(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0038】
以下、本発明について詳細に説明する。
以下に記載する構成要件の説明は、本発明の代表的な実施態様に基づいてなされることがあるが、本発明はそのような実施態様に限定されない。
本明細書中における基(原子団)の表記について、置換及び無置換を記していない表記は、置換基を有さないものと共に置換基を有するものをも包含する。例えば、「アルキル基」とは、置換基を有さないアルキル基(無置換アルキル基)のみならず、置換基を有するアルキル基(置換アルキル基)をも包含する。また、本明細書中における「有機基」とは、少なくとも1個の炭素原子を含む基をいう。
本明細書中における「活性光線」又は「放射線」とは、例えば、水銀灯の輝線スペクトル、エキシマレーザーに代表される遠紫外線、極紫外線(EUV光:Extreme Ultraviolet)、X線、及び電子線(EB:Electron Beam)等を意味する。本明細書中における「光」とは、特に断らない限り、活性光線又は放射線を意味する。
本明細書中における「露光」とは、特に断らない限り、水銀灯の輝線スペクトル、エキシマレーザーに代表される遠紫外線、極紫外線(EUV光)、及びX線等による露光のみならず、電子線、及びイオンビーム等の粒子線による露光も含む。
本明細書において、「〜」とはその前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む意味で使用される。
【0039】
本明細書において、(メタ)アクリレートはアクリレート及びメタクリレートを表し、(メタ)アクリルはアクリル及びメタクリルを表す。
本明細書において、樹脂成分の重量平均分子量(Mw)、数平均分子量(Mn)、及び分散度(分子量分布ともいう)(Mw/Mn)は、GPC(Gel Permeation Chromatography)装置(東ソー(株)製HLC−8120GPC)によるGPC測定(溶媒:テトラヒドロフラン、流量(サンプル注入量):10μL、カラム:東ソー(株)製TSK gel Multipore HXL−M、カラム温度:40℃、流速:1.0mL/分、検出器:示差屈折率検出器(Refractive Index Detector))によるポリスチレン換算値として定義される。
【0040】
本明細書において組成物中の各成分の量は、組成物中に各成分に該当する物質が複数存在する場合、特に断らない限り、組成物中に存在する該当する複数の物質の合計量を意味する。
本明細書において「工程」との語は、独立した工程だけでなく、他の工程と明確に区別できない場合であっても工程の所期の目的が達成されれば、本用語に含まれる。
本明細書において「全固形分」とは、組成物の全組成から溶剤を除いた成分の総質量をいう。また、「固形分」とは、上述のように、溶剤を除いた成分であり、例えば、25℃において固体であっても、液体であってもよい。
本明細書において、「質量%」と「重量%」とは同義であり、「質量部」と「重量部」とは同義である。
また、本明細書において、2以上の好ましい態様の組み合わせは、より好ましい態様である。
【0041】
(感光性樹脂組成物)
本開示に係る感光性樹脂組成物は、酸分解性基を有する構成単位を有する樹脂、光酸発生剤、溶剤、及び、下記式Dで表される化合物を含む。
【0043】
式D中、X
DはO原子又はS原子を表し、R
1Dは水素原子、炭化水素基、アシル基、アシルオキシ基又はアルコキシカルボニル基を表し、R
2Dは、ハロゲン原子、アルキル基、アルケニル基、アリール基、ヒドロキシ基、アルコキシ基、アリーロキシ基、メルカプト基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アシル基、アシルオキシ基、アルコキシカルボニル基、シアノ基又はニトロ基を表し、nDは0以上4以下の整数を表し、2以上のR
2Dが結合して環を形成していてもよい。
【0044】
上述したように、従来の感光性樹脂組成物を用いて露光を行う場合に、歩留まりの向上のために、焦点深度の許容度が大きいことが求められている。
また、特許文献1に記載の感光性樹脂組成物を用いた場合、抜きパターンにおける焦点深度の許容度が十分でない場合があることを、本発明者らは見出した。
本発明者らは、鋭意検討した結果、上記構成とすることにより、ホール等の抜きパターンの形成時における焦点深度の許容度が大きい感光性樹脂組成物が得られることを見出した。
上記効果が得られる詳細な機序は不明であるが、上記式Dで表される化合物は、通常の塩基性化合物よりも塩基性が弱い化合物であるため、露光部においては光酸発生剤より発生する酸の作用を阻害しにくく、かつ、未露光部においては酸のクエンチャー(トラップ剤)として十分機能すると推定している。また、上記式Dで表される化合物は適度な拡散性を有し、発生酸の拡散を効果的に制御することができるため、抜きパターンの形成時における焦点深度の許容度が大きい感光性樹脂組成物が得られると推定している。
【0045】
本開示に係る感光性樹脂組成物は、レジスト組成物であることが好ましく、ポジ型のレジスト組成物であっても、ネガ型のレジスト組成物であってもよい。また、アルカリ現像用のレジスト組成物であっても、有機溶剤現像用のレジスト組成物であってもよい。
本開示に係る感光性樹脂組成物は、化学増幅型感光性樹脂組成物であることが好ましい。
以下、本開示に係る感光性樹脂組成物(単に「組成物」ともいう。)に含まれる各成分の詳細について説明する。
【0046】
<式Dで表される化合物>
本開示に係る感光性樹脂組成物は、上記式Dで表される化合物を含む。
上記式Dで表される化合物は、ベンゾオキサゾール環構造又はベンゾチアゾール環構造における窒素原子が、弱塩基として作用し、上述したように抜きパターンの形成時における焦点深度の許容度が大きい感光性樹脂組成物が得られると推定している。
【0047】
式DにおけるX
Dは、焦点深度の許容度及び化合物の拡散抑制性の観点からは、O原子であることが好ましく、また、得られるパターンの矩形性及び焦点深度の許容度の観点からは、S原子であることが好ましい。
式DにおけるR
1Dは、焦点深度の許容度及びパターン直線性の観点から、水素原子又は炭化水素基であることが好ましく、水素原子、アルキル基又はアリール基であることがより好ましく、アリール基であることが更に好ましく、フェニル基であることが特に好ましい。
式DにおけるR
1Dの炭素数は、焦点深度の許容度及びパターン直線性の観点から、0〜20であることが好ましく、1〜10であることがより好ましく、4〜8であることが更に好ましい。
式DのR
1Dにおける炭化水素基、アシル基、アシルオキシ基及びアルコキシカルボニル基は、置換基を有していてもよい。
置換基としては、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、ヒドロキシ基、アルコキシ基、アリーロキシ基、メルカプト基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アシル基、アシルオキシ基、アルコキシカルボニル基、シアノ基及びニトロ基が挙げられる。
また、上記置換基は、更に置換基により置換されていてもよい。例えば、ハロゲン化アルキル基等が挙げられる。
【0048】
式DにおけるR
2Dは、焦点深度の許容度及びパターン直線性の観点から、ハロゲン原子、アルキル基、アルケニル基、アリール基、ヒドロキシ基、アルコキシ基又はアリーロキシ基が好ましく、フッ素原子、アルキル基、アルケニル基、アリール基、ヒドロキシ基又はアルコキシ基がより好ましく、アルキル基が更に好ましい。R
2Dが複数存在する場合は、R
2Dは同一でも異なっていてもよい。
また、式DにおけるR
2Dは、更に置換基を有していてもよい。置換基としては、上述したものが好ましく挙げられる。
また、2以上のR
2Dが結合して形成する環は、飽和脂肪族環であっても、不飽和脂肪族環であっても、芳香環であってもよいが、芳香環であることが好ましく、ベンゼン環であることがより好ましい。すなわち、ベンゾオキサゾール環構造又はベンゾチアゾール環構造におけるベンゼン環と結合してナフタレン環を形成していることがより好ましい。
式DにおけるnDは、焦点深度の許容度及びパターン直線性の観点から、0以上3以下の整数であることが好ましく、0又は1であることがより好ましく、0であることが特に好ましい。
【0049】
上記式Dで表される化合物の共役酸のpKaは、焦点深度の許容度及びパターン直線性の観点から、−2.0〜5.0であることが好ましく、0.0〜3.0であることがより好ましい。
なお、本開示におけるpKaは、水中における値であって、ACD/Labs ver8.08(富士通(株)製)を用いて、予測計算して求めることができる。
【0050】
上記式Dで表される化合物の沸点は、化合物の拡散抑制性、焦点深度の許容度及びパターン直線性の観点から、200℃以上であることが好ましく、230℃以上がより好ましく、300℃以上であることが更に好ましく、350℃以上450℃以下であることが特に好ましい。
【0051】
上記式Dで表される化合物は、焦点深度の許容度及びパターン直線性の観点から、下記式D−1で表される化合物であることが好ましい。
【0053】
式D−1中、X
DはO原子又はS原子を表し、R
2D及びR
3Dはそれぞれ独立に、ハロゲン原子、アルキル基、アルケニル基、アリール基、ヒドロキシ基、アルコキシ基、アリーロキシ基、メルカプト基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アシル基、アシルオキシ基、アルコキシカルボニル基、シアノ基又はニトロ基を表し、nDは0以上4以下の整数を表し、mDは0以上5以下の整数を表し、2以上のR
2Dが結合して環を形成していてもよい。
【0054】
式D−1におけるX
D、R
2D及びnDは、式DにおけるX
D、R
2D及びnDとそれぞれ同義であり、好ましい態様もそれぞれ同様である。
式D−1におけるR
3Dはそれぞれ独立に、焦点深度の許容度及びパターン直線性の観点から、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、ヒドロキシ基、アルコキシ基又はアリーロキシ基が好ましく、アルキル基又はアルコキシ基がより好ましい。
また、式D−1におけるR
3Dは、更に置換基を有していてもよい。置換基としては、上述したものが好ましく挙げられる。
式D−1におけるmDは、0以上3以下の整数であることが好ましく、0又は1であることがより好ましく、0であることが特に好ましい。
【0055】
上記式Dで表される化合物は、焦点深度の許容度及びパターン直線性の観点から、下記式D−2で表される化合物であることがより好ましい。
【0057】
式D−2中、X
DはO原子又はS原子を表す。
【0058】
式D−2におけるX
Dは、式DにおけるX
Dと同義であり、好ましい態様も同様である。
【0059】
以下に上記式Dで表される化合物の好ましい具体例として、D−1〜D−13を示すが、これらに限定されない。
【0061】
なお、上記D−1〜D−13の沸点、及び、共役酸のpKaは、後述する実施例において示す値である。
【0062】
本開示に係る感光性樹脂組成物は、上記式Dで表される化合物を1種単独で含有してもよいし、2種以上を併用してもよい。
上記式Dで表される化合物の含有量は、焦点深度の許容度及びパターン直線性の観点から、組成物の全固形分に対し、0.1質量%以上10質量%以下であることが好ましく、0.2質量%以上5質量%以下であることがより好ましく、0.3質量%以上2.5質量%以下であることが特に好ましい。
【0063】
<酸分解性基を有する構成単位を有する樹脂>
本開示に係る感光性樹脂組成物は、酸分解性基を有する構成単位を有する樹脂(以下、「樹脂(A)」ともいう。)を含むことが好ましい。
この場合、後述する本開示に係るパターン形成方法において、現像液としてアルカリ現像液を採用した場合には、ポジ型パターンが好適に形成され、現像液として有機系現像液を採用した場合には、ネガ型パターンが好適に形成される。
【0064】
〔酸分解性基を有する構成単位〕
樹脂(A)は、酸分解性基を有する構成単位を有する。
【0065】
樹脂(A)としては、公知の樹脂を適宜使用することができる。例えば、米国特許出願公開第2016/0274458号明細書の段落0055〜0191、米国特許出願公開第2015/0004544号明細書の段落0035〜0085、米国特許出願公開第2016/0147150号明細書の段落0045〜0090に開示された公知の樹脂を樹脂(A)として好適に使用できる。
【0066】
酸分解性基は、極性基が酸の作用により分解し脱離する基(脱離基)で保護された構造を有することが好ましい。
極性基としては、カルボキシ基、フェノール性水酸基、スルホン酸基、スルホンアミド基、スルホニルイミド基、(アルキルスルホニル)(アルキルカルボニル)メチレン基、(アルキルスルホニル)(アルキルカルボニル)イミド基、ビス(アルキルカルボニル)メチレン基、ビス(アルキルカルボニル)イミド基、ビス(アルキルスルホニル)メチレン基、ビス(アルキルスルホニル)イミド基、トリス(アルキルカルボニル)メチレン基、及びトリス(アルキルスルホニル)メチレン基等の酸性基(2.38質量%テトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液中で解離する基)、並びにアルコール性水酸基等が挙げられる。
【0067】
なお、アルコール性水酸基とは、炭化水素基に結合した水酸基であって、芳香環上に直接結合した水酸基(フェノール性水酸基)以外の水酸基をいい、水酸基としてα位がフッ素原子などの電子求引性基で置換された脂肪族アルコール(例えば、ヘキサフルオロイソプロパノール基など)は除く。アルコール性水酸基としては、pKa(酸解離定数)が12以上20以下の水酸基であることが好ましい。
【0068】
好ましい極性基としては、カルボキシ基、フェノール性水酸基、及びスルホン酸基が挙げられる。
【0069】
酸分解性基として好ましい基は、これらの基の水素原子を酸の作用により脱離する基(脱離基)で置換した基である。
酸の作用により脱離する基(脱離基)としては、例えば、−C(R
36)(R
37)(R
38)、−C(R
36)(R
37)(OR
39)、及び−C(R
01)(R
02)(OR
39)等を挙げることができる。
式中、R
36〜R
39はそれぞれ独立に、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基又はアルケニル基を表す。R
36とR
37とは、互いに結合して環を形成してもよい。
R
01及びR
02はそれぞれ独立に、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基又はアルケニル基を表す。
【0070】
R
36〜R
39、R
01及びR
02のアルキル基は、炭素数1〜8のアルキル基が好ましく、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、へキシル基、及びオクチル基等を挙げることができる。
R
36〜R
39、R
01及びR
02のシクロアルキル基は、単環型でも、多環型でもよい。単環型としては、炭素数3〜8のシクロアルキル基が好ましく、例えば、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロへキシル基、及びシクロオクチル基等を挙げることができる。多環型としては、炭素数6〜20のシクロアルキル基が好ましく、例えば、アダマンチル基、ノルボルニル基、イソボルニル基、カンファニル基、ジシクロペンチル基、α−ピネル基、トリシクロデカニル基、テトラシクロドデシル基、及びアンドロスタニル基等を挙げることができる。なお、シクロアルキル基中の少なくとも1つの炭素原子が酸素原子等のヘテロ原子によって置換されていてもよい。
R
36〜R
39、R
01及びR
02のアリール基は、炭素数6〜10のアリール基が好ましく、例えば、フェニル基、ナフチル基、及びアントリル基等を挙げることができる。
R
36〜R
39、R
01及びR
02のアラルキル基は、炭素数7〜12のアラルキル基が好ましく、例えば、ベンジル基、フェネチル基、及びナフチルメチル基等を挙げることができる。
R
36〜R
39、R
01及びR
02のアルケニル基は、炭素数2〜8のアルケニル基が好ましく、例えば、ビニル基、アリル基、ブテニル基、及びシクロへキセニル基等を挙げることができる。
R
36とR
37とが互いに結合して形成される環としては、シクロアルキル基(単環又は多環)であることが好ましい。シクロアルキル基としては、シクロペンチル基、及びシクロヘキシル基などの単環のシクロアルキル基、又はノルボルニル基、テトラシクロデカニル基、テトラシクロドデカニル基、及びアダマンチル基などの多環のシクロアルキル基が好ましい。
【0071】
酸分解性基として、クミルエステル基、エノールエステル基、アセタールエステル基、又は第3級のアルキルエステル基等が好ましく、アセタール基、又は第3級アルキルエステル基がより好ましい。
【0072】
樹脂(A)は、酸分解性基を有する構成単位として、焦点深度の許容度及びパターン直線性の観点から、下記式AIで表される構成単位を有することが好ましい。
【0074】
式AI中、Xa
