特許第6927259号(P6927259)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6927259吸着材、カラム、精製装置及び吸着材の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6927259
(24)【登録日】2021年8月10日
(45)【発行日】2021年8月25日
(54)【発明の名称】吸着材、カラム、精製装置及び吸着材の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B01J 20/26 20060101AFI20210812BHJP
   B01J 20/281 20060101ALI20210812BHJP
   B01J 20/28 20060101ALI20210812BHJP
   B01J 20/30 20060101ALI20210812BHJP
   B01D 15/38 20060101ALI20210812BHJP
   B01J 20/285 20060101ALI20210812BHJP
   A61K 39/395 20060101ALN20210812BHJP
【FI】
   B01J20/26 H
   B01J20/26 L
   B01J20/28 Z
   B01J20/30
   B01D15/38
   B01J20/281 X
   B01J20/281 R
   B01J20/285 S
   B01J20/285 M
   B01J20/281 G
   !A61K39/395 H
   !A61K39/395 A
【請求項の数】7
【全頁数】23
(21)【出願番号】特願2019-159875(P2019-159875)
(22)【出願日】2019年9月2日
(65)【公開番号】特開2021-37459(P2021-37459A)
(43)【公開日】2021年3月11日
【審査請求日】2020年3月18日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004455
【氏名又は名称】昭和電工マテリアルズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】特許業務法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】山下 七重
(72)【発明者】
【氏名】丸山 優史
【審査官】 瀧 恭子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2019−058885(JP,A)
【文献】 特開昭63−077457(JP,A)
【文献】 国際公開第2018/037742(WO,A1)
【文献】 特表平10−500615(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 20/00−20/34
B01D 15/00−15/42
A61K 39/00−51/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
担体と、
標的物質を吸着する吸着部位及び前記吸着部位が導入されるアミノ基を含むとともに、前記担体に固定化された刺激応答性高分子と、
を含む吸着材であり、
前記担体は、誘電率の異なるオクタノール及びエタノールに分散させた際、それぞれの溶媒に対する前記担体の分散性を示す評価値から算出される指標Aが0以上1.0以下であり
記刺激応答性高分子は、分配係数CLogPが−0.46以上1.3以下であり、
前記指標Aは、前記オクタノール及び前記エタノールのそれぞれの溶媒に前記担体を分散させた分散液をシャーレに展開し、室温で10分静置した後、光学顕微鏡で撮像し得られた画像中の凝集体部分を黒色に、その他を白色に処理する二値化処理を行い、前記黒色で得られた凝集体部分の長さを1つの前記担体の直径で割った値をφとし、当該φの値に従って、評価値5:φ=0.2μm以上8.3μm未満、評価値4:φ=8.3μm以上17μm未満、評価値3:φ=17μm以上27μm未満、評価値2:φ=27μm以上40μm未満、評価値1:φ=40μm以上と評価し、これを1つのサンプルにつき5箇所の前記画像から得られた値の平均値を採用したものであり、さらに、これを1つのサンプルに対して2回繰り返して求めた平均値であって、前記オクタノールに分散させたときの評価値から、前記エタノールに分散させたときの評価値を差し引いた値を指標値とするものであり、
前記担体は、合成樹脂で形成されており、
前記吸着部位は、ベンゾチアゾール−2−酢酸、4−メルカプトベンゾチアゾール−2−酢酸エチル、5−メルカプトベンゾチアゾール−2−酢酸エチル、2−メルカプトチアゾール、3−(ベンゾチアゾール−2−イルチオ)プロパン−1−スルホン酸ナトリウム、2−メルカプト−6−ニトロベンゾチアゾール、3−(2−ベンゾチアゾリルチオ)プロピオン酸、2−メルカプト−1,3,4−チアジアゾール、N−メチル−2−メルカプトイミダゾール、ピリジルチオ酢酸、2−ベンゾチアゾリルチオ酢酸のうちから選択される少なくとも1種が、前記アミノ基にアミド結合したものである
ことを特徴とする吸着材。
【請求項2】
請求項1に記載の吸着材において、
前記担体が、ポリメタクリレート、ポリスチレン、ポリアクリルアミド、アクリルの群から選択される一種以上であることを特徴とする吸着材。
【請求項3】
請求項1に記載の吸着材において、
前記刺激応答性高分子が、前記吸着部位を複数個有するとともにアミノ基を複数個有することを特徴とする吸着材。
【請求項4】
請求項1に記載の吸着材において、
前記担体の平均粒子径が3μm以上100μm以下であることを特徴とする吸着材。
【請求項5】
請求項1から請求項のいずれか1項に記載の吸着材が充填されていることを特徴とするカラム。
【請求項6】
請求項1から請求項のいずれか1項に記載の吸着材が充填されたカラムを備えていることを特徴とする精製装置。
【請求項7】
請求項1から請求項のいずれか1項に記載の吸着材を製造する製造方法であり、
誘電率の異なるオクタノール及びエタノールに分散させた際、それぞれの溶媒に対する分散性を示す評価値から算出される指標Aが0以上1.0以下である担体に、分配係数CLogPが−0.46以上1.3以下である刺激応答性高分子を固定させるものであり、
前記刺激応答性高分子は、標的物質を吸着する吸着部位及び前記吸着部位が導入されるアミノ基を含むとともに、前記担体に固定化されており、
前記指標Aは、前記オクタノール及び前記エタノールのそれぞれの溶媒に前記担体を分散させた分散液をシャーレに展開し、室温で10分静置した後、光学顕微鏡で撮像し得られた画像中の凝集体部分を黒色に、その他を白色に処理する二値化処理を行い、前記黒色で得られた凝集体部分の長さを1つの前記担体の直径で割った値をφとし、当該φの値に従って、評価値5:φ=0.2μm以上8.3μm未満、評価値4:φ=8.3μm以上17μm未満、評価値3:φ=17μm以上27μm未満、評価値2:φ=27μm以上40μm未満、評価値1:φ=40μm以上と評価し、これを1つのサンプルにつき5箇所の前記画像から得られた値の平均値を採用したものであり、さらに、これを1つのサンプルに対して2回繰り返して求めた平均値であって、前記オクタノールに分散させたときの評価値から、前記エタノールに分散させたときの評価値を差し引いた値を指標値とするものであり、
前記担体は、合成樹脂で形成されており、
前記吸着部位は、ベンゾチアゾール−2−酢酸、4−メルカプトベンゾチアゾール−2−酢酸エチル、5−メルカプトベンゾチアゾール−2−酢酸エチル、2−メルカプトチアゾール、3−(ベンゾチアゾール−2−イルチオ)プロパン−1−スルホン酸ナトリウム、2−メルカプト−6−ニトロベンゾチアゾール、3−(2−ベンゾチアゾリルチオ)プロピオン酸、2−メルカプト−1,3,4−チアジアゾール、N−メチル−2−メルカプトイミダゾール、ピリジルチオ酢酸、2−ベンゾチアゾリルチオ酢酸のうちから選択される少なくとも1種が、前記アミノ基にアミド結合したものである
ことを特徴とする吸着材の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、標的物質の精製に使用される吸着材、カラム、精製装置及び吸着材の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
タンパク質や抗体のような生体分子を標的物質としたアフィニティ精製は、アフィニティ吸着材(以下、単に「吸着材」ということがある)への標的物質の吸着、非吸着成分の洗浄、溶離液による標的物質の吸着材からの回収を経て行われる。吸着材は、多糖類や樹脂、無機酸化物などからなる担体の表面上に、標的物質と相互作用を示す吸着部位を固定化することで構成されている。特に、抗体と特異的に吸着する低分子量の化合物(低分子化合物)を吸着部位として用いた吸着材は、プロテインAなどのタンパク質を用いた吸着材と比較して吸着材自身が低コストであること、及び化学薬品耐性が高く強アルカリ洗浄等の工程で吸着部位の劣化を低減できることから広く注目されている。
【0003】
そのような吸着材が、例えば、特許文献1や非特許文献1〜3に記載されている。
具体的に、特許文献1には、免疫グロブリンを選択的に吸着するのに用いるシュドバイオアフィニティクロマトグラフィ吸着剤(吸着材に相当)であって、(a)固形支持材料、及び(b)この固形支持材料の表面に固定されたリガンド(吸着部位に相当)を含んでなり、前記リガンドが所定の化学構造のメルカプト五員複素環を有する化合物であることを特徴とするシュドバイオアフィニティクロマトグラフィ吸着剤が記載されている。
【0004】
また、非特許文献1〜3には、吸着材にチオフィリック(thiophilic)なリガンドを用いたクロマトグラフィによる抗体精製などについて報告されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特表平10−500615号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】E. Boschetti et al., J. Biochem. Biophys. Methods, 2001, 49, pp.361-389.
【非特許文献2】A. Schwarz et al., React. Polym., 1995, 22, pp.259-266.
