(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記フルオロオレフィン単位が、テトラフルオロエチレン単位またはクロロトリフルオロエチレン単位である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の含フッ素重合体組成物。
含フッ素重合体が、さらに、フルオロオレフィン、シクロへキシルビニルエーテルおよび架橋性基を有する単量体以外の第4の単量体に基づく単位を含む、請求項1〜6のいずれか一項に記載の含フッ素重合体組成物。
フルオロオレフィンとシクロへキシルビニルエーテルとを含む単量体混合物を重合して含フッ素重合体を製造する方法であって、シクロへキシルビニルエーテルを精製して、シクロへキシルビニルエーテルに含有される、シクロヘキサノールよりも低沸点の化合物の下記面積率が0.15%以下であるシクロへキシルビニルエーテルとし、該精製後のシクロへキシルビニルエーテルを前記重合に使用することを特徴とする含フッ素重合体の製造方法。
面積率:ガスクロマトグラフィーによるシクロへキシルビニルエーテルの測定において、得られたガスクロマトグラム中の全てのピークのピーク面積の総和に対する、シクロヘキサノールの保持時間よりも短時間側に現れる成分由来のピークのピーク面積の総和の割合。
フルオロオレフィンとシクロへキシルビニルエーテルとを含む単量体混合物をラジカル重合開始剤、アルカリ金属炭酸塩および重合溶媒の存在下に重合して含フッ素重合体を製造する方法であって、
前記シクロへキシルビニルエーテルが、シクロヘキサノールよりも低沸点の化合物を含有し、該化合物の下記面積率が0.15%以下のシクロへキシルビニルエーテルであり、重合溶媒がエタノールと該エタノールよりも20℃以上高沸点の有機溶媒との混合溶媒であり、前記有機溶媒が110℃以上の沸点を有する有機溶媒であり、重合後反応混合物から前記エタノールを減圧留去して析出した前記アルカリ金属炭酸塩を除去するとともに、前記エタノールの減圧留去を65℃以上の温度、45Torr以下の減圧度で行い、前記有機溶媒に溶解した含フッ素重合体を得ることを特徴とする含フッ素重合体の製造方法。
面積率:ガスクロマトグラフィーによるシクロへキシルビニルエーテルの測定において、得られたガスクロマトグラム中の全てのピークのピーク面積の総和に対する、シクロヘキサノールの保持時間よりも短時間側に現れる成分由来のピークのピーク面積の総和の割合。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明における用語の意味は以下の通りである。
「単位」とは、単量体の重合により直接形成された、該単量体1分子に由来する原子団と、該原子団の一部を化学変換して得られる原子団との総称である。重合体が含む全単位に対する、それぞれの単位の含有量(モル%)は、重合体を核磁気共鳴スペクトル法により分析して求められる。なお、特定の単量体に基づく単位をその単量体名に「単位」を付して表す。
「数平均分子量」および「質量平均分子量」は、ポリスチレンを標準物質としてゲルパーミエーションクロマトグラフィーで測定される値である。「数平均分子量」は「Mn」ともいい、「質量平均分子量」は「Mw」ともいう。
「中間粒度」とは、粒子径の小さいほうから質量%を積算して50質量%になる粒子径を意味する。
【0014】
本発明の含フッ素重合体組成物(以下、「本組成物」ともいう。)の特徴点としては、後段で詳述する面積割合算出法によって得られる面積割合ARの範囲が所定の範囲である点が挙げられる。
本発明者らは、従来技術について検討した結果、本組成物中に微量に含まれる所定の成分(不純物成分)が組成物の貯蔵安定性に悪影響を及ぼすのを知見している。具体的には、まず、そもそも本組成物には、含フッ素重合体を製造するために用いられる単量体由来の不純物成分が不可避的に含まれる。前記不純物成分としては、シクロヘキシルビニルエーテルを合成する際に使用されるシクロヘキサノールの残渣や、シクロヘキシルビニルエーテルを合成する際に生じる副生成物残渣等が挙げられる。なかでも、ガスクロマトグラフィー測定(以下、「GC測定」ともいう。)において、主に、シクロヘキサノールの保持時間より短時間側に現れる成分(ただし、後述するように、アセトンやトルエン等は含まれない。)が、本組成物の貯蔵安定性に影響を与えるのを、本発明者らは知見している。
そこで、本発明者らは、前記成分の含有量を所定量以下に制御すれば、貯蔵安定性が向上するのを見出した。なお、前記成分が貯蔵安定性に関連している詳細な理由は不明だが、前記成分が本組成物中の含フッ素重合体同士の架橋を促すため、貯蔵安定性が悪化していると推測される。
【0015】
以下では、まず、面積割合ARの算出方法(以下、「面積割合算出法」ともいう。)について詳述する。
本面積割合算出法では、GC測定を利用する。GC測定に供されるサンプル溶液の調製方法は、以下の通りである。
まず、含フッ素重合体組成物を用意し、含フッ素重合体組成物100質量部に対してアセトン200質量部を加えて、含フッ素重合体組成物を希釈した希釈溶液を調製する。
