(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
上記(A2)及び(B2)の双方の工程において、反射光の光路上に反射光の一部を遮蔽する空間フィルタを設け、該空間フィルタを通して反射光を収集することを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項記載の欠陥検査方法。
上記(A1)工程において、フォトマスクブランクをその面内方向に移動できるステージに載置し、上記ステージを上記面内方向に移動させて、上記欠陥と、上記検査光学系の対物レンズとを近接させることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項記載の欠陥検査方法。
請求項1乃至7のいずれか1項記載の欠陥検査方法の第2の判定工程において再判定された欠陥の凹凸形状に基づき、上記(B1)〜(B3)工程を実施したフォトマスクブランクから、凹欠陥を含まないフォトマスクブランクを選別することを特徴とするフォトマスクブランクの選別方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
半導体デバイスの継続的な微細化に伴って、波長193nmのフッ化アルゴン(ArF)エキシマレーザ光を用いたArFリソグラフィ技術が駆使されるとともに、露光プロセスや加工プロセスを複数回組み合わせるマルチパターニングというプロセスを採用することにより、最終的には露光波長と比べて十分に小さい寸法のパターンを形成する技術が精力的に検討されている。前述のように、転写用マスクは、微細パターンの原版として使用されるので、パターン転写の忠実性を阻害する転写用マスク上の欠陥はすべて排除しなければならない。従って、マスクブランクの製造段階においても、マスクパターン形成において障害となる欠陥をすべて検出する必要がある。
【0007】
転写用マスクにおいて、凹欠陥、特にピンホール欠陥は、マスクパターン形成において致命的となる。一方で、凸欠陥については、欠陥の高さにもよるが、マスクパターン形成において致命的にならない場合もある。また、表面に付着した異物に起因する凸欠陥は、洗浄で除去可能であれば致命的な欠陥とはならない。そのため、これらの凸欠陥の全てを致命的な欠陥として、マスクブランクを不良品として排除すると、歩留りの低下をもたらす。そのため、欠陥検査においては、欠陥の凹凸形状を、高い精度で区別することが、致命的な欠陥を有するマスクブランクの確実な排除と、歩留り確保との両面から極めて重要になる。
【0008】
上記特許文献1〜4に記載されている検査装置は、いずれも光学的な欠陥検出法を採用した装置である。光学的な欠陥検出法は、比較的短時間での広域欠陥検査を可能とし、光源の短波長化などにより、微細欠陥の精密検出も可能となるという利点がある。また、斜方照明法や空間フィルタを用いた検査光学系で得られた検査信号の明部と暗部の配置位置の関係から、欠陥の凹凸も判定できる方法を提供している。更に、上記特許文献5には、検査対象がEUVマスクブランクに限られるが、位相欠陥の凹凸を区別する方法が記載されている。
【0009】
しかし、上記特許文献1〜4に記載されている検査装置に基づく実際の検査実験によれば、フォトマスクブランクの検査信号の明暗の配置から凹欠陥と判定された欠陥の中には、その欠陥を原子間力顕微鏡や電子顕微鏡などによる実像観察などにより確認すると、凸欠陥も含まれる場合があることがわかった。即ち、上記特許文献1〜4に記載されている検査装置では、必ずしも欠陥の凹凸形状を高い精度で区別することができるとは限らない。また、上記特許文献5に記載されている方法は、EUVマスクブランク固有の位相欠陥に適用され、KrFエキシマレーザ、ArFエキシマレーザ、F
2レーザなどを用いる現在主流のフォトマスクブランクには適用しにくい方法である。そのため、これまでの手法では難しかった、凸欠陥が、凹欠陥と誤判定されることのない手法の確立が望まれていた。
【0010】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、光学的な欠陥検出法を用いて、凸欠陥を凹欠陥と誤判定することなく、フォトマスクブランクの欠陥の凹凸形状を高い信頼性で区別できる欠陥検査方法、並びにこの欠陥検査を適用したフォトマスクブランクの選別方法及び製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上述したように、検査画像における明部と暗部の配置から凹凸を区別する従来の方法で欠陥検査を実施すると、フォトマスクブランクの薄膜に形成されたピンホールなどの凹欠陥は、凹欠陥と正しく判定されるが、薄膜とは材料が異なるパーティクルなどの異物がフォトマスクブランクの薄膜の表面に付着した状態や、薄膜の中に部分的に埋まった状態となって発生した凸欠陥については、これを凹欠陥と誤判定する場合があった。
【0012】
そこで、本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、従来の方法で凹欠陥と判定された欠陥について、凹欠陥と判定されたフォーカス状態から、検査光学系の焦点位置をずらした、所謂デフォーカス状態で欠陥の検査画像を収集して検査画像の光強度分布、特に、明暗の配置や明暗の光強度の差を評価すると、フォーカス状態で凹欠陥と判定された欠陥を、更に、真の凹欠陥と、凸欠陥とに区別できることを見出し、本発明をなすに至った。
【0013】
従って、本発明は、以下のフォトマスクブランクの欠陥検査方法、選別方法及び製造方法を提供する。
請求項1:
基板上に少なくとも1層の薄膜が形成されたフォトマスクブランクの表面部に存在する欠陥を、検査光学系を用いて検査する方法であって、
(A1)上記欠陥と、上記検査光学系の対物レンズとを近接させて、それらの距離を、フォーカス距離に設定し、上記フォーカス距離が設定された状態で、検査光を、
その光軸が上記フォトマスクブランクの表面に対して傾斜する斜方照明により、上記対物レンズを介して欠陥に照射する工程と、
