(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記制御部は、前記停止制御において、前記開閉弁を開状態から閉状態に移行させる制御信号を前記開閉弁に送信する直前に、前記流量制御機構に前記第2流量を前記流量目標値として与える制御信号を送信する、請求項1記載の基板液処理装置。
前記流量制御機構の前記流量制御弁は、操作ポートを有する定圧弁として形成され、前記定圧弁の二次側圧力は、前記操作ポートに与えられる空気圧に応じて変化させることができ、前記流量制御機構は、前記定圧弁の前記操作ポートに操作空気圧を与える電空レギュレータをさらに有し、前記制御部は、前記電空レギュレータに、前記流量目標値に応じた操作空気圧を前記定圧弁に与えさせる、請求項1または2記載の基板液処理装置。
前記制御部は、前記処理液の種類毎に、前記停止制御を行う必要性の有無及び前記停止制御において用いるべき前記第2流量の値が記録されたデータベースを有し、前記制御部は、前記データベースを参照して、前記停止制御を行うか否かを決定するとともに、前記停止制御を行う場合には前記第2流量の値を決定する、請求項1から4のうちのいずれか一項に記載の基板液処理装置。
基板を保持する基板保持部と、前記基板保持部により保持された前記基板に処理液を供給するノズルと、一端がノズルに、他端が処理液供給源に接続された供給ラインと、前記供給ラインに設けられた流量計及び流量制御弁を有する流量制御機構と、前記流量制御弁の下流側において前記供給ラインに設けられた開閉弁と、を備え、前記流量制御機構は、前記流量計の検出値が、当該流量制御機構に与えられた流量目標値と一致するように前記流量制御弁を調節するように構成されている基板液処理装置において、前記ノズルから前記基板に前記処理液を供給する処理液供給方法において、
前記ノズルから第1流量で前記処理液を前記基板に供給するときに、前記開閉弁を開状態とし、かつ、前記流量制御機構に前記第1流量を前記流量目標値として与え、
前記ノズルから前記第1流量で前記処理液を前記基板に供給している状態から前記ノズルからの前記処理液の供給を停止させるときに、前記開閉弁を開状態から閉状態に移行させるとともに、遅くとも前記開閉弁の開状態から閉状態への移行が開始されるまでに、前記流量制御機構に前記第1流量よりも小さい第2流量を前記流量目標値として与える停止制御を行う、
ことを特徴とする処理液供給方法。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に添付図面を参照して本発明の実施形態について説明する。
【0013】
図1は、本実施形態に係る基板処理システムの概略構成を示す図である。以下では、位置関係を明確にするために、互いに直交するX軸、Y軸およびZ軸を規定し、Z軸正方向を鉛直上向き方向とする。
【0014】
図1に示すように、基板処理システム1は、搬入出ステーション2と、処理ステーション3とを備える。搬入出ステーション2と処理ステーション3とは隣接して設けられる。
【0015】
搬入出ステーション2は、キャリア載置部11と、搬送部12とを備える。キャリア載置部11には、複数枚の基板、本実施形態では半導体ウエハ(以下ウエハW)を水平状態で収容する複数のキャリアCが載置される。
【0016】
搬送部12は、キャリア載置部11に隣接して設けられ、内部に基板搬送装置13と、受渡部14とを備える。基板搬送装置13は、ウエハWを保持するウエハ保持機構を備える。また、基板搬送装置13は、水平方向および鉛直方向への移動ならびに鉛直軸を中心とする旋回が可能であり、ウエハ保持機構を用いてキャリアCと受渡部14との間でウエハWの搬送を行う。
【0017】
処理ステーション3は、搬送部12に隣接して設けられる。処理ステーション3は、搬送部15と、複数の処理ユニット16とを備える。複数の処理ユニット16は、搬送部15の両側に並べて設けられる。
【0018】
