさらに抑制することができる。
【0062】
ステップS3において撮像された画像は制御部100に出力される。制御部100では、撮像された画像に基づき、液滴吐出ヘッド24における吐出ノズルの吐出量が検査される(
図5のステップS4)。具体的に制御部100では、撮像画像を画像処理することで液滴Dの輪郭を把握して当該液滴Dの面積を計測し、さらに計測された液滴Dの面積から液滴量を換算して、吐出ノズルの吐出量の相対比を求める。
【0063】
その後、ステップS4の検査結果に基づいて、液滴吐出ヘッド24における吐出ノズルの吐出量を調整する(
図5のステップS5)。ここで、ワークWは例えば有機EL装置、カラーフィルタ、液晶表示装置、プラズマディスプレイ、フラットパネルディスプレイなどであり、当該ワークWには発光素子である画素が形成される。そして、ステップS5では、例えばステップS4で求められた各吐出ノズルからの相対吐出量と、ワークWの各画素へ描画するノズル番号および描画液滴数と、から、各画素へ描画される吐出量を算出し、その結果に基づいて液滴吐出ヘッド24の吐出ノズルからの吐出量がフィードバック制御される。
【0064】
なお、ステップS5において、吐出検査ユニット50を処理位置P2から待機位置P3に移動させる。
【0065】
このようにステップS1〜S5の吐出検査及び吐出量調整が行われている間に、搬入出位置P1にワークステージ40が配置され、搬送機構(図示せず)により液滴吐出装置1に搬入されたワークWが当該ワークステージ40に載置される。続いて、ワークアライメントカメラによってワークステージ40上のワークWのアライメントマークが撮像される。そして、当該撮像された画像に基づいて、ステージ回動機構41により、ワークステージ40に載置されたワークWのθ方向の位置が補正され、ワークWのアライメントが行われる(
図5のステップS6)。
【0066】
その後、
図11に示すように第1のX軸スライダ42によって、ワークステージ40を搬入出位置P1から処理位置P2に移動させる。処理位置P2では、液滴吐出ヘッド24の下方に移動したワークWに対して、当該液滴吐出ヘッド24から液滴を吐出する。さらに、ワークWの全面が液滴吐出ヘッド24の下方を通過するように、ワークステージ40をさらに待機位置P3側に移動させる。そして、ワークWをX軸方向に往復動させると共に、キャリッジユニット20を適宜、Y軸方向に移動させて、ワークWに所定のパターンが描画される(
図5のステップS7)。
【0067】
その後、
図12に示すようにワークステージ40を待機位置P3から搬入出位置P1に移動させる。ワークステージ40が搬入出位置P1に移動すると、描画処理が終了したワークWが液滴吐出装置1から搬出される。続いて、次のワークWが液滴吐出装置1に搬入され、上述したステップS5のワークWのアライメントが行われる(
図5のステップS8)。
【0068】
以上のように各ワークWに対してステップS1〜S8が行われ、一連のワーク処理が終了する。なお、ステップS1〜S5の吐出検査及び吐出状態調整を行うタイミングは任意である。例えばステップS1〜S5は、1ロットの1枚目のワークWに対して行われてもよいし、あるいはワークW毎に行われてもよい。
【0069】
以上の第1の実施形態によれば、ステップS1において液滴吐出ヘッド24からメディア51に液滴Dを検査吐出した後、ステップS2においてメディア51に検査吐出されたキャリッジエリアAの液滴Dを覆うようにカバー体34を配置する。そうすると、このカバー体34とメディア51で形成された密閉空間Eによって液滴Dの乾燥を抑制することができる。その後、ステップS3においてメディア51に検査吐出された液滴Dを、カバー32を通してカメラ31により撮像する。この撮像は、カバー体34が液滴Dを覆った状態で行われるので、やはり液滴Dの乾燥が抑制され、撮像画像における液滴Dの面積の変化を抑制することができる。したがって、ステップS4において撮像画像から液滴Dの面積を正確に計測することができ、さらに当該液滴Dの面積から液滴量を正確に換算することができる、その結果、吐出ノズル毎の相対吐出量の計測を適切に行うことができる。さらに、ステップS5において液滴吐出ヘッド24における吐出ノズルの吐出量が適切に調整されるので、ワークWに対する描画処理をムラなく適切に行うことができる。
【0070】
なお、カバー体34により液滴Dの乾燥を抑制できる効果は、本発明者が実験により確認している。実験は、カバー体34を配置した場合と配置しない場合について行い、それぞれの場合において液滴Dの面積の経時変化を測定した。その実験結果を
図13に示す。
図13の横軸は経過時間を示し、縦軸は面積変化率を示している。