次いで、前記希釈溶液の全質量に対して1質量%のトルエンを、前記希釈溶液に加えて、サンプル溶液を調製する。後述するように、GC測定において、トルエンは含フッ素重合体組成物中に含まれる微量成分のピークを抽出する基準とするために添加する。
【0016】
次いで、得られたサンプル溶液を用いてGC測定を実施する。
GC測定は、Agilent Technologies社製のガスクロマトグラフ(検出器:FID)を用いて、以下の条件にて行う。
(サンプル注入量)1.0μL(注入モード)スプリット(キャリアガス)He(注入口温度)240℃(圧力)199.9kPa(トータルフロー)179mL/min(スプリット比)100:1(スプリット流量)174mL/min(カラム)キャピラリーカラム DB1301(長さ60m×内径0.25mm、膜厚1.00μm)(カラム圧力)199.9kPa(カラム流量)1.7mL/min(平均線速度)29.0cm/sec(カラムオーブン温度プログラム)40℃で10分間保持後、10℃/minで昇温し、250℃で25分間保持(検出器)水素炎イオン化検出法(FID)(検出器温度)250℃。
【0017】
GC測定によって得られるガスクロマトグラムより、まず、トルエンに由来するピークのピーク面積の、0.5倍以下のピーク面積を有するピークを抽出する。ここでは、本組成物に所定量加えられるトルエンに由来するピークのピーク面積を基準にして、本組成物中に含まれる微量成分に関連するピークを抽出する。前記サンプル溶液に加えられたアセトンは、トルエンよりも量が多いため、アセトンのピークはトルエンのピークよりも大きなピークとして現れ、抽出の際に除外される。また、本組成物中の溶媒は、通常、トルエンよりもその含有量は多いため、抽出の際に、溶媒に該当するピークは除外される。つまり、抽出により、本組成物中に含まれる微量成分(主に、不純物成分)に関連するピークを抽出できる。
【0018】
次いで、抽出されたピークのピーク面積の総和を面積Aとする。
また、抽出されたピークのうち、シクロヘキサノールの保持時間よりも短時間側に現れる成分に由来するピークのピーク面積の総和を面積Bとする。なお、そもそも抽出されたピークの中には溶媒由来のピークのピーク面積、アセトン由来のピークおよびトルエン由来のピークは含まれていないため、面積Bを算出する際には、溶媒由来のピーク、アセトン由来のピークのピーク面積およびトルエン由来のピークのピーク面積は含まれない。
なお、前記面積Bを算出する際に、シクロヘキサノールの保持時間を算出するために、シクロヘキサノール単体を用いてGC測定を行い、事前に、シクロヘキサノールの保持時間を得ることができる。
得られた面積Aおよび面積Bを用いて、以下の式(1)によって面積割合ARを求める。
式(1):面積割合AR(%)=(面積B/面積A)×100
【0019】
本組成物における面積割合ARの範囲は、本組成物の貯蔵安定性の点から、0.1〜3%であり、0.1〜3.0%が好ましく、0.1〜1.5%がより好ましく、0.1〜1.0%が特に好ましい。
面積割合ARが3%超の場合、本組成物の貯蔵安定性が劣る。また、本組成物中の微量成分を除去できる技術的な限度として、前記面積割合ARの下限値(0.1%)がある。面積割合ARを0.1%未満とするためには、非常に純度の高く、高価なシクロヘキシルビニルエーテルを用いる必要があるため、工業的な点で劣る。
【0020】
本組成物は、所定の単位を含む含フッ素重合体と溶媒とを含む。
含フッ素重合体は、フルオロオレフィン単位と、シクロへキシルビニルエーテル単位とを含む。なお、以下、シクロへキシルビニルエーテルを「CHVE」ともいう。
フルオロオレフィンは、水素原子の1個以上がフッ素原子で置換されたオレフィンである。フルオロオレフィンは、フッ素原子で置換されていない水素原子の1個以上が塩素原子で置換されていてもよい。
フルオロオレフィンとしては、CF
2=CF
2、CF
2=CFCl、CF
2=CFCF
3およびCF
2=CH
2が好ましく、CF
2=CF
2(テトラフルオロエチレン)およびCF
2=CFCl(クロロトリフルオロエチレン)がより好ましい。
フルオロオレフィンは、1種を単独使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0021】
フルオロオレフィン単位の含有量は、含フッ素重合体が含む全単位に対して、30〜70モル%が好ましく、40〜60モル%がより好ましく、45〜55モル%が特に好ましい。フルオロオレフィン単位の含有量が30モル%以上であれば、本発明のフッ素樹脂塗料から形成されてなる塗膜(以下、「本塗膜」ともいう。)の耐候性により優れる。フルオロオレフィン単位の含有量が70モル%以下であれば、含フッ素重合体の溶媒への溶解性や分散性により優れる。
【0022】
CHVE単位の含有量は、含フッ素重合体が含む全単位に対して、10〜50モル%が好ましく、10〜45モル%がより好ましく、15〜40モル%が特に好ましい。CHVE単位の含有量が10モル%以上であれば、含フッ素重合体の溶媒への溶解性や分散性により優れる。CHVE単位の含有量が50モル%以下であれば、本塗膜の耐候性に優れる。
【0023】