1は、水素原子、フッ素原子以外のハロゲン原子、又は1価の有機基を表し、Tは、単結合又は2価の連結基を表し、Rx
1〜Rx
3は、それぞれ独立に、アルキル基又はシクロアルキル基を表し、Rx
1〜Rx
3のいずれか2つが結合して環構造を形成してもよく、形成しなくてもよい。
【0075】
Tの2価の連結基としては、アルキレン基、アリーレン基、−COO−Rt−、及び−O−Rt−等が挙げられる。式中、Rtは、アルキレン基、シクロアルキレン基又はアリーレン基を表し、
Tは、単結合又は−COO−Rt−が好ましい。Rtは、炭素数1〜5の鎖状アルキレン基が好ましく、−CH
2−、−(CH
2)
2−、又は−(CH
2)
3−がより好ましい。Tは、単結合であることがより好ましい。
【0076】
Xa
1は、水素原子又はアルキル基であることが好ましい。
Xa
1のアルキル基は、置換基を有していてもよく、置換基としては、例えば、水酸基、及びフッ素原子以外のハロゲン原子が挙げられる。
Xa
1のアルキル基は、炭素数1〜4が好ましく、メチル基、エチル基、プロピル基、及び、ヒドロキシメチル基等が挙げられる。Xa
1のアルキル基は、メチル基であることが好ましい。
【0077】
Rx
1、Rx
2及びRx
3のアルキル基としては、直鎖状であっても、分岐状であってもよく、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基などが好ましく挙げられる。アルキル基の炭素数としては、1〜10が好ましく、1〜5がより好ましく、1〜3が更に好ましい。Rx
1、Rx
2及びRx
3のアルキル基は、炭素間結合の一部が二重結合であってもよい。
Rx
1、Rx
2及びRx
3のシクロアルキル基としては、シクロペンチル基、シクロヘキシル基などの単環のシクロアルキル基、又は、ノルボルニル基、テトラシクロデカニル基、テトラシクロドデカニル基、アダマンチル基などの多環のシクロアルキル基が好ましい。
【0078】
Rx
1、Rx
2及びRx
3の2つが結合して形成する環構造としては、シクロペンチル環、シクロヘキシル環、シクロヘプチル環、及びシクロオクタン環などの単環のシクロアルカン環、又はノルボルナン環、テトラシクロデカン環、テトラシクロドデカン環、及びアダマンタン環などの多環のシクロアルキル環が好ましい。シクロペンチル環、シクロヘキシル環、又はアダマンタン環がより好ましい。Rx
1、Rx
2及びRx
3の2つが結合して形成する環構造としては、下記に示す構造も好ましい。
【0080】
以下に式AIで表される構成単位に相当するモノマーの具体例を挙げるが、本開示は、これらの具体例に限定されない。下記の具体例は、式AIにおけるXa
1がメチル基である場合に相当するが、Xa
1は、水素原子、フッ素原子以外のハロゲン原子、又は1価の有機基に任意に置換することができる。
【0082】
樹脂(A)は、酸分解性基を有する構成単位として、米国特許出願公開第2016/0070167号明細書の段落0336〜0369に記載の構成単位を有することも好ましい。
【0083】
また、樹脂(A)は、酸分解性基を有する構成単位として、米国特許出願公開第2016/0070167号明細書の段落0363〜0364に記載された酸の作用により分解してアルコール性水酸基を生じる基を含む構成単位を有していてもよい。
【0084】
樹脂(A)は、酸分解性基を有する構成単位を、1種単独で含んでもよく、2種以上を含んでもよい。
【0085】
樹脂(A)に含まれる酸分解性基を有する構成単位の含有量(酸分解性基を有する構成単位が複数存在する場合はその合計)は、樹脂(A)の全構成単位に対して、10モル%〜90モル%が好ましく、20モル%〜80モル%がより好ましく、30モル%〜70モル%が更に好ましい。
なお、本開示において、「構成単位」の含有量をモル比で規定する場合、上記「構成単位」は「モノマー単位」と同義であるものとする。また、本開示において上記「モノマー単位」は、高分子反応等により重合後に修飾されていてもよい。以下においても同様である。
【0086】
〔ラクトン構造、スルトン構造、及びカーボネート構造よりなる群から選択される少なくとも1種を有する構成単位〕
樹脂(A)は、ラクトン構造、スルトン構造、及びカーボネート構造よりなる群から選択される少なくとも1種を有する構成単位を有することが好ましい。
【0087】
ラクトン構造又はスルトン構造としては、ラクトン構造又はスルトン構造を有していればいずれでも用いることができるが、好ましくは5〜7員環ラクトン構造又は5〜7員環スルトン構造であり、5〜7員環ラクトン構造にビシクロ構造、スピロ構造を形成する形で他の環構造が縮環しているもの、又は5〜7員環スルトン構造にビシクロ構造、スピロ構造を形成する形で他の環構造が縮環しているものがより好ましい。下記式LC1−1〜LC1−21のいずれかで表されるラクトン構造、又は下記式SL1−1〜SL1−3のいずれかで表されるスルトン構造を有する構成単位を有することが更に好ましい。また、ラクトン構造又はスルトン構造が主鎖に直接結合していてもよい。好ましい構造としてはLC1−1、LC1−4、LC1−5、LC1−8、LC1−16、LC1−21、SL1−1である。
【0089】
ラクトン構造部分又はスルトン構造部分は、置換基(Rb
2)を有していても有していなくてもよい。好ましい置換基(Rb
2)としては、炭素数1〜8のアルキル基、炭素数4〜7のシクロアルキル基、炭素数1〜8のアルコキシ基、炭素数2〜8のアルコキシカルボニル基、カルボキシル基、フッ素原子以外のハロゲン原子、水酸基、シアノ基、及び酸分解性基などが挙げられる。より好ましくは炭素数1〜4のアルキル基、シアノ基、及び酸分解性基である。n2は、0〜4の整数を表す。n2が2以上の時、複数存在する置換基(Rb
2)は、同一でも異なっていてもよい。また、複数存在する置換基(Rb
2)同士が結合して環を形成してもよい。
【0090】
ラクトン構造又はスルトン構造を有する構成単位は、焦点深度の許容度及びパターン直線性の観点から、下記式IIIで表される構成単位であることが好ましい。
また、酸分解性基を有する構成単位を有する樹脂は、焦点深度の許容度及びパターン直線性の観点から、下記式IIIで表される構成単位を含むことが好ましい。
【0092】
上記式III中、
Aは、エステル結合(−COO−で表される基)又はアミド結合(−CONH−で表される基)を表す。
nは、−R
0−Z−で表される構造の繰り返し数であり、0〜5の整数を表し、0又は1であることが好ましく、0であることがより好ましい。nが0である場合、−R
0−Z−は存在せず、AとR
8とが単結合により結合される。
R
0は、アルキレン基、シクロアルキレン基、又はその組み合わせを表す。R
0は、複数個ある場合にはそれぞれ独立に、アルキレン基、シクロアルキレン基、又はその組み合わせを表す。
Zは、単結合、エーテル結合、エステル結合、アミド結合、ウレタン結合又はウレア結合を表す。Zは、複数個ある場合にはそれぞれ独立に、単結合、エーテル結合、エステル結合、アミド結合、ウレタン結合又はウレア結合を表す。
R
8は、ラクトン構造又はスルトン構造を有する1価の有機基を表す。
R
7は、水素原子、フッ素原子以外のハロゲン原子又は1価の有機基(好ましくはメチル基)を表す。
【0093】
R
0のアルキレン基又はシクロアルキレン基は置換基を有してもよい。
Zは好ましくは、エーテル結合、又はエステル結合であり、より好ましくはエステル結合である。
【0094】
以下に式IIIで表される構成単位に相当するモノマーの具体例、及び後述する式A−1で表される構成単位に相当するモノマーの具体例を挙げるが、本開示は、これらの具体例に限定されない。下記の具体例は、式IIIにおけるR
7及び後述する式A−1におけるR
A1がメチル基である場合に相当するが、R
7及びR
A1は、水素原子、フッ素原子以外のハロゲン原子、又は1価の有機基に任意に置換することができる。
【0096】
上記モノマーの他に下記に示すモノマーも樹脂(A)の原料として好適に用いられる。
【0098】
樹脂(A)は、カーボネート構造を有する構成単位を有していてもよい。カーボネート構造は、環状炭酸エステル構造であることが好ましい。
環状炭酸エステル構造を有する構成単位は、下記式A−1で表される構成単位であることが好ましい。
【0100】
式A−1中、R
A1は、水素原子、フッ素原子以外のハロゲン原子又は1価の有機基(好ましくはメチル基)を表し、nは0以上の整数を表し、R
A2は、置換基を表す。R
A2は、nが2以上の場合は各々独立して、置換基を表し、Aは、単結合、又は2価の連結基を表し、Zは、式中の−O−C(=O)−O−で表される基と共に単環構造又は多環構造を形成する原子団を表す。
【0101】
樹脂(A)は、ラクトン構造、スルトン構造、及びカーボネート構造よりなる群から選択される少なくとも1種を有する構成単位として、米国特許出願公開第2016/0070167号明細書の段落0370〜0414に記載の構成単位を有することも好ましい。
【0102】
樹脂(A)は、ラクトン構造、スルトン構造、及びカーボネート構造からなる群から選択される少なくとも1種を有する構成単位を、1種単独で含んでもよく、2種以上を併用して含んでもよい。
【0103】
樹脂(A)に含まれるラクトン構造、スルトン構造、及びカーボネート構造からなる群から選択される少なくとも1種を有する構成単位の含有量(ラクトン構造、スルトン構造、及びカーボネート構造からなる群から選択される少なくとも1種を有する構成単位が複数存在する場合はその合計)は、樹脂(A)の全構成単位に対して、5モル%〜70モル%であることが好ましく、10モル%〜65モル%であることがより好ましく、20モル%〜60モル%であることが更に好ましい
【0104】
〔極性基を有する構成単位〕
樹脂(A)は、極性基を有する構成単位を有することが好ましい。
極性基としては、水酸基、シアノ基、及び、カルボキシ基等が挙げられる。
極性基を有する構成単位は、極性基で置換された脂環炭化水素構造を有する構成単位であることが好ましい。また、極性基を有する構成単位は、酸分解性基を有さないことが好ましい。極性基で置換された脂環炭化水素構造における、脂環炭化水素構造としては、アダマンチル基、又はノルボルニル基が好ましい。
【0105】
以下に極性基を有する構成単位に相当するモノマーの具体例を挙げるが、本開示は、これらの具体例に限定されない。また、下記具体例は、メタクリル酸エステル化合物として記載しているが、アクリル酸エステル化合物であってもよい。
【0107】
この他にも、極性基を有する構成単位の具体例としては、米国特許出願公開第2016/0070167号明細書の段落0415〜0433に開示された構成単位を挙げることができる。樹脂(A)は、極性基を有する構成単位を、1種単独で含んでもよく、2種以上を併用して含んでもよい。
極性基を有する構成単位の含有量は、樹脂(A)中の全構成単位に対して、5モル%〜40モル%が好ましく、5モル%〜30モル%がより好ましく、10モル%〜25モル%が更に好ましい。
【0108】
〔酸分解性基及び極性基のいずれも有さない構成単位〕
樹脂(A)は、更に、酸分解性基及び極性基のいずれも有さない構成単位を有することができる。酸分解性基及び極性基のいずれも有さない構成単位は、脂環炭化水素構造を有することが好ましい。酸分解性基及び極性基のいずれも有さない構成単位としては、例えば、米国特許出願公開第2016/0026083号明細書の段落0236〜0237に記載された構成単位が挙げられる。酸分解性基及び極性基のいずれも有さない構成単位に相当するモノマーの好ましい例を以下に示す。
【0110】
この他にも、酸分解性基及び極性基のいずれも有さない構成単位の具体例としては、米国特許出願公開第2016/0070167号明細書の段落0433に開示された構成単位を挙げることができる。
樹脂(A)は、酸分解性基及び極性基のいずれも有さない構成単位を、1種単独で含んでもよく、2種以上を併用して含んでもよい。
酸分解性基及び極性基のいずれも有さない構成単位の含有量は、樹脂(A)中の全構成単位に対して、5〜40モル%が好ましく、5〜30モル%がより好ましく、5〜25モル%が更に好ましい。
【0111】
樹脂(A)は、上記の構成単位以外に、ドライエッチング耐性や標準現像液適性、基板密着性、レジストプロファイル、更にレジストの一般的な必要な特性である解像力、耐熱性、感度等を調節する目的で様々な構成単位を有することができる。このような構成単位としては、その他の単量体に相当する構成単位を挙げることができるが、これらに限定されない。
【0112】
その他の単量体としては、例えばアクリル酸エステル類、メタクリル酸エステル類、アクリルアミド類、メタクリルアミド類、アリル化合物、ビニルエーテル類、及びビニルエステル類等から選ばれる付加重合性不飽和結合を1個有する化合物等を挙げることができる。
その他にも、上記種々の構成単位に相当する単量体と共重合可能である付加重合性の不飽和化合物であれば、共重合されていてもよい。
樹脂(A)において、各構成単位の含有モル比は、種々の性能を調節するために適宜設定される。
【0113】
本開示に係る感光性樹脂組成物が、フッ素アルゴン(ArF)レーザー露光用であるとき、ArF光の透過性の観点から、樹脂(A)は実質的には芳香族基を有さないことが好ましい。より具体的には、樹脂(A)の全構成単位中、芳香族基を有する構成単位が全体の5モル%以下であることが好ましく、3モル%以下であることがより好ましく、理想的には0モル%、すなわち芳香族基を有する構成単位を有さないことが更に好ましい。また、樹脂(A)は単環又は多環の脂環炭化水素構造を有することが好ましい。
【0114】
樹脂(A)は、構成単位のすべてが(メタ)アクリレート系構成単位で構成されることが好ましい。この場合、構成単位のすべてがメタクリレート系構成単位であるもの、構成単位のすべてがアクリレート系構成単位であるもの、構成単位のすべてがメタクリレート系構成単位とアクリレート系構成単位とによるもののいずれのものでも用いることができるが、アクリレート系構成単位が樹脂(A)の全構成単位に対して50モル%以下であることが好ましい。
【0115】
樹脂(A)の重量平均分子量は、1,000〜200,000が好ましく、2,000〜20,000がより好ましく、3,000〜15,000が更に好ましく、3,000〜11,000が特に好ましい。
分散度(Mw/Mn)は、1.0〜3.0であることが好ましく、1.0〜2.6がより好ましく、1.0〜2.0が更に好ましく、1.1〜2.0が特に好ましい。
【0116】
樹脂(A)の具体例としては、実施例で使用されている樹脂A−1〜A−15が挙げられるが、これに限定されない。
【0117】
樹脂(A)は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
酸分解性基を有する構成単位を有する樹脂の含有量は、本開示に係る感光性樹脂組成物の全固形分に対し、20質量%以上が好ましく、40質量%以上がより好ましく、60質量%以上が更に好ましく、80質量%以上が特に好ましい。上限は特に制限されず、99.5質量%以下が好ましく、99質量%以下がより好ましく、97質量%以下が更に好ましい。
【0118】
<光酸発生剤>
本開示に係る組成物は、光酸発生剤(以下、「光酸発生剤(C)」ともいう)を含む。
光酸発生剤は、活性光線又は放射線の照射により酸を発生する化合物である。
光酸発生剤としては、活性光線又は放射線の照射により有機酸を発生する化合物が好ましい。例えば、スルホニウム塩化合物、ヨードニウム塩化合物、ジアゾニウム塩化合物、ホスホニウム塩化合物、イミドスルホネート化合物、オキシムスルホネート化合物、ジアゾジスルホン化合物、ジスルホン化合物、及びo−ニトロベンジルスルホネート化合物を挙げることができる。
【0119】
光酸発生剤としては、活性光線又は放射線の照射により酸を発生する公知の化合物を、単独又はそれらの混合物として適宜選択して使用することができる。例えば、米国特許出願公開第2016/0070167号明細書の段落0125〜0319、米国特許出願公開第2015/0004544号明細書の段落0086〜0094、米国特許出願公開第2016/0237190号明細書の段落0323〜0402に開示された公知の化合物を光酸発生剤(C)として好適に使用できる。
【0120】
〔式ZI、ZII及びZIIIで表される化合物〕
光酸発生剤(C)の好適な態様としては、例えば、下記式ZI、ZII及びZIIIで表される化合物が挙げられる。
【0122】
上記式ZIにおいて、
R
201、R
202及びR
203はそれぞれ独立に、有機基を表す。
R
201、R
202及びR
203としての有機基の炭素数は、好ましくは1〜30であり、より好ましくは1〜20である。
また、R
201〜R
203のうち2つが結合して環構造を形成してもよく、環内に酸素原子、硫黄原子、エステル結合、アミド結合、又はカルボニル基を含んでいてもよい。R
201〜R
203のうちの2つが結合して形成する基としては、アルキレン基(例えば、ブチレン基、ペンチレン基)及び−CH
2−CH
2−O−CH
2−CH
2−を挙げることができる。
Z
-は、アニオンを表す。
【0123】
〔式ZIで表される化合物におけるカチオン〕
式ZIにおけるカチオンの好適な態様としては、後述する化合物(ZI−1)、(ZI−2)、(ZI−3)及び(ZI−4)における対応する基を挙げることができる。
