(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0013】
(本発明の実施形態)
本発明の一実施形態において、
(A)ポリエステル組成物の全重量を基準として、15〜99重量%の2種以上のポリエステルのポリエステルブレンド、
(B)ポリエステル組成物の全重量を基準として、0.05〜5重量%のエステル交換促進剤、ここでエステル交換促進剤は、アルカリ金属炭酸塩、アルカリ土類金属炭酸塩、アルカリ金属重炭酸塩、アルカリ土類金属重炭酸塩およびこれらの組み合わせを含む、
(C)任意で強化フィラー、および
(D)任意でさらなる添加剤、
を含むポリエステル組成物を提供する。
【0014】
本発明の一実施形態において、ポリエステルブレンドは、ポリエステル組成物の全重量を基準として、好ましくは30〜90重量%の量で存在する。
【0015】
本発明の一実施形態において、エステル交換促進剤は、アルカリ金属炭酸塩、アルカリ土類金属炭酸塩、アルカリ金属重炭酸塩、アルカリ土類金属重炭酸塩およびこれらの組み合わせから成る群を含むか、またはこの群より選択される。
【0016】
本発明の好ましい実施形態において、エステル交換促進剤は、アルカリ金属炭酸塩、アルカリ金属重炭酸塩およびこれらの組み合わせから成る群を含むか、またはこの群より選択される。
【0017】
本発明の一実施形態において、エステル交換促進剤は、炭酸ナトリウム、炭酸リチウム、炭酸カリウム、炭酸カルシウム、重炭酸ナトリウム、重炭酸リチウム、重炭酸カリウム、重炭酸カルシウムおよびこれらの組み合わせから成る群を含むか、またはこの群より選択される。好ましくは、エステル交換促進剤は、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸リチウム、重炭酸ナトリウム、重炭酸カリウム、重炭酸リチウムおよびこれらの組み合わせから成る群を含むか、またはこの群より選択される。
【0018】
本発明の一実施形態において、エステル交換促進剤は、アルカリ金属炭酸塩またはアルカリ金属重炭酸塩またはこれらの混合物である。
【0019】
エステル交換促進剤は、それぞれポリエステル組成物の全重量を基準として、好ましくは約0.05〜2重量%、より好ましくは約0.05〜1重量%の量で存在する。
【0020】
本発明の一実施形態において、ポリエステル組成物は、さらに、強化フィラーを、例えば繊維または微粒子の形態で含むことができる。好ましくは、強化フィラーは、炭素繊維、ガラス繊維(GF)、ポリアミド繊維、セルロース繊維、セラミック繊維およびこれらの組み合わせを含む。
【0021】
ポリエステル組成物は、さらに、当業者によく知られた添加剤、例えば潤滑剤、熱酸化防止剤、核形成剤、顔料、難燃剤およびこれらの組み合わせを含む添加剤を含むことができる。
【0022】
本発明の一実施形態において、添加剤の含量は、ポリエステル組成物の全重量を基準として、0.01〜70重量%である。
【0023】
また、本発明は、前記ポリエステル組成物から製造された物品も提供する。
【0024】
それに加えて、本発明は、以下の工程:
(1)2種以上のポリエステルの混合物、エステル交換促進剤および任意の強化フィラーおよび任意のさらなる添加剤を用意する工程、および
(2)混合物を装置内で混ぜ合わせる工程、
を含む物品の製造方法を提供する。
【0025】
本発明の一実施形態において、本方法は、150〜350℃の温度で実施される。
【0026】
上記のエステル交換促進剤を使用することによって、ポリエステル組成物はエステル交換の促進を示し、例えばできあがる生成物は、より低い溶融温度、より低いプロセス温度、より高い溶融流動性およびより低い結晶化温度を有し、これにより、後にエンドユーザーの部品を作製するための射出成形における滞留時間が比較的短くなる。
【0027】
炭酸塩および重炭酸塩が、フィラーで強化されている、または強化されていないポリエステルのエステル交換を促進するのに非常に効果的であると分かった。
【0028】
本発明の1つの実施形態において、ポリエステルは、アルキレンジオールとジカルボン酸とから作製された熱可塑性ポリマーであってよい。
【0029】