含フッ素重合体には、フルオロオレフィン単位およびCHVE単位以外の単位が含まれていてもよい。以下、フルオロオレフィンおよびCHVE以外の単量体を「他の単量体」といい、該他の単量体に基づく単位を「他の単位」という。
含フッ素重合体に含まれる他の単位は2種以上であってもよい。また、他の単位はフッ素原子を有する単位であってもよく、フッ素原子を有しない単位であってもよい。また、他の単位は後述の架橋性基を有する単位であってもよい。他の単位のうち架橋性基を有する単位以外の単位が第4の単位である。含フッ素重合体は、少なくとも1種の他の単位を含むことが好ましい。
他の単位としては、フッ素原子を有しない単位が好ましい。また、含フッ素重合体に含まれるフッ素原子を有しない単位としては、架橋性基を有する単位と第4の単位(すなわち、架橋性基を有しない単位)の少なくとも2種の他の単位を含むことがより好ましい。
フッ素原子を有さない他の単量体としては、フッ素原子を有さず、重合性基を有する化合物であればよく、具体例としては、フッ素原子を有さない、ビニルエーテル、アリルエーテル、ビニルエステル、アリルエステル、α−オレフィン、アクリレート、メタクリレートが挙げられる。
なお、フッ素原子を有さない単量体としては、フルオロオレフィンとの反応性の点から、フッ素原子を有さないビニル系単量体が好ましく、フッ素原子を有さないビニルエーテル、ビニルエステルがより好ましい。
【0024】
前記フッ素原子を有さない他の単量体の好適態様の一つとしては、架橋性基を有する単量体(以下、「単量体I」ともいう。)が挙げられる。後段で詳述するように、含フッ素重合体が架橋性基を有する場合、フッ素樹脂塗料に硬化剤を含ませることで、本塗膜の耐候性、耐水性、耐薬品性、耐熱性等をさらに向上できる。
架橋性基としては、活性水素を有する官能基(ヒドロキシ基、カルボキシ基、アミノ基等)、加水分解性シリル基(アルコキシシリル基等)等が好ましく、ヒドロキシ基が特に好ましい。
【0025】
単量体Iとしては、ヒドロキシアルキルビニルエーテル、ヒドロキシアルキルビニルエステル、ヒドロキシアルキルアリルエーテル、ヒドロキシアルキルアリルエステル、ヒドロキシアルキルアクリレート、ヒドロキシアルキルメタクリレート等が挙げられ、フルオロオレフィンとの共重合性および本塗膜の耐候性の点から、ヒドロキシアルキルビニルエーテルが好ましい。
単量体Iの具体例としては、2−ヒドロキシエチルビニルエーテル、4−ヒドロキシブチルビニルエーテル、シクロヘキサンジメタノールモノビニルエーテル、2−ヒドロキシエチルアリルエーテル、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレートが挙げられる。
単量体Iは、1種を単独使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0026】
単量体Iの好適態様としては、下式(2)で表される単量体が挙げられる。
式(2) CH
2=CX
1(CH
2)
n1−Q
1−R
1−Y
式中、X
1は、水素原子またはメチル基である。
n1は、0または1である。
Q
1は、酸素原子、−C(O)O−または−O(O)C−であり、酸素原子が好ましい。
R
1は、分岐構造または環構造を有していてもよい炭素数2〜20のアルキレン基であり、シクロヘキサン−1,4−ジメチレン基またはn−ノニレン基が好ましい。
Yは、架橋性基であり、ヒドロキシ基、カルボキシ基またはアミノ基が好ましく、ヒドロキシ基がより好ましい。
【0027】
単量体Iに基づく単位の含有量は、本組成物の貯蔵安定性の点から、含フッ素重合体が含む全単位に対して、0〜20モル%が好ましく、0〜18モル%がより好ましく、0〜15モル%が特に好ましい。
【0028】
第4の単位となる単量体の好適態様としては、フッ素原子、環状炭化水素基、および架橋性基を有さない単量体(以下、「単量体II」ともいう。)が挙げられる。
単量体IIとしては、フッ素原子、環状炭化水素基、および架橋性基を有さない、ビニルエーテル、アリルエーテル、ビニルエステル、アリルエステル、オレフィン、アクリレート、メタクリレート等が挙げられる。
単量体IIの具体例としては、ノニルビニルエーテル、2−エチルヘキシルビニルエーテル、ヘキシルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、n−ブチルビニルエーテル、tert−ブチルビニルエーテル、エチルアリルエーテル、ヘキシルアリルエーテル、カルボン酸(酢酸、酪酸、ピバリン酸、安息香酸、プロピオン酸等)のビニルエステル、カルボン酸(酢酸、酪酸、ピバリン酸、安息香酸、プロピオン酸等)のアリルエステル、エチレン、プロピレン、イソブチレンが挙げられる。
単量体IIは、1種を単独使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0029】
単量体IIの好適態様としては、下式(3)で表される単量体が挙げられる。
式(3) CH
2=CX
2(CH
2)
n2−Q
2−R
2
式中、X
2は、水素原子またはメチル基である。
n2は、0または1である。
Q
2は、酸素原子、−C(O)O−または−O(O)C−である。