【非特許文献3】P. Kumplume et al., J. Chromato. A, 2004, 1022, pp.41-50.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1や非特許文献1〜3に記載されているような低分子化合物をリガンドとして用いる吸着材は、担体と低分子化合物とを繋ぐリンカー分子によって吸着材としての機能が大きく左右される。そのため、低分子化合物には、用いることのできる担体が限られているという問題がある。また、低分子化合物をリガンドとして用いる吸着材は、担体の界面性質によって大きな影響を受けるのでリガンドの配向制御が困難であり、抗体などの標的物質の吸着容量を高くするのが困難であるという問題がある。なお、本明細書において、担体の界面性質とは、親水性・疎水性などの表面性質をいう。
【0008】
本発明はこのような状況に鑑みてなされたものであり、吸着部位として低分子化合物を用いることができるとともに、従来よりも多くの種類の担体を用いることができ、かつ、標的物質の吸着容量が高い吸着材、カラム、精製装置及び吸着材の製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは前記課題を解決するため鋭意研究開発したところ、1分子の高分子鎖に対する吸着部位(低分子化合物)の導入量を制御することで刺激応答性高分子全体の親水性・疎水性のバランスを制御しつつこれを所定の指標を満たす担体上へ固定化することによって標的物質の吸着容量を高くできることを見出し、本発明を完成するに至った。つまり、本発明は、刺激応答性高分子のある特定の条件範囲と、様々な界面性質を有する担体とを組み合わせることで、標的物質を含有する溶液から標的物質を極めて多く吸着することのできる吸着材を見出し、本発明を完成するに至ったものである。
【0010】
前記課題を解決した本発明に係る吸着材は、担体と、標的物質を吸着する吸着部位及び前記吸着部位が導入されるアミノ基を含むとともに、前記担体に固定化された刺激応答性高分子と、を含む吸着材であり、前記担体は、誘電率の異なるオクタノール及びエタノールに分散させた際、それぞれの溶媒に対する前記担体の分散性を示す評価値から算出される指標Aが0以上1.0以下であり、前記刺激応答性高分子は、分配係数CLogPが−0.46以上1.3以下であり、前記指標Aは、前記オクタノール及び前記エタノールのそれぞれの溶媒に前記担体を分散させた分散液をシャーレに展開し、室温で10分静置した後、光学顕微鏡で撮像し得られた画像中の凝集体部分を黒色に、その他を白色に処理する二値化処理を行い、前記黒色で得られた凝集体部分の長さを1つの前記担体の直径で割った値をφとし、当該φの値に従って、評価値5:φ=0.2μm以上8.3μm未満、評価値4:φ=8.3μm以上17μm未満、評価値3:φ=17μm以上27μm未満、評価値2:φ=27μm以上40μm未満、評価値1:φ=40μm以上と評価し、これを1つのサンプルにつき5箇所の前記画像から得られた値の平均値を採用したものであり、さらに、これを1つのサンプルに対して2回繰り返して求めた平均値であって、前記オクタノールに分散させたときの評価値から、前記エタノールに分散させたときの評価値を差し引いた値を指標値とするものであり、前記担体は、合成樹脂で形成されており、前記吸着部位は、ベンゾチアゾール−2−酢酸、4−メルカプトベンゾチアゾール−2−酢酸エチル、5−メルカプトベンゾチアゾール−2−酢酸エチル、2−メルカプトチアゾール、3−(ベンゾチアゾール−2−イルチオ)プロパン−1−スルホン酸ナトリウム、2−メルカプト−6−ニトロベンゾチアゾール、3−(2−ベンゾチアゾリルチオ)プロピオン酸、2−メルカプト−1,3,4−チアジアゾール、N−メチル−2−メルカプトイミダゾール、ピリジルチオ酢酸、2−ベンゾチアゾリルチオ酢酸のうちから選択される少なくとも1種が、前記アミノ基にアミド結合したものであることとしている。なお、刺激応答性高分子とは、吸着部位を高分子鎖に導入した構造体をいう。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、吸着部位として低分子化合物を用いることができるとともに、従来よりも多くの種類の担体を用いることができ、かつ、標的物質の吸着容量が高い吸着材、カラム、精製装置及び吸着材の製造方法を提供できる。
前記した以外の課題、構成及び効果は以下の実施形態の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本実施形態に係る吸着材の構成を説明する概略図である。
図2】本実施形態に係るカラムの構成を説明する概略図である。
図3】本実施形態に係る精製装置の構成を説明する概略図である。
図4】実施例1〜9及び比較例1〜3に係る各吸着材における指標Aと10%DBCとの関係を示すグラフである。なお、横軸は指標Aを示し、縦軸は10%DBC(mg/mL)を示す。なお、DBCとは、動的吸着容量をいう。同図中、実施例を「■」でプロットし、比較例を「○」でプロットしている。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、適宜図面を参照して本発明に係る吸着材、カラム、精製装置及び吸着材の製造方法の一実施形態について詳細に説明する。
なお、本明細書に記載される「〜」は、その前後に記載される数値を下限値及び上限値として有する意味で使用する。本明細書に段階的に記載されている数値範囲において、一つの数値範囲で記載された下限値又は上限値は、他の段階的に記載されている下限値又は上限値に置き換えてもよい。本明細書に記載される数値範囲の下限値又は上限値は、実施例中に示されている値に置き換えてもよい。
【0014】
本明細書で説明している各要素は、各要素を構成する材料群の中から選択された材料を単独で又は複数組み合わせて使用してもよい。また、本明細書で説明している各要素や材料は、本明細書で記載した材料のみで構成されていてもよく、本発明の効果を損なわない範囲で本明細書に記載していない他の材料を有していてもよい。
【0015】
<吸着材1>
図1は、本実施形態に係る吸着材1の構成を説明する概略図である。
図1に示すように、吸着材1は、担体2と、標的物質Oを吸着する吸着部位3を含むとともに、前記担体2に固定化された刺激応答性高分子4と、を含んでいる。刺激応答性高分子4は、高分子鎖5を備えており、当該高分子鎖5に吸着部位3を複数導入するとともに、刺激応答性高分子4全体の親水性・疎水性のバランスを制御する官能基Rが導入されている。
【0016】
標的物質Oとしては、例えば、生理活性物質や工業的に有用なタンパク質などが挙げられる。生理活性物質としては、特に、抗体(抗体分子・抗体タンパク質)が挙げられる。本実施形態における抗体とは、ガンマグロブリン及び免疫グロブリンのことをいうが、特に、医薬品としてヒトに対して投与可能なもの、又は分析試薬に導入するようなヒトに対して投与しないもののいずれも含まれる。医薬品として適用できる抗体は、クラスやサブクラスに限定されない。例えば、定常領域の構造が異なるIgG、IgM、IgA、IgD、IgEの5種類が挙げられるが、各免疫グロブリンのいずれであってもよい。ヒト抗体においては、IgG1〜IgG4の4つのサブクラスがあり、またIgAにおいてもIgA1、IgA2と2つのサブクラスがあるが本実施形態では特に限定されない。さらに、抗体は、由来や製造方法によっても分類することができ、天然のヒト抗体や遺伝子組み換え技術により生産された組み換えヒト抗体、あるいはモノクローナル抗体やポリクローナル抗体のいずれであってもよい。特にこれらの抗体の中でも、医薬品原料として重要性が最も大きいヒトIgGへの適用が有意義である。また、抗体は、ヒト化抗体、ヒトIgGとのキメラなどであってもよい。なお、ヒト化抗体とは可変領域のうち、相補性決定領域がヒト以外の生物由来で、その他のフレームワーク領域をヒト由来にしたものをいう。ヒトIgGとのキメラとは、可変領域はマウスなどのヒト以外の生物由来であるが、その他の定常領域をヒト由来の免疫グロブリンに置換したものをいう。なお、生理活性物質は抗体に限定されるものではなく、生物に対して生理作用や薬理作用を発現する物質単体及び化合物群であればどのようなものも含まれる。生物に対して生理作用や薬理作用を発現する物質単体及び化合物群としては、例えば、アルカロイド、サイトカイン、植物ホルモン、神経伝達物質、フェロモン、ホルモン(動物のホルモン)などのほか、成長因子、成長調節因子、成長阻害因子などが挙げられる。生物に対して生理作用や薬理作用を発現する物質単体及び化合物群の一例として、例えば、血栓溶解剤として利用される組織型プラスミノーゲン活性化因子やインスリンなどのバイオ医薬品が挙げられる。また、工業的に有用なタンパク質としては、例えば、酸化還元酵素、転移酵素、加水分解酵素、除去付加酵素、異性化酵素、合成酵素などが挙げられる。さらに、標的物質Oとしては、例えば、β−カロテンやアスタキサンチンなどのカロチノイド、クロロフィルやバクテリオクロロフィルなどの色素、食品又は化粧品などの着色などに使用されるフィコシアニンなどのフィコビリンタンパク質、脂肪酸などの生理活性物質が挙げられる。