好ましいポリエステルの第一群は、好ましくは2〜10個の炭素原子をアルコール部分中に有するポリアルキレンテレフタレートの群である。この種類のポリアルキレンテレフタレートは、それ自体が公知であり、文献に記載されている。それらの主鎖は、芳香族ジカルボン酸から誘導される芳香族環を有する。また、芳香族環は、置換基、例えばハロゲン、例えば塩素もしくは臭素、またはC1〜C4アルキル、例えばメチル、エチル、イソプロピル、n−プロピル、n−ブチル、イソブチルもしくはtert−ブチル基を有することもできる。これらのポリアルキレンテレフタレートは、芳香族ジカルボン酸もしくはそのエステルまたはその他のエステル形成誘導体と脂肪族ジヒドロキシ化合物とをそれ自体が公知のやり方で反応させることによって製造され得る。ここで言及すべき好ましいジカルボン酸は、2,6−ナフタレンジカルボン酸、テレフタル酸およびイソフタル酸、ならびにこれらの混合物である。
【0030】
30mol%まで、好ましくは10mol%以下の芳香族ジカルボン酸を、脂肪族または脂環式ジカルボン酸、例えばアジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカン二酸またはシクロヘキサンジカルボン酸により置き換えることができる。脂肪族ジヒドロキシ化合物のなかでも、2〜6個の炭素原子を有するジオール、特に1,2−エタンジオール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,4−ヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノールおよびネオペンチルグリコール、ならびにこれらの混合物が好ましい。特に好ましいポリエステルは、2〜6個の炭素原子を有するアルカンジオールから誘導されるポリアルキレンテレフタレートである。このなかでも、ポリエチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレートおよびポリブチレンテレフタレート、ならびにこれらの混合物が特に好ましい。また、PET、PPTおよびPBTも好ましく、これらは、1重量%まで、好ましくは0.75重量%までの1,6−ヘキサンジオールおよび/または2−メチル−1,5−ペンタンジオールをその他のモノマー単位として含有することができる。ポリエステルの粘度数は、概して、50〜220ml/g、好ましくは80〜160ml/gの範囲にある(ISO1628に従って、フェノール/o−ジクロロベンゼン混合物(25℃で重量比1:1)において濃度0.5重量%の溶液中で測定)。カルボキシ末端基含量がポリエステル1kgあたり100mmolまで、好ましくはポリエステル1kgあたり60mmolまで、特にポリエステル1kgあたり50mmolまでであるポリエステルが特に好ましい。この種類のポリエステルを製造する1つの手法は、西独国特許出願公開第4401055号公報のプロセスの使用である。カルボキシ末端基含量は、通常、滴定法(例えば電位差測定)により特定される。
【0031】
ここで言及すべき別の群は、芳香族ジカルボン酸および芳香族ジヒドロキシ化合物から誘導される全芳香族ポリエステルの群である。適切な芳香族ジカルボン酸は、先にポリアルキレンテレフタレートのところで記載した化合物である。5〜100mol%のイソフタル酸と0〜95mol%のテレフタル酸とから作製される混合物、特に約80〜50%のテレフタル酸と20〜50%のイソフタル酸とからの混合物が好ましい。芳香族ジヒドロキシ化合物は、ヒドロキシフェニル基を含有する。例としては、2,2−ジ(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ジ(3,5−ジクロロジヒドロキシフェニル)プロパン、1,1−ジ(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、3,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、4,4−ジヒドロキシジフェニルスルホン、2,2−ジ(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、4,4−ジヒドロキシジフェニル、2,4−ジ(4−ヒドロキシフェニル)−2−メチルブタンおよびこれらの混合物があるが、これらに限定されることはない。
【0032】
ここで言及すべき別の群は、ポリエステルブロックコポリマー、例えばコポリエーテルエステルである。この種類の生成物は、それ自体が公知であり、例えば米国特許第3,651,014号明細書に記載されている。また、相応する生成物が市販で入手可能であり、例えばHytrel(登録商標)がある。
