特許第6927198号(P6927198)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6927198光学異方性積層体、円偏光板、及び、画像表示装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6927198
(24)【登録日】2021年8月10日
(45)【発行日】2021年8月25日
(54)【発明の名称】光学異方性積層体、円偏光板、及び、画像表示装置
(51)【国際特許分類】
   G02B 5/30 20060101AFI20210812BHJP
   H01L 27/32 20060101ALI20210812BHJP
   H01L 51/50 20060101ALI20210812BHJP
   H05B 33/02 20060101ALI20210812BHJP
   B32B 7/023 20190101ALI20210812BHJP
   B32B 9/00 20060101ALI20210812BHJP
   B32B 27/30 20060101ALI20210812BHJP
   G09F 9/00 20060101ALI20210812BHJP
   G09F 9/30 20060101ALI20210812BHJP
【FI】
   G02B5/30
   H01L27/32
   H05B33/14 A
   H05B33/02
   B32B7/023
   B32B9/00 Z
   B32B27/30 Z
   G09F9/00 313
   G09F9/30 365
【請求項の数】19
【全頁数】81
(21)【出願番号】特願2018-509324(P2018-509324)
(86)(22)【出願日】2017年3月27日
(86)【国際出願番号】JP2017012322
(87)【国際公開番号】WO2017170360
(87)【国際公開日】20171005
【審査請求日】2019年10月7日
(31)【優先権主張番号】特願2016-68010(P2016-68010)
(32)【優先日】2016年3月30日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000229117
【氏名又は名称】日本ゼオン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】特許業務法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大里 和弘
(72)【発明者】
【氏名】相松 将
(72)【発明者】
【氏名】齊藤 昌和
【審査官】 菅原 奈津子
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2016/043124(WO,A1)
【文献】 特開2004−309597(JP,A)
【文献】 特開2014−142462(JP,A)
【文献】 特開2002−156528(JP,A)
【文献】 国際公開第2015/166991(WO,A1)
【文献】 国際公開第2016/114254(WO,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2016/0245972(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 5/30
G02F 1/1335−1/13363
B32B 7/023
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一光学異方性層及び第二光学異方性層を備える、光学異方性積層体であって、
前記第一光学異方性層の面内における最大屈折率を示す遅相軸方向と、前記第二光学異方性層の面内における最大屈折率を示す遅相軸方向とがなす角度が、60°±10°であり、
波長450nm、550nm、590nm及び650nmにおける、前記第一光学異方性層の面内レターデーションRe(H450)、Re(H550)、Re(H590)及びRe(H650)が、下記式(1)、(2)及び(3)を満たし、
波長450nm、550nm、590nm及び650nmにおける、前記第二光学異方性層の面内レターデーションRe(Q450)、Re(Q550)、Re(Q590)及びRe(Q650)が、下記式(4)、(5)及び(6)を満たす、光学異方性積層体。
242nm<Re(H590)<331nm (1)
0.75≦Re(H450)/Re(H550)≦0.85 (2)
1.04≦Re(H650)/Re(H550)≦1.20 (3)
121nm<Re(Q590)<166nm (4)
0.75≦Re(Q450)/Re(Q550)≦0.85 (5)
1.04≦Re(Q650)/Re(Q550)≦1.20 (6)
【請求項2】
第一光学異方性層及び第二光学異方性層を備える、光学異方性積層体であって、
前記第一光学異方性層の面内における最大屈折率を示す遅相軸方向と、前記第二光学異方性層の面内における最大屈折率を示す遅相軸方向とがなす角度が、60°±10°であり、
波長450nm、550nm、590nm及び650nmにおける、前記第一光学異方性層の面内レターデーションRe(H450)、Re(H550)、Re(H590)及びRe(H650)が、下記式(7)、(8)及び(9)を満たし、
波長450nm、550nm、590nm及び650nmにおける、前記第二光学異方性層の面内レターデーションRe(Q450)、Re(Q550)、Re(Q590)及びRe(Q650)が、下記式(10)、(11)及び(12)を満たす、光学異方性積層体。
236nm<Re(H590)<316nm (7)
0.85<Re(H450)/Re(H550)≦0.90 (8)
1.02≦Re(H650)/Re(H550)<1.04 (9)
118nm<Re(Q590)<158nm (10)
0.85<Re(Q450)/Re(Q550)≦0.90 (11)
1.02≦Re(Q650)/Re(Q550)<1.04 (12)
【請求項3】
第一光学異方性層及び第二光学異方性層を備える、光学異方性積層体であって、
前記第一光学異方性層の面内における最大屈折率を示す遅相軸方向と、前記第二光学異方性層の面内における最大屈折率を示す遅相軸方向とがなす角度が、60°±10°であり、
波長450nm、550nm、590nm及び650nmにおける、前記第一光学異方性層の面内レターデーションRe(H450)、Re(H550)、Re(H590)及びRe(H650)が、下記式(13)、(14)及び(15)を満たし、
波長450nm、550nm、590nm及び650nmにおける、前記第二光学異方性層の面内レターデーションRe(Q450)、Re(Q550)、Re(Q590)及びRe(Q650)が、下記式(16)、(17)及び(18)を満たす、光学異方性積層体。
240nm<Re(H590)<290nm (13)
0.90<Re(H450)/Re(H550)≦0.99 (14)
1.01≦Re(H650)/Re(H550)<1.02 (15)
120nm<Re(Q590)<148nm (16)
0.90<Re(Q450)/Re(Q550)≦0.99 (17)
1.01≦Re(Q650)/Re(Q550)<1.02 (18)
【請求項4】
波長590nmにおける前記第一光学異方性層の面内レターデーションRe(H590)が、下記式(19)を満たし、
波長590nmにおける前記第二光学異方性層の面内レターデーションRe(Q590)が、下記式(20)を満たす、請求項1記載の光学異方性積層体。
266nm<Re(H590)<314nm (19)
133nm<Re(Q590)<157nm (20)
【請求項5】
波長590nmにおける前記第一光学異方性層の面内レターデーションRe(H590)が、下記式(21)を満たし、
波長590nmにおける前記第二光学異方性層の面内レターデーションRe(Q590)が、下記式(22)を満たす、請求項2記載の光学異方性積層体。
260nm<Re(H590)<291nm (21)
130nm<Re(Q590)<145nm (22)
【請求項6】
波長590nmにおける前記第一光学異方性層の面内レターデーションRe(H590)が、下記式(23)を満たし、
波長590nmにおける前記第二光学異方性層の面内レターデーションRe(Q590)が、下記式(24)を満たす、請求項1又は4記載の光学異方性積層体。
274nm<Re(H590)<299nm (23)
137nm<Re(Q590)<150nm (24)
【請求項7】
波長590nmにおける前記第一光学異方性層の面内レターデーションRe(H590)が、下記式(25)を満たし、
波長590nmにおける前記第二光学異方性層の面内レターデーションRe(Q590)が、下記式(26)を満たす、請求項2又は5記載の光学異方性積層体。
271nm<Re(H590)<291nm (25)
135nm<Re(Q590)<145nm (26)
【請求項8】
前記第一光学異方性層及び前記第二光学異方性層の少なくとも一方が、重合性の液晶化合物を含む液晶組成物の硬化物からなる、請求項1〜のいずれか一項に記載の光学異方性積層体。
【請求項9】
前記第一光学異方性層及び前記第二光学異方性層の両方が、重合性の液晶化合物を含む液晶組成物の硬化物からなる、請求項1〜のいずれか一項に記載の光学異方性積層体。
【請求項10】
前記液晶化合物が、ホモジニアス配向した場合に、逆波長分散性の面内レターデーションを示すものである、請求項又は記載の光学異方性積層体。
【請求項11】
前記液晶化合物が、前記液晶化合物の分子中に、主鎖メソゲンと、前記主鎖メソゲンに結合した側鎖メソゲンとを含む、請求項10のいずれか一項に記載の光学異方性積層体。
【請求項12】
前記液晶化合物が、下記式(I)で表される、請求項11のいずれか一項に記載の光学異方性積層体。
【化1】
(前記式(I)において、
〜Yは、それぞれ独立して、化学的な単結合、−O−、−S−、−O−C(=O)−、−C(=O)−O−、−O−C(=O)−O−、−NR−C(=O)−、−C(=O)−NR−、−O−C(=O)−NR−、−NR−C(=O)−O−、−NR−C(=O)−NR−、−O−NR−、又は、−NR−O−を表す。ここで、Rは、水素原子又は炭素数1〜6のアルキル基を表す。
及びGは、それぞれ独立して、置換基を有していてもよい、炭素数1〜20の二価の脂肪族基を表す。また、前記脂肪族基には、1つの脂肪族基当たり1以上の−O−、−S−、−O−C(=O)−、−C(=O)−O−、−O−C(=O)−O−、−NR−C(=O)−、−C(=O)−NR−、−NR−、又は、−C(=O)−が介在していてもよい。ただし、−O−又は−S−がそれぞれ2以上隣接して介在する場合を除く。ここで、Rは、水素原子又は炭素数1〜6のアルキル基を表す。
及びZは、それぞれ独立して、ハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数2〜10のアルケニル基を表す。
は、芳香族炭化水素環及び芳香族複素環からなる群から選ばれる少なくとも一つの芳香環を有する、炭素数2〜30の有機基を表す。
は、水素原子、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素数2〜20のアルケニル基、置換基を有していてもよい炭素数3〜12のシクロアルキル基、置換基を有していてもよい炭素数2〜20のアルキニル基、−C(=O)−R、−SO−R、−C(=S)NH−R、又は、芳香族炭化水素環及び芳香族複素環からなる群から選ばれる少なくとも一つの芳香環を有する、炭素数2〜30の有機基を表す。ここで、Rは、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素数2〜20のアルケニル基、置換基を有していてもよい炭素数3〜12のシクロアルキル基、又は、炭素数5〜12の芳香族炭化水素環基を表す。Rは、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数2〜20のアルケニル基、フェニル基、又は、4−メチルフェニル基を表す。Rは、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素数2〜20のアルケニル基、置換基を有していてもよい炭素数3〜12のシクロアルキル基、又は、置換基を有していてもよい炭素数5〜20の芳香族基を表す。前記A及びAが有する芳香環は、置換基を有していてもよい。また、前記AとAは、一緒になって、環を形成していてもよい。
は、置換基を有していてもよい三価の芳香族基を表す。
及びAは、それぞれ独立して、置換基を有していてもよい炭素数3〜30の二価の脂環式炭化水素基を表す。
及びAは、それぞれ独立して、置換基を有していてもよい、炭素数6〜30の二価の芳香族基を表す。
は、水素原子、又は、置換基を有していてもよい炭素数1〜6のアルキル基を表す。
mは、それぞれ独立に、0又は1を表す。)
【請求項13】
前記液晶化合物が、前記液晶化合物の分子中に、ベンゾチアゾール環、並びに、シクロヘキシル環及びフェニル環の組み合わせ、からなる群より選ばれる少なくとも1種を含有する、請求項12のいずれか一項に記載の光学異方性積層体。
【請求項14】
透明導電層を備える、請求項1〜13のいずれか一項に記載の光学異方性積層体。
【請求項15】
直線偏光子と、請求項1〜14のいずれか一項に記載の光学異方性積層体とを備え、
前記直線偏光子、前記第一光学異方性層、及び、前記第二光学異方性層をこの順に備える、円偏光板。
【請求項16】
前記直線偏光子の吸収軸方向と、前記第一光学異方性層の面内における最大屈折率を示す遅相軸方向とがなす角度θ1(−90°<θ1<90°)、及び、
前記直線偏光子の吸収軸方向と、前記第二光学異方性層の面内における最大屈折率を示す遅相軸方向とがなす角度θ2(−90°<θ2<90°)が、
同符号であり、且つ、
下記式(27)及び(28)を満たす、請求項15記載の円偏光板。
|θ1|=15°±5° (27)
|θ2|=75°±10° (28)
【請求項17】
前記直線偏光子の吸収軸方向と、前記第一光学異方性層の面内における最大屈折率を示す遅相軸方向とがなす角度θ1(−90°<θ1<90°)、及び、
前記直線偏光子の吸収軸方向と、前記第二光学異方性層の面内における最大屈折率を示す遅相軸方向とがなす角度θ2(−90°<θ2<90°)が、
同符号であり、且つ、
下記式(29)及び(30)を満たす、請求項15記載の円偏光板。
|θ1|=75°±10° (29)
|θ2|=15°±5° (30)
【請求項18】
請求項1517のいずれか一項に記載の円偏光板及び画像表示素子を備える画像表示装置であって、
前記光学異方性積層体、前記直線偏光子及び前記画像表示素子を、この順に備える、画像表示装置。
【請求項19】
請求項1517のいずれか一項に記載の円偏光板及び有機エレクトロルミネッセンス素子を備える有機エレクトロルミネッセンス表示装置であって、
前記直線偏光子、前記光学異方性積層体及び前記有機エレクトロルミネッセンス素子を、この順に備える、画像表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学異方性積層体、並びに、それを備える円偏光板及び画像表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示装置及び有機エレクトロルミネッセンス表示装置(以下、適宜「有機EL表示装置」ということがある。)等の画像表示装置には、通常、光学異方性のフィルムが、光学フィルムとして設けられる。このような光学フィルムについては、従来から、様々な研究がなされている(特許文献1〜7参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2014−071209号公報
【特許文献2】特開2014−123099号公報
【特許文献3】特開2011−138144号公報
【特許文献4】特開2015−040904号公報
【特許文献5】特開2015−079230号公報
【特許文献6】特開2007−328310号公報
【特許文献7】特開2005−326818号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
画像表示装置の画像は、直線偏光によって表示されることがある。例えば、液晶表示装置は、液晶セル及び直線偏光子を備えるので、液晶表示装置の画像は、前記の直線偏光子を通過した直線偏光によって表示されうる。また、例えば、有機EL表示装置の表示面には、外光の反射抑制のために円偏光板が設けられることがあり、このように円偏光板を備える有機EL表示装置の画像は、円偏光板が備える直線偏光子を透過した直線偏光によって表示されうる。
【0005】
前記のように直線偏光によって表示される画像は、偏光サングラスを通して見た場合には暗くなり、視認できないことがある。具体的には、画像を表示する直線偏光の振動方向と、偏光サングラスの偏光吸収軸とが平行であると、その直線偏光は偏光サングラスを通ることができないので、画像を視認できない。ここで、直線偏光の振動方向とは、直線偏光の電場の振動方向を意味する。
【0006】
そこで、本発明者は、前記の画像を視認可能とするために、画像表示装置の直線偏光子の視認側に、λ/4波長板として機能できる光学異方性フィルムを設けることを試みた。直線偏光子を通過した直線偏光は、光学異方性フィルムにより、円偏光に変換される。この円偏光の一部は、偏光サングラスを通ることができるので、偏光サングラスを通した画像の視認が可能となる。
【0007】
ところが、画像表示装置の直線偏光子の視認側に光学異方性フィルムを設けた場合、偏光サングラスを通して画像表示装置の表示面を正面方向から見ると、偏光サングラスの傾き角度に応じて、画像が色づきを生じることがあった。ここで、偏光サングラスの傾き角度とは、表示面に垂直な回転軸を中心にした回転方向での傾きの角度である。この傾き角度は、偏光サングラスの直線偏光子の偏光吸収軸が、画像表示装置に設けられた直線偏光子の偏光吸収軸に対してなす角度によって、表しうる。
【0008】
本発明者の検討によれば、前記の色づきは、従来の光学異方性フィルムの面内レターデーションが順波長分散性を示すことで生じているものと考えられる。ここで、面内レターデーションの順波長分散性とは、波長が長いほど面内レターデーションが小さくなる性質を意味する。例えば、樹脂フィルムを延伸して得られる延伸フィルムの面内レターデーションは、一般に、順波長分散性を示す。このように順波長分散性の面内レターデーションを有する延伸フィルムを光学異方性フィルムとして用いた場合、その光学異方性フィルムを透過する直線偏光は、直線偏光の波長によっては、理想的な円偏光に変換されず、歪んだ円偏光(楕円偏光)に変換されうる。そうすると、偏光サングラスの傾き角度によっては、偏光サングラスが有する直線偏光子を透過できる光の強度が、波長毎にばらつくので、結果として、偏光サングラスの傾き角度に応じて、画像が意図しない色づきを生じることがあった。
【0009】
また、面内レターデーションが順波長分散性を示すλ/2波長板とλ/4波長板とを組み合わせることで、広い波長範囲においてλ/4波長板として機能しうる広帯域λ/4波長板を得られることが知られている。本発明者は、このような広帯域λ/4波長板を前記の光学異方性フィルムとして適用することで、前記の色づきを抑制することを試みた。ところが、広帯域λ/4波長板を用いた場合でも、可視波長領域の光の全てについて、直線偏光を理想的な円偏光に均一に変換することは困難であったので、偏光サングラスの傾き角度に応じた表示面の色づきを十分に抑制することは難しかった。
【0010】
本発明は、前記の課題に鑑みて創案されたもので、偏光サングラスを通して画像表示装置の表示面を正面方向から見た場合に、偏光サングラスの傾き角度に応じた表示面の色づきを抑制できる光学異方性積層体;並びに、前記の光学異方性積層体を備えた円偏光板、及び、画像表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者は、前記の課題を解決するべく鋭意検討した。その結果、本発明者は、第一光学異方性層及び第二光学異方性層を備える、光学異方性積層体であって、波長450nm、550nm、590nm及び650nmにおける第一光学異方性層の面内レターデーションRe(H450)、Re(H550)、Re(H590)及びRe(H650)、並びに、波長450nm、550nm、590nm及び650nmにおける第二光学異方性層の面内レターデーションRe(Q450)、Re(Q550)、Re(Q590)及びRe(Q650)が、所定の要件を満たすものが、前記の課題を解決できることを見い出し、本発明を完成させた。
すなわち、本発明は、下記のとおりである。
【0012】
〔1〕 第一光学異方性層及び第二光学異方性層を備える、光学異方性積層体であって、
波長450nm、550nm、590nm及び650nmにおける、前記第一光学異方性層の面内レターデーションRe(H450)、Re(H550)、Re(H590)及びRe(H650)が、下記式(1)、(2)及び(3)を満たし、
波長450nm、550nm、590nm及び650nmにおける、前記第二光学異方性層の面内レターデーションRe(Q450)、Re(Q550)、Re(Q590)及びRe(Q650)が、下記式(4)、(5)及び(6)を満たす、光学異方性積層体。
242nm<Re(H590)<331nm (1)
0.75≦Re(H450)/Re(H550)≦0.85 (2)
1.04≦Re(H650)/Re(H550)≦1.20 (3)
121nm<Re(Q590)<166nm (4)
0.75≦Re(Q450)/Re(Q550)≦0.85 (5)
1.04≦Re(Q650)/Re(Q550)≦1.20 (6)
〔2〕 第一光学異方性層及び第二光学異方性層を備える、光学異方性積層体であって、
波長450nm、550nm、590nm及び650nmにおける、前記第一光学異方性層の面内レターデーションRe(H450)、Re(H550)、Re(H590)及びRe(H650)が、下記式(7)、(8)及び(9)を満たし、
波長450nm、550nm、590nm及び650nmにおける、前記第二光学異方性層の面内レターデーションRe(Q450)、Re(Q550)、Re(Q590)及びRe(Q650)が、下記式(10)、(11)及び(12)を満たす、光学異方性積層体。
236nm<Re(H590)<316nm (7)
0.85<Re(H450)/Re(H550)≦0.90 (8)
1.02≦Re(H650)/Re(H550)<1.04 (9)
118nm<Re(Q590)<158nm (10)
0.85<Re(Q450)/Re(Q550)≦0.90 (11)
1.02≦Re(Q650)/Re(Q550)<1.04 (12)
〔3〕 第一光学異方性層及び第二光学異方性層を備える、光学異方性積層体であって、
波長450nm、550nm、590nm及び650nmにおける、前記第一光学異方性層の面内レターデーションRe(H450)、Re(H550)、Re(H590)及びRe(H650)が、下記式(13)、(14)及び(15)を満たし、
波長450nm、550nm、590nm及び650nmにおける、前記第二光学異方性層の面内レターデーションRe(Q450)、Re(Q550)、Re(Q590)及びRe(Q650)が、下記式(16)、(17)及び(18)を満たす、光学異方性積層体。
240nm<Re(H590)<290nm (13)
0.90<Re(H450)/Re(H550)≦0.99 (14)
1.01≦Re(H650)/Re(H550)<1.02 (15)
120nm<Re(Q590)<148nm (16)
0.90<Re(Q450)/Re(Q550)≦0.99 (17)
1.01≦Re(Q650)/Re(Q550)<1.02 (18)
〔4〕 波長590nmにおける前記第一光学異方性層の面内レターデーションRe(H590)が、下記式(19)を満たし、
波長590nmにおける前記第二光学異方性層の面内レターデーションRe(Q590)が、下記式(20)を満たす、〔1〕記載の光学異方性積層体。
266nm<Re(H590)<314nm (19)
133nm<Re(Q590)<157nm (20)
〔5〕 波長590nmにおける前記第一光学異方性層の面内レターデーションRe(H590)が、下記式(21)を満たし、
波長590nmにおける前記第二光学異方性層の面内レターデーションRe(Q590)が、下記式(22)を満たす、〔2〕記載の光学異方性積層体。
260nm<Re(H590)<291nm (21)
130nm<Re(Q590)<145nm (22)
〔6〕 波長590nmにおける前記第一光学異方性層の面内レターデーションRe(H590)が、下記式(23)を満たし、
波長590nmにおける前記第二光学異方性層の面内レターデーションRe(Q590)が、下記式(24)を満たす、〔1〕又は〔4〕記載の光学異方性積層体。
274nm<Re(H590)<299nm (23)
137nm<Re(Q590)<150nm (24)
〔7〕 波長590nmにおける前記第一光学異方性層の面内レターデーションRe(H590)が、下記式(25)を満たし、
波長590nmにおける前記第二光学異方性層の面内レターデーションRe(Q590)が、下記式(26)を満たす、〔2〕又は〔5〕記載の光学異方性積層体。
271nm<Re(H590)<291nm (25)
135nm<Re(Q590)<145nm (26)
〔8〕 前記第一光学異方性層の面内における最大屈折率を示す遅相軸方向と、前記第二光学異方性層の面内における最大屈折率を示す遅相軸方向とがなす角度が、60°±10°である、〔1〕〜〔7〕のいずれか一項に記載の光学異方性積層体。
〔9〕 前記第一光学異方性層及び前記第二光学異方性層の少なくとも一方が、重合性の液晶化合物を含む液晶組成物の硬化物からなる、〔1〕〜〔8〕のいずれか一項に記載の光学異方性積層体。
〔10〕 前記第一光学異方性層及び前記第二光学異方性層の両方が、重合性の液晶化合物を含む液晶組成物の硬化物からなる、〔1〕〜〔9〕のいずれか一項に記載の光学異方性積層体。
〔11〕 前記液晶化合物が、ホモジニアス配向した場合に、逆波長分散性の面内レターデーションを示すものである、〔9〕又は〔10〕記載の光学異方性積層体。
〔12〕 前記液晶化合物が、前記液晶化合物の分子中に、主鎖メソゲンと、前記主鎖メソゲンに結合した側鎖メソゲンとを含む、〔9〕〜〔11〕のいずれか一項に記載の光学異方性積層体。
〔13〕 前記液晶化合物が、下記式(I)で表される、〔9〕〜〔12〕のいずれか一項に記載の光学異方性積層体。
【化1】
(前記式(I)において、
〜Yは、それぞれ独立して、化学的な単結合、−O−、−S−、−O−C(=O)−、−C(=O)−O−、−O−C(=O)−O−、−NR−C(=O)−、−C(=O)−NR−、−O−C(=O)−NR−、−NR−C(=O)−O−、−NR−C(=O)−NR−、−O−NR−、又は、−NR−O−を表す。ここで、Rは、水素原子又は炭素数1〜6のアルキル基を表す。