【0017】
医薬品などの抗体は、例えば、原料となる抗体を細胞培養によって産生する産生工程、培養時に含まれる複数の夾雑物の中から抗体を選択的に回収し純度を高める精製工程、そしてウイルスを除去するウイルス除去工程、ウイルスを除去した抗体を含む溶液を濃縮したり、緩衝液を交換したりする濃縮・液交換工程、適宜の薬剤形態に製剤する製剤化工程などを経て製造される。前記フローは一般的な工程として知られているものであり、これに限定されない。
【0018】
前記工程の中で、本実施形態に係る吸着材1は特に精製工程で用いられる。吸着材1の役割は、溶液中に含まれている抗体と夾雑物とを分けて抗体を精製して回収することにある。精製工程の一例として、アフィニティクロマトグラフィを用いた初期精製、その後イオン交換体を用いた中期、後期精製工程などがあるが、これらに限定されるものではない。なお、以下の説明において、本実施形態に係る吸着材1を用いる精製工程(初期工程)に投入する直前の溶液を抗体含有溶液ということがある。
【0019】
吸着材1について説明を続ける。
担体2は、多孔質及び非多孔質のいずれであってもよい。担体2の態様としては、例えば、板状、ビーズ(粒子)状、不織布や織物などの繊維状、膜状、モノリス状、中空糸状などが挙げられる。また、担体2は、コアシェル構造のものであってもよい。
【0020】
担体2は、例えば、多糖類、合成樹脂、無機化合物及びそれらの複合材料を含む材料で形成されたものであってよい。多糖類は、架橋された多糖類であってもよい。多糖類又は架橋された多糖類としては、例えば、アガロース、架橋アガロース、疎水化アガロース、セルロースなどが挙げられる。合成樹脂としては、例えば、アクリル樹脂(例えば、ポリアルキルアクリレート、ポリアルキルメタクリレート、ポリグリシジルアクリレート、ポリグリシジルメタクリレートなど)、ポリスチレン、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリアクリルアミド、ポリシロキサン、ポリフッ化エチレンなどが挙げられる。無機化合物としては、例えば、シリカ、金属酸化物(例えば、アルミナ、チタニア、ジルコニア、酸化鉄など)、フェライト、ハイドロキシアパタイト、シリケートなどが挙げられる。担体2は、多糖類、架橋された多糖類、合成樹脂、シリカ又は金属酸化物を有することが好ましく、多糖類又は架橋された多糖類を有することがより好ましい。なお、担体2は、これらの材料を少なくとも担体2の表面に有していればよい。すなわち、担体2の表面が、多糖類、架橋された多糖類、合成樹脂、シリカ又は金属酸化物、好ましくは多糖類又は架橋された多糖類を有するコアシェル構造のものであってもよい。よって、担体2又は担体2の表面が、多糖類、架橋された多糖類、合成樹脂、シリカ又は金属酸化物を有するものが好ましく、多糖類又は架橋された多糖類を有するものがより好ましい。
【0021】
また、担体2の表面は、カルボキシル基、アミノ基、水酸基、エポキシ基、エステル基などの反応性基によって修飾されていてもよい。刺激応答性高分子4をより多く導入できるという観点、すなわち吸着部位3をより多く導入できるという観点から、担体2の表面はカルボキシル基によって修飾されていることが好ましい。
【0022】
担体2の平均粒子径は、3μm以上100μm以下であることが好ましい。このようにすると、担体2の表面積が十分得られるので、動的吸着容量(DBC)がより増大化する。なお、DBCとは、標的物質Oが流れている状態で、標的物質Oがどれだけ吸着材1に吸着されるか(吸着材1の結合容量)を表す指標をいい、単位体積当たりの吸着量(例えば、「mg/mL」)で表すことができる。
【0023】
平均粒子径は、例えば、JIS Z 8815に準拠した手法で測定できる。また、平均粒子径は、例えば、振動式ふるい分け装置やレーザー回折式粒度分布測定装置、光子相関法式粒度分布測定装置で測定できる。担体が、例えば、ポリスチレンの場合は振動式ふるい分け装置で測定でき、Sepharose(登録商標)の場合はレーザー回折式粒度分布測定で測定でき、磁性微粒子の場合は光子相関法式粒度分布測定装置で測定できる。さらに、平均粒子径が40μm〜数mmであるものは振動式ふるい分け装置で測定でき、100〜1000μmであるものはレーザー回折式粒度分布測定装置で測定できる。
【0024】
本実施形態における吸着部位3は、低分子化合物に由来する部位である。吸着部位3は、例えば、標的物質Oが抗体であって、これを精製するカラムがアフィニティカラムであるときにおけるリガンドに相当する。
【0025】
吸着部位3は、例えば、アミド結合などの任意の化学結合を介して高分子鎖5の側鎖に導入されている。吸着部位3を導入するために用いられる化合物は、高分子鎖5の官能基R(例えば、アミノ基など)と結合可能な部分を有するものであれば特に限定されない。このような化合物としては、例えば、アミド結合を形成するためのカルボキシル基、アズラクトン基、イミダゾール基、シアノエステル基、エポキシ基、アセチル基、アセトキシ基、アクリロイル基、アルコキシ基を有する化合物が挙げられる。また、このような化合物としては、例えば、カルボン酸無水物、カルボン酸ハロゲン化物、尿素結合を形成するためのイソシアネート基を有する化合物、チオ尿素結合を形成するためのイソチオシアネート基を有する化合物、スルホンアミド結合を形成するための塩化スルホニル基を有する化合物、アミドエステル結合を形成するためのオキサゾリン基を有する化合物などが挙げられる。
【0026】
吸着部位3を導入するために用いられる化合物として、具体的には、メルカプトイミダゾール、メルカプトベンゾチアゾール、メルカプトテトラゾール、メルカプトチアジアゾールなどが挙げられる。より具体的には、ベンゾチアゾール−2−酢酸、4−メルカプトベンゾチアゾール−2−酢酸エチル、5−メルカプトベンゾチアゾール−2−酢酸エチル、2−メルカプトチアゾール、3−(ベンゾチアゾール−2−イルチオ)プロパン−1−スルホン酸ナトリウム、2−メルカプト−6−ニトロベンゾチアゾール、3−(2−ベンゾチアゾリルチオ)プロピオン酸、2−メルカプト−1,3,4−チアジアゾール、N−メチル−2−メルカプトイミダゾール、ピリジルチオ酢酸(例えば、2−ピリジルチオ酢酸、4−ピリジルチオ酢酸)、2−ベンゾチアゾリルチオ酢酸などが挙げられる。
【0027】
刺激応答性高分子4における吸着部位3の導入量は、複数のアミノ基などの官能基Rを有する高分子鎖5中に含まれる官能基数に対して5%以上であれば十分であり、最大95%程度導入できる。なお、吸着材1の高い抗体吸着特性の観点から、好ましくは7%以上である。単量体を重合させて高分子鎖5を形成する場合、単量体が有している吸着部位3を導入可能な官能基Rを把握しておけば、高分子鎖5中の官能基数も容易に把握することができる。従って、例えば、1分子の高分子鎖5が、吸着部位3を導入可能な官能基Rを30個有している場合、吸着部位3の導入量は、そのうちの5%〜95%(官能基数1.5個〜28.5個)とすることができる。すなわち、本実施形態において、刺激応答性高分子4は、吸着部位3を複数個有するとともに官能基Rを複数個有していることが好ましい。このようにすると、刺激応答性高分子4全体の親水性・疎水性のバランスがより制御し易くなり、DBCをより増大化することができる。
【0028】
本実施形態において、吸着材1における吸着部位3の導入量は、H−NMRで1分子あたりの刺激応答性高分子4内に導入された吸着部位3の導入率を求め、その後、担体2上に固定化した刺激応答性高分子4の量を同定することによって求められる。すなわち、吸着材1における吸着部位3の導入量は、担体2上に固定化した刺激応答性高分子4について、1分子当たりの吸着部位導入率(量)と1mLの担体2上に固定化された刺激応答性高分子4の量との積によって求められる。
【0029】
担体2上に固定化した刺激応答性高分子4の量の同定は次のようにして行う。まず、担体2に縮合剤と刺激応答性高分子4を溶解させた溶液を接触させ、固定化反応を行う。その後、溶媒で複数回洗浄し、回収してきた上澄み溶液中の吸着部位3を含む溶液を高速液体クロマトグラフィで分析する。仕込時の刺激応答性高分子4から、洗浄時に溶出した吸着部位3の量を差し引くことで担体2上に固定化された刺激応答性高分子4の量を見積もることができる。
【0030】
また、刺激応答性高分子4は、複数の官能基Rを有する高分子鎖5と、吸着部位3を導入するための化合物を、高分子鎖5:吸着部位3を導入するための化合物が、1:0.01〜10のモル比で、好ましくは1:0.1〜5のモル比で、より好ましくは1:0.1〜2のモル比で反応させることで得られる。
【0031】
官能基Rは、任意の水溶液中や緩衝液中で正の電荷を帯びるもの又は負の電荷を帯びるものを適宜選択して用いることができる。官能基Rが帯びる電荷の価数は1〜3であればよい。つまり、このような官能基Rを備える刺激応答性高分子4は、イオン性高分子であるため、強酸などを用いることなく標的物質Oの回収が可能である。