搬送部15は、内部に基板搬送装置17を備える。基板搬送装置17は、ウエハWを保持するウエハ保持機構を備える。また、基板搬送装置17は、水平方向および鉛直方向への移動ならびに鉛直軸を中心とする旋回が可能であり、ウエハ保持機構を用いて受渡部14と処理ユニット16との間でウエハWの搬送を行う。
【0019】
処理ユニット16は、基板搬送装置17によって搬送されるウエハWに対して所定の基板処理を行う。
【0020】
また、基板処理システム1は、制御装置4を備える。制御装置4は、たとえばコンピュータであり、制御部18と記憶部19とを備える。記憶部19には、基板処理システム1において実行される各種の処理を制御するプログラムが格納される。制御部18は、記憶部19に記憶されたプログラムを読み出して実行することによって基板処理システム1の動作を制御する。
【0021】
なお、かかるプログラムは、コンピュータによって読み取り可能な記憶媒体に記録されていたものであって、その記憶媒体から制御装置4の記憶部19にインストールされたものであってもよい。コンピュータによって読み取り可能な記憶媒体としては、たとえばハードディスク(HD)、フレキシブルディスク(FD)、コンパクトディスク(CD)、マグネットオプティカルディスク(MO)、メモリカードなどがある。
【0022】
上記のように構成された基板処理システム1では、まず、搬入出ステーション2の基板搬送装置13が、キャリア載置部11に載置されたキャリアCからウエハWを取り出し、取り出したウエハWを受渡部14に載置する。受渡部14に載置されたウエハWは、処理ステーション3の基板搬送装置17によって受渡部14から取り出されて、処理ユニット16へ搬入される。
【0023】
処理ユニット16へ搬入されたウエハWは、処理ユニット16によって処理された後、基板搬送装置17によって処理ユニット16から搬出されて、受渡部14に載置される。そして、受渡部14に載置された処理済のウエハWは、基板搬送装置13によってキャリア載置部11のキャリアCへ戻される。
【0024】
図2に示すように、処理ユニット16は、チャンバ20と、基板保持機構30と、処理流体供給部40と、回収カップ50とを備える。
【0025】
チャンバ20は、基板保持機構30と処理流体供給部40と回収カップ50とを収容する。チャンバ20の天井部には、FFU(Fan Filter Unit)21が設けられる。FFU21は、チャンバ20内にダウンフローを形成する。
【0026】
基板保持機構30は、保持部31と、支柱部32と、駆動部33とを備える。保持部31は、ウエハWを水平に保持する。支柱部32は、鉛直方向に延在する部材であり、基端部が駆動部33によって回転可能に支持され、先端部において保持部31を水平に支持する。駆動部33は、支柱部32を鉛直軸まわりに回転させる。かかる基板保持機構30は、駆動部33を用いて支柱部32を回転させることによって支柱部32に支持された保持部31を回転させ、これにより、保持部31に保持されたウエハWを回転させる。
【0027】
処理流体供給部40は、ウエハWに対して処理流体を供給する。処理流体供給部40は、処理流体供給源70に接続される。
【0028】
回収カップ50は、保持部31を取り囲むように配置され、保持部31の回転によってウエハWから飛散する処理液を捕集する。回収カップ50の底部には、排液口51が形成されており、回収カップ50によって捕集された処理液は、かかる排液口51から処理ユニット16の外部へ排出される。また、回収カップ50の底部には、FFU21から供給される気体を処理ユニット16の外部へ排出する排気口52が形成される。
【0029】
次に、処理流体供給部40及び処理流体供給源70を含む処理液供給系について説明する。
【0030】
処理流体供給源70は、少なくとも一つの処理液供給源を有している。
図3に示す実施形態においては、処理流体供給源70は、第1処理液供給源71と、第2処理液供給源72とを有している。第1処理液供給源71は、第1処理液として界面活性剤を含むバッファードフッ酸(BHF)である。第2処理液供給源72は、第2処理液として例えばDIW(純水)を供給する。
【0031】