図13を参照すると、カバー体34を配置しない場合、液滴Dの面積は経時的に小さくなった。一方、カバー体34を配置した場合、時間が経過しても液滴Dの面積はほとんど変化しなかった。
【0071】
また、このようにカバー体34により液滴Dの乾燥を抑制できるので、機能液の選択の幅が広がる。本実施形態のように密閉空間Eを形成することで、当該密閉空間Eを液滴Dの飽和状態にすることができるので、機能液の種類に関わらず液滴Dの乾燥を抑制することができる。したがって、乾燥しやすい機能液でも選択することができる。
【0072】
さらに、カバー体34により液滴Dの乾燥を抑制できるので、カメラ31により液滴Dを撮像する際に用いられる照明器の選択の幅が広がる。本実施形態では、照明器の光源としてLEDを用いたが、例えばハロゲンランプや水銀ランプを用いた場合、発熱するため、液滴Dが乾燥しやすくなる。この点、本実施形態では密閉空間Eを液滴Dの飽和状態にすることができるので、液滴Dの乾燥を抑制することができ、照明器に発熱する光源を用いることも可能となる。
【0073】
(第1の実施形態の変形例1)
以上の第1の実施形態では、1つのカバー体34が1つのキャリッジエリアAに対応して設けられていたが、カバー体34の形状や配置はこれに限定されない。
【0074】
例えばカバー体34は、複数のキャリッジエリアAに亘って設けられていてもよい。
図14は、カバー体34が2つのキャリッジエリアA1、A2に亘って設けられた例を示している。かかる場合、カバー支持部33は2つのキャリッジエリアA1、A2を囲うように設けられる。また、カバー支持部33のY軸方向の中央には、X軸方向に延伸するサポート33aが設けられている。このサポート33aにより、キャリッジエリアA1、A2が区画され、すなわち密閉空間E1、E2に区画される。なお、カバー体34は3つ以上のキャリッジエリアAに亘って設けられていてもよい。
【0075】
また、例えば1つのキャリッジエリアAに対して設けられたカバー体34に、サポート33aを設けてもよい。かかる場合、1つのキャリッジエリアAが複数に区画される。例えば1つのキャリッジエリアAが広く、1つのカバー体34のカバー32がたわむ場合、このたわみを抑制するため、カバー体34にサポート33aが設けられる。
【0076】
カバー体34の形状や配置がいずれの場合であっても、液滴Dを覆う密閉空間Eを形成することができるので、液滴Dの乾燥を抑制することができ、第1の実施形態の上述した効果を享受することができる。
【0077】
(第1の実施形態の変形例2)
また、以上の第1の実施形態では、ステップS1において液滴吐出ヘッド24からメディア51に液滴Dを検査吐出する際、カバー体34は移動機構36に保持されていたが、カバー体34を保持する方法はこれに限定されない。
【0078】
図15は、ステップS1においてカバー体34が第2のX軸スライダ60に保持される例を示している。かかる場合、ステップS2において、移動機構36によってカバー体34を第2のX軸スライダ60からメディア51に移動させて配置する。このようにカバー体34の保持方法に関わらず、密閉空間Eを形成することができるので、液滴Dの乾燥を抑制することができ、第1の実施形態の上述した効果を享受することができる。
【0079】
(第1の実施形態の変形例3)
また、以上の第1の実施形態では、メディア51には撥液フィルムが用いられていたが、メディア51の種類はこれに限定されない。例えばメディア51には浸透フィルムが用いられていてもよい。かかる場合、メディア51に検査吐出された液滴Dは当該メディア51に浸透する。メディア51に撥液フィルムを用いるか、浸透フィルムを用いるかは、例えば機能液の種類に応じて決定される。また、メディア51はフィルムに限定されず、例えばガラス基板であるバンク基板を用いてもよい。
【0080】
メディア51がどのような種類でも、カバー体34とメディア51との間に密閉空間Eを形成することで、液滴Dの乾燥を抑制することができ、第1の実施形態の上述した効果を享受することができる。
【0081】
但し、メディア51に浸透フィルムを用いた場合、照明器の光源として、例えばリング型のLEDが用いられる。かかる場合、液滴Dがメディア51に浸透すると、リング型のLEDを用いて斜めからLED光を照射する。そうすると、カメラ31で撮像される画像において、液滴Dが浸透した部分と、液滴Dが浸透していない部分とのコントラストの違いが明確になり、これにより液滴Dの面積が計測可能になる。
【0082】
<2.第2の実施形態>
次に、本発明の第2の実施形態に係る液滴吐出装置の構成について、
図16を参照して説明する。