【0032】
官能基Rは、刺激応答性高分子4全体の親水性・疎水性のバランスを制御できればよく、特に限定されない。従って、官能基Rとしては、例えば、アミノ基、イミノ基、各種含窒素芳香族基(ピロール基、イミダゾリル基、ピリジル基、ピリミジル基、オキサゾリル基、チアゾリル基及びトリアゾリル基等)、グアニジル基、フェノール性水酸基、ヒドロキシ基、アルデヒド基、カルボニル基、カルボキシル基、アゾ基、ニトロ基、ニトロソ基、チオール基、スルホ基、エーテル基、ボロン酸基、フルオロ基、クロロ基、ブロモ基、ヨード基、ホスホリル基、ホスフィニル基、シリケート基、リン酸基及びそれらの誘導体の基などを挙げることができる。官能基Rは、これらのうちの1種類のみを用いてもよいし、複数種を組み合わせて用いてもよい。なお、官能基Rとしては、これらの中でもアミノ基を好適に用いることができる。すなわち、高分子鎖5はアミノ基を複数有するポリアミンを好適に用いることができる。
【0033】
また、官能基Rは、標的物質Oと水素結合を形成できるものであってもよい。このようにすると、標的物質Oの選択性を向上できるため、高い分離能が得られる。そのような官能基Rとしては、例えば、スルホ基、カルボキシル基、水酸基、アミノ基などが挙げられる。
【0034】
高分子鎖5は、デンドリマーであってもよい。高分子鎖5としては、例えば、ポリリジン(α−ポリリジン、ε−ポリリジン)、ポリエチレンイミン(直鎖ポリエチレンイミン、分岐ポリエチレンイミン)、ポリアリルアミン、ポリビニルアミン並びにそれらを部分構造として有する誘導体及び共重合体などが挙げられるが、ε−ポリリジン、ポリエチレンイミン、ポリアリルアミン又はそれらを部分構造として含むものが好ましく、より多くの吸着部位3を導入できるという観点から、ε−ポリリジンがより好ましい。
【0035】
高分子鎖5の重量平均分子量は1000〜100000であることが好ましく、1000〜6000であることがより好ましい。本実施形態における高分子鎖5の重量平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィによって測定したものをいう。
【0036】
高分子鎖5と吸着部位3の組合せとしては、吸着材1の高い標的物質吸着特性の観点から、ε−ポリリジン、ポリエチレンイミン又はポリアリルアミンと前記した吸着部位3との各組合せが好ましい。
【0037】
高分子鎖5への吸着部位3の導入は、高分子鎖5を担体2に固定化する前及び後のいずれで行ってもよい。すなわち、吸着部位3を高分子鎖5に導入し、その後、吸着部位3が導入された高分子鎖5を担体2に固定化してもよく、吸着部位3を有さない高分子鎖5を担体2に固定化した後に、固定化した高分子鎖5に吸着部位3を導入してもよい。
【0038】
次に、DBCの増大化が認められる刺激応答性高分子4の分配係数CLogPの条件について述べる。なお、本実施形態において分配係数CLogPとは、LogPの予測値の一つであり、コンピュータで計算することができる。分配係数CLogPは、これを計算できる機能を有するソフトウェアを使用することによって算出できる。そのようなソフトウェアとしては、化学構造式作画ソフトウェアが挙げられる。そして、そのような化学構造式作画ソフトウェアとして、例えば、ChemDrawが挙げられる。また、前記したLogPとは、化合物の疎水性、脂溶性を規定する無次元数の指標をいう。LogPは実験値であり、例えば、n−オクタノールと水を用いた分配係数を用いることができる。
【0039】
本実施形態では前記したように、低分子化合物を吸着部位3とする刺激応答性高分子4を用いる。そして、本実施形態ではそのような刺激応答性高分子4を用いてDBCを増大させるため、刺激応答性高分子4の疎水度合いを示す分配係数CLogPが−0.46以上1.3以下であることを要する。このようにすると、分配係数CLogPがこの数値範囲内にある刺激応答性高分子4を担体2に固定化する際、後記する指標Aを満たす種々の担体2に対してより最適な刺激応答性高分子4との組み合わせを行うことができ、DBCが大幅に向上する。
【0040】
本実施形態における刺激応答性高分子4の分配係数CLogPは、高分子鎖5と吸着部位3の化学構造式からそれぞれの分配係数CLogPを求め、1分子の高分子鎖5当たりの吸着部位導入量を変化させ、平均値を刺激応答性高分子4の分配係数CLogPとするとよい。なお、分配係数CLogPの値が大きいほど、刺激応答性高分子4がより疎水的な性質を示し、分配係数CLogPが小さいほど、より親水的な性質を示す。
【0041】
次に、DBCの増大化が認められる担体2の条件について述べる。本実施形態では、低分子化合物を吸着部位3とする刺激応答性高分子4を用いる。そして、本実施形態ではそのような刺激応答性高分子4を用いてDBCを増大させるため、担体2の溶媒に対する分散性を示す後記する指標Aが1.0以下であることを要する。このように、指標Aが1.0以下である担体2と、前記した分配係数CLogPが−0.46以上1.3以下である刺激応答性高分子4との組み合わせによりDBCが大幅に向上する。下記に、指標Aの算出方法を具体的に記載する。
【0042】
まず、誘電率の異なる有機溶媒相として、エタノール(誘電率ε:24.3ファラド毎メートル(F/m))及びオクタノール(誘電率ε:10.3F/m)を用意する。各溶媒へ担体2をそれぞれ分散させ、担体2と溶媒が混合するよう攪拌する。この際、担体2が溶媒中に充分分散するよう留意する。そして、各種担体2の分散液3mLをガラス製シャーレ(長径=35mm)に展開し、室温で10分静置する。その後、光学顕微鏡の倍率20倍のレンズで各種担体2に焦点を合わせ、1サンプルにつき5箇所撮像する。得られた像(20mm×27mm)の視野中に観測される担体2の凝集体部分を画像ソフトウェア(ImageJ)で二値化処理する。前記画像の凝集体部分を黒色に処理するとともに、その他を白色に処理し、黒色で得られた凝集体部分の長さ、特に長軸の長さを1つの担体2の担体径(直径)で割った値をφと定義する。そして、当該φの値に従って下記評価値1〜5までの5段階で分類する。但し、本実施形態では、担体2の担体径が3〜200μmのものを用いた場合を想定している。φの値は、1つのサンプルにつき5箇所撮像した画像から得られた値の平均値を採用する。さらに、上記の実験を1つのサンプルに対して2回繰り返し、各回について求めた評価値の2回の平均値をその担体2の評価値とする。すなわち、0.5などの値は、中間的な評価値を意味し、例えば、評価値3と評価値4の中間の評価値として3.5が位置づけられる。
【0043】
評価値5:φ=0.2μm以上8.3μm未満(所見:溶媒に対し担体2が安定して良く分散している。)
評価値4:φ=8.3μm以上17μm未満(所見:担体2をよく混合することによって溶媒に対し一部が分散し、小さな凝集体及び孤立した粒子の双方が混在している。)
評価値3:φ=17μm以上27μm未満(所見:溶媒に対し担体2の一部が分散し、小さな凝集体を形成している。)
評価値2:φ=27μm以上40μm未満(所見:溶媒に対し担体2がほとんど分散せず、大きな凝集体を形成している。)
評価値1:φ=40μm以上(所見:溶媒に対し担体2が分散せず、大きな凝集体を形成している。)
【0044】
そして、上記の基準に沿って溶媒に分散させた際の担体2の分散性を次のようにして評価する。なお、検討の結果、オクタノールに分散させたときの評価値から、エタノールに分散させたときの評価値を差し引いた値が、担体2の性質を示す値(前記した指標A)として最適であることが分かった。そこで、誘電率の値が異なるオクタノール(誘電率ε:10.3F/m)及びエタノール(誘電率ε:24.3F/m)に担体2をそれぞれ分散させて求められる評価値(評価値εオクタノール、評価値εエタノールと記載する)から、以下の式(1)に従い、指標Aを定義する。
A=評価値εオクタノール−評価値εエタノール (1)
【0045】
指標Aが1.0以下である担体2に、分配係数CLogPが−0.46以上1.3以下である刺激応答性高分子4を固定化して吸着材1を製造する。そして、一実施形態として、標的物質Oである抗体を精製する場合、吸着材1が充填されたカラム20(図2参照)を用いて実施される。具体的には、カラム20の内部に充填された吸着材1へ抗体含有溶液を通液させ、必要に応じて、非特異的に吸着した成分を洗浄し、その後に溶離液を用いて吸着材1に吸着した抗体を回収することにより精製を行うことができる。通液する抗体含有溶液は、pHが7〜8の範囲であることが好ましい。本実施形態では、刺激応答性高分子4の分散性を示す指標Aが1.0以下になるように制御しているので、刺激応答性高分子4全体の親水性・疎水性のバランスを適切に制御でき、吸着部位3が担体2の表面から離間するように配置される。そのため、標的物質Oが吸着部位3に吸着し易くなり、DBCが向上する。従って、吸着材1を用いると、実際の医薬品製造プロセスや分析試薬製造プロセスなどにおいて生産性を高くすることができる。
【0046】
次に、本実施形態に係る吸着材1について推定される標的物質Oの吸着・脱離メカニズムについて、抗体を例にして説明する。