及びGは、それぞれ独立して、置換基を有していてもよい、炭素数1〜20の二価の脂肪族基を表す。また、前記脂肪族基には、1つの脂肪族基当たり1以上の−O−、−S−、−O−C(=O)−、−C(=O)−O−、−O−C(=O)−O−、−NR−C(=O)−、−C(=O)−NR−、−NR−、又は、−C(=O)−が介在していてもよい。ただし、−O−又は−S−がそれぞれ2以上隣接して介在する場合を除く。ここで、Rは、水素原子又は炭素数1〜6のアルキル基を表す。
及びZは、それぞれ独立して、ハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数2〜10のアルケニル基を表す。
は、芳香族炭化水素環及び芳香族複素環からなる群から選ばれる少なくとも一つの芳香環を有する、炭素数2〜30の有機基を表す。
は、水素原子、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素数2〜20のアルケニル基、置換基を有していてもよい炭素数3〜12のシクロアルキル基、置換基を有していてもよい炭素数2〜20のアルキニル基、−C(=O)−R、−SO−R、−C(=S)NH−R、又は、芳香族炭化水素環及び芳香族複素環からなる群から選ばれる少なくとも一つの芳香環を有する、炭素数2〜30の有機基を表す。ここで、Rは、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素数2〜20のアルケニル基、置換基を有していてもよい炭素数3〜12のシクロアルキル基、又は、炭素数5〜12の芳香族炭化水素環基を表す。Rは、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数2〜20のアルケニル基、フェニル基、又は、4−メチルフェニル基を表す。Rは、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素数2〜20のアルケニル基、置換基を有していてもよい炭素数3〜12のシクロアルキル基、又は、置換基を有していてもよい炭素数5〜20の芳香族基を表す。前記A及びAが有する芳香環は、置換基を有していてもよい。また、前記AとAは、一緒になって、環を形成していてもよい。
は、置換基を有していてもよい三価の芳香族基を表す。
及びAは、それぞれ独立して、置換基を有していてもよい炭素数3〜30の二価の脂環式炭化水素基を表す。
及びAは、それぞれ独立して、置換基を有していてもよい、炭素数6〜30の二価の芳香族基を表す。
は、水素原子、又は、置換基を有していてもよい炭素数1〜6のアルキル基を表す。
mは、それぞれ独立に、0又は1を表す。)
〔14〕 前記液晶化合物が、前記液晶化合物の分子中に、ベンゾチアゾール環、並びに、シクロヘキシル環及びフェニル環の組み合わせ、からなる群より選ばれる少なくとも1種を含有する、〔9〕〜〔13〕のいずれか一項に記載の光学異方性積層体。
〔15〕 透明導電層を備える、〔1〕〜〔14〕のいずれか一項に記載の光学異方性積層体。
〔16〕 直線偏光子と、〔1〕〜〔15〕のいずれか一項に記載の光学異方性積層体とを備え、
前記直線偏光子、前記第一光学異方性層、及び、前記第二光学異方性層をこの順に備える、円偏光板。
〔17〕 前記直線偏光子の吸収軸方向と、前記第一光学異方性層の面内における最大屈折率を示す遅相軸方向とがなす角度θ1(−90°<θ1<90°)、及び、
前記直線偏光子の吸収軸方向と、前記第二光学異方性層の面内における最大屈折率を示す遅相軸方向とがなす角度θ2(−90°<θ2<90°)が、
同符号であり、且つ、
下記式(27)及び(28)を満たす、〔16〕記載の円偏光板。
|θ1|=15°±5° (27)
|θ2|=75°±10° (28)
〔18〕 前記直線偏光子の吸収軸方向と、前記第一光学異方性層の面内における最大屈折率を示す遅相軸方向とがなす角度θ1(−90°<θ1<90°)、及び、
前記直線偏光子の吸収軸方向と、前記第二光学異方性層の面内における最大屈折率を示す遅相軸方向とがなす角度θ2(−90°<θ2<90°)が、
同符号であり、且つ、
下記式(29)及び(30)を満たす、〔16〕記載の円偏光板。
|θ1|=75°±10° (29)
|θ2|=15°±5° (30)
〔19〕 〔16〕〜〔18〕のいずれか一項に記載の円偏光板及び画像表示素子を備える画像表示装置であって、
前記光学異方性積層体、前記直線偏光子及び前記画像表示素子を、この順に備える、画像表示装置。
〔20〕 〔16〕〜〔18〕のいずれか一項に記載の円偏光板及び有機エレクトロルミネッセンス素子を備える有機エレクトロルミネッセンス表示装置であって、
前記直線偏光子、前記光学異方性積層体及び前記有機エレクトロルミネッセンス素子を、この順に備える、画像表示装置。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、偏光サングラスを通して画像表示装置の表示面を正面方向から場合に、偏光サングラスの傾き角度に応じた表示面の色づきを抑制できる光学異方性積層体;並びに、前記の光学異方性積層体を備えた円偏光板、及び、画像表示装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1図1は、本発明の第一実施形態としての光学異方性積層体の断面を模式的に示す断面図である。
図2図2は、本発明の第二実施形態としての光学異方性積層体の断面を模式的に示す断面図である。
図3図3は、本発明の第三実施形態としての円偏光板の断面を模式的に示す断面図である。
図4図4は、本発明の第三実施形態としての円偏光板を分解して示す分解斜視図である。
図5図5は、本発明の第四実施形態に係る画像表示装置としての有機EL表示装置を模式的に示す断面図である。
図6図6は、本発明の第五実施形態に係る画像表示装置としての有機EL表示装置を模式的に示す断面図である。
図7図7は、本発明の第六実施形態に係る画像表示装置としての液晶表示装置を模式的に示す断面図である。
図8図8は、実施例及び比較例でのシミュレーションにおいて、彩度の計算を行う際に設定した評価モデルの様子を模式的に示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明について実施形態及び例示物を示して詳細に説明する。ただし、本発明は以下に示す実施形態及び例示物に限定されるものではなく、本発明の請求の範囲及びその均等の範囲を逸脱しない範囲において任意に変更して実施しうる。
【0016】
以下の説明において、「長尺」のフィルムとは、幅に対して、5倍以上の長さを有するフィルムをいい、好ましくは10倍若しくはそれ以上の長さを有し、具体的にはロール状に巻き取られて保管又は運搬される程度の長さを有するフィルムをいう。長尺のフィルムの長さの上限は、特に制限は無く、例えば、幅に対して10万倍以下としうる。
【0017】
以下の説明において、別に断らない限り、ある層の面内レターデーションReは、Re=(nx−ny)×dで表される値を示す。ここで、nxは、層の厚み方向に垂直な方向(面内方向)であって最大の屈折率を与える遅相軸方向の屈折率を表し、nyは、層の前記面内方向であってnxの方向に直交する方向の屈折率を表し、dは、層の厚みを表す。
【0018】
以下の説明において、フィルムの遅相軸とは、別に断らない限り、当該フィルムの面内における遅相軸を表す。
【0019】
以下の説明において、長尺のフィルムの斜め方向とは、別に断らない限り、そのフィルムの面内方向であって、そのフィルムの幅方向に平行でもなく垂直でもない方向を示す。
【0020】
以下の説明において、ある面の正面方向とは、別に断らない限り、当該面の法線方向を意味し、具体的には前記面の極角0°且つ方位角0°の方向を指す。
【0021】
以下の説明において、要素の方向が「平行」、「垂直」及び「直交」とは、別に断らない限り、本発明の効果を損ねない範囲内、例えば±5°の範囲内での誤差を含んでいてもよい。
【0022】
以下の説明において、「基材」、「偏光板」、「位相差板」、「λ/2波長板」及び「λ/4波長板」とは、別に断らない限り、剛直な部材だけでなく、例えば樹脂製のフィルムのように可撓性を有する部材も含む。
【0023】
以下の説明において、複数の層を備える部材における各層の光学軸(偏光吸収軸、偏光透過軸、遅相軸等)がなす角度は、別に断らない限り、前記の層を厚み方向から見たときの角度を表す。
【0024】
以下の説明において、別に断らない限り、「(メタ)アクリレート」は、「アクリレート」、「メタクリレート」及びこれらの組み合わせを包含する用語であり、「(メタ)アクリル」は、「アクリル」、「メタクリル」及びこれらの組み合わせを包含する用語である。
【0025】
以下の説明において、正の固有複屈折値を有する樹脂とは、延伸方向の屈折率がそれに直交する方向の屈折率よりも大きくなる樹脂を意味する。また、負の固有複屈折値を有する樹脂とは、延伸方向の屈折率がそれに直交する方向の屈折率よりも小さくなる樹脂を意味する。固有複屈折値は、誘電率分布から計算しうる。
【0026】
[1.光学異方性積層体の概要]
図1は、本発明の第一実施形態としての光学異方性積層体100の断面を模式的に示す断面図である。
図1に示すように、光学異方性積層体100は、第一光学異方性層110及び第二光学異方性層120を備える。前記の第一光学異方性層110及び第二光学異方性層120は、下記の第一〜第三のいずれかの組み合わせで、所定の要件を満たす面内レターデーションを有する。また、光学異方性積層体100は、必要に応じて、任意の層(図示せず)を備えていてもよい。
【0027】
前記の第一光学異方性層110及び第二光学異方性層120の材質は、特段の制限は無い。ただし、所望の第一光学異方性層110及び第二光学異方性層120を容易に薄膜で製造できることから、第一光学異方性層110及び第二光学異方性層120の少なくとも一方は、重合性の液晶化合物を含む液晶組成物の硬化物からなることが好ましく、第一光学異方性層110及び第二光学異方性層120の両方が、重合性の液晶化合物を含む液晶組成物の硬化物からなることがより好ましい。
【0028】
[2.光学異方性層の面内レターデーションの第一の組み合わせ]
第一の組み合わせにおいて、波長450nmにおける第一光学異方性層の面内レターデーションRe(H450)、波長550nmにおける第一光学異方性層の面内レターデーションRe(H550)、波長590nmにおける第一光学異方性層の面内レターデーションRe(H590)、波長650nmにおける第一光学異方性層の面内レターデーションRe(H650)、波長450nmにおける第二光学異方性層の面内レターデーションRe(Q450)、波長550nmにおける第二光学異方性層の面内レターデーションRe(Q550)、波長590nmにおける第二光学異方性層の面内レターデーションRe(Q590)、及び、波長650nmにおける第二光学異方性層の面内レターデーションRe(Q650)は、下記の式(1)〜下記(6)を満たす。
242nm<Re(H590)<331nm (1)
0.75≦Re(H450)/Re(H550)≦0.85 (2)
1.04≦Re(H650)/Re(H550)≦1.20 (3)
121nm<Re(Q590)<166nm (4)
0.75≦Re(Q450)/Re(Q550)≦0.85 (5)
1.04≦Re(Q650)/Re(Q550)≦1.20 (6)
【0029】
前記の式(1)〜(3)を満たす面内レターデーションを有する第一光学異方性層と、前記の式(4)〜(6)を満たす面内レターデーションを有する第二光学異方性層とを組み合わせて備える光学異方性積層体は、画像表示装置に設けることにより、偏光サングラスを通して正面方向からその画像表示装置の表示面を見た場合に、偏光サングラスの傾き角度に応じた表示面の色づきを抑制できる。また、前記の光学異方性層を直線偏光子層と組み合わせて得られる円偏光板は、有機EL表示装置に設けることにより、通常は、その有機EL表示装置の正面方向における外光の反射を抑制できる。
【0030】
式(2)に係る第一光学異方性層の面内レターデーションの比Re(H450)/Re(H550)を詳細に説明すると、比Re(H450)/Re(H550)は、通常0.75以上、好ましくは0.77以上、より好ましくは0.79以上であり、また、通常0.85以下、好ましくは0.83以下、より好ましくは0.81以下である。比Re(H450)/Re(H550)がこのような範囲に収まることにより、表示面の色づきの抑制、及び、外光の反射の抑制といった前記の効果が、特に効果的に得られる。
【0031】
式(3)に係る第一光学異方性層の面内レターデーションの比Re(H650)/Re(H550)を詳細に説明すると、比Re(H650)/Re(H550)は、通常1.04以上であり、また、通常1.20以下、好ましくは1.10以下、より好ましくは1.07以下である。比Re(H650)/Re(H550)がこのような範囲に収まることにより、表示面の色づきの抑制、及び、外光の反射の抑制といった前記の効果が、特に効果的に得られる。
【0032】
式(5)に係る第二光学異方性層の面内レターデーションの比Re(Q450)/Re(Q550)を詳細に説明すると、比Re(Q450)/Re(Q550)は、通常0.75以上、好ましくは0.77以上、より好ましくは0.79以上であり、また、通常0.85以下、好ましくは0.83以下、より好ましくは0.81以下である。比Re(Q450)/Re(Q550)がこのような範囲に収まることにより、表示面の色づきの抑制、及び、外光の反射の抑制といった前記の効果が、特に効果的に得られる。
【0033】
また、第二光学異方性層の面内レターデーションの比Re(Q450)/Re(Q550)は、第一光学異方性層の面内レターデーションの比Re(H450)/Re(H550)と近いことが好ましく、第一光学異方性層の面内レターデーションの比Re(H450)/Re(H550)と同じであることがより好ましい。これにより、表示面の色づきの抑制、及び、外光の反射の抑制といった前記の効果が、特に効果的に得られる。
【0034】
式(6)に係る第二光学異方性層の面内レターデーションの比Re(Q650)/Re(Q550)を詳細に説明すると、比Re(Q650)/Re(Q550)は、通常1.04以上であり、また、通常1.20以下、好ましくは1.10以下、より好ましくは1.07以下である。比Re(Q650)/Re(Q550)がこのような範囲に収まることにより、表示面の色づきの抑制、及び、外光の反射の抑制といった前記の効果が、特に効果的に得られる。
【0035】
また、第二光学異方性層の面内レターデーションの比Re(Q650)/Re(Q550)は、第一光学異方性層の面内レターデーションの比Re(H650)/Re(H550)と近いことが好ましく、第一光学異方性層の面内レターデーションの比Re(H650)/Re(H550)と同じであることがより好ましい。これにより、表示面の色づきの抑制、及び、外光の反射の抑制といった前記の効果が、特に効果的に得られる。
【0036】
特に、偏光サングラスを通して画像表示装置の表示面を見た場合の表示面の色づきを効果的に抑制する観点では、波長590nmにおける第一光学異方性層の面内レターデーションRe(H590)、及び、波長590nmにおける第二光学異方性層の面内レターデーションRe(Q590)は、下記式(19)及び式(20)を満たすことが好ましい。
266nm<Re(H590)<314nm (19)
133nm<Re(Q590)<157nm (20)
【0037】
式(19)について詳細に説明すると、第一光学異方性層の面内レターデーションRe(H590)は、好ましくは266nmより大きく、より好ましくは274nmより大きく、特に好ましくは285nmより大きく、また、好ましくは314nm未満、より好ましくは307nm未満、特に好ましくは299nm未満である。
【0038】
式(20)について詳細に説明すると、第二光学異方性層の面内レターデーションRe(Q590)は、好ましくは133nmより大きく、より好ましくは137nmより大きく、特に好ましくは142nmより大きく、また、好ましくは157nm未満、より好ましくは153nm未満、特に好ましくは150nm未満である。
【0039】
式(19)を満たす面内レターデーションRe(H590)を有する第一光学異方性層と、式(20)を満たす面内レターデーションRe(Q590)を有する第二光学異方性層とを、組み合わせて備える光学異方性積層体は、画像表示装置に設けることにより、偏光サングラスを通して正面方向からその画像表示装置の表示面を見た場合に、偏光サングラスの傾き角度に応じた表示面の色づきを、特に効果的に抑制できる。
【0040】
さらに、特に、前記の光学異方性層を直線偏光子層と組み合わせて得られる円偏光板によって外光の反射を効果的に抑制する観点では、波長590nmにおける第一光学異方性層の面内レターデーションRe(H590)、及び、波長590nmにおける第二光学異方性層の面内レターデーションRe(Q590)は、下記式(23)及び式(24)を満たすことが好ましい。
274nm<Re(H590)<299nm (23)
137nm<Re(Q590)<150nm (24)
【0041】
式(23)について詳細に説明すると、第一光学異方性層の面内レターデーションRe(H590)は、好ましくは274nmより大きく、より好ましくは278nmより大きく、特に好ましくは285nmより大きく、また、好ましくは299nm未満である。
【0042】
式(24)について詳細に説明すると、第二光学異方性層の面内レターデーションRe(Q590)は、好ましくは137nmより大きく、より好ましくは139nmより大きく、特に好ましくは142nmより大きく、また、好ましくは150nm未満である。
【0043】
式(23)を満たす面内レターデーションRe(H590)を有する第一光学異方性層と、式(24)を満たす面内レターデーションRe(Q590)を有する第二光学異方性層とを、組み合わせて備える光学異方性積層体は、直線偏光子層と組み合わせて得られる円偏光板によって、有機EL表示装置の正面方向における外光の反射を、特に効果的に抑制できる。
【0044】
[3.光学異方性層の面内レターデーションの第二の組み合わせ]
第二の組み合わせにおいて、波長450nmにおける第一光学異方性層の面内レターデーションRe(H450)、波長550nmにおける第一光学異方性層の面内レターデーションRe(H550)、波長590nmにおける第一光学異方性層の面内レターデーションRe(H590)、波長650nmにおける第一光学異方性層の面内レターデーションRe(H650)、波長450nmにおける第二光学異方性層の面内レターデーションRe(Q450)、波長550nmにおける第二光学異方性層の面内レターデーションRe(Q550)、波長590nmにおける第二光学異方性層の面内レターデーションRe(Q590)、及び、波長650nmにおける第二光学異方性層の面内レターデーションRe(Q650)は、下記の式(7)〜下記(12)を満たす。
236nm<Re(H590)<316nm (7)
0.85<Re(H450)/Re(H550)≦0.90 (8)
1.02≦Re(H650)/Re(H550)<1.04 (9)
118nm<Re(Q590)<158nm (10)
0.85<Re(Q450)/Re(Q550)≦0.90 (11)
1.02≦Re(Q650)/Re(Q550)<1.04 (12)
【0045】
前記の式(7)〜(9)を満たす面内レターデーションを有する第一光学異方性層と、前記の式(10)〜(12)を満たす面内レターデーションを有する第二光学異方性層とを組み合わせて備える光学異方性積層体は、画像表示装置に設けることにより、偏光サングラスを通して正面方向からその画像表示装置の表示面を見た場合に、偏光サングラスの傾き角度に応じた表示面の色づきを抑制できる。また、前記の光学異方性層を直線偏光子層と組み合わせて得られる円偏光板は、有機EL表示装置に設けることにより、通常は、その有機EL表示装置の正面方向における外光の反射を抑制できる。
【0046】
式(8)に係る第一光学異方性層の面内レターデーションの比Re(H450)/Re(H550)を詳細に説明すると、比Re(H450)/Re(H550)は、通常0.85より大きく、好ましくは0.87より大きく、より好ましくは0.88より大きく、また、通常0.90以下である。比Re(H450)/Re(H550)がこのような範囲に収まることにより、表示面の色づきの抑制、及び、外光の反射の抑制といった前記の効果が、特に効果的に得られる。
【0047】
式(9)に係る第一光学異方性層の面内レターデーションの比Re(H650)/Re(H550)を詳細に説明すると、比Re(H650)/Re(H550)は、通常1.02以上であり、また、通常1.04未満である。比Re(H650)/Re(H550)がこのような範囲に収まることにより、表示面の色づきの抑制、及び、外光の反射の抑制といった前記の効果が、特に効果的に得られる。
【0048】
式(11)に係る第二光学異方性層の面内レターデーションの比Re(Q450)/Re(Q550)を詳細に説明すると、比Re(Q450)/Re(Q550)は、通常0.85より大きく、好ましくは0.87より大きく、より好ましくは0.88より大きく、また、通常0.90以下である。比Re(Q450)/Re(Q550)がこのような範囲に収まることにより、表示面の色づきの抑制、及び、外光の反射の抑制といった前記の効果が、特に効果的に得られる。
【0049】
また、第二光学異方性層の面内レターデーションの比Re(Q450)/Re(Q550)は、第一光学異方性層の面内レターデーションの比Re(H450)/Re(H550)と近いことが好ましく、第一光学異方性層の面内レターデーションの比Re(H450)/Re(H550)と同じであることがより好ましい。これにより、表示面の色づきの抑制、及び、外光の反射の抑制といった前記の効果が、特に効果的に得られる。
【0050】
式(12)に係る第二光学異方性層の面内レターデーションの比Re(Q650)/Re(Q550)を詳細に説明すると、比Re(Q650)/Re(Q550)は、通常1.02以上であり、また、通常1.04未満である。比Re(Q650)/Re(Q550)がこのような範囲に収まることにより、表示面の色づきの抑制、及び、外光の反射の抑制といった前記の効果が、特に効果的に得られる。
【0051】
また、第二光学異方性層の面内レターデーションの比Re(Q650)/Re(Q550)は、第一光学異方性層の面内レターデーションの比Re(H650)/Re(H550)と近いことが好ましく、第一光学異方性層の面内レターデーションの比Re(H650)/Re(H550)と同じであることがより好ましい。これにより、表示面の色づきの抑制、及び、外光の反射の抑制といった前記の効果が、特に効果的に得られる。
【0052】
特に、偏光サングラスを通して画像表示装置の表示面を見た場合の表示面の色づきを効果的に抑制する観点では、波長590nmにおける第一光学異方性層の面内レターデーションRe(H590)、及び、波長590nmにおける第二光学異方性層の面内レターデーションRe(Q590)は、下記式(21)及び式(22)を満たすことが好ましい。
260nm<Re(H590)<291nm (21)
130nm<Re(Q590)<145nm (22)
【0053】
式(21)について詳細に説明すると、第一光学異方性層の面内レターデーションRe(H590)は、好ましくは260nmより大きく、より好ましくは267nmより大きく、また、好ましくは291nm未満、より好ましくは283nm未満である。
【0054】
式(22)について詳細に説明すると、第二光学異方性層の面内レターデーションRe(Q590)は、好ましくは130nmより大きく、より好ましくは133nmより大きく、また、好ましくは145nm未満、より好ましくは141nm未満である。
【0055】
式(21)を満たす面内レターデーションRe(H590)を有する第一光学異方性層と、式(22)を満たす面内レターデーションRe(Q590)を有する第二光学異方性層とを、組み合わせて備える光学異方性積層体は、画像表示装置に設けることにより、偏光サングラスを通して正面方向からその画像表示装置の表示面を見た場合に、偏光サングラスの傾き角度に応じた表示面の色づきを、特に効果的に抑制できる。
【0056】
さらに、特に、前記の光学異方性層を直線偏光子層と組み合わせて得られる円偏光板によって外光の反射を効果的に抑制する観点では、波長590nmにおける第一光学異方性層の面内レターデーションRe(H590)、及び、波長590nmにおける第二光学異方性層の面内レターデーションRe(Q590)は、下記式(25)及び式(26)を満たすことが好ましい。
271nm<Re(H590)<291nm (25)
135nm<Re(Q590)<145nm (26)
【0057】
式(25)について詳細に説明すると、第一光学異方性層の面内レターデーションRe(H590)は、好ましくは271nmより大きく、より好ましくは275nmより大きく、特に好ましくは279nmより大きく、また、好ましくは291nm未満、より好ましくは287nm未満である。
【0058】
式(26)について詳細に説明すると、第二光学異方性層の面内レターデーションRe(Q590)は、好ましくは135nmより大きく、より好ましくは137nmより大きく、特に好ましくは139nmより大きく、また、好ましくは145nm未満、より好ましくは143nm未満である。
【0059】
式(25)を満たす面内レターデーションRe(H590)を有する第一光学異方性層と、式(26)を満たす面内レターデーションRe(Q590)を有する第二光学異方性層とを、組み合わせて備える光学異方性積層体は、直線偏光子層と組み合わせて得られる円偏光板によって、有機EL表示装置の正面方向における外光の反射を、特に効果的に抑制できる。
【0060】
[4.光学異方性層の面内レターデーションの第三の組み合わせ]
第三の組み合わせにおいて、波長450nmにおける第一光学異方性層の面内レターデーションRe(H450)、波長550nmにおける第一光学異方性層の面内レターデーションRe(H550)、波長590nmにおける第一光学異方性層の面内レターデーションRe(H590)、波長650nmにおける第一光学異方性層の面内レターデーションRe(H650)、波長450nmにおける第二光学異方性層の面内レターデーションRe(Q450)、波長550nmにおける第二光学異方性層の面内レターデーションRe(Q550)、波長590nmにおける第二光学異方性層の面内レターデーションRe(Q590)、及び、波長650nmにおける第二光学異方性層の面内レターデーションRe(Q650)は、下記の式(13)〜式(18)を満たす。
240nm<Re(H590)<290nm (13)
0.90<Re(H450)/Re(H550)≦0.99 (14)
1.01≦Re(H650)/Re(H550)<1.02 (15)
120nm<Re(Q590)<148nm (16)
0.90<Re(Q450)/Re(Q550)≦0.99 (17)
1.01≦Re(Q650)/Re(Q550)<1.02 (18)
【0061】
前記の式(13)〜(15)を満たす面内レターデーションを有する第一光学異方性層と、前記の式(16)〜(18)を満たす面内レターデーションを有する第二光学異方性層とを組み合わせて備える光学異方性積層体は、画像表示装置に設けることにより、偏光サングラスを通して正面方向からその画像表示装置の表示面を見た場合に、偏光サングラスの傾き角度に応じた表示面の色づきを抑制できる。また、前記の光学異方性層を直線偏光子層と組み合わせて得られる円偏光板は、有機EL表示装置に設けることにより、通常は、その有機EL表示装置の正面方向における外光の反射を抑制できる。