一実施形態において、図示は省略するが、第1及び第2処理液供給源71,72はそれぞれ、処理液を供給するタンクと、タンクに接続された循環ラインと、タンクから出て循環ラインを通ってタンクに戻る循環流を形成する循環ラインに設けられたポンプと、循環ラインに設けられたヒータ、フィルタ等の機器類を備えてなる。第1及び第2処理液供給源71,72の構成はこれに限定されるものではなく、処理液を加圧状態で供給できるものであれば、任意の構成を採用することができる。
【0032】
第1処理液供給源71には供給ライン711が接続され、第2処理液供給源72には供給ライン721が接続されている。供給ライン711には開閉弁712が介設され、供給ライン721には開閉弁722が介設されている。供給ライン721は、合流点711aにおいて、供給ライン711に合流している。
【0033】
なお、処理液供給源71,72が前述したようにタンク及び循環ラインを有するものである場合、供給ライン711は第1処理液用の循環ラインに接続され、供給ライン721は第2処理液用の循環ラインに接続される。
【0034】
供給ライン711には、上流側から順に、前述した開閉弁712、流量計714、定圧弁715及び開閉弁717(開閉弁717の開閉弁本体717a)が介設されている。供給ライン711の下流端は、処理流体供給部40としてのノズル(以下、「ノズル40」とも呼ぶ)に接続されている。
【0035】
ノズル40に一種類の処理液だけを供給できればよい場合には、処理液供給源72、供給ライン721及び開閉弁722は省略することができる。この場合、供給ライン711の開閉弁712も省略することができる。つまり、定圧弁715よりも上流側にある開閉弁712及び開閉弁722は、ノズル40に供給する処理液を切り換えることを目的として設けられるものであり、ノズル40からの処理液の供給(吐出)及び供給停止動作には直接関与しない。
【0036】
開閉弁717(開閉弁本体717a)の下流側の分岐点711bにおいて、供給ライン711から、ドレンライン718が分岐している。ドレンライン718には、開閉弁719a及びオリフィス719bが介設されている。ドレンライン718は、ノズル40からの処理液の供給(吐出)終了後に、ノズル40からの液垂れをより確実に防止するために、ノズル40の吐出口付近にある処理液を供給ライン711の上流側に引き戻すために用いられる。
【0037】
定圧弁715を通過して流れる処理液の流量は、定圧弁715の操作ポート715a(パイロットポート)に、電空レギュレータ716(操作圧力供給部)から精密に制御された空気圧である操作圧力PPを供給することにより制御することができる。具体的には、制御装置4(制御装置4の下位のコントローラでもよい)は、プロセスレシピに規定されている流量目標値と流量計714の検出値との偏差を算出するとともに、その偏差に基づいてフィードバック制御演算を行い、流量目標値を達成するために必要な定圧弁715の二次側圧力を達成するために必要な操作圧力PPを求める。そして、制御装置4は、求めた操作圧力PPを操作ポート715aに供給することを指示する制御信号を電空レギュレータ716に送信する。このようにして、供給ライン711を介してノズル40からウエハWに供給される処理液の流量が所望の値に制御される。つまり、本実施形態では、定圧弁715を流量制御弁として用いている。流量計714,定圧弁715及び電空レギュレータ716は、流量制御機構を構成する。
【0038】
定圧弁715を流量制御機構の流量制御弁として用いることが好ましいが、他の形式の弁、例えばニードル弁を定圧弁715に代えて用いてもよい。流量計714の検出値が流量目標値と一致するように十分なレスポンスをもってフィードバック制御を行うことが可能であるならば、流量制御機構の流量制御弁の形式は、任意である。
【0039】
開閉弁717は、閉弁速度を調節可能なエアーオペレートバルブとして構成されている。開閉弁717は開閉弁本体717aを有し、開閉弁本体717aの弁体は閉鎖方向にばね付勢されている。開閉弁本体717aの操作ポート717bは、操作圧ライン717cを介して、圧縮空気供給源717dに接続されている。操作圧ライン717cには、ソレノイド弁717e及び弁ユニット717fが設けられている。弁ユニット717fは、並列に配置された可変絞り717g及び逆止弁717hを内蔵している。