【0033】
好ましくは、ポリエステルは、ポリメチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、低融点PETコポリエステルおよびポリシクロヘキセンジメチレンテレフタレート、ならびにこれらの組み合わせから成る群を含むか、またはこの群より選択される。最も好ましくは、ポリエステルを、低融点PETコポリエステル、PET、PBTおよびこれらの組み合わせから選択することができる。
【0034】
PBTは、市販で入手可能な材料であり、さらなる処理をすることなく、受け取ったままの状態で使用することができる。PBTの一般的な溶融点は、約225℃である。好ましくは、PBTは、ISO1628に従ってフェノール/o−ジクロロベンゼン混合物(25℃で重量比1:1)において濃度0.5重量%の溶液中で測定して、80〜170ml/g、より好ましくは90〜150ml/gの粘度数(VN)を特徴とする。
【0035】
適切なPETは、脂肪族ジヒドロキシ化合物であるエチレングリコールと芳香族ジカルボン酸であるテレフタル酸とから誘導され、ここで10mol%までの芳香族ジカルボン酸は、その他の芳香族ジカルボン酸、例えば2,6−ナフタレンジカルボン酸もしくはイソフタル酸もしくはこれらの混合物により置き換えられていてよいか、または脂肪族もしくは脂環式ジカルボン酸、例えばアジピン酸、アゼライン酸もしくはシクロヘキサンジカルボン酸により置き換えられていてよい。また、ポリエチレンテレフタレート中のエチレングリコールを、例えば、使用するポリエチレンテレフタレートの全重量を基準として、0.75重量%までの量で1,6−ヘキサンジオールおよび/または5−メチル−1,5−ペンタンジオールにより置き換えられていてよい。本発明のポリエチレンテレフタレートの粘度数は、概して、40〜120ml/g、好ましくは60〜100ml/gの範囲にある(ISO1628に従って、25℃でフェノール/o−ジクロロベンゼン混合物(1:1)において濃度0.5重量%の溶液中で特定)。
【0036】
低融点PETコポリエステルは、市販で入手可能な材料、例えばSinopecからのLMP製品であってよく、さらなる処理をすることなく、受け取ったままの状態で使用される。低融点PETコポリエステルは、イソフタル酸、ジエチレングリコールなどを含むコモノマーをさらに含有するPETである。イソフタル酸は、低融点PETコポリエステルにおける酸部分を基準として、20〜80mol%の量で存在する。ジエチレングリコールは、低融点PETコポリエステル全体におけるアルコール部分を基準として、2〜10mol%の量で存在する。低融点PETコポリエステルは、標準的なPETまたは上記のPETコポリマーよりはるかに低減された結晶化度を有する。低融点PETコポリエステルの一般的な溶融点は、100〜200℃である。好ましくは、低融点PETコポリエステルは、110〜180℃の溶融点を特徴とする。
【0037】
ポリエステルブレンドは、ポリエステル組成物の全重量を基準として、好ましくは30〜90重量%の量で存在する。ブレンド中には、2種以上の上記ポリエステルがあり得る。各ポリエステルは、組成物中のポリエステル合計重量を基準として、15〜85重量%、より好ましくは30〜70重量%の重量比率を占めることができる。
【0038】
本発明の1つの実施形態において、使用可能な繊維または微粒子のフィラーは、例えば炭素繊維、ガラス繊維、ガラスビーズ、非晶質シリカ、ケイ酸カルシウム、メタケイ酸カルシウム、炭酸マグネシウム、カオリン、白亜、粉末状石英、マイカ、硫酸バリウムおよび長石であり、使用可能な量は、0〜70重量%、好ましくは5〜60重量%、特に30〜55重量%である。
【0039】
ここで言及することができる好ましい繊維フィラーは、炭素繊維、アラミド繊維およびチタン酸カリウム繊維であり、円形または非環状の断面を有するEガラスの形態にあるガラス繊維が特に好ましい。これらを、ロービングとして、または市販で入手可能なチョップドガラスの形態で使用することができる。
【0040】
ガラス繊維は、市販で入手可能な材料であり、さらなる処理をすることなく、受け取ったままの状態で使用することができる。本発明の好ましい1つの実施形態において、ガラス繊維の含量は、ポリエステル組成物の全重量を基準として、好ましくは5〜60重量%、より好ましくは10〜55重量%である。