刺激応答性高分子4の電荷が多い状態では、水中で官能基Rはより電荷を有した状態であり、電荷を有した部位どうしの電荷反発により、刺激応答性高分子4の高分子鎖5は比較的伸長した状態となる。このとき、刺激応答性高分子4に導入されている吸着部位3が疎水性の場合、親水性の刺激応答性高分子4と疎水性の吸着部位3との相互作用は比較的弱いため、吸着部位3は抗体(標的物質O)を吸着する(図1参照)。そして、溶離液が通液されるなどして外部環境の変化により刺激応答性高分子4の電荷が少なくなると、高分子鎖5の疎水性が増大する。そのため、吸着部位3が疎水性の場合、刺激応答性高分子4と吸着部位3の相互作用が強くなる方向に平衡が移動する。その結果、吸着部位3が抗体を吸着する吸着力が弱くなり、抗体が吸着部位3から脱離する。なお、ある条件で刺激応答性高分子4の電荷が少ない状態では、刺激応答性高分子4の高分子鎖5は、電荷反発が小さいため比較的収縮した状態になっている。
【0047】
外部環境の変化は、刺激応答性高分子4の電荷密度及び吸着部位3と抗体との間の相互作用を変化させることができるものであれば特に限定されない。外部環境の変化は、例えば、吸着材1が接触している溶液の塩濃度、誘電率、pH、温度などの変化が挙げられる。外部環境の変化は、例えば、塩濃度が変化すると静電遮蔽効果が変化し、溶媒や溶質の種類の変化により誘電率が変化し、また、pHが変化すると電荷の平衡移動が起こり、これらによって電荷密度が変化する。外部環境の変化は、好ましくは、吸着材1が接触している溶液の塩濃度、温度、誘電率、pHの変化であり、塩濃度の変化及びpHの変化がより好ましい。これらの外部環境の変化を組み合わせてもよい。外部環境の変化により刺激応答性高分子4の電荷密度及び吸着部位3と抗体との間の相互作用が変化し、抗体が吸着又は脱離する。従って、本実施形態に係る吸着材1は、外部環境の変化に応答性の吸着材1であり、例えば、外部環境の変化がpHの変化である場合には、吸着材1はpH応答性吸着材となり、外部環境の変化が塩濃度、誘電率、温度の変化である場合には、それぞれ、塩濃度応答性吸着材、誘電率応答性吸着材、温度応答性吸着材となる。
【0048】
外部環境の変化による刺激応答性高分子4の電荷密度の変化に起因するコンフォメーション変化は、抗体と吸着部位3の相互作用の強さを変化させて、吸着特性を変化させることができる程度の変化であればよい。
特に、中性付近のpHから外部刺激としてpHを上昇させた場合、担体2上の刺激応答性高分子4のコンフォメーションは伸張した形態から、徐々に収縮した形態をとると推測される。この刺激応答性高分子4のコンフォメーション変化が、物理的に抗体を吸着材1から脱離させる一助となる。またpHの変化に伴い、刺激応答性高分子4及び抗体の電荷が変化する。そのため、電荷の効果で刺激応答性高分子4に吸着していた抗体も電荷反発又は電荷の中性化によって刺激応答性高分子4、すなわち吸着材1から脱離すると考えられる。標的物質Oが抗体以外の場合も同様のメカニズムで吸着・脱離すると考えられる。
【0049】
以上から、刺激応答性高分子4中の吸着部位導入量、すなわち官能基量を変化させることで電荷の帯電量をコントロールすることができ、刺激応答性高分子4の親水性・疎水性を制御することができる。前述したように、刺激応答性高分子4の親水性・疎水性を示す指標は分配係数CLogPで表される。
【0050】
一般的に、担体2の分散度を示す指標Aが高い場合では、標的物質Oの界面と吸着部位3との間で相互作用が生じ、抗体の吸着が阻害されることで吸着能が大幅に低減することが知られている。しかし、本実施形態における刺激応答性高分子4は、担体2の界面性質、すなわち分散度を示す指標Aが高い場合においても、刺激応答性高分子4の分配係数CLogPを最適な範囲で適用することで、高効率に抗体を吸着することができる。
【0051】
具体的には、担体2の指標Aが高い場合、例えば、担体2の指標Aが0.5の場合に、分配係数CLogPが0.19程度の低い値の刺激応答性高分子4を組み合わせることで、抗体のDBCを約30mg/mLとすることができる。これは、刺激応答性高分子4中の官能基量が多いため、分子間で電荷が反発し、担体2の界面の影響以上の相互作用で担体2の界面ではなく溶液界面側へ吸着部位3が露出することによって得られるものである。そして、これにより、抗体の吸着能が向上する。また、担体2の指標Aが高い、すなわち疎水的な界面性質を有する担体2にアミノ基などの官能基量が多い刺激応答性高分子4を固定化することで担体2の表面の性質を改質でき、抗体の吸着能が向上する。
【0052】
一方、担体2の指標Aが低い場合、すなわち担体2が親水性である場合は、標的物質Oの界面と吸着部位3との間で相互作用は生じないか又は生じ難い。そのため、担体2の指標Aが高い場合と比較して高い自由度で刺激応答性高分子4を選択し、組み合わせることができる。例えば、担体2の指標Aが−2.5〜−3.5の場合、分配係数CLogPが1.3以下である刺激応答性高分子4であればどのようなものも用いることができる。
【0053】
他の使用態様として、吸着材1は懸濁液の状態で用いることができる。従来の溶解度の変化を利用する温度応答性の吸着材では、温度変化によって疎水性が増大して分散性が低下する。そして、懸濁状態の吸着材が凝集し、壁面に付着して界面に局在化等するリスクが高い。しかし、このような使用態様であっても、本実施形態に係る吸着材1は、温度変化に伴う溶解度の変化を抗体の吸着又は脱離に利用していないため、そのようなリスクはほぼない。
【0054】
<カラム及び精製装置>
図2は、本実施形態に係るカラム20の構成を説明する概略図である。図3は、本実施形態に係る精製装置30の構成を説明する概略図である。なお、カラム20及び精製装置30の説明において、吸着材1に関して既に詳述している要素についてはその説明を省略する。
【0055】
図2に示すように、カラム20は、有底の筒状体21内に吸着材1が充填されたものである。なお、筒状体21の底部には図示しない排出口が設けられており、カラム20内を通液した各種溶液がこの排出口から排出される。このカラム20は、培養時に含まれる複数の夾雑物の中から抗体などの標的物質Oを選択的に回収し純度を高める装置である。
【0056】
また、図3に示すように、精製装置30は、吸着材1が充填されたカラム20を備えている。例えば、精製装置30は、図3に示すように、培養槽31と、カラム20と、回収容器32とを備えている。
なお、培養槽31は、標的物質Oを細胞培養によって産生させる装置である。回収容器32は、カラム20で精製された標的物質Oを含む溶液を回収する容器である。培養槽31や回収容器32は公知のものを用いることができる。
なお、精製装置30はこれら以外にも標的物質Oに応じた精製に必要な様々な装置を備えているが、それらの装置の説明は省略する。
【0057】
<吸着材の製造方法>
本実施形態に係る吸着材1は、刺激応答性高分子4を担体2に固定化することで製造できる。刺激応答性高分子4は、好ましくは、化学結合を介して担体2に結合させる。すなわち、一実施形態において、吸着材1は、刺激応答性高分子4と担体2とが化学結合を介して固定化されている。吸着部位3は、複数個の官能基Rを有する高分子鎖5を担体2に固定化する前又は固定化した後のいずれの時点で導入してもよい。すなわち、吸着部位3を複数個の官能基Rを有する高分子鎖5に導入した後、吸着部位3が導入された高分子鎖5を担体2に固定化してもよい。また、吸着部位3を有さない複数個の官能基Rを有する高分子鎖5を担体2に固定化した後、高分子鎖5に吸着部位3を導入してもよい。また、吸着部位3を導入した後の高分子鎖5中に残存する官能基Rに対して、親水もしくは疎水的な置換基をさらに導入してもよい。
【0058】
以上に説明した本実施形態に係る吸着材1、カラム20及び精製装置30は、担体2が、誘電率の異なるオクタノール及びエタノールに分散させた際、それぞれの溶媒に対する担体2の分散性を示す評価値から算出される指標Aが1.0以下であり、かつ刺激応答性高分子4が、分配係数CLogPが−0.46以上1.3以下であることとしている。吸着材1、カラム20及び精製装置30は、このような構成としているので、親水性や疎水性など様々な界面性質を有する担体2に対して刺激応答性高分子4全体の親水性・疎水性のバランスを制御しつつ吸着部位3の吸着能を高く維持したまま固定化することができる。従って、吸着材1、カラム20及び精製装置30は、吸着部位3として低分子化合物を用いることができるとともに従来よりも多くの種類の担体2を用いることができ、かつ、標的物質Oの吸着容量を高くできる。そして、これにより、吸着材1、カラム20及び精製装置30を用いると、例えば、抗体医薬品や分析試薬の製造コストを低減することが可能であり、また、生産性を向上させることもできる。
また、本実施形態に係る吸着材1の製造方法は、前記した吸着材1を確実に製造することができる。
【実施例】
【0059】
以下、実施例を示して本発明について具体的に説明するが、本発明の技術的範囲はこれに限定されるものではない。