(A2)検査光が照射された領域の反射光を、対物レンズを介して上記領域の第1の拡大像として収集する工程と、
(A3)上記第1の拡大像の光強度の変化部分を特定して、上記第1の拡大像の光強度の変化部分の光強度変化から、欠陥の凹凸形状を判定する第1の判定工程と
を含み、
上記第1の判定工程において、欠陥形状が凹形状と判定された場合にのみ、更に、
(B1)上記欠陥と、上記検査光学系の対物レンズとの距離を、上記フォーカス距離から所定の
正又は負のデフォーカス量外れた
正又は負のデフォーカス距離に設定し、上記
正及び負のデフォーカス距離の各々において、デフォーカス距離が設定された状態で、検査光を、
その光軸が上記フォトマスクブランクの表面に対して傾斜する斜方照明により、上記対物レンズを介して欠陥に照射する工程と、
(B2)検査光が照射された領域の反射光を、対物レンズを介して上記領域の第2の拡大像として収集する工程と、
(B3)上記第2の拡大像の光強度の変化部分を特定して、上記第2の拡大像の光強度の変化部分の光強度変化から、
上記負のデフォーカス距離での、真の凹欠陥の光強度分布の断面プロファイルの明暗の位置関係の逆転と、上記正のデフォーカス距離での、無欠陥領域の光強度と暗部の光強度との差(絶対値)に対する、無欠陥領域の光強度と明部の光強度との差(絶対値)の比とに基づき、欠陥の凹凸形状を再判定する第2の判定工程と
を実施して、欠陥の凹凸形状を再判定することを特徴とするフォトマスクブランクの欠陥検査方法。
請求項2:
上記(B3)工程において、上記第2の拡大像の欠陥部における明部と暗部との配置が、
負のデフォーカス距離で反転しないものは凸欠陥、
負のデフォーカス距離で反転した場合であって、正のデフォーカス距離で明暗強度が増大したものは凸欠陥、
負のデフォーカス距離で反転した場合であって、正のデフォーカス距離で明暗強度が増大しなかったものは凹欠陥
として、欠陥の凹凸形状を再判定することを特徴とする請求項1記載の欠陥検査方法。
請求項
3
上記(B3)工程において、予め、
上記真の凹欠陥の光強度の変化部分の光強度変化をシミュレーションにより得て、得られた該光強度変化と、上記第2の拡大像の光強度の変化部分の光強度変化との対比により、被検査欠陥の凹凸形状を再判定することを特徴とする請求項1
又は2記載の欠陥検査方法。
請求項
4:
上記検査光が、波長210〜550nmの光であることを特徴とする請求項1
乃至3のいずれか1項記載の欠陥検査方法。
請求項5:
上記(A2)及び(B2)の双方の工程において、反射光の光路上に反射光の一部を遮蔽する空間フィルタを設け、該空間フィルタを通して反射光を収集することを特徴とする請求項1乃至
4のいずれか1項記載の欠陥検査方法。
請求項6:
上記(A1)工程において、フォトマスクブランクをその面内方向に移動できるステージに載置し、上記ステージを上記面内方向に移動させて、上記欠陥と、上記検査光学系の対物レンズとを近接させることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項記載の欠陥検査方法。
請求項7:
上記デフォーカス量が、0nmを超えて300nm以下であることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項記載の欠陥検査方法。
請求項8:
請求項1乃至7のいずれか1項記載の欠陥検査方法の第2の判定工程において再判定された欠陥の凹凸形状に基づき、上記(B1)〜(B3)工程を実施したフォトマスクブランクから、凹欠陥を含まないフォトマスクブランクを選別することを特徴とするフォトマスクブランクの選別方法。
請求項9:
基板上に少なくとも1層の薄膜を形成する工程と、
請求項1乃至7のいずれか1項記載の欠陥検査方法により、上記薄膜に存在する欠陥の凹凸形状を判定する工程と
を含むことを特徴とするフォトマスクブランクの製造方法。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、光学的な欠陥検査方法を用いて、欠陥の凹凸形状を高い信頼性で区別して、フォトマスクブランクの欠陥を検査することができる。また、本発明の欠陥検査方法を適用することにより、凸欠陥を凹欠陥と誤判定することなく、致命的な欠陥である凹欠陥を有するフォトマスクブランクを確実に排除することができ、致命的な欠陥を含まないフォトマスクブランクを、より低コスト、かつ高い歩留まりで提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明について更に詳しく説明する。
まず、フォトマスクブランクからフォトマスクを製造する工程を説明する。
図1は、フォトマスクブランクからフォトマスクを製造する工程の一例の説明図であり、製造工程の各段階におけるフォトマスクブランク、中間体又はフォトマスクの断面図である。フォトマスクブランクには、透明基板上に、少なくとも1層の光学薄膜、加工補助薄膜などの薄膜が形成されている。
【0017】
図1(A)に示されるフォトマスクブランク100では、透明基板101上に、遮光膜、ハーフトーン位相シフト膜等の位相シフト膜などとして機能する光学薄膜102が形成され、光学薄膜102の上に、ハードマスク膜(加工補助薄膜)103が形成されている。このようなフォトマスクブランクからフォトマスクを製造する場合、まず、ハードマスク膜103の上に、その加工のためのレジスト膜104が形成される(
図1(B))。次に、電子線描画法などによるリソグラフィ工程を経て、レジスト膜104からレジストパターン104aを形成し(
図1(C))、レジストパターン104aをエッチングマスクとして、下層のハードマスク膜103を加工し、ハードマスク膜パターン103aを形成して(
図1(D))、レジストパターン104aを除去する(
図1(E))。更に、ハードマスク膜パターン103aをエッチングマスクとして、下層の光学薄膜102を加工すると、光学薄膜パターン102aが形成され、その後、ハードマスク膜パターン103aを除去すると、フォトマスク100aが得られる(
図1(F))。
【0018】
