特許第6927215号(P6927215)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6927215酸性成分除去剤、その製造方法および酸性成分除去方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6927215
(24)【登録日】2021年8月10日
(45)【発行日】2021年8月25日
(54)【発明の名称】酸性成分除去剤、その製造方法および酸性成分除去方法
(51)【国際特許分類】
   B01J 20/10 20060101AFI20210812BHJP
   B01J 20/28 20060101ALI20210812BHJP
   B01J 20/30 20060101ALI20210812BHJP
   B01D 53/50 20060101ALI20210812BHJP
   B01D 53/56 20060101ALI20210812BHJP
   B01D 53/68 20060101ALI20210812BHJP
   B01D 53/83 20060101ALI20210812BHJP
【FI】
   B01J20/10 CZAB
   B01J20/28 Z
   B01J20/30
   B01D53/50 100
   B01D53/56
   B01D53/68 100
   B01D53/68 200
   B01D53/83
【請求項の数】14
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2018-527583(P2018-527583)
(86)(22)【出願日】2017年7月7日
(86)【国際出願番号】JP2017025005
(87)【国際公開番号】WO2018012434
(87)【国際公開日】20180118
【審査請求日】2020年2月6日
(31)【優先権主張番号】特願2016-137445(P2016-137445)
(32)【優先日】2016年7月12日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000000044
【氏名又は名称】AGC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001634
【氏名又は名称】特許業務法人 志賀国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】桜井 茂
(72)【発明者】
【氏名】片山 肇
【審査官】 高橋 成典
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2012/036012(WO,A1)
【文献】 特開2006−239689(JP,A)
【文献】 特開2005−288437(JP,A)
【文献】 特開2009−018262(JP,A)
【文献】 特開2008−142694(JP,A)
【文献】 特開2008−068251(JP,A)
【文献】 特開2000−218128(JP,A)
【文献】 特開2005−028294(JP,A)
【文献】 特開平5−58622(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 20/20 − 20/28
20/30 − 20/34
B01D 53/14 − 53/18
53/34 − 53/73
53/74 − 53/85
53/92
53/96
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭酸水素ナトリウム、および表面処理が施されていない膠質炭酸カルシウムのみからなる平均粒径が3〜20μmの酸性成分除去剤であって、
前記表面処理は樹脂酸または脂肪酸を付着させる表面処理であり、
前記膠質炭酸カルシウムは、1次粒子の平均粒径が50nm以下であり、酸性成分除去剤における含有割合が2.5〜3質量%であることを特徴とする酸性成分除去剤。
【請求項2】
炭酸水素ナトリウム、および表面処理が施された膠質炭酸カルシウムのみからなる平均粒径が3〜20μmの酸性成分除去剤であって、
前記表面処理は樹脂酸または脂肪酸を付着させる表面処理であり、
前記膠質炭酸カルシウムは、1次粒子の平均粒径が50nm以下であり、酸性成分除去剤における含有割合が0.3〜0.8質量%であることを特徴とする酸性成分除去剤。
【請求項3】
前記膠質炭酸カルシウムの2次粒子の平均粒径が1〜10μmであり、かつ前記炭酸水素ナトリウムの平均粒径よりも小さい、請求項1または2に記載の酸性成分除去剤。
【請求項4】
前記膠質炭酸カルシウムのBET比表面積が30m/g以上である、請求項1〜のいずれか一項に記載の酸性成分除去剤。
【請求項5】
前記酸性成分除去剤の破断応力が、350mN以下である、請求項1〜のいずれか一項に記載の酸性成分除去剤。
【請求項6】
請求項1〜のいずれか一項に記載の酸性成分除去剤の製造方法であって、炭酸水素ナトリウム、および膠質炭酸カルシウムを混合したのち粉砕手段により粉砕するか、または粉砕手段により混合しながら粉砕する酸性成分除去剤の製造方法。
【請求項7】
炭酸水素ナトリウム、および膠質炭酸カルシウムを前記粉砕手段により粉砕したのち、粉砕して得られた粉砕物を分級手段により分級する請求項に記載の製造方法。
【請求項8】
前記分級手段により分級された粒径が50μmを超える粒子を前記粉砕手段に戻す請求項に記載の製造方法。
【請求項9】
前記粉砕手段が衝撃式粉砕機またはジェットミルである請求項6〜8のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項10】
請求項1〜のいずれか一項に記載の酸性成分除去剤を、貯留設備に一旦貯留したのちに酸性成分を含む気体中に供給する、気体中の酸性成分除去方法。
【請求項11】
請求項1〜のいずれか一項に記載の酸性成分除去剤を、貯留設備から排出させて気体流を用いて搬送し、酸性成分を含む気体中に供給する請求項10に記載の酸性成分除去方法。
【請求項12】
請求項1〜5のいずれか一項に記載の酸性成分除去剤を、貯留設備から排出させて気体流を用いて搬送し、酸性成分を含む気体中に供給し、バグフィルターで前記酸性成分除去剤と前記酸性成分との反応制生成物および未反応の前記酸性成分除去剤を濾過する酸性成分除去方法であって、