R
2は分岐構造を有していてもよい炭素数2〜20のアルキル基である。
【0030】
単量体IIに基づく単位の含有量は、本組成物の貯蔵安定性の点から、含フッ素重合体が含む全単位に対して、0〜50モル%が好ましく、5〜45モル%がより好ましく、15〜40モル%が特に好ましい。
【0031】
フルオロオレフィン単位、CHVE単位、単量体Iに基づく単位、および単量体IIに基づく単位の含有量は、含フッ素重合体が含む全単位に対してそれぞれこの順に、30〜70モル%、10〜50モル%、0〜20モル%、0〜50モル%が好ましい。
【0032】
含フッ素重合体のMnは、3000〜40000が好ましい。
含フッ素重合体のMwは、5000〜100000が好ましく、5000〜80000がより好ましい。
含フッ素重合体を70℃で2週間加温した際の、加温前後の含フッ素重合体のMw変化率((加温後のMw)/(加温前のMw))は、含フッ素重合体の貯蔵安定性の点から、1.50以下が好ましく、1.40以下がより好ましく、1.30以下が特に好ましい。Mw変化率の下限は、通常1.0である。
Mw変化率が1.50以下であれば、含フッ素重合体組成物およびフッ素系塗料の粘度を好適に維持でき、フッ素系塗料から塗膜を形成する際の作業性に優れる。
【0033】
本組成物は、前記含フッ素重合体と溶媒を含む。本組成物に含まれる溶媒は、面積割合算出法による面積割合ARの測定に使用される溶媒(トルエンとアセトン)以外の溶媒である。本組成物に含まれる溶媒の少なくとも一部は、単量体混合物から前記含フッ素重合体を製造するために使用された溶媒であることが好ましい。溶媒としては、水や有機溶媒が挙げられる。
後述のように、含フッ素重合体の製造方法において、単量体混合物の重合の際に使用される溶媒(以下、「重合用溶媒」ともいう。)は、通常、アルコールとアルコール以外の有機溶媒が使用される。本組成物における溶媒は、この重合用溶媒として使用されたアルコール以外の有機溶媒が好ましい。また、この有機溶媒は、重合用溶媒として使用されたアルコールよりも高沸点の有機溶媒が好ましい。
本組成物における有機溶媒は、芳香族炭化水素溶媒、ケトン溶媒、エーテルエステル溶媒、エステル溶媒、および弱溶剤からなる群から選択される少なくとも1種からなる有機溶媒が好ましい。有機溶媒としては、含フッ素重合体を溶解しうる有機溶媒が好ましく、本組成物は含フッ素重合体とそれを溶解した有機溶媒とを含む溶液であることが好ましい。
なお、エーテルエステルとは、分子内にエーテル結合とエステル結合の両方を有する化合物である。また、弱溶剤とは、日本国労働安全衛生法における第三種有機溶剤に分類される溶剤である。
【0034】
芳香族炭化水素溶媒は、キシレン、エチルベンゼン、芳香族石油ナフサ、テトラリン、ソルベッソ#100(エクソン化学(株)登録商標)、ソルベッソ#150(エクソン化学(株)登録商標)等が好ましく、キシレン、エチルベンゼンがより好ましい。
ケトン溶媒は、アセトン、メチルエチルケトン、メチルアミルケトン、メチルイソブチルケトン、エチルイソブチルケトン、ジイソブチルケトン、シクロヘキサノン、等が好ましい。
エーテルエステル溶媒は、3−エトキシプロピオン酸エチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、酢酸メトキシブチル等が好ましい。
エステル溶媒は、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸n−プロピル、酢酸イソブチル、酢酸t−ブチル等が好ましい。
弱溶剤は、ガソリン、コールタールナフサ(ソルベントナフサを含む。)、石油エーテル、石油ナフサ、石油ベンジン、テレピン油、ミネラルスピリット(ミネラルシンナー、ペトロリウムスピリット、ホワイトスピリット、ミネラルターペンを含む。)等からなる群から選択される少なくとも1種であり、引火点が室温以上である点から、ミネラルスピリットが好ましい。
【0035】
溶媒は1種の溶媒のみからなっていてもよく、2種以上の混合溶媒であってもよい。
本組成物における溶媒の含有量は、本組成物の全質量に対して、30〜70質量%が好ましく、45〜70質量%がより好ましい。
【0036】
また、本組成物には、含フッ素重合体を得るために使用される単量体の残渣や、単量体の製造に用いられた原料の成分が含まれる場合があり、これらの成分が上述した微量成分(不純物成分)に該当する場合がある。
なお、含フッ素重合体を得るために使用される単量体の残渣の具体例としては、シクロへキシルビニルエーテルの残渣や、上述した単量体I(4−ヒドロキシビニルエーテル等)の残渣が挙げられる。
また、単量体を製造するために用いられた原料の具体例としては、シクロへキシルビニルエーテルを製造するために用いたシクロヘキサノールが挙げられる。
【0037】
本発明は、また、貯蔵安定性に優れる含フッ素重合体を製造する2つの製造方法である。本発明の製造方法のうち第1の製造方法は、CHVEを重合前に精製し、精製されたCHVEを使用して含フッ素重合体を製造する方法である。本発明の製造方法のうち第2の製造方法は、単量体を重合して含フッ素重合体を生成させた後、反応混合物から重合溶媒の一部であるアルコールを溜去する際、アルコールの除去に通常必要とされる条件よりもより厳しい条件で溜去して不純物成分も同時に除去を行って、含フッ素重合体を製造する方法である。