フォトマスクブランクの薄膜に、例えばピンホール欠陥のような凹欠陥が存在すると、最終的にフォトマスク上のマスクパターンの欠陥の原因となる。典型的なフォトマスクブランクの凹欠陥の例を
図2に示す。
図2(A)は、透明基板101上に形成された光学薄膜102の高精度な加工を行うために、その上に形成したハードマスク膜103に凹欠陥DEF1が存在するフォトマスクブランク100の例を、また、
図2(B)は、透明基板101上に形成された光学薄膜102自体に凹欠陥DEF2が存在するフォトマスクブランク100の例を示す断面図である。
【0019】
いずれのフォトマスクブランクにおいても、このようなフォトマスクブランクから
図1に示されるような製造工程によりフォトマスクを製造した場合、
図2(C)に示されるフォトマスク100aのように、フォトマスクブランク由来の凹欠陥DEF3が光学薄膜パターン102aに存在するフォトマスクとなってしまう。そして、この凹欠陥DEF3はフォトマスクを用いた露光において、パターン転写エラーを引き起こす原因となる。そのため、フォトマスクブランクの凹欠陥については、フォトマスクブランクを加工する前の段階で検出して、欠陥を有するフォトマスクブランクを排除したり、欠陥の修正を施したりする必要がある。
【0020】
一方、
図3は、フォトマスクブランク上に、例えばパーティクル欠陥のような凸欠陥が存在する場合を示し、
図3(A)は、透明基板101上に形成された光学薄膜102の上に凸欠陥DEF4が存在するフォトマスクブランク100の例を示す断面図である。このようなフォトマスクブランクから、
図1に示されるような製造工程によりフォトマスクを製造した場合、
図3(B)に示されるフォトマスク100aのように、凸欠陥DEF4が光学薄膜パターン102a上に残存するフォトマスクとなる。しかし、凸欠陥については、欠陥のサイズによっては、致命的にならない場合もあり、また、表面に付着した異物に起因する凸欠陥は、洗浄で除去可能であれば致命的な欠陥とはならない。
【0021】
このように、フォトマスクブランクに存在する欠陥が、致命的な欠陥であるピンホールなどの凹欠陥か、多くの場合致命的な欠陥ではない凸欠陥かの判定は、フォトマスクブランクの品質保証と、フォトマスクブランク製造における歩留りのカギを握ることになる。そこで、光学的な手法により高い信頼性で欠陥の凹凸形状を区別できる方法が望まれる。
【0022】
次に、フォトマスクブランクの欠陥検査に好適に用いられる検査光学系、具体的には、フォトマスクブランクの表面部における欠陥の凹凸形状を判定するために好適に用いられる検査光学系について説明する。
図4は検査光学系の基本構成の一例を示す概念図であり、光源ILS、ビームスプリッタBSP、対物レンズOBL、フォトマスクブランクMBを載置し移動できるステージSTG及び画像検出器SEを備えている。光源ILSは、波長が210nm〜550nm程度の光を射出することができるように構成されており、この光源ILSから射出された検査光BM1は、ビームスプリッタBSPで折り曲げられ、対物レンズOBLを通してフォトマスクブランクMBの所定領域を照射する。フォトマスクブランクMB表面で反射した光BM2は対物レンズOBLで集められるとともに、ビームスプリッタBSP、レンズL1を透過して画像検出器SEの受光面に到達する。このとき、画像検出器SEの受光面にマスクブランクMBの表面の拡大検査画像が形成されるように画像検出器SEの位置が調整されている。そして、画像検出器SEで収集された拡大検査画像のデータは、画像処理演算を施すことにより、欠陥の寸法演算や凹凸の判定がなされ、それらの結果は欠陥情報として記録されるようになっている。
【0023】
拡大検査画像は、例えば、画像検出器SEを、CCDカメラのような多数の光検出素子を画素として配列した検出器とし、フォトマスクブランクMBの表面で反射した光BM2が対物レンズOBLを介して形成する拡大像を2次元画像として一括して収集する直接法で収集することができる。また、検査光BM1を走査手段でフォトマスクブランクMBの表面上を走査し、反射光BM2の光強度を、逐次、画像検出器SEで収集し、光電変換して記録して、全体の2次元画像を生成する方法を採用してもよい。更に、反射光BM2の一部を遮蔽する空間フィルタSPFを、検査光学系の瞳位置、例えば、反射光BM2の光路上、特に、ビームスプリッタBSPとレンズL1との間に配設してもよく、この場合、必要に応じて反射光BM2の光路の一部を遮蔽して、拡大検査画像を、画像検出器SEで捉えることができる。検査光BM1の入射角度は、フォトマスクブランクMBに対して所定の角度に設定することができる。なお、検査する欠陥の位置決めは、対象とする欠陥を対物レンズOBLで観察可能な位置に位置決めすればよいが、この場合は、フォトマスクブランクMBがマスクステージSTGに載置されており、マスクステージSTGの移動により、対物レンズOBLで観察可能な位置に位置決めできるようになっている。
【0024】
次に、
図4に示される検査光学系を用いて、欠陥と検査光学系の対物レンズとの距離をフォーカス距離(合焦点)に設定して反射光を収集したときの、凹欠陥と凸欠陥の検査画像の相違について
図5及び
図6を示して説明する。
図5(A)は、
図4に示される検査光学系から、検査光BM1が、典型的な凹欠陥DEF5を含むフォトマスクブランクの表面MBSに対して左斜め方向から照明されている例を示す概念図である。このような斜方照明は、例えば、
図4に示す光源ILSからフォトマスクブランクMBに射出される検査光BM1の位置を、(光源ILSとビームスプリッタBSPとの間に位置する)アパーチャの位置を制御することにより実現することができる。この場合、凹欠陥DEF5の図中左側の側面LSFで反射された反射光BM2は、正反射により、対物レンズOBLよりも右側に集中するので、対物レンズOBLに十分には取り込まれない。一方、凹欠陥DEF5の図中右側の側面RSFで反射された反射光は、正反射により、対物レンズOBLに十分に取り込まれる。その結果、画像検出器SEで得られる検査画像の光強度分布は、凹欠陥DEF5の左側は暗部、右側は明部となり、