【0040】
ソレノイド弁717eを開くと、弁ユニット717fの主に逆止弁717hを介して圧縮空気が開閉弁本体717aに供給され、これにより開閉弁本体717aの弁体が開く。ソレノイド弁717eを閉じると、開閉弁本体717aの弁体がばねの力により閉位置に戻ろうとするが、このとき、開閉弁本体717aから排出される空気は、逆止弁717hを通過することはできず、可変絞り717gのみを通過する。従って、可変絞り717gの開度を小さく(大きく)することにより開閉弁本体717aの閉弁速度を遅く(速く)することができる。
【0041】
処理ユニット16には、さらに、第2の処理流体供給部としての二流体ノズル40Aが設けられている。二流体ノズル40Aには、純水供給源73aから、開閉弁及び流量制御弁等の流量制御機器73bが介設された純水供給ライン73cを介して純水(DIW)が供給され、また、窒素ガス供給源74aから、開閉弁及び流量制御弁等の流量制御機器74bが介設されたガス供給ライン74cを介して窒素ガスが供給される。二流体ノズル40Aの内部において、窒素ガスに純水が混合されることにより純水がミスト化され、ミスト化された純水と窒素ガスとの混合流体(二流体)が二流体ノズル40Aから供給(吐出)される。
【0042】
処理ユニット16には、さらに、第3の処理流体供給部としての固定ノズル40Bが設けられている。固定ノズル40Bは、回収カップ50の上部に固定されている。二流体ノズル40Aには、純水供給源75aから、開閉弁及び流量調整弁等の流量制御機器75bが介設された純水供給ライン75cを介して純水(DIW)が供給される。固定ノズル40Bに供給された純水は、保持部31により保持されたウエハWの中心部に着液するように、水平方向に又は斜め上方に吐出される。
【0043】
ノズル40及び二流体ノズル40Aは共通のノズルアームにより保持されるか、あるいは、別々のノズルアームにより保持され、いずれの場合も、ウエハWの上方の処理位置と、回収カップ50の外側の待機位置との間で移動することができる。
【0044】
固定ノズル40Bから供給される純水(DIW)は、微量のアンモニアを含んでいてもよい。すなわち、固定ノズル40Bから機能水が供給されていてもよい。
【0045】
次に、処理ユニット16で実行されるウエハWの液処理について説明する。なお、以下に説明する例では、ノズル40には第1処理液供給源71から処理液が供給されるものとする。従って、一枚のウエハWに対して液処理を行っている間、開閉弁712はずっと開いたままであり、開閉弁722は閉じたままである。これらの開閉弁712,722については今後言及しない。
【0046】
基板搬送装置17により処理ユニット16内にウエハWが搬入され、基板保持機構30により水平姿勢で保持される。次に、基板保持機構30により、ウエハWを鉛直軸線周りに回転させる。ウエハWの処理が終了するまでの間、ウエハWは継続的に回転させられる。この状態で、ノズル40がウエハWの中心部の真上に位置し、開閉弁717(開閉弁本体717a)が開かれ、ノズル40から、流量制御機構713により制御された流量で、界面活性剤を含むBHF(以下、記載の簡略化のため単に「BHF」と呼ぶ)がウエハWに供給される。これにより、ウエハWに所定の液処理(エッチング処理)が施される。
【0047】
その後、開閉弁717(開閉弁本体717a)が閉じられ、ノズル40がウエハWの中心部の真上から退避する。開閉弁717の閉鎖時の作用については後に詳述する。
【0048】
次に、固定ノズル40Bから機能水(微量のアンモニアを含むDIW)がウエハWの中心部に供給される。また、二流体ノズル40AがウエハWの中心部の真上に位置し、二流体ノズル40Aから、純水(DIW)のミストと窒素ガスとの混合流体(二流体)がウエハWの中心部に向けて吹き付けられる。次いで、二流体ノズル40Aは、二流体を吐出しながら、回転するウエハWの周縁部の真上の位置に向けて移動する。これにより、ウエハWの表面の全域に対して、二流体洗浄処理が施される。二流体洗浄処理においては、二流体の持つ高い物理的エネルギーにより、ウエハWの表面に付着している前工程の反応生成物等が効率良く除去される。