なお、光酸発生剤(C)は、式ZIで表される構造を複数有する化合物であってもよい。例えば、式ZIで表される化合物のR
201〜R
203の少なくとも1つと、式ZIで表されるもうひとつの化合物のR
201〜R
203の少なくとも一つとが、単結合又は連結基を介して結合した構造を有する化合物であってもよい。
【0124】
−化合物ZI−1−
まず、化合物(ZI−1)について説明する。
化合物(ZI−1)は、上記式ZIのR
201〜R
203の少なくとも1つがアリール基である、アリールスルホニウム化合物、すなわち、アリールスルホニウムをカチオンとする化合物である。
アリールスルホニウム化合物は、R
201〜R
203の全てがアリール基でもよいし、R
201〜R
203の一部がアリール基であり、残りがアルキル基又はシクロアルキル基であってもよい。
アリールスルホニウム化合物としては、例えば、トリアリールスルホニウム化合物、ジアリールアルキルスルホニウム化合物、アリールジアルキルスルホニウム化合物、ジアリールシクロアルキルスルホニウム化合物、及びアリールジシクロアルキルスルホニウム化合物を挙げることができる。
【0125】
アリールスルホニウム化合物のアリール基としてはフェニル基、又はナフチル基が好ましく、フェニル基がより好ましい。アリール基は、酸素原子、窒素原子、又は硫黄原子等を有する複素環構造を有するアリール基であってもよい。複素環構造としては、ピロール残基、フラン残基、チオフェン残基、インドール残基、ベンゾフラン残基、及びベンゾチオフェン残基等が挙げられる。アリールスルホニウム化合物が2つ以上のアリール基を有する場合に、2つ以上あるアリール基は同一であっても異なっていてもよい。
アリールスルホニウム化合物が必要に応じて有しているアルキル基又はシクロアルキル基は、炭素数1〜15の直鎖アルキル基、炭素数3〜15の分岐アルキル基、又は炭素数3〜15のシクロアルキル基が好ましく、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、シクロプロピル基、シクロブチル基、及びシクロヘキシル基等を挙げることができる。
【0126】
R
201〜R
203のアリール基、アルキル基、及びシクロアルキル基はそれぞれ独立に、アルキル基(例えば炭素数1〜15)、シクロアルキル基(例えば炭素数3〜15)、アリール基(例えば炭素数6〜14)、アルコキシ基(例えば炭素数1〜15)、ハロゲン原子、水酸基、又はフェニルチオ基を置換基として有してもよい。
【0127】
−化合物ZI−2−
次に、化合物(ZI−2)について説明する。
化合物(ZI−2)は、式ZIにおけるR
201〜R
203がそれぞれ独立に、芳香環を有さない有機基である化合物である。ここで芳香環とは、ヘテロ原子を含有する芳香族環も包含する。
R
201〜R
203としての芳香環を有さない有機基は、好ましくは炭素数1〜30であり、より好ましくは炭素数1〜20である。
R
201〜R
203はそれぞれ独立に、好ましくはアルキル基、シクロアルキル基、アリル基、又はビニル基であり、より好ましくは直鎖又は分岐の2−オキソアルキル基、2−オキソシクロアルキル基、又はアルコキシカルボニルメチル基、更に好ましくは直鎖又は分岐2−オキソアルキル基である。
【0128】
R
201〜R
203のアルキル基及びシクロアルキル基としては、好ましくは、炭素数1〜10の直鎖アルキル基又は炭素数3〜10の分岐アルキル基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、及びペンチル基)、ならびに炭素数3〜10のシクロアルキル基(例えばシクロペンチル基、シクロヘキシル基、及びノルボルニル基)を挙げることができる。
R
201〜R
203は、ハロゲン原子、アルコキシ基(例えば炭素数1〜5)、水酸基、シアノ基、又はニトロ基によって更に置換されていてもよい。
【0129】
−化合物ZI−3−
次に、化合物(ZI−3)について説明する。
化合物(ZI−3)は、下記式ZI−3で表され、フェナシルスルホニウム塩構造を有する化合物である。
【0131】
式ZI−3中、R
1c〜R
5cはそれぞれ独立に、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルコキシカルボニル基、アルキルカルボニルオキシ基、シクロアルキルカルボニルオキシ基、ハロゲン原子、水酸基、ニトロ基、アルキルチオ基又はアリールチオ基を表し、R
6c及びR
7cはそれぞれ独立に、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、ハロゲン原子、シアノ基又はアリール基を表し、R
x及びR
yはそれぞれ独立に、アルキル基、シクロアルキル基、2−オキソアルキル基、2−オキソシクロアルキル基、アルコキシカルボニルアルキル基、アリル基又はビニル基を表す。
【0132】
R
1c〜R
5c中のいずれか2つ以上、R
5cとR
6c、R
6cとR
7c、R
5cとR
x、及びR
xとR
yは、それぞれ結合して環構造を形成してもよく、この環構造はそれぞれ独立に、酸素原子、硫黄原子、ケトン基、エステル結合、又はアミド結合を含んでいてもよい。
上記環構造としては、芳香族若しくは非芳香族の炭化水素環、芳香族若しくは非芳香族の複素環、及びこれらの環が2つ以上組み合わされてなる多環縮合環を挙げることができる。環構造としては、3員環〜10員環を挙げることができ、4員環〜8員環が好ましく、5員環又は6員環がより好ましい。
【0133】
R
1c〜R
5c中のいずれか2つ以上、R
6cとR
7c、及びR
xとR
yが結合して形成する基としては、ブチレン基、及びペンチレン基等を挙げることができる。
R
5cとR
6c、及びR
5cとR
xが結合して形成する基としては、単結合又はアルキレン基であることが好ましい。アルキレン基としては、メチレン基、及びエチレン基等を挙げることができる。
Zc
−は、アニオンを表す。
【0134】
−化合物ZI−4−
次に、化合物(ZI−4)について説明する。
化合物(ZI−4)は、下記式ZI−4で表される。
【0136】
式ZI−4中、lは0〜2の整数を表し、rは0〜8の整数を表し、R
13は水素原子、フッ素原子、水酸基、アルキル基、シクロアルキル基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、又はシクロアルキル基を有する基を表し、これらの基は置換基を有してもよく、R
14はそれぞれ独立に、水酸基、アルキル基、シクロアルキル基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、アルキルカルボニル基、アルキルスルホニル基、シクロアルキルスルホニル基、又はシクロアルキル基を有する基を表し、これらの基は置換基を有してもよく、R
15はそれぞれ独立に、アルキル基、シクロアルキル基又はナフチル基を表し、これらの基は置換基を有してもよく、2つのR
15が互いに結合して環を形成してもよい。
2つのR
15が互いに結合して環を形成するとき、環骨格内に、酸素原子、又は窒素原子などのヘテロ原子を含んでもよい。一態様において、2つのR
15がアルキレン基であり、互いに結合して環構造を形成することが好ましい。
Z
−は、アニオンを表す。
【0137】
式ZI−4において、R
13、R
14及びR
15のアルキル基は、直鎖状若しくは分岐状であり、炭素原子数1〜10のものが好ましく、メチル基、エチル基、n−ブチル基、又はt−ブチル基等がより好ましい。
【0138】
〔式ZII又は式ZIIIで表される化合物におけるカチオン〕
次に、式ZII、及びZIIIについて説明する。
式ZII、及びZIII中、R
204〜R
207は、各々独立に、アリール基、アルキル基又はシクロアルキル基を表す。
R
204〜R
207のアリール基としてはフェニル基、又はナフチル基が好ましく、フェニル基がより好ましい。R
204〜R
207のアリール基は、酸素原子、窒素原子、又は硫黄原子等を有する複素環構造を有するアリール基であってもよい。複素環構造を有するアリール基の骨格としては、例えば、ピロール、フラン、チオフェン、インドール、ベンゾフラン、及びベンゾチオフェン等を挙げることができる。
R
204〜R
207のアルキル基及びシクロアルキル基としては、好ましくは、炭素数1〜10の直鎖アルキル基又は炭素数3〜10の分岐アルキル基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、及びペンチル基)、炭素数3〜10のシクロアルキル基(例えばシクロペンチル基、シクロヘキシル基、及びノルボルニル基)を挙げることができる。
【0139】
R
204〜R
207のアリール基、アルキル基、及びシクロアルキル基は、各々独立に置換基を有していてもよい。R
204〜R
207のアリール基、アルキル基、及びシクロアルキル基が有していてもよい置換基としては、例えば、アルキル基(例えば炭素数1〜15)、シクロアルキル基(例えば炭素数3〜15)、アリール基(例えば炭素数6〜15)、アルコキシ基(例えば炭素数1〜15)、ハロゲン原子、水酸基、及びフェニルチオ基等を挙げることができる。
Z
−は、アニオンを表す。
【0140】
〔式ZI〜式ZIIIで表される化合物におけるアニオン〕
式ZIにおけるZ
-、式ZIIにおけるZ
-、式ZI−3におけるZc
−、及び式ZI−4におけるZ
-としては、下記式An−1で表されるアニオンが好ましい。
【0142】
式An−1中、pfは0〜10の整数を表し、qfは0〜10の整数を表し、rfは1〜3の整数を表し、Xfはそれぞれ独立に、フッ素原子、又は、少なくとも一つのフッ素原子で置換されたアルキル基を表し、rfが2以上の整数である場合、複数の−C(Xf)
2−は、それぞれ同一でも異なっていてもよく、R
4f及びR
5fはそれぞれ独立に、水素原子、フッ素原子、アルキル基、又は、少なくとも一つのフッ素原子で置換されたアルキル基を表し、pfが2以上の整数である場合、複数の−CR
4fR
5f−は、それぞれ同一でも異なっていてもよく、L
fは、2価の連結基を表し、qfが2以上の整数である場合、複数のL
fは、それぞれ同一でも異なっていてもよく、Wは、環状構造を含む有機基を表す。
【0143】
Xfは、フッ素原子、又は少なくとも1つのフッ素原子で置換されたアルキル基を表す。このアルキル基の炭素数は、1〜10が好ましく、1〜4がより好ましい。また、少なくとも1つのフッ素原子で置換されたアルキル基は、パーフルオロアルキル基が好ましい。
Xfは、好ましくは、フッ素原子又は炭素数1〜4のパーフルオロアルキル基である。Xfは、フッ素原子又はCF
3であることがより好ましい。特に、双方のXfがフッ素原子であることが好ましい。
【0144】
R
4f及びR
5fはそれぞれ独立に、水素原子、フッ素原子、アルキル基、又は少なくとも一つのフッ素原子で置換されたアルキル基を表す。複数存在する場合のR
4f及びR
5fは、それぞれ同一でも異なっていてもよい。
R
4f及びR
5fとしてのアルキル基は、置換基を有していてもよく、炭素数1〜4が好ましい。R
4f及びR
5fは、好ましくは水素原子である。
少なくとも一つのフッ素原子で置換されたアルキル基の具体例及び好適な態様は、式An−1中のXfの具体例及び好適な態様と同じである。
【0145】
L
fは、2価の連結基を表し、複数存在する場合のL
fは、それぞれ同一でも異なっていてもよい。
2価の連結基としては、例えば、−COO−(−C(=O)−O−)、−OCO−、−CONH−、−NHCO−、−CO−、−O−、−S−、−SO−、−SO
2−、アルキレン基(好ましくは炭素数1〜6)、シクロアルキレン基(好ましくは炭素数3〜15)、アルケニレン基(好ましくは炭素数2〜6)及びこれらの複数を組み合わせた2価の連結基などが挙げられる。これらの中でも、−COO−、−OCO−、−CONH−、−NHCO−、−CO−、−O−、−SO
2−、−COO−アルキレン基−、−OCO−アルキレン基−、−CONH−アルキレン基−又は−NHCO−アルキレン基−が好ましく、−COO−、−OCO−、−CONH−、−SO
2−、−COO−アルキレン基−又は−OCO−アルキレン基−がより好ましい。
【0146】
Wは、環状構造を含む有機基を表す。これらの中でも、環状の有機基であることが好ましい。
環状の有機基としては、例えば、脂環基、アリール基、及び複素環基が挙げられる。
脂環基は、単環式であってもよく、多環式であってもよい。単環式の脂環基としては、例えば、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、及びシクロオクチル基などの単環のシクロアルキル基が挙げられる。多環式の脂環基としては、例えば、ノルボルニル基、トリシクロデカニル基、テトラシクロデカニル基、テトラシクロドデカニル基、及びアダマンチル基などの多環のシクロアルキル基が挙げられる。中でも、ノルボルニル基、トリシクロデカニル基、テトラシクロデカニル基、テトラシクロドデカニル基、及びアダマンチル基などの炭素数7以上のかさ高い構造を有する脂環基が好ましい。
【0147】
アリール基は、単環式であってもよく、多環式であってもよい。このアリール基としては、例えば、フェニル基、ナフチル基、フェナントリル基及びアントリル基が挙げられる。
複素環基は、単環式であってもよく、多環式であってもよい。多環式の方がより酸の拡散を抑制可能である。また、複素環基は、芳香族性を有していてもよいし、芳香族性を有していなくてもよい。芳香族性を有している複素環としては、例えば、フラン環、チオフェン環、ベンゾフラン環、ベンゾチオフェン環、ジベンゾフラン環、ジベンゾチオフェン環、及びピリジン環が挙げられる。芳香族性を有していない複素環としては、例えば、テトラヒドロピラン環、ラクトン環、スルトン環及びデカヒドロイソキノリン環が挙げられる。ラクトン環及びスルトン環の例としては、上述の樹脂において例示したラクトン構造及びスルトン構造が挙げられる。複素環基における複素環としては、フラン環、チオフェン環、ピリジン環、又はデカヒドロイソキノリン環が特に好ましい。
【0148】
上記環状の有機基は、置換基を有していてもよい。この置換基としては、例えば、アルキル基(直鎖、分岐のいずれであってもよく、炭素数1〜12が好ましい)、シクロアルキル基(単環、多環、スピロ環のいずれであってもよく、炭素数3〜20が好ましい)、アリール基(炭素数6〜14が好ましい)、水酸基、アルコキシ基、エステル基、アミド基、ウレタン基、ウレイド基、チオエーテル基、スルホンアミド基、及びスルホン酸エステル基が挙げられる。なお、環状の有機基を構成する炭素(環形成に寄与する炭素)はカルボニル炭素であってもよい。
【0149】
式An−1で表されるアニオンとしては、SO
3−−CF
2−CH
2−OCO−(L
f)q’−W、SO
3−−CF
2−CHF−CH
2−OCO−(L
f)q’−W、SO
3−−CF
2−COO−(L
f)q’−W、SO
3−−CF
2−CF
2−CH
2−CH
2−(L
f)
qf−W、SO
3−−CF
2−CH(CF
3)−OCO−(L
f)q’−Wが好ましいものとして挙げられる。ここで、L
f、qf及びWは、式An−1と同様である。q’は、0〜10の整数を表す。
【0150】
一態様において、式ZIにおけるZ
-、式ZIIにおけるZ
-、式ZI−3におけるZc
−、及び式ZI−4におけるZ
-としては、下記の式4で表されるアニオンも好ましい。
【0152】
式4中、X
B1及びX
B2はそれぞれ独立に、水素原子、又はフッ素原子を有さない1価の有機基を表す。X
B1及びX
B2は、水素原子であることが好ましい。
X
B3及びX
B4はそれぞれ独立に、水素原子、又は1価の有機基を表す。X
B3及びX
B4の少なくとも一方がフッ素原子又はフッ素原子を有する1価の有機基であることが好ましく、X
B3及びX
B4の両方がフッ素原子又はフッ素原子を有する1価の有機基であることがより好ましい。X
B3及びX
B4の両方が、フッ素で置換されたアルキル基であることが更に好ましい。
L
f、qf及びWは、式3と同様である。
【0153】
式ZIにおけるZ
−、式ZIIにおけるZ
−、式ZI−3におけるZc
−、及び式ZI−4におけるZ
−としては、下記式5で表されるアニオンが好ましい。
【0155】
式5において、Xaはそれぞれ独立に、フッ素原子、又は、少なくとも一つのフッ素原子で置換されたアルキル基を表し、Xbはそれぞれ独立に、水素原子又はフッ素原子を有さない有機基を表す。rf、pf、qf、R
4f、R
5f、L
f及びWの定義及び好ましい態様は、式3と同様である。
【0156】
式ZIにおけるZ
−、式ZIIにおけるZ
−、式ZI−3におけるZc
−、及び式ZI−4におけるZ
−は、ベンゼンスルホン酸アニオンであってもよく、分岐アルキル基又はシクロアルキル基によって置換されたベンゼンスルホン酸アニオンであることが好ましい。
【0157】
式ZIにおけるZ
−、式ZIIにおけるZ
−、式ZI−3におけるZc
−、及び式ZI−4におけるZ
−としては、下記の式SA1で表される芳香族スルホン酸アニオンも好ましい。
【0159】
式SA1中、Arは、アリール基を表し、スルホン酸アニオン及び−(D−R
B)以外の置換基を更に有していてもよい。更に有しても良い置換基としては、フッ素原子、水酸基などが挙げられる。
【0160】