前記バグフィルターの濾布が、表面にラミネート処理を施したガラス繊維二重織濾布またはPTFE不織布濾布である請求項10または11に記載の酸性成分除去方法。
【請求項13】
酸性成分除去剤を、貯留設備から排出させて気体流を用いて搬送し、酸性成分を含む気体中に供給し、バグフィルターで前記酸性成分除去剤と前記酸性成分との反応制生成物および未反応の前記酸性成分除去剤を濾過する酸性成分除去方法であって、
前記バグフィルターの濾布が、表面にラミネート処理を施したガラス繊維二重織濾布またはPTFE不織布濾布であり、
前記酸性成分除去剤は、炭酸水素ナトリウム、および表面処理が施されていない膠質炭酸カルシウムのみからなる平均粒径が3〜20μmの酸性成分除去剤であって、
前記表面処理は樹脂酸または脂肪酸を付着させる表面処理であり、
前記膠質炭酸カルシウムは、1次粒子の平均粒径が50nm以下であり、酸性成分除去剤における含有割合が2.5〜3質量%である酸性成分除去方法。
【請求項14】
酸性成分除去剤を、貯留設備から排出させて気体流を用いて搬送し、酸性成分を含む気体中に供給し、バグフィルターで前記酸性成分除去剤と前記酸性成分との反応制生成物および未反応の前記酸性成分除去剤を濾過する酸性成分除去方法であって、
前記バグフィルターの濾布が、表面にラミネート処理を施したガラス繊維二重織濾布またはPTFE不織布濾布であり、
前記酸性成分除去剤は、炭酸水素ナトリウム、および表面処理が施された膠質炭酸カルシウムのみからなる平均粒径が3〜20μmの酸性成分除去剤であって、
前記表面処理は樹脂酸または脂肪酸を付着させる表面処理であり、
前記膠質炭酸カルシウムは、1次粒子の平均粒径が50nm以下であり、酸性成分除去剤における含有割合が0.3〜0.8質量%である酸性成分除去方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、気体中の酸性成分を除去する酸性成分除去剤、その製造方法および該酸性成分除去剤を用いた気体中の酸性成分除去方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般廃棄物、産業廃棄物などの焼却処理に伴って発生する排ガス中には、塩化水素、硫黄酸化物等の酸性成分が含まれている。排ガス中の酸性成分を除去する装置としては、酸性成分除去剤を用いた除去装置が知られている。
【0003】
図1は、排ガス中の酸性成分の除去装置の一例の模式図である。図1に示す除去装置は、粉体状の酸性成分除去剤Mを貯留するサイロ1と、酸性成分を含んだ排ガスが流通する排ガス流路(煙道)2と、酸性成分除去剤をサイロ1から排ガス中に供給する供給管3と、排ガス流路2の下流側に配置されたバグフィルター4とから概略構成される。
【0004】
サイロ1の排出部1aには、ロータリーバルブ、テーブルフィーダー等の粉体定量供給装置5が備えられている。粉体定量供給装置5を作動させることによって、酸性成分除去剤Mを供給管3の開口部3aに落下させる。
排ガス流路2の上流側には、一般廃棄物、産業廃棄物等の焼却炉(図示略)等が設置されている。排出ガス流路2には、焼却炉等からの塩化水素、窒素酸化物、硫黄酸化物等の酸性成分を含んだ排ガスが流通している。
供給管3は、上流側から流通させた空気流によって、開口部3aから供給された酸性成分除去剤Mを下流側に送出するものである。供給管3の下流側末端は、排ガス流路2内に配置されている。供給管3の下流側末端には、酸性成分除去剤Mを排ガス中に噴出させる噴出器3bが取り付けられている。
【0005】
バグフィルター4は、ハウジング41と、ハウジング41の下部41aに設けられた排ガス用の導入口42と、ハウジング41の中央部41bに配置された複数の筒状の濾布43と、ハウジング41の上部41cに設けられた排気口44と、から概略構成される。濾布43は下端が閉じられて内部が中空部43aとされている。
ハウジング41の上部41cと中央部41bとが仕切り板45によって仕切られており、ハウジング41の中央部41bから上部41cに排ガスが移動する際に排ガスが濾布43を必ず通過するように構成されている。
仕切り板45には貫通部45aが設けられ、この貫通部45aには濾布の中空部43aとハウジング41の上部41cとを連通させる連通管46が取り付けられている。
【0006】
次に、排ガス中の酸性成分の除去装置の動作について説明する。
粉体定量供給装置5を作動させて、サイロ1中の酸性成分除去剤Mを供給管3に供給する。供給管3に供給された酸性成分除去剤Mは、気体流を用いて搬送されて下流末端に送られ、噴出器3bから排ガス流路2の排ガス中に噴出される。
噴出された酸性成分除去剤Mは、一部が排ガス中の酸性成分と反応して反応生成物となる。そして、反応生成物と未反応の酸性成分除去剤Mとが、排ガスとともにバグフィルター4に送られる。
バグフィルター4においては、反応生成物と未反応の酸性成分除去剤Mとが濾布43の表面に堆積して濾過層を形成し、該濾過層によって排ガス中の酸性成分がさらに除去される。酸性成分が除去された排ガスは、濾布43を通過し、連通管46を介して排出口44から排出される。
【0007】
排ガス中の酸性成分の除去装置において用いられる酸性成分除去剤としては、従前は消石灰(水酸化カルシウム)が用いられてきたが、近年は例えば、炭酸水素ナトリウムを主成分とし、平均粒径が50μmよりも小さく、好ましくは10〜30μmの酸性成分除去剤が提案されている。(特許文献1)
【0008】
排ガス中の酸性成分を効率よく除去するためには、酸性成分除去剤の平均粒径をできるだけ小さくする必要がある。しかし、平均粒径が30μm以下の酸性成分除去剤は、流動性が悪かったり、粒子同士の付着性が大きくなって固結しやすくなったりするため、安定した取り扱いに困難を伴うおそれがあり、その結果、酸性成分の除去効率が悪化するおそれがある。
【0009】
すなわち、酸性成分除去剤の流動性が悪化するとともに粒子同士の付着性が大きくなると、酸性成分除去剤自体が凝集しやすくなり、例えば図2に示すように、サイロ1中においてラットホール現象が発生したり、図3に示すように、サイロ1中においてブリッジ現象が発生したりする。その結果、酸性成分除去剤の供給が滞り、除去装置における酸性成分の除去効率が大幅に低下するおそれがある。
【0010】
流動性が改善された酸性成分除去剤としては炭酸水素ナトリウムに固結防止剤としてヒュームドシリカを添加した酸性成分除去剤(特許文献2)が提案されている。