図5(B)に示されるような断面プロファイルPR1となる。
【0025】
一方、
図6(A)は、
図4に示される検査光学系から、検査光BM1が、典型的な凸欠陥DEF6を含むフォトマスクブランクの表面MBSに対して左斜め方向から照明されている例を示す概念図である。この場合、凸欠陥DEF6の図中左側の側面LSFで反射された反射光BM2は、正反射により、対物レンズOBLに十分に取り込まれる。一方、凸欠陥DEF6の図中右側の側面RSFで反射された反射光は、正反射により、対物レンズOBLよりも右側に集中するので、対物レンズOBLに十分には取り込まれない。その結果、画像検出器SEで得られる検査画像の光強度分布は、凸欠陥DEF6の左側は明部、右側は暗部となり、
図6(B)に示されるような断面プロファイルPR2となる。
【0026】
このように、斜方照明を適用することにより、得られた検査画像の明暗の位置関係から、欠陥の凹凸形状を判定することができる。
図5及び
図6では、図中左側からの斜方照明の例を示したが、照明方向は任意に設定でき、得られた検査画像において、検査光の入射側を基準にして、検査画像の明暗の位置関係又は光強度の差から同様に、欠陥の凹凸形状を判定することが可能である。
【0027】
また、
図4に示されるように、検査光学系において、反射光の光路上に反射光の一部を遮蔽する空間フィルタSPFを設け、空間フィルタSPFを通して反射光を収集するように構成した場合、フォトマスクブランクの表面に、検査光を垂直方向から照射しても、上述した斜方照明を用いた場合のように、検査画像に明暗を生じさせることができる。この場合、例えば、反射光の光路の半分を遮蔽すれば、検査光の入射側を基準にして、検査画像の明暗の位置関係又は光強度の差から、欠陥の凹凸形状を判定することができる。
【0028】
しかし、フォトマスクブランクの表面部に、パーティクルなどの異物が、光学薄膜に埋め込まれて、その一部が光学薄膜から突出した状態となって凸欠陥をなしている場合などでは、上述した検査画像の明暗の位置関係だけでは、欠陥が凹欠陥か凸欠陥かを正しく判定できない場合がある。
図7(A)及び(B)は、各々、このような凸欠陥を有するフォトマスクブランク100の平面図及び断面図である(第1の態様)。これらは、検査光に対して透明な石英基板101上に形成されたMoSi系材料からなる光学薄膜102の表面部に、光学薄膜102より屈折率が低い物質からなる異物により形成された凸欠陥DEF7が存在している状態を示している。
【0029】
この凸欠陥DEF7に対して、欠陥と検査光学系の対物レンズとの距離をフォーカス距離(合焦点)に設定し、
図5に示される凹欠陥又は
図6に示される凸欠陥のように、
図4に示される検査光学系を用いて、フォトマスクブランクの表面MBSに斜方照明により図中左側から検査光を照射して、反射光を収集した場合、
図7(C)に示される光強度分布の検査画像が得られ、
図7(C)のA−A’線に沿った断面で、光強度分布は、
図7(D)に示されるようなプロファイルPR3となる。この場合、
図5及び
図6に示される場合と対比すれば、凹欠陥と判定されるが、実際は凸欠陥である。
【0030】
ところが、
図7(A)及び(B)に示されるような、凹欠陥と判定されてしまう凸欠陥と、真の凹欠陥とに対して、欠陥と検査光学系の対物レンズとの距離を、フォーカス距離から所定のデフォーカス量外れたデフォーカス距離に設定して反射光を収集した場合、デフォーカス距離が設定された状態(デフォーカス状態)で、検査画像及び光強度分布に違いがあることがわかった。
【0031】
図8(A)は、
図7(B)と同様の断面図である。一方、
図8(B)は、検査光に対して透明な石英基板101上に形成されたMoSi系材料からなる光学薄膜102に、真の凹欠陥DEF8を有するフォトマスクブランク100の断面図である。
【0032】
これらの凸欠陥DEF7及び凹欠陥DEF8に、
図5に示される凹欠陥又は
図6に示される凸欠陥のように、
図4に示される検査光学系を用いて、フォトマスクブランクの表面に斜方照明により図中左側から検査光を照射して、反射光を収集すると、欠陥と検査光学系の対物レンズとの距離がフォーカス距離に設定されたフォーカス状態(Δz=0、なお、Δzは、フォーカス距離との差を示す(以下同じ)。)の場合は、凸欠陥DEF7の光強度分布の断面プロファイルPR6(
図8(E))と、凹欠陥DEF8の光強度分布の断面プロファイルPR7(
図8(F))との間で、明暗の位置関係に差はない。また、欠陥と検査光学系の対物レンズとの距離が正のデフォーカス距離、即ち、フォトマスクブランクMBが載置されたマスクステージSTGを上昇させて、フォーカス距離より所定のデフォーカス量近く設定された正のデフォーカス状態(Δz>0)の場合も、凸欠陥DEF7の光強度分布の断面プロファイルPR4(
図8(C))と、凹欠陥DEF8の光強度分布の断面プロファイルPR5(
図8(D))との間で、明暗の位置関係に差はない。一方、欠陥と検査光学系の対物レンズとの距離が負のデフォーカス距離、即ち、フォトマスクブランクMBが載置されたマスクステージSTGを下降させて、フォーカス距離より所定のデフォーカス量遠く設定された負のデフォーカス状態(Δz<0)の場合は、凸欠陥DEF7の光強度分布の断面プロファイルPR8(
図8(G))と、凹欠陥DEF8の光強度分布の断面プロファイルPR9(
図8(H))との間で、明暗の位置関係が逆転する。
【0033】
即ち、フォーカス状態又は正のデフォーカス状態で得られた検査画像及び光強度分布からは、両者ともに、同じ形状と判定されてしまう。しかし、負のデフォーカス状態で得られた検査画像及び光強度分布からは、真の凹欠陥である凹欠陥DEF8の場合は、図中左側が明部、右側が暗部となって明暗の配置が反転するが、異物の一部が光学薄膜から突出した状態となって形成された凸欠陥DEF7では、明部と暗部は反転していない。検査画像の明部と暗部の光強度分布は、欠陥の幅、高さ、深さ、デフォーカス量などに依存して変化するが、いずれの場合も、両者の明部と暗部との位置関係は、負のデフォーカス状態において差が生じる。この差を利用することにより、実際は凸欠陥であるのに、フォーカス状態では凹欠陥と判定される欠陥を、凸欠陥と正しく判定することが可能となる。