【0049】
二流体ノズル40Aから二流体を供給することにより、ウエハW上に付着しているパーティクルを効率良く除去することができるが、ウエハW上に形成される液膜の厚さが通常の洗浄と比べて薄くなる傾向にある。液膜が薄いと、ウエハWから一旦除去されたパーティクルがウエハWの外周部においてウエハWに再付着しやすくなる。しかし、本実施形態では、固定ノズル40BからもウエハWに供給しているため、ウエハWの表面には十分な厚さの液膜が形成される。また、処理液として機能水(微量のアンモニアを含むDIW)を用いているため、ウエハWの表面の電位とパーティクルの電位が共に負になり互いに反発するため、一旦除去されたパーティクルがウエハWに再付着することをより確実に防止することができる。
【0050】
二流体ノズル40AがウエハWの周縁部の真上の位置まで移動したら、二流体ノズル40AをウエハWの中心部の真上の位置まで戻し、その位置で固定する。次いで、二流体ノズル40Aへの純水の供給を継続しつつ、窒素ガスの供給を停止する。これにより、二流体ノズル40Aから純水(これはミスト状態でない)がウエハWの中心部に供給され、これによりウエハWにリンス処理が施される。二流体ノズル40Aへの窒素ガスの供給を停止したときに、固定ノズル40Bからの機能水の吐出を停止してもよい。
【0051】
リンス処理の終了後、二流体ノズル40A(及び固定ノズル40B)からの純水の供給を停止し、好ましくはウエハWの回転数を増し、振り切り乾燥を行う。以上により、一枚のウエハWに対する一連の液処理が終了する。液処理が終了したウエハWは、処理ユニット16から搬出される。
【0052】
次に、上記のエッチング処理における、ノズル40からの処理液(すなわち、界面活性剤を含むBHF)の供給開始から供給停止に至るまでの供給制御について、
図4も参照して説明する。なお、以下の制御動作は、記憶部19に記憶されたプロセスレシピに基づいて制御装置4が基板処理システム1の構成要素を制御することにより行われる。
【0053】
まず、ノズル40からの供給待機状態において、開閉弁717(開閉弁本体717a)は閉じられ、制御装置4の指令に基づいて電空レギュレータ716から定圧弁715の操作ポート715aに、初期の操作圧力PPとして例えば50kPaの操作圧力PPが与えられている。時点T1において、制御装置4は、ノズル40からの処理液の供給(吐出)を開始させるための制御信号を送信する。詳細には、制御装置4は、ソレノイド弁717eを開けるための制御信号を送信する。ソレノイド弁717eが開くと、開閉弁本体717aが開き、供給ライン711に処理液が流れ始める。
【0054】
制御装置4は、流量計714の検出値の流量目標値(例えば第1流量)に対する偏差を算出し、その偏差に基づいてフィードバック制御演算を行い、流量目標値を達成するために必要な操作圧力PPを求める。そして制御装置4は、電空レギュレータ716に、求めた操作圧力PPを定圧弁715に供給させるための制御信号を送信する。これにより、ノズル40から制御された流量(例えば第1流量)で処理液がウエハWに供給される。
【0055】
なお、ここで、フィードバック制御が安定的に行われているときの操作圧力PPが、概ね75kPa付近で小さく変動しているものとする(
図4のグラフにおいて符号Bで示す部分を参照)。初期の操作圧力PPを、安定制御時の操作圧力PPである約75kPaに対して適当に小さい値(これは固定値である)とすることにより、フィードバック制御開始直後に、問題となるレベルの制御不安定(例えば
図4のグラフにおいて符号Aで示すオーバーシュートが大きくなること)が生じることもなく(これは初期の操作圧力PPを大きくしすぎたときに生じうる)、流量が流量目標値で安定するまでに必要な時間が長くなりすぎることもない(これは初期の操作圧力PPを小さくしすぎたときに生じうる)。