本発明の製造方法のいずれも、その方法で得られた含フッ素重合体は、単量体等に起因する不純物成分の含有量が少ないことにより貯蔵安定性が高く、その溶媒溶液等においても粘度変化が少ない。さらに、2つの製造方法を同時に実施することにより、個々の製造方法を実施した場合に比較して、不純物成分の含有量をさらに少なくすることができる。
本発明の製造方法は、いずれも、前記本発明の含フッ素重合体組成物の製造に好適な方法である。しかし、本発明の製造方法は、本組成物の製造に限定されるものではなく、本発明の製造方法で得られた含フッ素重合体は、本組成物以外の含フッ素重合体溶液や分散液の製造に用いることもできる。
以下、本組成物の製造を例に、本発明の製造方法を説明する。
【0038】
本発明の第1の製造方法は、フルオロオレフィンとCHVEとを含む単量体混合物を重合して含フッ素重合体を製造する方法であって、CHVEを精製して、CHVEとともに含まれるシクロヘキサノールよりも低沸点の化合物の下記面積率が0.15%以下であるCHVEとし、該精製後のCHVEを前記重合に使用することを特徴とする製造方法である。
面積率:ガスクロマトグラフィーによるCHVEの測定において、得られたガスクロマトグラム中の全てのピークのピーク面積の総和に対する、シクロヘキサノールの保持時間よりも短時間側に現れる成分由来のピークのピーク面積の総和の割合。
本発明者らは、GC測定においてシクロヘキサノールの保持時間よりも短時間側に現れる成分の大部分が、原料として用いるCHVEに含まれる低沸点化合物であることを知見している。また、この低沸点化合物が、含フッ素重合体溶液の貯蔵安定性を低下させる不純物成分の少なくとも一部であると考えられる。そこで、CHVEの蒸留により、CHVEとともに含まれる低沸点化合物の量を低減させれば、貯蔵安定性に優れる含フッ素重合体を製造することができる。また、前記本発明の含フッ素重合体組成物における面積割合ARを低減できる。すなわち、この第1の製造方法により、前記本発明の含フッ素重合体組成物を製造することができる。
前記面積割合は、0.1%以下が好ましく、0.05%以下がより好ましく、0.01%以下が特に好ましい。下限は特に制限されず、0%である。
フルオロオレフィンとCHVEとを含む単量体混合物を重合して含フッ素重合体を製造する方法については、精製されたCHVEを使用する点を除き公知の方法を使用できる。重合媒体としては溶媒や分散媒を使用することができ、生成する含フッ素重合体を溶解できる有機溶媒を使用することが好ましい。さらに、アルコールの減圧留去条件を除き後記第2の製造方法と同様の製造方法が好ましく、さらにアルコールの減圧留去条件を含めて後記第2の製造方法の使用がより好ましい。
【0039】
本発明の第2の製造方法は、フルオロオレフィンとCHVEとを含む単量体混合物をラジカル重合開始剤、アルカリ金属炭酸塩および重合溶媒の存在下に重合して含フッ素重合体を製造する方法であって、重合溶媒が炭素数1〜6のアルコールと該アルコールよりも20℃以上高沸点の有機溶媒(以下、「高沸点有機溶媒」ともいう。)との混合溶媒であり、重合後に反応混合物から前記アルコールを減圧留去して析出した前記アルカリ金属炭酸塩を除去するとともに、前記アルコールの減圧留去を該アルコールの減圧溜去に通常使用される温度および減圧度を超えかつ前記有機溶媒が減圧留去されない条件で行い、前記有機溶媒に溶解した含フッ素重合体を得ることを特徴とする製造方法である。
第2の製造方法においては、炭素数1〜6のアルコールを除去する際に、前記低沸点化合物が合わせて除去されるように、通常のアルコール除去条件よりも厳しい除去条件を設定する。例えば、アルコールの減圧留去の際、より低圧条件下やより高温条件下で減圧留去することにより、低沸点化合物を合わせて除去する。一方、アルコール除去の際に高沸点有機溶媒までも除去されないように、使用されるアルコールと高沸点有機溶媒の沸点差はより大きい方が好ましく、高沸点有機溶媒の沸点は、併用されるアルコールの沸点よりも30℃以上高いことが好ましく、50℃以上高いことがより好ましい。
炭素数1〜6のアルコールとしてはエタノールが好ましく、エタノールを用いた場合は、より具体的には、65℃以上の温度(上限は85℃が好ましい。)で、45Torr以下(好ましくは、30Torr以下。下限は5Torrが好ましい。)に減圧して、減圧蒸留するのが好ましい。
また、この第2の製造方法により、前記本発明の重合体組成物における面積割合ARを低減できる。すなわち、この第2の製造方法により、前記本発明の含フッ素重合体組成物を製造することができる。
【0040】
本発明の第2の製造方法は、生産性の点から、以下の工程1〜工程3を有するのが好ましい。
工程1(重合工程):フルオロオレフィンおよびCHVEを含む単量体混合物を、ラジカル重合開始剤、アルカリ金属炭酸塩、および、炭素数1〜6のアルコールと高沸点有機溶媒との混合溶媒である重合溶媒の存在下に、アルカリ金属炭酸塩の少なくとも一部が前記重合溶媒に溶解した状態で共重合させて、含フッ素重合体の溶液を得る工程。