しかし、酸性成分除去剤の流動性が極端に向上すると、バグフィルターの濾布を構成する繊維の隙間に酸性成分除去剤の粒子が侵入しやすくなる。このため、濾布における圧力損失が上昇して排ガスの流通量が大幅に低下する、酸性成分除去剤の粒子が濾布を通過し排ガス中に漏れ出す、濾布の表面に堆積した濾過層が過度に剥がれ落ちる、といった問題が発生するおそれがある。また、濾布の圧力損失を復旧させるため、圧縮空気を排ガスの流れの逆方向から流して、濾布の表面および濾布の繊維の隙間の酸性成分除去剤の粒子の払い落し(逆洗)を実施しても、復旧しにくくなる恐れもある。
【0011】
上記問題のいずれも、除去装置における酸性成分の除去効率の低下につながるおそれがある。
そこで、バグフィルターの濾布における圧力損失の上昇、濾布からの酸性成分除去剤の漏れ、および濾布の表面に堆積した濾過層の脱落を抑制する酸性成分除去剤として、炭酸水素ナトリウムと、疎水性ヒュームドシリカと、膠質炭酸カルシウムとを混合し、粉砕する、またはこれらを粉砕と同時に混合する酸性成分除去剤の製造方法であって、前記膠質炭酸カルシウムの1次粒子の平均粒径が、50nm以下であり、前記疎水性ヒュームドシリカの含有割合が、酸性成分除去剤中、0.2〜0.5質量%であり、前記膠質炭酸カルシウムの含有割合が、酸性成分除去剤中、1.5〜2.5質量%であり、酸性成分除去剤の平均粒子径が3〜20μmである酸性成分除去剤の製造方法が提案されている(特許文献3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】日本国特表平9−507654号公報
【特許文献2】日本国特開2000−218128号公報
【特許文献3】国際公開第2012/036012号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
特許文献2の疎水性ヒュームドシリカと膠質炭酸カルシウムの組み合わせを採用した酸性成分除去剤においては、酸性成分除去剤を一旦貯留させるサイロから排ガスへの供給不安定さや、濾過層の脱落抑制において一定の改善がみられた。しかしながら、濾布の種類によっては、濾布を構成する繊維の隙間に酸性成分除去剤の粒子が侵入するなどして、濾布による圧力損失が上昇することが明らかとなり、改善が求められている。
【0014】
本発明は、バグフィルターで使用される広範な種類の濾布における圧力損失の上昇を抑制し、長期間運転することが可能な酸性成分除去剤、該酸性成分除去剤の製造方法、および該酸性成分除去剤を用いた気体中の酸性成分除去方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明は、以下に記載される態様を包含する。
[1]炭酸水素ナトリウム、膠質炭酸カルシウム、および任意に疎水性ヒュームドシリカを含有する平均粒径が3〜20μmの酸性成分除去剤であって、前記膠質炭酸カルシウムは、1次粒子の平均粒径が50nm以下であり、酸性成分除去剤における含有割合が0.05〜5質量%であり、かつ、前記疎水性ヒュームドシリカは、酸性成分除去剤における含有割合が0.2質量%未満であることを特徴とする酸性成分除去剤。
[2]前記膠質炭酸カルシウムは、表面処理が施されていないものであり、酸性成分除去剤における含有割合が0.5〜5質量%である前記[1]の酸性成分除去剤。
[3]前記膠質炭酸カルシウムは、表面処理が施されたものであり、酸性成分除去剤における含有割合が0.05〜2質量%である前記[1]の酸性成分除去剤。
[4]前記疎水性ヒュームドシリカの炭素含有率が0.8〜5質量%である前記[1]〜[3]のいずれか一項に記載の酸性成分除去剤。
[5]前記疎水性ヒュームドシリカは、酸性成分除去剤における含有割合が0.01質量%未満である[1]〜[4]のいずれかの酸性成分除去剤。
[6]前記膠質炭酸カルシウムの2次粒子の平均粒径が1〜10μmであり、前記炭酸水素ナトリウムの平均粒径よりも小さい、前記[1]〜[5]のいずれかの酸性成分除去剤。
[7]前記膠質炭酸カルシウムのBET比表面積が30m/g以上である前記[1]〜[6]のいずれかの酸性成分除去剤。
[8]前記酸性成分の破断応力が、350mN以下である前記[1]〜[7]のいずれか一項に記載の酸性成分除去剤。
[9]前記[1]〜[8]のいずれかの酸性成分除去剤の製造方法であって、炭酸水素ナトリウム、膠質炭酸カルシウム、および任意に疎水性ヒュームドシリカを混合したのち粉砕手段により粉砕する、または粉砕手段により混合しながら粉砕する酸性成分除去剤の製造方法。
[10]炭酸水素ナトリウム、膠質炭酸カルシウム、および任意に疎水性ヒュームドシリカを前記粉砕手段により粉砕したのち、粉砕して得られた粉砕物を分級手段により分級する前記[9]の製造方法。
[11]前記分級手段により分級された粒径が50μmを超える粒子を前記粉砕手段に戻す前記[10]の製造方法。
[12]前記粉砕手段が衝撃式粉砕機またはジェットミルである前記[9]〜[11]のいずれかの製造方法。
[13]前記[1]〜[8]のいずれかの酸性成分除去剤を、貯留設備に一旦貯留したのちに酸性成分を含む気体中に供給する、気体中の酸性成分除去方法。
[14]前記[1]〜[8]のいずれかの酸性成分除去剤を、貯留設備から排出させて気体流を用いて搬送し、酸性成分を含む気体中に供給する前記[13]の酸性成分除去方法。
【発明の効果】
【0016】
本発明の酸性成分除去剤、本発明の製造方法で得られた酸性成分除去剤および該酸性成分除去剤を用いた気体中の酸性成分除去方法によれば、バグフィルターに使用される広範な種類の濾布において、バグフィルターの入り口と出口との排ガスの圧力差の上昇を抑制し、長期間運転することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】酸性成分除去剤を使用した排ガス中の酸性成分を除去する除去装置の一例の模式図である。
図2図1の除去装置のサイロにおけるラットホール現象を説明する模式図である。
図3図1の除去装置のサイロにおけるブリッジ現象を説明する模式図である。
図4図1の除去装置のサイロにおけるホッパー傾斜角を説明する模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本明細書における用語の意味は以下の通りである。
「差圧」とは、バグフィルターの入り口と出口との排ガスの圧力差を意味する。