【0062】
式(14)に係る第一光学異方性層の面内レターデーションの比Re(H450)/Re(H550)を詳細に説明すると、比Re(H450)/Re(H550)は、通常0.90より大きく、好ましくは0.91より大きく、より好ましくは0.92より大きく、また、通常0.99以下、好ましくは0.96以下、より好ましくは0.94以下である。比Re(H450)/Re(H550)がこのような範囲に収まることにより、表示面の色づきの抑制、及び、外光の反射の抑制といった前記の効果が、特に効果的に得られる。
【0063】
式(15)に係る第一光学異方性層の面内レターデーションの比Re(H650)/Re(H550)を詳細に説明すると、比Re(H650)/Re(H550)は、通常1.01以上であり、また、通常1.02未満である。比Re(H650)/Re(H550)がこのような範囲に収まることにより、表示面の色づきの抑制、及び、外光の反射の抑制といった前記の効果が、特に効果的に得られる。
【0064】
式(17)に係る第二光学異方性層の面内レターデーションの比Re(Q450)/Re(Q550)を詳細に説明すると、比Re(Q450)/Re(Q550)は、通常0.90より大きく、好ましくは0.91より大きく、より好ましくは0.92より大きく、また、通常0.99以下、好ましくは0.96以下、より好ましくは0.94以下である。比Re(Q450)/Re(Q550)がこのような範囲に収まることにより、表示面の色づきの抑制、及び、外光の反射の抑制といった前記の効果が、特に効果的に得られる。
【0065】
また、第二光学異方性層の面内レターデーションの比Re(Q450)/Re(Q550)は、第一光学異方性層の面内レターデーションの比Re(H450)/Re(H550)と近いことが好ましく、第一光学異方性層の面内レターデーションの比Re(H450)/Re(H550)と同じであることがより好ましい。これにより、表示面の色づきの抑制、及び、外光の反射の抑制といった前記の効果が、特に効果的に得られる。
【0066】
式(18)に係る第二光学異方性層の面内レターデーションの比Re(Q650)/Re(Q550)を詳細に説明すると、比Re(Q650)/Re(Q550)は、通常1.01以上であり、また、通常1.02未満である。比Re(Q650)/Re(Q550)がこのような範囲に収まることにより、表示面の色づきの抑制、及び、外光の反射の抑制といった前記の効果が、特に効果的に得られる。
【0067】
また、第二光学異方性層の面内レターデーションの比Re(Q650)/Re(Q550)は、第一光学異方性層の面内レターデーションの比Re(H650)/Re(H550)と近いことが好ましく、第一光学異方性層の面内レターデーションの比Re(H650)/Re(H550)と同じであることがより好ましい。これにより、表示面の色づきの抑制、及び、外光の反射の抑制といった前記の効果が、特に効果的に得られる。
【0068】
特に、偏光サングラスを通して画像表示装置の表示面を見た場合の表示面の色づきを効果的に抑制する観点では、波長590nmにおける第一光学異方性層の面内レターデーションRe(H590)、及び、波長590nmにおける第二光学異方性層の面内レターデーションRe(Q590)は、所定の範囲に収まることが好ましい。
具体的には、第一光学異方性層の面内レターデーションRe(H590)は、好ましくは248nmより大きく、より好ましくは255nmより大きく、特に好ましくは259nmより大きく、また、好ましくは277nm未満、より好ましくは272nm未満、特に好ましくは268nm未満である。
また、第二光学異方性層の面内レターデーションRe(Q590)は、好ましくは124nmより大きく、より好ましくは127nmより大きく、特に好ましくは130nmより大きく、また、好ましくは138nm未満、より好ましくは136nm未満、特に好ましくは134nm未満である。
このような範囲の面内レターデーションRe(H590)及びRe(Q590)を有する第一光学異方性層と第二光学異方性層とを組み合わせて備える光学異方性積層体は、画像表示装置に設けることにより、偏光サングラスを通して正面方向からその画像表示装置の表示面を見た場合に、偏光サングラスの傾き角度に応じた表示面の色づきを、特に効果的に抑制できる。
【0069】
さらに、特に、前記の光学異方性層を直線偏光子層と組み合わせて得られる円偏光板によって外光の反射を効果的に抑制する観点では、波長590nmにおける第一光学異方性層の面内レターデーションRe(H590)、及び、波長590nmにおける第二光学異方性層の面内レターデーションRe(Q590)は、所定の範囲に収まることが好ましい。
具体的には、第一光学異方性層の面内レターデーションRe(H590)は、好ましくは268nmより大きく、より好ましくは272nmより大きく、また、好ましくは286nm未満、より好ましくは281nm未満である。
また、第二光学異方性層の面内レターデーションRe(Q590)は、好ましくは134nmより大きく、より好ましくは136nmより大きく、また、好ましくは143nm未満、より好ましくは141nm未満である。
このような範囲の面内レターデーションRe(H590)及びRe(Q590)を有する第一光学異方性層と第二光学異方性層とを組み合わせて備える光学異方性積層体は、直線偏光子層と組み合わせて得られる円偏光板によって、有機EL表示装置の正面方向における外光の反射を、特に効果的に抑制できる。
【0070】
[5.第一光学異方性層の構造]
第一光学異方性層としては、重合性の液晶化合物を含む液晶組成物の硬化物からなる層を用いうる。以下、このように重合性の液晶化合物を含む液晶組成物の硬化物からなる層のことを、適宜「液晶硬化層」ということがある。
【0071】
液晶化合物は、液晶組成物に配合し配向させた際に、液晶相を呈しうる化合物である。また、重合性の液晶化合物とは、かかる液晶相を呈した状態で液晶組成物中で重合し、液晶相における分子の配向を維持したまま重合体となりうる液晶化合物である。
【0072】
前記の液晶硬化層は、通常、液晶化合物から得られる硬化液晶分子を含む。ここで、「硬化液晶分子」とは、液晶相を呈しうる化合物を、液晶相を呈した状態のまま固体とした際の当該化合物の分子を意味する。液晶硬化層が含む硬化液晶分子は、通常、液晶化合物を重合させてなる重合体である。よって、液晶硬化層は、通常は、液晶化合物を重合させてなる重合体を含み、必要に応じて任意の成分を含みうる樹脂の層となっている。そして、このような液晶硬化層は、前記の硬化液晶分子の配向状態に応じた光学異方性を有する。よって、液晶硬化層は、液晶化合物の種類及び配向状態、並びに液晶硬化層の厚みに応じて、当該液晶硬化層の面内レターデーションを調整することが可能であるので、このような液晶硬化層は、上述した所望の面内レターデーションを有することができる。
【0073】
液晶組成物は、重合性の液晶化合物を含み、更に、必要に応じて任意の成分を含む。液晶化合物としては、ホモジニアス配向した場合に、逆波長分散性の面内レターデーションを示す液晶化合物を用いることが好ましい。このようにホモジニアス配向した場合に、逆波長分散性の面内レターデーションを示す重合性の液晶化合物を、以下、適宜「逆波長重合性液晶化合物」ということがある。
【0074】
ここで、液晶化合物をホモジニアス配向させる、とは、当該液晶化合物を含む層を形成し、その層における液晶化合物の分子のメソゲンの長軸方向を、前記層の面に平行なある一の方向に配向させることをいう。液晶化合物が配向方向の異なる複数種類のメソゲンを含む場合は、それらのうち最も長い種類のメソゲンが配向する方向が、前記の配向方向となる。液晶化合物がホモジニアス配向しているか否か、及びその配向方向は、AxoScan(Axometrics社製)に代表されるような位相差計を用いた遅相軸方向の測定と、遅相軸方向における入射角毎のレターデーション分布の測定とにより確認しうる。
【0075】
また、面内レターデーションReが逆波長分散性を示す、とは、通常、波長450nm、550nm及び650nmにおける面内レターデーションRe(450)、Re(550)及びRe(650)が、通常、Re(450)<Re(650)を満たすことをいい、好ましくは、Re(450)<Re(550)<Re(650)を満たすことをいう。
【0076】
逆波長重合性液晶化合物を含む液晶組成物を用いることにより、第一光学異方性層の面内レターデーションの比Re(H450)/Re(H550)及びRe(H650)/Re(H550)を、上述した範囲に、容易に調整することができる。
【0077】
逆波長重合性液晶化合物としては、例えば、当該逆波長重合性液晶化合物の分子中に、主鎖メソゲンと、前記主鎖メソゲンに結合した側鎖メソゲンとを含む化合物を用いうる。主鎖メソゲン及び側鎖メソゲンを含む前記の逆波長重合性液晶化合物は、当該逆波長重合性液晶化合物が配向した状態において、側鎖メソゲンが主鎖メソゲンと異なる方向に配向しうる。このような場合、複屈折は主鎖メソゲンに対応する屈折率と側鎖メソゲンに対応する屈折率との差として発現するので、結果として、逆波長重合性液晶化合物は、ホモジニアス配向した場合に、逆波長分散性の面内レターデーションを示すことができる。
【0078】
逆波長重合性液晶化合物としては、例えば特開2014−123134号公報に記載されたものが挙げられる。また、逆波長重合性液晶化合物としては、例えば、下記式(Ia)で表される化合物が挙げられる。以下の説明において、式(Ia)で表される化合物を、適宜「化合物(Ia)」ということがある。
【0079】
【化2】
【0080】
前記式(Ia)において、A1aは、芳香族炭化水素環および芳香族複素環からなる群より選ばれる少なくとも1つの芳香環を有する炭素数1〜67の有機基を置換基として有する芳香族炭化水素環基;または、芳香族炭化水素環および芳香族複素環からなる群より選ばれる少なくとも1つの芳香環を有する炭素数1〜67の有機基を置換基として有する芳香族複素環基;を表す。
【0081】
1aの具体例としては、式:−RC(=N−NR)、あるいは式:−RC(=N−N=Rf1)で表される基で置換されたフェニレン基;1−ベンゾフラン−2−イル基で置換されたベンゾチアゾール−4,7−ジイル基;5−(2−ブチル)−1−ベンゾフラン−2−イル基で置換されたベンゾチアゾール−4,7−ジイル基;4,6−ジメチル−1−ベンゾフラン−2−イル基で置換されたベンゾチアゾール−4,7−ジイル基;6−メチル−1−ベンゾフラン−2−イル基で置換されたベンゾチアゾール−4,7−ジイル基;4,6,7−トリメチル−1−ベンゾフラン−2−イル基で置換されたベンゾチアゾール−4,7−ジイル基;4,5,6−トリメチル−1−ベンゾフラン−2−イル基で置換されたベンゾチアゾール−4,7−ジイル基;5−メチル−1−ベンゾフラン−2−イル基で置換されたベンゾチアゾール−4,7−ジイル基;5−プロピル−1−ベンゾフラン−2−イル基で置換されたベンゾチアゾール−4,7−ジイル基;7−プロピル−1−ベンゾフラン−2−イル基で置換されたベンゾチアゾール−4,7−ジイル基;5−フルオロ−1−ベンゾフラン−2−イル基で置換されたベンゾチアゾール−4,7−ジイル基;フェニル基で置換されたベンゾチアゾール−4,7−ジイル基;4−フルオロフェニル基で置換されたベンゾチアゾール−4,7−ジイル基;4−ニトロフェニル基で置換されたベンゾチアゾール−4,7−ジイル基;4−トリフルオロメチルフェニル基で置換されたベンゾチアゾール−4,7−ジイル基;4−シアノフェニル基で置換されたベンゾチアゾール−4,7−ジイル基;4−メタンスルホニルフェニル基で置換されたベンゾチアゾール−4,7−ジイル基;チオフェン−2−イル基で置換されたベンゾチアゾール−4,7−ジイル基;チオフェン−3−イル基で置換されたベンゾチアゾール−4,7−ジイル基;5−メチルチオフェン−2−イル基で置換されたベンゾチアゾール−4,7−ジイル基;5−クロロチオフェン−2−イル基で置換されたベンゾチアゾール−4,7−ジイル基;チエノ[3,2−b]チオフェン−2−イル基で置換されたベンゾチアゾール−4,7−ジイル基;2−ベンゾチアゾリル基で置換されたベンゾチアゾール−4,7−ジイル基;4−ビフェニル基で置換されたベンゾチアゾール−4,7−ジイル基;4−プロピルビフェニル基で置換されたベンゾチアゾール−4,7−ジイル基;4−チアゾリル基で置換されたベンゾチアゾール−4,7−ジイル基;1−フェニルエチレン−2−イル基で置換されたベンゾチアゾール−4,7−ジイル基;4−ピリジル基で置換されたベンゾチアゾール−4,7−ジイル基;2−フリル基で置換されたベンゾチアゾール−4,7−ジイル基;ナフト[1,2−b]フラン−2−イル基で置換されたベンゾチアゾール−4,7−ジイル基;5−メトキシ−2−ベンゾチアゾリル基で置換された1H−イソインドール−1,3(2H)−ジオン−4,7−ジイル基;フェニル基で置換された1H−イソインドール−1,3(2H)−ジオン−4,7−ジイル基;4−ニトロフェニル基で置換された1H−イソインドール−1,3(2H)−ジオン−4,7−ジイル基;または、2−チアゾリル基で置換された1H−イソインドール−1,3(2H)−ジオン−4,7−ジイル基;等が挙げられる。ここで、RおよびRf1は、それぞれ独立して、後述するQと同じ意味を表す。Rは、後述するAと同じ意味を表し、Rは、後述するAと同じ意味を表す。
【0082】
前記式(Ia)において、Y1a〜Y8aは、それぞれ独立して、化学的な単結合、−O−、−S−、−O−C(=O)−、−C(=O)−O−、−O−C(=O)−O−、−NR−C(=O)−、−C(=O)−NR−、−O−C(=O)−NR−、−NR−C(=O)−O−、−NR−C(=O)−NR−、−O−NR−、又は、−NR−O−を表す。ここで、Rは、水素原子又は炭素数1〜6のアルキル基を表す。
【0083】
前記式(Ia)において、G1a及びG2aは、それぞれ独立して、置換基を有していてもよい、炭素数1〜20の二価の脂肪族基を表す。また、前記脂肪族基には、1つの脂肪族基当たり1以上の−O−、−S−、−O−C(=O)−、−C(=O)−O−、−O−C(=O)−O−、−NR−C(=O)−、−C(=O)−NR−、−NR−、又は、−C(=O)−が介在していてもよい。ただし、−O−又は−S−がそれぞれ2以上隣接して介在する場合を除く。ここで、Rは、水素原子又は炭素数1〜6のアルキル基を表す。
【0084】
前記式(Ia)において、Z1a及びZ2aは、それぞれ独立して、ハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数2〜10のアルケニル基を表す。
【0085】
前記式(Ia)において、A2a及びA3aは、それぞれ独立して、置換基を有していてもよい炭素数3〜30の二価の脂環式炭化水素基を表す。
【0086】
前記式(Ia)において、A4a及びA5aは、それぞれ独立して、置換基を有していてもよい、炭素数6〜30の二価の芳香族基を表す。
【0087】
前記式(Ia)において、k及びlは、それぞれ独立に、0又は1を表す。
【0088】
逆波長重合性液晶化合物の特に好適な具体例としては、下記式(I)で表される化合物が挙げられる。以下の説明において、式(I)で表される化合物を、適宜「化合物(I)」ということがある。
【0089】
【化3】
【0090】
化合物(I)は、通常、下記式で表すように、基−Y−A−(Y−A−Y−A−Y−(A−Y−A−Y−からなる主鎖メソゲン1a、及び、基>A−C(Q)=N−N(A)Aからなる側鎖メソゲン1bの2つのメソゲン骨格を含む。また、これらの主鎖メソゲン1a及び側鎖メソゲン1bは、互いに交差している。上記の主鎖メソゲン1a及び側鎖メソゲン1bをあわせて1つのメソゲンとすることもできるが、本発明では、2つのメソゲンに分けて表記する。
【0091】
【化4】
【0092】
主鎖メソゲン1aの長軸方向における屈折率をn1、側鎖メソゲン1bの長軸方向における屈折率をn2とする。この際、屈折率n1の絶対値及び波長分散性は、通常、主鎖メソゲン1aの分子構造に依存する。また、屈折率n2の絶対値及び波長分散性は、通常、側鎖メソゲン1bの分子構造に依存する。ここで、液晶相において逆波長重合性液晶化合物は、通常、主鎖メソゲン1aの長軸方向を回転軸として回転運動を行うので、ここでいう屈折率n1及びn2とは、回転体としての屈折率を表している。
【0093】
主鎖メソゲン1a及び側鎖メソゲン1bの分子構造に由来して、屈折率n1の絶対値は屈折率n2の絶対値より大きい。さらに、屈折率n1及びn2は、通常、順波長分散性を示す。ここで、順波長分散性の屈折率とは、測定波長が大きいほど当該屈折率の絶対値が小さくなる屈折率を表す。主鎖メソゲン1aの屈折率n1は、小さい程度の順波長分散性を示す。よって、長波長で測定した屈折率n1は、短波長で測定した屈折率n1よりも小さくなるが、それらの差は小さい。これに対し、側鎖メソゲン1bの屈折率n2は、大きな程度の順波長分散性を示す。よって、長波長で測定した屈折率n2は、短波長で測定した屈折率n2よりも小さくなり、且つ、それらの差は大きい。そのため、測定波長が短いと屈折率n1と屈折率n2との差Δnは小さく、測定波長が長いと屈折率n1と屈折率n2との差Δnが大きくなる。このようにして、主鎖メソゲン1a及び側鎖メソゲン1bに由来して、化合物(I)は、ホモジニアス配向した場合に、逆波長分散性の面内レターデーションを示しうる。
【0094】
前記式(I)において、Y〜Yは、それぞれ独立して、化学的な単結合、−O−、−S−、−O−C(=O)−、−C(=O)−O−、−O−C(=O)−O−、−NR−C(=O)−、−C(=O)−NR−、−O−C(=O)−NR−、−NR−C(=O)−O−、−NR−C(=O)−NR−、−O−NR−、又は、−NR−O−を表す。
【0095】
ここで、Rは、水素原子又は炭素数1〜6のアルキル基を表す。
の炭素数1〜6のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、n−へキシル基が挙げられる。
としては、水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基が好ましい。
【0096】
化合物(I)においては、Y〜Yは、それぞれ独立して、化学的な単結合、−O−、−O−C(=O)−、−C(=O)−O−、又は、−O−C(=O)−O−であることが好ましい。
【0097】
前記式(I)において、G及びGは、それぞれ独立して、置換基を有していてもよい、炭素数1〜20の二価の脂肪族基を表す。
炭素数1〜20の二価の脂肪族基としては、例えば、炭素数1〜20のアルキレン基、炭素数2〜20のアルケニレン基等の鎖状構造を有する二価の脂肪族基;炭素数3〜20のシクロアルカンジイル基、炭素数4〜20のシクロアルケンジイル基、炭素数10〜30の二価の脂環式縮合環基等の二価の脂肪族基;が挙げられる。
【0098】
及びGの二価の脂肪族基の置換基としては、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等のハロゲン原子;メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、sec−ブトキシ基、t−ブトキシ基、n−ペンチルオキシ基、n−へキシルオキシ基等の炭素数1〜6のアルコキシ基;が挙げられる。なかでも、フッ素原子、メトキシ基及びエトキシ基が好ましい。
【0099】
また、前記脂肪族基には、1つの脂肪族基当たり1以上の−O−、−S−、−O−C(=O)−、−C(=O)−O−、−O−C(=O)−O−、−NR−C(=O)−、−C(=O)−NR−、−NR−、又は、−C(=O)−が介在していてもよい。ただし、−O−又は−S−がそれぞれ2以上隣接して介在する場合を除く。ここで、Rは、水素原子又は炭素数1〜6のアルキル基を表し、水素原子又はメチル基であることが好ましい。
前記脂肪族基に介在する基としては、−O−、−O−C(=O)−、−C(=O)−O−、−C(=O)−が好ましい。
【0100】
これらの基が介在する脂肪族基の具体例としては、例えば、−CH−CH−O−CH−CH−、−CH−CH−S−CH−CH−、−CH−CH−O−C(=O)−CH−CH−、−CH−CH−C(=O)−O−CH−CH−、−CH−CH−C(=O)−O−CH−、−CH−O−C(=O)−O−CH−CH−、−CH−CH−NR−C(=O)−CH−CH−、−CH−CH−C(=O)−NR−CH−、−CH−NR−CH−CH−、−CH−C(=O)−CH−が挙げられる。
【0101】
これらの中でも、本発明の所望の効果をより良好に発現させる観点から、G及びGは、それぞれ独立して、炭素数1〜20のアルキレン基、炭素数2〜20のアルケニレン基等の鎖状構造を有する二価の脂肪族基が好ましく、メチレン基、エチレン基、トリメチレン基、プロピレン基、テトラメチレン基、ペンタメチレン基、ヘキサメチレン基、オクタメチレン基、デカメチレン基〔−(CH10−〕等の、炭素数1〜12のアルキレン基がより好ましく、テトラメチレン基〔−(CH−〕、ヘキサメチレン基〔−(CH−〕、オクタメチレン基〔−(CH−〕、及び、デカメチレン基〔−(CH10−〕が特に好ましい。
【0102】
前記式(I)において、Z及びZは、それぞれ独立して、ハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数2〜10のアルケニル基を表す。
該アルケニル基の炭素数としては、2〜6が好ましい。Z及びZのアルケニル基の置換基であるハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子等が挙げられ、塩素原子が好ましい。
【0103】
及びZの炭素数2〜10のアルケニル基の具体例としては、CH=CH−、CH=C(CH)−、CH=CH−CH−、CH−CH=CH−、CH=CH−CH−CH−、CH=C(CH)−CH−CH−、(CHC=CH−CH−、(CHC=CH−CH−CH−、CH=C(Cl)−、CH=C(CH)−CH−、CH−CH=CH−CH−が挙げられる。
【0104】
なかでも、本発明の所望の効果をより良好に発現させる観点から、Z及びZとしては、それぞれ独立して、CH=CH−、CH=C(CH)−、CH=C(Cl)−、CH=CH−CH−、CH=C(CH)−CH−、又は、CH=C(CH)−CH−CH−が好ましく、CH=CH−、CH=C(CH)−、又は、CH=C(Cl)−がより好ましく、CH=CH−が特に好ましい。
【0105】
前記式(I)において、Aは、芳香族炭化水素環及び芳香族複素環からなる群から選ばれる少なくとも一つの芳香環を有する、炭素数2〜30の有機基を表す。「芳香環」は、Huckel則に従う広義の芳香族性を有する環状構造、すなわち、π電子を(4n+2)個有する環状共役構造、及びチオフェン、フラン、ベンゾチアゾール等に代表される、硫黄、酸素、窒素等のヘテロ原子の孤立電子対がπ電子系に関与して芳香族性を示す環状構造を意味する。
【0106】
の、芳香族炭化水素環及び芳香族複素環からなる群から選ばれる少なくとも一つの芳香環を有する、炭素数2〜30の有機基は、芳香環を複数個有するものであってもよく、芳香族炭化水素環及び芳香族複素環の両方を有するものであってもよい。
【0107】
前記芳香族炭化水素環としては、例えば、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環等が挙げられる。前記芳香族複素環としては、ピロール環、フラン環、チオフェン環、ピリジン環、ピリダジン環、ピリミジン環、ピラジン環、ピラゾール環、イミダゾール環、オキサゾール環、チアゾール環等の単環の芳香族複素環;ベンゾチアゾール環、ベンゾオキサゾール環、キノリン環、フタラジン環、ベンゾイミダゾール環、ベンゾピラゾール環、ベンゾフラン環、ベンゾチオフェン環、チアゾロピリジン環、オキサゾロピリジン環、チアゾロピラジン環、オキサゾロピラジン環、チアゾロピリダジン環、オキサゾロピリダジン環、チアゾロピリミジン環、オキサゾロピリミジン環等の縮合環の芳香族複素環;が挙げられる。
【0108】
が有する芳香環は置換基を有していてもよい。かかる置換基としては、例えば、フッ素原子、塩素原子等のハロゲン原子;シアノ基;メチル基、エチル基、プロピル基等の炭素数1〜6のアルキル基;ビニル基、アリル基等の炭素数2〜6のアルケニル基;トリフルオロメチル基等の炭素数1〜6のハロゲン化アルキル基;ジメチルアミノ基等の置換アミノ基;メトキシ基、エトキシ基、イソプロポキシ基等の炭素数1〜6のアルコキシ基;ニトロ基;フェニル基、ナフチル基等のアリール基;−C(=O)−R;−C(=O)−OR;−SO;等が挙げられる。ここで、Rは炭素数1〜20のアルキル基、炭素数2〜20のアルケニル基、又は、炭素数3〜12のシクロアルキル基を表し、Rは後述するRと同様の、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数2〜20のアルケニル基、フェニル基、又は、4−メチルフェニル基を表す。
【0109】
また、Aが有する芳香環は、同一又は相異なる置換基を複数有していてもよく、隣り合った二つの置換基が一緒になって結合して環を形成していてもよい。形成される環は単環であってもよく、縮合多環であってもよく、不飽和環であってもよく、飽和環であってもよい。
さらに、Aの炭素数2〜30の有機基の「炭素数」は、置換基の炭素原子を含まない有機基全体の総炭素数を意味する(後述するAにて同じである。)。
【0110】
の、芳香族炭化水素環及び芳香族複素環からなる群から選ばれる少なくとも一つの芳香環を有する、炭素数2〜30の有機基としては、例えば、ベンゼン環基、ナフタレン環基、アントラセン環基等の芳香族炭化水素環基;ピロール環基、フラン環基、チオフェン環基、ピリジン環基、ピリダジン環基、ピリミジン環基、ピラジン環基、ピラゾール環基、イミダゾール環基、オキサゾール環基、チアゾール環基、ベンゾチアゾール環基、ベンゾオキサゾール環基、キノリン環基、フタラジン環基、ベンゾイミダゾール環基、ベンゾピラゾール環基、ベンゾフラン環基、ベンゾチオフェン環基、チアゾロピリジン環基、オキサゾロピリジン環基、チアゾロピラジン環基、オキサゾロピラジン環基、チアゾロピリダジン環基、オキサゾロピリダジン環基、チアゾロピリミジン環基、オキサゾロピリミジン環基等の芳香族複素環基;芳香族炭化水素環及び複素環の組み合わせを含む基;芳香族炭化水素環及び芳香族複素環からなる群から選ばれる少なくとも一つの芳香環を有する、炭素数3〜30のアルキル基;芳香族炭化水素環及び芳香族複素環からなる群から選ばれる少なくとも一つの芳香環を有する、炭素数4〜30のアルケニル基;芳香族炭化水素環及び芳香族複素環からなる群から選ばれる少なくとも一つの芳香環を有する、炭素数4〜30のアルキニル基;が挙げられる。
【0111】
の好ましい具体例を以下に示す。但し、Aは以下に示すものに限定されるものではない。なお、下記式中、「−」は環の任意の位置からのびる結合手を表す(以下にて同じである。)。
(1)芳香族炭化水素環基
【0112】
【化5】
【0113】
【化6】
【0114】
(2)芳香族複素環基
【0115】
【化7】
【0116】
【化8】
【0117】