工程2(析出工程):含フッ素重合体の溶液から前記アルコールを除去して、前記アルコールの含有量を低減し、アルカリ金属炭酸塩を析出させる工程。
工程3(除去工程):前記工程2で得た含フッ素重合体の溶液を濾過して、析出したアルカリ金属炭酸塩を除去して、高沸点有機溶媒に溶解した含フッ素重合体を得る工程。
【0041】
工程1における単量体混合物には、フルオロオレフィンおよびCHVE以外に、必要によりそれら以外の単量体(単量体I、単量体II等)が含まれていてもよい。
工程1で用いるアルカリ金属炭酸塩の具体例としては、炭酸カリウムが挙げられる。
工程1における、アルカリ金属炭酸塩と単量体混合物中の全単量体との質量比率(アルカリ金属炭酸塩/単量体混合物中の全単量体)は、0.005/1〜0.013/1が好ましく、0.008/1〜0.012/1がより好ましい。炭酸カリウムと単量体混合物中の全単量体との質量比率を0.005/1以上とすれば、円滑に共重合反応が進行し、炭酸カリウムと単量体混合物中の全単量体との質量比率を0.013/1以下とすれば、重合安定性を確保しつつ、得られる含フッ素重合体溶液の着色を抑制できる。
なお、工程1における重合溶媒は、炭素数1〜6のアルコールと高沸点有機溶媒を含んでいればよく、これら溶媒以外に、従来公知の重合に用いる溶媒を使用できる。
本組成物を製造する場合には、溶媒置換等の特別な処理が不要なことから、本組成物中に含まれる溶媒を重合溶媒中の高沸点有機溶媒と同じものとし、工程3で得られる含フッ素重合体溶液をそのまま本組成物とすることが好ましい。
【0042】
炭素数1〜6のアルコールの具体例としては、メタノール、エタノール、n−プロパノール、i−プロパノール、tert−ブタノール、ペンタノール、ヘキサノールが挙げられ、炭酸カリウムの溶解性の点から、エタノールが好ましい。
重合溶媒中の高沸点有機溶媒としては、芳香族炭化水素溶媒、炭素数1〜6のアルコール以外のアルコール溶媒、ケトン溶媒、エーテルエステル溶媒、エステル溶媒、弱溶剤等であって、重合媒体中のアルコールよりも20℃以上高沸点の有機溶媒が挙げられる。芳香族炭化水素溶媒、ケトン溶媒、エーテルエステル溶媒、エステル溶媒、および弱溶剤の具体例は、本組成物中に好ましく含まれる溶媒のうちで高沸点の条件が満たされる有機溶媒である。
炭素数1〜6のアルコール以外のアルコール溶媒の具体例としては、オクチルアルコール、ドデシルアルコールが挙げられる。
高沸点有機溶媒は、芳香族炭化水素溶媒、エーテルエステル溶媒、または炭素数1〜6のアルコール以外のアルコール溶媒がより好ましく、芳香族炭化水素溶媒が特に好ましい。
炭素数1〜6のアルコールがエタノール(bp:78℃)の場合、高沸点有機溶媒としては、110℃以上の沸点を有する有機溶媒が好ましく、具体的にはトルエン(bp:110℃)、エチルベンゼン(bp:136℃)、キシレン(bp:138〜144℃)等の芳香族炭化水素溶媒が挙げられる。
重合溶媒の全質量に対する、炭素数1〜6のアルコールの含有量は、10〜95質量%が好ましく、20〜90質量%がより好ましい。
【0043】
前記単量体混合物は、ラジカル重合開始剤、アルカリ金属炭酸塩、および前記重合溶媒の存在下に、炭酸カリウムの少なくとも一部が溶解した状態で溶液重合により共重合させるのが好ましい。
なお、「アルカリ金属炭酸塩の少なくとも一部が溶解した状態」とは、溶媒中にアルカリ金属炭酸塩の一部が溶解しているが、少なくとも一部が溶解せずに分散(浮遊或いは沈殿を含む)していてもよい状態のことである。
【0044】
ラジカル重合開始剤の具体例としては、アゾ系開始剤(2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビスシクロヘキサンカーボネートニトリル、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)等)、ケトンパーオキサイド(シクロヘキサノンパーオキサイド等)、ハイドロパーオキサイド(tert−ブチルハイドロパーオキサイド等)、ジアシルパーオキサイド(ベンゾイルパーオキサイド等)、ジアルキルパーオキサイド(ジ−tert−ブチルパーオキサイド等)、パーオキシケタール(2,2−ジ−(tert−ブチルパーオキシ)ブタン等)、アルキルパーエステル(tert−ブチルパーオキシピバレート(PBPV)等)、パーカーボネート類の過酸化物系開始剤(ジイソプロピルパーオキシジカーボネート等)が挙げられる。
【0045】
また、含フッ素重合体のMnおよびMwを調節する必要がある場合には、必要に応じて従来公知の連鎖移動剤を添加すればよい。
【0046】
重合反応は、重合温度が65℃±10℃、重合時間が6時間〜36時間の条件で行うのが好ましい。重合温度は、使用する開始剤の分解開始温度や半減期に応じて適宜設定すればよい。重合反応は、冷却後にハイドロキノンモノメチルエーテル等の重合禁止剤により停止すればよい。
【0047】
工程2は、工程1で得られる含フッ素重合体の溶液から、炭素数1〜6のアルコール溶媒を除去して、好ましくは重合溶媒に対して0〜0.03質量%に低減し、アルカリ金属炭酸塩を溶液中に析出させる工程である。