「残留圧損」とは、酸性成分の除去装置や集塵性能試験装置などの装置を一定期間運転した後の圧力損失を意味する。
「逆洗」とは、排ガス処理を行って、圧力損失が高くなった濾布の状態を復旧させるため、排ガスの流れの逆方向から圧縮空気を逆に流して濾布の表面および濾布の繊維の隙間の酸性成分除去剤の粒子を払い落す操作を意味する。
「平均粒径」は、平均粒子径と同じ意味である。
「〜」を用いて表される数値範囲は、「〜」の前後に記載される数値を下限値および上限値として含む範囲を意味する。
【0019】
<酸性成分除去剤>
本発明の酸性成分除去剤は、炭酸水素ナトリウム、膠質炭酸カルシウム、および任意に疎水性ヒュームドシリカを含有する平均粒径が3〜20μmの酸性成分除去剤であって、前記膠質炭酸カルシウムは、1次粒子の平均粒径が50nm以下であり、酸性成分除去剤中の含有割合が0.05〜5質量%であり、かつ前記疎水性ヒュームドシリカは、酸性成分除去剤中の含有割合が0.2質量%未満である。
なお、酸性成分除去剤の平均粒径は、レーザー回折散乱式粒度分布測定装置(例えば、日機装社製、マイクロトラックFRA9220)を用いて測定した体積基準における平均粒径(MV)である。
【0020】
(炭酸水素ナトリウム)
本発明の酸性成分除去剤に用いられる炭酸水素ナトリウムは、炭酸水素ナトリウム粒子の平均粒径の大きさに制限なく用いることができる。炭酸水素ナトリウム粒子の平均粒径とは、1次粒子と2次粒子を合わせたもの全体の平均粒径である。炭酸水素ナトリウム粒子の平均粒径は50μm以上であることが好ましく、90〜300μmであることが好ましい。
【0021】
炭酸水素ナトリウムは工業的には、通常は晶析法で製造される。平均粒径が50μm以上であると、晶析法により工業的に効率よく得ることができ、酸性成分除去剤としたときに、サイロ内での流動性が良好となり、取り扱いやすい。また、平均粒径が300μm以下であると、粉砕に大きなエネルギーを必要としない。
なお、炭酸水素ナトリウム粒子の平均粒径は、標準篩を用いた音波振動式ふるい分け測定器(例えば、セイシン企業社製、自動乾式ふるい分け測定器ロボットシフターRPS−105)によって測定された累積質量の50質量%における粒径(メジアン径、D50)である。
【0022】
(膠質炭酸カルシウム)
本発明の酸性成分除去剤に含まれる膠質炭酸カルシウムとは、反応晶析法などにより化学的に製造されるものであり、所謂コロイダル炭酸カルシウムまたはコロイド炭酸カルシウムと呼ばれる沈降炭酸カルシウム(合成炭酸カルシウム)が好ましい。本明細書において、膠質炭酸カルシウムとは、表面処理を目的とした成分を添加せずに製造されたものと、表面処理を目的とした成分を添加し、表面処理を施したものとを合わせた総称として用いる。
【0023】
本発明の酸性成分除去剤に含まれる膠質炭酸カルシウムの1次粒子の平均粒径は50nm以下である。該平均粒径が上記範囲内であると、工業的に安定してかつ安価に製造することができ、取り扱い易い粉体が得られる。反応晶析法で製造された膠質炭酸カルシウムの1次粒子の平均粒径は比較的小さい。本発明の酸性成分除去剤に含まれる膠質炭酸カルシウムは、粉砕された炭酸水素ナトリウムと混合される際に、該炭酸水素ナトリウム粒子の表面に付着することにより炭酸水素ナトリウム粒子同士の付着性を下げる観点から、平均粒径の小さいものが好ましく、1〜50nmが好ましく、10〜50nmがより好ましく、10〜30nmがさらに好ましい。
なお、膠質炭酸カルシウムの1次粒子の平均粒径は、走査型電子顕微鏡(SEM)によって測定したものであり、具体的には、100個の1次粒子について各粒子のSEM画像からその粒径を計測し、計測値を算術平均したものである。
【0024】
本発明における膠質炭酸カルシウムの2次粒子の平均粒径とは、1次粒子間に働くファンデルワールス力による凝集粒子の粒径である。炭酸水素ナトリウム粒子の表面に付着しやすくなるように、膠質炭酸カルシウムの2次粒子の平均粒径は、炭酸水素ナトリウムの平均粒径よりも小さいことが好ましい。膠質炭酸カルシウムの2次粒子の平均粒径は1〜10μmが好ましい。膠質炭酸カルシウムの2次粒子の平均粒径が1μm以上であると凝集性が高くなりすぎず、粒子同士が付着しにくいため、酸性成分除去剤としたときにサイロから安定して排出されやすい。10μm以下であると粉砕操作の際均一に分散されやすい。凝集性の観点から、1〜5μmがより好ましい。
膠質炭酸カルシウムの2次粒子の平均粒径は、レーザー回折散乱方式の測定装置によって測定した体積基準における平均粒径(MV)である。
【0025】
窒素吸着法での測定による膠質炭酸カルシウムのBET比表面積は、取り扱い易い粉体が得られることから、30m/g以上が好ましく、40m/g以上がより好ましい。膠質炭酸カルシウムは、粒子の表面に表面処理が施されていない膠質炭酸カルシウムであっても、粒子の表面に表面処理が施された膠質炭酸カルシウム(以下、表面処理膠質炭酸カルシウムという。)であってもよい。
表面処理膠質炭酸カルシウムは、粒子の凝集が抑制され、均一に分散しやすい。表面処理膠質炭酸カルシウムは、膠質炭酸カルシウム粒子の表面に、ロジン酸、リグニン酸等の樹脂酸や脂肪酸を付着させる表面処理が施されたものであることが好ましい。
表面処理膠質炭酸カルシウムの1次粒子及び2次粒子の平均粒径並びに窒素吸着法での測定によるBET比表面積は、前述の膠質炭酸カルシウムと同様であり、好ましい態様も同様である。
表面処理膠質炭酸カルシウムとしては、市販のものを適宜用いることができる。例えば、NCCシリーズ(日東粉化工業社製品名)、白石工業社製白艶華シリーズ、Calmos、Vigotシリーズ(白石カルシウム社製品名)が挙げられる。
表面処理が施されていない膠質炭酸カルシウムとしては、市販のものを適宜用いることができる。例えば、ネオライトVT(竹原化学工業社製品名)、カルライトKT(白石工業社製品名)が挙げられる。
【0026】
膠質炭酸カルシウムの酸性成分除去剤における含有割合は、0.05〜5質量%である。0.05質量%以下であると、サイロからの排出性が安定しにくく、5質量%以上であれば、濾布目詰まり等の問題が起こりやすい。
膠質炭酸カルシウムが、表面処理が施されていないものである場合、該膠質炭酸カルシウムの酸性成分除去剤における含有割合は、0.5〜5質量%が好ましい。0.5質量%以上であれば、サイロからの排出性が充分に向上しやすく、5質量%以下であれば、濾布目詰まり等の問題が起こりにくい。該含有割合は1〜4質量%がより好ましく、2〜3質量%がさらに好ましい。