上記式中、Eは、NR6a、酸素原子又は硫黄原子を表す。ここで、R6aは、水素原子;又は、メチル基、エチル基、プロピル基等の炭素数1〜6のアルキル基を表す。
【0118】
【化9】
【0119】
上記式中、X及びYは、それぞれ独立して、NR、酸素原子、硫黄原子、−SO−、又は、−SO−を表す(ただし、酸素原子、硫黄原子、−SO−、−SO−が、それぞれ隣接する場合を除く。)。Rは、前記R6aと同様の、水素原子;又は、メチル基、エチル基、プロピル基等の炭素数1〜6のアルキル基を表す。
【0120】
【化10】
【0121】
(上記式中、Xは前記と同じ意味を表す。)
【0122】
【化11】
【0123】
〔各式中、Xは、−CH−、−NR−、酸素原子、硫黄原子、−SO−または−SO−を表し、Eは、−NR−、酸素原子または硫黄原子を表す。ここで、Rは、水素原子、または、メチル基、エチル基、プロピル基等の炭素数1〜6のアルキル基を表す。(但し、各式中において酸素原子、硫黄原子、−SO−、−SO−は、それぞれ隣接しないものとする。)〕
(3)芳香族炭化水素環及び複素環の組み合わせを含む基
【0124】
【化12】
【0125】
(上記式中、X、及びYは、それぞれ独立して、前記と同じ意味を表す。また、上記式中、Zは、NR、酸素原子、硫黄原子、−SO−、又は、−SO−を表す(ただし、酸素原子、硫黄原子、−SO−、−SO−が、それぞれ隣接する場合を除く。)。)
【0126】
(4)芳香族炭化水素環及び芳香族複素環からなる群から選ばれる少なくとも一つの芳香環を有する、アルキル基
【0127】
【化13】
【0128】
(5)芳香族炭化水素環及び芳香族複素環からなる群から選ばれる少なくとも一つの芳香環を有する、アルケニル基
【0129】
【化14】
【0130】
(6)芳香族炭化水素環及び芳香族複素環からなる群から選ばれる少なくとも一つの芳香環を有する、アルキニル基
【0131】
【化15】
【0132】
上記したAの中でも、炭素数6〜30の芳香族炭化水素環基、炭素数4〜30の芳香族複素環基、又は、芳香族炭化水素環及び複素環の組み合わせを含む炭素数4〜30の基であることが好ましく、下記に示すいずれかの基であることがより好ましい。
【0133】
【化16】
【0134】
【化17】
【0135】
さらに、Aは、下記に示すいずれかの基であることが更に好ましい。
【0136】
【化18】
【0137】
が有する環は、置換基を有していてもよい。かかる置換基としては、例えば、フッ素原子、塩素原子等のハロゲン原子;シアノ基;メチル基、エチル基、プロピル基等の炭素数1〜6のアルキル基;ビニル基、アリル基等の炭素数2〜6のアルケニル基;トリフルオロメチル基等の炭素数1〜6のハロゲン化アルキル基;ジメチルアミノ基等の置換アミノ基;メトキシ基、エトキシ基、イソプロポキシ基等の炭素数1〜6のアルコキシ基;ニトロ基;フェニル基、ナフチル基等のアリール基;−C(=O)−R;−C(=O)−OR;−SO;が挙げられる。ここでRは、メチル基、エチル基等の炭素数1〜6のアルキル基;又は、フェニル基等の炭素数6〜14のアリール基;を表す。なかでも、置換基としては、ハロゲン原子、シアノ基、炭素数1〜6のアルキル基、及び炭素数1〜6のアルコキシ基が好ましい。
【0138】
が有する環は、同一又は相異なる置換基を複数有していてもよく、隣り合った二つの置換基が一緒になって結合して環を形成していてもよい。形成される環は、単環であってもよく、縮合多環であってもよい。
の炭素数2〜30の有機基の「炭素数」は、置換基の炭素原子を含まない有機基全体の総炭素数を意味する(後述するAにて同じである。)。
【0139】
前記式(I)において、Aは、水素原子、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素数2〜20のアルケニル基、置換基を有していてもよい炭素数3〜12のシクロアルキル基、置換基を有していてもよい炭素数2〜20のアルキニル基、−C(=O)−R、−SO−R、−C(=S)NH−R、又は、芳香族炭化水素環及び芳香族複素環からなる群から選ばれる少なくとも一つの芳香環を有する、炭素数2〜30の有機基を表す。ここで、Rは、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素数2〜20のアルケニル基、置換基を有していてもよい炭素数3〜12のシクロアルキル基、又は、炭素数5〜12の芳香族炭化水素環基を表す。Rは、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数2〜20のアルケニル基、フェニル基、又は、4−メチルフェニル基を表す。Rは、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素数2〜20のアルケニル基、置換基を有していてもよい炭素数3〜12のシクロアルキル基、又は、置換基を有していてもよい炭素数5〜20の芳香族基を表す。
【0140】
の、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルキル基の炭素数1〜20のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、1−メチルペンチル基、1−エチルペンチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、n−へキシル基、イソヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、n−ノニル基、n−デシル基、n−ウンデシル基、n−ドデシル基、n−トリデシル基、n−テトラデシル基、n−ペンタデシル基、n−ヘキサデシル基、n−ヘプタデシル基、n−オクタデシル基、n−ノナデシル基、n−イコシル基が挙げられる。置換基を有してもよい炭素数1〜20のアルキル基の炭素数は、1〜12であることが好ましく、4〜10であることが更に好ましい。
【0141】
の、置換基を有していてもよい炭素数2〜20のアルケニル基の炭素数2〜20のアルケニル基としては、例えば、ビニル基、プロペニル基、イソプロペニル基、ブテニル基、イソブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基、ヘプテニル基、オクテニル基、デセニル基、ウンデセニル基、ドデセニル基、トリデセニル基、テトラデセニル基、ペンタデセニル基、ヘキサデセニル基、ヘプタデセニル基、オクタデセニル基、ノナデセニル基、イコセニル基が挙げられる。置換基を有していてもよい炭素数2〜20のアルケニル基の炭素数は、2〜12であることが好ましい。
【0142】
の、置換基を有していてもよい炭素数3〜12のシクロアルキル基の炭素数3〜12のシクロアルキル基としては、例えば、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロオクチル基が挙げられる。
【0143】
の、置換基を有していてもよい炭素数2〜20のアルキニル基の炭素数2〜20のアルキニル基としては、例えば、エチニル基、プロピニル基、2−プロピニル基(プロパルギル基)、ブチニル基、2−ブチニル基、3−ブチニル基、ペンチニル基、2−ペンチニル基、ヘキシニル基、5−ヘキシニル基、ヘプチニル基、オクチニル基、2−オクチニル基、ノナニル基、デカニル基、7−デカニル基が挙げられる。
【0144】
の、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルキル基、及び置換基を有していてもよい炭素数2〜20のアルケニル基の置換基としては、例えば、フッ素原子、塩素原子等のハロゲン原子;シアノ基;ジメチルアミノ基等の置換アミノ基;メトキシ基、エトキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基等の炭素数1〜20のアルコキシ基;メトキシメトキシ基、メトキシエトキシ基等の、炭素数1〜12のアルコキシ基で置換された炭素数1〜12のアルコキシ基;ニトロ基;フェニル基、ナフチル基等のアリール基;シクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等の炭素数3〜8のシクロアルキル基;シクロペンチルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基等の炭素数3〜8のシクロアルキルオキシ基;テトラヒドロフラニル基、テトラヒドロピラニル基、ジオキソラニル基、ジオキサニル基等の炭素数2〜12の環状エーテル基;フェノキシ基、ナフトキシ基等の炭素数6〜14のアリールオキシ基;トリフルオロメチル基、ペンタフルオロエチル基、−CHCF等の、少なくとも1個がフッ素原子で置換された炭素数1〜12のフルオロアルコキシ基;ベンゾフリル基;ベンゾピラニル基;ベンゾジオキソリル基;ベンゾジオキサニル基;−C(=O)−R7a;−C(=O)−OR7a;−SO8a;−SR10;−SR10で置換された炭素数1〜12のアルコキシ基;水酸基;が挙げられる。ここで、R7a及びR10は、それぞれ独立して、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数2〜20のアルケニル基、炭素数3〜12のシクロアルキル基、又は、炭素数6〜12の芳香族炭化水素環基を表す。R8aは、前記Rと同様の、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数2〜20のアルケニル基、フェニル基、又は、4−メチルフェニル基を表す。
【0145】
の、置換基を有していてもよい炭素数3〜12のシクロアルキル基の置換基としては、例えば、フッ素原子、塩素原子等のハロゲン原子;シアノ基;ジメチルアミノ基等の置換アミノ基;メチル基、エチル基、プロピル基等の炭素数1〜6のアルキル基;メトキシ基、エトキシ基、イソプロポキシ基等の炭素数1〜6のアルコキシ基;ニトロ基;フェニル基、ナフチル基等のアリール基;シクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等の炭素数3〜8のシクロアルキル基;−C(=O)−R7a;−C(=O)−OR7a;−SO8a;水酸基;が挙げられる。ここでR7a及びR8aは、前記と同じ意味を表す。
【0146】
の、置換基を有していてもよい炭素数2〜20のアルキニル基の置換基としては、例えば、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルキル基、及び、置換基を有していてもよい炭素数2〜20のアルケニル基の置換基と同様な置換基が挙げられる。
【0147】
の、−C(=O)−Rで表される基において、Rは、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素数2〜20のアルケニル基、置換基を有していてもよい炭素数3〜12のシクロアルキル基、又は、炭素数5〜12の芳香族炭化水素環基を表す。これらの具体例は、前記Aの、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素数2〜20のアルケニル基、及び、置換基を有していてもよい炭素数3〜12のシクロアルキル基;並びに、前記Aで説明した芳香族炭化水素環基のうち炭素数が5〜12のものの例として挙げたものと同様のものが挙げられる。
【0148】
の、−SO−Rで表される基において、Rは、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数2〜20のアルケニル基、フェニル基、又は、4−メチルフェニル基を表す。Rの、炭素数1〜20のアルキル基、及び炭素数2〜20のアルケニル基の具体例は、前記Aの、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数2〜20のアルケニル基の例として挙げたものと同様のものが挙げられる。
【0149】
の、−C(=S)NH−Rで表される基において、Rは、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素数2〜20のアルケニル基、置換基を有していてもよい炭素数3〜12のシクロアルキル基、又は、置換基を有していてもよい炭素数5〜20の芳香族基を表す。これらの具体例は、前記Aの、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素数2〜20のアルケニル基、置換基を有していてもよい炭素数3〜12のシクロアルキル基;並びに、前記Aで説明した芳香族炭化水素環基及び芳香族複素環基等の芳香族基のうち炭素数が5〜20のものの例として挙げたものと同様のものが挙げられる。
【0150】
の、芳香族炭化水素環及び芳香族複素環からなる群から選ばれる少なくとも一つの芳香環を有する、炭素数2〜30の有機基としては、前記Aで説明したのと同様のものが挙げられる。
【0151】
これらの中でも、Aとしては、水素原子、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素数2〜20のアルケニル基、置換基を有していてもよい炭素数3〜12のシクロアルキル基、置換基を有していてもよい炭素数2〜20のアルキニル基、−C(=O)−R、−SO−R、又は、芳香族炭化水素環及び芳香族複素環からなる群から選ばれる少なくとも一つの芳香環を有する、炭素数2〜30の有機基で表される基が好ましい。さらに、Aとしては、水素原子、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素数2〜20のアルケニル基、置換基を有していてもよい炭素数3〜12のシクロアルキル基、置換基を有していてもよい炭素数2〜20のアルキニル基、置換基を有してもよい炭素数6〜12の芳香族炭化水素環基、置換基を有していてもよい炭素数3〜9の芳香族複素環基、置換基を有していてもよく芳香族炭化水素環及び複素環の組み合わせを含む炭素数3〜9の基、−C(=O)−R、−SO−Rで表される基が更に好ましい。ここで、R、Rは前記と同じ意味を表す。
【0152】
の、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素数2〜20のアルケニル基、置換基を有していてもよい炭素数2〜20のアルキニル基の置換基としては、ハロゲン原子、シアノ基、炭素数1〜20のアルコキシ基、炭素数1〜12のアルコキシ基で置換された炭素数1〜12のアルコキシ基、フェニル基、シクロヘキシル基、炭素数2〜12の環状エーテル基、炭素数6〜14のアリールオキシ基、水酸基、ベンゾジオキサニル基、フェニルスルホニル基、4−メチルフェニルスルホニル基、ベンゾイル基、−SR10が好ましい。ここで、R10は前記と同じ意味を表す。
【0153】
の、置換基を有していてもよい炭素数3〜12のシクロアルキル基、置換基を有してもよい炭素数6〜12の芳香族炭化水素環基、置換基を有していてもよい炭素数3〜9の芳香族複素環基、置換基を有していてもよく芳香族炭化水素環及び複素環の組み合わせを含む炭素数3〜9の基の置換基としては、フッ素原子、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基、シアノ基が好ましい。
【0154】
また、AとAは、一緒になって、環を形成していてもよい。かかる環としては、例えば、置換基を有していてもよい、炭素数4〜30の不飽和複素環、炭素数6〜30の不飽和炭素環が挙げられる。
【0155】
前記炭素数4〜30の不飽和複素環、及び、炭素数6〜30の不飽和炭素環は、特に制約はなく、芳香族性を有していても有していなくてもよい。
とAが一緒になって形成される環としては、例えば、下記に示す環が挙げられる。なお、下記に示す環は、式(I)中の
【0156】
【化19】
【0157】
として表される部分を示すものである。
【0158】
【化20】
【0159】
【化21】
【0160】
【化22】
【0161】
(式中、X、Y、Zは、前記と同じ意味を表す。)
また、これらの環は置換基を有していてもよい。かかる置換基としては、Aが有する芳香環の置換基として説明したのと同様のものが挙げられる。
【0162】
とAに含まれるπ電子の総数は、本発明の所望の効果をより良好に発現させる観点から、4以上24以下であるのが好ましく、6以上20以下であるのがより好ましく、6以上18以下であるのが更により好ましい。
【0163】
とAの好ましい組み合わせとしては、下記の組み合わせ(α)及び組み合わせ(β)が挙げられる。
(α)Aが炭素数4〜30の、芳香族炭化水素環基、芳香族複素環基、又は、芳香族炭化水素環及び複素環の組み合わせを含む基であり、Aが水素原子、炭素数3〜8のシクロアルキル基、(ハロゲン原子、シアノ基、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基、若しくは炭素数3〜8のシクロアルキル基)を置換基として有していてもよい炭素数6〜12の芳香族炭化水素環基、(ハロゲン原子、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基、シアノ基)を置換基として有していてもよい炭素数3〜9の芳香族複素環基、(ハロゲン原子、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基、シアノ基)を置換基として有していてもよく芳香族炭化水素環及び複素環の組み合わせを含む炭素数3〜9の基、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルケニル基、又は、置換基を有していてもよい炭素数2〜20のアルキニル基であり、当該置換基が、ハロゲン原子、シアノ基、炭素数1〜20のアルコキシ基、炭素数1〜12のアルコキシ基で置換された炭素数1〜12のアルコキシ基、フェニル基、シクロヘキシル基、炭素数2〜12の環状エーテル基、炭素数6〜14のアリールオキシ基、水酸基、ベンゾジオキサニル基、ベンゼンスルホニル基、ベンゾイル基及び−SR10のいずれかである組み合わせ。
(β)AとAが一緒になって不飽和複素環又は不飽和炭素環を形成している組み合わせ。
ここで、R10は前記と同じ意味を表す。
【0164】
とAのより好ましい組み合わせとしては、下記の組み合わせ(γ)が挙げられる。
(γ)Aが下記構造を有する基のいずれかであり、Aが水素原子、炭素数3〜8のシクロアルキル基、(ハロゲン原子、シアノ基、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基、若しくは炭素数3〜8のシクロアルキル基)を置換基として有していてもよい炭素数6〜12の芳香族炭化水素環基、(ハロゲン原子、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基、シアノ基)を置換基として有していてもよい炭素数3〜9の芳香族複素環基、(ハロゲン原子、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基、シアノ基)を置換基として有していてもよく芳香族炭化水素環及び複素環の組み合わせを含む炭素数3〜9の基、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルケニル基、又は、置換基を有していてもよい炭素数2〜20のアルキニル基であり、当該置換基が、ハロゲン原子、シアノ基、炭素数1〜20のアルコキシ基、炭素数1〜12のアルコキシ基で置換された炭素数1〜12のアルコキシ基、フェニル基、シクロヘキシル基、炭素数2〜12の環状エーテル基、炭素数6〜14のアリールオキシ基、水酸基、ベンゾジオキサニル基、ベンゼンスルホニル基、ベンゾイル基、−SR10のいずれかである組み合わせ。
ここで、R10は前記と同じ意味を表す。
【0165】
【化23】
【0166】
【化24】
【0167】
(式中、X、Yは、前記と同じ意味を表す。)
とAの特に好ましい組み合わせとしては、下記の組み合わせ(δ)が挙げられる。
(δ)Aが下記構造を有する基のいずれかであり、Aが水素原子、炭素数3〜8のシクロアルキル基、(ハロゲン原子、シアノ基、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基、若しくは炭素数3〜8のシクロアルキル基)を置換基として有していてもよい炭素数6〜12の芳香族炭化水素環基、(ハロゲン原子、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基、シアノ基)を置換基として有していてもよい炭素数3〜9の芳香族複素環基、(ハロゲン原子、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基、シアノ基)を置換基として有していてもよく芳香族炭化水素環及び複素環の組み合わせを含む炭素数3〜9の基、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルケニル基、又は、置換基を有していてもよい炭素数2〜20のアルキニル基であり、当該置換基が、ハロゲン原子、シアノ基、炭素数1〜20のアルコキシ基、炭素数1〜12のアルコキシ基で置換された炭素数1〜12のアルコキシ基、フェニル基、シクロヘキシル基、炭素数2〜12の環状エーテル基、炭素数6〜14のアリールオキシ基、水酸基、ベンゾジオキサニル基、ベンゼンスルホニル基、ベンゾイル基、及び、−SR10のいずれかである組み合わせ。
下記式中、Xは前記と同じ意味を表す。ここで、R10は前記と同じ意味を表す。
【0168】
【化25】
【0169】
前記式(I)において、Aは、置換基を有していてもよい三価の芳香族基を表す。三価の芳香族基としては、三価の炭素環式芳香族基であってもよく、三価の複素環式芳香族基であってもよい。本発明の所望の効果をより良好に発現させる観点から、三価の炭素環式芳香族基が好ましく、三価のベンゼン環基又は三価のナフタレン環基がより好ましく、下記式に示す三価のベンゼン環基又は三価のナフタレン環基がさらに好ましい。なお、下記式においては、結合状態をより明確にすべく、置換基Y、Yを便宜上記載している(Y、Yは、前記と同じ意味を表す。以下にて同じ。)。
【0170】
【化26】
【0171】
これらの中でも、Aとしては、下記に示す式(A11)〜(A25)で表される基がより好ましく、式(A11)、(A13)、(A15)、(A19)、(A23)で表される基がさらに好ましく、式(A11)、(A23)で表される基が特に好ましい。
【0172】
【化27】
【0173】
の、三価の芳香族基が有していてもよい置換基としては、前記Aの芳香環の置換基として説明したのと同様のものが挙げられる。Aとしては、置換基を有さないものが好ましい。
【0174】
前記式(I)において、A及びAは、それぞれ独立して、置換基を有していてもよい炭素数3〜30の二価の脂環式炭化水素基を表す。炭素数3〜30の二価の脂環式炭化水素基としては、例えば、炭素数3〜30のシクロアルカンジイル基、炭素数10〜30の二価の脂環式縮合環基が挙げられる。
【0175】
炭素数3〜30のシクロアルカンジイル基としては、例えば、シクロプロパンジイル基;シクロブタン−1,2−ジイル基、シクロブタン−1,3−ジイル基等のシクロブタンジイル基;シクロペンタン−1,2−ジイル基、シクロペンタン−1,3−ジイル基等のシクロペンタンジイル基;シクロヘキサン−1,2−ジイル基、シクロヘキサン−1,3−ジイル基、シクロヘキサン−1,4−ジイル基等のシクロへキサンジイル基;シクロヘプタン−1,2−ジイル基、シクロヘプタン−1,3−ジイル基、シクロヘプタン−1,4−ジイル基等のシクロへプタンジイル基;シクロオクタン−1,2−ジイル基、シクロオクタン−1,3−ジイル基、シクロオクタン−1,4−ジイル基、シクロオクタン−1,5−ジイル基等のシクロオクタンジイル基;シクロデカン−1,2−ジイル基、シクロデカン−1,3−ジイル基、シクロデカン−1,4−ジイル基、シクロデカン−1,5−ジイル基等のシクロデカンジイル基;シクロドデカン−1,2−ジイル基、シクロドデカン−1,3−ジイル基、シクロドデカン−1,4−ジイル基、シクロドデカン−1,5−ジイル基等のシクロドデカンジイル基;シクロテトラデカン−1,2−ジイル基、シクロテトラデカン−1,3−ジイル基、シクロテトラデカン−1,4−ジイル基、シクロテトラデカン−1,5−ジイル基、シクロテトラデカン−1,7−ジイル基等のシクロテトラデカンジイル基;シクロエイコサン−1,2−ジイル基、シクロエイコサン−1,10−ジイル基等のシクロエイコサンジイル基;が挙げられる。
【0176】
炭素数10〜30の二価の脂環式縮合環基としては、例えば、デカリン−2,5−ジイル基、デカリン−2,7-ジイル基等のデカリンジイル基;アダマンタン−1,2−ジイル基、アダマンタン−1,3−ジイル基等のアダマンタンジイル基;ビシクロ[2.2.1]へプタン−2,3−ジイル基、ビシクロ[2.2.1]へプタン−2,5-ジイル基、ビシクロ[2.2.1]へプタン−2,6−ジイル基等のビシクロ[2.2.1]へプタンジイル基;が挙げられる。
【0177】
これらの二価の脂環式炭化水素基は、任意の位置に置換基を有していてもよい。置換基としては、前記Aの芳香環の置換基として説明したものと同様のものが挙げられる。
【0178】
これらの中でも、A及びAとしては、炭素数3〜12の二価の脂環式炭化水素基が好ましく、炭素数3〜12のシクロアルカンジイル基がより好ましく、下記式(A31)〜(A34)で表される基がさらに好ましく、下記式(A32)で表される基が特に好ましい。
【0179】
【化28】
【0180】
前記炭素数3〜30の二価の脂環式炭化水素基は、Y及びY(又はY及びY)と結合する炭素原子の立体配置の相違に基づく、シス型及びトランス型の立体異性体が存在しうる。例えば、シクロヘキサン−1,4−ジイル基の場合には、下記に示すように、シス型の異性体(A32a)とトランス型の異性体(A32b)が存在し得る。
【0181】
【化29】
【0182】
前記炭素数3〜30の二価の脂環式炭化水素基は、シス型であってもよく、トランス型であってもよく、シス型及びトランス型の異性体混合物であってもよい。中でも、配向性が良好であることから、トランス型あるいはシス型であるのが好ましく、トランス型がより好ましい。
【0183】
前記式(I)において、A及びAは、それぞれ独立して、置換基を有していてもよい、炭素数6〜30の二価の芳香族基を表す。A及びAの芳香族基は、単環のものであっても、多環のものであってもよい。A及びAの好ましい具体例としては、下記のものが挙げられる。
【0184】
【化30】
【0185】
上記A及びAの二価の芳香族基は、任意の位置に置換基を有していてもよい。当該置換基としては、例えば、ハロゲン原子、シアノ基、ヒドロキシル基、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基、ニトロ基、−C(=O)−OR8b基;が挙げられる。ここでR8bは、炭素数1〜6のアルキル基である。なかでも、置換基としては、ハロゲン原子、炭素数1〜6のアルキル基、アルコキシ基が好ましい。また、ハロゲン原子としては、フッ素原子がより好ましく、炭素数1〜6のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基がより好ましく、アルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基がより好ましい。