【0034】
次に、
図9に示されるような、検査光に対して実質的に透明な材料からなる付着物が欠陥として存在する場合について説明する。
図9(A)及び(B)は、各々、このような凸欠陥を有するフォトマスクブランク100の平面図及び断面図である(第2の態様)。これらは、検査光に対して透明な石英基板101上に形成されたMoSi系材料からなる光学薄膜102の表面に、検査光に対して実質的に透明な材料からなる付着物により形成された凸欠陥DEF9が存在している状態を示している。この場合、光学薄膜102自体は平坦である。
【0035】
この凸欠陥DEF9に対して、欠陥と検査光学系の対物レンズとの距離をフォーカス距離(合焦点)に設定し、
図5に示される凹欠陥又は
図6に示される凸欠陥のように、
図4に示される検査光学系を用いて、フォトマスクブランクの表面MBSに斜方照明により図中左側から検査光を照射して、反射光を収集した場合、
図9(C)に示される光強度分布の検査画像が得られ、
図9(C)のA−A’線に沿った断面で、光強度分布は、
図9(D)に示されるようなプロファイルPR10となる。この場合、
図5及び
図6に示される場合と対比すれば、凹欠陥と判定されるが、実際は凸欠陥である。
【0036】
ところが、
図9(A)及び(B)に示されるような、凹欠陥と判定されてしまう凸欠陥と、真の凹欠陥とに対して、欠陥と検査光学系の対物レンズとの距離を、フォーカス距離から所定のデフォーカス量外れたデフォーカス距離に設定して反射光を収集した場合、この場合も、デフォーカス距離が設定された状態(デフォーカス状態)で、検査画像及び光強度分布に違いがあることがわかった。
【0037】
図10(A)は、
図9(B)と同様の断面図である。一方、真の凹欠陥DEF8を有するフォトマスクブランク100の断面図は、
図8(B)に示されている。
【0038】
これらの凸欠陥DEF9及び凹欠陥DEF8に、
図5に示される凹欠陥又は
図6に示される凸欠陥のように、
図4に示される検査光学系を用いて、フォトマスクブランクの表面に斜方照明により図中左側から検査光を照射して、反射光を収集すると、フォーカス状態(Δz=0)の場合、正のデフォーカス状態(Δz>0)の場合、及び負のデフォーカス状態(Δz<0)の場合のいずれの場合も、各々、凸欠陥DEF9の光強度分布の断面プロファイルPR12(
図10(C))と、凹欠陥DEF8の光強度分布の断面プロファイルPR7(
図8(F))との間、凸欠陥DEF9の光強度分布の断面プロファイルPR11(
図10(B))と、凹欠陥DEF8の光強度分布の断面プロファイルPR5(
図8(D))との間、凸欠陥DEF9の光強度分布の断面プロファイルPR13(
図10(D))と、凹欠陥DEF8の光強度分布の断面プロファイルPR9(
図8(H))との間で、明暗の位置関係に差はない。そのため、上述した第1の態様と同様の手法では、実際は凸欠陥であるのに、フォーカス状態では凹欠陥と判定される欠陥を区別することはできない。
【0039】
しかし、正のデフォーカス状態では、検査光に対して実質的に透明な材料からなる付着物により形成された凸欠陥DEF9の光強度分布と、真の凹欠陥DEF8の光強度分布とを比較すると、無欠陥領域の光強度と暗部の光強度との差(絶対値)に対する、無欠陥領域の光強度と明部の光強度との差(絶対値)の比(以下、明暗比とする)が、凸欠陥DEF9の方が高くなっている。このように、検査光に対して実質的に透明な材料からなる付着物により形成された凸欠陥の場合、明部が強調される傾向にある。無欠陥領域の光強度と明部の光強度との差、及び無欠陥領域の光強度と暗部の光強度との差は、凸欠陥のサイズに依存して変化するが、凸欠陥から充分離れた無欠陥領域で得られる基準強度は、フォトマスクブランクの光学薄膜の構造で特定され、無欠陥領域において一定である。また、真の凹欠陥については、さまざまなサイズや深さに対して、その明部と暗部の光強度を、明暗比として、実測又はシミュレーションにより、事前に把握しておくことが可能である。従って、欠陥から充分離れた無欠陥領域における光強度を基準強度とし、この基準強度に対する明部及び暗部の光強度を比較することにより、例えば、明暗比について所定の閾値を決めておき、この閾値以下(例えば、0.9以下)のものを真の凹欠陥、閾値を超えるものを凸欠陥とすれば、実際は凸欠陥であるのに、フォーカス状態では凹欠陥と判定される欠陥を、凸欠陥と正しく判定することが可能となる。
【0040】
また、上記第1の態様及び第2の態様では、石英基板上のMoSi系材料からなる光学薄膜に存在する欠陥の例を示したが、フォトマスクブランクに使用される他の光学薄膜、加工補助薄膜等の薄膜、例えば、クロム系材料からなる薄膜に存在する欠陥についても、同様に本発明の欠陥検査方法の対象となる。
【0041】
本発明では、基板上に少なくとも1層の薄膜が形成されたフォトマスクブランクの表面部に存在する欠陥を、検査光学系を用いて検査するに際し、まず、下記(A1)〜(A3)工程、即ち、
(A1)欠陥と、検査光学系の対物レンズとを近接させて、それらの距離を、フォーカス距離に設定し、フォーカス距離が設定された状態で、検査光を、対物レンズを介して欠陥に照射する工程と、
(A2)検査光が照射された領域の反射光を、対物レンズを介して上記領域の第1の拡大像として収集する工程と、
(A3)第1の拡大像の光強度の変化部分を特定して、第1の拡大像の光強度の変化部分の光強度変化から、欠陥の凹凸形状を判定する第1の判定工程と
により、フォーカス状態で欠陥の凹凸形状を判定し、次いで、下記(B1)〜(B3)工程、即ち、
(B1)欠陥と、検査光学系の対物レンズとの距離を、フォーカス距離から所定のデフォーカス量外れたデフォーカス距離に設定し、デフォーカス距離が設定された状態で、検査光を、対物レンズを介して欠陥に照射する工程と、
(B2)検査光が照射された領域の反射光を、対物レンズを介して上記領域の第2の拡大像として収集する工程と、