図16は、本実施形態に係る液滴吐出装置1における撮像ユニット30と吐出検査ユニット50の構成の概略を模式的に示す側面図である。
【0083】
第2の実施形態の液滴吐出装置1は、メディア51に浸透フィルムを用いた場合であって、すなわち液滴吐出ヘッド24から検査吐出された液滴Dがメディア51に浸透する場合に適用される。
【0084】
図16に示すように第2の実施形態では、第1の実施形態におけるカバー体34に代えて、検査用カバーとしてのカバー200が用いられる。カバー200には、カバー体34のカバー32と同じ材質が用いられる。具体的にカバー200には、例えば低反射ガラスや反射防止ガラス、反射防止フィルムが貼り付けられたガラスや石英などが用いられる。
【0085】
なお、カバー200は、第1の実施形態のようにキャリッジエリアA毎に設けられていてもよい。あるいはカバー200は、第1の実施形態の変形例1のように複数のキャリッジエリアAに亘って設けられていてもよい。
【0086】
また、第2の実施形態における液滴吐出装置1のその他の構成は、第1の実施形態における液滴吐出装置1の構成と同様である。
【0087】
次に、以上のように構成された液滴吐出装置1を用いて行われるワーク処理について説明する。以下の説明におけるステップS1〜S8は、第1の実施形態におけるステップS1〜S8に対応している。
【0088】
先ず、ステップS1において、液滴吐出ヘッド24からメディア51に液滴Dを検査吐出し、当該液滴Dがメディア51に浸透する。この際、カバー200は、第1の実施形態のように移動機構36に保持されていてもよいし、あるいは第1の実施形態の変形例2のように第2のX軸スライダ60に保持されていてもよい。
【0089】
その後、ステップS2において、
図16に示すようにカバー200が、移動機構36により、液滴Dが浸透したメディア51上に載置される。その後、ステップS3において、カメラ31によりメディア51に検査吐出された液滴Dを撮像する。
【0090】
これらステップS2、S3において、液滴Dはカバー200に覆われているので、液滴Dは蒸発せず乾燥を抑制することができる。第1の実施形態では液滴Dの乾燥を抑制するという観点から、密閉空間Eをできるだけ小さくしていたが、本第2の実施形態ではカバー200とメディア51との間に空間がない。このため、液滴Dの乾燥をさらに抑制することができる。
【0091】
また、ステップS3において液滴Dを撮像する際、カバー200とメディア51が接触しているので反射光の干渉によるニュートンリングの影響が大きくなる。したがって、カバー200には、低反射ガラスや反射防止ガラス、反射防止フィルムが貼り付けられたガラスや石英などが用いるのが好ましい。
【0092】
なお、その後のステップS4〜S8は、第1の実施形態のステップS4〜S8と同様である。
【0093】
このように第2の実施形態においても、上述した第1の実施形態と同様の効果を享受することができる。
【0094】
<3.その他の実施形態>
以上の第1の実施形態及び第2の実施形態の液滴吐出装置1において、撮像ユニット30は、ワークWに吐出された液滴Dによる描画状態を撮像する描画検査カメラ(図示せず)を有していてもよい。撮像画像カメラは、キャリッジ23(液滴吐出ヘッド24)を挟んでカメラ31にX軸方向に対向して設けられている。
【0095】
かかる場合、ステップS7においてワークWに所定のパターンが描画された後、描画検査カメラの下方にワークステージ40が案内された際、描画検査カメラは、ワークステージ40上のワークWに吐出された液滴によるパターン等の描画状態を撮像する。撮像された画像は制御部100に出力され、制御部100では、撮像された画像に基づいて、描画状態の不良、例えば膜ムラ等が検査される。この検査結果において、描画状態が不良と判定された場合、例えば液滴吐出ヘッド24からの液滴の吐出などがフィードバック制御される。
【0096】
なお、以上の実施形態の液滴吐出装置1は、例えば有機EL装置、カラーフィルタ、液晶表示装置、プラズマディスプレイ(PDP装置)、電子放出装置(FED装置、SED装置)等の電気光学装置(フラットパネルディスプレイ:FPD)を製造する際など、広く適用される。また、金属配線形成、レンズ形成、レジスト形成、及び光拡散体形成等を製造する際にも液滴吐出装置1を適用してもよい。
【0097】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明はかかる例に限定されない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到しうることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。