【0186】
これらの中でも、本発明の所望の効果をより良好に発現させる観点から、A及びAは、それぞれ独立して、置換基を有していてもよい、下記式(A41)、(A42)又は(A43)で表される基がより好ましく、置換基を有していてもよい式(A41)で表される基が特に好ましい。
【0187】
【化31】
【0188】
前記式(I)において、Qは、水素原子、又は、置換基を有していてもよい炭素数1〜6のアルキル基を示す。置換基を有していてもよい炭素数1〜6のアルキル基としては、前記Aで説明した置換基を有していてもよい炭素数1〜20のアルキル基のうち、炭素数が1〜6のものが挙げられる。これらの中でも、Qは、水素原子及び炭素数1〜6のアルキル基が好ましく、水素原子及びメチル基がより好ましい。
【0189】
前記式(I)において、mは、それぞれ独立に、0又は1を表す。中でも、mは好ましくは1である。
【0190】
化合物(I)は、例えば、国際公開第2012/147904号に記載される、ヒドラジン化合物とカルボニル化合物との反応により製造しうる。
【0191】
上述した逆波長重合性液晶化合物の中でも、本発明の所望の効果をより良好に発現させる観点から、当該逆波長重合性液晶化合物の分子中に、ベンゾチアゾール環(下記式(31A)の環);並びに、シクロヘキシル環(下記式(31B)の環)及びフェニル環(下記式(31C)の環)の組み合わせ;からなる群より選ばれる少なくとも1種を含有するものが好ましい。
【0192】
【化32】
【0193】
液晶化合物のCN点は、好ましくは25℃以上、より好ましくは45℃以上、特に好ましくは60℃以上であり、好ましくは120℃以下、より好ましくは110℃以下、特に好ましくは100℃以下である。ここで、「CN点」とは、結晶−ネマチック相転移温度のことをいう。前記の範囲にCN点を有する液晶化合物を用いることにより、液晶硬化層を容易に製造することが可能である。
【0194】
液晶化合物の分子量は、好ましくは300以上、より好ましくは700以上、特に好ましくは1000以上であり、好ましくは2000以下、より好ましくは1700以下、特に好ましくは1500以下である。液晶化合物が前記のような分子量を有することにより、液晶硬化層を形成するための液晶組成物の塗工性を特に良好にできる。
【0195】
前記の液晶化合物は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
【0196】
液晶組成物は、任意の成分として、例えば、重合開始剤を含みうる。重合開始剤としては、液晶組成物が含む液晶化合物等の重合性化合物の種類に応じて、適切なものを用いうる。ここで、重合性化合物とは、液晶組成物の成分であって、重合性を有する化合物(液晶化合物及びその他の重合性を有する化合物等)の総称である。中でも、重合開始剤としては、光重合開始剤が好ましい。
【0197】
光重合開始剤としては、例えば、ラジカル重合開始剤、アニオン重合開始剤、カチオン重合開始剤などが挙げられる。
【0198】
ラジカル重合開始剤の例としては、光照射により、重合性化合物の重合を開始しえる活性種が発生する化合物である光ラジカル発生剤が挙げられる。光ラジカル発生剤としては、例えば、国際公開第2012/147904号に記載される、アセトフェノン系化合物、ビイミダゾール系化合物、トリアジン系化合物、O−アシルオキシム系化合物、オニウム塩系化合物、ベンゾイン系化合物、ベンゾフェノン系化合物、α−ジケトン系化合物、多核キノン系化合物、キサントン系化合物、ジアゾ系化合物、イミドスルホナート系化合物等を挙げることができる。
【0199】
アニオン重合開始剤としては、例えば、アルキルリチウム化合物;ビフェニル、ナフタレン、ピレン等の、モノリチウム塩又はモノナトリウム塩;ジリチウム塩やトリリチウム塩等の多官能性開始剤;等が挙げられる。
【0200】
カチオン重合開始剤としては、例えば、硫酸、リン酸、過塩素酸、トリフルオロメタンスルホン酸等のプロトン酸;三フッ化ホウ素、塩化アルミニウム、四塩化チタン、四塩化スズのようなルイス酸;芳香族オニウム塩又は芳香族オニウム塩と、還元剤との併用系;が挙げられる。
【0201】
市販の光重合開始剤の具体的な例としては、BASF社製の、商品名:Irgacure907、商品名:Irgacure184、商品名:Irgacure369、品名:Irgacure651、商品名:Irgacure819、商品名:Irgacure907、商品名:Irgacure379、商品名:Irgacure379EG、及び商品名:Irgacure OXE02;ADEKA社製の、商品名:アデカオプトマーN1919等が挙げられる。
【0202】
重合開始剤は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
【0203】
液晶組成物において、重合開始剤の割合は、液晶化合物100重量部に対し、好ましくは0.1重量部〜30重量部、より好ましくは0.5重量部〜10重量部である。
【0204】
液晶組成物は、任意の成分として、例えば、界面活性剤を含みうる。界面活性剤により、液晶組成物の表面張力を調整できる。当該界面活性剤としては、特に限定はないが、ノニオン系界面活性剤が好ましい。当該ノニオン系界面活性剤としては、市販品を用いうる。例えば、分子量が数千程度のオリゴマーであるノニオン系界面活性剤を用いうる。これらの界面活性剤の具体例としては、OMNOVA社PolyFoxの「PF−151N」、「PF−636」、「PF−6320」、「PF−656」、「PF−6520」、「PF−3320」、「PF−651」、「PF−652」;ネオス社フタージェントの「FTX−209F」、「FTX−208G」、「FTX−204D」、「601AD」;セイミケミカル社サーフロンの「KH−40」、「S−420」;DIC社製の「メガファックF562」等を用いることができる。
【0205】
界面活性剤は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
【0206】
液晶組成物において、界面活性剤の割合は、液晶化合物100重量部に対し、好ましくは0.01重量部〜10重量部、より好ましくは0.1重量部〜2重量部である。
【0207】
液晶組成物は、任意の成分として、例えば、有機溶媒等の溶媒を含みうる。かかる有機溶媒の例としては、シクロペンタン、シクロヘキサン等の炭化水素溶媒;シクロペンタノン、シクロヘキサノン、メチルエチルケトン、アセトン、メチルイソブチルケトン等のケトン溶媒;酢酸ブチル、酢酸アミル等の酢酸エステル溶媒;クロロホルム、ジクロロメタン、ジクロロエタン等のハロゲン化炭化水素溶媒;1,4−ジオキサン、シクロペンチルメチルエーテル、テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、1,3−ジオキソラン、1,2−ジメトキシエタン等のエーテル溶媒;トルエン、キシレン、メシチレン等の芳香族炭化水素溶媒;及びこれらの混合物が挙げられる。溶媒の沸点は、取り扱い性に優れる観点から、60℃〜250℃であることが好ましく、60℃〜150℃であることがより好ましい。
【0208】
溶媒の使用量は、液晶化合物100重量部に対し、好ましくは100重量部〜1000重量部である。
【0209】
液晶組成物は、さらに、金属、金属錯体、染料、顔料、蛍光材料、燐光材料、レベリング剤、チキソ剤、ゲル化剤、多糖類、紫外線吸収剤、赤外線吸収剤、抗酸化剤、イオン交換樹脂、酸化チタン等の金属酸化物等の任意の添加剤を含みうる。かかる任意の添加剤の割合は、液晶化合物100重量部に対し、好ましくは、各々0.1重量部〜20重量部である。
【0210】
第一光学異方性層としての液晶硬化層は、例えば、
工程(i):基材上に液晶組成物を塗工して、液晶組成物の層を得る工程、
工程(ii):液晶組成物の層に含まれる液晶化合物を配向させる工程、及び、
工程(iii):液晶組成物を硬化する工程
を含む製造方法によって、製造できる。
【0211】
工程(i)は、例えば、基材上に液晶組成物を塗工することによって行いうる。基材としては、長尺の基材を用いることが好ましい。長尺の基材を用いる場合、連続的に搬送される基材上に、液晶組成物を連続的に塗工することが可能である。よって、長尺の基材を用いることにより、液晶硬化層を連続的に製造できるので、生産性を向上させることが可能である。
【0212】
液晶組成物を基材上に塗工する場合、基材に適度の張力(通常、100N/m〜500N/m)を掛けて、基材の搬送ばたつきを少なくし、平面性を維持したまま塗工することが好ましい。平面性とは、基材の幅手方向および搬送方向に垂直な上下方向の振れ量であり、理想的には0mmであるが、通常、1mm以下である。
【0213】
基材としては、通常、基材フィルムを用いる。基材フィルムとしては、光学的な積層体の基材として用いうるフィルムを、適切に選択して用いうる。中でも、基材フィルム及び液晶硬化層を備える複層フィルムを光学フィルムとして利用可能にして、基材フィルムの剥離を不要にする観点から、基材フィルムとしては透明なフィルムが好ましい。具体的には、基材フィルムの全光線透過率は、好ましくは80%以上、より好ましくは85%以上、特に好ましくは88%以上である。基材フィルムの全光線透過率は、紫外・可視分光計を用いて、波長400nm〜700nmの範囲で測定しうる。
【0214】
基材フィルムの材料は、特に限定されず、種々の樹脂を用いうる。樹脂の例としては、各種の重合体を含む樹脂が挙げられる。当該重合体としては、脂環式構造含有重合体、セルロースエステル、ポリビニルアルコール、ポリイミド、UV透過アクリル、ポリカーボネート、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、エポキシ重合体、ポリスチレン、及びこれらの組み合わせが挙げられる。これらの中でも、透明性、低吸湿性、寸法安定性及び軽量性の観点から、脂環式構造含有重合体及びセルロースエステルが好ましく、脂環式構造含有重合体がより好ましい。
【0215】
脂環式構造含有重合体は、繰り返し単位中に脂環式構造を有する重合体であり、通常は非晶質の重合体である。脂環式構造含有重合体としては、主鎖中に脂環式構造を含有する重合体及び側鎖に脂環式構造を含有する重合体のいずれも用いうる。
脂環式構造としては、例えば、シクロアルカン構造、シクロアルケン構造等が挙げられるが、熱安定性等の観点からシクロアルカン構造が好ましい。
1つの脂環式構造の繰り返し単位を構成する炭素数に特に制限はないが、好ましくは4個以上、より好ましくは5個以上、特に好ましくは6個以上であり、好ましくは30個以下、より好ましくは20個以下、特に好ましくは15個以下である。
【0216】
脂環式構造含有重合体中の脂環式構造を有する繰り返し単位の割合は、使用目的に応じて適宜選択されうるが、好ましくは50重量%以上、より好ましくは70重量%以上、特に好ましくは90重量%以上である。脂環式構造を有する繰り返し単位を前記のように多くすることにより、基材フィルムの耐熱性を高くできる。
【0217】
脂環式構造含有重合体は、例えば、(1)ノルボルネン重合体、(2)単環の環状オレフィン重合体、(3)環状共役ジエン重合体、(4)ビニル脂環式炭化水素重合体、及びこれらの水素添加物などが挙げられる。これらの中でも、透明性及び成形性の観点から、ノルボルネン重合体がより好ましい。
【0218】
ノルボルネン重合体としては、例えば、ノルボルネンモノマーの開環重合体、ノルボルネンモノマーと開環共重合可能なその他のモノマーとの開環共重合体、及びそれらの水素添加物;ノルボルネンモノマーの付加重合体、ノルボルネンモノマーと共重合可能なその他のモノマーとの付加共重合体などが挙げられる。これらの中でも、透明性の観点から、ノルボルネンモノマーの開環重合体水素添加物が特に好ましい。
【0219】
上記の脂環式構造含有重合体は、例えば特開2002−321302号公報等に開示されている公知の重合体から選ばれる。
【0220】
脂環式構造含有重合体のガラス転移温度は、好ましくは80℃以上、より好ましくは100℃〜250℃の範囲である。ガラス転移温度がこのような範囲にある脂環式構造含有重合体は、高温下での使用における変形及び応力を生じ難く、耐久性に優れる。
【0221】
脂環式構造含有重合体の重量平均分子量(Mw)は、好ましくは10,000〜100,000、より好ましくは25,000〜80,000、さらにより好ましくは25,000〜50,000である。重量平均分子量がこのような範囲にあるときに、基材フィルムの機械的強度及び成形加工性が高度にバランスされ好適である。前記の重量平均分子量は、溶媒としてシクロヘキサンを用いたゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(以下、「GPC」と略す。)により、ポリイソプレン換算の値で測定しうる。また、前記のGPCにおいて樹脂がシクロヘキサンに溶解しない場合には、重量平均分子量は、溶媒としてトルエンを用いて、ポリスチレン換算の値で測定しうる。
【0222】
脂環式構造含有重合体の分子量分布(重量平均分子量(Mw)/数平均分子量(Mn))は、好ましくは1以上、より好ましくは1.2以上であり、好ましくは10以下、より好ましくは4以下、特に好ましくは3.5以下である。
【0223】
基材フィルムの材質として脂環式構造含有重合体を含む樹脂を用いた場合の、基材フィルムの厚みは、生産性の向上、薄型化及び軽量化を容易にする観点から、好ましくは1μm〜1000μm、より好ましくは5μm〜300μm、特に好ましくは30μm〜100μmである。
【0224】
脂環式構造含有重合体を含む樹脂は、脂環式構造含有重合体のみからなってもよいが、本発明の効果を著しく損なわない限り、任意の配合剤を含んでもよい。脂環式構造含有重合体を含む樹脂中の、脂環式構造含有重合体の割合は、好ましくは70重量%以上、より好ましくは80重量%以上である。
脂環式構造含有重合体を含む樹脂の好適な具体例としては、日本ゼオン社製「ゼオノア1420」、「ゼオノア1420R」を挙げうる。
【0225】
セルロースエステルとしては、セルロースの低級脂肪酸エステル(例:セルロースアセテート、セルロースアセテートブチレートおよびセルロースアセテートプロピオネート)が代表的である。低級脂肪酸は、1分子あたりの炭素原子数6以下の脂肪酸を意味する。セルロースアセテートには、トリアセチルセルロース(TAC)及びセルロースジアセテート(DAC)が含まれる。
【0226】
セルロースアセテートの酢化度は、50%〜70%が好ましく、特に55%〜65%が好ましい。重量平均分子量70000〜120000が好ましく、特に80000〜100000が好ましい。また、上記セルロースアセテートは、酢酸だけでなく、一部プロピオン酸、酪酸等の脂肪酸でエステル化されていてもよい。また、基材フィルムを構成する樹脂は、セルロースアセテートと、セルロースアセテート以外のセルロースエステル(セルロースプロピオネート及びセルロースブチレート等)とを組み合わせて含んでもよい。その場合、これらのセルロースエステルの全体が、上記酢化度を満足することが好ましい。
【0227】
基材フィルムとして、トリアセチルセルロースのフィルムを用いる場合、かかるフィルムとしては、トリアセチルセルロースを低温溶解法あるいは高温溶解法によってジクロロメタンを実質的に含まない溶媒に溶解することで調製されたトリアセチルセルロースドープを用いて作製されたトリアセチルセルロースフィルムが、環境保全の観点から特に好ましい。トリアセチルセルロースのフィルムは、共流延法により作製しうる。共流延法は、トリアセチルセルロースの原料フレーク及び溶媒並びに必要に応じて任意の添加剤を含む溶液(ドープ)を調製し、当該ドープをドープ供給器(ダイ)から支持体の上に流延し、流延物をある程度乾燥して剛性が付与された時点でフィルムとして支持体から剥離し、当該フィルムをさらに乾燥して溶媒を除去することにより行いうる。原料フレークを溶解する溶媒の例としては、ハロゲン化炭化水素溶媒(ジクロロメタン等)、アルコール溶媒(メタノール、エタノール、ブタノール等)、エステル溶媒(蟻酸メチル、酢酸メチル等)、エーテル溶媒(ジオキサン、ジオキソラン、ジエチルエーテル等)等が挙げられる。ドープが含む添加剤の例としては、レターデーション上昇剤、可塑剤、紫外線吸収剤、劣化防止剤、滑り剤、剥離促進剤等が挙げられる。ドープを流延する支持体の例としては、水平式のエンドレスの金属ベルト、及び回転するドラムが挙げられる。流延に際しては、単一のドープを単層流延することもできるが、複数の層を共流延することもできる。複数の層を共流延する場合、例えば、低濃度のセルロースエステルドープの層と、そのおもて面及び裏面に接して設けられた高濃度のセルロースエステルドープの層が形成されるよう、複数のドープを順次流延しうる。フィルムを乾燥して溶媒を除去する方法の例としては、フィルムを搬送して、内部を乾燥に適した条件に設定した乾燥部を通過させる方法が挙げられる。
【0228】
トリアセチルセルロースのフィルムの好ましい例としては、富士写真フィルム社製「TAC−TD80U」、及び、発明協会公開技報公技番号2001−1745号にて公開されたものが挙げられる。トリアセチルセルロースのフィルムの厚みは特に限定されないが、20μm〜150μmが好ましく、40μm〜130μmがより好ましく、70μm〜120μmが更に好ましい。
【0229】
基材としては、配向規制力を有するものを用いうる。基材の配向規制力とは、基材の上に塗工された液晶組成物中の液晶化合物を配向させうる、基材の性質をいう。
【0230】
配向規制力は、基材の材料となるフィルム等の部材に、配向規制力を付与する処理を施すことにより付与しうる。かかる処理の例としては、延伸処理及びラビング処理が挙げられる。
【0231】
好ましい態様において、基材は延伸フィルムである。かかる延伸フィルムとすることにより、延伸方向に応じた配向規制力を有する基材としうる。
【0232】
延伸フィルムの延伸方向は、任意である。よって、延伸は、斜め延伸(基材の長手方向及び幅方向のいずれとも非平行な方向への延伸)のみでもよく、横延伸(基材の幅方向への延伸)のみでもよく、縦延伸(基材の長手方向への延伸)のみでもよい。さらに、これらの延伸は、組み合わせて行ってもよい。延伸倍率は、基材表面に配向規制力が生じる範囲で適宜設定しうる。基材が正の固有複屈折性を有する樹脂を材料として用いた場合、延伸方向に分子が配向して、延伸方向に遅相軸が発現する。延伸は、テンター延伸機などの既知の延伸機を用いて行いうる。
【0233】
更に好ましい態様において、基材は斜め延伸フィルムである。即ち、基材は、長尺のフィルムであり、且つフィルムの長手方向及び幅方向のいずれとも非平行な方向に延伸されたフィルムであることが更に好ましい。
【0234】
基材が斜め延伸フィルムである場合の、延伸方向と延伸フィルムの幅方向とがなす角度は、具体的には0°超90°未満としうる。このような斜め延伸フィルムを用いることにより、長尺の直線偏光子に光学異方性積層体をロールツーロールで転写、積層し、円偏光板等の光学フィルムの効率的な製造が可能となる。
【0235】
また、ある態様において、延伸方向と延伸フィルムの幅方向とがなす角度を、好ましくは15°±5°、22.5±5°、45°±5°、又は75°±5°、より好ましくは15°±4°、22.5°±4°、45°±4°、又は75°±4°、さらにより好ましくは15°±3°、22.5°±3°、45°±3°、又は75°±3°といった特定の範囲としうる。このような角度関係を有することにより、光学異方性積層体を、円偏光板の効率的な製造を可能にする材料とすることができる。
【0236】
液晶組成物の塗工方法の例としては、カーテンコーティング法、押し出しコーティング法、ロールコーティング法、スピンコーティング法、ディップコーティング法、バーコーティング法、スプレーコーティング法、スライドコーティング法、印刷コーティング法、グラビアコーティング法、ダイコーティング法、ギャップコーティング法、及びディッピング法が挙げられる。塗工される液晶組成物の層の厚みは、液晶硬化層に求められる所望の厚さに応じて適切に設定しうる。
【0237】
工程(i)の後で、液晶化合物を配向させる工程(ii)を行う。工程(ii)により、液晶組成物の層に含まれる液晶化合物は、基材の配向規制力に応じた配向方向に配向する。例えば、基材として延伸フィルムを用いた場合、延伸フィルムの延伸方向に平行に、液晶組成物の層に含まれる液晶化合物が配向する。この際、基材として長尺の基材フィルムを用いている場合には、液晶化合物を、基材の長手方向でもなく幅方向でもない斜め方向に配向させることが好ましい。このような斜め方向に配向させた液晶化合物を含む液晶組成物の層からは、通常、斜め方向に配向方向を有する液晶硬化層が得られる。そのため、長尺の直線偏光子に光学異方性積層体をロールツーロールで転写、積層し、円偏光板等の光学フィルムの効率的な製造が可能となる。
【0238】
工程(ii)は、塗工により直ちに達成される場合もあるが、必要に応じて、塗工の後に、加温などの配向処理を施すことにより達成される場合もある。配向処理の条件は、使用する液晶組成物の性質に応じて適宜設定しうるが、例えば、50℃〜160℃の温度条件において30秒間〜5分間処理する条件としうる。
【0239】
工程(ii)の後、直ちに工程(iii)を行ってもよいが、工程(ii)の後工程(iii)の前等の任意の段階で、必要に応じて液晶組成物の層を乾燥させる工程を行なってもよい。かかる乾燥は、自然乾燥、加熱乾燥、減圧乾燥、減圧加熱乾燥等の乾燥方法で達成しうる。かかる乾燥により、液晶組成物の層から、溶媒を除去することができる。
【0240】
工程(iii)では、液晶組成物に含まれる液晶化合物等の重合性化合物を重合させることにより、液晶組成物の層を硬化させて、液晶硬化層を得る。重合性化合物の重合方法は、重合性化合物及び重合開始剤等の、液晶組成物の成分の性質に適合した方法を適切に選択しうる。例えば、光を照射する方法が好ましい。ここで、照射される光には、可視光線、紫外線、及び赤外線等の光が含まれうる。なかでも、操作が簡便なことから、紫外線を照射する方法が好ましい。
【0241】
工程(iii)において紫外線を照射する場合の紫外線照射強度は、好ましくは0.1mW/cm〜1000mW/cmの範囲、より好ましくは0.5mW/cm〜600mW/cmの範囲である。紫外線照射時間は、好ましくは1秒〜300秒の範囲、より好ましくは5秒〜100秒の範囲である。紫外線積算光量(mJ/cm)は、紫外線照射強度(mW/cm)×照射時間(秒)で求められる。紫外線照射光源としては、高圧水銀灯、メタルハライドランプ、低圧水銀灯を用いることができる。
【0242】
また、工程(iii)においては、液晶硬化層における残留モノマー割合を小さくするために、重合性化合物の重合条件を調整することが好ましい。例えば、工程(iii)において、液晶組成物の層の温度を調節することが好ましい。
【0243】
また、工程(iii)を空気下で行うよりは、窒素雰囲気下等の不活性ガス雰囲気下で行ったほうが、残留モノマー割合が低減される傾向にあるので、工程(iii)は、そのような不活性ガス雰囲気下で行うことが好ましい。
【0244】
工程(iii)における重合の際、液晶化合物は、通常、その分子の配向を維持したままで重合する。よって、前記の重合により、硬化前の液晶組成物に含まれていた液晶化合物の配向方向と平行な方向に配向した硬化液晶分子を含む液晶硬化層が得られる。したがって、例えば、基材として延伸フィルムを用いた場合には、延伸フィルムの延伸方向と平行な配向方向を有する液晶硬化層を得ることができる。ここで平行とは、延伸フィルムの延伸方向と硬化液晶分子の配向方向のズレが、通常±3°、好ましくは±1°、理想的には0°をいう。
【0245】
上述した製造方法で製造された液晶硬化層において、液晶化合物から得られた硬化液晶分子は、好ましくは、基材フィルムに対して水平配向した配向規則性を有する。例えば、基材フィルムとして配向規制力を有するものを用いた場合、液晶硬化層において硬化液晶分子を水平配向させることができる。ここで、硬化液晶分子が基材フィルムに対して「水平配向」するとは、硬化液晶分子のメソゲンの長軸方向の平均方向が、フィルム面と平行又は平行に近い(例えばフィルム面となす角度が5°以内)、ある一の方向に整列することをいう。硬化液晶分子が水平配向しているか否か、及びその整列方向は、AxoScan(Axometrics社製)等の位相差計を用いた測定により確認しうる。
【0246】
特に、硬化液晶分子が、棒状の分子構造を有する液晶化合物を重合させてなるものである場合は、通常は、当該液晶化合物のメソゲンの長軸方向が、硬化液晶分子のメソゲンの長軸方向となる。また、液晶化合物として逆波長重合性液晶化合物を用いた場合のように、液晶硬化層中に、配向方向の異なる複数種類のメソゲンが存在する場合は、通常、それらのうち最も長い種類のメソゲンの長軸方向が整列する方向が、当該整列方向となる。
【0247】
上述した第一光学異方性層としての液晶硬化層の製造方法は、更に、任意の工程を含んでいてもよい。例えば、上述した製造方法では、通常、基材及びこの基材上に形成された液晶硬化層を備える複層フィルムが得られるので、前記の製造方法は、任意の工程として、基材を剥離する工程を含んでいてもよい。
【0248】
第一光学異方性層の面内における最大屈折率を示す遅相軸方向は、光学異方性積層体の用途に応じて任意に設定しうる。光学異方性積層体が長尺の形状を有する場合、第一光学異方性層の遅相軸と光学異方性積層体の幅方向とがなす角度は、0°超90°未満であることが好ましい。また、ある態様において、第一光学異方性層の遅相軸と光学異方性積層体の幅方向とがなす角度は、好ましくは15°±5°、22.5°±5°、45°±5°、又は75°±5°、より好ましくは15°±4°、22.5°±4°、45°±4°、又は75°±4°、さらにより好ましくは15°±3°、22.5°±3°、45°±3°、又は75°±3°といった特定の範囲としうる。このような角度関係を有することにより、光学異方性積層体を、円偏光板の効率的な製造を可能にする材料とすることができる。
【0249】
第一光学異方性層の厚みは、特に限定されず、面内レターデーションなどの特性を所望の範囲とできるように適切に調整しうる。第一光学異方性層の具体的な厚みは、好ましくは0.5μm以上、より好ましくは1.0μm以上であり、好ましくは10μm以下、より好ましくは7μm以下、特に好ましくは6μm以下である。
【0250】
[6.第二光学異方性層の構造]
第二光学異方性層としては、重合性の液晶化合物を含む液晶組成物の硬化物からなる液晶硬化層を用いうる。第二光学異方性層としての液晶硬化層には、第一光学異方性層としての液晶硬化層として説明した範囲から、上述した所望の面内レターデーションを有する任意の液晶硬化層を用いうる。
【0251】
第二光学異方性層としての液晶硬化層に含まれる液晶組成物の硬化物は、第一光学異方性層としての液晶硬化層に含まれる液晶組成物の硬化物と、異なっていてもよいが、同じであることが好ましい。第二光学異方性層としての液晶硬化層に含まれる液晶組成物の硬化物と、第二光学異方性層としての液晶硬化層に含まれる液晶組成物の硬化物とが、同じであると、第一光学異方性層の面内レターデーションの波長分散性と、第二光学異方性層の面内レターデーションの波長分散性とを、同じにできる。そのため、第一光学異方性層の面内レターデーションの比Re(H450)/Re(H550)と第二光学異方性層の面内レターデーションの比Re(Q450)/Re(Q550)とを同じにしたり、第一光学異方性層の面内レターデーションの比Re(H650)/Re(H550)と第二光学異方性層の面内レターデーションの比Re(Q650)/Re(Q550)とを同じにしたりできる。