(B3)第2の拡大像の光強度の変化部分を特定して、第2の拡大像の光強度の変化部分の光強度変化から、欠陥の凹凸形状を再判定する第2の判定工程と
により、デフォーカス状態で欠陥の凹凸形状を再判定する。このような方法で欠陥を検査することにより、例えば、本来凸欠陥である欠陥を、凹欠陥と誤判定することなく、欠陥の凹凸形状をより正確に判定することができる。
【0042】
(A3)工程及び(B3)工程の一方又は双方においては、対象とする凹欠陥又は凸欠陥、特に真の凹欠陥に対して、上記(B1)〜(B3)工程を実際に実施して得た光強度変化と、第1の拡大像又は第2の拡大像の光強度変化とを対比することにより、検査対象の欠陥の凹凸形状を判定してもよいが、対象とする凹欠陥又は凸欠陥、特に真の凹欠陥についてシミュレーションにより得た光強度変化と、第1の拡大像又は第2の拡大像の光強度変化とを対比することにより、検査対象の欠陥の凹凸形状を判定することも可能である。この場合、特に真の凹欠陥の光強度変化をシミュレーションにより得て、この光強度変化に対応するものを凹欠陥、そうでないものを凸欠陥と判定することにより、効率的な判定が可能となる。
【0043】
また、基板上に少なくとも1層の光学薄膜、加工補助薄膜などの薄膜を形成する工程と、本発明の欠陥検査方法により、薄膜に存在する欠陥の凹凸形状を判定する工程とを含む方法によりフォトマスクブランクを製造すれば、致命的な欠陥を有するフォトマスクブランクを排除し、また、除去可能な欠陥や修復可能な欠陥などの致命的でない欠陥を有するフォトマスクブランクを選別して、そのままで又は再生してから提供することが可能となる。
【0044】
特に、本発明は、上記(A1)〜(A3)工程を実施して、第1の判定工程において、欠陥形状が凹形状と判定された場合に、上記(B1)〜(B3)工程を実施して、欠陥の凹凸形状を再判定すると、本来凸欠陥である欠陥を、凹欠陥と誤判定することなく、本来の凸形状と判定することができることから、特に有効である。そして、このような欠陥検査方法を適用することにより、第2の判定工程において再判定された欠陥の凹凸形状に基づき、上記(B1)〜(B3)工程を実施したフォトマスクブランクから、凹欠陥を含まないフォトマスクブランクを選別することが可能となる。
【0045】
本発明の欠陥検査方法においては、上記検査光が、波長210〜550nmの光であることが好ましい。また、(A1)及び(B1)の一方又は双方の工程において、検査光は、その光軸がフォトマスクブランクの表面に対して傾斜する斜方照明により照射してもよく、(A2)及び(B2)の一方又は双方の工程において、反射光の光路上に反射光の一部を遮蔽する空間フィルタを設け、空間フィルタを通して反射光を収集してもよい。デフォーカス距離は、欠陥のサイズ、深さにもよるが、好ましくはΔz=−300nm〜+300nm(デフォーカス量が300nm以下)、より好ましくはΔz=−250nm〜+250nm(デフォーカス量が250nm以下)の範囲である。いずれの範囲の場合も、0nmは除かれるが、特に、Δz=−100nmを超えて〜+100nm未満(デフォーカス量が100nm未満)を除く範囲でデフォーカス距離を設定することが好ましい。
【0046】
更に、上記(A1)工程において、フォトマスクブランクをその面内方向に移動できるステージに載置し、ステージを上記面内方向に移動させて、欠陥と検査光学系の対物レンズとを近接させれば、欠陥の容易な位置合わせができ、また、フォトマスクブランク上に存在する複数の欠陥に対する連続的な欠陥検査を実施することができることから、効率化に寄与する。
【0047】
次に、本発明の欠陥検査方法を、
図11に示されるフローチャートに沿って、更に具体的に説明する。
まず、欠陥を有する検査対象のフォトマスクブランク(被検査フォトマスクブランク)を準備する(工程S201)。次に、フォトマスクブランク上に存在する欠陥の位置座標情報を取り込む(工程S202)。欠陥の位置座標は、別途、公知の欠陥検査により特定された欠陥の位置座標を用いることができる。
【0048】
次に、(A1)工程として、検査光学系の検査位置に欠陥の位置を合わせる、具体的には、欠陥と検査光学系の対物レンズとを近接させると共に、欠陥と検査光学系の対物レンズとの距離を合焦点距離(フォーカス距離)に設定して、フォーカス距離を保って、検査光を、対物レンズを介して、斜め方向から照射する(工程S203)。位置合わせは、検査対象のフォトマスクブランクをその面内方向に移動できるステージに載置し、検査対象のフォトマスクブランクの欠陥の位置座標に基づき、ステージを上記面内方向に移動させて、欠陥と上記検査光学系の対物レンズとを近接させる方法で実施してもよい。次に、(A2)工程として、検査光が照射された領域の反射光を、検査光学系の対物レンズを介して欠陥を含む領域の第1の拡大像として収集する(工程S204)。次に、(A3)工程として、収集した第1の拡大像の画像データ(検査画像)から、欠陥部分における検査画像の光強度の変化部分を特定し(工程S205)、検査光の入射側を基準にして、検査画像の明部と暗部との位置関係から、欠陥部分の凹凸形状を判定する第1の判定工程を実施する(工程S206)。
【0049】
ここで、工程S206において、凹欠陥と判定されなかった場合には、欠陥情報を凸欠陥として記録する(判断D201、工程S212)。
【0050】
一方、工程S206において凹欠陥と判定された場合、(B1)工程として、欠陥と検査光学系の対物レンズとの距離を合焦点距離とは異なる、フォーカス距離から所定のデフォーカス量外れた距離(正又は負のデフォーカス距離)に設定して、デフォーカス距離を保って、検査光を、対物レンズを介して、斜め方向から照射する(工程S207)。次に、(B2)工程として、検査光が照射された領域の反射光を、検査光学系の対物レンズを介して欠陥を含む領域の第2の拡大像として収集する(工程S208)。次に、(B3)工程として、収集した第2の拡大像の画像データ(検査画像)から、欠陥部分における検査画像の光強度の変化部分を特定し(工程S209)、第1の態様の場合は、検査光の入射側を基準にして、検査画像の明部と暗部との位置関係から、第2の態様の場合は、欠陥から充分離れた無欠陥領域における光強度を基準強度とし、この基準強度に対する明部及び暗部の光強度を比較することにより、欠陥部分の凹凸形状を判定する第2の判定工程を実施する(工程S210)。