nは、0以上の整数を表す。nは、好ましくは1〜4であり、より好ましくは2〜3であり、特に好ましくは3である。
【0161】
Dは、単結合又は2価の連結基を表す。この2価の連結基としては、エーテル基、チオエーテル基、カルボニル基、スルホキシド基、スルホン基、スルホン酸エステル基、エステル基、及び、これらの2種以上の組み合わせからなる基等を挙げることができる。
【0163】
好ましくは、Dは単結合であり、R
Bは脂肪族炭化水素構造である。R
Bは、イソプロピル基又はシクロヘキシル基がより好ましい。
【0164】
式ZIにおけるスルホニウムカチオン、及び式ZIIにおけるスルホニウムカチオン又はヨードニウムカチオンの好ましい例を以下に示す。
【0166】
式ZI、式ZIIにおけるアニオンZ
-、式ZI−3におけるZc
−、及び式ZI−4におけるZ
-の好ましい例を以下に示す。
【0168】
上記のカチオン及びアニオンを任意に組みわせて光酸発生剤として使用することができる。
中でも、上記光酸発生剤が、カチオン及びアニオンを含むイオン性化合物であり、上記アニオンが上記式An−1、下記式An−2及び下記式An−3のいずれかで表わされるイオンを含むことが好ましい。
【0170】
式An−2及び式An−3中、Rfaはそれぞれ独立に、フッ素原子を有する一価の有機基を表し、複数のRfaは互いに結合して環を形成してもよい。
【0171】
Rfaは、少なくとも1つのフッ素原子で置換されたアルキル基であることが好ましい。このアルキル基の炭素数は、1〜10が好ましく、1〜4がより好ましい。また、少なくとも1つのフッ素原子で置換されたアルキル基は、パーフルオロアルキル基であることが好ましい。
また、複数のRfaは互いに結合して環を形成していることが好ましい。
【0172】
光酸発生剤は、低分子化合物の形態であってもよく、重合体の一部に組み込まれた形態であってもよい。また、低分子化合物の形態と重合体の一部に組み込まれた形態を併用してもよい。
光酸発生剤は、低分子化合物の形態であることが好ましい。
光酸発生剤が、低分子化合物の形態である場合、分子量は3,000以下が好ましく、2,000以下がより好ましく、1,000以下が更に好ましい。
光酸発生剤が、重合体の一部に組み込まれた形態である場合、上述した樹脂(A)の一部に組み込まれてもよく、樹脂(A)とは異なる樹脂に組み込まれてもよい。
光酸発生剤は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
光酸発生剤の組成物中の含有量(複数種存在する場合はその合計)は、組成物の全固形分を基準として、0.1質量%〜35質量%が好ましく、0.5質量%〜25質量%がより好ましく、3質量%〜20質量%が更に好ましく、3質量%〜15質量%が特に好ましい。
光酸発生剤として、上記式ZI−3又は式ZI−4で表される化合物を含む場合、組成物中に含まれる光酸発生剤の含有量(複数種存在する場合はその合計)は、組成物の全固形分を基準として、5質量%〜35質量%が好ましく、7質量%〜30質量%がより好ましい。
【0173】
<溶剤>
本開示に係る感光性樹脂組成物は、溶剤を含む。
本開示に係る感光性樹脂組成物においては、公知のレジスト溶剤を適宜使用することができる。例えば、米国特許出願公開第2016/0070167号明細書の段落0665〜0670、米国特許出願公開第2015/0004544号明細書の段落0210〜0235、米国特許出願公開第2016/0237190号明細書の段落0424〜0426、米国特許出願公開第2016/0274458号明細書の段落0357〜0366に開示された公知の溶剤を好適に使用できる。
組成物を調製する際に使用できる溶剤としては、例えば、アルキレングリコールモノアルキルエーテルカルボキシレート、アルキレングリコールモノアルキルエーテル、乳酸アルキルエステル、アルコキシプロピオン酸アルキル、環状ラクトン(好ましくは炭素数4〜10)、環を有してもよいモノケトン化合物(好ましくは炭素数4〜10)、アルキレンカーボネート、アルコキシ酢酸アルキル、及びピルビン酸アルキル等の有機溶剤が挙げられる。
【0174】
有機溶剤として、構造中に水酸基を含有する溶剤と、水酸基を含有しない溶剤とを混合した混合溶剤を使用してもよい。
水酸基を含有する溶剤、及び水酸基を含有しない溶剤としては、上述の例示化合物を適宜選択できるが、水酸基を含有する溶剤としては、アルキレングリコールモノアルキルエーテル、又は乳酸アルキル等が好ましく、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)、プロピレングリコールモノエチルエーテル(PGEE)、2−ヒドロキシイソ酪酸メチル、又は乳酸エチルがより好ましい。また、水酸基を含有しない溶剤としては、アルキレングリコールモノアルキルエーテルアセテート、アルキルアルコキシプロピオネート、環を含有してもよいモノケトン化合物、環状ラクトン、又は酢酸アルキル等が好ましく、これらの中でも、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)、エチルエトキシプロピオネート、2−ヘプタノン、γ−ブチロラクトン、シクロヘキサノン、シクロペンタノン又は酢酸ブチルがより好ましく、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、γ−ブチロラクトン、エチルエトキシプロピオネート、シクロヘキサノン、シクロペンタノン又は2−ヘプタノンが更に好ましい。水酸基を含有しない溶剤としては、プロピレンカーボネートも好ましい。これらの中でも、形成する層の均一性の観点から、溶剤はγ−ブチロラクトンを含むことが特に好ましい。
水酸基を含有する溶剤と水酸基を含有しない溶剤との混合比(質量比)は、1/99〜99/1であり、10/90〜90/10が好ましく、20/80〜60/40がより好ましい。水酸基を含有しない溶剤を50質量%以上含有する混合溶剤が、塗布均一性の点で好ましい。
溶剤は、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートを含むことが好ましく、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート単独溶剤でもよいし、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートを含有する2種類以上の混合溶剤であってもよい。
【0175】
本開示に係る感光性樹脂組成物の固形分濃度は、特に制限はなく、1.0質量%〜10質量%であることが好ましく、2.0質量%〜5.7質量%であることがより好ましく、2.0質量%〜5.3質量%が更に好ましい。
【0176】
<疎水性樹脂>
本開示に係る感光性樹脂組成物は、疎水性樹脂(「疎水性樹脂(E)」ともいう。)を含有することが好ましい。なお、疎水性樹脂(E)は、樹脂(A)及び樹脂(B)とは異なる樹脂であることが好ましい。
本開示に係る感光性樹脂組成物が、疎水性樹脂(E)を含有することにより、感活性光線性又は感放射線性膜の表面における静的/動的な接触角を制御することができる。これにより、現像特性の改善、アウトガスの抑制、液浸露光における液浸液追随性の向上、及び液浸欠陥の低減等が可能となる。
疎水性樹脂(E)は、レジスト膜の表面に偏在するように設計されることが好ましいが、界面活性剤とは異なり、必ずしも分子内に親水基を有する必要はなく、極性/非極性物質を均一に混合することに寄与しなくてもよい。
また、本開示において、フッ素原子を有する樹脂は、疎水性樹脂及び後述する含フッ素樹脂として扱うものとする。また、上記酸分解性基を有する構成単位を有する樹脂は、フッ素原子を有していないことが好ましい。
【0177】
疎水性樹脂(E)は、膜表層への偏在化の観点から、“フッ素原子”、“ケイ素原子”、及び“樹脂の側鎖部分に含有されたCH
3部分構造”からなる群から選択される少なくとも1種を有する構成単位を含む樹脂であることが好ましい。
疎水性樹脂(E)が、フッ素原子又はケイ素原子を含む場合、疎水性樹脂(E)における上記フッ素原子又はケイ素原子は、樹脂の主鎖中に含まれていてもよく、側鎖中に含まれていてもよい。
【0178】
疎水性樹脂(E)は、下記(x)〜(z)の群から選ばれる基を少なくとも1つを有することが好ましい。
(x)酸基
(y)アルカリ現像液の作用により分解してアルカリ現像液に対する溶解度が増大する基(以下、極性変換基ともいう。)
(z)酸の作用により分解する基
【0179】
酸基(x)としては、フェノール性水酸基、カルボン酸基、フッ素化アルコール基、スルホン酸基、スルホンアミド基、スルホニルイミド基、(アルキルスルホニル)(アルキルカルボニル)メチレン基、(アルキルスルホニル)(アルキルカルボニル)イミド基、ビス(アルキルカルボニル)メチレン基、ビス(アルキルカルボニル)イミド基、ビス(アルキルスルホニル)メチレン基、ビス(アルキルスルホニル)イミド基、トリス(アルキルカルボニル)メチレン基、及びトリス(アルキルスルホニル)メチレン基等が挙げられる。
酸基としては、フッ素化アルコール基(好ましくはヘキサフルオロイソプロパノール)、スルホンイミド基、又はビス(アルキルカルボニル)メチレン基が好ましい。
【0180】
アルカリ現像液の作用により分解してアルカリ現像液に対する溶解度が増大する基(y)としては、例えば、ラクトン基、カルボン酸エステル基(−COO−)、酸無水物基(−C(O)OC(O)−)、酸イミド基(−NHCONH−)、カルボン酸チオエステル基(−COS−)、炭酸エステル基(−OC(O)O−)、硫酸エステル基(−OSO
2O−)、及びスルホン酸エステル基(−SO
2O−)などが挙げられ、ラクトン基又はカルボン酸エステル基(−COO−)が好ましい。
これらの基を含んだ構成単位は、樹脂の主鎖にこれらの基が直接結合している構成単位であり、例えば、アクリル酸エステル及びメタクリル酸エステルによる構成単位等が挙げられる。この構成単位は、これらの基が連結基を介して樹脂の主鎖に結合していてもよい。あるいは、この構成単位は、これらの基を有する重合開始剤又は連鎖移動剤を重合時に用いて、樹脂の末端に導入されていてもよい。
ラクトン基を有する構成単位としては、例えば、先に樹脂(A)の項で説明したラクトン構造を有する構成単位と同様のものが挙げられる。
【0181】
アルカリ現像液の作用により分解してアルカリ現像液に対する溶解度が増大する基(y)を有する構成単位の含有量は、疎水性樹脂(E)中の全構成単位を基準として、1〜100モル%が好ましく、3〜98モル%がより好ましく、5〜95モル%が更に好ましい。
【0182】
疎水性樹脂(E)における、酸の作用により分解する基(z)を有する構成単位は、樹脂(A)で挙げた酸分解性基を有する構成単位と同様のものが挙げられる。酸の作用により分解する基(z)を有する構成単位は、フッ素原子及びケイ素原子の少なくともいずれかを有していてもよい。酸の作用により分解する基(z)を有する構成単位の含有量は、樹脂(E)中の全構成単位に対して、1モル%〜80モル%が好ましく、10モル%〜80モル%がより好ましく、20モル%〜60モル%が更に好ましい。
【0183】
疎水性樹脂(E)は、更に、上述した構成単位とは別の構成単位を有していてもよい。
【0184】
フッ素原子を含む構成単位は、疎水性樹脂(E)に含まれる全構成単位に対して、10モル%〜100モル%が好ましく、30モル%〜100モル%がより好ましい。また、ケイ素原子を含む構成単位は、疎水性樹脂(E)に含まれる全構成単位に対して、10モル%〜100モル%が好ましく、20モル%〜100モル%がより好ましい。
【0185】
一方、特に疎水性樹脂(E)が側鎖部分にCH
3部分構造を含む場合においては、疎水性樹脂(E)が、フッ素原子及びケイ素原子を実質的に含有しない形態も好ましい。また、疎水性樹脂(E)は、炭素原子、酸素原子、水素原子、窒素原子及び硫黄原子から選ばれる原子のみによって構成された構成単位のみで実質的に構成されることが好ましい。
【0186】
疎水性樹脂(E)の標準ポリスチレン換算の重量平均分子量は、1,000〜100,000が好ましく、1,000〜50,000がより好ましい。
【0187】
疎水性樹脂(E)に含まれる残存モノマー及びオリゴマー成分の合計含有量は、0.01質量%〜5質量%が好ましく、0.01質量%〜3質量%がより好ましい。また、分散度(Mw/Mn)は、1〜5の範囲が好ましく、より好ましくは1〜3の範囲である。
【0188】
疎水性樹脂(E)としては、公知の樹脂を、単独又はそれらの混合物として適宜に選択して使用することができる。例えば、米国特許出願公開第2015/0168830号明細書の段落0451〜0704、米国特許出願公開第2016/0274458号明細書の段落0340〜0356に開示された公知の樹脂を疎水性樹脂(E)として好適に使用できる。また、米国特許出願公開第2016/0237190号明細書の段落0177〜0258に開示された構成単位も、疎水性樹脂(E)を構成する構成単位として好ましい。
【0189】
〔含フッ素樹脂〕
疎水性樹脂(E)は、フッ素原子を含む樹脂(「含フッ素樹脂」ともいう。)であることが好ましい。
疎水性樹脂(E)がフッ素原子を含む場合、フッ素原子を有する部分構造として、フッ素原子を有するアルキル基、フッ素原子を有するシクロアルキル基、又はフッ素原子を有するアリール基を有する樹脂であることが好ましい。
【0190】
フッ素原子を有するアルキル基は、少なくとも1つの水素原子がフッ素原子で置換された直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基であり、炭素数1〜10が好ましく、炭素数1〜4がより好ましい。
フッ素原子を有するシクロアルキル基は、少なくとも1つの水素原子がフッ素原子で置換された単環又は多環のシクロアルキル基である。
フッ素原子を有するアリール基としては、フェニル基、及び、ナフチル基等のアリール基の少なくとも1つの水素原子がフッ素原子で置換されたものが挙げられる。
【0191】
フッ素原子を有するアルキル基、フッ素原子を有するシクロアルキル基、及びフッ素原子を有するアリール基として、式F2〜F4で表される基が好ましい。
【0193】
式F2〜F4中、
R
57〜R
68は、それぞれ独立に、水素原子、フッ素原子又はアルキル基(直鎖状若しくは分岐鎖状)を表す。但し、R
57〜R
61の少なくとも1つ、R
62〜R
64の少なくとも1つ、及びR
65〜R
68の少なくとも1つは、それぞれ独立に、フッ素原子又は少なくとも1つの水素原子がフッ素原子で置換されたアルキル基を表す。
R
57〜R
61及びR
65〜R
67は、全てがフッ素原子であることが好ましい。R
62、R
63及びR
68は、少なくとも1つの水素原子がフッ素原子で置換されたアルキル基(好ましくは炭素数1〜4)であることが好ましく、炭素数1〜4のパーフルオロアルキル基であることがより好ましい。R
62とR
63は、互いに連結して環を形成してもよい。
【0194】
中でも、本開示に係る効果がより優れる点で、含フッ素樹脂は、アルカリ分解性を有することが好ましい。
含フッ素樹脂がアルカリ分解性を有するとは、pH10の緩衝液2mLとTHF8mLとの混合液に含フッ素樹脂100mgを添加して、40℃にて静置し、10分後に含フッ素樹脂中の分解性基の総量の30mol%以上が加水分解することをいう。なお、分解率は、NMR分析による原料と分解物の比から算出できる。
【0195】
含フッ素樹脂は、焦点深度の許容度、パターン直線性、現像特性の改善、アウトガスの抑制、液浸露光における液浸液追随性の向上及び液浸欠陥の低減の観点から、式Xで表される構成単位を有することが好ましい。
また、本開示に係る感光性樹脂組成物は、焦点深度の許容度、パターン直線性、現像特性の改善、アウトガスの抑制、液浸露光における液浸液追随性の向上及び液浸欠陥の低減の観点から、式Xで表される構成単位を有する含フッ素樹脂を更に含むことが好ましい。
【0197】
式X中、Zは、ハロゲン原子、R
11OCH
2−で表される基、又は、R
12OC(=O)CH
2−で表される基を表し、R
11及びR
12はそれぞれ独立に、置換基を表し、Xは、酸素原子、又は、硫黄原子を表す。Lは、(n+1)価の連結基を表し、R
10は、アルカリ水溶液の作用により分解してアルカリ水溶液中での含フッ素樹脂の溶解度が増大する基を有する基を表し、nは正の整数を表し、nが2以上である場合、複数のR
10は、互いに同一であっても、異なっていてもよい。
【0198】
Zのハロゲン原子としては、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、及び、ヨウ素原子が挙げられ、フッ素原子が好ましい。
R
11及びR
12としての置換基は、例えば、アルキル基(好ましくは炭素数1〜4)、シクロアルキル基(好ましくは炭素数6〜10)、及び、アリール基(好ましくは炭素数6〜10)が挙げられる。また、R
11及びR
12としての置換基は、更に置換基を有していてもよく、このような更なる置換基としては、アルキル基(好ましくは炭素数1〜4)、ハロゲン原子、水酸基、アルコキシ基(好ましくは炭素数1〜4)、及び、カルボキシ基が挙げられる。
Lとしての連結基は、2価又は3価の連結基が好ましく(換言すれば、nが1又は2であることが好ましく)、2価の連結基がより好ましい(換言すれば、nが1であることが好ましい)。Lとしての連結基は、脂肪族基、芳香族基及びそれらの組み合わせからなる群より選ばれる連結基であることが好ましい。