【0041】
繊維フィラーをシラン化合物で表面前処理して、熱可塑性樹脂との相容性が改善されていてよい。好ましいシラン化合物は、アミノプロピルトリメトキシシラン、アミノブチルトリメトキシシラン、アミノプロピルトリエトキシシランおよびアミノブチルトリエトキシシランであり、またグリシジル基を含む相応するシランでもある。
【0042】
一般的に表面被覆に使用されるシラン化合物の量は、フィラーの0.01〜2重量%、好ましくは0.025〜1.0重量%、特に0.05〜0.5重量%である。
【0044】
本発明の目的のために、針状の鉱物フィラーは、強固に針状に発達していることを特徴とする鉱物フィラーである。その例は、針状のウォラストナイトである。好ましくは、鉱物は、8:1〜35:1、好ましくは8:1〜11:1のL/D(長さ対直径)比を有する。任意で、鉱物フィラーは上記のシラン化合物で前処理されていてよいが、この前処理は必須ではない。
【0045】
ここで言及することができるその他のフィラーは、カオリン、焼成カオリン、ウォラストナイト、タルクおよび白亜、ならびに層状または針状のナノフィラーでもあり、これらのフィラーの量は、好ましくは0.1〜10%である。この目的のために好ましい材料は、ベーマイト、ベントナイト、モンモリロナイト、バーミキュライト、ヘクトライトおよびラポナイトである。層状のナノフィラーを公知の方法により有機的に改質して、これらに、有機バインダーとの良好な相容性を与えることができる。層状または針状のナノフィラーを本発明の組成物に添加することによって、機械的強度がさらに向上する。
【0046】
本発明の好ましい1つの実施形態において、強化フィラーの含量は、ポリエステル組成物の全重量を基準として、1〜60%、好ましくは10〜55重量%である。
【0047】
当業者であれば、ポリエステル組成物は当技術分野におけるその他の従来の添加剤をさらに含むことができると理解できるだろう。
【0048】
例えば、本発明の一実施形態において、ポリエステル組成物は、1種以上の潤滑剤をさらに含むことができる。潤滑剤は、もし含まれている場合、好ましくは、10〜40個の炭素原子を有する飽和した脂肪族カルボン酸のエステルまたはアミド、および2〜40個の炭素原子を有する飽和した脂肪族アルコールまたはアミンのエステルまたはアミドである。潤滑剤が疎水性の高い脂肪酸鎖を含む場合、潤滑剤はさらに、ポリエステル組成物および熱可塑性ポリマーの耐加水分解性において役立つと考えられている。好ましい潤滑剤はテトラステアリン酸ペンタエリトリトールである。潤滑剤は、もし含まれている場合、それぞれポリエステル組成物の全重量を基準として、好ましくは約0.01〜5重量%、より好ましくは約0.01〜3重量%、最も好ましくは約0.01〜2重量%の量で存在する。
【0049】
本発明の一実施形態において、ポリエステル組成物は1種以上の酸化防止剤を含むことができる。酸化防止剤は、もし含まれている場合、好ましくは立体障害フェノール基を有する。当業者であれば、変色に対してポリエステル組成物および熱可塑性ポリマーを安定させ、かつ熱酸化による劣化を防止するために、様々な熱酸化防止剤が使用可能であると理解している。1つの実施形態において、熱酸化防止剤は、ペンタエリトリトールテトラキス(3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート)、テトラキス(メチレン−3−(3’,5’−ジ−tert−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネート)メタン、オクタデシル−3−(3’,5’−ジ−tert−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼンおよび4,4’−(2,2−ジフェニルプロピル)ジフェニルアミンから成る群より選択される1種以上の材料である。また、当業者であれば、上記の熱酸化防止剤の様々な組み合わせおよび混合物を本発明において利用することもできると理解しているものとする。好ましい熱酸化防止剤は、ペンタエリトリトールテトラキス(3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート)である。熱酸化防止剤は、もし含まれる場合、それぞれポリエステル組成物の全重量を基準として、好ましくは0.01〜5重量%、より好ましくは0.01〜3重量%、最も好ましくは0.01〜1.5重量%の量で存在する。