【0252】
第二光学異方性層としての液晶硬化層は、第一光学異方性層としての液晶硬化層の製造方法と同様の製造方法によって、製造しうる。
【0253】
第二光学異方性層の面内における最大屈折率を示す遅相軸方向は、光学異方性積層体の用途に応じて任意に設定しうる。光学異方性積層体が長尺の形状を有する場合、第二光学異方性層の遅相軸と光学異方性積層体の幅方向とがなす角度は、0°超90°未満であることが好ましい。また、ある態様において、第一光学異方性層の遅相軸と光学異方性積層体の幅方向とがなす角度は、好ましくは15°±5°、22.5°±5°、45°±5°、又は75°±5°、より好ましくは15°±4°、22.5°±4°、45°±4°、又は75°±4°、さらにより好ましくは15°±3°、22.5°±3°、45°±3°、又は75°±3°といった特定の範囲としうる。このような角度関係を有することにより、光学異方性積層体を、円偏光板の効率的な製造を可能にする材料とすることができる。
【0254】
また、第一光学異方性層の面内における遅相軸方向と、第二光学異方性層の面内における遅相軸方向とがなす角度は、好ましくは60°±10°、より好ましくは60°±5°、特に好ましくは60°±3°である。第一光学異方性層の面内における遅相軸方向と、前記第二光学異方性層の面内における遅相軸方向とがなす角度が、前記の範囲に収まることにより、第一光学異方性層及び第二光学異方性層を備える光学異方性積層体を、広帯域λ/4波長板として機能させることができるので、表示面の色づきの抑制、及び、外光の反射の抑制といった前述の効果を、特に効果的に発揮できる。
【0255】
第二光学異方性層の厚みは、特に限定されず、面内レターデーションなどの特性を所望の範囲とできるように適切に調整しうる。第二光学異方性層の具体的な厚みは、好ましくは0.5μm以上、より好ましくは1.0μm以上であり、好ましくは10μm以下、より好ましくは5μm以下、特に好ましくは3μm以下である。
【0256】
[7.任意の層]
光学異方性積層体は、第一光学異方性層及び第二光学異方性層に組み合わせて、更に任意の層を備えうる。例えば、光学異方性積層体は、第一光学異方性層又は第二光学異方性層を製造するために用いた基材を、任意の層として備えていてもよい。また、例えば、光学異方性層は、接着層、ハードコート層等を、任意の層として備えていてもよい。
【0257】
図2は、本発明の第二実施形態としての光学異方性積層体200の断面を模式的に示す断面図である。
図2に示すように、光学異方性積層体200は、第一光学異方性層110及び第二光学異方性層120に組み合わせて、任意の層として透明導電層210を備えていてもよい。この場合、透明導電層210の位置は任意である。よって、光学異方性積層体200は、図2に示すように、透明導電層210、第一光学異方性層110及び第二光学異方性層120をこの順に備えていてもよい。また、光学異方性積層体200は、透明導電層210、第二光学異方性層120及び第一光学異方性層110をこの順に備えていてもよい。
【0258】
透明導電層210を備える光学異方性積層体200は、当該光学異方性積層体200をタッチパネルに設けた場合に、透明導電層210をタッチパネルの電極として用いうる。この光学異方性積層体200を用いることにより、タッチパネルを備えた画像表示装置において、偏光サングラスの傾き角度に応じた表示面の色づきを抑制したり、外光の反射を抑制したりできる。
【0259】
透明導電層210としては、導電性金属酸化物、導電性ナノワイヤ、金属メッシュ及び導電性ポリマーからなる群より選ばれる少なくとも1種の導電材料を含む層を用いうる。
【0260】
導電性金属酸化物としては、例えば、ITO(インジウム錫オキサイド)、IZO(インジウム亜鉛オキサイド)、ZnO(酸化亜鉛)、IWO(インジウムタングステンオキサイド)、ITiO(インジウムチタニウムオキサイド)、AZO(アルミニウム亜鉛オキサイド)、GZO(ガリウム亜鉛オキサイド)、XZO(亜鉛系特殊酸化物)、IGZO(インジウムガリウム亜鉛オキサイド)等が挙げられる。これらは、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
【0261】
導電性ナノワイヤとは、形状が針状または糸状であり、径がナノメートルサイズの導電性物質をいう。導電性ナノワイヤは直線状であってもよく、曲線状であってもよい。このような導電性ナノワイヤは、導電性ナノワイヤ同士が隙間を形成して網の目状となることにより、少量の導電性ナノワイヤであっても良好な電気伝導経路を形成することができ、電気抵抗の小さい透明導電層210を実現できる。また、導電性ワイヤは、網の目状となることにより、網の目の隙間に開口部を形成するので、光透過率の高い透明導電層210を得ることができる。さらに、導電性ナノワイヤを含む透明導電層210を用いることにより、耐屈曲性に優れる光学異方性積層体200を得ることができる。
【0262】
導電性ナノワイヤの太さdと長さLとの比(アスペクト比:L/d)は、好ましくは10〜100,000であり、より好ましくは50〜100,000であり、特に好ましくは100〜10,000である。このようにアスペクト比の大きい導電性ナノワイヤを用いれば、導電性ナノワイヤが良好に交差して、少量の導電性ナノワイヤにより高い導電性を発現させることができる。その結果、透明性に優れる光学異方性積層体200を得ることができる。ここで、「導電性ナノワイヤの太さ」とは、導電性ナノワイヤの断面が円状である場合はその直径を意味し、楕円状である場合はその短径を意味し、多角形である場合は最も長い対角線を意味する。導電性ナノワイヤの太さおよび長さは、走査型電子顕微鏡または透過型電子顕微鏡によって確認することができる。
【0263】
導電性ナノワイヤの太さは、好ましくは500nm未満であり、より好ましくは200nm未満であり、更に好ましくは10nm〜100nmであり、特に好ましくは10nm〜50nmである。これにより、透明導電層210の透明性を高めることができる。
【0264】
導電性ナノワイヤの長さは、好ましくは2.5μm〜1000μmであり、より好ましくは10μm〜500μmであり、特に好ましくは20μm〜100μmである。これにより、透明導電層210の導電性を高めることができる。
【0265】
導電性ナノワイヤとしては、例えば、金属により構成される金属ナノワイヤ、カーボンナノチューブを含む導電性ナノワイヤ等が挙げられる。
【0266】
金属ナノワイヤに含まれる金属としては、導電性の高い金属が好ましい。好適な金属の例としては、金、白金、銀及び銅が挙げられ、なかでも好ましくは、銀、銅及び金であり、より好ましくは銀である。また、上記金属にメッキ処理(例えば、金メッキ処理)を行った材料を用いてもよい。さらに、前記の材料は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
【0267】
金属ナノワイヤの製造方法としては、任意の適切な方法が採用され得る。例えば、溶液中で硝酸銀を還元する方法;前駆体表面にプローブの先端部から印可電圧又は電流を作用させ、プローブ先端部で金属ナノワイヤを引き出し、該金属ナノワイヤを連続的に形成する方法;等が挙げられる。溶液中で硝酸銀を還元する方法においては、エチレングリコール等のポリオール、およびポリビニルピロリドンの存在下で、硝酸銀等の銀塩の液相還元をすることによりにより、銀ナノワイヤが合成され得る。均一サイズの銀ナノワイヤは、例えば、Xia, Y.etal., Chem.Mater.(2002)、14、4736−4745、 Xia, Y.etal., Nano letters(2003)3(7)、955−960に記載される方法に準じて、大量生産が可能である。
【0268】
カーボンナノチューブとしては、例えば、いわゆる多層カーボンナノチューブ、二層カーボンナノチューブ、単層カーボンナノチューブ等が用いられる。なかでも、導電性が高い点から、単層カーボンナノチューブが好ましい。カーボンナノチューブの製造方法としては、任意の適切な方法が採用されうる。好ましくは、アーク放電法で作製されたカーボンナノチューブが用いられる。アーク放電法で作製されたカーボンナノチューブは結晶性に優れるため好ましい。
【0269】
導電性ナノワイヤを含む透明導電層210は、導電性ナノワイヤを溶媒に分散させて得られた導電性ナノワイヤ分散液を塗工及び乾燥させることにより、製造しうる。
【0270】
導電性ナノワイヤ分散液に含まれる溶媒としては、例えば、水、アルコール系溶媒、ケトン系溶媒、エーテル系溶媒、炭化水素系溶媒、芳香族系溶媒等が挙げられ、中でも、環境負荷低減の観点から、水を用いることが好ましい。また、溶媒は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
【0271】
導電性ナノワイヤ分散液における導電性ナノワイヤの濃度は、好ましくは0.1重量%〜1重量%である。これにより、導電性および透明性に優れる透明導電層を形成することができる。
【0272】
導電性ナノワイヤ分散液は、導電性ナノワイヤ及び溶媒に組み合わせて、任意の成分を含みうる。任意の成分としては、例えば、導電性ナノワイヤの腐食を抑制する腐食抑制剤、導電性ナノワイヤの凝集を抑制する界面活性剤、導電性ナノワイヤを透明導電層210に保持するためのバインダーポリマー等が挙げられる。また、任意の成分は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
【0273】
導電性ナノワイヤ分散液の塗工方法としては、例えば、スプレーコート法、バーコート法、ロールコート法、ダイコート法、インクジェットコート法、スクリーンコート法、ディップコート法、スロットダイコート法、凸版印刷法、凹版印刷法、グラビア印刷法等が挙げられる。乾燥方法としては、任意の適切な乾燥方法(例えば、自然乾燥、送風乾燥、加熱乾燥)が採用され得る。例えば、加熱乾燥の場合には、乾燥温度は100℃〜200℃であり、乾燥時間は1分〜10分としうる。
【0274】
透明導電層における導電性ナノワイヤの割合は、透明導電層の全重量に対して、好ましくは80重量%〜100重量%であり、より好ましくは85重量%〜99重量%である。これにより、導電性および光透過性に優れる透明導電層210を得ることができる。
【0275】
金属メッシュとは、格子状に形成された金属細線である。金属メッシュに含まれる金属としては、導電性の高い金属が好ましい。好適な金属の例としては、金、白金、銀及び銅が挙げられ、なかでも好ましくは銀、銅及び金であり、より好ましくは銀である。これらの金属は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
【0276】
金属メッシュを含む透明導電層210は、例えば、銀塩を含む透明導電層形成用組成物を塗工し、露光処理及び現像処理によって金属細線を所定の格子パターンに形成することにより、形成できる。また、金属メッシュを含む透明導電層210は、金属微粒子を含む透明導電層形成用組成物を所定のパターンに印刷することによっても、形成できる。このような透明導電層及びその形成方法の詳細については、特開2012−18634号公報、特開2003−331654号公報を参照しうる。
【0277】
導電性ポリマーとしては、例えば、ポリチオフェン系ポリマー、ポリアセチレン系ポリマー、ポリパラフェニレン系ポリマー、ポリアニリン系ポリマー、ポリパラフェニレンビニレン系ポリマー、ポリピロール系ポリマー、ポリフェニレン系ポリマー、アクリル系ポリマーで変性されたポリエステル系ポリマー等が挙げられる。中でも、ポリチオフェン系ポリマー、ポリアセチレン系ポリマー、ポリパラフェニレン系ポリマー、ポリアニリン系ポリマー、ポリパラフェニレンビニレン系ポリマーおよびポリピロール系ポリマーが好ましい。
【0278】
その中でも、特に、ポリチオフェン系ポリマーが好ましい。ポリチオフェン系ポリマーを用いることにより、透明性及び化学的安定性に優れる透明導電層210を得ることができる。ポリチオフェン系ポリマーの具体例としては、ポリチオフェン;ポリ(3−ヘキシルチオフェン)等のポリ(3−C1−8アルキル−チオフェン);ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)、ポリ(3,4−プロピレンジオキシチオフェン)、ポリ[3,4−(1,2−シクロヘキシレン)ジオキシチオフェン]等のポリ(3,4−(シクロ)アルキレンジオキシチオフェン);ポリチエニレンビニレン等が挙げられる。
また、前記の導電性ポリマーは、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
【0279】
導電性ポリマーは、好ましくは、アニオン性ポリマーの存在下で重合される。例えば、ポリチオフェン系ポリマーは、アニオン性ポリマーの存在下で酸化重合させることが好ましい。アニオン性ポリマーとしては、カルボキシル基、スルホン酸基、又はその塩を有する重合体が挙げられる。好ましくは、ポリスチレンスルホン酸等のスルホン酸基を有するアニオン性ポリマーが用いられる。
【0280】
導電性ポリマーを含む透明導電層210は、例えば、導電性ポリマーを含む導電性組成物を塗工し、乾燥することにより形成しうる。導電性ポリマーを含む透明導電層210については、特開2011−175601号公報を参照しうる。
【0281】
透明導電層210は、光学異方性積層体200の面内方向の全体に形成されていてもよいが、所定のパターンにパターン化されていてもよい。透明導電層210のパターンの形状は、タッチパネル(例えば、静電容量方式タッチパネル)として良好に動作するパターンが好ましく、例えば、特表2011−511357号公報、特開2010−164938号公報、特開2008−310550号公報、特表2003−511799号公報、特表2010−541109号公報に記載のパターンが挙げられる。
【0282】
透明導電層210の厚みは、好ましくは0.01μm〜10μmであり、より好ましくは0.05μm〜3μmであり、特に好ましくは0.1μm〜1μmである。
【0283】
透明導電層の全光線透過率は、好ましくは85%以上であり、より好ましくは90%以上であり、さらに好ましくは95%以上である。
【0284】
[8.光学異方性積層体の特性]
光学異方性積層体は、透明性に優れることが好ましい。具体的には、光学異方性積層体の全光線透過率は、好ましくは80%以上、より好ましくは85%以上、特に好ましくは90%以上である。また、光学異方性積層体のヘイズは、好ましくは5%以下、より好ましくは3%以下、特に好ましくは1%以下であり、理想的には0%である。ここで、光線透過率は、JIS K0115に準拠して、分光光度計(日本分光社製、紫外可視近赤外分光光度計「V−570」)を用いて測定しうる。また、ヘイズは、JIS K7361−1997に準拠して、日本電色工業社製「濁度計 NDH−300A」を用いて、5箇所測定し、それから求めた平均値を採用しうる。
【0285】
[9.光学異方性積層体の製造方法]
光学異方性積層体は、例えば、第一光学異方性層と第二光学異方性層とを貼り合わせて光学異方性積層体を得る工程を含む製造方法によって、製造しうる。
具体例を挙げると、第一光学異方性層及び第二光学異方性層が液晶硬化層である場合には、光学異方性積層体は、
第一基材上に液晶硬化層としての第一光学異方性層を形成して、第一基材及び第一光学異方性層を備える第一複層フィルムを用意する工程と;
第二基材上に液晶硬化層としての第二光学異方性層を形成して、第二基材及び第二光学異方性層を備える第二複層フィルムを用意する工程と;
第一光学異方性層と第二光学異方性層とを貼り合わせて、光学異方性積層体を得る工程と;を含む製造方法によって、製造しうる。
【0286】
第一光学異方性層と第二光学異方性層との貼り合わせには、適切な接着剤を用いうる。この接着剤は、狭義の接着剤(エネルギー線照射後、あるいは加熱処理後、23℃における剪断貯蔵弾性率が1MPa〜500MPaである接着剤)のみならず、23℃における剪断貯蔵弾性率が1MPa未満である粘着剤をも包含する。中でも、後述する円偏光板において用いるのと同様の接着剤を用いることが好ましい。
【0287】
また、前記の光学異方性積層体の製造方法は、上述した工程に加えて、任意の工程を含んでいてもよい。例えば、前記の製造方法は、第一基材及び第二基材を剥離する工程、透明導電層等の任意の層を設ける工程、などを含んでいてもよい。
【0288】
[10.円偏光板]
図3は、本発明の第三実施形態としての円偏光板300の断面を模式的に示す断面図である。
図3に示すように、円偏光板300は、直線偏光子310と光学異方性積層体100とを備える。また、この円偏光板300は、直線偏光子310、第一光学異方性層110及び第二光学異方性層120を、この順に備えている。
【0289】
直線偏光子310としては、液晶表示装置、及びその他の光学装置等の装置に用いられている既知の直線偏光子を用いうる。直線偏光子310の例としては、ポリビニルアルコールフィルムにヨウ素又は二色性染料を吸着させた後、ホウ酸浴中で一軸延伸することによって得られるフィルム;ポリビニルアルコールフィルムにヨウ素又は二色性染料を吸着させ延伸しさらに分子鎖中のポリビニルアルコール単位の一部をポリビニレン単位に変性することによって得られるフィルム;が挙げられる。また、直線偏光子310の他の例としては、グリッド偏光子、多層偏光子、コレステリック液晶偏光子などの、偏光を反射光と透過光に分離する機能を有する偏光子が挙げられる。これらのうち、直線偏光子310としては、ポリビニルアルコールを含有する偏光子が好ましい。
【0290】
直線偏光子310は、長尺のフィルムであってもよい。直線偏光子310が長尺のフィルムである場合、直線偏光子310の偏光吸収軸は、当該直線偏光子310の幅方向に平行又は垂直である。このような長尺の直線偏光子310は、上述した光学異方性積層体100とロールツーロールで貼り合わせて、長尺の円偏光板300を容易に製造できる。
【0291】
直線偏光子310に自然光を入射させると、一方の偏光だけが透過する。この直線偏光子310の偏光度は特に限定されないが、好ましくは98%以上、より好ましくは99%以上である。
また、直線偏光子310の厚みは、好ましくは5μm〜80μmである。
【0292】
図4は、本発明の第三実施形態としての円偏光板300を分解して示す分解斜視図である。図4において、第一光学異方性層110及び第二光学異方性層120には、直線偏光子310の偏光吸収軸方向Dに平行な仮想線を、一点鎖線で示す。
図4に示すように、直線偏光子310の偏光吸収軸方向Dと、第一光学異方性層110の面内における遅相軸方向Dとがなす角度を、「θ1」で表し、直線偏光子310の偏光吸収軸方向Dと、第二光学異方性層120の面内における遅相軸方向Dとがなす角度を、「θ2」で表す。この際、−90°<θ1<90°、且つ、−90°<θ2<90°である。
【0293】
この場合、前記の角度θ1及びθ2は、同符号であり、且つ、下記式(27)及び(28)を満たすことが好ましい。
|θ1|=15°±5° (27)
|θ2|=75°±10° (28)
【0294】
式(27)を詳細に説明すると、角度θ1の絶対値|θ1|は、通常15°±5°、好ましくは15°±3°、より好ましくは15°±1°である。
式(28)を詳細に説明すると、角度θ2の絶対値|θ2|は、通常75°±10°、好ましくは75°±6°、より好ましくは75°±2°である。
このような要件を満たすことにより、直線偏光子310を透過した広い波長範囲の直線偏光を、第一光学異方性層110及び第二光学異方性層120を含む光学異方性積層体100によって、円偏光に変換できる。したがって、円偏光板300を画像表示装置に設けた場合に、表示面の色づきの抑制、及び、外光の反射の抑制といった前述の効果を、特に効果的に発揮できる。
【0295】
または、前記の角度θ1及びθ2は、同符号であり、且つ、下記式(29)及び(30)を満たすことが好ましい。
|θ1|=75°±10° (29)
|θ2|=15°±5° (30)
【0296】
式(29)を詳細に説明すると、角度θ1の絶対値|θ1|は、通常75°±10°、好ましくは75°±6°、より好ましくは75°±2°である。
式(30)を詳細に説明すると、角度θ2の絶対値|θ2|は、通常15°±5°、好ましくは15°±3°、より好ましくは15°±1°である。
このような要件を満たすことにより、直線偏光子310を透過した広い波長範囲の直線偏光を、第一光学異方性層110及び第二光学異方性層120を含む光学異方性積層体100によって、円偏光に変換できる。したがって、円偏光板300を画像表示装置に設けた場合に、表示面の色づきの抑制、及び、外光の反射の抑制といった前述の効果を、特に効果的に発揮できる。
【0297】
本発明にかかるある製品(円偏光板等)において、面内の光学軸(遅相軸、偏光透過軸、偏光吸収軸等)の方向及び幾何学的方向(フィルムの長手方向及び幅方向等)の角度関係は、ある方向のシフトを正、他の方向のシフトを負として規定され、当該正及び負の方向は、当該製品内の構成要素において共通に規定される。例えば、ある円偏光板において、「直線偏光子の偏光吸収軸方向に対する第一光学異方性層の遅相軸方向が15°であり直線偏光子の偏光吸収軸方向に対する第二光学異方性層の遅相軸方向が75°である」とは、下記の2通りの場合を表す:
・当該円偏光板を、そのある一方の面から観察すると、第一光学異方性層の遅相軸方向が、直線偏光子の偏光吸収軸方向から時計周りに15°シフトし、且つ第二光学異方性層の遅相軸方向が、直線偏光子の偏光吸収軸方向から時計周りに75°シフトしている。
・当該円偏光板を、そのある一方の面から観察すると、第一光学異方性層の遅相軸方向が、直線偏光子の偏光吸収軸方向から反時計周りに15°シフトし、且つ第二光学異方性層の遅相軸方向が、直線偏光子の偏光吸収軸方向から反時計周りに75°シフトしている。
【0298】
円偏光板300は、更に、直線偏光子310と光学異方性積層体100とを貼り合わせるための、接着層(図示せず。)を備えていてもよい。接着層としては、粘着剤の層を用いてもよいが、硬化性接着剤を硬化させてなる層を用いることが好ましい。硬化性接着剤としては、熱硬化性接着剤を用いてもよいが、光硬化性接着剤を用いることが好ましい。光硬化性接着剤としては、重合体又は反応性の単量体を含んだものを用いうる。また、接着剤は、必要に応じて溶媒、光重合開始剤、その他の添加剤等の一以上を含みうる。
【0299】
光硬化性接着剤は、可視光線、紫外線、及び赤外線等の光を照射すると硬化しうる接着剤である。中でも、操作が簡便なことから、紫外線で硬化しうる接着剤が好ましい。
【0300】
好ましい態様において、光硬化性接着剤は、水酸基を有する(メタ)アクリレートモノマーを50重量%以上含む。ここで、「接着剤が、ある割合で単量体を含む」という場合、当該単量体の割合は、当該単量体が単量体のまま存在しているもの、当該単量体が既に重合して重合体の一部となっているものの両方の合計の割合である。
【0301】
水酸基を有する(メタ)アクリレートモノマーの例としては、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−アクリロイロキシプロピルメタクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート等のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートが挙げられる。これらは、1種類で使用してもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。組合わせて使用する場合の含有量は、合計の割合である。
【0302】
光硬化性接着剤が含みうる、水酸基を有する(メタ)アクリレートモノマー以外の単量体の例としては、単官能、又は多官能の水酸基を有しない(メタ)アクリレートモノマー、及び1分子あたり1以上のエポキシ基を含有する化合物が挙げられる。
【0303】
接着剤は、本発明の効果を著しく損なわない範囲で、さらに任意の成分を含んでいてもよい。任意の成分の例としては、光重合開始剤、架橋剤、無機フィラー、重合禁止剤、着色顔料、染料、消泡剤、レベリング剤、分散剤、光拡散剤、可塑剤、帯電防止剤、界面活性剤、非反応性ポリマー(不活性重合体)、粘度調整剤、近赤外線吸収材等が挙げられる。これらは、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
【0304】
光重合開始剤の例としては、ラジカル開始剤及びカチオン開始剤が挙げられる。カチオン開始剤の例としてはIrgacure250(ジアリルヨードニウム塩、BASF社製)が挙げられる。ラジカル開始剤の例としてIrgacure184、Irgacure819、Irgacure2959、(いずれもBASF社製)が挙げられる。
【0305】
接着層の厚みは、好ましくは0.5μm以上、より好ましくは1μm以上であり、好ましくは30μm以下、より好ましくは20μm以下、さらに好ましくは10μm以下である。接着層の厚みを前記範囲内とすることにより、光学異方性積層体の光学的性質を損ねずに、良好な接着を達成しうる。
【0306】
円偏光板300は、更に、任意の層を含みうる。任意の層としては、例えば、偏光子保護フィルム層(図示せず。)が挙げられる。偏光子保護フィルム層としては、任意の透明フィルム層を用いうる。中でも、透明性、機械的強度、熱安定性、水分遮蔽性等に優れる樹脂のフィルム層が好ましい。そのような樹脂としては、トリアセチルセルロース等のアセテート樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、鎖状オレフィン樹脂、環式オレフィン樹脂、(メタ)アクリル樹脂等が挙げられる。
【0307】
さらに、円偏光板300が含みうる任意の層としては、例えば、耐衝撃性ポリメタクリレート樹脂層などのハードコート層、フィルムの滑り性を良くするマット層、反射防止層、防汚層等が挙げられる。
前記の層は、それぞれ、1層だけを設けてもよく、2層以上を設けてもよい。
【0308】
円偏光板300は、直線偏光子310と光学異方性積層体100とを貼り合わせることを含む製造方法によって、製造しうる。
【0309】
[11.画像表示装置]
本発明の画像表示装置は、画像表示素子と、上述した円偏光板とを備える。画像表示装置において、円偏光板は、通常、画像表示素子の視認側に設けられる。この際、円偏光板の向きは、その円偏光板の用途に応じて任意に設定しうる。よって、画像表示装置は、光学異方性積層体と、直線偏光子と、画像表示素子とを、この順に備えていてもよい。また、画像表示装置は、直線偏光子と、光学異方性積層体と、画像表示素子とを、この順に備えていてもよい。
【0310】
画像表示装置としては、画像表示素子の種類に応じて様々なものがあるが、代表的な例としては、画像表示素子として液晶セルを備える液晶表示装置、及び、画像表示素子として有機エレクトロルミネッセンス素子(以下、適宜「有機EL素子」ということがある。)を備える有機EL表示装置が挙げられる。