例えば、nが1であり、Lとしての連結基が2価の連結基である場合、2価の脂肪族基としては、アルキレン基、アルケニレン基、アルキニレン基、又はポリアルキレンオキシ基が挙げられる。中でも、アルキレン基又はアルケニレン基が好ましく、アルキレン基がより好ましい。
2価の脂肪族基は、鎖状構造であっても環状構造であってもよいが、環状構造よりも鎖状構造の方が好ましく、分岐を有する鎖状構造よりも直鎖状構造の方が好ましい。2価の脂肪族基は、置換基を有していてもよく、置換基としては、ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子)、水酸基、カルボキシル基、アミノ基、シアノ基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アシルオキシ基、モノアルキルアミノ基、ジアルキルアミノ基、アリールアミノ基、及び、ジアリールアミノ基が挙げられる。
2価の芳香族基としては、アリーレン基が挙げられる。中でも、フェニレン基、及び、ナフチレン基が好ましい。
2価の芳香族基は、置換基を有していてもよく、上記2価の脂肪族基における置換基の例に加えて、アルキル基が挙げられる。
また、Lとしては、上述した式LC1−1〜式LC1−21又は式SL1−1〜式SL−3で表される構造から任意の位置の水素原子を2個除いた2価の基であってもよい。
nが2以上である場合、(n+1)価の連結基の具体例としては、上記した2価の連結基の具体例から、任意の(n−1)個の水素原子を除してなる基が挙げられる。
Lの具体例として、例えば、以下の連結基が挙げられる。
【0200】
なお、これらの連結基は、上記したように、置換基を更に有していてもよい。
【0201】
R
10としては、下記式Wで表される基が好ましい。
−Y−R
20 式W
【0202】
上記式W中、Yは、アルカリ水溶液の作用により分解してアルカリ水溶液中での溶解度が増大する基を表す。R
20は、電子求引性基を表す。
【0203】
Yとしては、カルボン酸エステル基(−COO−又はOCO−)、酸無水物基(−C(O)OC(O)−)、酸イミド基(−NHCONH−)、カルボン酸チオエステル基(−COS−)、炭酸エステル基(−OC(O)O−)、硫酸エステル基(−OSO
2O−)、及び、スルホン酸エステル基(−SO
2O−)が挙げられ、カルボン酸エステル基が好ましい。
【0204】
上記電子求引性基としては、下記式EWで示す部分構造が好ましい。式EWにおける*は式W中の基Yに直結している結合手を表す。
【0206】
式EW中、
n
ewは−C(R
ew1)(R
ew2)−で表される連結基の繰り返し数であり、0又は1の整数を表す。n
ewが0の場合は単結合を表し、直接Y
ew1が結合していることを示す。
Y
ew1は、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、後述の−C(R
f1)(R
f2)−R
f3で表されるハロ(シクロ)アルキル基、ハロアリール基、オキシ基、カルボニル基、スルホニル基、スルフィニル基、及びこれらの組み合わせが挙げられる。但し、Y
ew1がハロゲン原子、シアノ基又はニトロ基である場合、n
ewは1である。
R
ew1及びR
ew2は、それぞれ独立して任意の基を表し、例えば、水素原子、アルキル基(好ましくは炭素数1〜8)、シクロアルキル基(好ましくは炭素数3〜10)又はアリール基(好ましくは炭素数6〜10)を表す。
R
ew1、R
ew2及びY
ew1の少なくとも2つが互いに連結して環を形成していてもよい。
なお、「ハロ(シクロ)アルキル基」とは、少なくとも一部がハロゲン化したアルキル基及びシクロアルキル基を表し、「ハロアリール基」とは、少なくとも一部がハロゲン化したアリール基を表す。
【0207】
Y
ew1としては、ハロゲン原子、−C(R
f1)(R
f2)−R
f3で表されるハロ(シクロ)アルキル基、又はハロアリール基が好ましい。
【0208】
R
f1は、ハロゲン原子、パーハロアルキル基、パーハロシクロアルキル基、又はパーハロアリール基を表し、フッ素原子、パーフルオロアルキル基又はパーフルオロシクロアルキル基が好ましく、フッ素原子又はトリフルオロメチル基がより好ましい。
R
f2及びR
f3は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子又は有機基を表し、R
f2とR
f3とが連結して環を形成してもよい。有機基としては、アルキル基、シクロアルキル基、及び、アルコキシ基が挙げられ、これらはハロゲン原子(好ましくはフッ素原子)で置換されていてもよい。R
f2及びR
f3は、(ハロ)アルキル基又は(ハロ)シクロアルキル基が好ましい。R
f2はR
f1と同様の基を表すか、又はR
f3と連結して環を形成していることがより好ましい。
R
f2とR
f3とが連結して形成する環としては、(ハロ)シクロアルキル環が挙げられる。
【0209】
R
f1〜R
f3における(ハロ)アルキル基としては、直鎖状及び分岐鎖状のいずれでもよく、直鎖状(ハロ)アルキル基としては、炭素数1〜30が好ましく、1〜20がより好ましい。
【0210】
R
f1〜R
f3における、又は、R
f2とR
f3とが連結して形成する環における(ハロ)シクロアルキル基としては、単環型でもよく、多環型でもよい。多環型の場合、(ハロ)シクロアルキル基は有橋式であってもよい。即ち、この場合、(ハロ)シクロアルキル基は橋かけ構造を有していてもよい。
これら(ハロ)シクロアルキル基としては、例えば、下式により表されるもの、及び、これらがハロゲン化した基が挙げられる。なお、シクロアルキル基中の炭素原子の一部が、酸素原子等のヘテロ原子によって置換されていてもよい。
【0212】
R
f2及びR
f3における、又は、R
f2とR
f3とが連結して形成する環における(ハロ)シクロアルキル基としては、−C
(n)F
(2n−2)Hで表されるフルオロシクロアルキル基が好ましい。ここで炭素数nは特に限定されず、5〜13のものが好ましく、6がより好ましい。
【0213】
Y
ew1における、又は、R
f1における(パー)ハロアリール基としては、−C
(n)F
(n−1)で表されるパーフルオロアリール基が挙げられる。ここで炭素数nは特に限定されず、5〜13が好ましく、6がより好ましい。
【0214】
R
ew1、R
ew2及びY
ew1の少なくとも2つが互いに連結して形成してもよい環としては、シクロアルキル基又はヘテロ環基が好ましい。
【0215】
上記式EWで示す部分構造を構成する各基及び各環は、更に置換基を有していてもよい。
【0216】
上記式W中、R
20は、ハロゲン原子、シアノ基及びニトロ基からなる群から選択される1個以上で置換されたアルキル基であることが好ましく、ハロゲン原子で置換されたアルキル基(ハロアルキル基)であることがより好ましく、フルオロアルキル基であることが更に好ましい。ハロゲン原子、シアノ基及びニトロ基からなる群から選択される1個以上で置換されたアルキル基は炭素数が1〜10であることが好ましく、1〜5であることがより好ましい。
より具体的には、R
20は、−C(R’
1)(R’
f1)(R’
f2)又は−C(R’
1)(R’
2)(R’
f1)で表される原子団であることが好ましい。R’
1及びR’
2は、それぞれ独立に、水素原子、又は、電子求引性基で置換されていない(好ましくは無置換の)アルキル基を表す。R’
f1及びR’
f2は、それぞれ独立に、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、又は、パーフルオロアルキル基を表す。
R’
1及びR’
2としてのアルキル基は、直鎖状でも分岐鎖状でもよく、炭素数1〜6が好ましい。
R’
f1及びR’
f2してのパーフルオロアルキル基は、直鎖状でも分岐鎖状でもよく、炭素数1〜6が好ましい。
R
20の好ましい具体例としては、−CF
3、−C
2F
5、−C
3F
7、−C
4F
9、−CF(CF
3)
2、−CF(CF
3)C
2F
5、−CF
2CF(CF
3)
2、−C(CF
3)
3、−C
5F
11、−C
6F
13、−C
7F
15、−C
8F
17、−CH
2CF
3、−CH
2C
2F
5、−CH
2C
3F
7、−CH(CF
3)
2、−CH(CF
3)C
2F
5、−CH
2CF(CF
3)
2、及び、−CH
2CNが挙げられる。中でも、−CF
3、−C
2F
5、−C
3F
7、−C
4F
9、−CH
2CF
3、−CH
2C
2F
5、−CH
2C
3F
7、−CH(CF
3)
2、又は、−CH
2CNが好ましく、−CH
2CF
3、−CH
2C
2F
5、−CH
2C
3F
7、−CH(CF
3)
2、又は、−CH
2CNがより好ましく、−CH
2C
2F
5、−CH(CF
3)
2、又は、−CH
2CNが更に好ましく、−CH
2C
2F
5、又は、−CH(CF
3)
2が特に好ましい。
【0217】
式Xで表される構成単位としては、下記式X−1又は式X−2で表される構成単位が好ましく、式X−1で表される構成単位がより好ましい。
【0219】
式X−1中、R
20は、電子求引性基を表し、L
2は、2価の連結基を表し、X
2は、酸素原子又は硫黄原子を表し、Z
2はハロゲン原子を表す。
式X−2中、R
20は、電子求引性基を表し、L
3は、2価の連結基を表し、X
3は、酸素原子又は硫黄原子を表し、Z
3はハロゲン原子を表す。
【0220】
L
2及びL
3としての2価の連結基の具体例及び好ましい例は、上記式Xの2価の連結基としてのLにおいて説明したものと同様である。
R
2及びR
3としての電子求引性基は、上記式EWで示す部分構造であることが好ましく、具体例及び好ましい例も上述の通りであるが、ハロ(シクロ)アルキル基がより好ましい。
【0221】
上記式X−1においては、L
2とR
2とが互いに結合して環を形成することはなく、上記式X−2においては、L
3とR
3とが互いに結合して環を形成することはない。
【0222】
X
2及びX
3としては、酸素原子が好ましい。
Z
2及びZ
3としては、フッ素原子又は塩素原子が好ましく、フッ素原子がより好ましい。
【0223】
また、式Xで表される構成単位としては、式X−3で表される構成単位も好ましい。
【0225】
式X−3中、R
20は電子求引性基を表し、R
21は、水素原子、アルキル基、又は、アリール基を表し、L
4は、2価の連結基を表し、X
4は、酸素原子又は硫黄原子を表し、mは、0又は1を表す。
【0226】
L
4としての2価の連結基の具体例及び好ましい例は、式Xの2価の連結基としてのLにおいて説明したものと同様である。
R
4としての電子求引性基は、上記式EWで示す部分構造であることが好ましく、具体例及び好ましい例も上述の通りであるが、ハロ(シクロ)アルキル基であることがより好ましい。
【0227】
なお、上記式X−3においては、L
4とR
4とが互いに結合して環を形成することはない。
X
4としては、酸素原子が好ましい。
【0228】
また、式Xで表される構成単位としては、式Y−1で表される構成単位又は式Y−2で表される構成単位も好ましい。
【0230】
式Y−1及び式Y−2中、Zは、ハロゲン原子、R
11OCH
2−で表される基、又は、R
12OC(=O)CH
2−で表される基を表し、R
11及びR
12はそれぞれ独立に、置換基を表し、R
20は電子求引性基を表す。
【0231】
R
20としての電子求引性基は、上記式EWで示す部分構造であることが好ましく、具体例及び好ましい例も上述の通りであるが、ハロ(シクロ)アルキル基であることがより好ましい。
【0232】
Zとしての、ハロゲン原子、R
11OCH
2−で表される基、及び、R
12OC(=O)CH
2−で表される基の具体例及び好ましい例は、上記式1において説明したものと同様である。
【0233】
式Xで表される構成単位の含有量は、含フッ素樹脂の全構成単位に対し、10モル%〜100モル%が好ましく、20モル%〜100モル%がより好ましく、30モル%〜100モル%が更に好ましい。
【0234】
疎水性樹脂(E)を構成する構成単位の好ましい例を以下に示す。
疎水性樹脂(E)としては、これらの構成単位を任意に組合せた樹脂、又は、実施例で使用されている樹脂E−1〜E−11が好ましく挙げられるが、これに限定されない。
【0237】
また、以下に、含フッ素樹脂の具体例、および、含フッ素樹脂が含み得る繰り返し単位を示す。下表において、構成単位の組成比は、モル比を示す。また、下記表中に記載の組成における構成単位については後述する(TMSは、トリメチルシリル基を表す)。表中、Pdは含フッ素樹脂の分散度(Mw/Mn)を表す。
【0254】
疎水性樹脂(E)は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
表面エネルギーが異なる2種以上の疎水性樹脂(E)を混合して使用することが、液浸露光における液浸液追随性と現像特性の両立の観点から好ましい。
疎水性樹脂(E)の組成物中の含有量は、本開示に係る感光性樹脂組成物の全固形分に対し、0.01〜10質量%が好ましく、0.05〜8質量%がより好ましい。
【0255】
本開示に係る組成物が、樹脂として樹脂(A)を含み、かつ、樹脂(E)を更に含む場合、樹脂(A)と樹脂(E)の含有比(質量比)は、樹脂(A):樹脂(E)=1:0.001〜1:0.2であることが好ましく、1:0.01〜1:0.1であることがより好ましい。
【0256】
<低分子エステル化合物>
本開示に係る感光性樹脂組成物は、低分子エステル化合物を含有することが好ましい。
低分子エステル化合物は、アルカリ分解性を有し、かつ、分子量が1,500未満の化合物である。
なお、後述する光酸発生剤に該当する化合物は、低分子エステル化合物には該当しないものとする。
本開示に係る低分子エステル化合物は、酸分解性基を有しないことが好ましい。
また、本開示に係る低分子エステル化合物は、光の露光により分解しないことが好ましい。
【0257】
〔アルカリ分解性〕
本開示において用いられる低分子エステル化合物は、アルカリ分解性を有する。
本開示において、アルカリ分解性とは、アルカリ水溶液の作用により分解反応を起こす性質を意味する。
アルカリ分解性を有するとは、pH10の緩衝液2mLとTHF(テトラヒドロフラン)8mLとの混合液にエステル化合物100mgを添加して、40℃にて静置し、10分後にエステル化合物が有するエステル結合の総量の30mol%以上が加水分解することをいう。なお、分解率は、NMR(Nuclear Magnetic Resonance)分析による原料と分解物との比から算出できる。
【0258】
〔分子量〕
低分子エステル化合物の分子量は、1,500未満であり、1,000以下であることが好ましく、600以下であることがより好ましい。
分子量の下限は特に限定されず、50以上であることが好ましく、150以上であることがより好ましく、200以上であることが更に好ましく、300以上であることが特に好ましい。
低分子エステル化合物の分子量は、エレクトロスプレーイオン質量分析法(ESI−MS)により測定される。
【0259】
〔エステル結合〕
本開示において用いられる低分子エステル化合物におけるエステル結合は、カルボン酸エステル結合、スルホン酸エステル結合、リン酸エステル結合等が挙げられ、カルボン酸エステル結合であることが好ましい。
低分子エステル化合物におけるエステル結合(カルボン酸エステル結合)の数は、1以上10以下であることが好ましく、1以上4以下であることがより好ましく、1又は2であることがさらに好ましい。
【0260】
〔アルキル基又はアルキレン基〕
本開示において用いられる低分子エステル化合物は、パターン形状を向上させる観点から、炭素数5以上のアルキル基又は炭素数4以上のアルキレン基を含むことが好ましく、炭素数5以上のアルキル基を含むことがより好ましい。
上記炭素数5以上のアルキル基としては、パターン形状を向上させる観点から、炭素数8以上のアルキル基が好ましく、炭素数10以上のアルキル基がより好ましい。
炭素数の上限としては、特に限定されず、40以下であることが好ましく、30以下であることがより好ましい。
上記炭素数5以上のアルキル基は、直鎖状であっても分岐鎖状であっても環状であってもよく、これらを組み合わせた基であってもよい。
炭素数5以上のアルキル基は置換基を有していてもよいが、置換基としてフッ素原子を有するアルキル基は、後述するハロゲン化アルキル基に該当するものとする。
上記炭素数5以上のアルキル基は、エステル結合の炭素原子側の結合部位に直接結合していることが好ましい。
【0261】
上記炭素数4以上のアルキレン基としては、パターン形状を向上させる観点から、炭素数6以上のアルキレン基が好ましく、炭素数10以上のアルキレン基がより好ましい。
炭素数の上限としては、特に限定されず、40以下であることが好ましく、30以下であることがより好ましい。
上記炭素数4以上のアルキレン基は、直鎖状であっても分岐鎖状であっても環状であってもよく、これらを組み合わせた基であってもよい。
上記アルキレン基の2つの結合部位は、少なくとも一方がエステル結合の炭素原子側の結合部位に直接結合していることが好ましく、2つともがエステル結合の炭素原子側の結合部位に直接結合していることがより好ましい。
【0262】
〔電子求引性基〕