【0050】
本発明の一実施形態において、ポリエステル組成物は、1種以上の核形成剤を含むことができる。核形成剤は、もし含まれている場合、好ましくはタルク、カオリン、マイカ、硫酸カルシウムおよび硫酸バリウムのうち少なくとも1つから選択されるが、これらに限定されることはない。当業者であれば、上記の核形成剤の様々な組み合わせおよび混合物を本発明において利用することもできると理解しているものとする。核形成剤は、もし含まれている場合、それぞれポリエステル組成物の全重量を基準として、好ましくは約0.01〜2重量%、より好ましくは約0.01〜1重量%、最も好ましくは約0.01〜0.1重量%の量で存在する。
【0051】
本発明の一実施形態において、ポリエステル組成物は、1種以上のエラストマー状ポリマーを耐衝撃性改良剤として含むことができる。これらは、概して、好ましくは以下のモノマーのうち少なくとも2つから構成されるコポリマーである:エチレン、プロピレン、ブタジエン、イソブテン、イソプレン、クロロプレン、酢酸ビニル、スチレン、アクリロニトリルおよび(メタ)アクリレート。耐衝撃性改良剤は、ポリエステル組成物の全重量を基準として、好ましくは3〜30重量%の量で存在する。
【0052】
本発明の一実施形態において、ポリエステル組成物は、1種以上の顔料を含むことができる。顔料は、もし含まれている場合、無機または有機化合物を含むことができ、特別な効果および/または色を物品に付与することができる。また、当業者に理解されているように、顔料を担体マトリックス、例えばプラスチック樹脂中に分散させることもできる。1つの実施形態において、顔料はカーボンブラック顔料である。当業者であれば、顔料は、当技術分野で公知の顔料のうちの1つまたはその組み合わせであり得ると理解しているものとする。顔料は、もし含まれている場合、それぞれポリエステル組成物の全重量を基準として、約0.05〜5重量%、より好ましくは約0.5〜3重量%、最も好ましくは約0.5〜1.5重量%の量で存在する。顔料の量は、もし存在すれば、担体マトリックスの量を含む。担体マトリックスを用いる場合、顔料は、顔料および担体マトリックスの全重量を基準として、好ましくは10〜50重量%の量で存在する。
【0053】
本発明の一実施形態において、ポリエステル組成物は、1種以上の難燃剤を含むことができる。難燃剤は、もし含まれている場合、臭素、リン、窒素を含有する化合物を含むことができる。また、難燃剤は金属水酸化物であってよい。難燃剤は、もし含まれている場合、ポリエステル組成物の全重量を基準として、1〜40重量%、好ましくは5〜25重量%の量で存在する。
【0054】
本発明の一実施形態において、各成分を従来の手段でブレンドすることによって、ポリエステル組成物を得る。
【0055】
それから、上記の組成物を、好ましくは押出成形プロセス、ブロー成形または射出成形プロセスにより、溶融、ブレンドおよび成形して物品にすることができる。当業者であれば、本発明が物品の特定の製造方法に制限されないことを理解する。
【0056】
本発明の一実施形態において、ポリエステル、エステル交換促進剤、任意の強化繊維および任意の添加剤を、上記のように従来の手段で混ぜ合わせて物品を形成する。好ましくは、物品を製造する方法の1つは、ポリエステル、エステル交換促進剤および任意の強化繊維および任意の添加剤を上記のように用意する工程、ならびにこれらの成分を混ぜ合わせる工程(通常約150〜350℃の温度で実施される)を含む。当業者であれば、これらの工程をより低いまたはより高い温度で実施することができることを理解する。本発明の方法を、装置、例えばコンパウンダー、単軸押出機、二軸押出機、リング式押出機、メルトブレンダー、ニーダー、ミキサーおよび反応容器などの中で実施することができる。好ましい装置は二軸押出機である。当業者であれば、その他の装置が使用可能であると理解するであろう。
【0057】
特定の理論または機構に限定されることを望むものではないが、エステル交換は、混合プロセスの間に起こり、コポリマーを形成して、より良好な性能、例えばより低い溶融点、より高い溶融流動性およびより低い結晶化度が達成されると考えられている。エステル交換反応は、材料を以下のプロセス、例えばアニール、成形などで溶融する場合、継続してもよい。