以下、画像表示装置の好ましい実施形態について、図面を示して説明する。
【0311】
図5は、本発明の第四実施形態に係る画像表示装置としての有機EL表示装置400を模式的に示す断面図である。
図5に示すように、有機EL表示装置400は、画像表示素子としての有機EL素子410;第二光学異方性層120及び第一光学異方性層110を備える光学異方性積層体100;並びに、直線偏光子310;を、この順に備える。
【0312】
前記の有機EL素子410は、透明電極層、発光層及び電極層をこの順に備え、透明電極層及び電極層から電圧を印加されることにより発光層が光を生じうる。有機発光層を構成する材料の例としては、ポリパラフェニレンビニレン系、ポリフルオレン系、およびポリビニルカルバゾール系の材料を挙げることができる。また、発光層は、複数の発光色が異なる層の積層体、あるいはある色素の層に異なる色素がドーピングされた混合層を有していてもよい。さらに、有機EL素子410は、正孔注入層、正孔輸送層、電子注入層、電子輸送層、等電位面形成層、電荷発生層等の機能層を備えていてもよい。
【0313】
このような有機EL表示装置400においては、光学異方性積層体100及び直線偏光子310を備える円偏光板300によって、表示面400Uの正面方向から見た場合に、外光の反射による表示面400Uのぎらつきを抑制できる。
具体的には、装置外部から入射した光は、その一部の直線偏光のみが直線偏光子310を通過し、次にそれが光学異方性積層体100を通過することにより、円偏光となる。円偏光は、表示装置内の光を反射する構成要素(有機EL素子410中の反射電極(図示せず)等)により反射され、再び光学異方性積層体100を通過することにより、入射した直線偏光の振動方向と直交する振動方向を有する直線偏光となり、直線偏光子310を通過しなくなる。これにより、反射抑制の機能が達成される(有機EL表示装置における反射抑制の原理は、特開平9-127885号公報参照)。
【0314】
また、前記の有機EL表示装置400において、光学異方性積層体100が含む第一光学異方性層110及び第二光学異方性層120が上述した要件を満たす面内レターデーションReを有するので、円偏光板300は、前記の反射抑制の機能を、広い波長範囲において効果的に発揮できる。したがって、この有機EL表示装置400では、その有機EL表示装置400の表示面400Uの正面方向における外光の反射を効果的に抑制して、優れた視認性を実現することができる。
【0315】
前記の反射抑制の機能は、有機EL表示装置400の表示面400Uに光を照射した場合に、その表示面400Uの正面方向において反射する光の明度Lによって、評価できる。ここで、前記の明度Lとは、L表色系における明度Lである。この明度Lが小さいほど、表示面400Uにおける光の反射抑制の機能に優れることを表す。
【0316】
図6は、本発明の第五実施形態に係る画像表示装置としての有機EL表示装置500を模式的に示す断面図である。
図6に示すように、有機EL表示装置500は、画像表示素子としての有機EL素子410;λ/4波長板510;直線偏光子310;並びに、第一光学異方性層110及び第二光学異方性層120を備える光学異方性積層体100;を、この順に備える。
【0317】
λ/4波長板510としては、直線偏光子310を透過した直線偏光を円偏光に変換しうる部材を用いうる。このようなλ/4波長板510としては、例えば、第二光学異方性層120が有しうる面内レターデーションReの範囲と同様の範囲の面内レターデーションReを有するフィルムを用いうる。また、λ/4波長板510は、直線偏光子310の偏光吸収軸に対してλ/4波長板510の遅相軸がなす角度が、45°またはそれに近い角度(例えば、好ましくは45°±5°、より好ましくは45°±4°、特に好ましくは45°±3°)となるように設けられる。これにより、λ/4波長板510と直線偏光子310との組み合わせによって、円偏光板の機能が発現して、外光の反射による表示面500Uのぎらつきを抑制できる。
【0318】
このような有機EL表示装置500においては、有機EL素子410から発せられ、λ/4波長板510、直線偏光子310及び光学異方性積層体100を通過した光によって、画像が表示される。よって、画像を表示する光は、直線偏光子310を通過した時点では直線偏光であるが、光学異方性積層体100を通過することによって、円偏光に変換される。したがって、前記の有機EL表示装置500では、円偏光によって画像が表示されるので、偏光サングラスを通して表示面500Uを見た場合に、画像を視認することが可能である。
【0319】
また、前記の有機EL表示装置500において、光学異方性積層体100が含む第一光学異方性層110及び第二光学異方性層120が上述した要件を満たす面内レターデーションReを有するので、光学異方性積層体100は、広い波長範囲において、画像を表示する光を理想的な円偏光に変換できる。したがって、この有機EL表示装置500では、その有機EL表示装置500の表示面500Uの正面方向から偏光サングラスを通して表示面500Uを見た場合、いずれの波長の光も、偏光サングラスの傾き角度に依らず一様に偏光サングラスを透過できる。よって、偏光サングラスの傾き角度に応じた表示面500Uの色づきを抑制できる。したがって、偏光サングラスを傾けた場合に、傾き角度によって表示面の色味変化が生じることを、抑制できる。
【0320】
図7は、本発明の第六実施形態に係る画像表示装置としての液晶表示装置600を模式的に示す断面図である。
図7に示すように、液晶表示装置600は、光源610;光源側直線偏光子620;画像表示素子としての液晶セル630;視認側直線偏光子としての直線偏光子310;並びに、第一光学異方性層110及び第二光学異方性層120を備える光学異方性積層体100;を、この順に備える。
【0321】
液晶セル630は、例えば、インプレーンスイッチング(IPS)モード、バーチカルアラインメント(VA)モード、マルチドメインバーチカルアラインメント(MVA)モード、コンティニュアスピンホイールアラインメント(CPA)モード、ハイブリッドアラインメントネマチック(HAN)モード、ツイステッドネマチック(TN)モード、スーパーツイステッドネマチック(STN)モード、オプチカルコンペンセイテッドベンド(OCB)モードなど、任意のモードの液晶セルを用いうる。
【0322】
このような液晶表示装置600においては、光源610から発せられ、光源側直線偏光子620、液晶セル630、直線偏光子310及び光学異方性積層体100を通過した光によって、画像が表示される。よって、画像を表示する光は、直線偏光子310を通過した時点では直線偏光であるが、光学異方性積層体100を通過することによって、円偏光に変換される。したがって、前記の液晶表示装置600では、円偏光によって画像が表示されるので、偏光サングラスを通して表示面600Uを見た場合に、画像を視認することが可能である。
【0323】
また、前記の液晶表示装置600において、光学異方性積層体100が含む第一光学異方性層110及び第二光学異方性層120が上述した要件を満たす面内レターデーションReを有するので、光学異方性積層体100は、広い波長範囲において、画像を表示する光を理想的な円偏光に変換できる。したがって、第五実施形態で説明した有機EL表示装置500と同様に、本実施形態に係る液晶表示装置600では、偏光サングラスの傾き角度に応じた表示面600Uの色づきを抑制できる。したがって、偏光サングラスを傾けた場合に、傾き角度によって表示面の色味変化が生じることを、抑制できる。
【0324】
前記の色づき抑制の機能は、表示面500U及び600Uの彩度Cの平均値によって、評価できる。ここで、彩度Cとは、Lh表色系における彩度Cである。この彩度Cは、L表色系の色度a及びbを用いて、下記の式(X)で表される。前記の彩度Cの平均値が小さいほど、偏光サングラスの傾き角度に応じた表示面600Uの色づき抑制の機能に優れることを表す。
【0325】
【数1】
【0326】
前記の彩度Cの平均値は、下記の方法によって測定しうる。
画像表示装置の表示面の正面方向から、偏光サングラスを通して、前記の表示面を観察し、その彩度Cを測定する。前記の彩度Cの測定を、画像表示装置の表示面に平行なある基準方向(例えば、画像表示装置の直線偏光子の偏光吸収軸方向)に対して偏光サングラスの偏光吸収軸がなす傾き角度を、0°以上360°未満の範囲で、5°刻みで変えながら、行う。そして、測定された各傾き角度での彩度Cの平均値を計算する。
【実施例】
【0327】
以下、実施例を示して本発明について具体的に説明する。ただし、本発明は以下に示す実施例に限定されるものではなく、本発明の請求の範囲及びその均等の範囲を逸脱しない範囲において任意に変更して実施しうる。以下の説明において、量を表す「%」及び「部」は、別に断らない限り、重量基準である。また、以下に説明する操作は、別に断らない限り、常温常圧大気中において行った。
【0328】
[評価方法]
〔光学異方性層の位相差特性の測定方法〕
延伸基材及び光学異方性層を備える複層フィルムから、複層フィルムの長手方向に平行な長辺と、複層フィルムの幅方向に平行な短辺とを有する、A4サイズのサンプル片を切り出した。
光学的に等方性のガラス板の一方の面と、前記サンプル片の光学異方性層側の面とを、手貼りローラーを用いて、貼り合わせた。貼り合わせは、粘着剤層(日東電工製「CS9621」)を介して行った。また、ガラス板のサイズは75mm×25mmであり、ガラス板の長辺とサンプル片の長辺とが平行になるように貼り合わせ、ガラス板からはみ出したサンプル片の余り部分は、カッターで切り落とした。これにより、(ガラス板)/(粘着剤層)/(光学異方性層)/(延伸基材)の層構成を有する、積層体を得た。
【0329】
積層体から、延伸基材を剥離して、(ガラス板)/(粘着剤層)/(光学異方性層)の層構成を有する測定用位相差板を得た。
こうして得られた測定用位相差板を用いて、波長450nm、550nm、590nm及び650nmにおける光学異方性層の面内レターデーションRe(450)、Re(550)、Re(590)及びRe(650)、並びに、遅相軸方向を、位相差測定装置(AXOMETRICS社製「AxoScan」)を用いて測定した。そして、光学異方性層のRe(590)、Re(450)/Re(550)及びRe(650)/Re(550)の値を求めた。また、フィルム幅方向に対して、光学異方性層の遅相軸がなす角度を求めた。
【0330】
〔シミュレーションによる彩度平均値の計算方法〕
シミュレーション用のソフトウェアとして、シンテック社製「LCD Master」を用いて、光学異方性積層体を備える下記の評価モデルを作成した。
【0331】
シミュレーション用の評価モデルでは、光源、光源側直線偏光子、液晶セル及び視認側直線偏光子をこの順に備える市販の液晶表示装置(Apple社製「iPad Air」)の表示面に、光学異方性積層体の第一光学異方性層側の面を貼り合わせて得られる画像表示装置を設定した。前記の貼り合わせは、厚み方向から見て、視認側直線偏光子の偏光吸収軸に対して光学異方性積層体の第一光学異方性層の遅相軸及び第二光学異方性層の遅相軸がなす角度θ1及びθ2が、それぞれ15.0°及び75.0°となるように設定した。この画像表示装置は、視認側から、第二光学異方性層、第一光学異方性層、視認側直線偏光子、及び、画像表示素子としての液晶セルを、この順に備えていた。
【0332】
図8は、実施例及び比較例でのシミュレーションにおいて、彩度の計算を行う際に設定した評価モデルの様子を模式的に示す斜視図である。図8において、画像表示装置の表示面10には、偏光サングラス20の偏光吸収軸21に平行な線分22を、一点鎖線で示す。
前記の画像表示装置を白表示にして、図8に示すように、表示面10の正面方向から見たときに、偏光サングラス20を通して見える画像の彩度Cを計算した。偏光サングラス20としては、理想偏光フィルムを設定した。ここで、理想偏光フィルムとは、ある方向に平行な振動方向を有する直線偏光の全てを通過させるが、その方向に垂直な振動方向を有する直線偏光を全く通過させないフィルムをいう。
【0333】
前記の彩度Cの計算を、表示面10のある基準方向11に対して偏光サングラス20の偏光吸収軸21がなす傾き角度φを、0°以上360°未満の範囲で、5°刻みで変えながら、行った。そして、計算された彩度Cの平均値を、彩度平均値として算出した。この彩度平均値が小さいほど、色づきが抑制された良好な結果であることを示す。
【0334】
〔目視による画像の色づきの評価方法〕
光源、光源側直線偏光子、IPSモードの液晶セル、及び視認側直線偏光子をこの順に備えた液晶表示装置(Apple社製「iPad」)を用意した。この液晶表示装置の表示面部分を分解し、液晶表示装置の視認側直線偏光子を露出させた。露出した視認側直線偏光子に、後述する実施例又は比較例で製造した光学異方性積層体の第一光学異方性層側の面を、手貼りローラーを用いて貼り合わせた。貼り合わせは、粘着剤層(日東電工製「CS9621」)を介して行った。また、前記の貼り合わせは、厚み方向から見て、液晶表示装置の視認側直線偏光子の偏光吸収軸に対して第一光学異方性層の遅相軸及び第二光学異方性層の遅相軸がなす角度が、それぞれ、15.0°及び75.0°となるように行った。これにより、評価用の画像表示装置を得た。
【0335】
前記の画像表示装置を白表示にして、表示面の正面方向から、偏光サングラスを通して表示面を目視にて観察した。この観察の際、画像表示装置を、その表示面に垂直な回転軸を中心にして一回転させた。そして、観察される像に、回転角度に応じた色の変化があるか、評価した。回転角度に応じた色の変化が小さいほど、良好な結果である。
【0336】
前記の評価を、多数の観察者が行い、各人が、実験例群I〜IVの全ての実験例(実施例及び比較例)の結果を順位づけし、その順位に相当する点数(1位61点、2位60点、・・・、最下位1点)を与えた。各実験例について各人が採点した合計点を得点順に並べ、その点数のレンジの中で上位グループからA、B、C、D及びEの順に評価した。
【0337】
〔シミュレーションによる明度Lの計算方法〕
シミュレーション用のソフトウェアとしてシンテック社製「LCD Master」を用いて、円偏光板を備える下記の評価モデルを作成した。
【0338】
シミュレーション用の評価モデルでは、平面状の反射面を有するミラーの前記反射面に、円偏光板の第二光学異方性層側の面を貼り合わせた構造を設定した。したがって、この評価モデルでは、視認側から、偏光子片、第一光学異方性層、第二光学異方性層及びミラーがこの順に設けられた構造が設定された。また、この評価モデルでは、ミラーとして、入射した光を反射率100%で鏡面反射しうる理想ミラーを設定し、さらに、偏光子片として、理想偏光フィルムを設定した。
【0339】
前記の評価モデルにおいて、ミラーの反射面に垂直な正面方向に設けられたD65光源から光が照射された場合に、正面方向からミラーの反射面を見て観察される光の明度Lを計算した。この明度Lが小さいほど、光の反射が抑制された良好な結果であることを示す。
【0340】
〔目視による反射輝度の評価方法〕
有機EL素子及び円偏光板をこの順に備えた有機EL表示装置(Samusung社製「GALAXY」)を用意した。この有機EL表示装置の表示面部分を分解し、円偏光板を取り除いた。その後、有機EL素子上に、後述する実施例又は比較例で製造した円偏光板の第二光学異方性層側の面を、手貼りローラーを用いて貼り合わせた。貼り合わせは、粘着剤層(日東電工製「CS9621」)を介して行った。これにより、評価用の画像表示装置を得た。
【0341】
前記の画像表示装置を黒表示にして、表示面の正面方向から、表示面を観察した。観察の際、外光の反射による輝度が小さいほど、良好な結果である。
【0342】
前記の評価を、多数の観察者が行い、各人が、実験例群V〜VIIIの全ての実験例(実施例及び比較例)の結果を順位づけし、その順位に相当する点数(1位55点、2位54点、・・・、最下位1点)を与えた。各実験例について各人が採点した合計点を得点順に並べ、その点数のレンジの中で上位グループからA、B、C、D及びEの順に評価した。
【0343】
[製造例1:延伸基材(S1)のロール(S1−1)の製造]
ノルボルネン重合体を含む熱可塑性樹脂のペレット(日本ゼオン社製、ガラス転移温度Tg=126℃)を、90℃で5時間乾燥させた。乾燥させたペレットを押し出し機に供給し、押し出し機内で溶融させた。そして、溶融した樹脂を、ポリマーパイプ及びポリマーフィルターを通し、Tダイからキャスティングドラム上にシート状に押し出し、冷却し、厚み60μm、幅1350mmの長尺の延伸前基材(S0)を得た。こうして得られた延伸前基材(S0)を、マスキングフィルム(トレデガー社製「FF1025」)と貼り合わせて保護しながら、巻き取り、延伸前基材(S0)のロールを得た。
【0344】
延伸前基材(S0)のロールから、延伸前基材(S0)を引き出し、連続的にマスキングフィルムを剥離してテンター延伸機に供給して、斜め方向への延伸処理を行なった。この延伸処理における延伸倍率は1.5倍、延伸温度は142℃とした。延伸後、フィルム幅方向の両端をトリミングして、幅1350mmで長尺の延伸基材(S1)を得た。得られた延伸基材(S1)の遅相軸がフィルム幅方向に対してなす配向角は15°、配向角のバラツキは0.7°、延伸基材(S1)のNz係数は1.1、測定波長590nmにおける延伸基材(S1)の面内レターデーションReは141nm、延伸基材(S1)の厚みは22μmであった。
【0345】
得られた延伸基材(S1)の片面に、新たなマスキングフィルム(トレデガー社製「FF1025」)を貼り合わせて保護しながら、巻き取り、延伸基材(S1)のロール(S1−1)を得た。
【0346】
[製造例2:延伸基材(S1)のロール(S1−2)の製造]
延伸前基材(S0)に斜め延伸を施して得た延伸基材(S1)に、新たなマスキングフィルム(トレデガー社製「FF1025」)を貼り合わせる際、マスキングフィルムと貼り合わせる延伸基材(S1)の面を、製造例1でマスキングフィルムと貼り合わせた面とは反対側の面に変更した。以上の事項以外は製造例1と同様にして、延伸基材(S1)のロール(S1−2)を得た。
【0347】
[製造例3:液晶組成物(A)の製造]
下記式(B1)で表される逆波長重合性液晶化合物21.295部、界面活性剤(DIC社製「メガファックF−562」)0.064部、重合開始剤(BASF社製「IRGACURE379EG」)0.641部、並びに、溶媒として1,3−ジオキソラン(東邦化学社製)46.800重量部及びシクロペンタノン(日本ゼオン社製)31.200部を混合して、液状の液晶組成物(A)を調製した。
【0348】
【化33】
【0349】
[製造例4:液晶組成物(B)の製造]
前記式(B1)で表される逆波長分散液晶化合物13.629部、下記式(B2)で表される逆波長重合性液晶化合物7.666部、界面活性剤(DIC社製「メガファックF−562」)0.064部、重合開始剤(BASF社製「IRGACURE379EG」)0.641部、並びに、溶媒として1,3−ジオキソラン(東邦化学社製)46.800重量部及びシクロペンタノン(日本ゼオン社製)31.200部を混合して、液状の液晶組成物(B)を調製した。
【0350】
【化34】
【0351】
[製造例5:液晶組成物(C)の製造]
前記式(B1)で表される逆波長重合性液晶化合物10.009部、前記式(B2)で表される逆波長重合性液晶化合物11.286部、界面活性剤(DIC社製「メガファックF−562」)0.064部、重合開始剤(BASF社製「IRGACURE379EG」)0.641部、並びに、溶媒として1,3−ジオキソラン(東邦化学社製)46.800重量部及びシクロペンタノン(日本ゼオン社製)31.200部を混合して、液状の液晶組成物(C)を調製した。
【0352】
[実験例群I:液晶組成物(A)を用いた、色づき抑制効果に係る実験例]
[実施例I−1]
(I−1−1.第一光学異方性層を含む複層フィルムの製造)
延伸基材(S1)のロール(S1−1)から、延伸基材(S1)を繰り出し、マスキングフィルムを剥離して、フィルム長手方向に搬送した。室温25℃において、搬送される延伸基材(S1)の、マスキングフィルムが貼合されていた側の面に、液晶組成物(A)を、ダイコーターを用いて直接に塗工し、液晶組成物の層を形成した。
【0353】
延伸基材(S1)上の液晶組成物の層に、110℃で2.5分間、配向処理を施した。その後、窒素雰囲気下で、液晶組成物の層に、積算照度500mJ/cm以上の紫外線を照射して、液晶組成物中の逆波長重合性液晶化合物を重合させた。これにより、液晶組成物の層が硬化して、(延伸基材(S1))/(第一光学異方性層(a1))の層構成を有する、複層フィルム(S1−a1)を得た。前記の第一光学異方性層(a1)の乾燥厚みは3.89μmであった。また、第一光学異方性層(a1)は、ホモジニアス配向した液晶化合物の硬化液晶分子として逆波長重合性液晶化合物の重合体を含んでいた。
【0354】
こうして得られた複層フィルム(S1−a1)を用いて、上述した方法により、第一光学異方性層(a1)の位相差特性の測定を行った。その結果、第一光学異方性層(a1)は、Re(H590)=246nm、Re(H450)/Re(H550)=0.80、Re(H650)/Re(H550)=1.04であり、フィルム幅方向に対して遅相軸がなす角度は15°であった。
【0355】
(I−1−2.第二光学異方性層を含む複層フィルムの製造)
ロール(S1−1)ではなく、ロール(S1−2)から延伸基材(S1)を繰り出した。また、塗工する液晶組成物(A)の厚みを変更した。以上の事項以外は、前記の工程(I−1−1)と同様にして、(延伸基材(S1))/(第二光学異方性層(a2))の層構成を有する、複層フィルム(S1−a2)を得た。前記の第二光学異方性層(a2)の乾燥厚みは1.95μmであった。また、第二光学異方性層(a2)は、ホモジニアス配向した液晶化合物の硬化液晶分子として逆波長重合性液晶化合物の重合体を含んでいた。
【0356】
こうして得られた複層フィルム(S1−a2)を用いて、上述した方法により、第二光学異方性層(a2)の位相差特性の測定を行った。その結果、第二光学異方性層(a2)は、Re(Q590)=123nm、Re(Q450)/Re(Q550)=0.80、Re(Q650)/Re(Q550)=1.04であり、フィルム幅方向に対して遅相軸がなす角度は−15°であった。
【0357】
(I−1−3.光学異方性積層体の製造)
複層フィルム(S1−a1)から、複層フィルム(S1−a1)の幅方向に平行な長辺と、複層フィルム(S1−a1)の長手方向に平行な短辺とを有する、A4サイズのサンプル片(S1−a1)を切り出した。
【0358】
また、複層フィルム(S1−a2)から、複層フィルム(S1−a2)の長手方向に平行な長辺と、複層フィルム(S1−a2)の幅方向に平行な短辺とを有する、A4サイズのサンプル片(S1−a2)を切り出した。
【0359】
さらに、ノルボルネン重合体を含む樹脂からなる未延伸フィルム(日本ゼオン社製「ZF16」、厚み100μm)から、A4サイズのサンプル片(ZF)を切り出した。
【0360】
サンプル片(ZF)の一面と、サンプル片(S1−a2)の第二光学異方性層(a2)側の面とを、ラミネーターを用いて、互いの長辺同士、短辺同士が平行になるように貼り合わせた。貼り合わせは、粘着剤層(日東電工製「CS9621」)を介して行った。これにより、(サンプル片(ZF))/(粘着剤層)/(第二光学異方性層(a2))/(延伸基材(S1))の層構成を有する、積層体(ZF−a2−S1)を得た。さらに積層体(ZF−a2−S1)から延伸基材(S1)を剥離し、(サンプル片(ZF))/(粘着剤層)/(第二光学異方性層(a2))の層構成を有する積層体(ZF−a2)を得た。
【0361】
続いて、積層体(ZF−a2)の第二光学異方性層(a2)側の面と、サンプル片(S1−a1)の第一光学異方性層(a1)側の面とを、ラミネーターを用いて、互いの長辺同士、短辺同士が平行になるように貼り合わせた。貼り合わせは、粘着剤層(日東電工製「CS9621」)を介して行った。これにより、(サンプル片(ZF))/(粘着剤層)/(第二光学異方性層(a2))/(粘着剤層)/(第一光学異方性層(a1))/(延伸基材(S1))の層構成を有する、積層体(ZF−a2−a1−S1)を得た。さらに積層体(ZF−a2−a1−S1)から延伸基材(S1)を剥離し、(サンプル片(ZF))/(粘着剤層)/(第二光学異方性層(a2))/(粘着剤層)/(第一光学異方性層(a1))の層構成を有する光学異方性積層体(ZF−a2−a1)を得た。この積層体(ZF−a2−a1)における第一光学異方性層(a1)の遅相軸と第二光学異方性層(a2)の遅相軸とがなす角度は、60°であった。
こうして得られた光学異方性積層体(ZF−a2−a1)について、上述した方法により、彩度平均値の計算、及び、色づきの評価を行った。
【0362】
[実施例I−2〜I−17、及び、比較例I−1〜I−3]
前記工程(I−1−1)において、塗工する液晶組成物(A)の厚みを変更して第一光学異方性層(a1)の乾燥厚みを調整することにより、波長590nmにおける第一光学異方性層(a1)の面内レターデーションRe(H590)の値を、表1に示すように変更した。
また、前記工程(I−1−2)において、塗工する液晶組成物(A)の厚みを変更して第二光学異方性層(a2)の乾燥厚みを調整することにより、波長590nmにおける第二光学異方性層(a2)の面内レターデーションRe(Q590)の値を、表1に示すように変更した。
以上の事項以外は、実施例I−1と同様にして、光学異方性積層体(ZF−a2−a1)の製造及び評価を行った。
【0363】
ところで、実施例I−1〜I−17及び比較例I−1〜I−3の各光学異方性層は、いずれも同じ液晶組成物(A)から得られている。よって、実施例I−1〜I−17及び比較例I−1〜I−3の第一光学異方性層(a1)及び第二光学異方性層(a2)は、Re(H450)/Re(H550)及びRe(Q450)/Re(Q550)がいずれも同じ値であり、また、Re(H650)/Re(H550)及びRe(Q650)/Re(Q550)がいずれも同じ値であった。
【0364】
[実験例群II:液晶組成物(B)を用いた、色づき抑制効果に係る実験例]
[実施例II−1]
液晶組成物(A)の代わりに液晶組成物(B)を用いたこと、並びに、液晶組成物(B)の塗工厚みを変更したこと以外は、実施例I−1と同様にして、光学異方性積層体(ZF−2b−1b)の製造及び評価を行った。以下、具体的に説明する。
【0365】
(II−1−1.第一光学異方性層を含む複層フィルムの製造)
延伸基材(S1)のロール(S1−1)から、延伸基材(S1)を繰り出し、マスキングフィルムを剥離して、フィルム長手方向に搬送した。室温25℃において、搬送される延伸基材(S1)の、マスキングフィルムが貼合されていた側の面に、液晶組成物(B)を、ダイコーターを用いて直接に塗工し、液晶組成物の層を形成した。
【0366】
延伸基材(S1)上の液晶組成物の層に、110℃で2.5分間、配向処理を施した。その後、窒素雰囲気下で、液晶組成物の層に、積算照度500mJ/cm以上の紫外線を照射して、液晶組成物中の逆波長重合性液晶化合物を重合させた。これにより、液晶組成物の層が硬化して、(延伸基材(S1))/(第一光学異方性層(b1))の層構成を有する、複層フィルム(S1−b1)を得た。前記の第一光学異方性層(b1)の乾燥厚みは3.37μmであった。また、第一光学異方性層(b1)は、ホモジニアス配向した液晶化合物の硬化液晶分子として逆波長重合性液晶化合物の重合体を含んでいた。