低分子エステル化合物は、パターン形状の向上の観点、DOFの許容度の向上の観点及び現像欠陥の抑制の観点から、少なくとも1個以上の電子求引性基を有することが好ましい。電子求引性基の数は特に限定されず、1個〜5個が好ましく、1個〜4個がより好ましい。
電子求引性基としては、公知の電子求引性基が挙げられ、ハロゲン化アルキル基、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、又は、−COO−Rbで表される基(Rbはアルキル基を表す)が好ましく、ハロゲン化アルキル基がより好ましい。
なお、ハロゲン化アルキル基中のハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、又は、ヨウ素原子が挙げられる。
これらの中でも、本開示において用いられる低分子エステル化合物は、フッ化アルキル基を含むことが好ましい。
【0263】
〔ハロゲン化アルキル基〕
本開示において用いられる低分子エステル化合物は、ハロゲン化アルキル基を含むことが好ましく、フッ化アルキル基を含むことがより好ましい。
ハロゲン化アルキル基は、直鎖状であっても分岐鎖状であっても環状であってもよく、これらを組み合わせた基であってもよい。
上記ハロゲン化アルキル基としては、アルキル基における水素原子のうち少なくとも1つがハロゲン原子により置換された基であればよいが、アルキル基の全ての水素原子がフッ素原子により置換された基であることが好ましい。
上記ハロゲン化アルキル基の炭素数は、1以上10以下であることが好ましく、1以上4以下であることがより好ましく、1又は2であることが更に好ましく、1であることがより好ましい。
すなわち、ハロゲン化アルキル基としては、トリフルオロメチル基が特に好ましい。
【0264】
ハロゲン化アルキル基は、低分子エステル化合物中のいずれの部位に存在していてもよいが、エステル結合の酸素原子側の結合部位に直接結合する炭素原子と直接結合することが好ましい。また、上記炭素原子と結合するハロゲン化アルキル基の数は、1又は2であることが好ましく、2であることがより好ましい。
【0265】
〔鎖状エステル化合物〕
低分子エステル化合物は、パターンの形状を向上させる観点から、鎖状エステル化合物であることが好ましい。
本開示において、鎖状エステル化合物とは、エステル結合が環構造中に含まれていないエステル化合物をいう。
低分子エステル化合物が複数のエステル結合を有する場合、少なくとも1つのエステル結合が環構造中に含まれていないエステル化合物であることが好ましく、全てのエステル結合が環構造中に含まれていないエステル化合物であることがより好ましい。
【0266】
〔ClogP値〕
低分子エステル化合物のClogP値は特に限定されず、1〜12が好ましく、3〜11がより好ましい。
CLogP値とは、水−n−オクタノール中での分配係数Pを常用対数で表示したLogPのコンピュータ計算値であり、物質の親疎水性の程度を表す指標として用いられている。低分子エステル化合物のCLogPは、例えばCambridge Soft社のソフトウェア、Chem Draw Ultra 8.0を用いることにより計算できる。
【0267】
〔式Aで表される部分構造〕
エステル化合物は、式Aで表される部分構造を有することが好ましい。*は、結合位置を表す。以下の部分構造を有するエステル化合物は、アルカリ分解性を有する。
【0269】
式A中、Raは電子求引性基を表す。電子求引性基の好適態様は、上述した通りである。
【0270】
本開示において用いられる低分子エステル化合物は、下記式Bで表される化合物であることが好ましい。
【0272】
式B中、Raは、電子求引性基を表し、Rcはn価の炭化水素基を表し、Rdはそれぞれ独立に、水素原子又は置換基を表し、nは、1〜3の整数を表す。nが2以上の場合、Raは同一でも異なっていてもよい。
【0273】
式B中、Raは、電子求引性基を表す。電子求引性基の好適態様は、上述した通りである。
Rcは、n価の炭化水素基を表す。炭化水素基中の炭素数は特に限定されず、本開示に係る効果が優れる点で、2〜25が好ましく、3〜20がより好ましい。
炭化水素基は、鎖状であっても、環状であってもよい。なかでも、本開示に係る効果がより優れる点で、鎖状炭化水素基が好ましい。鎖状炭化水素基は、直鎖状でも、分岐鎖状でもよい。
また、Rcは上述の炭素数5以上のアルキル基又は上述の炭素数4以上のアルキレン基であることが好ましく、上述の炭素数5以上のアルキル基がより好ましい。
【0274】
Rdは、それぞれ独立に、水素原子又は置換基を表す。
置換基としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子及びヨウ素原子等のハロゲン原子;メトキシ基、エトキシ基及びtert−ブトキシ基等のアルコキシ基;フェノキシ基及びp−トリルオキシ基等のアリールオキシ基;メトキシカルボニル基、ブトキシカルボニル基及びフェノキシカルボニル基等のアルコキシカルボニル基;アセトキシ基、プロピオニルオキシ基及びベンゾイルオキシ基等のアシルオキシ基;アセチル基、ベンゾイル基、イソブチリル基、アクリロイル基、メタクリロイル基及びメトキサリル基等のアシル基;メチルスルファニル基及びtert−ブチルスルファニル基等のアルキルスルファニル基;フェニルスルファニル基及びp−トリルスルファニル基等のアリールスルファニル基;アルキル基;シクロアルキル基;アリール基;ヘテロアリール基;水酸基;カルボキシ基;ホルミル基;スルホ基;シアノ基;アルキルアミノカルボニル基;アリールアミノカルボニル基;スルホンアミド基;シリル基;アミノ基;モノアルキルアミノ基;ジアルキルアミノ基;アリールアミノ基;並びにこれらの組み合わせが挙げられる。
【0275】
なかでも、本開示に係る効果がより優れる点で、Rdの少なくとも一方が、電子求引性基であることが好ましい。電子求引性基の好適態様は、上述した通りである。
【0276】
nは、1〜3の整数を表す。nは、1又は2が好ましい。
【0277】
本開示において用いられる低分子エステル化合物の具体例を下記に示すが、これに限定されない。
【0280】
本開示に係る感光性樹脂組成物は、低分子エステル化合物を1種単独で含有してもよいし、2種以上を併用してもよい。
低分子エステル化合物の含有量は、感光性樹脂組成物の全固形分に対し、0.1質量%以上6質量%以下であることが好ましく、1.0質量%以上5.0質量%以下であることがより好ましく、1.5質量%以上4.0質量%以下であることが特に好ましい。
【0281】
<その他の酸拡散制御剤>
本開示に係る感光性樹脂組成物は、上記式Dで表される化合物以外の酸拡散制御剤(「その他の酸拡散制御剤」ともいう。)を含んでいてもよい。その他の酸拡散制御剤は、露光時に光酸発生剤等から発生する酸をトラップし、余分な発生酸による、未露光部における酸分解性樹脂の反応を抑制するクエンチャーとして作用するものである。例えば、塩基性化合物(DA)、活性光線又は放射線の照射により塩基性が低下又は消失する塩基性化合物(DB)、光酸発生剤に対して相対的に弱酸となるオニウム塩(DC)、窒素原子を有し、酸の作用により脱離する基を有する低分子化合物(DD)、又はカチオン部に窒素原子を有するオニウム塩化合物(DE)等を酸拡散制御剤として使用することができる。本開示に係る組成物においては、公知の酸拡散制御剤を適宜使用することができる。例えば、米国特許出願公開第2016/0070167号明細書の段落0627〜0664、米国特許出願公開第2015/0004544号明細書の段落0095〜0187、米国特許出願公開第2016/0237190号明細書の段落0403〜0423、米国特許出願公開第2016/0274458号明細書の段落0259〜0328に開示された公知の化合物をその他の酸拡散制御剤として好適に使用できる。
【0282】
〔塩基性化合物(DA)〕
塩基性化合物(DA)としては、好ましくは、下記式A〜式Eで示される構造を有する化合物を挙げることができる。
【0284】
式A及び式E中、
R
200、R
201及びR
202は、同一でも異なってもよく、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基(好ましくは炭素数1〜20)、シクロアルキル基(好ましくは炭素数3〜20)又はアリール基(炭素数6〜20)を表す。R
201とR
202は、互いに結合して環を形成してもよい。
R
203、R
204、R
205及びR
206は、同一でも異なってもよく、それぞれ独立に、炭素数1〜20個のアルキル基を表す。
【0285】
式A及び式E中のアルキル基は、置換基を有していても無置換であってもよい。
上記アルキル基について、置換基を有するアルキル基としては、炭素数1〜20のアミノアルキル基、炭素数1〜20のヒドロキシアルキル基、又は炭素数1〜20のシアノアルキル基が好ましい。
式A及びE中のアルキル基は、無置換であることがより好ましい。
【0286】
塩基性化合物(DA)としては、グアニジン、アミノピロリジン、ピラゾール、ピラゾリン、ピペラジン、アミノモルホリン、アミノアルキルモルフォリン、又はピペリジン等が好ましく、イミダゾール構造、ジアザビシクロ構造、オニウムヒドロキシド構造、オニウムカルボキシレート構造、トリアルキルアミン構造、アニリン構造若しくはピリジン構造を有する化合物、水酸基及び/若しくはエーテル結合を有するアルキルアミン誘導体、又は水酸基及び/若しくはエーテル結合を有するアニリン誘導体等がより好ましい。
【0287】
〔活性光線又は放射線の照射により塩基性が低下又は消失する塩基性化合物(DB)〕
活性光線又は放射線の照射により塩基性が低下又は消失する塩基性化合物(DB)(以下、「化合物(DB)」ともいう。)は、プロトンアクセプター性官能基を有し、かつ、活性光線又は放射線の照射により分解して、プロトンアクセプター性が低下、消失、又はプロトンアクセプター性から酸性に変化する化合物である。
【0288】
プロトンアクセプター性官能基とは、プロトンと静電的に相互作用し得る基又は電子を有する官能基であって、例えば、環状ポリエーテル等のマクロサイクリック構造を有する官能基や、π共役に寄与しない非共有電子対をもった窒素原子を有する官能基を意味する。π共役に寄与しない非共有電子対を有する窒素原子とは、例えば、下記式に示す部分構造を有する窒素原子である。
【0290】
プロトンアクセプター性官能基の好ましい部分構造として、例えば、クラウンエーテル、アザクラウンエーテル、第1級〜第3級アミン、ピリジン、イミダゾール、及びピラジン構造などを挙げることができる。
【0291】
化合物(DB)は、活性光線又は放射線の照射により分解してプロトンアクセプター性が低下若しくは消失し、又はプロトンアクセプター性から酸性に変化した化合物を発生する。ここでプロトンアクセプター性の低下若しくは消失、又はプロトンアクセプター性から酸性への変化とは、プロトンアクセプター性官能基にプロトンが付加することに起因するプロトンアクセプター性の変化であり、具体的には、プロトンアクセプター性官能基を有する化合物(DB)とプロトンとからプロトン付加体が生成するとき、その化学平衡における平衡定数が減少することを意味する。
プロトンアクセプター性は、pH測定を行うことによって確認することができる。
【0292】
活性光線又は放射線の照射により化合物(DB)が分解して発生する化合物の酸解離定数pKaは、pKa<−1を満たすことが好ましく、−13<pKa<−1がより好ましく、−13<pKa<−3が更に好ましい。
【0293】
酸解離定数pKaとは、水溶液中での酸解離定数pKaのことを表し、例えば、化学便覧(II)(改訂4版、1993年、日本化学会編、丸善株式会社)に定義される。酸解離定数pKaの値が低いほど酸強度が大きいことを示す。水溶液中での酸解離定数pKaは、具体的には、無限希釈水溶液を用い、25℃での酸解離定数を測定することにより実測できる。あるいは、下記ソフトウェアパッケージ1を用いて、ハメットの置換基定数及び公知文献値のデータベースに基づいた値を、計算により求めることもできる。本明細書中に記載したpKaの値は、全て、このソフトウェアパッケージを用いて計算により求めた値を示す。
【0294】
ソフトウェアパッケージ1: Advanced Chemistry Development (ACD/Labs) Software V8.14 for Solaris (1994−2007 ACD/Labs)。
【0295】
〔光酸発生剤に対して相対的に弱酸となるオニウム塩(DC)〕
本開示に係る感光性樹脂組成物では、光酸発生剤に対して相対的に弱酸となるオニウム塩(DC)をその他の酸拡散制御剤として使用することができる。
光酸発生剤と、光酸発生剤から生じた酸に対して相対的に弱酸である酸を発生するオニウム塩とを混合して用いた場合、活性光線性又は放射線の照射により光酸発生剤から生じた酸が未反応の弱酸アニオンを有するオニウム塩と衝突すると、塩交換により弱酸を放出して強酸アニオンを有するオニウム塩を生じる。この過程で強酸がより触媒能の低い弱酸に交換されるため、見かけ上、酸が失活して酸拡散の制御を行うことができる。
【0296】
本開示に係る感光性樹脂組成物は、焦点深度の許容度及びパターン直線性の観点から、式d1−1〜式d1−3により表される化合物よりなる群から選ばれた少なくとも1種の化合物を更に含むことが好ましい。
【0298】
式d1−1〜式d1−3中、R
51は置換基を有していてもよい炭化水素基を表し、Z
2cは置換基を有していてもよい炭素数1〜30の炭化水素基を表し、S原子に隣接する炭素原子にはフッ素原子が結合しないものとし、R
52は有機基を表し、Y
3は直鎖状、分岐鎖状又は環状のアルキレン基又はアリーレン基を表し、Rfはフッ素原子を含む炭化水素基を表し、M
+はそれぞれ独立に、アンモニウムカチオン、スルホニウムカチオン又はヨードニウムカチオンを表す。
【0299】
M
+として表されるスルホニウムカチオン又はヨードニウムカチオンの好ましい例としては、式ZIで例示したスルホニウムカチオン及び式ZIIで例示したヨードニウムカチオンを挙げることができる。
【0300】
光酸発生剤に対して相対的に弱酸となるオニウム塩(DC)は、カチオン部位とアニオン部位を同一分子内に有し、かつ、上記カチオン部位とアニオン部位が共有結合により連結している化合物(以下、「化合物(DCA)」ともいう。)であってもよい。
化合物(DCA)としては、下記式C−1〜C−3のいずれかで表される化合物であることが好ましい。
【0302】
式C−1〜C−3中、R
1、R
2、及びR
3はそれぞれ独立に、炭素数1以上の置換基を表す。
L
1は、カチオン部位とアニオン部位とを連結する2価の連結基又は単結合を表す。
−X
−は、−COO
−、−SO
3−、−SO
2−、及び−N
−−R
4から選択されるアニオン部位を表す。R
4は、隣接するN原子との連結部位に、カルボニル基(−C(=O)−)、スルホニル基(−S(=O)
2−)、及びスルフィニル基(−S(=O)−)のうち少なくとも1つを有する1価の置換基を表す。
R
1、R
2、R
3、R
4、及びL
1は、互いに結合して環構造を形成してもよい。また、式C−3において、R
1〜R
3のうち2つを合わせて1つの2価の置換基を表し、N原子と2重結合により結合していてもよい。
【0303】
R
1〜R
3における炭素数1以上の置換基としては、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アルキルオキシカルボニル基、シクロアルキルオキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アルキルアミノカルボニル基、シクロアルキルアミノカルボニル基、及びアリールアミノカルボニル基などが挙げられる。好ましくは、アルキル基、シクロアルキル基、又はアリール基である。
【0304】
2価の連結基としてのL
1は、直鎖若しくは分岐鎖状アルキレン基、シクロアルキレン基、アリーレン基、カルボニル基、エーテル結合、エステル結合、アミド結合、ウレタン結合、ウレア結合、及びこれらの2種以上を組み合わせてなる基等が挙げられる。L
1は、好ましくは、アルキレン基、アリーレン基、エーテル結合、エステル結合、又はこれらの2種以上を組み合わせてなる基である。
【0305】
〔窒素原子を有し、酸の作用により脱離する基を有する低分子化合物(DD)〕
窒素原子を有し、酸の作用により脱離する基を有する低分子化合物(DD)(以下、「化合物(DD)」ともいう。)は、酸の作用により脱離する基を窒素原子上に有するアミン誘導体であることが好ましい。
酸の作用により脱離する基としては、アセタール基、カルボネート基、カルバメート基、3級エステル基、3級水酸基、又はヘミアミナールエーテル基が好ましく、カルバメート基、又はヘミアミナールエーテル基がより好ましい。
化合物(DD)の分子量は、100〜1000が好ましく、100〜700がより好ましく、100〜500が更に好ましい。
化合物(DD)は、窒素原子上に保護基を有するカルバメート基を有してもよい。カルバメート基を構成する保護基としては、下記式d−1で表すことができる。
【0307】
式d−1において、
R
bはそれぞれ独立に、水素原子、アルキル基(好ましくは炭素数1〜10)、シクロアルキル基(好ましくは炭素数3〜30)、アリール基(好ましくは炭素数3〜30)、アラルキル基(好ましくは炭素数1〜10)、又はアルコキシアルキル基(好ましくは炭素数1〜10)を表す。R