【0027】
膠質炭酸カルシウムが、表面処理が施されたものである場合、表面処理膠質炭酸カルシウムの含有割合は、酸性成分除去剤中、0.05〜2質量%が好ましい。該含有割合が0.05質量%以上であれば、サイロから安定して排出されやすく、2質量%以下であると、酸性成分除去剤が濾布から脱落しにくくなり、濾布上に濾過層を十分に形成しやすい。該含有割合が0.1〜1.5質量%がより好ましく、0.1〜1.2質量%がさらに好ましく、0.2〜1.0質量%が特に好ましい。
【0028】
(疎水性ヒュームドシリカ)
本発明の酸性成分除去剤に含まれる疎水性ヒュームドシリカの含有割合は、酸性成分除去剤100質量%対して、0.2質量%未満である。疎水性ヒュームドシリカとは、ヒュームドシリカの表面が疎水化処理を施されたものをいい、表面が疎水化処理を施されていない、通常のヒュームドシリカと区別される。
ヒュームドシリカとしては、合成非晶質シリカのうち、特に乾式法により製造されるものが好ましい。具体的には燃焼法、自己燃焼法、または加熱法により製造されるものが挙げられる。
【0029】
疎水化処理としては、ジメチルジクロロシラン、ヘキサメチルジシラザン、オクチルシラン等によるシラン処理、ビニルトリメトキシシラン等によるシランカップリング剤処理、ジメチルポリシロキサン処理、メチルハイドロジェンポリシロキサン処理、脂肪酸処理等が挙げられる。
疎水性ヒュームドシリカの疎水化度とは、ヒュームドシリカの表面に付着しているジメチルシラン等の疎水化処理剤の付着量の程度を示す指標であり、疎水性ヒュームドシリカの炭素含有率で表す。疎水性ヒュームドシリカの炭素含有率は、燃焼式の炭素量測定装置(SUMIGRAPH NC−80(住化分析センター社製)やEMIA−110(堀場製作所社製)など)によって測定される。
【0030】
疎水性ヒュームドシリカの炭素含有率は、0.8〜5質量%が好ましい。炭素含有率が0.8質量%以上であると、流動化の効果が充分に得られる。5質量%以下であると、疎水性ヒュームドシリカの凝集性が強くなりすぎないため分散しやすい。疎水性ヒュームドシリカは、市販のものを適宜用いることができる。
【0031】
酸性成分除去剤においては、疎水性ヒュームドシリカは、その多くが1次粒子の状態で炭酸水素ナトリウムの粒子の表面に均一に分散されていることが好ましい。その場合、疎水性ヒュームドシリカが2次粒子の状態で存在する場合に比べて、酸性成分除去剤の流動性を適度なものとしやすく、凝集による塊状化を抑制しやすい。そのため、疎水性ヒュームドシリカの1次粒子の平均粒径は、5〜50nmが好ましい。該平均粒径が5nm以上であると、凝集性が強くなりすぎず、酸性成分除去剤中に分散しやすい。疎水性ヒュームドシリカの1次粒子の平均粒径が50nm以下であると、所定の効果が得られやすい。流動性が良くなる観点から、5〜40nmがより好ましい。
なお、疎水性ヒュームドシリカの1次粒子とは、SEM観察像の目視観察により判断される構成粒子の最小単位をいう。疎水性ヒュームドシリカの1次粒子の平均粒径は、SEMによって測定したものであり、具体的には100個の1次粒子について、各粒子のSEM画像からその粒径を計測し、計測値を算術平均したものである。
【0032】
疎水性ヒュームドシリカの酸性成分除去剤における含有割合は0.2質量%未満である。該含有割合が0.2質量%未満であると、酸性成分除去剤中の粒子が過度にすべらず、濾布の目詰まりを起こしにくい。排ガス処理後に排出されるダストの量を減らすために、酸性条件下で溶解処理する場合がある。この際、疎水性ヒュームドシリカがゲル化し、処理しにくくなることを抑制する観点からは、疎水性ヒュームドシリカの含有量は少ないほど好ましい。該含有割合は0.16質量%未満が好ましく、0.1質量%未満がより好ましく、0.01質量%未満が特に好ましい。疎水性ヒュームドシリカは含有されなくてもよい。
【0033】
酸性成分除去剤における膠質炭酸カルシウムが、表面処理が施されていないものである場合は、粒子の流動性を調節する観点から、疎水性ヒュームドシリカを用いることが好ましい。膠質炭酸カルシウムが、表面処理が施されたものである場合は、粒子の流動性を調節する観点から、疎水性ヒュームドシリカの含有量は少ない方が好ましい。
【0034】
(疎水化処理されていないヒュームドシリカ)
本発明の酸性成分除去剤は、疎水化処理が施されていないヒュームドシリカを含んでもよい。疎水化処理が施されていないヒュームドシリカは、合成非晶質シリカのうち、特に乾式法により製造されるものが好ましい。乾式法としては、燃焼法、自己燃焼法、加熱法等が挙げられる。
【0035】
疎水化処理が施されていないヒュームドシリカの1次粒子の平均粒径は、5〜50nmが好ましい。該平均粒径が5nm以上であれば、凝集性が強くなりすぎず、酸性成分除去剤中に分散しやすい。該平均粒径が50nm以下であれば、所定の効果が得られやすい。流動性がより良くなる点から、5〜40nmがより好ましい。
疎水化処理が施されていないヒュームドシリカの1次粒子とは、SEM観察像の目視観察により判断される構成粒子の最小単位をいう。ヒュームドシリカの1次粒子の平均粒径は、SEMよって測定したものであり、具体的には100個の1次粒子について、各粒子のSEM画像からその粒径を計測し、計測値を算術平均したものである。
【0036】
酸性成分除去剤を所望の流動性として、取扱い易い粉体を得たい場合に、疎水性ヒュームドシリカと疎水化処理が施されていないヒュームドシリカを組み合わせて、物性を調整することができる。疎水化処理が施されていないヒュームドシリカは粒子同士の付着性を高める傾向がある。そのため、濾布における酸性成分除去剤による圧力損失を増大させにくい。また、酸性成分除去剤が濾布表面から脱落するのを抑制して、良好に保持しやすい。疎水性ヒュームドシリカは、酸性成分除去剤の流動性を向上させる傾向がある。そのため、サイロにおいてラットホールやブリッジを形成しにくくすることができ、サイロやフィーダーから排出しやすくすることができる。
【0037】
酸性成分除去剤における膠質炭酸カルシウムが、表面処理が施されていないものである場合は、粒子の流動性を向上させる観点から、疎水化処理が施されていないヒュームドシリカを含まないことが好ましい。酸性成分除去剤における膠質炭酸カルシウムが、表面処理が施されたものである場合は、粒子の流動性を調節する観点から、疎水化処理が施されていないヒュームドシリカを含んでもよい。