【0060】
〔1〕刺激応答性高分子の合成
<No.P1に係る刺激応答性高分子の合成>
複数のアミノ基を有する高分子としてε−ポリリジン(EPL)を用いた。また、前記アミノ基に導入する吸着部位としてメルカプトベンゾチアゾール酢酸(MBTA、2−ベンゾチアゾリルチオ酢酸)を用いた。なお、MBTAは、抗体吸着能を有するチオフィリック系の化合物である。
【0061】
EPL(一丸ファルコス社製、ポリリジン10)の水/ジメチルホルムアミド(DMF)溶液(水:DMF=1:2(体積比))にMBTA(0.7当量)及び脱水縮合剤の4−(4,6−ジメトキシ−1,3,5−トリアジン−2−イル)−4−メチルモルホリニウムクロリド(DMT−MM)(1.2当量)を加え、室温で5時間攪拌し、EPLのアミノ基とMBTAのカルボキシル基との反応によりアミド結合を形成することで、EPLにMBTAを導入した。得られた反応液に塩酸を加えて酸性とし、テトラヒドロフラン(THF)により透析し、生じた沈殿を濾別した後にエバポレーターで乾燥させることにより、No.P1に係る刺激応答性高分子(以下、サンプルナンバーに応じて「刺激応答性高分子P1」などと呼称する)を固体として得た。
【0062】
<刺激応答性高分子P2の合成>
刺激応答性高分子P1と同様に、EPLの水/DMF溶液にMBTA(0.6当量)及びDMT−MM(1.2当量)を加え、室温で5時間攪拌した。そして、刺激応答性高分子P1と同様の手順で生じさせた沈殿を濾別し、これをエバポレーターで乾燥させることにより、刺激応答性高分子P2を得た。
【0063】
<刺激応答性高分子P3の合成>
刺激応答性高分子P1と同様に、EPLの水/DMF溶液にMBTA(0.45当量)及びDMT−MM(1.2当量)を加え、室温で5時間攪拌した。そして、刺激応答性高分子P1と同様の手順で生じさせた沈殿を濾別し、これをエバポレーターで乾燥させることにより、刺激応答性高分子P3を得た。
【0064】
<刺激応答性高分子P4の合成>
刺激応答性高分子P1と同様に、EPLの水/DMF溶液にMBTA(0.3当量)及びDMT−MM(1.2当量)を加え、室温で5時間攪拌した。そして、刺激応答性高分子P1と同様の手順で生じさせた沈殿を濾別し、これをエバポレーターで乾燥させることにより、刺激応答性高分子P4を得た。
【0065】
<刺激応答性高分子P5の合成>
刺激応答性高分子P1と同様に、EPLの水/DMF溶液にMBTA(0.07当量)及びDMT−MM(1.2当量)を加え、室温で5時間攪拌した。そして、刺激応答性高分子P1と同様の手順で生じさせた沈殿を濾別し、これをエバポレーターで乾燥させることにより、刺激応答性高分子P5を得た。
【0066】
<刺激応答性高分子P6の合成>
刺激応答性高分子P1と同様に、EPLの水/DMF溶液にMBTA(0.9当量)及びDMT−MM(1.2当量)を加え、室温で5時間攪拌した。そして、刺激応答性高分子P1と同様の手順で生じさせた沈殿を濾別し、これをエバポレーターで乾燥させることにより、刺激応答性高分子P6を得た。
【0067】
<刺激応答性高分子P7の合成>
刺激応答性高分子P1と同様に、EPLの水/DMF溶液にMBTA(0.03当量)及びDMT−MM(1.2当量)を加え、室温で5時間攪拌した。そして、刺激応答性高分子P1と同様の手順で生じさせた沈殿を濾別し、これをエバポレーターで乾燥させることにより、刺激応答性高分子P7を得た。
【0068】
<刺激応答性高分子P1〜7の化学組成評価と分配係数>
刺激応答性高分子P1〜7の組成、吸着部位導入率、1分子当たりの吸着部位導入量及び分配係数CLogPを表1に示す。表1において、組成については、吸着部位の導入に用いた原料化合物を記載している。吸着部位導入率は、複数のアミノ基を有する高分子のアミノ基量に対し吸着部位により占有された割合を示している。吸着部位導入率は、H−NMR測定によって求めた。1分子当たりの吸着部位導入量は、用いたEPLの有するアミノ基数と吸着部位導入率の積によって求めた。また、化学構造式作画ソフトウェアChemDrawで刺激応答性高分子P1〜7の分配係数CLogPを算出した。
【0069】
【表1】
【0070】
〔2〕担体
No.C1〜9に係る担体(以下、サンプルナンバーに応じて「担体C1」などと呼称する)を用意した(表2参照)。なお、担体は、ポリスチレンやアクリル、メタクリレート系の樹脂担体、多糖類のSepharose担体、シリカ、磁性体の無機酸化物(磁性微粒子)などを用いた。また、誘電率の値が異なる有機溶媒相として、オクタノール(誘電率ε:10.3F/m)及びエタノール(誘電率ε:24.3F/m)を用意した。そして、各種担体をそれぞれこれらの有機溶媒相に分散させ、担体と溶媒とをよく混合させた。そして、各種担体の分散液3mLをガラス製シャーレ(長径=35mm)に展開し、室温で10分静置させた。その後、光学顕微鏡の倍率20倍のレンズで各種担体に焦点を合わせ、1サンプルにつき5箇所撮像した。得られた像(20mm×27mm)の視野中に観測される担体の凝集体部分を画像ソフトウェア(ImageJ)で二値化処理した。前記画像の凝集体部分を黒色に処理し、その他を白色に処理し、黒色で得られた凝集体部分の長さ、特に長軸の長さを1つの担体の担体径(直径)で割った値をφと定義した。そして、当該φの値に従って下記評価値1〜5までの5段階で分類した。φの値は、1つのサンプルにつき5箇所撮像した画像から得られた値の平均値を採用した。さらに、上記の実験を1つのサンプルに対して2回繰り返し、各回について求めた評価値の2回の平均値をその担体の評価値とした。
【0071】
評価値5:φ=0.2μm以上8.3μm未満(所見:溶媒に対し担体が安定して良く分散している。)
評価値4:φ=8.3μm以上17μm未満(所見:担体をよく混合することによって溶媒に対し一部が分散し、小さな凝集体及び孤立した粒子の双方が混在している。)
評価値3:φ=17μm以上27μm未満(所見:溶媒に対し担体の一部が分散し、小さな凝集体を形成している。)
評価値2:φ=27μm以上40μm未満(所見:溶媒に対し担体がほとんど分散せず、大きな凝集体を形成している。)
評価値1:φ=40μm以上(所見:溶媒に対し担体が分散せず、大きな凝集体を形成している。)
【0072】
そして、上記の基準に沿って溶媒に分散させた際の担体の分散性を次のようにして評価した。そして、誘電率の値が異なるオクタノール(誘電率ε:10.3F/m)及びエタノール(誘電率ε:24.3F/m)に担体をそれぞれ分散させて求められる評価値(評価値εオクタノール、評価値εエタノール)から、以下の式(1)に従い、指標Aを定義した。
A=評価値εオクタノール−評価値εエタノール (1)
表2に担体C1〜9の材質と、平均粒子径(μm)、指標Aに関する評価結果を示す。
【0073】
【表2】
【0074】
担体C1〜4、9(担体A群)と比較して、担体C5〜8(担体B群)はエタノールに良く分散し、オクタノールでは凝集体を形成した。そのため、担体B群は、より親水的であることが判明した。
【0075】
〔3〕実施例1〜9及び比較例1〜3に係る吸着材の調製と抗体吸着能評価
担体C1〜9と刺激応答性高分子P1〜7とを後記する表3の組合せで固定化して抗体の吸着能評価を行った。刺激応答性高分子P1〜7を担体C1〜9に固定化するため、担体C1〜9の官能基としてエポキシ基、カルボキシル基を使用した。また、必要な場合にはこれらの官能基を修飾した。
【0076】
<実施例1>
<担体C1(担体A群)上へ刺激応答性高分子P3を固定化した吸着材の調製>
THF/水混合溶液(THF:水=4:1(体積比))を溶媒として用い、刺激応答性高分子P3の1質量%溶液を調製した。この刺激応答性高分子P3の溶液と、カルボキシル基を表面に有する平均粒子径100μmのポリスチレン担体(テクノケミカル社製、ポリビーズ ポリスチレンシリーズ)と、DMT−MM(10当量)とから得られた懸濁液を室温で一晩振盪させた。その後、THF/水混合溶媒で洗浄し、刺激応答性高分子P3が担体C1に固定化された実施例1に係る吸着材を得た。
【0077】
<実施例1に係る吸着材の抗体吸着能評価>
実施例1に係る吸着材の吸着部位の抗体吸着能を評価するため、以下の手順に従い実験を行った。具体的には、実施例1に係る吸着材を1mL分カラムに充填し、1質量%の所定のヒトIgGを含むpH7.4のリン酸緩衝液(PBS緩衝液)を5mL通液した。そして、カラムから溶出される溶液内のヒトIgG濃度をモニタリングして、10%の抗体溶液がカラムから漏れだす溶液量から抗体吸着能を算出した。ここでいう抗体吸着能とは、吸着材への動的抗体吸着容量(10%DBC)と定義する。その結果を後記表3及び図4に示す。なお、図4は、実施例1〜9及び比較例1〜3に係る各吸着材における指標Aと10%DBCとの関係を示すグラフである。
表3及び図4に示すように、実施例1に係る吸着材1mLに対し、24mgの抗体が吸着することが確認された。実施例1に係る吸着材は、担体と刺激応答性高分子の組合せが良かったため、高効率で抗体を吸着できることが確認された。
【0078】