【0056】
時点T1から予め定められた時間が経過した時点T2において、制御装置4は、ノズル40からの処理液の供給(吐出)を停止するための制御信号を送信する。時点T2は時点T1から予め定められた時点に限らず、流量計714の検出値の積分値(すなわちノズル40からの処理液の吐出総量)が予め定められた値となった時点であってもよい。
【0057】
時点T2においてノズル40からの処理液の供給(吐出)を停止するために制御装置4から送信される制御信号は、流量制御機構713に第1流量より小さい第2流量を流量目標値として与える第1制御信号と、開閉弁717を開状態から閉状態に移行させる第2制御信号を含む。詳細には、時点T2において、制御装置4は、電空レギュレータ716に対して、定圧弁715に供給する操作圧力PPを、供給ライン711に上記第1流量で安定的に処理液が流れているときの操作圧力PPである約75kPaよりも小さく、かつ、初期の操作圧力PPである50kPaよりも小さい供給停止用操作圧力、例えば25kPaまで低下させる制御信号(第1制御信号)を送信する。これにより、定圧弁の開度が小さくなり、供給ライン711に流れる処理液の流量が、上記第1流量から、第2流量(これは第1流量より小さい)に減少する(開閉弁717(開閉弁本体717a)が開状態に維持されている場合)。また、時点T2において、制御装置4は、開閉弁717(開閉弁本体717a)を制御された閉弁速度で閉鎖するために、可変絞り717gの開度を予め定められた値に絞るための制御信号及びソレノイド弁717eを閉鎖するための制御信号(第2制御信号)を送信する。
【0058】
なお、可変絞り716fは時点T2より前に絞っていてもよい。また、開閉弁本体717aの閉弁速度を変更する必要がないのであれば(例えば常時同じ低速度で閉弁してもよいのであれば)、可変絞り716fに代えて固定絞り(オリフィス)を設けてもよい。
【0059】
上記の操作により、供給ライン711を流れる処理液の流量が減少した状態で、開閉弁717(開閉弁本体717a)が閉じられる。このため、ノズル40から供給(吐出)されている処理液の流量(つまり流速)が比較的低い状態で、処理液の流れが停止する(時点T3)。このため、界面活性剤を含有するBHFのように低い表面張力の処理液を用いた場合でも、ノズル40内の処理液の先端部分に作用する慣性力が、当該先端部分が千切れることを防止しようとする表面張力を上回ることが防止される。このため、ノズル40内での液千切れの発生を防止することができ、ひいてはノズル40からの液垂れを防止することができる。
【0060】
また、開閉弁717(開閉弁本体717a)がゆっくりと閉じられるため、開閉弁717が急激に閉じられた場合と比較して、ノズル40内での液千切れの発生はより生じ難くなる。
【0061】
図5は、時点T2において操作圧力PPを低下させる制御を行わずに開閉弁716を閉じた場合に生じうるノズル40内での液千切れを模式的に示した図である。ノズル40内で処理液Lが急停止することにより処理液Lの先端部に作用する慣性力により膨れ部D1が生じる。膨れ部D1の根元に作用する表面張力が大きい場合には、表面張力により膨れ部D1が処理液Lに引き戻されるが、表面張力が小さい場合には、慣性力により膨れ部D1が分離して液滴D2となる。従って、処理液の表面張力が小さい場合(例えば処理液が界面活性剤を含むBHFの場合)には、慣性力をできるだけ小さくするため、ノズル40内を流れる処理液の流量(流速)を小さくした状態で、開閉弁717(開閉弁本体717a)を閉じるのがよい。これにより、膨れ部D1が生じたとしても表面張力により膨れ部D1が処理液Lに引き戻され、液滴D2は生じない。
【0062】
ノズル40からの処理液の供給(吐出)が停止した時点T3の後、時点T4において、操作圧力PPを前述した初期の操作圧力(本例では50kPa)まで上昇させる。時点T4は、次に処理されるウエハWに対して処理液の吐出が開始される時点T1より前の任意の時点とすることができる。
【0063】