疎水化処理が施されていないヒュームドシリカを含む場合には、ヒュームドシリカの酸性成分除去剤における含有割合は、0.01〜5質量%が好ましく、粒子の流動性を調整する観点から0.05〜3質量%がより好ましい。
【0038】
(その他の成分)
本発明の酸性成分除去剤に含有してもよい成分としては、上記の他に、炭酸水素カリウム、消石灰、ゼオライト等の酸性成分除去成分、活性炭等の吸着剤、上記以外のシリカ系粉体、塩基性炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、珪藻土等の固結防止剤等が挙げられる。
酸性成分除去剤において、その他の成分を含有する場合を除き、残余は炭酸水素ナトリウムであることが好ましい。炭酸水素ナトリウム、膠質炭酸カルシウムおよび疎水性ヒュームドシリカの合計の含有割合は、酸性成分除去剤中、85質量%以上が好ましく、90質量%以上がより好ましく、95質量%以上がさらに好ましい。
【0039】
酸性成分除去剤の平均粒径は、3〜20μmである。該平均粒径が3μm以上であれば、充分な流動性が得られ、粒径が小さすぎて濾布を通過してしまう問題が起こりにくい。20μm以下であれば、排ガス中の酸性成分が効率よく除去されやすい。該平均粒径が3μmより小さいと、流動性が劣り、濾布を通過する問題がある。20μmより大きいと、排ガス中の酸性成分の除去効率が劣る。酸性成分が効率よく除去されやすくなるため、5〜10μmが好ましい。
【0040】
<酸性成分除去剤の製造方法>
本発明の酸性成分除去剤は、炭酸水素ナトリウム、膠質炭酸カルシウムおよび任意に疎水性ヒュームドシリカを混合したのち粉砕する方法、または粉砕と同時に混合する方法で製造することができる。粉砕を行なう時間の大部分においてこれらの粉体が共存していることが好ましいため、これらの粉体を混合してその混合物を粉砕機に供給するか、またはこれらの粉体をほぼ同時に粉砕機に供給して粉砕することが好ましい。
【0041】
炭酸水素ナトリウムは、粒径が小さいと粒子同士の付着力が大きくなり、塊を形成しやすい。また、粉体の流動性が悪くなり取り扱いにくくなる。そのため、炭酸水素ナトリウムを単独で粉砕した後に、膠質炭酸カルシウムおよび任意成分である疎水性ヒュームドシリカを混合させると、均一に混合しにくい場合がある。上記の製造方法によれば、膠質炭酸カルシウムおよび任意成分である疎水性ヒュームドシリカを炭酸水素ナトリウムの表面に均一にまぶすことができる。
【0042】
得られた酸性成分除去剤は、粉砕された炭酸水素ナトリウムの粒子表面に、膠質炭酸カルシウムおよび任意成分である疎水性ヒュームドシリカの微粒子が付着した構造を有する粒子からなるのが好ましい。製造工程において、炭酸水素ナトリウム、膠質炭酸カルシウムおよび任意成分である疎水性ヒュームドシリカの1次粒子や2次粒子への粉砕、並びに、粉砕された炭酸水素ナトリウム粒子の表面への膠質炭酸カルシウムおよび任意成分である疎水性ヒュームドシリカの1次粒子や2次粒子の付着が生じることにより、酸性成分除去剤の粒子が生成する。本発明における酸性成分除去剤はこのような粒子の集合物からなるのが好ましい。
【0043】
本発明の酸性成分除去剤は、炭酸水素ナトリウム、膠質炭酸カルシウムおよび任意に疎水性ヒュームドシリカを粉砕手段により粉砕したのち、粉砕により得られた粉砕物を分級手段により分級してもよい。前記分級手段により分級された粒径が50μmを超える粒子を前記粉砕手段に戻すことにより製造してもよい。前記粒径が50μmを超える粒子を分級手段により分級した後、粉砕手段に戻し、繰り返し粉砕することによって、平均粒径が3〜20μmの酸性成分除去剤を得ることができる。
粉砕手段としては、衝撃式粉砕機(高速回転する羽根等による粉砕機)、ジェットミル(衝突気流による粉砕機)、ボールミルが好ましい。細かい粒子を得ることができるため、衝撃式粉砕機またはジェットミルを用いることがより好ましい。ジェットミルは、動力に要する費用が高くなるが、微粒子化に適しているため、特に好ましい。
【0044】
分級手段としては、特に限定なく用いることができるが、風力式分級機が好ましい。
粉砕手段と分級手段とは、それぞれに独立した装置であってもよいし、粉砕手段と分級手段とが一体となった装置であってもよい。
粉砕手段と分級手段とが一体となった装置の例としては、風力式分級機を備えた衝撃式粉砕機などが挙げられる。風力式分級機を備えた衝撃式粉砕機を用いると、粉砕機から排出される粉砕物は連続的に粒径により分級され、粉砕手段に戻されるため、生産性を向上することができる。
酸性成分除去剤において、その他の成分を含有する場合にも、上記と同様に製造することができ、好ましい態様も同様である。
【0045】
<気体中の酸性成分除去方法>
本発明の酸性成分除去剤を用いて気体中の酸性成分を除去する方法としては、酸性成分除去剤を貯留設備に一旦貯留したのちに、酸性成分を含む気体中に供給する方法が好ましい。貯留設備に一旦貯留した酸性成分除去剤を貯留設備から排出させて、気体流を用いて搬送し、該気体流により搬送した酸性成分除去剤を、酸性成分を含む気体中に供給する方法がより好ましい。
貯留設備は、サイロであってよい。貯留設備から酸性成分除去剤を排出する方法としては、例えば、通常一般に使用される、ロータリーバルブやテーブルフィーダーを用いる方法が挙げられる。
貯留設備から排出された酸性成分除去剤を搬送し、酸性成分を含む気体中に供給する気体流は、空気流であってよい。酸性成分を含む気体としては、例えば、一般廃棄物(都市ゴミ)の焼却処理、ボイラ、各種製品の製造工程において排出される排ガスが挙げられる。
【0046】
酸性成分としては、例えば、一般廃棄物、産業廃棄物、医療廃棄物の焼却炉からの排ガスに含まれる塩化水素、フッ化水素、硫黄酸化物(二酸化硫黄)、ボイラからの排ガスに含まれる硫黄酸化物(二酸化硫黄、三酸化硫黄、硫酸)、窒素酸化物、各種製品の製造工程における排ガスに混入している酸性を示す物質が挙げられる。
酸性成分を含む気体の温度は、それらの酸性成分の露点より高いことが好ましい。一般廃棄物、産業廃棄物、医療廃棄物の焼却炉の排ガス処理の場合、ダイオキシン類の生成抑制の点からは低い温度が好ましく、具体的には100〜200℃が好ましい。酸性成分を効率よく除去するという点においては、酸性成分が凝縮しないため150〜200℃がより好ましい。後述するバグフィルターの濾布として、ダイオキシン類を分解する触媒を担持した濾布を使用している場合や、ダイオキシン類や窒素酸化物を低減させる触媒を有した設備を併用する場合は、200〜250℃であってもよい。