以上の結果から、分散度を示す指標Aが0の担体C1と、分配係数CLogPが0.62の刺激応答性高分子P3とを組み合わせたとき、10%DBCは24mg/mLであり、市販品として流通する吸着材の最低限の機能20mg/mL以上が得られることが明らかとなった。これは、担体と刺激応答性高分子の組合せが良かったためと考えられた。
【0079】
<実施例2>
<担体C2(担体A群)上へ刺激応答性高分子P4を固定化した吸着材の調製>
THF/水混合溶液(THF:水=2:1(体積比))を溶媒として用い、刺激応答性高分子P4の1質量%溶液を調製した。この刺激応答性高分子P4の溶液と、カルボキシル基を表面に有する平均粒子径50μmのポリスチレン担体(テクノケミカル社製、ポリビーズ ポリスチレンシリーズ)と、DMT−MM(10当量)とから得られた懸濁液を室温で一晩振盪させた。その後、THF/水混合溶媒で洗浄し、刺激応答性高分子P4が担体C2に固定化された実施例2に係る吸着材を得た。
【0080】
<実施例2に係る吸着材の抗体吸着能評価>
実施例2に係る吸着材の吸着部位の抗体吸着能を評価するため、実施例1に係る吸着材と同様の手順で同様の実験を行った。その結果を後記表3及び図4に示す。
表3及び図4に示すように、実施例2に係る吸着材1mLに対し、30mgの抗体が吸着することが確認された。
【0081】
以上の結果から、分散度を示す指標Aが0.5の担体C2と、分配係数CLogPが0.19の刺激応答性高分子P4とを組み合わせたとき、10%DBCは30mg/mLと高い値が得られた。これは、担体と刺激応答性高分子の組合せが良かったためと考えられた。
【0082】
<実施例3>
<担体C3(担体A群)上へ刺激応答性高分子P4を固定化した吸着材の調製>
THF/水混合溶液(THF:水=2:1(体積比))を溶媒として用い、刺激応答性高分子P4の1質量%溶液を調製した。この刺激応答性高分子P4の溶液と、カルボキシル基を表面に有する平均粒子径30μmのアクリル担体(Soken社製、MXシリーズ)と、DMT−MM(10当量)とから得られた懸濁液を室温で一晩振盪させた。その後、THF/水混合溶媒で洗浄し、刺激応答性高分子P4が担体C3に固定化された実施例3に係る吸着材を得た。
【0083】
<実施例3に係る吸着材の抗体吸着能評価>
実施例3に係る吸着材の吸着部位の抗体吸着能を評価するため、実施例1に係る吸着材と同様の手順で同様の実験を行った。その結果を後記表3及び図4に示す。
表3及び図4に示すように、実施例3に係る吸着材1mLに対し、32mgの抗体が吸着することが確認された。
【0084】
以上の結果から、分散度を示す指標Aが0.5の担体C3と、分配係数CLogPが0.19の刺激応答性高分子P4とを組み合わせたとき、10%DBCは32mg/mLと高い値が得られた。これは、担体と刺激応答性高分子の組合せが良かったためと考えられた。
【0085】
<実施例4>
<担体C4(担体A群)上へ刺激応答性高分子P5を固定化した吸着材の調製>
THF/水混合溶液(THF:水=1:1(体積比))を溶媒として用い、刺激応答性高分子P5の1質量%溶液を調製した。この刺激応答性高分子P5の溶液と、カルボキシル基を表面に有する平均粒子径100μmのメタクリレート担体(東ソー社製、Toyoperal AF−Carboxy 650M)と、DMT−MM(10当量)とから得られた懸濁液を室温で一晩振盪させた。その後、THF/水混合溶媒で洗浄し、刺激応答性高分子P5が担体C4に固定化された実施例4に係る吸着材を得た。
【0086】
<実施例4に係る吸着材の抗体吸着能評価>
実施例4に係る吸着材の吸着部位の抗体吸着能を評価するため、実施例1に係る吸着材と同様の手順で同様の実験を行った。その結果を後記表3及び図4に示す。
表3及び図4に示すように、実施例4に係る吸着材1mLに対し、23mgの抗体が吸着することが確認された。
【0087】
以上の結果から、分散度を示す指標Aが1.0の担体C4と、分配係数CLogPが−0.46の刺激応答性高分子P5とを組み合わせたとき、10%DBCは23mg/mLであり、市販品として流通する吸着材の最低限の機能20mg/mL以上が得られることが明らかとなった。これは、担体と刺激応答性高分子の組合せが良かったためと考えられた。
【0088】
<実施例5>
<担体C5(担体B群)上へ刺激応答性高分子P1を固定化した吸着材の調製>
THF/水混合溶液(THF:水=5:1(体積比))を溶媒として用い、刺激応答性高分子P1の1質量%溶液を調製した。この刺激応答性高分子P1の溶液と、カルボキシル基を表面に有する平均粒子径100μmのSepharose担体(GEヘルスケア社製、CM Sepharose 4 Fast Flow)と、DMT−MM(10当量)とから得られた懸濁液を室温で一晩振盪させた。その後、THF/水混合溶媒で洗浄し、刺激応答性高分子P1が担体C5に固定化された実施例5に係る吸着材を得た。
【0089】
<実施例5に係る吸着材の抗体吸着能評価>
実施例5に係る吸着材の吸着部位の抗体吸着能を評価するため、実施例1に係る吸着材と同様の手順で同様の実験を行った。その結果を後記表3及び図4に示す。
表3及び図4に示すように、実施例5に係る吸着材1mLに対し、38mgの抗体が吸着することが確認された。
【0090】
以上の結果から、分散度を示す指標Aが−2.5の担体C5と、分配係数CLogPが1.3の刺激応答性高分子P1とを組み合わせたとき、10%DBCは38mg/mLと高効率に抗体を吸着することが確認された。これは、担体と刺激応答性高分子の組合せが良かったためと考えられた。
【0091】
<実施例6>
<担体C6(担体B群)上へ刺激応答性高分子P3を固定化した吸着材の調製>
THF/水混合溶液(THF:水=4:1(体積比))を溶媒として用い、刺激応答性高分子P3の1質量%溶液を調製した。この刺激応答性高分子P3の溶液と、カルボキシル基を表面に有する平均粒子径100μmのシリカ担体(AGCエスアイテック社製、M.S.GEL、Dグレード)と、DMT−MM(10当量)とから得られた懸濁液を室温で一晩振盪させた。その後、THF/水混合溶媒で洗浄し、刺激応答性高分子P3が担体C6に固定化された実施例6に係る吸着材を得た。
【0092】
<実施例6に係る吸着材の抗体吸着能評価>
実施例6に係る吸着材の吸着部位の抗体吸着能を評価するため、実施例1に係る吸着材と同様の手順で同様の実験を行った。その結果を後記表3及び図4に示す。
表3及び図4に示すように、実施例6に係る吸着材1mLに対し、37mgの抗体が吸着することが確認された。
【0093】
以上の結果から、分散度を示す指標Aが−3.0の担体C6と、分配係数CLogPが0.62の刺激応答性高分子P3とを組み合わせたとき、10%DBCは37mg/mLと高効率に抗体を吸着することが確認された。これは、担体と刺激応答性高分子の組合せが良かったためと考えられた。
【0094】
<実施例7>
<担体C7(担体B群)上へ刺激応答性高分子P1を固定化した吸着材の調製>
THF/水混合溶液(THF:水=5:1(体積比))を溶媒として用い、刺激応答性高分子P1の1質量%溶液を調製した。この刺激応答性高分子P1の溶液と、カルボキシル基を表面に有する平均粒子径50μmのシリカ担体(AGCエスアイテック社製、M.S.GEL、EP−DMグレード)と、DMT−MM(10当量)とから得られた懸濁液を室温で一晩振盪させた。その後、THF/水混合溶媒で洗浄し、刺激応答性高分子P1が担体C7に固定化された実施例7に係る吸着材を得た。
【0095】
<実施例7に係る吸着材の抗体吸着能評価>
実施例7に係る吸着材の吸着部位の抗体吸着能を評価するため、実施例1に係る吸着材と同様の手順で同様の実験を行った。その結果を後記表3及び図4に示す。
表3及び図4に示すように、実施例7に係る吸着材1mLに対し、48mgの抗体が吸着することが確認された。
【0096】
以上の結果から、分散度を示す指標Aが−3.5の担体C7と、分配係数CLogPが1.3の刺激応答性高分子P1とを組み合わせたとき、10%DBCは48mg/mLと高効率に抗体を吸着することが確認された。これは、親水的かつ平均粒子径が小さい担体と、疎水的ではあるが、吸着部位として導入した低分子化合物(MBTA)の導入量が多い刺激応答性高分子との組合せが良かったためと考えられた。
【0097】
<実施例8>
<担体C8(担体B群)上へ刺激応答性高分子P2を固定化した吸着材の調製>
THF/水混合溶液(THF:水=5:1(体積比))を溶媒として用い、刺激応答性高分子P2の1質量%溶液を調製した。この刺激応答性高分子P2の溶液と、カルボキシル基を表面に有する平均粒子径3μmの磁性担体(タカラバイオ社製、Magnospere MS300/Carboxyl)と、DMT−MM(10当量)とから得られた懸濁液を室温で一晩振盪させた。その後、THF/水混合溶媒で洗浄し、刺激応答性高分子P2が担体C8に固定化された実施例8に係る吸着材を得た。
【0098】
<実施例8に係る吸着材の抗体吸着能評価>
実施例8に係る吸着材の吸着部位の抗体吸着能を評価するため、実施例1に係る吸着材と同様の手順で同様の実験を行った。その結果を後記表3及び図4に示す。