なお、炭素数1〜6のアルコールを除去する方法としては、減圧蒸留装置により減圧加熱下で濃縮する方法等が挙げられる。
【0048】
炭素数1〜6のアルコールを除去する前に、予備濾過を行うのが好ましい。予備濾過は、前記含フッ素重合体の溶液中に固体として分散(浮遊或いは沈殿を含む)するアルカリ金属炭酸塩またはその変質物等をおおまかに濾別する目的で行う。なお、予備濾過を行わない場合は、下記除去工程において、これらを除去すればよい。
【0049】
工程3は、前記析出工程で得られた、炭素数1〜6のアルコール溶媒を除去した含フッ素重合体の溶液を濾過して、析出したアルカリ金属炭酸塩を除去して、有機溶媒に溶解した含フッ素重合体を得る工程である。
【0050】
濾過の方法としては、珪藻土を用いた濾過が挙げられる。珪藻土としては、中間粒度25〜40μmの珪藻土が挙げられ、その使用量は、濾過面積に対して0.05〜0.10g/cm
2が好ましい。
濾過は、具体的には、前記珪藻土を用いて粘調液用濾紙No.63を装着した加圧濾過器へ移液し、圧力0.01〜0.5MPaの加圧条件下で濾過し、濾液の外観が目視でヘイズ無しになるまで循環濾過するのが好ましい。
【0051】
本組成物は、フッ素樹脂塗料(クリア塗料等)に好適に使用できる。
本発明のフッ素樹脂塗料は、本組成物に、硬化剤、含フッ素重合体以外の樹脂等の塗料配合成分をさらに加えて調製できる。
フッ素樹脂塗料は、一液タイプの塗料でもよく、二液タイプの塗料でもよい。二液タイプの場合には、硬化剤は使用直前に混合されるのが好ましい。
【0052】
硬化剤は、含フッ素重合体が単量体Iに基づく単位を含む場合、単量体Iが有する架橋性基と架橋可能な硬化剤が好ましい。
単量体Iが有する架橋性基が水酸基である場合には、硬化剤としては、常温硬化型イソシアネート硬化剤、熱硬化型ブロックイソシアネート硬化剤、メラミン硬化剤等の塗料用硬化剤が好ましい。
フッ素樹脂塗料中の硬化剤の含有量は、含フッ素重合体の100質量部に対して、1〜100質量部が好ましく、1〜50質量部がより好ましい。
【0053】
含フッ素重合体以外の樹脂は、フッ素樹脂塗料に配合される公知の樹脂を適宜使用できる。
塗膜の乾燥性を改善するために、CAB(セルロースアセテートブチレート)、NC(ニトロセルロース)等を配合してもよい。また、本塗膜の光沢、硬度、塗料の施工性を改良するために、アクリル酸またはそのエステルからなる重合体、ポリエステル等の塗料用樹脂を配合してもよい。
【0054】
その他にも、添加物としてシランカップリング剤、紫外線吸収剤、硬化促進剤、光安定剤、着色剤、つや消し剤等、塗料に配合される公知の成分を必要に応じて配合できる。
【0055】
本発明の塗装物品は、物品の表面に、本発明のフッ素樹脂塗料により塗膜が形成されてなる。
塗装される物品の具体例としては、輸送用機器(自動車、電車、航空機等)、土木部材(橋梁部材、鉄塔等)、産業機材(防水材シート、タンク、パイプ等)、建築部材(ビル外装、ドア、窓門部材、モニュメント、ポール等)、道路部材(道路の中央分離帯、ガードレール、防音壁等)、通信機材、電気および電子部品、太陽電池モジュール用の表面シートやバックシートが挙げられる。
塗膜の膜厚は、10〜200μmが好ましく、10〜100μmがより好ましい。
【0056】
フッ素樹脂塗料は、物品の表面に直接塗布してもよく、物品の表面に公知の表面処理(下地処理等)を施した上に塗布してもよい。
フッ素樹脂塗料の塗布方法の具体例としては、スプレー塗装、エアスプレー塗装、はけ塗り、浸漬法、ロールコーター、フローコーターを用いる方法が挙げられる。
塗布後の乾燥温度は、15℃〜300℃程度が好ましい。
【実施例】
【0057】
以下、実施例を挙げて本発明を詳細に説明する。ただし本発明はこれらの実施例に限定されない。
各例で用いた評価方法および材料を以下に示す。
【0058】
<面積割合ARの算出>
上述した面積割合算出法にしたがって算出した。
後述する実施例および比較例にて製造した含フッ素重合体組成物を用意し、含フッ素重合体組成物100質量部に対してアセトン(和光純薬工業社製、試薬特級)200質量部を加えて、含フッ素重合体組成物を希釈した希釈溶液を調製した。
次いで、この希釈溶液全質量に対して1質量%のトルエン(和光純薬工業社製、試薬特級)を希釈溶液に加えて、サンプル溶液を調製した。得られたサンプル溶液を用いて、Agilent Technologies社製6850 Series II(検出器:FID)を用いて、上述した条件にてGC測定を行った。得られたクロマトグラムから、上述した方法にて面積割合ARを求めた。なお、シクロヘキサノールの保持時間は、シクロヘキサノール(和光純薬工業社製、試薬特級)を測定して確認した。
【0059】
<貯蔵安定性評価>
後述する実施例および比較例にて製造した含フッ素重合体組成物を密閉容器に入れ、70℃設定のオーブンで2週間加温した。加温前後の含フッ素重合体のMwの変化率を評価した。
Mw変化率=(加温後のMw)/(加温前のMw)