【0047】
気体中への酸性成分除去剤の分散手段としては、例えば、図1に示すような、排ガス中の酸性成分の除去装置を用いればよい。該装置においては、バグフィルターの濾布の表面に酸性成分除去剤の濾過層が形成されるため、効率的に酸性成分を除去できる。
バグフィルターの濾布としては、種々の材質ものを用いることができる。例えば、合成繊維、ガラス繊維、炭素繊維、フッ素樹脂が挙げられる。合成繊維としては、例えば、ポリプロピレン、アクリル、ポリエステル、ポリフェニレンスルファイド、ポリイミド、アラミドが挙げられる。フッ素樹脂としては、例えば、ポリテトラフルオロエチレン(以下、PTFEという。)、ポリビニリデンフルオライドが挙げられる。これらの繊維を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。濾布の材質としては、合成繊維、ガラス繊維またはフッ素樹脂が好ましく、ガラス繊維またはフッ素樹脂がより好ましい。
【0048】
濾布の形態としては、織布、不織布、多孔質フィルム、多孔質フィルムを備えた織布、多孔質フィルムを備えた不織布、表面をウェブ加工した不織布などであってよい。耐酸性や帯電防止性を付与し、排ガス中の酸性成分を除去する能力を高めるため、フィルターの表面が触媒や帯電防止剤などで処理されているものであってもよい。ガラス繊維などの脆い材質である場合には、強度を付与するため、表面にラミネート処理を施す場合もある。
濾布としては、ガラス繊維二重織濾布、表面にラミネート処理を施したガラス繊維二重織濾布、PTFEを備えた不織布濾布が好ましく用いられる。
【0049】
ガラス繊維二重織濾布に比べて、表面にラミネート処理を施したガラス繊維二重織濾布においては差圧が上がりやすい、またPTFE不織布濾布においては、酸性成分除去剤の粒子が濾布表面からはがれやすいなどの問題が発生しやすい傾向がある。本発明の酸性成分除去剤においては、表面にラミネート処理を施したガラス繊維二重織濾布やPTFE不織布濾布においても良好な性能を発現させることができる。
【0050】
酸性成分除去剤を供給して排ガス処理を行った際、生成した副生塩は、図1の排ガス用の導入口42の底部から排出される。この副生塩は、そのまま埋め立てによる処分がなされる場合もあるが、アルカリ金属塩化物以外の水不溶性無機塩の1種以上を塩酸、硝酸、有機酸などの酸で溶解、ろ過することにより、量を減らす操作をする場合がある。酸性成分除去剤にヒュームドシリカを過剰に含有する場合、該酸により、ヒュームドシリカがゲル化し、ろ過の効率が下がりやすい。酸性成分除去剤におけるヒュームドシリカの含有量が低いか、または含有されていない場合、ろ過効率を低下させにくい。
【0051】
<酸性成分除去剤の特性>
酸性成分除去剤の破断応力は、サイロ等の貯留設備内部における酸性成分除去剤の固結し易さ、崩れ易さの指標となる。該破断応力は、小さい方が好ましい。350mN以下が好ましく、300mN以下がより好ましく、250mN以下がさらに好ましい。該破断応力が350mN以下であれば、濾布の表面に堆積した濾過層の脱落が生じにくく、また、濾布に対して逆洗を行う際に、濾過層を濾布から容易に取り除くことがでる。また、サイロ等の貯留設備内部においてラットホールやブリッジを形成しにくくなり、酸性成分除去剤を安定して排出することができる。
【0052】
酸性成分除去剤の破断応力は、吊り下げ式粉体層付着力測定装置(ホソカワミクロン社製、コヒテスタDT−2型)を用い、二分割セル法による計測によって求めることができる。
濾布における残留圧損および濾布からの酸性成分除去剤の漏れ濃度、運転可能時間は、CIN(ドイツ規格協会の制定したドイツ連邦規格)に準拠した集塵性能試験装置(Filter MeCiaTester)や、2007年に制定されたJIS Z8909−1(集塵用濾布の試験方法)に準拠した装置、あるいはこれらを参考にした装置による計測によって求めることができる。
【0053】
酸性成分除去剤を用いた際の濾布における残留圧損は、後述する残留圧損試験の方法によって得られる数値である。濾布の種類にも依存するが、100Pa以下となることが好ましい。100Pa以下であれば、バグフィルターの濾布を構成する繊維の隙間に酸性成分除去剤の粒子の侵入の度合が小さく、バグフィルターの長期の安定した運転が可能となる。
【0054】
また、後述の残留圧損試験において明らかとなる運転可能時間は長いほど好ましい。実際の運転を考慮した場合には、濾布の残留圧損が高い場合であっても、運転可能時間が長い方が好ましい。運転可能時間は30時間以上が好ましく、35時間以上がより好ましい。
【0055】
濾布からの酸性成分除去剤の漏れ濃度は、15mg/Nm以下が好ましく、5mg/Nm以下がさらに好ましい。濾布からの酸性成分除去剤の漏れ濃度が15mg/Nm以下であれば、排出される煤塵による生活環境への負荷を抑制できる。
【0056】
本発明の酸性成分除去剤は、バグフィルターで使用される広範な種類の濾布における圧力損失の上昇を抑制し、長期間運転することが可能である。本発明によれば、該酸性成分除去剤を製造し、該酸性成分除去剤を用いて、気体中の酸性成分を除去することができる。
【実施例】
【0057】
以下に実施例を示すが、本発明はこれらの実施例に限定して解釈されない。
【0058】
<せん断試験>
リング状のせん断セル(ジェニケ・セル、内直径:64mm、ステンレス鋼SUS316製)を用いたせん断試験を実施し、付着力、壁面摩擦角、ホッパー傾斜角および出口径を下記のようにして求めた。
【0059】
(付着力)
試験に用いる垂直荷重(W)およびせん断荷重(W1〜W3)は、試験粉体のかさ比重にしたがい、表1のように決定した。下部固定型せん断セルに試験粉体を詰めた後、せん断セルの上蓋に垂直荷重をかけて予圧密を行い、同じ垂直荷重を加えたまません断力が定常値になるまで圧密を行った。この後、表1に従って、せん断荷重をかけながらせん断応力を測定した。せん断荷重に対してせん断応力をプロットして破壊包絡線を得て、この破壊包絡線の切片から、付着力を求めた。付着力は、粉体相互における付着力の指標であり、小さい方が好ましい。
【0060】
【表1】
【0061】
(壁面摩擦角)