bは相互に連結して環を形成していてもよい。
R
bが示すアルキル基、シクロアルキル基、アリール基、及びアラルキル基はそれぞれ独立に、ヒドロキシ基、シアノ基、アミノ基、ピロリジノ基、ピペリジノ基、モルホリノ基、オキソ基等の官能基、アルコキシ基、又はハロゲン原子で置換されていてもよい。R
bが示すアルコキシアルキル基についても同様である。
【0308】
R
bとしては、直鎖状若しくは分岐状のアルキル基、シクロアルキル基、又はアリール基が好ましく、直鎖状若しくは分岐状のアルキル基、又はシクロアルキル基がより好ましい。
2つのR
bが相互に連結して形成する環としては、脂環式炭化水素、芳香族炭化水素、複素環式炭化水素及びその誘導体等が挙げられる。
式d−1で表される基の具体的な構造としては、米国特許出願公開第2012/0135348号明細書の段落0466に開示された構造を挙げることができるが、これに限定されない。
【0309】
化合物(DD)は、下記式6で表される構造を有するものであることが好ましい。
【0311】
式6において、
lは0〜2の整数を表し、mは1〜3の整数を表し、l+m=3を満たす。
R
aは、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基又はアラルキル基を表す。lが2のとき、2つのR
aは同じでも異なっていてもよく、2つのR
aは相互に連結して式中の窒素原子と共に複素環を形成していてもよい。この複素環には式中の窒素原子以外のヘテロ原子を含んでいてもよい。
R
bは、上記式d−1におけるR
bと同義であり、好ましい例も同様である。
式6において、R
aとしてのアルキル基、シクロアルキル基、アリール基、及びアラルキル基はそれぞれ独立に、R
bとしてのアルキル基、シクロアルキル基、アリール基、及びアラルキル基が置換されていてもよい基として上述した基と同様な基で置換されていてもよい。
【0312】
上記R
aのアルキル基、シクロアルキル基、アリール基、及びアラルキル基(これらの基は、上記基で置換されていてもよい)の具体例としては、R
bについて上述した具体例と同様な基が挙げられる。
本開示において特に好ましい化合物(DD)の具体的な構造としては、米国特許出願公開第2012/0135348号明細書の段落0475に開示された化合物を挙げることができるが、これに限定されない。
【0313】
カチオン部に窒素原子を有するオニウム塩化合物(DE)(以下、「化合物(DE)」ともいう。)は、カチオン部に窒素原子を含む塩基性部位を有する化合物であることが好ましい。塩基性部位は、アミノ基であることが好ましく、脂肪族アミノ基であることがより好ましい。塩基性部位中の窒素原子に隣接する原子の全てが、水素原子又は炭素原子であることが更に好ましい。また、塩基性向上の観点から、窒素原子に対して、電子求引性の官能基(カルボニル基、スルホニル基、シアノ基、及びハロゲン原子など)が直結していないことが好ましい。
化合物(DE)の好ましい具体的な構造としては、米国特許出願公開第2015/0309408号明細書の段落0203に開示された化合物を挙げることができるが、これに限定されない。
【0314】
その他の酸拡散制御剤の好ましい例を以下に示す。
【0318】
本開示に係る感光性樹脂組成物において、その他の酸拡散制御剤は1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
その他の酸拡散制御剤の組成物中の含有量(複数種存在する場合はその合計)は、組成物の全固形分を基準として、0.1質量%〜10質量%が好ましく、0.1質量%〜5質量%がより好ましい。
【0319】
<架橋剤>
本開示に係る感光性樹脂組成物は、酸の作用により樹脂を架橋する化合物(以下、架橋剤(G)ともいう。)を含有してもよい。
架橋剤(G)としては、公知の化合物を適宜に使用することができる。例えば、米国特許出願公開第2016/0147154号明細書の段落0379〜0431、米国特許出願公開第2016/0282720号明細書の段落0064〜0141に開示された公知の化合物を架橋剤(G)として好適に使用できる。
架橋剤(G)は、樹脂を架橋しうる架橋性基を有している化合物であり、架橋性基としては、ヒドロキシメチル基、アルコキシメチル基、アシルオキシメチル基、アルコキシメチルエーテル基、オキシラン環、及びオキセタン環などを挙げることができる。
架橋性基は、ヒドロキシメチル基、アルコキシメチル基、オキシラン環又はオキセタン環であることが好ましい。
架橋剤(G)は、架橋性基を2個以上有する化合物(樹脂も含む)であることが好ましい。
架橋剤(G)は、ヒドロキシメチル基又はアルコキシメチル基を有する、フェノール誘導体、ウレア系化合物(ウレア構造を有する化合物)又はメラミン系化合物(メラミン構造を有する化合物)であることがより好ましい。
架橋剤は1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
架橋剤(G)の含有量は、組成物の全固形分に対して、1質量%〜50質量%が好ましく、3質量%〜40質量%がより好ましく、5質量%〜30質量%が更に好ましい。
【0320】
<界面活性剤>
本開示に係る感光性樹脂組成物は、界面活性剤を含有してもよいし、含有しなくてもよい。界面活性剤を含有する場合、フッ素系及びシリコーン系界面活性剤(具体的には、フッ素系界面活性剤、シリコーン系界面活性剤、又はフッ素原子とケイ素原子との両方を有する界面活性剤)の少なくとも一方を含有することが好ましい。
【0321】
本開示に係る感光性樹脂組成物が界面活性剤を含有することにより、波長250nm以下、特に波長220nm以下の露光光源を使用した場合に、良好な感度及び解像度で、密着性及び現像欠陥の少ないレジストパターンを得ることができる。
フッ素系又はシリコーン系界面活性剤として、米国特許出願公開第2008/0248425号明細書の段落0276に記載の界面活性剤が挙げることができる。
また、米国特許出願公開第2008/0248425号明細書の段落0280に記載の、フッ素系又はシリコーン系界面活性剤以外の他の界面活性剤を使用することもできる。
【0322】
これらの界面活性剤は1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
本開示に係る感光性樹脂組成物が界面活性剤を含有する場合、界面活性剤の含有量は、組成物の全固形分に対して、0.0001質量%〜2質量%が好ましく、0.0005質量%〜1質量%がより好ましい。
一方、界面活性剤の含有量が、組成物の全固形分に対して0.0001質量%以上とすることにより、疎水性樹脂の表面偏在性が上がる。それにより、感活性光線性又は感放射線性膜の表面をより疎水的にすることができ、液浸露光時の水追随性が向上する。
【0323】
<その他の添加剤>
本開示に係る感光性樹脂組成物は、更に、その他の公知の添加剤を含んでいてもよい。
その他の添加剤としては、酸増殖剤、染料、可塑剤、光増感剤、光吸収剤、アルカリ可溶性樹脂、溶解阻止剤、溶解促進剤等が挙げられる。
【0324】
<調製方法>
本開示に係る感光性樹脂組成物は、上記の成分を所定の有機溶剤、好ましくは上記混合溶剤に溶解し、これをフィルター濾過した後、例えば、所定の支持体(基板)上に塗布して用いる。フィルター濾過に用いるフィルターのポアサイズ(孔径)は0.1μm以下が好ましく、0.05μm以下がより好ましく、0.03μm以下が更に好ましい。上記フィルターは、ポリテトラフルオロエチレン製、ポリエチレン製、又はナイロン製のものが好ましい。フィルター濾過においては、例えば特開第2002−62667号公報に開示されるように、循環的な濾過を行ってもよく、複数種類のフィルターを直列又は並列に接続して濾過を行ってもよい。また、組成物を複数回濾過してもよい。更に、フィルター濾過の前後で、組成物に対して脱気処理等を行ってもよい。
【0325】
本開示に係る感光性樹脂組成物からなるレジスト膜の膜厚は、特に限定されず、解像力向上の観点から、90nm以下が好ましく、85nm以下がより好ましい。組成物中の固形分濃度を適切な範囲に設定して適度な粘度をもたせ、塗布性又は製膜性を向上させることにより、このような膜厚とすることができる。
【0326】
<用途>
本開示に係る感光性樹脂組成物は、光の照射により反応して性質が変化する感光性樹脂組成物である。更に詳しくは、本開示に係る感光性樹脂組成物は、IC(Integrated Circuit)等の半導体製造工程、液晶若しくはサーマルヘッド等の回路基板の製造、インプリント用モールド構造体の作製、その他のフォトファブリケーション工程、又は平版印刷版、若しくは酸硬化性組成物の製造に使用される感活性光線性又は感放射線性樹脂組成物に関する。本開示に係る感光性樹脂組成物により形成されるレジストパターンは、エッチング工程、イオンインプランテーション工程、バンプ電極形成工程、再配線形成工程、及びMEMS(Micro Electro Mechanical Systems)等において使用することができる。
【0327】
(レジスト膜)
本開示に係るレジスト膜は、本開示に係る感光性樹脂組成物の固化物である。
本開示における固化物とは、本開示に係る感光性樹脂組成物から溶剤を少なくとも1部除去したものであればよい。
具体的には、本開示に係るレジスト膜は、例えば、基板等の支持体上に本開示に係る感光性樹脂組成物を塗布した後に、乾燥することにより得られる。
上記乾燥とは、本開示に係る感光性樹脂組成物に含まれる溶剤の少なくとも一部を除去することをいう。
乾燥方法は特に限定されず、公知の方法が使用されるが、加熱(例えば、70℃〜130℃、30秒〜300秒間)による乾燥等が挙げられる。
加熱方法としては特に限定されず、公知の加熱手段が用いられるが、例えば、ヒーター、オーブン、ホットプレート、赤外線ランプ、赤外線レーザー等が挙げられる。
【0328】
本開示に係るレジスト膜に含まれる成分は、本開示に係る感光性樹脂組成物に含まれる成分のうち、溶剤を除いた成分と同様であり、好ましい態様も同様である。
本開示に係るレジスト膜に含まれる各成分の含有量は、本開示に係る感光性樹脂組成物の溶剤以外の各成分の含有量の説明における「全固形分」の記載を、「レジスト膜の全質量」に読み替えたものに相当する。
【0329】
本開示に係るレジスト膜の厚さは、特に限定されず、50nm〜150nmであることが好ましく、80nm〜130nmであることがより好ましい。
また、メモリデバイスの三次元化に伴い、厚いレジスト膜を形成したい場合には、例えば、2μm以上であることが好ましく、2μm以上50μm以下であることがより好ましく、2μm以上20μm以下であることが更に好ましい。
【0330】
(パターン形成方法)
本開示に係るパターン形成方法は、
本開示に係るレジスト膜を活性光線により露光する工程(露光工程)、及び、
上記露光する工程後のレジスト膜を、現像液を用いて現像する工程(現像工程)、を含む。
また、本開示に係るパターン形成方法は、本開示に係る感光性樹脂組成物によってレジスト膜を支持体上に形成する工程(成膜工程)、
上記レジスト膜を活性光線により露光する工程(露光工程)、及び、
上記露光する工程後のレジスト膜を、現像液を用いて現像する工程(現像工程)、を含む方法であってもよい。
【0331】
<成膜工程>
本開示に係るパターン形成方法は、成膜工程を含んでもよい。成膜工程におけるレジスト膜の形成方法としては、例えば、上述のレジスト膜の項目で述べた乾燥によるレジスト膜の形成方法が挙げられる。
【0332】
〔支持体〕
支持体は、特に限定されず、IC等の半導体の製造工程、又は液晶若しくはサーマルヘッド等の回路基板の製造工程のほか、その他のフォトファブリケーションのリソグラフィー工程等で一般的に用いられる基板を用いることができる。支持体の具体例としては、シリコン、SiO
2、及びSiN等の無機基板等が挙げられる。
【0333】
<露光工程>
露光工程は、レジスト膜を光により露光する工程である。
露光方法は、液浸露光であってもよい。
本開示に係るパターン形成方法は、露光工程を、複数回含んでいてもよい。
露光に用いられる光(活性光線又は放射線)の種類は、光酸発生剤の特性及び得たいパターン形状等を考慮して選択すればよいが、赤外光、可視光、紫外光、遠紫外光、極紫外光(EUV)、X線、及び電子線等が挙げられ、遠紫外光が好ましい。
例えば、波長250nm以下の活性光線が好ましく、220nm以下がより好ましく、1〜200nmが更に好ましい。
用いられる光として、具体的には、KrFエキシマレーザー(248nm)、ArFエキシマレーザー(193nm)、F
2エキシマレーザー(157nm)、X線、EUV(13nm)、又は電子線等であり、ArFエキシマレーザー、EUV又は電子線が好ましい。
中でも、露光する工程における露光は、フッ化アルゴンレーザーを用いた液浸露光により行われることが好ましい。
露光量としては、5mJ/cm
2〜200mJ/cm
2であることが好ましく、10mJ/cm
2〜100mJ/cm
2であることがより好ましい。
【0334】
<現像工程>
現像工程において使用される現像液は、アルカリ現像液であっても、有機溶剤を含有する現像液(以下、有機系現像液ともいう。)であってもよく、アルカリ水溶液であることが好ましい。
【0335】
〔アルカリ現像液〕
アルカリ現像液としては、テトラメチルアンモニウムヒドロキシドに代表される第4級アンモニウム塩が好ましく用いられるが、これ以外にも無機アルカリ、第1級〜第3級アミン、アルカノールアミン、及び環状アミン等のアルカリ水溶液も使用可能である。
更に、上記アルカリ現像液は、アルコール類、及び界面活性剤の少なくとも1種を適当量含有してもよい。アルカリ現像液のアルカリ濃度は、0.1質量%〜20質量%であることが好ましい。アルカリ現像液のpHは、10〜15であることが好ましい。
アルカリ現像液を用いて現像を行う時間は、10秒〜300秒であることが好ましい。
アルカリ現像液のアルカリ濃度、pH、及び現像時間は、形成するパターンに応じて、適宜調整することができる。
【0336】
〔有機系現像液〕
有機系現像液は、ケトン系溶剤、エステル系溶剤、アルコール系溶剤、アミド系溶剤、エーテル系溶剤、及び炭化水素系溶剤からなる群より選択される少なくとも1種の有機溶剤を含有する現像液であることが好ましい。
【0337】
−ケトン系溶剤−
ケトン系溶剤としては、例えば、1−オクタノン、2−オクタノン、1−ノナノン、2−ノナノン、アセトン、2−ヘプタノン(メチルアミルケトン)、4−ヘプタノン、1−ヘキサノン、2−ヘキサノン、ジイソブチルケトン、シクロヘキサノン、メチルシクロヘキサノン、フェニルアセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、アセチルアセトン、アセトニルアセトン、イオノン、ジアセトニルアルコール、アセチルカービノール、アセトフェノン、メチルナフチルケトン、イソホロン、及びプロピレンカーボネート等を挙げることができる。
【0338】
−エステル系溶剤−
エステル系溶剤としては、例えば、酢酸メチル、酢酸ブチル、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、酢酸ペンチル、酢酸イソペンチル、酢酸アミル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチルー3−エトキシプロピオネート、3−メトキシブチルアセテート、3−メチル−3−メトキシブチルアセテート、蟻酸メチル、蟻酸エチル、蟻酸ブチル、蟻酸プロピル、乳酸エチル、乳酸ブチル、乳酸プロピル、ブタン酸ブチル、2−ヒドロキシイソ酪酸メチル、酢酸イソアミル、イソ酪酸イソブチル、及びプロピオン酸ブチル等を挙げることができる。
【0339】
−その他の溶剤−
アルコール系溶剤、アミド系溶剤、エーテル系溶剤、及び炭化水素系溶剤としては、米国特許出願公開第2016/0070167号明細書の段落0715〜0718に開示された溶剤を使用できる。
【0340】
上記の溶剤は、複数混合してもよいし、上記以外の溶剤又は水と混合してもよい。現像液全体としての含水率は、50質量%未満が好ましく、20質量%未満がより好ましく、10質量%未満であることが更に好ましく、実質的に水を含有しないことが特に好ましい。
有機系現像液における有機溶剤の含有量は、現像液の全量に対して、50質量%以上100質量%以下が好ましく、80質量%以上100質量%以下がより好ましく、90質量%以上100質量%以下が更に好ましく、95質量%以上100質量%以下が特に好ましい。
【0341】
−界面活性剤−
有機系現像液は、必要に応じて公知の界面活性剤を適当量含有できる。
界面活性剤の含有量は、現像液の全質量に対して、0.001質量%〜5質量%が好ましく、0.005質量%〜2質量%がより好ましく、0.01質量%〜0.5質量%が更に好ましい。
【0342】
−酸拡散制御剤−
有機系現像液は、上述した酸拡散制御剤を含んでいてもよい。
【0343】
〔現像方法〕
現像方法としては、例えば、現像液が満たされた槽中に基板を一定時間浸漬する方法(ディップ法)、基板表面に現像液を表面張力によって盛り上げて一定時間静止する方法(パドル法)、基板表面に現像液を噴霧する方法(スプレー法)、又は一定速度で回転している基板上に一定速度で現像液吐出ノズルをスキャンしながら現像液を吐出しつづける方法(ダイナミックディスペンス法)等を適用することができる。