【0367】
こうして得られた複層フィルム(S1−b1)を用いて、上述した方法により、第一光学異方性層(b1)の位相差特性の測定を行った。その結果、第一光学異方性層(b1)は、Re(H590)=242nm、Re(H450)/Re(H550)=0.89、Re(H650)/Re(H550)=1.03であり、フィルム幅方向に対して遅相軸がなす角度は15°であった。
【0368】
(II−1−2.第二光学異方性層を含む複層フィルムの製造)
ロール(S1−1)ではなく、ロール(S1−2)から延伸基材(S1)を引き出した。また、塗工する液晶組成物(B)の厚みを変更した。以上の事項以外は、前記の工程(II−1−1)と同様にして、(延伸基材(S1))/(第二光学異方性層(b2))の層構成を有する、複層フィルム(S1−b2)を得た。前記の第二光学異方性層(b2)の乾燥厚みは、1.69μmであった。また、第二光学異方性層(b2)は、ホモジニアス配向した液晶化合物の硬化液晶分子として逆波長重合性液晶化合物の重合体を含んでいた。
【0369】
こうして得られた複層フィルム(S1−b2)を用いて、上述した方法により、第二光学異方性層(b2)の位相差特性の測定を行った。その結果、第二光学異方性層(b2)は、Re(Q590)=121nm、Re(Q450)/Re(Q550)=0.89、Re(Q650)/Re(Q550)=1.03であり、フィルム幅方向に対して遅相軸がなす角度は−15°であった。
【0370】
(II−1−3.光学異方性積層体の製造)
複層フィルム(S1−a1)の代わりに、(延伸基材(S1))/(第一光学異方性層(b1))の層構成を有する前記複層フィルム(S1−b1)を用いた。
また、複層フィルム(S1−a2)の代わりに、(延伸基材(S1))/(第二光学異方性層(b2))の層構成を有する前記複層フィルム(S1−b2)を用いた。
以上の事項以外は、実施例I−1の工程(I−1−3)と同様にして、(サンプル片(ZF))/(粘着剤層)/(第二光学異方性層(b2))/(粘着剤層)/(第一光学異方性層(b1))の層構成を有する光学異方性積層体(ZF−b2−b1)を得た。
こうして得られた光学異方性積層体(ZF−b2−b1)について、上述した方法により、彩度平均値の計算、及び、色づきの評価を行った。
【0371】
[実施例II−2〜10及び比較例II−1〜II−4]
前記工程(II−1−1)において、塗工する液晶組成物(B)の厚みを変更して第一光学異方性層(b1)の乾燥厚みを調整することにより、波長590nmにおける第一光学異方性層(b1)の面内レターデーションRe(H590)の値を、表2に示すように変更した。
また、前記工程(II−1−2)において、塗工する液晶組成物(B)の厚みを変更して第二光学異方性層(b2)の乾燥厚みを調整することにより、波長590nmにおける第二光学異方性層(b2)の面内レターデーションRe(Q590)の値を、表2に示すように変更した。
以上の事項以外は、実施例II−1と同様にして、光学異方性積層体(ZF−b2−b1)の製造及び評価を行った。
【0372】
ところで、実施例II−1〜II−10及び比較例II−1〜II−4の各光学異方性層は、いずれも同じ液晶組成物(B)から得られている。よって、実施例II−1〜II−10及び比較例II−1〜II−4の第一光学異方性層(b1)及び第二光学異方性層(b2)は、Re(H450)/Re(H550)及びRe(Q450)/Re(Q550)がいずれも同じ値であり、また、Re(H650)/Re(H550)及びRe(Q650)/Re(Q550)がいずれも同じ値であった。
【0373】
[実験例群III:液晶組成物(C)を用いた、色づき抑制効果に係る実験例]
[実施例III−1]
液晶組成物(A)の代わりに液晶組成物(C)を用いたこと、並びに、液晶組成物(C)の塗工厚みを変更したこと以外は、実施例I−1と同様にして、光学異方性積層体(ZF−2c−1c)の製造及び評価を行った。以下、具体的に説明する。
【0374】
(III−1−1.第一光学異方性層を含む複層フィルムの製造)
延伸基材(S1)のロール(S1−1)から、延伸基材(S1)を繰り出し、マスキングフィルムを剥離して、フィルム長手方向に搬送した。室温25℃において、搬送される延伸基材(S1)の、マスキングフィルムが貼合されていた側の面に、液晶組成物(C)を、ダイコーターを用いて直接に塗工し、液晶組成物の層を形成した。
【0375】
延伸基材(S1)上の液晶組成物の層に、110℃で2.5分間、配向処理を施した。その後、窒素雰囲気下で、液晶組成物の層に、積算照度500mJ/cm以上の紫外線を照射して、液晶組成物中の逆波長重合体液晶化合物を重合させた。これにより、液晶組成物の層が硬化して、(延伸基材(S1))/(第一光学異方性層(c1))の層構成を有する、複層フィルムを(S1−c1)を得た。前記第一光学異方性層(c1)の乾燥厚みは3.17μmであった。また、第一光学異方性層(c1)は、ホモジニアス配向した液晶化合物の硬化液晶分子として逆波長重合性液晶化合物の重合体を含んでいた。
【0376】
こうして得られた複層フィルム(S1−c1)を用いて、上述した方法により、第一光学異方性層(c1)の位相差特性の測定を行った。その結果、第一光学異方性層(c1)は、Re(H590)=243nm、Re(H450)/Re(H550)=0.93、Re(H650)/Re(H550)=1.01であり、フィルム幅方向に対して遅相軸がなす角度は15°であった。
【0377】
(III−1−2.第二光学異方性層を含む複層フィルムの製造)
ロール(S1−1)ではなく、ロール(S1−2)から延伸基材(S1)を繰り出した。また、塗工する液晶組成物(C)の厚みを変更した。以上の事項以外は、前記の工程(III−1−1)と同様にして、(延伸基材(S1))/(第二光学異方性層(c2))の層構成を有する、複層フィルム(S1−c2)を得た。前記の第二光学異方性層(c2)の乾燥厚みは、1.58μmであった。また、第二光学異方性層(c2)は、ホモジニアス配向した液晶化合物の硬化液晶分子として逆波長重合性液晶化合物の重合体を含んでいた。
【0378】
こうして得られた複層フィルム(S1−c2)を用いて、上述した方法により、第二光学異方性層(c2)の位相差特性の測定を行った。その結果、第二光学異方性層(c2)は、Re(Q590)=122nm、Re(Q450)/Re(Q550)=0.93、Re(Q650)/Re(Q550)=1.01であり、フィルム幅方向に対して遅相軸がなす角度は−15°であった。
【0379】
(III−1−3.光学異方性積層体の製造)
複層フィルム(S1−a1)の代わりに、(延伸基材(S1))/(第一光学異方性層(c1))の層構成を有する前記複層フィルムを(S1−c1)を用いた。
また、複層フィルム(S1−a2)の代わりに、(延伸基材(S1))/(第二光学異方性層(c2))の層構成を有する前記複層フィルム(S1−c2)を用いた。
以上の事項以外は、実施例I−1の工程(I−1−3)と同様にして、(サンプル片(ZF))/(粘着剤層)/(第二光学異方性層(c2))/(粘着剤層)/(第一光学異方性層(c1))の層構成を有する光学異方性積層体(ZF−c2−c1)を得た。
こうして得られた光学異方性積層体(ZF−c2−c1)について、上述した方法により、彩度平均値の計算、及び、色づきの評価を行った。
【0380】
[実施例III−2〜III−9及び比較例III−1〜III−7]
前記工程(III−1−1)において、塗工する液晶組成物(C)の厚みを変更して第一光学異方性層(c1)の乾燥厚みを調整することにより、波長590nmにおける第一光学異方性層(c1)の面内レターデーションRe(H590)の値を、表3に示すように変更した。
また、前記工程(III−1−2)において、塗工する液晶組成物(C)の厚みを変更して第二光学異方性層(c2)の乾燥厚みを調整することにより、波長590nmにおける第二光学異方性層(c2)の面内レターデーションRe(Q590)の値を、表3に示すように変更した。
以上の事項以外は、実施例III−1と同様にして、光学異方性積層体(ZF−c2−c1)の製造及び評価を行った。
【0381】
ところで、実施例III−1〜III−9及び比較例III−1〜III−7の各光学異方性層は、いずれも同じ液晶組成物(C)から得られている。よって、実施例III−1〜III−9及び比較例III−1〜III−7の第一光学異方性層(c1)及び第二光学異方性層(c2)は、Re(H450)/Re(H550)及びRe(Q450)/Re(Q550)がいずれも同じ値であり、また、Re(H650)/Re(H550)及びRe(Q650)/Re(Q550)がいずれも同じ値であった。
【0382】
[実験例群IV:延伸フィルムを用いた、色づき抑制効果に係る実験例]
[比較例IV−1〜IV−11]
(IV−1.第一光学異方性層の製造)
ノルボルネン重合体を含む熱可塑性樹脂のペレット(日本ゼオン社製、ガラス転移温度Tg=126℃)を、90℃で5時間乾燥させた。乾燥させたペレットを押し出し機に供給し、押し出し機内で溶融させた。そして、溶融した樹脂を、ポリマーパイプ及びポリマーフィルターを通し、Tダイからキャスティングドラム上にシート状に押し出し、冷却し、延伸前フィルムを得た。前記の樹脂の押し出しは、表4に示す面内レターデーションRe(H590)を有する延伸フィルムが得られるように、キャスティングドラムによる樹脂の引取速度を調整することで、得られる延伸前フィルムの厚みを調整しながら行った。この延伸前フィルムを各比較例で共通の延伸条件で延伸して、第一光学異方性層としての延伸フィルムを得た。
【0383】
得られた第一光学異方性層を位相差測定装置(AXOMETRICS社製「AxoScan」)を用いて測定したところ、Re(H590)は表4に示すとおりであり、また、Re(H450)/Re(H550)=1.01、Re(H650)/Re(H550)=0.99であった。
【0384】
(IV−2.第二光学異方性層の製造)
樹脂の押し出しの際に、キャスティングドラムによる樹脂の引取速度を調整することで、表4に示す面内レターデーションRe(Q590)を有する延伸フィルムが得られるように、延伸前フィルムの厚みを変更した。以上の事項以外は、前記の工程(IV−1)と同様にして、第二光学異方性層としての延伸フィルムを得た。
【0385】
得られた第二光学異方性層を位相差測定装置(AXOMETRICS社製「AxoScan」)を用いて測定したところ、Re(Q590)は表4に示すとおりであり、また、Re(Q450)/Re(Q550)=1.01、Re(Q650)/Re(Q550)=0.99であった。
【0386】
(IV−3.光学異方性積層体の製造)
前記の第一光学異方性層としての延伸フィルムと第二光学異方性層としての延伸フィルムとを、粘着剤層(日東電工製「CS9621」)を介して貼り合わせて、光学異方性積層体を得た。この際、第一光学異方性層の遅相軸と第二光学異方性層の遅相軸とがなす角度は、60°にした。
こうして得られた光学異方性積層体について、上述した方法により、彩度平均値の計算、及び、色づきの評価を行った。
【0387】
[結果]
前記の色づき抑制効果に係る実験例としての、実施例I−1〜I−17及び比較例I−1〜I−3(表1);実施例II−1〜I−10及び比較例II−1〜II−4(表2);実施例III−1〜III−9及び比較例III−1〜III−7(表3);並びに、比較例IV−1〜IV−11(表4)の結果を、下記の表1〜4に示す。下記の表において、略称の意味は、以下のとおりである。
θ1:第一光学異方性層の遅相軸が、液晶表示装置の視認側直線偏光子の偏光吸収軸に対してなす角度。
θ2:第二光学異方性層の遅相軸が、液晶表示装置の視認側直線偏光子の偏光吸収軸に対してなす角度。
平均C:彩度Cの平均値。
(A):液晶組成物(A)。
(B):液晶組成物(B)。
(C):液晶組成物(C)。
COP:脂環式構造含有重合体。
【0388】
【表1】
【0389】
【表2】
【0390】
【表3】
【0391】
【表4】
【0392】
表1〜表4に示される結果から分かるように、本発明の要件を満たした面内レターデーションを有する第一光学異方性層及び第二光学異方性層を備える光学異方性積層体は、画像表示装置に設けた場合に、偏光サングラスを通して見たその画像表示装置の表示面の色づきを効果的に抑制することができる。
【0393】
[実験例群V:液晶組成物(A)を用いた、反射抑制効果に係る実験例]
[実施例V−1]
(V−1−1.第一光学異方性層を含む複層フィルムの製造)
第一光学異方性層(a1)の乾燥厚みを4.15μmに変更することにより、第一光学異方性層(a1)のRe(H590)を262nmに変更した。以上の事項以外は、実施例I−1の工程(I−1−1)と同様にして、(延伸基材(S1))/(第一光学異方性層(a1))の層構成を有する複層フィルム(S1−a1)を製造した。
【0394】
(V−1−2.第二光学異方性層を含む複層フィルムの製造)
第二光学異方性層(a2)の乾燥厚みを2.07μmに変更することにより、第二光学異方性層(a2)のRe(Q590)を131nmに変更した。以上の事項以外は、実施例I−1の工程(I−1−2)と同様にして、(延伸基材(S1))/(第二光学異方性層(a2))の層構成を有する複層フィルム(S1−a2)を製造した。
【0395】
(V−1−3.第二光学異方性層を含む複層フィルムの製造)
複層フィルム(S1−a1)から、複層フィルム(S1−a1)の長手方向に平行な長辺と、複層フィルム(S1−a1)の幅方向に平行な短辺とを有する、A4サイズのサンプル片(s1−a1)を切り出した。
【0396】
また、複層フィルム(S1−a2)から、複層フィルム(S1−a2)の幅方向に平行な長辺と、複層フィルム(S1−a2)の長手方向に平行な短辺と有する、A4サイズのサンプル片(s1−a2)を切り出した。
【0397】
さらに、長尺の直線偏光子としての偏光フィルム(サンリッツ社製「HLC2−5618S」、厚さ180μm、幅方向に対して0°の方向に偏光透過軸を有し、幅方向に対して90°の方向に偏光吸収軸を有する。)を用意した。この偏光フィルムから、当該偏光フィルムの長手方向に平行な長辺と、偏光フィルムの幅方向に平行な短辺と有する、A4サイズの偏光子片(P)を切り出した。
【0398】
偏光子片(P)の一面と、サンプル片(s1−a1)の第一光学異方性層(a1)側の面とを、ラミネーターを用いて、互いの長辺同士、短辺同士が平行になるように貼り合わせた。貼り合わせは、粘着剤層(日東電工製「CS9621」)を介して行った。これにより、(偏光子片(P))/(粘着剤層)/(第一光学異方性層(a1))/(延伸基材(S1))の層構成を有する積層体(P−a1−s1)を得た。さらに、積層体(P−a1−s1)から延伸基材(S1)を剥離し、(偏光子片(P))/(粘着剤層)/(第一光学異方性層(a1))の層構成を有する積層体(P−a1)を得た。
【0399】
続いて、積層体(P−a1)の第一光学異方性層(a1)側の面と、サンプル片(s1−a2)の第二光学異方性層(a2)側の面とを、ラミネーターを用いて、互いの長辺同士、短辺同士が平行になるように貼り合わせた。貼り合わせは、粘着剤層(日東電工製「CS9621」)を介して行った。これにより、(偏光子片(P))/(粘着剤層)/(第一光学異方性層(a1))/(粘着剤層)/(第二光学異方性層(a2))/(延伸基材(S1))の層構成を有する積層体(P−a1−a2−S1)を得た。さらに積層体(P−a1−a2−S1)から延伸基材(S1)を剥離し、(偏光子片(P))/(粘着剤層)/(第一光学異方性層(a1))/(粘着剤層)/(第二光学異方性層(a2))の層構成を有する円偏光板(P−a1−a2)を得た。この円偏光板(P−a1−a2)における第一光学異方性層(a1)の遅相軸と第二光学異方性層(a2)の遅相軸とがなす角度は、60°であった。
こうして得られた円偏光板(P−a1−a2)について、上述した方法により、明度Lの計算、及び、反射輝度の評価を行った。
【0400】
[実施例V−2〜V−11、及び、比較例V−1〜V−2]
前記工程(V−1−1)において、塗工する液晶組成物(A)の厚みを変更して第一光学異方性層(a1)の乾燥厚みを調整することにより、波長590nmにおける第一光学異方性層(a1)の面内レターデーションRe(H590)の値を、表5に示すように変更した。
また、前記工程(V−1−2)において、塗工する液晶組成物(A)の厚みを変更して第二光学異方性層(a2)の乾燥厚みを調整することにより、波長590nmにおける第二光学異方性層(a2)の面内レターデーションRe(Q590)の値を、表5に示すように変更した。
以上の事項以外は、実施例V−1と同様にして、円偏光板(P−a1−a2)の製造及び評価を行った。
【0401】
ところで、実施例V−1〜V−11及び比較例V−1〜V−2の各光学異方性層は、いずれも同じ液晶組成物(A)から得られている。よって、実施例V−1〜V−11及び比較例V−1〜V−2の第一光学異方性層(a1)及び第二光学異方性層(a2)は、Re(H450)/Re(H550)及びRe(Q450)/Re(Q550)がいずれも0.80であり、また、Re(H650)/Re(H550)及びRe(Q650)/Re(Q550)がいずれも1.04であった。
【0402】
[実施例群VI:液晶組成物(B)を用いた、反射抑制効果に係る実験例]
[実施例VI−1]
(VI−1−1.第一光学異方性層を含む複層フィルムの製造)
第一光学異方性層(b1)の乾燥厚みを3.54μmに変更することにより、第一光学異方性層(b1)のRe(H590)を254nmに変更した。以上の事項以外は、実施例II−1の工程(II−1−1)と同様にして、(延伸基材(S1))/(第一光学異方性層(b1))の層構成を有する複層フィルム(S1−b1)を製造した。
【0403】
(VI−1−2.第二光学異方性層を含む複層フィルムの製造)
第二光学異方性層(b2)の乾燥厚みを1.78μmに変更することにより、第二光学異方性層(b2)のRe(Q590)を127nmに変更した。以上の事項以外は、実施例II−1の工程(II−1−2)と同様にして、(延伸基材(S1))/(第二光学異方性層(b2))の層構成を有する複層フィルム(S1−b2)を製造した。
【0404】
(VI−1−3.光学異方性積層体の製造)
複層フィルム(S1−a1)の代わりに、(延伸基材(S1))/(第一光学異方性層(b1))の層構成を有する前記複層フィルム(S1−b1)を用いた。
また、複層フィルム(S1−a2)の代わりに、(延伸基材(S1))/(第二光学異方性層(b2))の層構成を有する前記複層フィルム(S1−b2)を用いた。
以上の事項以外は、実施例V−1の工程(V−1−3)と同様にして、(偏光子片(P))/(粘着剤層)/(第一光学異方性層(b1))/(粘着剤層)/(第二光学異方性層(b2))の層構成を有する円偏光板(P−b1−b2)を得た。
こうして得られた円偏光板(P−b1−b2)について、上述した方法により、明度Lの計算、及び、反射輝度の評価を行った。
【0405】
[実施例VI−2〜VI−14、及び、比較例VI−1〜VI−2]
前記工程(VI−1−1)において、塗工する液晶組成物(B)の厚みを変更して第一光学異方性層(b1)の乾燥厚みを調整することにより、波長590nmにおける第一光学異方性層(b1)の面内レターデーションRe(H590)の値を、表6に示すように変更した。
また、前記工程(VI−1−2)において、塗工する液晶組成物(B)の厚みを変更して第二光学異方性層(b2)の乾燥厚みを調整することにより、波長590nmにおける第二光学異方性層(b2)の面内レターデーションRe(Q590)の値を、表6に示すように変更した。
以上の事項以外は、実施例VI−1と同様にして、円偏光板(P−b1−b2)の製造及び評価を行った。
【0406】
ところで、実施例VI−1〜VI−14及び比較例VI−1〜VI−2の各光学異方性層は、いずれも同じ液晶組成物(B)から得られている。よって、実施例VI−1〜VI−14及び比較例VI−1〜VI−2の第一光学異方性層(b1)及び第二光学異方性層(b2)は、Re(H450)/Re(H550)及びRe(Q450)/Re(Q550)がいずれも0.89であり、また、Re(H650)/Re(H550)及びRe(Q650)/Re(Q550)がいずれも1.03であった。
【0407】
[実施例群VII:液晶組成物(C)を用いた、反射抑制効果に係る実験例]
[実施例VII−1]
(VII−1−1.第一光学異方性層を含む複層フィルムの製造)
第一光学異方性層(c1)の乾燥厚みを3.17μmに変更することにより、第一光学異方性層(c1)のRe(H590)を243nmに変更した。以上の事項以外は、実施例III−1の工程(III−1−1)と同様にして、(延伸基材(S1))/(第一光学異方性層(c1))の層構成を有する複層フィルム(S1−c1)を製造した。
【0408】
(VII−1−2.第二光学異方性層を含む複層フィルムの製造)
第二光学異方性層(c2)の乾燥厚みを1.58μmに変更することにより、第二光学異方性層(c2)のRe(Q590)を122nmに変更した。以上の事項以外は、実施例III−1の工程(III−1−2)と同様にして、(延伸基材(S1))/(第二光学異方性層(c2))の層構成を有する複層フィルム(S1−c2)を製造した。
【0409】
(VII−1−3.光学異方性積層体の製造)
複層フィルム(S1−a1)の代わりに、(延伸基材(S1))/(第一光学異方性層(c1))の層構成を有する前記複層フィルム(S1−c1)を用いた。
また、複層フィルム(S1−a2)の代わりに、(延伸基材(S1))/(第二光学異方性層(c2))の層構成を有する前記複層フィルム(S1−c2)を用いた。
以上の事項以外は、実施例V−1の工程(V−1−3)と同様にして、(偏光子片(P))/(粘着剤層)/(第一光学異方性層(c1))/(粘着剤層)/(第二光学異方性層(c2))の層構成を有する円偏光板(P−c1−c2)を得た。
こうして得られた円偏光板(P−c1−c2)について、上述した方法により、明度Lの計算、及び、反射輝度の評価を行った。
【0410】
[実施例VII−2〜VII−9、及び、比較例VII−1〜VII−6]
前記工程(VII−1−1)において、塗工する液晶組成物(C)の厚みを変更して第一光学異方性層(c1)の乾燥厚みを調整することにより、波長590nmにおける第一光学異方性層(c1)の面内レターデーションRe(H590)の値を、表7に示すように変更した。
また、前記工程(VII−1−2)において、塗工する液晶組成物(C)の厚みを変更して第二光学異方性層(c2)の乾燥厚みを調整することにより、波長590nmにおける第二光学異方性層(c2)の面内レターデーションRe(Q590)の値を、表7に示すように変更した。
以上の事項以外は、実施例VII−1と同様にして、円偏光板(P−c1−c2)の製造及び評価を行った。
【0411】
ところで、実施例VII−1〜VII−9及び比較例VII−1〜VII−6の各光学異方性層は、いずれも同じ液晶組成物(C)から得られている。よって、実施例VII−1〜VII−9及び比較例VII−1〜VII−6の第一光学異方性層(c1)及び第二光学異方性層(c2)は、Re(H450)/Re(H550)及びRe(Q450)/Re(Q550)がいずれも0.93であり、また、Re(H650)/Re(H550)及びRe(Q650)/Re(Q550)がいずれも1.01であった。
【0412】
[実験例群VIII:延伸フィルムを用いた、反射抑制効果に係る実験例]
[比較例VIII−1〜VIII−11]
(VIII−1.第一光学異方性層の製造)
表8に示す面内レターデーションRe(H590)を有する延伸フィルムが得られるように、キャスティングドラムによる樹脂の引取速度を調整して、延伸フィルムの厚みを変更した。以上の事項以外は、比較例IV−1〜IV−11の工程(IV−1)と同様にして、第一光学異方性層としての延伸フィルムを得た。
得られた第一光学異方性層は、いずれの比較例でも、Re(H450)/Re(H550)=1.01、Re(H650)/Re(H550)=0.99であった。
【0413】
(VIII−2.第二光学異方性層の製造)
表8に示す面内レターデーションRe(Q590)を有する延伸フィルムが得られるように、キャスティングドラムによる樹脂の引取速度を調整して、延伸フィルムの厚みを変更した。以上の事項以外は、比較例IV−1〜IV−11の工程(IV−2)と同様にして、第二光学異方性層としての延伸フィルムを得た。
得られた第二光学異方性層は、いずれの比較例でも、Re(Q450)/Re(Q550)=1.01、Re(Q650)/Re(Q550)=0.99であった。
【0414】
(VIII−3.光学異方性積層体の製造)
偏光フィルム(サンリッツ社製「HLC2−5618S」)と、前記の第一光学異方性層としての延伸フィルムと、第二光学異方性層としての延伸フィルムとを、この順で、粘着剤層(日東電工製「CS9621」)を介して貼り合わせて、円偏光板を得た。この際、偏光フィルムの偏光吸収軸に対して第一光学異方性層の遅相軸及び第二光学異方性層の遅相軸がなす角度は、それぞれ、15°及び75°にした。
こうして得られた円偏光板について、上述した方法により、明度Lの計算、及び、反射輝度の評価を行った。
【0415】
[結果]
前記の反射抑制効果に係る実験例としての、実施例V−1〜I−11及び比較例V−1〜I−2(表5);実施例VI−1〜VI−14及び比較例VI−1〜VI−2(表6);実施例VII−1〜VII−9及び比較例VII−1〜VII−6(表7);並びに、比較例VIII−1〜VIII−11(表8)の結果を、下記の表5〜8に示す。下記の表において、略称の意味は、以下のとおりである。
θ1:第一光学異方性層の遅相軸が、円偏光板の偏光子片の偏光吸収軸に対してなす角度。
θ2:第二光学異方性層の遅相軸が、円偏光板の偏光子片の偏光吸収軸に対してなす角度。
:明度。
(A):液晶組成物(A)。
(B):液晶組成物(B)。
(C):液晶組成物(C)。
COP:脂環式構造含有重合体。
【0416】
【表5】
【0417】
【表6】
【0418】
【表7】
【0419】
【表8】
【0420】
表5〜表8に示される結果から分かるように、本発明の光学異方性積層体は、その第一光学異方性層及び第二光学異方性層が、所定の要件を満たす面内レターデーションを有している場合には、直線偏光子と組み合わせて円偏光板と用いることができる。そして、その円偏光板は、画像表示装置の正面方向において、外光の反射を特に効果的に抑制できる反射抑制フィルムとして用いることが可能である。
【符号の説明】
【0421】
100 光学異方性積層体
110 第一光学異方性層
120 第二光学異方性層
200 光学異方性積層体
210 透明導電層
300 円偏光板
310 直線偏光子
400 有機EL表示装置
410 有機EL素子
500 有機EL表示装置
510 λ/4波長板
600 液晶表示装置
610 光源
620 光源側直線偏光子
630 液晶セル
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8