試験に用いる垂直荷重(W)およびせん断荷重(W1〜W4)は、試験粉体のかさ比重にしたがい、表2のように決定した。下部固定型せん断セルに試験粉体を詰めた後、底部材質がステンレス鋼SUS316であるせん断セル上蓋に垂直荷重をかけて予圧密を行った。表2に従って、せん断荷重をかけながらせん断応力を測定した。せん断荷重に対してせん断応力をプロットして壁破壊包絡線を得て、この壁破壊包絡線の傾きから、ステンレス鋼SUS316との壁面摩擦角を得た。壁面摩擦角は、粉体と容器との相互付着力の指標であり、小さい方が好ましい。
【0062】
【表2】
【0063】
(ホッパー傾斜角)
測定値から算出された壁面摩擦角を用い、ff等高線よりホッパー傾斜角を得た。ホッパー傾斜角が大きいほど、ホッパーの角度が緩やかであっても粒子が流動することを示す。ホッパー傾斜角は、図4に示される角度αのことである。図4に示される点線Xは鉛直線である。すなわち、ホッパー傾斜角は、粉体がサイロから安定して排出されるために必要な、サイロ底面の傾きのことであり、大きい方が取扱いやすい粉体であることを示す。
【0064】
(出口径)
付着力試験の際の垂直荷重をレベル1とし、表3のレベル2〜4についても同様の試験を行い、それぞれの破壊包絡線を得た。これらのプロットから各々のレベルの最大主応力と、非拘束破壊応力を読み取り、粉体の流動関数として直線FFを求めた。このFFと、壁面摩擦角とホッパー傾斜角による直線ffとの交点からfD(非拘束破壊応力)を求めた。さらに次式より出口径を得た。ここでいう出口関数は、ホッパー傾斜角とホッパーの形状によって決定される関数である。出口径は、粉体がサイロから安定して排出されるために必要な、サイロ出口の口径のことであり、小さい方が好ましい。
出口径[Dm]=fD×出口関数÷使用粉体のかさ密度
【0065】
【表3】
【0066】
<破断応力試験>
吊り下げ式粉体層付着力測定装置(ホソカワミクロン社製、コヒテスタDT−2型)を用いた破断応力試験を実施し、破断応力を下記のようにして求めた。
【0067】
2つの円筒(内径:50mm、高さ:20mm)を合わせてなる二分割セル内に、試料の約20gを充填し、予圧密荷重:480Pa、温度:20℃、相対湿度:50%の環境下で2時間加圧し、圧縮して粉体層を得た。該セルの一方の円筒部分を1mm/分の速度で円筒の軸に直交する方向に引張り、2つの円筒が合わせられた位置で、粉体層にせん断応力を与え、粉体層が破断する際の破断応力を測定した。
【0068】
<残留圧損試験と運転可能時間>
JIS Z8909−1(集塵用濾布の試験方法)に準拠した集塵性能試験装置を用い、残留圧損、運転可能時間を下記のようにして求めた。
濾過面積の0.0139m、濾過速度の2.0m/分、ダスト濃度の5.0g/mの条件下で、フィルターの差圧が1000Paとなるまで運転した。次いで、パルス圧力の0.5MPa、パルス作動時間の50msの条件下で、パルスによるフィルタークリーニングを行い、フィルターに集められたダストを払い落とした。上記の方法で、パルスによるフィルタークリーニングを15回行うまで継続して運転した後、ダストの供給を停止して、運転を停止した。上記と同様の条件で、パルスによるフィルタークリーニングを10回実施した後、測定された圧力損失を残留圧損とした。
上記の条件で、試験開始後、フィルターに集められたダストを15回払い落して、ダストの供給を停止するまでに要した時間を運転可能時間とした。
【0069】
<漏れ濃度>
濾布からの漏れ濃度は、上記の残留圧損試験において、テストフィルターの後段に設置したアブソリュートフィルターで捕捉した薬剤量と通過ガス量から算出した。
試験に使用したフィルターは、以下のとおりである。
X:ガラス繊維二重織濾布。
Y:表面ラミネート処理有りガラス繊維二重織濾布。
Z:PTFE不織布濾布。
試験に使用した成分は以下のとおりである。
A:炭酸水素ナトリウム(平均粒径:95μm)。
B:膠質炭酸カルシウム(1次粒子の平均粒径:20nm、2次粒子の平均粒径:1〜10μm、BET比表面積:49m/g)。
C:表面処理膠質炭酸カルシウム(1次粒子の平均粒径:20nm、2次粒子の平均粒径:1〜10μm、BET比表面積:49m/g、脂肪酸添加品)。
D:疎水性ヒュームドシリカ(1次粒子の平均粒径:20nm、炭素含有率:1質量%)。
【0070】
〔例1〜10〕
(酸性成分除去剤の製造)
上記成分A、B、C、Dの各成分の含有割合が表4に示す割合となるように混合した後、風力式分級機を備えた衝撃式粉砕機(ホソカワミクロン社製、ADMパルベライザーADM―10A型)を用い、粉砕機から排出される粉砕物を分級し、50μmを超える粒子は再度粉砕機に戻しながら粉砕することによって、平均粒径が9μmの酸性成分除去剤を得て比較した。なお、例5、6および8〜10は実施例であり、例3、4は参考例であり、例1、2および7比較例である。
【0071】
得られた酸性成分除去剤について前述の試験を実施した結果を表4に示す。漏れ濃度は全ての例でゼロであったので表中の記載は割愛する。
【0072】
【表4】
【0073】
例1、2は、酸性成分除去剤中、0.2質量%以上の疎水性ヒュームドシリカを含有する酸性成分除去剤である。例1、2では、濾布の種類による性能の差が大きく、いずれの濾過布でも、良好な残留圧損と運転可能時間を両立することはできなかった。
【0074】
(貯留設備からの供給と酸性成分の除去)
例5で得た酸性成分除去剤を、粉体流動化策としてのエアレーションノズル(エム・テクニック社製、フルイダイザー)を設置したサイロに一旦貯留し、テーブルフィーダーにて排出した。図1に示されるフローを流れる塩化水素を含む排ガス中へ供給したところ、酸性成分除去剤は安定してサイロから排出され、塩化水素は除去された。また、バグフィルターでの問題は一切発生しなかった。
【産業上の利用可能性】
【0075】
本発明の製造方法で得られた酸性成分除去剤は、例えば、ゴミの焼却炉からの排ガス中の塩化水素、二酸化硫黄、ボイラからの排ガス中の二酸化硫黄、三酸化硫黄、硫酸;その他、各種気体中の酸性成分の除去に有用である。
なお、2016年7月12日に出願された日本特許出願2016−137445号の明細書、特許請求の範囲、図面、及び要約書の全内容をここに引用し、本発明の明細書の開示として、取り入れるものである。
【符号の説明】
【0076】
1:サイロ、2:排ガス流路(煙道)、3:供給管、4:バグフィルター、43:濾布
図1
図2
図3
図4