【0344】
アルカリ水溶液を用いて現像を行う工程(アルカリ現像工程)、及び有機溶剤を含む現像液を用いて現像する工程(有機溶剤現像工程)を組み合わせてもよい。これにより、中間的な露光強度の領域のみを溶解させずにパターン形成が行えるので、より微細なパターンを形成することができる。
【0345】
<前加熱工程、露光後加熱工程>
本開示に係るパターン形成方法は、露光工程の前に、前加熱(PB:PreBake)工程を含むことが好ましい。
本開示に係るパターン形成方法は、前加熱工程を、複数回含んでいてもよい。
本開示に係るパターン形成方法は、露光工程の後、かつ、現像工程の前に、露光後加熱(PEB:Post Exposure Bake)工程を含むことが好ましい。
本開示に係るパターン形成方法は、露光後加熱工程を、複数回含んでいてもよい。
加熱温度は、前加熱工程及び露光後加熱工程のいずれにおいても、70℃〜130℃が好ましく、80℃〜120℃がより好ましい。
加熱時間は、前加熱工程及び露光後加熱工程のいずれにおいても、30秒〜300秒が好ましく、30秒〜180秒がより好ましく、30秒〜90秒が更に好ましい。
加熱は、露光装置及び現像装置に備わっている手段で行うことができ、ホットプレート等を用いて行ってもよい。
【0346】
<レジスト下層膜形成工程>
本開示に係るパターン形成方法は、成膜工程の前に、レジスト下層膜を形成する工程(レジスト下層膜形成工程)を更に含んでもよい。
レジスト下層膜形成工程は、レジスト膜と支持体との間にレジスト下層膜(例えば、SOG(Spin On Glass)、SOC(Spin On Carbon)、反射防止膜等)を形成する工程である。レジスト下層膜としては、公知の有機系又は無機系の材料を適宜用いることができる。
【0347】
<保護膜形成工程>
本開示に係るパターン形成方法は、現像工程の前に、保護膜を形成する工程(保護膜形成工程)を更に含んでもよい。
保護膜形成工程は、レジスト膜の上層に、保護膜(トップコート)を形成する工程である。保護膜としては、公知の材料を適宜用いることができる。例えば、米国特許出願公開第2007/0178407号明細書、米国特許出願公開第2008/0085466号明細書、米国特許出願公開第2007/0275326号明細書、米国特許出願公開第2016/0299432号明細書、米国特許出願公開第2013/0244438号明細書、国際特許出願公開第2016/157988号に開示された保護膜形成用組成物を好適に使用することができる。保護膜形成用組成物としては、上述した酸拡散制御剤を含むものが好ましい。
上述した疎水性樹脂を含有するレジスト膜の上層に保護膜を形成してもよい。
【0348】
<リンス工程>
本開示に係るパターン形成方法は、現像工程の後に、リンス液を用いて洗浄する工程(リンス工程)を含むことが好ましい。
【0349】
〔アルカリ現像液を用いた現像工程の場合〕
アルカリ現像液を用いた現像工程の後のリンス工程に用いるリンス液は、例えば純水を使用できる。純水は、界面活性剤を適当量含有してもよい。この場合、現像工程又はリンス工程の後に、パターン上に付着している現像液又はリンス液を超臨界流体により除去する処理を追加してもよい。更に、リンス処理又は超臨界流体による処理の後、パターン中に残存する水分を除去するために加熱処理を行ってもよい。
【0350】
〔有機系現像液を用いた現像工程の場合〕
有機溶剤を含む現像液を用いた現像工程の後のリンス工程に用いるリンス液は、レジストパターンを溶解しないものであれば特に制限はなく、一般的な有機溶剤を含む溶液を使用できる。リンス液としては、炭化水素系溶剤、ケトン系溶剤、エステル系溶剤、アルコール系溶剤、アミド系溶剤、及びエーテル系溶剤からなる群より選択される少なくとも1種の有機溶剤を含有するリンス液を用いることが好ましい。
炭化水素系溶剤、ケトン系溶剤、エステル系溶剤、アルコール系溶剤、アミド系溶剤、及びエーテル系溶剤の具体例としては、有機溶剤を含む現像液において説明したものと同様のものが挙げられる。
この場合のリンス工程に用いるリンス液としては、1価アルコールを含有するリンス液がより好ましい。
【0351】
リンス工程で用いられる1価アルコールとしては、直鎖状、分岐状、又は環状の1価アルコールが挙げられる。具体的には、1−ブタノール、2−ブタノール、3−メチル−1−ブタノール、tert―ブチルアルコール、1−ペンタノール、2−ペンタノール、1−ヘキサノール、4−メチル−2−ペンタノール、1−ヘプタノール、1−オクタノール、2−ヘキサノール、シクロペンタノール、2−ヘプタノール、2−オクタノール、3−ヘキサノール、3−ヘプタノール、3−オクタノール、4−オクタノール、及びメチルイソブチルカルビノールが挙げられる。炭素数5以上の1価アルコールとしては、1−ヘキサノール、2−ヘキサノール、4−メチル−2−ペンタノール、1−ペンタノール、3−メチル−1−ブタノール、及びメチルイソブチルカルビノール等が挙げられる。
【0352】
各成分は、複数混合してもよいし、上記以外の有機溶剤と混合して使用してもよい。
リンス液中の含水率は、10質量%以下が好ましく、5質量%以下がより好ましく、3質量%以下が更に好ましい。含水率を10質量%以下とすることで、良好な現像特性が得られる。
【0353】
リンス液は、界面活性剤を適当量含有してもよい。
リンス工程においては、有機系現像液を用いる現像を行った基板を有機溶剤を含むリンス液を用いて洗浄処理する。洗浄処理の方法は特に限定されず、例えば、一定速度で回転している基板上にリンス液を吐出しつづける方法(回転塗布法)、リンス液が満たされた槽中に基板を一定時間浸漬する方法(ディップ法)、又は基板表面にリンス液を噴霧する方法(スプレー法)等を適用することができる。中でも、回転塗布法で洗浄処理を行い、洗浄後に基板を2,000rpm〜4,000rpm(回転/分)の回転数で回転させ、リンス液を基板上から除去することが好ましい。また、リンス工程の後に加熱工程(Post Bake)を含むことも好ましい。この加熱工程によりパターン間及びパターン内部に残留した現像液及びリンス液が除去される。リンス工程の後の加熱工程において、加熱温度は40〜160℃であることが好ましく、70〜95℃がより好ましい。加熱時間は10秒〜3分であることが好ましく、30秒〜90秒がより好ましい。
【0354】
<各種材料の不純物>
本開示に係る感光性樹脂組成物樹脂組成物、及び、本開示に係るパターン形成方法において使用される各種材料(例えば、レジスト溶剤、現像液、リンス液、反射防止膜形成用組成物、又はトップコート形成用組成物等)は、金属成分、異性体、及び残存モノマー等の不純物を含まないことが好ましい。上記の各種材料に含まれるこれらの不純物の含有量としては、1ppm以下が好ましく、100ppt以下がより好ましく、10ppt以下が更に好ましく、実質的に含まないこと(測定装置の検出限界以下であること)が特に好ましい。
【0355】
上記各種材料から金属等の不純物を除去する方法としては、例えば、フィルターを用いた濾過を挙げることができる。フィルター孔径としては、ポアサイズ10nm以下が好ましく、5nm以下がより好ましく、3nm以下が更に好ましい。フィルターの材質としては、ポリテトラフルオロエチレン製、ポリエチレン製、又はナイロン製のフィルターが好ましい。フィルターは、有機溶剤であらかじめ洗浄したものを用いてもよい。フィルター濾過工程では、複数種類のフィルターを直列又は並列に接続して用いてもよい。複数種類のフィルターを使用する場合は、孔径及び材質の少なくとも一方が異なるフィルターを組み合わせて使用してもよい。また、各種材料を複数回濾過してもよく、複数回濾過する工程が循環濾過工程であってもよい。フィルターとしては、特開2016−201426号公報に開示されるような溶出物が低減されたものが好ましい。
フィルター濾過のほか、吸着材による不純物の除去を行ってもよく、フィルター濾過と吸着材を組み合わせて使用してもよい。吸着材としては、公知の吸着材を用いることができ、例えば、シリカゲル若しくはゼオライト等の無機系吸着材、又は活性炭等の有機系吸着材を使用することができる。金属吸着剤としては、例えば、特開2016−206500号公報に開示されるものを挙げることができる。
また、上記各種材料に含まれる金属等の不純物を除去する方法としては、各種材料を構成する原料として金属含有量が少ない原料を選択する、各種材料を構成する原料に対してフィルター濾過を行う、又は装置内をテフロン(登録商標)でライニングする等してコンタミネーションを可能な限り抑制した条件下で蒸留を行う等の方法が挙げられる。各種材料を構成する原料に対して行うフィルター濾過における好ましい条件は、上記した条件と同様である。
【0356】
上記の各種材料は、不純物の混入を防止するために、米国特許出願公開第2015/0227049号明細書、特開2015−123351号公報、特開2017−13804号公報等に記載された容器に保存されることが好ましい。
【0357】
<表面荒れの改善>
本開示に係るパターン形成方法により形成されるパターンに、パターンの表面荒れを改善する方法を適用してもよい。パターンの表面荒れを改善する方法としては、例えば、米国特許出願公開第2015/0104957号明細書に開示された、水素を含有するガスのプラズマによってレジストパターンを処理する方法が挙げられる。その他にも、特開2004−235468号公報、米国特許出願公開第2010/0020297号明細書、Proc. of SPIE Vol.8328 83280N−1“EUV Resist Curing Technique for LWR Reduction and Etch Selectivity Enhancement”に記載されるような公知の方法を適用してもよい。
また、上記の方法によって形成されたレジストパターンは、例えば特開平3−270227号公報及び米国特許出願公開第2013/0209941号明細書に開示されたスペーサープロセスの芯材(Core)として使用できる。
【0358】
(電子デバイスの製造方法)
本開示に係る電子デバイスの製造方法は、本開示に係るパターン形成方法を含む。本開示に係る電子デバイスの製造方法により製造された電子デバイスは、電気電子機器(例えば、家電、OA(Office Automation)関連機器、メディア関連機器、光学用機器、及び通信機器等)に、好適に搭載される。
【実施例】
【0359】
以下に実施例を挙げて本発明の実施形態を更に具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、及び、処理手順等は、本発明の実施形態の趣旨を逸脱しない限り、適宜、変更することができる。したがって、本発明の実施形態の範囲は以下に示す具体例に限定されない。なお、特に断りのない限り、「部」、「%」は質量基準である。
【0360】
<樹脂の合成>
〔樹脂A−1の合成〕
窒素気流下、モノマーの全質量100質量部に対し、シクロヘキサノン40質量部を3つ口フラスコに入れ、これを80℃に加熱した。これにt−ブチルメタクリレート50モル当量、2−メタクリロキシ−γ−ブチロラクトン50モル当量、重合開始剤V−601(和光純薬工業(株)製)をモノマーに対し8モル%をシクロヘキサノン340質量部に溶解させた溶液を6時間かけて滴下した。滴下終了後、更に80℃で2時間反応させた。反応液を放冷後ヘキサン3,500質量部/酢酸エチル875質量部の混合液に20分かけて滴下し、析出した粉体をろ取、乾燥すると、樹脂A−1が得られた。得られた樹脂の重量平均分子量は、標準ポリスチレン換算で12,000、分散度(Mw/Mn)は1.5であった。
【0361】
〔樹脂A−2〜A−15の合成〕
樹脂A−1の合成において、使用するモノマーを下記表4に記載のモノマー及び含有量に変更した以外は、樹脂A−1の合成と同様の方法により、樹脂A−2〜A−15をそれぞれ合成した。
【0362】
【表4】
【0363】
表4に記載した各モノマーの詳細を以下に示す。
【0364】
【化71】
【0365】
【化72】
【0366】
【化73】
【0367】
<含フッ素樹脂及びトップコート用樹脂の合成>
〔含フッ素樹脂E−1〜E−11及びトップコート用樹脂PT−1〜PT−3の合成〕
樹脂A−1の合成において、使用するモノマーを下記表5に記載のモノマー及び含有量に変更した以外は、樹脂A−1の合成と同様の方法により、含フッ素樹脂E−1〜E−11及びトップコート用樹脂PT−1〜PT−3をそれぞれ合成した。
【0368】
【表5】
【0369】
表5に記載した各モノマーの詳細を以下に示す。
【0370】
【化74】
【0371】
(実施例1〜25、及び、比較例1〜5)
<感光性樹脂組成物の調製>
表6に示す成分を溶剤に溶解させ、それぞれについて固形分濃度4.5質量%の溶液を調製し、これを0.03μmのポアサイズを有するポリエチレンフィルターで濾過してポジ型感光性樹脂組成物を調製した。調製した感光性樹脂組成物を下記の方法で評価し、評価結果を表9に示した。
【0372】
【表6】
【0373】
表6に記載の上述した以外の略号の詳細を、以下に示す。
なお、D−1〜D−13については、上述したD−1〜D−13とそれぞれ同じ化合物である。
【0374】
【化75】
【0375】
【化76】
【0376】
また、D−1〜D−18の沸点、及び、共役酸のpKaを、以下の表7に示す。
【0377】
【表7】
【0378】
【化77】
【0379】
【化78】
【0380】
C−1:プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)
C−2:シクロヘキサノン
C−3:プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)
C−4:γ−ブチロラクトン
C−5:プロピレンカーボネート
C−6:2−エチルブタノール
C−7:パーフルオロブチルテトラヒドロフラン
C−8:4−メチル−2−ペンタノール
【0381】
<トップコート組成物の調製>
トップコート組成物を使用した実施例においては、表8に記載した樹脂を、表7に記載の溶剤に溶解させ、固形分濃度3質量%の溶液を調製した以外は、感光性樹脂組成物の調製と同様の方法によりトップコート組成物を調製し、膜厚50nmの保護膜(トップコート)を、後述するレジスト膜の上に形成して評価した。
【0382】
【表8】
【0383】
表8に記載の上述した以外の略号の詳細を、以下に示す。
【0384】
【化79】
【0385】
FT−1:4−メチル−2−ペンタノール(MIBC)
FT−2:n−デカン
FT−3:ジイソアミルエーテル
【0386】
<評価>
−抜きパターンの形成時における焦点深度の許容度評価(DOF性能試験)−
シリコンウエハ(直径12インチ)上に反射防止膜ARC29A(日産化学工業(株)製)を塗布し、205℃で、60秒間ベークを行い、膜厚86nmの反射防止膜を形成した。その上に調製した感光性樹脂組成物を塗布し、100℃で、60秒間ベークを行い、膜厚100nmの感光性膜(レジスト膜)を形成した。得られたウエハをArFエキシマレーザー液浸スキャナー(ASML社製XT1700i、NA1.20、Annular、アウターシグマ0.700、インナーシグマ0.400、XY偏向)を用い、開口部分が100nmであり、かつ、ホール間のピッチが800nmである6%ハーフトーンマスクを通して露光した。液浸液としては超純水を使用した。その後100℃で、60秒間加熱した後、テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド水溶液(2.38質量%)で30秒間現像し、純水でリンスした後、スピン乾燥して直径85nmの孤立ホールパターンを得た。
直径85nmの孤立ホールパターンを再現する露光量及び焦点深度をそれぞれ最適露光量及び最適焦点深度とし、露光量を最適露光量としたまま、焦点深度を、最適焦点深度から変化(デフォーカス)させた際に、上記直径の±10%(すなわち85nm±10%)の直径を許容する焦点深度幅(nm)を観測した。この値を以下の基準で評価した。
A:上記焦点深度幅が130nm以上
B:上記焦点深度幅が100nm以上130nm未満
C:上記焦点深度幅が100nm未満
【0387】
−パターン直線性(ラインウィズスラフネス(LWR))−
線幅75nmの1:1ラインアンドスペースパターンの6%ハーフトーンマスクを通して露光した以外は、上記と同じ条件でラインアンドスペースパターンを得た。ラインサイズが平均75nmのラインパターンを解像する露光量を最適露光量とし、最適露光量にて解像した75nm(1:1)のラインアンドスペースのレジストパターンに対して、測長走査型電子顕微鏡(SEM、(株)日立製作所製S−9380II)を使用してパターン上部から観察する際、線幅を任意の32ポイントで観測し、その測定ばらつきを3σ(単位:nm)で評価した。評価基準を以下に示す。3σの値が小さいほど良好な性能であることを示す。
A:3σの値が5nm以下
B:3σの値が5nmを超え7nm以下
C:3σの値が7nmを超える
【0388】
評価結果をまとめて表9に示す。
【0389】
【表9】
【0390】
表9に示すように、本開示に係る感光性樹脂組成物は、比較例の感光性樹脂組成物に比べ、抜きパターンの形成時における焦点深度の許容度が大きい。
また、本開示に係る感光性樹脂組成物によれば、直線性に優れるパターンが得られた。