【0058】
全てのパーセンテージは、特に記載のない限り重量で示される。
【0059】
これより、以下の実施例を参照することで本発明をさらに説明するが、しかしながら、これらの実施例は、説明目的のために使用されるだけであって、本発明の範囲を制限することを意図してはいない。
【実施例】
【0060】
成分A/1
ISO1628に従った、130ml/gの粘度数(25℃でフェノール/o−ジクロロベンゼン(1:1)混合物において0.005g/mlの溶液から測定)を有するポリブチレンテレフタレート(BASF製Ultradur B4500)
【0061】
成分A/2
ISO1628に従った、107ml/gの粘度数(25℃でフェノール/o−ジクロロベンゼン(1:1)混合物において0.005g/mlの溶液から測定)を有するポリブチレンテレフタレート(BASF製Ultradur B2550)
【0062】
成分B/1
180±5℃の溶融点および0.68dL/gの固有粘度(どちらもGB/T14190−2008に従って測定)を有する低融点PETコポリエステル(Sinopec Shanghai Petrochemical Co.,Ltd製LMP180)
【0063】
成分B/2
0.65dL/gの固有粘度を有する、ポリ(エチレンテレフタレート)(Toray製PET A9203)
【0064】
成分C/1
潤滑剤のテトラステアリン酸ペンタエリトリチル(Emery Oleochemicals製Loxiol P861/3.5)
【0065】
成分C/2
潤滑剤の酸化ポリエチレンワックス(BASF製Luwax OA5)
【0066】
成分D
フィラメント直径(10.5μm)およびストランド長(3mm)を有するガラス繊維(Nippon Electric Glass Company製T187H)
【0067】
成分E/1
黒色顔料(Cabot製Black Pearls880)
【0068】
成分E/2
黒色顔料(BASF製Euthylen Black00−0305)
【0069】
成分F/1
純度99.5%以上のNa
2CO
3(Solvay chemicals製の炭酸ナトリウムIPH)
【0070】
成分F/2
純度99.5%以上のNaHCO
3(Sigma−Aldrich製の重炭酸ナトリウム)
【0071】
成分F/3
純度99.0%のK
2CO
3(Sinopharm Chemical Reagent Co.,Ltd製の炭酸カリウム)
【0072】
成分F/4
純度99.0%以上のNaOAc(酢酸ナトリウム)(Sinopharm Chemical Reagent Co.,Ltd製の酢酸ナトリウム)
【0073】
ポリエステル組成物の一般的な製造プロセスは、成分の乾式ブレンドを含む。それから、プレミックスの溶融押出しを行い、ペレットを形成する。当業者であれば、その他のプロセスを使用することもできることを理解する。
【0074】
DSC測定(示差走査熱量測定)
DSC測定を、乾燥した窒素雰囲気下でMettler ToledoのDSC822e示差走査熱量測定器具を使用して、実施した。試料を10K/分の加熱速度で0℃から260℃に加熱し、5分間260℃に保ち、それから10K/分の冷却速度で260℃から0℃に冷却し、5分間0℃に保った。必要であれば、試料について測定を繰り返すことができる。この場合、Tm−1、−2、−3...は、第1、第2、第3...のDSCサイクルにおける加熱曲線から読み取られる溶融温度を表す。Tc−1は、第1の冷却曲線から読み取られる結晶化温度を表す。
【0075】
光沢測定
光沢測定を、Sheen Tri−Glossmasterを60°で使用して実施し、60×60×2mmのプラーク表面の光沢をISO2813に従って測定した。1つのプラークのランダムの測定点を少なくとも3つ選び、このプラークの光沢度を得た。各試料のプラークを合計5つ測定し、この試料の最終的な平均光沢度を得た。
【0076】
スパイラルフロー測定
スパイラルフローを、厚さ2mmの鋳型を500barで異なる試験温度において使用して、測定した。
【0077】
メルトフロー
メルトボリュームフローレート(MVR)を、ISO1133に従って特定の温度および装填量で測定した。
【0078】
機械的測定
引張特性およびシャルピー特性を、ISO527−2およびISO179/1eU(ノッチなし衝撃強さ)、ISO179/1eA(ノッチ付き衝撃強さ)に従ってそれぞれ測定した。