【0051】
ここで、工程S210において、凹欠陥と判定された場合には、欠陥情報を凹欠陥として記録する(判断D202、工程S211)。逆に、凹欠陥と判定されなかった場合には、欠陥情報を凸欠陥として記録する(判断D202、工程S212)。次に、予め指定した全ての欠陥に対して検査が終了したかを判断し(判断D203)、未了であれば、新たな欠陥の位置を指定して(工程S213)、工程S203に戻り、(A1)〜(A3)工程、更には(B1)〜(B3)工程を繰り返す。そして、予め指定した全ての欠陥に対して検査が終了したと判断した場合(判断D203)は、欠陥検査が終了する。
【0052】
次に、屈折率が低い物質からなる異物により形成された凸欠陥(第1の態様)と、検査光に対して実質的に透明な材料からなる付着物により形成された凸欠陥(第2の態様)とを一連の工程で検査する場合の例を、
図12に示されるフローチャートに沿って説明する。この場合、
図11に示されるフローチャートにおいて、(B1)〜(B3)工程に対応する工程S207〜S210及びこれに連続する判断D202、工程S211、212の代わりに、以下のように実施する。
【0053】
工程S206において凹欠陥と判定された場合、(B1)工程として、まず、欠陥と検査光学系の対物レンズとの距離を合焦点距離とは異なる、フォーカス距離から所定のデフォーカス量外れた負のデフォーカス距離に設定して、負のデフォーカス距離を保って、検査光を、対物レンズを介して、斜め方向から照射する(工程S221)。次に、(B2)工程として、検査光が照射された領域の反射光を、検査光学系の対物レンズを介して欠陥を含む領域の第2の拡大像として収集する(工程S222)。次に、(B3)工程として、収集した第2の拡大像の画像データ(検査画像)から、欠陥部分における検査画像の光強度の変化部分を特定し(工程S223)、検査光の入射側を基準にして、検査画像の明部と暗部と位置関係から、欠陥部分の凹凸形状を判定する第2の判定工程を実施する(工程S224)。
【0054】
次に、欠陥と検査光学系の対物レンズとの距離を合焦点距離とは異なる、フォーカス距離から所定のデフォーカス量外れた正のデフォーカス距離に設定して、正のデフォーカス距離を保って、検査光を、対物レンズを介して、斜め方向から照射する(工程S225)。次に、(B2)工程として、検査光が照射された領域の反射光を、検査光学系の対物レンズを介して欠陥を含む領域の第2の拡大像として収集する(工程S226)。次に、(B3)工程として、収集した第2の拡大像の画像データ(検査画像)から、欠陥部分における検査画像の光強度の変化部分を特定し(工程S227)、欠陥から充分離れた無欠陥領域における光強度を基準強度とし、この基準強度に対する明部又は暗部の光強度を比較することにより、欠陥部分の凹凸形状を判定する第2の判定工程を実施する(工程S228)。
【0055】
ここで、工程S224において、凹欠陥と判定されなかった場合は、欠陥情報を第1の態様の凸欠陥として記録する(判断D221、工程S230)。逆に、凹欠陥と判定された場合は、工程S228における判定結果に移行する。そして、工程S228において、凹欠陥と判定された場合には、欠陥情報を真の凹欠陥として記録し(判断D222、工程S229)、凹欠陥と判定されなかった場合に、欠陥情報を第2の態様の凸欠陥として記録する(判断D222、工程S230)。なお、一連の工程は、流れが整合する範囲で、各々前後させてもよく、例えば、正のデフォーカス距離で実施する工程S225〜S228を実施した後に、負のデフォーカス距離で実施する工程S221〜S224を実施したり、負のデフォーカス距離で実施する工程と、正のデフォーカス距離で実施する工程とを交互に実施したりしてもよい。
【0056】
欠陥の凹凸形状を、凹欠陥と誤判定することなく高い信頼性で区別できる本発明の欠陥検査方法を、フォトマスクブランクの製造工程に適用することにより、凹欠陥、特にピンホール欠陥を有するフォトマスクブランクを、高い信頼性で抽出して、ピンホール欠陥を含まないフォトマスクブランクを選別することができる。また、本発明の欠陥評価方法で得られた欠陥の凹凸形状の情報は、検査票を付帯させることなどの方法により、フォトマスクブランクに付与することができる。更に、フォトマスクブランクに付与された情報に基づいて、ピンホール等の凹欠陥を含まないフォトマスクブランクを選別することもできる。従来では、付着物に起因する凸欠陥を、光学検査で凹欠陥と判定してしまう場合があり、本来、必ずしも致命的な欠陥ではない欠陥を有するフォトマスクブランクを不良品として排除する可能性が高かったため、歩留り低下の要因となっていたが、本発明の検査方法により、フォトマスクブランクに存在する致命的な欠陥となる凹欠陥を有するフォトマスクブランクを選択的に排除することができるため、製品スペックに合致したフォトマスクブランクを、歩留りよく提供することができる。
【実施例】
【0057】
以下、実施例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明は、以下の実施例に限定されるものではない。
【0058】
[実施例1]
第1の態様の凸欠陥を含むフォトマスクブランクの欠陥検査を実施した。検査光学系として、
図4に示される検査光学系を用い、開口数NAを0.75、検査波長を248nmとし、検査光はフォトマスクブランク上の欠陥に対して、図中、左上方から平均入射角度38度で照明する斜方照明とした。
図13(A)に示されるような、検査光に対して透明な石英基板101上に形成されたMoSi系材料からなる光学薄膜102の表面部に、光学薄膜102より屈折率が低い物質からなる異物により形成された凸欠陥DEF7を検査対象として、光強度分布を表す検査画像と、その断面の光強度プロファイルを得た。また、