表3及び図4に示すように、実施例8に係る吸着材1mLに対し、27mgの抗体が吸着することが確認された。
【0099】
以上の結果から、分散度を示す指標Aが−1.0の担体C8と、分配係数CLogPが1.1の刺激応答性高分子P2とを組み合わせたとき、10%DBCは27mg/mLであり、市販製品と同等以上に抗体を吸着できることが確認された。
【0100】
<実施例9>
<担体C5(担体B群)上へ刺激応答性高分子P2を固定化した吸着材の調製>
THF/水混合溶液(THF:水=5:1(体積比))を溶媒として用い、刺激応答性高分子P2の1質量%溶液を調製した。この刺激応答性高分子P2の溶液と、カルボキシル基を表面に有する平均粒子径100μmのSepharose担体(GEヘルスケア社製、CM Sepharose 4 Fast Flow)と、DMT−MM(10当量)とから得られた懸濁液を室温で一晩振盪させた。その後、THF/水混合溶媒で洗浄し、刺激応答性高分子P2が担体C5に固定化された実施例9に係る吸着材を得た。
【0101】
<実施例9に係る吸着材の抗体吸着能評価>
実施例9に係る吸着材の吸着部位の抗体吸着能を評価するため、実施例1に係る吸着材と同様の手順で同様の実験を行った。その結果を後記表3及び図4に示す。
表3及び図4に示すように、実施例9に係る吸着材1mLに対し、26mgの抗体が吸着することが確認された。
【0102】
以上の結果から、分散度を示す指標Aが−2.5の担体C5と、分配係数CLogPが1.1の刺激応答性高分子P2とを組み合わせたとき、10%DBCは26mg/mLであり、市販品と同等程度の抗体吸着能が得られることが確認された。
【0103】
なお、実施例9に係る吸着材と実施例5に係る吸着材とを比較すると、これらは担体及び刺激応答性高分子の組成が近いにも関わらず、10%DBCは実施例5に係る吸着材の方が優れていた。このことから、担体に対してより最適な分配係数CLogPを有する刺激応答性高分子を固定化すると大幅に10%DBCを向上できると考えられた。
【0104】
<比較例1>
<担体C3(担体A群)上へ刺激応答性高分子P6を固定化した吸着材の調製>
THF/水混合溶液(THF:水=5:1(体積比))を溶媒として用い、刺激応答性高分子P6の1質量%溶液を調製した。この刺激応答性高分子P6の溶液と、カルボキシル基を表面に有する平均粒子径30μmのアクリル担体(Soken社製、MXシリーズ)と、DMT−MM(10当量)とから得られた懸濁液を室温で一晩振盪させた。その後、THF/水混合溶媒で洗浄し、刺激応答性高分子P6が担体C3に固定化された比較例1に係る吸着材を得た。
【0105】
<比較例1に係る吸着材の抗体吸着能評価>
比較例1に係る吸着材の吸着部位の抗体吸着能を評価するため、実施例1に係る吸着材と同様の手順で同様の実験を行った。その結果を後記表3及び図4に示す。
表3及び図4に示すように、比較例1に係る吸着材1mLに対し、4mgの抗体が吸着することが確認された。
【0106】
以上の結果から、分散度を示す指標Aが0.5の担体C3と、分配係数CLogPが1.9の刺激応答性高分子P6を組み合わせたとき、10%DBCは4mg/mLと低い値を示した。この結果から、疎水性の担体と疎水的な刺激応答性高分子の組合せでは、担体と刺激応答性高分子との間の相互作用が高まり、十分量の抗体吸着能が得られなかったと考えられた。
【0107】
<比較例2>
<担体C5(担体B群)上へ刺激応答性高分子P7を固定化した吸着材の調製>
THF/水混合溶液(THF:水=1:1(体積比))を溶媒として用い、刺激応答性高分子P7の1質量%溶液を調製した。この刺激応答性高分子P7の溶液と、カルボキシル基を表面に有する平均粒子径100μmのSepharose担体(GEヘルスケア社製、CM Sepharose 4 Fast Flow)と、DMT−MM(10当量)とから得られた懸濁液を室温で一晩振盪させた。その後、THF/水混合溶媒で洗浄し、刺激応答性高分子P7が担体C5に固定化された比較例2に係る吸着材を得た。
【0108】
<比較例2に係る吸着材の抗体吸着能評価>
比較例2に係る吸着材の吸着部位の抗体吸着能を評価するため、実施例1に係る吸着材と同様の手順で同様の実験を行った。その結果を後記表3及び図4に示す。
表3及び図4に示すように、比較例2に係る吸着材1mLに対し、6mgの抗体が吸着することが確認された。
【0109】
以上の結果から、分散度を示す指標Aが−2.5の担体C5と、分配係数CLogPが−0.69の刺激応答性高分子P7とを組み合わせたとき、10%DBCは6mg/mLと低い値を示した。このことから、親水性の担体と、吸着部位として導入した低分子化合物(MBTA)の導入量が少なく、より親水的な刺激応答性高分子との組合せでは、十分量の抗体を吸着できないことが確認された。
【0110】
<比較例3>
<担体C9(担体A群)上へ刺激応答性高分子P3を固定化した吸着材の調製>
THF/水混合溶液(THF:水=4:1(体積比))を溶媒として用い、刺激応答性高分子P3の1質量%溶液を調製した。この刺激応答性高分子P3の溶液と、カルボキシル基を表面に有する平均粒子径45μmのメタクリレート担体(積水化成品社製、テクポリマー、MBX−40)と、DMT−MM(10当量)とから得られた懸濁液を室温で一晩振盪させた。その後、THF/水混合溶媒で洗浄し、刺激応答性高分子P3が担体C9に固定化された比較例3に係る吸着材を得た。
【0111】
<比較例3に係る吸着材の抗体吸着能評価>
比較例3に係る吸着材の吸着部位の抗体吸着能を評価するため、実施例1に係る吸着材と同様の手順で同様の実験を行った。その結果を後記表3及び図4に示す。
表3及び図4に示すように、比較例3に係る吸着材1mLに対し、15mgの抗体が吸着することが確認された。
【0112】
以上の結果から、分散度を示す指標Aが1.5の担体C9と、分配係数CLogPが0.62の刺激応答性高分子P3とを組み合わせたとき、10%DBCは15mg/mLであり、市販品の基準である20mg/mLと比較して僅かに劣った。このことから、吸着能が出ることが確認されている刺激応答性高分子であっても、指標Aが1.5以上であるような疎水性の担体との組み合わせ次第では、抗体の吸着能が僅かに低減することが判明した。比較例3に係る吸着材と実施例4に係る吸着材とを比較して、吸着材について、抗体の高効率吸着をかなえる担体の指標Aは1.0以下とするのがよいと考えられた。
【0113】
【表3】
【0114】
以上の結果から、従来用いるのが困難であった疎水性の担体A群の担体を用いた場合であっても、分配係数CLogPが−0.46以上1.3以下である刺激応答性高分子を組み合わせることで10%DBCを高められることが分かった。また、親水性の担体B群に属する担体を用いた場合は、分配係数CLogPが−0.46以上1.3以下である刺激応答性高分子を用いて吸着材を製造することで高DBCが得られることが分かった。すなわち、本発明によれば、担体の前記指標Aが1.0以下であり、刺激応答性高分子の分配係数CLogPが−0.46以上1.3以下の範囲にある最適な組み合わせとすることによって、吸着部位として低分子化合物を用いることができるとともに、従来よりも多くの種類の担体を用いることができ、かつ、標的物質の吸着容量が高い吸着材とこれを用いたカラム及び精製装置とを提供できることが分かった。
【0115】
このことから、本発明では、医薬品や分析試薬向けの抗体を生産する抗体生産性が優れる吸着材とこれを用いたカラム及び精製装置とを提供できる。そして、本発明によれば、抗体の吸着効率向上をかなえる低分子化合物を用いた吸着材による抗体の精製を可能にする。従って、本発明によれば、抗体医薬品及び分析試薬等の低コスト製造や生産性向上を実現できる。そのため、本発明によれば、従来治療が困難であったリュウマチや癌治療等に用いる治療用抗体はもちろん、分析、試験で用いられる生化学試薬や臨床検査試薬中の抗体をも含めて高効率に生産、提供が可能となるため、医療技術の進歩に大きく貢献できる。
【0116】
以上、本発明に係る吸着材、カラム、精製装置及び吸着材の製造方法について実施形態及び実施例により詳細に説明したが、本発明の主旨はこれに限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、前記した実施形態は本発明を分かり易く説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施形態の構成の一部を他の実施形態の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施形態の構成に他の実施形態の構成を加えることも可能である。また、各実施形態の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
【符号の説明】
【0117】
1 吸着材
2 担体
3 吸着部位
4 刺激応答性高分子
5 高分子鎖
20 カラム
30 精製装置
O 標的物質
R 官能基
図1
図2
図3
図4