なお、Mwの測定は、装置:東ソー製EcoSEC HLC−8320GPCを用い、Mwを評価するためのサンプル溶液としては、含フッ素重合体組成物をテトラヒドロフランで希釈し、含フッ素重合体の濃度を1質量%に調製したサンプル溶液を用いた。
【0060】
<CHVE>
以下の実施例および比較例にて、以下の表1に記載のCHVE1〜3を用いた。なお、表1中の「シクロヘキサノールよりも低沸点の化合物の面積率(%)」欄は、各CHVEを用いて上述したGC測定を行って得られた、ガスクロマトグラム中の全てのピークのピーク面積の総和に対する、シクロヘキサノールの保持時間よりも短時間側に現れる成分由来のピークのピーク面積の総和の割合(面積率)を表す。この面積率が低いほど、シクロヘキサノールよりも低沸点な成分の割合が少ないことを意味する。
なお、CHVE3は市場流通品であり、CHVE1はCHVE3を蒸留処理して得られたCHVE(蒸留収率70%)であり、CHVE2はCHVE3を蒸留処理して得られたCHVE(蒸留収率90%)である。
【0061】
【表1】
【0062】
(実施例1)
攪拌機付きステンレス鋼製耐圧反応器(内容積2500mL)に、キシレン(587g)、エタノール(168g)、エチルビニルエーテル(EVE)(206g)、4−ヒドロキシビニルエーテル(HBVE)(129g)、シクロヘキシルビニルエーテル1(CHVE1)(208g)、炭酸カリウム(11g)、およびtert−ブチルパーオキシピバレート(PBPV)(3.5g)を仕込み、窒素による加圧・パージおよび脱気により液中の溶存酸素を除去した。
次いで、クロロトリフルオロエチレン(CTFE)(660g)を導入して徐々に昇温し、温度65℃に維持しながら反応を続けた。12時間後に反応器を水冷して反応を停止した。この反応液を室温まで冷却した後、未反応単量体をパージし、反応器を開放した。
得られた反応液を粘調用濾紙No.63を装着した加圧濾過器へ移液し、圧力0.05MPaにて炭酸カリウムを濾別した後、ハイドロキノンモノメチルエーテル(HQMME)を0.1g添加した。次いで、減圧蒸留装置によって、65℃、45Torrの減圧加熱下、反応液におけるエタノールを留去した。次いで、濾過面積に対し0.06g/cm
2の珪藻土(中間粒度30.1μm)を反応液に添加し、混合撹拌した後、粘調用濾紙No.63を装着した加圧濾過器へ移液し、圧力0.02MPaにて2度濾過して珪藻土を濾別して、含フッ素重合体組成物P1を得た。
その後、含フッ素重合体組成物P1中の含フッ素重合体の質量濃度が60質量%になるよう濃度調整を行い、含フッ素重合体組成物1を得た。
次いで、上述したGC測定で含フッ素重合体組成物1を分析した結果、面積割合ARは0.8%であることを確認した。
【0063】
(実施例2)
CHVE1の代わりにCHVE2を用いた以外は実施例1と同様の手順に従って、含フッ素重合体組成物2を得た。
次いで、上述したGC測定で含フッ素重合体組成物2を分析した結果、面積割合ARは3.0%であることを確認した。
【0064】
(実施例3)
攪拌機付きステンレス鋼製耐圧反応器(内容積2500mL)に、キシレン(587g)、エタノール(168g)、EVE(206g)、HBVE(129g)、CHVE2(208g)、炭酸カリウム(11g)およびPBPV(3.5g)を仕込み、窒素による加圧・パージおよび脱気により液中の溶存酸素を除去した。
次いで、CTFE(660g)を導入して徐々に昇温し、温度65℃に維持しながら反応を続けた。12時間後に反応器を水冷して反応を停止した。この反応液を室温まで冷却した後、未反応単量体をパージし、反応器を開放した。
得られた反応液を粘調用濾紙No.63を装着した加圧濾過器へ移液し、圧力0.05MPaにて炭酸カリウムを濾別した後、HQMMEを0.1g添加した。次いで、減圧蒸留装置によって、65℃、15Torrの減圧加熱下、反応液におけるエタノールを留去した。次いで、濾過面積に対し0.06g/cm
2の珪藻土(中間粒度30.1μm)を反応液に添加し、混合撹拌した後、粘調用濾紙No.63を装着した加圧濾過器へ移液し、圧力0.02MPaにて2度濾過して珪藻土を濾別して、含フッ素重合体組成物P3を得た。
その後、含フッ素重合体組成物P3中の含フッ素重合体の質量濃度が60質量%になるよう濃度調整を行い、含フッ素重合体組成物3を得た。
次いで、上述したGC測定で含フッ素重合体組成物3を分析した結果、面積割合ARは1.3%であることを確認した。
【0065】
(比較例1)
CHVE1の代わりにCHVE3を用いた以外は実施例1と同様の手順に従って、含フッ素重合体組成物4を得た。
次いで、上述したガスクロマトグラフィー測定で含フッ素重合体組成物4を分析した結果、面積割合ARは5.0%であることを確認した。
【0066】
前記各実施例および比較例で得られた含フッ素重合体組成物を用いて、上述した貯蔵安定性評価を実施した。結果を以下の表2にまとめて示す。
【0067】
【表2】
【0068】
表2に示すように、所定の面積割合ARを示す本組成物は、貯蔵安定性に優れることが確認された。
なお、2016年07月14日に出願された日本特許出願2016−139553号の明細書、特許請求の範囲および要約書の全内容をここに引用し、本発明の明細書の開示として、取り入れるものである。