図14(A)に示されるような、検査光に対して透明な石英基板101上に形成されたMoSi系材料からなる光学薄膜102の表面部に存在している真の凹欠陥DEF8を比較用の検査対象として、光強度分布を表す検査画像と、光強度の断面プロファイルを得た。
【0059】
凸欠陥DEF7は、欠陥の突出部の高さH1を10nm、欠陥の幅W1を100nmとし、欠陥の埋め込み深さD1を10nmと20nmの2種とした。
図13(B)は、デフォーカス距離を正の+200nm(デフォーカス量を200nm)とした場合の光強度の断面プロファイル、
図13(C)は、フォーカス距離、即ち合焦点の場合の光強度の断面プロファイル、
図13(D)は、デフォーカス距離を負の−200nm(デフォーカス量を200nm)とした場合の光強度の断面プロファイルを示す。
【0060】
一方、真の凹欠陥DEF8は、欠陥の幅W0を100nmとし、検査画像の光強度の変化量は、欠陥の深さD0に依存して変化するので、深さD0を20nmと40nmと75nmの3種とした。
図14(B)は、デフォーカス距離を正の+200nm(デフォーカス量を200nm)とした場合の光強度の断面プロファイル、
図14(C)は、フォーカス距離、即ち合焦点の場合の光強度の断面プロファイル、
図14(D)は、デフォーカス距離を負の−200nm(デフォーカス量を200nm)とした場合の光強度の断面プロファイルを示す。
【0061】
フォーカス距離(Δz=0nm)、即ち、合焦点の場合には、真の凹欠陥DEF8では、検査画像の分布(光強度の断面プロファイル)は左側が暗部、右側が明部、また、凸欠陥DEF7でも同様に、左側が暗部、右側が明部となっているため、両者を区別することができない。また、正のデフォーカス距離(Δz=+200nm、デフォーカス量は200nm)の場合も、両者いずれも、左側が暗部、右側が明部となっている。これらに対して、負のデフォーカス距離(Δz=−200nm、デフォーカス量は200nm)の場合は、凸欠陥DEF7では、左側が暗部、右側が明部となっているのに対して、真の凹欠陥DEF8では、左側が明部、右側が暗部となっており、明暗の位置関係が反転している。
【0062】
この結果から、明暗の位置関係を、負のデフォーカス状態での検査画像で対比することにより、従来の方法、即ち、合焦点での検査では、凹欠陥と判定された埋め込み型の凸欠陥を、正しく凸欠陥と判定することができることがわかる。
【0063】
[実施例2]
第2の態様の凸欠陥を含むフォトマスクブランクの欠陥検査を実施した。検査光学系として、
図4に示される検査光学系を用い、開口数NAを0.75、検査波長を248nmとし、検査光はフォトマスクブランク上の欠陥に対して、図中、左上方から平均入射角度38度で照明する斜方照明とした。
図15(A)に示されるような、検査光に対して透明な石英基板101上に形成されたMoSi系材料からなる光学薄膜102の表面部に、検査光に対して実質的に透明な材料からなる付着物により形成された凸欠陥DEF9を検査対象として、光強度分布を表す検査画像と、その断面の光強度プロファイルを得た。
【0064】
凸欠陥DEF9は、欠陥の高さH2を60nmと80nmの2種とし、欠陥の幅W2を100nmとした。
図15(B)は、デフォーカス距離を正の+200nm(デフォーカス量を200nm)とした場合の光強度の断面プロファイル、
図15(C)は、フォーカス距離、即ち合焦点の場合の光強度の断面プロファイル、
図15(D)は、デフォーカス距離を負の−200nm(デフォーカス量を200nm)とした場合の光強度の断面プロファイルを示す。一方、比較用の検査対象である
図14(A)に示されるような真の凹欠陥DEF8の場合の光強度の断面プロファイルは、
図14(B)〜(D)に示されるとおりである。
【0065】
この場合、フォーカス距離(Δz=0nm)、即ち、合焦点の場合、及び正のデフォーカス距離(Δz=+200nm、デフォーカス量は200nm)の場合は、いずれも左側が暗部、右側が明部となっており、また、負のデフォーカス距離(Δz=−200nm、デフォーカス量は200nm)の場合は、いずれも、左側が明部、右側が暗部となっているため、明暗の位置関係で、両者を区別することができないが、正のデフォーカス状態では、凸欠陥DEF9の検査画像の明部の光強度レベルが、真の凹欠陥DEF8のそれよりも明らかに高くなっている。
【0066】
これらの光強度レベルを詳細に評価したところ、基準強度となる欠陥から充分離れた欠陥のない位置における光強度は0.166であった。これに対して、凸欠陥DEF9の高さH2が80nmの場合、明部における基準強度からの変化量は、合焦点では0.076であるのに対し、正のデフォーカス状態では、0.095にまで増大した。一方、暗部における基準強度からの変化量は、合焦点では0.089であるのに対し、正のデフォーカス状態では0.084とわずかに減少した。即ち、合焦点での明暗比は0.85であり、正のデフォーカス状態での明暗比は1.13である。正のデフォーカス状態の場合、検査画像の平均の光強度レベルが上昇し、基準強度に対する明部の変化量が暗部の変化量を上回る結果となった。また、凸欠陥DEF9の高さH2が60nmの場合でも、明部と暗部の基準強度に対する変化量は、ほぼ同程度(即ち、明暗比が、ほぼ1)であった。
【0067】
一方、真の凹欠陥DEF8では、検査画像の平均の光強度レベルが最も高い、深さD0が20nmの場合であっても、正のデフォーカス状態において、明部における基準強度からの変化量が0.024、暗部における基準強度からの変化量が0.031であり、明暗比が0.77と凸欠陥DEF9の場合を下回っていた。また、深さD0がより深い40nm又は75nmの真の凹欠陥DEF8では、検査画像の平均の光強度レベルがこれより低く、明暗比は更に低くなっていた。
【0068】
この結果から、無欠陥領域の光強度と暗部の光強度との差(絶対値)に対する、無欠陥領域の光強度と明部の光強度との差(絶対値)の比、即ち明暗比を、正のデフォーカス状態で、真の凹欠陥DEF8の明暗比と対比することにより、従来の方法、即ち、合焦点での検査では、凹欠陥と判定された付着型の凸欠陥を、正しく凸欠陥と判定することができることがわかる。