開閉弁717(開閉弁本体717a)が完全に閉じられた後に、ノズル40内に存在する処理液を上流側に引き戻す操作を行ってもよい。すなわち、開閉弁717が閉じられた状態で、ドレンライン718の開閉弁719aを開くと、ドレンライン718内に存在する処理液が重力で下方に落ちてゆき、これに伴い、サイフォンの原理により、ノズル40内及びその近傍の供給ライン711内に存在する処理液が供給ライン711の上流側の領域に引き込まれる。これにより、少なくともノズル40内に処理液が存在しない状態にすることができ、ノズル40からの液垂れをより確実に防止することができる。上記の操作を可能とするため、開閉弁719a及びドレンライン718内の下流端の高さ位置はノズル40の高さ位置よりも低く設定される。なお、この操作により、供給ライン711に2種類以上の処理液が供給される場合に、第2の処理液の開始初期に第1の処理液がノズル40から供給されることを抑制することもできる。
【0064】
上記実施形態によれば、ノズル40からの処理液の供給を停止するときに、ノズル40内での液千切れの発生を防止することができ、ノズル40からの液垂れを防止することができる。また、上記実施形態においては、ノズル40からの処理液の供給を停止するときに、処理液をウエハWに供給せずに捨てる必要がないため、処理液の利用効率が向上し、また、ウエハWに供給される処理液の総量を精確に管理することができる。
【0065】
上記実施形態は下記のように改変することができる。
【0066】
図3に破線で示すように、ノズル40の吐出口近傍を撮影するカメラ80を設け、カメラ80より撮影された画像により処理液の供給停止時に液垂れが生じたことが確認された場合にのみ、上述した停止制御(定圧弁715の操作圧力PPを供給停止用操作圧力まで低減すること)を行ってもよい。つまり、カメラ画像に基づいて、上述した停止制御を行うか否かを判断してもよい。また、ある供給停止用操作圧力(第2流量に対応)において液垂れが生じたことがカメラ画像により確認された場合、供給停止用操作圧力をさらに小さくしてもよい。つまり、カメラ画像に基づいて、供給停止用操作圧力(第2流量)の決定または変更を行ってもよい。
【0067】
処理液の種類毎に、上述した停止制御を行う必要性の有無及び停止制御において用いるべき供給停止用操作圧力(または第2流量)の値が記録されたデータベースを制御装置4が備えていてもよい。データベースは制御装置4の記憶部19に格納しておくことができる。このようなデータベースは、実験結果に基づいて作成することができる。制御装置4は、ウエハWに実際に処理液を供給する場合に、データベースを参照して、停止制御を行うか否かを決定するとともに、停止制御を行う場合には供給停止用操作圧力(第2流量)の値を決定するように構成されていてもよい。
【0068】
前述した実施形態では、時点T2において、定圧弁715の操作圧力PPの低下と、開閉弁716の閉鎖開始とを同時に行っているが、定圧弁715の操作圧力PPの低下を時点T2よりもやや前の時点(T2’)に開始してもよい(
図4において時点T2より前の時点T2’から立ち下がる鎖線Cを参照)。この場合、制御装置4は、開閉弁717を開状態から閉状態に移行させる制御信号(前述した第2制御信号)を開閉弁717に送信する直前に、電空レギュレータ716に対して、定圧弁715に供給する操作圧力PPを供給停止用操作圧力まで低下させる制御信号(前述した第1制御信号)を送信する。前述した実施形態では、開閉弁716をゆっくりと閉じることにより、ノズル40から供給される処理液の総量が意図した値よりやや大きくなる傾向にあるが、定圧弁715の操作圧力PPの低下のタイミングをやや早めることにより、開閉弁716をゆっくりと閉じることに起因する処理液の総供給量の増大を相殺することができる。
【0069】
前述した実施形態では、流量制御弁としての定圧弁715が開閉弁717の上流側にあったが、下流側にあってもよい。この場合も、上記と同様の停止制御を行うことにより同様の高価を得ることができる。
【0070】
処理対象の基板は半導体ウエハWに限らず、ガラス基板、セラミック基板等の他の種類の基板であってもよい。