【0079】
核磁気共鳴測定
試料をCDCl
3/TFA(v:v=3:1)内に溶解させた。13C核磁気共鳴(NMR)を、400MHzで稼動するBruker AVANCE III 400 NMR分光器で実施した。
【0080】
PBTおよび低融点PETコポリエステルブレンド
PBTおよび低融点PETコポリエステルブレンドを、表Iで一覧にされている組成に従って、以下表IIで一覧にされている標準的なPBT押出成形条件を使用して、従来の二軸押出機内でポリエステル組成物を混ぜ合わせることによって製造する。
【表1】
【表2】
【0081】
溶融点の低下は、PBTと低融点PETコポリエステルとの間でエステル交換が起きていることを示す。炭酸ナトリウムの添加によって、実施例1および2の試料は、それぞれ比較例1、比較例2および比較例3と比べ、DSCサイクル試験の経過につれてTmの大幅な低下を示した。これにより、炭酸ナトリウムがPBTと低融点PETコポリエステルとのエステル交換を促進することが証明された。また、それに加えて、実施例1および2からの試料の弾性係数、MVRおよびスパイラルフローは、比較例よりも良好であった。また、実施例1からの試料は、比較例1および比較例2よりも高い表面光沢度を有していた。
【0082】
実施例1および比較例2におけるペレットを、260℃、N2のもと、5分、10分および20分にわたりアニールした。NMRスペクトルを使用して、未処理のペレットおよびアニールしたペレットの分子構造を特徴付けた(
図6Aおよび6B参照)。実施例1において、ショルダーピークは、PBTと低融点PETコポリエステルとの間のエステル交換反応後に分子構造が変化するために、アニール時間5分後に現れ、このショルダーピークは、
図6Aに示されているように、アニール時間がより長くなるにつれて伸び続けた。比較例において、ショルダーピークは、アニール時間20分後にはっきりと現れるだけであった。これにより、炭酸ナトリウムを含有しない比較例2と比べ、実施例1において炭酸ナトリウムがエステル交換を促進することが証明された。
【表3】
【0083】
表IIIにおけるこれらの実験を、PBTと低融点PETコポリエステルとのエステル交換の促進について様々な塩の効果を比較するために行った。それぞれNa
2CO
3、NaHCO
3およびK
2CO
3を含有する実施例3、4および5は、比較例4(触媒塩なし)およびNaOAcが使用された比較例5と比べて、DSCサイクル試験の間にTmにおいて急速な低下を示した。したがって、Na
2CO
3、NaHCO
3およびK
2CO
3は、従来技術である中国特許出願公開第102382424号公報で言及されているNaOAcよりも、エステル交換触媒として効果的である。
【表4】
【0084】
表IVにおけるこれらの実験を、PBTおよび低融点PETコポリエステルブレンド(ガラス繊維なし)における炭酸ナトリウムの効果を比較するために行った。比較例6と比べて、炭酸ナトリウムを含有する実施例6は、DSC加熱サイクルの経過につれてTmの低下を示した。
【表5】
【0085】
表Vにおけるこれらの実験を、PBTおよび低融点PETコポリエステルブレンドにおける異なる装填量の炭酸ナトリウムの効果を比較するために行った。比較例4と比較して、実施例7、8および9は、Tm−2および結晶化点Tc−1の低下を示した。それに加えて、ブレンドにおいて炭酸ナトリウムの装填量が多いほど、ブレンドのTc−1およびTm−2が低くなる。
【0086】
PBTおよびPETブレンド
PBT−PETブレンドを、先に記載のPBT−低融点PETブレンドと同じ手法で製造する。溶融点はDSCにより特定される。結果をそれぞれ表VIに示す。
【表6】
【0087】
明らかに、実施例10(Na
2CO
3を含有するPBT−PETブレンド)は、比較例7(Na
2CO
3なしのPBT−PETブレンド)に比べて、より低いTmを示した。この観察により、Na
2CO
3がPBTとPETとの間のエステル交換を促進することができると証明している。
【0088】
当業者には、本発明において本発明の範囲または趣旨から逸脱することなく様々な修正および変形を加えることができることは明らかだろう。したがって、本発明が、このような修正および変形を、添付クレームおよびその等価物の範囲内にあるものとして包含することが意図される。